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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】タイヤのサイドウォール保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 7/01 20060101AFI20240723BHJP
   B60B 7/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B60B7/01 C
B60B7/06 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023156617
(22)【出願日】2023-09-22
【審査請求日】2024-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509312868
【氏名又は名称】株式会社 東港タイヤサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 一宣
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(72)【発明者】
【氏名】進藤 眞
(72)【発明者】
【氏名】金田 明雄
(72)【発明者】
【氏名】眞尾 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悦久
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 一登
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-164903(JP,U)
【文献】特許第7327862(JP,B1)
【文献】特開平09-254603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 7/01
B60B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が備えるホイールに取り付けられたタイヤのサイドウォールに被さることが可能な板の形状を有するプロテクターと、
円環の形状を有し、前記プロテクターの内周部分に設けられて前記プロテクターを支持するベース部材であって、前記ホイールが有する円筒状に形成されたリムの円筒両端に設けられたリムフランジに前記リムの円筒端の側から向き合う状態に配置される前記ベース部材と、
前記ベース部材の円環の円周方向に等距離に設けられ、前記ベース部材の円環面に支持される縦棒部分と、前記縦棒部分に対して垂直に延びると共に、前記リムの内径と同じ円周上に配列された横棒部分とを有し、前記横棒部分が、前記リムの円筒空間に差し込まれたときに、前記横棒部分が前記リムの内壁に当接すると共に、前記縦棒部分が前記リムの前記円筒端の面に当接することにより、前記ベース部材を前記リムの円筒と同心に配置する複数のブロック部材と、
それぞれが前記ブロック部材の前記横棒部分それぞれに支持された複数の係止片であって、前記横棒部分それぞれが前記リムの円筒空間に差し込まれて前記リムの内壁に当接すると共に、前記縦棒部分それぞれが前記リムの前記円筒端の面に当接する場合に、それぞれが前記横棒部分の、前記リムの円筒空間奥側に位置する先端から前記リムの半径方向かつ外側へ突出して、前記リムの内壁に形成され、かつ前記リムの半径方向かつ外側へ凹みながら前記リムの内周方向へ延びる凹部に当接すると共に、前記リムの前記凹部を前記リムの半径方向かつ外側へ押圧することにより、前記リムに係止する前記複数の係止片と、
を備え
前記プロテクターは、前記係止片それぞれが前記リムに係止した状態で、前記サイドウォールに被さる、タイヤのサイドウォール保護装置。
【請求項2】
前記係止片それぞれは、弾性変形する材料で形成されており、弾性変形して前記リムの前記凹部に当接すると共に、その弾性力によって前記凹部を押圧することにより、前記リムに係止する、
請求項に記載のタイヤのサイドウォール保護装置。
【請求項3】
前記係止片それぞれは、
前記ブロック部材それぞれが有する前記横棒部分の、前記リムの円筒空間に差し込まれて前記リムの内壁に当接したときの、該円筒空間の側の第1面に沿って延びると共に、前記横棒部分の差し込まれた先の先端へ向かって延び、前記横棒部分の前記第1面に固定された基部と、
前記基部から折れ曲がって前記横棒部分の前記先端の端面に沿って延び、さらに、前記横棒部分の前記先端の端面から、前記横棒部分の、前記第1面と反対側にある第2面の外側へ突出する弾性変形可能な弾性変形部と、
を有し、
記弾性変形部は、湾曲部を有すると共に、前記横棒部分が前記リムの円筒空間に差し込まれて前記リムの内壁に当接したときに、前記リムの半径方向かつ外側へ前記湾曲部の凸面側を向け、さらに前記湾曲部が弾性変形して前記リムの前記凹部に当接することにより、前記リムに係止する、
請求項またはに記載のタイヤのサイドウォール保護装置。
【請求項4】
前記湾曲部は、前記リムの前記凹部よりも大きい半径で円弧状に折り曲げられることにより、円弧状に突出する凸面を有する金属板を有し、前記凸面を前記リムの半径方向かつ外側へ向けた状態で弾性変形することにより、前記凸面を前記リムの前記凹部に当接させて前記湾曲部を前記リムに係止させる、
請求項に記載のタイヤのサイドウォール保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤのサイドウォール保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事、採石場、鉱山等で使用される作業機械、建設機械等の大型車両では、石、木材、資材等の突起物との接触によってタイヤのサイドウォールが破損してしまうことがある。そこで、このサイドウォールの破損を防ぐため、車両のタイヤに装着するタイヤのサイドウォール保護装置が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、タイヤのサイドウォールを覆うプロテクターと、プロテクターを支えるロックリングとを備え、そのロックリングをホイールのリムに取り付けることにより、プロテクターをタイヤのサイドウォールに配置するサイドウォール保護装置が開示されている。この保護装置では、ロックリングは、C字状の止め輪と止め輪のC字の開口部に嵌めるロックパーツとにより構成されている。この保護装置は、止め輪をホイールの円筒状のリムに嵌め込み、その止め輪の開口部にロックパーツを嵌めて止め輪をリング状にすることにより、リムに装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7327862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタイヤのサイドウォール保護装置は、リムに嵌め込んだ止め輪にロックパーツを嵌めることにより、リムに装着される。しかしながら、このような保護装置では、より容易かつ確実にリムに装着できることが望まれている。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、容易かつ確実にリムに装着できるタイヤのサイドウォール保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係るタイヤのサイドウォール保護装置は、
車両が備えるホイールに取り付けられたタイヤのサイドウォールに被さることが可能な板の形状を有するプロテクターと、
円環の形状を有し、前記プロテクターの内周部分に設けられて前記プロテクターを支持するベース部材であって、前記ホイールが有する円筒状に形成されたリムの円筒両端に設けられたリムフランジに前記リムの円筒端の側から向き合う状態に配置される前記ベース部材と、
前記ベース部材の円環の円周方向に等距離に設けられ、前記ベース部材の円環面に支持される縦棒部分と、前記縦棒部分に対して垂直に延びると共に、前記リムの内径と同じ円周上に配列された横棒部分とを有し、前記横棒部分が、前記リムの円筒空間に差し込まれたときに、前記横棒部分が前記リムの内壁に当接すると共に、前記縦棒部分が前記リムの前記円筒端の面に当接することにより、前記ベース部材を前記リムの円筒と同心に配置する複数のブロック部材と、
それぞれが前記ブロック部材の前記横棒部分それぞれに支持された複数の係止片であって、前記横棒部分それぞれが前記リムの円筒空間に差し込まれて前記リムの内壁に当接すると共に、前記縦棒部分それぞれが前記リムの前記円筒端の面に当接する場合に、それぞれが前記横棒部分の、前記リムの円筒空間奥側に位置する先端から前記リムの半径方向かつ外側へ突出して、前記リムの内壁に形成され、かつ前記リムの半径方向かつ外側へ凹みながら前記リムの内周方向へ延びる凹部に当接すると共に、前記リムの前記凹部を前記リムの半径方向かつ外側へ押圧することにより、前記リムに係止する前記複数の係止片と、
を備え
前記プロテクターは、前記係止片それぞれが前記リムに係止した状態で、前記サイドウォールに被さることを特徴とする。
【0009】
前記係止片それぞれは、弾性変形する材料で形成されており、弾性変形して前記リムの前記凹部に当接すると共に、その弾性力によって前記凹部を押圧することにより、前記リムに係止してもよい。
【0010】
記係止片それぞれは、
前記ブロック部材それぞれが有する前記横棒部分の、前記リムの円筒空間に差し込まれて前記リムの内壁に当接したときの、該円筒空間の側の第1面に沿って延びると共に、前記横棒部分の差し込まれた先の先端へ向かって延び、前記横棒部分の前記第1面に固定された基部と、
前記基部から折れ曲がって前記横棒部分の前記先端の端面に沿って延び、さらに、前記横棒部分の前記先端の端面から、前記横棒部分の、前記第1面と反対側にある第2面の外側へ突出する弾性変形可能な弾性変形部と、
を有し、
記弾性変形部は、湾曲部を有すると共に、前記横棒部分が前記リムの円筒空間に差し込まれて前記リムの内壁に当接したときに、前記リムの半径方向かつ外側へ前記湾曲部の凸面側を向け、さらに前記湾曲部が弾性変形して前記リムの前記凹部に当接することにより、前記リムに係止してもよい。
【0011】
前記湾曲部は、前記リムの前記凹部よりも大きい半径で円弧状に折り曲げられることにより、円弧状に突出する凸面を有する金属板を有し、前記凸面を前記リムの半径方向かつ外側へ向けた状態で弾性変形することにより、前記凸面を前記リムの前記凹部に当接させて前記湾曲部を前記リムに係止させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、係止片それぞれをリムの内周面に当接させると共に、係止片それぞれにリムの内周面をリムの半径方向かつ外側へ押圧させるだけで、係止片それぞれをリムに係止させることができる。このため、本発明に係るタイヤのサイドウォール保護装置ではリムへの装着が容易かつ確実である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るタイヤのサイドウォール保護装置を装着した大型作業車の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るタイヤのサイドウォール保護装置の斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るタイヤのサイドウォール保護装置がホイールのリムに取り付けられたときのサイドウォール保護装置の正面図である。
図4図3に示すIV-IV切断線の断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るタイヤのサイドウォール保護装置が備えるブロック部材の斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係るタイヤのサイドウォール保護装置が備える係止片の斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係るタイヤのサイドウォール保護装置が備える係止片の平面図である。
図8】本発明の実施の形態に係るタイヤのサイドウォール保護装置が備える係止片の側面図である。
図9】本発明の実施の形態に係るタイヤのサイドウォール保護装置を装着した大型作業車のリムの一部分を写真で示した斜視図である。
図10】本発明の実施の形態に係るタイヤのサイドウォール保護装置を装着した大型作業車のホイールを写真で示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るタイヤのサイドウォール保護装置(以下、単にサイドウォール保護装置ともいう)について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。
【0017】
図1は、実施の形態に係るサイドウォール保護装置1を装着した大型作業車100の斜視図である。なお、図1では、大型作業車100の一例として、ホイールローダーを示している。
【0018】
図1に示すように、サイドウォール保護装置1は、大型作業車100が備えるタイヤのサイドウォールを保護する装置である。詳細には、タイヤのサイドウォールのうち、車両外側に面するサイドウォールは、大型作業車100が十分に舗装させていない箇所を走行するため、石、木材、コンクリート片等の突起物が接触しやすい。その結果、サイドウォールが破損してしまうことがある。このような大型作業車100のタイヤを保護するため、サイドウォール保護装置1は、組み合わされることにより全体でタイヤのサイドウォールを覆う複数のプロテクター10を備える。
【0019】
プロテクター10それぞれは、扇形の板の形状に形成されている。その材料は、例えば、上述した突起物等の障害物からタイヤのサイドウォールを保護するため、ある程度の強度があるものが望ましい。例えば、プロテクター10の材料はプラスチック、金属、ゴム、テキスタイル等である。また、プロテクター10の内径と外径は、タイヤのサイドウォールの内径と外径とほぼ同じである。そして、プロテクター10それぞれが組み合わされることにより、全体で環状の形状を形成している。その全体で環状の複数のプロテクター10は、タイヤのサイドウォールと同心に配置されることにより、タイヤのサイドウォールに被さってサイドウォールを覆っている。その結果、複数のプロテクター10は、上述した突起物等からタイヤのサイドウォールを保護している。
【0020】
また、プロテクター10それぞれは、図示しないが、例えば、平板状、湾曲した板の形状、一部で折れ曲がった板等の形状に形成されている。プロテクター10は、サイドウォールに沿った形状、例えば、先端の側で折れ曲がった形状等に形成されることにより、タイヤに被さったときにタイヤとの間の隙間を小さくして、タイヤとの間に石、砂等の異物が入ることを抑制している。
【0021】
このようなサイドウォール保護装置1は、タイヤが装着された大型作業車100のホイール110それぞれに取り付けられる。このため、取り付け作業の負担を小さくするため、サイドウォール保護装置1は、簡易な方法で装着できることが望ましい。また、大型作業車100が動作するときに装着対象のホイール110が回転するため、サイドウォール保護装置1は、ホイール110に確実に装着され、一度装着されると容易に外れないことが望ましい。そこで、サイドウォール保護装置1は、簡易な方法で装着でき、かつ確実に装着するため、それ自身の弾性力でホイール110のリム120に係止する複数の係止片を備える。
【0022】
続いて、図2図5を参照して、それら係止片30を含め、サイドウォール保護装置1の詳細な構成を説明する。なお、サイドウォール保護装置1は、図1に示す大型作業車100のホイール110それぞれに装着されるが、互いに同じ構成である。このため、以下、それらのうちの一つを図示する図2図5を用いて説明する。
【0023】
図2は、サイドウォール保護装置1の斜視図である。図3は、サイドウォール保護装置1がホイール110のリム120に取り付けられたときのサイドウォール保護装置1の正面図である。図4は、図3に示すIV-IV切断線の断面図である。図5は、サイドウォール保護装置1が備えるブロック部材22の斜視図である。なお、理解を容易にするため、図2では、プロテクター10の折れ曲がり形状を省略している。また、図3図4では、プロテクター10の図示を省略している。さらに、図3では、ベース部材20の図示を省略している。
【0024】
図2に示すように、サイドウォール保護装置1は、上述した複数のプロテクター10に加えて、プロテクター10それぞれを支えるベース部材20と、ベース部材20に設けられた複数の係止片30とを備える。
【0025】
ベース部材20は、円環状の板の形状に形成されている。ホイール110が備えるリム120は円筒状に形成されているところ、そのベース部材20の外径は、図4に示すように、リム120の外径よりも大きい。また、ベース部材20の内径は、リム120の内径よりも小さい。さらに、ベース部材20は、リム120と同心に配置されている。また、ベース部材20は、後述するブロック部材22を介して、リム120の車両外側に面する円筒端面に接している。その結果、ベース部材20は、そのリム120の円筒端面に支えられている。
【0026】
また、ベース部材20には、図2に示すように、それ自体の外周に沿って等角度毎に複数のネジ孔21が設けられている。図示しないが、ネジ孔21それぞれには、ボルト、ネジ等の締結具が取り付けられる。詳細には、それら締結具が、上述した複数のプロテクター10の図示しない貫通孔に通され、かつベース部材20の一方の板面(例えば、図2の場合、下面)の側からネジ孔21それぞれに取り付けられる。これにより、ベース部材20には、上述した複数のプロテクター10が固定される。その結果、ベース部材20は、プロテクター10それぞれを支持する。
【0027】
また、ベース部材20は、それらプロテクター10を支持する強度を得るため、剛性のある材料、例えば、鉄鋼等の金属材料によって形成されている。その結果、ベース部材20は、それらプロテクター10を強固に保持する。これにより、ベース部材20は、突起物等の障害物の衝突によってプロテクター10がすれることを防いでいる。
【0028】
一方、ベース部材20のもう一方の板面(例えば、図2の場合、上面。円環面ともいう)には、このような構成のベース部材20それ自体を上述したリム120の端面部分に取り付けるため、複数のブロック部材22が設けられている。
【0029】
詳細には、ブロック部材22それぞれは、金属材料で形成され、図5に示すように、四角柱がL字形に折れ曲がった形状を有する。その結果、ブロック部材22それぞれは、図5に示す縦棒部分221と横棒部分222とを有する。
【0030】
ブロック部材22それぞれは、L字折れ曲がり部分の外角を形成する縦棒部分221の面223を、図2に示すベース部材20の円環の板面に向けている。さらに、その面223をベース部材20の円環の板面に当接させている。また、ブロック部材22は、図5に示すL字折れ曲がり部分の外角を形成する横棒部分222の面224を、図2に示すベース部材20の円環の中心Cに向けた状態で、ベース部材20の周方向に等角度、かつ円環の中心Cから等距離に配列されている。ブロック部材22は、このように配置された上で、縦棒部分221が図示しない締結具によってベース部材20の板面に固定されている。
【0031】
このようなブロック部材22は、図2に示すように、合計で偶数個、詳細には6個だけ配列されている。ブロック部材22は、係止片30を取り付けるために設けられている。そして、その係止片30の後述する押圧力でリム120を押さえてリム120に係止するため、2つのブロック部材22がベース部材20の円環の中心Cを挟んで対向することにより、対を形成している。
【0032】
一方、ブロック部材22それぞれが有する、図5に示す横棒部分222は、ブロック部材22それぞれがベース部材20の中心Cから等距離に配列された結果、円周上に配列されている。その横棒部分222が配列されている円は、リム120の内径とほぼ同じである。その結果、横棒部分222は、図4に示すように、リム120の円筒空間に差し込まれたときに、リム120の内壁に当接する。これにより、ブロック部材22が全体でリム120の円筒空間に嵌合する。さらに、この嵌合時に、縦棒部分22それぞれがリム120の円筒端面に当接する。その結果、ブロック部材22は、ベース部材20の、リム120に対する位置を決める。横棒部分222には、ブロック部材22をリム120に固定するため、係止片30が取り付けられている。
【0033】
係止片30は、リム120に取り付けられたときに、リム120の内壁に当たって弾性変形すると共に、その弾性力でリム120の内壁を押さえつけてリム120に係止する部材である。係止片30の詳細な構成を図6図8に示す。
【0034】
図6図8は、サイドウォール保護装置1が備える係止片30の斜視図、平面図、および側面図である。なお、ブロック部材22それぞれに取り付けられた係止片30は、互いに同じ構成であるため、図6図8ではそれらのうちの一つを図示し、その他の図示を省略している。
【0035】
図6図8に示すように、係止片30は、平板状の基部31と、基部31から延びる、屈曲した板の形状の弾性変形部32とを有する。
【0036】
基部31は、矩形状の金属板で形成されている。そして、基部31の板面には、図示しない締結具を通すため、基部31の長手方向へ延びる長孔33が形成されている。基部31は、図5に示すように、長手方向をブロック部材22の横棒部分222の延在方向へ向けた状態で、図示しない締結具が長孔33に通されると共に、その締結具が横棒部分222に締結されることにより、横棒部分222に固定される。
【0037】
図6図8に戻って、基部31の先端側には、基部31と一体的に形成され、基部31から連続する弾性変形部32が設けられている。
【0038】
弾性変形部32は、基部31と同じ金属で形成されている。その金属の材料は、引張強度が高い材料が望ましく、例えば、ステンレス鋼等の鉄鋼材料である。そして、弾性変形部32は、基部31の板面に対して90°だけ折れ曲がった後に、その折れ曲がり方向と反対方向へ円弧状に、詳細には半円状に湾曲した板の形状に形成されている。弾性変形部32が90°だけ折れ曲がっている理由は、図5に示すように、基部31をブロック部材22が有する横棒部分222の面224に沿って配置したときに、弾性変形部32を、その横棒部分222の先端面225に沿って配置させることができるからである。
【0039】
弾性変形部32は、このような形状を有することにより、図4に示すブロック部材22がリム120の円筒空間に嵌まり込まれたときに、先端にある半円状に湾曲した部分(以下、半円状湾曲部という)を、ブロック部材22よりもリム120の半径方向かつ外側へ突出させる。また、弾性変形部32は、その半円状湾曲部の凸面側を外側へ向ける。
【0040】
これに対して、リム120では、円筒軸Aの方向の両端部分に、タイヤの縁部を保持するため、リムフランジ121、122が設けられている。それらリムフランジ121、122のうち、大型作業車100の車両外側に面するリムフランジ121の内壁には、リム120の円筒軸Aの方向の中央側へ向かうに従い、リム120の半径方向かつ外側へ窪んだ凹部123(特許請求の範囲では単に内壁部分ともいう)が形成されている。
【0041】
弾性変形部32の先端にある半円状湾曲部は、その凹部123の凹み具合よりも大きい半径で湾曲している。その結果、弾性変形部32は、ブロック部材22がリム120の円筒空間に嵌まり込まれたときに、半円状湾曲部の凸面を凹部123に当接させる。そして、その半円状湾曲部は、凹部123に当たる結果、弾性変形する。これにより、弾性変形部32は、その弾性力で凹部123を押圧する。その結果、弾性変形部32は、リムフランジ121の内壁を、換言すると、リム120を半径方向かつ外側へ押圧する。
【0042】
上述したように、ベース部材20では、図2に示すように、2つのブロック部材22がベース部材20の円環の中心Cを挟んで対を形成している。その中心Cは、ブロック部材22がリム120の円筒空間に嵌まり込んでベース部材20の、リム120に対する位置を決めている状態において、図3に示すように、円筒軸A上にある。さらに、ブロック部材22それぞれには、図4に示すように、係止片30が取り付けられている。その結果、係止片30同士も円筒軸Aを挟んで対を形成する。そして、図4には示さないが、弾性変形部32同士も、円筒軸Aを挟んで対を形成する。それら弾性変形部32同士は、リム120を半径方向かつ外側へ押圧して、互いに反対方向へ押圧する。これにより、図4に示すように、係止片30が円筒軸Aの回りに円筒軸Aから等距離に配置された状態でリム120に係止する。その結果、ブロック部材22とベース部材20がリム120に固定される。ベース部材20は、上述したように、プロテクター10を支える。このため、ベース部材20がリム120に固定されることにより、プロテクター10がタイヤのサイドウォールに被さる。これにより、タイヤのサイドウォールが保護される。
【0043】
なお、上記の実施の形態では、ベース部材20に予めプロテクター10が取り付けられているものとして説明したが、ブロック部材22をリム120の円筒空間に嵌めて、係止片30をリム120に係止させた後に、プロテクター10をベース部材20に取り付けてもよい。
【0044】
また、上記の実施の形態では、2つのブロック部材22と2つの係止片30のそれぞれが円筒軸Aを挟んで対向し、対を形成しているが、ブロック部材22と係止片30は、それぞれが3つ以上存在する場合、円筒軸Aの回りにほぼ等角度かつ円筒軸Aからほぼ等距離に配置されていればよく、この場合、対を形成しなくてもよい。当然ながら、ブロック部材22と係止片30は、実施の形態の個数である必要はなく、それぞれ複数個だけあればよい。
【0045】
以上のように、実施の形態に係るサイドウォール保護装置1では、係止片30それぞれをリム120の内周面に当接させると共に、係止片30それぞれにリム120の内周面を半径方向かつ外側へ押圧させるだけで、係止片30それぞれをリム120に係止させる。このため、サイドウォール保護装置1ではリム120への装着が容易である。また、サイドウォール保護装置1は、係止片30それぞれがリム120の内周面を半径方向かつ外側へ押圧するため、リム120から外れにくく、装着が確実である。
【0046】
係止片30それぞれは、弾性変形する金属材料で形成されている。このため、サイドウォール保護装置1では、係止片30それぞれを弾性変形させてリム120の内周面に当接させるだけで、係止片30をリム120に係止させることができる。その結果、サイドウォール保護装置1のリム120への取り付けが容易である。また、弾性力によって係止片30それぞれがリム120に係止し続けるので、サイドウォール保護装置1は、ずれにくく、リム120から外れにくい。
【0047】
係止片30それぞれは、円弧状の板、詳細には半円状の板の形状に形成された弾性変形部32を備える。弾性変形部32の円弧の凸面をリム120の内周面に向けて、係止片30をリム120の円筒空間に挿入できるので、弾性変形部32がリム120の円筒端に引っ掛かったり衝突したりすることが起こりにくい。その結果、係止片30のリム120への取り付けが容易である。
【0048】
なお、実際に作製したサイドウォール保護装置1を図9および図10に示す。図9は、サイドウォール保護装置1を装着した大型作業車100のリム120の一部分を写真で示した斜視図である。図10は、同大型作業車100のホイール110近傍を写真で示した正面図である。
【0049】
図9を参照すると、ブロック部材22に取り付けられた係止片30がリム120に係止することにより、サイドウォール保護装置1がリム120に装着されることがわかる。そして、図10を参照すると、サイドウォール保護装置1のプロテクター10がタイヤのサイドウォールに被さってサイドウォールを保護することがわかる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態に係るサイドウォール保護装置1について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、実施の形態では、ベース部材20とプロテクター10とが別体であったが、ベース部材20とプロテクター10は一体であってもよい。なお、この場合、ベース部材20とプロテクター10とが一体に形成された部品を単にプロテクターと称してもよい。
【0051】
また、実施の形態では、係止片30それぞれがブロック部材22それぞれに取り付けられ、その結果、係止片30それぞれがブロック部材22それぞれに支えられている。しかし、本発明はこれに限定されない。係止片30それぞれが直接ベース部材20に設けられて支えられていてもよい。この場合、基部31が弾性変形部32よりも厚い、または太い形状であるとよい。また、弾性変形部32だけが弾性変形可能であり、基部31が弾性変形不能であってもよい。
【0052】
なお、本明細書でいう弾性変形可能とは、車両のホイール110が回転したときにリム120から外れない程度の弾性力をリム120に加えることができる程度に弾性変形できることをいう。
【0053】
実施の形態では、係止片30それぞれの弾性変形部32が90°折れ曲がった後に、その折れ曲がり方向と反対方向へ半円状に湾曲した板の形状を有する。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、弾性変形部32は、プロテクター10の外周側へ向かって突出して、換言すると、リム120の半径方向かつ外側へ突出して、リム120の内周面に当接して弾性変形するものであればよい。例えば、リムフランジ121の内壁に当接して弾性変形するものであればよい。従って、弾性変形部32は、ブロック部材22の形状、ベース部材20の形状によっては、90°折れ曲がっていなくてもよい。例えば、弾性変形部32は、半円状湾曲部だけを有していてもよい。また、弾性変形部32は、半楕円の形状または、放物線の形状に湾曲していてもよい。弾性変形部32は、そのほかの曲線の形状に湾曲していてもよい。
【0054】
実施の形態では、サイドウォール保護装置1が大型作業車100の車両に装備される例を説明したが、サイドウォール保護装置1は、タイヤのサイドウォールの保護が必要な車両全般に適用可能である。例えば、サイドウォール保護装置1は、小型の作業車に適用されてもよい。
【0055】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0056】
1…サイドウォール保護装置
10…プロテクター
20…ベース部材
21…ネジ孔
22…ブロック部材
30…係止片
31…基部
32…弾性変形部
33…長孔
100…大型作業車
110…ホイール
120…リム
121,122…リムフランジ
123…凹部
221…縦棒部分
222…横棒部分
223,224…面
225…先端面
A…円筒軸
C…中心
【要約】
【課題】容易かつ確実にリムに装着できるタイヤのサイドウォール保護装置を提供する。
【解決手段】サイドウォール保護装置1は、車両が備えるホイールに取り付けられたタイヤのサイドウォールに被さることが可能な板の形状を有するプロテクター10と、プロテクター10が有する、サイドウォールの内周側に配置される内周部分に設けられ、ホイールが有する円筒状に形成されたリムに係止することが可能な複数の係止片30と、を備える。係止片30それぞれは、リムの内周面に当接すると共に、リムの内周面をリムの半径方向かつ外側へ押圧することにより、リムに係止する。また、プロテクター10は、係止片30それぞれがリムに係止した状態で、サイドウォールに被さる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10