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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】試料測定装置および試料測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/21 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021542999
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032342
(87)【国際公開番号】W WO2021039900
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2019156108
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】飯柴 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】松浦 孝泰
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-087885(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084007(WO,A1)
【文献】特表2018-501524(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0178785(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0252449(US,A1)
【文献】特開2018-029251(JP,A)
【文献】HASHIMOTO, M et al.,Orientation detection of a single molecule using pupil filter with electrically controllable polariz,Opt. Rev.,2015年10月06日,Vol. 22,pp. 875-881,DOI: 10.1007/s10043-015-0143-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、当該光源から射出される光を受光する受光素子と、該受光素子よりも前記光源側に配置されており入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子とを有する試料測定装置であって、さらに下記(1)および(2)のうち少なくとも一方の特定偏光素子を含み、
かつ、前記受光素子が第1の受光素子および第2の受光素子を有しており、前記光学素子は偏光ビームスプリッターであり、該偏光ビームスプリッターにおいて反射される光を前記第1の受光素子で受光し、該偏光ビームスプリッターにおいて透過される光を前記第2の受光素子で受光するものであることを特徴とする試料測定装置。
(1)測定対象試料よりも前記光源側に配置されており前記光源から射出される光を透過または反射する特定偏光素子、および、測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており測定対象試料を透過または反射した光を透過または反射する特定偏光素子の両方。
(2)測定対象試料よりも前記光源側であってかつ測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており、前記光源から射出される光を透過または反射し、かつ、測定対象試料から反射された光を透過または反射する特定偏光素子。
[特定偏光素子]
面内にx軸方向とこれに直交するy軸方向とを有し、面内の位置によってジョーンズ行列が異なっている透過型または反射型の偏光素子。
【請求項2】
請求項1の(1)により特定される特定偏光素子の両方を有しており、いずれの特定偏光素子も測定対象試料の一方側に配置されている請求項1に記載の試料測定装置。
【請求項3】
前記特定偏光素子のxy平面内の領域Rinに入射した光を該領域Rinに対して前記特定偏光素子の中心軸対象の位置にある領域Routに入射させたとき、前記領域Routを透過した光のジョーンズベクトルは、前記領域Rinに入射した光のジョーンズベクトルと同じである請求項1または2に記載の試料測定装置。
【請求項4】
前記特定偏光素子は、xy平面内にM個の領域(R1~RM)を有しており、領域Riと、該領域Riに対して前記特定偏光素子の中心軸対象の位置にある領域Rjと、該領域Rjに隣接している領域Rkとを有しており、下記条件Aおよび条件Bを満たす請求項1~3のいずれか一項に記載の試料測定装置。
[条件A]
ジョーンズベクトルがJxyである光を領域Riに入射させ、透過した光をさらに領域Rjに入射させたとき、前記領域Rjを透過した光のジョーンズベクトルは、Jxyと同じである。
[条件B]
領域Rkのジョーンズ行列は、領域Rjのジョーンズ行列とは異なるものである。
但し、上記i、j、k、Mはそれぞれ自然数である。
【請求項5】
前記特定偏光素子は、中心から、x軸方向に対して角度θ度をなす方向に距離rだけ離れた位置におけるx軸方向と光学軸方向とのなす角度αの大きさが、θの増加に伴い増加または減少しているものである請求項1~4のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【請求項6】
前記特定偏光素子は、径方向の位置によってジョーンズ行列が異なっている請求項1~5のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【請求項7】
前記角度αの大きさは、(θ/2)・nである請求項5に記載の試料測定装置。但し、nは任意の定数である。
【請求項8】
nが1.0以下である請求項7に記載の試料測定装置。
【請求項9】
前記角度αの大きさは、(θ/2)・nである請求項5に記載の試料測定装置。但し、nは整数である。
【請求項10】
前記角度αの大きさは、θの増加に伴い漸増または漸減する請求項5、または7、または9のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【請求項11】
前記角度θが所定の範囲内にあるとき前記αは一定であり、前記角度αの大きさは、θの増加に伴い段階的に増加または減少する請求項5、または7、または9のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【請求項12】
前記特定偏光素子と測定対象試料との間に対物レンズが配置されている請求項1~11のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【請求項13】
前記特定偏光素子は、光学軸に平行な偏光成分と前記光学軸に垂直な偏光成分との間に四分の一波長の整数倍の位相差を付与するものである請求項1~12のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【請求項14】
前記受光素子の受光面は、測定対象試料のフーリエ面である請求項1~13のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【請求項15】
光源と、当該光源から射出された光を受光する受光素子と、該受光素子よりも前記光源側に配置されており入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子と、下記(1)および(2)のうち少なくとも一方の特定偏光素子を含む試料測定装置を準備するステップと、
前記光源から光を射出させるステップと、
測定対象試料を経由した光を前記受光素子により検出するステップと、
前記特定偏光素子を透過した光の偏光状態を検知することにより当該光が特定偏光素子のどの位置を透過して来た光であるかを特定するステップと、
を有する測定方法。
(1)測定対象試料よりも前記光源側に配置されており前記光源から射出される光を透過または反射する特定偏光素子、および、測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており測定対象試料で透過または反射した光を透過または反射する特定偏光素子の両方。
(2)測定対象試料よりも前記光源側であってかつ測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており、前記光源から射出される光を透過または反射し、かつ、測定対象試料から反射された光を透過または反射する特定偏光素子。
[特定偏光素子]
面内にx軸方向とこれに直交するy軸方向とを有し、面内の位置によってジョーンズ行列が異なっている透過型または反射型の偏光素子。
【請求項16】
前記特定偏光素子は、面内が複数の領域に区画されており、一部の複数の領域は旋光子であり、他の複数の領域は旋光子ではない請求項15に記載の測定方法。
【請求項17】
前記特定偏光素子は、面内の位置によって光学軸の向きが異なる偏光素子であって、中心から、x軸方向に対して角度θ度をなす方向に距離rだけ離れた位置におけるx軸方向と光学軸方向とのなす角度αの大きさは、θの増加に伴い増加または減少しているものである請求項15または16のいずれかに記載の測定方法。
【請求項18】
前記試料測定装置において、
(a)前記受光素子が第1の受光素子および第2の受光素子により構成されており、前記光学素子は偏光ビームスプリッターであり、
(b)前記偏光ビームスプリッターにおいて反射される光を第1の受光素子で受光し、該偏光ビームスプリッターにおいて透過される光を第2の受光素子で受光するものであり、
前記第1の受光素子で検出される光強度と、前記第2の受光素子で検出される光強度の比または差を計算するステップを更に有している請求項15~17のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項19】
前記特定偏光素子の領域Rinに入射した光を該領域Rinに対して前記特定偏光素子の中心軸対象の位置にある領域Routに入射させたとき、前記領域Routを透過した光のジョーンズベクトルは、前記領域Rinに入射した光のジョーンズベクトルと同じである請求項15~18のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項20】
前記特定偏光素子は、xy平面内にM個の領域(R1~RM)を有しており、領域Riと、該領域Riに対して前記特定偏光素子の中心軸対象の位置にある領域Rjと、該領域Rjに隣接している領域Rkとを有しており、下記条件Aおよび条件Bを満たす請求項15~19のいずれか一項に記載の測定方法。
[条件A]
ジョーンズベクトルがJxyである光を領域Riに入射させ、透過した光をさらに領域Rjに入射させたとき、前記領域Rjを透過した光のジョーンズベクトルは、Jxyと同じである。
[条件B]
領域Rkのジョーンズ行列は、領域Rjのジョーンズ行列とは異なるものである。
但し、i、j、k、Mはそれぞれ自然数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象試料における入射光の進行方向分布を検知することにより試料の物理的特徴を測定する装置および試料測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光路の僅かな違いを検出する手法として共焦点検知法、光てこ法、暗視野照明法、干渉、偏光空間変換素子等の各手法が知られている。
【0003】
1.空間透過率変換素子
検出光学系に透過率に空間的な分布のある変換素子を設けることによって光路の違いを検出する方法である。顕微鏡の輪帯照明や絞り制御は結像系におけるフーリエ面の高周波成分、低周波成分を選択的に遮蔽する手法であり、試料の空間的な周期構造に起因する光路の変化(光路シフト)を検出する手法である。また、暗視野照明は計測対象を視野外から照明し、光散乱などの光路シフトを誘起する物体があった場合のみそれが視野に入り検出される。共焦点光学系は顕微鏡に多用され、点光源(レーザービームも点光源と分類できる)から発した光が再集光する位置にピンホールなどの空間変換素子を配置する。多重散乱や屈折で光路が逸れた光線はピンホールを通過できないため、その変化を光路シフトとして計測することが可能である。シュリーレン検出も原理的に共焦点と同一と解釈される。
【0004】
2.光てこ
カンチレバー式プローブを有する顕微鏡に用いられる方法である。カンチレバーにレーザービームを照射し、その反射光の角度(遠位における変位)を検出するものである。検出位置をカンチレバーから遠方で行うことによりカンチレバーの僅かなたわみがビームの光路シフトとして増幅される。検出には分割検出器やイメージセンサーを用いる。
【0005】
3.干渉光学系
ホログラム計測では2光束の干渉を用いて光路シフトを可視化できる。参照光に対する検出光の僅かな変位が干渉縞に反映され、縞を解析することで光路シフト量を得ることができる。
【0006】
4.偏光空間変換素子
偏光空間変換素子は、例えば特許文献1に記載されているように空間的に分布をもつ偏光変換素子(偏光空間フィルタ)である。この変換素子内の偏光特性は一定ではなく、場所により異なる特性を持つ変換素子である。従来からユニフォミティーの高い直線偏光子、位相子、複屈折位相子等が一般的に利用されているが、逆にあえて空間的に偏光特性に分布を与えられている偏光素子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-87885号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Q. Zhan, Adv. Opt. Photon. 1 (2009) 1.K. Yoshiki. Jpn. J. Appl. Phys. 44 (2005) 1066.Opt. Lett. 32, (2007) 1680.
【文献】M. Hashimoto Opt. Rev. 22, (2015) 875-881.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記各々の光検知法はそれぞれのメリットを有しているが、検知をより高精度にしつつも検知装置自体が高額となり過ぎない普及型の検知装置を提供するためにはさらなる改善の余地がある。
【0010】
本発明は、入射光、反射光いずれに対しても空間偏光フィルタリングを行うことによって、反射面の傾き、うねり、微小な段差や傷などを検出することができる測定装置および測定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
空間的にビームの偏光分布を制御する技術は、上記の偏光空間変換素子によって光学機器に実装が可能である。特に、軸対称ビームと呼ばれる偏光、位相がビームの主光線を軸として軸対称を成すビームは、その集光点がもつ特異な性質に着目して、軌道角運動量の制御、焦点電場分布の制御などが行われ、非特許文献1のようにフォーカスエンジニアリングとして要求される焦点形状を生成する手法として開発されている。一方、焦点制御のための光学素子として使用される偏光素子は、特定の偏光分布を選択的に透過する検出変換素子としても使用できる。例えば、点光源からの発光も、集光レンズの瞳面で観察すれば、放射方向に応じて光の強度、位相、偏光に分布があることがあり、例えば立体的な分子配向の検出に活用される(非特許文献2)。このように、光学計測分野においては、試料への入射光、反射光いずれにおいても偏光空間変換素子の挿入によって新しい機能を光学系に付与することができる。
【0012】
上記課題を解決し得た本発明にかかる試料測定装置は、
[1]光源と、当該光源から射出される光を受光する受光素子と、該受光素子よりも前記光源側に配置されており入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子とを有する試料測定装置であって、さらに下記(1)および(2)のうち少なくとも一方の特定偏光素子を含むことを特徴とする試料測定装置である。
(1)測定対象試料よりも前記光源側に配置されており前記光源から射出される光を透過または反射する特定偏光素子、および、測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており測定対象試料を透過または反射した光を透過または反射する特定偏光素子の両方。
(2)測定対象試料よりも前記光源側であってかつ測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており、前記光源から射出される光を透過または反射し、かつ、測定対象試料から反射された光を透過または反射する特定偏光素子。
[特定偏光素子]
面内にx軸方向とこれに直交するy軸方向とを有し、面内の位置によってジョーンズ行列が異なっている透過型または反射型の偏光素子。
【0013】
本発明においては、面内の位置によってジョーンズ行列が異なっている偏光素子を透過する光から、特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出して光量を検知することにより、比較的簡単な光学系を用いて試料の反射面の傾き、うねり、微小な段差や傷などを検出することができる。また、以下に列挙するような更に特定の試料測定装置または特定の測定方法を用いることにより、本発明をより好ましく実施することができる。
【0014】
[2]上記[1]の(1)により特定される特定偏光素子の両方を有しており、いずれの特定偏光素子も測定対象試料の一方側に配置されている[1]に記載の試料測定装置。
【0015】
[3]前記特定偏光素子のxy平面内の領域Rinに入射した光を該領域Rinに対して前記特定偏光素子の中心軸対象の位置にある領域Routに入射させたとき、前記領域Routを透過した光のジョーンズベクトルは、前記領域Rinに入射した光のジョーンズベクトルと同じである[1]または[2]に記載の試料測定装置。
【0016】
[4]前記特定偏光素子は、xy平面内にM個の領域(R1~RM)を有しており、領域Riと、該領域Riに対して前記特定偏光素子の中心軸対象の位置にある領域Rjと、該領域Rjに隣接している領域Rkとを有しており、下記条件Aおよび条件Bを満たす[1]~[3]のいずれか一項に記載の試料測定装置。
[条件A]
ジョーンズベクトルがJxyである光を領域Riに入射させ、透過した光をさらに領域Rjに入射させたとき、前記領域Rjを透過した光のジョーンズベクトルは、Jxyと同じである。
[条件B]
領域Rkのジョーンズ行列は、領域Rjのジョーンズ行列とは異なるものである。但し、上記i、j、k、Mはそれぞれ自然数である。
【0017】
[5]前記特定偏光素子は、中心から、x軸方向に対して角度θ度をなす方向に距離rだけ離れた位置におけるx軸方向と前記光学軸方向とのなす角度αの大きさが、θの増加に伴い増加または減少しているものである[1]~[4]のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【0018】
[6]前記特定偏光素子は、径方向の位置によってジョーンズ行列が異なっている[1]~[5]のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【0019】
[7]前記角度αの大きさは、(θ/2)・nである[4]~[6]のいずれか一項に記載の試料測定装置。但し、nは任意の定数である。
【0020】
[8]nが1.0以下である[7]に記載の試料測定装置。
【0021】
[9]前記角度αの大きさは、(θ/2)・nである[4]~[8]のいずれか一項に記載の試料測定装置。但し、nは整数である。
【0022】
[10]前記角度αの大きさは、θの増加に伴い漸増または漸減する[4]~[9]のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【0023】
[11]前記角度θが所定の範囲内にあるとき前記αは一定であり、前記角度αの大きさは、θの増加に伴い段階的に増加または減少する[4]~[9]のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【0024】
[12]前記特定偏光素子と測定対象試料との間に対物レンズが配置されている[1]~[11]のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【0025】
[13]前記受光素子が第1の受光素子および第2の受光素子により構成されており、前記光学素子は偏光ビームスプリッターであり、該偏光ビームスプリッターにおいて反射される光を第1の受光素子で受光し、該偏光ビームスプリッターにおいて透過される光を第2の受光素子で受光する[1]~[12]のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【0026】
[14]前記特定偏光素子は、前記光学軸に平行な偏光成分と前記光学軸に垂直な偏光成分との間に四分の一波長の整数倍の位相差を付与するものである[1]~[13]のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【0027】
[15]前記受光素子の受光面は、測定対象試料のフーリエ面である[1]~[14]のいずれか一項に記載の試料測定装置。
【0028】
[16]光源と、当該光源から射出された光を受光する受光素子と、該受光素子よりも前記光源側に配置されており入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子と、下記(1)および(2)のうち少なくとも一方の特定偏光素子を含む試料測定装置を準備するステップと、
前記光源から光を射出させるステップと、
測定対象試料を経由した光を前記受光素子により検出するステップと、
を有する測定方法。
(1)測定対象試料よりも前記光源側に配置されており前記光源から射出される光を透過または反射する特定偏光素子、および、測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており測定対象試料で透過または反射した光を透過または反射する特定偏光素子の両方。
(2)測定対象試料よりも前記光源側であってかつ測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており、前記光源から射出される光を透過または反射し、かつ、測定対象試料から反射された光を透過または反射する特定偏光素子。
[特定偏光素子]
面内にx軸方向とこれに直交するy軸方向とを有し、面内の位置によってジョーンズ行列が異なっている透過型または反射型の偏光素子。
【0029】
[17]前記特定偏光素子は、面内が複数の領域に区画されており、一部の複数の領域は旋光子であり、他の複数の領域は旋光子ではない[16]に記載の測定方法。
【0030】
[18]前記特定偏光素子は、面内の位置によって光学軸の向きが異なる偏光素子であって、中心から、x軸方向に対して角度θ度をなす方向に距離rだけ離れた位置におけるx軸方向と前記光学軸方向とのなす角度αの大きさは、θの増加に伴い増加または減少しているものである[16]または[17]に記載の測定方法。
【0031】
[19]前記試料測定装置において、
(a)前記受光素子が第1の受光素子および第2の受光素子により構成されており、前記光学素子は偏光ビームスプリッターであり、
(b)前記偏光ビームスプリッターにおいて反射される光を第1の受光素子で受光し、該偏光ビームスプリッターにおいて透過される光を第2の受光素子で受光するものであり、
前記第1の受光素子で検出される光強度と、前記第2の受光素子で検出される光強度の比または差を計算するステップを更に有している[16]~[18]のいずれか一項に記載の測定方法。
【0032】
[20]前記特定偏光素子の領域Rinに入射した光を該領域Rinに対して前記特定偏光素子の中心軸対象の位置にある領域Routに入射させたとき、前記領域Routを透過した光のジョーンズベクトルは、前記領域Rinに入射した光のジョーンズベクトルと同じである[16]~[19]のいずれか一項に記載の測定方法。
【0033】
[21]前記特定偏光素子は、xy平面内にM個の領域(R1~RM)を有しており、領域Riと、該領域Riに対して前記特定偏光素子の中心軸対象の位置にある領域Rjと、該領域Rjに隣接している領域Rkとを有しており、下記条件Aおよび条件Bを満たす[16]~[20]のいずれか一項に記載の測定方法。
[条件A]
ジョーンズベクトルがJxyである光を領域Riに入射させ、透過した光をさらに領域Rjに入射させたとき、前記領域Rjを透過した光のジョーンズベクトルは、Jxyと同じである。
[条件B]
領域Rkのジョーンズ行列は、領域Rjのジョーンズ行列とは異なるものである。但し、i、j、k、Mはそれぞれ自然数である。
【発明の効果】
【0034】
本発明においては、面内の位置によってジョーンズ行列が異なっている偏光素子に透過または反射する光から、特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出して光量を検知することにより、比較的簡単な光学系を用いて試料の反射面の傾き、うねり、微小な段差や傷などを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】(a)は、本発明の実施の形態1にかかる試料測定装置の光学系を示す図であり、(b)は、試料付近の光の反射を説明する図である。
図2】本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置の光学系を示す図である。
図3】(a)は、本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置の特定偏光素子を示す図であり、(b)は、特定偏光素子を光軸方向から見たときの入射光および試料からの戻り光の位置を示す図である。
図4】本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置の特定偏光素子における試料からの戻り光の強度を示す図である。
図5】本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置の特定偏光素子における試料からの戻り光の強度を示す図である。
図6】本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置の特定偏光素子における試料からの戻り光の強度を示す図である。
図7】本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置の特定偏光素子における試料からの戻り光の強度を示す図である。
図8】(a)(b)は、本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置における試料の傾き角と戻り光の強度との関係を示すグラフである。
図9】(a)(b)共に、横軸にR/r量を取ったときのIr強度を示したグラフである。
図10】本発明の実施の形態3にかかる試料測定装置の光学系を示す図である。
図11】本発明の実施の形態1~3にかかる試料測定装置の変形光学系を示す図である。
図12】本発明の実施の形態4にかかる試料測定装置の光学系を示す図である。
図13】本発明の実施の形態4にかかる試料測定装置の光学系を示す図である。
図14】その他の実施の形態にかかる試料測定装置の光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0037】
本発明の試料測定装置は、光源と、当該光源から射出される光を受光する受光素子と、当該受光素子よりも前記光源側に配置されており入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子とを有する試料測定装置であって、さらに下記(1)および(2)のうち少なくとも一方の特定偏光素子を含むものである。
【0038】
(1)測定対象試料よりも前記光源側に配置されており前記光源から射出される光を受光する特定偏光素子、および、測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており測定対象試料で透過または反射した光を受光する特定偏光素子の両方。
(2)測定対象試料よりも前記光源側であってかつ測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており、前記光源から射出される光を受光し、かつ、測定対象試料から反射された光を受光する特定偏光素子。
【0039】
本発明において特定偏光素子とは、面内にx軸方向とこれに直交するy軸方向とを有し、面内の位置によってジョーンズ行列が異なっている透過型または反射型の偏光素子である。
【0040】
上記課題を解決し得た本発明にかかる測定方法は、光源と、当該光源から射出された光を受光する受光素子と、該受光素子よりも前記光源側に配置されており入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子と、上記(1)および(2)のうち少なくとも一方の特定偏光素子を含む試料測定装置を準備するステップと、前記光源から光を射出させるステップと、測定対象試料を経由した光を前記受光素子により検出するステップと、を有するものである。
【0041】
上記本発明の試料測定装置および本発明の測定方法においては、(1)試料において透過された光、または(2)試料を透過した光は、当該試料に存在している表面の傾き、うねり、微小な段差や傷などの影響を受けた箇所においては、その影響の度合いに応じて光の進行方向が変化する。進行方向が変化した光は特定偏光素子に入射する。特定偏光素子は、上記のように面内の位置によってジョーンズ行列が異なっているため、特定偏光素子を透過した光は、当該透過箇所のジョーンズ行列の違いに応じて異なる偏光状態を有している。したがって、特定偏光素子を透過した光の偏光状態を検知することにより当該透過光が特定偏光素子のどの位置を透過して来た光であるかを特定することができる。したがって、特定偏光素子は、位置によってジョーンズ行列がどのように異なっているかが既知である必要がある。特定偏光素子を透過した光の偏光状態を検知するためには、当該光を特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子を通して最終的には受光素子により光の強度測定を行う。以下、実施の形態1~4は、本発明における試料測定装置および本発明の測定方法の両方の説明を兼ねているものである。
【0042】
(実施の形態1)
以下、図1を用いて本発明の実施の形態1にかかる試料測定装置および当該装置を用いた測定方法について説明する。図1(a)は、本発明の実施の形態1にかかる試料測定装置の光学系を示す図であり、(b)は、試料付近の光の反射を説明する図である。実施の形態1にかかる試料測定装置は、光源1と、光源1から射出される光を受光する受光素子2と、受光素子2よりも光源1側に配置されており入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子(偏光ビームスプリッター3)とを有する試料測定装置であって、さらに下記(2)に説明される特定偏光素子を含むものである。なお、本発明において一般に「光学素子Aよりも光学素子B側」というときには、単なる空間的な配置場所である「光学素子Aよりも光学素子Bに近い場所」のみならず、光路の道のり上「光学素子Bに近い場所」の意味も含むものとする。
【0043】
(2)測定対象試料4よりも光源1側であってかつ測定対象試料4よりも受光素子2側に配置されており、光源1から射出される光を透過し、かつ、測定対象試料4から反射された光を透過する特定偏光素子5。すなわち、光源1、受光素子2、および特定偏光素子5はいずれも測定対象試料4の一方面(反射面)側に存在している。
【0044】
光源1から射出した光の伝播進路を順に辿って説明すると、光はまず直線偏光板6によってy軸方向にのみ振動する直線偏光となる。直線偏光の状態で特定偏光素子5を透過した光は対物レンズ7によって集光され、測定対象試料4の表面で反射される。測定対象試料4から反射してきた戻り光は、特定偏光素子5を再度透過する。ここで、測定対象試料4から反射してきた戻り光には、測定対象試料4の平坦面で鏡面反射した0次反射光や+1次反射光、或いは-1次反射光を含んでいる。+1次反射光、0次反射光、-1次反射光は、それぞれ特定偏光素子5の区画5a、区画5b、区画5cを通過する。区画5a、区画5b、区画5cのジョーンズ行列はそれぞれ異なっており、図1(a)の例では、+1次反射光は区画5aにより90度旋光されてx軸方向にのみ振動する直線偏光となり、0次反射光は区画5bにより旋光作用を受けないで引き続きy軸方向にのみ振動する直線偏光として透過し、-1次反射光は区画5cにより45度旋光されてx軸方向およびy軸方向の両方の振動成分を有する直線偏光となって特定偏光素子5を透過する。
【0045】
特定偏光素子5を透過した光は偏光ビームスプリッター3に入射することによりy軸方向の偏光成分は直進して受光素子2Tに入射する。+1次反射光についてはy軸方向の振動がないため受光素子2Tに到達せず強度は観測されない。0次反射光はy軸方向に振動しているので受光素子2Tに到達し、強い光として検知される。-1次反射光についてはy軸方向の振動成分のみが受光素子2Tに到達し、0次反射光ほど強い光ではないが検知される。
光の検出は、受光素子2Tのみを用いて検出することも可能であるが、偏光ビームスプリッター3により反射されて受光素子2Rに到達する光の成分により検出することも可能である。
【0046】
以上のように、試料に傾き、あるいは微小な段差など、反射光の方向シフトを誘起する構造があった場合、反射光は想定する光路を外れ、光路のズレを生じる.その結果、特定偏光素子5の異なる部位を通過する結果、試料からの戻り光の偏光方向は変調を受ける。よって光路のズレが偏光の変化に変換され、それを例えば偏光ビームスプリッター3などを介して検出することによって光路のズレを誘起した部位の光強度を検出することにより、反射光が特定偏光素子5のどの部位(区画5aか、区画5bか、区画5cか)を通過してきたものかを特定することができる。
【0047】
実施の形態1では、偏光ビームスプリッター3を利用したがこれに限らず、入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子を用いれば、光路のズレを誘起する部位の反射光のみを選択的に検出することができる。偏光ビームスプリッター3を利用する場合は、受光素子2Tで受光した強度と受光素子2Rで受光した強度の比または差取得することにより、測定対象試料4の中で例えば反射率の低い部位であっても受光素子2Tで受光した強度と受光素子2Rで受光した強度の減少分をキャンセルすることもでき、誤差の少ない検出を行うことができる。
【0048】
実施の形態1では、試料からの反射光を検出する光学系を用いて説明したが、試料の透過光を用いて試料内部の異物や気泡の存在等を測定することも可能である。この場合は、下記(1)によって説明される特定偏光素子を用いる。
【0049】
(1)測定対象試料よりも前記光源側に配置されており前記光源から射出される光を透過する特定偏光素子、および、測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており測定対象試料を透過した光を透過する特定偏光素子の両方。
【0050】
特定偏光素子5は、さらに次の特徴を備えていることが好ましい。すなわち特定偏光素子5は、xy平面内にM個の領域(R1~RM)を有しており(図示せず)、領域Ri(図1における区画5d)と、この領域Riに対して特定偏光素子5の中心軸(5ax)対象の位置にある領域Rj(区画5b)と、この領域Rjに隣接している領域Rk(区画5aまたは5c)とを有しており、下記条件Aおよび条件Bを満たす。但し、i、j、k、Mはそれぞれ自然数である。
[条件A]
ジョーンズベクトルがJxyである光を領域Ri(区画5d)に入射させ、透過した光をさらに領域Rj(区画5b)に入射させたとき、領域Rj(区画5b)を透過した光のジョーンズベクトルは、Jxyと同じである。
[条件B]
領域Rk(区画5aまたは5c)のジョーンズ行列は、領域Rj(区画5b)のジョーンズ行列とは異なるものである。
【0051】
上記条件Aを満たすことにより、区画5dを透過した入射光が測定対象試料4において鏡面反射して区画5bに再入射したとき、光の偏光状態が特定偏光素子5への入射前と同じになる。これにより、図1の例では0次光が偏光ビームスプリッター3を直進して受光素子2Tに入射する。測定対象試料4が透過材料の場合も同様である。
【0052】
他方、上記条件Bのように領域Rk(区画5aまたは5c)のジョーンズ行列が、領域Rj(区画5b)のジョーンズ行列とは異なるものであることにより区画5aまたは5cを透過した±1次光は、光のx方向振動成分とy方向振動成分との比が0次光とは異なる偏光になるため、図1のように所定量が受光素子2Rに入射する。これにより、測定対象試料4の表面での光の反射角の違いや測定対象試料4を透過する光の変向を区別することができる。
【0053】
なお条件Bでは、領域Rkのうち一部のみが領域Rjと異なるジョーンズ行列を構成していても良いが、領域Rkの全部が領域Rjとは異なるジョーンズ行列を構成していれば鏡面反射光に対してどの方向への反射光シフトも検出することができる。領域Rjおよび領域Rjに隣接する全ての領域Rkが互いに異なるジョーンズ行列を構成していることが一層好ましい。
【0054】
M個の領域(R1~RM)を、より細かく区分されている多数の領域により構成ことにより反射光の反射方向の僅かな違いも検出することができる。すなわち、Mの個数は上限なく多く設定することが可能であるが、各領域におけるジョーンズ行列が特定偏光素子5のxy平面内において連続的に変化するものであり個別の領域を規定することができない場合については次のように説明することができる。
【0055】
すなわち、特定偏光素子5のxy平面内の領域Rin(図示せず)に入射した光を該領域Rinに対して特定偏光素子の中心軸(5ax)対象の位置にある領域Rout(図示せず)に入射させたとき、領域Routを透過した光のジョーンズベクトルは、領域Rinに入射した光のジョーンズベクトルと同じである。このような特定偏光素子5は、例えば、入射光の強度に応じて屈折率の変化を起すフォトクロミック有機材料の中に所定の光強度分布を形成することにより製造することができる。
【0056】
(実施の形態2)
以下、図2図8を用いて本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置について説明する。図2は、本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置の光学系を示す図である。本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置は、光源1と、光源1から射出される光束を受光する受光素子2と、受光素子2よりも光源1側に配置されており入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子(偏光ビームスプリッター3)とを有する試料測定装置であって、さらに下記(2)に説明される特定偏光素子を含むものである。
【0057】
(2)測定対象試料4よりも光源1側であってかつ測定対象試料4よりも受光素子2側に配置されており、光源1から射出される束光を透過し、かつ、測定対象試料4から反射された光束を透過する特定偏光素子5。すなわち、光源1、受光素子2、および特定偏光素子5はいずれも測定対象試料4の一方面(反射面)側に存在している。
【0058】
光源1から射出した光束の伝播進路を順に辿って説明すると、光束はまず直線偏光板6によってy軸方向にのみ振動する直線偏光となる。直線偏光の状態で特定偏光素子5を透過した光束は対物レンズ7によって集光され、測定対象試料4の表面で反射される。測定対象試料4から反射してきた戻り光は、特定偏光素子5を再度透過する。ここで、測定対象試料4から反射してきた戻り光には、実施の形態1で説明した通り、様々な角度の反射光を含んでいる。それぞれの反射光は特定偏光素子5の別の区画を通過する。各区画のジョーンズ行列はそれぞれ異なっている。
【0059】
特定偏光素子5を透過した光は偏光ビームスプリッター3に入射することによりy軸方向の偏光成分は直進して受光素子2T或いは受光素子2Rに入射する。実施の形態1で既に説明した通り、光の検出は受光素子2Tのみを用いて検出することも可能であるが、偏光ビームスプリッター3により反射されて受光素子2Rに到達する光の成分により検出することも可能である。
【0060】
図3(a)は、本発明の実施の形態2にかかる試料測定装置の特定偏光素子5を示す斜視図であり、(b)は、特定偏光素子5を光軸方向から見たときの入射光の光束の位置および試料4からの戻り光の光束の位置を示す図である。
【0061】
図3(a)に示されるように特定偏光素子5は中心を通る放射方向のラインによって区分される区画(例えば区画5d、5e、5f)を有しており、各区画における光軸方向は太矢印によって示されており、各区画はそれぞれ例えばλ/2板である。図3(a)に示されるように光軸方向は特定偏光素子5の周方向に1区画分移動すると一定角度変化し、特定偏光素子5を半周すれば光軸方向は90度変化し、特定偏光素子5を1周すれば光軸方向は180度変化するように構成されている。図3(a)の例では、特定偏光素子5の区画は全周で16等分されているが、何等分であってもよい。
【0062】
図3(b)は、特定偏光素子5を光軸方向から見たときの入射光の光束の位置および試料4からの戻り光の光束の位置を示す図である。区画の数は図3(a)の例(16区画)よりも多く取ってあり36区画あるが、光学軸が無段階に変化するものであってもよい。
【0063】
図3(b)に示すように入射ビームの半径をrとし、入射ビームの中心を原点Oとするxy座標系、戻り光のビームの中心の座標系O’を原点とするxy’座標系で表す。ビームのシフト量(入射ビームの中心Oと戻り光のビームの中心O’との間の距離)をRとし、ビームのシフト方向、すなわち入射ビームの中心Oから見た戻り光のビームの中心O’の回転角をΘとする。特定偏光素子5の光学軸は図3(a)において示した太矢印と同じのものであり、特定偏光素子5の周方向の変化に伴い光学軸が徐々にねじれてゆき特定偏光素子5の1周分で180度の整数倍の角度分だけねじれる構造(以下、「回転ねじれ対称」と記載することがある)を示すものである。特定偏光素子5はθ方向に回転させて使用しても構わない。図3(a)および(b)では、水平偏光入射の光からラジアル偏光が生成される機能となっている。
【0064】
図3(b)に示すように、入射ビーム内のI点(r、 θ)を通って入射した光線に注目すると反射後の戻り光はE点を通過する(但し、括弧内の前者rは原点Oからの距離を示すものであり、後者θはx軸となす角を示すものである)。E点はxy座標系では(x、X)であり、同様に括弧内の前者xは原点Oからの距離を示すものであり、後者Xはx軸となす角を示すものである。このときI点およびE点はそれぞれ、式(1)および式(2)のように規定される。
【0065】
【数1】
【0066】
【数2】
【0067】
θ’およびr’については式(3)および式(4)のように記載される。
【0068】
【数3】
【0069】
【数4】
【0070】
この時、特定偏光素子5の光学軸の方向は、I点ではθ/2、 E点ではX/2となる。このときの光の偏光状態の変化をジョーンズ記法で記述すると、式(5)のようになる。
【0071】
【数5】
【0072】
但し、Ein 、 Eoutは特定偏光素子5への入射光、射出光の偏光を表し、M(θ)は方位角方向にθ回転したλ/2板の作用を示している。また、Sは測定対象試料4の反射による作用を表し、一般には式(6)の関係が成り立つ。
【0073】
【数6】
【0074】
式(6)においてr0は水平偏光と垂直偏光の反射率の相乗平均を表わし、tanχ(rx/ry)は水平偏光成分と垂直偏光成分の反射率の比(|rs|/|rp|。ただしrsはs偏光の反射係数、rpはp偏光の反射係数である)、Δは水平偏光と垂直偏光の間に発生する位相差を表す。これらのパラメーターは入射角が大きい場合にはジョーンズベクトルに大きな影響を及ぼすが、後述するように、ビームシフト計測においては高感度を得るには入射角が小さい低NA用途が適しているため、実際には次式(7)のように考えて良い。
【0075】
【数7】
【0076】
式(5)より、入射ビーム内の任意の点を通る光線が戻り光となるときの偏光の変化が分かる。図2において、入射偏光と同じ偏光成分は受光素子2R側、直交する成分は受光素子2T側として偏光ビームスプリッター3を介して分離検出されるため、式(1)よりR=0ならばX=π+θとなり、EinとEoutは同じ偏光方向となるため、戻り光は全て受光素子2R側に検出される。一方、R≠0であればこの関係が成立しない場合があるため、受光素子2Tの受光強度ITとして検出される光量が増加し、代わりに、受光素子2Tの受光強度IRが減少する。水平方向にビームシフトが生じた時、ビームシフト距離Rをビーム径rで除した比率(R/r)=0のとき、R/r=0.5のとき、R/r=1のとき、R/r=8のとき、受光素子2R側で検出される光強度IRを特定偏光素子5上の光強度分布で表した結果を図4~7に示す。R/rの増加に伴い、強度分布が変化し、受光素子2Rの検出強度IRの総量は減少していることが分かる。なお、減少分は全てIT側で検出される。そのため、ITの分布はIRの強度を反転させたものが検出されると考えて良い。
【0077】
IRおよびITは、式(5)をビーム断面内において面積分することによって得られる。 その積分結果を図8(a)に示す(入射光の光軸と試料表面が垂直であるときを基準として、±4度の範囲で試料を傾けたものである)。図8(a)に示すように、-0.8≦(試料の傾き角:β)≦0.8のとき、IRおよびITの違いを区別することができるがβの絶対値が大きくなるほどIRとITの違いを区別しにくくなる。好ましくは-0.7≦β≦0.7、より好ましくは-0.6≦β≦0.6、さらに好ましくは-0.5≦β≦0.5である。図8(b)は、図8(a)の縦軸を規格化し、横軸を0≦β≦2の範囲で模式化したものである。但し本実験は、対物レンズのワーキングディスタンスを125mmとし、ビーム径を8mmとし、NAを0.031として行ったものである。
【0078】
特定偏光素子5としては回転ねじれ対称を持つものである場合、例えば、軸対称偏光ビームを生成するものでよい。これはλ/2板の光学軸が回転ねじれ対称になるように分布している光学素子であり、直線偏光をラジアル偏光、アジマス偏光のような軸対称ビームに変換する機能をもつ。
【0079】
図3に示したように特定偏光素子5は、中心からx軸方向に対して角度θ度をなす方向に距離rだけ離れた位置におけるx軸方向と前記光学軸方向とのなす角度α(図示せず)の大きさが、θの増加に伴い増加または減少しているものであることが好ましい。
【0080】
図3においては、特定偏光素子5は周方向には光学軸の異なる区画により構成されており放射方向には単一の光学軸により構成されているものを例示したが、特定偏光素子5の放射方向に光学軸の異なる複数の区画により構成されていてもよい。すなわち特定偏光素子5は、径方向の位置によってジョーンズ行列が異なって構成されていることが好ましい。
【0081】
角度αの大きさは、(θ/2)・nであることが好ましい。但し、nは任意の定数であってもよいし自然数であってもよい。
【0082】
一般にqプレートと呼ばれている偏光素子は、その円周方向の位置によってλ/2板の光学軸の向きが単調一定に変化する光学素子である。円周方向に1回転したときに光学軸がq回転するとき、その値はq値と呼ばれる。直線偏光からラジアル偏光、アジマス偏光を生成する時、q値は1/2である。本実施の形態では、q値が変化した場合、測定装置の感度がどのように変化するかを確認する計算を行った。光学軸の向きを表わす角度αの大きさが(θ/2)・n(n=1)のとき、偏光素子の円周方向の位置θが360度(1周)するとαは180度変化するので、n=1のときはq値が1/2であることに相当する。
【0083】
図9(a)は、測定対象試料4に100%反射の平滑面であることを想定し、反射面の傾きによって戻り光ビーム光軸が入射光ビーム光軸に対してずれた量としてR/rを横軸に取ったグラフである。縦軸はIrの強度であり光軸のズレがない状態、すなわちR/r=0の時の強度を1とした時の相対強度である。図9(a)から、q値が1/2を下回ると感度が低下し、一方でダイナミックレンジが増えることがわかる。逆にq値が1/2を上回ると低R/r領域での感度が向上する。しかし一度Irが低下しきった後、再び増大に転じてオーバーシュートを生じる。そのため、感度は高いものの振動的な感度特性が発生することからIrとR/rとが1対1対応しないためR/rを特定するには向かない。そのためこの場合の感度領域は振動が現れる前のq値が1/2以下であることが好ましい。つまり、n≦1であることが好ましい。
【0084】
特定偏光素子5は、光学軸に平行な偏光成分と光学軸に垂直な偏光成分との間に四分の一波長の整数倍の位相差を付与しても良い。
【0085】
図9(a)により、Irが振動挙動を示さない条件においてq=1/2のとき最高感度を有することが分かったため、q=1/2の場合に限定しqプレートが持つ複屈折位相差を変化させた時の感度特性の評価を行った。qプレートに限らず複屈折偏光素子は波長分散の影響を受け、同じ素子でも波長によって複屈折位相差が異なる。これは、光源として白色光源を利用した時、qプレートの設計波長以外の光に対しては性能が劣化するということを意味する。また白色でなくとも単色LEDのような帯域が狭くない光源を利用するときどこまでの性能が期待できるかを考慮する際にも重要な視点となる。実際に波長分散がどれくらいになるかは製品によって異なるため本実施形態ではqプレート本来のλ/2(位相差π)に加え、λ/4(位相差π/2)、λ/8(位相差π/4)、および3λ/4(位相差3π/2)とした場合の感度特性を比較した。
【0086】
図9(b)は、図9(a)と同様、横軸をR/rとし縦軸をIrとした。なお、3λ/4の結果はλ/4と全く同じになったので省略する。
【0087】
図9(b)より、複屈折位相量がλ/2のとき、R/rが1に達すると感度が飽和するが、λ/4、λ/8の場合は、R/rが1より大きいエリアでも感度を持つ。この理由は、R/r=1は反射ビームの光軸が入射ビームの外へシフトする瞬間でありそれ以降は、図4~7に示した受光素子2R側で検出される光強度IRの光強度分布が放射縞状の強度分布となり、幾何学的にも大きな変化はない。そのため、明部と暗部の面積比の変化はなくなるが複屈折位相量がλ/2の場合以外では暗部の強度の低下がそれ以降も続くためである。またR/r=1以下とそれ以上は検出特性が異なっており不連続な感度特性が見て取れる。これは強度分布の幾何学的な変化とその後の暗部の強度変化では感度特性が異なるためである。この問題は入射ビームの強度分布を調整することで連続な感度特性が得られる。
【0088】
角度αの大きさは、(ア)θの増加に伴い漸増または漸減しても良いし、(イ)角度θが所定の範囲内にあるときαは一定でありかつθの増加に伴い段階的に増加または減少してもよい。
【0089】
(実施の形態3)
次に図10を用いて本発明の実施の形態3にかかる試料測定装置について説明するが、これは実施の形態1および実施の形態2における試料測定装置の光源側の光学系を例示するものであるので同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。実施の形態3において特徴的であるのは、照明系である。
【0090】
複数ビームの同時照射を伴う光学系では例えば図10のような光学系となる。具体的にはインコヒーレント光源照明によるカメラ画像計測が典型例であり、この場合のビーム数は無限として考察される。カメラ画像計測の多くがこれに該当する。この場合、ビーム径の制限は照明系における開口絞りを利用する。全てのビームが空間的に一致するフーリエ面に円形開口の空間変換素子をかけることによって全てのビームの径を制限することができる。また、感度のみならず、感度特性の調整も行うことができる。高NA領域では低感度高ダイナミックレンジ、低NA領域では高感度低ダイナミックレンジとなるため、それぞれの領域の透過率を調整することで感度特性を調整することで、感度特性にリニアリティーを付与することもできる。
【0091】
したがって、本発明の実施の形態における試料測定装置は、特にワーキングディスタンスが大きい(NAが小さい)光学系に有用に適用できるものである。また従来の干渉計のように観測前に特段の準備をすることが不要であり、このような簡便な光学系は従来存在しなかった。NA値は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下である。
【0092】
また、偏光空間変換素子のパターンを調整することによって同様のことを行うことができる。変換素子のパターンは式(5)におけるM(r、 θ)に相当するが、そのパターンは回転ねじれ対称性、すなわち、また、動径方向θに対するねじれ対称性が保たれていれば良い。対称次数は任意でよく、対称次数2でも検出能力は発揮される。この場合は鏡面対称であり、シフト検出の方向が対称面方向に制限されるため、ビームシフトの方向を検出する用途に使用することもできる。また、半径方向rに依存する分布があっても良く、これはビームシフト検出の感度曲線の特性を調整するために使用することができる。
【0093】
なお、図2および図6の光学系は全て反射照明系で説明されているが、照明光学系を試料面に対して鏡像反転することで透過照明光学系にも適用できる。
【0094】
このように、入射ビーム、特定偏光素子5の双方で感度を調節できるが、具体的な感度設定はNAでダイナミックレンジを決定し、特定偏光素子5を調節することで感度調整を行う。本手法では観察対象がある程度確定している場合に有効である。また、特定偏光素子5としは図1において示したような非可変光学素子ではなく、液晶のような可変光学素子を用いると、あらゆる観察対象に対して最適化されたパターンの生成を動的に行うことができる。特定偏光素子5を反射型とする場合は、LCOS(LIQUID CRYSTAL ON SILICON)を用いることができる。
【0095】
図11は、実施の形態1~3の変形例であり、特定偏光素子5を透過型ではなく反射型とした光学系の一例である。
【0096】
また、多くの偏光素子は波長依存性を伴うが、本使用法に関しては白色光下でも機能を発揮する。ただし、設計波長において最も高い感度を発揮する。
【0097】
実施の形態3における試料測定装置のその他の特徴は、受光素子2Rに光を入射させるための偏光ビームスプリッター3Rと受光素子2Tに光を入射させるための偏光ビームスプリッター3Tをそれぞれ備えている点である。この場合、受光素子2Rで受光できる光の強度は受光素子2Tで受光できる光の強度の半分となるため、受光素子2Rで受光できる光の強度を2倍して得られた信号を用いても良い。
【0098】
(実施の形態4)
次に図12および図13を用いて本発明の実施の形態4にかかる試料測定装置について説明するが、実施の形態1~3の試料測定装置と同じ光学素子には同じ符号を付して説明を省略する。実施の形態4において特徴的であるのは、試料測定装置は入射側特定偏光素子51、反射側特定偏光素子52を有しており、いずれの特定偏光素子も測定対象試料4の片側(一方側)に配置されていること、及び、測定対象試料4への入射光と反射光とが同軸上にはなく、双方、測定対象試料4の法線方向に対して斜めである点である。このように測定対象試料4の一方側に2つの特定偏光素子51、52を配置した場合、測定対象試料4の観察像は斜め方向から臨んだものであるから得られる像は縦横比が歪んだものとなるが、測定対象試料4の表面形状によっては斜め方向から光を入射させるほうが段差等の表面形状が像にコントラストよく反映されることがある。また、測定対象試料4の同一箇所において異なる方向からの複数の観察像を得れば、測定対象試料4の表面形状を一層精度良く観察することができる。例えば、測定対象試料4と試料測定装置の光軸とが交わる点を中心として測定対象試料4を法線軸方向に1回転させることにより360度の画像情報を得ることができるのでこれらの情報を元にコンピュータトモグラフィ法等により高精細の観察像を取得することができる。また、測定対象試料4への入射光および反射光が平行ではないためビームスプリッター3aで反射光から入射光を分離する必要がない。そのため反射光のSN比が向上する。
【0099】
なお、図12のように測定対象試料4に対する光の入射角が浅い場合は、入射側において入射側対物レンズ71、反射側において反射側対物レンズ72を各々個別に配置することが好ましい。他方、図13のように測定対象試料4への入射角が深い場合は、入射光及び反射光の両方を1つの対物レンズ7に入射させることもできる。
【0100】
(その他任意の付加形態)
図4図7では、ビームシフトR/rが1を超えても光強度パターンには変化があるが、図8に示すように、それを積分した合計の光量では変化が飽和している点に注意を要する。組み込む光学系と必要な感度、ダイナミックレンジに応じてどちらの情報を抽出するかを選択すべきである。またITとIRの比率を取得することによって、測定対象試料4表面における反射率の違いをキャンセルした測定ができる。なお、受光素子2で特定偏光素子5上を観察する場合、受光素子2がアレイ素子であればITおよびIRの算出のために上記の積分計算が必要になるが、受光素子2が単一の受光部を有する受光素子であれば積分処理を行う必要がないため高速測定に好ましい。
【0101】
特定偏光素子5に入射するビームの直径2rの大きさを変更することによって試料測定装置の検知感度を調整することができる。特定偏光素子5の大きさに十分な余裕があれば、図2において入射光は単一光束であるため、入射ビーム直径を拡縮することで感度調整を行うことができる。さらに、対物レンズのNAによっても感度を調整することができる。このような光学系はレーザースキャン画像計測や、画像計測以外のセンサ計測が該当する。
【0102】
特定偏光素子5としては、複数画素を有する液晶素子を用いることができる。
【0103】
一様偏光素子を高NA対物レンズに適用した場合、戻り光の偏光は一様ではなく、入射角に依存した分布を有する。この場合、偏光空間フィルタが配置されているフーリエ面上のIT、およびIRの分布を計測することにより、入射角をパラメーターに含めた偏光特性の解析ができ、これによって、空間分解能が高いエリプソメトリーを行うことができる。なお、フーリエ面とは厳密な意味でのフーリエ面である必要はなく、像面からデフォーカスされた面でITおよびIRの分布を計測することにより空間分解能が一定程度高いエリプソメトリーを行うことができる。
【0104】
実施の形態にかかる付加的な構成および効果について次の(1)~(8)により説明する。
【0105】
(1)品質安定性
ビームシフトは2つの検出器(受光素子2T、2R)で計測される光の強度比または差で求められるため、試料の反射率、透過率の違いの影響は受けない。また照明光は吸収や光学系におけるケラレを除いて全て計測に使われるため、安価な検出器でも高品質の信号が得られ高速計測に有利である。
【0106】
(2)多ビーム適用
多ビームを同時に重なり合う光学系でも適用可能であり、無限数の多ビーム測定に相当するワイド視野観察に適用可能となる。
【0107】
(3)計測限界
干渉計で計測できない大きな傾きから干渉計の計測領域の微細な傾きも計測できる。試算すると、干渉縞ピッチの計測限界を25μm(1000 LPI)とする。波長を532nmとすると、このときの傾きは 0.6度となる。これに対し、図9においてNAが0.03 (F値16、 分解能15μm)の対物レンズで組み、特定偏光素子5を挿入した光学系では、 図8に示すとおり、IT/IRが変化する領域が0.9度以下、感度中心は0.45度となり、干渉計の感度領域内に有ることが分かる。特定偏光素子5や、NAを可変とすることで、更に大きな傾きの計測へ拡張でき、干渉計の計測範囲を超えることができる。
【0108】
(4)正反射除去
光軸に垂直な平滑光沢面を観察する時、物体側がテレセントリック光学系であれば観察面全体が、それ以外であれば観察面中央の輝度が極端に増し、特に後者においては高輝度部分がハレーションを起こし、試料全体を観察することが困難となる。特定偏光素子5を用いれば、垂直反射を選択的に除去できるため、視認性を向上させることができる。また、特定偏光素子5の設計によって、除去特性も調節することができる。
【0109】
(5)欠陥検出、段差検出、および粗さ検出
実施の形態1においても既に説明したとおり、試料表面に微細な段差が生じると、その高低差に対応した位相の不連続が生じ、その不連続を補うためにビームシフトを伴う光波を生じる。傷をはじめとする点状、線状の欠陥、コンタミ、半導体工程等で作られる微小段差等を可視化できる。受光素子2T側で計測すると暗視野計測となるため、検出器感度を上げることによって微小段差であっても計測が可能となる。また、検出限界内であれば、IT/IR比との校正による段差計測への発展も可能である。検出範囲は特定偏光素子5の設計に依存する。
【0110】
(6)傾き計測およびうねり検出
図2でもすでに述べたとおり、実施の形態にかかる試料測定装置により測定対象試料4の傾きを計測する用途に使用できる。また、傾き情報を空間的に積分することによって、一見平坦に見える面のうねりを計測することもできる。うねりはごく低角度の傾き計測であるため、欠陥や粗さ、段差などの高周波成分とは分離しやすい。
【0111】
(7)焦点検出 (広視野共焦点イメージング)
試料面が観察光学系の焦点から外れた場合、図14に示すとおり反射光の光路が変わるため、そのビームシフトを計測することによってピント合わせが実現できる。例えば、焦点距離fの対物レンズによって、物体側にテレセントリック光学系による観察システムを構築する。この時、ピントがΔfずれたときの特定偏光素子5上における光路シフト量Δxは式(8)のように表わされる。
【0112】
【数8】
【0113】
ここで、xは当該光線の光学系主線からの距離である。これより、光線が高NA側の光路を通るほど大きな光路シフトが得られることから、対物レンズの開口瞳のうち、辺縁部を通過する光路を例えば暗視野照明の光路を利用した焦点合わせ光学系がより効果的である。これは、ビームシフト検出においては辺縁部よりは中心部の方が、感度が高いこととは対称的であり、対物レンズの瞳を2つに分けて利用することによって立体的な計測を行うことができる。
【0114】
(8)観察対象事例
本発明の実施の形態1にかかる試料測定装置は次の観察対象事例に対して有効である。
1.表面観察
(ア) 傾き、うねりの計測
(イ) 欠陥、パーティクル等のコンタミ計測
(ウ) マイクロパターニング等で形成された微小段差
(エ) 粗さ
2.バルク中欠陥観察
(ア) ガラス中の気泡などの観察
(イ) 歪みなどによる屈折率の不均一部分の検出
【0115】
本願は、2019年8月28日に出願された日本国特許出願第2019-156108号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年8月28日に出願された日本国特許出願第2019-156108号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0116】
1 光源
2 受光素子
3 偏光ビームスプリッター
3a ビームスプリッター
4 測定対象試料
5 特定偏光素子
5a 区画(領域k)
5b 区画(領域j)
5c 区画(領域k)
5d 区画(領域i)
5ax 中心軸
51 入射側特定偏光素子
52 反射側特定偏光素子
6 直線偏光板
7 対物レンズ
71 入射側対物レンズ
72 反射側対物レンズ
8 結像レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14