(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】治工具
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20240723BHJP
B24B 5/18 20060101ALI20240723BHJP
B23Q 1/76 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B24B41/06 J
B24B5/18 A
B23Q1/76 S
(21)【出願番号】P 2019234594
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】平栗 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎一
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-040348(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0306273(US,A1)
【文献】特開2006-095674(JP,A)
【文献】特開2001-259974(JP,A)
【文献】特開2019-089194(JP,A)
【文献】特開平06-339843(JP,A)
【文献】特開2004-017243(JP,A)
【文献】特開2012-040670(JP,A)
【文献】特開2012-051070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 5/00 - 5/50
B23Q 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治工具であって、
被加工物に接触する先端部と、
前記先端部を支持する本体部と、
前記先端部にかかる荷重による前記本体部のしなりを促す変形制御部とを備え、
前記本体部は前記本体部を支持する支持部に固定される第1本体部と、前記第1本体部と前記先端部との間に設けられる第2本体部とを含み、
前記変形制御部は前記第2本体部のしなりを促すように構成され、
前記変形制御部は前記第2本体部の部分的な断面形状の変化により前記第2本体部のしなりを促す第2制御部を含み、
前記第2制御部は前記第2本体部に設けられる凹部を含み、
前記凹部は前記本体部および前記先端部が並ぶ第1基準方向に直交する第2基準方向に沿うように構成され、
前記凹部は溝を含み、
前記治工具はセンターレス研削装置のブレードである
治工具。
【請求項2】
前記変形制御部は前記第2本体部の長さの設定により前記第2本体部のしなりを促す第1制御部を含む
請求項1に記載の治工具。
【請求項3】
前記第1制御部は
前記第1基準方向に関して前記第1本体部よりも長い前記第2本体部を含む
請求項2に記載の治工具。
【請求項4】
前記先端部は焼結体を含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の治工具。
【請求項5】
前記先端部の弾性率は前記本体部の弾性率よりも大きい
請求項1~4のいずれか一項に記載の治工具。
【請求項6】
前記ブレードは薄板である
請求項
5に記載の治工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は治工具に関する。
【背景技術】
【0002】
治工具には治具および工具が含まれる。治具は被加工物の位置決め等に用いられる。工具は被加工物の加工に用いられる。一例では、治工具は本体部および先端部により構成される。本体部は先端部を支持する。先端部は被加工物に接触する。特許文献1は従来の治具の一例を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
治工具では、先端部の摩耗が抑えられることが好ましい。
【0005】
本発明の目的は先端部の摩耗を抑えることに寄与する治工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に関する治工具は被加工物に接触する先端部と、前記先端部を支持する本体部と、前記先端部にかかる荷重による前記本体部のしなりを促す変形制御部とを備える。
【0007】
上記治工具によれば、本体部がしなることにより先端部に局所的に応力が生じにくくなり、先端部の摩耗が抑えられる。
【0008】
前記治工具では、前記本体部は前記本体部を支持する支持部に固定される第1本体部と、前記第1本体部と前記先端部との間に設けられる第2本体部とを含み、前記変形制御部は前記第2本体部のしなりを促すように構成され、前記変形制御部は前記第2本体部の部分的な断面形状の変化により前記第2本体部のしなりを促す第2制御部を含み、前記第2制御部は前記第2本体部に設けられる凹部を含み、前記凹部は前記本体部および前記先端部が並ぶ第1基準方向に直交する第2基準方向に沿うように構成され、前記凹部は溝を含む。
【0009】
上記治工具によれば、本体部がしなりやすくなり、特に第2本体部が均一にしなりやすくなる。また、上記治工具によれば、変形制御部を容易に形成できる。
前記治工具は治具であり、前記治具はセンターレス研削装置のブレードである。上記治工具によれば、被加工物を支持する先端部に局所的な摩耗が生じにくい。
【0010】
前記治工具の一例では、前記変形制御部は前記第2本体部の長さの設定により前記第2本体部のしなりを促す第1制御部を含む。
【0011】
上記治工具によれば、変形制御部を容易に形成できる。
【0012】
前記治工具の一例では、前記第1制御部は前記第1基準方向に関して前記第1本体部よりも長い前記第2本体部を含む。
【0013】
上記治工具によれば、第2本体部がしなりやすくなる。
【0020】
前記治工具の一例では、前記先端部は焼結体を含む。
【0021】
上記治工具によれば、先端部の耐摩耗性が高くなる。
【0022】
前記治工具の一例では、前記先端部の弾性率は前記本体部の弾性率よりも大きい。
【0023】
上記治工具によれば、先端部が変形しにくい。
【0026】
前記治工具の一例では、前記センターレス研削装置のブレードは薄板である。
【0027】
上記治工具によれば、細い被加工物を適切に支持できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に関する治工具は先端部の摩耗を抑えることに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態の治工具を含む工作機械を示す図。
【
図2】第2実施形態の治工具を含む工作機械を示す図。
【
図8】第3実施形態の治工具を含む工作機械を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1実施形態)
図1に示されるように、治工具100は例えば工作機械10に組み込まれる。治工具100の説明には直交座標系が用いられる。X軸およびY軸を含む平面は治工具100の平面視に表れる。X軸およびZ軸を含む平面は治工具100の正面視に表れる。Y軸およびZ軸を含む平面は治工具100の側面視に表れる。Z軸に平行な方向は第1基準方向である。X軸に平行な方向は第2基準方向である。Y軸に平行な方向は第3基準方向である。
【0033】
治工具100には治具100Aおよび工具100Bが含まれる。工作機械10は被加工物Wに対して加工を施す。被加工物Wには例えば、金属、木材、および、石材等が含まれる。工作機械10の加工には例えば、切断、穿孔、研削、研磨、圧延、鍛造、および、折り曲げ等が含まれる。工作機械10に組み込まれる治具100Aは被加工物Wまたは工具の位置を案内または決定する。工作機械10に組み込まれる工具100Bは被加工物Wに加工を施す。
【0034】
治工具100は本体部110および先端部120を含む。本体部110および先端部120は例えば第1基準方向に並ぶ。本体部110は先端部120を支持する。先端部120は被加工物Wに接触する。先端部120は例えば本体部110よりも小さい部材である。治工具100は接合部130をさらに含む。接合部130は本体部110と先端部120とを接合する。接合部130の構成について例示する。第1例では、接合部130は冶金的接合により本体部110と先端部120とを接合する。第2例では、接合部130は機械的接合により本体部110と先端部120とを接合する。第3例では、接合部130は化学的接合により本体部110と先端部120とを接合する。第4例では、接合部130は第1~第3例の少なくとも2つの方法により本体部110と先端部120とを接合する。
【0035】
本体部110は第1本体部111を含む。支持部20は固定部30を含む。第1本体部111は固定部30に固定される。固定部30は本体部110を着脱できるように構成される。第1本体部111が固定部30に固定された状態では、支持部20は本体部110を支持する。固定部30は例えば結合構造31またはチャック装置40を含む。結合構造31の構成について例示する。第1例では、結合構造31はねじ付きファスナ31Aを利用して第1本体部111を固定部30に固定する。第2例では、結合構造31ははめあいを利用して第1本体部111を固定部30に固定する。
【0036】
本体部110は第2本体部112を含む。第1本体部111および第2本体部112は第1基準方向に並ぶ。第2本体部112は第1本体部111と先端部120との間に設けられる。接合部130は第2本体部112と先端部120とを接合する。第1本体部111および第2本体部112の関係について例示する。第1例では、第1本体部111および第2本体部112は一体的に構成される。第2例では、個別に構成される第1本体部111と第2本体部112とが接合される。第1本体部111と第2本体部112との接合の形態には、例えば接合部130による本体部110と先端部120との接合の形態と同様の形態が含まれる。
【0037】
第1基準方向に関する本体部110および先端部120の長さの関係について例示する。第1例では、本体部110の長さは先端部120の長さよりも長い。第1例には、次の第11~第14例が含まれる。第11例では、第1本体部111および第2本体部112の長さは先端部120の長さよりも長い。第12例では、第1本体部111の長さは先端部120の長さよりも長く、第2本体部112の長さは先端部120の長さ以下である。第13例では、第2本体部112の長さは先端部120の長さよりも長く、第1本体部111の長さは先端部120の長さ以下である。第14例では、第1本体部111および第2本体部112の長さは先端部120の長さ以下である。第2例では、本体部110の長さは先端部120の長さよりも短い。第3例では、本体部110の長さと先端部120の長さとは等しい。
【0038】
第11例、第14例、第2例、および、第3例における第1本体部111および第2本体部112の長さの関係について例示する。第1例では、第1本体部111の長さは第2本体部112の長さよりも長い。第2例では、第1本体部111の長さは第2本体部112の長さよりも短い。第3例では、第1本体部111の長さと第2本体部112の長さとは等しい。
【0039】
先端部120は被加工物Wに接触する接触面121を含む。一例では、接触面121は高い耐摩耗性を有するように構成される。先端部120は例えば硬質材料により構成される。先端部120は例えば焼結体である。焼結体は例えばダイヤモンド焼結体、立方晶窒化ホウ素焼結体、セラミック焼結体、または、超硬合金である。先端部120の弾性率は本体部110の弾性率よりも大きい。弾性率は例えば縦弾性率である。先端部120は例えば、立方体、三角錐、角錐、角柱、八面体、円柱、円錐、もしくは、球体、または、これらの立体に類似する立体である。接触面121は先端部120を構成する1または複数の面を含む。
【0040】
治工具100が治具100Aである場合、治具100Aの本体部110は例えば板、棒、柱体、または、台である。板の種類は例えば鋼板である。圧延方法による鋼板の種類は例えば冷間圧延鋼板または熱延鋼板である。板厚による鋼板の種類は例えば薄板、中板、厚板、または、極厚板である。治具100Aに支持される被加工物Wと治具100Aとの相対的な運動により治具100Aの先端部120に荷重がかかる。治具100Aの先端部120にかかる荷重は治具100Aの本体部110に伝達される。
【0041】
治工具100が工具100Bである場合、工具100Bの本体部110は例えば板、棒、または、柱体である。工具100Bに加工される被加工物Wと工具100Bとの相対的な運動により工具100Bの先端部120に荷重がかかる。工具100Bの先端部120にかかる荷重は工具100Bの本体部110に伝達される。以下では、治工具100と被加工物Wとの相対的な運動により治工具100にかかる荷重を「使用時荷重」と称する。
【0042】
治工具100は使用時荷重による本体部110の変形を促す変形制御部140を含む。変形制御部140は先端部120における局所的な応力の発生が抑えられるように本体部110の変形を促す。本体部110の変形は例えば本体部110のしなりである。本体部110の変形にともない、使用時荷重が本体部110の広い範囲において受けられ、先端部120における局所的な応力の発生が抑えられる。これは先端部120の摩耗を抑えることに寄与する。
【0043】
変形制御部140は例えば第1制御部141および第2制御部142の少なくとも1つを含む。第1制御部141および第2制御部142はそれぞれ異なる方法により本体部110のしなりを促すように構成される。第1制御部141は本体部110の長さの設定により本体部110のしなりを促すように構成される。第1制御部141は基準長さ以上の長さを有する本体部110を含む。基準長さは本体部110のしなりを適切に促すように決められる。基準長さは例えば本体部110の材質、本体部110の断面形状、および、使用時荷重の大きさの1つまたは複数に応じて決められる。
【0044】
第2制御部142は本体部110における部分的な断面形状の変化により本体部110のしなりを促すように構成される。第2制御部142は例えば凹部、貫通部、および、中空部の少なくとも1つを含む。凹部は本体部110の表面に開口するように構成される。貫通部は本体部110を貫通する空間を規定するように構成される。中空部は本体部110の内部に形成される。
【0045】
(第2実施形態)
図2に示されるように、治工具100は例えばセンターレス研削装置10Aに組み込まれる。センターレス研削装置10Aは工作機械10の一例である。第1実施形態の要素に対応する第2実施形態の要素には、第1実施形態の要素と共通の符号が付与される。被加工物Wは例えば硬質材料により構成される。被加工物Wは例えば焼結体である。焼結体は例えばダイヤモンド焼結体、立方晶窒化ホウ素焼結体、セラミック焼結体、または、超硬合金である。
【0046】
センターレス研削装置10Aは砥石車11、調整車12、第1支持軸13、第2支持軸14、台15、支持部20、および、治工具100を含む。台15は軸受を介して第1支持軸13および第2支持軸14を支持する。第1支持軸13は砥石車11を支持する。砥石車11は第1支持軸13の中心軸まわりで回転する。砥石車11は被加工物Wを研削する。調整車12は第2支持軸14の中心軸まわりで回転する。調整車12は被加工物Wの回転速度を調整する。支持部20は台15に固定される。支持部20はガイド部を含む。ガイド部は搬送される被加工物Wをガイドするように構成される。ガイド部は被加工物Wの搬送方向に沿う1組のガイド面を含む。一方のガイド面と他方のガイド面との間には、被加工物Wが配置される空間が形成される。被加工物Wの送り方式は例えばスルーフィードまたはインフィードである。スルーフィード研削では、調整車12により被加工物Wが所定の搬送方向に送られる。
【0047】
第1支持軸13の中心軸に直交する平面においてセンターレス研削装置10Aの高さ方向に直交する方向をセンターレス研削装置10Aの幅方向と称する。センターレス研削装置10Aの高さ方向および幅方向に直交する方向をセンターレス研削装置10Aの奥行方向と称する。砥石車11および調整車12は間隔を空けて幅方向に並ぶ。砥石車11と調整車12との間には、被加工物Wが配置される配置空間16が形成される。
【0048】
治工具100は被加工物Wを支持する治具100Aを含む。治具100Aはブレード200を含む。ブレード200は被加工物Wを支持できるように配置空間16の下方に配置される。ブレード200は固定部30を介して支持部20に固定される。ブレード200は被加工物Wを支持する。ブレード200に支持される被加工物Wはブレード200、砥石車11、および、調整車12のそれぞれに接触する。
【0049】
ブレード200の高さ方向は第1基準方向に平行である。ブレード200の幅方向は第2基準方向に平行である。ブレード200の厚さ方向は第3基準方向に平行である。一例では、ブレード200の高さ方向はセンターレス研削装置10Aの高さ方向に平行である。ブレード200の幅方向はセンターレス研削装置10Aの奥行方向に平行である。ブレード200の厚さ方向はセンターレス研削装置10Aの幅方向に平行である。
【0050】
図3はブレード200の正面視を示す。
図4はブレード200の高さ方向および厚さ方向に平行なブレード200等の断面を示す。ブレード200は本体部300、先端部400、および、接合部210を含む。接合部210は本体部300と先端部400とを接合する。接合部210の構成は第1実施形態の接合部130の構成に準じる。
【0051】
本体部300は例えば鋼板である。圧延方法による鋼板の種類は例えば冷間圧延鋼板である。板厚による鋼板の種類は例えば薄板である。本体部300は第1本体部310および第2本体部320を含む。第1本体部310および第2本体部320は第1基準方向に並ぶ。
【0052】
第1本体部310は固定部30に固定される。固定部30は本体部110を着脱できるように構成される。第1本体部310が固定部30に固定された状態では、支持部20は本体部300を支持する。固定部30は例えば結合構造31を含む。結合構造31はねじ付きファスナ31Aおよびナット31Bを利用して第1本体部310を固定部30に固定する。第2本体部320は第1本体部310と先端部400との間に設けられる。接合部210は第2本体部320と先端部400とを接合する。
【0053】
第1本体部310および第2本体部320の関係について例示する。第1例では、第1本体部310および第2本体部320は一体的に構成される。第2例では、個別に構成される第1本体部310と第2本体部320とが接合される。第1本体部310と第2本体部320との接合の形態には、例えば接合部210による本体部300と先端部400との接合の形態と同様の形態が含まれる。
【0054】
第1基準方向に関する本体部300および先端部400の長さの関係は第1実施形態の本体部110および先端部120の長さの関係に準じる。第1基準方向に関する第1本体部310および第2本体部320の長さの関係は第1実施形態の第1本体部111および第2本体部112の長さの関係に準じる。
【0055】
本体部300の表面330は第1主面331、第2主面332、側面333、上面334、および、底面335を含む。第1主面331および第2主面332の一方は本体部300の正面に相当する。第1主面331および第2主面332の他方は本体部300の背面に相当する。一例では、第1主面331は本体部300の正面に相当する。第2主面332は本体部300の背面に相当する。上面334は接合部210に含まれる。
【0056】
先端部400は例えば超硬合金の板である。先端部400の弾性率は本体部300の弾性率よりも大きい。弾性率は例えば縦弾性率である。先端部400の表面410は第1主面411、第2主面412、側面413、底面414、および、接触面420を含む。第1主面411および第2主面412の一方は先端部400の正面に相当する。第1主面411および第2主面412の他方は先端部400の背面に相当する。一例では、第1主面411は先端部400の正面に相当する。第2主面412は先端部400の背面に相当する。接触面420は先端部400の上面に相当する。底面414は接合部210に含まれる。
【0057】
接触面420は被加工物Wを支持する。接触面420は高い耐摩耗性を有するように構成される。先端部400における接触面420を含む部分はダイヤモンド焼結体である。接触面420はダイヤモンド焼結体により構成される。接触面420は平面である。ブレード200の側面視では、接触面420は第1基準方向に対して傾斜する。接触面420は第2基準方向に平行な第1長辺420Aおよび第2長辺420Bを含む。第1長辺420Aは接触面420と第1主面411との境界に相当する。第2長辺420Bは接触面420と第2主面412との境界に相当する。接触面420は第1長辺420Aから第2長辺420Bに向けて底面414から離れるように傾斜する。一例では、ブレード200はセンターレス研削装置10Aの幅方向に関して第1長辺420Aが調整車12に隣接し、第2長辺420Bが砥石車11に隣接するように配置される。
【0058】
ブレード200の高さは第1基準方向に関するブレード200の長さである。ブレード200の幅は第2基準方向に関するブレード200の長さである。ブレード200の厚さは第3基準方向に関するブレード200の長さである。一例では、ブレード200の高さは本体部300の底面335と接触面420の第2長辺420Bとの距離である。ブレード200の幅は本体部300の一方の側面333と他方の側面333との距離、または、先端部400の一方の側面413と他方の側面413との距離である。ブレード200の厚さは本体部300の第1主面331と第2主面332との距離、または、先端部400の第1主面411と第2主面412との距離である。一例では、本体部300の厚さと先端部400の厚さとは等しい。ブレード200の厚さは被加工物Wの直径に応じて選択される。被加工物Wが細い棒である場合、ブレード200の厚さは被加工物Wの直径に応じて薄い。
【0059】
ブレード200の高さとブレード200の幅との関係について例示する。第1例では、ブレード200の高さはブレード200の幅よりも短い。第2例では、ブレード200の高さはブレード200の幅よりも長い。第3例では、ブレード200の高さとブレード200の幅とは等しい。本体部300の寸法と先端部400の寸法との関係について例示する。本体部300の高さは先端部400の高さよりも高い。本体部300の幅と先端部400の幅とは等しい。本体部300の厚さと先端部400の厚さとは等しい。
【0060】
第1本体部310はねじ付きファスナ31Aの一部が配置される貫通部311を含む。貫通部311は第3基準方向に第1本体部310を貫通する空間を規定するように構成される。貫通部311は第1主面331および第2主面332のそれぞれに開口する。貫通部311は例えば、第1本体部310を貫通する溝、および、第1本体部310を貫通する孔の少なくとも1つを含む。
【0061】
支持部20は配置部21、基準面22、および、貫通孔23を含む。配置部21は間隔を空けてセンターレス研削装置10Aの幅方向に並ぶ第1配置面21Aおよび第2配置面21Bを含む。第1配置面21Aと第2配置面21Bとの間には、第1本体部310が配置される配置空間21Cが形成される。基準面22は被加工物Wが配置される方向を向く。貫通孔23はねじ付きファスナ31Aを配置できるように形成される。
【0062】
第1本体部310は配置空間21Cに配置される。ねじ付きファスナ31Aは支持部20の貫通孔23および第1本体部310の貫通部311に配置される。ねじ付きファスナ31Aの雄ねじ部にナット31Bがかみ合うことにより、第1本体部310が配置部21に挟み込まれる。第1配置面21Aが第1本体部310の第1主面331に押し付けられ、第2配置面21Bが第1本体部310の第2主面332に押し付けられる。第2本体部320は支持部20の基準面22に対してセンターレス研削装置10Aの高さ方向に突出する。
【0063】
センターレス研削装置10Aによる被加工物Wの加工時には、砥石車11および調整車12が同じ方向に回転する。被加工物Wはブレード200の接触面420に支持された状態において砥石車11および調整車12とは反対の方向に回転する。砥石車11および調整車12と被加工物Wとは相対的に運動する。被加工物Wにおける砥石車11に接触する部分(以下「研削対象部WA」という)は砥石車11により研削される。研削により研削対象部WAの真円度が高くなる。砥石車11および調整車12と被加工物Wとの相対的な運動にともない、ブレード200の先端部400に使用時荷重がかかる。先端部400にかかる使用時荷重は本体部300に伝達される。
【0064】
ブレード200は使用時荷重による本体部300のしなりを促す変形制御部340を含む。変形制御部340は先端部400における局所的な応力の発生が抑えられるように本体部300のしなりを促す。本体部300のしなりにともない、使用時荷重が本体部300の広い範囲において受けられ、先端部400における局所的な応力の発生が抑えられる。これは先端部400の摩耗を抑えることに寄与する。
【0065】
変形制御部340は第1制御部341および第2制御部342の少なくとも1つを含む。
図4に示される例では、変形制御部340は第1制御部341および第2制御部342を含む。第1制御部341および第2制御部342はそれぞれ異なる方法により本体部300のしなりを促すように構成される。
【0066】
第1制御部341は第2本体部320の長さの設定により本体部300のしなりを促すように構成される。第1制御部341は基準長さ以上の長さを有する第2本体部320を含む。基準長さは本体部300のしなりを適切に促すように決められる。基準長さは例えば本体部300の材質、本体部300の断面形状、および、使用時荷重の大きさの1つまたは複数に応じて決められる。第2本体部320の高さHAは本体部300における支持部20の基準面22に対応する部分と本体部300の上面334との距離である。第2本体部320の高さHAは支持部20の基準面22に対して第1基準方向に突出する本体部300の長さに相当する。
【0067】
第2制御部342は第2本体部320における部分的な断面形状の変化により本体部300のしなりを促すように構成される。第2制御部342は例えば凹部、貫通部、および、中空部の少なくとも1つを含む。凹部は第2本体部320の表面に開口するように構成される。貫通部は第2本体部320を貫通する空間を規定するように構成される。中空部は第2本体部320の内部に形成される。
【0068】
図4に示される例では、第2制御部342は第2本体部320に設けられる凹部321を含む。凹部321の構成について例示する。第1例では、凹部321は所定方向に長い1または複数の溝を含む。所定方向は例えばブレード200の幅方向、または、ブレード200の幅方向に交差する方向である。第2例では、凹部321は溝と比較して等方的な形状を有する1または複数の凹部を含む。複数の凹部は例えば所定方向に並ぶ。所定方向は例えばブレード200の幅方向、または、ブレード200の幅方向に交差する方向である。第3例では、凹部321は第1例および第2例の構成を含む。
【0069】
第2本体部320における凹部321の形成箇所について例示する。第1例では、凹部321は第1主面331に設けられる。第2例では、凹部321は第2主面332に設けられる。第3例では、凹部321は第1主面331および第2主面332のそれぞれに設けられる。
【0070】
ブレード200の高さ方向に関する凹部321の位置について例示する。第1例では、凹部321は第2本体部320における第1本体部310に隣接する部分を含む部分に設けられる。第2例では、凹部321は第2本体部320における接合部210に隣接する部分を含む部分に設けられる。第3例では、凹部321は第1例の位置と第2例の位置との間に設けられる。
【0071】
図4に示される例では、凹部321はブレード200の幅方向に長い溝322を含む。溝322は第2主面332に設けられる。溝322は第2主面332に対して第1主面331に向けて窪む。溝322は第2主面332に開口する。ブレード200の幅方向に関する溝322の長さを溝322の長さと称する。ブレード200の高さ方向に関する溝322の長さを溝322の幅と称する。ブレード200の厚さ方向に関する溝322の長さを溝322の深さと称する。
【0072】
溝322の長さについて例示する。第1例では、溝322の長さは本体部300の幅に等しい。溝322は本体部300の側面333に開口する。第2例では、溝322の長さは本体部300の幅よりも短く、本体部300の高さより長い。第3例では、溝322の長さは本体部300の幅よりも短く、本体部300の高さよりも短い。第4例では、溝322の長さは本体部300の幅よりも短く、本体部300の高さに等しい。
【0073】
溝322の幅について例示する。第1例では、溝322の幅は先端部400の高さよりも長い。第2例では、溝322の幅は先端部400の高さよりも短い。第3例では、溝322の幅は先端部400の高さに等しい。第4例では、溝322の幅は第1本体部310の高さよりも長い。第5例では、溝322の幅は第1本体部310の高さよりも短い。第6例では、溝322の幅は第1本体部310の高さに等しい。
【0074】
溝322の長手方向に関する溝322の幅の設定形態である幅設定形態は例えば第1幅設定形態および第2幅設定形態に分類される。第1幅設定形態が適用される部分では、溝322の幅は溝322の長手方向において一定である。第2幅設定形態が適用される部分では、溝322の幅は溝322の長手方向の部位に応じて異なる。
【0075】
幅設定形態との関連における溝322の構成について例示する。第1例では、溝322の全体に第1幅設定形態が適用される。第2例では、溝322の全体に第2幅設定形態が適用される。第3例では、溝322は第1幅設定形態が適用される部分、および、第2幅設定形態が適用される部分を含む。第1幅設定形態が適用される部分の数は1または複数である。第2幅設定形態が適用される部分の数は1または複数である。第1幅設定形態が適用される部分が溝322に複数含まれる場合、各部分の幅は等しい、または、異なる。第2幅設定形態が適用される部分が溝322に複数含まれる場合、各部分の形状は等しい、または、異なる。
【0076】
溝322の深さについて例示する。第1例では、溝322の深さは1本体部310の厚さの半分よりも浅い。第2例では、溝322の深さは1本体部310の厚さの半分に等しい。第3例では、溝322の深さは1本体部310の厚さの半分よりも深い。
【0077】
溝322の長手方向に関する溝322の深さの設定形態である深さ設定形態は例えば第1深さ設定形態および第2深さ設定形態に分類される。第1深さ設定形態が適用される部分では、溝322の深さは溝322の長手方向において一定である。第2深さ設定形態が適用される部分では、溝322の深さは溝322の長手方向の部位に応じて異なる。
【0078】
深さ設定形態との関連における溝322の構成について例示する。第1例では、溝322の全体に第1深さ設定形態が適用される。第2例では、溝322の全体に第2深さ設定形態が適用される。第3例では、溝322は第1深さ設定形態が適用される部分、および、第2深さ設定形態が適用される部分を含む。第1深さ設定形態が適用される部分の数は1または複数である。第2深さ設定形態が適用される部分の数は1または複数である。第1深さ設定形態が適用される部分が溝322に複数含まれる場合、各部分の深さは等しい、または、異なる。第2深さ設定形態が適用される部分が溝322に複数含まれる場合、各部分の形状は等しい、または、異なる。
【0079】
被加工物Wの加工時には、ブレード200の先端部400に使用時荷重がかかり、先端部400に応力が生じる。変形制御部340を含むブレード200と、変形制御部340を含まないブレード(以下「非制御ブレード」という)とでは、先端部400の応力分布が異なる。非制御ブレードの構成は次の点においてブレード200と異なり、その他の点ではブレード200と同様の構成を備える。各ブレードに共通する要素については同様の符号が付与される。非制御ブレードの第2本体部320の高さは実質的に0である。つまり、非制御ブレードの本体部300は第2本体部320を含まない。非制御ブレードの接合部210は第1本体部310と先端部400とを接合する。非制御ブレードが支持部20に固定された状態では、支持部20の基準面22に対して先端部400だけが突出する。
【0080】
図5、
図6を参照して、ブレード200および非制御ブレードの先端部400の応力に関する解析結果の一例について説明する。ブレード200に生じる応力のレベルを第1~第4レベルの4つに分類する。各レベルはブレード200および非制御ブレードのそれぞれにおける相対的な応力の大きさを示す。第1レベルに含まれる応力は4つのレベルのうちで最も大きい。第2レベルに含まれる応力は第1レベルの次に大きい。第3レベルに含まれる応力は第2レベルの次に大きい。第4レベルに含まれる応力は0または実質的に0である。第1レベルの応力が分布する領域を「第1領域R1」と称する。第2レベルの応力が分布する領域を「第2領域R2」と称する。第3レベルの応力が分布する領域を「第3領域R3」と称する。第4レベルの応力が分布する領域を「第4領域R4」と称する。
【0081】
接触面420は例えば第1接触面421、第2接触面422、第3接触面423、および、第4接触面424に区分される。第1接触面421は被加工物Wの研削対象部WAに接触する。第2接触面422はブレード200の幅方向において第1接触面421を挟むように第1接触面421の両側に位置する。つまり、接触面420には2つの第2接触面422が含まれる。第3接触面423はブレード200の幅方向において第1接触面421および第2接触面422を挟むように第2接触面422の両側に位置する。つまり、接触面420には2つの第3接触面423が含まれる。第4接触面424はブレード200の幅方向において第1~第3接触面421~423を挟むように第3接触面423の両側に位置する。つまり、接触面420には2つの第4接触面424が含まれる。第4接触面424は第3接触面423と接触面420の短辺420Cとの間に広がる。ブレード200の幅方向に関する第1接触面421の長さは被加工物Wの研削対象部WAの長さに対応する。ブレード200の幅方向に関する第2~第4接触面422~424の長さは任意に設定される。一例では、第2~第4接触面422~424の長さは等しい。接触面420の区分、および、各接触面421~424の長さの関係は非制御ブレードにも共通する。
【0082】
図5に示されるように、非制御ブレードでは、第1領域R1は第1接触面421の中央あたりの範囲に分布する。第2領域R2は第1接触面421における第1領域R1に隣接する範囲に分布する。第3領域R3は第1接触面421における第2領域R2に隣接する範囲に分布する。第4領域R4は第2~第4接触面422~424に分布する。このように非制御ブレードでは、第1接触面421に応力が集中的に分布する。
【0083】
図6に示されるようにブレード200では、第1領域R1は第1接触面421の全体および第2接触面422の一部に分布する。第2領域R2は第2接触面422における第1領域R1に隣接する範囲、および、第3接触面423における第2接触面422に隣接する範囲に分布する。第3領域R3は第3接触面423における第2領域R2に隣接する範囲、および、第4接触面424における第3接触面423に隣接する範囲に分布する。第4領域R4は第4接触面424における第3領域R3に隣接する範囲に分布する。第4領域R4が分布する範囲は第4接触面424における短辺420Cの付近である。このようにブレード200では、接触面420のおおよそ全体にわたり応力が生じ、第1接触面421に応力が集中しにくい。これは先端部400の摩耗を抑えることに寄与する。
【0084】
(実施例)
被加工物Wおよびブレード200の実施例について説明する。
図7は実施例のブレード200の背面図を示す。被加工物Wはダイヤモンド焼結体の棒である。研削加工を経た被加工物Wから得られる最終製品は例えば回転体を支持する軸である。回転体は例えば硬質材料により構成される。回転体は例えば焼結体である。焼結体は例えばダイヤモンド焼結体、立方晶窒化ホウ素焼結体、セラミック焼結体、または、超硬合金である。一例では、回転体は脆性材料基板のスクライブ加工に用いられるスクライビングホイールである。被加工物Wの直径は例えば2mm以下の範囲に含まれる。
【0085】
ブレード200の本体部300は冷間圧延鋼板である。ブレード200の先端部400は超硬合金である。接触面420を含む先端部400の一部はダイヤモンド焼結体である。接合部210の接合の形態はろう接または機械的接合である。ブレード200の厚さは被加工物Wの直径に応じて薄い。板厚によるブレード200の種類は薄板である。ブレード200の厚さは例えば2mm以下の範囲に含まれる。
【0086】
被加工物Wの直径は0.8mmである。ブレード200の高さは12.4mmである。ブレード200の幅は26mmである。ブレード200の厚さは0.6mmである。本体部300の高さは9.2mmである。本体部110の幅は26mmである。本体部300の厚さは0.6mmである。第1本体部310の高さは4.5mmである。第2本体部320の高さは4.7mmである。先端部400の高さは3.2mmである。先端部400の幅は26mmである。先端部400の厚さは0.6mmである。溝322の長さは26mmである。溝322の幅は3mmである。溝322の深さは0.25mmである。
【0087】
第1本体部310の貫通部311は複数の溝312を含む。溝312はブレード200の高さ方向に長い。溝312は第1端部312A、第2端部312B、および、直線部312Cを含む。溝312の第1端部312Aの形状はねじ付きファスナ31Aの形状に対応する半円である。溝312の第2端部312Bは本体部300の底面335に開口する。直線部312Cは第1端部312Aと第2端部312Bとの間に形成される。直線部312Cの長さは2.6mmである。直線部312Cの幅は3.2mmである。第1端部312Aの曲率半径は1.6mmである。
【0088】
(第3実施形態)
図8に示されるように、治工具100は例えばスクレイパー加工装置10Bに組み込まれる。スクレイパー加工装置10Bは工作機械10の一例である。第1実施形態の要素に対応する第3実施形態の要素には、第1実施形態の要素と共通の符号が付与される。
【0089】
被加工物Wは例えば硬質材料により構成される。被加工物Wは例えば焼結体である。焼結体は例えばダイヤモンド焼結体、立方晶窒化ホウ素焼結体、セラミック焼結体、または、超硬合金である。スクレイパー加工装置10Bは装置本体50、支持部20、および、治工具100を含む。装置本体50は台51および駆動部52を含む。台51は被加工物Wを支持する。駆動部52は台51に固定される。支持部20は駆動部52に結合する。
【0090】
治工具100は被加工物Wを加工する工具100Bを含む。工具100Bはスクレイパー500を含む。支持部20の固定部30はチャック装置40を含む。チャック装置40は支持部20の先端部に設けられる。スクレイパー500は固定部30を介して支持部20に固定される。駆動部52は支持部20を所定の走査方向に移動させ、スクレイパー500を被加工物Wに対して走査する。スクレイパー500の走査により被加工物Wが加工される。
【0091】
スクレイパー加工装置10Bの正面視において、スクレイパー加工装置10Bの高さ方向に直交する方向をスクレイパー加工装置10Bの幅方向と称する。スクレイパー加工装置10Bの高さ方向および幅方向に直交する方向をスクレイパー加工装置10Bの奥行方向と称する。一例では、所定の走査方向はスクレイパー加工装置10Bの幅方向に平行である。
【0092】
スクレイパー500の高さ方向は第1基準方向に平行である。スクレイパー500の幅方向は第2基準方向に平行である。スクレイパー500の厚さ方向は第3基準方向に平行である。一例では、スクレイパー500の高さ方向はスクレイパー加工装置10Bの高さ方向に平行である。スクレイパー500の幅方向はスクレイパー加工装置10Bの奥行方向に平行である。スクレイパー500の厚さ方向はスクレイパー加工装置10Bの幅方向に平行である。
【0093】
図9はスクレイパー500の高さ方向および厚さ方向に平行なスクレイパー500等の断面を示す。スクレイパー500は本体部600、先端部700、および、接合部510を含む。接合部510は本体部600と先端部700とを接合する。接合部510の構成は第1実施形態の接合部130の構成に準じる。
【0094】
本体部600は例えば鋼板である。圧延方法による鋼板の種類は例えば冷間圧延鋼板である。板厚による鋼板の種類は例えば薄板である。本体部600は第1本体部610および第2本体部620を含む。第1本体部610および第2本体部620は第1基準方向に並ぶ。
【0095】
第1本体部610は固定部30に固定される。固定部30は第1本体部610を着脱できるように構成される。第1本体部610が固定部30に固定された状態では、支持部20は本体部600を支持する。第2本体部620は第1本体部610と先端部700との間に設けられる。接合部510は第2本体部620と先端部700とを接合する。
【0096】
第1本体部610および第2本体部620の関係について例示する。第1例では、第1本体部610および第2本体部620は一体的に構成される。第2例では、個別に構成される第1本体部610と第2本体部620とが接合される。第1本体部610と第2本体部620との接合の形態には、例えば接合部510による本体部600と先端部700との接合の形態と同様の形態が含まれる。
【0097】
第1基準方向に関する本体部600および先端部700の長さの関係は第1実施形態の本体部110および先端部120の長さの関係に準じる。第1基準方向に関する第1本体部610および第2本体部620の長さの関係は第1実施形態の第1本体部111および第2本体部112の長さの関係に準じる。
【0098】
本体部600の表面630は第1主面631、第2主面632、側面633、上面634、および、底面635を含む。第1主面631および第2主面632の一方は本体部600の正面に相当する。第1主面631および第2主面632の他方は本体部600の背面に相当する。一例では、第1主面631は本体部600の正面に相当する。第2主面632は本体部600の背面に相当する。上面634は接合部510に含まれる。
【0099】
先端部700は例えば超硬合金の板である。先端部700の弾性率は本体部600の弾性率よりも大きい。弾性率は例えば縦弾性率である。先端部700の表面710は第1主面711、第2主面712、側面713、底面714、および、接触面720を含む。第1主面711および第2主面712の一方は先端部700の正面に相当する。第1主面711および第2主面712の他方は先端部700の背面に相当する。一例では、第1主面711は先端部700の正面に相当する。第2主面712は先端部700の背面に相当する。第1主面711は第2主面712に対して、所定の走査方向の前方に位置する。接触面720は先端部700の上面に相当する。底面714は接合部510に含まれる。
【0100】
接触面720は被加工物Wを加工する。接触面720は高い耐摩耗性を有するように構成される。先端部700における接触面720を含む部分はダイヤモンド焼結体である。接触面720はダイヤモンド焼結体により構成される。接触面720は平面である。スクレイパー500の側面視では、接触面720は第1基準方向に対して傾斜する。接触面720は第2基準方向に平行な第1辺720A、第2辺720B、および、頂部720Cを含む。第1辺720Aは接触面720と第1主面711との境界に相当する。第2辺720Bは接触面720と第2主面712との境界に相当する。接触面720は頂部720Cと第1辺720Aとの間、および、頂部720Cと第2辺720Bとの間のそれぞれに設けられる。接触面720は第1辺720Aまたは第2辺720Bから頂部720Cに向けて傾斜する。
【0101】
スクレイパー500の高さは第1基準方向に関するスクレイパー500の長さである。スクレイパー500の幅は第2基準方向に関するスクレイパー500の長さである。スクレイパー500の厚さは第3基準方向に関するスクレイパー500の長さである。一例では、スクレイパー500の高さは本体部600の底面635と接触面720の頂部720Cとの距離である。スクレイパー500の幅は本体部600の一方の側面633と他方の側面633との距離、または、先端部700の一方の側面713と他方の側面713との距離である。スクレイパー500の厚さは本体部600の第1主面631と第2主面632との距離、または、先端部700の第1主面711と第2主面712との距離である。一例では、本体部600の厚さと先端部700の厚さとは等しい。
【0102】
スクレイパー500の高さとスクレイパー500の幅との関係について例示する。第1例では、スクレイパー500の高さはスクレイパー500の幅よりも短い。第2例では、スクレイパー500の高さはスクレイパー500の幅よりも長い。第3例では、スクレイパー500の高さとスクレイパー500の幅とは等しい。本体部600の寸法と先端部700の寸法との関係について例示する。本体部600の高さは先端部700の高さよりも高い。本体部600の幅と先端部700の幅とは等しい。本体部600の厚さと先端部700の厚さとは等しい。
【0103】
チャック装置40は配置部41および基準面42を含む。配置部41は間隔を空けてスクレイパー加工装置10Bの幅方向に並ぶ第1配置面41Aおよび第2配置面41Bを含む。第1配置面41Aと第2配置面41Bとの間には、第1本体部610が配置される配置空間41Cが形成される。基準面42は被加工物Wが配置される方向を向く。
【0104】
第1本体部610は配置空間41Cに配置される。第1本体部610は配置部41に挟み込まれる。第1配置面41Aが第1本体部610の第1主面631に押し付けられ、第2配置面41Bが第1本体部610の第2主面632に押し付けられる。第2本体部620はチャック装置40の基準面42に対してスクレイパー加工装置10Bの高さ方向に突出する。
【0105】
スクレイパー加工装置10Bによる被加工物Wの加工時には、被加工物Wに対してスクレイパー500が所定の走査方向に移動する。スクレイパー500と被加工物Wとは相対的に運動する。スクレイパー500と被加工物Wとの相対的な運動にともない、スクレイパー500の先端部700に使用時荷重がかかる。先端部700にかかる使用時荷重は本体部600に伝達される。
【0106】
スクレイパー500は使用時荷重による本体部600のしなりを促す変形制御部640を含む。変形制御部640は先端部700における局所的な応力の発生が抑えられるように本体部600のしなりを促す。本体部600のしなりにともない、使用時荷重が本体部600の広い範囲において受けられ、先端部700における局所的な応力の発生が抑えられる。これは先端部700の摩耗を抑えることに寄与する。
【0107】
変形制御部640は第1制御部641および第2制御部642の少なくとも1つを含む。
図9に示される例では、変形制御部640は第1制御部641および第2制御部642を含む。第1制御部641および第2制御部642はそれぞれ異なる方法により本体部600のしなりを促すように構成される。
【0108】
第1制御部641は第2本体部620の長さの設定により本体部600のしなりを促すように構成される。第1制御部641は基準長さ以上の長さを有する第2本体部620を含む。基準長さは本体部600のしなりを適切に促すように決められる。基準長さは例えば本体部600の材質、本体部600の断面形状、および、使用時荷重の大きさの1つまたは複数に応じて決められる。第2本体部620の高さHBは本体部600における支持部20の基準面22に対応する部分と本体部600の上面634との距離である。第2本体部620の高さHBは支持部20の基準面22に対して第1基準方向に突出する本体部600の長さに相当する。
【0109】
第2制御部642は第2本体部620における部分的な断面形状の変化により本体部600のしなりを促すように構成される。第2制御部642は例えば凹部、貫通部、および、中空部の少なくとも1つを含む。凹部は第2本体部620の表面に開口するように構成される。貫通部は第2本体部620を貫通する空間を規定するように構成される。中空部は第2本体部620の内部に形成される。
【0110】
図9に示される例では、第2制御部642は第2本体部620に設けられる凹部621を含む。凹部621の構成について例示する。第1例では、凹部621は所定方向に長い1または複数の溝を含む。所定方向は例えばスクレイパー500の幅方向、または、スクレイパー500の幅方向に交差する方向である。第2例では、凹部621は溝と比較して等方的な形状を有する1または複数の凹部を含む。複数の凹部は例えば所定方向に並ぶ。所定方向は例えばスクレイパー500の幅方向、または、スクレイパー500の幅方向に交差する方向である。第3例では、凹部621は第1例および第2例の構成を含む。
【0111】
第2本体部620における凹部621の形成箇所について例示する。第1例では、凹部621は第1主面631に設けられる。第2例では、凹部621は第2主面632に設けられる。第3例では、凹部621は第1主面631および第2主面632のそれぞれに設けられる。
【0112】
スクレイパー500の高さ方向に関する凹部621の位置について例示する。第1例では、凹部621は第2本体部620における第1本体部610に隣接する部分を含む部分に設けられる。第2例では、凹部621は第2本体部620における接合部510に隣接する部分を含む部分に設けられる。第3例では、凹部621は第1例の位置と第2例の位置との間に設けられる。
【0113】
図9に示される第1例の凹部621はスクレイパー500の幅方向に長い溝622を含む。溝622は第2主面632に設けられる。溝622は第2主面632に対して第1主面631に向けて窪む。溝622は第2主面632に開口する。スクレイパー500の幅方向に関する溝622の長さを溝622の長さと称する。スクレイパー500の高さ方向に関する溝622の長さを溝622の幅と称する。スクレイパー500の厚さ方向に関する溝622の長さを溝622の深さと称する。
【0114】
溝622の長さについて例示する。第1例では、溝622の長さは本体部600の幅に等しい。溝622は本体部600の側面633に開口する。第2例では、溝622の長さは本体部600の幅よりも短く、本体部600の高さより長い。第3例では、溝622の長さは本体部600の幅よりも短く、本体部600の高さよりも短い。第4例では、溝622の長さは本体部600の幅よりも短く、本体部600の高さに等しい。
【0115】
溝622の幅について例示する。第1例では、溝622の幅は先端部700の高さよりも長い。第2例では、溝622の幅は先端部700の高さよりも短い。第3例では、溝622の幅は先端部700の高さに等しい。第4例では、溝622の幅は第1本体部610の高さよりも長い。第5例では、溝622の幅は第1本体部610の高さよりも短い。第6例では、溝622の幅は第1本体部610の高さに等しい。
【0116】
一例では、溝622の長手方向に関する溝622の幅の設定形態である幅設定形態は第2実施形態の幅設定形態と同様の幅設定形態を取り得る。幅設定形態との関連における溝622の構成は第2実施形態の幅設定形態との関連における溝322の構成と同様の構成を取り得る。
【0117】
溝622の深さについて例示する。第1例では、溝622の深さは第1本体部610の厚さの半分よりも浅い。第2例では、溝622の深さは第1本体部610の厚さの半分に等しい。第3例では、溝622の深さは第1本体部610の厚さの半分よりも深い。
【0118】
一例では、溝622の長手方向に関する溝622の深さの設定形態である深さ設定形態は第2実施形態の深さ設定形態と同様の深さ設定形態を取り得る。深さ設定形態との関連における溝622の構成は第2実施形態の深さ設定形態との関連における溝322の構成と同様の構成を取り得る。
【0119】
被加工物Wの加工時には、スクレイパー500の先端部700に使用時荷重がかかり、先端部700に応力が生じる。変形制御部640を含むスクレイパー500と、変形制御部640を含まないスクレイパー(以下「非制御スクレイパー」という)とでは、先端部700の応力分布が異なる。非制御スクレイパーの構成は次の点においてスクレイパー500と異なり、その他の点ではスクレイパー500と同様の構成を備える。各ブレードに共通する要素については同様の符号が付与される。非制御スクレイパーの第2本体部620の高さは実質的に0である。つまり、非制御スクレイパーの本体部600は第2本体部620を含まない。非制御スクレイパーの接合部510は第1本体部610と先端部700とを接合する。非制御スクレイパーがチャック装置40に固定された状態では、チャック装置40の基準面42に対して先端部700だけが突出する。
【0120】
被加工物Wの加工時における非制御スクレイパーの先端部700の応力分布は第2実施形態における非制御ブレードの先端部400の応力分布に準じる。非制御スクレイパーでは、接触面720の一部に応力が集中的に分布する。被加工物Wの加工時におけるスクレイパー500の先端部700の応力分布は第2実施形態におけるブレード200の先端部400の応力分布に準じる。スクレイパー500では、接触面720のおおよそ全体にわたり応力が生じ、接触面720の一部に応力が集中しにくい。これは先端部700の摩耗を抑えることに寄与する。
【0121】
なお、上記各実施形態の説明は本発明に関する治工具が取り得る形態を制限することを意図していない。本発明に関する治工具は各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。
【符号の説明】
【0122】
10A :センターレス研削装置
100 :治工具
100A:治具
200 :ブレード
300 :本体部
310 :第1本体部
320 :第2本体部
321 :凹部
340 :変形制御部
400 :先端部
W :被加工物