(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】柱建て起こし装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2020159113
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】592166698
【氏名又は名称】株式会社小川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 貴文
(72)【発明者】
【氏名】水野 寛之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐
(72)【発明者】
【氏名】三好 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 健一
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106869508(CN,A)
【文献】特開2000-017846(JP,A)
【文献】特開2004-251039(JP,A)
【文献】特開平07-127267(JP,A)
【文献】特開平11-311027(JP,A)
【文献】特開昭63-167842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヒンジ部材を備え建て方済みの下部柱の上端部分に着脱可能に取り付けられる第1の取付部材と、
前記下部柱に接合される寝かせた状態の上部柱の下端部分に脱着可能に取り付けられ
、 前記第1ヒンジ部材とピンで回転可能に連結された第2ヒンジ部材を備えた第2の取付部材と、
を有する柱建て起こし装置。
【請求項2】
一端が前記第1の取付部材に回転可能に連結され、他端が前記第2の取付部材に回転可能に連結され、伸縮可能な伸縮駆動装置を備えている、
請求項1に記載の柱建て起こし装置。
【請求項3】
前記第2の取付部材を前記第1の取付部材に対して、前記下部柱の軸線回りに水平に回転可能とする回転装置を備えている、
請求項1または請求項2に記載の柱建て起こし装置。
【請求項4】
建て方済みの下部柱の上端部分に着脱可能に取り付けられる第1の取付部材と、
前記下部柱に接合される寝かせた状態の上部柱の下端部分に脱着可能に取り付けられる第2の取付部材と、
前記第1の取付部材に対して前記第2の取付部材を回転可能に連結し、前記上部柱を建て起こしたときに前記下部柱の上端部に前記上部柱の下端部を接合するヒンジ部材と、
一端が前記第1の取付部材に回転可能に連結され、他端が前記第2の取付部材に回転可能に連結され、伸縮可能な伸縮駆動装置と、
を有する柱建て起こし装置。
【請求項5】
前記第2の取付部材を前記第1の取付部材に対して、前記下部柱の軸線回りに水平に回転可能とする回転装置を備えている、
請求項4に記載の柱建て起こし装置。
【請求項6】
建て方済みの下部柱の上端部分に着脱可能に取り付けられる第1の取付部材と、
前記下部柱に接合される寝かせた状態の上部柱の下端部分に脱着可能に取り付けられる第2の取付部材と、
前記第1の取付部材に対して前記第2の取付部材を回転可能に連結し、前記上部柱を建て起こしたときに前記下部柱の上端部に前記上部柱の下端部を接合するヒンジ部材と、
前記第2の取付部材を前記第1の取付部材に対して、前記下部柱の軸線回りに水平に回転可能とする回転装置と、
を有する柱建て起こし装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部柱の上部に上部柱を建て起こす際に用いる柱建て起こし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨柱を建て方する場合には、例えば、建物周囲の地盤面で、建て方する寝かせた上部柱の上端部を建て方用のタワークレーン、下端部を相番(補助)用のトラッククレーンを用いて水平に持ち上げ、上端部を上にして建て起こし、その後、タワークレーンのみで吊り上げて、下端部を下部柱の上端部と対向する位置まで移動させ、接合する方法が用いられていた。この寝かせた上部柱を建て起こす方法の改善については、いくつかの公知例がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-24141号公報
【文献】特開2006-342554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような工法では、建て方する上部柱を建て起こす工程と、建て方する上部柱の下端部と下部柱の上端部とを対向させる工程とが根本的に別工程で行われており、作業が煩雑で、作業時間も多くかかるという問題があり、改善の余地があった。
【0005】
本発明の課題は、建て方する柱を建て起こす工程と、建て方する柱の下端部と下部柱の上端部とを対向させる工程を連続して行い、作業の手間を削減し、作業時間を短くすることが可能な柱建て起こし装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の柱建て起こし装置は、第1ヒンジ部材を備え建て方済みの下部柱の上端部分に着脱可能に取り付けられる第1の取付部材と、前記下部柱に接合される寝かせた状態の上部柱の下端部分に脱着可能に取り付けられ、前記第1ヒンジ部材とピンで回転可能に連結された第2ヒンジ部材を備えた第2の取付部材と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の柱建て起こし装置では、建て方済みの下部柱の上端部に上部柱の下端部を接合する際に用いられる。
【0008】
柱建て起こし装置の取付手順の一例としては、下部柱の上端部分に第1の取付部材を取り付け、第2の取付部材を寝かせた状態の上部柱の下端部分に取り付ける。
【0009】
第1の取付部材と第2の取付部材とは、上部柱を建て起こしたときに下部柱の上端部に上部柱の下端部を突き合わせることができる第1ヒンジ部材、第2ヒンジ部材、及びピンで回転可能に連結されている。
【0010】
したがって、下部柱と上部柱とを柱建て起こし装置で連結すれば、寝かせた状態の上部柱を建て起こすだけで、下部柱の上端部に上部柱の下端部を対向させて突き合わせることができる。
【0011】
このように、建て方する上部柱を建て起こす工程と、上部柱の下端部と下部柱の上端部を対向させる工程とを連続して行うことで、作業の手間が削減され、作業時間を短くすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の柱建て起こし装置において、一端が前記第1の取付部材に回転可能に連結され、他端が前記第2の取付部材に回転可能に連結され、伸縮可能な伸縮駆動装置を備えている。
【0013】
請求項2に記載の柱建て起こし装置では、伸縮駆動装置の一端が第1の取付部材に回転可能に連結され、伸縮駆動装置の他端が第2の取付部材に回転可能に連結されている。
【0014】
したがって、上部柱を寝かせた状態において、伸縮駆動装置を縮めておき、その後、伸縮駆動装置を伸ばすことで、伸縮駆動装置が第1の取付部材を支点として回動すると共に、ヒンジ部材(第1ヒンジ部材、第2ヒンジ部材、及びピン)を中心に第2の取付部材を回動させて上部柱を建て起こすことができる。このように、伸縮駆動装置を用いることで、上部柱を建て起こす際に上部柱を建て起こすクレーンを用いる必要がなくなる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の柱建て起こし装置において、前記第2の取付部材を前記第1の取付部材に対して、前記下部柱の軸線回りに水平に回転可能とする回転装置を備えている。
【0016】
請求項3に記載の柱建て起こし装置によれば、回転装置により、第2の取付部材を第1の取付部材に対して、下部柱の軸線回りに水平に回転することができる。
【0017】
上部柱と下部柱が角型柱の場合、下部柱の側面と上部柱の側面が合うように上部柱を建て起こす必要がある。
クレーンの作業半径に制約があると、上部柱の側面と下部柱の側面が合うように上部柱を配置できない場合がある。
請求項3に記載の柱建て起こし装置を用いれば、上部柱を建て起こす際、上部柱側面と下部柱側面が合うように、第2の取付部材を下部柱の軸回りに水平に回転させて該上部柱を建て起こして上部柱と下部柱を接合できる。
請求項4に記載の柱建て起こし装置は、建て方済みの下部柱の上端部分に着脱可能に取り付けられる第1の取付部材と、前記下部柱に接合される寝かせた状態の上部柱の下端部分に脱着可能に取り付けられる第2の取付部材と、前記第1の取付部材に対して前記第2の取付部材を回転可能に連結し、前記上部柱を建て起こしたときに前記下部柱の上端部に前記上部柱の下端部を接合するヒンジ部材と、一端が前記第1の取付部材に回転可能に連結され、他端が前記第2の取付部材に回転可能に連結され、伸縮可能な伸縮駆動装置と、を有する。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の柱建て起こし装置において、前記第2の取付部材を前記第1の取付部材に対して、前記下部柱の軸線回りに水平に回転可能とする回転装置を備えている。
請求項6に記載の柱建て起こし装置は、建て方済みの下部柱の上端部分に着脱可能に取り付けられる第1の取付部材と、前記下部柱に接合される寝かせた状態の上部柱の下端部分に脱着可能に取り付けられる第2の取付部材と、前記第1の取付部材に対して前記第2の取付部材を回転可能に連結し、前記上部柱を建て起こしたときに前記下部柱の上端部に前記上部柱の下端部を接合するヒンジ部材と、前記第2の取付部材を前記第1の取付部材に対して、前記下部柱の軸線回りに水平に回転可能とする回転装置と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明の柱建て起こし装置によれば、建て起こし作業の手間が削減され、作業時間を短くすることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る柱建て起こし装置を示す側面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る柱建て起こし装置の第1の取付部材を示す下部柱の軸線方向からみた正面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る柱建て起こし装置の第2の取付部材を示す上部柱の軸線方向からみた正面図である。
【
図4】タワークレーンが設置され、第1の実施形態に係る柱建て起こし装置が取り付けられた建物を示す平面図である。
【
図5】(A)、(B)、(C)は、上部柱を柱建て起こし装置に取り付ける手順を示す説明図である。
【
図6】部柱が水平の状態で取り付けられた柱建て起こし装置を示す側面図である。
【
図7】上部柱を建て起こした柱建て起こし装置を示す側面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る柱建て起こし装置を示す一部を断面にした側面図である。
【
図9】第2の実施形態に係る柱建て起こし装置の回転装置を示す水平断面図である。
【
図10】タワークレーンが設置され、第2の実施形態に係る柱建て起こし装置が取り付けられた建物を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
図1~
図7を用いて、本発明の第1の実施形態に係る柱建て起こし装置10について説明する。
(柱建て起こし装置の概略)
図1に示すように、柱建て起こし装置10は、一例として、建設途中の建物12における建て方済みの下部柱14の上端部分に着脱可能に取り付けられる第1の取付部材16と、建て起こしを行う上部柱18の下端部分に取り付けられる第2の取付部材20と、第1の取付部材16に対して第2の取付部材20を回転可能に連結し、上部柱18を建て起こしたときに下部柱14の上端部に上部柱18の下端部を突き合わせるヒンジ部材22と、ヒンジ部材22を回動させる油圧シリンダ44と、を備えている。
なお、本実施形態の柱建て起こし装置10が取り付けられる下部柱14、及び上部柱18は、一例として、角柱(コラム柱、ボックス柱等)である。
【0021】
(第1の取付部材)
図2に示すように、第1の取付部材16は、一対の第1半枠体16A,16Bで構成されている。第1半枠体16A,16Bは、平面視で略U字形状に形成されており、一方の第1半枠体16Aと他方の第1半枠体16Bとを互いに向い合せて、互いにボルト23及びナット25を用いて連結することで、下部柱14を取り囲む矩形の枠体となる。
【0022】
第1半枠体16A、及び第1半枠体16Bの各辺には、第1の取付部材16を下部柱14に固定するための柱固定ボルト28が取り付けられている。柱固定ボルト28は、雄螺子部28Aが第1半枠体16A,16Bに形成された図示しない雌螺子に螺合しており、頭部28Bが枠外側に配置されている。雄螺子部28Aの先端には、キャップ30が取り付けられている。また、柱固定ボルト28の雄螺子部28Aには、緩み止めのナット32が螺合している。柱固定ボルト28は、第1半枠体16A,16Bの各辺に設けられており、下部柱14の側面にキャップ30を押し付けて、下部柱14を4方向から支持可能としている。
【0023】
各々の柱固定ボルト28を調整することで、下部柱14の軸線と、第1の取付部材16の矩形の軸線とを一致させることができる。
【0024】
図2、及び
図3に示す第1の取付部材16と第2の取付部材20では、第1の取付部材16、及び第2の取付部材20の各辺に、下部柱14、及び上部柱18の側面に当てる柱固定ボルト28、及び柱固定ボルト38を設けたが、一例として、第1の取付部材16と第2の取付部材20の互いに直角な関係となる2辺に下部柱14、及び上部柱18の側面に当てるブロック状の位置決めスペーサーを設け、残りの2辺に柱固定ボルト28、及び柱固定ボルト38を設けてもよい。この構成では、位置決めスペーサーと柱固定ボルト28、及び柱固定ボルト38との間に下部柱14、及び上部柱18を挟持して固定することができる。
【0025】
(第2の取付部材)
図3に示すように、第2の取付部材20は、一対の第2半枠体20A,20Bで構成されている。第2半枠体20A,20Bは、平面視で略U字形状に形成されており、一方の第2半枠体20Aと他方の第2半枠体20Bとを互いに向い合せて、互いにボルト34及びナット36を用いて連結することで、上部柱18を取り囲む矩形の枠体となる。
【0026】
第2半枠体20A、及び第2半枠体20Bの各辺には、上部柱18に固定するための柱固定ボルト38が取り付けられている。柱固定ボルト38は、雄螺子部38Aが第2半枠体20A,20Bに形成された図示しない雌螺子に螺合しており、頭部38Bが枠外側に配置されている。雄螺子部38Aの先端には、キャップ40が取り付けられている。また、柱固定ボルト38の雄螺子部38Aには、緩み止めのナット42が螺合している。柱固定ボルト38は、第2半枠体20A,20Bの各辺に設けられており、上部柱18の側面にキャップ40を押し付けて、上部柱18を4方向から支持可能としている。
【0027】
なお、各々の柱固定ボルト38を調整することで、上部柱18の軸線と、第2の取付部材20の矩形の軸線とを一致させることができる。
【0028】
また、上部柱18を支持した第2の取付部材20を回動させて上部柱18を建て起こした際に、重量のある上部柱18が第2の取付部材20からずれないように、ずれ止めの対策がなされている。
対策の一例として、
図1、及び
図3に示すように、上部柱18の側面に、アングル80が溶接されており、第2の取付部材20には、上部柱18のアングル80と対向する位置にアングル82が溶接されている。
上部柱18のアングル80と第2の取付部材20のアングル82とは、ボルト84、及びナット86を用いて互いに締結されるようになっている。
なお、本実施形態では、上部柱18を建て起こした際に、上部柱18のアングル80が第2の取付部材20のアングル82の下方に位置するように、アングル80、及びアングル82の位置が決められている。
このように、上部柱18のアングル80、及び第2の取付部材20のアングル82を設けて、両者をボルト84、及びナット86を用いて互いに締結すれば、上部柱18を建て起こした際に、重量のある上部柱18が第2の取付部材20に対してずれることはない。
なお、
図1に示す例では、上部柱18を建て起こした際に、上部柱18のアングル80が第2の取付部材20のアングル82の下方に位置するように、アングル80、及びアングル82の位置が決められていたが、アングル80、及びアングル82の上下関係を逆にしてもよい。
【0029】
(ヒンジ部材)
図1~
図3に示すように、ヒンジ部材22は、一方のプレート22Aと他方のプレート22Bとがピン42を介して互いに回動可能となっている。一方のプレート22Aは、第1の取付部材16の第1半枠体16Bに固定されており、他方のプレート22Bは、第2の取付部材20の第2半枠体20Bに固定されている。これにより、第1の取付部材16と第2の取付部材20とは、ピン42を介して互いに回動可能となっている。なお、ピン42を抜くことで、第1の取付部材16と第2の取付部材20とを互いに分離できる。
【0030】
(油圧シリンダ)
柱建て起こし装置10は、第1の取付部材16と第2の取付部材20とを互いに回動させるための伸縮駆動装置の一例としての油圧シリンダ44を備えている。油圧シリンダ44は、シリンダチューブ44Aの一端がピン46を介して第1半枠体16Bに対して回動自在に支持されている。また、シリンダチューブ44Aから突出するシリンダロッド44Bの先端部分は、ピン48を介して第2半枠体20Bに対して回動自在に支持されている。なお、ピン46、及びピン48を抜くことで、油圧シリンダ44を容易に取り外すことができる。
【0031】
油圧シリンダ44には、オイルポンプ、オイルタンク、圧力調整弁、電磁弁等を含んで構成される油圧源50が接続されており、油圧源50を駆動することで、シリンダロッド44Bをシリンダチューブ44Aに対して出し入れさせることができる。
【0032】
(建て起こし工程)
次に、本実施形態の柱建て起こし装置10を用いて下部柱14の上に上部柱18を建て起こす工程の一例を説明する。
【0033】
(1)
図4に示すように、建設途中の建物12の上部には、一例として、タワークレーン52が設けられている。
【0034】
(2)
図5(A)に示すように、下部柱14の上端部分に柱建て起こし装置10の第1の取付部材16を柱固定ボルト28で固定する。なお、梁54の上にジャッキ88を配置し、第1の取付部材16が下部柱14に対してずれないように第1の取付部材16をジャッキ88で支持する。
柱建て起こし装置10を固定する際の向きは、一例として、断面矩形状とされた下部柱14の辺の法線方向、言い換えれば、下部柱14に接合される梁54の長手方向に沿って上部柱18が取り付けられるようにする。
さらに言い換えれば、角柱である上部柱18の側面と角柱である下部柱14の側面が合うように上部柱18が取り付けられる。
また、このとき、下部柱14の軸線と第1の取付部材16の軸線とが一致するように、第1の取付部材16に設けた柱固定ボルト28の調整を行う。
さらに、第2の取付部材20は、
図5(A)に示すように倒した状態とし、第2半枠体20Bから第2半枠体20Aを分離して第2半枠体20Bの上側を解放しておく。
【0035】
(3) 次に、
図5(B)に示すように、タワークレーン52で上部柱18を寝かせた状態で吊り上げ、上部柱18が梁54と平行になるように梁54の上方へ移動し、上部柱18の下端部分を上側が解放された第2半枠体20Bに載せる。
【0036】
(4) 次に、
図5(C)に示すように、第2半枠体20Bに第2半枠体20Aを取り付け、第2の取付部材20に上部柱18の下端部分を柱固定ボルト38で固定する。
このとき、上部柱18の軸線と第2の取付部材20の軸線とが一致するように、柱固定ボルト38の調整を行うと共に、
図6に示すように、第2の取付部材20の端面から上部柱18の下端部までの距離Lを調整する。調整、及び固定後、上部柱18を吊っていたタワークレーン52のワイヤー52Aを上部柱18から取り外す。
【0037】
(5) 次に、油圧シリンダ44にオイルを供給し、
図7に示すようにシリンダロッド44Bを突出させ、上部柱18を固定した第2の取付部材20をヒンジ部材22回りに回動させて、上部柱18を垂直に建て起こす。
これにより、下部柱14の上端部と上部柱の下端部を接合させることができる。
【0038】
(6) その後、図示しない仮設固定冶具にて下部柱14と上部柱18との仮固定を行う。
この仮設固定冶具とは、柱同士を突き合わせて溶接する前の仮固定に用いられる一般的に知られているものであり、一例として、下部柱14の側面に取り付けられたエレクションピースと、上部柱18の側面に取り付けられたエレクションピースとを挟持する等してエレクションピース同士を相互に固定するための治具である。
【0039】
(7) 下部柱14と上部柱18との接合完了後、柱建て起こし装置10を撤去し、次施工箇所に盛替える。
【0040】
ここで、
図4に示すように、一例として、タワークレーン52から最も遠い位置にある下部柱14A(建物12の角の柱)に上部柱18を接合する場合、従来工法では、建物周囲の地盤面で水平に配置された上部柱18の上端部にタワークレーン52のワイヤー52Aを係止し、下端部を図示しない相番(補助)用の移動式クレーンのワイヤーを係止して、両方のクレーンで水平に持ち上げ、上部柱18の上端部をタワークレーン側のワイヤー52で引っ張り上げることで上部柱18を建て起こす。その後、タワークレーン52のみで上部柱52Aを吊り上げて、部下部柱14Aの上方にジブの先端を移動して、上部柱52Aを接合する必要があり、タワークレーン52の作業半径は、
図4に示すようにRAmを必要としていた。
【0041】
一方、本実施形態の柱建て起こし装置10を用いた施工方法では、油圧シリンダ44を用いて上部柱18の建て起こしから接合まで行うため、上部柱18の下端部を下部柱14に固定した柱建て起こし装置10に取り付けるように水平にした上部柱18を重心Gの位置で吊り上げて寝かしたまま移動するだけでよく、作業半径としては、
図4に示すようにRAmよりも小さいRAgで済む。
【0042】
また、
図4に示すように、一例として、タワークレーン52に比較的近い位置にある下部柱14Bに上部柱18Bを建て起こす場合も同様であり、従来工法では、タワークレーン52の作業半径は、
図4に示すようにRBmが必要となる。
一方、本実施形態の柱建て起こし装置10を用いた施工方法では、作業半径は、
図4に示すようにRBmよりも小さいRBgで済む。
【0043】
本実施形態の柱建て起こし装置10を用いることで、以下の効果が得られる。
(1) 本実施形態の柱建て起こし装置10を用いることで、上部柱18を水平に寝かしたまま、下部柱14の近傍に吊り上げ移動し、その後は、タワークレーン52無しで、油圧シリンダ44を取り付けた柱建て起こし装置10によって簡単に建て起こしを行うことができると共に、上部柱18を建て起こすだけで、上部柱18の下端部と下部柱14の上端部とを対向させることができる。
【0044】
このように、建て方する上部柱18を建て起こす工程と、建て方する上部柱18の下端部と、これを支持する下部柱14の上端部とを対向させる工程とを連続して行うので、作業の手間が削減され、作業時間が短縮される他、揚重計画の自由度を拡大することができる。
【0045】
(2) また、一例として、構造体が鉄骨造のオフィスビル等のタワークレーンの能力は、建物角の地上階1節鉄骨の重量が吊れる揚重半径が、クレーン設置位置から角柱をカバーできるように決定されることも多いが、本実施形態の柱建て起こし装置10を用いれば、上部柱18を寝かせたまま、その上部柱18の下端部が下部柱14に届く位置まで揚重出来ればよく、タワークレーン52の能力をワンランク下げることも可能となる。言い換えれば、タワークレーン52で上部柱18の上端部を吊り上げて下部柱14の上までブーム先端を移動してくる必要がないので、短いブームのタワークレーン52を用いることもできる。
【0046】
(3) 例えば、1階の床がある状態で、地上階1節の建て方をする場合、下部柱14の遥か手前の1階床上で、タワークレーン52で寝かしたまま吊っている状態の上部柱18の下端部、及び上端部の両方に柱建て起こし装置10を取り付け、各々の柱建て起こし装置10に車輪等を付加すれば、床上に吊り下ろして寝かせたまま下部柱14の位置まで移動して建て起こしをする等、揚重計画の自由度をさらに向上させることも可能となる。
【0047】
(4) 本実施形態の柱建て起こし装置10を用いることで、従来の建て方のように、建て起こした上部柱18の上端部をタワークレーン52のワイヤーで吊りながら建て方をする必要がないので、建て方全体の作業高さを低く抑えることができる。
したがって、上空の送電線(架空線)や、マイクロウェーブ等により、揚重制限がある場合等に、本実施形態の柱建て起こし装置10を用いることは有用となる。
【0048】
(5) 本実施形態の柱建て起こし装置10を用いることで、タワークレーン52の揚重能力を下げることができるため、タワークレーン52自体が小さく軽くなり、タワークレーン52を支えるための仮設柱の低減やタワークレーン解体用重機を低減することが可能となる。
【0049】
(6) 本実施形態の柱建て起こし装置10を用いることで、タワークレーン52の揚重能力に余裕ができるともいえ、通常、柱重量が重い場合に実施する、柱の節割変更(1節3階を2階にするなど柱を短くする)をしないという選択肢が増えるため、鉄骨建て方、溶接他などのコスト低減、工程短縮となる。
【0050】
[第2の実施形態]
次に、
図8乃至
図10にしたがって、本発明の第2の実施形態に係る柱建て起こし装置10を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その構成の説明は省略する。
【0051】
図8、及び
図9に示すように、本実施形態の柱建て起こし装置10は、上部柱18を取り付ける第2の取付部材20の水平方向の向きを変更可能とする回転装置60を備えている。
【0052】
回転装置60は、第1の取付部材16の外側を取り囲むように配置される内側フレーム62と、内側フレーム62の外側を取り囲むように配置される外側フレーム64とを備えている。
【0053】
本実施形態の柱建て起こし装置10では、外側フレーム64にヒンジ部材22、及び油圧シリンダ44が取り付けられている。また、外側フレーム64の内壁には、円環状のガイドレール66が取り付けられている。
【0054】
内側フレーム62の下部には、梁54に接地する脚62Aが取り付けられている。
内側フレーム62は、第1の取付部材16に連結されており、外壁には、ガイドレール66を一対の溝付きコロ68で上下から挟持するガイド部70が、周方向に複数設けられている。これにより、外側フレーム64は、内側フレーム62に対して回転自在となっている。
【0055】
内側フレームの上部には、リングギア72が取り付けられている。外側フレーム64の上部には、回転軸(図示せず)を下方に向けたモータ74が取り付けられており、回転軸に、リングギア72と噛み合うギア76が取り付けられている。また、外側フレーム64には、リングギア72を取り囲む位置に複数のギア76が回転自在に設けられている。
【0056】
このため、本実施形態の柱建て起こし装置10は、モータ74を駆動することで、外側フレーム64を下部柱14の軸線回りに回転させることができる。即ち、第1の取付部材16に対して、第2の取付部材20を、下部柱14の軸線回りに回転させることができる。
【0057】
例えば、
図10に実線で示すように、上部柱18を梁54に対して斜めの位置に配置して、第2の取付部材20に上部柱18の下端部分を固定し、その後、2点鎖線で示すように上部柱18を回転させて上部柱18の向きと梁54の向きと一致させることができる。
【0058】
その後、第1の実施形態と同様に上部柱18を建て起こすことで、第1の実施形態と同様に下部柱14の上端部分と上部柱18の下端部分とを一致させて接合することができる。
【0059】
本実施形態の柱建て起こし装置10を用いた場合には、上部柱18の向きを梁54に対して傾斜させ、重心Gをタワークレーン52の設置位置(旋回中心)に近づけた状態の上部柱18を柱建て起こし装置10の第2の取付部材20に取り付けることができる。
【0060】
ここで、回転装置60を備えていない柱建て起こし装置10を用いた場合には、
図10の2点鎖線で示すように上部柱18を配置して第2の取付部材20に取り付ける必要があり、その際のタワークレーン52の作業半径はRLとなる。
【0061】
一方、実線で示すように、梁54に対して上部柱18を斜めに配置する場合は、タワークレーン52の作業半径はRSとなり、RLよりも作業半径を小さくすることが可能となる。
【0062】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0063】
上記実施形態では、第1の取付部材16と、第2の取付部材20と、ヒンジ部材22と、油圧シリンダ44とを一体化した状態の柱建て起こし装置10を下部柱14の上端部分に取り付けたが、油圧シリンダ44の取り付けられていない柱建て起こし装置10を下部柱14の上端部分に取り付けた後、第1の取付部材16と第2の取付部材20とを連結するように油圧シリンダ44を取り付けてもよい。
【0064】
上記実施形態では、下部柱14、及び上部柱18が角柱であり、断面形状が矩形状であったが、下部柱14、及び上部柱18の断面形状は、円形等、矩形以外の形状であってもよい。
一例として、下部柱14、及び上部柱18の断面形状が円形である場合、一例として、第1の取付部材16、及び第2の取付部材20の形状を下部柱14、及び上部柱18の断面形状に合わせて正面視の形状を円形としてもよく、第1の取付部材16、及び第2の取付部材20の正面視の形状は、下部柱14、及び上部柱18の形状に合わせればよい。
また、下部柱14、及び上部柱18の形状に合わせて、柱固定ボルト28、及び柱固定ボルト38の数、位置、向きなどを適宜変更することができる。
【0065】
上記実施形態では、伸縮駆動装置として油圧シリンダ44を用いたが、本発明はこれに限らず、油圧シリンダ44の代わりに、モータで駆動されるネジジャッキ等、他の種類の伸縮駆動装置を用いてもよい。
【0066】
上記実施形態では、上部柱18を建て起こす際に、油圧シリンダ44で上部柱18を押し上げるようにして上部柱18を建て起こしたが、下部柱14が建物12の角の柱でなければ、上部柱18の中間部にワイヤーを接続し、ワイヤーをクレーンやウインチで引くことで上部柱18を引き起こすこともできる。
【符号の説明】
【0067】
10 柱建て起こし装置
14 下部柱
16 第1の取付部材
16A 第1半枠体
16B 第1半枠体
18 上部柱
20 第2の取付部材
20A 第2半枠体
20B 第2半枠体
22 ヒンジ部材
23 ボルト
34 ボルト
44 油圧シリンダ(伸縮駆動装置)
60 回転装置