(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】地上時間仮想参照型測位およびタイミングシステム
(51)【国際特許分類】
H04J 13/10 20110101AFI20240723BHJP
G01S 19/10 20100101ALI20240723BHJP
B64G 3/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H04J13/10
G01S19/10
B64G3/00
(21)【出願番号】P 2019162777
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-07-01
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503195311
【氏名又は名称】エアバス・ディフェンス・アンド・スペース・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランシス スクアレ
(72)【発明者】
【氏名】ジーン-ジャック フロック
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ベイ
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05886666(US,A)
【文献】特開2004-297817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0210090(US,A1)
【文献】特開2014-048056(JP,A)
【文献】特開2005-207892(JP,A)
【文献】米国特許第09872268(US,B2)
【文献】特開2001-042022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0003492(US,A1)
【文献】特開2012-198220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 13/10
G01S 19/10
B64G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散符号系列を生成するようにされた信号生成ユニットであって、前記拡散符号系列は立上りエッジおよび立下りエッジを有する基準チップを有し、前記信号生成ユニットはさらに、前記拡散符号系列を調整して、前記基準チップの前記立上りエッジまたは立下りエッジが所定時刻(t
ref,VTRS)に仮想タイミング基準局VTRSに到達するようにされ
、調整前の前記拡散符号系列の長さは前記VTRSおよび他の仮想タイミング基準局VTRSを含む一組のVTRSのうちのVTRS同士の間の距離に基づく、信号生成ユニットと、
前記信号生成ユニットと協働するようにされるとともに前記拡散符号系列を送信するようにされた送信ユニットと、
を含むプラットホーム。
【請求項2】
前記VTRSはセルの中心を形成し、前記拡散符号系列は前記拡散符号系列の前記基準チップが前記VTRSに対応するように調整される、請求項1に記載のプラットホーム。
【請求項3】
前記VTRSは地上のまたは宇宙空間内の仮想点である、請求項1または2に記載のプラットホーム。
【請求項4】
前記信号生成ユニットは、前記基準チップの前記立上りエッジまたは前記立下りエッジが
前記他の仮想タイミング基準局VTRSごとの所定時刻に前記他の仮想タイミング基準局VTRSに到達するということを保証するために前記拡散符号系列を調整するようにされる、請求項1~3のいずれか一項に記載のプラットホーム。
【請求項5】
調整前の前記拡散符号系列の長さは、前記VTRSおよび
前記他の
仮想タイミング基準局VTRSを含む
前記一組のVTRSのうちのVTRS同士の間の最短距離に基づく、請求項4に記載のプラットホーム。
【請求項6】
前記信号生成ユニットは前記プラットホームのローカル時間と対応全地球的航行衛星システムGNSSのシステム時間との間のクロックオフセットを補償するようにされる、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラットホーム。
【請求項7】
前記信号生成ユニットは前記所定時刻(t
ref,VTRS)の前記VTRSにおける対流圏および電離層遅延を補償するようにされる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラットホーム。
【請求項8】
前記送信された拡散符号系列は、前記基準チップを含む第1の拡散符号から始まる変調された複数の符号期間
であって、符号系列カウンタが変調された複数の符号期間を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプラットホーム。
【請求項9】
前記信号生成ユニットは前記VTRSにおけるドップラーを補償するようにされる、請求項1~8のいずれか一項に記載のプラットホーム。
【請求項10】
前記VTRSは地上の固定点でなく地上の移動点である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプラットホーム。
【請求項11】
前記プラットホームは、中周回軌道MEO、低周回軌道LEO、またはGEO静止衛星GEOにおける航行衛星などの宇宙ベース局である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプラットホーム。
【請求項12】
前記プラットホームは、高高度プラットホームHAPS、成層圏バルーン、またはドローンである、請求項1~10のいずれか一項に記載のプラットホーム。
【請求項13】
前記プラットホームは、地上モバイルネットワークインフラストラクチャに適応化された基地局BTSなどまたは地文航法ビーコン(特に疑似の衛星すなわち擬似衛星)などの静的地上プラットホームである、請求項1~10のいずれか一項に記載のプラットホーム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の前記プラットホームから前記拡散符号系列を受信するようにされるとともに前記拡散符号系列に基づき取得を行うようにされたユーザ装置であって、前記VTRSは前記ユーザ装置により先験的に知られている、ユーザ装置。
【請求項15】
前記VTRSは前記ユーザ装置に知られている軌道を形成し、前記拡散符号系列の前記基準チップの到達に対応する前記軌道上の正確な位置が知られている、請求項14に記載のユーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例は、地上時間仮想参照型測位およびタイミングシステム(ground time virtually referenced positioning and timing system)およびそのアプリケーションを提供するための概念に関し、特に、ユーザ装置に拡散符号系列を提供するためのプラットホームに関する。
【背景技術】
【0002】
航行における一般的問題は、その幾何学的座標(X、YおよびZ)を判断するために3つの見通し線(LoS:Lines-of-Sight)と「従来の」全地球衛星航行システム(GNSS:Global Satellite Navigation System)または地域衛星航行システム(RNSS:Regional Satellite Navigation System)の時間スケールに対するそのクロックオフセットを判断するために1つの見通し線(LoS)との少なくとも4つの見通し線(LoS)を必要とする「従来の」GNSSまたはRNSSにより送信される信号に基づきユーザがその位置を判断する必要があることである。
【0003】
その位置の判断の要件は4つのLoSの利用可能性である。これは、光学的地平線が障害物(例えば木々または建物)により遮られない環境では難しくない。しかし、この状況は都市地域などの他の環境では保証されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】"Understanding GPS Principles and Application",Kaplan Artech House Publish,ISBN0-89006-793-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
位置判断技術は都市地域などの環境に関して最適化される必要があり得る。それにもかかわらず、ユーザ装置の取得段階を強化することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
強化取得段階によりユーザ装置へ拡散符号列を提供するプラットホームの概念を提供する要求があり得る。
【0007】
このような要求は特許請求の範囲の主題により満足され得る。
【0008】
第1の態様によると、プラットホームが提供される。プラットホームは信号生成ユニットおよび送信ユニットを含む。信号生成ユニットは拡散符号系列を生成するようにされる。拡散符号系列は立上りエッジおよび立下りエッジを有する基準チップを有する。信号生成ユニットは、基準チップの立上りエッジまたは立下りエッジが所定時刻tref,VTRSに(専用)仮想タイミング基準局(VTRS:Virtual Timing Reference Station)に到達するということを保証するために拡散符号系列を調整するようにされる。送信ユニットは、信号生成ユニットと協働するようにされるとともに拡散符号系列を送信するようにされる。
【0009】
基準チップの立上りエッジまたは立下りエッジの到達は、空間(特に空域または生物圏)内の様々な点においてプラットホームが拡散符号系列を送信することにより基準チップの立上りエッジまたは立下りエッジをVTRSへ提供することができるように、様々な(時)点に関して保証され得る。VTRSは受信時の同期に使用される人工的または仮想的位置を表し得る。したがって、VTRSは、ユーザ装置(通常のユーザ装置)により見られ得る空間(特に空域および/または生物圏)内の仮想点として理解され得る。
【0010】
信号生成ユニットは符号およびドップラー補償を適用するようにされ得る。結局、ユーザ装置の取得は、試験される符号およびドップラー仮説(Doppler hypotheses)の数を低減することにより促進され得る。
【0011】
VTRSはセルの中心を形成し得る。拡散符号系列は、拡散符号系列の各基準チップが1つのVTRSに対応するように調整され得る。
【0012】
VTRSは一組の複数VTRSの一部であり得る。一組の複数VTRSの各VTRSがセルの中心を形成し得る。拡散符号系列は、拡散符号系列の各基準チップが一組のVTRSの別のVTRSに対応するように調整され得る。
【0013】
VTRSは地上または空間(特に生物圏または空域)上の仮想点であり得る。VTRSはまた、特定時刻(例えば所定時刻tref,VTRS)の第4の座標を有する特定3次元座標であり得る。したがって、多くのVTRSまたは単一の移動VTRSの軌道が可能である。特定時点に関し、特定3次元座標がVTRSに適用される。同じことは必要な変更を加えて一組のVTRSへ適用される。したがって、ユーザ装置は、その粗位置を導出するために十分な情報が前もって提供され得る。
【0014】
信号生成ユニットは、対応全地球的航行衛星システムGNSSのシステム時間と信号生成ユニットローカル時間との間のクロックオフセットを考慮するようにされ得る。したがって、クロックオフセットはユーザ装置により後で考慮されなくてもよい。信号生成ユニットはプラットホームとVTRSとの間の幾何学的距離を考慮するようにされ得る。信号生成ユニットは衛星ローカル時間と対応全地球的航行衛星システムGNSSのシステム時間との間のクロックオフセットを補償するようにされ得る。
【0015】
信号生成ユニットは所定時刻tref,VTRSのVTRSにおける対流圏および電離層遅延を考慮するようにされ得る。同じことは必要な変更を加えて一組のVTRSに適用される。信号生成ユニットは所定時刻tref,VTRSのVTRSにおける対流圏および電離層遅延を補償するようにされ得る。
【0016】
信号生成ユニットは、基準チップの立上りエッジまたは立下りエッジが様々な所定時刻に他の仮想タイミング基準局VTRSに到達するということを保証するために拡散符号系列を調整するようにされ得る。拡散符号系列の長さは一組のVTRSのうちのVTRS同士間の最短距離に基づく。一組のVTRSは当該VTRSと他のVTRSとを含み得る。拡散符号系列の長さは一組のVTRSの密度を判断し得る。
【0017】
送信された拡散符号系列は、基準チップを含む第1の拡散符号から始まる多くの拡散符号を含む拡散符号カウンタを含む。基準チップはいくつかの基準チップのうちの1つであり得る。いくつかの基準チップは、一組のVTRSのうちのそれぞれのVTRSに対応するために信号生成ユニットにより調整され得る。
【0018】
信号生成ユニットはVTRSにおけるドップラーを補償するようにされ得る。同じことは必要な変更を加えて一組のVTRSへ適用される。したがって、ドップラー(曖昧性)は、ユーザ装置に関してではなく(空中の異なる点における)VTRSに関して補償され得る。VTRSはユーザ装置の位置とは異なり得る。
【0019】
VTRSは地球上の移動点であり、固定点でないかもしれない。一組のVTRSは、地上および/または地上近く(例えば空中)の一組の様々な3次元点であり得る。
【0020】
プラットホームは宇宙ベース局であり得る。プラットホームは中周回軌道(MEO:Medium Earth Orbit)の航行衛星であり得る。プラットホームは低周回軌道(LEO:Low Earth Obit)であり得る。プラットホームはGEO静止衛星(GEO:GEO stationary satellite)であり得る。
【0021】
プラットホームは近地上プラットホームであり得る。プラットホームは高高度プラットホーム(HAPS:High-Altitude Platform)であり得る。プラットホームは(成層圏)バルーンまたはドローンであり得る。
【0022】
プラットホームは静的地上プラットホームであり得る。プラットホームは基地局(BTS:Base Transceiver Station)であり得る。BTSは地上モバイルネットワークインフラストラクチャ用に適応化され得る。プラットホームは地文航法ビーコンであり得る。プラットホームは擬似衛星(Pseudo-satelliteまたはPseudolite)であり得る。
【0023】
第2の態様によると、ユーザ装置が提供される。ユーザ装置は第1の態様によるプラットホームから拡散符号系列を受信するようにされる。ユーザ装置は拡散符号系列に基づき取得を行うようにされ、VTRS(その位置および時間と共に)はユーザ装置により先験的に知られている。
【0024】
VTRSはユーザ装置に知られている軌道を形成し得、拡散符号系列の基準チップの到達に対応する軌道上の正確な位置は知られている。さらに、一組のVTRSもまたユーザ装置により先験的に知られ得る。
【0025】
対応補償は所謂仮想基準時間局(VTRS:Virtual Reference Time Station)に対して計算され得る。特に、符号補償は、拡散符号系列の基準チップ(例えば、規則に依存して第1のチップ)の立上りエッジ(または規則に依存して立下りエッジ)がVTRSにおいて特定エポックtref,VTRSに到達するということを保証することにより導出され得る。用語「特定エポック」は本明細書では用語「所定時刻」としても使用され得る。このようにして、対応信号を取得するとユーザ装置がシステム時間と非常に高精度に同期されることが可能である。この速い取得は、符号およびドップラー補償のおかげで、試験される符号およびドップラー仮説の数の低減により容易にされ得る。
【0026】
一組のVTRSの各VTRSは、通信システムに関するものと同じ用語を使用することにより、セルの中心に対応し得る。航行信号へ変調される拡散符号の長さはセル間距離に関して寸法決めされ得る。航行信号を取得するために使用される拡散符号系列とその第1のチップ(例えば)がtref,VTRSにVTRSにおいて同期するために使用される第1の分散系列との間の曖昧性を解決することを容易にするために、拡散符号カウンタが、航行メッセージの一部として航行信号へ直接変調される、または所謂符号シフトキーイング技術を使用することにより変調され得る。拡散符号系列は結局、信号生成ユニットにより送信される航行信号の一部であり得る。
【0027】
ユーザ装置は、VTRSの正確な位置および基準時刻tref,VTRSに関する知識を有し得る。このような情報は、航行メッセージ内でユーザに利用可能にされ得、したがってユーザ装置内で実現またはハード符号化され得るおよび/またはインターネットなどの第3の通信チャネルを介しユーザに利用可能にされ得る。セル(のネットワーク)の場合、ユーザ装置は、セル中心のうちの各セル中心の正確な位置だけでなくセル中心のうちの各セル中心の基準到達時刻tref,VTRSも知り得る。VTRSがユーザ装置にも知られた所定軌道に追随するということと、基準時刻tref,VTRSもまたVTRSがその軌道内の所定位置にある場合に知られるということとを考慮することも可能である。
【0028】
電離層および対流圏誤差(遅延)もまた補償に取り込むことが可能である(が強制的でない)。そうすることにより、ユーザ装置におけるそれらの影響を低減することも可能である。ユーザがVTRSから離れれば離れるほど電離層および対流圏誤差の対応余波の振幅は大きくなる。
【0029】
符号補償の計算は送信源(例えば航行衛星)のクロックオフセットを取り込み得るので、対応モデルは、航行メッセージサイズの大幅な低下に対応する航行メッセージへ変調される必要は無い。
【0030】
したがって、本開示は、符号およびドップラー不確定性探索を低減することにより、取得するための時間を著しく低減し得る技術を提供する。符号探索の低減は、衛星がVTRSの天頂にありかつユーザがVTRSに近い場合は数マイクロ秒(すなわちチップ)に帰着し得る(通常、符号探索は数ミリ秒にわたる)。ドップラー補償を適用すると、試験されるドップラー仮説の数は6~12に低下し得る。符号およびドップラー仮説の低減を組み合わせることで、ユーザがシステム時間および衛星位置のいかなる知識も有しなくても符号およびドップラー探索空間の著しい低減(ウォームまたはホット取得条件と比較され得る)を生じ得る。
【0031】
最後に、符号およびドップラー不確定性探索は、特に低下された安定性を有するローカルユーザ発振器の寄与により引き起こされるものに帰着し得る。
【0032】
VTRSに対する衛星の仰角が高ければ高いほど、ユーザ装置はVTRSにより近くなり得、衛星高度はより高くなり得、取得性能だけでなく時間転送性能もより良くなり得る。
【0033】
電離層および対流圏遅延を取り込むことにより、擬似距離への大気の寄与は、VTRSの近傍内に位置するいかなるユーザに関しても無視可能となり得る。
【0034】
衛星クロックオフセットを符号補償の判断に取り込む際、ユーザ航行メッセージは衛星クロックオフセットの対応予測モデルを調節する必要がない。これは、必要とされる航行メッセージサイズの大幅な低下(軌道予測モデルとクロック予測モデルとの両方を通常は含む全体メッセージの1/3まで見積られる)に繋がる。
【0035】
第3の態様によると、第1の態様によるプラットホームと第2の態様によるユーザ装置とを含むシステムか提供され得る。ユーザ装置は,VTRSに関する情報を使用するようにそして取得段階ではVTRSに基づき第1の仮説を計算するようにされ得る。したがって、取得のための時間は、取得に必要な第1の仮説を計算するためのより良い出発点とユーザ装置の追跡段階の開始とのおかげで、低減され得る。
【0036】
ハードウェア回路、ソフトウェア手段、またはそれらの組み合せの使用下の本明細書に記載の事項が実現され得るということは当業者にとって明らかである。ソフトウェア手段は、プログラムされたマイクロプロセッサ、または一般的コンピュータ、ASIC(特定用途向け集積回路:Application Specific Integrated Circuit)、および/またはDSP(デジタル信号プロセッサ:Digital Signal Processor)に関係し得る。例えば、ユーザ装置、プラットホーム、信号生成ユニット、および送信ユニットは、コンピュータ、論理回路、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、プロセッサ(例えばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ(μC)またはアレイプロセッサ)/コア/CPU(中央処理ユニット)、FPU(浮動小数点ユニット:Floating Point Unit)、NPU(数値処理ユニット:Numeric Processing Unit)、ALU(数値演算ユニット:Arithmetic Logical Unit)、コプロセッサ(主プロセッサ(CPU)を支援するための別のマイクロプロセッサ)、GPGPU(グラフィック処理ユニット上の汎用計算:General Purpose Computation on Graphics Processing Unit)、マルチコアプロセッサ(複数の主プロセッサおよび/またはグラフィックプロセッサ上で算術演算を同時に行うことなどの並列計算のための)、またはDSPとして部分的に実現され得る。本明細書で述べた詳細が方法の観点で説明されたとしても、これらの詳細はまた、好適な装置、コンピュータプロセッサ、またはプロセッサへ接続されるメモリであってプロセッサにより実行されると本方法を行う1つまたは複数のプログラムを備え得るメモリで実施または実現され得るということは当業者にとってさらに明確である。そのために、スワッピングおよびページングのような方法が配備され得る。
【0037】
上に述べた態様のうちのいくつかがプラットホームを参照して説明されたとしても、これらの態様はまたユーザ装置およびシステムに適用し得る。同様に、ユーザ装置との関連で上に述べた態様は対応するやり方でプラットホームおよびシステムへ適用可能かもしれない。さらに、本システムとの関連で上に述べた態様は対応するやり方でプラットホームおよびユーザ装置へ適用可能かもしれない。
【0038】
本明細書で使用される用語は、個々の実施形態を説明する目的のためのものであって、限定するように意図されていないということも理解すべきである。特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本開示の関連する技術分野の当業者の一般的理解に対応する意味を有しており、したがって余りに広くまたは余りに狭く理解されてはならない。専門用語が本開示内で不正確に使用され、したがって本開示の技術的概念を反映しなければ、これらは、本開示の関連技術分野の当業者へ正しい理解を伝える専門用語により置換されるべきである。本明細書で使用される一般用語は、辞書または文脈内の定義に基づき解釈されるべきである。余りに狭い解釈は回避されるべきである。
【0039】
例えば「含む」または「有する」などの用語は、説明した特徴、数、操作、行為、部品、部分またはそれらの組み合せの存在を意味し、したがって1つまたは複数のさらなる特徴、数、操作、行為、部品、部分またはそれらの組み合わせの存在または可能な追加を排除しないということを理解すべきである。
【0040】
「第1」または「第2」などの用語は、様々な部品または特徴を説明するために使用され得るが、これらの部品または特徴はこれらの用語に限定されない。上記用語により、1つの部品だけが他のものから識別されるべきである。例えば、第1の部品は本開示の範囲から逸脱することなく第2の部品と呼ばれ得、第2の部品もまた第1の部品と呼ばれて得る。用語「および/または」は、複数の関連特徴と複数の説明された複数の特徴のうちの任意の特徴との両方の組み合わせを含む。
【0041】
この場合、部品が別の部品「へ接続」される、「と連通」する、または「へアクセス」すれば、これは、他の部品へ直接接続されるまたはそれへ直接アクセスすることを意味し得るが、別の部品がその間に存在し得るということに注意すべきである。一方、部品が別の部品に「直接接続」されればまたは他の部品に「直接アクセス」すれば、いかなる別の部品もその間に存在しないということを理解すべきである。
【0042】
以下では、本開示の好適な実施形態は添付図面を参照して説明され、同じ部品には常に同じ参照符号が与えられる。
【0043】
本開示の説明において、既知の接続された機能または構造の詳細説明は、本開示から不必要に逸脱しない限り省略されるが、このような機能および構造は本開示の技術分野の当業者にとって理解可能である。添付図面は、本開示の例示であり、したがって制限として解釈されるべきではない。本開示の技術的考えは、添付図面に加えて、すべてのこのような修正、変形および改良形態を含むものとして解釈されるべきである。
【0044】
他の目的、特徴、利点および応用は、添付図面に関する非限定的実施形態の以下の明細書から明らかになる。添付図面では、すべての説明および/または図示された特徴は、特許請求の範囲またはそれらの関係/参照におけるそれらのグループ化に関係なく、単独でまたは任意の組み合わせで、本明細書で開示される主題を形成する。添付図面に示される部品または部分の寸法および比率は必ずしも原寸に比例してなく、これらの寸法および比率は添付図面および実施される実施形態における図解と異なり得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】航行衛星上に実装される典型的GNSS信号生成チェーンを概略的に示す。
【
図3】第1の航行信号構造の別の進化を概略的に示す。
【
図4】第1および第2の航行信号構造の別の進化を概略的に示す。
【
図5】様々なエポックにおける1つの航行衛星の位置を概略的に示す。
【
図6】衛星アンテナ位相中心に対する様々なチップの伝搬を概略的に示す。
【
図7】衛星アンテナ位相中心に対する全方向の様々なチップの伝搬を概略的に示す。
【
図8】衛星アンテナ位相中心に対する全方向の様々なチップの伝搬を概略的に示す。
【
図11】符号補償と仮想時間基準局(セル)の導入とを概略的に示す。
【
図12】地球表面の接線としてVTRSと衛星との間の見通し線を概略的に示す。
【
図13】地球表面に対して直角であるVTRSと衛星との間の見通し線を概略的に示す。
【
図14】VTRSに正確に位置するユーザ装置AとVTRSから距離lに位置するユーザ装置Bとの間の受信時刻の差異を定量的に判断するために使用されるパラメータを概略的に示す。
【
図15】ユーザ装置BとVTRSとの間の様々な距離の衛星高度にわたる受信時刻の差異を概略的に示す。
【
図16】VTRSと地球表面に対し傾斜された衛星との間の見通し線を概略的に示す。
【
図17】地球表面に対して傾斜された衛星のVTRSに正確に位置するユーザ装置AとVTRSから距離lに位置するユーザ装置Bとの間の受信時刻の差異を定量的に判断するために使用されるパラメータを概略的に示す。
【
図18】ユーザ装置とVTRSとの間の距離を考慮した仰角に応じた同期誤差を概略的に示す。
【
図19】ユーザ緯度にわたる特定仰角の上の少なくとも1つの衛星を見る確率とユーザ緯度にわたる特定仰角の上の少なくとも2つの衛星を見る確率とを概略的に示す。
【
図21】より小さなセル半径を有する地球の区分化を概略的に示す。
【
図22】測位信号を送信する衛星およびユーザ装置の幾何学的位置を概略的に示す。
【
図23】衛星とVTRSとの間の時間伝搬を概略的に示す。
【
図24】地球表面の上の密メッシュを形成する受動的取得モジュールを概略的に示す。
【
図25】セル間距離に等しい拡散符号系列の持続時間(左側部)とセル間距離より短い拡散符号系列の持続時間(右側部)とを概略的に示す。
【
図26】最大拡散符号系列長(左側)、最適拡散符号系列長(中央)、および不十分な拡散符号系列長(右側)の3つの状況を概略的に示す。
【
図27】符号系列カウンタの第1の実施形態を概略的に示す。
【
図28】符号系列カウンタの第2の実施形態を概略的に示す。
【
図29】実際に受信されたドップラー(5°の最小仰角)の地理的変動を概略的に示す。
【
図30】実際に受信されたドップラー(40°の最小仰角)の地理的変動を概略的に示す。
【
図31】各セル内のドップラー変動を概略的に示す。
【
図32】補償後の最大ドップラー変動を概略的に示す。
【
図33】ユーザ装置により知られた基準軌道を有する移動VTRSを概略的に示す。
【
図34】補償技術を実施するためのプラットホームとしてバルーンを概略的に示す。
【
図35】補償技術を実施するためのプラットホームとして高高度プラットホームステーションを概略的に示す。
【
図36】補償技術を実施するためのプラットホームとして地上局を概略的に示す。
【
図37】HAPSへ適用された場合の符号補償の応用を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
添付図面は部分的に概略的であり、前記本質的特性および結果は、機能、能動的原理、実施形態および技術特性を部分的に明確にするために拡大または縮小されて明確に示される。添付図面または本文内で開示されるあらゆる動作、あらゆる原理、あらゆる技術的態様、およびあらゆる特徴は、全ての可能な組み合わせが、説明される装置および方法へ割り当てられるように、すべての特許請求の範囲、本文および他の図面内の各特徴、動作の他のモード、原理、技術的改良形態、および本開示内に含まれるまたはそれをから生じる特徴と組み合わせられる/組み合わせられ得る。全ての可能な組み合わせはまた、本文内(すなわち本明細書の各セクション内、特許請求の範囲内、本文内の様々な変形、特許請求の範囲内の様々な変形、および添付図面内の様々な変形間の組み合わせ内)のすべての個別コメントの組み合わせを含み、別の特許請求の範囲の主題にされ得る。特許請求の範囲は、本開示、およびしたがって特許請求の範囲自体同士間のすべての識別された特徴の可能な組み合わせを制限しない。すべての開示された特徴は明示的にまた個々に、本明細書に開示されるすべての他の特徴と組み合わせられる。
【0047】
したがって、別の例は様々な修正および代替形式を採用することができ、そのいくつかの特定例が添付図面に示され、その後、詳細に説明されることになる。しかし、この詳細説明は別の例を、説明される特定形式に限定しない。別の例は、本開示の範囲に入るすべての修正、等価物および代替案をカバーし得る。同様な参照符号は添付図面の説明を通して同様な要素を指し、同様な要素は、同一または類似の機能を提供する一方で互いに比較された場合に同一的にまたは修正された形式で実現され得る。
【0048】
要素が別の要素に「接続」または「結合」されたものとして参照される場合、要素は直接接続または結合されてもよいし1つまたは複数の介在要素を介し接続または結合されてもよいということが理解される。2つの要素AとBが「または」を使用することにより組み合わせられれば、これは全ての可能な組み合わせ(すなわちAだけ、Bだけ、並びにAおよびB)を開示するものと理解されるべきである。同じ組み合わせの代替語法は「AとBのうちの少なくとも1つ」である。同じことは、2を超える要素の組み合わせに適用される。
【0049】
特定例だけを説明する目的のために本明細書で使用される用語は、別の例を制限するようには意図されていない。冠詞および不定冠詞の単数形式が使用され、単一要素だけを使用することが強制的であるように明示的にまたは暗黙的にのいずれでも定義されない場合はいつも、別の例もまた同じ機能を実現するために複数要素を使用し得る。同様に、機能が複数の要素を使用して実現されるものとしてその後説明される場合、別の例は、単一要素を使用することによりまたはエンティティを処理することにより同じ機能を実現し得る。用語「含む」は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、完全体、工程、動作、処理、行為、要素、および/または部品の存在を規定するが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、工程、動作、処理、行為、要素、部品、および/またはこれらのいかなるグループの存在または追加を排除するものではないということもさらに理解されるべきである。
【0050】
特に明記しない限り、すべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、例が属する従来技術のそれらの通常の意味でここでは使用される。
【0051】
次に、プラットホーム、補償技術、システム、およびユーザ装置が実施形態に関して説明されることになる。
【0052】
以下では、それに制約されること無く、具体的詳細が、本開示の完全な理解を助けるために記載される。しかし、本開示は以下に述べられる詳細とは異なり得る他の実施形態において使用され得るということは当業者にとって明らかである。
【0053】
本開示は、その宇宙部分が中周回軌道(MEO)衛星を含む全地球的航行衛星システム(GNSS)をしばしば指し得、特にMEO衛星に基づく図解を使用し得る。これは根底概念の理解を容易にする。しかし、本開示はこのタイプのMEOプラットホームへ制約されなく、低周回軌道(LEO)または静止地球軌道(GEO)衛星などの他のタイプの宇宙ベースプラットホーム、または高高度プラットホームステーション(HAPS:High Altitude Platform Station)、バルーン、またはドローンなどの任意の代替の近地上プラットホームにも適用され得る。本開示は、地上モバイルネットワークインフラストラクチャのために一般的に使用される基地局(BTS)など、または擬似衛星とも呼ばれる地文航法ビーコンなどの地上「静的」プラットホームのために提案され得る。
【0054】
図1は、航行衛星上に実装される典型的GNSS信号生成チェーンを概略的に示す。
図1のGNSS信号生成チェーンは、1つまたは複数の高安定時計(通常は原子時計)を包含するとともにチェーン(ペイロードユニットとも呼ばれる)の他の要素へ非常に安定したタイミングまたは周波数源を提供する責任を負うオンボード周波数および時間生成ユニット(FTGU:Frequency and Time Generation Unit)を含む。
【0055】
図1のGNSS信号生成チェーンはさらに、衛星により送信される航行信号を生成する責任を負うオンボード航行信号生成ユニット(NSGU:Navigation Signal Generation Unit)を含む。上述の信号生成ユニットは本明細書ではNSGUと呼ばれることがある。衛星は1つまたは複数の航行信号を同時に送信し得る。したがって、NSGUは、信号成分とも呼ばれるそれらの航行信号を生成することができる。例えば、GPSシステムの衛星は、f
carrier=1575.742MHzの基準搬送波周波数を有する周波数帯域[1559~1591MHz]内のGPS-C/A,L1C信号を生成および送信し、一方、ガリレオシステムは同じ周波数帯域内のE1-BおよびE1-C成分を生成および送信する。以下では、NSGUは特に、ベースバンドにおける対応信号成分を生成し、それらをRF周波数(例えば1575.742MHz)へアップコンバートして多重化するする責任を負う。前述の機能(BB生成、アップコンバーションおよび多重化)の物理的実施形態は、各航行システム/衛星に固有であり、独立なユニットまたは組み合わせられたユニットで行われ得、アナログ-デジタルインターフェース(デジタルアナログ変換器DACを有する)がまた、信号生成チェーンの様々な場所で発生し得る。それにもかかわらず、前述の機能はすべて一般的航行信号生成ユニット内で遭遇され得る。
【0056】
図1のGNSS信号生成チェーンはさらに、生成された航行信号成分を地上へ向かって放射する責任を負う航行アンテナを含む。アンテナ位相中心は航行信号送信の幾何学的基準点であり得る。上述の送信ユニットはNSGUおよび航行アンテナの一部であってもよいし、航行アンテナであってもよい。
【0057】
GNSS衛星の一般的信号生成チェーンはLEO、HAPSまたはドローン上に採用され得る。主要差異は、アンテナの寸法と、恐らく対応する航行信号の送信電力の範囲とであり得る。この一般的信号生成チェーンはまた、基地局(BTS)または疑似衛星において使用され得る。
【0058】
GNSSでは、ベースバンドにおける各航行信号成分の構造は、チップとも呼ばれるN個の基本2進シンボルからなる拡散系列を含む。各拡散系列はシンボルにより変調され得るが、そのようにされる必要は無い。シンボル変調が無い場合すなわち拡散系列が変調されない場合、対応するシンボル無し信号成分はパイロット成分と呼ばれる。シンボルは、(航行信号において最も遭遇されるタイプの符号化である)畳み込み符号化またはLDPCなどの所謂符号化技術を適用することにより2進データへマッピングされ得るがそのようにされる必要は無い。符号化技術は符号化性能を改善するために特に適している。拡散系列自体は、一次符号と呼ばれる第1層の拡散符号からなり得る、または代替的に、一次符号層と第2層の二次符号とを組み合わせることにより取得され得、ここでは、各一次符号系列は2次符号系列の1つのチップにより変調される。さらに、一次系列の各チップのパルス波形は、単純な2進位相シフトキーイング(BPSK:Binary Phase Shift Keying)波形、または2進オフセット搬送波(BOC:Binary-offset-Carrier)などのより複雑な波形、または明示的に説明されない別のタイプの波形の形式をとり得る。
【0059】
前者は、最も遭遇される航行信号の主要特徴および構成要素を提供する。
図2~
図4では、航行信号の3つの典型的信号構造が示される。
【0060】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図1に示す実施形態は、以下(例えば
図2~37)に説明される提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0061】
図2は、N個のチップを含む2進系列からなるとともにシンボルにより変調される単純な航行信号構造の生成を概略的に示す。チップレートf
cはN×f
0に等しい、ここで、f
0は1,023MCpに等しく、シンボルレートはfs=f
c/Nに等しい。チップ持続時間T
cはチップレートの逆数に等しい:T
c=1/f
c。
図2はN
s個の異なるシンボルエポックを表す。データレートf
dを有する2進データを基準にシンボルを生成するために使用される符号化処理もまた
図2に表される。符号化レート(CR:Coding Rate)はデータレートとシンボルレートとの比を表す(符号化レートは、例えばGPSまたはガリレオデータ信号成分により適用される典型的畳み込み符号化レートに関し1/2である)。符号化が無い場合、1つの2進データは1つの2進シンボルにより直接表される。シンボル変調が無い場合、ベースバンドにおける航行信号構造は互いに連結された一次符号の単なる繰り返しであり、パイロットまたはデータ無し成分を生じる。一次符号生成の機能ブロックとシンボルデータ生成は両方とも、FTGUにより生成されるクロック信号を供給される。
【0062】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図2に示す実施形態は、上述の(例えば
図1)または以下の(例えば
図3~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0063】
図3は、前述の拡散系列の2つの層を含むので、第1の航行信号構造の別の進化(第2の航行信号構造)を概略的に示す。N個のチップを含む一次符号は、N
sc個の二次符号を含む第2の系列のシンボルにより変調される。この場合、データレートf
dは、(N×N
sc)により除算され符号化レートCRを掛けられたチップレート(一次系列の)に等しい。
【0064】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図3に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~2)または以下の(例えば
図4~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0065】
図4は、2進系列(すなわち一次系列)のチップのパルス波形の適用を含むので第1および第2の航行信号構造の別の進化を概略的に示す。例示のために、BOC(1,1)のパルス波形が適用される。この場合、持続時間T
cの各2進チップは、持続時間T
c/2の2つの平坦部(+1の振幅を有するものと-1の振幅を有する第2のもの)によりそれぞれ置換される(このことはまた
図3の下に表される)。
【0066】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図4に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~3)または以下の(例えば
図5~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0067】
GNSS信号の生成および送信は通常、GNSS衛星の時間および経路全体にわたって連続的に行われ、このことは、「シンボルで変調された拡散系列の連結」としての航行信号のストリームが航行アンテナの位相中心から連続的に離れるということを意味する。このことは、様々なエポックt
1、t
2およびt
3における右から左への変位方向の1つの航行衛星の位置だけでなく1つの航行信号成分の拡散系列の指標1およびKを有する2つの特定チップの伝搬も描写する
図5に示される。この具体例に関し、Kは持続時間T
c=1μsを有する1023個のチップを含む拡散系列の最後のチップを表す。Kはまた、拡散系列のチップのうちの任意のものであり得る。黒色セルによりハイライトされた指標1のチップは、対応する航行信号成分の拡散系列の第1のチップを表し、これは後で「基準チップ」として使用される。K番目=1023番目チップは灰色セルによりハイライトされる。
図5では、(各エポックにおいて)衛星から地球中心に向かう信号伝播の方向も示される。エポックt
1、t
2およびt
3が近い(数秒で表わされる差である)場合、信号伝播の対応方向はほぼ同一直線上であり得る。しかし、地球半径に対する円軌道の小さな半径(この例示的図解における)のおかげで対応方向は「平行」でない。これは、この例示的図解に使用される寸法の結果に過ぎない。さらに、エポックt
1、t
2およびt
3の第1のチップの位置が
図5内に示される。これは、K番目のチップが送信される場合の実際の衛星位置は、第1番目のチップが衛星のトラック沿い速度に依存する距離により1023個のチップ(等価的に1ms)早く送信された場合の衛星位置に対して変化したかもしれないということを意味する。例えば、26400kmの半長軸(SMA:Semi-Major Axis)を有するGPS衛星に関しては、トラック沿い速度は次式により与えられる:
【数1】
【0068】
fc=1MCpsのチップレート(すなわち等価的にTc=1μs)のチップ持続時間を仮定すると、衛星は1チップの送信中に3.9mmだけ移動したかもしれない。1023個のチップ(1番目と1023番目チップ間の送信に対応する)すなわち1msに関して、前述の距離は3.9mになる。同様に、800km(7180kmのSMA)の高度におけるLEO衛星に関しては、LEO衛星は1チップの送信中に7.45mmだけ、そして1023個のチップの拡散系列の送信中に7.45mだけ移動したかもしれない。単純化の目的のために、衛星はK番目=1023番目チップを送信する際に同じ位置にいると仮定される。さらに、地球自転に起因するサニャック効果はこの単純化の理由で考慮されない。
【0069】
さらに、エポックt1~t2中に、2つの追加チップ(K+1およびK+2)が衛星から送信されたかもしれない。同様に、t2~t3の間に、2つの追加チップ(K+3およびK+4)が衛星から送信されたかもしれない。したがって、エポック間に送信される追加チップの正確な数は衛星軌道(速度、高度)およびこの仮定では秒で表されるエポック(t1~t2)または(t2~t3)間の間隔時間に依存する。
【0070】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図5に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~4)または以下の(例えば
図6~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0071】
図6は、衛星アンテナ位相中心に対する様々なチップの伝搬を概略的に示す。この別の表現は
図5の拡大図である。
図5に加えて、各エポックにおける衛星と地球中心とを結ぶ線と地球表面自体との交点もこの交点周囲の円と共に表される。この例に関し、チップ1の立上りエッジは、エポックt
1の第1番目エポックにおける衛星と地球中心とを結ぶ線と地球表面との交点(「位置A」で示す)に到達する。
【0072】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図6に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~5)または以下の(例えば
図7~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0073】
図7と
図8(拡大図)は、
図5と
図6に補足して、衛星アンテナ位相中心に対する全ての方向の様々なチップの伝搬を概略的に示す。このような伝搬は、媒体内の伝搬が等方であると考えられるので、破線の円弧により象徴される。それらの円弧は、アンテナ位相中心を中心としており、所与のエポックにおけるアンテナ位相中心とチップの立上りエッジとの間の距離に等しい半径を有する。興味ある1つの特定方向はアンテナの位相中心と位置Aとの間の方向である。仮定された幾何学形状に関して、エポックt
2またはエポックt
3において「位置A」を通過したチップの数は、衛星軌道(例えば高度)、チップレートだけでなく特定エポックt
2またはt
3における位置Aとそれらの衛星との間の距離などの幾何学的パラメータにも依存する。これは、エポックt
1における拡散系列の第1のチップの受信に起因する。
図8では、11個のチップが、エポックt
1における第1のチップの受信以来位置Aにおいてエポックt
2に通過したかもしれない。
【0074】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図7、8に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~6)または以下の(例えば
図9~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0075】
1つまたは複数の態様では、航行信号成分および特に内在チップストリームの送信は、後者が特定位置および特定時刻エポックに到達するようなやり方で訓練され得る。これを
図9に示す。
図9は、航行信号成分の遅延された送信を概略的に示す。航行信号成分の送信は、航行信号成分の第1のチップの立上りエッジが所与の基準時刻に「位置A」に到達するようなやり方で「遅延」され得る。これを実現するために、所謂「符号補償」がエポックt
2前に航行信号生成ユニットへ適用され得る。対応する「符号補償」もまた
図9に表される。符号補償は、基準エポックにおける衛星位置と位置Aとの間の方向へ投影される未補償拡散系列(灰色セル)の「チップK」と補償された拡散系列の「チップK」との間の距離と理解され得る。対応する符号補償は、
図8にも表されるエポックt
1における第1のチップの受信以来エポックt
2において「位置A」を通過したチップの数と同じ値を有する。同様な符号補償がまた、航行信号成分の第1番目チップの立上りエッジが到達するということを保証するために
図9に示すようにエポックt
3(t
2の代わりに)において「位置A」に表され得る。
【0076】
図9は、エポックt
1、t
2またはt
3におけるチップ1の立上りエッジの受信を保証するために適用されるべき補償を表す。
【0077】
エポックt1に関して、第1のチップの立上りエッジが位置Aに既に到達しているので、対応する符号補償を適用することは必要ではない。エポックt2およびt3に関して、第1のチップの立上りエッジが位置Aに到達することを保証するために対応符号補償を適用することが必要である。
【0078】
前の説明では、第1のチップの立上りエッジは符号補償のために選択される。代替的に、第1のチップの立下りエッジを考慮することが可能である。さらに、拡散系列の第1のチップは、衛星上に適用される符号補償を導出するために使用される。拡散系列の別のチップは、その定義が拡散系列内で曖昧でない限り「基準チップ」として適所に使用される可能性がある。これは、定期的でない拡散系列(暗号化された拡散系列のケース)に特に当てはまる。
【0079】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図9に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~8)または以下の(例えば
図10~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0080】
図10は、符号補償の原理を概略的に(より広いスケールで)示す。符号補償の概念は特定地上位置の受信時の同期を保証することである。「基準チップ」の立上りエッジが所与エポックに受信される地上の正確な位置は仮想時間基準局(VTRS)と呼ばれ得る。いかなる「物理的」基準局(すなわち受信器、施設等)もVTRSの位置に位置する必要は無い。さらに、「基準チップ」の立上りエッジがVTRSにおいて受信されるエポックは基準エポックt
ref,VTRSと呼ばれ得る。当該呼称が
図11に導入される。
【0081】
航行信号取得モードと追跡モードの両方では、受信器は通常、受信信号とそのレプリカとの間の相関を計算する。レプリカは、同じ拡散系列により生成され、実際の符号遅延τ
actを推定する所謂符号遅延推定τ
estによりオフセットされ、実際の(または見かけの)搬送波周波数f
carrier,actおよび搬送波位相推定τ
estを推定する推定搬送波周波数f
carrier,estからなる指数関数により乗算される:
【数2】
【0082】
前者の表現では、
【数3】
はN
cチップからなる拡散符号を表す。各チップ値はc
iに等しく、パルス波形p
c(例えばBPSKまたはBOC)により変調される。さらに、関数Π
Tは、間隔[0,T]内では1でありその外では0である所謂「時間ドア(temporal door)」である。
【0083】
以下の区別は取得工程と追跡処理工程との間に適用する。取得の際、ユーザ装置は、先験的に存在しなければ未知である符号遅延(符号遅延推定τestを有する)と搬送波周波数(搬送波周波数推定fcarrier,estを有する)との両方の粗推定を提供することを目的としている。実際の搬送波周波数fcarrier,actの正確な推定無しには、搬送波位相τestは推定されない。受信器(例えばユーザ装置)は、送信時の基準搬送波周波数fcarrierを知っているが衛星とユーザ装置間の動力学特性(速度)に起因する追加ドップラー(通常は-5KHz~+5KHzの範囲)もローカルクロック安定性に起因する実際の周波数誤差オフセット(通常は-1KHz~+1KHzの範囲)も知らない。したがって、fcarrier,estは[fcarrier+fDoppler,est]として表され得る。ここで、fDoppler,estはドップラー推定とローカルクロック周波数推定との両方を包含する。取得モードでは、符号遅延推定誤差(すなわちτestの自乗平均(r.m.s.))の精度は通常はチップの一定割合であり:1/2チップ(Tc/2)または1/4チップ(Tc/4)毎に離間された符号遅延仮説が通常、試験される。同様に、見かけドップラー推定誤差(すなわちfcarrier,estのr.m.s.)の精度はヘルツ/10で表され、ドップラー仮説同士は通常は10~50Hzで離間される。符号およびドップラー仮説の精度に加えて、様々な取得モードを導入することも必要かもしれない。所謂コールド(cold)取得モードでは、ユーザ装置はその位置およびそのローカル時間に関する先験的知識を有しない。これは、ユーザ装置が全ての可能なドップラーオフセットだけでなく拡散符号系列に対応する符号オフセットも試験する必要があるということを意味する。次にGPS C/A信号成分に関する1023の拡散符号系列(ガリレオE1-BまたはE1-C信号成分に関する4096チップそれぞれ)を仮定すると、1/2チップ離間符号仮説の1023×2(4096×2それぞれ)が試験され得る。ウォーム(warm)またはホット(hot)取得モードでは、受信器は、所謂年鑑内に提供される送信航行衛星の位置と共にその位置および時間に関するより良い知識を有する。限定数の符号およびドップラー仮説だけが試験され得る。
【0084】
追跡の際、ユーザ装置は、例えば周波数ロックループ(FLL:Frequency Lock Loop)により実際の搬送波周波数fcarrier,actの非常に良好な推定fcarrier,est(すなわち、ドップラー効果を含む)と例えば遅延ロックループ(DLL:Delay Lock Loop)により符号遅延の非常に良好な推定τestとを既に得ている。取得することと比較して、符号遅延推定誤差の精度は大きさの程度としてメートル(または等価的にTc/100)で表される。同様に、ドップラー推定誤差はHzで表される。追跡モードでは、例えば位相ロックループ(PLL)またはコスタス(Costas)ループにより搬送波位相φest(取得段階と反対に)を推定することが可能でありかつ必要である。搬送波位相推定は、拡散系列へ変調されるシンボルまたはデータを判断するために、または位相推定がユーザ装置の非常に精密な位置(数デシメートルの精度)を提供するために符号推定との組み合わせで使用される非常に精密な測位のために使用される。
【0085】
取得段階と追跡段階の両方に関して、ユーザ装置は、受信された信号と(追跡に適用可能な)符号遅延、搬送波周波数および搬送波位相の推定により生成されるレプリカとの間の相関を計算し得る:
【数4】
【0086】
上記式では:
-rrx(t)は、簡単のために本明細書では単一航行信号成分に帰着される受信された航行信号を表す;
-rrep(t)は、ユーザ装置において生成されるレプリカを表す;
-Tintは、通常は拡散符号期間(または拡散符号期間の一定割合)に等しくとられるコヒーレント積分時間または符号期間(データ変調されたGNSS信号に適用可能な)を表す;
-Δτ、Δfcarrier、およびΔφはそれぞれ、推定された符号遅延(τest)と実際の符号遅延(τact)、推定された搬送波周波数(fcarrier,est)と実際の搬送波周波数(fcarrier,act)、および推定された搬送波位相(φest)と実際の搬送波位相(φact)との差異としての符号、実際の搬送波周波数、および搬送波位相の推定誤差を表す。
【0087】
符号、搬送波周波数、および搬送波位相推定の「粒度」は上に説明したように取得または追跡段階に依存し得る。
【0088】
取得段階では、受信器は、符号とドップラー仮説の対毎に評価される絶対相関関数の2乗(搬送波位相に対する依存性をこのように抑制する)を計算し得、基本電力検出器を生じる。検出性能を改善するために、様々な基本電力検出器が、非コヒーレントに追加され得、すべては同じ符号およびドップラー仮説に関して計算され、総電力検出器を生じる。
【0089】
追跡段階では、受信器は、推定された符号遅延τest周囲の様々な符号オフセットの相関関数を計算し得る。推定された符号遅延(τest)未満の符号オフセット例えばτest-Tc/2および/またはτest-Tc/4および/またはτest-Tc/U(Uは整数)等々に関して、対応する相関関数は「早期(Early)相関関数」と呼ばれ、「早期相関チャネル」とも呼ばれる。推定された符号遅延(τest)を越える符号オフセット例えばτest+Tc/2および/またはτest+Tc/4および/またはτest+Tc/U(Uは整数)等々に関して、対応する相関関数は「後期(Late)相関関数」と呼ばれ「後期相関チャネル」とも呼ばれる。次に、受信器は、例えば符号遅延ロックループ(DLL)内で符号遅延τestを推定するために役立ち得る所謂弁別器出力を生成するために対応早期相関関数と後期相関関数とを組み合わせ得る。符号遅延推定τestにより計算される所謂「プロンプト(Prompt)相関チャネル」は、航行信号成分へ変調されるシンボルの極性を取り出すために使用される、これは復調技術によりデータ情報を導出するために後で使用される。前に説明したように、「プロンプト相関チャネル」はまた、例えばatan演算子をプロンプト相関チャネルの虚部と実部との比へ適用することにより搬送波位相φestを推定するために役立ち得る:φest=atan(Imag(RPrompt)/Real(RPrompt))、これはコスタスループにより適用される搬送波位相推定子に対応する(本文書において開示されない他のアルゴリズムが、搬送波位相を取り出すために使用され得る)。
【0090】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図10、11に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~9)または以下の(例えば
図12~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0091】
図12、
図13および
図16はVTRSの近傍のユーザ装置を概略的に示す。
図12では、VTRSと衛星との間の見通し線(LoS)は地球表面に接している。
図13では、LoSは地球表面に対して完全に直交する。
図16では、LoSは地球表面に対して傾く。さらに、各図で、チップの立上りエッジに対応する波頭は円弧により表される。
【0092】
図12では、様々なユーザ装置がVTRSの近傍に表される。最初に、「ユーザ装置A」がVTRSに正確に位置すると仮定される。対応するユーザ装置は、τ
est=0の場合、「未シフト」拡散系列
【数5】
により生成されるレプリカr
rep(t)との相関を計算し得る。これは、チップストリームが拡散系列の第1番目のチップ1から開始するように理解され得る。さらに、このレプリカは受信信号が相関エンジンに連続的に入る間不変のままであり、これにより様々な符号仮説をサンプルレートで試験することを可能にする。このタイプの取得技術はまた、ユーザ装置は「受信信号が取得モジュール内で準備された未シフト拡散系列と同期されるようになる」ことを「待つ」ので、「受動的取得」と呼ばれる。このようにして生成された相関関数がピークに達すると、これは、受信信号r
rx(t)の拡散系列の立上りエッジがVTRS(すなわちユーザ装置)にそしてt
ref,VTRSエポックに正確に到達するということを意味する。これは、システム時間が、この事象に基づきシステム時間を導出し得るユーザ装置へ提供または「転送」された、ということを意味する。この「理想」ケースに対する強い制限は、ユーザ装置が通常、その正確な位置を特にコールド取得において無視するということである。
【0093】
本開示は、受動的取得技術のケースに限定されなく、能動的取得技術にも役立ち得る。典型的能動的取得技術では、ユーザ装置は、レプリカを不変なままにしないが、試験される符号およびドップラー仮説に従って様々なレプリカを生成し、この新たに生成されたレプリカと完全な新しい一群の受信信号サンプルとを関連付ける。その結果は、受動的取得技術と比較すると、符号およびドップラー仮説を試験するためのより低いレートであるがより低い複雑性である。能動的取得を適用する際、受動的取得の対応航行信号の始めよりむしろ、補償されて送信された航行信号の一部分を取得することが可能である。航行信号のこの部分が拡散符号カウンタなどの時間タグ解決策を使用することによりその始まりに関係付けられ得るということを考慮すると、または非常に長い拡散系列を考慮すると、この代替の時間転送手法を介しユーザ装置をシステム時間へ同期させることも可能である。
【0094】
さらに、「ユーザ装置B」は「1チップ距離」(例えば、GPS C/A信号の1μsに等しいチップ期間T
cを考慮すれば300m)に位置しLoSは地球表面に接する(
図12)。「ユーザ装置B」がVTRSから300mに位置し、VTRSと衛星との間に位置すれば、「ユーザ装置B」とVTRS間の受信時刻の差異は、VTRSと「ユーザ装置B」間の距離に対応し、秒の代数値として表され得る。これは、未シフト拡散系列により計算される相関ピークが「絶対」時間スケール上でt
ref,VTRS-T
cに観測され得るということを意味する。ユーザ装置Bが、VTRSから「1チップ距離」離れ、かつ衛星に対して反対側に位置すれば、相関ピークは「絶対」時間スケール上でt
ref,VTRS+T
cに観測され得る。これは、
図12に示すようなユーザ装置の様々な位置に関し繰り返され得る。したがって、この図はまた、基準チップの立上りエッジに対応する波頭が、t
ref,VTRSを表す所謂「基準等時線(Reference Iso-chrone)」を定義するということを示す。「基準等時線」から1チップ進んだまたは遅れて見られる任意の波頭はVTRSを基準にt
ref,VTRSに対し進んだまたは遅れた1μsに対応し得る。
【0095】
図13では、衛星はVTRSの天頂に正確に位置する。
図13では、VTRSに正確に位置する「ユーザ装置A」および「ユーザ装置A」(すなわちVTRS)に対して同じ位置に位置する「ユーザ装置B」は前の
図12のものと同じであり得る。「ユーザ装置A」および「ユーザ装置B」はそれぞれまた、「未シフト」拡散系列
【数6】
により生成されるレプリカr
rep(t)を用意する(本明細書では受動的取得戦略を考慮する)。
図12に対する主要差異は、VTRSと衛星間の見通し線の非常に高い傾斜のおかげで、VTRS(すなわちユーザ装置A)および「ユーザ装置B」において基準チップに対応する波頭の受信時刻の差異は
図12の場合よりもはるかに小さいかもしれない。受信時刻のこの差異は、相関関数がユーザ装置Aにおいてピークに達しかつ相関関数がユーザ装置Bにおいてピークに達するときの時刻の差異(絶対時間スケール上の)として測定され得る。受信時刻に対応する差異は衛星高度に応じ、ユーザ装置の天頂に位置する衛星高度が高ければ高いほど、受信時刻の差異はより小さい。
【0096】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図12、13に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~11)または以下の(例えば
図14~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0097】
図14は、衛星がVTRSの天頂にあるときの特定ケースの、VTRSに正確に位置するユーザ装置AとVTRSから距離lに位置するユーザ装置Bとの間の受信時刻の差異を定量的に判断するために使用されるパラメータを概略的に示す。特に、Lは、衛星と半径Rの完全な球としてモデル化された地球の中心との間の距離を表す。衛星とVTRSにおよび衛星の天底に位置するユーザ装置Aとの間の距離はPである。VTRSとユーザ装置Bとの間の距離はlで表される。QおよびSは、衛星、地球中心、およびユーザ装置Bにより定義される面内のVTRSの左(S)側または右(Q)側のいずれかに位置する時の衛星とユーザ装置B間の距離を表す。対称的構成のおかげで、これは衛星がVTRSの天頂にある(Q=S)場合に適用可能である。
【0098】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図14に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~13)または以下の(例えば
図15~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0099】
図15は、ユーザ装置BとVTRSとの間の様々な距離の衛星高度にわたる受信時刻の差異を概略的に示す。
図14において説明されたモデルに基づき、
図15は、GNSSシステムに対応する典型的衛星高度(20E3km~25E3km)に関し、受信時刻の差異は150km以下の距離lでは8μs未満であるということを示す。受信時刻のこの差異は時間転送(システム時間と同期した)の最大誤差に対応する。この差異は300kmでは25μsまで増加し、1000kmでは300μsに達する。受信時刻の差異は、GEO衛星同士の同程度の時刻を示すが、衛星とVTRS(例えばユーザ装置A)との間のより長い距離のおかげで依然として若干小さい。GEO衛星の特定ケースに関しては、GEO衛星の天底におけるユーザが赤道面に属するということに言及する価値がある。反対に、LEO衛星に関して、受信時刻の差異は、LEO衛星とVTRS(例えばユーザ装置A)との間のより短い距離の直接的結果として増加する。この場合、「地球表面平坦性」の主仮定はユーザ装置BとVTRS(例えばユーザ装置A)間のより短い距離lに当てはまる。HAPS、成層圏バルーンまたはドローンなどの地上により近い他のプラットホームに関して、「地球表面平坦性」条件を満足する距離lはさらに短くなる。それにもかかわらず、提案された方式は、各HAPS、バルーンまたはドローンプラットホームのすぐ下のより小さな表面領域内で提供されるサービスに依然として適用され得る。
【0100】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図15に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~14)または以下の(例えば
図16~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0101】
図16は、衛星との見通し線が地球表面に対して傾いたときの状況を説明する。上の図と同様に、「ユーザ装置A」はVTRSに正確に位置し、「ユーザ装置B」は「ユーザ装置A」(すなわちVTRS)に対して同じ位置に位置する。
図14と同様に、VTRSに正確に位置するユーザ装置AとVTRSから距離lに位置するユーザ装置Bとの間の受信の差異を定量的に判断するために使用されるパラメータが
図17に表される。特に重要なのは、VTRSに対するユーザ装置Bの相対位置に基づく特定幾何学的構成の時間転送誤差に対応する(S-Q)および(S-P)によりそれぞれ識別される距離である。これらのパラメータに基づき、
図18は、ユーザ装置とVTRS間の距離を考慮した仰角に応じた同期誤差を概略的に示す。ここで、以下の距離が考慮される:300m、3km、30km、150km、192.96km、380.65kmおよび1500km。定量的評価のために、中周回軌道(MEO)軌道における典型的GNSSシステムの軌道パラメータが考察される。
図18の黒色曲線は、ユーザ装置がVTRSと衛星との間に位置する場合(ケース「S-P」)の状況の対応し、一方、灰色曲線はVTRSがユーザ装置と衛星との間に位置する場合(ケース「Q-P」)の状況に対応する。凡例では、衛星が、VTRSの天頂にある(VTRSから90°仰角)場合、または地上に接する(VTRSからの0°仰角)場合、最後に、VTRSからの50°仰角を示す場合の最大同期誤差も示される。VTRSからの衛星仰角が0°である場合、同期誤差はユーザ装置とVTRS間の距離lに正確に対応し、これは
図12のケースに対応する。同期誤差は衛星がVTRSの天頂にある場合最小であり、これは
図13のケースに対応する。192.96km(380.65kmそれぞれ)に等しい距離lは、±0.5ms(それぞれ±1ms)の同期誤差に対応するので、動作点を表す。
【0102】
「典型的GNSSコンステレーションに関して、前述の確率が90%から下方へ低下する25°未満の緯度に位置するユーザおよび前述の確率がまた90%から下方へ低下する80°を越えるユーザを除いた任意のユーザとしたがってVTRSとは50°以下の仰角により100%確率で衛星を見る」ということが示されるので、VTRSに対して50°の仰角の特別なケースが選択された。特定仰角を越える2つの衛星を見る確率も
図19に提示される。ここでは、2つの衛星を見る確率ははるかに小さくなる。
【0103】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図16、17、18、19に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~15)または以下の(例えば
図20~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0104】
図20は、380.65kmの半径と2×380.65km=761.3kmのセル中心間の距離とを有するセルを有する地球の区分化を表す。各VTRSは半径380.65kmを有する「セル」の中心にある。この値は、VTRSから離れたいかなるユーザも±0.5msの誤差を有するシステム時間を復元することができるということを示す前述の計算に関して選択される。P=1431個のこのようなセルが存在するということが示され得る。Pは地球表面をカバーするセルの数を表す。さらに、
図20は、50°の仰角マスキング角度を考慮したQ=24個のGNSS衛星のそれぞれのフットプリントを示す。さらに、QはGNSSの衛星の数を表す。GNSS衛星の主要軌道特性は26400kmの半長軸および55度の傾斜である。ここでは、様々な灰色が、24個のフットプリントのそれぞれを表すために使用される。例えば、80個のVTRSとしたがってセルとは、50°の最小仰角を有する衛星の可視フットプリントの一部として定義され得る。
【0105】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図20に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~19)または以下の(例えば
図21~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0106】
図21は、380.65kmの代わりに192.96kmのセル半径の同様な表現を表す。ここで、このセルに属する各ユーザは±1msの最大同期誤差を有することになる。この場合、セルの数はP=5408セルまで増加し、そして平均で615個のセルが仰角50度を有する可視フットプリントに属する。
【0107】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図21に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~20)または以下の(例えば
図22~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0108】
図22は、測位信号を送信する衛星の幾何学的位置、ユーザ装置(本明細書ではユーザ装置とも呼ばれる)の幾何学的位置、および例示的LOSの疑似範囲への様々な寄与を概略的に示す。本明細書では、同様な表記が適用される(非特許文献1)を参照する。これは特に、
図22において適用され以下のように説明される以下のパラメータおよび変数に関係する:
-
【数7】
は、衛星とユーザ装置間の真の(「物理的」)距離を表す;
-t
sはシステム時間スケールで表わされる送信の時間を表す;
-t
rはシステム時間スケールで表わされる受信の時間を表す;
-τ
sは衛星ローカル時間スケールとシステム時間スケール間のクロックオフセットを表し、送信時に評価される。慣例により、クロックオフセットはクロックが時間スケールに対して遅延された場合は正である;
-τ
rは、受信器ローカル時間スケールとシステム時間スケール間のクロックオフセットを表し、受信時に評価される;
-
【数8】
は伝播遅延への電離層の寄与を表す;
-
【数9】
は伝播遅延への対流圏の寄与を表す;
-
【数10】
は伝播遅延推定へのローカルマルチパスの寄与を表す;
-
【数11】
は伝播遅延推定へのローカル無線周波妨害(RFI:Radio Frequency Interference)の寄与を表す;
-
【数12】
は伝播遅延推定への熱雑音の寄与を表す;
-[x
r y
r z
r]
Tは推定されるユーザ装置の座標ベクトルを表す;
-[x
s y
s z
s]
Tは真の衛星位置の座標ベクトルを表す;
-
【数13】
は、航行システムの集中処理施設において計算され航行信号へ符号化されるモデルに基づき通常は計算(推定)される予測衛星位置の座標ベクトルを表す。
【0109】
代替的に、予測衛星位置はまた、別の航行サービスオペレータにより提供されインターネットなどの別の手段を介しユーザ装置に利用可能にされるモデルに基づき計算され得る。代替的に、予測された衛星位置はまた、軌道伝搬関数に基づきユーザ装置自体により生成され得る。
【0110】
「理想的」衛星および受信器/ユーザ装置クロック(ドリフト無し)を仮定すると、衛星とユーザ装置間の距離は次式により与えられる:
【数14】
ここで、c
0は光速度を表す。
【0111】
衛星およびユーザ装置におけるクロックオフセットのおかげで、追加摂動寄与の無い疑似範囲(PR:pseudo-range)表現は、次のように前の式により導出され得る:
【数15】
【0112】
真の衛星・ツー・ユーザ装置距離は次式のように表され得る。
【数16】
【0113】
(式2)は、疑似範囲測定へのすべての他の寄与を考慮すると次のように書き換えられ得る:
【数17】
【0114】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図22に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~21)または以下の(例えば
図23~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0115】
図23は衛星とVTRS間の時間伝搬を概略的に示す。基準局は仮想的であり、以下の同様な疑似範囲測定パラメータが表され得る:
-VTRSにおけるマルチパスの寄与
【数18】
と熱雑音の寄与
【数19】
τ
rとの両方は本明細書では適用されない;
-VTRSにおける時間オフセットτ
VTRSは零であると仮定される、このことは「VTRSは、VTRSがシステム時間を反映する(ドリフト無しに)ので測距信号の受信時のシステム時間と正確に同期される」ということを意味する。
【0116】
遅延への電離層の寄与
【数20】
および対流圏の寄与
【数21】
に関して、2つの選択肢が提供される。
【0117】
第1の選択肢は、両方の寄与がVTRSにおける符号補償の一部ではないということを考慮する。この場合、ユーザ装置は、衛星により送信されるとともに符号補償を含む測距信号と同期する際に両方の影響からなる「絶対」誤差の影響を受ける。それにもかかわらず、ユーザ側における電離層影響(例えばNecquickモデル)と対流圏影響(天頂静水圧遅延および天頂湿潤遅延による)との両方の影響の推定モデルの適用は対応寄与の低下を可能にする。
【0118】
第2の選択肢は、両方の寄与がVTRSにおける符号補償の一部であるということを考慮する。これは「VTRS自体に位置するユーザ装置Aは、電離層遅延と対流圏遅延との両方が補償において既に考慮されているのでこれらを考慮(または補正)する必要が無い」ということを意味する。VTRSに正確に位置しないユーザ装置Bに関して、同期誤差はユーザ装置Bにおける実際の電離層/対流圏遅延とVTRSにおける電離層/対流圏遅間の差の和に等しい。ユーザ装置BがVTRSから離れれば離れるほどこれらの影響は大きくなる。
【0119】
これらの仮定に基づき、VTRSにおける疑似範囲の表現は以下のようになる:
選択肢1、対流圏遅延および電離層遅延(VTRSにおける)がVTRSにおいて補償されなければ:
【数22】
選択肢2、対流圏遅延および電離層遅延(VTRSにおける)がVTRSにおいて補償されれば:
【数23】
【0120】
これらの導入作業に基づき、符号補償を導出するために使用される方法が提示され得る。いかなる電離層および対流圏寄与も仮定しなければ、拡散系列の第1のチップは、この第1のチップが受信基準時刻
【数24】
においてVTRSに達するために衛星アンテナ位相中心を時刻
【数25】
に離れる必要がある。ここで、
【数26】
はシステム時間基準で表される。衛星ローカル時間(すなわちクロック)とシステム時間基準との間のクロックオフセットτ
sのおかげで、拡散系列の第1のチップは次の時刻t
s
local
【数27】
に離れる必要がある。
ここで、
【数28】
はローカルシステム時間基準で表される。同様に、電離層寄与および対流圏寄与を考慮する際、拡散系列の第1のチップは、システム時間基準で表された場合の次の時刻
【数29】
およびローカルシステム時間基準で表された次の時刻に離れる必要がる。
【数30】
クロックオフセットτ
sは、後の同報通信のために衛星において利用可能であるユーザ航行メッセージから直接衛星によりアクセスされる、または、専用通信リンクにより衛星へ提供される。
【0121】
次に、符号補償τ
compは、送信のエポック(t
s
globalまたはt
s
local)とt
VTRS,refのVTRSにおける送信基準時刻との間の遅延に対応する。符号補償は、拡散系列の第1のチップがt
s
global(GNSSシステム時間で表されれば)またはt
s
local(衛星ローカル時間で表されれば)におけるアンテナ位相中心を離れる場合に拡散系列の第1のチップがt
VTRS,refにVTRSに到達するように拡散系列の送信をトリガするのに役立つ。この後のケースは、衛星が拡散系列の送信をトリガするためにそのローカル時間を使用することになるのでより現実的な実施形態に対応することになる。したがって、符号補償は、物理的遅延τ
compを実際の衛星クロックオフセットτ
csへ適用するように構成される。式(式5)および(式6)に基づき、対応符号補償は(式7)に等しい。電離層遅延および対流圏遅延が補償される場合(式8)。電離層および対流圏遅延が補償されない場合。
【数31】
【0122】
以下では、測定された疑似範囲は、符号補償により生成される航行信号を追跡するユーザ装置のために導出される。ユーザーレベルにおける符号擬似距離の一般的表現(式4)は、符号補償が適用されると、次式となる:
【数32】
【0123】
対流圏および電離層遅延を包含しない符号補償を適用する((式8)を参照)と、前の式は次式となる:
【数33】
【0124】
対流圏および電離層遅延((式7)を参照)を包含する符号補償を適用すると、前の式は次式となる:
【数34】
【0125】
(式10)および(式11)から、符号補償は、衛星クロックオフセットτ
sが符号補償により消えるのでそれをユーザへ提供することを回避できるようにするということが観察され得る。さらに、ユーザ擬似距離へのローカルおよび大気寄与を無視すると、前の表現は次式に帰着する
【数35】
【0126】
この表現は、衛星により送信された際のVTRSとユーザ装置との間の到達の時間差(TDOA:Time Difference Of Arrival)に対応する。
【0127】
符号補償の計算に関する別の選択肢は、衛星クロックオフセットτ
sと対流圏および電離層遅延とのいずれも補償しなく、以下に説明されるように衛星とVTRSとの間の伝播時間だけを考慮することからなる。
【数36】
【0128】
この場合、ユーザ装置の測定された疑似範囲の表現は次式のようになる:
【数37】
【0129】
1つまたは複数の態様において、符号取得探索は、
図20と
図21に示すようにセル再区分が地球表面を一様にカバーするということと特定拡散系列がセル衛星の対毎に割り当てられるということとを考慮することにより低減され得る。これは、「識別子Sat-ID-qを有する衛星が識別子Cell-ID-pを有するセルへ航行信号成分を送信する場合、当該信号は特定拡散系列PRN
Sat-ID-q,Cell-ID-pにより変調される」ということを意味する。この拡散系列PRN
Sat-ID-q,Cell-ID-p1は、識別子Sat-ID-qを有する衛星により識別子セルID-p2を有するセルに向かって送信される航行信号成分を変調するために使用される拡散系列PRN
Sat-ID-q,Cell-ID-p2とは異なる。拡散系列PRN
Sat-ID-q1,Cell-ID-pは、Sat-ID-q2を有する衛星により識別子Cell-ID-pを有するセルに向かって送信される航行信号成分を変調するために使用される拡散系列PRN
Sat-ID-q2,Cell-ID-pとは異なり得るが、そうである必要は無い。したがって、P個のセルとQ個の衛星との間の拡散符号割り振りのための参照テーブルが存在する。「従来の衛星航行システムに関しては、単一拡散系列が各航行信号成分の衛星毎に割り当てられる」ということが思い出される。Sat-ID-qを有する衛星により送信される信号の取得のための1つの候補実施形態は、p番目セルおよびq番目衛星に対応する未シフト拡散系列PRN
Sat-ID-q,Cell-ID-pに基づくレプリカをそれぞれが有するp個の受動的取得モジュールで作られた取得バンクである。同様なアーキテクチャは、PRN
Sat-ID-q,Cell-ID-pのそれぞれに対応する異なる一組の符号およびドップラー仮説をそれぞれが試験する一揃いの能動的取得モジュールであり得る。
【0130】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図23に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~22)または以下の(例えば
図24~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0131】
ユーザ装置が地球表面上のその粗位置に関する先験的知識(すなわちユーザ装置が場合によってはその一部であり得る候補セル)を有すれば、この先験的知識に属するセルに対応する取得モジュールのサブセットだけが必要である。地球表面の上の高濃度メッシュを形成する13個のセルに対応する13の個々の受動的取得モジュールを含む対応する取得バンクの高レベル説明が
図24に示される。衛星Sat-ID-qにより送信された航行信号成分を受信すると、Q個のうちのただ1つのモジュールが相関ピークを経験する。
図24のユーザ装置はセルID-10を有するセルに属し、受動的取得モジュール10の出力がピークを経験する。受動的取得モジュールの1つの出力において観察されるピークが対応セル内のユーザ装置位置に関する情報を既に提供しているので、拡散符号のセルへの割り振りにより全体の時間不確定性を低減することが可能になる。この特徴は、以下に説明されるように拡散符号系列の長さを寸法決めすることを可能にする。
【0132】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図24に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~23)または以下の(例えば
図25~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0133】
図12において、地球表面(正確に)に接する衛星のVTRS(すなわちユーザ装置A)と「ユーザ装置B」における基準チップに対応する波面の受信時刻の差異は、VTRSとユーザ装置Bとの間の距離(時間の単位で表されると)に対応する。実際、拡散系列は、セル中心に中心を有する円形領域を規定し、半径は拡散符号期間(メートルで表されると)に等しい。以下では、この領域は「符号取得探索領域・ツー・Cell-ID-q」と呼ばれる。コールド取得では(すなわちユーザ装置がその位置に関する先験知識を有しない場合)、精査される最大時間不確定性は拡散符号系列長さに等しい。実際、時間転送は近隣領域の中心により(恐らく対応t
Ref,VTRS*の別の基準時刻により)実現され得ると考えられる(ここで、VTRS*は近隣セルの中心のVTRSを表す)。したがって、最大時間不確定性と内在拡散系列期間は、2つの近隣セル間の距離(セル間距離とも呼ばれる)だけでなく地球表面を十分に「カバー」する符号取得探索領域の能力にも依存する。最大で、拡散符号系列の持続時間はセル間距離に等しい(時間の単位で表されると)。これは、最大重畳が近隣セルへ関連付けられた取得探索領域同士間に適用される
図25の左側部分に表される。例えば、380.65km(
図20のように)のセル間距離とRc=1MCpsすなわちT
c=1μsまたは300mのチップレートを仮定すると、内在拡散系列の長さは1268個のチップとなる。
図25における右側部分では、拡散符号長はメートルで表されると、セル間距離より小さい。同じチップレートに関して、これは例えば1023個のチップの拡散符号長に対応する。これは、両方の近隣セルへ関連付けられた取得探索領域間のより小さな重畳を生じる。これは、符号長が十分ではないかもしれないということを意味する。
【0134】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図25に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~24)または以下の(例えば
図26~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0135】
最後に、最小および最適拡散符号長は、すべてのセルへ関連付けられた取得探索領域の重畳が全地球表面をカバーするということを保証する必要があるかもしれない。このとき、これは最適符号長に対応し得る。これは
図26の中央部分に示される。
図26は、左側部分に、最大拡散符号系列長さに対応する状況を、中央部分に、最適拡散符号系列長さに対応する状況を、そして右側の部分に、拡散符号系列長さが十分でない状況を示す。後者の場合、ユーザ装置は任意の取得探索領域の一部ではない(その取得性能が強く劣化させられることを意味する)ということが観察され得る。
【0136】
拡散符号長がセル間距離に基づき最適に寸法決めされると、「ユーザ装置が、第1の拡散系列以来ユーザ装置を通過した拡散系列の数と、航行信号ストリームを成功裡に取得および追跡するために使用されてきた拡散系列の数とを、識別する」ことを容易にする必要がある。実際、取得プロセスから、ユーザ装置は、ローカルに生成されシフトされたレプリカと、受信信号と(特に第1の送信された拡散系列から「r」個の拡散系列だけ離れた拡散系列を含む受信信号であってその第1のチップがVTRSにおいてtref,VTRSに到達する受信信号の一部分と)を同期させ得る。次に、ユーザ装置は、DLLにより、航行信号に同期するとそれを追跡することになる。したがって、第1の拡散系列以来ユーザ装置により現在処理されている拡散系列の実際の発生に関係する曖昧性は、rを導出しこれによりユーザ装置がシステム時間に同期することを可能にするために、解決される必要があり得る。
【0137】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図26に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~25)または以下の(例えば
図27~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0138】
1つまたは複数の態様では、航行信号は、第1の拡散系列の符号系列カウンタの情報であってrを導出することを可能にする情報を含み得る。第1および第2の実施形態はこの目的のために使用され得る。
【0139】
図27では、第1の実施形態は、符号系列カウンタを航行データの一部として拡散系列へ変調する。同図において、ユーザ装置が同期される拡散系列の実際の発生(すなわち、相関関数の明確なピークが観察される)はr=5(例示目的のための)に等しい。これは、第1の拡散系列の第1のチップがVTRS(すなわちセル中心)に到達してから5つの拡散系列が発生したということを意味する。
【0140】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図27に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~26)または以下の(例えば
図28~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0141】
図28では、第2の実施形態は、第1の拡散系列以来の拡散系列発生rに依存するシフトを各新しい拡散系列エポック(r)の拡散系列へ適用する。拡散系列カウンタは符号シフトキーイングとも呼ばれ得る。拡散系列の5(再び図解目的のために使用される値)番目発生に同期後、ユーザ装置は、様々な連続拡散系列間に適用する様々なシフトから、拡散系列の実際の発生の値を導出することができる。
【0142】
1つまたは複数の態様では、ドップラー取得探索は、送信信号の実際の搬送波周波数fcarrier,RFと基準搬送波周波数fcarrier(例えばGPS L1 C/A信号成分に関し1575.45MHz)との間のオフセットを、VTRSにおいて観察される実際のドップラーが零となるようなやり方で制御することにより低減され得る。
【0143】
次式は、衛星により送信された信号を受信する際に地上ユーザにおいて経験されるドップラーの一般的表現を提供する。
【数38】
ここで、
-f
carrは衛星により送信される搬送波周波数を示す。
-Δf
Doppは受信された周波数f
carrと送信された搬送波周波数f
carr間の差異としてのオフセットドップラーを示す。
-
【数39】
(
【数40】
それぞれ)は受信器(送信器それぞれ)の位置ベクトルを示す。
-
【数41】
(
【数42】
それぞれ)は受信器(送信器それぞれ)の速度ベクトルを示す。
【0144】
前の表現をVTRSに適用することで、VTRSにおいて経験されるドップラーオフセットを導出することを可能にする。ドップラー補償の適用は、「実際の送信された周波数が、VTRSの位置および速度により計算されたΔfDopp(VTRS)により減じることによりΔfcarr,compにより補正されるべきである」いうことを意味する。
【0145】
ドップラー補償がVTRSに対して行われるということを強調する価値があり、ここでは、いかなる物理的装置も存在する必要が無く、これは提案概念の1つの特殊性である。
【0146】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図28に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~27)または以下の(例えば
図29~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0147】
図29は、衛星において送信されたRF信号の周波数が基準搬送波周波数(例えば1575.45MHz)に等しい場合の、実際に受信されたドップラーの地理的変動を実際に受信された搬送波周波数と基準搬送波周波数との間の差異として概略的に示す。実際に受信されたドップラーの判断はユーザ動力学特性もユーザ装置クロックの安定性も考慮しない。実際に受信されたドップラーの地理的変動はGNSS衛星1の5°の最小仰角に基づき可視フットプリント内に表される。
図29では、次の2つの表現が示される:セル中心を見ることを可能にするドップラーの等値線に基づく第1の表現と、実際のドップラーが前述の等値線により定義された範囲に属する塗潰し領域を示す第2の表現。380.6kmのセル半径および5°の最小仰角に関して、481個のセルが対応可視フットプリント内に含まれる。さらに、衛星可視フットプリント内では、ドップラーは約-4001Hz~+4001Hzにわたり、8002Hzの全変動を生じる。衛星・ツー・ユーザリンクの動力学特性に起因するこの大きな範囲のドップラーの結果は、ユーザが多数のドップラー仮説を試験する必要があり得るということである。例えば50Hzの2つの連続ドップラー仮説間の間隔(ドップラービン幅(Doppler bin width)とも呼ばれる)を仮定することで、160個のドップラー仮説を試験することを生じ得る。
【0148】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図29に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~28)または以下の(例えば
図30~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0149】
図30は、依然としてGNSS衛星1の40°の最小仰角に基づく可視フットプリントを考慮する際の
図29と同様な表現を概略的に示す。380.6kmのセル半径および40°の最小仰角に関して、161個のセルが対応可視フットプリント内に含まれるということがわかる。
【0150】
当該数のドップラー仮説を低減するために、衛星において送信されるRF信号の搬送波周波数は、前述の説明によるVTRSを表すセル中心において実際に受信された搬送波周波数がヌルとなるように値Δfcarr,compだけオフセットされる。これは、「衛星が各セルへ伝達される場合、衛星レベルにおける前述の搬送波周波数オフセットは衛星の絶対速度およびVTRSの位置(すなわちセル中心)に依存し得、したがってセル中心毎に変動し得る」ということを意味する。
【0151】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図30に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~29)または以下の(例えば
図31~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0152】
図31は、ドップラー補償を適用する際の前述の161個のセルのそれぞれのセル内のドップラーの変動を概略的に示す。各セル内の対応ドップラー変位(Doppler excursion)の低下をより良く示すために、可視フットプリントの下部に位置する1つのセルおよび可視フットプリントの中央部分の別のセルの2つの拡大図が提供される。第1のセルに関して、ドップラー変動は6840Hz(ドップラー補償無し)から368.5Hz(係数約19)まで低下し、一方、第2のセルに関して、ドップラー変動は3840Hz(ドップラー補償無し)から565.5Hz(係数約12)まで低下する。第1のセルに関し、対応セル内に位置するユーザは、最大8個のドップラービンにおいて試験する必要があるかもしれなく、一方、第2のセルに関し、対応セル内に位置するユーザは、50Hzのドップラービン幅に関し最大12個のドップラービンにおいて試験する必要があるということも意味する。
【0153】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図31に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~30)または以下の(例えば
図32~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0154】
図32は、161個のセルのそれぞれのセルのドップラー補償を適用する際の最大ドップラー変動を概略的に示す。368.5Hzおよび565.5Hzの値は同図から同様に効果的に取り出され得る。ドップラースパンは300Hz(すなわち6つのドップラー仮説)~562.5(すなわち12のドップラー仮説)の範囲に広がるということが検証され得る。
【0155】
第1および第2の実施形態が対応ドップラー補償のために使用され得る。第1の実施形態は、fftgu,act=fftgu+Δfftguとなるように、周波数および時間生成ユニット(FTGU)により生成される周波数fftgu,actをオフセットΔfftguによりオフセットし得る。ここでは、当該オフセットは送信されたRF搬送波へ適用されるオフセットΔfcarr,compに比例する。当該オフセットは、FTGUの公称周波数fftguと基準搬送波周波数fcarrとの間の様々な段階のアップコンバーションから生じ得る。第2の実施形態は、オフセットを航行信号生成ユニット(NSGU)内で生成される信号へ適用し得る。次に、NSGUは、未修正公称周波数fftgu,act=fftguを与えられ、アナログ領域においてまたはデジタル領域においてのいずれかにおいて(NSGUの実際の構成に依存して)オフセットΔfnsguを出力信号の周波数へ適用し得、NSGU出力の実際の搬送波周波数を生じる:fnsgu,act=fnsgu+Δfnsgu、ここで、対応オフセットΔfnsguは、送信されたRF搬送波へ適用されるオフセットΔfcarr,compに比例する。
【0156】
さらに、ドップラー補償は、航行信号生成チェーンにおいて時間的に連続に適用され得る。
【0157】
さらに、ユーザ装置は、VTRSの正確な位置だけでなく基準時刻tref,VTRSも知り得る(予め)。セル(のネットワーク)を考慮する際、各セル中心においてそれぞれがVTRSの正確な位置(等価的にセル中心)と基準時刻tref,VTRSとを含む対の組み合せがユーザ装置に利用可能にされ得る。ここでは、VTRS位置および基準時刻の参照テーブルが生成され得る。このような情報は、例えばユーザ航行メッセージ内に提供され、ユーザ装置へ早期に送信され得、これにより、対応参照テーブルを更新することを可能にする。対応情報はまた、例えば地上通信ネットワークを使用することにより、ユーザ装置において利用可能である所謂第3のチャネルまたは通信チャネルを介し利用可能にされ得る。対応情報はまたユーザ装置内に「ハード符号化」され得、対応参照テーブルを修正する可能性を小さくさせる。各VTRSの様々な基準時刻は、時間の経過に伴って、時間転送を保証し取得を容易にするために、適用され得るということがさらに概説される。
【0158】
さらに、VTRSは、「静的VTRS」であり得る、または軌道がユーザ装置により予め知らされ得るとともに第1のチップの立上りエッジが既知の軌道に従って移動VTRSに到達する基準時刻t
ref,VTRSにより予め知らされ得る「移動VTRS」であり得る。この状況は
図33に示される。
【0159】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図32、33に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~31)または以下の(例えば
図34~37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0160】
図34、
図35および
図36は、本開示による符号補償を実施する信号生成チェーンをホストするために使用される可能性がある代替プラットホームを示す。
図34は(成層圏)バルーンのケースを示す。
図35は高高度プラットホームステーション(HAPS)のケースを示す。
図36は、地上局(本明細書では基地局)のケースを示すが、その代わりに疑似衛星のケースもまた考えられ得る。
【0161】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図34、35、36に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~33)または以下の(例えば
図37)提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0162】
図37は、HAPSへ適用された場合の符号補償の応用を概略的に示す。この例では、その距離が、高速取得を保証するために必要な拡散符号長に関係する評価と整合する3つのHAPSおよび3つのVTRSが表される。衛星に関して、HAPSの利点はそれらの開発、配備、および操作に必要な低投資と共にそれらの低動力学特性である。さらに、HAPSの別の利点は、要求に応じ、(人口の多い)領域の上でHAPSを運用させる可能性である。このようにして、この需要の無い領域の上でHAPSプラットホームを「浪費する」ことが回避される。正確な符号およびドップラー補償を保証するために精密なHAPS位置が必要である。この課題を解決する1つの手法は、多重GNSS受信器をHAPSプラットホーム上に実装することにその本質があり得、これはGNSS時間スケール基準に対する時間だけでなく正確な位置も提供することになる。これらの情報に基づき、VTRSにおける同期を保証するために符号およびドップラー補償を生成することが可能である。符号およびドップラー補償の生成の原理は
図9に提示されたものと似ている。
【0163】
さらなる詳細と態様は、上に述べたまたは以下に述べる実施形態に関連して言及される。
図37に示す実施形態は、上述の(例えば
図1~36)または以下の提案概念または1つまたは複数の実施形態に関連して述べられる1つまたは複数の態様に対応する1つまたは複数の任意選択的追加特徴を含み得る。
【0164】
1つまたは複数の実施形態では、基準チップの立上りまたは立下りエッジが所謂仮想タイミング基準局(VTRS)における時刻tref,VTRSに到達するということを保証する符号補償が行われ得る。
【0165】
1つまたは複数の実施形態では、その中心がVTRSであるセル(のネットワーク)が提供され得る。
【0166】
1つまたは複数の実施形態では、符号補償判断は、システム時間に対する航行信号源のクロックオフセット、航行信号生成の位置およびVTRSの位置、および基準時刻tref,VTRSを考慮し得る。しかし、符号補償判断は、VTRSにおいておよびtref,VTRSにおいて経験される電離層および対流圏遅延を考慮する必要は無い。
【0167】
1つまたは複数の実施形態では、符号長はセル間距離に基づき導出され得る。
【0168】
1つまたは複数の実施形態では、航行信号は、基準チップを含む第1の拡散符号以来の拡散符号の数をカウントする拡散符号カウンタを含み得る。
【0169】
1つまたは複数の実施形態では、ドップラー補償は、実際のドップラーがVTRSにおいて零であるということを保証し得る。ドップラー補償は正確なVTRS位置、衛星軌道、および基準搬送波周波数を考慮し得る。
【0170】
1つまたは複数の実施形態では、VTRSの正確な位置および基準時刻tref,VTRSはユーザ装置に利用可能にされてもよいしハード符号化されてもよい。
【0171】
1つまたは複数の実施形態では、VTRSはユーザ装置から知らされる軌道に追随し得、基準チップが基準時刻tref,VTRSに基準軌道に到達したときの正確な位置がまたユーザ装置により知らされる。
【0172】
1つまたは複数の実施形態では、対応信号特徴だけでなく符号およびドップラー補償も実現する航行信号生成をホストするプラットホームは、中周回軌道(MEO)、低周回軌道(LEO)、またはGEO静止衛星(GEO)における航行衛星などの宇宙ベース局であり得る。プラットホームはまた、高高度プラットホーム(HAPS)などの近地上プラットホーム、(成層圏)バルーンまたはドローンであり得る。プラットホームはまた、地上モバイルネットワークインフラストラクチャに一般的に使用される基地局(BTS)など、または擬似衛星とも呼ばれる地文航法ビーコンなどの静的地上プラットホームであり得る。
【0173】
既に詳述された例および図のうちの1つまたは複数と共に述べられ説明された態様および特徴は、他の例の同様な特徴を置換するためにまたは特徴を他の例の追加的に導入するために他の例のうちの1つまたは複数と合成され得る。
【0174】
例はさらに、コンピュータプログラムがコンピュータまたはプロセッサ上で実行されると上記方法のうちの1つまたは複数を行うためのプログラム符号を有するコンピュータプログラムに関係し得る。様々な上記方法の工程、操作、または処理は、プログラムされたコンピュータまたはプロセッサにより行われ得る。例はまた、機械、プロセッサまたはコンピュータ可読であり命令の機械実行可能、プロセッサ実行可能またはコンピュータ実行可能プログラムを符号化するデジタルデータ記憶媒体などのプログラム記憶装置をカバーし得る。命令は、上記方法の行為の一部またはすべてを行うまたは行わせる。プログラム記憶装置は、例えばデジタルメモリ、磁気ディスクおよび磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードディスクドライブ、または光学的可読デジタルデータ記憶媒体を含んでもよいしそれ自体であってもよい。別の例はまた、上記方法の行為を実行するようにプログラムされたプロセッサまたは制御ユニット、または上記方法の行為を実行するようにプログラムされた(フィールド)プログラマブルロジックアレイ(F)(PLA)、または(フィールド)プログラマブルゲートアレイ(F)(PGA)をカバーし得る。
【0175】
本明細書と添付図面は本開示の原理を例示するだけである。さらに、本開示に列挙されたすべての例は原理的に、本技術をさらに進めるために、読者が本発明の原理と本発明者により寄与される概念とを理解するのを支援する教育的目的のためだけであるということを明示的に意図するようにされている。本開示の原理、態様、および例だけでなくその具体例についても本明細書において列挙するすべての記載はそれらの等価物を包含するように意図されている。
【0176】
ブロック図は例えば、本開示の原理を実施する高位回路図を示し得る。同様に、フローチャート、フローダイアグラム、状態遷移図、擬似符号などは、例えばコンピュータ可読媒体内で実質的に表され、したがってコンピュータまたはプロセッサ(このようなコンピュータまたはプロセッサが明示的に示されても示されなくても)により実行され得る様々な処理、操作、または工程を表し得る。本明細書または特許請求の範囲に開示される方法はこれらの方法のそれぞれの行為のそれぞれを行う手段を有する装置により実施され得る。
【0177】
本明細書または特許請求の範囲に開示される多数の行為、処理、操作、工程または機能の開示は、例えば技術的理由のために明示的または暗黙的に別途述べない限り、特定の順序であると解釈されてはならないということを理解すべきである。したがって、多数の行為または機能の開示は、このような行為または機能が技術的理由のために互に交換可能でない限り、これらを特定の順序に限定するものではない。さらに、いくつかの例では、単一行為、機能、処理、操作、または工程は多数の副行為、機能、処理、操作、または工程をそれぞれ含み得るまたはそれらに分解され得る。このような副行為は、明示的に除外されない限り、この単一行為の開示に含まれ得、この単一工程の開示の一部であり得る。
【0178】
さらに、以下の特許請求の範囲は、本明細書内の「発明を実施するための形態」に組み込まれ、各請求項はそのまま別個の例として成立し得る。各請求項はそれぞれ別個の例としてそのまま成立し得るが、従属請求項は特許請求の範囲において1つまたは複数の請求項との特定組み合せを指し得るが他の例もまた従属請求項の他の各従属または独立請求項の主題との組み合せを含み得るということに留意すべきである。このような組み合せは、特定の組み合せが意図されていないということが明示されない限り、本明細書に明示的に提案される。さらに、請求項の特徴は、この請求項が任意の他の独立請求項に依存して直接なされなかったとしても、この任意の他の独立請求項に対する請求項の特徴を含むように意図されている。
【0179】
本開示は、上述の実施形態にいかなるやり方でも限定されない。逆に、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の内在する考えから逸脱することなく当業者にとって明白であるその修正形態の多くの可能性がある。
【符号の説明】
【0180】
GEO GEO静止衛星
HAPS 高高度プラットホーム
LEO 低周回軌道
MEO 中周回軌道
GNSS 全地球衛星航行システム
tref,VTRS 基準エポック
VTRS 仮想タイミング基準局