(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】エンドエフェクタ及び多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B25J15/04 Z
(21)【出願番号】P 2020140094
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】515208326
【氏名又は名称】株式会社アールティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 昌行
(72)【発明者】
【氏名】野村 弘行
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055093(JP,A)
【文献】実開昭59-103429(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0021948(US,A1)
【文献】特開2014-046397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源によって駆動され、運動を直接的に又は間接的に伝達する駆動部と、
ロボットが使用する道具を着脱可能に保持する保持部と、前記駆動部と係合する動力伝達部とを有する開閉部と、
前記動力源の少なくとも一部を覆うと共に、前記駆動部又は前記動力伝達部の断面と対応する形状の開口である軸受部を有するカバー部と、
を備え、
前記駆動部は、前記駆動部の軸方向とほぼ直交する所定の1軸方向に前記動力伝達部をスライドさせて係合可能な凹凸を有し、
前記カバー部及び開閉部を着脱可能とするエンドエフェクタ。
【請求項2】
前記カバー部は、可撓性のある材料で一体に形成されると共に、前記軸受部がそれぞれ設けられた対向する2面を有し、
前記開閉部の前記動力伝達部は、前記カバー部の前記対向する2面を挟持するように形成される
請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
前記駆動部の前記凹凸は、ほぼ一直線状の凹部であり、
前記動力伝達部は、ほぼ一直線状であり前記凹部に対応する凸部である
請求項
1又は2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
前記凹部及び前記凸部には対応するテーパーが付される
請求項
3に記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記動力源はモータであり、
前記駆動部は、前記モータの回転運動によって回動させられる第1回転軸及び第2回転軸を含み、
前記開閉部は、
ロボットが使用する道具を着脱可能に保持する第1保持部及び前記第1回転軸と係合する第1動力伝達部を有し、前記カバー部に回動可能に接続され、前記モータの回転に応じて前記第1保持部を円弧状に変位させる第1開閉部と、
前記道具を着脱可能に保持する第2保持部及び前記第2回転軸と係合する第2動力伝達部を有し、前記カバー部に回動可能に接続され、前記モータの回転に応じて前記第2保持部を円弧状に変位させる第2開閉部と
を含む
請求項1から
4のいずれか一項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
前記第1保持部と前記第2保持部とが互いにほぼ逆向きに開いた姿勢において、前記第1動力伝達部及び第2動力伝達部は、前記第1回転軸及び前記第2回転軸が備える前記凹凸と前記所定の1軸方向にスライド可能に位置合わせされる
請求項
5に記載のエンドエフェクタ。
【請求項7】
前記第1開閉部及び前記第2開閉部は、互いにほぼ逆向きに開いた姿勢を超えて開かないように当該エンドエフェクタの一部と当接する当接部をそれぞれ備える
請求項
5又は
6に記載のエンドエフェクタ。
【請求項8】
前記動力源は、部材を直線運動させるシリンダであり、
前記駆動部は、前記部材の直線運動を回転運動に変換する機構を介して接続され、
前記開閉部は、ロボットが使用する道具を着脱可能に保持する保持部を有し、前記カバー部に回動可能に接続され、前記部材の直線運動に応じて前記保持部を円弧状に変位させる
請求項1から
4のいずれか一項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載のエンドエフェクタをロボットアームの先端に備える多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットのエンドエフェクタ及び多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用する道具を操作すると共に当該道具を着脱可能に保持する保持部を備え、ロボットアームに接続されるエンドエフェクタが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、エンドエフェクタを受容可能であるとともに動力をエンドエフェクタに伝達する減速機を手首部に備える多関節ロボットも提案されている(例えば、特許文献2)。減速機は、固定要素によって手首部に固定される固定部と、固定部に対して回動可能な回動部と、回動部の周囲に設けられる封止要素とを有している。減速機の固定部にはカバーが取付けられており、このカバーによって固定要素及び封止要素が被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-55093号公報
【文献】特開2014-46397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば食品を扱うロボットにおいては、衛生管理が要求される。エンドエフェクタに保持される道具を洗浄できる場合であっても、エンドエフェクタ側の保持部等が汚れた場合にエンドエフェクタを洗浄するのは難しかった。そこで、本発明は、多関節ロボットのエンドエフェクタの衛生管理を容易にするための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
エンドエフェクタは、動力源によって駆動され、運動を直接的に又は間接的に伝達する駆動部と、ロボットが使用する道具を着脱可能に保持する保持部と、駆動部と係合する動力伝達部とを有する開閉部と、動力源の少なくとも一部を覆うと共に、駆動部又は動力伝達部の断面と対応する形状の開口である軸受部を有するカバー部とを備え、カバー部及び開閉部を着脱可能とする。
【0007】
このようにすれば、カバー部が内部の動力源を覆いつつ、上記のような軸受部により動力源の運動を開閉部に伝達できる。また、カバー部及び開閉部洗浄が難しいモータをカバー部及び開閉部によって保護することができ、着脱可能なカバー部及び開閉部を洗浄することで、エンドエフェクタを衛生的に保つことができる。すなわち、エンドエフェクタの衛生管理を容易にすることができる。
【0008】
また、カバー部は、可撓性のある材料で一体に形成されると共に、軸受部がそれぞれ設けられた対向する2面を有し、開閉部の動力伝達部は、対向する2面を挟持するように形成されるようにしてもよい。このようにすれば、上述のようなカバー部及び開閉部を容易に組み立てることができると共に、細かく分割されたパーツを紛失するおそれが低減する。
【0009】
また、駆動部は、動力伝達部と係合すると共に、駆動部の軸方向とほぼ直交する所定の1軸方向にスライド可能な凹凸を有するようにしてもよい。このようにすれば、モータによる動力を開閉部に伝達させることができると共に、所定の方向にスライドさせてモータ
と開閉部とを着脱できるようになる。
【0010】
また、駆動部の凹凸は、ほぼ一直線状の凹部であり、動力伝達部は、ほぼ一直線状であり凹部に対応する凸部であってもよい。洗浄する開閉部の動力伝達部を凹部とするよりも、凸部とした方が、洗浄し易くなる。
【0011】
また、凹部及び凸部には対応するテーパーが付されるようにしてもよい。このようにすれば、開閉部の取付方向が決まっている場合に、誤りを防ぐことができる。
【0012】
また、動力源モータであり、駆動部は、モータの回転運動によって回動させられる第1回転軸及び第2回転軸を含み、開閉部は、ロボットが使用する道具を着脱可能に保持する第1保持部及び第1回転軸と係合する第1動力伝達部を有し、カバー部に回動可能に接続され、モータの回転に応じて第1保持部を円弧状に変位させる第1開閉部と、道具を着脱可能に保持する第2保持部及び第2回転軸と係合する第2動力伝達部を有し、カバー部に回動可能に接続され、モータの回転に応じて第2保持部を円弧状に変位させる第2開閉部とを含むようにしてもよい。例えばこのような構成とすることで、例えば柄の部分を保持して開閉できる、2本で一対となる道具を操作するエンドエフェクタを提供できる。
【0013】
また、第1保持部と第2保持部とが互いにほぼ逆向きに開いた姿勢において、第1動力伝達部及び第2動力伝達部は、第1回転軸及び第2回転軸が備える凹凸と所定の1軸方向にスライド可能に位置合わせされるようにしてもよい。このようにすれば、着脱は、例えば2つの道具を180度異なる方向に向けて開くという、通常のロボットのピッキング動作では生じない姿勢においてのみ可能となる。換言すれば、ロボットがワークをピッキングする通常の動作の範囲においては着脱がロックされる。
【0014】
また、動力源は、部材を直線運動させるシリンダであり、駆動部は、部材の直線運動を回転運動に変換する機構を介して接続され、開閉部は、ロボットが使用する道具を着脱可能に保持する保持部を有し、カバー部に回動可能に接続され、部材の直線運動に応じて保持部を円弧状に変位させるようにしてもよい。このように、動力源の直線運動を開閉部の回動に変換する構成を採用することもできる。
【0015】
また、上述したエンドエフェクタをロボットアームの先端に備える多関節ロボットを提供するようにしてもよい。
【0016】
なお、課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
多関節ロボットのエンドエフェクタの衛生管理を容易にするための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、道具を保持するエンドエフェクタの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、道具を保持する保持部を開いた状態のエンドエフェクタの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、エンドエフェクタの分解斜視図の一例である。
【
図4】
図4は、エンドエフェクタの分解斜視図の一例である。
【
図5】
図5は、第1カバー部を底面側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、エンドエフェクタを背面側から見た分解斜視図の一例である。
【
図7】
図7は、開閉部を側方に向けて開いた状態の側面図である。
【
図9】
図9は、開閉部を上方に向けて閉じた状態の側面図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る分解斜視図の一例である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る背面側から見た分解斜視図の一例である。
【
図13】
図13は、実施形態3に係る分解斜視図の一例である。
【
図14】
図14は、実施形態3に係る背面側から見た分解斜視図の一例である。
【
図15】
図15は、実施形態4に係る分解斜視図の一例である。
【
図16】
図16は、実施形態4に係る動作の一例を示す断面図である。
【
図17】
図17は、実施形態5に係る分解斜視図の一例である。
【
図18】
図18は、実施形態6に係る分解斜視図の一例である。
【
図19】
図19は、実施形態に係るエンドエフェクタを備える多関節ロボットの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0020】
<実施形態1>
本実施形態に係るエンドエフェクタ1は、ロボットアームの末端に接続され、多関節ロボットが何らかのワークを操作するための機構である。
図1は、トングの支点部分を切除した、2本で一対となる道具を保持するエンドエフェクタの一例を示す斜視図である。
図1においては、エンドエフェクタ1は道具9の保持部を閉じている。
図2は、道具を保持する2つの保持部を開いた状態のエンドエフェクタの一例を示す斜視図である。なお、
図2においては道具9を図示していない。また、
図2においては開閉の動作を破線の矢印で示している。なお、図の中に上下前後左右を示すように、便宜上、保持部を閉じた状態において道具9の先端が伸びる方向を上とし、道具9は左右に開くものとして説明する。
【0021】
エンドエフェクタ1は、道具9のように、柄の部分を保持して開閉できる道具を操作する。なお、道具9は、一対の棒状の道具であり、箸であってもよいし、例えば支点部分を切除したトングのようにそれぞれの先端部分がへら状又はスプーン状のものであってもよい。また、道具9は先端部分で食品等のワークを挟持できる。
【0022】
図3は、エンドエフェクタの分解斜視図の一例である。
図3は、外側のカバー部分である第1カバー部2を、内側のカバー部分である第2カバー部3から取り外した状態を表す。なお、第2カバー部3の内部にはサーボモータが収容されている。
【0023】
図4は、エンドエフェクタの分解斜視図の一例である。
図4は、カバー部21と、2つの開閉部(第1開閉部、第2開閉部)22と、第2カバー部3(上部31及び下部32)と、サーボモータ4とを表す。
【0024】
サーボモータ4は、その動力によって回転させられる回転軸(駆動軸)41と、回転軸41に連動して回転させられる回転軸(従動軸)42とを備える。回転軸41及び回転軸42はそれぞれ円柱状又は円盤状であり、側面の少なくとも一部に歯車の歯形が形成される。なお、歯車に限らず、Vベルトやタイミングベルト、平ベルト、チェーンのような回転運動を伝達する動力伝達機構を用いて回転軸41と回転軸42とを接続したり、リンクのような動力伝達機構を用いて所定の軸を中心に開閉部22を開閉させたりしてもよい。また、回転軸41、42の正面側には、直線状に突出した凸部(凹凸)411、421がそれぞれ設けられている。回転軸41は、本発明に係る駆動部に当たる。
【0025】
また、第2カバー部の上部31と下部32とを組み合わせて例えばビス止めすることに
より、直方体状の第2カバー部3が形成される。上部31、下部32は、内部にほぼ直方体状の収容部を備え、サーボモータ4の上面、側面、正面、背面を覆う。また、上部31の正面側には2つの半円状の切り欠き311が設けられている。同様に下部32の正面側には2つの半円状の切り欠き321が設けられている。そして、組み立てられる第2カバー部3の正面には、ほぼ円形の開口部が2つ形成される。開口部からは、内部に収容されるサーボモータ4の回転軸41の凸部411及び回転軸42の凸部421が突出する。また、上部31の切り欠き311の縁には凸部312が設けられている。同様に下部32の切り欠き321の縁には凸部322が設けられている。サーボモータ4の回転によって、回転軸41の凸部411及び回転軸42の凸部421は、凸部312及び322と上下方向にほぼ一直線状になるよう位置合わせされ得る。
【0026】
開閉部22は、道具の柄の部分を挿入して保持するための保持部221と、保持部221から2方向に伸びるコ字状の腕部222と、各腕部222の端部から上述したカバー部21を挟持するように対向する方向に突出する突出部223を備える。保持部221は、その内部周辺に磁石を備え、磁性体を含む道具9の柄を吸着して保持できるようにしてもよい。突出部223の端には、凸部411及び421と係合する直線状の凹部224が設けられる。凹部224は、サーボモータ4の回転を受ける動力伝達部として機能する。動力伝達部は、サーボモータ4の回転を直接的に又は間接的に伝達し、2つの開閉部22を開閉させる。凹部224は、2つの保持部221を側方に向けて互いに逆向きに開いた姿勢において直線状の溝が上下方向を向くよう形成されている。本実施形態では、2つの開閉部22を閉じたときに2つの道具9の間隙が適切な大きさになるように、延伸する腕部222の中央は、回転する突出部223の中心から偏心している。なお、2つの開閉部22は、同一の形状である。
【0027】
図5は、カバー部21を底面側から見た斜視図である。カバー部21は、上面、側面、正面、背面を壁面で覆う直方体状の部材である。
図5の上段に示すように、本実施形態に係るカバー部21は、上面、側面、正面を覆う本体211と、背面側の壁面212とに分解できる。また、対向する2つの面である正面及び背面にそれぞれ2つずつほぼ円形の開口部213を備えると共に、正面と背面とで開口部213の位置は対応している。そして、対向する2面に設けられる開口部213は、回転軸41、42又は突出部223の断面と対応する円形になっており、サーボモータ4及び開閉部22の回動動作の軸受けとして機能する。すなわち、正面側と背面側からそれぞれ開閉部22の突出部223が開口部213に挿入される(図示せず)。また、正面及び背面の内側には、開口部213のほぼ中央を横切るように上下方向に直線状の凹部214が設けられている。凹部214は、開閉部22が保持部221を側方に向けて開いた姿勢において、凹部224と一直線状の溝を形成する。また、背面側の壁面212の側方の縁には、背面側と底面側を欠き取られた薄壁部215が設けられている。そして、本体211の背面側には、薄壁部215の形状に対応する切り欠き部216が設けられると共に、下方の縁には背面側の壁面212が外れないように突出する引掛部217が設けられている。
【0028】
図6は、エンドエフェクタを背面側から見た分解斜視図の一例である。第2カバー部3の背面には、正面と対応する位置に凸部312及び凸部322が設けられているが、開口部は設けられない。凸部312、322は、正面側と背面側とで対称な形状である。また、凸部312及び凸部322の間に開閉部22の突出部223が収まるように、凸部312の下端と凸部322の上端とは断面が円弧状の曲面を有する。このように、開閉部22の2つの突出部は、一方が回転軸と係合しサーボモータの動力を伝達する動力伝達部として機能し、他方は第1カバー部2の開口部213並びに第2カバー部3の凸部312及び凸部322と係合して、回動する開閉部22の軸受けとして機能する。
【0029】
<組立て>
使用者は、本体211の正面側の開口部213に、開閉部22の一方の突出部223を挿入する。そして、
図5に破線の矢印で示すようにカバー部21の内側から背面側の壁面212を本体211にはめ込むと共に、開閉部22の他方の突出部223を壁面212の開口部213に挿入し、
図3に示した第1カバー部2が形成される。実線の矢印で接続された
図5の下段の図は、本体211と、背面側の壁面212とを組み合わせた状態を示している。なお、2つの開閉部22は形状が同一であるため使用者は取り付ける位置に注意を払う必要がない。その後、第1カバー部2の内部に、第2カバー部3に覆われたサーボモータ4を挿入する。第1カバー部2の内部に、第2カバー部3に覆われたサーボモータ4が収容された後は、第1カバー部2の背面側の壁面212の薄壁部215が、切り欠き部216から外れるような間隙がなくなる。したがって、組木のように組み合わせるだけで第1カバー部2を装着することができる。また、サーボモータ4の回転を開閉部22に伝達することができる。
【0030】
図7は、開閉部を側方に向けて開いた状態の側面図である。
図8は、
図7に示したA-A断面図である。開閉部22を側方に向けて開いた状態においては、凹部214及び凹部224が直線状の溝を形成するため、凸部312、凸部322、凸部411又は421が直線状になるように位置合わせされた、第2カバー部3に覆われたサーボモータ4に、第1カバー部2を直線状の凹凸に沿ってスライドさせて着脱することができる。なお、
図8に示すように開閉部22の腕部222の突出部223側の端に設けられた当接部2221が、第2カバー部3の下部32に当接し、開閉部22が開き過ぎないようになっている。開閉部22を最大に開いた状態で、凹部214及び凹部224と、凸部312、凸部322、凸部411又は421とが位置合わせされるため、使用者にとって第1カバー部2の着脱が容易になる。
【0031】
図9は、開閉部を上方に向けて閉じた状態の側面図である。
図10は、
図9に示したB-B断面図である。開閉部22を上方に向けて閉じた状態においては、
図7、
図8の状態から開閉部22の突出部223が90度回動しており、凹部214及び凹部224が直線状の溝を形成しない。したがって、凸部411及び421が第1カバー部2の凹部214を通過せず、第2カバー部3に覆われたサーボモータ4と第1カバー部2とが着脱できないようにロックされる。
【0032】
<効果>
図7及び
図8に示したように、着脱は、例えば保持部221が保持する2つの道具を180度異なる方向に向けて開くという、通常のロボットのピッキング動作では生じない姿勢においてのみ可能となる。換言すれば、
図9及び
図10に示したように、ロボットがワークをピッキングする通常の動作の範囲においては第1カバー部2の着脱がロックされる。
【0033】
また、エンドエフェクタ1を備えるロボットは、例えばセントラルキッチンやスーパーマーケットの厨房などの業務用厨房や、弁当工場などの食品加工工場において用いられるものであってもよい。食品を扱うロボットは、特にワークを扱う箇所の衛生管理が要求される。また、扱う食品に応じて速やかに道具を持ち替えられることが好ましい。エンドエフェクタ1は、保持する道具を容易に交換できると共に、食品に触れる可能性のある個所の着脱及び洗浄ができる。すなわち、第1カバー部2や、トング等の道具を取り外して洗浄することが容易になっている。すなわち、第1カバー部2は、ネジのような部品を用いることなく部材の組み合わせによって組み立てられるため、ユーザは工具を使わずに分解して全体を丸洗いすることができる。第1カバー部2は、エンドエフェクタ1のうちロボットアームとの接続部分を除く面を覆っているため、当該部分を洗浄できれば、特に食品工場等で用いるような多関節ロボットの衛生管理を容易にすることができるといえる。また、エンドエフェクタ1の材質には一般的な樹脂を用いることができ、熱や薬品による除
菌に耐え得るものを作成し易い。
【0034】
<実施形態2>
図11は、実施形態2に係る分解斜視図の一例である。
図12は、実施形態2に係る背面側から見た分解斜視図の一例である。実施形態2においては、実施形態1と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0035】
実施形態2においては、カバー部21Aは、可撓性を有する材料によって一体に形成されている。すなわち、カバー部21Aが変形し、開閉部22をカバー部21Aに取り付けることができる。また、カバー部21Aは、本体211と背面側の壁面212とに分解することはできない。したがって、実施形態1に係る壁面212のような小さな部品を失くすことを防止できる。カバー部21Aの材料としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic polyurethane,TPU)、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、炭素繊維強化プラスチック(Carbon fiber reinforced plastic,CFRP)等が挙げられるが、これらに
は限定されない。
【0036】
また、開閉部22の腕部222の先には、直線状の凸部224Aが設けられている。一方、サーボモータ4の回転軸41、回転軸42には、直線状の凹部411A、421Aが設けられている。すなわち、サーボモータの動力を伝達する動力伝達部の凹凸が、実施形態1とは逆になっている。また、第2カバー部3の正面及び背面には、切り欠き311の上部に凹部312Aが設けられており、開閉部22を着脱する際に凸部224Aを通過させられるようになっている。また、第2カバー部3の背面には正面の開口と対応する円柱形状の凹部が設けられ、回動する開閉部22の軸受けとして機能する。取り外して洗浄する部材である開閉部22側は、本実施形態のように凹部であるよりも凸部である方が洗浄し易い。
【0037】
<実施形態3>
図13は、実施形態3に係る分解斜視図の一例である。
図14は、実施形態3に係る背面側から見た分解斜視図の一例である。実施形態3においても、実施形態1又は実施形態2と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0038】
開閉部22の腕部222の先には、直線状でありテーパーが付けられた凸部224Bが設けられている。すなわち、開閉部22は、2つの保持部221を側方に向けて互いに逆向きに開いた姿勢において下方に向けて幅が狭くなる凸部224Bを備えている。一方、サーボモータ4の回転軸41、回転軸42には、直線状であり対応するテーパーが付けられた凹部411B、421Bが設けられている。
【0039】
2つの開閉部22は形状が同一であるため使用者は取り付ける位置に注意を払う必要がない。ただし、延伸する腕部222の中央は、回転する突出部223の中心から偏心しており、開閉部22には想定される取付方向がある。本実施形態のように、サーボモータ4から開閉部22への動力伝達部にテーパーを付けることにより、逆向きの装着を防ぐことができるようになる。
【0040】
<実施形態4>
図15は、実施形態4に係る分解斜視図の一例である。
図16は、実施形態4に係る動作の一例を示す断面図である。
図16の左側は着脱時の内部の状態を、中央はワークをピッキングする動作における開角度時の内部の状態を、右側はワークをピッキングする動作における閉角度時の内部の状態をそれぞれ表す。実施形態4においても、実施形態1から実施形態3と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0041】
本実施形態に係るエンドエフェクタ1は、サーボモータ4の代わりにエアシリンダ5を備える。なお、
図16においてエアシリンダ5の内部構造は省略している。エアシリンダ5は、左右の壁面に歯形を有するラック51をピストンロッドの先に備える。また、回転軸41及び回転軸42の代わりに、ピニオン(従動軸)42Cを2つ備える。そして、ピニオン42Cの前方に設けられた凹部421Bが開閉部22の凸部224Bと係合し、エアシリンダのピストンの動作に応じて、開閉部22を開閉することができる。なお、第2カバー部3(31、32)は、エアシリンダ5全体を覆うものであってもよい。また、エアシリンダの代わりに油圧シリンダやソレノイド等を用いるようにしてもよい。このように、動力源はサーボモータに限らず、動力源によって駆動させられ回転運動する駆動軸や直線運動するラック51などの駆動部から、従動軸やピニオン等の従動部を介して開閉部22を回動させられるような構成を採用することができる。また、例えば動力源と回転軸42とをリンクで接続したクランク機構など、ラックアンドピニオン以外の、直線運動を回転運動に変換する機構を採用するようにしてもよい。
【0042】
<実施形態5>
図17は、実施形態5に係る分解斜視図の一例である。実施形態5においても、実施形態1から実施形態4と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係るエンドエフェクタ1は、1つの開閉部22を備え、開閉部22に装着する道具9と、カバー部21から延出する稼動しないフィンガー24とによってワークを把持することができる。なお、回転軸41Cは、動力伝達部として機能する凹部411Bを有しているが、歯形を有していない。このように、1つの道具と例えばカバー部の一部とでワークをピッキングできるようにしてもよい。
【0044】
<実施形態6>
図18は、実施形態6に係る分解斜視図の一例である。実施形態6においても、実施形態1から実施形態5と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係るエンドエフェクタ1は、開閉部22が、開閉部22を開いた姿勢において上下方向に対称な形状になっている。すなわち、延伸する腕部222の中央は、回転する突出部223の中心から偏心していない。なお、
図11に示した実施形態2と同様に、開閉部22の凸部224A及び回転軸41、42の凹部421A、422Aには、テーパーは付けられていない。このようにすれば、上下を逆向きに取り付けることもでき、使用者は開閉部22の取付方向を誤ることがなくなる。
【0046】
<多関節ロボット>
図19は、上述した実施形態1-3に係るエンドエフェクタを備える多関節ロボットの一例を示す斜視図である。なお、トングの先端の形状は簡略化して表している。多関節ロボット6は、7軸の自由度を有するロボットアームを両腕に備え、人間の上半身を模したロボットである。ロボットアームは一般的なマニピュレータであり、可動せず一体に変位する骨格部材であるリンクと、リンク間を接続し、所定の回転軸を基準として接続されるリンクを互いに変位させる関節とを交互に備える。リンク及びリンク間の関節を、「ロボットアーム」と呼ぶものとする。
図19に示す多関節ロボット6は、左右対称にロボットアームを2つ有している。
【0047】
ロボットアームは、関節にサーボモータを内蔵すると共に、サーボモータの回転角を制御する制御装置(図示せず)と信号線を介して接続される。また、本実施形態に係るエンドエフェクタ1が備えるサーボモータ4も、所定のコネクタを介して制御装置と電気的に接続され、制御装置によって回転軸41の回転が制御される。なお、制御装置は、多関節ロボット6に内蔵されるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。また
、制御装置は、インターネットやLAN(Local Area Network)等の通信網を介して接続され、いわゆるクラウド上でサービスを提供する装置であってもよい。
【0048】
上述の通り、エンドエフェクタ1のカバー部21及び開閉部22については取り外して洗浄すると共に、多関節ロボット6の本体には所定の作業着を着せるようにしてもよい。このようにすれば、食品を扱う場合にも、多関節ロボット6及びエンドエフェクタ1の両者について、衛生管理を容易にすることができる。
【0049】
また、多関節ロボット6の頭部及び胸部には、それぞれ撮像装置を設けるようにしてもよい。撮像装置は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal
Oxide Semiconductor)等を利用したイメージセンサを備えるデジタルカメラであってもよいし、さらに深度を測定できるRGB-Dカメラ等であってもよい。2つの撮像装置を備えることにより、多関節ロボット6が何らかのワークを扱う場合に、ロボットアームの死角を減らすことができる。また、多関節ロボット6は、その胴体部分等にも関節を有するようにしてもよい。
【0050】
また、上述したエンドエフェクタ1及び多関節ロボット6が備えるリンク等の材料は特に限定されず、樹脂や金属、カーボン等を利用することができる。また、成形方法も特に限定されず、塑性加工や射出成型により製造してもよいし、3Dプリンタを利用して造形してもよい。また、例えばエンドエフェクタ1を構成する部材間の接続箇所は、ガスケット又はパッキンでシールされていてもよいし、所定のラビリンス構造を有していてもよい。
【0051】
なお、上述した構成は一例であり、本発明は例示した構成に限定されない。また、上述した事項は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0052】
1: エンドエフェクタ
2: 第1カバー部
21、21A: カバー部
211: 本体
212: 壁面
213: 開口部
214: 凹部
215: 薄壁部
216: 切り欠き部
217: 引掛部
22: 開閉部
221: 保持部
222: 腕部
2221: 当接部
223: 突出部
224: 凹部(動力伝達部)
224A、224B: 凸部(動力伝達部)
24: フィンガー
3: 第2カバー部
31: 上部
311: 切り欠き
312: 凸部
312A: 凹部
32: 下部
321: 切り欠き
322: 凸部
4: サーボモータ(動力源)
41、41C: 回転軸(駆動部)
411: 凸部
411A、411B: 凹部
42: 回転軸(駆動部)
42C: ピニオン(駆動部)
421: 凸部
421A、421B: 凹部
5: エアシリンダ(動力源)
51: ラック
6: 多関節ロボット
9: 道具(トング)