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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20240723BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20240723BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L21/88 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022528359
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022202
(87)【国際公開番号】W WO2021245893
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小池 淳一
(72)【発明者】
【氏名】矢作 政隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕貴
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-169480(JP,A)
【文献】特開2008-053753(JP,A)
【文献】特開2001-007204(JP,A)
【文献】特開2008-098424(JP,A)
【文献】特開平11-145141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、導電性配線と、絶縁層及び導電性配線の間に、絶縁層及び導電性配線の両者に接触して配設された拡散バリア層とを有する配線構造を備えた半導体デバイスであって、
絶縁層は、シリコン酸化物、及び/又は、C、N及びHの少なくとも一種以上の元素を含むシリコン酸化物を含有し、
導電性配線は、Cu及び/又はCoを含有し、
拡散バリア層は、第一の金属及び第二の元素を合計で90質量%以上含む非晶質構造を有する合金で構成され、
第一の金属はCo、Ru、及びMoから選択される何れか一種であり、
第一の金属がCoであるとき、第二の元素はZr、Al及びNbから選択される一種又は二種以上であり、
第一の金属がRuであるとき、第二の元素はZrであり、
第一の金属がMoであるとき、第二の元素はY及びBから選択される一種又は二種である、
半導体デバイス。
【請求項2】
拡散バリア層の厚みは5nm以下である請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
第一の金属がCoであり、第二の元素がZr、Al及びNbから選択される一種又は二種以上である請求項1又は2に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
第一の金属がRuであり、第二の元素がZrである請求項1又は2に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
第一の金属がMoであり、第二の元素がY及びBから選択される一種又は二種である請求項1又は2に記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線構造を有する半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの微細化に伴って、トランジスタに接続する多層配線の線幅が狭くなる。例えば、LSIの技術ノードが22nm、10nm、5nmと微細化することによって、ローカル配線の線幅は40nm、18nm、10nmと減少する。多層配線は、例えばSiO2を基本とした絶縁層中に銅配線が縦横に配置されている。銅とSiO2は相互に拡散して配線間の電流リークを発生させるため、銅とSiO2の界面に拡散バリア層が必要となる。現状の拡散バリア層は非晶質のTaN等が用いられることが多い。最近では、拡散バリア層にCo-Ti合金、Co-Hf合金及びCo-Ta合金を使用した例も知られている(特許文献1)。しかしながら、拡散バリア層は銅との濡れ性及び密着性が十分ではないのが一般的である。このため、銅との濡れ性及び密着性を高めるために、Ta又はCo等で構成されるライナー層を拡散バリア層と銅の間に積層することが提案されている(特許文献2、3)。
【0003】
図2に、従来の半導体デバイスにおける配線構造20の形成過程を説明するための模式的な断面図を示す。(1)絶縁層21に配線溝22を形成する。(2)配線溝22の内面にTaN等の拡散バリア層23を成膜する。(3)拡散バリア層23の上にTa又はCo等のライナー層24を成膜する。(4)ライナー層24の上に銅配線25を埋め込む。銅配線25の埋め込みは、例えば、ライナー層上への銅シード層の成膜工程と、その後の電解銅めっき工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2019/0164896号明細書
【文献】特表2005-510045号公報
【文献】特表2019-531604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の半導体デバイスにおける配線構造20では、絶縁層21に形成した配線溝22に、個別の拡散バリア層23とライナー層24を二層形成するため、銅配線25の占有部が狭隘となる、すなわち、配線溝22内に充填される銅配線25の体積比率が小さくなる。特に、10nm以下の先端技術ノードにおいては、僅かな体積比率の減少であっても、微細化に伴う配線抵抗の上昇度合いが看過できないレベルになる。従って、LSIの技術ノードの微細化に対応するため、配線溝22内に充填される銅配線の体積比率を高くできる配線構造が提供されることが望ましい。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、個別の拡散バリア層とライナー層を二層形成するのではなく、拡散バリア機能とライナー機能を併せ持つ拡散バリア層を有する配線構造を備えた半導体デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、特定の元素を組み合わせることによって拡散バリア機能とライナー機能を併せ持つ拡散バリア層が得られることを見出した。上記知見に基づき完成した本発明は以下に例示される。
【0008】
(1)
絶縁層と、導電性配線と、絶縁層及び導電性配線の間に、絶縁層及び導電性配線の両者に接触して配設された拡散バリア層とを有する配線構造を備えた半導体デバイスであって、
絶縁層は、シリコン酸化物、及び/又は、C、N及びHの少なくとも一種以上の元素を含むシリコン酸化物を含有し、
導電性配線は、Cu及び/又はCoを含有し、
拡散バリア層は、第一の金属及び第二の元素を合計で90質量%以上含む非晶質構造を有する合金で構成され、
第一の金属はCo、Ru、及びMoから選択される何れか一種であり、
第一の金属がCoであるとき、第二の元素はZr、Al及びNbから選択される一種又は二種以上であり、
第一の金属がRuであるとき、第二の元素はZrであり、
第一の金属がMoであるとき、第二の元素はY及びBから選択される一種又は二種である、
半導体デバイス。
(2)
拡散バリア層の厚みは5nm以下である(1)に記載の半導体デバイス。
(3)
第一の金属がCoであり、第二の元素がZr、Al及びNbから選択される一種又は二種以上である(1)又は(2)に記載の半導体デバイス。
(4)
第一の金属がRuであり、第二の元素がZrである(1)又は(2)に記載の半導体デバイス。
(5)
第一の金属がMoであり、第二の元素がY及びBから選択される一種又は二種である(1)又は(2)の何れか一項に記載の半導体デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る半導体デバイスは、拡散バリア機能とライナー機能を併せ持つ拡散バリア層を有する配線構造を備える。当該配線構造においては、個別の拡散バリア層とライナー層を二層形成する必要がなくなり、単層の拡散バリア層を形成すれば足りるので、配線溝に充填される銅などの導電性配線の占有部の体積比率を大きくすることができ、例えばLSIの微細化に伴う配線抵抗の上昇度合いを緩和できるという格別の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の一実施形態に係る半導体デバイスにおける配線構造を説明するための模式的な断面図である。
図1B】本発明の一実施形態に係る半導体デバイスにおける配線構造の形成過程を説明するための模式的な断面図である。
図2】従来例に係る半導体デバイスにおける配線構造の形成過程を説明するための模式的な断面図である。
図3】実施例で作製した積層体の積層構造を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えることができる。
【0012】
(1.配線構造)
図1Aには、本発明の一実施形態に係る半導体デバイスが備える配線構造10を説明するための模式的な断面図が示されている。配線構造10は、絶縁層11と、導電性配線15と、絶縁層11及び導電性配線15の間に、絶縁層11及び導電性配線15の両者に接触して配設された拡散バリア層13とを有する。
【0013】
絶縁層は一実施形態において、シリコン酸化物、及び/又は、C、N及びHの少なくとも一種以上の元素を含むシリコン酸化物を含有する。絶縁層は好ましい実施形態において、シリコン酸化物、及び/又は、C、N及びHの少なくとも一種以上の元素を含むシリコン酸化物を合計で90質量%以上含有してもよく、95質量%以上含有してもよく、更には99質量%以上含有してもよい。絶縁層を構成するこれらのシリコン酸化物の具体例としては、限定的ではないが、二酸化ケイ素(SiO2)、オキシ炭化ケイ素(SiOxy)、水素化オキシ炭化ケイ素(SiOxyz)、及び、酸窒化ケイ素(SiOxy)を挙げることができる。
【0014】
導電性配線は一実施形態において、Cu及び/又はCoを含有する。導電性配線は好ましい実施形態において、Cu及び/又はCoを合計で50質量%以上含有してもよく、90質量%以上含有してもよく、99質量%以上含有してもよい。導電性配線は別の一実施形態において、Cuを90質量%以上含有してもよく、99質量以上含有してもよい。導電性配線は更に別の一実施形態において、Coを90質量%以上含有してもよく、99質量%以上含有してもよい。
【0015】
拡散バリア層は一実施形態において、第一の金属及び第二の元素を合計で90質量%以上含む非晶質構造を有する合金で構成される。拡散バリア層は別の一実施形態において、第一の金属及び第二の元素を合計で95質量%以上含む非晶質構造を有する合金で構成される。拡散バリア層は更に別の一実施形態において、第一の金属及び第二の元素を合計で99質量%以上含む非晶質構造を有する合金で構成される。拡散バリア層には、第一の金属及び第二の元素以外の元素を含有しなくてもよいが、不可避的不純物の他、意図的な添加元素を含有し得る。意図的な添加元素としては、限定的ではないが、例えば、窒素、リンなどの第15族元素が挙げられる。意図的な添加元素は一種を単独で添加してもよいし、又は二種以上を組み合わせて添加してもよい。
【0016】
第一の金属としては、Co、Ru、及びMoから選択される何れか一種を選択することができる。これらの金属は電気抵抗率が低く、導電性配線の構成材料であるCu及び/又はCoとの濡れ性及び密着性にも優れている。このことから、ライナー機能を発揮する上で有利である。但し、Co、Ru、及びMoは多結晶構造となりやすく、結晶粒界に沿って導電性配線の構成材料であるCu及び/又はCoが、絶縁層中に拡散することを抑止できない。さらに、これらの金属は絶縁層に対する密着性が十分でないという課題もある。
【0017】
これに対し、本発明者は、非晶質構造を安定に存在させることができるように、第一の金属に適切な第二の元素を組み合わせるという着想を得た。結晶粒界をもたない非晶質構造が安定に存在することができれば、上記拡散を効果的に抑止でき、拡散バリア機能とライナー機能を同時に発現することができる。さらに第二の元素として酸化物形成傾向が強い元素、すなわち、酸化物標準生成ギブスエネルギーが負の大きい値を有する元素を選択することによって絶縁層との密着性を確保することができる。
【0018】
第一の金属がCoであるとき、第二の元素はZr、Al及びNbから選択される一種又は二種以上であることが好ましい。Co-Zr合金が安定して非晶質構造を取ることができるという観点から、Co-Zr合金中のCo及びZrの原子比は、0.1≦Zr/(Co+Zr)≦0.8を満たすことが好ましく、加えて拡散バリア機能と密着性を良好に確保できるという観点から、0.15≦Zr/(Co+Zr)≦0.5を満たすことがより好ましい。
【0019】
Co-Al合金が安定して非晶質構造を取ることができるという観点から、Co-Al合金中のCo及びAlの原子比は0.4≦Al/(Co+Al)≦0.9を満たすことが好ましく、加えて拡散バリア機能と密着性を良好に確保できるという観点から、0.5≦Al/(Co+Al)≦0.8を満たすことがより好ましい。
【0020】
Co-Nb合金が安定して非晶質構造を取ることができるという観点から、Co-Nb合金中のCo及びNbの原子比は0.4≦Nb/(Co+Nb)≦0.9を満たすことが好ましく、加えて拡散バリア機能と密着性を良好に確保できるという観点から、0.5≦Nb/(Co+Nb)≦0.8を満たすことがより好ましい。
【0021】
第一の金属がRuであるとき、第二の元素はZrであることが好ましい。Ru-Zr合金が安定して非晶質構造を取ることができるという観点から、Ru-Zr合金中のRu及びZrの原子比は、0.1≦Zr/(Ru+Zr)≦0.8を満たすことが好ましく、加えて拡散バリア機能と密着性を良好に確保できるという観点から、0.3≦Zr/(Ru+Zr)≦0.6を満たすことがより好ましい。
【0022】
第一の金属がMoであるとき、第二の元素はY及びBから選択される一種又は二種であることが好ましい。
Mo-Y合金が安定して非晶質構造を取ることができるという観点から、Mo-Y合金中のMo及びYの原子比は、0.5≦Y/(Mo+Y)≦0.9を満たすことが好ましく、加えて拡散バリア機能と密着性を良好に確保できるという観点から、0.6≦Y/(Mo+Y)≦0.8を満たすことがより好ましい。
Mo-B合金が安定して非晶質構造を取ることができるという観点から、Mo-B合金中のMo及びBの原子比は、0.2≦B/(Mo+B)≦0.8を満たすことが好ましく、加えて拡散バリア機能と密着性を良好に確保できるという観点から、0.3≦B/(Mo+B)≦0.7を満たすことがより好ましい。
Mo-Y-B合金が安定して非晶質構造を取ることができるという観点から、Mo-Y-B合金中のMo、Y及びBの原子比は、0.5≦(Y+B)/(Mo+Y+B)≦0.9を満たすことが好ましく、加えて拡散バリア機能と密着性を良好に確保できるという観点から、0.6≦(Y+B)/(Mo+Y+B)≦0.8を満たすことがより好ましい。
【0023】
第一の金属及び第二の元素を合計で90質量%以上含む非晶質構造を有する合金は、拡散バリア機能とライナー機能を両立させるという観点から、第一の金属の原子濃度が第二の元素の原子濃度と等しいか又はそれより高いことが好ましい。
【0024】
半導体デバイスの微細な配線構造へ適用するという観点から、拡散バリア層の厚みは一実施形態において、5nm以下とすることができ、3nm以下とすることもでき、例えば1nm~5nmとすることができる。
【0025】
本明細書において、拡散バリア層の厚み及び組成は以下の手順で決定する。例えば、第一の金属と第二の元素からなる拡散バリア層を、それぞれの元素の単体を同時にスパッタリング成膜することによって合金薄膜を形成する場合を説明する。まず、第一の金属のみをスパッタリング成膜して、成膜時間と膜厚の関係を測定することによって成膜速度を決定する。膜厚は触針式膜厚計を用いて測定可能である。次に第二の元素のみをスパッタリング成膜して成膜速度を決定する。これらの成膜速度をもとに成膜条件を調整して所望の組成を有する合金薄膜を得る。さらに、得られる合金薄膜の組成を蛍光X線分析装置(XRF)を用いて測定し、所望の組成と実際の組成が±0.1原子%以内の誤差で得られていることを確認する。
別途、定性的な測定方法として、導電性配線/拡散バリア層/絶縁層/シリコン基板の積層構造体を有するサンプルの断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM)で観察し、積層構造体の厚み方向に構成元素のEDS(エネルギー分散型X線分光器)による元素分析(STEM-EDS分析)を行い、それぞれの構成元素に特有のエネルギーを示す特性X線強度プロファイルを得る。得られる強度プロファイルから各層の構成元素の原子濃度プロファイルを定性的に知ることができる。この情報は高温熱処理を行ったときの各層間の相互拡散の有無を調べるときに有用である。
STEM-EDS分析を行う際の測定条件は、加速電圧200kV、観察倍率50万倍、ビーム径0.2nmとする。ビーム径が大きくなると強度プロファイルがブロードになりやすいため、ビーム径は1nm以下の一定値にすることが再現性のある測定を行う上で望ましい。
【0026】
本発明が適用可能な半導体デバイスとしては、上述した実施形態に係る配線構造を少なくとも一部に有する限り特に制限はない。半導体デバイスとしては、例えば、LSIのような多層配線(典型的には10層以上の配線)を有する半導体集積回路が挙げられる。特に、配線の僅かな体積比率の減少であっても、微細化に伴う配線抵抗の上昇度合いが看過できないレベルの配線幅である25nm以下、好ましくは15nm以下の配線構造を有する半導体デバイスに好適に適用可能である。
【0027】
本発明の一実施形態に係る配線構造は、半導体集積回路において、半導体基板上にトランジスタを形成するFEOL(Front End of Line)工程に引き続く、MOL(Middle of Line)工程にて形成される最下層の配線構造に適用可能である。本発明の別の一実施形態に係る配線構造は、半導体集積回路において、MOL工程後のBEOL(Back End of Line)工程にて形成されるメタル層の配線構造に適用可能である。
【0028】
(2.配線構造の形成方法)
本発明の一実施形態に係る配線構造の形成過程の一例を、図1Bを参照しながら説明する。
(1)まず、絶縁層11に配線溝12を形成する。絶縁層11は一実施形態において、配線間絶縁膜を構成し得る。絶縁層11は別の一実施形態において、層間絶縁膜を構成し得る。絶縁層11は化学気相成長法(CVD)の他、スピンコート法及びスプレー法等の塗布法により形成可能である。配線溝12の形成は公知のリソグラフィー及びエッチング技術により実施することができる。配線溝12には、コンタクトホール及びビヤホールを更に設けてもよい。本明細書において、配線溝には、コンタクトホール及びビヤホールの概念が含まれるものとする。
(2)次いで、配線溝12の内面に拡散バリア層13を成膜する。拡散バリア層13は、例えばスパッタリング法、CVD法、又は原子層堆積法(ALD)により形成することができる。
(3)次いで、拡散バリア層13を形成した後の配線溝12を導電性配線15で埋め込む。導電性配線15の埋め込みは、例えば、バリア層上へのシード層の成膜工程と、その後の電解めっき工程とを含む。
【実施例
【0029】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0030】
(1.Co-Zr合金膜の結晶構造と組成評価)
CoターゲットとZrターゲットを同一チャンバー内で同時にスパッタリングすることのできるマグネトロンスパッタリング装置に、p型シリコンウェハーを装入し、SiO2膜上に100nmの厚みのCo-Zr合金膜をコスパッタ法により真空条件(真空度:0.6Pa、Ar:15sccm)で形成した。上記試験において、Coターゲット及びZrターゲットを装着したスパッタカソードの投入電力を変化させることでCo-Zr合金膜の組成が異なる種々の積層体を得た。得られた平面形体を有するCo-Zr合金膜の組成は、XRFを用いて膜表面にX線を照射することにより測定した。
次いで、得られた積層体から集束イオンビーム装置(FIB)で薄膜化した断面材料をマイクロサンプリングで取り出し、積層体のうち合金膜の部分からSTEM(JEOL社製、型式JEM-2100F)で回折パターンを得た。合金膜が完全なアモルファス構造をとる場合、回折パターンはハローリングを示す。一方、合金膜に微小結晶が含まれる場合には、回折パターンに斑点が現れる。そこで、合金膜が完全なハローを呈する場合にA、一部回折斑点が見られる場合にB、斑点のみが見られる場合をCとして、種々の組成の合金膜の結晶構造評価を実施した。結果を表1に示す。さらに、STEM-EDS(JEOL社製、型式6700F)を用いて積層体の厚み方向に沿った組成分析を行った。その結果、合金膜にはCoとZrが存在することを確認した。
【0031】
(2.Co-Zr拡散バリア層と絶縁層との密着性評価)
CoターゲットとZrターゲットを同一チャンバー内で同時にスパッタリングすることのできるマグネトロンスパッタリング装置に、20nmの厚みのSiO2膜付きシリコンウェハーを装入し、SiO2膜上に150nmの厚みのCo-Zr合金膜をコスパッタ法により真空条件(真空度:0.6Pa、Ar:15sccm)で形成した。得られた積層体の積層構造を図3に模式的に示す。上記試験において、Co及びZrターゲットを装着したスパッタカソードの投入電力を変化させることでCo-Zr合金膜の組成が異なる種々の積層体を得た。
【0032】
上記の試験で得られた積層体におけるCo-Zr合金膜(Co-Zr拡散バリア層)とSiO2膜の間の密着性を、ASTM D3359-97(テープ試験)に準拠して評価した。具体的には、各試験例のCo-Zr合金膜に11本×11本の切り込みを1mmの間隔で碁盤目状に入れた後、粘着力が4N/cmのセロハン粘着テープを貼付し、テープを剥離したときのCo-Zr合金膜の剥離箇所の状態をASTM D3359-97に従い、0~5段階で評価した。密着性が高いほど大きな評価数値となる。テープ試験は、室温(25℃)の他、260℃×10分の熱処理を行って室温に冷却した後、及び、400℃×10分の熱処理を行って室温に冷却した後にも、別途行った。これらの結果から、いずれの温度条件の場合もASTM D3359-97における評価が5となる場合をA、いずれかの温度条件で評価が3~4になる場合をB、いずれか温度条件で評価が2以下となる場合をCとして種々の組成のCo-Zr合金膜に対して評価した。結果を表1に示す。
【0033】
(3.Cu薄膜とCo-Zr拡散バリア層との密着性評価)
CoターゲットとZrターゲットを同一チャンバー内で同時にスパッタリングすることのできるマグネトロンスパッタリング装置に、20nmの厚みのSiO2膜付きシリコンウェハーを装入し、SiO2膜上に3nmの厚みのCo-Zr合金膜をコスパッタ法により形成した。それぞれのスパッタカソードの投入電力を変化させることでCo-Zr合金膜の組成を変化した。さらにCo-Zr合金膜の上に、厚さが150nmのCu薄膜を形成した。SiO2膜、Co-Zr合金膜、及びCu薄膜の厚みはそれぞれ、成膜時間と膜厚の関係を測定することによって予め決定した成膜速度に基づいて計算した。成膜速度を計測するに当たっては、触針式膜厚計(ブルカー社製、型式DektakXT)を使用した。
【0034】
上記の試験で得られた積層体におけるCu薄膜とCo-Zr合金膜との間の密着性を、ASTM D3359-97(テープ試験)に準拠して評価した。テープ試験は、室温(25℃)の他、260℃×10分の熱処理を行って室温に冷却した後、及び、400℃×10分の熱処理を行って室温に冷却した後にも、別途行った。これらの結果から、いずれの温度条件の場合もASTM D3359-97における評価が5となる場合をA、いずれかの温度条件で評価が3~4になる場合をB、いずれかの温度条件で評価が2以下となる場合をCとして種々の組成に対して評価した。結果を表1に示す。
【0035】
(4.Co-Zr合金膜の拡散バリア性評価)
評価に用いたサンプルは次のようにして作製した。p型シリコンウェハー上に厚さが20nmのSiO2層を形成し、その上にレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィーによってレジスト膜に電極形状の穴を形成した。この上に、厚さが3nmのCo-Zr合金膜、さらに厚さが150nmのCu膜を形成した。その後、アセトンでレジスト膜の剥離を行った。このとき、レジスト膜の穴の部分に形成されたCu/Co-Zrはウェハー上に残り、電極として機能する。さらにウェハー裏面にスパッタリングにより400nmのアルミニウム電極を作製した。得られた積層体をAr+5体積%H2の雰囲気中で300℃×30分の条件でプレアニールを行った後、CV(Capacitance-Voltage)測定を行い、フラットバンド電圧(VFB)を測定した。このVFBを初期状態の値とした。その後、Ar+5体積%H2の雰囲気中で250℃に積層体を加熱しながら、Cuを正極、Alを負極として両電極間に3.0MV/cmの電場を45分間印加するBTS(Bias Temperature Stress)を与えた。その後、CV測定を行い、VFBを測定した。BTS試験後のVFB(BTS)と初期状態のVFB(initial)の差を求め、VFB(BTS)-VFB(initial)≧-0.3Vを満たす場合に、拡散バリア機能を有すると評価した。基準を満たす場合にY、満たさない場合にNとした。結果を表1に示す。
【0036】
拡散バリア層を、Co-Zr合金に代えて、Co-Al合金、Co-Nb合金、Ru-Zr合金、Mo-Y合金、及びMo-B合金として、上記と同様の構造評価、密着性評価、及びバリア性評価を行った。結果を表2~6にそれぞれ示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
表1~6に示す結果から、次のように総合的な評価を◎(優良)、○(良好)、×(不可)の3段階で下した。まず、結晶構造の評価でB以上の評価を得たものを総合評価で○以上とし、Cの評価を得たものを総合評価で×とした。次に、バリア機能の基準を満たし、かつ結晶構造及び密着性の評価がいずれもAの場合を◎とした。総合評価の結果についても表1~6に合わせて示す。
【0044】
上記の総合評価の結果、以下の点が確認された。
Co-Zr合金では、0.1≦Zr/(Co+Zr)≦0.8を満たすことが好ましく、0.15≦Zr/(Co+Zr)≦0.5を満たすことがより好ましい。
Co-Al合金では、0.4≦Al/(Co+Al)≦0.9を満たすことが好ましく、0.5≦Al/(Co+Al)≦0.8を満たすことがより好ましい。
Co-Nb合金では、0.4≦Nb/(Co+Nb)≦0.9を満たすことが好ましく、0.5≦Nb/(Co+Nb)≦0.8を満たすことがより好ましい。
Ru-Zr合金では、0.1≦Zr/(Ru+Zr)≦0.8を満たすことが好ましく、0.3≦Zr/(Ru+Zr)≦0.6を満たすことがより好ましい。
Mo-Y合金では、0.5≦Y/(Mo+Y)≦0.9を満たすことが好ましく、0.6≦Y/(Mo+Y)≦0.8を満たすことがより好ましい。
Mo-B合金では、0.2≦B/(Mo+B)≦0.8を満たすことが好ましく、0.3≦B/(Mo+B)≦0.7を満たすことがより好ましい。
Mo-Y-B合金では、0.5≦(Y+B)/(Mo+Y+B)≦0.9を満たすことが好ましく、0.6≦(Y+B)/(Mo+Y+B)≦0.8を満たすことがより好ましい。
【符号の説明】
【0045】
10 配線構造
11 絶縁層
12 配線溝
13 拡散バリア層
15 導電性配線
20 配線構造
21 絶縁層
22 配線溝
23 拡散バリア層
24 ライナー層
25 銅配線
30 積層体
31 p型シリコンウェハー
32 SiO2
33 Co-Zr合金膜
図1A
図1B
図2
図3