(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】海苔製品
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20240723BHJP
【FI】
A23L17/60 103A
(21)【出願番号】P 2023151085
(22)【出願日】2023-09-19
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2023058432
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512033914
【氏名又は名称】株式会社小善本店
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】小林 智則
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】小岩 裕司
(72)【発明者】
【氏名】井脇 直也
(72)【発明者】
【氏名】照井 沙季
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-242821(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0022010(KR,A)
【文献】特開2021-119749(JP,A)
【文献】実開昭58-041190(JP,U)
【文献】特開平03-076563(JP,A)
【文献】特開昭63-209569(JP,A)
【文献】特開2017-121229(JP,A)
【文献】特開2013-226064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔製品であって、
山部と谷部が繰り返す波板状に形成され、
前記山部の頂部又は/及び谷部の谷底部が曲面状であ
り、
レーザカットによって形成された模様が設けられ、
前記模様は、特定の方向から見た場合にのみ当該模様に見え、それ以外の方向から見た場合には当該模様に見えない、
ことを特徴とする海苔製品。
【請求項2】
請求項1記載の海苔製品において、
模様は、特定の方向以外の方向から見た場合には当該模様に見えず、孔又は線に見える、
ことを特徴とする海苔製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海苔製品として、フラットなシート状(以下「シート状」という)に成形された焼き海苔や味つけ海苔等が広く一般に普及している(特許文献1)。近年では、お弁当のおかずを入れるカップ形状の海苔等も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-033580号公報
【文献】実開平06-017497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シート状の海苔は、噛んだ時に歯ごたえを感じにくく、食感を楽しむという感覚を得にくかった。本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、従来のシート状の海苔とは食感の異なる新たな海苔製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[海苔製品]
本発明の海苔製品は、山部と谷部が繰り返す波板状に形成され、山部の頂部又は/及び谷部の谷底部が曲面状にされたものである。
【0006】
前記海苔製品は、海苔の表面と裏面の双方又はいずれか一方に調味液、味付き粉末及び味付きペーストのいずれか一又は二以上が塗布されたものとすることもできる。
【0007】
前記海苔製品は、波板状に形成された複数枚の海苔材が積層されて構成されたものとすることもできる。
【0008】
前記海苔製品は、表面と裏面の双方又はいずれか一方に反り上がる反り上がり部を備えたものとすることもできる。
【0009】
前記海苔製品は、ロール状に成形されたものとすることもできる。
【0010】
[海苔製品製造方法]
本願における海苔製品製造方法は、ローラ側谷部及びローラ側山部を備えた一対の加温された成形ローラの間に海苔材を送り込み、加温された成形ローラによって、海苔材の表裏両面にローラ側谷部及びローラ側山部の形状に沿った谷部及び山部を成形する方法である。
【0011】
本願における海苔製品製造方法では、海苔材として、複数枚の板状の海苔材の間に調味液、味付き粉末及び味付きペーストのいずれか一又は二以上が挟まれた海苔材を用いることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の海苔製品は、山部と谷部が繰り返す波板状に形成されているため、フラットなシート状の海苔にはない新たな食感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は本発明の海苔製品の一例を示す斜視図、(b)は(a)の正面図。
【
図4】(a)は海苔製品の一例を示す斜視図、(b)は(a)の海苔製品の寸法説明図。
【
図5】(a)は海苔製品の他例を示す斜視図、(b)は(a)の海苔製品の寸法説明図。
【
図6】(a)は海苔製品の他例を示す斜視図、(b)は(a)の海苔製品の寸法説明図。
【
図7】(a)は海苔製品の他例を示す斜視図、(b)は(a)の海苔製品の寸法説明図。
【
図8】(a)は海苔製品の他例を示す斜視図、(b)は(a)の海苔製品の寸法説明図。
【
図9】(a)は海苔製品の他例を示す斜視図、(b)は(a)の海苔製品の寸法説明図。
【
図10】(a)は海苔製品の他例を示す斜視図、(b)は(a)の海苔製品の寸法説明図。
【
図11】(a)は海苔製品の他例を示す斜視図、(b)は(a)の海苔製品の寸法説明図。
【
図12】(a)は海苔製品の他例を示す斜視図、(b)は(a)の海苔製品の寸法説明図。
【
図13】本
願における海苔製品製造方法の一例を示す説明図。
【
図14】本
願における海苔製品製造方法の他例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
本発明の海苔製品の一例を、図面を参照して説明する。一例として
図1(a)(b)に示す海苔製品は、ベースとなる海苔材10の両面に山部11と谷部12が繰り返す波板状(正弦波のような形状)に形成されたものである。
【0015】
この実施形態の海苔製品は平面視方形状であり、海苔材10の一方の面(説明の便宜上、「表面」という)10aに山部11と谷部12が交互に設けられ、他方の面(説明の便宜上、「裏面」という)10bに山部11と谷部12が交互に設けられている。
【0016】
この実施形態では、表裏両面に設けられた山部11と谷部12が連続しており、表面10a側の谷部12は裏面10b側の山部11になり、裏面10b側の谷部12は表面10a側の山部11になる。
【0017】
図2に示すように、この実施形態では、山部11の高さH(別の言い方をすれば、谷部12の深さ)を5mm程度としてある。ここで示す数値は一例であり、山の高さは5mmより高くても低くても良い。たとえば、5mmのほか、3mm、4mm、6mm、7mm等、高さの異なる複数の種類を用意しておくこともできる。
【0018】
図1(a)(b)に示す例では、山部11と谷部12の数が七つの場合を一例としているが、ここで説明した山部11と谷部12の数は一例であり、山部11と谷部12の数はこれより多くても少なくても良い。また、山部11と谷部12は、海苔材10の表面10aと裏面10bのいずれか一方のみに形成されるようにすることもできる。
【0019】
この実施形態では、山部11の頂部11aと谷部12の谷底部12aが曲面状になるようにしてある。曲面状とすることで、鋭角な山形状とする場合に比べて、山部11の頂部11aや谷部12の谷底部12aから千切れるリスクを低減することができ、歩留まりを良くすることができる。
【0020】
図2に示すように、この実施形態では、隣接する山部11の頂部11a同士の間隔(以下「頂部間距離」という)L1が7~10mm程度となるように、換言すれば、谷部12の谷底部12a同士の間隔(以下「谷底間距離」という)L2が7~10mm程度となるようにしてある。
【0021】
したがって、一の山部11の頂部11aから当該山部11に連続する谷部12の谷底部12aまでの間隔(以下「頂部谷底間距離」という)L3は、頂部間距離L1及び谷底間距離L2の半分となる。ここで説明した各間隔L1~L3は一例であり、山部11と谷部12はこれよりも狭い間隔で設けることも、広い間隔で設けることもできる。
【0022】
この実施形態の海苔製品は、成型した半製品を乾燥させることによって完成するため、
図3に示すように、加工後の海苔製品には表面10aと裏面10bの双方又はいずれか一方に反り上がる不規則な反り上がり部13が形成される。
【0023】
この実施形態の海苔製品では、山部11と谷部12があることで、従来のフラットなシート状の海苔にはない食感が得られる。更に反り上がり部13が加わった場合には、山部11と谷部12だけの場合とも異なる別の食感が得られる。
【0024】
(変形例)
前記実施形態では、海苔製品が一枚の海苔材10で構成された場合を一例としているが、本発明の海苔製品は二枚以上の海苔材10を積層して構成することもできる。二枚以上の海苔材10を積層することで、一枚の海苔材10で構成する場合に比べて歯ごたえが強くなり、一枚の海苔材10で構成する場合とは異なる食感を得られる。
【0025】
二枚以上の海苔材10を積層する場合、山部11同士が重なり、谷部12同士が重なるように積層するほか、山部11同士が重ならずにずれ、谷部12同士が重ならずにずれるように積層することもできる。
【0026】
前者の重ね方の場合には、山部11同士が重なり、谷部12同士が重なることで一枚の場合にはない歯ごたえを得られ、後者の重ね方の場合には、山部11と谷部12が重なるような構造となるため、従来にはないサクサクとした食感を得られる。
【0027】
前記実施形態では、ベースとなる海苔材10の両面側に山部11と谷部12が現れるようにしてあるが、本発明の海苔製品は、ベースとなる海苔材10の片面側のみに山部11と谷部12が現れるようにすることもできる。
【0028】
本発明の海苔製品では、ベースとなる海苔材10として、海苔に他の食材を混ぜ込んだものを用いることもできる。他の食材としては、海苔と相性の良い各種海産物(たとえば、シラスや昆布、魚節等)のほか、細かく刻んだ野菜等が挙げられる。
【0029】
このほか、本発明の海苔製品では、表面10aと裏面10bの双方又はいずれか一方の面に調味液を塗布することもできる。調味液には、醤油や酒、みりん、塩、砂糖といった各種調味料(これらを適宜の分量で組み合わせたものを含む)を用いることができる。
【0030】
本発明の海苔製品では、表面10aと裏面10bの双方又はいずれか一方の面に、味付き粉末を塗布する(海苔製品に付着させることを含む。)こともできる。味付き粉末としては、塩のほか、わさび粉末や唐辛子粉末、味噌粉末、スパイス粉末、カレー粉末、胡椒粉末、バジル粉末等、各種の味(風味を含む)の粉末が含まれる。
【0031】
海苔製品のサイズに特に限定はなく、サイズの異なる複数のパターンでの商品展開が可能である。たとえば、
図4(a)(b)に示す海苔製品は縦210mm×横124mm程度である。
【0032】
このほか、
図5(a)(b)に示す海苔製品は縦105mm×横124mm程度、
図6(a)(b)に示す海苔製品は縦52.5mm×横62mm程度、
図7(a)(b)に示す海苔製品は縦52.5mm×横31mm程度、
図8(a)(b)に示す海苔製品は縦31mm×横105mm程度、
図9(a)(b)に示す海苔製品は縦52.5mm×横124mm程度である。
【0033】
また、
図10(a)(b)に示す海苔製品は縦135mm×横190mm程度、
図11(a)(b)に示す海苔製品は縦135mm×横95mm程度、
図12(a)(b)に示す海苔製品は縦67.5mm×横95mm程度である。
【0034】
ここで示した海苔製品のサイズは一例であり、本発明の海苔製品のサイズは例示したサイズ以外であっても良い。海苔製品のサイズは、製品に応じて決定すればよく、たとえば、一口サイズにすることで海苔菓子とすることができ、従来の焼きのり(板海苔)と同程度のサイズにすることで食事用海苔とすることができる。
【0035】
また、波の向き(方向)に特に限定はなく、山部11と谷部12が海苔材10の短手方向に向けて繰り返すように構成することも、山部11と谷部12が海苔材10の長手方向に向けて繰り返すように構成することもできる。場合によっては、山部11と谷部12が海苔材10の角部から対角位置に向けて繰り返すように構成しても良い。
【0036】
この実施形態では、ベースとなる海苔材10の形状が四角形の場合を一例としているが、ベースとなる海苔材10の形状はこれら以外であっても良く、たとえば、真円形や楕円形、星形、多角形状等、任意の形状とすることができる。
【0037】
本発明の海苔製品には、図形や文字、イラスト等の各種模様(以下「模様等」という)を設けることもできる。模様等は、食用の材料を用いて設ける(描く)ことも、レーザ装置を用いたレーザカット等によって形成することができる。
【0038】
レーザカットによって模様等を設ける場合、海苔製品を平面から見た場合に模様が見えるようにするほか、海苔製品を斜めや横等、平面以外の特定の方向から見た場合にのみ模様が見えるようにすることもできる。
【0039】
たとえば、平面から見た場合にはレーザカットされた貫通孔や貫通線が単なる孔や線として見え、斜めから見た場合にはそれらの貫通孔や貫通線がつながった一つの模様として見えるようにすることができる。このようにすることで、立体的な表現が可能となり、これまでにない美的価値を付与することができる。
【0040】
本発明の海苔製品は、波板材を筒状の内面及び外面の双方に波が現れるように筒状(ロール状)に成形したものとすることもできる。この場合、内部空間には各種味付きペースト等を充填しておくこともできる。
【0041】
味付きペーストには、前述の味付き粉末と同様の味(風味)のものを用いることができる。内部空間にはペースト以外のものを入れても良い。ロール状にする場合、波板状の海苔に代えて、山部11及び谷部12のないフラットなシート状の海苔を用いることもできる。
【0042】
本発明の海苔製品は、複数枚(二枚以上)の海苔材10の間に、調味液、各種味付き粉末や各種味付きペーストを挟んだ構造にすることもできる。このようにすることで、山部11及び谷部12を備えた一枚の海苔製品とも、山部11及び谷部12を備えた海苔材10を二枚以上積層した海苔製品とも異なる新たな食感の海苔製品を得ることができる。
【0043】
なお、複数枚の海苔材10の間には、前述した各種調味液、各種味付き粉末及び各種味付きペースト(以下「調味液等」という)14のいずれか一又は二以上を挟み込むことができる。
【0044】
(海苔製品の製造方法)
本発明の海苔製品は、たとえば、
図13に示す海苔製品製造装置20を用いて製造することができる。この海苔製品製造装置20は、対向配置された一対の成形ローラ21a、21bと、両成形ローラ21a、21bを加温する加温装置22と、成形ローラ21a、21bの押圧力を調整する押圧力調整装置23を備えている。
【0045】
両成形ローラ21a、21bの外周面には、海苔材10に山部11と谷部12を成形するローラ側谷部24及びローラ側山部25が設けられている。ローラ側谷部24及びローラ側山部25は、各成形ローラ21a、21bの回転方向に連続して設けられている。
【0046】
この海苔製品製造装置20を用いて海苔製品を製造する場合、所定温度まで加温した両成形ローラ21a、21bの間に海苔材10を送り込み、両成形ローラ21a、21bによって海苔材10の表裏面に山部11及び谷部12を成形する。
【0047】
両成形ローラ21a、21bの間に送り込む海苔材10には、複数枚の板状の海苔材10の間に調味液、味付き粉末及び味付きペーストのいずれか一又は二以上が挟まれた海苔材10を用いることもできる(
図14参照)。
【0048】
なお、海苔材10への調味液等14の塗布は、両成形ローラ21a、21bを通過させる前(表裏面に山部11及び谷部12が成形される前)に行うことも、両成形ローラ21a、21bを通過させた後(表裏面に山部11及び谷部12が成形された後)に行うこともできる。
【0049】
また、前述の調味液等14は、海苔材10の表裏両面に設けることも片面のみに設けることもできる。二枚以上の海苔材10を用いる海苔製品においては、
図14に示すように、二枚の海苔材10の対向する面に調味液等14を塗布するのが好ましい。
【0050】
調味液等14を二枚の海苔材10の対向する面に塗布した場合、両成形ローラ21a、21bを通過させる前に調味液等14を塗布しても、調味液等14が成形ローラ21a、21bが直に接触せず、調味液等14が成形ローラ21a、21bの熱で焦げ付きにくいというメリットがある。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の海苔製品は、食事の時に食べる食事用海苔のほか、食事以外の時でも気軽に食べられる海苔菓子等として商品化することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 海苔材
10a (海苔材の)表面
10b (海苔材の)裏面
11 山部
11a (山部の)頂部
12 谷部
12a (谷部の)谷底部
13 反り上がり部
14 調味液等
20 海苔製品製造装置
21a、21b 成形ローラ
22 加温装置
23 押圧力調整装置
24 ローラ側谷部
25 ローラ側山部
H 山部の高さ(谷部の深さ)
L1 頂部間距離
L2 谷底間距離
L3 頂部谷底間距離
【要約】
【課題】 従来のシート状の海苔とは食感の異なる新たな海苔製品を提供する。
【解決手段】 本発明の海苔製品は、山部と谷部が繰り返す波板状に形成され、山部の頂部又は/及び谷部の谷底部は曲面状とされたものである。本発明の海苔製品は、表面と裏面の双方又はいずれか一方に調味液、味付き粉末及び味付きペーストのいずれか一又は二以上が塗布されたものとすることもできる。本発明の海苔製品は、波板状に形成された複数枚の海苔材を積層して構成することもできる。表面と裏面の双方又はいずれか一方に反り上がる反り上がり部を備えたものとすることもできる。本発明の海苔製品製造方法は、ローラ側谷部及びローラ側山部を備えた一対の加温された成形ローラの間に海苔材を送り込み、加温された成形ローラによって、海苔材の表裏両面にローラ側谷部及びローラ側山部の形状に沿った谷部及び山部を成形する方法である。
【選択図】
図1