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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】人工緑化壁及び人工緑化壁の形成方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20240723BHJP
   E04C 1/39 20060101ALI20240723BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20240723BHJP
   E04C 2/54 20060101ALI20240723BHJP
   E04F 13/074 20060101ALI20240723BHJP
   A47G 7/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
E04F13/08 Z
E04C1/39 102
E04F13/08 101E
E04C2/30 Y
E04C2/54 A
E04F13/074
E04F13/08 101L
E04F13/08 101F
A47G7/04 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021025422
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022044536
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2020150021
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 岐阜新聞社が、岐阜新聞の令和2年9月3日付朝刊第9面にて、長屋榮一が発明した人工緑化壁及び人工緑化壁の形成方法について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】515270231
【氏名又は名称】株式会社 アートジャパンナガヤ設計
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長屋 榮一
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-047142(JP,A)
【文献】特開2007-291663(JP,A)
【文献】特開2016-204867(JP,A)
【文献】特開2015-160311(JP,A)
【文献】特開2002-096242(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03421683(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
E04C 1/39
E04C 2/30
E04C 2/54
E04F 13/074
A47G 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面の下地に対し、互いに間隔をおいて固定される複数の取付部と、
複数の人工植物と、
前記人工植物を支持する支持部、及び前記取付部に対して着脱可能に取り付けられる被取付部を有し、前記下地を覆うように互いに並んで配置される複数枚の基板と、を備え、
前記基板には、当該基板の取付位置に関する情報を表示する表示部が設けられている、
人工緑化壁。
【請求項2】
前記支持部は、前記基板をその厚さ方向に貫通する複数の支持孔である、
請求項1に記載の人工緑化壁。
【請求項3】
前記人工植物は、軸部を有しており、
前記軸部が前記支持孔に挿通されることによって前記人工植物が前記基板に支持されており、
前記軸部には、前記支持孔からの前記軸部の抜け止めをする抜け止め部が設けられている、
請求項2に記載の人工緑化壁。
【請求項4】
前記基板は、可視光に対して透明または半透明である、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の人工緑化壁。
【請求項5】
前記基板は、給電により発光する光源を有する、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の人工緑化壁。
【請求項6】
前記下地に沿って延在するとともに前記下地に固定される給電レールと、
前記給電レールにより、前記給電レールに沿って移動可能に支持されるとともに、前記給電レールに電気的に接続されるコンセントプラグと、を備え、
前記光源と前記給電レールとが前記コンセントプラグを介して電気的に接続可能に構成されている、
請求項5に記載の人工緑化壁。
【請求項7】
前記給電レールは、互いに隣り合う前記基板同士の間に設けられている、
請求項6に記載の人工緑化壁。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の人工緑化壁の形成方法であって、
施工現場とは別の場所において、人工緑化壁全体における前記人工植物のレイアウト情報を前記基板の各々に割り振るとともに、前記基板の各々に対応する前記人工植物のレイアウト情報に基づいて当該基板の前記支持部に前記人工植物を支持させることで前記人工植物付きの前記基板を形成する準備工程と、
前記施工現場において、当該基板の前記表示部により表示される当該基板の取付位置に関する情報に基づいて、前記下地に固定された前記複数の取付部のうちの少なくとも1つに対して当該基板の前記被取付部を取り付ける施工工程と、を備える、
人工緑化壁の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工緑化壁及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物などの壁面を人工植物、いわゆる造花によって覆うことで形成される人工緑化壁に関する種々の技術が開発されている。
特許文献1には、装飾用の造花を壁面に設置するための造花用壁面構造体(以下、構造体)が開示されている。
【0003】
上記構造体は、略円筒形状の周壁を有し、上面に造花の茎部を挿入させる円孔を有するアタッチメントと、アタッチメントを底面側から嵌合するための複数の支持部が形成された長方形板状のプレートとを備えている。アタッチメントの円孔には、造花の茎部を弾性力により把持するために、上面から下方に向かって所定長さで延出し、且つ円孔の円周方向に沿って90度の等間隔で配置された4つの把持爪が一体形成されている。把持爪は、上記周壁の中心軸側に向かって傾斜している。
【0004】
特許文献1に記載の構造体を用いて造花を壁面に設置する際には、まず、複数のプレートを互いに隣り合わせた状態で壁面に対してねじにより固定する。次に、アタッチメントの円孔に造花の茎部を挿入することで把持爪によって同茎部を把持させる。次に、上記アタッチメントをプレートの支持部に嵌合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-47142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の構造体を用いて人工緑化壁を施工する場合、施工現場において作業者が、予め決められた人工緑化壁全体のレイアウト案を参照しつつ、プレートに対してアタッチメントを介して造花を手作業にて順次取り付ける。そのため、作業効率が悪く、施工現場において多くの時間を要する。また、人工緑化壁の品質及び施工精度が作業者の力量によってばらつきやすい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための人工緑化壁は、壁面の下地に対し、互いに間隔をおいて固定される複数の取付部と、複数の人工植物と、前記人工植物を支持する支持部、及び前記取付部に対して着脱可能に取り付けられる被取付部を有し、前記下地を覆うように互いに並んで配置される複数枚の基板と、を備え、前記基板には、当該基板の取付位置に関する情報を表示する表示部が設けられている。
【0008】
同構成によれば、壁面の下地に固定された取付部に対して、人工植物が支持された複数の基板が取り付けられることで、壁面が人工植物によって覆われた人工緑化壁が形成される。
【0009】
ここで、上記構成によれば、基板には、当該基板の取付位置に関する情報を表示する表示部が設けられている。このため、例えば工場のような施工現場とは別の場所において、人工緑化壁全体における人工植物のレイアウト情報、すなわちデザイン情報を基板の各々に割り振るとともに、基板の各々に対応する人工植物のレイアウト情報に基づいて当該基板の支持部に人工植物を支持させることで人工植物付きの基板を形成することが可能となる。
【0010】
また、施工現場において、作業者は、上記のようにして形成された人工植物付きの基板の取付位置に関する情報を、当該基板の表示部を参照することで把握することができる。そして、作業者は、下地に固定された取付部に対して基板の各々の被取付部を効率よく取り付けることが可能となる。また、施工現場において、作業者が人工緑化壁における人工植物のレイアウト情報を参照しつつ基板に対して人工植物を取り付ける方法に比べて、人工緑化壁の品質のばらつき及び施工精度のばらつきが小さくなる。
【0011】
したがって、施工現場での作業性の向上を図ることができるとともに、品質及び施工精度の確保を図ることができる。
また、上記構成によれば、基板が取付部に対して着脱可能に取り付けられているため、下地から基板を容易に取り外すことができる。これにより、例えば劣化などにより人工植物を交換する必要が生じた場合には、当該人工植物を支持している基板のみを取り外すことができる。そして、予め工場において製造された新たな人工植物付きの基板と交換することが可能となる。また、例えば季節に応じて人工緑化壁全体のデザインを変更することが可能となる。
【0012】
上記人工緑化壁において、前記支持部は、前記基板をその厚さ方向に貫通する複数の支持孔であることが好ましい。
同構成によれば、基板には複数の支持孔が設けられている。このため、基板において人工植物が支持される位置の自由度が高められる。これにより、基板の各々に割り振られたデザインを再現しやすくなる。また、支持部が基板から突出しないため、基板の厚さ方向の体格を小さくできる。
【0013】
上記人工緑化壁において、前記人工植物は、軸部を有しており、前記軸部が前記支持孔に挿通されることによって前記人工植物が前記基板に支持されており、前記軸部には、前記支持孔からの前記軸部の抜け止めをする抜け止め部が設けられていることが好ましい。
【0014】
同構成によれば、人工植物の軸部の端末を基板に設けられた支持孔に挿通することによって人工植物を基板に容易に支持させることができる。また、人工植物の軸部の端末を基板に設けられた支持孔に挿通することによって人工植物を基板に支持させた後、同支持孔から軸部が抜け出すことを抜け止め部によって好適に抑制できる。
【0015】
上記人工緑化壁において、前記基板は、可視光に対して透明または半透明であることが好ましい。
同構成によれば、基板と下地との間に光源を設けた場合には、当該光源から発せられる可視光が、基板を透過するようになる。これにより、人工緑化壁が裏側からライトアップされる。したがって、人工緑化壁の演出性を向上させることができる。
【0016】
上記人工緑化壁において、前記基板は、給電により発光する光源を有することが好ましい。
同構成によれば、基板自体が給電により発光する光源を有しているため、下地側に光源を設けなくて済む。これにより、下地側の構成を簡単にすることができ、施工性を向上させることができる。
【0017】
上記人工緑化壁において、前記下地に沿って延在するとともに前記下地に固定される給電レールと、前記給電レールにより、前記給電レールに沿って移動可能に支持されるとともに、前記給電レールに電気的に接続されるコンセントプラグと、を備え、前記光源と前記給電レールとが前記コンセントプラグを介して電気的に接続可能に構成されていることが好ましい。
【0018】
同構成によれば、給電レールに沿ってコンセントプラグを移動させることで、コンセントプラグの位置を容易に変更することができる。これにより、複数の基板に設けられた光源のうち給電の必要な光源に対して容易に給電を行うことができる。
【0019】
上記人工緑化壁において、前記給電レールは、互いに隣り合う前記基板同士の間に設けられていることが好ましい。
同構成によれば、給電レールが基板によって覆われず、外部に露出する。このため、給電レールに支持されたコンセントプラグと光源とを電気的に接続する作業を容易に行うことができる。また、給電レールが基板によって覆われる構成に比べて、基板を下地に近づけて配置することができる。このため、人工緑化壁を設けることによってスペースが犠牲になることを抑制できる。
【0020】
また、上記課題を解決するための人工緑化壁及び人工緑化壁の形成方法は、施工現場とは別の場所において、人工緑化壁全体における前記人工植物のレイアウト情報を前記基板の各々に割り振るとともに、前記基板の各々に対応する前記人工植物のレイアウト情報に基づいて当該基板の前記支持部に前記人工植物を支持させることで前記人工植物付きの前記基板を形成する準備工程と、前記施工現場において、当該基板の前記表示部により表示される当該基板の取付位置に関する情報に基づいて、前記下地に固定された前記複数の取付部のうちの少なくとも1つに対して当該基板の前記被取付部を取り付ける施工工程と、を備える。
【0021】
同方法によれば、上記人工緑化壁と同様な作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、施工現場での作業性の向上を図ることができるとともに、品質及び施工精度の確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】人工緑化壁の一実施形態について、人工緑化壁全体を示す正面図。
図2】同実施形態の基板について、(a)は正面図、(b)は背面図。
図3】人工緑化壁が適用される建物の壁面の下地全体を示す正面図。
図4図3のB部を拡大して示す正面図。
図5図1のA部を拡大して示す正面図。
図6図5の6-6線に沿った断面図。
図7図5の7-7線に沿った断面図。
図8】同実施形態における基板の支持孔に対して人工植物の軸部を挿入する様子を示す断面図。
図9】変形例の人工緑化壁を示す正面図。
図10】同変形例の下地、第1レール及び第2レールを示す正面図。
図11】同変形例の基板を示す背面図。
図12図9の12-12線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1図8を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、人工緑化壁10は、複数の人工植物20と、人工植物20を支持するとともに建物の壁面の下地90を覆うように互いに並んで配置される複数枚の基板30とを備えている。基板30は、上下方向において互いに等間隔にて複数設けられるとともに、水平方向(同図の左右方向)において互いに等間隔にて複数設けられている。
【0025】
なお、図1においては、一部の基板30が支持部31(後述する支持孔)を有しているように示しているが、実際には、全ての基板30が支持部31を有している。また、図1においては、一部の基板30が人工植物20を支持しているように示しているが、実際には、全ての基板30が人工植物20を支持している。
【0026】
図3に示すように、下地90には、複数の取付部12が基材11を介して互いに間隔をおいて固定されている。
図2(a)及び図2(b)に示すように、基板30は、取付部12に対して着脱可能に取り付けられる被取付部33を有している。
【0027】
以降において、人工緑化壁10を構成する各部材について詳細に説明する。
まず、基板30について説明する。
図2(a)及び図2(b)に示すように、基板30は、四角形板状である。基板30は、例えば一辺の長さが500mmの正方形板状である。基板30は、アクリル樹脂製であり、可視光に対して半透明である。
【0028】
本実施形態の支持部31は、基板30をその厚さ方向に貫通する複数の支持孔により構成されている。
支持孔(支持部31)は、格子状に配列されている。支持孔(支持部31)は、基板30の一辺に沿う方向(同図の上下方向)において互いに等間隔にて複数設けられるとともに、上記一辺に直交する方向(同図の左右方向)において互いに等間隔にて複数設けられている。
【0029】
図2(b)及び図7に示すように、本実施形態の被取付部33は、下地90に固定される取付部12と共に周知のボールスナップ式キャッチ、いわゆるボールキャッチを構成する雄型部材である。
【0030】
図2(a)及び図2(b)に示すように、被取付部33は、基板30の背面の4つの角部に一対のねじ33aにより固定されている。
基板30の背面には、当該基板30の取付位置に関する情報を表示する表示部32が設けられている。
【0031】
本実施形態では、基板30の取付位置に関する情報としてアラビア数字(例えば1~35のいずれか)が用いられている。
なお、表示部32は、基板30の背面に代えて正面に設けるようにしてもよい。また、表示部32は、基板30の正面及び背面の双方に設けるようにしてもよい。
【0032】
また、基板30の取付位置に関する情報としては、アラビア数字に限定されず、他の数字、またはアルファベットなどの文字、あるいは数字及び文字の組み合わせを用いることもできる。
【0033】
表示部32は、基板30に突設されていてもよいし、凹設されていてもよい。また、表示部32は、基板30に印刷されていてもよいし、基板30に貼着されるシールによって構成されていてもよい。
【0034】
基板30の背面には、給電により発光する光源34が固定されている。本実施形態の光源34は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。なお、光源34は、LEDに限定されず、白熱電球や蛍光灯を採用することもできる。
【0035】
図1に示すように、複数の基板30は、上下方向において互いに所定の間隔(例えば30~35mm)をおいて配置されている。また、複数の基板30は、水平方向に対して互いに所定の間隔(例えば30~35mm)をおいて配置される。
【0036】
次に、取付部12について説明する。
図3に示すように、下地90は、例えばベニア板であり、人工緑化壁10を形成する対象の壁面全体を覆っている。下地90には、例えば木材からなる複数の基材11が固定されている。基材11は、上下方向に沿って延在する長尺板状である。
【0037】
一対の基材11が、基板30の左右両縁部に対向する位置において基板30の上下方向全体にわたって設けられている。基材11は、ねじ(図示略)により下地90に固定されている。
【0038】
基材11の上部及び下部には、取付部12がそれぞれ固定されている。
図4及び図7に示すように、本実施形態の取付部12は、基板30に固定される被取付部33と共に周知のボールスナップ式キャッチ、いわゆるボールキャッチを構成する雌型部材である。
【0039】
図5及び図6に示すように、下地90に固定された取付部12に対して、基板30の被取付部33が嵌合して取り付けられることで、基板30は、下地90に対して所定の間隔(例えば35~40mm)をおいて平行に配置される。
【0040】
次に、人工植物20について説明する。
図1に示すように、人工植物20は、植物の形状を模擬したものであり、可撓性を有す合成樹脂製である。人工植物20の表面には、空気を浄化する周知の触媒が塗布されている。こうした触媒としては、光触媒を採用することができる。また、空気触媒を採用することもできる。また、光触媒及び空気触媒の双方を含むハイブリッド型の触媒を採用することもできる。なお、人工植物20としては、こうした触媒が塗布されていないものを用いることもできる。
【0041】
図8に示すように、人工植物20は、茎部に相当する軸部21を有している。軸部21が支持孔(支持部31)に挿通されることによって人工植物20が基板30に支持されている。
【0042】
軸部21の先端部の外周面には、抜け止め部22が固定されている。抜け止め部22は、例えば軸部21とは別体の金属製である。
抜け止め部22は、軸部21の端部の外周面に対して固定される筒状の固定部22aと、固定部22aの一端側(同図の左側)に連なるとともに他端側(同図の右側)に向かって折り返された係合部22bとを有している。係合部22bは、先端側ほど固定部22aの外周側に位置している。固定部22aの内部に軸部21を挿通し、固定部22aをかしめることで、軸部21に対して固定部22aが固定されている。
【0043】
抜け止め部22は、支持孔(支持部31)への軸部21の挿通を許容するとともに、支持孔(支持部31)からの軸部21の抜け止めをする。
なお、図8に二点鎖線に示されている状態から、人工植物20を更に押し込むことで抜け止め部22と基板30との係合状態が解除される。そして、抜け止め部22を軸部21の外周面に押し付けた状態で人工植物20を引き抜くことで、基板30から人工植物20を取り外すことができる。また、軸部21において抜け止め部22が固定されている部分をニッパーなどで切除し、人工植物20を引き抜くことで、基板30から人工植物20を取り外すことができる。
【0044】
図1図3図5に示すように、下地90には、光源34に対して給電を行うための周知の給電レール40が固定されている。
図6及び図7に示すように、給電レール40は、レール部材41及び電線部材42を有している。
【0045】
レール部材41は、下地90に沿って延在するとともに下地90に固定されている。レール部材41は、下地90とは反対側に開口する内部空間を有している。
電線部材42は、レール部材41にインサートして形成されるとともに、レール部材41の延在方向に沿って延在している。電線部材42は、レール部材41の内部空間に対して露出している。
【0046】
図1図3図5に示すように、本実施形態のレール部材41は、互いに隣り合う基板30同士の間に設けられており、格子状に延在している。
レール部材41には、電線部材42に電気的に接続されるコンセントプラグ43が、レール部材41に沿って移動可能に支持されている。
【0047】
光源34から延びる電線の端末に設けられるプラグ(図示略)をコンセントプラグ43に差し込むことによって、給電レール40からコンセントプラグ43を介して光源34に給電される。
【0048】
人工緑化壁10の形成方法は、施工現場とは別の場所において、人工緑化壁10全体における人工植物20のレイアウト情報を基板30の各々に割り振るとともに、基板30の各々に対応する人工植物20のレイアウト情報に基づいて当該基板30の支持部31に人工植物20を支持させることで人工植物20付きの基板30を形成する準備工程を備える。
【0049】
人工緑化壁10の形成方法は、施工現場において、当該基板30の表示部32により表示される当該基板30の取付位置に関する情報に基づいて、下地90に固定された複数の取付部12のうちの少なくとも1つに対して当該基板30の被取付部33を取り付ける施工工程を備える。
【0050】
具体的には、人工緑化壁10全体における人工植物20のレイアウト情報、すなわちデザイン情報を準備する。レイアウト情報は、例えば画像データであり、コンピュータ端末などを利用して生成することができる。
【0051】
続いて、上記レイアウト情報を35個の基板30の各々に割り振る。
そして、当該基板30に割り振られた人工植物20のレイアウト情報に基づいて、工場において手作業またはロボットハンドなどを利用して当該基板30の支持部31に人工植物20を支持させる。
【0052】
こうして形成された人工植物20付きの基板30は、施工現場へ配送される。
具体的には、図2(b)に示すように、施工現場において、作業者は、当該基板30の表示部32により表示される当該基板30の取付位置に関する情報(この場合、アラビア数字の「1」)を把握する。
【0053】
そして、図3に示すように、作業者は、この取付位置に関する情報(この場合、「1」)に基づいて、下地90に固定された複数の取付部12のうち、当該情報に対応する4つの取付部12に対して当該基板30の4つの被取付部33をそれぞれ取り付ける。この取付作業を全ての基板30(「1」~「35」)について行うことにより、人工緑化壁10が形成される。
【0054】
なお、例えば基板30と共に施工現場へ施工方法に関する説明書を配送する、あるいは同説明書のデータをWEBの専用ページにアップロードする場合には、同説明書に、下地90全体における各基板30の取付位置に関する情報を記載するようにすることが好ましい。
【0055】
次に、本実施形態の作用について説明する。
壁面の下地90に固定された取付部12に対して、人工植物20が支持された複数の基板30が取り付けられることで、壁面が人工植物20によって覆われた人工緑化壁10が形成される。
【0056】
ここで、基板30には、当該基板30の取付位置に関する情報を表示する表示部32が設けられている。このため、例えば工場のような施工現場とは別の場所において、人工緑化壁10全体における人工植物20のレイアウト情報を基板30の各々に割り振るとともに、基板30の各々に対応する人工植物20のレイアウト情報に基づいて当該基板30の支持部31に人工植物20を支持させる人工植物20付きの基板30を形成することが可能となる。
【0057】
また、施工現場において、作業者は、上記のようにして形成された人工植物20付きの基板30の取付位置に関する情報を、当該基板30の表示部32を参照することで把握することができる。そして、作業者は、下地90に固定された取付部12に対して基板30の各々の被取付部33を効率よく取り付けることが可能となる(以上、作用1)。
【0058】
また、施工現場において、作業者が人工緑化壁10における人工植物20のレイアウト情報を参照しつつ基板30に対して人工植物20を取り付ける方法に比べて、人工緑化壁10の品質のばらつき及び施工精度のばらつきが小さくなる(以上、作用2)。
【0059】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)人工緑化壁10は、壁面の下地90に対し、互いに間隔をおいて固定される複数の取付部12と、複数の人工植物20と、人工植物20を支持する支持部31、及び取付部12に対して着脱可能に取り付けられる被取付部33を有し、下地90を覆うように互いに並んで配置される複数枚の基板30とを備えている。基板30には、当該基板30の取付位置に関する情報を表示する表示部32が設けられている。
【0060】
こうした構成によれば、上記作用1及び作用2を奏することができる。したがって、施工現場での作業性の向上を図ることができるとともに、品質及び施工精度の確保を図ることができる。
【0061】
また、上記構成によれば、基板30が取付部12に対して着脱可能に取り付けられているため、下地90から基板30を容易に取り外すことができる。これにより、例えば劣化などにより人工植物20を交換する必要が生じた場合には、当該人工植物20を支持している基板30のみを取り外すことができる。そして、予め工場において製造された新たな人工植物20付きの基板30と交換することが可能となる。また、例えば季節に応じて人工緑化壁10全体のデザインを変更することが可能となる。
【0062】
(2)支持部31は、基板30をその厚さ方向に貫通する複数の支持孔である。
こうした構成によれば、基板30には複数の支持孔(支持部31)が設けられている。このため、基板30において人工植物20が支持される位置の自由度が高められる。これにより、基板30の各々に割り振られたデザインを再現しやすくなる。また、支持部31が基板30から突出しないため、基板30の厚さ方向の体格を小さくできる。
【0063】
(3)人工植物20は、軸部21を有する。軸部21が支持部31としての支持孔に挿通されることによって人工植物20が基板30に支持されている。軸部21には、支持孔(支持部31)からの軸部21の抜け止めをする抜け止め部22が固定されている。
【0064】
こうした構成によれば、人工植物20の軸部21の端末を基板30に設けられた支持孔(支持部31)に挿通することによって人工植物20を基板30に容易に支持させることができる。また、人工植物20の軸部21の端末を基板30に設けられた支持孔(支持部31)に挿通することによって人工植物20を基板30に支持させた後、同支持孔(支持部31)から軸部21が抜け出すことを抜け止め部22によって好適に抑制できる。
【0065】
(4)基板30は、可視光に対して半透明である。
こうした構成によれば、基板30と下地90との間に光源34を設けた場合には、当該光源34から発せられる可視光が、基板30を透過するようになる。これにより、人工緑化壁10が裏側からライトアップされる。したがって、人工緑化壁10の演出性を向上させることができる。
【0066】
(5)基板30は、給電により発光する光源34を有している。
こうした構成によれば、基板30自体が給電により発光する光源34を有しているため、下地90側に光源34を設けなくて済む。これにより、下地90側の構成を簡単にすることができ、施工性を向上させることができる。
【0067】
(6)人工緑化壁10は、下地90に沿って延在するとともに下地90に固定される給電レール40と、給電レール40により、給電レール40に沿って移動可能に支持されるとともに給電レール40に電気的に接続されるコンセントプラグ43とを備えている。光源34と給電レール40とがコンセントプラグ43を介して電気的に接続可能に構成されている。
【0068】
こうした構成によれば、給電レール40に沿ってコンセントプラグ43を移動させることで、コンセントプラグ43の位置を容易に変更することができる。これにより、複数の基板30に設けられた光源34のうち給電の必要な光源34に対して容易に給電を行うことができる。
【0069】
(7)給電レール40は、互いに隣り合う基板30同士の間に設けられている。
こうした構成によれば、給電レール40が基板30によって覆われず、外部に露出する。このため、給電レール40に支持されたコンセントプラグ43と光源34とを電気的に接続する作業を容易に行うことができる。また、給電レール40が基板30によって覆われる構成に比べて、基板30を下地90に近づけて配置することができる。このため、人工緑化壁10を設けることによってスペースが犠牲になることを抑制できる。
【0070】
(8)人工緑化壁10の形成方法は、上記準備工程と、上記施工工程とを備える。
こうした方法によれば、上記効果(1)と同様な効果を奏することができる。
<変形例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0071】
・基板30の形状は、正方形板状に限定されず、長方形板状であってもよい。また、長方形板状の基板30及び正方形板状の基板30の双方を用いることもできる。
・取付部12及び被取付部33は、上記実施形態において例示したボールスナップ式キャッチに限定されない。例えば、取付部及び被取付部として、ローラスナップ式キャッチ、いわゆるローラキャッチやマグネットタイプなどの他の方式のキャッチ機構を採用することもできる。
【0072】
図9図10図12に示すように、下地90には、水平方向に沿って延びる第1レール51が固定されている。また、下地90において第1レール51の下方には、水平方向に沿って延びる第2レール54が固定されている。第1レール51及び第2レール54は、水平方向に並設される複数の基板70に跨がって設けられている(図9参照)。また、図示は省略するが、第1レール51及び第2レール54の対を上下方向に複数対設けることもできる。
【0073】
図10及び図12に示すように、第1レール51には、取付部としての掛止部材52が、ねじ53を介して固定されている。掛止部材52は、ねじ53が挿通される挿通孔を有する基部52aと、基部52aの上端に連なるとともに第1レール51と間隔をおいて上方に向かって延びる掛止部52bとを有している。掛止部材52は、例えば金属製である。
【0074】
第2レール54には、取付部としての磁石55が、ねじ56を介して固定されている。磁石55は、例えばフェライト磁石である。
図9及び図11に示すように、基板70には、複数の支持部71が上記実施形態と同様にして設けられている。基板70の上下方向に延びる両側縁部には、凹部70Aが設けられている。凹部70Aは、例えば矩形状である。
【0075】
図9に示すように、基板70には、表示部72が設けられている。なお、図11では、表示部72の図示を省略している。
図11及び図12に示すように、基板70の背面の上端中央部には、被取付部としての被掛止部材73が、ねじ74を介して固定されている。被掛止部材73は、ねじ74が挿通される挿通孔を有する基部73aと、基部73aの下端に連なるとともに基板70と間隔をおいて下方に向かって延びる被掛止部73bとを有している。被掛止部材73は、例えば金属製である。
【0076】
基板70の背面の下端中央部には、被取付部としての鋼板75が、ねじ76を介して固定されている。
こうした構成によれば、例えば第1レール51及び第2レール54に沿って基板70をスライドさせることで、掛止部材52の掛止部52bに、被掛止部材73の被掛止部73bが掛止される。またこのとき、磁石55に対して鋼板75が磁気吸着される。また、作業者は、基板70の凹部70Aに手を掛けることができる。したがって、基板70の着脱を容易に行うことができる。
【0077】
また、こうした構成によれば、第1レール51及び第2レール54によって、下地90と基板70との間に、光源や給電レールなどを配置するための空間を確保しやすくなる。
なお、第1レール51及び第2レール54を省略し、掛止部材52及び磁石55を下地90に直接固定するようにしてもよい。この場合、掛止部材52として、水平方向において下地90の略全体にわたって延在するものを採用することもできる。これにより、掛止部材52の部品点数を低減できる。
【0078】
・給電レール40は、格子状に延在するものに限定されない。上記実施形態において例示した給電レール40のうち上下方向に沿って延在するもののみによって給電レール40を構成してもよいし、給電レール40のうち水平方向に沿って延在するもののみによって給電レール40を構成してもよい。
【0079】
・給電レール40は、互いに隣り合う基板30同士の間に設けられるものに限定されない。給電レール40を下地90上において基板30に対向する位置に設けるようにしてもよい。この場合、基板30の被取付部33が取付部12に取り付けられる動作に連動して、コンセントプラグ43に対して光源34のプラグが差し込まれるように構成することもできる。
【0080】
・光源34は、基板30の背面に固定されるものに限定されず、基板30の正面に固定されるものであってもよい。また、下地90に対して光源34を取り付けることもできる。また、光源34を省略することもできる。
【0081】
・基板30は、可視光に対して半透明なものに限定されず、透明なものであってもよい。基板30の材料はアクリル樹脂に限定されず、ポリカーボネート樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリプロピレン樹脂などを採用することもできる。また、光源34を用いない場合であれば、基板30として不透明なものを採用することもできる。この場合、基板30の材料として、金属や木材などを採用することもできる。
【0082】
・抜け止め部22は、金属製に限定されず、合成樹脂によって形成することもできる。この場合、抜け止め部22を人工植物20と一体に形成することもできる。
・結束バンドや針金などの締結部材を支持孔(支持部31)に挿通するとともに締結部材を介して人工植物20を基板30に支持するように構成することもできる。すなわち、人工植物20の軸部21が支持孔(支持部31)に挿通されない構成であってもよい。
【0083】
・支持孔(支持部31)の数や大きさ、位置を任意に変更することができる。
・支持部31は、基板30をその厚さ方向に貫通する支持孔に限定されない。支持部31は、人工植物20を支持することができるものであればよく、基板30の正面に突設されたフックであってもよい。
【0084】
・本発明に係る人工緑化壁10及びその形成方法は、建物の内壁に対して適用することもできるし、建物の外壁に対して適用することもできる。また、建物以外の構造物の壁面に対して適用することもできる。特に、屋外に設置される人工緑化壁10においては、耐候性を高めるための薬剤を人工植物20に対して塗布または噴霧することが好ましい。こうした薬剤としては、例えばリン酸チタニア系化合物などが好ましい。
【符号の説明】
【0085】
10…人工緑化壁
11…基材
12…取付部
20…人工植物
21…軸部
22…抜け止め部
22a…固定部
22b…係合部
30…基板
31…支持部
32…表示部
33…被取付部
33a…ねじ
34…光源
40…給電レール
41…レール部材
42…電線部材
43…コンセントプラグ
51…第1レール
52…掛止部材(取付部)
52a…基部
52b…掛止部
53…ねじ
54…第2レール
55…磁石(取付部)
56…ねじ
70…基板
70A…凹部
71…支持部
72…表示部
73…被掛止部材(被取付部)
73a…基部
73b…被掛止部
74…ねじ
75…鋼板(被取付部)
76…ねじ
90…下地
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12