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特許7525122希ガスを循環案内して水素循環エンジンにプロセス統合的に酸素を供給する方法
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  • 特許-希ガスを循環案内して水素循環エンジンにプロセス統合的に酸素を供給する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】希ガスを循環案内して水素循環エンジンにプロセス統合的に酸素を供給する方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/12 20060101AFI20240723BHJP
   C01B 13/08 20060101ALI20240723BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20240723BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20240723BHJP
   F02B 29/04 20060101ALI20240723BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20240723BHJP
   F02B 43/10 20060101ALI20240723BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20240723BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20240723BHJP
   F02D 21/04 20060101ALI20240723BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240723BHJP
   F02M 25/10 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F02M25/12 A
C01B13/08
C01G49/00 C
F01N5/02 J
F02B29/04 P
F02B43/00 Z
F02B43/10 Z
F02D9/02 305B
F02D19/02 B
F02D21/04
F02M21/02 G
F02M25/10 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022524231
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 DE2020100913
(87)【国際公開番号】W WO2021078333
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】102019128882.7
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500142051
【氏名又は名称】フラウンホーファー ゲゼルシャフト ツア フェルデルング デア アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】クリーゲル ラルフ
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161244(JP,A)
【文献】特開2014-012619(JP,A)
【文献】特開2014-177907(JP,A)
【文献】特開2019-043833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0211515(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104314711(CN,A)
【文献】特開2009-264108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/12
C01B 13/08
C01G 49/00
F02B 43/00
F02M 21/02
F02B 43/10
F02D 19/02
F02M 25/10
F02B 29/04
F01N 5/02
F02D 9/02
F02D 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素と燃焼に関与しない不活性ガスとから成る酸化剤ガスと、ガス混合物の循環案内と、燃焼生成物である水の凝縮による分離とを用いて水素循環エンジン(1)を作動させる方法において、
燃焼に必要な酸素を前記水素循環エンジンを取り巻く空気から直接に取得し、取得のために、
酸素貯留材で充填されている少なくとも2つの反応器(4,5)をそれぞれ交互に2つの相で作動させ、その際それぞれ、
第1の相で前記反応器(4,5)を空気で充填させ、その結果空気中にある酸素が前記酸素貯留材の中に沈積し、
第2の相で、前記酸素貯留材の中の酸素を添加した前記反応器を、燃焼によって放出されたガス混合物で洗浄し、その結果前記ガス混合物に、前記酸素貯留材の中に沈積していた酸素が添加され、
前記第2の相の後に生じた前記ガス混合物を前記循環案内に供給し、その際に次の段階として水を凝縮によって切り離し、その結果前記ガス混合物が、酸素と不活性ガスとを含む酸化剤ガスとして前記水素循環エンジンに供給される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
酸素貯留材として、固相反応によって個々の酸化物または炭酸塩から合成した、Ca0.5Sr0.5Fe0.5Mn0.53-δを組成とするOSMセラミックスを使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バイパス弁(13)を用いて前記反応器(4,5)の任意の洗浄時間を調整可能であり、これによって前記酸素貯留材の中に沈積すべき酸素を任意に調整可能であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の相の後に前記循環案内に供給される前記ガス混合物が排ガス熱を有し、この排ガス熱を低圧蒸気を生成るために利用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の相で、酸素を使い果たした空気が発生し、この空気が低圧蒸気を生成するために利用する熱を有していることを特徴とする、請求項1または4に記載の方法。
【請求項6】
循環路内に、前記酸化剤ガスを貯留するためのダイヤフラム式ガスアキュムレータ(12)が含まれており、該ダイヤフラム式ガスアキュムレータ(12)は、前記ガス混合物を均質化するために用いられ、且つ前記水素循環エンジン(1)の確実な始動を可能とすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記2つの相を切換えるために複数の切換え弁(2,3)を使用し、これら切換え弁は、前記反応器(4,5)の入口の上流側および前記反応器(4,5)の出口の下流側に配置され、前記反応器(4,5)の前記入口と前記出口とは、前記第1の相の間、前記第2の相での前記反応器(4,5)の出口および入口になることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
不活性ガスの損失と空気中窒素の侵入とを、低圧蒸気による中間洗浄によって回避させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性ガス、有利にはアルゴンを循環路内で案内して、水素で作動する内燃機関に酸素を供給する方法に関するものである。
【0002】
本発明においては、ローカルエネルギーの産出のための、または、機械および車両の駆動のためのリーズナブルな内燃機関を使用すること、その際しかしながら燃料として水素を使用することによっていかなるCO放出をも回避し、同時にエネルギー変換の効率を著しく向上させることが重要である。
【背景技術】
【0003】
従来のピストン機関は、炭化水素を含む気体または液体の形態の燃料を酸化剤ガスである空気で燃焼させるが、その際にCOおよびHOを含む排ガスが発生する。COを放出しない内燃エンジンは、発生したCOを経費をかけて貯留するか、水素またはNHのような炭素を含まない燃料を使用するかしないと、実現できない。というのは、後者は水蒸気のみを、或いは、水蒸気と窒素を放出するにすぎないからである。しかしながら、この種の燃料は炭化水素とは著しく異なる燃焼特性を有している。すなわち、水素の場合の火炎伝播速度はたとえば通常の炭化水素の場合よりも著しく速い(CH/空気:=40cm/s)。
【0004】
水素エンジンの場合、燃焼は空気だけでも非常に迅速に経過し、その結果作動中の機械的負荷が急激に上昇する。しかも、酸化剤ガス内の酸素含有量が上昇すると、火炎伝播をさらに強く加速させることが予想されるが、いくつかの特許が開示しているのは、酸水素ガス混合物による作動(特許文献1)、或いは、上流側に接続される電解槽(特許文献2)またはアルカリ土類金属と水との反応(特許文献3)またはプラズマ化学的置換(特許文献4)をベースにした純粋水素と酸素による作動に関するものである。これらから結果する、酸水素ガスの反応を止められないという材料上の問題は、議論されない。実際に使用できる解決手段の試みは、アルゴンを混合することによって酸素による水素の燃焼を冷却することである(特許文献5)。
【0005】
失敗したいくつかの水素エンジン開発プロジェクトによれば、上記の最後に上げた試みによって、作業効率を著しく改善した循環式内燃エンジンが可能であることが最近になってWTZ Rosslauによって示された(非特許文献1)。しかしながら、従来では、水の電気分解から得られた水素と酸素だけがこの定置エンジンの作動のために使用される。したがって、2つのガスを常に貯留しておかねばならない。この燃焼方式を広範囲に適用するには、水素インフラストラクチャーに加えて純粋酸素の貯留と分配とを必要とする。しかしながら、液体酸素または圧縮したガス状酸素の供給は最近では経済的でない。というのは、物流コストによる購入量の低下に伴って酸素の価格がかなり上昇しているからである。酸素必要量が平均的な水素エンジン以下で少なければ、商業用に生成した酸素による効率的な作動は経済的でない。酸素のエネルギー必要量が約8.5kWh/Nmという極端に高い水の電気分解から得られる酸素の使用は、必要な酸素が既に存在している水素再発電の定置の適用に対してのみ意義がある。このような使用態様は、エネルギー上の理由および経済上の理由から、通常は定置型内燃エンジンまたは自動車の内燃エンジンの酸素供給に対しては問題にならない。
【0006】
それ故、このような問題に対して容易に考えられる解決手段の試みは、エンジンから放出されるエネルギーを使用して、内燃エンジンにおいてダイレクトに空気から酸素を生成することである。エンジンにおいて酸素を生成することはすでに1972年に特許文献6によって開示され、当時公知であった酸素提供方法がすべて取り上げられた。メイン特許クレームでは、通常のように空気中窒素で燃焼を冷却する代わりに、排ガスから取り出されたCOで高活性酸素を希薄化することによって冷却することが提案される。これに対応して、この試みは炭素を含んだ燃料の使用に向けられている。
【0007】
水素エンジンに酸素を供給するための技術的可能性は、空気から酸素を分離するための通常の技術的方法に基づいている。公知の分離方法の多くは、ガスに酸素を添加するために適しているにすぎない。すなわち、ポリマーダイヤフラムを用いて約40体積%までの酸素濃度が達成され(非特許文献2)、そしてゼオライトの圧力スウィング吸着法によって最大で95体積%が達成される(非特許文献3)。複合組成の混合酸化物をベースにした特殊な酸素貯留材(OSM - Oxygen Storage Material)は、中温ないし高温で、酸素分圧および温度変化に応じて酸素を選択的に且つ可逆的に固相の結晶格子に編成、分解することができる(特許文献7)。これに対応して、温度変化も酸素分圧の変化も、ガスの中へ酸素を添加するために利用することができる。酸素分圧の目的とする変化は、COまたは上記のような洗浄ガスによっても部分的に実現され(特許文献8)或いは、酸素貯留材において炭素物質の部分酸化のような化学反応が実施される(特許文献9)。これまで、この方法のエネルギー必要量に対して強力な記載はない。
【0008】
酸素添加方法とは異なり、水素循環エンジンには純粋酸素が必要である。というのは、取り込まれるすべてのガス状不純物が作動中に次第に蓄積されて、ガス循環路内の再循環ガス量または全圧力を高めるからである。それ故、時おり過剰なガス量を放出させねばならないが、循環路内で案内されている希ガスも失われる可能性がある。これを規則的に追加的に配量せねばならず、たとえば車両の場合には、加圧タンク内へも搬送しなければならない。これは実際的ではない。さらに、酸素とともに投入される空気中窒素が窒素酸化物を形成させることになり、場合によっては凝縮水とともに亜硝酸または硝酸を形成する可能性がある。
【0009】
上記のいくつかの理由から、水素循環エンジンは気密なエンジンとして実施されねばならず、しかも窒素を含まない酸化剤ガスとして作動させねばならない。
【0010】
純粋酸素を発生させるためにこれまでで最もエネルギー効率的な方式は、混合誘導型ダイヤフラムをベースにしている(特許文献10)。ガス圧縮のためのエネルギー必要量は、この方法に対しては、酸素で0.2kWh/Nm程度にすぎない(非特許文献4)。しかし、このエネルギー必要量は内燃エンジンによって発生する有効仕事に基づいて補償する必要があり、その結果水素循環エンジンの作業効率の上昇はほとんど見込めない。したがって、水素循環エンジンに酸素を供給するためのこの方法も、経済的な理由から意義がない。より高い比エネルギー消費量を持った典型的な方法に対しては、状況は一段と厳しくなる。
【0011】
さらに、ローカルなエネルギー生産の経済性は、酸素設備、排ガス回収、排ガスと酸素との所定の混合に対する高い設備コストによってかなり阻害される。それ故、これまでは、通常の燃料で作動されるピストンエンジンの酸素作動は成功を収めることができなかったとみるのが妥当であると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】独国特許出願公開第3809386A1号明細書
【文献】国際公開WO2006/037006A3号パンフレット
【文献】米国特許第4411223A号明細書
【文献】特開平07-292372号公報
【文献】特開2009-264108号公報
【文献】米国特許第3792690A号明細書
【文献】独国特許第102005034071B4号明細書
【文献】欧州特許第0913184B1号明細書
【文献】米国特許第6379586B1号明細書
【文献】国際公開WO2014/161531A2号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【文献】Cech, M., Ehrler, T., Tschalamoff, T., Knape, M., Reiser, Ch. ; Zero Emission-Kreislaufmotor zur Rueckverstromung von gruenem Wasserstoff. 11. Dessuer Gasmotoren-Koferenz, 11.-12. 04.. 2019, Dessau
【文献】Merilaeinen, A., Seppaelae, A., Kauranen, P. : Minimizing specific energy consumption of oxygen enrichment in polymetic hollow fiber membrane modules. Applied Energy 94 (2012), S.285-294
【文献】Rao, P., Muller, M.: Industrial Oxygen : Its Generation and Use. Proceedings of ACEEE Summer Study on Energy Efficiency in Industry (2007), 6-124 bis 6-134
【文献】Kriegel, R. : Sauerstoff-liefernde Keramiken fuer Verbrennungsprozesse. Gaswaerme international 4 (2017), S.43 bis 48)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、アルゴン循環を伴う水素循環エンジンに対し、純粋酸素を周囲空気から分離することによって純粋酸素のリーズナブルなローカルな供給を実現し、しかもこのためにエンジンの有効出力仕事を使用する必要がないように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、この課題は、酸素を生成するため、OSMセラミックスと、排ガス熱と、排ガスの低い酸素分圧とを使用することによって解決される。OSMセラミックスで充填される少なくとも2つの反応器を使用し、これら反応器を交互に排ガスで洗浄し、空気で再生する。不活性ガスの損失および空気窒素の侵入は、低圧蒸気による中間洗浄によって回避される。後者は排ガスまたは排気空気の排熱によって発生させる。反応器の洗浄を行っている間、水蒸気と不活性ガスと酸素との混合物が生じる。これに続いて、ガス相での酸素含有量を水蒸気の凝縮によって著しく増大させる。
【0016】
OSMセラミックスをほぼ一定の温度で交互に充填(空気で)及び排出(洗浄ガス)すれば、当初酸素を含んでいない洗浄ガスにおいて空気中と同じ酸素濃度を達成できる。したがって、酸素拡張のプロセスは酸素含有量の上昇とともに遅くなるが、ガス中の最大達成可能な酸素含有量を近似的に算出することができる。それ故、ガススループットが分かっていれば、提供可能な酸素量も得られる。これは、以下の等式を用いて例証されている。
【0017】
1.H2(g) + 0.5O2 + 2Ar → H2O(g) + 2Ar
(酸化剤ガス中のO2 20体積%)
2.H2O(g) + 2Ar + OSM(ox.) → H2O + 2Ar + 0.75 O2 + OSM(red.)
(循環ガス中のO2 ほぼ20体積%)
3.H2O(g) + 2Ar + 0.75 O2 → 1H2O(I)↓ + 2Ar + 0.75 O2 ()
(水蒸気凝縮後:Ar内または循環ガス内のO2 約27.3体積%)
【0018】
すなわち、循環ガスはHO分離後に酸化剤ガスと同一視される。プロセスは、燃焼に必要な酸素量のみを遊離させるように進行せねばならない。しかし、過剰な酸素はほとんど邪魔にならず、同様に循環案内し、これによってOSMの酸素放出を阻止する。
【0019】
水素循環エンジンの場合、原理的には、ある一定の水素量の燃焼に必要な循環ガス中の酸素よりも多くの酸素を発生させることができることは明らかである。しかしながら、これは、循環ガス中の酸素含有量が上昇するので、酸素遊離をコントロールしなければシステム圧を増大させることになる。さらに、エンジンの燃焼条件が変化する可能性がある。それ故、循環ガス中の酸素含有量のコントロールは必要である。
【0020】
本発明によれば、それぞれのOSM反応器の循環ガスによる洗浄時間を変えることによって循環ガス中の酸素含有量を調整する。このため、複数のOSM反応器を橋渡しすることによって循環ガスによるこれらOSM反応器の洗浄時間の自由な変更を可能にさせるバイパス弁を使用する。その際、空気によるOSM反応器の再生のために、循環ガスによる洗浄時間とは異なる再生時間を使用できるようにするのが有利である。これによって、酸素によるOSMセラミックスの常に十分な充填を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
次に、本発明を図面を用いて1実施形態に関しより詳細に説明する。
図1】本発明による方法を説明するための機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
100kWの燃料パワーを持つ水素循環エンジン1に酸素を供給する方法が図1に概略的に図示されている。水素循環エンジン1の排ガスは、直接切換え弁2を介して、OSMセラミックスで充填されている第1の反応器4に供給する。OSMセラミックスとして、固相反応によって個々の酸化物または炭酸塩から合成した、Ca0.5Sr0.5Fe0.5Mn0.53-δを組成とする混合酸化物を使用する。有機燃料の25体積%と混合させ、有機性の結合剤およびセットアップ剤を添加して塑性化し、押出成形してほぼ2mm径の薄い棒を形成させる。押出成形物を1420℃で4時間焼結させ、その後1ないし3cmの切片に破断する。開放気孔率が27ないし30体積%の顆粒のそれぞれ15kgを第1の反応器4および第2の反応器5内へ充填する。第1の反応器4を循環ガスで20秒間洗浄する際、水蒸気アルゴン混合物の酸素分圧が低く、第1の反応器4内の温度が上昇するために、ほぼ100標準リットルの酸素がOSMセラミックスから遊離する。第1の反応器4内での洗浄の間、他の切換え弁3を介して空気が供給される第2の反応器5内でOSMセラミックスを再生させる。第1の反応器4内の酸素を添加した循環ガスを、他の切換え弁3を介して案内し、そこから、循環ガス用分岐集積管6を介して、排ガス熱の一部が蒸気発生(<110℃,<0.5バール)のために使用される低圧蒸気発生器8の第1の熱交換器15を通過させる。
【0023】
低圧蒸気発生器8は、さらに、別個の他の熱交換器16を介して、第2の反応器5または第1の反応器4から交互に排出空気用集積管7を介して案内される、酸素を添加した排出空気によっても加熱される。水蒸気とアルゴンと酸素とから成る、循環ガス用集積管6のガス混合物は、低圧蒸気発生器8の第1の熱交換器15を貫流した後、次に空冷式凝縮器9を通過するように案内し、その結果水蒸気が凝縮される(auskondensieren)。液状の水は低圧蒸気発生器8の液相部内へ誘導し、その際集まる過剰の水はオーバーフロー部を介して排出する。アルゴンと酸素とから成る循環ガスは、ダイヤフラム式ガスアキュムレータ12内でほぼ周囲圧で中間蓄積し、ここから再び水素循環エンジン1に供給する。ダイヤフラム式ガスアキュムレータ12は循環ガスの均質化を改善するために用いる。というのは、循環ガス内の酸素含有量が変動することがあるからである。ダイヤフラム式ガスアキュムレータ12内での酸素分圧は酸素センサ14を用いて常時監視し、酸素含有量が低すぎる場合には、第1の反応器4内および/または第2の反応器5内での循環ガスによる洗浄時間を長くし、これに対し酸素濃度が高すぎる場合には短縮させるようにして、予め設定した目標値へ近づける。ダイヤフラム式ガスアキュムレータ12は、停止後システムを外部からのガス供給なしに再び起動させるためにも用いる。
【0024】
反応器4への循環ガスの供給を第2の反応器5へ切換える場合、または、第2の反応器5への循環ガスの供給を第1の反応器4へ切換える場合、アルゴンが失われないようにするため、洗浄過程の終了時に、すなわち切換えの直前に、低圧蒸気発生器8と入口側で結合されている循環ガス用蒸気配量弁10を介して、低圧蒸気を循環ガス内へ配量し、その結果第1の反応器4内または第2の反応器5内に残っている残留ガスが低圧蒸気により循環ガス用集積管6内へ洗い流される。同時に、空気による再生サイクル内にある第2の反応器5または第1の反応器4を、サイクルの終了時に、低圧蒸気発生器8と入口側で結合されている新気用弁11を介して洗浄することで、第2の反応器5または第1の反応器4から残留空気を排出空気用集積管7内へ搬出して、外部ガスまたは残留空気が第2の反応器5内または第1の反応器4内に残って、その後循環ガス内へ到達しないようにする。低圧蒸気によるこの洗浄過程の後、両切換え弁2と3を同時に切換え、これによって循環ガスの供給を第1の反応器4から第2の反応器5へ、または、第2の反応器5から第1の反応器4へ逆転させ、同時にこれによって、第2の反応器5から第1の反応器4への、または、第1の反応器4から第2の反応器5への空気供給を行う。
【0025】
上述したように、ある一定の水素量を燃焼させるために必要な量よりも多くの酸素を循環ガス内に発生させることができる。循環ガス内の酸素含有量は、循環ガスによる第1の反応器4または第2の反応器5の洗浄時間を変化させることで、簡単に調整される。この目的のために、循環ガスによる第1の反応器4または第2の反応器5の洗浄時間を自由に変化させることを可能にするバイパス弁13を用いる。その際、空気による第2の反応器5または第1の反応器4の再生のために、循環ガスによる洗浄時間とは異なる再生時間を使用できるようにするのが有利である。これによって、酸素によるOSMセラミックスの十分な充填を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0026】
1 水素循環エンジン
2 切換え弁
3 他の切換え弁
4 OSMを充填した第1の反応器
5 OSMを充填した第2の反応器
6 循環ガス用集積管
7 排出空気用集積管
8 低圧蒸気発生器
9 凝縮器
10 循環ガス用蒸気配量弁
11 新気用弁
12 ダイヤフラム式ガスアキュムレータ
13 バイパス弁
14 酸素センサ
15 第1の熱交換器
16 他の熱交換器
図1