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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】坩堝炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 14/06 20060101AFI20240723BHJP
   F27B 14/08 20060101ALI20240723BHJP
   F27D 11/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F27B14/06
F27B14/08
F27D11/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023006630
(22)【出願日】2023-01-19
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】592134871
【氏名又は名称】日本坩堝株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】城野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】大田 峰彦
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-008232(JP,A)
【文献】特開平05-221623(JP,A)
【文献】特開2010-038376(JP,A)
【文献】特開2006-024453(JP,A)
【文献】特開2006-047232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 11/00-15/20
F27D 7/00-15/02
H05B 3/02- 3/18
H05B 3/40- 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する坩堝と、
前記坩堝を支持し、前記坩堝に電気的に接続された坩堝台と、
前記坩堝の外側面を被覆する断熱材と、
前記坩堝の上部に電気的に接続された上部電極部と、
前記坩堝台に電気的に接続された下部電極部と、
前記坩堝台と前記下部電極部との接続部分を冷却する下部冷却部と、
を備え
前記下部冷却部は、前記断熱材が前記接続部分を覆っていない部分を含む、
坩堝炉。
【請求項2】
前記断熱材を収容する枠体を更に備え、
前記枠体は、前記断熱材を下から支える底板を有し、
前記底板は、前記接続部分よりも上方に位置している、
請求項1に記載の坩堝炉。
【請求項3】
前記枠体は、前記断熱材の外周部を囲む外側板を有し、
前記下部冷却部は、
前記外側板に形成された空気取り込み口と、
前記底板の下方の空間で構成され、前記空気取り込み口に通じ、かつ前記接続部分が配置された空気流路と、
を有する、
請求項2に記載の坩堝炉。
【請求項4】
通電により発熱する坩堝と、
前記坩堝を支持し、前記坩堝に電気的に接続された坩堝台と、
前記坩堝の外側面を被覆する断熱材と、
前記坩堝の上部に電気的に接続された上部電極部と、
前記坩堝台に電気的に接続された下部電極部と、
前記坩堝台と前記下部電極部との接続部分を冷却する下部冷却部と、
を備え、
前記下部冷却部は、
前記下部電極部と前記坩堝台との接続部分に設けられた流体流路と、
前記流体流路に気体を送る送風装置と、
を有する、
坩堝炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坩堝炉に関し、より詳細には、通電により発熱する坩堝を有する坩堝炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の坩堝炉が記載されている。特許文献1記載の坩堝炉は、通電により発熱する坩堝と、坩堝を支持する坩堝台と、坩堝台に電気接続された電極(下部電極)と、坩堝の上部に電気接続された電極(上部電極)と、を備える。坩堝は、下部電極と上部電極との間に電圧を印加することで発熱し、これにより、坩堝内の金属を溶融したり、溶融した金属を保持したりすることができる。
【0003】
温度低下を抑制するために、坩堝は断熱材によって被覆されている。具体的には、断熱材は、坩堝、坩堝台及び下部電極をまとめて覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】意匠登録第1660739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1記載の坩堝炉では、断熱材によって坩堝、坩堝台及び下部電極がまとめて覆われているため、坩堝の熱によって坩堝台と下部電極との接続部分が高温になる可能性がある。坩堝台と下部電極との接続部分が高温になると、下部電極における坩堝台との接点部分が変形したり、劣化したりすることがあり、この場合、通電不良が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、坩堝台に対する下部電極部の接点部分の変形を抑制することができる坩堝炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の坩堝炉は、通電により発熱する坩堝と、前記坩堝を支持し、前記坩堝に電気的に接続された坩堝台と、前記坩堝の外側面を被覆する断熱材と、前記坩堝の上部に電気的に接続された上部電極部と、前記坩堝台に電気的に接続された下部電極部と、前記坩堝台と前記下部電極部との接続部分を冷却する下部冷却部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る上記態様の坩堝炉は、坩堝の熱によって起こり得る坩堝台に対する下部電極部の接点部分の温度上昇を効果的に抑制することができ、下部電極部の変形を抑制することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る坩堝炉の鉛直面での断面図である。
図2図2は、同上の坩堝炉の分解斜視図である。
図3図3は、図1におけるA部分拡大図である。
図4図4は、同上の坩堝炉における上部電極部の周辺の拡大斜視図である。
図5図5は、変形例に係る坩堝炉における上部冷却部の変形例を示す平面図である。
図6図6は、実施形態に係る坩堝炉において、流体流路及び第1の電極を下方から見た底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
(1)全体
以下、本実施形態に係る坩堝炉1について、添付図面を参照して説明する。坩堝炉1は、金属を溶融させると共に、溶融した金属(以下、「溶融金属」という場合がある)を保持する炉である。本実施形態に係る坩堝炉1は、坩堝2に対して電圧を印加することにより、坩堝2を発熱させ、これによって、金属を溶解・保持する電気炉である。坩堝炉1によって溶融される金属としては、特に制限はなく、例えばアルミニウム、銅、銅合金、亜鉛等が挙げられる。坩堝炉1は、図1に示すように、坩堝2と、坩堝台3と、枠体4と、電極部5と、断熱材6と、冷却部7と、を備える。
【0011】
以下では、説明の便宜上、水平面をなす設置面G1上に置かれた状態の坩堝炉1に基づいて説明する。また、水平面に直交する方向を「上下方向」として定義する。ただし、これら方向の定義は、本発明に係る坩堝炉1の使用態様を特定するものではない。
【0012】
(2)坩堝
坩堝2は、アルミニウム等の金属を収容し得る容器である。坩堝2は、導電性材料で構成されており、通電により発熱する。坩堝2を構成する導電性材料としては、特に制限されず、例えばカーボン(黒鉛、カーボンブラック等)、炭化珪素、ムライト等が挙げられ、また、これらを含む混合材料が挙げられるが、坩堝2は、黒鉛及び炭化珪素を主成分とした黒鉛炭化珪素質の坩堝を用いることが好ましい。
【0013】
坩堝2の電気比抵抗値としては、特に制限されないが、例えば5×10-3[Ω・cm]以上1000×10-3[Ω・cm]以下、好ましくは10×10-3[Ω・cm]以上500×10-3[Ω・cm]以下、より好ましくは100×10-3[Ω・cm]以上300×10-3[Ω・cm]以下、さらに好ましくは150×10-3[Ω・cm]以上250×10-3[Ω・cm]以下、最も好ましくは200×10-3[Ω・cm]前後に設定される。
【0014】
坩堝2の大きさとしては、特に制限されないが、例えば100kg以上600kg以下のアルミニウムを収容できる容量を有する大きさに坩堝2が形成されることが好ましい。
【0015】
坩堝2の厚みとしては、特に制限されず、坩堝2の大きさに応じて適宜設定されるが、例えば5mm以上100mm以下に設定される。
【0016】
坩堝2は、上下方向で厚みが均一及び材質が同じであってもよいし、上下方向で厚みや材質が変わっていてもよい。例えば、坩堝2は、つば部22側の上側部分の厚みや材質を坩堝本体21の底側の下側部分の厚みや材質と変えることで(厚みであれば上側部分の厚みを下側部分の厚みよりも大きくすることで)、上側部分の電気比抵抗を下側部分の電気比抵抗よりも小さくし、上側部分を通電により発熱しにくくしてもよい。この場合、坩堝2の下側部分(坩堝2に収容されるアルミニウム等の金属が主に接する部分)の電気比抵抗が上述した数値範囲に設定される。坩堝2の上側部分の高さは、特に制限されないが、例えば坩堝2全体の高さに対する比で0.05以上0.3以下であることが好ましい。
【0017】
坩堝2は、図1に示すように、坩堝本体21と、つば部22と、を備える。坩堝本体21とつば部22とは一体に成形されている。
【0018】
坩堝本体21は、坩堝2の主体を構成する部分である。坩堝本体21は、上面に開口面を有する容器状に形成されている。また、坩堝本体21は、平面視略円形状に形成されている。坩堝本体21の内面は、下方向に進むに従って小径となるように、すり鉢状に形成されている。ただし、本発明では、坩堝本体21の形状には特に制限はなく、例えば、テーパ状、円筒状、角筒状等であってもよい。
【0019】
つば部22は、坩堝本体21の上端部を補強する。つば部22は、坩堝本体21の上端部において、外側方に突き出ている。つば部22は、坩堝本体21の上端部の開口周縁に沿った全長にわたって形成されている。ここでいう「外側方」とは、坩堝本体21の径方向において、坩堝本体21の周壁に対して、外側(中央とは反対側)のほうを意味する。
【0020】
つば部22は、先端部221と、基端部222とを備える。基端部222は、坩堝本体21に接続された部分であり、坩堝2の径方向の外側に進むに従って厚さ寸法が薄くなるように形成されている。先端部221は、基端部222の径方向の外側の端部に設けられた部分である。先端部221は、径方向に沿って同一の厚さ寸法に形成されている。ただし、本発明に係るつば部22では、基端部222と先端部221とが同一の厚さ寸法で形成されてもよい(先端部221と基端部222とが明確な境界がなく、つながっていてもよい)。つば部22は、下面のうちの基端部222に対応する部分が水平面に対して傾斜しているが、上面は全面にわたって平面状に形成されている。
【0021】
坩堝本体21につば部22が設けられると、坩堝本体21の上端部の強度が高くなる反面、つば部22によって坩堝2の表面積が増大し、放熱量が増える。この結果、坩堝2内の溶融金属の温度が低下し得る。そこで、坩堝2内の溶融金属の温度の低下を防ぐために、つば部22に対して、断熱体(図示せず)で覆うことが好ましい。断熱体としては、特に制限はなく、例えば、ブランケット、シリカボード、エアロゲル、被覆断熱材等が挙げられる。
【0022】
(3)坩堝台
坩堝台3は、坩堝2を支持する。坩堝台3は、図2に示すように、直方体状に形成されているが、例えば、円柱状、多角柱状、円錐台状等、種々の形状を採り得る。坩堝台3は、耐熱性を有する材料で形成されている。坩堝台3の材料としては、例えば、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、炭化珪素(SiC)、黒鉛含有材料等が挙げられる。
【0023】
坩堝台3は、図3に示すように、載置面31と、電極接続部32と、を有する。載置面31は、坩堝2が載る面であり、坩堝台3の上面に形成されている。載置面31は、坩堝2に対して、直接的に電気接続されるように構成されている。載置面31は、本実施形態では、平面であるが、本発明では形状に特に制限はなく、坩堝2の底面に沿うように球面状に湾曲してもよいし、複数の凸部の突出面で構成されてもよいし、坩堝2の底面を凸状にし、凸状の底面に合わせて凹状に形成されてもよい。
【0024】
本明細書でいう「直接的」に電気接続されるとは、一方の接点と他方の接点とが直接接触することのほか、一方の接点と他方の接点とを、間に導電性グリスや導電性パッキン、導電性シート等の導通部材を介在させた状態で、電気的に接続することも含むが、他の部品等の電気抵抗となり得る部材を介在させることは含まない。また、一方の接点と他方の接点とが電気的に接続されることを「電気接続」という場合がある。
【0025】
電極接続部32は、坩堝台3において、電極部5のうちの下部電極部55が電気的に接続される部分である。本実施形態に係る電極接続部32は、坩堝台3の下面である。ただし、本発明に係る電極接続部32は、坩堝台3の側面であってもよいし、坩堝台3の側面や底面に形成された、下部電極部55を差し込むような穴で構成されてもよい。また、坩堝台3から突き出すようにして突片を形成し、当該突片を電極接続部32としてもよいし、下部電極部55を接続可能なコネクタで構成されてもよい。
【0026】
(4)電極部
電極部5は、坩堝2に対して、電源装置から供給された電流を通す部品である。本実施形態に係る坩堝炉1は、図1に示すように、電極部5として、上述の下部電極部55と、複数の上部電極部51と、を備える。
【0027】
(4.1)下部電極部
下部電極部55は、坩堝2の下部に対し、電気的に接続された電極部5である。下部電極部55は、本実施形態では、坩堝台3の電極接続部32に対して、直接的に接続されており、坩堝台3を介して、坩堝2の下部に電気接続されている。本実施形態では、下部電極部55は、坩堝2の底面に対して、電流を印加するが、本発明では、底面からずれた位置(例えば、裾部)に対して電流を印加してもよい。
【0028】
下部電極部55は、図3に示すように、水平面に沿って延びる第1の電極551と、第1の電極551から立ち上げられた第2の電極552と、を備える。第1の電極551は、電極接続部32に対して直接的に電気接続される接点を有する電極である。第1の電極551は、一方向に直線状に延びた長手方向を有するブスバーで構成されている。第1の電極551は、電極接続部32に接続される第一接点5511と、第2の電極552に接続される第二接点5512と、を有する。第1の電極551は、水平面に沿って配置されており、第一接点5511を有する端部が坩堝2の下方に配置され、かつ他方の端部(第二接点5512)が枠体4から突き出ている。
【0029】
第2の電極552は、第1の電極551の第二接点5512に接続されている。第2の電極552は、上下方向に沿って延びたブスバーで構成されている。第2の電極552の上端部は、図示しない電極に接続される。なお、第2の電極552の形状は、坩堝炉1の環境に応じて適宜変更される。例えば、第1の電極551に対して平行に延びてもよいし、水平面に対して傾斜してもよい。また、第1の電極551及び第2の電極552は、ブスバーで構成されていなくてもよく、例えば、ワイヤハーネスで構成されてもよい。
【0030】
(4.2)上部電極部
上部電極部51は、図1に示すように、坩堝2における下部電極部55に接続された部分よりも上方の部分に対し、電気的に接続された電極部5である。上部電極部51の接続部分としては、溶融金属の液面以上の位置であればよく、ここでは、つば部22に対して接続されている。各上部電極部51は、図4に示すように、接続具本体52と、押さえ部53と、複数の弾性体54と、を備える。
【0031】
接続具本体52は、上部電極部51の主体を構成する部品である。接続具本体52は、断面略C字状に形成された嵌め込み部521と、電気ケーブルが電気接続される端子部525と、を備える。嵌め込み部521と端子部525とは一体に形成されている。
【0032】
嵌め込み部521は、つば部22の上面に対向する上板部522と、つば部22の先端部221の下面に対向する下板部523と、上板部522と下板部523とをつなぐ縦板部524と、を備える。端子部525は、本実施形態では、上板部522に一体につながっているが、上板部522、下板部523及び縦板部524の少なくとも一つにつながっていればよい。
【0033】
上板部522は、つば部22の上面に対して直接的に接続される。ここでは、上板部522は、つば部22の上面に対して、導電性パッキンP1を介して接続されている。導電性パッキンP1としては、例えば、カーボンパッキン、耐火ゴムパッキン、難燃性シリコーンゴムパッキン、各種金属パッキン等が挙げられる。
【0034】
下板部523は、つば部22の先端部221の下面との間に隙間をおいて位置している。下板部523は、縦板部524によって、上板部522に対して固定されている。下板部523には、上下方向に移動可能な押さえ部53が取り付けられている。
【0035】
押さえ部53は、つば部22の先端部221の下面に対して直接的に押し当たる部分を有する。押さえ部53は、上下方向に延びた一対のガイドを有している。各ガイドには弾性体54(ここでは、ねじりコイルばね)が取り付けられており、弾性体54によって、押さえ部53は、つば部22に対して常時押し当てられる。
【0036】
各上部電極部51は、平面視において、つば部22に対して部分的に取り付けられる。複数(ここでは三つ)の上部電極部51は、図2に示すように、中心とつば部22とを結ぶ直線同士のなす角度(中心角)が均等となるように割り当てられる(ここでは、中心角が120°)。
【0037】
ここで、上述した通り、つば部22による放熱を防ぐために、つば部22は断熱体によって被覆されている。断熱体によって被覆されることで、つば部22は高温になるため、つば部22に接触する導電性パッキンP1が酸化によって劣化してしまう可能性がある。なお、導電性パッキンP1が劣化すると、つば部22と上部電極部51との間にアーク放電が生じて、周辺部が溶ける等の不具合が生じ得る。
【0038】
そこで、つば部22の温度を保ちつつ、導電性パッキンP1の劣化を抑制するために、本実施形態に係る坩堝炉1では、図4に示すように、上部冷却部72を備える。上部冷却部72は、導電性パッキンP1に接触する上部電極部51を冷却することによって、導電性パッキンP1が高温になるのを抑制することができるが、上板部522はつば部22に非接触であるため、つば部22の温度低下を抑制できる。すなわち、つば部22を高温に保ちつつも、導電性パッキンP1が高温になるのを抑制することができる。上部冷却部72の詳細については、「(7.2)上部冷却部」で詳述する。
【0039】
(5)枠体
枠体4は、図1に示すように、坩堝2と、断熱材6と、を収容する枠である。枠体4は、本実施形態では、金属板により構成されたケースで構成されている。ただし、枠体4としては、金属板に限らず、例えば、金属骨組み、PC(Precast Concrete)、セラミックス等で構成されてもよい。枠体4は、図2に示すように、内枠材41と、外枠材42と、を備える。
【0040】
(5.1)内枠材
内枠材41は、内部に坩堝2を収容し、かつ坩堝2との間に断熱材6(以下「内側断熱材61」という場合がある)を充填する。内枠材41は、側壁板411と底板412とを有する有底筒状に形成されている。側壁板411は、図1に示すように、上下方向に延びており、外枠材42の下板422上に敷かれた断熱材6(以下、「下側断熱材63」という)の上面から、つば部22まで延びている。ここでいう「つば部22まで延びる」とは、側壁板411の上端が、上下方向において、つば部22の下端から上端までの範囲のいずれかに位置することを意味する。ただし、側壁板411の上端は、坩堝2の上端よりも上方に位置していてもよいし、溶融金属の液面高さ以上であれば、つば部22の下端よりも下方に位置していてもよい。
【0041】
底板412は、内側断熱材61を下から支える。底板412は、水平面に沿っている。底板412は、側壁板411の下端よりも上方に位置しており、側壁板411の下端を通る仮想平面(ここでは、下側断熱材63の上面)との間に隙間が形成される。つまり、内枠材41は、いわゆる上げ底状に形成されている。
【0042】
底板412には、図2に示すように、坩堝台3を通す開口部413が形成されている。開口部413に坩堝台3が通された状態で、図3に示すように、底板412は、電極接続部32よりも上方に位置している。ここでは、底板412は、坩堝台3の上下方向の中央よりも上方に位置している。これによって、内側断熱材61を電極接続部32と下部電極部55との接続部分よりも上方に位置させることができ、電極接続部32と下部電極部55との接続部分が、断熱材6によって被覆されないように構成されている。なお、本実施形態では、底板412は、坩堝台3の上面よりも下方に位置している。
【0043】
底板412における開口部413の周囲には、リブ414が設けられている。リブ414は、平面視において、開口部413を囲む。リブ414によって、内側断熱材61を下から支える底板412が補強されている。なお、リブ414は、底板412の厚さ寸法や内側断熱材61の重量に応じて、適宜設けられていればよく、本発明では、リブ414はなくてもよい。
【0044】
(5.2)外枠材
外枠材42は、坩堝炉1の外殻を構成する部材である。外枠材42は、内部に内枠材41を収容し、かつ内枠材41との間に断熱材6(以下「外側断熱材62」という場合がある)を充填する。外枠材42は、外側板421と下板422とを有する有底筒状に形成されている。
【0045】
外側板421は、図1に示すように、上下方向に延びており、坩堝炉1の設置面G1から、坩堝2の上端を超える位置まで延びている。外側板421は、内枠材41の側壁板411に対して離れている。外側板421は、上述したように、内枠材41との間に外側断熱材62を充填するように構成されているが、全ての断熱材6(外側断熱材62、内側断熱材61及び下側断熱材63)を囲むように構成されている。
【0046】
下板422は、坩堝2、坩堝台3及び全ての断熱材6を下から支えている。下板422は、水平面に沿っており、下板422の上面には、下側断熱材63が敷かれている。底板412は、側壁板411の下端よりも上方に位置しており、設置面G1との間に隙間が形成される。つまり、外枠材42は、いわゆる上げ底状に形成されている。なお、本実施形態では、下板422と設置面G1との間に隙間が介在しているが、下板422が設置面G1に載っていてもよい。つまり、外枠材42は上げ底状でなくてもよい。
【0047】
なお、外枠材42には、坩堝2の開口に対応して上開口が形成された上部材423で坩堝2を覆っている。この上開口は、図2に示すような蓋部材43で開閉可能に閉じられる。
【0048】
(6)断熱材
断熱材6は、図1に示すように、坩堝2の外側面を被覆する。本実施形態に係る坩堝炉1は、上述したように、断熱材6として、内側断熱材61と、外側断熱材62と、下側断熱材63と、を備える。
【0049】
内側断熱材61は、坩堝2と内枠材41との間に配置される断熱材である。内側断熱材61は、坩堝2のすぐ側方を被覆する。本実施形態に係る内側断熱材61には、耐火性を有する耐火断熱材が用いられる。内側断熱材61は、粉状に形成されており、坩堝2と内枠材41と坩堝台3とで囲まれた空間に、隙間なく充填される。内側断熱材61の材料としては、例えば、セラミックス、石英、アルミナ、マイクロシリカ(登録商標)、セラミック繊維等が挙げられる。セラミックスとしては、例えば、シリカ、マグネシア、カルシア等が挙げられる。
【0050】
外側断熱材62は、外枠材42と内枠材41との間に配置される断熱材である。外側断熱材62は、坩堝2の側方(ここでは、内側断熱材61の外側)を被覆する。外側断熱材62は、板状に形成されており、外枠材42の外側板421の内面又は/及び内枠材41の側壁板411に対して、固定されている。外側断熱材62の材料としては、例えば、例えば、セラミックス、金属、白色磁器、白金、石英、アルミナ、樹脂発泡体、マイクロシリカ、シリカエロゲル、セラミック繊維、シリカボード等が挙げられる。
【0051】
下側断熱材63は、外枠材42の下板422上において、下板422に沿って配置される断熱材である。下側断熱材63は、坩堝2の下方を被覆する。下側断熱材63は、外側断熱材62と同様、板状に形成されており、外側断熱材62と同様の材料が用いられる。
【0052】
このように、本実施形態に係る坩堝炉1では、断熱材6によって、坩堝2の側方及び下方を被覆しているため、坩堝2の温度が低下しにくい構造となっている。一方で、電極部5が高温になり、電極部5に変形や劣化が生じると、電極部5の接点に通電不良が生じやすく、アーク放電が生じて周辺部が溶ける等の不具合が生じ得る。そこで、本実施形態に係る坩堝炉1は、電極部5の接点近傍を冷却する冷却部7を備える。
【0053】
(7)冷却部
冷却部7は、電極部5における少なくとも接点近傍を冷却する機能を有する。冷却部7としては、電極部5の接点近傍を冷却することができれば、部品、機構又は構造のいずれであってもよい。冷却部7は、下部冷却部71(図3)と、上部冷却部72(図4)と、を備える。
【0054】
(7.1)下部冷却部
下部冷却部71は、下部電極部55の接点近傍を冷却することができる機能を有するが、具体的には、図3に示すように、下部電極部55と電極接続部32との接続部分を冷却する。下部電極部55と電極接続部32との接続部分は、仮に、坩堝2と一緒に断熱材6で被覆されていると、およそ800℃~900℃まで上昇する可能性があり、このまま使用を続けると、下部電極部55が変形する可能性がある。これに対し、本実施形態に係る坩堝炉1は、下部冷却部71を備えることで、下部電極部55と電極接続部32との接続部分を冷却することができ、下部電極部55の接点近傍の温度上昇を抑制することができる。
【0055】
本実施形態に係る下部冷却部71は、断熱材6で電極接続部32と下部電極部55との接続部分を被覆しないことを実現する構造(非被覆構造)と、空冷によって電極接続部32と下部電極部55との接続部分を放熱することを実現する構造(通気構造)と、を備えている。
【0056】
非被覆構造は、内枠材41の底板412が、電極接続部32と下部電極部55との接続部分よりも上方に位置することで、当該接続部分を被覆しない構造である。非被覆構造によれば、坩堝台3が温度上昇しても電極接続部32と下部電極部55との接続部分の熱を、底板412よりも下方の空間に放熱することができるため、下部電極部55の接点近傍の温度上昇を抑制することができる。
【0057】
下部冷却部71は、通気構造として、複数の空気取り込み口711と、空気流路712と、を備える。空気取り込み口711は外側板421に形成されており、内枠材41の底板412よりも下方の位置で貫通している。各空気取り込み口711は、上下方向に沿った長手方向を有するスリット状に形成されている。ただし、本発明では、空気取り込み口711は、スリットに限らず、例えば、丸穴、矩形穴、長穴、外枠材42を支持する脚のみ残して外周の略全長に連続する開口等で構成されてもよい。
【0058】
空気流路712は、空気取り込み口711に通じる空間であり、かつ電極接続部32と下部電極部55との接続部分が配置された空間である。空気流路712は、内枠材41の底板412よりも下方の空間で構成されている。側壁板411における底板412よりも下方の位置に複数の貫通穴713が形成されており、リブ414にも複数の貫通穴713が形成されている。空気流路712は、空気取り込み口711から、これら貫通穴713を通過し、電極接続部32に通じる。
【0059】
空気流路712内に、電極接続部32と下部電極部55との接続部分が配置されていることにより、空気取り込み口711から取り込まれた空気は、空気流路712を流れ、空気流路712内で電極接続部32と熱交換を行う。熱交換によって温度上昇した空気は、別の空気取り込み口711(この場合、空気排出口ともいう)から外枠材42の外部に放出される。このとき、電極接続部32と下部電極部55との接続部分は、空気との熱交換によって、温度上昇が抑制される。また、下部電極部55も、空気流路712内を通って外枠材42の外に引き出されるため、温度上昇が抑制される。
【0060】
また、下部冷却部71は、電極接続部32と下部電極部55との接続部分を下方から冷却する流体流路73を有することが好ましい。流体流路73には、冷却用の流体が通ることで、第1の電極551のうちの坩堝台3との接点の領域を直接的に冷却できる。なお、流体流路73は、電極接続部32と下部電極部55との接続部分を側方から冷却してもよいし、上方から冷却してもよい。
【0061】
ここで、図6には、流体流路73及び第1の電極551を下方から見た底面図である。図6に示すように、流体流路73は、ケース74内に形成されている。流体流路73は、底面視九十九折り状に形成されている。ケース74と第1の電極551とは、本実施形態では、一体に形成されている。流体流路73の上方は開口しており、流体流路73の内部は第1の電極551に面している。ケース74内には、筒状の流入口部731と、筒状の流出口部732とが設けられている。流入口部731は、流体流路73の入口に通じている。流出口部732は流体流路73の出口に通じている。流入口部731と流出口部732は、図3に示すように、外枠材42から突き出ている。
【0062】
下部冷却部71は、流体流路73に流体を送る流体移送装置を備えることが好ましい。流体移送装置が送る流体は、気体であってもよいし、液体であってもよい。流体移送装置としては、例えば、ブロワ、ファン、ポンプ等が挙げられる。流体移送装置によって、流入口部731から流体が流入すると、第1の電極551に対して、直接、流体が接触し、熱交換した上で、熱交換した流体が流出口部732から出る。このようにすることで、電極接続部32と下部電極部55との接続部分を冷却でき、当該接続部分の温度上昇をより抑制できる。
【0063】
このように、本実施形態に係る下部冷却部71は、非被覆構造と、通気構造との両方で、電極接続部32と下部電極部55との接続部分を冷却することができるため、当該接続部分の温度上昇を効果的に抑制することができる。しかも、非被覆構造と通気構造に加えて、電極接続部32と下部電極部55との接続部分を、強制的に流れる流体によって冷却する流体流路73を有するため、当該接続部分の温度上昇を、より一層抑制できる。本実施形態では、下部電極部55と電極接続部32との接続部分の温度を、例えば、500℃程度に抑えることができる。
【0064】
本実施形態に係る下部冷却部71では、空気取り込み口711からの空気の取り込みは、電極接続部32の温度上昇等で生じる自然対流によって実現されるが、例えば、ファン、コンプレッサ等の送風装置で強制的に空気を取り込んでもよい。また、空気取り込み口711に対して、送風装置からの送風が通るパイプが通され、パイプから直接、空気を電極接続部32に吹きかけてもよい。
【0065】
(7.2)上部冷却部
上部冷却部72は、図4に示すように、上部電極部51を冷却する。本実施形態に係る坩堝炉1では、上述した通り、つば部22による放熱を防ぐために、つば部22は断熱体によって被覆されている。このため、つば部22は600℃~700℃程度の高温を帯びるが、つば部22に接触する導電性パッキンP1が酸化によって劣化してしまう可能性がある。これに対し、本実施形態に係る坩堝炉1は、上部冷却部72を備えることで、導電性パッキンP1に対向する上部電極部51を冷却する。これにより、導電性パッキンP1の温度上昇を抑制することができ、導電性パッキンP1の酸化を抑制することができる。
【0066】
本実施形態に係る上部冷却部72は、図4に示すように、導電性パッキンP1を上から押し付ける上板部522の上面に接触する冷却パイプ721を備える。冷却パイプ721には、流体が通るように構成されており、冷却パイプ721によって上板部522を冷却することができる。冷却パイプ721を通る流体としては、液体又は気体のいずれであってもよいが、冷却パイプ721が破損した際のリスクを考慮すれば、気体であることが好ましい。ここでは、上部冷却部72は、上板部522を空冷によって冷却するように構成されている。
【0067】
冷却パイプ721は、上板部522の上面に近接するように配置されているが、近接のうちでも上板部522の上面に接触することがより好ましい。冷却パイプ721は、上板部522との熱交換を十分に行うことができるように、蛇行するように屈曲している。冷却パイプ721を通る空気は、例えば、コンプレッサ、ファン等によって送られる。
【0068】
このように、本実施形態に係る上部冷却部72は、上部電極部51を冷却することで、導電性パッキンP1の温度上昇を抑制することができるため、導電性パッキンP1が酸化するのを効果的に抑制することができる。これによって、導電性パッキンP1の温度は、上部電極部51を設けない場合と比較して、例えば、100℃程度の温度低下を期待できる。
【0069】
なお、上部冷却部72としては、冷却パイプ721に限らず、例えば、放熱フィン、ペルチエ素子による冷却構造等が用いられてもよい。また、上板部522に対向するように設けられなくてもよく、下板部523と縦板部524との少なくとも一方を冷却してもよい。また、上部冷却部72としては、必ずしも冷却パイプ721を設ける必要はなく、上板部522に対して、直接、冷却空気を吹き付けてもよい。また、図5に示すように、上部冷却部72として、冷却パイプ721に代えて、九十九折り状の流路725を有する箱体722を設けてもよい。箱体722は、空気流入口723と、空気流出口724と、空気流入口723と空気流出口724とをつなぐ流路725を有する。流路725は、下面に開口面を有しており、当該開口面は上板部522に面している。これにより、空気流入口723から冷却空気が流入すると、上板部522に対し、直接、冷却空気が接触する。このように、上板部522に対して直接冷却空気が接触する場合、冷却パイプ721を介して冷却するよりも、冷却効率を上げることができる。なお、図5中の符号726は、上板部522から起立したピンであり、箱体を上板部522上に取り付けている。
【0070】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0071】
上記実施形態では、定置式の坩堝炉1であったが、本発明では、電気式の坩堝炉1であれば特に制限はなく、例えば、ピット式の坩堝炉1であってもよいし、可傾式の坩堝炉1であってもよい。
【0072】
上記実施形態では、下部電極部55は、坩堝台3を介して、坩堝2の下部に電気的に接続されたが、本発明では、坩堝2に対して直接的に接続されてもよい。
【0073】
上記実施形態では、上部電極部51が三つある例で説明したが、本発明ではこれに限らず、上部電極部51は二つ、四つ、六つであってもよい。また、坩堝2に対する上部電極部51の電力供給は、特に制限はなく、例えば、二層交流、三相交流のいずれであってもよい。
【0074】
上記実施形態に係る坩堝炉1は、上部電極部51を冷却する上部冷却部72を備えたが、例えば、上部電極部51を溶融金属の液面から離れた位置に配置すれば、温度上昇を抑制することができるため、上部冷却部72はなくてもよい。また、上記実施形態に係る坩堝炉1は、下部電極部55を冷却する下部冷却部71を備えたが、例えば、下部電極部55を坩堝2から離せば温度上昇を抑制することができるため、下部冷却部71はなくてもよい。
【0075】
上記実施形態では、下部冷却部71として、非被覆構造と、通気構造との両方を備えたが、本発明では、通気構造を備えず、非被覆構造のみで構成されてもよい。また、下部冷却部71として、非被覆構造を備えず、通気構造のみを設けて、電極接続部32を空冷してもよい。また、非被覆構造及び/又は通気構造はなくてもよく、流体流路73のみであってもよい。また、流体流路73はなくてもよい。また、下部冷却部71としては、空冷又は水冷に限らず、例えばペルチエ素子を電極接続部32と下部電極部55との接続部分に接触させて冷却する下部冷却部であってもよい。
【0076】
上記実施形態に係る坩堝炉1では、断熱材6として、内側断熱材61、外側断熱材62及び下側断熱材63を備えたが、下側断熱材63はなくてもよい。また、断熱材6として、内側断熱材61及び外側断熱材62の少なくとも一方を備えていればよい。
【0077】
上記実施形態に係る坩堝炉1では、つば部22を備えたが、本発明では、つば部22はなくてもよい。この場合、上部電極部51は、坩堝本体21の上端縁部に取り付けられてもよい。
【0078】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0079】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0080】
<まとめ>
以上説明したように、第1の態様に係る坩堝炉1は、通電により発熱する坩堝2と、坩堝2を支持し、坩堝2に電気的に接続された坩堝台3と、坩堝2の外側面を被覆する断熱材6と、坩堝2の上部に電気的に接続された上部電極部51と、坩堝台3に電気的に接続された下部電極部55と、坩堝台3と下部電極部55との接続部分を冷却する下部冷却部71と、を備える。
【0081】
この態様によれば、坩堝2の温度を保つ構造を採りつつ、坩堝台3と下部電極部55との接続部分を冷却することができるため、坩堝2の熱によって起こり得る下部電極部55の温度上昇を効果的に抑制することができる。この結果、下部電極部55の接点近傍での変形を抑制することができ、通電不良等の不具合が発生するのを抑制することができる。
【0082】
第2の態様に係る坩堝炉1では、第1の態様において、下部冷却部71は、断熱材6が電極接続部32と下部電極部55との接続部分を覆っていない部分を含む。
【0083】
この態様によれば、坩堝台3と下部電極部55との接続部分が、温度上昇するのを抑制することができる。
【0084】
第3の態様に係る坩堝炉1では、第2の態様において、断熱材6を収容する枠体4を更に備え、枠体4は、断熱材6を下から支える底板412を有し、底板412は、坩堝台3と下部電極部55との接続部分よりも上方に位置している。
【0085】
この態様によれば、坩堝台3と下部電極部55との接続部分を露出させることができ、当該接続部分が温度上昇するのを効果的に抑制することができる。
【0086】
第4の態様に係る坩堝炉1では、第3の態様において、枠体4は、断熱材6の外周部を囲む外側板421を有し、下部冷却部71は、外側板421に形成された空気取り込み口711と、底板412の下方の空間で構成され、空気取り込み口711に通じ、かつ坩堝台3と下部電極部55との接続部分が配置された空気流路712と、を有する。
【0087】
この態様によれば、電極接続部32と下部電極部55との接続部分を断熱材6で被覆しない非被覆構造と、通気によって電極接続部32と下部電極部55との接続部分の熱を通気により冷却する通気構造との両方で、電極接続部32と下部電極部55との接続部分を冷却することができる。
【0088】
第5の態様に係る坩堝炉1では、第1~4のいずれか1つの態様において、下部冷却部71は、下部電極部55と坩堝台3との接続部分に設けられた流体流路73と、流体流路73に流体を送る流体移送装置と、を有する。
【0089】
この態様によれば、流体移送装置によって送られた流体によって、接続部分を積極的に冷却することができるため、より効果的に電極接続部32と下部電極部55との接続部分を冷却することができる。
【0090】
第6の態様に係る坩堝炉1では、第1~5のいずれか1つの態様において、上部電極部51は、導電性パッキンP1を介して、坩堝本体21の上端部に接続されている。
【0091】
この態様によれば、坩堝本体21の上端部に対して上部電極部51による電圧の印加を行うことができる。
【0092】
第7の態様に係る坩堝炉1では、第6の態様において、上部電極部51を冷却する上部冷却部72を更に備える。
【0093】
この態様によれば、上部電極部51を冷却することによって、つば部22に接触する導電性パッキンP1の温度上昇を抑制することができ、導電性パッキンP1が酸化するのを抑制することができる。
【0094】
第8の態様に係る坩堝炉1では、第7の態様において、上部冷却部72は、上部電極部51を空冷によって冷却するように構成されている。
【0095】
この態様によれば、上部冷却部72が破損しても、溶融金属に空気以外(水冷の場合例えば水)が接触するリスクを回避することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 坩堝炉
2 坩堝
21 坩堝本体
3 坩堝台
4 枠体
412 底板
421 外側板
51 上部電極部
55 下部電極部
6 断熱材
7 冷却部
71 下部冷却部
711 空気取り込み口
712 空気流路
72 上部冷却部
P1 導電性パッキン
【要約】
【課題】坩堝台に対する下部電極部の接点部分の変形を抑制することができる坩堝炉を提供する。
【解決手段】坩堝炉1は、通電により発熱する坩堝2と、坩堝2を支持し、坩堝2に電気的に接続された坩堝台3と、坩堝2の外側面を被覆する断熱材6と、坩堝2の上部に電気的に接続された上部電極部51と、坩堝台3に電気的に接続された下部電極部55と、坩堝台3と下部電極部55との接続部分を冷却する下部冷却部71と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6