(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】材料応答を検出する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/90 20210101AFI20240723BHJP
【FI】
G01N27/90
(21)【出願番号】P 2021503003
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 GB2019051953
(87)【国際公開番号】W WO2020016557
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-30
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509251143
【氏名又は名称】エヌピーエル マネージメント リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505105327
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ストラスクライド
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャルザック,ウィトルド
(72)【発明者】
【氏名】ガートマン,ラファル
(72)【発明者】
【氏名】ベビントン,パトリック
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-121409(JP,A)
【文献】特開2016-050784(JP,A)
【文献】特開2011-007659(JP,A)
【文献】特開2010-085134(JP,A)
【文献】特開2016-085200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0010626(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0140799(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0028949(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219732(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106842074(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00 - G01N 22/04
G01N 24/00 - G01N 24/14
G01N 27/72 - G01N 27/9093
G01R 33/00 - G01R 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料応答を検出する方法であって、
振動一次磁場を与えて試料に二次磁場を発生させるステップと、
前記試料の表面にほぼ直交する方向の前記振動一次磁場および前記二次磁場の成分が原子磁力計に及ぼす影響を減少させるステップと、
前記原子磁力計を用いて前記二次磁場を検出して前記材料応答を検出するステップとを含
み、
前記試料の表面にほぼ直交する方向の前記振動一次磁場および前記二次磁場の成分が原子磁力計に及ぼす影響を減少させる前記ステップが、
前記試料の前記表面にほぼ直交する成分を含む前記原子磁力計における補償磁場を与えるステップ、及び/又は、
前記原子磁力計の非受感軸を前記試料の前記表面にほぼ直交させ、前記振動一次磁場の方向に合わせるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記振動一次磁場は、前記試料の前記表面にほぼ直交する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補償磁場はBz’+bz=0であるように与えられ、Bz’は前記試料の前記表面にほぼ直交する
の成分であり、bzは前記試料の前記表面にほぼ直交する前記二次磁場の成分であり、
であり、
は前記振動一次磁場であり、
は前記補償磁場である、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記補償磁場は、前記試料の前記表面にほぼ平行な第1の方向の
成分を含み、前記第1の方向の前記振動一次磁場の成分の前記影響を減少させるようになっている、請求項
1~3に記載の方法。
【請求項5】
前記原子磁力計は、バイアス磁場を含み、前記方法は、前記バイアス磁場を前記試料の前記表面にほぼ直交する方向に合わせるステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料の前記表面にほぼ平行な第1の方向の成分を含む前記原子磁力計における補償磁場を与えるステップを含み、前記補償磁場は、前記第1の方向の前記振動一次磁場の成分の前記影響を減少させる、請求項
1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
By’=0であり、By’は前記第1の方向の
の成分であり、
であり、
は前記振動一次磁場であり、
は前記補償磁場である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記補償磁場は、前記試料の前記表面にほぼ平行な第2の方向の成分を含み、前記第2の方向は、前記第1の方向にほぼ直交し、前記補償磁場は、前記第2の方向の前記振動一次磁場の成分の前記影響を減少させる、請求項
6または7に記載の方法。
【請求項9】
材料応答を検出するシステムであって、
振動一次磁場を与えて試料に二次磁場を発生させる磁場源と、
前記材料応答を検出するために前記二次磁場を検出する原子磁力計とを備え、
前記試料の表面にほぼ直交する主方向の前記振動一次磁場および前記二次磁場の成分が前記原子磁力計に及ぼす影響を減少させるように構成されて
おり、
前記システムは、前記主方向の成分を含む前記原子磁力計における補償磁場を与える補償磁場源を備え、及び/又は、前記原子磁力計は、前記主方向の前記振動一次磁場に沿って配置された非受感軸を有する、システム。
【請求項10】
前記原子磁力計は、前記主方向にバイアス磁場を与えるように構成されたバイアス磁場源を備える、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記主方向にほぼ直交する第1の方向の成分を含む前記原子磁力計における補償磁場を与える補償磁場源を含み、前記第1の方向の前記振動一次磁場の成分の前記影響を減少させるようになっている、請求項
9または10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料応答を検出する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[非特許文献1]A. Wickenbrock, S. Jurgilas, A. Dow, L. Marmugi, and F. Renzoni, Opt. Lett. 39, 6367 (2014).
[非特許文献2]C. Deans, L. Marmugi, S. Hussain, and F. Renzoni, Appl. Phys. Lett. 108, 103503 (2016).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の態様は、試料の表面にほぼ直交する方向の一次磁場および二次磁場の成分が原子磁力計に及ぼす影響を減少させて材料応答を検出する方法およびシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、材料応答を検出する方法であって、
振動一次磁場を与えて試料に二次磁場を発生させるステップと、
試料の表面にほぼ直交する方向の一次磁場および二次磁場の成分が原子磁力計に及ぼす影響を減少させるステップと、
原子磁力計を用いて二次磁場を検出して材料応答を検出するステップとを含む方法が提供される。
【0005】
本発明の一態様によれば、材料応答を検出するシステムであって、
振動一次磁場を与えて試料に二次磁場を発生させる磁場源と、
材料応答を検出するために二次磁場を検出する原子磁力計とを備え、
システムは、試料の表面にほぼ直交する主方向の一次磁場および二次磁場の成分が原子磁力計に及ぼす影響を減少させるように構成されている、システムが提供される。
【0006】
本発明の実施形態の任意選択の特徴は、従属請求項において提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、材料応答を検出する方法であって、
振動一次磁場を与えて試料に二次磁場を発生させるステップと、
原子磁力計のバイアス磁場を変調するステップと、
原子磁力計を用いて二次磁場を検出して材料応答を検出するステップとを含む方法が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、一次磁場の振動の周波数は一定である。
【0009】
いくつかの実施形態では、バイアス磁場の変調の周波数は、好ましくは一桁だけ、一次磁場の振動の周波数よりも小さい。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法は、二次磁場の検出に応答して原子磁力計によって与えられた信号を復調して振幅および/または位相を決定するステップを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、方法は、一次磁場の振動の周波数を参照して二次磁場の検出に応答して原子磁力計によって与えられる信号を復調して一部復調された信号を与えるステップを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法は、バイアス磁場の変調の周波数を参照して一部復調された信号を復調して、二次磁場の検出に応答して原子磁力計によって与えられる信号の振幅および/または位相を決定するステップを含む。
【0013】
本発明の一態様によれば、材料応答を検出するシステムであって、
材料応答を検出するために二次磁場を検出する原子磁力計であって、バイアス磁場を与えるバイアス磁場源を備える原子磁力計と、
バイアス磁場を変調する変調器とを備えるシステムが提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、システムは、振動一次磁場を与える一次磁場源を備える。
【0015】
いくつかの実施形態では、システムは、二次磁場の検出に応答して原子磁力計によって与えられる信号の振幅および/または位相を決定する復調器配列を備える。
【0016】
いくつかの実施形態では、復調器配列は、二次磁場の検出に応答して原子磁力計によって与えられる信号を受信する受信器を備え、一部復調された信号を与えるようにある一次磁場または上記一次磁場の振動の周波数を参照して信号を復調するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、復調器配列は、変調器から変調信号を受信する受信器を備え、一部復調された信号の振幅および/または位相の決定を可能にするために変調信号を参照して一部復調された信号を復調するように構成されている。
【0018】
いくつかの実施形態では、バイアス磁場源は、コイル配列を備える。
【0019】
独立した方法の請求項に係る方法および本発明の他の態様に係る方法、ならびにさらに、任意選択で、従属請求項のうち任意の1つまたは複数の特徴および/または本発明の態様の任意選択の特徴は、本発明のいくつかの実施形態において、組み合わされてもよい。
【0020】
独立したシステムの請求項に係るシステムおよび本発明の他の態様に係るシステム、ならびにさらに、任意選択で、従属請求項のうち任意の1つまたは複数の特徴および/または本発明の態様の任意選択の特徴は、本発明のいくつかの実施形態において、組み合わされてもよい。
【0021】
材料応答は、一次磁場に対する試料の応答であってもよく、これは、原子の応答、磁化、渦電流、および他の応答を含み得る。二次磁場は、材料応答を示してもよく、いくつかの実施形態では、材料応答は、二次磁場を含んでもよく、または二次磁場であってもよい。
【0022】
補償磁場を与えるステップは、補償磁場を発生させるように補償コイル配列を動作させることを含んでもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、一次磁場および/または二次磁場の1つまたは複数の成分が原子磁力計に及ぼす影響を減少させるように、補償コイル配列の1つまたは複数のコイルの原子磁力計の検出セルからの1つまたは複数の距離を変更または調整するステップを含んでもよい。例えば、一次磁場および/または二次磁場のいずれかの成分が原子磁力計に及ぼす影響を減少させるために、方法は、その成分の方向に軸を有する補償コイルの検出セルからの距離を変更または調整するステップを含んでもよい。
【0024】
好ましくは、補償磁場は、振動磁場である。
【0025】
好ましくは、補償磁場は、一次磁場と同じ周波数で、それらの間で一定の位相差を維持するように、振動するようになされる。
【0026】
試料の表面にほぼ直交する振動一次磁場を与えて試料に二次磁場を発生させるステップは、rfコイル配列を動作させて一次磁場を与えることを含み得る。
【0027】
各実施形態では、振動一次磁場を与える磁場源は、塊状鉄心を有するまたは有さないrfコイルを含む。
【0028】
各実施形態では、一次磁場は、あるrf周波数、例えば1Hzから1GHzの範囲内で振動する。
【0029】
いくつかの実施形態では、振動一次磁場を与える磁場源は、完全に試料表面の片側に配設されるように構成されてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、システムは、完全に試料表面の片側に配設されるように構成されてもよい。
【0031】
方法および/またはシステムは、様々な目的のために、例えば、材料欠陥のイメージングのためにならびに/または材料の電気伝導率および透磁率を検出するために、材料応答を検出するものであり得る。いくつかの実施形態では、方法および/またはは、保温材下腐食(CUI:Corrosion Under Insulation)検出のために使用することができる。いくつかの実施形態では、方法および/またはシステムは、鉄筋コンクリート構造の状態の検出のために使用することができる。いくつかの実施形態では、方法および/またはシステムは、物体の位置特定のために使用することができる。
【0032】
各実施形態では、原子磁力計は、高周波原子磁力計である。
【0033】
いくつかの実施形態では、試料は高透磁率を有し、二次磁場は二次磁化によって支配される。しかしながら、他の実施形態(高伝導性の試料)では、二次磁場は、渦電流によって発生する場によって支配される。
【0034】
いくつかの実施形態は、高周波原子磁力計を用いた材料欠陥のイメージングの改善を提供することができる。
【0035】
以下に、本発明の各実施形態を、添付図面を参照して単に例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1(a)】本発明の一実施形態による材料応答を検出するシステムを示す図である。
【0037】
【0038】
【
図1(c)】いくつかの例での二次磁場の形成のされ方を示す図である。
【0039】
【
図2】
図1の実施形態においてコイルが凹所の中央を通ってy軸に沿って移動させられるときの二次の場の成分b
yおよびb
zのシミュレーション(赤色の破線および青色の実線でそれぞれ表示されている)を示す図である。凹所境界内のb
yおよびb
zの最大値は、b
y,maxおよびb
z,maxと呼ばれる。
【0040】
【
図3】一次の場の成分の様々な振幅について磁力計によって記録された凹所にわたる磁気共鳴信号の信号位相(黒色の点線)および振幅(赤色の実線)のモデル化された変化を示す図である。画像配列の垂直軸は垂直成分の変化を表し、一方、水平軸は一次の場の水平成分の変化を表す。振幅は、b
y,maxおよびbz,maxの単位で表される。
【0041】
【
図4】補償点から垂直コイル(蒸気セルの上方の補償コイル)の異なる位置について測定された(a)振幅および(b)位相コントラストを示す図である。垂直コイルの位置ごとに、水平コイルの位置は、対称的なプロファイルを実現するように調整された。(a)における緑色の正方形は、rf分光信号振幅の変化を表す。青色/赤色の実線は、補償場が無いときの振幅/位相コントラストを示す。
【0042】
【
図5】(a)~(c)/(g)~(i):補償点のまわりの補償rf場の水平成分の3つの値について記録された深さ2.4mmである直径24mmの凹所を含む厚さ6mmの炭素鋼板の64×64mm
2の面積にわたるrf分光信号の振幅/位相の測定された変化を示す図である。 (d)~(f)/(j)~(l):振幅/位相画像の中央を通る垂直断面を示す図である。 画像は、114.2kHzで記録されていた。
【0043】
【
図6】本発明の別の実施形態による実験装置を示す図である。
【0044】
【
図7】(a)rf場補償無し、(b)2つのrfコイル(
図1)を用いて行われる補償有り、(c)回転したバイアス磁場および補償コイル(
図6)有りという3つの測定構成を用いて記録された深さ2.4mmである直径24mmの凹所を含む厚さ6mmのAl板の64×64mm
2の面積にわたるrf分光信号の振幅の測定された変化を示す図である。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の各実施形態では、構造上の欠陥のイメージングは、高周波原子磁力計を用いて高周波励起場に対する材料応答を記録することによって実現することができる。以下に、常磁性試料および強磁性試料における構造上の欠陥を表す画像の振幅および位相コントラストの増大を可能にする測定構成の2つの例を説明する。両方の例は、原子磁力計信号から励起場の成分をなくすことを伴う。第1の例は、磁力計信号における励起場を直接補償する1セットのコイルを用いて実施される。第2の例は、高周波磁力計がその軸の1つに沿って振動する磁場に敏感でないことを利用する。実験観察を確認するモデル化の結果が、詳細に説明される。
【0050】
https://www.researchgate.net/publication/326060467_Non-Destructive_Structural_Imaging_of_Steelwork_with_Atomic_Magnetometersに見ることができるBevington、Patrick&Gartman、Rafal&Chalupczak、Witold&Deans、Cameron&Marmugi、Luca&Renzoni、Ferruccio(2018年)、「Non-Destructive Structural Imaging of Steelwork with Atomic Magnetometers」(論文1)の参照がなされ、その開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0051】
Bevington、Gartman&Chalupczak、「Imaging of material defects with a radio-frequency atomic magnetometer」、Review of Scientific Instruments 90、013103(2019年);doi 10.1063/1.5053959(論文2)の参照もなされ、そのバージョンは、付属文書1として英国特許出願番号GB1811928.9およびGB1813858.6に添付されたものであり、これにより優先権が主張され、その開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0052】
論文1および論文2は、本発明の内容を与え、論文1または論文2に記載された構造または方法の特徴、あるいは応用のいずれも、修正または追加によって本発明の各実施形態に適用可能である。
【0053】
非破壊検査における高周波磁場の実施は、特に研究試料の表面へ直接アクセスできない場合に、構造上の欠陥を検出するための費用対効果が高い選択肢を提供する。この技法は、rfコイルによって生成されるいわゆる一次磁場
に対する材料応答を監視するステップを含んでもよい[1]。材料応答は、様々なやり方で検出することができる。伝統的には、これは、rfコイル(または専用のピックアップコイル)のインピーダンスを監視することによって実現される[1~5]。しかしながら、このタイプの測定における計測装置の使用の簡潔さを、低周波における信号感度の劣化が上回る。他の選択肢は、巨大磁気抵抗(GMR)磁力計[6~8]、超伝導量子干渉計(SQUID)[9~10]、および高周波磁力計[11~14]などの磁気センサの実施を含む。磁場センサは、媒体中のいわゆる二次磁場
の応答を直接監視する。二次の場は、高伝導性の試料中に励起された渦電流、または高透過率を有する試料中に誘起された磁化を通じて一次磁場によって発生し[15]、試料内の不均質性/構造上の欠陥のシグネチャを含む。
【0054】
本発明の各実施形態は、rf原子磁力計を利用し、材料欠陥のイメージングに使用することができる。
【0055】
上述したように、本発明の各実施形態は、システムの出力の振幅および/または位相コントラストを増大させる。
【0056】
いくつかの実施形態では、これは、試料の表面にほぼ直交する方向の一次磁場および二次磁場の成分が原子磁力計に及ぼす影響を減少させることによって実現される。これは、原子磁力計信号から試料の表面にほぼ直交する方向の一次の場および二次の場の成分をなくすことを共に伴う2つの実施形態に関連して以下に説明される。
【0057】
磁力計信号から一次の場の成分をなくすことは画像の位相/振幅コントラストをかなり大きく増大させることが本明細書に示される。これにより、大きい面積の試料の非破壊検査において欠陥を比較的素早く示すことをもたらすことができる。この概念は、常磁性(アルミニウム)試料および強磁性(炭素鋼)試料の内容で調査される。
【0058】
図1(a)に見ることができるように、本発明の一実施形態は、高周波原子磁力計12とrf周波数で振動する一次磁場を与える一次磁場源14とを備えるシステム10を含む。本実施形態では、一次磁場源14はrfコイルであるが、他の磁場源が他の実施形態において使用され得る。
【0059】
本実施形態では、rfコイル14は、2mmのプラスチック芯(内径)に巻かれ、4mmの幅(外径)および10mmの長さを有する、0.02mmの電線を用いた1000回巻きコイルである。
【0060】
試料は、(必ずしもそれほど電気的に伝導性ではないが)電気的に伝導性であるべきであり、および/または試料が磁化され得るように透磁率を有するべきである。
【0061】
rfコイル14は、それが試料16に隣接しているが、完全に試料16の片側にあり、試料16と重なり合わない関係で配置され得るように構成され、振動一次磁場を発生させて試料に二次磁場を発生させるように動作することができる。二次磁場は、試料の材料応答を示す。
図1(c)の参照がなされる。
【0062】
原子磁力計は、二次磁場を検出するように構成されている。
【0063】
強磁性のターゲットが、以下の2タイプの二次の場を発生させることは、注目に値する。
・ 印加される一次の場と同じ方向の二次磁場(二次磁化)、および
・ 印加された一次の場と反対方向の渦電流により誘起された磁場(渦電流により誘起された磁場)
【0064】
図1(a)は、実験装置の主要な構成要素を示す。この例では、rfコイルによって生成された一次の場により試料(この場合には、直径48mmおよび深さ2.4mmを有する凹所を備えたAl板)中に励起された渦電流によって二次磁場が発生する。原子磁力計信号は、rfコイルおよび二次磁場により発生する一次の場によって生成される成分を通常組み合わせる。
【0065】
この説明では、z方向は、試料の表面に直交する方向であり、x方向およびy方向は、試料の表面に平行な相互に直交する方向である。
【0066】
原子磁力計の詳細は、W.Chalupczak、R.M.Godun、S.Pustelny、およびW.Gawlik、Appl.Phys.Lett.100、242401(2012年)に記載されており、これは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。実験装置は、[17、15]に説明されたものと同様であるので、ここでは、いくつかの構成要素だけが簡潔に説明される。
【0067】
原子磁力計12は、検出セル20を備え、この検出セル20は、本実施形態では、室温のセシウム原子蒸気(これに関して、原子密度nCs=3.3×1010cm-3)を収容する1cm3のパラフィンでコーティングされたガラスセルである。
【0068】
磁力計は、バイアス磁場方向に検出セル20におけるバイアス磁場26を与えるように構成されたバイアス磁場源24(
図1(a)に図示せず)を備える。
【0069】
周囲の場および試料によって生成される任意の残留直流磁場の能動的な補償を実行するために、磁力計は、蒸気セル20の隣に位置するフラックスゲート25と、3つのPIDユニット(本実施形態では、SRS960)とを含む。本実施形態では、フラックスゲートは、Bartington社のMag690である。周囲の場の受動的および能動的な補償に関しては、rfスペクトルプロファイルの線幅は、約30Hzである。小サイズの検出セル20は、周囲の場の勾配に対する部分的な耐性を与えることができる。
【0070】
磁力計は、バイアス磁場26に沿って伝播するセシウム62S1/2F=3→62P3/2F’=2の遷移(D2線、852nm)に周波数ロックされた(本実施形態では377μWにおける)円偏光したポンプレーザビーム28を用いて検出セル20内の原子をポンピングするように構成されたポンプレーザ22を備える。
【0071】
原子磁力計は、ポンプビームに位相オフセットロックされるとともにバイアス磁場26に直交する直線偏光したプローブレーザビーム32を用いて検出セル20内の原子スピン歳差運動をプローブで探るように構成されたプローブレーザ30を備える。
【0072】
原子磁力計は、検出セル20を通過した後のプローブレーザビームを受信し、ファラデー回転を検出するように構成された平衡偏光計(balanced polarimeter)34を備える。平衡偏光計は、ファラデー回転の検出を示す電子出力信号を与えるように構成されている。
【0073】
rfコイル14の軸は、ポンプビームとプローブビームの両方に直交する。
【0074】
システム10は、rf周波数で振動する電流をそこに与えることによってrfコイル14を動作させて一次磁場を発生させ、rfコイル14内の電流の周波数および位相を制御し、それによって一次磁場の周波数および位相も制御するように構成されたロックインアンプ36(
図1(a)に図示せず)の形態で一次の場の振動コントローラを備えるとともに、原子磁力計の平衡偏光計からの出力信号を受信する受信器を備える。これは、必ずしも全ての実施形態において必須ではないが、ロックインアンプ36は、周波数変調された電流をrfコイルに与えて周波数変調された一次磁場をもたらすように構成されてもよい。ロックインアンプは、rfコイル14の電流の周波数または変調を参照して平衡偏光計からの出力信号を復調し、例えば、第1の出力信号をコンピュータに与えて信号の振幅および/または位相を得るように構成されている。それによって、ロックインアンプは、復調器として働く。コンピュータは、信号の振幅を使用して試料の材料応答を検出し、場合によっては、材料欠陥のイメージングを行うことができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、コンピュータは、ロックインアンプ36から第1の出力信号を受信し、そこから試料の伝導率および/または透過率の変化を決定する受信器を備えることができる。
【0076】
本実施形態は、y方向およびz方向に沿った静的な場がゼロにされ、x方向に沿ったバイアス場が、寸法がそれぞれ1m、0.94m、および0.88m(最大コイル長さ1m)である3対の相互に直交する入れ子になった正方形ヘルムホルツコイル[18]によって生成される、磁気的にシールドされていない環境を使用する。ヘルムホルツコイルは、周囲磁場を能動的および受動的に補償し、雑音を下げ、バイアス磁場の方向および強度を安定化および調整するためにコイル配列を形成する。言い換えれば、コイル配列は、バイアス磁場源を与える。
【0077】
測定信号は、試料がrfコイル(
図1(a))の下で移動するときに、rf原子磁力計によって記録されたrf共鳴スペクトルの位相および振幅の変化からくる。
を発生させるrfコイルは、ロックインアンプ36の内部参照の出力によって駆動される。
【0078】
図示および説明される実験装置では、試料が、2次元コンピュータ制御式平行移動ステージに固定される。試料16は、セルから約30cmに位置し、コイルは、セルと同じ軸上で試料表面の上方1mm~2mmに配置される。
【0079】
バイアス場
の強度は、システムの動作周波数(本実施形態では12.6kHzであるが、他の周波数、例えば、10kHz~20kHzの範囲内の周波数が使用されてもよい)、言い換えれば、磁気共鳴の周波数、および必要な一次の場の周波数を定める。
【0080】
動作時、コヒーレントな原子スピン歳差運動は、rf場によって駆動される。一次の場および二次の場の重ね合わせは、この運動を変え、これは、バイアス磁場26に直交して伝播する直線偏光したプローブレーザビーム32を用いてプローブで探られる。Cs原子は、バイアス磁場
に沿って伝播するCs6
2S
1/2F=3→6
2P
3/2F’=2遷移(D2線、852nm)にロックされた円偏光したポンプレーザ22を用いて伸縮状態(F=4、m
f=4)に光学的にポンピングされる。プローブビーム(30μW)は、ポンプビームに位相オフセットロックされ、それを6
2S
1/2F=4→6
2P
3/2F’=5遷移(D2線、852nm)から580MHzの青色シフトにする。Cs原子のコヒーレントなスピン歳差運動は、プローブビームの偏光(ファラデー回転)に結び付けられ、これは平衡偏光計を用いて検出され、次いで、その信号は、rf場の位相に関連付けられたロックインアンプ36によって処理される。
【0081】
イメージングのために、これは、試料またはシステムが移動するときに、試料表面の画素ごとに実行することができる。
【0082】
上述した特定の原子磁力計が、使用できる原子磁力計の唯一のタイプでなく、例えば、異なる検出セル、異なる寸法、異なる出力、異なるレーザ周波数、および異なる遷移が、必要に応じて、用いられてもよいと、当業者は理解するであろう。詳細には、Cs原子以外の原子が、固体状態、液体、および/または蒸気の形態で使用されてもよく、それに応じて周波数および出力が調整されてもよい。さらに、ポンピング、場の発生、平行移動、およびプローブビーム検出の手段は、変更されてもよい。例えば、ポンプおよびプローブサブシステムは、1つ、2つ、3つ、またはそれよりも多くのレーザを使用してポンピングおよびプロービングを行ってもよく、ビームの偏光は、いくつかの実施形態において変更されてもよい。平衡偏光計は、任意のプローブビーム検出器に置き換えられてもよく、好ましくは、このプローブビーム検出器は、プローブビームの偏光および/または振幅を検出することができる光検出器である。
【0083】
発明者らは、以前、アルミニウム板内の凹所が発生させる空間プロファイルの形状を解析した[15]。このプロファイルは、原子磁力計によって記録されたrf分光信号の位相および振幅の変化を表す。それは、一次磁場および二次磁場からの寄与を含む。磁力計信号の強い一次の場の寄与により、二次の場の2つの直交成分bzおよびbyは、それぞれrf分光信号の振幅および位相へマッピングされることになる。発明者らは、試料表面に平行な二次の場の成分byが、表面クラック(凹所)のすぐ近くでその符号を変化させることに注目した。強い一次の場の結果として、rf原子磁力計によって記録される結果として得られる場の変化は、二次の場の成分の方向フリップ(direction flip)を示すが、観察されるrf信号位相の変化は、byの実際の変化よりも小さい。
【0084】
図1(a)を再び参照すると、本発明の本実施形態では、システムは、試料16の表面にほぼ直交する方向の一次の場および二次の場の磁場の成分が原子磁力計に及ぼす影響を減少させ、好ましくはなくす、試料16の表面にほぼ直交する成分を含む補償磁場とも呼ばれる振動補償磁場を原子磁力計で、具体的には検出セル20で与える補償磁場源40を備える。詳細には、補償磁場は、
の励起の効率を変更することなく、原子磁力計蒸気セルによって監視される結果として得られる場への一次の場の寄与を補償する。
【0085】
図1(a)から分かり得るように、本実施形態では、補償磁場源40は、第1の補償コイル42と第2の補償コイル44とを備える補償コイル配列である。
【0086】
第1の補償コイル42は、試料16の表面にほぼ直交する磁場を、原子磁力計で、具体的には検出セル20で与えるように、試料16の表面に直交する方向であるzとほぼ一致する軸を有する。
【0087】
本実施形態では、検出セル20は、rfコイル14と第1の補償コイル42との間に位置するが、これは、必ずしも全ての実施形態において必須ではない。
【0088】
第2の補償コイル44は、試料16の表面にほぼ平行でありかつバイアス場方向にほぼ直交する磁場を原子磁力計で、具体的には検出セル20で与えるように、試料16の表面に平行でありかつバイアス場方向にほぼ直交する方向であるyとほぼ一致する軸を有する。
【0089】
本実施形態では、検出セル20は、プローブレーザ30と第2の補償コイル44との間に位置し、第2の補償コイル44は、検出セル20と平衡偏光計34との間に位置するが、これは、必ずしも全ての実施形態において必須ではない。
【0090】
補償コイル配列40は、検出セル20において補償磁場
を与えるように構成されている。
【0091】
言い換えれば、z方向およびy方向に沿って向けられた2つのrfコイルのセット(
図1(a))は、原子磁力計によって見られる一次の場を補償する振動磁場
を生成する。コイルは、
を発生させるために使用される同じロックインアンプ36の内部参照の出力によって駆動される。これは、場
と
との間に一定の位相差を維持する。
【0092】
言い換えれば、一次の場は、z方向およびy方向に沿って向けられた2つのrfコイルのセットによって蒸気セル内で補償される。
【0093】
しかしながら、以下に説明される理由のために、z方向の二次磁場の成分も補償される。
の2つの成分の振幅は、蒸気セルからの関連コイルの距離を変えることによって変更することができる。
【0094】
rf原子磁力計によって監視される結果として得られる磁場は、一次の場、二次の場、および補償場、言い換えれば
からの成分を含む。
【0095】
この構成は、yz平面内のrfの振幅および位相(向き)の決定を可能にする。rf分光信号の振幅
および位相
は、b
z+B’
zおよびb
y+B’
yがrf信号の2つの直角位相成分である結果として得られる場の変化を説明する。
【0096】
伝導性試料における凹所(
図1(a))の中央にわたる
方向のrfコイル位置の1次元スキャンの場合には、
のモデルで始まる(当業者は、同様の議論は、以下の通り、ある透磁率を有する試料についての磁化に基づいてなされ得ることを理解するであろう)。この幾何学的形態では、b
yおよびb
z成分だけが生成される。
図2は、rfコイル位置に対する二次rf場の成分の依存性を示す。均一な試料では、渦電流の流れは、円対称性を有し、
は、たった1つのゼロでない成分b
zを有する[
図2の青色の実線]。凹所のすぐ近くで、渦電流の流れの対称性は破れ、ゼロでない成分
がyz平面内に生成される[
図2の赤色の破線]。渦電流の流れの非対称性は、凹所の他方の側に反映され、それによりb
yは反対符号になる。凹所の上方のrfコイルの場合には、より大きなリフトオフにより、板を通じた磁場束がより小さくなり、したがって、
は減少する。凹所境界内のbyおよびbzの最大値をby,maxおよびbz,maxとして言及する。
【0097】
前に示したように[15]、zに沿った強い一次の場
の存在下で、二次の場の成分の変化が、rf分光信号の振幅(b
z)および位相(b
y)へマッピングされる。原子磁力計によって監視される結果として得られる磁場の変化は、変化がずっとより大きい一次の場の上に現れるので、比較的小さい。
【0098】
より良い洞察を与えるために、zと
との両方に沿って
である場合を検討する。ここで、観察された振幅および位相コントラストは、それぞれC
R≦0.05およびC
φ≦4°であると推定され、ただし、C
R=(R
Max-R
Min)/(R
Max+R
Min)、およびC
φ=φ
Max-φ
Minであり、R
Max、R
Min、φ
Maxおよびφ
Minは、関連する変数の最大値/最小値である(
図3(c)のコーナーのグラフを参照。これらの値は、C
R=1およびC
φ=180°のその最大よりもかなり低い。
【0099】
図3は、結果として得られる磁場に対する原子磁力計によって測定されたrf分光信号の振幅および位相のシミュレートされた依存性を示す。原子磁力計によって監視される結果として得られる磁場
の一次の場の成分の完全な補償は、振幅および位相コントラスト[C
R=0.44およびC
φ=124°、
図3の中央グラフ]の増大をもたらすが、最大コントラスト値を生成しない。その理由は、
の場合に、信号振幅が
になり、高コントラスト成分b
yがb
zのゆっくり変化するオフセットによって減少することにある(
図2)。分子の符号および分母の特異点の変化があるときにだけ、rf分光信号の位相
は、180°だけ変化する。これは、
の軸成分に関して最大コントラストを実現するための条件は、B’
z+b
z,max=0のときであることを示す。以下において、補償点として、B’
y=0と共にこの条件を指す。
図3は、最大振幅および位相コントラストが、列ごとに、すなわち、B’
yの任意の値について、B’
z+b
z,max=0の場合に観察されることを裏付ける。
【0100】
補償点から右/左に移動すると、負/正の参照レベルが追加になる。これは補償点の両側で観察されるプロファイルの対称的な変化をもたらす。振幅および位相コントラスト(CR=1、Cφ=180°)は、|B’y|≦by,maxである限り、補償点のすぐ近くで劣化しない。補償点のすぐ近くで、モデル化は、凹所エリアにわたってほぼ180°だけ磁気共鳴信号の位相跳躍を予測する。突然の位相変化の理由は、rf分光信号の位相を定めるアークタンジェント関数の分母における結果として得られるrf場のz成分の存在である。
【0101】
発明者らは、厚さ6mmのアルミニウムおよび炭素鋼板における凹所(直径24.5mm、深さ2.4mm)の形態の欠陥にわたってスキャンされるrfコイルを用いて記録されたrf分光信号の振幅および位相の変化を、rf磁場補償の実験的探査用の試験台として適合させた[15]。補償点の実現から始める。実験上、これは、補償コイルと蒸気セル20との間の距離を調整することによって実現される(
図1(a))。蒸気セル20の上方に位置するコイル(第1の補償コイル42)は、一次の場を発生させるrfコイル14に関する軸上に配置される。zに沿ったこのコイルの最適な位置は、rf分光信号の振幅を最小にすることによって確立される。他の補償コイル(第2の補償コイル44)の位置は、3つの方向全てにおいて調整することができる。このコイルの存在は、かなり大きいrf場が試料によって試料表面(この例では、水平面)に平行な面内に発生する強磁性の物体に関する測定において特に重要である。
図3は、水平方向の補償により対称的な振幅および位相プロファイルという結果になることを示す。このファクタは、補償点についての調査に利用される。
【0102】
図4は、zに沿った補償点からの垂直コイルの距離の関数としての(a)振幅コントラストC
R(青色の菱形)、および(b)位相コントラストC
φの変化を示す。測定は、厚さ6mmのアルミニウム板を用いて行われた。
図4(a)の緑色の正方形は、凹所の中央で測定されたrf分光信号の変化を表す。両方のグラフは、補償点における最大コントラストの存在を裏付ける。参考までに、rf補償場無しで記録された振幅/位相コントラスト値[
図4(a)/(b)の青色/赤色の実線]を示す。
【0103】
図5(a)~(c)/(g)~(i)は、補償rf場の水平成分の3つの値について記録された深さ2.4mmである直径24.5mmの凹所を含む厚さ6mmの炭素鋼板の64×64mm
2の面積の振幅/位相の画像を示す。振幅/位相の画像の中央を通る垂直断面が、
図5(d)~(f)/(j)~(l)に示されている。それらは、
図3の2行目から計算された振幅プロファイルに相当する。
図5(b)/(e)、((h)/(k)に示された場合は、補償点を表す。補償点の近くで、凹所によって生じた振幅画像は対称的であり、すなわち、2つの最大値は、立上がり縁部および立下り縁部に対応する。これは、磁化(R~|b
y|)により発生する二次の場の変化についてバックグラウンド基準を設定する一次の場を零にすることにより生じる。
図5(b)の明るさの最大値は、暗い輪によって囲まれており、言い換えれば、2つの凹所縁部によって生成されるプロファイルは、完全には対称的でない。これは、rf場に加えて、静磁場の不完全な補償により得る。静磁場の不完全な補償、すなわち、周囲磁場の変化は、原子磁力計の軸方向の変化に相当し、これは、観察された画像に影響を及ぼし得るものである[以下の段落、
図7(b)および(c)を参照]。これは、動作周波数を増大させることによって最小にされ得る。試料の磁気応答は、rfコイルのインダクタンスの変化の観点で考えられ得る。板にわたる磁化の不均質性は、一次の場の強度の変化として見られ、rf場の補償が局所的にだけ有効であることを意味する。磁力計によって監視されるrf場の強度の変化は、バックグラウンドレベルの変化によって見ることができる。補償点の両側に、R=|b
y+B’
y|[
図5(d)]からR~|b
y|[[
図5(e)]]を通ってR=|b
y-B’
y|[
図5(f)]への推移に関連した振幅プロファイルの形状および対称性の変化がある。位相コントラストは、我々が補償点から離れるように移動するときに(
図5(g)~(i))減少する。重要なことには、位相がそのバックグラウンド値からはずれるエリアは、補償点から離れると減少する。これは、より大きいエリアにわたる位相変化の空間の積分に相当するので凹所により発生する位相変化は無形であり得るが故に、粗い空間ステップを伴う実際の測定結果となる可能性がある。
【0104】
rf補償の利益は、リフトオフ距離を6mm~7mmに増加させた実験で示され得る。これに関する開始点は、標準的な構成(試料表面の上方1mm~2mmに位置する一次の場(非rf補償)を発生させるrfコイル)における位相コントラストの測定である。厚さ6mmのアルミニウム板における深さ2.4mmである直径12mmの凹所の場合についての位相コントラストは、C
φ=40°である。リフトオフ(6mm~7mm)が増加すると、試料における一次の場の強度が減少する結果となり、したがって二次の場の強度が減少する。同時に、蒸気セルと試料との間の一定の距離について(
図1(a))、原子磁力計によって監視される一次の場の成分は増大する。これは、記録された位相コントラストをC
φ=20°へ減少させる。補償rf場の調整に関して、初期の位相コントラスト値を回復するだけでなく、それをその最大値C
φ=180°に増大させることもできた。
【0105】
上述した実施形態では、
は、方向yの成分を有するとともに、方向zの成分を有するが、これは、必ずしも全ての実施形態において必須ではない。例えば、z方向のだけを補償することが可能である。上記実施形態では、これは、第2の補償コイル44を省略できることを意味する。
【0106】
別の実施形態が、
図6に示されている。
図6の実施形態では、試料の表面にほぼ直交する方向の一次の場および二次の場の成分が原子磁力計に及ぼす影響は、原子磁力計の非受感軸を試料の表面にほぼ直交する方向に合わせることによって減少させられる。
【0107】
本実施形態の方法は、rf原子磁力計が静的なバイアス場の軸に沿って振動する磁場
(
図1(a))に敏感でないことから利益を得る[16]。好ましくは
の方向でもあるzに沿って向けられた
について、B
zは、rf原子磁力計信号中に無く、測定構成は、補償された一次の場の成分を有するものに相当することになる。
【0108】
原子磁力計は、静磁場
の方向に沿って分極した原子蒸気中のこの場によってもたらされた原子のゼーマンコヒーレンス振幅の測定によって振動磁場の強度を評価する[19]。
の方向に直交して振動する磁場だけが原子コヒーレンスを発生させることができるので、磁力計は、
の方向に沿ったrf場に敏感でない。zに沿って合わされた
に関して、原子磁力計のこの特性は、補償条件の第1の部分B’
z+b
z=0に等価であり、言い換えれば、磁力計信号には結果として得られるrf場のz成分が無い。
【0109】
図6の実施形態は、多くの点で、説明されるようなものを除いて、
図1(a)の実施形態と同じである。静的なバイアス磁場26は、zに沿って向けられ、(ラーモア周波数約12.6kHzに相当する)以前の測定に使用された同じ強度に設定される。ポンプレーザビーム28は、バイアス磁場26に沿って位置合わせされる。ヘルムホルツコイルがそれに応じて調整され、x方向およびy方向に沿った静的な場をゼロにするように構成される。
【0110】
必ずしも全ての実施形態において必須ではないが、
図6の実施形態では、システムは、試料表面(これ例では、一次の場の水平成分)に平行である一次の場の成分を補償するために補償磁場を与える1セットのrfコイル40’も備える。これらの補償コイルの位置は、rf分光信号が最小にされるように変更される。補償コイル40’は、第1の補償コイル46と第2の補償コイル44とを備え、この第2の補償コイル44は、上述された通りである。第1の補償コイル46は、試料表面にほぼ平行であり、バイアス場の方向およびプローブレーザの方向にほぼ直交する軸を有する。本実施形態では、第1の補償コイル46の軸は、方向xにほぼ合わされている。補償コイル40’を通る電流は、試料無しでrf分光信号を最小にするように調整されており、言い換えれば、一次の場(B’
x=0およびB’
y=0)の水平成分を補償するように調整されている。これまでのように、rf原子磁力計によって監視される結果として得られる磁場は、一次の場、二次の場、および補償場、言い換えれば
からの成分を含む。
【0111】
図6の実施形態では、rf分光信号の振幅
および位相
は、二次の場の水平成分の振幅および位相の変化を反映する。
【0112】
言い換えれば、
図6の実施形態は、zに沿って
を有する。ポンプレーザビームは、バイアス場の方向に沿って原子蒸気を向ける。一次の場の水平成分は、x方向およびy方向に沿って向けられた2つのrfコイルのセットによって蒸気セル内で補償される。
【0113】
図7は、2つの説明した補償スキームの利益およびそれらの間の差異を示す。それは、(a)補償無し、(b)2つのrfコイルを用いて行われる補償有り、および(c)回転したバイアス磁場および補償コイル有りという3つの異なる構成において記録される深さ2.4mmである直径24mmの凹所を含む厚さ6mmのAl板の64×64mm
2の面積の画像を示す。画像は、rf分光信号の振幅の変化を表す。前に述べたように、補償されていない場合について、(a)記録されたプロファイルは、二次の場の垂直成分の変化を示す。補償された場合では、画像は、二次の場の水平成分(b)/成分(c)を示す。画像の対称性の差異は、バイアス場の方向の変化により生じる。
図7(b)に示された場合では、
は、x軸に沿って向けられ、したがって、その方向に平行な凹所縁部によってもたらされるシグネチャだけが、記録されたプロファイルに存在する(言い換えれば、
に平行な縁部は、磁力計によって見ることができる
に直交した振動する二次の場をもたらす)。
図7(c)に示された場合では、
は、z軸に沿って向けられ、記録されたプロファイルは、凹所の外形全体を示す。3つの画像について前もって定められた通りに、振幅コントラストC
Rを計算した。各数字は、振幅画像において補償スキームの実施により構造上の欠陥をより容易に特定することが可能になることを裏付ける[(a)C
R=0.04、(b)C
R=0.77、(c)C
R=0.79]。修正された幾何学的形態の場合には、rf分光信号の位相が、凹所に中心がある渦を示す。
【0114】
渦電流NDT測定において、原子磁力計によって記録されたrf分光信号の振幅および位相の変化を表す画像のコントラストを改善する2つの方法が上に示されている。これらの方法は、1セットのコイルまたは測定の幾何学的形態のどちらかによって上の例で実施される原子磁力計によって監視される結果として得られるrf磁場の成分の補償に基づいている。補償プロセスを通じて原子磁力計によって監視されるrf信号の振幅の減少は、欠陥検出のための能力を損なわない。それどころか、補償された構成における信号位相の監視は、不均質性の明確な(180°の位相変化の)シグネチャの選択肢を与える。
【0115】
システムの出力の振幅および/または位相コントラストを増大させる別の実施形態において、バイアス磁場が変調される。これは、試料にほぼ直交する方向の一次磁場および二次磁場の成分が磁力計に及ぼす影響を減少させることに加えるものであり得る、またはその代わりとなり得る。他の点において、本実施形態は、実質的に第1または第2の実施形態について説明された通りである。
【0116】
図8は、
図1(a)および
図6のシステムの概略システム図を示す。システムは、以下のように働く。
1.ロックインアンプ(1)36の内部参照の出力は、rfコイル14に周波数変調された電流を発生させる。
2.コイル14は、バイアス磁場(B
Bias)内で検出セルにおける原子スピンの歳差運動を駆動する(一次)rf場を発生させる。
3.バイアス磁場強度は、共鳴ラーモア周波数(ω
L=γB
Bias)の値、原子スピンとrf場との間に最大結合がある周波数を定める。
4.原子スピンの歳差運動を観察するために、非共鳴の直線偏光したプローブビーム32が使用される。ビーム偏光方向は、ファラデー効果を介して原子スピン振動に結合される。偏光振動は、平衡偏光計34によって電子信号に変換される。振動の振幅および位相は、(rfコイル電流変調と関連付けられた)ロックインアンプ36によって読み取られる。
5.原子スピン歳差運動の共鳴挙動を見るために、所与のバイアス磁場についての一次の場の周波数(
図9の左のグラフ)をスキャンすることができ、または選ばれた一次の場の周波数についてのバイアス磁場(
図9の右のグラフ)をスキャンすることができる。
図9は、両方の例における結果がどのようになるかを示す。
6.試料がrfコイルのすぐ近くに配置されるとき、原子は、試料によって発生する二次の場の作用をさらに受ける。
【0117】
信号の位相および振幅
試料がrfコイルのすぐ近くで移動されるとき、一次の場と二次の場との間の干渉は、原子を駆動するrf場の振幅および方向の変化を引き起こす。rf振幅の変化は、原子の応答の強度の変化へ移り、一方、rf場の方向の変化は、原子スピン振動の位相の変化へ移る。
【0118】
スキャン上の単一画素
最も簡単で最も高速の測定スキームでは、共鳴状態となるrf場周波数設定し、試料が移動している間に原子信号の振幅および位相を測定することができる。発明者らは、非磁性であるアルミニウムを用いてこれを行ったが、鋼材試料は強磁性であり、強く磁化される。これによりバイアス磁場のシフトを引き起こし、上述したような能動的な場の補償でも、典型的には、シフトは、共鳴の線幅よりも大きい。シフトは、場の補償に使用される磁気プローブと原子セルとの間のゼロでない距離の結果である。
【0119】
この問題を解消するやり方の1つが図10に示されているが、これは、遅い測定を伴う(時間:1画素あたり10秒)。この方法は、以下の通りである。
1) rfコイル14の電流変調周波数をスキャンすることによって、Rf場周波数がスキャンされる。
2) 信号は、ロックイン1によって復調され、信号の同相および直角位相成分の変化が記録される。
3) コンピュータはデータをフィットし、このフィットから、信号の振幅および位相が抽出される。
【0120】
しかしながら、本発明の一実施形態では、この問題を解消する改善されたやり方が、図11に概略的に示され、これは、高速測定(<1画素あたり1秒)をもたらす。
【0121】
上述したように、ほとんどの測定では、一次の場の周波数は、画像の点ごとに、rf共鳴にわたってスキャンされ、すなわち、共鳴プロファイル全体が記録される[15]。発明者らは、画像取得時間のかなりの減少を可能にする別のデータ取得モードを開発した。このモードでは、
の周波数の変調は、
の成分の振幅の低周波変調(この例では、1~20Hz)に置き換えられる。この場合には、ロックインアンプ36(本実施形態では、SRS865)によって一次の場の周波数で復調される信号は、rf共鳴振幅のこれに等しい振幅を有する低周波振動を含む。
の振幅変調の周波数に関連付けられた第2のロックインアンプの使用は、rf共鳴振幅の読取りを可能にする。
の周波数変調の広がりは、異なる試料位置について、共鳴周波数の可能なシフトなどの
の安定化の不完全のバランスを取ることができる。その結果として、記録された信号の位相は、二次の場の変化およびrfプロファイルの周波数シフトについての情報を含む。
【0122】
本実施形態では、システムは、第2のロックインアンプ38を備える。
【0123】
バイアス磁場源24は、バイアス磁場を変調し、変調信号を第2のロックインアンプ38に出力する変調器を備える。(rfコイル周波数に関連付けられた)第1のロックインアンプの第1の出力は、(バイアス場変調に関連付けられた)第2のロックインアンプの入力に接続される。第2のロックインアンプは、バイアス磁場の変調を参照して第1のロックインアンプ36からの出力信号を復調し、信号の振幅および位相を与えるように構成されている。それによって、第2のロックインアンプ38は、復調器として働く。
【0124】
方法は、以下の通りである。
1) rf場の周波数は一定に維持されるが、バイアス磁場の値はゆっくりと変調される。本実施形態では、バイアス場変調の周波数は1~10Hzである(歳差運動周波数は、約12kHzである)。しかしながら、バイアス場変調の周波数はできるだけ高いことが好ましい。好ましくは、このバイアス場変調は、バイアス場を上または下に周期的に傾斜させるのこぎり波の形態である。
2) この場合には、振幅変調された信号を観察する。
3) 第1のロックイン(一次の場の周波数を参照して復調する)を用いてこの振動の振幅を測定する。
4) 遅い変調の振幅の測定は、バイアス磁場変調の信号に関連付けられた第2のロックインを用いて行われる。ロックイン2によって測定される振幅は、原子共鳴の振幅に対応する。
【0125】
例えば上述したシステムのいずれかのような実施形態は、0.1mmの感度でイメージングを行うことができる。
【0126】
実施形態は、バックグラウンドの場の能動的な補償および試料の磁化の補償を用いて、磁気的に遮蔽されていない環境中で室温において隠れている伝導性バリアの存在下で鋼製品を非破壊的にイメージングするのに使用され得る。これは、例えば、隠蔽配管における腐食(CUI)の検出、およびコンクリート構造における構造上の異常の検出に使用され得る。
【0127】
本発明の各実施形態は、保温材下腐食を検出するために使用されてもよい。本発明の各実施形態は、コントラストの増大をもたらすことができ、それによって例えばパイプ内のサブmmの腐食ピットのイメージングが可能になる。
【0128】
いくつかの実施形態では、上述したシステムは、例えばパイプラインの大きい面積をスキャンするために、ロボット上に配置されてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、方法および/またはシステムは、コンクリート構造の状態の検出に使用されてもよい。
【0130】
応用は、組立ておよび溶接の品質が重要である製造および建設におけるものであってもよく、しばしば、潜在的に危険で費用のかかるX線スキャンの使用、製造プロセスの一部としての材料製造の使用、構造的損傷および疲労の時宜を得た無侵襲の特定が主なターゲットである健康および使用状況監視システム(HUMS:Health and Usage Monitoring System)の使用、原子力の使用、および流出が経済的コストになるとともに環境コストになる公益事業分野および/またはエネルギー分野、例えば、石油およびガスにおける使用を必要とする。応用は、エネルギー分野に関する保温材下腐食の検出、輸送分野に関する鉄筋コンクリート構造のモニタリング、核廃棄物容器モニタリングも含む。
【0131】
特に有利なのは、システムおよび方法が、
・ 安全および無侵襲(例えば、非電離放射線)であり得る
・ パイプラインの内壁に対する腐食を検出し得る
・ パイプラインの外壁に対する腐食を検出し得る
・ 腐食とパイプの曲げ/T字接合/溶接によるパイプライン形状の変化との間で区別することができ得る
・ 全ての保温材のタイプを通じてスキャンすることができ得る
・ 低コストであり得る
・ 現在の技法(解像、スイッチスキャンニングモード)の改善をもたらし得る
ことである。
【0132】
上記の実施形態では、ロックインアンプ36は一次の場のコントローラを与えるものとして説明されたが、一次の場のコントローラは、任意の電流発生器を備えてもよく、ただし、一次の場の振動コントローラは、電流発生器の周波数または変調を参照して平衡偏光計からの出力信号を復調するプロセッサを備えるものとする。それにもかかわらず、周波数/変調の源としてそれらがスペクトルの検出をより容易にさせ、検出器が1つの計測装置の内側にある(同期、参照は、自動的に振り分けられる)ので、ロックインアンプは、有利である。
【0133】
上記の実施形態では、材料応答検出は、材料欠陥のイメージングに使用されるが、これは、必ずしも全ての実施形態において必須ではない。いくつかの実施形態では、材料応答検出は、他の目的に、例えば、材料の伝導率および/または透過率を検出するために使用され得る。
【0134】
説明した実施形態および従属請求項の全ての任意選択のおよび好ましい特徴および修正は、本明細書に教示された本発明の全ての態様に使用できる。さらに、従属請求項の個々の特徴、ならびに説明した実施形態の全ての任意選択のおよび好ましい特徴および修正は、互いに組み合わせ可能および交換可能である。
【0135】
さらなる詳細は、「Enhanced material defect imaging with a radio-frequency atomic magnetometer」、J.Appl.Phys.125、094503(2019年);doi:10.1063/1.5083039に見ることができ、そのバージョンは、付属文書2として英国特許出願番号GB1811928.9およびGB1813858.6に添付されたものであり、これにより優先権が主張され、その開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0136】
英国特許出願番号GB1811928.9およびGB1813858.6における開示は、これにより優先権が主張されるものであり、本出願を伴う抽象観念において、参照により全体として組み込まれる。
【0137】
参考文献
[1] L. Ma and M. Soleimani, Meas. Sci. Technol., 28, 072001 (2017).
[2] H. Griffiths, Meas. Sci. Technol., 12, 1126 (2001).
[3] B. A. Auld and J. C. Moulder, J. Nondestr. Eval. 18, 3 (1999).
[4] L. Perez, J. Le Hir, C. Dolabdjian, and L. Butin, J. Elec. Eng., 55, 73 (2004).
[5] A. Sophian, G. Tian, M. Fan, Chin. J. Mech. Eng., 30, 500 (2017).
[6] T. Dogaru and S. T. Smith, Nondestr. Test. Eval., 16, 31 (2000).
[7] T. Dogaru and S. T. Smith, IEEE Transactions on Magnetics, 37, 5, 3831 (2001).
[8] P. Ripka, M. Janosek, IEEE Sensors J. 10, 1108 (2010).
[9] H. J. Krause and M. V. Kreutzbruck, Physica C, 368, 70 (2002).
[10] J. Storm, P. Hömmen, D. Drung, R. Körber, App. Phys. Lett. 110 072603 (2017).
[11] A. Wickenbrock, S. Jurgilas, A. Dow, L. Marmugi, and F. Renzoni, Opt. Lett. 39, 6367 (2014).
[12] C. Deans, L. Marmugi, S. Hussain, and F. Renzoni, Appl. Phys. Lett. 108, 103503 (2016).
[13] A. Wickenbrock, N. Leefer, J. W. Blanchard, and D. Budker, Appl. Phys. Lett. 108, 183507 (2016).
[14] C. Deans, L. Marmugi, and F. Renzoni, Opt. Exp. 25, 17911 (2017).
[15] P. Bevington, R. Gartman, W. Chalupczak, C. Deans, L. Marmugi, and F. Renzoni submited to App. Phys. Lett..
[16] Orientation of the GMR sensitive axis paralel to the surface of the sample has been discussed in [7].
[17] W. Chalupczak, R. M. Godun, S. Pustelny, and W. Gawlik, Appl. Phys. Lett. 100, 242401 (2012).
[18] G. Bevilacqua, V. Biancalana, P. Chesssa, Y. Dancheva, App. Phys. B 122 103 (2016).
[19] W. Chalupczak, R. M. Godun, S. Pustelny, Advances in At. Mol. and Opt. Phys. 67, 297 (2018).