(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】防災ブロックの製造装置及び防災ブロックの製造方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/14 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
E02B3/14 301
(21)【出願番号】P 2023147487
(22)【出願日】2023-09-12
【審査請求日】2024-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502398850
【氏名又は名称】株式会社ネオコンクリート
(74)【代理人】
【識別番号】100097179
【氏名又は名称】平野 一幸
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅由
(72)【発明者】
【氏名】北原 哲五郎
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-018809(JP,U)
【文献】特開平11-105023(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1282633(KR,B1)
【文献】特開2020-051060(JP,A)
【文献】特開2008-062529(JP,A)
【文献】実開昭58-185411(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/14
B28B 7/26
E02D 17/20
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機枠と、
m、nを3以上の自然数として、前記機枠の水平面内において、第1の方向にm個、前記第1の方向と直交する第2の方向にn個並設され、複数の上側型枠と、前記複数の上側型枠と上下方向一対一に対応する、複数の下側型枠とを有する複数の型枠ユニットと、
前記機枠に支持され、前記複数の上側型枠及び前記複数の下側型枠に振動を印加するバイブレータと、
前記機枠に内蔵され、前記複数の上側型枠と前記複数の下側型枠の上下方向相対位置を変更する昇降機構と、
前記第1の方向にm個並設される前記下側型枠の中心線に沿って水平部が架設され、両端部が前記機枠から起立する、n個の吊板とを備える防災ブロックの製造装置であって、
前記複数の下側型枠のそれぞれは、
前記防災ブロックの底面を規定する水平な底板と、
前記防災ブロックの正面、背面及び左右両側面を規定する外周面ガイドと、
前記吊板の前記水平部に上端部が固着され、下端部と前記底板との間に隙間が存在し、且つ、前記防災ブロックの上面中央に開設される中央孔を規定する吊中子とを有し、
前記複数の上側型枠のそれぞれは、
前記吊板の前記水平部と前記中心線に沿って摺接するスリットと、
前記中心線を中心として、線対称に配設される一対のシューとを有し、
前記一対のシューは、
ヒーターと、
前記防災ブロックの上面に形成される一対の突起を規定する上面規定部と、
前記一対の突起の間において凹設される中央溝部を規定する中央押込部と、
前記外周面ガイドの内面に摺接する外周面とを有し、
前記複数の上側型枠と前記複数の下側型枠を即時脱型し、mxn個の製品を搬出することを特徴とする防災ブロックの製造装置。
【請求項2】
前記一対のシューは、前記一対の突起の外側に凹設される外側溝部を規定するテーパ規定部とをさらに有する請求項1に記載の防災ブロックの製造装置。
【請求項3】
前記複数の下側型枠のそれぞれは、前記外側溝部よりも更に凹む側孔を規定する、一対の固定中子をさらに有する請求項2に記載の防災ブロックの製造装置。
【請求項4】
前記防災ブロックを構成する材料は、ゼロスランプポーラス配合による請求項1から3のいずれかに記載の防災ブロックの製造装置。
【請求項5】
m、nを3以上の自然数として、機枠の水平面内において、第1の方向にm個、前記第1の方向と直交する第2の方向にn個並設される、複数の上側型枠と、前記複数の上側型枠と上下方向一対一に対応する、複数の下側型枠とを、離間した初期位置とする工程と、
前記複数の上側型枠と前記複数の下側型枠との間に、ゼロスランプポーラス配合により調整した材料を供給する工程と、
前記複数の上側型枠と前記下側型枠とを密着させ、バイブレータにより振動を印加すると共に、前記上側型枠に内蔵されたヒーターにより、製品の上面側を加熱する工程と、
前記複数の上側型枠と前記複数の下側型枠を即時脱型し、mxn個の製品を搬出する工程とを含む防災ブロックの製造方法であって、
前記複数の下側型枠のそれぞれは、
前記防災ブロックの底面を規定する水平な底板と、
前記防災ブロックの正面、背面及び左右両側面を規定する外周面ガイドと、
吊板の
水平部に上端部が固着され、下端部と前記底板との間に隙間が存在し、且つ、前記防災ブロックの上面中央に開設される中央孔を規定する吊中子とを有し、
前記複数の上側型枠のそれぞれは、
前記吊板の前記水平部と
中心線に沿って摺接するスリットと、
前記中心線を中心として、線対称に配設される一対のシューとを有し、
前記一対のシューは、
ヒーターと、
前記防災ブロックの上面に形成される一対の突起を規定する上面規定部と、
前記一対の突起の間において凹設される中央溝部を規定する中央押込部と、
前記外周面ガイドの内面に摺接する外周面とを有する
ことを特徴とする防災ブロックの製造方法。
【請求項6】
前記一対のシューは、前記一対の突起の外側に凹設される外側溝部を規定するテーパ規定部とをさらに有する請求項5に記載の防災ブロックの製造方法。
【請求項7】
前記複数の下側型枠のそれぞれは、前記外側溝部よりも更に凹む側孔を規定する、一対の固定中子をさらに有する請求項6に記載の防災ブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ため池、河川等の流水域に接触する法面に設置される防災ブロックの製造装置及びそれによる防災ブロックの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ため池、クリーク、河川等の付近に、法面の保護や浸食防止を意図して、複数のコンクリートブロックを、合成繊維等からなるフィルターシートに一体化した、ブロックマットが使用されている。
【0003】
特許文献1(特開2019-15108号公報)は、フィルターシートの一面に、同じ向きに複数の防災ブロックを付設する技術を開示する。また、特許文献2(特開2010-133152号公報)は、同種のブロックマットの製造方法を開示する。ここで言う防災とは、主として水難事故を防ぐことであり、ブロックの周辺部に凹凸が形成され、手を掛けることができるとされている。
【0004】
しかしながら、従来の防災ブロックを平面視すると、その面積のほとんどが平坦且つ滑らかな面となっている。したがって、実際には、手足が滑り、人力での脱出が非常に困難であると考えられ、実用上の効果に疑問が残る。
【0005】
また、特許文献3(実開平7-18809号公報)は、2個のブロックを製造するにあたり、吊中子を使用する技術を開示するが、3個以上の場合、どのように構成すべきか開示も示唆もない。また、中子は、全て上下に貫通するものだけであり、植物が地面から繁茂しないようにしたいという要請に答えることができない。
【文献】特開2019-15108号公報
【文献】特開2010-133152号公報
【文献】実開平7-18809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、水難事故防止に有効な防災ブロックを、実用上十分な能率をもって、製造可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る防災ブロックの製造装置は、機枠と、m、nを3以上の自然数として、機枠の水平面内において、第1の方向にm個、第1の方向と直交する第2の方向にn個並設され、複数の上側型枠と、複数の上側型枠と上下方向一対一に対応する、複数の下側型枠とを有する複数の型枠ユニットと、機枠に支持され、複数の上側型枠及び複数の下側型枠に振動を印加するバイブレータと、機枠に内蔵され、複数の上側型枠と複数の下側型枠の上下方向相対位置を変更する昇降機構と、第1の方向にm個並設される下側型枠の中心線に沿って水平部が架設され、両端部が機枠から起立する、n個の吊板とを備え、複数の下側型枠のそれぞれは、防災ブロックの底面を規定する水平な底板と、防災ブロックの正面、背面及び左右両側面を規定する外周面ガイドと、吊板の水平部に上端部が固着され、下端部と底板との間に隙間が存在し、且つ、防災ブロックの上面中央に開設される中央孔を規定する吊中子とを有し、複数の上側型枠のそれぞれは、吊板の水平部と中心線に沿って摺接するスリットと、中心線を中心として、線対称に配設される一対のシューとを有し、一対のシューは、ヒーターと、防災ブロックの上面に形成される一対の突起を規定する上面規定部と、一対の突起の間において凹設される中央溝部を規定する中央押込部と、外周面ガイドの内面に摺接する外周面とを有し、複数の上側型枠と複数の下側型枠を即時脱型し、mxn個の製品を搬出する。
【0008】
この構成において、一回の動作で、m×n個(9個)以上の防災ブロックを一括して、実用上十分な能率をもって製造することができる。
【0009】
また、吊板の水平部と上側型枠のスリットとが摺接し、シューの外周面が下側型枠の外周面ガイドと摺接することにより、多数個取りの場合問題となりやすい、上側型枠と下側型枠の昇降方向における位置精度が、良好に確保される。
【0010】
上面規定部により、防災ブロックの上面に形成される一対の突起が規定され、中央押込部により、これらの突起の内側に中央溝部が規定される。
【0011】
従って、利用者は、防災ブロックの上面中央に位置する一対の突起と、これらの間の中央溝部に、手や足を掛けて、自重を容易に支えることができる。これにより、池等からの脱出が極めて容易となる。
【0012】
加えて、吊中子により、防災ブロックの上面中央に中央孔が形成されるため、利用者は、中央溝部と共に、中央孔に手や足を掛けて、自重を一層容易に支えることができる。これにより、池等からの脱出が更に容易となる。
【0013】
しかも、吊中子の下端部と底板との間に隙間が存在するため、防災ブロックを貫通する孔は存在せず、防災ブロックの下方は、防災ブロックにより封鎖される。このため、植物の繁茂を防止したいとする要請に対応できる。また、上側型枠と下側型枠とを離間させた状態において、上側型枠と下側型枠との間に材料が供給されると、材料はその自重により上側型枠よりも先に下側型枠に接触し、吊中子の周囲にも回り込み隙間内へ至る。これにより、隙間内にも材料を充填することができる。
【0014】
第2の発明に係る防災ブロックの製造装置は、第1の発明に加え、一対のシューは、一対の突起の外側に凹設される外側溝部を規定するテーパ規定部とをさらに有する。
【0015】
この構成により、テーパ規定部が、一対の突起の外側において外側溝部を規定するので、利用者は、防災ブロックの中央部だけでなく、外側においても、手や足を掛けて、容易に脱出できる。
【0016】
第3の発明に係る防災ブロックの製造装置は、第2の発明に加え、複数の下側型枠のそれぞれは、外側溝部よりも更に凹む側孔を規定する、一対の固定中子をさらに有する。
【0017】
この構成により、利用者は、防災ブロックの外側において、外側溝部に加えて側孔にも、手や足を掛けて、容易に脱出できる。
【0018】
第4の発明に係る防災ブロックの製造装置は、第1の発明に加え、防災ブロックを構成する材料は、ゼロスランプポーラス配合による。
【0019】
この構成により、防災ブロックの外面がざらざらの粗面となるため、一層滑りにくくなり、利用者は、防災ブロックに、手や足を掛けて、一層容易に脱出できる。また、即時脱型により効率よく多数個取りにて、防災ブロックを製造できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、一連の単位動作で、m×n個(9個)以上の防災ブロックを多数個取りすることができる。
【0021】
多数個取りする際に問題となりやすい、上側型枠と下側型枠の昇降方向における位置が、吊板の水平部と上側型枠のスリットとが摺接し、シューの外周面が下側型枠の外周面ガイドと摺接することにより、正確に調整される。
【0022】
利用者は、防災ブロックの上面中央に位置する一対の突起と、これらの間の中央溝部、さらに中央孔にも、手や足を掛けて、自重を容易に支えることができる。これにより、池等からの脱出が極めて容易となる。
【0023】
隙間に材料が充填されることにより、防災ブロックを貫通する孔は存在しない。したがって、防災ブロックの下方は、防災ブロックにより封鎖され、植物の繁茂を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
図1は、初期位置にある本発明の一実施の形態における防災ブロックの製造装置を示す側面図、
図2は、
図1のA-A線による同装置の平面図、
図3は、材料供給時における同装置の側面図、
図4は、上側型枠と下側型枠が密着した状態における同装置の側面図、
図5は、本発明の一実施の形態における防災ブロックの製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【0026】
図1、
図2に示すように、箱形をなす機枠1には、次の要素が支持される。m、nを3以上の自然数として、複数の上側型枠20と、複数の上側型枠20と上下方向一対一に対応する複数の下側型枠30とからなる、複数の型枠ユニット10が、機枠1の水平面内において、第1の方向xにm個、第1の方向xと直交する第2の方向yにn個並設される。
【0027】
本形態では、m=3、n=5であり、m×n=15である。勿論、これらの数値は、例示に過ぎず、種々変更しても差し支えない。
【0028】
機枠1には、油圧シリンダ等からなる昇降機構(図示せず)が内蔵されており、昇降機構は、複数の上側型枠20と複数の下側型枠30の上下方向相対位置を変更する。図面では、図示を容易にするために、下側型枠30が、一定の高さを保持し、これに対して、上側型枠20の上下方向位置を、昇降機構により、変更するように示しているが、これは、例示に過ぎない。
【0029】
より好ましくは、複数の上側型枠20と複数の下側型枠30とのそれぞれに、昇降機構を設け、複数の上側型枠20と複数の下側型枠30とが、互いに独立して昇降できるようにすると良い。
【0030】
しかしながら、複数の上側型枠20と複数の下側型枠30の上下方向相対位置を変更可能であれば、十分であり、この条件が満たされる範囲で、種々変更しても本願発明の保護範囲に属することとなる。
【0031】
機枠1の下側型枠30の反対側には、複数の上側型枠20及び複数の下側型枠30に振動を印加するバイブレータ4が配置され、バイブレータ4には、振り子5が設けられる。
【0032】
図2に示すように、第1の方向xにm個(本形態では、3個)並ぶ型枠ユニット10の中心線に沿って、第1の方向xを長手方向とする吊板2が、n個(本形態では、5個)配設される。
【0033】
吊板2の両端部2a、2bは、機枠1の一定高さから上方に起立し、両端部2a、2bの間は、機枠1の一定高さよりも一定距離だけ高い、水平部2cとなっている。吊板2は、下側型枠20と上下方向位置を同じくするのであるが、下側型枠20のそのものにではなく、機枠1に支持されている。
【0034】
合計m×n個の型枠ユニット10は、それぞれ同じ構成をなす。以下、
図6~
図9を参照しながら、単一の上側型枠20と、単一の下側型枠20とからなる、単一の型枠ユニット10の構成を説明する。
【0035】
図6は、本発明一実施の形態における単一の型枠ユニット(離間状態)を示す斜視図、
図7は、同単一の型枠ユニット(離間状態)を示す一部断面図、
図8は、同単一の型枠ユニット(密着状態)を示す一部断面図、
図9は、本発明の一実施の形態における防災ブロックの斜視図である。
【0036】
図9に示すように、本形態における防災ブロック100は、平面視で矩形をなす。これに対応すべく、下側型枠30は、次の要素を有する。
【0037】
水平な底板31は、防災ブロック100の底面100bを規定する。
【0038】
外周面ガイド34は、防災ブロック100の正面、背面及び左右両側面からなる外周面100aを規定する。
【0039】
吊中子37は、防災ブロック100の上面中央に開設される中央孔104を規定する。吊中子37は、吊板2の(
図7の中心線L上に位置する)水平部2cに上端部37aが固着され、下端部37bが底板31の上面31aよりも上方に位置し底板31の上面31aまで至らず、下端部37bと底板31の上面31aとの間には、隙間tが形成される。
【0040】
このように、吊中子37を下側型枠30側に配置し、吊板2の水平部2cに支持させると共に、隙間tを形成しているので、次の技術的メリットがある。
【0041】
後述するように、上側型枠20と下側型枠30とを離間させた状態において、上側型枠20と下側型枠30との間に生コンクリートからなる材料を供給すると、材料は、締め固めされていないバラバラの状態にあり、その自重により、上側型枠20よりも先に下側型枠30に接触する。このとき、既に吊中子37は、下側型枠30内に存在し、しかも、吊中子37の下端部37bと底板31との間に隙間tが存在している。
【0042】
よって、下側型枠30内に入った材料は、吊中子37の周囲において、
図7の矢印Nで示す方向に回り込み、隙間t内にも至る。これにより、隙間t内にも、材料を円滑に送り込む(充填する)ことができる。
【0043】
このようにせずに、吊中子乃至それに相当する部材を上側型枠20側に設けたとすると、上述したように、材料は、上側型枠20よりも先に下側型枠30に接触するから、上側型枠20が下側型枠30に接近する時には、既に、中央付近にかなりの厚みをもった材料が存在していることとなり、厚みをもった材料を押しのけつつ、吊中子乃至それに相当する部材を押し込まなければならなくなる。これは、現実的には不可能に近く困難を極める。
【0044】
下側型枠30に上下方向一対一に対応する、上側型枠20は、次の要素を有する。
【0045】
図7の中心線L上には、同軸のスリット21が開設され、スリット21は、吊板2の水平部2cと摺接する。
【0046】
右シュー22と左シュー23とからなる、一対のシュー22、23は、スリット21(即ち、中心線L)を中心として、線対称に配設される。
【0047】
一対のシュー22、23は、ヒーター(図示せず)を内蔵すると共に、防災ブロック100の上面に形成される一対の突起101、102を規定する上面規定部22b、23bと、一対の突起101、102の内側に凹設される中央溝部103を規定する中央押込部22a、23aと、外周面ガイド33、34の内面に摺接する外周面22d、23dとを有する。
【0048】
テーパ規定部22c、23cは、防災ブロック100の一対の突起101、102の外側に凹設される外側溝部(右側溝部105と左側溝部106)を規定する。
【0049】
一対の固定中子35、36は、右側溝部105と左側溝部106とよりも更に凹む側孔(右側孔107と左側孔108)を規定する。固定中子35、36の下部に形成されるテーパ面35a、36aのなす角θは、大きめ(例えば、32°~48°)に設定すると良い。このようにすると、この付近におけるコンクリート充填が良好となり好ましい。
【0050】
材料を、上側型枠20と下側型枠30の間に供給し、上側型枠20を、下側型枠30に対して相対的に下降させ、限界まで至ると、材料は、
図8の右上がりのハッチングで示すように充填される。
【0051】
この状態において、バイブレータ4を作動させて、材料の締固めを行い、これにあわせて、シュー22、23に内蔵されたヒーターを動作させ、防災ブロック100の上面側を加熱する。これにより、凹凸が激しい上面側において、水分を早急に飛ばして、離型時に欠けや型枠へのコンクリート付着等の不具合を生じないように、防止策をとることができる。
【0052】
次に、
図5を参照しながら、以上のように構成された防災ブロックの製造装置を用いて、防災ブロックを製造する製造方法の各工程を説明する。まず、ステップ1にて、材料を調整する。具体的には、置き場に蓄えられている、セメント、細骨材、粗骨材を、ミキシングプラント(図示せず)に運び、ゼロスランプ配合を行う。水分は、30重量パーセント程度とし、材料をバサバサの状態にする。
【0053】
次にステップ2にて、
図1に示すように、装置を、上側型枠20と下側型枠30とが離間する、初期位置とする。
【0054】
次にステップ3にて、
図3に示すように、材料を上側型枠20と下側型枠30との間に供給する。上述したように、材料は、上側型枠20よりも先に下側型枠30に接触し、隙間t内への回り込むと共に、テーパ面35a、36aの周辺へも良く充填される。
【0055】
次にステップ4にて、上側型枠20を下降させて下側型枠30と密着させる。
【0056】
次にステップ5にて、バイブレータ4を作動して振動を印加し、材料の締固めを行うと共に、ステップ6にて、シュー22、23に内蔵されたヒーターを使用して、凹凸が激しい防災ブロック100の上面側を加熱し、水分を早急に飛ばす。これにより、離型時に欠け等の不具合を生じないように、防止策をとることができる。
【0057】
なお、ステップ5、ステップ6は、逆の順序で実施しても良いし、同時に実施しても差し支えない。
【0058】
一連の操作が終了したら、ステップ7にて、上側型枠20及び下側型枠30を上昇させ、即時脱型を行う。その結果、ステップ8にて、m×n個の製品が得られる。その後の過程の説明は、省略する。
【0059】
以上のようにして、得られた複数個の防災ブロックを、所定養生後に合成繊維等からなるシートに接着し、ため池の水際を中心に法面に敷設する。こうすると、万一、水中に落下する事故が生じたとしても、自らの脱出が容易に行える。本明細書で述べている防災効果は、水難学会による実証試験を経た結果を反映したものであり、実証済みの内容である。
【0060】
例えば、
図10に示すように、本形態に係る防災ブロックが、以上のように設置されていれば、一定の間隔で、右側溝部105、中央溝部103及び左側溝部106のセットと、右側孔107、中央孔104、左側孔108のセットが並ぶことになるから、これらの凹部に、利用者は手や足を掛けて、水面111の付近において、法面110をよじ登ることができる。
【0061】
更には、ダイバーの免許を有する水難学会のメンバーが、子供を両手で抱えて(つまり両手がふさがった状態で)、メンバーの足を凹部に掛けるだけで脱出が可能であったことが実証されている。
【0062】
本形態に係る防災ブロックの製造装置によれば、相当程度の能率(例えば一日に、500立方メートル程度)の防災ブロックを量産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】初期位置にある本発明の一実施の形態における防災ブロックの製造装置を示す側面図
【
図2】
図1のA-A線による本発明の一実施の形態における防災ブロックの製造装置の平面図
【
図3】材料供給時における本発明の一実施の形態における防災ブロックの製造装置の側面図
【
図4】上側型枠と下側型枠が密着した状態における本発明の一実施の形態における防災ブロックの製造装置の側面図
【
図5】本発明の一実施の形態における防災ブロックの製造方法の各過程を示すフローチャート
【
図6】本発明一実施の形態における単一の型枠ユニット(離間状態)を示す斜視図
【
図7】本発明一実施の形態における単一の型枠ユニット(離間状態)を示す一部断面図
【
図8】本発明一実施の形態における単一の型枠ユニット(密着状態)を示す一部断面図
【
図9】本発明の一実施の形態における防災ブロックの斜視図
【
図10】本発明の一実施の形態における防災ブロックを複数設置した法面を利用者がよじ登る状態を示すイラスト
【符号の説明】
【0064】
1 機枠
2 吊板
2a、2b 起立部
2c 水平部
4 バイブレータ
5 振り子
10 型枠ユニット
20 上側型枠
21 スリット
22 右側シュー
23 左側シュー
22a、23a 中央押込部
22b、23b 上面規定部
22c、23c テーパ規定部
22d、23d 外周面規定部
30 下側型枠
31 底面
31a 上面
32 壁
33、34 外周面ガイド
35、36 固定中子
37 吊中子
37a 上端部
37b 下端部
37c 周面
100 防災ブロック
100a 周面
100b 底面
101 第1突起
102 第2突起
103 中央溝部
104 中央孔
105 右側溝部
106 左側溝部
107 右側孔
108 左側孔
110 法面
111 水面
L 中心線
t 隙間
【要約】
【課題】 水難事故防止に有効な防災ブロックを、実用上十分な能率を以て、製造する技術を提供する。
【解決手段】 下側型枠30は、底面100bを規定する水平な底板31と、外周面を規定する外周面ガイド33、34と、吊板2の水平部2cに上端部37aが固着され、下端部37bと底板31の間に隙間tが存在し、且つ、上面中央に開設される中央孔104を規定する吊中子37とを有する。上側型枠20は、水平部2cと摺接するスリット21と、上面に形成される突起101、102を規定する上面規定部22b、23bと、突起101、102の内側に凹設される中央溝部103を規定する中央押込部22a、23aと、外周面ガイド33、34の内面に摺接する外周面22d、23dとを有する、一対のシュー22、23を有し、一対のシュー22、23は、スリット21を中心として、線対称に配設される。
【選択図】
図7