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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】頭部装着型視認装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/64 20060101AFI20240723BHJP
   G02B 23/00 20060101ALI20240723BHJP
   G02B 25/00 20060101ALI20240723BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240723BHJP
【FI】
H04N5/64 511A
G02B23/00
G02B25/00
H04N23/50
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024031408
(22)【出願日】2024-03-01
【審査請求日】2024-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305021650
【氏名又は名称】株式会社近藤研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健人
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3231356(JP,U)
【文献】特開平11-215411(JP,A)
【文献】特開2000-184245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/64
G02B 23/00
G02B 25/00
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の頭部に装着される頭部装着部と、
前記頭部装着部に取り付けられ、前記装着者の少なくとも左右一方の視線を前方へ通過させる視線通過部材と、
前記視線通過部材に隣接して配設され、前記視線通過部材を介して対象物を撮像可能な撮像手段と
を備え、
前記視線通過部材は、
前記装着者の視線を前方へ通過させると共に前記撮像手段の光軸を前方へ屈折させる、横長の直方体形のプリズムを備え
前記視線通過部材の横長のプリズムの横方向と、前記装着者の視野における左右方向とが同じ方向であって前記装着者が自らの視線を、前記プリズムの横幅の範囲で左右方向へ動かすことができるものであり、
さらに前記視線通過部材のプリズムは、
前方へ下り勾配または上り勾配で傾斜する斜面を有する二個の直角プリズムが互いの該斜面を重ね合わせて一体化されて横長の直方体形を成し、該斜面に、前方から入射した光を後方へ透過させる透過光と上方または下方へ反射させる反射光とに分ける透過反射手段が設けられたものであり、
前記撮像手段は、前記プリズムの上方または下方に配設され、光軸が、該プリズムの斜面により前方へ屈折されるものであることを特徴とする頭部装着型視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の見る対象物を撮像し得る頭部装着型視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の発明者らは、特許文献1に示すように、装着者の眼前に配置された立方体形のプリズムにより、該装着者の視線を前方へ透過すると共に該プリズムの側方に配置されたカメラの光軸を屈折させて該視線に一致させる頭部装着型カメラを提案している。かかる従来構成によれば、装着者が視ている対象物を、当該装着者の視線で撮像できることから、カメラで撮像した画像をモニターなどの画像表示装置で表示することによって、装着者と同じ目線で対象物を視ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3231356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述の従来構成は、装着者が立方体形のプリズムを介して対象物を見るようにしたものであるから、該プリズムを介した該装着者の視野が、該プリズムのサイズにより定まる。これにより、プリズムを介した視野の外側を見るためには、装着者が頭部を動かさねばならなかった。こうしたから、立方体形のプリズムを介して見る構成にあって、該プリズムを介した視野を広げるためには、プリズムの縦横サイズを大きくすることが必要となる。しかし、プリズムのサイズが大きくなると、これに伴って重量が増加することから、装着者の負担が増えるという問題があった。
【0005】
本発明は、重量増による装着者の負担を抑制しつつ、装着者の視野を広くし得る頭部装着型視認装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、装着者の頭部に装着される頭部装着部と、前記頭部装着部に取り付けられ、前記装着者の少なくとも左右一方の視線を前方へ通過させる視線通過部材と、前記視線通過部材に隣接して配設され、前記視線通過部材を介して対象物を撮像可能な撮像手段とを備え、前記視線通過部材は、前記装着者の視線を前方へ通過させると共に前記撮像手段の光軸を前方へ屈折させる、横長の直方体形のプリズムを備えたものであることを特徴とする頭部装着型視認装置である。
【0007】
かかる構成にあっては、横長のプリズムを設けた構成であることから、該プリズムを介した装着者の横方向の視野を広くできる。人間の視覚は、一般的に上下方向の視野に比して横方向の視野が広いことから、横長のプリズムによって装着者の視野が広がるため、使い心地に優れ、該装着者の作業性を飛躍的に向上させることができる。また、前述した従来の立方体形のサイズを大きくしたプリズムに比して、本構成の横長のプリズムは、少なくとも縦方向のサイズが小さいことから、軽量となる。これにより、プリズムの重量による装着者の負担を抑制することができ、比較的長時間の使用にも適する。
【0008】
さらに、横長のプリズムによって、装着者が眼球(視線)を横方向へ動かすことのできる範囲が広がることから、前記作業性の向上に寄与し、使い勝手に優れる。ここで、一般的に人間の眼球は、縦方向(上下方向)に比して横方向へ動かすことのできる範囲が広く且つ動かし易いことから、前記作業性の向上効果や使い勝手の良さを装着者が実感し易いという優れた利点がある。
【0009】
前述した本発明の頭部装着型視認装置にあって、視線通過部材のプリズムは、前方へ下り勾配または上り勾配で傾斜する斜面を有する二個の直角プリズムが互いの該斜面を重ね合わせて一体化された横長の直方体形を成し、該斜面に、前方から入射した光を後方へ透過させる透過光と上方または下方へ反射させる反射光とに分ける透過反射手段が設けられたものであり、撮像手段は、前記プリズムの上方または下方に配設され、光軸が、該プリズムの斜面により前方へ屈折されるものである構成が提案される。
ここで、プリズムが、前方へ下り勾配の斜面を有する直角プリズムからなる構成の場合には、該斜面の透過反射手段により、前方から入射した光が透過光と上方へ反射する反射光とに分けられる。このため、撮像手段がプリズムの上方に配設される。一方、プリズムが、前方へ上り勾配の斜面を有する直角プリズムからなる構成の場合には、該斜面の透過反射手段により、前方から入射した光が透過光と下方へ反射する反射光とに分けられる。このため、撮像手段がプリズムの下方に配設される。
【0010】
かかる構成にあっては、視線通過部材のプリズムを透過した透過光を装着者が受光し且つ当該プリズムの斜面で反射した反射光を撮像手段が受光することから、該撮像手段が装着者の見ている対象物を撮像できる。ここで、撮像手段は、プリズムの横長の上面または下面に対向して設けられることから、この上面と下面との横幅に応じて画角を調整することによって、該プリズムを介した装着者の横方向の視野と略同様に撮像することができる。これにより、撮像手段で撮像された画像を見る者に、装着者と略同じものを見せることができる。
【0011】
尚、こうした本発明の構成にあっては、撮像手段がプリズムの斜面に映る像(所謂、鏡像)を撮像することから、該撮像手段により撮像した画像と装着者の見る像とでは、上下方向や左右方向が異なってしまう。このため、本発明にあって、撮像手段により撮像した画像データと装着者の見る像との上下左右方向を一致させるように、該画像データのデータ処理を行う手段(以下、データ処理手段という)を備えた構成が好適である。かかる構成によれば、データ処理手段でデータ処理された画像データを、モニター等の画像表示装置へ出力して表示させることにより、該画像表示装置を見る者に、装着者と同じものを見せることができる。
【0012】
また、本発明の構成にあって、撮像手段により撮像した画像データを、立体画像(三次元画像)として出力可能なデータに変換する処理手段を備えた構成とすることもできる。ここで、立体画像に変換する処理手段と前記上下左右方向を一致させるデータ処理手段との両方を備えた構成が好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の頭部装着型視認装置によれば、横長のプリズムを介した装着者の横方向の視野を広くでき、該作業者の作業性を向上できる。そして、プリズムによる重量増を抑制できることから、該重量増による装着者の負担を抑制でき、比較的長時間の使用に適する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例の頭部装着型視認装置1を示す斜視図である。
図2】頭部装着型視認装置1の、(A)平面図と、(B)ルーペ4を省略して示す正面図である。
図3】左側の視線通過ユニット5の、(A)前方から見た斜視図と、(B)後方から見た斜視図と、(C)筐体21の一部を切り欠いて示す前方から見た斜視図である。
図4】右側の視線通過ユニット6の、(A)前方から見た斜視図と、(B)後方から見た斜視図と、(C)筐体22の一部を切り欠いて示す前方から見た斜視図である。
図5】(A)プリズム31の斜視図と、(B)プリズム31の分解斜視図である。
図6】(A)頭部装着型視認装置1による装着者の視野を示す説明図と、(B)立方体形のプリズム81を用いた構成による装着者の視野を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を具体化した実施例を、添付図面を用いて説明する。尚、実施例にあって、前後方向は、実施例の頭部装着型視認装置1を装着した装着者における前後方向を示し、左右方向は、同様に該装着者における左右方向を示す。そして、この左右方向が、横方向を示し、装着者における上下方向が、縦方向を示す。さらに、実施例にあって、前面と正面とは、同じ意味で用いられている。
【0016】
本実施例の頭部装着型視認装置1は、図1,2に示すように、装着者の頭部に装着されるヘッドベルト2と、該ヘッドベルト2の前側中央部に連結部材7を介して取り付けられた照明部材3と、該連結部材7に支持部材8を介して取り付けられた左右のルーペ4,4と、該支持部材8に取り付けられた左右の視線通過ユニット5,6とを備え、ルーペ4,4と視線通過ユニット5,6とが一体的に設けられている。
【0017】
ヘッドベルト2は、周囲のサイズを調整可能なものであり、この調整により装着者の頭部にフィットさせることができる。ルーペ4は、略板状のものである。これらヘッドベルト2およびルーペ4は、従来から公知の構成を夫々適用できるため、詳細な説明を省略する。尚、ヘッドベルト2が、本発明にかかる頭部装着部に相当する。
【0018】
前記連結部材7は、ヘッドベルト2に固定される基部11と、該基部11から前方へ突出された突杆部12と、該突杆部12を挿通させた上下方向の長孔が設けられた摺動部13と、該摺動部13の下端部に上下方向へ傾動可能に設けられた取付部14とを備える。突杆部12の先端部には位置決め部15が螺着されており、該位置決め部15を締結させることによって、該突杆部12に対する摺動部13の上下位置を固定できる一方、該位置決め部15の締結解除によって、摺動部13を突杆部12に対して上下方向へ移動できる。
【0019】
前記取付部14には、前記照明部材3と、前記支持部材8を介してルーペ4,4および視線通過ユニット5,6とが取り付けられている。この記支持部材8は、ルーペ4,4および視線通過ユニット5,6を取付部14(および照明部材3)に対して傾動可能とするものである。これら照明部材3、ルーペ4,4、および視線通過ユニット5,6は、前記連結部材7により、一体的に上下移動できると共に所望の上下方向位置で位置決め固定できる。そして、取付部14によって、摺動部13に対して一体的に上下方向へ傾動できる。さらに、前記支持部材8により、取付部14および照明部材3に対してルーペ4,4と視線通過ユニット5,6とを一体的に傾動できる。ここで、本実施例にあっては、左右のルーペ4,4が、左右の視線通過ユニット5,6の直前に隣接して配置されている。
【0020】
照明部材3は、LEDライトを備え、該LEDライトへ電力を供給するケーブルと、該ケーブルを介して電源やスイッチが接続されている(図示せず)。この照明部材3により、視認通過ユニット5,6を介して見る対象物を照らすことができ、該対象物の視認性を向上できる。
【0021】
次に、本発明の要部にかかる視線通過ユニット5,6について説明する。
図1,2に示すように、前記支持部材8の左右両側部に左右のルーペ4,4と視線通過ユニット5,6とが夫々固結されている。左側の視線通過ユニット5は、筐体21と、該筐体21の内部に配設されたプリズム31とを備え、右側の視線通過ユニット6は、筐体22と、該筐体22の内部に配設されたプリズム31およびカメラ35とを備える。尚、視線通過ユニット6が、本発明にかかる視線通過部材に相当し、カメラ35が、本発明にかかる撮像手段に相当する。
【0022】
左側の視線通過ユニット5を構成する筐体21は、図3に示すように、左右方向に横長の略直方体形を成し、内部に前記プリズム31が収容される。そして、この筐体21には、その前面部と後面部とに窓部25,25が対向状に開口形成されている。これら窓部25,25は、筐体21の内部に配設されたプリズム31の前面と後面とを夫々臨むように設けられている。これにより、筐体21のプリズム31は、その前面の略全体が前面部の窓部25を介して前方へ露出され、後面の略全体が後面部の窓部25を介して後方へ露出されている。
【0023】
右側の視線通過ユニット6を構成する筐体22は、図4に示すように、左右方向に横長の略直方体形を成す主体部22aと該主体部22aから上方へ突出された略直方体形を成す突出部22bとから構成されており、該主体部22aの内部と突出部22bの内部とが連通されている。主体部22aの内部には前記プリズム31が収容され、該突出部22bの内部には前記カメラ35が収容される。そして、前述した左側の筐体21と同様に、主体部22aには、その前面部と後面部とに窓部26,26が対向状に開口形成されている。これら窓部26,26は、左側の筐体21と同様に、筐体22の主体部22aに配設されたプリズム31の前面と後面とを夫々臨むように設けられている。これにより、筐体22のプリズム31は、その前面の略全体が前面部の窓部26を介して前方へ露出され、後面の略全体が後面部の窓部26を介して後方へ露出されている。
【0024】
尚ここで、各視線通過ユニット5,6の直前に配置される左右のルーペ4,4は、筐体21,22の前面部の窓部25,26よりも大きいサイズに形成されており、該窓部25,26の全域を前方からカバーするように配置されている。
【0025】
筐体21,22に配設されたプリズム31は、図5に示すように、二個の直角プリズム32,32が互いの斜面32a,32a同士を重ね合わせて接合された直方体形のものであり、いわゆるビームスプリッターである。ここで、直角プリズム32は、直角三角形の両側面間の横幅wが、該側面の底辺長さ(プリズム31の前後幅)sと高さ(プリズム31の縦幅)tとに比して長いものである。こうした二個の直角プリズム32,32から成るプリズム31は、斜面32aが前方へ下り勾配で傾斜する状態で、前記筐体21,22の内部に夫々配設される(図3,4参照)。
【0026】
プリズム31は、これを構成する直角プリズム32の斜面32aに、透過率(透明度)を20~50%とするミラーコーティングが施されている。そして、右側のプリズム31(視線通過ユニット6)は、その前面、後面、および上面に、反射防止コーティングが施されていると共に、他の三面(左右の側面と下面)に、光の入出力を抑制する黒色コーティングが施されている。一方、左側のプリズム31(視線通過ユニット5)は、その前面および後面に、反射防止コーティングが施されていると共に、他の四面(左右の側面、上面、および下面)に、光の入出力を抑制する黒色コーティングが施されている。尚、直角プリズム32の斜面32aに施されたミラーコーティングが、本発明にかかる透過反射手段に相当する。
【0027】
右側の視線通過ユニット6に配設されたカメラ35は、CCDカメラにより構成され、図4に示すように、筐体22の主体部22aに配設された前記プリズム31の上面に、カメラレンズを対向させて、該筐体22の突出部22bの内部に配設されている。ここで、カメラ35は、プリズム31を介して入射した光が撮像素子に映るように、少なくとも最大画角が該プリズム31の横幅に合わせて設定されている。
【0028】
こうした視線通過ユニット5,6では、夫々の直前に配置されたルーペ4,4から入射した入射光が、各筐体21,22の窓部25,26を介してプリズム31,31に入射する。そして、プリズム31,31に入射した入射光が、該プリズム31,31の斜面32a,32aを透過する透過光と、該斜面32aで上方へ反射する反射光とに分けられる。このようにプリズム31,31を透過した透過光を、各筐体21,22の窓部25,26を介して装着者が視認できる。右側の視線通過ユニット6では、プリズム31の斜面32aで反射した反射光が、カメラ35のレンズを介して撮像素子に映る。すなわち、プリズム31の斜面32aにより、カメラ35の光軸が前方へ屈折される。こうしたことから、カメラ35が、横長のプリズム31を介する装着者の視野で撮像可能となっている。
【0029】
ここで、本実施例にあっては、左側の視線通過ユニット5に設けたプリズム31を透過した透過光を装着者が視認できる構成となっている。このように左右の視線通過ユニット5,6に同じプリズム31,31を夫々設けることにより、各プリズム31,31を介して装着者の左右の眼に映る像に対して、装着者が違和感を生じてしまうことを抑制できる。
【0030】
また、前記カメラ35は、図1に示すように、ケーブル39が接続されており、該ケーブル39を介して制御装置38に接続されている。制御装置38は、ケーブル39を介して、カメラ35に撮像を指示する信号と該カメラ35で撮像した画像データとを送受信すると共に、該カメラ35へ電力を供給する。そして、この制御装置38は、該無線通信機能によって、カメラ35から入力した画像データをネットワークを介して通信することができる。さらに、本実施例の制御装置38は、カメラ35から入力した画像データの上下左右方向を、装着者の見る像と一致させるように、該画像データをデータ処理するデータ処理手段を備える。ここで、カメラ35は、前記プリズム31の斜面32aに映る像(鏡像)を上方から撮像することから、該撮像した画像が、装着者の見る像(該斜面32aを通過して見る像)と上下方向や左右方向が異なる。前記データ処理手段は、カメラ35で撮像した画像データの上下左右方向を適宜変換して、装着者の見る像と一致させるデータ処理を行う。制御装置38は、このデータ処理手段によりデータ処理した画像データを前記無線通信機能により出力する。これにより、無線通信機能で通信された前記画像データ(静止画や動画のデータ)を、モニター等の画像表示装置で映すと、該画像表示装置で表示される画像と前記視認ユニット5,6で装着者の見る像との上下左右方向が一致する。
【0031】
尚、前記データ処理手段は、従来から公知のものを適用できることから、その詳細を省略する。また、前記無線通信機能としては、例えば、wifi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などが適用できる。
【0032】
本実施例の頭部装着型視認装置1にあっては、ヘッドベルト2が装着者の頭部に装着されて、該装着者の両眼直前に左右の視線通過ユニット5,6を位置させることにより、該装着者が対象物を拡大視できる。装着者の左右両眼は、視線通過ユニット5,6のプリズム31,31とルーペ4,4とを介して、前記対象物を見る。すなわち、左眼の視線は、左側のプリズム31とルーペ4とを通過して、対象物に至り、右眼の視線は、右側のプリズム31とルーペ4とを通過して、対象物に至る。
【0033】
ここで、左右の視線通過ユニット5,6は、前述したように、横長の直方体形のプリズム31を備えた構成であることから、図6(A)に示すように、左右方向の視野が該プリズム31の横幅(筐体21,22の窓部25,26の横幅)に従って広くなる。これに比して、立方体形のプリズム81を備えた従来構成では、図6(B)に示すように、該立方体形のプリズム81の横幅が、本実施例のプリズム31よりも短い。このため、本実施例の構成では、従来構成に比して、装着者の左右方向の視野が広くなる。また、本実施例では、装着者が自らの視線を、プリズム31の横幅の範囲で左右方向へ動かすことができる。すなわち、視線を左右方向へ動かし得る範囲も、前述した立方体形のプリズム81に比して広くなる。尚、この従来構成は、比較のためにプリズム81以外は実施例と同じ構成とし、該従来構成のプリズム81は、本実施例のプリズム31と同じ縦幅であって、該縦幅と横幅とが同じ立方体形である。
【0034】
そして、視線通過ユニット6のカメラ35は、前述したように画角がプリズム31の横幅に合わせて設定できることから、装着者の視野で撮像することができる。
【0035】
このように本実施例の頭部装着型視認装置1は、横長の直方体形のプリズム31,31を備えた構成であるから、該プリズム31の横幅に従って装着者の左右方向の視野が広くなると共に、視線を左右方向へ動かすことができる範囲も広くなる。これにより、装着者の作業性を向上することができる。また、横長の直方体形のプリズム31は、同じ横幅(換言すれば、同じ視野)の立方体形のプリズムに比して縦幅が短いことから、軽量となる。具体例として、本実施例のプリズム31は、横幅wが縦幅tの二倍かつ前後幅sが縦幅tと同じである場合に、同じ横幅の立方体形のプリズム81に比して、約1/4の重量となる。このように本実施例の構成は、左右方向の視野を同じとする立方体形のプリズムを用いる場合に比して、軽量化されることから、装着者の負担を抑制でき、比較的長時間の使用にも適する。
【0036】
さらに、視線通過ユニット6のカメラ35は、その光軸がプリズム31(斜面32a)で前方へ屈折してルーペ4を介して対象物に至ると共に、画角が該プリズム31の横幅に合わせて設定される。これにより、横長のプリズム31を介した装着者の左右方向の視野と略同じ範囲を撮像できる。
【0037】
また、本実施例の構成は、制御装置38が、カメラ35で撮像した画像データの上下左右方向を、装着者の見る像と一致させて出力(通信)するようにしたものであるから、該出力した画像データ(静止画や動画のデータ)をモニターで映すことによって、該モニターを見る者が装着者と同じものを見ることができる。
【0038】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、前述の実施例における各部の寸法形状は、適宜変更することができる。
【0039】
実施例の頭部装着型視認装置は、右側の視線通過ユニットにカメラを設けた構成であるが、これに限らず、左側の視線通過ユニットにカメラを設けた構成とすることもできる。または、左右両方の視線通過ユニットにカメラを設けた構成としても良い。
【0040】
実施例の頭部装着型視認装置は、前方へ下り勾配の斜面を有する直角プリズムからなる横長のプリズムを設けた構成であるが、これに限らず、前方へ上り勾配で傾斜する斜面を有する直角プリズムからなる横長のプリズムを設けた構成であっても良い。この構成では、プリズムに前方から入射する光が斜面で下方へ反射することから、該プリズムの下方にカメラが配設される。
【0041】
実施例の頭部装着型視認装置は、視線通過ユニットの直前方にルーペを設けた構成であるが、これに限らず、ルーペの無い構成であっても良いし、ルーペが視線通過ユニットの直後方に設けた構成であっても良い。
【0042】
実施例の頭部装着型視認装置は、頭部に装着するヘッドベルトを備えた構成としたが、これに限らず、眼鏡のフレームのように耳に掛けて装着するタイプのものであっても良い。
【0043】
実施例の頭部装着型視認装置は、無線通信機能を有する制御装置が、画像データの上下左右方向を変換するデータ処理手段を備えた構成としたが、これに限らず、このデータ処理手段をカメラが備えた構成であっても良い。ここで、カメラが無線通信機能も備えた構成とすれば、該カメラから、上下左右方向を変換した画像データを直接通信することができる。
【0044】
実施例では、頭部装着型視認装置が、前記画像データの上下左右方向を変換するデータ処理手段を備えた構成としたが、これに限らず、制御装置から送信された画像データ(変換前のデータ)を受信する受信装置や画像表示装置(モニター)等が、前記データ処理手段を備えていても良い。このように受信装置や画像表示装置が前記データ処理手段を備える場合には、これら装置と頭部装着型視認装置とを備えたシステムとなる。
【0045】
実施例にあって、制御装置が、前記データ処理手段に加えて、カメラで撮像した画像データを、立体画像(三次元画像)として出力可能なデータに変換する処理手段を備えた構成であっても良い。また、この処理手段をカメラが備えた構成や、制御装置から送信された画像データを受信する受信装置や画像表示装置などが、該処理手段を備えた構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 頭部装着型撮像装置
2 ヘッドベルト
5,6 視線通過ユニット
31 プリズム
32 直角プリズム
32a 斜面
35 カメラ
【要約】
【課題】重量増による装着者の負担を抑制しつつ、該装着者の視野を広くし得る頭部装着型視認装置を提案する。
【解決手段】装着者の頭部に装着されるヘッドベルト2に取り付けられた一対の視線通過ユニット5,6と、一方の視線通過ユニット6に隣接して配設されたカメラ35とを備え、一方の視線通過ユニット6が、装着者の視線を前方へ透過させると共にカメラ35の光軸を前方へ屈折させる横長の直方体形のプリズム31を備え、他方の視線通過ユニット5が、装着者の視線を前方へ透過させる横長の直方体形のプリズム31を備えたものである。かかる構成によれば、視線通過ユニット5,6のプリズム31を介した横方向の視野を広くでき、装着者の作業性を向上できる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6