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特許7525192多孔質ミクロスフェア及び該多孔質ミクロスフェアを含む静相媒質と吸着クロマトグラフィーカラム
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  • 特許-多孔質ミクロスフェア及び該多孔質ミクロスフェアを含む静相媒質と吸着クロマトグラフィーカラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】多孔質ミクロスフェア及び該多孔質ミクロスフェアを含む静相媒質と吸着クロマトグラフィーカラム
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/281 20060101AFI20240723BHJP
   B01J 20/285 20060101ALI20240723BHJP
   B01J 20/283 20060101ALI20240723BHJP
   B01D 15/20 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B01J20/281 G
B01J20/281 X
B01J20/285 S
B01J20/285 M
B01J20/283
B01J20/281 Y
B01D15/20
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023098084
(22)【出願日】2023-06-14
(65)【公開番号】P2024018978
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】63/392939
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】112119389
(32)【優先日】2023-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518213374
【氏名又は名称】台灣創新材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】陳暉
(72)【発明者】
【氏名】許銘賢
(72)【発明者】
【氏名】杜宗翰
(72)【発明者】
【氏名】李志賢
(72)【発明者】
【氏名】周正三
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-178332(JP,A)
【文献】特開2016-070937(JP,A)
【文献】特許第7049021(JP,B2)
【文献】特開2017-037070(JP,A)
【文献】鈴木敏幸,乳化の基礎と今後の潮流,オレオサイエンス,日本,2012年,第12巻,第8号,p311-319
【文献】川西素哉,外3名,マイクロドロップ・インジェクションを利用したゼラチンのパターニング,2009年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集,日本,公益財団法人精密工学会,2009年,セッションID:D02,p227-228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/281
B01J 20/285
B01D 15/36
B01J 20/26
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着クロマトグラフィーで使用するための静相媒質であって、
前記静相媒質は、複数の多孔質ミクロスフェアを含み、前記多孔質ミクロスフェアは架橋高分子材料から調製されていて、前記多孔質ミクロスフェアは気孔率(porosity)が70%~90%であり、多孔質ミクロスフェア内に形成された多数の球状巨大孔は接続孔を介して相互に連結され、それによって1つの開放型多孔質ネットワーク(open porous network)を構成し、この多孔質ネットワークは、多孔質ミクロスフェアの外表面にある複数の開口を通して外部と流体連通しており
前記のそれぞれの多孔質ミクロスフェアは、下記式(1)を満足し、
d孔/dミクロスフェア≧(0.45/n) ・・・・・ (1)
ここの、d孔はこの多孔質ネットワークの等価直径であり、dミクロスフェアは多孔質ミクロスフェアの粒径であり、nは多孔質ミクロスフェア中の多孔質ネットワークが外表面に連通する開口の数であり、n≧2、nは整数であ
ことを特徴とする吸着クロマトグラフィーで使用するための静相媒質。
【請求項2】
請求項1に記載の静相媒質において、
前記多孔質ミクロスフェアのd孔は150ナノメートルより大きい
ことを特徴とする静相媒質。
【請求項3】
請求項2に記載の静相媒質において、
記多孔質ミクロスフェアのd孔は300ナノメートルより大きい
ことを特徴とする静相媒質。
【請求項4】
請求項3に記載の静相媒質において、
記多孔質ミクロスフェアのd孔は500ナノメートルより大きい
ことを特徴とする静相媒質。
【請求項5】
請求項1に記載の静相媒質において、
記多孔質ミクロスフェアのdミクロスフェアは500ミクロン未満である
ことを特徴とする静相媒質。
【請求項6】
請求項5に記載の静相媒質において、
前記多孔質ミクロスフェアのdミクロスフェアは300ミクロン未満である
ことを特徴とする静相媒質。
【請求項7】
請求項6に記載の静相媒質において、
前記多孔質ミクロスフェアのdミクロスフェアは200ミクロン未満である
ことを特徴とする静相媒質。
【請求項8】
請求項1に記載の静相媒質において、
前記静相媒質が表面改質されてイオン交換官能基を有する
ことを特徴とする静相媒質。
【請求項9】
請求項8に記載の静相媒質において、
前記イオン交換官能基は四級アンモニウム、ジエチルアミンエチル、スルホニル基及びカルボキシメチル基からなる群から選択される
ことを特徴とする静相媒質
【請求項10】
請求項1に記載の静相媒質において、
前記架橋高分子材料は、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリピロール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリ珪酸からなる群から選択される
ことを特徴とする静相媒質。
【請求項11】
請求項10に記載の静相媒質において、
前記架橋高分子材料はポリメタクリレートから選択される
ことを特徴とする静相媒質。
【請求項12】
請求項11に記載の静相媒質において、
前記多孔質ミクロスフェアは単分散性を有する
ことを特徴とする静相媒質。
【請求項13】
静相媒質を調製する方法であって、以下のステップ、
A) 重合開始剤及び乳化安定剤の存在下で、少なくとも1種の単量体及び架橋剤を含む連続相組成物と、1種の溶媒を含む分散相組成物とを乳化して、連続相及び連続相内に分散された分散相を含む第1のエマルションを得るステップA)と
B) 第1のエマルションと第1のエマルションと混和しない第3相とを加えて混合し、剪断装置で剪断力を加えて第3の相に分散した第1の巨滴エマルションを調製し、その後、第1の巨滴エマルションをマイクロドロップ装置を通して第3相にさらにマイクロドロップして均一に分散させ、第3相と、第3相内に分散された単分散性高内相エマルションマイクロドロップを含む第2のエマルションを得るステップB)と
C) 第2のエマルジョンの連続相を硬化させ、この分散相および第3相を除去し、多孔質ミクロスフェアで構成される静相媒質を得るステップC)と、を含み、
ここの、それぞれの多孔質ミクロスフェアの中に複数の球状巨大孔が形成され、この球状の巨大孔は接続孔を介して相互に連結され、1つの開放型多孔質ネットワーク(open porous network)を構成し、この多孔質ネットワークは多孔質ミクロスフェアの外表面にある複数の開口を通して外部と流体連通し、
前記それぞれの多孔質ミクロスフェアは、下記式(1)を満足し、
d孔/dミクロスフェア≧(0.45/n) ・・・・・・・(1)
ここの、d孔はこの多孔質ネットワークの等価直径であり、dミクロスフェアは多孔質ミクロスフェアの粒径で、nは多孔質ミクロスフェア中の多孔質ネットワークが外表面に連通する開口の数で、n≧2、nは整数であ
ことを特徴とする静相媒質の調製方法。
【請求項14】
請求項13に記載の静相媒質の調製方法において、
ここの、この第三相に分散された第1の巨滴エマルションを調製する方法は、機械式撹拌装置又は細孔配列される3D構造でせん断力を提供することを含む
ことを特徴とする静相媒質の調製方法。
【請求項15】
請求項13に記載の静相媒質の調製方法において、
ここの、このマイクロドロップ装置は、複数の微細なチャネル(channel)を有するスクリーンプレート構造であってもよいし、このマイクロドロップ装置は、細孔配列される3D構造であってもよい
ことを特徴とする静相媒質の調製方法。
【請求項16】
請求項13に記載の静相媒質の調製方法において、
ここの、このステップCの後に更にステップDを含み、ステップCで得られた多孔質ミクロスフェアをテイラー式スクリーンでふるい分けて、大きすぎ、小さすぎ、又は壊れた多孔質ミクロスフェアを除去する
ことを特徴とする静相媒質の調製方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法により調製された静相媒質を含む
ことを特徴とする吸着クロマトグラフィーの静相媒質。
【請求項18】
少なくとも1つの流体入力端と少なくとも1つの流体出力端とを有する複数の多孔質ミクロスフェアが充填された中空カラムであって、前記多孔質ミクロスフェアは架橋高分子材料から調製されていて、前記多孔質ミクロスフェアは気孔率(porosity)が70%~90%であり、前記多孔質ミクロスフェア内には複数の球状巨大孔が形成されており、前記球状巨大孔は接続孔を介して相互に連結され、それによって開放型多孔質ネットワーク(open porous network)を構成し、この多孔質ネットワークは、前記多孔質ミクロスフェア外表面にある複数の開口を通して外部と流体連通しており、
前記のそれぞれの多孔質ミクロスフェアは、下記式(1)を満足し、
d孔/dミクロスフェア≧(0.45/n)………………(1)
ここの、d孔はこの多孔質ネットワークの等価直径であり、dミクロスフェアは多孔質ミクロスフェアの粒径であり、nは多孔質ミクロスフェア中の多孔質ネットワークが外表面に連通する開口の数であり、n≧2、nは整数であ
ことを特徴とするクロマトグラフィーカラム。
【請求項19】
請求項18に記載のクロマトグラフィーカラムにおいて、
流体背圧と流体流速の斜率値が50x10-5 MPa/(cm hr-1)以下である
ことを特徴とするクロマトグラフィーカラム。
【請求項20】
請求項18に記載のクロマトグラフィーカラムにおいて、
体背圧と流体流速の斜率値が30x10-5 MPa/(cm hr-1)以下である
ことを特徴とするクロマトグラフィーカラム。
【請求項21】
請求項18に記載のクロマトグラフィーカラムにおいて、
体背圧と流体流速の斜率値が10x10-5 MPa/(cm hr-1)以下である
ことを特徴とするクロマトグラフィーカラム。
【請求項22】
請求項18に記載のクロマトグラフィーカラムにおいて、
のクロマトグラフィーカラムにおける少なくとも50%の多孔質ミクロスフェアが最も密に充填される形で配列されている
ことを特徴とするクロマトグラフィーカラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着クロマトグラフィーに使用される静相媒質に関し、特に、高スループット、高効率及び低背圧で分子を分離するためにクロマトグラフィーカラムに充填するのに適した高分子多孔質ミクロスフェアの形態に調製された静相媒質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の新型コロナウイルスCovid-19の世界的な大流行により、ワクチンの開発と生産に吸着クロマトグラフィーを用いて生物分子を精製する需要が急に高まっている。吸着クロマトグラフィーは流体クロマトグラフィーの1種で、ある成分を移動相から固体静相に選択的に吸着させてその成分を分離する。多孔質樹脂ビーズは吸着クロマトグラフィーの静相として広く使用されている。典型的な樹脂ビーズは直径が数ナノメートルから数十ナノメートルの蛇行した細孔ネットワークを形成して、移動相中に存在する低分子量溶質が細孔に拡散することを許容する。図1に示すように、これらの微細孔は通常、樹脂ビーズの外側の表面に近くにあり、互いにつながっていない。吸着面の多くは樹脂ビーズの内側にあり、拡散作用でしか到達できない。樹脂ビーズの慣用化は小分子の分離に非常に有用であることが実証されているが、高分子が小さな微細孔に入ることができないため、高分子を分離するには不十分である。言い換えれば、高分子は樹脂ビーズの表面にしか結合せず、吸着量が低下する。酵素分解やその他の破壊的な状况の影響を受けやすい生体分子にとって、分離速度の低下は特に有害である。樹脂をベースとするクロマトグラフィーにはその他の欠点がある。ビーズ内の拡散作用は吸着過程の速度決定段階であるため、流速の上昇に伴って分解度が低下する。また、樹脂ビーズ間の対流が不十分であるため、全クロマトグラフィーカラムにまたがる高圧が低下する。これらの欠点は、分離効率の低下と分子生産性の低下をもたらした。一般に、従来の樹脂ビーズを静相媒質とするクロマトグラフィーは完成までに数日を要するため、非常に時間がかかり、コストも高い。
【0003】
図2は1つの慣用の吸着クロマトグラフィーカラムを示し、それは1つの中空長い管体を含み、上と下の両端の開口部にそれぞれ蓋体が設けられ、液体の移動相が上から下にカラムを流れることを許容する。カラムの内部には多孔質材料を充填し、この材料は多孔質構造のブロックモノリスカラム材料(block-shaped porous monoliths)、微粒子(micro particulates)またはミクロスフェア(microspheres)であってもよい。カラムの内部に充填した多孔質材料は1つ以上の物質に対して吸着効果があり、その吸着量の上限があって、吸着が飽和に達すると再び吸着することができない。これらの多孔質材料が、ある特定の試料を充填材の単位体積中に飽和まで吸着させるのに必要な量を、吸着量(binding capacity、mg/mLで示す)と呼ぶ。吸着量を測定する際、通常は、その特定の試料を溶かした移動相を上部の開口部からカラムに流し、試料をカラム内で充填材の表面の官能基に吸着させる。カラムの下から流出した移動相はUVセンサーで検出する。最初に流出した移動相は、試料が充填材に吸着されているため、出口では低い吸収値が観察され、低い試料濃度に対応する。吸着量が上限に達すると、試料の吸収信号が上昇し始め、カラム内部の充填材が吸着量の上限に達していることになるため、出口では移動相内の試料濃度が上昇し始める。吸着量が上限に達すると、そのサンプルのUV吸収値が最後に最大値に達する(QB100)。上昇曲線により、出口でのUV吸収値が最大値の10%に達したとき(QB10)に注入されるサンプルの量を動的吸着量(dynamic binding capacity, DBC; mg/mLで表す)と呼ばれる。液体移動相は一定または時間変化の流速(ν、通常はセンチ/時で表す)でカラムを流れ、カラムの上下の開口部の間に生じる圧力差を背圧(Δp、通常はMPaで表す)と呼ばれる。
【0004】
クロマトグラフィー精製の応用には2つの重要な条件がある:第1に、精製過程で発生する背圧が低く、あるいは内部充填材の機械的強度が高いことが高背圧に耐えられ、低背圧がクロマトグラフィーカラム装置や内部充填材の圧力の上限を超えないようにすることができ、さらに操作流速を上げ、および精製の応用工程の効率を上げることが望ましい。第2に、クロマトグラフィーカラムの精製応用において、充填材のDBCが移動相の流速の上昇に伴って低下せず、流速を上げながらも吸着量を維持できることが望ましい。
【0005】
このようなニーズに対応するために、業界は多くの努力を払ってきた。図3Aは2つの代表的な慣用陰イオン交換カラムの背圧データを示している。ここで、CIMmultusTM QAカラム(BIA Separations,スロベニアから購入)はポリメチルメタクリレートを主とする2ミクロンの孔径を有する一体カラムで充填される。CaptoTM Qカラム(Danaher Corporation,米国から購入)は多孔質寒天コロイド(agarose)ミクロスフェアで充填されている。その表面には直径約20~50ナノメートル、単端が開口で、互いに相通さない多数の拡散細孔を有する。 図3Aはブロック状のモノリスカラム材料を充填したCIMmultusTM QAカラム(記号◆で表す)は移動相がカラム内のモノリスカラム材料を通過する時に巨大な背圧を発生し、しかも背圧は流速の上昇に伴って直線的に増加し(斜率は1.27x10-3 MPa hr cm-1)、製品の使用の安定性に不利であることを示している。一方、多孔質寒天コロイドミクロスフェアを充填したCaptoTM Qカラム(記号▲で表す)は、得られた背圧が流速の増加に伴って上昇するのが遅く(斜率は8.3x10-5 MPa hr cm-1)、比較的に好ましい製品の安定性が具現される。しかし、多孔質寒天コロイドミクロスフェアはその構造強度が弱いため制限され、圧力上昇による構造の変形、孔の陥没、更にカラムの閉塞現象を引き起こす可能性がある。 図3Aに示すように、流速が500cm/hrを超えた後、CaptoTM Qカラムの背圧は急速に上昇し(例えばNweke,M.C.et al.,Mechanical characterisation of agarose-based chromatography resins for biopharmaceutical manufacture,J.Chromatogr.A,(2017),1530:129-137を参照してください)、このカラムの使用範囲と効率を大幅に制限している。前記の慣用クロマトグラフィーカラムは背圧上昇により不可逆的な損傷を引き起こすため、その製品説明において、操作流速はその推奨値(600 cm/hr)よりも少なくなければならないことを推奨した。
【0006】
図3Bは、甲状腺グロブリン(thyroglobulin、TGY)を代表分子とする、前記の2つの代表的な慣用陰イオン交換カラムの分子分離時の動的吸着量(DBC)データを示している。多孔質寒天コロイドミクロスフェアを充填したCaptoTM Qカラム(記号▲で表す)では、TGYを持つ移動相がカラム内のミクロスフェアを流れる時、移動相中のTGYは主に拡散(diffusion)として物質移動(mass transfer)を行う。すなわち、TGYはミクロスフェア表面の多孔質構造から拡散して吸着される。TGYの分子サイズはミクロスフェア表面の拡散孔よりも大きいため、微細孔構造への拡散効率が著しく低下する(TGYのDBCは1-2 mg/mL)。したがって、このようなカラムは生体分子の精製には適しない。一方、ブロック状のモノリスカラム材料を充填したCIMmultusTM QAカラム(記号◆で表す)は、その内部の穴が大きく(直径約2ミクロン)、それはモノリスカラム構造により、移動相は構造内部を完全に流れるため、TGYは対流(convection)方式で転送されてモノリスカラムの内部表面に吸着され、拡散よりも効率的にモノリスカラム構造の内部表面に直接接触して吸着されるため、分子の吸着量はミクロスフェア型製品よりはるかに優れている(TGYのDBCは22 mg/mL)。
【0007】
そのため、関連業界では、カラムに充填される高分子多孔質粒子に適した形に調製られ、移動相の高操作流速下で低背圧を持ち、及び/又はは構造が破壊されず、しかもそのDBCが移動相の流速の上昇に伴って低下することがなく、高操作流速下でも分子に対して優れる吸着量を維持できる静相媒質が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の欠点を克服するために、本発明は、クロマトグラフィー用の静相媒質を提供し、それはクロマトグラフィーカラムに充填されるのに適した多孔質ミクロスフェア集合の形態を呈する。それぞれの多孔質ミクロスフェアは、架橋高分子材料からなり、多孔質ネットワークを構成する多数の結合した巨大孔を形成している。この多孔質ネットワークは極めて大きな比表面積を吸着表面として提供し、分子の接近と付着を容易にする。更に重要なのは、本発明の多孔質ミクロスフェアは特定の内部多孔質ネットワークの直径がミクロスフェアの粒径に対する比例を有し、しかもこの多孔質ネットワークは複数の開口を通して外部と連通し、分子が移動相の高流速下で低背圧値に達するように、ミクロスフェアの内部に位置する多孔質ネットワークを通して対流方式で転送することを許容し、しかも分子に対して高い吸着量があり、流速上昇時にも安定性を維持することができるため、関連技術分野における長い間存在される産業問題を克服した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の第1実施形態は、分子を分離するのに特に適した吸着クロマトグラフィーの静相媒質を提供する。この静相媒質は、以下のこと
複数の多孔質ミクロスフェア、それぞれのミクロスフェア内に多数の球状巨大孔が形成され、この球状巨大孔は接続孔を介して相互に連結され、それによって1つの開放性多孔質ネットワーク(open porous network)を構成し、この多孔質ネットワークは、このミクロスフェアの外表面に位置する複数の開口を通して外部と流体連通することと、
ここで、それぞれの多孔質ミクロスフェアは、下記式(1)を満足する。
d/dミクロスフェア≧(0.45/n)………………(1)
ここの、dはこの多孔質ネットワークの等価直径であり、dミクロスフェアは多孔質ミクロスフェアの粒径で、nはミクロスフェアにおける多孔質ネットワークが外表面に連通する開口の数で、n≧2、nは整数であることとを含む
【0010】
本発明の第2実施形態において、前記の静相媒質の調製方法を提供し、その方法は以下のステップ
A) 重合開始剤及び乳化安定剤の存在下で、少なくとも1種の単量体及び架橋剤を含む連続相組成物と、1種の溶媒を含む分散相組成物とを乳化し、1種の連続相及び1種の連続相内に分散された1種の分散相を含む第1のエマルションを得るステップA)と、
B) 第1のエマルションと第1のエマルションと混和しない第3のエマルションとを混合し、剪断装置で剪断力を加えて第3の相に分散した第1の大きな液滴エマルションを調製し、その後、第1の大きな液滴エマルションをマイクロ滴化装置を通して第3の相にさらにマイクロ滴化して均一に分散させ、第3の相と、第3の相内に分散された単分散性高内相エマルションマイクロ滴を含む第2のエマルションを得るステップB)と
C) 連続相を硬化させ、この分散相とこの第3相を除去し、多孔質のミクロスフェア状を呈する静相媒質を得るステップC)とを含む。
【0011】
好ましい実例において、前記多孔質ミクロスフェアのdは150ナノメートルより大きく、より好ましくは300ナノメートルより大きく、さらに好ましくは500ナノメートルより大きい。
【0012】
ある好ましい実例において、多孔質ミクロスフェアのdミクロスフェアは500ミクロン未満、好ましくは300ミクロン未満、更に好ましくは200ミクロン未満である。
【0013】
好ましい実例において、この静相媒質は表面改質されてイオン交換機能基を有する。更に好ましい実例において、このイオン交換機能基は、四級アンモニウム、ジエチルアミンエチル、スルホニル基、カルボキシメチル基からなる群から選択される。
【0014】
好ましい実例において、前記多孔質ミクロスフェアは架橋高分子材料で調製される。更に好ましい実例において、この架橋高分子材料はポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリピロール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルおよびポリオキシシリコンからなる群から選択される。更に好ましい実例において、この架橋高分子材料はポリメタクリレートから選択される。
【0015】
更に好ましい実例において、前記の多孔質ミクロスフェアは単分散性を有し、気孔率(porosity)が70%~90%を有する。
【0016】
本発明の第3実施形態において、前記の方法で調製した静相媒質を提供する。
【0017】
本発明の第4実施形態において、前記の静相媒質を充填した中空長尺管体を含むクロマトグラフィーカラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の前記及び他の目的、特徴及び効果は、添付図面と共に、次の好ましい実例の説明を参照することにより明らかになるであろう。ここの
【0019】
図1】慣用樹脂ビーズの模式図。
【0020】
図2】慣用吸着クロマトグラフィーカラムの模式図。
【0021】
図3A】2種類の代表的な慣用陰イオン交換カラムの異なる線形流速における背圧曲線;
図3B】2種類の代表的な慣用陰イオン交換カラムの異なる線形流速の下での動的吸着荷重曲線;
【0022】
図4】本発明の1実施例による吸着クロマトグラフィーカラムの模式図。
【0023】
図5A】本発明に係わる実施例による多孔質粒子の走査型電気現像画像。
図5B】本発明に係わる実施例による多孔質粒子の走査型電気現像画像。
図5C】本発明に係わる実施例による多孔質粒子の走査型電気現像画像。
【0024】
図6】本発明に係わる実施例の多孔質粒子による物質転送を示す。
【0025】
図7】本発明に係わる多孔質粒子の調製方法のフローチャート。
【0026】
図8】本発明に係わる実施例のクロマトグラフィーカラムの異なる線形流速における動的吸着量曲線。及び
【0027】
図9】本発明に係わる実施例のクロマトグラフィーカラムの異なる線形流速における背圧曲線。
【発明を実施するための形態】
【0028】
なお、本出願の明細書及び特許出願の範囲内で使用される以下の用語は、別段の記載がない限り、以下の定義を有する。本出願の明細書及び特許出願の範囲内で使用される単数形の用語「1」は、単一の記載事項のみを有することを意味するのではなく、少なくとも1つ、少なくとも2つ又は少なくとも3つの記載事項を含むことを意図していることに留意されたい。また、特許出願の範囲内で使用される「含む」、「有する」等の開放型接続詞は、請求項に記載された構成部品又は成分の組合せにおいて、請求項に記載されていない他の構成部品又は成分を排除するものではないことを意味する。また、「又は」という用語は一般的に「及び/又は」を意味的に含むことに留意すべきである。ただし、その内容が明確に示されていない限り、この明細書及び特許出願の範囲内で使用されている「約」又は「実質的に」という用語は、多少変更可能な誤りを修飾するために使用されているが、このような多少の変更はその本質を変更するものではない。
【0029】
図4は、本発明に係わる1つの実例であって、少なくとも1つの流体入力端12および少なくとも1つの流体出力端14を有する中空の長尺管本体を含む吸着クロマトグラフィーカラム10を示している。ある実例において、この管体は、ステンレス鋼、チタン、石英、ガラス、ポリプロピレンなどの硬質プラスチックからなる群から選択される材料からなり、円筒形、矩形または多角形の管体の形に作られ、ここのカラム10内に固体静相20が充填されており、流体移動相30がこのカラムを流れると、種々の流体分子と静相20との吸着性の相互作用によって分子が分離される。前記吸着クロマトグラフィーは関連技術分野で知られているタイプであってもよく、それにはイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーが含まれるが、これらに限定されない。もちろん、流体も液体又は気体を含む。本発明に使用されている用語「静相」は、分子が静相20に保持されるようにクロマトグラフィー中に移動相30が流れることを許容する固定化された固相担体を指すことができる。ここで、静相20は、クロマトグラフィーカラム10内に充填された多孔質ミクロスフェア40の群を含む。本明細書で使用される用語「静相媒質」は、充填された状態または充填されていない状態をカバーする多孔質ミクロスフェア40であることが望ましい。移動相30はカラム10の上部から供給され、カラム10の底部まで流下する。図4に示すように、静相20に吸着されやすい分子はカラム10の中に長い時間を滞留し、吸着されにくい分子はカラム10の底部まで速く移動する。その結果、異なる吸着特性を持つ分子を別々に集めることができる。本発明の吸着クロマトグラフィーは結合-溶出モード(bind-and-elute mode)で標的分子を静相媒質に留め、その後適切な溶出液で洗い出すか、あるいは流経モード(flow-through mode)で不必要な分子と不純物が静相媒質に吸着され、標的分子が流出することを許容する。
【0030】
図5A~5Cは、本発明に係わる多孔質ミクロスフェアの電子顕微鏡像である。これらの多孔質ミクロスフェアは、実質的に球状であることが明らかで、調製パラメータによって制御されることにより、実質的に均一な粒径を有する単分散性(偏狭な分布の大きさ)を調製することができ、後記でdミクロスフェアを分布の中央値径と定義する。多孔質ミクロスフェアのサイズ分布は従来のレーザー散乱あるいは回折技術を用いて測定することができ、例えばレーザー回折型粒子径分析装置を用いてレーザー光を液相中に懸濁させたミクロスフェアに入射させることによって測定することができる。これらの多孔質ミクロスフェア内部にはそれぞれ多数の積み重ねられた球状の巨大孔が形成されており、図5Cの実線の円で示される。これらの巨大孔は、図5Cの破線で示されるように、接続孔を介して相互に連結され、流体的に連通している。個々の多孔質ミクロスフェアでは、これらの相互に連結された巨大孔、それに連結された接続孔、およびミクロスフェアの表面にある多数の開口部(図5Cの矢印で示されるように)が、これらの開口部を介して外部に開放され、流体的に連通している連続した三次元多孔質ネットワークを形成している。言い換えれば、この多孔質ネットワークはn個の開口部を通して外部と連通しており、n≧2である。これにより、本発明の多孔質ミクロスフェアは分子が開口部からミクロスフェアの内部に入り、もう一方の開口部からミクロスフェアから離れることを許容している。図6に示すように。この多孔質ネットワークの等価直径は、後記にdと略称され、水銀圧入法(mercury intrusion porosimetry)、毛細管流動細孔測定法(capillary flow porometry)、電子顕微鏡法 (electron microscopy)などの一般的な孔測定法によって測定することができるが、これらに限定されるものではない。後記のように、多孔質ミクロスフェアのサイズ、多孔質ネットワークの直径は、多孔質ミクロスフェアの調製方法のパラメータと条件を制御することによって調整することができる。
【0031】
本発明の多孔質ミクロスフェアは単分散性であるため、それらがカラム内に充填される時、最も密に充填する形で充填する傾向がある。すなわち、隣接するミクロスフェアは互いに正接し、いずれの3つの正接ミクロスフェアの球心は1つの等辺三角形を構成し、各ミクロスフェアの配位数はすべて12で、ミクロスフェアとミクロスフェアの間には複数のほぼ三角形の空隙(voids)が残されている。好ましくは、少なくとも50%の多孔質ミクロスフェアが、より好ましくは少なくとも60%の多孔質ミクロスフェアが、例えば少なくとも75%の多孔質ミクロスフェアが、最も密に充填した形で配列されている。この最密充填は、3D六方最密充填構造 (hexagonal closest packing; hcp)、3D面心立方充填構造(face centered cubic packing;fcc)又はこれらの組合せを含むが、これに限定されない。最も密に充填したミクロスフェアからなる充填層では、その孔系は主にミクロスフェアとミクロスフェアとの充填によって生じる空隙(voids)及びミクロスフェアの内部にある3D多孔質ネットワークからなる。ここでは、空隙の直径を単にd空隙と呼び、ミクロスフェア粒径(dミクロスフェア)との間には以下の関係がある。
d空隙 = 0.225dミクロスフェア ……………(2)
したがって、d空隙は、dミクロスフェアによって表されることができる。さらに、ウォッシュバーンの方程式(Washburn's equation) に従ったものである。
Pd = -4γ cosθ ……………(3)
ここでP=圧力;d=孔の直径;γ=表面張力;θ=接触角。
移動相と多孔質ミクロスフェアの種類が変わらない場合、γ、θは定数であり、dはPに反比例し、dはdとdミクロスフェアによって寄与する。これは、カラム内に充填された多孔質ミクロスフェアの粒径(dミクロスフェア)が大きいほど、または多孔質ネットワークの等価直径(d孔)が大きいほど、カラム内の多孔質ミクロスフェアによる背圧を低下させることができることを示している。この場合、多孔質ミクロスフェアに特定のd/dミクロスフェアのサイズ比を付与することにより、移動相の高流速下で低い背圧値を達成することができ、しかも大型生体分子に対して高い吸着量が得られ、流速上昇時にも安定性を維持することができる。
【0032】
充填材中の物質移動(mass transfer)機構は、大きく分けて拡散(diffusion)と対流(convection)の2タイプがある。図1に示すように、多孔質ミクロスフェアの孔が小さい場合や内部の孔が通じていない場合、移動相はミクロスフェアの外側を通過するだけで、移動相中の物質は拡散する方式でミクロスフェアの内部に入って吸着するだけである。 移動相の流速が増加すると、物質が多孔質ミクロスフェアの内部構造に拡散しにくくなり、物質が接触できるミクロスフェアの表面が低下し、吸着量が低下する。相対的に言えば、多孔質ミクロスフェアの内部の孔が大きく、相互に連通している場合、流動は対流方式でミクロスフェアを流れる傾向があり、物質は移動相によって直接ミクロスフェアの内部に入り、比較的に良い吸着効率がある。図6に示すように、本発明の多孔質ミクロスフェア40をクロマトグラフィーカラムに充填すると、各ミクロスフェア40内には多数の球状の巨大孔41が形成され、これらの球状の巨大孔41は接続孔を介して相互に連結され、開放型の多孔質ネットワーク42が構成され、この多孔質ネットワーク42はミクロスフェア40の外表面に位置する多数の開口43を通して外部と流体連通しており、移動相はミクロスフェア40の間の空隙及びミクロスフェア40の内部に位置する3D多孔質ネットワーク42を通過することができる。
【0033】
液体が多孔質媒質を通って流れることを記述するダーシー法則(Darcys law)によれば、
【数1】

ここのη:移動相粘度;Δp:背圧;Q:流量;A:流路断面積;ΔL:ランナーの長さ。
カラム、充填材と移動相が変わらない場合、流路断面積Aは流量Qに比例する。また、多孔質媒質の孔が円形であると仮定すれば、A=πr2。前記のdの定義によれば、r∝0.5 d。したがって、流量はdに比例する。本発明において、移動相は多孔質ミクロスフェを充填したカラムを流れ、その総流量は、ミクロスフェ間の空隙とミクロスフェ内部の多孔質ネットワークの合計、すなわち、Q合計=Q空隙+Qであり、流量は孔の大きさに比例する。又は式(2)によれば、d空隙=0.225 dミクロスフェアであれば、サイズ比d/dミクロスフェアが低下すると、Q空隙 が上昇し、物質の移動傾向が拡散して吸着される。この場合、移動相の流速が増加すると、多孔質ミクロスフェアの吸着量が減少する。逆に、サイズ比d/dミクロスフェアが上昇すると、Qが上昇し、物質移動の傾向が対流の方式で吸着される。この場合、移動相の流速の増加に伴い、多孔質ミクロスフェアの吸着量は実質的に低下しない。また、前記のように、本発明の個別ミクロスフェアの多孔質ネットワークはn個の開口部を通して外部と連通することができ、しかもn≧2であり、ここのnは整数である。すなわち、nはミクロスフェア中の多孔質ネットワークが外表面に連通する開口部の数であり、これは走査型電子顕微鏡で撮影した多孔質ミクロスフェアの画像から計算することができる。したがって、仮にn/2個の開口部が移動相の流入方向に位置し、また別のn/2個の開口部が移動相の流出方向に位置するならば、(n/2)d≧d空隙、すなわちd≧(0.45/n)dミクロスフェアはサイズ比例d/dミクロスフェア表示に変更する。
d/dミクロスフェア≧(0.45/n)………………(1).
本発明の多孔質微粒子は上式(1)を満たすため、移動相がミクロスフェアの内部にある多孔質ネットワークを対流方式で流れ、ミクロスフェアの間を流れる空隙を減少させることができ、高流速、低背圧を達成し、しかも高くて安定した吸着量を有する。
【0034】
好ましい実例において、本発明の多孔質ミクロスフェアのdは150ナノメートル以上であり、より好ましいのは300ナノメートル以上、例えば500ナノメートル以上である。好ましい実例において、本発明の多孔質ミクロスフェアのdは500マイクロメートル未満であり、より好ましくは300マイクロメートル未満、例えばdの空隙の数値を下げるために、200マイクロメートル未満になる。
【0035】
本発明で明らかになったミクロスフェアは高い気孔率を有し、巨大孔がミクロスフェア内に均一に分布している。多孔質ミクロスフェアの気孔率(porosity)は、ミクロスフェアの全体積に対する気孔の体積のパーセンテージとして定義されており、以下の式から計算することができる。
1-[(多孔質ミクロスフェアの重さ/連続相の密度)/多孔質ミクロスフェアの外観体積]
また、走査型電子顕微鏡で多孔質ミクロスフェアの断面像を撮影し、ImageJソフト(米国科学アカデミー、メリーランド州Bethesda市)から気孔率を算出することもできる。ある実例において、これらのミクロスフェアは少なくとも50%以上、または70%以上の気孔率を持っているが、ミクロスフェアの強度を維持するためには90%以下になることである。
【0036】
本発明に適した高分子材料には、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリピロール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリシリコンオキシドが含まれるが、これらに限定されない。架橋された高分子材料から調製された多孔質ミクロスフェアの好ましい実例では、前記多孔質ミクロスフェアはポリメタクリレートから調製される。
【0037】
本発明の静相媒質は、高速な動力学的表現、高い気孔率、高い機械的性質及び低背圧により、より大きなサイズを有する分子を分離するために使用することができる。これには、15ナノメートルを超えるサイズの分子が含まれる。これらには、タンパク質(例えば、甲状腺グロブリン(約17ナノメートルのサイズ)、核酸(mRNA,100ナノメートル;DNAプラスミド,80-200ナノメートル)、ウイルス類(viroids)、ウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus,AAV,20ナノメートル;レチノウイルス,80~100 ナノメートル)、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(virus-like particles,VLPs)、細胞外小胞(Extracellular Vesicles,EVs)(エクソソーム(exosomes),30~100ナノメートル)、とミクロリポソームが含まれるがそれらに限定されない。
【0038】
いくつかの実例において、静相媒質は化学的に改質されて分子を吸着するための官能基あるいは配位子を持つ。例えば、静相媒質がイオン交換体として使用される実例において、その中に形成された多孔質ネットワークを含む多孔質ミクロスフェアが、強アニオン交換体として4級アンモニウム、弱アニオン交換体としてジエチルアミンエチル(DEAE)、強カチオン交換体としてスルホニル基、弱カチオン交換体としてカルボキシメチル基などのイオン交換機能基が表面改質されている。
【0039】
本発明の静相媒質の調製方法は、相混和しない2相を加えて乳化して第1のエマルションを得た後、第1のエマルションを孔を設けたスクリーンプレートを通して第3相に分散させ、第3相に懸濁した均一な大きさのミクロスフェア形の高内相エマルションのマイクロドロップを得、これらのエマルションマイクロドロップを硬化させることにより、多孔質のミクロスフェア形を呈する静相媒質を調製することを含む。図7は、本発明に係わる静相媒質の調製方法のフローチャートであり、この方法は、第1エマルションを調製するステップA;第1エマルションを第3相に分散させ、単分散性の高内相エマルションマイクロドロップを含む第2エマルションを得るステップB;高内相エマルションマイクロドロップを固化させて多孔質ミクロスフェアを得るステップCが含まれる。
【0040】
ステップAは、第1のエマルションを調製することに係わる。本発明で使用される「エマルション」という用語は、連続相(または外相)と、この連続相と混和しない分散相(又は内相)とからなる混合物を意味する。本発明で「連続相」とは、同一の組成物から構成される相互に連結された相を指し、「分散相」とは、前述の連続相中に分布する互いに隔離された多数の組成物ユニットから構成される相であり、分散相における各隔離ユニットは、連続相に囲まれている。本発明によれば、連続相は、通常、重合反応を起こす相であり、少なくとも1種のモノマーおよび架橋剤を含み、開始剤および乳化安定剤を選択的に含むことができ、分散相は、溶媒および電解質を含むことができる。好ましい実例において、第1エマルションは油中水エマルションである。
【0041】
前記の少なくとも1つのモノマーは、いかなる重合反応によって高分子のモノマー(monomers)およびオリゴマー(oligomers)を形成することを含むことが意図される。 好ましい実例において、前記少なくとも1つのモノマーは、ラジカル重合反応に適した少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(ethylenically unsaturated monomer)又はアセチレン性不飽和モノマー(acetylenically unsaturated monomer)、すなわち炭素-炭素二重結合または三重結合を有する有機モノマーを含み、これにはアクリル酸及びそのエステル系、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチルエステル;メタクリル酸及びそのエステル系、例えば、グリセリルメタクリレート(GMA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メチルメタクリレート(MMA);アクリルアミド系;メタクリルアミド系;スチレンおよびその誘導体、例えば、クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン(DVB)、スチレンスルホン酸塩;ジクロロジメチルシランなどのシラン系;ピロール系;ビニルピリジン及びそれらの組み合わせが含まれるが、これに限定されない。
【0042】
本発明で使用される用語「架橋剤」は前記の少なくとも1種のモノマーが重合反応を経て形成した高分子主鎖の間に化学的架橋を形成する試薬を意味する。 好ましい実例において、「架橋剤」は、前記の少なくとも1つのモノマーと連続相中で共溶することができ、通常は、前記の少なくとも1つのモノマーが重合されて形成された高分子主鎖の間に共有結合を形成するために複数の官能基を有する架橋モノマーである。適用可能な架橋剤は、本発明の属する技術分野において周知であり、かつ、油溶性架橋剤を含むがこれに限定されない、例えば、ジエチレングリコールメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールメタクリレート(PEGDMA)、ジエチレングリコールジアクリレート(EGDA)、ジエチレングリコールジアクリレート(TriEGDA)、ジビニルベンゼン(DVB)のような少なくとも1種のモノマーの種類によって選択することができる。及び水溶性架橋剤、例えば、N,N-ジアリルアクリルアミド、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が知るように、架橋剤の使用量は、調製される多孔質モノリスカラムの機械的強度と正の相関を示し、すなわち、架橋の程度が高いほど、多孔質モノリスカラムの機械的強度が高くなる。好ましくは、架橋剤が連続相中に約5~50重量%、例えば約5~25重量%の含有量を占めることである。
【0043】
単量体及び架橋剤に加えて、連続相は、形成された多孔質微細構造の物理的及び/又は化学的性質を変化させるために、他の物質を選択的に含むことができる。これらの物質の例としては、Fe3O4微粒子などの磁性金属微粒子が挙げられ、多糖類、例えばセルロース、シクロデキストリン(dextran)、アガロース、洋菜ガム、アルギン酸塩;酸化シリコンなどの無機材料、例えば酸化シリコン、グラフェンとを含むが、これらに限定されない。例えば、Fe3O4微粒子を添加することで、多孔質微細構造の機械的強度を高め、強磁性を付与することができる。
【0044】
本発明で使用された用語「乳化安定剤」とは、高内相エマルションを安定化するのに適した界面活性剤を意味し、エマルション中の連続相によって隔離された分散相ユニットが互いに合流しないようにする。乳化安定剤はエマルションを調製する前に連続相組成物又は分散相組成物に添加することができる。本発明に適した乳化安定剤は、非イオン界面活性剤でも、アニオン界面活性剤でも、カチオン界面活性剤でもよい。高内相エマルションが油中水型エマルションである実例において、乳化安定剤は、親水親油平衡値 (hydrophilic-lipophilic balance; HLB)が3~14であることが好ましい;更に好ましくHLB値が4~6である。好ましい実例では、本発明は非イオン性界面活性剤を乳化安定剤として使用し、適用されるタイプには、ポリオキシエチレン・アルカノール系、ポリオキシエチレン直鎖アルカノール系、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコール系、ポリオキシエチレン・メルカプタン系、長鎖カルボン酸エステル系、アルカノールアミン縮合物、四級アセチレン属ジオール系、ポリオキシエチレンポリシリコンオキシド系、N-アルキルピロリドン系、フルオロカーボン含有液、及びアルキルポリグリコシドが含まれるが、これらに限定されない。乳化安定剤の特定の例としては、ソルビタンモノラウレート(商品名Span(R)20)、ソルビタントリステアリン酸エステル(商品名Span(R)65)、ソルビタンモノオレイン酸エステル(商品名Span(R)80)、モノオレイン酸グリセリド、ポリエチレングリコール200ジオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例えば、Pluronic(R)F-68、Pluronic(R)F-127、Pluronic(R)L-121、Pluronic(R)P-123)、ヒマシ油、モノリシノール酸グリセリド、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、及び塩化ジオレインジメチルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「開始剤」とは、前記の少なくとも1種のモノマー及び/又は架橋剤の重合反応及び/又は架橋反応を開始させることができる試薬を意味する。好ましくは本発明で使用する開始剤は熱開始剤、すなわち、熱を受けた後に前記の重合反応及び/又は架橋反応を開始させることができる開始剤である。開始剤は、高内相エマルジョンを調製する前に、連続相組成物又は分散相組成物に添加することができる。 本発明によれば、連続相組成物に添加するのに適した開始剤は、アゾジイソブチロニトリル(AIBN)、アゾジイソヘプタニトリル(ABVN)、アゾジイソアミロニトリル、2,2-ジ[4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル]プロパン(BPO)、および過酸化ラウロイル(LPO)を含むが、これらに限定されない。分散相組成物に添加するのに適した開始剤は、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウムなどの過硫酸塩を含むが、これらに限定されない。この場合、高内相エマルジョンは、紫外光または可視光によって活性化される光開始剤をさらに含むことができ、さらに、熱開始剤の代わりに適当の光開始剤を使用することもできる。
【0046】
分散相は、主に溶媒を含む。溶媒は、連続相と混和しない任意の液体であってもよい。連続相が高い疎水性を有する具体的な例では、溶媒は、水、フルオロカルボン液体(fluorocarbon liquids)、および連続相と混和しない他の有機溶媒を含むが、これらに限定されない。好ましくは、溶媒は水である。この例では、分散相は、溶媒中で自由イオンを実質的に解離する電解質を含んでもよい、この溶媒に溶解する塩や酸や塩基が含まれている。電解質は、硫酸カリウムなどのアルカリ金属の硫酸塩、および塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩素塩を含んでいてもよい。
【0047】
高内相エマルションは、重合反応促進剤を添加することができる。「促進剤」とは、少なくとも1つのモノマー及び/又は架橋剤の重合反応及び/又は架橋反応を促進することができる試薬を意味する。促進剤の代表的な例としては、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、N,N,N',N",N"-ペンタメチルジエチリデントリアミン(PMDTA)、トリス(2-ジメチルアミン)エチルアミン、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチリデンテトラミン、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカンが挙げられるが、これらに限定されない。これは、例えば、過硫酸アンモニウムのような開始剤をラジカルに分解させ、これにより、前記の重合反応及び/又は架橋反応が促進され、促進剤の添加量は、開始剤の添加量に対して10~100モル%であることが好ましい。
【0048】
乳化作用により第1エマルジョンを得るには、モノマーや架橋剤などの成分を均一に混合して連続相組成物を調製し、溶媒や電解質などの成分を均一に混合して分散相組成物を調製する。次に、連続相組成物と分散相組成物とを所定の割合で混合し、例えば、連続相組成物と分散相組成物とを5:95~40:60の体積比で混合し、分散相が連続相中に均一に分散するように撹拌する。ある実例において、分散相組成物を連続相組成物にゆっくりと滴ずつ加え、同時に激しい撹拌してエマルションを調製する。もう1つの好ましい実例において、全バッチの分散相組成物を一度に直接加え、エマルションを調製するのに激しく撹拌する。バッチ全体の分散相組成物を加える好ましい実例において、高回転のホモジナイザーを用いて激しく撹拌し、エマルションに高いせん断力を加えることで、各隔離ユニットの分散相サイズを均一にすることができる。関連技術分野における一般的な知識を有する者によく知られているように、分散相中の個々の分離ユニットのサイズと均一さを調整するために、エマルション中の分散相の連続相に対する体積比、分散相組成物の添加速度、乳化安定剤の種類と濃度、撹拌する速度と温度などのパラメータを変えることできる。
【0049】
ある実例において、前記の乳化により得られた第1エマルジョンは高内相エマルジョンである。本発明で使用される用語「高内相エマルジョン」又は略称「HIPE」は、エマルジョンの内相の体積分率が74.05%を超えることを意味する。本発明によれば、ステップBにおいて、第1エマルジョンを第3相に混合した後、更にマイクロドリップ装置により、第1エマルジョンを第3相に均一に分散させることにより、第3相及び第3相内に分散された単分散性高内相エマルジョンのマイクロドリップを含む第2エマルジョンを得ることができる。
【0050】
本発明の「第3相」とは、高内相エマルションを安定に分散させることができ、高内相エマルションの連続相と混和しない相を指す。第3相は主に溶媒を含み、前記溶媒は水、フッ化炭化物液体及びその他の連続相と混和しない有機溶媒を含むがこれに限定されない。好ましくは、前記溶媒は水である。好ましい実例において、第2エマルションは、水中油中水エマルションである。第3相は、溶媒中で自由イオンを実質的に解離する電解質を含み、この溶媒に溶解する塩、酸、アルカリを含んでもよい。電解質は、硫酸カリウムのようなアルカリ金属の硫酸塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムのようなアルカリ金属とアルカリ土類金属の塩素塩を含んでもよい。第3相は、前記の乳化安定剤を含んでもよい。
【0051】
好ましい実例において、まず第1エマルションを第3相に加え、その後せん断装置でせん断力を加えて第3相に分散した第1巨滴エマルションを調製することができ、このせん断力装置は機械式撹拌装置又は気孔配列3D構造であってもよい。その後、この第1巨滴エマルションを更に微細滴化装置を通して第3相に均一に分散させ、第3相とこの第3相内に分散された単分散性高内相エマルションの微細滴を含む第2エマルションを得ることができる。このマイクロドロップ装置は、複数の微細チャンネル(channel)を有するスクリーンプレート構造(このチャンネルは直線、近似直線、平滑曲線、近似平滑曲線に限定されない)であってもよく、あるいは、単分散性高内相エマルションマイクロドロップを大量に生成するための孔配列3D構造であってもよい。前記のチャンネルを備えたスクリーンプレートは、第1、第2エマルジョンと物理化学反応を起こさない任意の不活性材料、例えば、炭素繊維、セラミック、ガラス、石英、シリコンウエハ、又はポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、PA6/66ナイロンプラスチック、ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(PC/ABS)複合プラスチック、ポリテレフタル酸エステル(PET)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)などのプラスチック材料、またはステンレス鋼、チタン、アルミニウム、アルミニウムマグネシウム合金などの金属材料から調製されることができる。
【0052】
第3相に分散した高内相エマルションのマイクロドロップは、それ自体の凝集力により自発的に実質的な球状に形成される。高内相エマルションのマイクロドロップの大きさは、マイクロドロップ装置の孔径を選択することによって調整することができる。
【0053】
ステップCにおいて、高内相エマルションのマイクロドロップをさらに加熱及び/又は適切な波長の光を受けるか、または更に促進剤を添加し、前記の少なくとも1種のモノマー及び/又は架橋剤が重合及び/又は架橋反応を完了することを可能にし、硬化して成形することができる。ここで「硬化」とは、高内相エマルションを安定した自立構造(stable free-standing configuration) を有する構造体に変換する過程を意味する。その後、固化した高内相エマルションのマイクロドロップから分散相と第3相を除去して、多孔質ミクロスフェアの形をした静相媒質を調製する。第1エマルションが油中水エマルションの実例では、固化した高内相エマルションのマイクロドロップを直接乾燥することができ、好ましくは真空下で乾燥することができ、分散相中の隔離ユニットを破壊して連通孔を作ることができる。多孔質ミクロスフェア中の巨大孔の大きさは、第1エマルションの調製するにおける攪拌速度及び/又は撹拌温度を変えることによって調整することができ、これに対して接続孔の大きさ、多孔質ミクロスフェア中に形成される多孔質ネットワークの等価直径は、連続相に対する分散相の体積比を変えることによって調整することができる。
【0054】
好ましい実例において、ステップCで得られた多孔質ミクロスフェアは、ステップDでテイラー式スクリーンを使用してふるい分けられ、所望の大きさの範囲内にあるミクロスフェアを収集するため、大きすぎたり、小さすぎたり、壊れたりしたミクロスフェアを取り除く。
【0055】
表1は前記の調製方法により調製され、式(1)を満たす多孔質ミクロスフェア構造体であり、それはA、B、C、Dの4タイプのサイズがある。
【表1】
【0056】
表1で調製された多孔質ミクロスフェアA、B、CおよびDをそれぞれテトラエチリデンペンタミンの1%水溶液に添加し、70℃で少なくとも5時間加熱する。多孔質ミクロスフェアを濾し、更に塩化グリシジルトリメチルアンモニウムの1%水溶液に加え、70℃で少なくとも5時間加熱し、多孔質ミクロスフェアを水で洗浄し、多孔質ミクロスフェアA、B、C及びDを基質とする4種類の強い陰イオン交換体を得る。
【0057】
1mL強陰イオン交換体を1つの内径7.4ミリメートル高さ3ミリメートルのポリプロピレンクロマトグラフィーカラムに充填する。
【0058】
試験結果1:動的吸着量(Dynamic Binding Capacity)
【0059】
前記のA、B、C、Dミクロスフェアから調製されるクロマトグラフィーカラムによるチログロブリン(TGY)の動的吸着量を測定する。本実例において、使用した移動相は50mM Tris-HCl、pH8.5であり、この移動相に1mg/mL TGYを添加して分析物とした。動的吸着量は、AKTATMPureクロマトグラフィーシステム(Cytiva Sweden AB、ウプサラ、スウェーデン)を用いて測定した。結果を図8に示す。
【0060】
図8から、多孔質ミクロスフェアA、B、C、Dが実質的に同じ粒径(dミクロスフェア)であることを前提とした場合、最小の多孔質ネットワーク直径を有する多孔質ミクロスフェアA(d=1.0ミクロン)の吸着量は5-7mg/mLであり、移動相の流速が上昇するにつれて、その吸着量は明らかに低下する傾向があることがわかる。このことは、ミクロスフェアのサイズ比d/dミクロスフェアが小さい場合、TGY傾向が拡散する形で吸着することを示している。多孔質ネットワークの直径が比較的大きい多孔質ミクロスフェアB(d=1.4ミクロン)、C(d=1.8ミクロン)、D(d=2.2ミクロン)の吸着量はそれぞれ6-8mg/mL、9-11mg/mL、14-15mg/mLであり、その吸着量は移動相の流速の上昇と下降の傾向を緩やかにし、より高い流速でもその吸着量の傾向を維持することができる。これにより、多孔質ミクロスフェアのサイズ比であるd/dミクロスフェアを調整することにより、クロマトグラフィーカラム中の物質移動モードを調整することができる。すなわち、ミクロスフェアのサイズ比d/dミクロスフェアを高めることにより、物質が流動相間に対流方式で移動され、その吸着挙動が流量に影響されないようにすることができる。
【0061】
試験結果2:背圧試験
【0062】
図9は、A、B、C及びDのミクロスフェアから調製された4種類のクロマトグラフィーカラムの異なる線形流速における背圧曲線である。その結果、4種類のクロマトグラフィーカラムは移動相の高操作流速ではいずれも低背圧を有することが示され、高流速(>600cm/hr)で示された背圧数値は、図3Aに示された技術の流速に対する背圧値の効果よりもはるかに小さく、本実施形態では、Aサンプルであっても背圧/流速の傾斜率が7.5x10-5MPa cm hr-1 、従来技術の130又は62x10-5MPa cm hr-1よりもはるかに小さく、本発明の実施形態のミクロスフェアから調製されたクロマトグラフィーカラムの利点を完全に示しているため、本発明は更に、中空カラムであり、その中に前記の複数のミクロスフェアを充填したクロマトグラフィーカラムを含むことが示され、少なくとも1つの流体入力端及び少なくとも1つの流体出力端を有する複数の多孔質ミクロスフェアであって、流体の背圧の相対的な流体流量の斜率値が50x10-5MPa cm hr-1以下又は30 x10-5MPa cm hr-1以下又は10x10-5MPa cm hr-1以下であることを特徴とするクロマトグラフィーカラム。
【0063】
本発明は前記の好ましい実例を参照して説明したが、好ましい実例は例示の目的のために与えられたものであって、本発明の範囲を限定する意図はなく、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、関連技術に精通している者にとって極めて明白な様々な変更と変更を行うことができることを認識すべきである。
【符号の説明】
【0064】
カラム………10
流体入力端………12
流体出力端………14
静相………20
移動相……30
多孔質ミクロスフェア……40
球状巨大孔……41
開放型多孔質ネットワーク……42
開口……43
[生体材料の寄託]
なし
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9