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特許7525227Liイオン伝導性硫黄系ガラスのガラス質固形電解質シート、及び関連構造、電池、並びに方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】Liイオン伝導性硫黄系ガラスのガラス質固形電解質シート、及び関連構造、電池、並びに方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20240723BHJP
   C01B 17/40 20060101ALI20240723BHJP
   C03C 3/32 20060101ALI20240723BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240723BHJP
   H01B 1/10 20060101ALI20240723BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240723BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M10/0562
C01B17/40
C03C3/32
H01B1/06 A
H01B1/10
H01B13/00 Z
H01M4/134
H01M4/1395
H01M10/0566
H01M50/409
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020181662
(22)【出願日】2020-10-29
(62)【分割の表示】P 2017529785の分割
【原出願日】2015-12-01
(65)【公開番号】P2021036528
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】62/086,641
(32)【優先日】2014-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/111,048
(32)【優先日】2015-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/146,809
(32)【優先日】2015-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/149,250
(32)【優先日】2015-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/165,791
(32)【優先日】2015-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/171,561
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/196,247
(32)【優先日】2015-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/222,408
(32)【優先日】2015-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/954,812
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/126,319
(32)【優先日】2015-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500163551
【氏名又は名称】ポリプラス バッテリー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】PolyPlus Battery Company
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスコ、スティーブン、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ニモン、 エフゲニー、エス.
(72)【発明者】
【氏名】デ ジョンへー、ルトガド、シー.
(72)【発明者】
【氏名】カッツ、ブルース、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ニモン、ヴィタリー
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】山本 章裕
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-103258(JP,A)
【文献】特開2013-232335(JP,A)
【文献】特開2004-127743(JP,A)
【文献】国際公開第2012/017544(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータであって、無機、かつ、Liイオン伝導性の非晶質を含み、100μm以下の厚みを有し、結晶相を有さない、Liイオン伝導性の硫黄系ガラスのガラス質シートを含むフリースタンディングな非晶質の固形電解質の壁構造
を備え、
前記壁構造は、
i)室温におけるLiイオン伝導率≧10-5S/cmを有する連続するLiイオン伝導性の無機非晶質材料相であって、シート状に延伸されている前記無機非晶質材料相と、
ii)対向する第1及び第2主要側面と、
iii)前記対向する側面の間に延伸する隣接結晶粒界及び粉末粒子境界を有さないマイクロ構造と
を有し、
前記第1主要側面は、非晶質のガラス質ガラスを含む表面を備え、
X線回折により、個別の回折パターンを生成しない、
スタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ。
【請求項2】
前記無機非晶質材料相は、Liイオン伝導性の硫黄系ガラスであり、前記Liイオン伝導性の硫黄系ガラスは、
前記硫黄系ガラスの構成元素としてのS(硫黄)及びLi(リチウム)と、
P(リン)、及びSi(ケイ素)からなる群から選択される少なくともさらに1つの前記硫黄系ガラスの構成元素と
有する、
請求項1に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ。
【請求項3】
前記硫黄系ガラスのガラス質シートは、前記第1及び第2主要側面の間で測定されるような、室温において100Ω・cm以下の面積抵抗値(ASR)を有する、請求項1または2に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ。
【請求項4】
前記ガラス質シートの面積は、少なくとも10cmである、請求項1から3の何れか一項に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ。
【請求項5】
前記ガラス質シートは、平行な長さ方向端部を有する、請求項1から4の何れか一項に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ。
【請求項6】
前記ガラス質シートの長さは、少なくとも25cmである、請求項1から5の何れか一項に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ。
【請求項7】
前記ガラス質シートは、10以上の長さ(l)対幅(w)の面積アスペクト比(l/w)を有し、前記ガラス質シートの幅(w)は、1cm以上である、請求項1から6の何れか一項に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ。
【請求項8】
前記硫黄系ガラスは、50℃以下のガラス安定性因子である{Tx-Tg}を有する、請求項1から7の何れか一項に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ。
【請求項9】
前記ガラス質シートは、耐熱材または耐熱性結晶相を有さない、請求項1から8の何れか一項に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ。
【請求項10】
前記ガラス質シートの前記第1及び第2主要側面は、内部ミクロ細孔及び表面ミクロボイドを本質的に有さない、請求項1から9の何れか一項に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ。
【請求項11】
スタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータを製造するための方法であって、前記方法は、Liイオン伝導性の硫黄系ガラスの固形のガラス質シートを製造する段階を備え、前記ガラス質シートを製造するための前記方法は、
a.無機硫黄系ガラスの連続する流体シートを、前記硫黄系ガラスのTgより高い温度において形成する段階であって、前記流体シートは実質的に平行な長さ方向端部と、対向する第1及び第2主要側面を含む中央部分とを有する、段階と、
b.連続する前記流体シートを、途切れない連続性を保って流れさせる段階と、
c.前記流体シートをTg未満の温度まで冷却することにより、連続する前記流体シートを固化する段階を備え、
前記硫黄系ガラスの固化された流体シートは、ガラス質であり、非晶質で、10-5S/cm以上の室温Liイオン伝導率を有し、かつ、途切れない連続性を有する、
方法。
【請求項12】
前記ガラス質シートは、前記硫黄系ガラスを、水平方向に対して傾斜した方向であって、平滑板の板面に平行な方向に延伸することによって、またはプリフォームドローによって製造される、
請求項11に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータを製造するための方法。
【請求項13】
i.請求項1から10の何れか一項に記載の前記スタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータと、
ii.対向する第1及び第2主要面を有し、電気活性材料を含む電気活性構成要素層と
を備え、
リチウム金属層を含むリチウム金属構成要素層が、前記電気活性構成要素層の前記第1主要面及び前記固形電解質セパレータの前記第1主要側面の間に挟まれる、
スタンドアローンの電極アセンブリ。
【請求項14】
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置された、請求項1から10の何れか一項に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータと
を備える
リチウム電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照] 本出願は、2014年12月2日に出願された、「リチウムイオン伝導性ガラス層、及び関連保護リチウム金属電極、並びに電池セル」と題する米国仮特許出願番号第62/086,641号、2015年2月2日に出願された「リチウムイオン伝導性ガラス層、及びリチウム金属電極、並びに電池セル」と題する米国仮特許出願番号第62/111,048号、2015年4月13日に出願された「フリースタンディングリチウムイオン伝導性製品、及び関連電極アセンブリ、並びに電池セル」と題する米国仮特許出願番号第62/146,809号、2015年4月17日に出願された「フリースタンディングリチウムイオン伝導性製品、及び関連電極アセンブリ、並びに電池セル」と題する米国仮特許出願番号第62/149,250号、2015年5月22日に出願された「リチウムイオン伝導性壁構造、及びリチウム電極アセンブリ関連連続ロール、並びにリチウム電池セル、及びそれらの製造方法」と題する米国仮特許出願番号第62/165,791号、2015年6月5日に出願された「スタンドアローン無機固形電解質シート、及びスタンドアローンリチウムイオン伝導性固形電解質セパレータ、連続する無機セパレータロール、リチウム電極アセンブリ、並びにそれらの電池セル、及びそれらの製造方法」と題する米国仮特許出願番号第62/171,561号、2015年7月23日に出願された「スタンドアローン無機固形電解質シート、及びスタンドアローンリチウムイオン伝導性固形電解質セパレータ、連続する無機セパレータロール、リチウム電極アセンブリ、それらの電池セル、並びに製造方法」と題する米国仮特許出願番号第62/196,247号、2015年9月23日に出願された「ガラス質固形電解質シートLiイオン伝導性硫黄系ガラス及び関連構造、電池、並びに方法」と題する米国仮特許出願番号第62/222,408号、及び2015年11月30日に出願された米国特許出願番号第14/954,812号の優先権を主張する。これらの出願のそれぞれは、その全体が参照により、かつ、全ての目的のために、本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、概して、リチウム電気化学的デバイス及びそれらのリチウム構成要素の分野に関し、特に、リチウム電池セル、リチウム電極アセンブリ、及びリチウム電池セル用のLiイオン伝導性の固形電解質構成要素(例えば、セパレータ及び固形電解質シート)、並びに上記の構成要素、電極アセンブリ、及び電池セルを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高性能の電池セル及びそれらの関連電池構成要素に対して、特に高エネルギー密度の二次電池に対して継続的必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
スタンドアローンのリチウムイオン伝導性固形電解質、該電解質を製造し使用する方法、及び該電解質を組み込んだ電池セル及び電池構成要素が、本明細書において提供される。本開示に係るスタンドアローンのリチウムイオン伝導性固形電解質は、リチウムのデンドライトの発生及び/又は伝播に対して高耐性でありつつ、高度のリチウムイオン伝導率を提供することにより、リチウム金属電池において高性能を可能にする硫化物系リチウムイオン伝導性ガラスのフリースタンディング無機ガラス質シートを含み得る。そのような電解質自体も製造可能であり、費用効果のあるスケーラブルな方式で、電池セル及び電池構成要素の製造に容易に適応可能である。
【0005】
一態様において、電極アセンブリ又はリチウム電池セル用のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータが、提供され、該セパレータは、フリースタンディングで実質的に非晶質のLiイオン伝導性の薄肉固形電解質構造(すなわち、壁構造)を備え、通常、高密度で、リボン(すなわち、比較的細長いシート)のような無機シートの形をし、実質的に平行な長さ方向端部を有し、電池使用可能な大きさで、10-5S/cm以上、好ましくは10-4S/cm以上、より好ましくは10-3S/cm以上のLiイオン伝導率を有する。
【0006】
様々な実施形態において、フリースタンディングの固形電解質の壁構造は、長い連続長(例えば、>25cm、≧50cm、又は≧100cm)、大面積(例えば、≧100cm)、及び製造可能に変更可能な長さ(l)対幅(w)面積アスペクト比(l/w)に対して容易にスケーラブルなLiイオン伝導性硫黄系ガラスのガラス質の固形電解質シートである。
【0007】
例えば、様々な実施形態において、硫黄系ガラスのガラス質固形電解質シートは、100μm以下の均一な厚み、10以上(例えば、(l/w)≧20)の面積アスペクト比、及び1cm以上の幅(例えば、約2~10cmの幅)を有する、自己支持型で基板レスの材料層である。様々な実施形態において、実質的に非晶質のガラス質シートは好ましくは、結晶相を本質的に有さず、さらにより好ましくは、該ガラス質シートは、均質ガラスである。
【0008】
様々な実施形態において、ガラス質固形電解質シートは、固形電解質セパレータ又はそれらの構成要素として1つ又は複数の電池セル及び/又は電極アセンブリ内への組み込みのためにある大きさにカットされたシートがそこから切除される連続ウェブとして形成される。特定の実施形態において、ガラス質ウェブを製造するための製造プロセスは、本開示に係るリチウム電極アセンブリ及び電池セルを製造するための製造プロセスに統合される。
【0009】
本明細書において提供されるフリースタンディングで実質的に非晶質の無機固形電解質シートは、高伝導性のLiイオンであり、様々な実施形態において、該固形電解質シートは、連続する相互接続された微視的経路を有さず、微視的経路は、そうでなければ存在する場合、リチウム金属のデンドライトの通り抜ける貫通を許容し得る。本明細書及び特許請求の範囲に用いられているように、高伝導性により、無機固形電解質シートは、室温において少なくとも10-5S/cm、好ましく少なくとも10-4S/cm、より好ましくは少なくとも10-3S/cmのLiイオン伝導率を有することを意味する。好ましくは、無機Liイオン伝導性シートは、リチウム金属デンドライトに対して実質的に通さず、これによって、固形電解質セパレータとして使用されているとき、完全に無機のこのシートは、安全なリチウム金属の二次電池セルの具現化を可能にする。
【0010】
本開示によると、フリースタンディングの無機固形電解質シートは、10-5S/cm以上、好ましくは10-4S/cm以上、より好ましくは、10-3S/cm以上の固有室温Liイオン伝導率を有する連続する無機Liイオン伝導性の非晶質固体材料相を備える。様々な実施形態において、連続する無機Liイオン伝導性の非晶質材料相は、無機ガラスであり、複数の実施形態において、該無機ガラスは、少なくとも1つのガラス網目形成体及びガラス網目修飾体を有するよう特徴付けられ得る。例示的実施形態において、無機ガラスは、Liイオン伝導性硫黄系ガラスである。様々な実施形態において、硫黄系ガラスの構成元素は、硫黄と、リチウムと、ホウ素、リン、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、及び酸素からなる群から選択される1つ又は複数の構成元素とを含む。
【0011】
様々な実施形態において、デンドライトに強いマイクロ構造を生成するために、連続するLiイオン伝導性ガラス相は、非晶質だけではなく、それにより、結晶粒及び関連結晶粒界を有さず、連続するガラス相、ガラス層(例えば、ガラス質ガラス層)、又は、融液から直接形成される、又は連続する固化された融液から得られたガラス製品(例えば、ガラス質ガラスシート)を説明するために本明細書において用いられる用語である「ガラス質」(すなわち、ガラス質ガラス)としても特徴付けられ、これによって、圧密された又は分離したガラス粉末粒子(例えば、硫化物ガラス粉末/非晶質粉末粒子)の凝集ではなく、かつそれを含有しない。従って、ガラス質ガラス相(又はより単にガラス質相)又はガラス質ガラスシート(又はより単にガラス質シート)も、ガラス粉末/非晶質粉末粒子間境界をまったく有さず、好ましくは、過度の密度を有する内部細孔及び表面空隙など、ガラス粒子を圧密することから生じるそれらに類似する微細構造的特徴が存在しない。
【0012】
様々な実施形態、固形電解質シートは、ガラス質モノリスであり、該連続するLiイオン伝導性ガラス質ガラス相(例えば、硫黄系ガラス)は、固形電解質シート全体にわたって中断されない方式で存在し、それと共に、結晶粒界及びガラス粉末粒子間境界を有さない連続するガラス質マトリックスを提供する。様々な実施形態において、固形電解質シートは、本質的に結晶領域を有さないLiイオン伝導性硫黄含有ガラスのガラス質モノリスである。好ましくは、ガラス質ガラスシートは、均質であり、これにより、該シートは、結晶相及び二次非晶相を含んだ二次相を本質的に有さないことを意味する。
【0013】
本開示のガラス質固形電解質シートは、その本体及び表面の品質により、特にその特徴欠如により、さらに有利である。様々な実施形態において、ガラス質シートは、デンドライトの発生を防ぐことに相応する液状表面を有する。ガラス質ガラスシートは、ダイプレス及びホットプレスされた硫化物ガラス粉末圧密体に両方ともありふれた内部ミクロ細孔と不規則な形状をする表面ミクロボイドとを含み、過度の量のボイド状欠陥など、粉末粒子圧密と通常関連付けられるキズにより悩まされない。
【0014】
いくつかの実施形態において、硫黄系ガラスは、LiS-YS、LiS-YS-YO、及びそれらの組み合わせの種類であり、ここで、Yは、Ge、Si、As、B、又はPからなる群から選択され、n=2、3/2、又は5/2であり、該ガラスは、リチウム金属との接触が化学的及び電気化学的に適合する。適したガラスは、ガラス修飾体としてLiS及び/又はLiO、と、P、P、SiS、SiO、B、及びBからなる群から選択される1つ又は複数のガラス形成剤とを備えてよい。いくつかの実施形態において、ガラスはリンを有さない場合がある。
【0015】
別の態様において、本開示は、高伝導性でフリースタンディングのガラス質固形電解質(例えば、個別のLiイオン伝導性の固形電解質ガラスシート)を製造する方法に関する。様々な実施形態において、ガラス質シートは、連続する製造プロセスにより形成され、ガラス質Liイオン伝導性硫黄系ガラスのスタンドアローンの連続ウェブの製造を含み、長い連続長、大面積、及び変更可能な長さ対幅のアスペクト比に対して容易にスケーラブルである。
【0016】
様々な実施形態において、ガラス質の固形電解質ガラスシートを製造する方法は、ガラス質Liイオン伝導性硫黄系ガラスを、途切れない連続性を有する薄い無機流体シート(例えば、液体ガラス流)に形成することを伴う一方、長さ方向端部が拘束されていないことを保証し、流体流として、実質的に平行な長さ方向端部でその長さ方向寸法に沿って、その流体シートを流れさせ、又は流体シートが流れることを可能にする。
【0017】
様々な実施形態において、重要な利点が、異質の固体接触の無い状態で流体ガラス流を固化することにより実現される。例えば、ガラス質シートが固化され、これにより、その第1及び第2主要側面が、異質の固形表面により接触されず、これによって、表面の滑らかさ、キズ、及び純度に関連するように、固体を生成することによる利益として、それらの未使用状態において化学的にかつ物理的に初期状態であり、特に、表面汚染物質を最小化し、並びに、研磨することなく、上質の液状表面を容易にする。
【0018】
様々な実施形態において、固形電解質シートの、固体としてその未使用状態における厚みは、予め決められたもので均一な値であり、この得策により、所望の厚みを達成するために表面を切る又は研削する必要を回避し、従って、主要側面は、シート製造及び保管中、研磨性異質の固形表面により接触されないままで維持され得る。
【0019】
従って、様々な実施形態において、固形電解質シートの第1及び第2主要側面は、機械的研削、面内スライシング(すなわち、対向する主要面に平行して切る)、又は研磨といった後固化工程のうちの1つ又は複数を受けない。未使用状態において薄くて均一な厚みを達成する能力は、そうでなければ、細線化(例えば、研削すること)により起こり得るコストがかかる処理段階を取り除き、ダメージ(例えば、表面キズ)を回避するので、極めて有益である。
【0020】
様々な実施形態において、Liイオン伝導性ガラスのフリースタンディングのガラス質シート又はウェブを製造する方法は、延伸することによるものである。様々な実施形態において、延伸処理は連続的なものである。様々な実施形態において、延伸方法は、溶融延伸、プリフォームドロー、又は毛細管延伸である。
【0021】
様々な実施形態において、Liイオン伝導性硫黄系ガラスのガラス質固形電解質シートを製造する方法は、電池セルの処理及び/又はその性能に対して望ましい特定の特性をもたらすガラスの構成元素を選択し調整することを伴う。これらの特性は、ガラス安定性因子、液相線粘度、Liイオン伝導率、及びリチウム金属との化学的並びに電気化学的な適合性のうちの1つ又は複数を含む。
【0022】
別の態様において、ガラス質ウェブの形をする、Liイオン伝導性ガラスの長くて連続するガラス質シートが、提供される。個別のフリースタンディングの固形電解質シートは、その幅方向及び/又は長さ方向寸法に沿ってレーザ切断することにより、ウェブからある大きさにカットされ得る。様々な実施形態において、ガラス質Liイオン伝導性ガラスの連続ウェブは、複数のある大きさにカットされた固形電解質シートを生成するべく、面積(又は長さ)が十分に大きく、又は、該ウェブは、本開示の電極サブアセンブリ及び電極アセンブリを含み、電池セル構成要素の後段処理のための基板として機能し得る。
【0023】
様々な実施形態において、ガラス質Liイオン伝導性ガラスウェブは、50cmより大きい長さと、1cmから10cmの間の幅とを有し、数百センチメートル長(例えば、少なくとも100cm、200cm、300cm、400cm、500cm、600cm、700cm、800cm、900cm、又は少なくとも1メートルの長さ)など、一般的に100cm長より大きい。一般的に、ウェブは、500μmより小さい均一な厚みを有する。
【0024】
好ましくは、固形電解質ガラスのガラス質ウェブは可撓性を有し、ガラスの連続コイルとして(断片化されることなく)構成可能であるように曲げられるとき、十分に堅固であり、一般的に、保管、搬送、及び構成要素製造用に糸巻きに巻かれる。例えば、本開示の電極サブアセンブリ、電極アセンブリ、及び電池セルを含み、後段の電池セル構成要素のロールツーロール(RR)製造のためのガラス質シートのソース/供給ロールとして機能する連続コイルがある。好ましくは、固形電解質ウェブは、形成されると、十分な面質及び厚みの均一性を有し、後固化の研削及び/又は研磨を必要としない。
【0025】
ガラス質固形電解質ウェブシート並びに後段の電池セル構成要素の品質及び性能を改善するために、様々な処理段階が本明細書において考えられており、i)レーザ切断により、低質の周縁部の除去、ii)表面/端部の火炎研磨、iii)その長さ方向端部に沿ってシートとのインターフェイスするエッジプロテクタ素子の組み込み、及びiv)一般的に1μmより小さい厚みの薄い材料層でのシートの第1及び/又は第2主要側面のコーティング(例えば、リチウム金属層と直接接触する固形電解質シート間のインターフェイスを高めるための第1主要側面上のタイレイヤ、又は、電池セル構成要素との化学的適合性を改善するための、第1/第2主要側面上の高密度の物理蒸着Liイオン伝導性無機材料層)を含む。
【0026】
別の態様において、本開示は、電極サブアセンブリを提供し、該電極サブアセンブリは、その第1主要側上に、材料タイレイヤ及び/又は集電体層でコーティングされたガラス質固形電解質シートにより構成された基板積層体であり、本開示のスタンドアローンのリチウム金属電極アセンブリの形成中に、その表面上に続いて堆積されるリチウム金属層との電気化学的に有効な固体状態のインターフェイスを容易にするよう機能し、又は、リチウム金属層の形成は、初期充電中の電池セル範囲内で実現され得る。様々な実施形態において、ロール及びRR製造に対してシートの使用を含み、ガラス質固形電解質ウェブ上に、タイレイヤの層及び/又は集電体層を直接堆積することにより、電極サブアセンブリの連続ウェブを形成する。
【0027】
別の態様において、本開示は、この固形電解質の壁構造(例えば、実質的に不浸透ガラス質固形電解質シート)と、一般的に、対向する第1及び第2主要面を有する電気活性構成要素層(例えば、多重層)の一部分としての電気活性材料とを備えるスタンドアローンの電極アセンブリを提供する。例えば、電気活性構成要素層は、集電層上の2重層の電気活性材料層(例えば、リチウム金属)、又は、リチウム金属層又はより一般に電気活性材料層のペアの間で挟まれる3重層の集電体層であり得る。
【0028】
スタンドアローンの電極アセンブリは、電気活性材料の本質及び電池セルにおけるその意図された使用に応じて、負極又は正極アセンブリであってよい。
【0029】
様々な実施形態、スタンドアローンの電極アセンブリは、「固体状態」と称され、ガラス質固形電解質シートの第1主要側面により、少なくとも1つの主要面との直接接触によりカプセル化された電気活性構成要素層により構成される固体状態の積層体を含有する。電気活性構成要素層とガラス質固形電解質シートとの間の直接接触は、(液体電解質を含む)液体を有さない固体状態のインターフェイスを形成して維持する。様々な実施形態において、電気活性材料は、リチウム金属であり、固体状態のインターフェイスは、ガラス質固形電解質シートと直接接触する、高密度リチウム金属層から形成される。代替的実施形態において、固体状態の電極アセンブリは、(例えば、インターカレート可能な炭素のような約1V内の電位のリチウム金属を有する)電気活性粒子の粉末粒子複合材と、ガラス、又は、高伝導性のLiイオンのガラスセラミック粒子(例えば、硫黄系ガラス/ガラスセラミック)を含む電気活性構成要素層を有する。
【0030】
様々な実施形態において、スタンドアローンの電極アセンブリは、Liイオンの電気的な通り抜ける移動を可能にする、電極アセンブリのその対向する主要側の一方又は両方が電気化学的に機能的であるか否かに応じて、「片面」又は「両面」と称され得る。両面アセンブリは、その両方の側上で電気化学的に動作可能であり、これに対して、片面アセンブリは、一方の側上のみで動作可能である。両面の場合、電極アセンブリは、本開示の第2固形電解質シートを含む。例えば、両面の固体状態のリチウム金属電極アセンブリにおいて、第1及び第2固形電解質シートの第1主要側面は、電気活性構成要素層のリチウム金属を用いて、固体状態のインターフェイスを形成する。
【0031】
様々な実施形態において、スタンドアローンの電極アセンブリは、外部の成分がアセンブリ内側の電気活性材料と接触することを防ぎ、内部成分(例えば、存在する場合、液体電解質)が浸み出すことを防ぐよう、封止される。
【0032】
様々な実施形態において、負極アセンブリは、一般的に両面である、封止された固体状態のリチウム金属負極アセンブリである。
【0033】
他の実施形態において、封止された電極アセンブリは、固体状態のではなく、電気化学的性能を高めるべく、固形電解質シートと電気活性材料との間のインターフェイスにおいて液相の電解質を含む。例えば、両面の正極アセンブリは、Liイオンインターカレーション化合物と直接接触してアセンブリ内側に封止された液体電解質を、(例えば、リチウム金属に対して3Vのより大きく、好ましくは、4Vのより大きい電位を有する)アセンブリの電気活性材料として含む。
【0034】
別の態様において、本開示の固形電解質セパレータを備えるリチウム電池セルが、本明細書において提供される。様々な実施形態において、電池は、巻かれた又は折り曲げられた構造のものであり、固形電解質セパレータは、断片化されることなく、そのように巻かれるように十分に可撓性を有する。
【0035】
様々な実施形態において、電池セルは、封止された電極アセンブリ(例えば、封止された固体状態のリチウム金属負極アセンブリ)と、対向電極(例えば、正極)と、該正極と直接触れて接触するが、封止されたアセンブリ内側のリチウム金属と接触することが不可能な液体電解質とを含むハイブリッド電池構造を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、電池セルは、完全に固体状態のであり、これによって、液相電解質を有さない。
【0037】
他の実施形態において、電池セルは、セルの正及び負極と直接接触する共有液体電解質を含み、電池セルの安全性を改善するべく、特に熱暴走の緩和/防止に関連するように、電極間に配置される壁構造を提供する本開示の固形電解質セパレータを有する。例えば、そうでなければ、従来のリチウムイオン電池セルにおけるインターカレーション電極間に配置された固形電解質セパレータである。
【0038】
他の態様において、本開示は、前述のリチウム電池セルを製造するための方法を提供する。様々な実施形態において、RR製造、又はシートツーロール、若しくはロールツーシート工程を伴う方法を伴う。
【0039】
さらに他の態様において、本開示は、このガラス質固形電解質シート、電極サブアセンブリ、及びリチウム電極アセンブリの品質を評価及び検査するための方法を提供する。様々な実施形態において、検査は、シート又はウェブの製造に則して(例えば、ガラス質Liイオン伝導性ガラスの延伸に則して)実行される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A】本開示のフリースタンディングLiイオン伝導性の固形電解質シートを示す。
図1B】本開示のフリースタンディングLiイオン伝導性の固形電解質シートを示す。
図1C】本開示のフリースタンディングLiイオン伝導性の固形電解質シートを示す。
図1D】本開示のフリースタンディングLiイオン伝導性の固形電解質シートを示す。
【0041】
図1E】本開示のフリースタンディングLiイオン伝導性の固形電解質シート及びそこから切除されるマザーシートを示す。
図1F】本開示のフリースタンディングLiイオン伝導性の固形電解質シート及びそこから切除されるマザーシートを示す。
【0042】
図1G】個別のエッジプロテクタ素子を有する本開示のフリースタンディングLiイオン伝導性固形電解質シートを示す。
【0043】
図1H】本開示の電極サブアセンブリを示す。
【0044】
図2A】本開示の様々な実施形態に係るフリースタンディングLiイオン伝導性固形電解質の壁構造を示す。
図2B】本開示の様々な実施形態に係るフリースタンディングLiイオン伝導性固形電解質の壁構造を示す。
【0045】
図3A】糸巻き上に巻かれた本固形電解質シートの連続ロールを示す。
【0046】
図3B】個々の分離した固形電解質シートがそこから切除され積み重ねられた、ウェブの形をする本Liイオン伝導性固形電解質シートの連続ロールを示す。
【0047】
図4A】本開示の様々な実施形態に係るLiイオン伝導性の固形電解質シートの断面図を示す。
図4B】本開示の様々な実施形態に係るLiイオン伝導性の固形電解質シートの断面図を示す。
図4C】本開示の様々な実施形態に係るLiイオン伝導性の固形電解質シートの断面図を示す。
図4D】本開示の様々な実施形態に係るLiイオン伝導性の固形電解質シートの断面図を示す。
図4E】本開示の様々な実施形態に係るLiイオン伝導性の固形電解質シートの断面図を示す。
図4F】本開示の様々な実施形態に係るLiイオン伝導性の固形電解質シートの断面図を示す。
図4G】本開示の様々な実施形態に係るLiイオン伝導性の固形電解質シートの断面図を示す。
図4H】本開示の様々な実施形態に係るLiイオン伝導性の固形電解質シートの断面図を示す。
【0048】
図4I】リチウム金属層、及び表面キズを有する固形電解質シートの断面図を示す。
【0049】
図5A】本開示に係る様々な電極及び電池アセンブリを示す。
図5B】本開示に係る様々な電極及び電池アセンブリを示す。
図5C】本開示に係る様々な電極及び電池アセンブリを示す。
【0050】
図6A】本開示の様々な実施形態に係るフリースタンディングLiイオン伝導性固形電解質シートを製造するための装置を示し、フュージョンドロー装置を示す。
図6B】本開示の様々な実施形態に係るフリースタンディングLiイオン伝導性固形電解質シートを製造するための装置を示し、フュージョンドロー装置を示す。
図6C】本開示の様々な実施形態に係るフリースタンディングLiイオン伝導性固形電解質シートを製造するための装置を示し、スロットドロー装置を示す。
図6D】本開示の様々な実施形態に係るフリースタンディングLiイオン伝導性固形電解質シートを製造するための装置を示し、プリフォームドロー装置を示す。
図6E】本開示の様々な実施形態に係るフリースタンディングLiイオン伝導性固形電解質シートを製造するための装置を示し、フロート法を示す。
【0051】
図7A】本開示の連続固形電解質シートを製造する方法のフローチャートを示す。
図7B】本開示の連続固形電解質シートを製造する方法のフローチャートを示す。
図7C】本開示の連続固形電解質シートを製造する方法のフローチャートを示す。
【0052】
図8】連続ロールの形をする、本フリースタンディングLiイオン伝導性の固形電解質シートの連続ウェブを製造するための製造システム及び方法を示し、該ウェブは、ロール工程に対するインラインシートを用いて構成される。
【0053】
図9】本開示の実施形態に係るガラス質固形電解質シートを製造する方法を示し、該方法は、隣接する平滑板の間に固形電解質の溶融されたガラスを浸透させるべく、毛管力の使用を伴う。
【0054】
図10A】本開示の実施形態に係るガラス質固形電解質シートを製造する方法を示す。
図10B】本開示の実施形態に係るガラス質固形電解質シートを製造する方法を示す。
図10C】本開示の実施形態に係るガラス質固形電解質シートを製造する方法を示す。
【0055】
図11A】本開示の様々な実施形態に係る電極サブアセンブリを示す。
図11B】本開示の様々な実施形態に係る電極サブアセンブリを示す。
【0056】
図12A】本開示の実施形態に係る電極サブアセンブリ及び複数の電極サブアセンブリの連続ウェブを製造するための製造システム及び方法を示す。
図12B】本開示の実施形態に係る電極サブアセンブリ及び複数の電極サブアセンブリの連続ウェブを製造するための製造システム及び方法を示す。
図12C】本開示の実施形態に係る電極サブアセンブリ及び複数の電極サブアセンブリの連続ウェブを製造するための製造システム及び方法を示す。
【0057】
図13A】本開示に係るリチウム金属電極アセンブリの断面図を示す。
【0058】
図13B】本開示の様々な実施形態に係るリチウム電極アセンブリを製造する方法を示す。
図13C】本開示の様々な実施形態に係るリチウム電極アセンブリを製造する方法を示す。
図13D】本開示の様々な実施形態に係るリチウム電極アセンブリを製造する方法を示す。
【0059】
図13E】本開示の様々な実施形態に係るバックプレーンのカプセル化されたリチウム金属電極アセンブリの断面図を示す。
図13F】本開示の様々な実施形態に係るバックプレーンのカプセル化されたリチウム金属電極アセンブリの断面図を示す。
図13G】本開示の様々な実施形態に係るバックプレーンのカプセル化されたリチウム金属電極アセンブリの断面図を示す。
【0060】
図13H】本開示の様々な実施形態に係る端部が封止されたリチウム金属電極アセンブリの断面図を示す。
図13I】本開示の様々な実施形態に係る端部が封止されたリチウム金属電極アセンブリの断面図を示す。
図13J】本開示の様々な実施形態に係る端部が封止されたリチウム金属電極アセンブリの断面図を示す。
【0061】
図13K】本開示の様々な実施形態に係る、拘束されていないバックプレーン構造を有するリチウム金属電極アセンブリの断面図を示す。
図13L】本開示の様々な実施形態に係る、拘束されていないバックプレーン構造を有するリチウム金属電極アセンブリの断面図を示す。
【0062】
図14A】本開示の実施形態に係るリチウム金属電極アセンブリ及び連続ウェブ並びにそれらのソースロールを製造するための製造システム及び方法を示し、該ウェブは、ロール又はRR処理方法に対してインラインシートを用いて構成される。
図14B】本開示の実施形態に係るリチウム金属電極アセンブリ及び連続ウェブ並びにそれらのソースロールを製造するための製造システム及び方法を示し、該ウェブは、ロール又はRR処理方法に対してインラインシートを用いて構成される。
図14C】本開示の実施形態に係るリチウム金属電極アセンブリ及び連続ウェブ並びにそれらのソースロールを製造するための製造システム及び方法を示し、該ウェブは、ロール又はRR処理方法に対してインラインシートを用いて構成される。
【0063】
図15】本開示に係る正リチウム電極アセンブリを示す。
【0064】
図16A】本開示の様々な実施形態に係る電池セルを示す。
図16B】本開示の様々な実施形態に係る電池セルを示す。
図16C】本開示の様々な実施形態に係る電池セルを示す。
図16D】本開示の様々な実施形態に係る電池セルを示す。
図16E】本開示の様々な実施形態に係る電池セルを示す。様々な実施形態において、電池セルは、固体状態の電池であり、電池は、共有液体電解質を有し、ハイブリッド電池は、本開示の封止された電極アセンブリを有し、セルは、リチウム金属を有さない積層体により構成され、ハイブリッド電池は、本開示の正極アセンブリを有する。
【0065】
図17】方法開示に係るスタンドアローンのLiイオン伝導性ガラス質シート開示を検査するための光減衰の使用を示す。
【0066】
図18】方法開示に係る電極サブアセンブリ開示を検査するための光反射の使用を示す。
【0067】
図19A】方法開示に係るリチウム電極アセンブリ開示を検査するための光反射の使用を示す。
図19B】方法開示に係るリチウム電極アセンブリ開示を検査するための光反射の使用を示す。
【0068】
図20】リチウム金属を外側金属表面と接触させた後にこのガラス質シートと接触する内側金属表面からの反射における変化を示す概略図を示す。
【0069】
図21A】方法開示に係る、固体状態の電池セル開示におけるガラス質固形電解質シートの局所抵抗を測定するための装置を示す。
図21B】方法開示に係る、固体状態の電池セル開示におけるガラス質固形電解質シートの局所抵抗を測定するための装置を示す。
【0070】
図22A】方法開示に係る、液相電解質を有する電池セル開示におけるガラス質固形電解質の局所抵抗を測定するための装置を示す。
図22B】方法開示に係る、液相電解質を有する電池セル開示におけるガラス質固形電解質の局所抵抗を測定するための装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
ここで、本開示の具体的な実施形態が詳細に参照される。具体的な実施形態の例は、添付の図面により図示される。本開示がこれらの具体的な実施形態と共に説明される一方、本開示をそのような具体的な実施形態に限定する意図されるものではないことが理解されるであろう。逆に、本開示の思想及び範囲内に含まれ得るような代替例、変更例、及び均等物を包含することが意図される。以下の説明において、本開示の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記述される。本開示は、これらの具体的な詳細の一部又は全てを用いることなく実施され得る。他の例において、本開示を不必要に曖昧にしないために、周知の処理動作は、詳細に説明されていない。
【0072】
一態様において、本開示は、リチウム電池セル用のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質に関し、該電解質は、高密度、フリースタンディング、無機で、実質的に非晶質のLiイオン伝導性の固形電解質の壁構造を備え、一般的にリボン(すなわち、比較的細長いシート)のようなガラスシートの形をし、実質的に平行な長さ方向端部を有し、電池使用可能サイズであり、10-5S/cm以上、好ましくは、10-4S/cm以上、より好ましくは、10-3S/cm以上のLiイオン伝導率を有する。
【0073】
本開示に係るフリースタンディングで実質的に非晶質の固形電解質シートは、高伝導性のLiイオンであり、様々な実施形態において、該シートは、微視的経路を有さず、そうでなく微視的経路が存在する場合、Xリチウム金属のデンドライトの通り抜ける貫通を許容し得る。高伝導性により、固形電解質シートは、室温(すなわち、25℃)において少なくとも10-5S/cm、好ましく、少なくとも10-4S/cm、より好ましくは、少なくとも10-3S/cmのLiイオン伝導率を有することを意味する。様々な実施形態において、Liイオン伝導性シートは、リチウム金属デンドライトを実質的に通さず、これによって、固形電解質セパレータ構成要素として使用されたとき、完全に無機のこのシートは、安全なリチウム金属二次電池セルの具現化を可能にする。
【0074】
「実質的に通さない」という用語の使用により、リチウム金属デンドライトに関連するように、リチウム電池セルにおいて構成されるこの壁構造(例えば、固形電解質シート)のコンテキスト内であることを意味し、電池セルの寿命にわたり、リチウム金属のデンドライトがシートにわたって貫通することは不可能であり、好ましくは、固形電解質シートの本体内に深く又はまったく(例えば、シートの厚みの10%を超えて)伸びることができないことを意味し、この得策により、参照された電池セルは、そうでなければリチウム金属のデンドライトの内成長からシート表面上又はその近傍の元から存在するキズ又は微細構造的特徴に生じる電気的短絡及び断片化に対して耐性を有する。
【0075】
例えば、実質的にリチウムのデンドライトを通さない本開示の固形電解質シートが、リチウム金属電気活性層に隣接して直接接触するセパレータ層として、リチウム金属電池セルに組み込まれた場合、リチウム金属堆積(例えば、リチウムのデンドライト)は、通常の電池セル充電中に、貫通するならば、セパレータシートの本体内に深く貫通することができない。好ましくは、リチウム金属堆積は、シートの本体内に10μmより深く、好ましくは、5μm以下、より好ましくは、1μm以下では貫通することができず、さらにより好ましくは、リチウム金属堆積は、完全に表面、すなわち、シートを貫通することができず、従って、デンドライトを通さない。
【0076】
本開示によると、フリースタンディング固形電解質シートは、10-5S/cm以上、好ましくは、10-4S/cm以上、より好ましくは、10-3S/cm以上の固有室温Liイオン伝導率を有する連続する無機Liイオン伝導性の非晶質材料相を備える。様々な実施形態において、連続する無機Liイオン伝導性非晶質材料相は、無機ガラスであり、複数の実施形態において、無機ガラスは、少なくとも1つのガラス網目形成体と、少なくとも1つのガラス網目修飾体とを有するように特徴付けられ得る。様々な実施形態において、Liイオン伝導性硫黄系ガラスが、無機非晶相において必要なイオン伝導率を実現する。様々な実施形態において、硫黄系ガラスの構成元素は、硫黄と、リチウムと、ケイ素、ゲルマニウム、ホウ素、リン、ヒ素、及び酸素からなる群から選択される1つ又は複数の構成元素とを含む。
【0077】
様々な実施形態において、フリースタンディング固形電解質の壁構造は、実質的に平行な長さ方向端部を有する、含硫黄ガラスの薄く、長く、比較的狭い幅のシートの形をする個別の基板レス材料層である。例えば、様々な実施形態において、固形電解質シートは、500μm以下の実質的に均一な厚み、10cm以上の長さ寸法(l)、1cm以上の幅寸法(w)、及び、10以上、より一般的には20以上の面積アスペクト比(l/w)のガラス条又はリボンである。好ましくは、フリースタンディングの固形電解質シートは、保管のため、又は巻かれた又は折り曲げられた構造の電池セルへの組み込みのために巻かれることが可能であるように曲げられるとき、十分に堅固である。
【0078】
「実質的に均一な厚み」という用語を用いるとき、固形電解質シートの厚みが、その意図された目的のために、電池セルにおける固形電解質シートとして十分に均一であることを意味する。(例えば、固形電解質シート又はガラスの流体流の厚みに対して)「均一な厚み」という用語を用いるとき、厚みの変動が、多くとも平均厚み(t)の20%であることを意味し、より好ましくはそれより小さい。平均厚みが250μm≦t<500μmである実施形態において、厚みの変動は好ましくは、≦2%であり、より好ましくは、≦1%であり、平均厚みが100μm≦t<250μmである実施形態において、厚みの変動は好ましくは、≦5%であり、より好ましくは、≦2%であり、平均厚みが50μm≦t<100μmである実施形態において、厚みの変動は好ましくは、≦10%であり、より好ましくは、≦5%であり、より好ましくは、≦2%であり、平均厚みが10μm≦t<50μmである実施形態において、厚みの変動は好ましくは、≦20%であり、より好ましくは、≦10%であり、さらにより好ましくは、≦5%であり、またさらにより好ましくは、≦2%であり、平均厚みが5μm≦t<10μmである実施形態において、厚みの変動は好ましくは、≦20%であり、より好ましくは、≦10%であり、さらにより好ましくは、≦5%である。
【0079】
様々な実施形態において、フリースタンディング固形電解質シートは、(例えば、50cm以上の)長い連続長、(例えば、100cm以上の)大面積、製造可能に調整可能な面積アスペクト比、及び巻線に相応した可撓性を達成するべく容易にスケーラブルな連続製造プロセスにより形成される。様々な実施形態において、硫化物ガラスシートは、連続ウェブとして形成され、1つ又は複数の電池セル及び/又は電極アセンブリへの組み込みのための固形電解質セパレータを生成するべく、個別のシートからある大きさにカットされてよい。好ましくは、連続ウェブは、コイルとして保管されるべく、十分に可撓性を有し、例えば、糸巻きに巻かれ、好ましくは、結晶相を本質的に有さない、無機Liイオン伝導性硫化物ガラスリボンのスタンドアローンの連続する供給ロールを生成する。様々な実施形態において、Liイオン伝導性硫化物ガラスシート又はウェブを製造するための製造プロセスが、本開示のリチウム電極アセンブリ及びそれらの電池セルを製造するための製造プロセスに統合される。
【0080】
一般に、連続する無機Liイオン伝導性硫黄系ガラス相は、固形電解質シートの大半の体積分率を構成し、これによって、主要な材料相として見なされる。様々な実施形態において、連続する主要ガラス相の体積分率は、シートの固形体積全体の少なくとも50%で、又は少なくとも60%、若しくは少なくとも70%で、あるいは、少なくとも80%である。特定の実施形態において、体積分率は、固形体積全体の少なくとも90%又は少なくとも95%であり、好適な実施形態において、それは約100%を構成し、これによって、そのような実施形態において、固形電解質シートは、本質的にLiイオン伝導性硫黄系ガラス相からなる。体積分率が100%より低い場合、残りの固形体積は一般に、結晶又は非晶質であり得る二次相により占められる。様々な実施形態において、連続するLiイオン伝導性主要ガラス相は、一般的に組み込まれてその中に隔離される任意の二次相(存在する場合)を有するガラスマトリックスとして有効に機能する。様々な実施形態において、連続するLiイオン伝導性硫黄系ガラス相は、シートの主要な材料相であり、上記に画定されているように、それは、第1及び/又は第2主要側面の大半の面積分率を構成する(例えば、第1及び/又は第2主要側面の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、及び好ましく100%が、連続するLiイオン伝導性ガラス相により画定される)。
【0081】
この固形電解質シート又はそれらの表面を参照するとき、「実質的に非晶質」という用語の使用により、シートがある量の結晶相を含有し得る可能性を許容することを意味する。通常、結晶相は偶発的で、一般に非伝導性(<10-8S/cm)であり、主要Liイオン伝導性ガラス相の非晶質マトリックス内に隔離される。しかしながら、存在する場合、結晶相は、幾分の伝導性Liイオン(>10-8S/cm)を有することが考えられ、いくつかの例において、結晶相の伝導率は、主要ガラス相の伝導より大きくてよい。しかしながら、実質的に非晶質と見なされるために、固形電解質シートにおける結晶相の体積分率は、20体積%より小さいものであるべきであり、より一般的には、10体積%より小さい。好ましくは、フリースタンディング無機固形電解質シートは、完全に非晶質であり、そのような場合、検出可能な結晶相をまったく有さない。しかしながら、全ての状況において、存在する場合、結晶相は、単体又は互いとの組み合わせで、潜在的なデンドライトの成長及び通り抜ける貫通のための微視的経路を生成し得る、シートの厚みにわたって伸びる連続する相互接続された粒界を生成しない。代替的実施形態において、固形電解質シートは、主に非晶質であり、50%より低い(すなわち、50%から20%の間の)結晶相の体積分率を有することが考えられる。そのような実施形態において、結晶相は一般に、Liイオン伝導性(>10-8S/cm、好ましくは>10-7S/cm)を有し、より好ましくは、高伝導性(例えば、>10-5S/cm)を有し、いくつかの実施形態において、結晶相は、それ自体が組み込まれた連続する非晶質ガラスマトリックスより伝導性を有するLiイオン(例えば、>10-4S/cm、又は>10-3S/cm)であることが考えられる。以下にてより詳細に説明されるように、様々な実施形態において、実質的に非晶質の固形電解質シートは、本質的に結晶相を有さず、より好ましくは、検出可能な結晶相がない。
【0082】
様々な実施形態において、フリースタンディングの無機固形電解質シートは、X線回折(XRD)により判断されるように非晶質であり、これによって、個別の回折パターンを生成しない。様々な実施形態において、X線回折による非晶質であることに加えて、固形電解質シートは好ましくは、本質的に結晶相を有さず、さらにより好ましくは、XRD、顕微鏡法、及び/又は光学的方法により判断されるように、検出可能な結晶領域を含有しない。疑義を回避するために、非晶質という用語の使用により、構成原子が、長範囲の規則を示さない空間パターンに配置されることを意味する。
【0083】
固形電解質シートを指す場合、「本質的に結晶相を有さない」という用語の使用により、それ(シート)が、偶発的で隔離されたランダムなナノ結晶など、XRDにより検出できない非常に少量の結晶相を含有し得る可能性を許容することを意味するが、存在する場合、総シート体積の5%以下を占め、好ましくは、2%以下であり、さらにより好ましくは1%以下であり、またさらにより好ましくは、本質的に結晶相を有さない場合、シートは、完全に結晶相を有さない(すなわち、検出可能な結晶相がない)。類似に、「本質的に二次非晶相を有さない」という用語を用いている場合、シートが非常に小さい体積分率であるが、総シート体積の5%以下、好ましくは、2%以下、さらにより好ましくは1%以下の二次非晶相を含有してよく、またさらにより好ましくは、本質的に二次相を有さない場合、シートは、好ましくは、二次非晶相を有さない(すなわち、検出可能な二次非晶相がない)という可能性を許容することを意味する。
【0084】
(例えば、固形電解質シートの形をする)この壁構造を、「フリースタンディング」又は「フリースタンディング可能」として指す場合、シートは、基板が存在しない状態で(すなわち、自己支持型)、それ自体(該シート)を無キズのままで維持させるのに十分な機械的強度(例えば、引張強度)を表示する自己支持型の層であり、それにより、フリースタンディングの固形電解質シートは、その継続する無キズの存在のための別の自己支持型の層(例えば、正極又は負極層又は不活性キャリアフィルム)に依存しないことが意味される。従って、様々な実施形態において、このフリースタンディングの固形電解質シートは、「基板レス」である。
【0085】
「スタンドアローン固形電解質セパレータ」又は「スタンドアローン固形電解質シート」若しくは「スタンドアローン固形電解質」という用語の使用により、該セパレータ又はシート若しくは電解質は、個別の電池セル構成要素であり、これによって、電池セル又は電極アセンブリに組み込まれない、又はまだ組み込まれていないことを意味する。シート又はセパレータを個別の電池セル構成要素として指す場合、該シート又はセパレータには、正極又は負極が存在せず、さらに、あるいはリチウム電池セルにアンペアアワー容量を提供するよう機能し得る電気活性材料を有さないことが、理解されたい。様々な実施形態において、複数の特定の期間において、フリースタンディングで基板レスであるスタンドアローン固形電解質シートは、それ自体(該シート)が保管され又は製造された周囲環境に対して直接露出された又は露出可能な自由な対向する主要側面を有するであろう。従って、それらの期間中、シートは、シートが(永久的に又は一時的に)化学的に結合され又は物理的に接着される異なる材料層により、カバーされない。個別(discrete)という用語はまたは、場合により、ガラスのマザーシートから、又は長い連続ウェブのLiイオン伝導性ガラスから切除された、ある大きさにカットされた固形電解質シートを参照するとき、本明細書において用いられる。電極アセンブリを指す場合、スタンドアローンという用語の使用により、電極アセンブリがまだ反対の極性の第2電極と組み合わされておらず、従って、スタンドアローンの電極アセンブリは、電池セルにまだ組み込まれていないことを意味する。
【0086】
「電気活性材料」により、リチウム電池セルにアンペアアワー容量を提供し、電気化学的酸化還元反応におけるリチウム(例えば、リチウムインターカレーション材及びリチウム金属)を伴う電気活性材料を意味する。
【0087】
「壁構造」という用語の使用により、実質的に平行な長さ方向端部を有する連続するストリップ又はリボンなどの薄いシート状の固形電解質であることを一般的に意味する。いくつかの実施形態によると、壁構造は、長方形及び楕円形プリズムを含み、中空の角柱状のレセプタクルの形をし得ることが考えられている。代替的実施形態において、固形電解質の壁構造は、円形又はオーバル形のフットプリントを有する平らなものであり得ることが考えられる。
【0088】
シートの特定の特性/特徴を、「電池使用可能」として指す場合、参照される特徴は、画定された種類(例えば、液体、ゲル、ポリマー又は固体状態)、形態(例えば、巻かれている、折り曲げられている、又は積み重ねられている)、寸法の電池セル、及び/又は、電池セル定格アンペアアワー容量(Ah)、面積アンペアアワー容量(mAh/cm)、3次元エネルギー密度(Wh/l)、及び電流密度(mA/cm)を含むがそれらに限定されない1つ又は複数の予め画定されたパラメータを有する電池セルにおける連続するLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ構成要素としての該シートの機能をサポートするのに適したことを意味する。
【0089】
面積抵抗値(ASR)という用語の使用により、ブロッキング電極(例えば、金被覆又は白金層)又はノンブロッキング電極(通常、リチウム金属)の何れかと接触する対向する主要側面の間で測定されるような固形電解質シートの抵抗を意味する。対ブロッキング電極で測定された場合、Liイオン伝導率及び厚みに関し、それが単にイオン抵抗性の測定であるので、ASRは一般にその最も低い値となる。対照的に、対ノンブロッキングLi金属電極で測定された場合、ASRは、対Li金属の界面抵抗、並びにシート自体のイオン抵抗性を示す値である。
【0090】
「固有」又は「固有伝導性」という用語の使用により、材料のイオン伝導率を指す場合、例えば、液体溶媒又は有機分子若しくは有機材料相などのいかなる他のさらなる材料剤が存在せず、該材料自体の固有の伝導率を意味する。
【0091】
この固形電解質シートを「無機」として指す場合、固形電解質シートは、完全に無機であり、それにより、有機材料を有さないことを意味する。本明細書において用いられているような「有機材料」という用語は、炭素を含有する化合物を意味し、該炭素は一般的にそれ自体と及び水素と結合し、多くの場合は、他の元素とも結合される。これによって、「無機材料」という用語は、有機材料ではない任意の材料を意味する。
【0092】
固形電解質シートを指す場合、「ウェブ」又は「連続ウェブ」という用語の使用により、1つ又は複数の電池セル又は電池セル構成要素用に、(例えば、ある大きさにカットされた)ウェブから切除される複数の個別の/個々の固形電解質セパレータシートのためのソースとして機能し得るそのような連続長の中断されないシートことを意味する。様々な実施形態において、固形電解質シートのウェブは、供給ロール又はソースロールなど、ロールの形において後段の製造に保管され、搬送され、又は用いられる。しかしながら、本発明は、そのようなことに限定されず、個別の固形電解質シートは、ウェブ製造に則して、かつこの得策により、回転工程を省くことにより、ある大きさにカットすることが考えられる。連続ウェブは、例えば、複数のサブアセンブリがある大きさにカットし得る電極サブアセンブリウェブ、又は、それらのある大きさにカットされた複数のものを製造するための電極アセンブリウェブの形成において、該ウェブに材料層をコーティング又は積層することによるなど、後段の電池構成要素製造のための基板として機能し得ることも考えられる。
【0093】
本固形電解質シートを「高密度」として指す場合、固形電解質シートの密度が、それ自体が形成される理論上の材料の密度に近接し、一般的に理論上密度の90%より高く、より一般的には95%より高く、好ましくは98%より高い(例えば、99%より高い)ことを意味する。
【0094】
好ましくは、高密度の固形電解質シートは、製造中、又は、該シートが組み込まれている装置の動作中に、シート自体が接触する液体を「実質的に通さない」。従って、実質的に通さないシートは、通常、高密度で、ピンホールのような通り抜ける多孔性を有さず、又はより一般には、それを通って該シートにわたって液体が浸み出し得るいかなる経路を有さない。注目すべきことに、液体に対する実質的な不浸透性の基準は、リチウム金属のデンドライトを実質的に通さないシートを生成するのに不十分である。例えば、流体(例えば、気体及び/又は液体)を実質的に通さない多結晶材料層(例えば、多結晶セラミック)は、それにも関わらず、連続粒界経路を介するリチウム金属のデンドライトの貫通を極めて受けやすい。従って、様々な実施形態において、本開示の実質的に非晶質の固形電解質ガラスシートは、それらが直接接触する液体を実質的に通さず、リチウム金属のデンドライトも両方実質的に通さない。
【0095】
多結晶セラミック層又は粉末圧密体とは対照的に、本開示の実質的に非晶質の固形電解質シートは、隣接する(すなわち、相互接続される)結晶粒界、又は圧密された粉末粒子間境界、若しくは、連続する微視的経路を生成し、第1及び第2主要側面の間で延伸し、そうでなければ存在する場合、デンドライトがシートにわたって通り抜ける貫通の直通路を提供し得る、単体で又は組み合わせでのボイド及び/又はクラックとの組み合わせのような境界などの連続する微視的経路を有さない。例えば、圧密された粉末圧密体の表面上の空洞及びボイドは、電流フォーカシングの極めて局部的なホットスポットを生成するので、デンドライトの不可入性に非常に有害であり、非常に高い局部電流密度につながり得る、そのことの後、例えば、粉末圧密体内の内部細孔の間の材料ブリッジがつぶれると、及び/又は、ホットスポットにおける局部電流密度が、固体Li金属がそれにわたって貫通するそのような高値に達すると、クラック伝播を介して、Li金属の内成長及び通り抜ける貫通が続く。
【0096】
「粒子から粒子への境界」又は「粒子間の境界」により、連結された多結晶粉末-粒子、ガラス-セラミック粉末-粒子、及び非晶質粉末-粒子(例えば、ガラス粒子)、及びそれらの混合物の領域間のインターフェイス、特に非晶質粉末粒子から非晶質粉末粒子への境界と、マイクロクラック及びボイド(例えば、鎖状ミクロボイド)の形をする不連続のように圧密された粉末圧密体に一般に現れる圧密された粉末-粒子の圧密された領域間のインターフェイスとを含み、粒子のインターフェイスを意味する。粒子から粒子への境界、粒子境界、又は粒子間の境界という用語の使用により、連結された粉末-粒子とそれらの圧密された領域と間の境界を指し、これに対して、結晶粒界は、異なる結晶配向の結晶粒の間のインターフェイスである。
【0097】
従って、本開示の固形電解質シートは、多結晶Liイオン伝導性セラミック膜(例えば、ガーネットのような、又は、LTP/LGP膜、若しくはLATP膜のようなそれらの派生物)ではなく、連結されたLiイオン伝導性硫化物ガラス粉末-粒子の単純な圧密又はホットプレス焼結でもない。それらについて、表面空隙及び内部細孔など、明らかな又は残留した粒子間の境界、又はそれらの現れは、製造において一般には避けられず、液状の表面では、Liのデンドライトの貫通を開始させるのに十分である圧密された粉末圧密体のキズの現れが欠如する。LTP又はLGP膜という略語を用いることにより、リチウムチタンリン酸塩又はリチウムゲルマニウムリン酸塩を基にした多結晶膜を意味し、チタンの一部がアルミニウムにより置き換えられた場合、LATPという略語が一般に用いられる。LTP又はLGP多結晶セラミック膜、及びそれらの組成派生物は、従来の固体状態の焼結により、又は、ガラスツーセラミック手法を用いることにより、製造され得る。しかしながら、処理と関係なく、LTP/LGP材料は、Liイオン伝導性となるべく、完全に結晶化されなくてはならず、これによって、多結晶膜として電池の有用性のみを有する。
【0098】
ガラス粉末圧密体において、ミクロボイド及びマイクロクラックなどの微視的な不均質性の存在は一般に避けられない。加熱ダイ圧密などの特定工程が、延長された時期にわたって、高一軸圧力下、ガラス遷移温度で又はそれに近い温度で実行された場合、比較的厚いペレットにおいて内部ボイド及びクラック密集度及び/又はサイズのある程度の軽減を提供し得る一方、ホット圧密は、コストがかかる不連続のバッチ工程であり、表面キズを取り除くのに非実用的で、かつ、不適切であり、特に薄いペレットを製造するのに問題がある。加熱粉末圧密中、表面空洞が生成されて粒子インターフェイスにおけるボイド体積低減の原因となり、気体放散が限定されている場合、(ミクロ細孔及びナノ細孔を含む)内部細孔の散乱を含む他の特徴は、該圧密体の内部の部分にわたって分布されて現れ得る。例えば、半透明又は見た限り透明であったとしても、厚いホットプレス粉末ペレットは、それらの表面上にくぼみのあるキズの存在に起因して、艶消し仕上げを有し、該ペレットが続いてアースされる場合、内部細孔が表面空隙として存在するであろう。表面痕跡及び表面汚染はまた、特に圧密が、約Tの近くで又はその温度で実行されている場合、面質を悪くする。
【0099】
デンドライトに強いマイクロ構造を生成するために、連続するLiイオン伝導性ガラス相は、非晶質だけではなく、それにより、結晶粒及び関連粒界を有さず、「ガラス質」(すなわち、ガラス質ガラス)でもあり、「ガラス質」は、融液から直接形成され、又は連続する固化された融液から得られ、これによって、圧密された又は個別のガラス粉末粒子(例えば、硫黄含有のガラス粉末粒子)、ではなく、かつそれを含有さないガラス相、ガラス層(例えば、ガラス質ガラス層)、又はガラス製品(例えば、ガラス質ガラスシート)を説明するために本明細書に用いられる用語であり、従って、ガラス質ガラス相(又はより単純にガラス質相)、又はガラス質ガラス層(又はより単純にガラス質層)、若しくはガラス質ガラス製品(又はより単純にガラス質製品)はまた、圧密されたガラス-粉末粒子間境界をまったく有さない。さらに、理論により限定されることを意図することなく、本開示の固形電解質シートの、リチウム電池セルにおけるデンドライトの通り抜ける貫通に強く、好ましくはそれを防ぐ能力は、液状の表面を有するガラス質ガラスとしてのその製造に基づいているものだと思われ、それにより、静止液体上の表面張力作用により生じるような平滑な非晶質表面を意味する。
【0100】
様々な実施形態において、本開示のフリースタンディング固形電解質は、液状の表面を有するガラス質モノリシックのガラスシートであり、連続するLiイオン伝導性非晶質材料相は、固形電解質全体にわたって中断されない方式で存在するガラス質ガラスであり、それと共に、シート全体に広がるガラス質ガラスの連続する非晶質の広がり(すなわち、ガラス質ガラスマトリックス)を有効に提供する。
【0101】
「ガラス質モノリス」として、又は、「ガラス質モノリシックのシート」として、フリースタンディング固形電解質シートを指す場合、「モノリス又はモノリシックの」により、フリースタンディングのシートが実質的に均一なガラス組成物を意味する。従って、ガラス質モノリシックのシートは、それ自体の形成及び単なる存在のために基板を必要とし、従って、フリースタンディングでもモノリスでもない物理又は化学蒸着層(すなわち、CVD又はPVD)などの積層体又は多重層の2つ以上のガラス質層の異なる組成又はマイクロ構造ではない。
【0102】
本開示のガラス質固形電解質のガラスシートは、圧密された/ホットプレスされた硫化物ガラス粉末圧密体、多結晶セラミック膜(例えば、ガーネット及びLTP/LGP)、及び(例えば、PEOのような)固形ポリマー電解質膜の多数の欠点を有する。
【0103】
例えば、粉末圧密は、表面キズ、粒子間の境界、及びボイドのような欠陥の過度の密度に関する機械的及び電気化学的錯雑を伴い、それらの錯雑は、強度を制限する応力コンセントレータとして作用し、可撓性を妨害し、Liのデンドライトの開始剤及びデンドライトショーティングの簡易な経路として機能する。延長された回数で高圧における同時加熱及び圧密(すなわち、ホットプレス)は、粒子間の凝集を改善するために有用であり得る一方、それは、以下の本明細書においてある程度詳細に解釈されるように、処理を複雑にしてデンドライトの開始に関する表面キズを適切に有さない、コストがかかるさらなる段階を加える。さらに、粉末圧密は、小さい圧密されたペレットに適した一方、スケーラブルではなく、かつ、長くて可撓性のあるガラスシートを製造するために用いられることができないバッチ処理である。
【0104】
任意のガラス(例えば、窓ガラス)の機械的故障は、応力及び欠陥のサイズが臨界の組み合わせに達したときに発生し得る。信頼性は従って統計的であるが、それにも関わらず、表面上の最も大きいサイズのキズに関する。対照的に、シートの基本的な機械的強度はそれらの存在により大きく影響されないので、小さく浅いキズは、それほど重要ではないものとして認識される。浅いキズは数密度が小さく、又は単数でさえあった場合、それらのそういう存在は実用的な観点からはささいなものと一般に考えられる。
【0105】
しかしながら、実用的な電流密度において、キズ深さが、デンドライト発生の閾値サイズを超えた場合、デンドライトに強い固形電解質ガラスシートを実現するために、そうでなければ液状の表面における浅いキズは禁止され得る。リチウム金属電池セルにおいて、ガラス質固形電解質シートは固体Li金属アノードと接触し、閾値深さを超えて延伸するキズは、電流フォーカシングのための極めて局部的なホットスポットを生成し得て、電池充電中、たとえ20GPaをかなり上回る弾性率を有する電解質に対しても、非常に高い局部電流密度、及びシート内へのLi金属のデンドライト貫通をもたらし得る。
【0106】
閾値キズ深さ、及び局部電流密度と名目電流密度との間の汎用関数関係の判断に関する検討は、以下の本明細書においてより詳細に説明される。好ましくは、シート内への最も深いキズの延在は、シートの厚みの1%より低く、好ましくは、0.1%より低く、一般には5μm以下である。例えば、100μm厚のシートにおける最も深いキズの延在は、1μmより小さいものであるべきであり、より好ましくは、0.1μmより小さく、50μm厚のシートに関しては、0.5μmより小さいものであるべきであり、好ましくは、0.05μmより小さい。
【0107】
浅いキズの存在に対するデンドライト発生の感度を考慮すると、初期状態の表面を生成し得る処理方法が望ましく、操作、電池構成要素及び電池の後段処理中、接触ダメージの最小化には特に注意を払うべきである。
【0108】
様々な実施形態において、液体状表面の特別な滑らかさを達成するために、又は、特定の程度の可撓性又はデンドライト不可入性に相応した十分な面質を保証するために、この固形電解質シートは、研削及び/又は研磨を受けてよい。好ましくは、固体としてのその未使用状態の、予め決められた均一な厚みを持つ自然に形成された上質の液状表面を有するガラス質ガラスシートを製造することにより、研磨する又は研削する必要は回避される。
【0109】
この固形電解質シート、又はその第1及び第2主要側面、若しくはシートの厚みを指す場合、「固体としての未使用状態」、又はより単に「未使用状態」、又はさらにより単に「未使用」という用語の使用により、固形電解質シートの状態、その表面の状態、固体としてシート形成次第すぐ(すなわち、固化次第すぐ)のその厚みを指すことを意味する。より具体的には、未使用状態は、示差走査熱量測定又は示差熱分析により決定され得るシートの最も低いガラス遷移温度(T)未満の温度に達してすぐの固形電解質シートの状態を指す。固体としてのその未使用状態における固形電解質シート又は主要側面を指す場合、それ(シート又は表面)は場合により、より単に、未使用固形電解質シート又は未使用主要側面と称される。その厚み又は表面粗度など、未使用の固形電解質シートの特定の特性を指す場合、未使用の厚み又は未使用の表面粗度という用語は、固体としてのその未使用状態におけるシート/表面の厚み又は粗さを指すために用いられ得る。
【0110】
様々な実施形態において、シートの第1及び第2主要側面は、研磨用異質表面により接触されず、かつ、所望の厚み及び厚みの均一性は、固体としてのその未使用状態において達成される。様々な実施形態において、未使用固形電解質シートの第1及び第2主要側面は、異質の固形表面により接触されず、これによって、該表面は、それらの未使用状態において化学的にかつ物理的に初期状態であり(すなわち、接触されず)、表面の滑らかさ、キズ、及び汚染物質に関連するように、重要な利点をもたらす。不活性液体媒質(例えば、アルゴン又はヘリウムのような不活性気体環境)において自然に形成されたその初期状態の表面は、異質の固体表面と直接接触して固化を伴い得る表面痕跡又は他の固体接触の不完全さを受けやすくない。固形電解質シートの表面を指す場合、「初期状態」という用語の使用により、参照された表面は、それらの未使用状態において、異質の固形表面により接触されないことを意味する。
【0111】
様々な実施形態において、固化した固形電解質シートは、本明細書において、均一な厚みを持ち、好ましくは滑らかな液状表面の上質の中央部分、及び、一般にその長さ方向寸法に沿って延伸し、好ましくはレーザビームで(すなわち、レーザ切断により)の切断の後の固化工程を介して除去されるより比較的低質の周縁部を有するマザーシートと称され得る。
【0112】
無機非晶質材料相について上にて規定したような高固有Liイオン伝導率(すなわち、≧10-5S/cm、好ましくは、≧10-4S/cm、より好ましくは、≧10-3S/cm)を達成するために、硫黄系Liイオン伝導性ガラスは、この目的のために、硫黄の高い分極率が、硫黄-ガラス形成骨格イオンとの相互作用を弱めることによりLiイオン移動度を高めるように傾向があるように、特に良好である。
【0113】
無機Liイオン伝導性非晶質材料相を指す場合、特に無機硫化物又は硫黄系ガラスを指す場合、「硫黄系」又は「硫化物」という用語の使用により、ガラス組成物又はガラス系は、構成元素としての硫黄及び可動リチウムと、少なくとももう1つの構成元素(例えば、リン、ケイ素、ホウ素、ヒ素、及びゲルマニウム)とを含有することを意味する。硫黄系ガラス、含硫黄ガラス、及び硫化物ガラスという用語は、本明細書及び特許請求の範囲において交換できるように用いられる。
【0114】
様々な実施形態において、硫黄系ガラスは、添加剤又は二次構成元素が示される場合を除き、称されたように主な構成元素から構成される。(硫黄及びリチウムを含む)主な構成元素は、20%より高い、ガラスにおけるモルパーセンテージを有し、二次構成元素は、20%以下、一般的に、10%以下のモルパーセンテージでガラスに存在する。様々な実施形態において、主な構成元素は、硫黄、リチウム、及び、リン、ケイ素、ホウ素、及びゲルマニウムからなる群から選択される1つ又は複数(例えば、リン、ホウ素、及びケイ素)である。
【0115】
疑義を回避するために、「硫化物ガラス」又は「硫黄系ガラス」という用語は、ガラスの構成元素として酸素又はセレンを除外することを意味せず、複数の実施形態において、酸素は、複数の主な構成元素のうちの1つであってよい。酸素及び硫黄を含有する場合、硫化物ガラスは、硫黄及び酸素の両方を含有することを肯定的にはっきりと特定するため、場合により、本明細書において、オキシ硫化物ガラスと称される。様々な実施形態において、二次成分元素(例えば、ケイ素、酸素、アルミニウム、及びリン)は、ガラス安定性を改善し、液相線温度での粘度、及び/又は、たとえより低いLiイオン伝導率を犠牲にしてもLi金属との化学的/電気化学的適合性を増大するためにガラス組成物に組み込まれ得る。
【0116】
高伝導性の硫化物系Liイオン伝導性ガラスは、以下の文書において説明され、それらの開示が本開示の態様に関するため、それらの全ては、参照により本明細書に組み込まれている。Mercier R,Malugani JP,Fahys B,Robert G(1981)Solid State Ion 5:663,Pradel A,Ribes M(1986)Solid State Ion 18-19:351、Tatsumisago M,Hirai K,Minami T,Takada K,Kondo S(1993)J Ceram Soc Jpn 101:1315、Kanno R,Murayama M(2001)J Electrochem Soc 148:742,Murayama M,Sonoyama N,Yamada A,Kanno R(2004)Solid State Ion 170:173、Hayashi A,Hama S,Minami T,Tatsumisago M(2003)Electrochem Commun 5:111、Mizuno F,Hayashi A,Tadanaga K,Tatsumisago M(2005)Adv Mater 17:918、Mizuno F,Hayashi A,Tadanaga K,Tatsumisago M(2006)Solid State Ion 177:2721;H.Wada,et al.,"Preparation and Ionic Conductivity of New B-LiS-Lil Glasses",Materials Research Bulletin,Feb.1983,vol.18 No.2,pp.189-193;Fuminori Mizuno,et al., "All Solid-state Lithium Secondary Batteries Using High Lithium Ion Conducting LiS-P Glass-Ceramics",Chemistry Letters 2002,No.12,The Chemical Society of Japan,Dec.5,2002,pp.1244-1245(with 2 cover pages);Fuminori Mizuno,et al.,"New,highly Ion-Conductive Crystals Precipitated from LiS-P Glasses",Advanced Materials 2005,vol.17,No.7,Apr.4,2005,pp.918-921;米国特許公開番号第20070160911号;及び米国特許番号第8,012,631号。
【0117】
Liイオン伝導性硫化物ガラスは、いくつかの点において有利である。第1に、それらのLiイオン伝導率が高く、第2に、それらは他の無機材料に相対して柔らかいので、機械的粉砕により製造されたとき、該粉末粒子は、圧力形成されて圧密体となる。しかしながら、バルクガラスとして、Liイオン伝導性硫化物は、いかなる種類の電池使用可能な電池構成要素への処理、及び、組成物を特徴付けて、ガラスを粉末まで粉砕して圧密することにより製造されたペレットにおける伝導率を検査することに集中したそのエリアでの作業が非常に困難であることとして以前から認識されている。実際に、Liイオン伝導性硫化物ガラスは、冷却に対して結晶化する傾向が高く、加熱に対しては失透を極めて受けやすいという認識は理解できる。Liイオン伝導性硫化物ガラスは、酸化物ガラスよりもかなり壊れやすく、その高イオン伝導率は、ガラスをさらに不安定化する大量の結合破壊Liイオンを有することを前提とする。i)高温における湿気及び酸素に対するそれらの感度、及びii)Liイオン伝導性硫化物ガラス粉末を製造する比較的単純で直接な低温機械的粉砕手法の出現と組み合わされたこの認識はおそらく、当産業が粉末を機械的に粉砕し、引き続き、粉末圧密体を圧密して構成要素を製造する方向に排他的に動くように、有効に導いている。さらに、該機械的粉砕手法は、見た限り、いかなる欠点を有することなく、低温処理の全ての利点を有する。しかしながら、冷却成形され又はホットプレスされた硫化物系の固形電解質粉末構造体が、最終的には電気化学的にも機械的にも両方キズがついたことは、以前は認識されていなかった。さらに、高密度の粉末圧密体を圧密することは、スケーラブルな処理ではなく、長い連続するガラスシート又はウェブを製造することに対して決して助けになっていない。
【0118】
粉末粒子間境界及びそれらの残留の欠陥(表面空隙及び内部細孔など)をまったく有さない、硫化物系固形電解質ガラスの電池使用可能なフリースタンディングガラス質シートは、異なる方法で形成され得ることが予期せずに見出されている。Liイオン伝導性硫化物ガラスは、文献報告、熱力学特性、及び流体力学的特徴に基づき、予期を超えた運動安定性を有することが分かっており、硫化物ガラスを流れさせ、又は流れることを許容することは、安定性を高め得て、それにより、ガラス成形性並びに対結晶化の安定性を改善し、特に、流体又は液体状態からのガラス延伸(例えば、溶融したシートとしてプリフォームから硫化物ガラスを延伸し、又はそれ自体を引っ張る)を容易にすることが想定される。このように、好ましくは実質的にLiのデンドライトを通さず、粉末粒子間境界及び粉末圧密体を圧密することから得られる残留の欠陥をまったく有さない、硫化物系Liイオン伝導性の固形電解質ガラスの電池使用可能なフリースタンディングのガラス質シートは、形成され得る。
【0119】
別の態様において、本開示は、無機Liイオン伝導性非晶質材料相の薄くて高密度の壁構造を製造する方法に関し、特定の実施形態において、該壁構造は、硫化物系Liイオン伝導性ガラスの薄いガラス質シートであり、様々な実施形態において、平行な長さ方向端部と、断片化されることなく連続ロール内に巻かれ得る十分な可撓性とを実質的に有する連続ウェブとして形成される。
【0120】
様々な実施形態において、本開示の方法は、Liイオン伝導性硫化物系ガラス材を、途切れない連続性の薄い無機流体シートに形成する段階と、固化する前に流体シートがその長さ方向寸法に沿って流れることをさせ又は許容する(すなわち、流体シートをガラスの流体流に流れさせる)段階とを伴う。様々な実施形態において、途切れない連続性の流体流は、流れると平行な長さ方向端部を実質的に保持し、該流れは少なくとも、薄くて、好ましくは、≦500μmの実質的に均一な厚みの上質の中央部分を有する。
【0121】
この固形電解質シートを製造する方法を指す場合、「流体シート」という用語の使用により、シートが製造される材料のガラス遷移温度(T)より高い温度、通常はTより著しくより高い温度におけるシート又はそれらの一部分を指す。「流体流」という用語の使用により、流体シートが流れること、通常、重力、及び/又は電動プーリングロッド又はローラなどの外力により流れさせられるようにさせられることを意味する。いくつかの実施形態において、途切れない連続性の流体流は、液相線温度(Tliq)において又はそれより高い温度において、含硫黄ガラスの液体融液から形成される。他の実施形態において、途切れない連続性の流体流は、固体プリフォームの含硫黄ガラスを、それ自体の重量下で変形する温度(例えば、ガラスプリフォームの軟化温度より高い温度)まで加熱することにより、形成される。
【0122】
硫化物ガラスを、粉末構造体と反対するようなガラス質モノリスに完成する恩恵を認識すると、方法、及び、結晶化が発生しにくい及び/又はより高い溶融粘度を有するが、依然として必要なレベルのLiイオン伝導率(>10-5S/cm)を保持する変更された硫黄系ガラス組成物が、開発されている。特に、ガラス安定性因子及び/又はHrubyパラメータを増大するための方法が、説明され、方法は、ガラスにおける酸素量の増大、酸素対硫黄のモル比の増大、ガラスにおける酸化物網目形成体の量の増大、酸化物網目形成体対硫化物網目形成体の比率の増大、網目形成のためのケイ素の組み込み、結合破壊のリチウムイオン量の低減、4つより多くの主要構成元素(例えば、S、Li、B、P、及びOといった5つの主要構成元素)又は5つより多くの主要構成元素(例えば、S、Li、Si、B、P、及びOといった6つの主要構成元素)を有するようにベース硫化物ガラスの組成のチューニング、及びそれらの組み合わせを含む。加えて、ベースガラスへの添加剤はまた、失透剤及び結晶化抑制剤として、本明細書において用いられることが考えられる。
【0123】
さらに、Liイオン伝導体として電池セルに用いられるよう特に意図されているガラスのLiイオン伝導率の低減に対して明らかに反直感的である一方、様々な実施形態において、これは、本開示のガラス質固形電解質シートの特性を作り、改善するために本明細書において考えられるアプローチである。従って、様々な実施形態において、ガラスの組成は、低減された伝導率を犠牲にして、熱的性質を高めるように調整されている。
【0124】
多数の用語が、ガラスの熱的性質を議論するための説明に用いられている。{T-T}は、結晶化のオンセット(T)とガラス遷移温度(T)との間の差であり、本明細書においては、ガラス安定性因子とも称され、{T-T}は、ガラスが延伸された温度(T)と結晶化のオンセットとの間の差である。液相線温度は、(Tliq)であり、Tliqにおけるガラスの粘度は、液相線粘度である。ガラスの溶融温度は(T)である。ストレイン温度とは、ガラスの粘度がおよそ1014.6ポアズであって応力が時間にわたって緩和され得る温度である。アニール温度とは、粘度がおよそ1013.4ポアズであって、ガラスの応力が1時間未満又は数分で緩和され得る温度である。最後に、軟化温度は、ガラスが107.6ポアズまでの粘度を有する温度として画定される。ガラスは通常、この温度において又はそれより高い温度においての延伸に適している。
【0125】
これらの特徴的温度の測定のためにいくつかの技術が存在する。示差走査熱量測定(DSC)及び示差熱分析(DTA)が最も一般的である。概して、ガラスを延伸するために、TとTとの間の大きい間隔(すなわち、大きいガラス安定性因子)が望ましい。
【0126】
ガラス安定性を判断又は推定する別の方法は、以下の数式により与えられるように、Hrubyパラメータ(Hパラメータ)を介するものである。
【数1】
【0127】
高値のHは、高いガラス安定性を示唆し、大きければ大きいほど、結晶化に対してガラスがより安定する。例えば、1より小さいHを有するガラスは概して、結晶化する傾向が高く、不安定と見なされる。
【0128】
別の態様において、Liイオン伝導性硫化物ガラスのガラス質固形電解質シートは、ガラスのスタンドアローンのガラス質ウェブの形をして製造される。様々な実施形態において、複数の個別の固形電解質シート又はリボンが、ガラス質Liイオン伝導性ガラスウェブから、ある大きさにカットされる。様々な実施形態において、ガラス質ウェブは十分に薄くて長く、断片化されることなく、巻かれることができるように曲げられるとき、堅固である。様々な実施形態において、ウェブは、保管、搬送、及び/又は、後段の電池構成要素及び電池セルのRR製造のために、糸巻きに巻かれて連続する供給ロール又はソースロールを生成する。(例えば、糸巻きに巻かれる)ロールウェブを指す場合、コイルという用語は、場合により、ロールという用語と交換できるように本明細書において用いられる。
【0129】
他の態様において、本開示は、電極サブアセンブリ及び電極アセンブリ(例えば、正及び負極アセンブリ)を含み、完全に封止された固体状態のLi金属電極アセンブリ、カプセル化された電極アセンブリ、及び拘束されていないバックプレーン構造を有する電極アセンブリを含み、本開示の固形電解質シートから構成される電池セル構成要素を提供する。
【0130】
また他の態様において、本開示は、ウェブ積層体を提供し、該ガラス質Liイオン伝導性ガラスウェブは、電極サブアセンブリウェブ及び電極アセンブリウェブを形成するための基板として機能する。
【0131】
他の態様において、本開示の固形電解質シート及び電池構成要素を含み、リチウムイオン電池、リチウム金属電池セル、ハイブリッドリチウム電池セル、固体状態のリチウム電池セル、及び共有液体電解質を有する電池を含み、本明細書に提供されているリチウム電池セルが存在する。
【0132】
図1A図1B図1C図1D、及び図2Aから図2Bを参照すると、上述及び以下の本明細書において説明されるように本開示の様々な実施形態に係る、Liイオン伝導性の薄い固形電解質の壁構造100及び200A~B(すなわち、固形電解質の壁構造)が図示されている。実際に、固形電解質の壁構造は、本明細書において称されるように、高伝導性Liイオンであり、10-5S/cm以上、好ましくは、10-4S/cm以上、より好ましくは、10-3S/cm以上の固有室温のLiイオン伝導率を有する連続する無機非晶質材料相から構成される、高密度のフリースタンディングで実質的に非晶質の無機層である。様々な実施形態において、壁構造は、長いシート又はリボン100の形をする(図1A図1Dを参照する)。しかしながら、他の実施形態において、図2A図2Bに示されているように、固形電解質層は、中空の角柱状のレセプタクルの形をする壁構造を生成するようアーティキュレート型である。
【0133】
注目すべきことに、非晶質材料相の連続する本質は、中断されないことであり、これによって、相互接続されたボイド状の経路(例えば、粒界又は粒子境界)を有さないバルクマイクロ構造を生じ、そうでなければ存在する場合、該層(すなわち、該壁)の厚みにわたってリチウム金属のデンドライトの簡易な貫通を許容し得る。好ましくは、壁構造は、それ自体がリチウム金属のデンドライトを実質的に通さないようする液状の表面を持ち、これによって、固形電解質セパレータにLiイオン伝導性構成要素として(又はセパレータ自体として)組み込まれたとき、完全に無機の壁構造は、信頼できる安全なリチウム金属二次電池の具現化を可能にする。
【0134】
図1A図1Dを参照すると、固形電解質の壁構造100は、対向する第1及び第2主要側(それぞれが101A及び101B)と、関連主要側面と、実質的に平行な長さ方向端部とを有し、長さ寸法(l)、幅寸法(w)、平均厚み寸法(t)、及び、(l/w)として画定される面積アスペクト比を有する、フリースタンディングで実質的に非晶質の無機Liイオン伝導性の固形電解質シート(例えば、長くて比較的に狭いリボン)である。固形電解質シート100は、高伝導性のLiイオンであり、その第1及び第2主要側面の間で測定されたように、少なくとも10-5S/cm、好ましくは少なくとも10-4S/cm、より好ましくは少なくとも10-3S/cmのLiイオン伝導率を有する。
【0135】
様々な実施形態において、シート100は、薄くて、その第1及び第2主要側の間で測定された状態の実質的に均一な厚みを有するものである。その薄さにより、約500μm以下の厚み、好ましくは、250μm以下の厚み、より好ましくは、100μm以下の厚み、さらにより好ましくは、50μm以下の厚みを意味する。様々な実施形態において、シートは、5≦t≦500μmの範囲において均一な厚みを有する。特定の実施形態において、5≦t<10μm、10≦t<30μm、30≦t<50μm、50≦t<100μm、100≦t<250μm、及び250≦t≦500μmの範囲において均一な厚みを有する。500μmより大きいより厚い固形電解質シートも、いくつかの応用のために考えられ、グリッド保管バックアップのための特定の有用性であり得て、可撓性又は高い電力密度(Wh/l)を必ずしも必要とする訳ではない。例えば、500μm<t≦2mmの範囲における均一な厚みを有する厚いシートは、この目的のために考えられる。好ましくは、固形電解質シートの特定の厚み及び厚みの均一性は、固体としてのその未使用状態において達成され、この得策により,コスト、スケーリング、及び面質の面においては恩恵が得られる。
【0136】
様々な実施形態において、シート100は、大きく、サイズ的に容易にスケーラブルである。様々な実施形態において、固形電解質シート100は、10cmより大きく、25cmより大きく、50cmより大きく、100cmより大きく、又は1000cmより大きい。様々な実施形態において、フリースタンディング固形電解質シート100は長く、実質的に平行な長さ方向端部を有し、長さ寸法が≧10cm、≧20cm、≧30cm、≧50cm、及び≧100cmである。様々な実施形態において、長いシートの幅寸法は、1から5cmの間であり(例えば、約1cm、約2cm、約3cm、約4cm、又は約5cm幅)、又は5から10cmの間(例えば、約5cm、又は約6cm、又は約7cm、又は約8cm、又は約9cm、又は約10cm幅)である。様々な実施形態、固形電解質シートは、均一な厚みの薄いリボンの形状をしており、例えば、10cm以上の長さ(l)と、1から10cmの間の幅(w)と、(l/w)≧5、(l/w)≧10、(l/w)≧20の面積アスペクト比とを有するリボンである。例えば、固形電解質シートは、5から20の範囲における面積アスペクト比を有し得る。シートは、電池セル又は構成要素内のセパレータなど、使用のために任意の適したサイズに細かくカットされてよい。
【0137】
シート100は、その第1及び第2主要側面の間で測定されたような低面積抵抗値(ASR)を有すべきである。本開示によると、面積抵抗値は、電池使用可能となるように十分に低く、該シート全体にわたって実質的に均一である。好ましくは、シートは、200Ω・cmより小さく、より好ましくは、100Ω・cmより小さく、さらにより好ましくは、50Ω・cmより小さく、またさらにより好ましくは、10Ω・cmより小さい面積抵抗値を有する。様々な局部点において測定される場合、ASRの変動は、好ましくは、平均値から20%未満で、より好ましくは、変動量が10%未満で、さらにより好ましくは、5%未満である。例えば、ASRが約100Ω・cmである場合、シートに沿う局部的位置での面積抵抗は、好ましくは、80から120Ω・cmの間であり、より好ましくは、90から110Ω・cmの間であり、またさらにより好ましくは、95から105Ω・cmの間である。そのような低いASRを達成するために、本開示の固形電解質シートは、少なくとも10-5S/cm、好ましくは、≧10-4S/cm、さらにより好ましくは、≧10-3S/cmの伝導率を有する高伝導性Liイオンである。
【0138】
特に図1B図1Cを参照すると、フリースタンディングで実質的に非晶質の無機固形電解質シート100は、可撓性を有し、好ましくは、保管及び/又は搬送のためにドラム又は糸巻き上で巻かれることができるよう曲げられるとき、十分に堅固であり、従って、ロールツーロール(RR)製造を含んだロール処理(すなわち、RRに適する)、又は電池セル内に巻くこと又は折り曲げることに適する。
【0139】
シート100の可撓性は、そのヤング率、厚み、及び面質に依存し、特に、その第1又は第2主要側面101A/101B上に存在し得る仮性の端部亀裂の数及びサイズに依存する。シート100の可撓性は、該シートが破裂することなく曲げられるようにさせられた場合に、その曲げ半径(r)により特徴付けられ得る。曲げ半径は、該シートが、よれ又は損傷若しくは破裂前に最大たわみに達する曲げ位置におけるアークの最小半径として画定される。様々な実施形態において、シート100は、十分に可撓性を有し、RR処理を可能にし、好ましくは、巻かれた又は折り曲げられた構造の電池セルにおけるセパレータとしてのその使用を許容する。例えば、シート100は、100cm以下、好ましく50cm以下、より好ましくは、10cm以下、さらにより好ましくは5cm以下、またさらにより好ましくは、2.5cm以下の曲げ半径を有する。又は、巻かれた/折り曲げられた電池セルにおけるその使用を可能にするために、シートは、2.5cm以下、好ましくは、1cm以下、より好ましくは、0.5cm以下、さらにより好ましくは、0.25cm以下、またさらにより好ましくは、0.1cm以下の曲げ半径を有する。
【0140】
キズ位置もまた、端部が一般により大きいキズを含むので、重要である。様々な実施形態において、固形電解質シートがカットされた場合、(例えば、火炎研磨による)端部仕上げが重要な場合がある。ロール製造又は電池セル巻きのための適した曲げ半径を達成するのに十分な可撓性を有するために、その端部キズが最小化に維持されることを保証するために固形電解質シートの扱いに留意しなければならない。許容可能な閾値端部キズサイズは、シートの厚み(t)、ヤング率(E)、破壊靱性(Klc)、及び所望の曲げ半径(r)に依存し、閾値クラックサイズについては、4r(Klc/(πE)から確定され得る。様々な実施形態において、シート100のヤング率(E)は、90GPa未満であり、10μmより大きい端部亀裂が回避されるはずである。好ましくは、固形電解質シート100は、10μmより大きいいかなる端部亀裂も有さず、好ましくは5μmより大きい、より好ましくは3μmより大きい、又は2μmより大きい端部亀裂を有さず、さらにより好ましくは、1μmより大きい端部亀裂を有さない。
【0141】
本開示によると、この固形電解質シートは、電池使用可能であり、様々な実施形態においては、巻かれた又は積み重ねられた構造で中程度から高容量(1Ah~100Ah)の電池を含む多様なリチウム電池セルにおける連続する固形電解質セパレータとしての使用に適する。
【0142】
様々な実施形態において、フリースタンディングのシート100は、電池使用可能なサイズ、形状、可撓性、及び厚みを有し、i)巻かれ、折り曲げられ、又は積み重ねられた構造、ii)正方形、円形、長方形、又は円筒状のフットプリント、iii)250mAh~500mAh、500mAh~1Ah、1Ah~5Ah、5Ah~10Ah、10Ah~20Ah、20Ah~50Ah、50Ah~100Ahの範囲における定格電池容量、及びiv)0.5mAh/cm~10mAh/cmの間の面積電極容量のうちの1つ又は複数により画定される電池セルにおける連続する固形電解質セパレータとして機能する。連続する固形電解質セパレータにより、シートは、それ自体(シート100)が配置される電池の正及び負電気活性層の間で連続セパレータを提供することを意味する。
【0143】
特定の実施形態において、シート100は、巻かれた又は折り曲げられた構造のリチウム電池セルにおける連続する固形電解質セパレータとして電池使用可能であり、これによって、固形電解質シート100は、実質的に平行な長さ方向端部を有し、通常、マンドレルに巻かれ、又は折り曲げられるのに十分な可撓性を有し、2.5cm以下、好ましくは1cm以下、より好ましくは0.25cm以下、またさらにより好ましくは、0.1cm以下の曲げ半径を有する。
【0144】
別の特定の実施形態において、固形電解質シート100は、250mAh~500mAhの範囲における定格容量と、0.5~5mAh/cmの間の面積電極容量とを有するリチウム電池セルにおける連続する固形電解質セパレータとして電池使用可能であり、これによって、シート100の連続面積は、25cm~1000cmの範囲にあり、より一般的には、約125cm~1000cm、又は約250cm~1000cmの範囲にある。例えば、シート100は、0.5cm~10cmの範囲(例えば、約1cm~5cm)の幅と、20cm~100cmの範囲(例えば、約50cm~100cm)の長さとを有する。
【0145】
別の特定の実施形態において、連続する固形電解質シート100は、500mAh~1Ahの範囲の定格容量と、1~5mAh/cmの間の面積電極容量とを有するリチウム電池セルにおける連続するセパレータ層として電池使用可能であり、これによって、シート100の連続面積が100cm~1000cmの範囲にある。例えば、シート100は、1cm~10cmの範囲(例えば、約2cm~5cm)の幅と、50cm~500cmの範囲の長さとを有する。
【0146】
また別の特定の実施形態において、シート100は、1Ah~5Ahの範囲の定格容量と、1~5mAh/cmの間の面積電極容量とを有するリチウム電池セルにおける連続するセパレータ層として電池使用可能であり、これによって、シート100の連続面積は、200cm~5000cmの範囲にある。例えば、シート100は、1cm~10cmの範囲(例えば、約5cm~10cm)の幅と、100cm~1000cmの範囲の長さとを有する。
【0147】
さらにまた別の特定の実施形態において、シート100は、5Ah~10Ahの範囲の定格容量と、1~5mAh/cmの間の面積電極容量とを有するリチウム電池セルにおける連続するセパレータ層として電池使用可能であり、これによって、シート100の連続面積は、1000cm~10000cmの範囲にある。例えば、シート100は、5cm~10cmの範囲の幅と、100cm~2000cmの範囲の長さとを有する。
【0148】
様々な実施形態において、シート100は、約0.5cmから10cmの範囲の幅を有し、かつ、様々な特定の実施形態に対して上記に規定されたような定格電池容量(Ah)と面積電極容量(mAh/cm)とを有する電池を含み、画定された長方形のフットプリントのリチウム電池セルにおける連続する固形電解質セパレータとしての使用に電池使用可能なものである。例えば、シート100は、≧10cm、≧20cm、≧30cm、≧50cmの長さ寸法を有し、いくつかの実施形態において、≧100cmの長さ寸法を有する。例えば、幅寸法が約1cmから5cmの間にあって、長さ寸法が10cmから50cmの間にあり(例えば、その幅が約5cmで、その長さが約20cm~50cm)、又は幅寸法が5cmから10cmであり、長さ寸法が50cmから100cmである。
【0149】
前述の電池使用可能な特徴(例えば、長さ、面積、アスペクト比、均一な厚み、及び可撓性)は、ガラス質硫化物系固形電解質ガラスシートに対してささいなものではなく、そのようなシートは、急速ツインローラ焼き入れ、機械的に粉砕された又は粉状にされたガラス粉末、及び、寸法的又は幾何学的形状許容値を事実上に有さない一般に不規則な形状をし、従って、電池使用可能には不適当なサイズ、形状、及び厚みのガラス片である、かさばって溶融され/焼き入れたブロブにより製造されるLiイオン伝導性硫化物ガラスフレークのそれとまったく対照的に保持されるべきである。対比的に、本開示の薄いガラス質固形電解質シートは、製造可能に再生可能でスケーラブルであり、かつ、電池使用可能なサイズ、形状、及び均一な厚みを有する。
【0150】
続けて図1A図1Dを参照すると、固形電解質シート100は、フリースタンディングであり、支持材料層、などの支持構造として機能する外部基板又は構造により囲まれておらず、又は支持されておらず、高密度又は多孔質である。従って、フリースタンディングの固形電解質シート100は、自己支持型層であり、支持電極構造(例えば、正極層)を有さないだけではなく、多孔質又は高密度のキャリア又はリリース層などの不活性支持材料層も有さない。従って、様々な実施形態において、このフリースタンディングの硫化物系固形電解質シートは基板レスであり、このことにより、シート100の本体内に内部基板(すなわち、内部支持構造)が存在しないこと、並びに、主要側面101A又は101Bをカバーする外部基板が存在しないことを含むことを意味する。さらに、固形電解質シート100は、完全に無機であり、従って、いかなる有機高分子バインダ材又は同様のものを含有しない。
【0151】
様々な実施形態において、固形電解質シート100は、マザーシートの上質の中央部分からある大きさにカットされたものである。例えば、図1E図1Fを参照すると、例えば、溶融延伸又はプリフォームドローにより製造されたガラス質Liイオン伝導性硫黄含有ガラスのマザーシートが図示されている。マザーシート100Mは、上質の中央部分105、及び、レーザ切断により除去されるより比較的低質の縁部107を有するように特徴付けられ得る。最高品質を保証するために、上質の中央領域105xの周辺部分は一般に、長さ方向切断手順中に除去される。
【0152】
好ましくは、上質の中央部分105は、マザーシートのフットプリント/エリアの少なくとも20%(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%)を占める。好ましくは、マザーシートは、均一な厚み及び/又は滑らかな表面を有する固形電解質シートを生成するための端部除去が最小程度又は不要となるように必要とする十分な品質を有する。
【0153】
好ましくは、マザーシート100Mの上質の中央部分は、後固化研磨段階を実行する必要性を回避するために十分な面質を有する。例えば、様々な実施形態において、マザーシート100Mの上質の中央部分の対向する主要面は、1.0μmより小さい平均表面粗度Rを有し、好ましくは、R<0.5μm、より好ましくは、R<0.2μm、さらにより好ましくは、R<0.1μm、またさらにより好ましくは、R≦0.05μm、又は、R≦0.05μm、若しくはR≦0.01μmである。高面質に加えて、上質の中央部分は、好ましくは、その表面を研削する必要性を回避するべく、厚み及び厚みの均一性を有し、又はより一般に、所望の厚み及び/又は厚みの均一性を達成するために表面から材料を除去する。様々な実施形態において、マザーシート109の上質の中央部分の表面は、それらの未使用状態において化学的にかつ物理的に初期状態であり、これによって、固化に際して異質の固形表面により接触されない。
【0154】
前述によると、様々な実施形態において、ある大きさにカットされた未使用固形電解質シート、又は固化されたマザーシートの上質の中央部分、若しくは、マザーシート自体の全体が、i)≦500μmの薄い均一な厚み(例えば、≦100μm)、ii)初期状態の液状の第1及び第2主要側面、iii)実質的な平坦度、iv)<1μmの平均表面粗度R、及びv)固形電解質シートを断片化することなく、≦10cmの曲率半径まで巻くことに相応する可撓性を可能にする十分な面質及び薄さといった特徴のうちの1つ又は複数を有し、初期状態の第1及び第2の主要側面は、光学的品質を有する。
【0155】
図1Gを参照すると、電気的に絶縁するエッジプロテクタ素子105に嵌合されたシート100から構成され、端部が保護されている電解質シート101Gが図示され、これは、端部への物理的ダメージから守ることに加えて、それ自体(該シート)が固形電解質シートの連続ロールとして(例えば、供給又はソースロールとして)巻かれる場合に隣接面間の接触を防ぐべく、エッジプロテクタ素子がスペーサとして設計される実施形態を含み、機械的強度及び巻く能力に関連するので、補助的利益を提供する。様々な実施形態において、エッジプロテクタ素子は、端部に接着される又は端部をカバーするテープ、又は、端部に滑り嵌める剛性の正方形のような高分子ブラケットなどのポリマー膜であってよく、該エッジプロテクタ素子は、リムーバブル又は永久的であってよい。
【0156】
固形電解質シート100のフリースタンディングの本質にもかかわらず、本開示では、フリースタンディングで基板レスのシート100は、その主要側面の一方又は両方の上に、部分的に又は全体に主要面の一方又は両方を守るよう機能するコーティング又は薄膜などの材料層を有し得ることが考えられる。しかし、それ自体(該保護材であるコーティング/膜)は、シートを支持するために使用されない。実際、まったく正反対に、そのような例のシートは一般に、表面保護材料層の基板支持として機能するように使用される。例えば、図1Hに図示されて本明細書において以下にてより詳細に説明されるように、様々な実施形態において、フリースタンディングの固形電解質シート100は、コーティング処理を受けてよく、それによって、第1及び/又は第2材料側面101A及び/又は101Bは、1つ又は複数の薄い材料層110でコーティングされ、本明細書において電極サブアセンブリ101Hと称され、実際に材料層110によりコーティングされるシート100となるものを形成する。様々な実施形態において、層110は、接触のLi金属との密接な接触を与える反応性/結合層も提供しつつ、表面101Aを守るタイレイヤであり、又は層110は、集電体コーティングであってよく、若しくは、層110は、多重層のタイレイヤ及び集電層であってよい。概して、電極サブアセンブリ101Hの材料層110は、Liイオン伝導性層ではない(すなわち、σLi<10-9S/cm)。しかしながら、本開示は、その他の点で、そのような例において、Liイオン伝導性層は、第1及び/又は第2主要側面(101A及び/又は101B)上に直接コーティングされ、任意選択的にタイレイヤ及び/又は集電体コーティングが続くことは、考慮していない。従って、様々な実施形態において、このフリースタンディングの固形電解質シートは、電池セル又は電極アセンブリを製造するための基板として機能し、それにより、そのように用いられる場合、シート100は、場合により、本明細書において基板シートと称される。例えば、第1又は第2主要側面は、改善された、Li金属又は電池セル構成要素(例えば、異なる組成の硫化物ガラス、又は非常に薄いリチウム酸化物、リチウムリン酸塩又はリチウム酸窒化物のガラス膜)との接触の化学的適合性のために薄いLiイオン伝導性ガラス膜でコーティングされ得る。実際、該ガラス質固形電解質シートの、その滑らかな液状表面と組み合わされたフリースタンディングの本質は、高密度で並外れて薄い表面膜(例えば、<1μm厚、又は<0.5μm厚、又は<0.1μm厚)を生成し、使用するために重要な利点を提供するので、10-6S/cm未満の固有Liイオン伝導率を有するガラス状の無機材料を可能にする。
【0157】
続けて図1A図1Dを参照すると、スタンドアローンの固形電解質シート100は、その主要側面が隣接する周囲気体環境に直接露出され又は直接露出可能なので、明らかに外部基板を有さない。例えば、様々な実施形態において基板レスのシート100(可撓性その他)は、手袋装着又は装置により扱えてよく、吊るした状態に配置された場合(例えば、端部に沿ってシートを保持することによってぶら下がっている場合)、無キズのままであり得る。スタンドアローンでフリースタンディングのシート100は、その形成及び存在のために基板を必要とするPVD又はCVD層ではない。事実上、様々な実施形態において、基板レスのシート100は、基板なしで、又は、(金型表面などの)接触表面なしでも製造され得る。そのような実施形態において、固形電解質シート100は、第1及び第2主要側面の両方が完全に周囲気体環境(不活性)に露出される状態で形成される。この得策により、そのように形成された該シートには、そうでなければシートが異質の固体表面と直接接触して固化された場合に、その表面上又は近傍に現れ得る欠陥、痕跡、化学的反応生成物、及び汚染物質が存在しない。
【0158】
様々な実施形態において、シート100は、組み込まれる装置の動作中にシート自体が接触し得る、この開示の電池セルにおける液体電解質などの液体を実質的に通さないことを保証するよう製造される。そのような実施形態において、シート100は、そうでなければ、液体電解質がシートを通って、第1主要側から第2主要側へ、又はその逆で、浸み出すことを許容し得るピンホール又は欠陥を含む通り抜ける多孔性がない(すなわち、有さない)はずである。他の実施形態において、液体不透過性は、固形電解質シートの必要な特性ではないが、そうではあるものの、おそらく望ましい特性であり、例えば、シート100は、固形電解質セパレータとして完全に固体状態の電池セルに組み込まれる。
【0159】
図1A図1Dを参照すると、様々な実施形態において、少なくとも第1主要側面101Aは、リチウム金属との直接接触に化学的に適合し、いくつかの実施形態において、第1及び第2主要側面101A/101Bの両方は、リチウム金属との直接接触に化学的に適合する。しかしながら、本開示は、そのように限定されず、いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2主要側面は、リチウム金属との直接接触に化学的に適合しない。例えば、固形電解質シート100は、液体電解質に含浸される多孔質セパレータ層又はゲル層のペアの間に配置される固形電解質セパレータとして使用されてよく、又は、固形電解質シート100は、本明細書において以下にてより詳細に説明されるように、固体状態の保護膜構造を形成するべく、(一方又は両方の主要側面上に)ガラス状Liイオン伝導性膜でコーティングされてよい。
【0160】
代替的実施形態において、図2A図2Bに図示されているように、フリースタンディングで実質的に非晶質の無機Liイオン伝導性の固形電解質層は、上述のように、内部及び外部表面201A及び201Bと、長さ寸法(l)と、幅寸法(w)と、層/壁の厚み寸法(t)とを有する中空の角柱レセプタクル200A~Bの形をする壁構造を提供する。角柱レセプタクルである場合、その2つの平行な端部(203A/203B)は通常、(示されているように)開口されるが、本開示はそのように限定されず、該壁構造は、レセプタクルな部分と近接する固形電解質層により画定された閉塞された端部を有し得ることは考えられる。さらに、中空の角柱200A~Bは、主要な及び少数の対向する横壁部を有するようにさらに特徴付けられてよく、具体的には、主要な対向する壁部205a及び205bと、少数の対向する壁部207a及び207bである。特定の実施形態において、壁構造200Aは、開口端部の楕円形シリンダの形をする中空の角柱である。別の実施形態において、壁構造は、中空の長方形角柱200Bであり、任意選択的に、図2Bに示されているように実質的に丸みのある外部及び/又は内部角を有する。さらに、内部体積(V)は、内部隙間(g)、幅寸法(w)、及び長さ寸法(l)により画定され、楕円形である場合、該内部隙間は、楕円形状の端部の短半径ににわたる距離として画定される。
【0161】
図3Aを参照すると、様々な実施形態において、固形電解質シートは、通常50cmより長く、好ましくは100cmより長く、さらにより好ましくは1000cm長より長い長さを有する、ガラス質無機Liイオン伝導性硫化物ガラスの連続ウェブ100Wとして製造されるべく、十分な可撓性、長さ、及び製造可能性を有し得る。様々な実施形態において、ガラスウェブ100Wは、本開示の電極サブアセンブリ、電極アセンブリ、及び電池セルを含み、後段の電池セル構成要素を形成するための固形電解質基板シートとして機能する。
【0162】
図3Aに図示されているように、様々な実施形態において、ウェブ100Wは、十分に可撓性を有し、断片化されることなく、一般的に、保管及び/又は搬送用に支持糸巻き301上に巻かれる連続ロール100Rに形成され得る。好ましくは、連続ウェブ100Wは、≦100cmの曲げ半径を有し、好ましくは、≦50cmであり、より好ましくは、≦10cm、さらにより好ましくは、≦5cmであり、またさらにより好ましくは、≦2.5cmであり、これによって、断片化されることなく、そのように巻かれることが可能である。様々な実施形態において、糸巻き又はドラムは、100cm~200cm、又は50cmから100cm、若しくは20から50cm、あるいは10cmから20cm、又は5cmから10cm、若しくは2.5cmから5cmの範囲の直径を有する。様々な実施形態において、連続ロール100Rは、RR製造又は後段の電池セル構成要素及び電池セルのロールツーシート工程のための供給ロール又はソースロールとして機能する。
【0163】
図3Bに図示されているように、様々な実施形態において、複数の個別の固形電解質シート100Z(例えば、固形電解質シートのスタック)が、Liイオン伝導性ガラスウェブ100Wから切除(すなわち、ある大きさにカット)され得る。シートは、電池セル又は構成要素内のセパレータなど、使用のために任意の適したサイズに細かくカットされてよい。様々な実施形態において、ウェブ100Wは、少なくとも10cmの長さを有する、少なくとも5の個別の固形電解質シートを生成し、好ましくは、少なくとも10のそのようなシート、より好ましくは、少なくとも50のそのようなシート、さらにより好ましくは、少なくとも100のそのようなシートを生成する。
【0164】
様々な実施形態において、巻き、保管、及び/又は支持糸巻きの使用を容易にするために、保護材インターリーフ(不図示)が、対向するウェブ表面が互いに接触することを防ぐためにソースロールの隣接層の間に配置されてよい。概して、該保護性インターリーフはリチウムイオン伝導体ではない。様々な実施形態において、該インターリーフは、多孔質のポリマー層(例えば、ミクロ多孔質)又は乾燥した膨潤性ポリマー層(すなわち、乾燥したゲル化可能ポリマー層)であってよく、ソースロールにおけるインターリーフとしても、電池セルにおける多孔質又はゲルセパレータ構成要素としても両方機能するのに適する。
【0165】
本開示によると、連続するLiイオン伝導性非晶質材料相は、10-5S/cm以上、好ましくは、10-4S/cm以上、より好ましくは、10-3S/cm以上の室温固有Liイオン伝導率を有する。無機非晶質材料相においてこのレベルの伝導率を達成するために、硫化物系Liイオン伝導性ガラスが特に適する(すなわち、含硫黄ガラス)。理論により限定されることを意図することなく、酸素と比較して、硫黄は、該材料相の極めて望ましい元素であることが分かる。硫黄は概して、酸素より分極性を有し、このことは、ガラスを形成する骨格イオンと可動リチウムイオンとの間の相互作用を弱める傾向を有し、次にリチウムイオンの移動度を高め、関連イオン伝導率を増大する。従って、様々な実施形態において、材料相は、部分的に硫黄から構成され、Liイオンが通り抜けて移動するガラス骨格を有する。理論により限定されることを意図することなく、硫黄は、ガラス構造を形成する硫黄をクロスリンクすることと、可動Liイオンと最終的に結合する硫黄を非クロスリングすることとを含み、いくつかの役割を果たし得る。
【0166】
従って、様々な実施形態において、連続する非晶質材料相の固形電解質シート100は、構成元素としてのS(硫黄)及び構成元素としてのLi(リチウム)を有し、P(リン)、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Se(セレン)、As(ヒ素)、O(酸素)、及びSi(ケイ素)からなる群から選択される1つ又は複数の構成元素をさらに有する無機硫化物系ガラスである。
【0167】
複数の実施形態において、硫化物系固形電解質ガラスは、構成元素として(例えば、通常、二次成分元素として)O(酸素)を含む。他の実施形態において、非晶質硫化物ガラスは、非酸化物であり、これによって、構成元素としての酸素を実質的に有さない。一般的には、ガラスにおけるLiのモル%は著しく、特定の実施形態において、ガラスにおけるLiのモルパーセントは、少なくとも10モル%であり、より一般的には、少なくとも20モル%又は少なくとも30モル%であり、いくつかの実施形態において、ガラスにおけるLiのモルパーセントは、40モル%より大きく、又は50モル%より大きく、若しくはさらに60モル%より大きいことが考えられる。様々な実施形態において、ガラスは、Liの他にアルカリ金属イオンを実質的に有さない。
【0168】
様々な実施形態において、少なくとも10モル%の硫黄(S)がガラスに存在し、通常、著しくより高く、例えば、20モル%以上のS、又は30モル%以上のS、または40モル%以上のSが、ガラスに存在する。様々な実施形態において、ガラスにおいて構成元素として硫黄の濃度は、20~60モル%の間、又は30モル%~50モル%の間(例えば、約25モル%、約30モル%、約35モル%、約40モル%、約45モル%、又は約50モル%)である。様々な実施形態において、硫黄は、該ガラスの主要構成元素であり、硫黄のモル%が任意の他の構成元素より大きいことを意味する。
【0169】
様々なLiイオン伝導性硫黄系ガラス系(すなわち、含硫黄ガラス)が本明細書において用いられることは考えられる。これらは、硫化リンリチウム(lithium phosphorous sulfide)、酸硫化リンリチウム(lithium phosphorous oxysulfide)、硫化ホウ素リチウム(lithium boron sulfide)、酸硫化ホウ素リチウム(lithium boron oxysulfide)、酸硫化リンホウ素リチウム(lithium boron phosphorous oxysulfide)、硫化ケイ素リチウム(lithium silicon sulfide)、酸硫化ケイ素リチウム(lithium silicon oxysulfide)、硫化ゲルマニウムリチウム(lithium germanium sulfide)、酸硫化ゲルマニウムリチウム(lithium germanium oxysulfide)、硫化ヒ素リチウム(lithium arsenic sulfide)、酸硫化ヒ素リチウム(lithium arsenic oxysulfide)、硫化セレンリチウム(lithium selenium sulfide)、酸硫化セレンリチウム(lithium selenium oxysulfide)、硫化アルミニウムリチウム(lithium aluminum sulfide)、酸硫化アルミニウムリチウム(lithium aluminum oxysulfide)、及びそれらの組み合わせを含む。
【0170】
様々な実施形態において、硫黄系ガラスは概して、伝導率又は特性を高めるべく、ハロゲン塩(例えば、LiCl、LiBr、LiI)、Ga、Al、窒素(例えば、チオ窒化物)、並びにリン酸塩(例えば、リン酸リチウム(例えば、LiPO、LiPO))、硫酸塩(例えば、LiSO)、ケイ酸塩(例えば、LiSiO)、及びホウ酸塩(例えば、LiBO)など、特定の添加剤及び化合物を含有し得る。複数の実施形態において、構成元素Al、Sn、F、及び/又はClは、ガラスに組み込まれてよい。複数の実施形態において、様々な失透剤が、結晶化に対してその安定性を高めるために、硫化物ガラスに添加されてよい。様々な実施形態において、硫黄系ガラスは、Ga又はAlが存在せずに製造され、例えば、構成元素としてAl又はGaを有さない硫黄系ガラスである。
【0171】
様々な実施形態において、硫黄系ガラスは、LiS-YSといった種類であり、ここで、Yはガラス形成剤構成元素であり、Ge、Si、As、B、又はPであってよく、ここで、n=2、3/2、又は5/2である。例えば、様々な実施形態において、ガラス系は、LiS-PS5/2、又はLiS-BS3/2、又はLiS-SiSである。
【0172】
様々な実施形態において、硫黄系ガラスは、LiS-YS-YOといった種類であり、ここで、Yは、ガラス形成剤構成元素であり、Ge、Si、As、B、又はPであってよく、ここで、n=2、3/2、又は5/2である。例えば、様々な実施形態において、ガラス系は、LiS-PS5/2-PO5/2、又はLiS-BS3/2-BO3/2、又はLiS-SiS-SiOであり得る。
【0173】
様々な実施形態において、硫黄系ガラスは、LiS-YS、LiS-YS-YO、及びそれらの組み合わせといった種類であり、それらについて、Y=Ge、Si、As、B、及びPであり、n=2、3/2、又は5/2である。
【0174】
様々な実施形態において、硫黄系ガラスは、LiS-Y-Yといった種類であり、ここで、Y及びYは、異なるガラス形成剤構成元素であり、Ge、Si、As、B、又はPであってよく、ここで、該構成元素の一般的標準原子価に適切に基づくように、n=2、3/2、又は5/2であり、m=2、3/2、又は5/2である。例えば、様々な実施形態において、ガラス系は、LiS-PS5/2-BO3/2、又はLiS-BS3/2-PO5/2、又はLiS-PS5/2-SiOであってよい。
【0175】
様々な実施形態において、LiSは、完全に、又は部分的に、LiOと置換されてよい。
【0176】
様々な実施形態において、該ガラスは、例えば、LiS-PS5/2-BS3/2、又はLiS-PS5/2-SiS、又は、LiS-PS5/2-BS3/2-SiSといった2つ以上のそのような種類の組み合わせであってよい。具体例は、LiS-PS5/2-PO5/2、LiS-BS3/2-BO3/2、LiS-SiS-SiO、LiS-P、LiS-B、LiS-SiS、LiS-P-P、LiS-P-P、LiS-B-B、LiS-P-B、LiS-P-B-B、LiS-B-P、LiS-B-P、LiS-SiS-P、LiS-P-SiO、LiS-P-P-B-Bを含む。
【0177】
連続するLiイオン伝導性無機ガラスは、骨格格子をもたらすガラス網目形成体と、リチウム化合物など、イオン結合を導入し、それにより、格子のディスラプタとして機能して伝導性のための可動リチウムイオンを提供するガラス網目修飾体とを有するものとして説明されてよい。様々な実施形態において、さらなる網目形成体がガラスに組み込まれ得る。例えば、様々な実施形態において、ガラス系は、xNET(主要形成体):yNET(少数形成体):zNET(修飾体)といった一般式を有してよく、ここでz=1-(x+y)である。
【0178】
NET(主要形成体)は、主要なガラス網目形成体であり、そのモル比率xは、ガラスを製造するために用いられる全ての網目形成体のうち最も大きいものである。Net(少数形成体)は、モル比率yを有してガラスに存在する1つ又は複数の少数ガラス網目形成体を示す。全ての例において、主要ガラス形成剤のモル比率は、任意の少数ガラス形成剤のモル比率より大きい。しかしながら、少数ガラス形成剤の組み合わされたモル比率は、主要ガラス形成剤のモル比率より大きい場合がある。NET(修飾体)は概して、LiS、又はLiO、若しくはそれらのある組み合わせである。
【0179】
網目形成体(主要又は少数)は、Aといった種類の化合物であってよく、又は、この種類の2つ以上の異なる化合物の組み合わせであってよい。例えば、Aは、ケイ素、ゲルマニウム、リン、ヒ素、ホウ素、硫黄であってよく、Rは、酸素、硫黄、又はセレンであってよく、網目修飾体は、Nといった種類であってよく、ここで、Nは、リチウムでRは酸素、硫黄、又はセレンであり、a、b、m、及びcは、成分の化学量論に対応する指標を示す。
【0180】
様々な実施形態において、主要網目形成体は、B、P、又はSiSであり、少数網目形成体は、B、P、P、SiO、B、P、SiS、Al、LiPO、LiPO、LiSO、LiBOのうちの1つ又は複数である。具体例は、i)網目修飾体としてLiS、主要形成体としてB、及び、B、P、P、SiO、P、SiS、Al、LiPO、LiPO、LiSO、LiBOからなる群から選択される1つ又は複数の少数形成体、ii)網目修飾体としてLiS、主要形成体としてP、及び、B、P、P、SiO、B、SiS、Al、LiPO、LiPO、LiSO、LiBOからなる群から選択される少数形成体、iii)網目修飾体としてLiS、主要形成体としてSiS、及び、B、P、P、SiO、P、B、Al、LiPO、LiPO、LiSO、LiBOからなる群から選択される1つ又は複数の少数形成体を含む。様々な実施形態において、網目修飾体は、LiS又はLiO、若しくはそれらのある組み合わせである。
【0181】
適切な硫化物ガラス組成物の選択は、固形電解質シートの使用の末に依存し、最終的には、作業すると意図される電池セルの種類及び応用に依存する。多くのもののうち、潜在的な考慮が形状因子、セル構造、コスト、電力要件、及び寿命である。従って、ガラス組成物は、i)リチウム金属及び/又は液体電解質との直接接触へのガラスの化学的及び電気化学的適合性、ii)可撓性、形状及び大きさ、iii)ガラス成形性(特に熱的性質に関するように)、及びiv)Liイオン伝導率のうちの1つ又は複数を高めるために調整され得る。これらのパラメータの1つ又は複数を最適化することは概して、トレードオフを必要とする。
【0182】
様々な実施形態において、硫化物ガラス系は、リチウム金属との直接接触へのその化学的及び電気化学的適合性に対して選択される。
【0183】
リチウム金属に対する化学的適合性は、ガラスシート100とリチウム金属層との間のインターフェイスの運動安定性に関する属性であり、電気化学的適合性は概して、電池セルにおいて機能するそのインターフェイスの能力を決める。両特性はともに、いったん形成されたガラス表面との反応を停止させ(すなわち、化学的適合性)、十分に高密度で、その界面抵抗が電池セルにおいてそれ自体の使用に関して許容できる伝導性の固形電解質界面(SEI)の形成を必要とする。
【0184】
化学的及び電気化学的適合性の両方に相応するSEIを生成するために、特定の構成元素をガラスシート100に組み込むことが望ましい。様々な実施形態において、リチウム金属と直接接触するリンが、高伝導性Liイオンで完全に低減された化合物であるリン化リチウム(例えば、LiP)を形成するように反応するので、リンは、有効なSEIを生成するために主な構成元素として組み込まれる。許容可能なSEIを形成するために、リンは、(例えば、ガラスの二次成分として)少量に存在し得る。二次成分元素としてリンを追加することは、インターフェイスでの抵抗を低減するための有効な方法を提供し、ガラス系に適合性をもたらすために用いられてよく、本明細書において考えられているように、排他的な網目形成体としてSiSを用いて、硫化ケイ素ガラスなど、安定なSEIを形成しない場合がある。従って、いくつかの実施形態において、Siは、硫化物ガラスシート100の構成元素として、意図的に排除されてよい。
【0185】
注目すべきことに、硫化リンガラス系は、リチウム金属との直接接触への化学的にかつ電気化学的に適合性を有する唯一のガラスではないことが分かっている。驚くべきことに、硫化ホウ素ガラスは、リンが存在しない場合であっても、金属リチウム(Li金属)に対する顕著な化学的かつ電気化学的適合性を示している。従って、様々な実施形態において、高蒸気圧力及び化学的反応性に関連する潜在的な課題を緩和するために、リンは、ガラスから構成元素として排除されてよく、例えば、ガラスは実質的に、リンを有さない。しかしながら、二次成分元素として、少量のリンを硫化ホウ素ガラスに追加することは、処理の課題を与えない場合があり、以下にて説明されるように、Li金属との直接接触における界面抵抗を低減するための方法として追加されてよい。
【0186】
様々な実施形態において、酸素及び/又はケイ素の追加は、熱的性質を改善するため、特に、ガラス安定性(例えば、ガラス安定性因子及び/又はHrubyパラメータの増大)、及び/又は、液相線温度(Tliq)での粘度を含み、ガラス成形性を高めるための方法を提供する。例えば、J二次成分としてケイ素を硫化リン又は硫化ホウ素ガラスに追加することは、Li金属に対する適合性を維持しつつ、ガラス安定性及び/又はTliq(すなわち、液相線粘度)での粘度を増大するための方法を提供する。構成元素として酸素の追加はまた、これらの考慮に利益をもたらし得る。様々な実施形態において、ガラス安定性因子及び/又はHrubyパラメータを増大する方法として、酸素は、主要又は二次成分元素として、硫化リンリチウム及び硫化ホウ素リチウムガラス系に組み込まれてよい。例えば、xLiS-yP-zSiS、xLiS-yB-zSiS、xLiS-yP-zSiO、xLiS-yB- zSiO、xLiS-yB-zB、xLiS-yP-zPであり、ここで、x+y+z=1であり、x=0.4-0.8、y=0.2-0.6、かつ、zは0から0.2までの範囲にある(例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2)。
【0187】
硫化ケイ素系ガラスの固形電解質シートは、共有液体電解質を利用する電池セルにおけるセパレータシートとしての使用に特に有利であり、以下の本明細書においてより詳細に説明されるように、セパレータシートは、電気活性材料と接触しない。例えば、xLiS-ySiS、xLiS-ySiS-zSiO、xLiS-ySiS-yB、xLiS-ySiS-yB、xLiS-yB-zSiOであり、ここで、x+y+z=1であり、かつ、x=0.4~0.8、y=0.2~0.6、zは0から0.2までの範囲にある(例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2)。
【0188】
以上の議論を検討すると、限定した量において、特定の元素は、シート100の性能を高め、及び/又は、処理のためのガラス安定性を改善するために有益な役割を有し得ることが明白である。リンの追加は、Li金属との界面抵抗を低減することができ、酸素の追加は、ガラス安定性を改善することができる。硫化ホウ素ガラスにおいて、二次成分元素としてのリンの追加は、Pの組み込みを介して行われることができ、酸素の追加は、Bを介して行われることができ、LiS-B-P-Bのガラス系をもたらし、ここで、Bは、主要網目形成体であり、P及びBは、二次網目形成体であり、LiSは、網目修飾体である。そのように、酸素対リンのモル比が、異なり得る。別の実施形態において、リンと酸素とのモル比が、単一成分としてPを組み込むことにより、拘束され得て、LiS-B-Pのガラス系を生じる。ここで、Bは、主要網目形成体であり、Pは、二次形成体であり、LiSは、網目修飾体である。
【0189】
様々な実施形態において、硫黄系ガラスは、ガラス修飾体としてLiS及び/又はLiOと、P、P、SiS、SiO、B、及びBからなる群から選択されるガラス形成剤のうちの1つ又は複数とを含む。具体例は、0.7LiS-0.29P-0.01P、0.7LiS-0.28P-0.02P、0.7LiS-0.27P-0.03P、0.7LiS-0.26P-0.04P、0.7LiS-0.25P-0.05P、0.7LiS-0.24P-0.06P、0.7LiS-0.23P-0.07P、0.7LiS-0.22P-0.08P、0.7LiS-0.21P-0.09P、0.7LiS-0.2P-0.1P、0.7LiS-0.29B-0.01B、0.7LiS-0.28B-0.02B、0.7LiS-0.27B-0.03B、0.7LiS-0.26B-0.04B、0.7LiS-0.25B-0.05B、0.7LiS-0.24B-0.06B、0.7LiS-0.23B-0.07B、0.7LiS-0.22B-0.08B、0.7LiS-0.21B-0.09B、0.7LiS-0.20B-0.1B、0.7LiS-0.29B-0.01P、0.7LiS-0.28B-0.02P、0.7LiS-0.27B-0.03P、0.7LiS-0.26B-0.04P、0.7LiS-0.25B-0.05P、0.7LiS-0.24B-0.06P、0.7LiS-0.23B-0.07P、0.7LiS-0.22B-0.08P、0.7LiS-0.21B-0.09P、0.7LiS-0.20B-0.1P、0.7LiS-0.29B-0.01SiS、0.7LiS-0.28B-0.02SiS、0.7LiS-0.27B-0.03SiS、0.7LiS-0.26B-0.04SiS、0.7LiS-0.25B-0.05SiS、0.7LiS-0.24B-0.06SiS、0.7LiS-0.23B-0.07SiS、0.7LiS-0.22B-0.08SiS、0.7LiS-0.21B-0.09SiS、0.7LiS-0.20B-0.1SiSを含む。
【0190】
特定の実施形態において、硫黄系ガラスは、ガラス修飾体としてLiS及び/又はLiOと、主要ガラス形成剤としてBと、少数ガラス形成剤としてSiSとを含み、ここで、SiSの量は、Liイオン伝導率を10-5S/cmより低く低減することなく、より好ましくは、10-4S/cmより低く低減することなく、さらに好ましくは、10-3S/cmより低く低減することなく、50℃より高いガラス安定性因子を生成するのに十分である。好ましくは、ガラス安定性因子は、60℃より高く、より好ましくは、60℃より高く、さらにより好ましくは、100℃より高い。
【0191】
別の特定の実施形態において、硫黄系ガラスは、ガラス修飾体としてLiS及び/又はLiOと、主要ガラス形成剤としてBと、少数ガラス形成剤としてPとを含み、ここで、ガラスにおけるPの量は、Liイオン伝導率を10-5S/cmより低く低減することなく、より好ましくは、10-4S/cmより低く低減することなく、さらに好ましくは、10-3S/cmより低く低減することなく、200Ω・cm未満のLi金属に対して測定されるようなASRを生成するのに十分である。好ましくは、ASRは、100Ω・cm未満で、より好ましくは、50Ω・cm未満である。
【0192】
また別の特定の実施形態において、硫黄系ガラスは、ガラス修飾体としてLiS及び/又はLiOと、主要ガラス形成剤としてBと、少数ガラス形成剤としてP及びSiSとを含み、ここで、SiS及びPの量は、Liイオン伝導率を10-5S/cmより低く低減することなく、より好ましくは、10-4S/cmより低く低減することなく、さらに好ましくは、10-3S/cmより低く低減することなく、50℃以上のガラス安定性因子と、200Ω・cm未満のLi金属に対して測定されるようなASRとを生成するのに十分である。好ましくは、ASRは、100Ω・cm未満であり、より好ましくは、50Ω・cm未満である。
【0193】
特定の実施形態において、ガラス質シートは、第1構成元素として20モル%より多いSと、第2構成元素として20モル%より多いLiと、B又はPからなる群から選択される、20モル%より多い第3構成元素と、第4構成元素としてO、Si、及びOとSiとの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1モル%であるが20モル%以下の第4構成元素とを有する硫黄系ガラスから構成され、ここで、第4構成元素のモル%は、伝導率を10-5S/cmより低く低減することなく、好ましくは、伝導率を10-4S/cmより低く低減することなく、より好ましくは、伝導率を10-3S/cmより低く低減することなく、50℃より高い、好ましくは60℃より高い、より好ましくは、80℃より高い、さらにより好ましくは、100℃より高いガラス安定性因子を生成するのに十分である。
【0194】
別の特定の実施形態において、ガラス質シートは、第1構成元素として20モル%より多いSと、第2構成元素として20モル%より多いLiと、B又はPからなる群から選択される、20モル%より多い第3構成元素と、第4構成元素として、O、Si、及びOとSiとの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1モル%であるが20モル%以下の第4構成元素とを有する硫黄系ガラスから構成され、ここで、第4構成元素のモル%は、伝導率を10-5S/cmより低く低減することなく、好ましくは、伝導率を10-4S/cmより低く低減することなく、より好ましくは、伝導率を10-3S/cmより低く低減することなく、200ポアズより大きい、好ましくは500ポアズより大きい、より好ましくは、1,000ポアズより大きい、さらにより好ましくは、3000ポアズより大きいTliqにおける粘度をもたらすのに十分である。
【0195】
また別の特定の実施形態において、ガラス質シートは、請求項2に記載のスタンドアローンのLiイオン伝導性の固形電解質セパレータを有する硫黄系ガラスから構成され、硫黄系ガラスは、第1構成元素として20モル%より多いSと、第2構成元素として20モル%より多いLiと、Si又はBからなる群から選択される、20モル%より多い第3構成元素と、第4構成元素として少なくとも1モル%であるが20モル%以下のPとをさらに含有し、ここで、Pのモル%は、シートの伝導率を10-5S/cmより低く低減することなく、より好ましくは、伝導率を10-4S/cmより低く低減することなく、さらに好ましくは、伝導率を10-3S/cmより低く低減することなく、Li金属と直接接触する対向する主要側の間で測定されるような、200Ω・cm未満、好ましくは、100Ω・cm未満、さらに好ましくは、50Ω・cm未満のガラス質シートのASRをもたらすのに十分である。
【0196】
10-5S/cm以上、好ましくは10-4S/cm以上、さらにより好ましくは、10-3S/cm以上の伝導率を有するLiイオン伝導性ガラス相は、上記本明細書において硫化物ガラスにより具現化される。しかしながら、本開示は、セレン及び/又は酸素に基づき、硫黄を有さない場合があるそれらを含み、代替的ものが考えられる。従って、この開示は、Liイオン伝導性酸化物、リン酸塩及びケイ酸塩ガラスにより具現化され得ることが考えられる。ガラス状のハロゲン化リチウム(例えば、Li3-2xHaloであり、ここで、Mは通常、Mg、Ca又はBaなどの2以上の原子価の陽イオンであり、HalはCl、I、又はそれらの混合物などのハロゲン化合物である)などの他の非晶相も考えられる。
【0197】
リチウム金属のデンドライトがその中に成長して最終的にシートを通って回路を短絡させ得る連続する相互接続された経路を有さない電池使用可能な固形電解質シートが説明される。該シートは概して、高Liイオン伝導率の硫化物系ガラス(すなわち、含硫黄ガラス)により具現化される。
【0198】
本開示は任意の特定の動作原理により限定されない一方、リチウム電池セルにおけるデンドライトの通り抜ける貫通に対して抵抗性があり、好ましくはそれを防ぐこの固形電解質シートの能力は、上にて画定されているような第1及び第2主要側面の間に延伸する連続鎖状ボイド、特に、結晶粒界及び/又は粒子から粒子への境界の形態の連続ボイド状の不連続が存在しないバルクマイクロ構造をそれ自体が有することに基づくことが考えられる。好ましくは、固形電解質シートの表面は液状であり、それにより、静止液体上の表面張力の作用から生じるような滑らかな非晶質表面を意味する。
【0199】
そのようなバルクマイクロ構造及び液状の表面を生成するために、この固形電解質シートは、Liイオンの伝導性を提供しつつ、潜在的なデンドライトの経路を交差するように構成される連続するガラス質ガラス相(すなわち、ガラス質材の広がり)の全体又は一部において構成される。
【0200】
図4A図4B図4C図4D図4E図4F図4G図4Hを参照すると、本開示の様々な実施形態に係るLiイオン伝導性の固形電解質シート400A~Hの断面図が図示される。シートのそれぞれは幾分区別可能なマイクロ構造又は微細構造的特徴を有する一方、それらのそれぞれの本体及び表面マイクロ構造の全体性で考慮されるとき、それらは全て、リチウム金属のデンドライトの簡易な通り抜ける貫通に強いという共通の態様につながる。従って、シート400A~Hは、個別の及び/又は圧密された粉末粒子間境界において、特に非晶質粉末粒子間境界、及び、シートの厚みにわたって延伸する相互接続された連続結晶粒界の形において鎖状ボイドを有さない。
【0201】
図4A図4Eを参照すると、固形電解質シート100は、Liイオン伝導性硫化物系ガラスのガラス質モノリス400A~Eとして具現化される。
【0202】
ガラス質モノリス400A~Eはそれぞれ、そのそれぞれのシートにわたって連続し、10-5S/cm以上、好ましくは、10-4S/cm以上、より好ましくは、10-3S/cm以上の室温固有Liイオン伝導率を有するガラス質硫化物ガラス相401から構成される。ガラス質硫化物ガラス相は、モノリシックのシートの大半の体積分率を構成し、これによって、主要材料相として見なされる。様々な実施形態において、ガラス質硫化物ガラス相は、シートの主要材料相で全体に広がるだけではなく、該モノリスの著しい体積分率、並びに、その第1及び第2主要側面の大半の面積分率も示している。
【0203】
主要硫化物ガラス相の体積分率が100%より低い場合、残りの固体体積は概して、二次相により占められ、結晶403又は非晶質405であり得る。そのような実施形態において、連続するLiイオン伝導性の主要ガラス相401は、その中に組み込まれて通常隔離されている二次相403/405を有するガラスマトリックスとして有効に機能する。様々な実施形態において、連続するLiイオン伝導性の硫黄系ガラス相401は、上記にて画定されているようなシートの主要材料相だけではなく、第1及び/又は第2主要側面の大半の面積分率も構成する(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%であり、好ましくは100%の第1及び/又は第2主要側面が、連続するLiイオン伝導性ガラス相により画定される)。
【0204】
好ましくは、ガラス質モノリシックの固形電解質シートの第1及び第2主要側面は、結晶相を本質的に有さず、より好ましくは、該表面は、結晶相及び二次非晶相の両方を含み、二次相を本質的に有さない。好ましくは、Liイオン伝導性ガラスのガラス質モノリシックのシートは、X線回折により判断されたように非晶質であり、好ましくは、結晶相を本質的に有さず、より好ましくは、いかなる検出可能な結晶相又は含有物もまったく有さない。好ましくは、Liイオン伝導性ガラスのガラス質モノリシックのシートは、均質であり、これによって、ガラス組成物自体から得られる二次相を有さない。処理中、固形電解質ガラスは、不純物相につながり得る外部汚染物と接触する場合があり、それのもとは、ガラス組成物自体のみではなく、むしろ、処理中に異質材との接触から、又は前駆体材において存在する不純物から得られる。任意のそのような汚染は、完全に取り除かない場合、最小化にされるべきである。好ましくは、ガラス質モノリスは、シートが処理される環境に存在する不純物を含み、ガラス組成物と反応する不純物の結果として形成し得る耐熱材の石又は耐熱性結晶相(例えば、α-アルミナ、ジルコニア、及びα-クォーツ)、及び気体の含有物(すなわち、気泡)など、いかなるそのような不純物又は点型欠陥も本質的に有さない。
【0205】
本開示のガラス質モノリシックのシートは、それらの本体及び表面の品質により、特に、両方ともダイプレス及びホットプレスされた硫化物ガラス粉末圧密体にはありふれた過度の密度の内部細孔と不規則な形状をする表面空隙とを含み、通常硫化物ガラス粒子圧密と関連するキズの欠如により、さらに有利である。好ましくは、本開示のガラス質固形電解質シートは、非常に低い密集度の内部細孔及び表面空隙を有し、例えば、i)内部ミクロ細孔の密集度は、100ミクロ細孔/1000μmより低く、好ましくは、50ミクロ細孔/1000μmより低く、より好ましくは、10ミクロ細孔/1000μmより低く、ii)内部ナノ細孔の密集度は、100ナノ細孔/1000μmより低く、より好ましくは、50ナノ細孔/1000μmより低く、さらにより好ましくは、10ナノ細孔/1000μmより低く、iii)表面ミクロボイドの密集度は、10ミクロ細孔/cmより低く、好ましくは、10ミクロ細孔/cmより低く、及びiv)表面ナノボイドの密集度は、50ナノボイド/cmより低く、より好ましくは、25表面ナノボイド/cmより低く、さらにより好ましくは、10表面ナノボイド/cmより低い。
【0206】
好適な実施形態において、ガラス質モノリシックの固形電解質シートは、内部ミクロ細孔及び表面ミクロボイドを本質的に有さず(すなわち、1つも観察可能ではない)、さらにより好ましくは、ガラス質固形電解質シートは、内部ナノ細孔を実質的に有さず(≦2ナノ細孔/1000μm)、表面ナノボイドを実質的に有さず(≦2ナノボイド/cm)、またさらにより好ましくは、内部ナノ細孔及び表面ナノボイドを本質的に有さない。表面空隙及び内部細孔は不規則な形状をし得るので、孔の等価直径は、該孔に内接する円の最大直径となるようにする。「ミクロボイド」又は「ミクロ細孔」という用語の使用により、1μm以上で約100μm(ミクロボイド)までの最小径を有するボイド/孔を意味し、「ナノボイド」又は「ナノポア」により、10nm以上であるが1μmより小さい最小径を有するボイド/孔を意味する。
【0207】
図4Aを参照すると、実質的に非晶質のガラス質モノリス400Aは本質的に、総シート体積の95%より多く構成し、存在する場合、主要ガラス相内に組み込まれた偶発的二次相により占められる残りの体積分率(すなわち、5%未満)を有し、好ましくは、総シート体積の100%を構成する主要硫化物ガラス相401Aからなる。好ましくは、実質的に非晶質シート400Aは、結晶相を本質的に有さず、X線回折により判断されたように完全に非晶質であり、より好ましくは、結晶相をまったく有さない(すなわち、1つも検出可能ではない)。好適な実施形態において、シート400Aは、均質なガラス質硫化物系ガラスシートであり、結晶相及び二次非晶相を含み、二次相を本質的に有さず、好ましくは、二次相をまったく有さない(すなわち、1つも検出可能ではない)。好ましくは、第1主要側面は、液状であり、0.1μmより小さい平均表面粗度Rを有する並外れに滑らかなトポグラフィを伴い、好ましくは0.05μmより小さく、より好ましくは、R<0.01μm、さらにより好ましくは、R<0.005μm、またさらにより好ましくは、R<0.001μmである。
【0208】
図4Bに示されているバルクマイクロ構造の断面を参照すると、他の実施形態において、ガラス質モノリシックの硫化物系固形電解質シート400Bは、実質的に非晶質であるが、一般的に隔離されて、連続するガラス質ガラスマトリックス相401Bに組み込まれた含有物として現れる少なくとも識別可能な量の結晶相/領域403Bを含有し、ただし、該結晶相/領域は、組み合わせにおいて、シートの厚みにわたって連続する粒界経路を生成しない。様々な実施形態において、実質的に非晶質シート400Bは、5-20体積%の間にある結晶相の体積分率を含有する。代替的実施形態において、結晶相の一部は、20体積%より大きいが、通常、70体積%より小さい。許容可能な体積分率は、所望のシートの可撓性、並びに、空間分布及び結晶相それら自体のLiイオン伝導率を含み、いくつかの要因に依存する。様々な実施形態において、結晶相は、高伝導性のLiイオンであり(好ましくは、σ>10-4S/cm)、(例えば、50~70体積%の範囲における)20%より大きい体積分率を有してよく、Liイオン伝導性主要ガラスマトリックスは、シートにわたって連続して広がったままであること、及び、結晶相は、(厚み方向に沿って)シートにわたって近接して浸透しないよう十分に離れて離間されることを提供する。様々な実施形態において、連続するガラス質硫黄系ガラスマトリックス相に組み込まれた結晶相の体積分率は、5~10体積%、10~20体積%、20~30体積%、40~50体積%、50~60体積%、及び60~70体積%の範囲にある。
【0209】
図4Cに図示されているように、モノリス400Cに対し、第1及び第2主要側面は、モノリス自体はその本体にある量の結晶相を含有しているという事実にもかかわらず、結晶相を本質的に有さない。より好ましくは、表面は、検出可能な結晶相をまったく有さない。例えば、モノリスは、結晶相を溶融するまで加熱処理された表面であることが考えられる。
【0210】
図4D図4Eを参照すると、実質的に非晶質のガラス質モノリシックの硫黄系固形電解質ガラスシートの断面図が図示されており、該シートは好ましくは結晶相を本質的に有さないが、連続する主要硫黄系Liイオン伝導性ガラス相401Dに組み込まれたある量の二次非晶相407Dを含有する。好ましくは、二次相は、Liイオン伝導性(σ>10-7S/cm)を有し、より好ましくは、高伝導性(σ>10-5S/cm)を有する。この実施形態によると、二次非晶質/ガラス相の体積分率は著しくて5体積%より大きい場合がある。様々な実施形態において、二次相の体積分率は、5~10体積%、10~20体積%、20~30体積%、40~50体積%、50~60体積%、60~70体積%、70~80体積%の範囲にあり、主要硫黄系ガラスマトリックス相は、シートにわたってその連続性を保持すること、及び、二次非晶相と主要相との間のインターフェイスは、第1及び第2主要側面の間で連続する隣接相境界を生成しないことを提供する。図4Eに図示されているように、好ましくは、二次相の大半はシートの本体に存在し、第1及び第2主要側面は、二次相を本質的に有さず(すなわち、2%より小さい面積分率)、より好ましくは、何れの主要側面上にも検出可能な二次相がない。
【0211】
代替的実施形態において、固形電解質シート100は、2つ以上の実質的に非晶質の連続するガラス質ガラスマトリックス(層状)により、具現化されてよく、連続する層状マトリックスのそれぞれは、10-5S/cm以上の室温固有Liイオン伝導率を有する異なるLiイオン伝導性硫化物系ガラスから構成される。図4Fに示された断面図に図示されているように固形電解質シート400Fは、第1の実質的に非晶質のガラス質マトリックス401F、及び第2の実質的に非晶質のガラス質マトリックス402Fといった2つのガラス質マトリックス層から構成され、それぞれは、シートの第1及び第2主要側面をそれぞれ画定する。様々な実施形態において、第1ガラス質ガラスマトリックス401Fは、リチウム金属との直接接触に化学的に適合であり、第2ガラス質ガラスマトリックス402Fは、リチウム金属とは化学的適合性をしない。他の実施形態においてにおいて、第1及び第2ガラス質マトリックス層の両方は、リチウム金属と化学的適合性を有する。図示された実施形態が、2つのガラス質マトリックス層から構成される一方、本開示では、(例えば、3以上の)複数のガラス質硫化物ガラスマトリックス層が考えられる。様々な実施形態において、一方又は両方のガラス質マトリックス層401F/402Fは、結晶相を本質的に有さず、好適な実施形態において、各ガラス質マトリックス層は、二次相(結晶又は非晶質)を本質的に有さない均質なガラス質ガラス層である。好ましくは、各ガラス質マトリックス層は、検出可能な二次相をまったく有さない。例えば、以下の本明細書においてより詳細に説明されるように、固形電解質シート400Fは、2つの異なるガラス流が延伸段階中にそれぞれにフュージョン結合されるというフュージョンドロー処理を用いて製造され得る。
【0212】
図4G図4Hを参照すると、本開示の他の代替的な実施形態に係るフリースタンディング硫化物系固形電解質シートの断面図が図示されている。これらの実施形態によると、固形電解質シート400G/400Hのバルクマイクロ構造は完全にガラス質ではないが、むしろ、該シートは、内部を形成し、Liイオン伝導性硫化物ガラス粒子、硫化物ガラス-セラミック粒子、硫化物多結晶粒子、又はそれらのある組み合わせ(通常、硫化物ガラス粒子)の圧密により製造される領域410から構成される複合マイクロ構造と、シート400G/400Hの少なくとも第1主要側面を画定する、Liイオン伝導性硫化物ガラスの実質的に非晶質のガラス質層420とを有する。図4Gを参照すると、固形電解質シート400Gは、第1及び第2主要側面をそれぞれ画定する第1及び第2ガラス質層420i/420iiを有する(例えば、層の形をする第1及び第2ガラスマトリックス相から構成される)。図4Hを参照すると、固形電解質シート400Hは、第1主要側面を画定する単一ガラス質層420である。該ガラス質層は、冷却焼き入れが続く、(例えば、レーザ又はホットガスを用いる)急激な表面溶融作業により形成され得る。好ましくは、該ガラス質層は、結晶相を本質的に有さず、さらにより好ましくは、該均質な層は、二次相を本質的に有さない。通常、該層の硫化物ガラス組成物は、粒子圧密体領域のそれは実質的に同じである。
【0213】
可撓性及び実質的なデンドライト不可入性を可能にすることに加えて、表面の物理的態様はまた、リチウム金属層との通らないインターフェイスをもたらし、保持するために重要であり得て、このことは、リチウム金属の均一なめっき及びストリッピング、高リチウム金属サイクリング効率(>99%)、及び最終的には長サイクル寿命のリチウム電池セルを達成するために重要である。従って、様々な実施形態において、リチウム金属と接触するシート100の主要側(すなわち、第1主要側101A)は、平らなものでもある液状の表面を有するべきである。平坦度から外れることは、うねりがイオンシート抵抗の局部位置変動量を生じ得るので、インピーダンスのばらつきにつながり得て、固形電解質シートにわたって不均一な電流密度から生じる不均一なLi金属めっき及びストリッピング反応をもたらす。表面粗度とは反対に、表面うねりWは、より大きいサンプリング長さ(通常、>0.5cm)により画定され、これによって、望ましい均一で均質なリチウムめっきモルホロジを達成するために重要な因子である。様々な実施形態において、第1主要側面101Aのうねりは、リチウム金属の繰り返されためっき及びストリッピングに際して、隙間がない、リチウム金属層とのインターフェイスを保持するのに十分に低いものであり、特に、うねりのレベルは、1mAh/cmより大きい面積アンペアアワー充電容量で50の充電サイクル後に隙間がないインターフェイスを保持するべく、十分に低いものである。好ましくは、シートのうねりは、5μmより小さく、さらにより好ましくは、1μmより小さく、またさらにより好ましくは、0.5μmより小さい。例えば、様々な実施形態において、うねりの許容可能なレベルは、シート自体の厚みに依存するであろう。これによって、約5μmから10μmの範囲にある厚みを有するシートについて、Wは、好ましくは、1μmより小さく、約10μmから20μmの範囲にある厚みを有するシートについて、Wは、好ましくは、1μmより小さく、さらにより好ましくは、0.5μmより小さく、約20μmから50μmの範囲にある厚みを有するシートについて、Wは、好ましくは、5μmより小さく、さらにより好ましくは、2μmより小さく、またさらにより好ましくは、1μmより小さく、50μmより大きい(例えば、約100μm、150μm、又は200μmの)厚みを有するシートについて、Wは、好ましくは、10μmより小さく、さらにより好ましくは、5μmより小さく、またさらにより好ましくは、2μmより小さい。
【0214】
高エネルギー密度(好ましくは、>250Wh/l、より好ましくは、>500Wh/l)のリチウム金属電池セルの長サイクル寿命を達成する能力は、必ず必要な特徴であるデンドライトショーティング防止に依存するだけではなく、高効率化(>99%)、及び著しい電極面積アンペアアワー容量(通常、>1mAh/cm)でのサイクルも必要とする。シートとリチウム金属層との間の化学的及び物理インターフェイスは、サイクル効率性に関しては重要な考慮である。以下にてより詳細に説明されるように、シート表面組成は、化学的インターフェイスを判断するために重要な因子であり、これに対して、インターフェイスの構造(すなわち、物理インターフェイス)は、表面組成及び表面トポグラフィの両方の機能であり、特に、表面粗度は、特にシート100が利用される電池セルの充電中にリチウム金属めっきのモルホロジに関連する場合、重要な考慮である。あまりにも粗いシート表面(例えば、主要側面101A)は、多孔質めっきモルホロジにつながる場合があり、それにより、高い表面積の多孔質インターフェイス、最終的には低いサイクル効率性をもたらし得る。滑らかな表面は従って、99.0%より高い、好ましくは、99.2%より高く、より好ましくは、99.5%より高く、さらにより好ましくは、99.8%より高いリチウム金属サイクリング効率を達成するために望ましい。従って、様々な実施形態において、このシートの第1主要側面の主要エリア部分は、高密度で、リチウム金属層とシートとの間のインターフェイスを生成するのに十分な平均表面粗度Rを有し、特に、シートに直ちに隣接するリチウム金属層状領域は、好ましくは、少なくとも1mAh/cmに対応する充電下で50サイクル後に>90%の高密度を有し、より好ましくは、上記充電状況で100サイクル後に>90%の高密度を有し、より好ましくは、200サイクル後に>90%の高密度を有する。従って、様々な実施形態において、第1主要側面の主要エリア部分の平均表面粗度は、R<0.2μm、好ましくは、R<0.1μm、又はR<0.05μm、さらにより好ましくは、R<0.05μm、またさらにより好ましくは、R<0.01μmである。他の実施形態において、以下の本明細書に詳述されるように、制御された均一な表面粗度を持つ表面トポグラフィを有することは、製造中、リチウム金属層などの材料層を固形電解質と結合させるのに利益を有する。例えば、様々な実施形態において、滑らかな第1主要側面101Aは、制御された方式において意図的に粗面化されてよく、0.2μmより大きい均一な表面粗度(例えば、0.5から1μmの間)をもたらす。
【0215】
好ましくは、前述の滑らかさ(R)及び平坦度(W)の値は、未使用状態において取得され、この得策により、コストがかかって潜在に禁止する研削及び研磨段階を回避し、さらに、研磨性異質の固形表面により接触されない初期状態の第1及び第2主要側面で固形電解質シートの生成を可能にし、従って、好ましく非常に高い清浄度の値を有する。
【0216】
粗さ及び平坦度に加えて、表面清浄度も、シート100と、リチウム金属層又はめっきリチウム金属との間の一貫して通らないインターフェイスを達成するために、考慮されており、これによって、複数の実施形態において、第1主要側面101Aのガラス検査(GI)値は好ましくは、1000pcs/mより小さく、より好ましくは、500pcs/mより小さく、ここで、GI値は、1nm以上の主要直径を有し、1mの領域に存在する不純物粒子の数として画定されている。
【0217】
好ましくは、シート100は、光学的品質を有し、これにより、シートは、Ra≦0.02μmの表面粗度を有し、i)結晶相、ii)表面ミクロボイド、及びiii)内部ナノ細孔を本質的に有さないことを意味する。好ましくは、ガラス質シートの光学的品質は、固体としてその未使用状態において取得される。
【0218】
任意のガラス(例えば、窓ガラス)の機械的故障は、応力及び欠陥の大きさが臨界の組み合わせに達した場合に、発生するであろう。信頼性は従って、統計的であるが、それにも関わらず、表面上の最も大きいサイズのキズに関する。対照的に、シートの基本的な機械的強度がそれらの存在により大きく影響されないので、小さく浅いキズは、それほど重要ではないよう認識される。浅いキズの数密度が小さく、又は単数でさえある場合、それらのそういう存在は概して実用的な観点からささいなものと一般に考えられる。
【0219】
しかしながら、実用的な電流密度において、本明細書にさらに説明されるように、キズ深さがデンドライト発生の閾値サイズを超えた場合、デンドライトに強い固形電解質ガラスシートを実現するために、そうでなければ液状の表面における浅いキズは禁止され得る。図4Iを参照すると、リチウム金属電池セルにおいて、ガラス質固形電解質シート100の第1主要側面101Aは、固体Li金属層415と接触し、閾値深さを超えて延伸するキズは、たとえ20GPaをかなり上回る弾性率を有する電解質に対しても、高い電解質に対しても電池充電中に非常に高い局部電流密度と、シート内へのLi金属のデンドライトの貫通とをもたらし得る電流フォーカシングのために極めて局部的なホットスポットを生成し得る。
【0220】
閾値キズ深さは、詳述されたキズ幾何学、通常、機械的断片化試験Klcから判断される破壊靱性より低い、電解質の有効な破壊靱性Klc eff、シートの厚み(t)、及び、次に名目のリチウムアノード電流密度Inominalに比例する局部電流密度Ilocalを含み、いくつかの要因により判断される。該名目リチウムアノード電流密度Ithrに対する汎用関数関係は、数式2として表し得る。
【数2】
ここで、Klc effは、キズの延伸が最も容易に発生し、キズの尖端における有効な破壊靱性であり、Γは、固形電解質内への最も深いキズの延在であり、tは、シートの厚みであり、νは、固体リチウムの粘度又は等価流応力(両方、温度依存であり)、Ilocalは、表面キズのごく近傍の固形電解質/リチウム金属アノードインターフェイスの電流密度である。通常、Ilocal>Inominalである。
【0221】
固体リチウム金属層と直接接触する液状表面を有する固形電解質シートを通ってデンドライトの伝播を緩和するために、シート内への最も深いキズの延在Γは、シートの厚みの1%未満であるべきであり、好ましくは、0.1%未満であり、必ず5μm以下である。例えば、100μm厚のシートにおける最も深いキズの延在は、1μm未満であるべきであり、好ましくは、0.1μm未満であり、50μm厚のシートに対しては、0.5μm未満であるべきであり、好ましくは、0.05μm未満である。
【0222】
さらに、デンドライトの開始に関連する閾値電流密度は、実験的に判断されてよく、又は、関連する断片化機械学-電気化学的課題に対する解析近似から推定されてよい。固体リチウム金属アノードと直接接触する多結晶固形電解質に対する典型的な実験は一般的に、0.5mA/cm未満のデンドライトの開始の閾値充電電流密度を示している。対照的に、本明細書において考えられている方法により準備されているような滑らかなインターフェイスを有するガラス質硫化物固形電解質は、驚くべきことに、50を超えるサイクルで2mAh/cmのリチウム金属をサイクルする場合、デンドライトmが貫通することなく、2mA/cm超過の電流密度を持続している。これらの原則を受け、発明者らはここで、シートにわたってデンドライトを伝播させることなく、少なくとも50の充電サイクルで1mAh/cmにおいて固形電解質シート100の第1主要側面101Aと直接接触する固体リチウム金属層をサイクルすることにより、Ithrに対し、実験的に判断された値に基づきシートの面質を特徴付けることができる。様々な実施形態において、固形電解質シートは、1mA/cm以上、好ましくは、2mA/cm以上のIthrに相応した面質を有するように特徴付けられ、より好ましくは、Ithrは3mA/cm以上、さらにより好ましくは、Ithrは、4mA/cm以上、またさらにより好ましくは、Ithrは、5mA/cm以上である。
【0223】
浅いキズの存在に対するデンドライト開始の感度を考慮すると、電池構成要素及び電池の操作及び後段処理中、ガラス質固形電解質シートに対してそのIthr値を保持するために、接触ダメージを最小化にすることに特に注意を払うべきである。
【0224】
図5Aを参照すると、様々な実施形態において、シート100は、正極520Aと負極510Aとの間に配置されるリチウム電池セル500Aにおける固形電解質セパレータとして用いられ得る。通常、電池セル500Aは、二次電池(すなわち、再充電可能)である。
【0225】
様々な実施形態において、電池セル500Aは、完全に固体状態であってよく、又は、液体/ゲル相の電解質を含んでよい。様々な実施形態において、液相電解質は、正極の電気活性材料と接触するが、負極の電気活性材料と接触せず、そのような実施形態において、電池は、本明細書においては、ハイブリッド又はハイブリッド電池と称される。いくつかの実施形態において、液体電解質は連続し、正及び負極の両方とも接触し、そのような電池は、本明細書においては、共有電解質を有する(すなわち、電解質は両方の電極に共有される)と称される。他の実施形態において、電池は、i)正極の電気活性材料と接触するが負電気活性材料と接触しない第1液相電解質であって本明細書においては陰極液と称され得る第1液相電解質、及びii)負極の電気活性材料と接触するが正電気活性材料と接触しない第2液相電解質であって本明細書においては陽極液と称され得る第2液相電解質といった互いに接触しない2つの個別の液相電解質を有する。
【0226】
様々な実施形態において、負電気活性材料はリチウム金属である。様々な実施形態において、正電気活性材料は、リチウムイオンインターカレート材である。特定の実施形態において、負電気活性材料は、リチウム金属であり、正電気活性材料は、Liインターカレーション化合物である。様々な実施形態において、本開示の電池セルは、Liイオン型であり、負及び正極において、それぞれ、Liイオンインターカレート材を、電気活性材料として利用する。例えば、Liイオンインターカレート炭素及び/又はケイ素は負極に対するものであり、Liイオンインターカレート遷移金属酸化物、硫酸塩/硫化物、リン酸塩/リン化物は、正極に対するものである。
【0227】
続けて図5Aを参照すると、特定の実施形態において、電池500Aは、再充電可能であり、負極510Aは、固形電解質シート100の第1主要側面と直接接触する負電気活性層として、リチウム金属層(例えば、リチウム金属ホイル及び/又は蒸着リチウム金属層)を含む(例えば、厚みが100μm以下のガラス質硫化物ガラスシート)。様々な実施形態において、再充電可能なリチウム金属電池セルは、i)0.5mAh~10Ahの範囲にある(例えば、約1Ah、約2Ah、約3Ah、約4Ah、又は約5Ahの)定格アンペアアワー容量、ii)約1.0mAh/cm、又は約2mAh/cm、若しくは約3mAh/cmの定格リチウム金属電極面積容量を有し、Cレートのサイクルに対応する放電/充電電流でデンドライトを伝播させることなく、50より多いサイクルでサイクルされる。好ましくは、電池は、同じ状況下で、デンドライトを伝播させることなく、100より多くのサイクルで、さらにより好ましくは、500より多くのサイクルでサイクルされる。定格面積容量という用語の使用により、電池がサイクルされる容量を意味する。
【0228】
図5Bを参照すると、様々な実施形態において、シート100は、リチウム金属電極アセンブリ500Bにおいてセパレータ層(又は基板シート)として機能し、該アセンブリは、第1主要側101Aと隣接して配置されるリチウム金属電気活性層510Bの基板として機能する固形電解質シート100から構成される。様々な実施形態において、アセンブリ500Bのリチウム金属電気活性層510Bは、表面101Aに直接接着され、又は、接触する押し出されたリチウム膜と反応して電気化学的に動作可能なインターフェイスを形成する金属コーティング(例えば、合金)などの過渡タイレイヤを介して押し出されたリチウム金属のホイルである。様々な実施形態において、リチウム金属層510Bは、表面101A上に直接物理蒸着により(例えば、蒸着又はスパッタリング)、又は上述のようにタイレイヤコーティングを介して、堆積されたコーティングであってよい。以下にてより詳細に記載されるように、押し出されたリチウム金属層を適用する場合、リチウム金属表面は好ましくは、新たなLi表面を露出するべく、新たなものであり、例えば、新たに押し出され又は新たに処理されたものである。
【0229】
図5Cを参照すると、様々な実施形態において、リチウム電極アセンブリ500Bは、ハイブリッド電池セル500Cに組み込まれる。電池は、正極520Cと、完全に固体状態の負極として機能するリチウム電極アセンブリ500Bと、シート100と正極520Aとの間の任意選択の液体/ゲル電解質層530Cとを含む。複数の実施形態において、電池セル500Cは、正極と接触する液体電解質(例えば、陰極液)を使用する。任意選択の電解質層530Cは、全体又は一部において、液相の陰極液から構成され得る。様々な実施形態において、電解質層530Cは、液相陰極液に含浸される多孔質セパレータ層又はゲル層を含む。複数の実施形態において、液相陰極液が用いられ、固形電解質シート100の第2主要側面101Bとの直接接触に化学的に適合することを保証するべく、それが選択されるべきであり、固形電解質シート100はまた、液体陰極液と化学的に適合し、それを実質的に通さないべきである。液相電解質(すなわち、陰極液)とリチウム金属層510Bとの間の接触を防ぐために、様々な実施形態において、リチウム電極アセンブリは、バックプレーン構成要素シールと、リチウム金属層510Bを陰極液から隔離する端部シールとを含む。例えば、リチウム層は、液体不透過性コンパートメントに実際に収容され、固形電解質シート100は、少なくとも1つの主要壁部を提供する。ハイブリッド電池の別の実施形態において、電極アセンブリは、正極アセンブリであってよいことが考えられ、ここで、正極の電気活性材料(例えば、Liイオンインターカレーション材)及び液相陰極液は組み合わされて、互いに封止されている第1及び第2固形電解質シート端部から構成される液体不透過性コンパートメント内にカプセル化される。
【0230】
この開示に係るLiイオン伝導性の固形電解質シート100を製造するための方法が提供され、様々な実施形態において、硫化物系Liイオン伝導性ガラスの高密度で実質的に非晶質のガラス質シートを製造するための方法が提供される。
【0231】
様々な実施形態において、方法は、10-5S/cm以上、好ましくは、10-4S/cm以上、より好ましくは、10-3S/cm以上の室温固有Liイオン伝導率を有するLiイオン伝導性ガラス(例えば、硫化物系ガラス)のそれに対応する組成物を有する途切れない連続性の無機流体シートを固化することを伴う。特定の実施形態において、硫化物ガラスの流体シートは、実質的に平行な長さ方向端部を有する連続する流体流として、その長さ方向寸法に沿って流れさせられ、そして、ガラス質固形電解質シート、マザーシート、又はウェブを形成するべく固化される。
【0232】
好ましくは、流体流自体は、上述のように、薄くて均一な厚みを有する。様々な実施形態において、硫化物ガラスは空気に敏感であり、このガラス質シートを製造するために用いられる工程は、湿気及び酸素を実質的に有さない大気(例えば、乾燥空気又は乾燥窒素又は乾燥アルゴン)において実行される。
【0233】
様々な実施形態において、固化流体流は、2より大きく、一般的には5より大きく、より一般的には10より大きい面積アスペクト比を有するガラス質硫化物ガラスの長い固形電解質シートである。様々な実施形態において、方法は、例えば、>10cm、>50cmなどの非常に長いガラス質Liイオン伝導性ガラスシートを製造するために適し、複数の実施形態において、>100cm長、一般的には少なくとも1cm幅あり、より一般的には2~10cmの間の幅(例えば、約2cm、3cm、4cm、又は約5cm幅)である。
【0234】
複数の実施形態において、流体流は、流れると、その長さ方向端部に沿って拘束されておらず、幅方向に広がらない。様々な実施形態において、均一な厚みの薄い流体流は、固化に際して、異質の固形表面により実質的に接触されない。様々な実施形態において、流体流は、ガラス質硫化物系ガラスであり、好ましくは、結晶相を本質的に有さず、より好ましくは、均質である(すなわち、結晶又は非晶質の二次相を本質的に有さない)。
【0235】
容易に流れるために、流体流は、それ自体がその自体の重量下で流れることを可能にするのに十分な低い粘度を有してよい。様々な実施形態において、流体流は、そのシート状の形状を維持しつつ、又は引き/延伸により(例えば、電動ローラを介して)、重力下で流れさせられ、代替的実施形態において、ガラス質固形電解質シートは、流体流が毛管力により流れるように駆動される新しい毛細管延伸法により製造される。
【0236】
いくつかの実施形態において、流体流は、Liイオン伝導性硫化物ガラス組成物の溶融した液体から直接形成され、そのように形成された溶融されたガラスの液体流は、Tliqから、又は約T(例えば、液相線温度をわずかに上回る温度)から、ガラス遷移温度(T)未満の温度まで冷却される。冷却処理は、実質的に非晶質で、好ましくは結晶相を本質的に有さないこのフリースタンディング硫化物系固形電解質シートを生成するのに十分な時間枠内に、自然で又は容易にさせられて固化されてよい。好ましくは、硫化物系固形電解質ガラス組成物は、結晶化、相間離隔、又は任意の他の不利な熱イベントを受けることなく、固体ガラス相と液体溶融相との間で繰り返し加熱され冷却されることができるように選択される。
【0237】
他の実施形態において、シート100は、i)Liイオン伝導性硫化物ガラスプリフォームの一部分をそのTを上回るよう加熱すること、ii)該プリフォームを引っ張ること、及びiii)そのように形成された流体流をT未満の温度まで冷却することにより、形成される。プリフォームの加熱された部分は、Tを上回るがT未満、好ましくは、T(すなわち、加熱に際する結晶化温度)未満の温度に達する。様々な実施形態において、Liイオン伝導性硫化物ガラスプリフォーム自体は、ガラス質であり、ガラスを溶融して焼き入れることにより、所望の形状及び大きさに製造され、又は、ガラスを溶融して焼き入れることにより、大きい構造に製造され、そして、その構造を(例えば、切断する、研削する、及び/又は延伸することにより)プリフォームの所望の形状及び寸法にサイズダウンする。
【0238】
マザーシートと類似に、そこから得られる流体流も、上質の中央部分(すなわち、主要エリア部分)、及び、中央部分と比較する場合、異なる厚みであり、比較的低い面質で、及び/又は低い厚みの均一性を有し得る周縁部を有するように特徴付けられ得る。好ましくは、流体ガラス流の上質の中央部分は、総面積(又は流体流の総体積)の30%より広くなるよう画定され、より好ましくは、50%より広く、70%より広く、さらにより好ましくは90%より広い。様々な実施形態において、流体流の上質の中央部分は、薄く(≦500μm)、均一な厚み(例えば、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、又は約100μm)を有する。様々な実施形態において、薄い流体流の上質の中央部分の長さ及び幅は、10cm長より長く(例えば、50cmより長く、又は100cmより長く)、1cm幅より広く、例えば、2~10cmの間の幅(例えば、約2cm、約3cm、約4cm、約5cm、約6cm、約7cm、約8cm、約9cm又は約10cm)である。いくつかの実施形態において、これから固化される流体流は、その全体の長さ及び幅にわたって十分な面質と厚みの均一性とを有し、そこから形成される該固形電解質シート又はウェブは、任意選択的にサイズの目的のためを除き、縁部の除去を必要としない。様々な実施形態において、流体流の上質の中央部分の対向する主要面は、初期状態であり、これによって、固化の直前に異質の固形表面により接触されない。例えば、流体流は、セパレータシートが最終的にそこからある大きさにカットされる中央部分とではなく、固化される周縁部と直接接触する端部ローラ及び/又は端部ガイドロールにより、流れさせられ、横断させられる。
【0239】
様々な実施形態において、溶融延伸及びプリフォームドローなどの延伸技術が、途切れない連続性を持つ流体流と最終的には固形電解質シートとを製造するために用いられる。延伸処理は、自然に発展した形状及び表面の利点をもたらし、これによって、固形電解質シートの幾何学的形状(例えば、実質的に平行な長さ方向端部)、厚み、及び/又は表面トポグラフィは、その固化された流体流から(すなわち、固体としてのその未使用状態におけるシートから)直接現れ得る。
【0240】
様々な実施形態において、該硫化物ガラス組成物はTとTとの間の分離(すなわち、ガラス安定性因子)に基づいて選択される。好ましくは、ガラス組成物は100℃より高いガラス安定性因子を有する。しかしながら、本開示に係る硫化物系ガラスは、実質的に非晶質シートに延伸されてよく、いくつかの実施形態において、延伸されるであろう。そして、100℃より低いガラス安定性因子を有するにもかかわらず、好ましくは本質的に結晶相を有さない。例えば、様々な実施形態において、硫化物系ガラスは、<100℃よ、<90℃、<80℃、<70℃、<60℃、<50℃、<40℃、さらに<30℃より低いガラス安定性因子を有する(例えば、50℃以下である)。結晶核生成を防ぐために、ガラス材が加熱される時間帯は好ましくは、最小化に維持される。
【0241】
シート100の延伸処理は、その固化されたような状態において、電池使用可能なサイズ、均一な厚み、及び、実質的に平行な長さ方向端部を有する、実質的に非晶質のガラス質シートを生成するのに適する。その結果として、該ガラス質シートは、延伸されると(すなわち、固化されると)、低質の縁部をアニールして切り落とす他に、後形成処理(すなわち、後固化処理)はほとんどかまったく必要としないことが、考えられる。例えば、延伸された固形電解質シートは、いったん形成されると、応力を除去するためにアニールされるが、所望の表面トポグラフィ(例えば、滑らかな液状表面)をもたらすようためにいかなる研削すること及び/又は研磨することを必要としない。ガラス質固形電解質シートがいったん延伸されると、その非晶質の本質を保持するために(例えば、本質的に結晶相を有さない)、結晶化をもたらし得る温度にシートを露出させ得る処理を回避するように注意を払うべきであり、これによって、固形電解質シートは、その結晶化温度(T)に近い(又はそれより高い)温度において後固化加熱処理を受けるべきではない。
【0242】
延伸処理は概して、イオン置換可能な平らなガラスの大規模製造と、半導体及び表示技術用ガラス条とのために用いられる。ここで、延伸処理は、高Liイオン伝導性のガラス質固形電解質ガラス、特に、Liイオン伝導性硫黄系ガラスシートを、本明細書にわたってここに説明されているような100℃より低いガラス安定性因子を有するそれらを含み、製造するために利用されている。
【0243】
硫黄系固形電解質ガラスの化学組成は、その熱的性質を決定するであろう。従って、上述のように、様々な実施形態において、ガラス組成物は、許容可能なLiイオン伝導率(>10-5S/cm)を維持しつつ、成形性のためにその熱的性質を最適化するように選択される。様々な実施形態において、ガラス組成物は、10-5S/cm以上、好ましくは10-4S/cm以上、より好ましくは、10-3S/cm以上の室温Liイオン伝導率を有しつつ、結晶化を開始する温度未満の温度において10から10ポアズ、好ましくは10から10ポアズの粘度を達成するその能力に対して選択される。
【0244】
様々な実施形態において、硫化物系ガラスシート100は、フュージョンドローなどの、延伸タンクを使用し、重力を利用して溶融されたガラスをタンクの外側表面に流れ落ちさせ、この得策により、(フュージョンにより)結合された2つの流れるガラス表面(すなわち、2つの液体流)を生成して単一の流れるシート(すなわち、途切れない連続性を持つ単一の液体ガラス流)を形成するオーバーフロー技術を用いて、製造される。
【0245】
一実施形態において、本開示は、フュージョンドローにより、ガラス質硫化物系固形電解質シート100を製造するための方法を提供する。図6A図6Bのフュージョンドロー装置を参照すると、機械的粉砕により形成され得る、Liイオン伝導性硫化物ガラス粉末の材料バッチが、(例えば、Tliqより高い温度で)谷状容器607内へ(流通管605を介して)、該谷部の両側から流体ガラス609をこぼれさせるのに十分な量で流れさせる溶融用容器において加熱される。そして、対向する流れは、フュージョンにより結合されて途切れない連続性を持つ単一の液体流100を形成し、シートの固化された部分が引っ張られる速度に依存するシートの厚みを制御するために、(例えば、端部ローラ又はガラスプーリングロッドを介して)延伸器具へ供給されてよい。好ましくは、固化された状態のガラスシートの主要面、又は少なくともその上質の中央部分は、装置(例えば、谷部壁又は流通管)のいかなる部分にも接触していければ、初期状態であり、従って、優れた面質を有し得る。様々な実施形態において、フュージョンドロー処理は、2つの似ていないガラスの延伸を許容するように変更されてよく、例えば、一方は、リチウム金属との接触のために最適化され、他方は、正極電池セル構成要素(例えば、リチウム正電気活性材料)又は液相電解質との接触、若しくは、処理の簡易さ又は高伝導率など、異なる目的又は有用性のために最適化される。例えば、途切れない連続性を持つ(例えば、リチウム、硫黄、及びケイ素などの構成元素を有するが、リンを有さない)第1硫化物ガラス流が、(例えば、リチウム、硫黄、及び、ホウ素又はリンのうちの1つ又は複数などの構成元素を有するが、ケイ素を有さない)第2硫化物ガラス流に溶融される。
【0246】
様々な実施形態において、フリースタンディングの固形電解質シート100は、Liイオン伝導性硫黄含有ガラスの実質的に非晶質のガラス質モノリシックの固形電解質シートを生成するためにスロットドローにより形成され得る。図6Cを参照すると、スロット延伸処理を用いてフリースタンディングのシートを製造するための装置600が図示されている。装置は、i)溶融温度より高い温度において材料バッチを加熱及び保持するための溶融用容器660と、ii)タンクの底部近傍にあり、ガラスのバッチが延伸により通って流れ、連続ガラスシート100を形成するオープンスロット670とを含み、連続ガラスシート100は、成形するためにローラ680を通って任意選択的に引っ張られてよく、アニール加熱処理のために任意選択的に炉690内を横断してよく、その後、任意選択的に第2ローラセット685を通って配置されてよく、及び/又は、その最終形態に又は最終形態近い形態における固形電解質セパレータ又はウェブとしてガラス質シートを生成するために、(上述のように)端部除去処理を受けてよい。
【0247】
温かい(すなわち、室温25℃より高い)不活性液体、冷たい(すなわち、室温25℃未満の)不活性液体、極低温流体窒素、又は、流体ガラス流の表面にわたる他の不活性ガス(例えば、ヘリウム又はアルゴン)を含み、一方又は両方の表面にわたって非反応性流体(例えば、乾燥窒素)を流れさせるなど、さらなる処理段階は、冷却率を高めるために用いられ得る。冷却ガスは概して、非常に低い含水量を有するであろう(例えば、乾燥空気又は乾燥窒素)。好ましくは、0.5%より低く、より好ましくは、超乾燥窒素又は酸素を有さないガスであり、-50℃より低く、好ましくは-70℃より低い露点を有する。
【0248】
様々な実施形態において、材料バッチは、ガラスを製造するために適切な化学量論における原前駆体粉末(例えば、LiS、B、P、P、及び同様のもの)から構成され、前駆体成分は、透かしむらなどの線条のような不均質性を回避するよう溶融中に完全にブレンドされるべきであり、必要に応じて気泡を緩和するように精製されてよい。
【0249】
様々な実施形態において、材料バッチは既に、一般的には粉末の形態のガラスである(すなわち、ガラスバッチである)。複数の実施形態において、ガラス粉末バッチは、前駆体粉末を機械的に粉砕することにより、製造され得る。例えば、硫化物ガラスの材料バッチは、前駆体成分の機械的粉砕を介して準備され得る。粉砕は、室温において、数時間(例えば、約10時間)にわたって、遊星ボールミル、ジルコニア粉砕媒体、及び毎分数百回の旋回の回転速度(例えば、約500RPM)を用いて、実行され得る。機械的粉砕を用いてLiイオン伝導性硫化物ガラス粉末のバッチを処理するための方法は概して、Hama及びHayaahiによる米国特許番号第8,556,197号と、Akiba及びTatsumsagoによる米国特許出願公開番号第2005/0107239号とに記載され、両方ともこれらの方法に関するそれらの開示のためにこれによって、参照により組み込まれている。代替的に、バッチガラスは、前駆体成分を溶融焼き入れすることによって処理されてよく、その後、焼き入れられたブロブ又はブールを任意選択に粉砕して粉末にすることが続き、そのような例において、材料バッチ自体は既に溶融処理されたガラスである。
【0250】
既にLiイオン伝導性ガラスである材料バッチで開始することは、上述のように、延伸に対しては明確な利点を有する。例えば、前駆体粉末材料(例えば、LiS及びP)で開始することと反対に、バッチ粉末ガラスは、より低い温度において溶融され得て、概して、前駆体原成分から得られる融液と比較する場合、より低い蒸気圧を有するであろう。一般的に、上に概説されたように、工程は、機械的粉砕(又は従来の溶融/焼き入れ/研削)を用いてバッチ硫化物ガラス粉末を製造する第1段階と、延伸を可能にするのに十分な温度(例えば、約Tliq)までガラス粉末バッチを加熱する第2段階と、上に概説されたような延伸により、溶融されたガラスをガラス質ガラスシートに加工する第3段階とを含む。前駆体原成分の混合物を溶融することと対照的に、代わりにガラス粉末を用いることは、潜在的にコストがかかるガラス製造段階を工程に加え、特に、はじめには(任意選択的に粉末まで粉砕される)バルクガラスとして、そして、ガラス質シートとして、といった実際にガラスを2回製造することを必要とするので、幾分反直感的である。
【0251】
様々な実施形態において、ガラス質固形電解質シート100は、プリフォームドローにより形成され、硫化物系固形電解質ガラスのプリフォームは、プリフォームのガラス遷移温度より高い温度において、所望の形状及び大きさまでの長さに延伸される(例えば、引っ張られる)。一般的に、プリフォームから延伸されるために、それ自体(プリフォーム)は、それ自体の重量下、変形できるのに十分に低い粘度を有する温度まで加熱される。このことは概して、およそ軟化点において発生し、通常、約107.65ポアズの粘度を有すると画定される。プリフォームの延伸に際し、加熱された部分(すなわち、変形域におけるプリフォームのその部分)は、一般的に10~10ポアズの範囲における粘度に達すると、途切れない連続性を持つ高粘性流体となる。
【0252】
図6Dを参照すると、硫化物系固形電解質シート100をプリフォームドローすることに適した装置600Dが示されている。作業において、ガラス質プリフォーム610Dは、変形域620Dにおいて加熱され、そして、機械化されたローラ630Dを用いて延伸される。変形域内において、プリフォームは露出されてその温度をTより高いがT未満の温度まで、好ましくはT未満の温度まで上昇させるのに十分に加熱され、そこから、所望の電池使用可能な形状及び大きさの壁構造を生成するように延伸される途切れない連続性を持つ粘性流体流(例えば、シート)を形成し、流体流が流れるにつれて細線化する。いくつかの実施形態において、延伸装置は、引っ張られたシート部の冷却を加速するために、延伸されたシート近傍の不活性ガスを流れさせるためのフローシステムを含むことが考えられ、該ガスは好ましくは、上述のように、非常に低い湿気及び酸素含有量を有する。
【0253】
形成されたシートのその結果の断面形状は通常、それ自体がそこから延伸されたプリフォームの断面形状と類似である。好ましくは、プリフォームは、最小程度の表面粗度及びうねりを有する滑らかで平らな表面を有する。様々な実施形態において、プリフォームそれ自体は、ガラス質モノリシックの構造である。例えば、プリフォームは、溶融されたガラスを、著しい厚み及び幅を有し、通常、シート100に対して所望の厚みより10倍厚い長方形の棒状の形状に成形することにより、製造され得る。例えば、10~500μm厚の範囲における薄いガラス質固形電解質シートを延伸するために、様々な実施形態において、プリフォームは、200μmから1000μmの範囲における厚みと、5から20cmの幅と、約30cmから100cmの長さとを有する(例えば、約5cm幅、約30cm長、かつ、約400μm厚の)長方形の棒である。半導体装置及び平らなパネルディスプレイのための基板を形成するべくガラスプリフォームを延伸するための方法及び装置は、米国特許公開公報第US20070271957号、US20090100874号、20150068251号において記載されており、それらの全てが本明細書において参照により組み込まれている。
【0254】
様々な実施形態において、プリフォームは、所望の組成の溶融された硫化物ガラスを、好ましくは、(ガラスの)Tより高い温度におけるガラス質/ガラス状炭素の熱い金型に分配することにより製造されてよく、いくつかの例において、金型は、Tより高い温度において保持され、そして、乱流を最小化にするのに十分な時間が与えられ、ガラスプリフォームを固化するように金型を冷却し得る。この得策により、該プリフォームは、そうでなければ、冷却が急速すぎた場合に起こり得るボイド又はクラックが存在することなく、より容易に処理される。様々な実施形態において、プリフォームは、精密ガラス成形又は超精密ガラス処理を介して、処理され得る。硫化物ガラスの化学組成に応じ、金型が製造される材料は、処理の重要な態様であり得る。金型は、高温においてガラスと化学的に適合するべきであり、プリフォーム自体に求められている面質に相応した面質も有すべきであり、これによって、好ましくは、滑らかで液状表面である(例えば、ガラス質炭素であり、ここで及び他の箇所ではガラス状炭素とも称される)。
【0255】
様々な実施形態において、プリフォームは、ガラス状炭素金型において融液から製造される(例えば、金型はガラス状炭素製であり、又は少なくとも、硫化物ガラスと接触する金型表面はガラス状炭素製である)。他の実施形態において、プリフォームは、既に処理されたガラスの材料バッチ、又は減圧され封止された石英製アンプルにおけるその先駆体原材料を溶融することによって、加工されてよい。使用される炉は、水平方向にあってよいが、好ましくは鉛直方向にあり、さらにより好ましくは、加熱中に混合することを可能にする揺動式炉である。いったんガラスが完全に溶融されると、アンプルは、乱流を最小化にするように十分な時間において鉛直方向に保持され、そして、焼き入れ媒体(例えば、ウォーターバス)に浸される。例えば、炉は、アンプルを操作するための自動化制御を有する鉛直式炉であってよい。様々な実施形態において、融液を高速に焼き入れることより、むしろ、融液は、ゆっくり(例えば、毎分10℃より低い率により)冷却されてよく、融液の全体にわたって熱平衡を可能にし、この得策により、熱ショックを介してクラックへの傾向を低減させる。冷却率と、冷却に対する温度及び時間のサイクルは、ガラス安定性因子及び結晶成長率を含み、多数の因子に依存する。様々な実施形態において、特にガラス安定性因子が100℃より低い場合、(例えば、アンプルにおける)溶融された硫黄系ガラスは、ゆっくりとTより高い温度(例えば、Tより20℃高く、Tより50℃高い温度)であるがTliq未満の温度まで冷却され、そして、T未満の温度において焼き入れられて結晶化を防ぐ。100℃より高い熱安定性を有するガラスにについて、Tより高い温度(例えば、Tより20℃高く、Tより50℃高い温度)までゆっくりと冷却し、そして、T未満の温度において焼き入れることが考えられる。焼き入れに直ちに続き、ガラス質ガラスプリフォームは、工程の結果として発展し得る内部応力を除去するためにアニールされてよい。
【0256】
円筒状のアンプルは一般に使用され、しかしながら、本開示は、好ましくは<5mmの厚みで、より好ましくは<1mm厚のLiイオン伝導性硫黄系ガラスの長方形状のガラス質の棒を、溶融/焼き入れから直接生成するために、楕円形又は長方形状のアンプルを使用することが考えられる。例えば、プリフォームは、形成されると、<1mm厚、及び>1cm幅であり、好ましくは10cmより長い長さである。この得策により、プリフォームは、ガラスシート又はリボンを延伸するための所望の形状を有する。通常、1cm以上の直径を有する円筒状のアンプルとは反対に、長方形状のアンプルの使用は、プリフォームの厚みにわたって冷却プロファイルを改善する。本明細書において説明されている。プリフォームを生成する様々な方法はまた、所望の形状及び厚みにプリフォームを切り、その後、所望の面質を達成するために研磨及び/又は制御された粗面化が続くことによって(例えば、ワイヤーソーを介して)平面試料のバッチ製造のために適し得る。通常、この方式で生成されたサンプルは、該プリフォームの幅に沿ってカットされるであろう。例えば、そのように形成されたプリフォームが円筒状である場合、平面試料は概して、プリフォーム自体の直径と一致する、又は近い直径を有する円形の形状の薄片である。このように、ディスク、又は約1~3cmの直径又は側を有する長方形の平面試料は、試験のため、又は積み重ねられた又は単層の電池セルにおける使用に提供され得る。小さい固形電解質の試料は、この方式で生成されたバッチであってよい。別の実施形態において、平面試料は、圧密板(例えば、ガラス質炭素板)の間で溶融された硫黄系ガラスを、所望の厚みにスタンピングすることにより、バッチ処理されてよく、又は、Liイオン伝導性硫黄系ガラスのガラス質ガラスブランク(例えば、ブロブ又はブール)は、上述されたように、ブランクをTより高い温度(例えば、約軟化点まで又はそれより高い温度)まで加熱し、所望の形状及び厚みにブランクを成形し、引き続き、T未満の温度まで冷却することによって、精密成形されてよい。ガラス質ブランクの代わりに、ガラス粉末を用い、その後、精密成形が続くことも、考えられる。
【0257】
本開示によると、延伸装置600A-Dは一般に、空気中の湿気及び/又は酸素へのガラス質硫化物プリフォーム又は溶融された硫化物ガラスの露出を最小化にする又は取り除くために、制御雰囲気ハウジングにおいて囲まれ、又は、延伸は、ドライルームにおいて、又は大きい乾燥ボックスにおいて実行される。例えば、制御雰囲気は、100パーツパーミリオン(ppm)より少ない(例えば、10ppm以下の)HO/Oを有する。様々な実施形態において、大気近傍又はその中、溶融用容器は、構成元素、特に、融液から蒸着する傾向がある硫黄及びリン(存在する場合)の揮発及び凝縮を低減するのに有効な不活性ガス分圧(例えば、アルゴン)を含有する。揮発性物質の減失を最小化にするために、様々な実施形態において、ハウジング又は容器内の不活性ガス圧力は、1atmより大きい(例えば、約2atm又はそれより大きい)。特定の実施形態において、溶融用容器は、揮発を低減するために、融液上の硫黄の超過圧力を達成するべく、カバープレートでキャップされる。様々な実施形態において、不活性ガスは、融液にわたって、融液の温度における硫黄の蒸気圧、又は存在する場合のリンの蒸気圧より高い圧力において保持される。様々な実施形態において、ある程度の窒素ガスが、硫化物ガラス骨格の構成要素として、窒素を組み込む目的のために、不活性ガスと組み合わされ得ることが考えられる。
【0258】
延伸された状態の固化シートは、固形電解質シートの搬送を容易にするためにバッキング層上に配置されてよい。様々な実施形態において、バッキング層はまた、シートが継続してウェブ及びロールに形成されるとき、表面を保護するためのインターリーフとして機能する。バッキング層は、非リチウムイオン伝導性ガラスシート(例えば、シリカガラス又はホウケイ酸ガラス)、又はポリマー膜(例えば、ポリエステル層)であってよい。概して、バッキング層は、固形電解質シートに強く接着されておらず、そのため、容易に除去される。いくつかの実施形態において、バッキング層は、接着性を高めるが容易に除去することを依然として可能にする液体層(例えば、有機溶媒又は有機物質)でコーティングされよてい。バッキング層はまた、インターリーフとして、かつ、ポリマーセパレータ層(例えば、多孔質又はゲル化可能なポリマー層)として機能することも考えられる。そのような実施形態において、このセパレータは、以下の本明細書により詳細に説明されるように、ハイブリッド電池セルにおいて、又は、ポリマーセパレータ層が、液体電解質が存在しない固形ポリマー電解質である場合、固体状態の電池において、ポリマーセパレータ層及びフリースタンディングガラスシートの組み合わせである。
【0259】
いくつかの実施形態において、継続して延伸された固形電解質シートは、延伸処理に則して、ある大きさにカットされる。ある大きさにカットされた固形電解質シートは、そして、保管及び搬送のために積み重ねられてよい。様々な実施形態において、インターリーフは、隣接して積み重ねられたシート材料の間に組み込まれてよく、それらの直接接触を防ぎ、又は、固形電解質ガラスシートは、シートの端部を物理的ダメージから守るために機能するエッジプロテクタ素子と嵌合されてよく、以下にてより詳細に説明されるように、積み重ねられた又は巻かれたシートの間の隙間を生成するためのスペーサとしても機能し得る。
【0260】
図7A図7Cを参照すると、上述のように延伸処理を用いて固形電解質シート100を製造する様々な方法700A~Cを表すフローチャートが図示されている。方法700A~Cは、ガラス組成物705を選択する第1段階を含む。例えば、組成物は、シート100を製造する特定の延伸処理(例えば、プリフォームドロー及び/又は溶融延伸)に対する適合性のために選択され得る。
【0261】
様々な実施形態において、構成元素は、熱的性質を高めるために選択されて調整される。いくつかの実施形態において、その調整が伝導率の著しい低減をもたらす(例えば、2、3、4、又は5倍で、若しくは大きさのけたの低減で)。
【0262】
様々な実施形態において、構成元素のモル比は、硫化物系ガラスのガラス安定性因子を増大するように調整される。様々な実施形態において、調整は、ガラス安定性因子{T-T}≧30℃といった結果をもたらし、好ましくは、≧50℃、さらにより好ましくは、≧100℃である。様々な実施形態において、少なくとも10℃でのガラス安定性因子の増大といった調整結果をもたらすが、10-5S/cm以上、好ましくは、10-4S/cm以上の伝導率を依然として維持しつつ、2~100倍の間で(例えば、2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~50倍、及び50~100倍の間で)その後の伝導率の減失が伴われる。様々な実施形態において、ガラス安定性因子は、20℃より高く、又は30℃より高く、若しくは、50℃より高く増大する。
【0263】
様々な方法において、ガラス組成物を含有する硫黄を選択する段階は、ガラス安定性因子及び伝導率に基づき、例えば、>20℃、又は>30℃、又は>40℃、又は>50℃、又は>60℃、又は>70℃、又は>80℃、又は>90℃、又は>100℃のガラス安定性因子と、≧10-5S/cm、好ましくは≧10-4S/cm、より好ましくは≧10-3S/cmのLiイオン伝導率とを有するガラス組成物を選択する。
【0264】
様々な方法において、ガラス組成物を含有する硫黄を選択する段階は、Hrubyパラメータ及び伝導率に基づき、例えば、>0.4、又は>0.5、又は>0.6、又は>0.7、又は>0.8、又は>0.9、又は>1のHrubyパラメータと、≧10-5S/cm、好ましくは≧10-4S/cm、より好ましくは≧10-3S/cmのLiイオン伝導率とを有するガラス組成物を選択する。
【0265】
様々な方法において、ガラス組成物を含有する硫黄を選択する段階は、ガラスにおけるLi及び/又はS(硫黄)及び/又はO(酸素)のモルパーセントの調整を伴い、>0.5、又は>0.6、又は>0.7、又は>0.8、又は>0.9、又は>1のHrubyパラメータと、≧10-5S/cm、好ましくは≧10-4S/cm、より好ましくは≧10-3S/cmのLiイオン伝導率とを達成する。
【0266】
様々な方法において、ガラス組成物を含有する硫黄を選択する段階は、ガラスにおけるLi及び/又はS(硫黄)及び/又はO(酸素)のモル比の調整を伴い、>50℃、又は>60℃、又は>70℃、又は>100℃のガラス安定性因子と、≧10-5S/cm、好ましくは≧10-4S/cm、より好ましくは≧10-3S/cmのLiイオン伝導率とを達成する。
【0267】
様々な方法において、ガラス組成物を選択する段階は、ガラスにおける特定の量のS(硫黄)をO(酸素)に置換することを含み、該量は、≧10-5S/cm、好ましくは≧10-4S/cm、より好ましくは≧10-3S/cmのLiイオン伝導率を維持しつつ、少なくとも10℃でガラス安定性因子、又は、少なくとも0.1でHrubyパラメータを増大させるのに十分な量である。様々な実施形態において、≧10-5S/cmの必要なLiイオン伝導率を維持しつつ、ガラス安定性因子は、硫黄に対する酸素置換により、少なくとも20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、又は70℃で増大される。様々な実施形態において、必要なLiイオン伝導率を保持しつつ、Hrubyパラメータは、酸素又は硫黄置換により、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、又は0.7で増加される。
【0268】
様々な方法において、ガラス組成物を選択する段階は、i)硫黄系ガラスの構成元素を選択する段階であって、構成元素は、S(硫黄)、Li(リチウム)、及びP(リン)、B(ホウ素)、Si(ケイ素)、及びO(酸素)のうちの1つ又は複数を含む、段階と、ii)シートの室温Liイオン伝導率を10-5S/cmより低く低減することなく、好ましくは、伝導率を10-4S/cmより低く低減することなく、Tliq(すなわち、液相線粘度)において粘度を最大化にするために構成元素のモル比を調整する段階とを含む。例えば、最大化された液相線粘度は、200ポアズより大きく、好ましくは、500ポアズより大きく、より好ましくは、1,000ポアズより大きく、さらにより好ましくは、3,000ポアズより大きい。好適な実施形態において、最大化段階は、Li金属に対して測定されたようなASRを、200Ω・cmより大きい値まで増大せず、好ましくは、100Ω・cmより大きくない値、又は、50Ω・cmより大きい値、若しくは20Ω・cmより大きい値まで増大しない。
【0269】
様々な方法において、ガラス組成物を選択する段階は、i)硫黄系ガラスの構成元素を選択する段階であって、該構成元素はS(硫黄)、Li(リチウム)、及び、P(リン)、B(ホウ素)、Si(ケイ素)、及びO(酸素)のうちの1つ又は複数を含む、段階と、ii)シートの室温Liイオン伝導率を10-5S/cmより低く低減することなく、好ましくは、伝導率を10-4S/cmより低く低減することなく、ガラス安定性因子{T-T}を最大化にするために構成元素のモル比を調整する段階とを含む。例えば、ガラス安定性因子を、50℃より大きい値、好ましくは100℃より大きい値まで最大化にする。好適な実施形態において、最大化段階は、リチウム金属に対するASRを、200Ω・cmより大きい値まで増大せず、好ましくは、100Ω・cmより大きくない値、又は50Ω・cmより大きい値、若しくは20Ω・cmより大きい値まで増大しない。
【0270】
続けて図7A図7Cを参照すると、いったんガラス組成物を含有するLiイオン伝導性硫黄が選択される705と、先駆体原材料(例えば、LiS、SiS、及びP粉末)は処理される710。方法700A~Bを参照すると、図7A図7Bに図示されているように、処理段階は、先駆体原材料からガラス質プリフォーム730Aを形成すること、又は、溶融延伸によりガラス質固形電解質シートを製造するために先駆体原材料730Bを溶融することを伴う。方法700Cにおいて、処理は、先駆体原材料からガラスバッチ720Cを製造するさらなる段階と、そして、ガラスプリフォームを処理する段階又は2回溶融されたガラスからシートを延伸する段階とを伴う。様々な実施形態において、段階720Cにおいて形成されたバッチガラスは、前駆体原材料の溶融/焼き入れにより、又は、機械的粉砕により、処理され得る。バッチガラスからガラス質プリフォームの再溶融又は形成は、それ自体(バッチガラス)がどのように形成されるかと関係なく、揮発性成分の減失の最小化を含み、変数処理のより良好な制御を可能にする。
【0271】
様々な実施形態において、連続する固形電解質シート100(例えば、ガラス質Liイオン伝導性硫黄含有ガラスのシート)は、Liイオン伝導性ガラスのガラス質ウェブとして構成可能であるように曲げられるとき、十分に長くて堅固である。様々な実施形態において、ウェブは、(例えば、糸巻きに)巻かれるように十分に可撓性を有し、これによって、ある大きさにカットされた個別のシート及び/又は電池セル構成要素の後段(RR)又はロールツーシート工程のためのソース/供給ロールとして適する。好ましくは、ガラス質固形電解質ウェブは、後固化の研削及び/又は研磨を必要としない十分な面質及び厚みの均一性を有し、さらにより好ましくは、低質の周縁部の除去を必要としない。
【0272】
様々な実施形態において、連続ウェブは、≦100cm、好ましくは≦50cm、より好ましくは≦30cm、さらにより好ましくは≦20cm、またさらにより好ましくは≦10cm、又は≦5cm、若しくは≦2cmの曲げ半径を有し、これによって、断片化することなく、そのように巻かれ得る。様々な実施形態において、ウェブが巻かれている糸巻き又はドラムは、100~200cm、又は50~100cm、若しくは20~50cm、あるいは10~20cm、又は5~10cm、若しくは1~5cm、あるいは0.5~1cmの間の直径を有し、例えば、20cm以下、又は10cm以下、若しくは5cm以下の直径を有する糸巻きである。
【0273】
ガラス質ウェブは通常、複数の個別の(すなわち、ある大きさにカットされた)固形電解質セパレータシートのソースとして機能するのに十分な長さを有し、又は、該ウェブは、複数の電池構成要素(例えば、複数の電極アセンブリ又は複数の電極アセンブリ)を製造するために長い基板シートとして機能し得る。通常、ウェブの長さは、多くの複数の(例えば、少なくとも5、少なくとも10、又は少なくとも20の)前述のそのような構成要素を製造するのに十分である。様々な実施形態において、ガラス質Liイオン伝導性硫化物ガラスの固形電解質ウェブの長さは、20cmより長く、又は50cmより長く、若しくは、100cmより長く、あるいは、500cmより長く、又は1000cmより長い。予め決められた長さ及び幅の個別の固形電解質セパレータシートは通常、レーザにより(すなわち、レーザ切断により)、ウェブからある大きさにカットされる。
【0274】
様々な実施形態において、製造された状態のウェブは、一般的に順にレーザ切断によりスライスされ、そして供給ロールを形成するための回転が続く上質の中央部分及びより比較的低質の縁部を有する場合、本明細書においてマザーウェブと称され得る。
【0275】
リチウム金属電極アセンブリ又はサブアセンブリを製造するとき、ガラス質ウェブは、コーティングされた及びコーティングされていない領域が繰り返される部分を形成するために(例えば、マスク又はマスキング技術を用いることによって)、間欠的な態様においてリチウム金属又はタイレイヤを堆積するための基板として機能し得る。代替的に、個別のセパレータシート又は個別のタイレイヤがコーティングされた基板積層体は、ウェブからある大きさにカットされてよく、その後、リチウム金属堆積が続く。
【0276】
様々な実施形態において、ウェブのロール処理は、固形電解質シート製造(例えば、延伸処理)に則して行われる。図8を参照すると、連続ロールの形をする、固形電解質ガラスのガラス質ウェブ100Wを処理するための製造システム800をロールするシートが図示されている。シートツーロールの製造システム800は、ロール処理装置に則して構成される固形電解質シート延伸装置810(例えば、フュージョンドロー装置、スロットドロー装置、又は再延伸/プリフォームドロー装置など、溶融延伸又はプリフォームドロー装置600又は700のそれぞれ)を含み、該ロール処理装置は、1つ又は複数の駆動機構823(例えば、対向するカウンタ回転ローラのペア)と、ガイドローラ828と、無機ガラス質固形電解質ガラスウェブを連続ロール100Rに巻くためのテークアップ糸巻き826とを含む。好ましくは、概して電動式であるカウンタローラは、延伸された固形電解質シート又はエッジプロテクタの周縁領域と接触するように位置付けられ、この得策により、固形電解質シートの主要エリア部分(例えば、上質の中央部分)は、初期状態の表面状態条件に保持される(すなわち、接触されない)。回転ローラにより駆動され、固形電解質リボン(長いシート)100Wは通常、テークアップロール826と係合する前に、1つ又は複数のガイドローラ(例えば、ローラ828)に沿って搬送される。固形電解質ガラスのウェブ100Wは、支持されていない方式で搬送されてよく、又は、装置は、シートがテークアップロールに向け、及び/又は1つ又は複数の処理ステージ850(850i、850ii、850iii、850iv)内に搬送されると移動するシートを支持するための支持機構を含み得る。段階850iで、通常、固形電解質ウェブ100Wは、巻くためのテークアップロールと係合する前に、ガラスシートをアニールするために、炉又はホットゾーンを通って横断させられる。処理ステージは、低質の縁部を除去するよう構成される切断装置(例えば、レーザ切断機)でスリッティングする段階850iiを含んでよい。以下の本明細書において電極サブアセンブリのウェブ及び/又はリチウム電極アセンブリのウェブを製造することについてより詳細に説明されるように、固形電解質シートの長さ方向端部に沿ってプロテクタ構成要素を構成するための段階850iii、及び/又は、タイレイヤ及び/又は集電体層及び/又はリチウム金属層で固形電解質ガラスウェブ100Wの表面をコーティングするための材料層の堆積段階850ivを含む他の段階は考えられる。
【0277】
ガラス質ウェブの表面が互いに直接接触することを避けるために、インターリーフ804(すなわち、ウェブ表面を守るための自己支持材料層)は、インターリーフ供給ロール/テークオフロール812を介してウェブと共に巻かれてよく、インターリーフ804はガラスウェブの複数の層の間に介在する。インターリーフの適切な選択について注意を払うべきであり、特定の実施形態において、インターリーフ材料層804の対向する主要面は、並外れに滑らかである(例えば、インターリーフは、ポリオレフィン又はポリエステル層などの有機ポリマー層であり得る)。また、エッジプロテクタ素子の使用が考えられ、上述のように、このことは、物理的ダメージから固形電解質シートの端部を守り、ウェブが糸巻きに巻かれているとき、シート層の間のスペーサとしても機能し、この得策により、固形電解質シートの上質の中央部分は、初期状態の表面状態に維持される(すなわち、異質の固形表面により接触されない)。エッジプロテクタの使用は、インターリーフを必要とすることを回避し得て、様々な実施形態において、エッジプロテクタ素子は、電極アセンブリにおける封止構成要素として、又は電池セルにおけるスペーサとして後段において用いられ得るように多機能性である。
【0278】
ウェブが連続する硫化物系固形電解質シートである場合、シートツーロールシステム800は通常、実質的に湿気を有さない格納装置(不図示)内に含有され、特定の実施形態において、延伸装置ハウジングについて上述されたように、実質的に酸素を有さない。様々な実施形態において、ロール装置は、並外れに低含水量のドライルームに、又は非常に低湿気及び酸素含有量(例えば、<10ppm、好ましくは、<5ppm)の乾燥ボックスに収容される。
【0279】
代替的実施形態において、シート100は、毛管力の使用により、硫化物系固形電解質ガラスのほとんど無傷でモノリシックのガラス質シートとして製造され得る。該方法は、硫化物ガラス、熱分解グラファイト、又は他の材料の融点より高い融点を有する研磨されたガラス状炭素、研磨された金属、研磨されコーティングされた(特に陽極酸化された)金属、研磨されたガラスにより提供される2つの平滑板の表面の間の狭い隙間を浸透する、又はその中に注射される硫化物ガラス融液から、薄膜、シート、又はリボンとしてのシートの製造に基づく。得られたガラス質シートは、現状のままで、又は次の延伸作業のためのプリフォームとして、用いられ得る。
【0280】
選択の板材は、硫化物ガラス融液に化学的に安定し、反応性湿潤を示さない。板材及び面質の別の必須要件は、膜にダメージを与えることなく、必要として板面から形成された硫化物ガラス膜を分離するように決定される。これによって、選択の硫化物ガラスは、研磨された板面に接着されない。好適な実施形態において、鏡のような表面仕上げされた2つのガラス状炭素板が、隙間を形成する。
【0281】
ガラスは、坩堝に溶融されて滑らかな水平方向又は傾斜板(すなわち、平滑板)上に注がれ、又は、その端部の次の板面の限定されたエリア上に直接溶融される。別の平滑板が、溶融されたガラスに隣接して第1板の頂面上に配置される。代替的に、溶融されたガラスは、2つの鉛直板の間の隙間内に注がれる。板の間の狭い隙間の幅は、5μm~1mmの範囲にあり、スペーサにより固定される。いくつかの実施形態において、ガラスは、溶融されたガラスの本体の中に閉じ込められたガスに起因するガス気泡の形成を回避するために、真空下、溶融される。
【0282】
ガラス製造の手順は、i)ガラス溶融(ガラスの温度がT(ガラス融点)より高い温度まで増加される)、ii)隙間浸透(ガラス融液及び板の温度はTより高い温度で維持される)、iii)冷却(ガラス融液及び板の温度はT(ガラス遷移温度)未満にされる)、iv)ガラス分離といった4つの段階からなる。
【0283】
全ての動作は、不活性ガスの大気において、又は乾燥空気において、実行される。(図9に図示される)一実施形態において、板材上の溶融されたガラスの固有接触角は、90°より小さく、溶融されたガラスは、毛管力に起因して、2つの水平方向又は傾斜板の間の狭い隙間内に延伸される。この実施形態において、溶融されたガラスが2つの滑らかな水平方向板の間の狭い隙間に浸透する距離は、Washburn方程式により決められる。該距離は、処理中の大気における溶融されたガラスの間隙幅の平方根及び表面張力の平方根に直接比例し、溶融されたガラスのダイナミック粘度の平方根に反比例する。代替的実施形態において、板は、横方向に配置されることの代わりに、90°より小さい角度(鉛直方向より小さい角度)で傾斜され、板面に平行な重力の構成要素は、溶融されたガラスを隙間内に動かせる毛管力を助成する。
【0284】
図10Aに図示される)異なる実施形態において、固有接触角は、90°より小さく、板は、鉛直方向に配置され、溶融されたガラスは、上から隙間内に注がれる。この実施形態の変更例において、付加圧力は、ピストンで又は圧密不活性ガスで下方向において溶融されたガラスに加えられる。ここで、融液に加えられる重力、毛管力、及び外力は全て、下方向において作用し、溶融されたガラスによる隙間の浸透を助成している。
【0285】
代替的に、固有接触角は、90°より小さく、鉛直板の下端部は溶融されたガラス内に浸され、溶融されたガラスは、上向き方向に作用する毛管力に起因して隙間を浸透する。この実施形態の変更例において、付加圧力が、(図10Bに図示される)ピストンで又は(図10Cに図示される)圧密不活性ガスで下方向において溶融されたガラスの自由表面に加えられる。代替的実施形態において、処理は、溶融されたガラス内に浸されている複数のペアの板で長い坩堝を用いてスケールアップされる。
【0286】
図9に図示される)別の実施形態において、固有接触角は、90°より大きく、毛管力より大きい外圧は、溶融されたガラスを2つの水平方向(又は傾斜)板の間の狭い隙間内に押し進めるために、ピストンで又は圧密不活性ガスで流体分配装置により溶融されたガラスに加えられる。
【0287】
図10Aに図示される)異なる実施形態において、固有接触角は、90°より大きく、板は、鉛直方向に配置され、溶融されたガラスは、上から隙間内に注がれる。溶融されたガラスは、上向き方向において作用する毛管力と反作用する重力に起因して下方向において隙間を浸透する。この実施形態の変更例において、ピストン又は圧密不活性ガスは、下方向において、付加圧力を溶融されたガラスに加える。
【0288】
固有接触角が90°よりかなり大きく、板表面粗度により判断される特定の閾値値を超えた場合、融液は、限定された数の点のみにおいて板面と接触し(コンポジットウェッティング(composite wetting))、ガラス分離作業をより容易にするが、おそらく形成されたガラス表面の滑らかさに影響を与える。90°より大きい比較的低い接触角の値であったとしても、自然ディウェッティングは、様々な表面欠陥に起因して発生し得る。
【0289】
別の実施形態において、ガラス電解質膜を形成して両方の板から分離させた後に、一方の膜表面や両方の膜表面の何れかは、表面キズ及び欠陥を取り除くようにさらに溶融される。
【0290】
Hagen-Poiseuille方程式によると、狭い隙間の浸透に必要とされる圧力は、ガラス融液のダイナミック粘度と、浸透距離とに直接比例し、間隙幅の4乗冪に反比例する。いくつかの実施形態において、合理的な浸透回数を達成するために必要とされる力を低減するために、ガラス溶融粘度は、ガラスを、ガラス融点であるTより10~50、50~100、100~300℃高い温度まで加熱により低減される。
【0291】
代替的実施形態において、シート100は、表面溶融が続く粒子圧密により製造され得る。例えば、図4G図4Hを参照すると、粒子(すなわち、粉末粒子)は通常、機械的粉砕により準備され、(例えば、Tより高い温度において)共に圧密されてテープを形成し、このことの後に、処理された(すなわち、溶融された)表面層の範囲内の粉末粒子間境界を溶融するのに十分な表面溶融状態をもたらすように、該テープの少なくとも一方又は両方の主要面を加熱することが続き、第1主要側面を画定するガラス質層を有効に形成する。ガラス質層は通常、溶融をさせるようにテープ表面をフラッシュ加熱することにより(例えば、レーザ又はホット不活性ガスを介して)、形成され、そして、例えば、不活性ガスを流れさせることにより、表面をすぐに冷却する。好ましくは、ガラス質層は、異質の固体と接触することなく、表面上に形成される。電池セル又はリチウム電極アセンブリに組み込むとき、ガラス質層は、シートの内部内に位置する粉末粒子間の経路を中断し、それらが第1主要側面に達することを防ぎ、好ましくは、該層は、デンドライトをターンダウンするのに十分な質量を有する。好ましくは、ガラス質層は、(上述したような)液状表面を有し、これに対して、圧密された粉末粒子から構成されるシートの内部本体は、粒子境界及び内部ボイドで充満され得て、これによって、粉末圧密体から極めて所望されないが避けられない。図4Gを参照すると、複数の実施形態において、第1及び第2主要側の両方は、2つのガラス質層の間にサンドイッチ構造の粉末粒子圧密体を形成するように、表面溶融され焼き入れされることが考えられる。しかしながら、テープの単一側のみが表面溶融され、これによって、シートには、液状表面を持つガラス質層により画定される第1主要側面(例えば、101A)を有する粒子圧密体と粉末圧密体から構成される他の主要側面とがあることも考えられる。様々な実施形態において、圧密された粉末圧密体(又はテープ)は、ボイドの溶融を高め、シートの本体におけるミクロ細孔及び/又はナノ細孔の密集度を低くするように、真空下、又はヘリウム下、ホットプレスにより製造される。
【0292】
代替的実施形態において、個別の壁構造100又はシート100を延伸するためのガラスプリフォームは、坩堝から融液を金型に注ぐこと又は減圧され封止された石英製アンプルにおいてガラスの原材料バッチを溶融することなどにより、初期段階として、(例えば、長方形又は円筒状の)ガラス質ガラスブロック又は棒を形成する溶融焼き入れ方法を用いて処理されてよい。いったん冷却次第に固化されると、棒は通常、(例えば、ダイヤモンドブレード、又はワイヤーソー)若しくはレーザ切断機を用いて)アニールされて所望の壁の厚みにカットされ、及び/又は、幅方向/長さ方向にスライスされて、所望の形状及び面積寸法を生成する。いったんカットされると、カットされた状態の壁構造の表面は、所望の表面仕上げ(例えば、上にて画定されたようなRを有する液状)、好ましくは、光学的品質を達成するように、研磨段階(例えば、火炎研磨)を受け得る。シート100を製造及び/又は処理するために考えられる他の方法は、フロートガラス方法、シートのアップドロー、及び、ガラス質ガラスシートが溶融された状態から冷却されるとそれを熱間圧延するなどのローリング方法のバリエーションを含む。例えば、精密ガラス成形(例えば、超精密ガラス圧密)は、個別の壁構造又は連続シート又はウェブの後段の延伸のためのプリフォームを形成するために用いられ得ることが考えられる。成形処理は、ガラス質ガラス構造を形成するべく、所望の組成のガラス質/ガラスブランクを成形ツール内に搭載することと、(例えば、赤外線ランプを用いて)金型を加熱することと、作業温度(例えば、Tより高い、又はガラスのTと軟化点との間の温度)に達すると、金型を閉じることとを含む。シート100のプリフォームドローを参照すると、前述の溶融/焼き入れ坩堝方法又は精密ガラス成形技術は、ガラス質プリフォームを製造するために、特に精密ガラス成形に有用な処理であり得る。精密ガラス成形処理はまた、円形、正方形、又は長方形の形状因子を有する、100μm以下の厚みの平らなシートのバッチ製造に適し得る。
【0293】
図6Eを参照すると、代替的実施形態において、Liイオン伝導性の固形電解質シート100又はそれらのマザーシートは、Liイオン伝導性ガラスのガラス質シートを形成するように、Liイオン伝導性ガラスの融液を流動層上に加えることにより製造され、溶融されたガラスシート667が、流動層665の表面上に固化され、その後、床から除去されて、フリースタンディングのガラス質シート100を生成することが考えられる。様々な実施形態において、固化された状態のガラス質シートは、そのように形成され、電池使用可能な大きさの個別の固形電解質リボンを生成するようにスライスされカットされたマザーシートとして機能し得る。様々な実施形態において、流動層の組成は、溶融されたガラスシートと実質的に非反応性であるように選択される。しかしながら、本発明は、そのように限定されず、他の実施形態において、溶融されたガラスシートは、流動層と接触して反応し、固化されたガラス質ガラスシートに強く接着しない、又は、サンドブラスチング又は化学的に反応させ除去することを含み、後段の処理において除去され、及び/又は機械的研削/研磨により除去され得る固形クラスト層をもたらすことが考えられる。様々な実施形態において、流動層自体が溶融された材料層である(例えば、スズなどの溶融された金属、又は金属/半金属合金、若しくは溶融された塩類)。また他の実施形態において、溶融されたガラスが加えられて固化された床自体は、固体である。様々な実施形態において、固体の床は、非晶質金属又は非晶質グラファイト(例えば、ガラス質炭素)又は研磨された金属、若しくは、硫化物ガラスの溶融温度より高いTを有する非反応性ガラスである。
【0294】
様々な実施形態において、前述の固形電解質ガラスシートは、溶融延伸、プリフォームドロー、又は溶融焼き入れ/切断により処理されたそれらを含み、表面トポグラフィを仕上げる(例えば、うねり及び/又は表面粗度を最小化にする)ように、例えば、平坦化及び/又は研磨(例えば、火炎研磨)段階などの後製造処理を受け得る。好ましくは、ガラスシートは、後製造処理の後に、<5μmでより好ましくは≦1μmの平坦度と、<5.0μmで好ましくは≦1.0μmのうねりと、±5μmで好ましくは±0.2μmの厚みの変動と、R<1.0μmで好ましくはR<0.5μm、より好ましくはR<0.2μm(例えば、R≦0.05μm、又はR≦0.05μm)、またさらにより好ましくはR≦0.01μmの平均表面粗度とを有する。様々な実施形態において、固形電解質シート100は、固体としてのその未使用状態において前述の特性(すなわち、平坦度、滑らかさ、均一な厚み)のうちの1つ又は複数を達成する。
【0295】
様々な実施形態において、フリースタンディングの固形電解質シート100は、リチウム金属電極アセンブリの形成のための基板として機能する。以下の本明細書においてより詳細に説明されるように、アセンブリは、リチウム金属層を有する密接な固体状態のインターフェイスを有する固形電解質シート100から構成される。様々な実施形態において、固体状態のインターフェイスを形成する前に、本明細書において電極サブアセンブリと称されるものを製造することは、有用であり、それは実際上、インターフェイス機能を高めるよう機能する材料層でコーティングされた固形電解質シート100から構成される基板積層体である。
【0296】
図11A図11Bを参照すると、本開示に係る電極サブアセンブリ1100A~Bが図示され、概して、スタンドアローンのリチウム金属電極アセンブリを製造するための構成要素として機能し、いくつかの実施形態において、また本開示に係る電池セル内に直接組み込まれ得る。図示されているように、サブアセンブリ1100A~Bは、スタンドアローンのリチウム金属電極アセンブリを製造中に、又は、電池セルの充電の過程中に、電気化学的に効率のいい、リチウム金属層とのインターフェイスを生成するための表面を提供する材料層1101により直接接触されカバーされる固形電解質シート100のフリースタンディング基板積層体である。
【0297】
材料層1101は、固形電解質シート100の表面101Aと隣接して直接接触する内部表面1101iと、サブアセンブリ上の外部環境に対向する外部/露出された表面1101iiとを有するように特徴付けられ得る。通常、材料層1101は、それ自体がコーティングされ、形成された又は接着された固形電解質シート100より著しく細い。様々な実施形態において、材料層1101又はそれらの層の部分は、いったんリチウム金属層がその上に加えられ又は堆積されると(例えば、合金化により)実際に消える過渡層である。
【0298】
上にて言及されたように、電極サブアセンブリ1100A-Bは、本開示のリチウム金属電極アセンブリ又は電池セルを製造するためのスタンドアローンの構成要素である。しかしながら、電極サブアセンブリそれ自体は、容量付き電極ではなく、これによって、電池セルにアンペアアワー容量を提供するための電気活性材料(例えば、リチウム金属)を含有しない。従って、電極サブアセンブリ1100A~Bは、製造のための特別の構成要素保管寿命及び取り扱い可能性を有する。
【0299】
図11Aを参照すると、様々な実施形態において、電極サブアセンブリ1100Aは、固形電解質シート100上にコーティングされた材料層1101(通常、均一な組成を有する単層)の2重層の積層体である。図11Bを参照すると、様々な実施形態において、サブアセンブリ1100Bは、2つより多くの層から構成され、例えば、材料層1101自体は、シート100の第1主要側面101A上に配置される2つ以上の材料層の多重層であり得る(例えば、固形電解質シート100と直接接触するタイレイヤである1101a、及び該タイレイヤと直接接触する集電体層である第2層1110bである)。
【0300】
様々な実施形態において、材料層1101は、シート100とリチウム金属層との間の電気化学的に効率のいいインターフェイスを生成するために化学的に機能的なタイレイヤコーティングであり、また、保管及び操作中にダメージからある程度の保護を提供し得る。従って、タイレイヤは、結合を高めるために適した組成及び厚みを有する。特定の実施形態において、タイレイヤは、Li金属と接触して反応的に合金化され、電気化学的に動作可能なインターフェイスを形成する。タイレイヤは、好ましくは過渡層であり、その表面上にリチウム金属の形成又は堆積ができ次第、変換して本質的に消える。様々な実施形態において、タイレイヤは、十分に薄く、及び/又は、リチウム層は、(例えば、合金反応を介して)タイレイヤを完全に溶融するのに十分な質量(すなわち、厚み)を有し、好ましくは、タイレイヤの元素は、そのような少量であり、リチウム金属層にわたってささいなものに実質的に分散される。
【0301】
様々な実施形態において、保護性のタイレイヤ701は、リチウム金属層と固形電解質シート100との間の電気化学的に動作可能なインターフェイス、特に、電池セルにおいてリチウム金属をめっきしストリッピングするための電気化学的に効率のいいインターフェイスを形成するために適する金属又は半金属のコーティングである。様々な実施形態において、タイレイヤは、Al、Ag、In、Au、Sn、Si、又は同様のものなどの金属又は半金属、又は合金又は接触するリチウム金属により合金化する又は合金化されることが可能な金属又は半金属の金属間の組み合わせである。
【0302】
様々な実施形態において、タイレイヤ1101は、シート100の第1主要側面101A上に、物理蒸着により(例えば、蒸着により)堆積される金属又は半金属コーティングである。タイレイヤ1101は、接触するリチウム金属により実際に完全に溶融されるように十分に薄い過渡膜であり、好ましくは、リチウム金属層にわたってアトミックに分散される。様々な実施形態において、タイレイヤ1101は、室温において接触するリチウム金属と完全に合金化するような組成及び厚みを有し、いくつかの実施形態において、加熱は、合金化及びアトミックな放散を容易にするために適用され得る。様々な実施形態において、タイレイヤの厚みは、0.05から5μmの範囲にあり、より一般的には、0.05から1μmの間である(例えば、約0.05μm、又は0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、又は約1.0μm、又は2.0μm、3.0μm、4.0μm、又は約5.0μm)。
【0303】
タイレイヤは、本開示のリチウム電極アセンブリ又は電池セルを形成するとき、固形電解質シートをリチウム金属層(例えば、押し出されたリチウム膜)と一致させるサブアセンブリ表面を提供する。特に、Li金属との反応的に合金化することによって、タイレイヤは、電気化学的に動作可能なインターフェイスの形成を容易にする。さらに、タイレイヤは過渡材料層であり、いったんリチウム金属層が適用され又は形成されると、タイレイヤは、Liと合金化すると、実際に消える。
【0304】
図11Aを参照すると、様々な実施形態において、リチウム金属層は、リチウム金属電極アセンブリ(例えば、タイレイヤ上にホットロールされたリチウムホイル)の製造中に、外部タイレイヤ表面1101ii上に加えられる。他の実施形態において、リチウム金属層は、電極サブアセンブリが組み込まれている電池セルの初期充電中に、内部タイレイヤ表面1101iiに隣接するリチウム金属を電気化学的にめっきすることにより形成される。電池セルに電気化学的に形成されているか、又はリチウム金属電極アセンブリを形成するように加えられ又はコーティングされたことでリチウム金属は、タイレイヤと相互作用して、形成された状態の又は加えられたリチウム金属層と、固形電解質シート100の第1主要側面101Aとの間に密接な電気化学的に動作可能なインターフェイスを形成する。
【0305】
図11Bのサブアセンブリ1100Bを参照すると、様々な実施形態において、材料層1101は、Li金属を有さない多重層(例えば、2重層)である。様々な実施形態において、2重層1101は、シート100の第1主要側面101Aと直接接触するタイレイヤ1101aと、タイレイヤと直接接触する集電層1101bとから構成されている。タイレイヤは、シート100と集電層1101bとの間で挟まれている。様々な実施形態において、タイレイヤは、固形電解質シート100上で蒸着されてよく、その後、集電層1101bをタイレイヤ1101a上に直接加えることが続く。他の実施形態において、タイレイヤは、集電体層上で蒸着され、多重層がそのように形成されてシート上に加えられることが考えられる。タイレイヤ1101aと集電層1101bとの間に配置される1つ又は複数のさらなるタイレイヤコーティングなどの複数のタイレイヤコーティングも本明細書において考えられる。例えば、さらなるタイレイヤは、集電層1101bと直接接触するLi金属インターフェイスを高め、改善するために利用され得る。
【0306】
代替的実施形態において、集電層は、タイレイヤが存在しない状態で、シート表面101A上に直接加えられ得ることが考えられる。
【0307】
集電体層は、薄い金属箔、又はポリマー基板上の薄い金属膜、若しくはシート表面101A上に直接又はタイレイヤを介して間接的に加えられるコーティングであってよい。例えば、薄いCu又はNiホイル、又はポリエチレンテレフタレート(PET)基板上のCu膜の積層体である。集電体は、Li金属と接触して実質的に非反応性で、通常、金属(例えば、Cu又はNi)の有効な電流コレクションを提供する十分な電子伝導率を有する材料層であるべきである。
【0308】
様々な実施形態において、集電層は好ましくは固形電解質シート100より著しく細く(例えば、シート100の厚みの1/5以下、又は1/10以下)、好ましくは、10μm以下の厚みである。様々な実施形態において、集電材料層は、<20μm厚であり、通常、<15μmであり、より好ましくは、≦10μmであり、さらにより好ましくは≦5μm厚である(例えば、10から5μm厚の間であり、例えば、約5μm、又は4μm、又は3μm、又は2μm、又は1μm厚である)。
【0309】
様々な実施形態電極において、電極サブアセンブリ1100Aは、本開示のスタンドアローンのリチウム金属電極アセンブリを製造するための基板構成要素として機能する。他の実施形態において、電極サブアセンブリ1100Aは、以下により詳細に説明されるように、Li金属をまったく有さない、リチウムのない負極としてリチウム電池セル内に直接組み込まれ得る。
【0310】
様々な実施形態において、電極サブアセンブリは、(上述したように)ガラスウェブ100W上で材料層1101(例えば、タイレイヤ及び/又は集電体層)を直接処理することにより製造され、ガラスウェブは、積層体のための基板として機能する。様々な実施形態において、材料層1101は、連続する又は間欠的な態様においてガラスウェブにコーティングされ又は接着されてよく、ウェブ積層体は、本明細書において電極サブアセンブリウェブと称される。
【0311】
図12Aを参照すると、連続ソースロール1200Rの形をする電極サブアセンブリウェブ1200Wを処理するためのシートツーロール製造システム1200Aが図示されている。様々な実施形態において、図8を参照して上述されたように、サブアセンブリウェブ1200Wは、ガラス100Wの連続ウェブとして、タイレイヤ及び/又は固形電解質シート100の延伸の後段、かつそれに則しての集電体層1101で、Liイオン伝導性ガラス100Wのウェブをコーティングすることによって、形成される。タイレイヤ及び/又は集電体層は、処理ステージ850iv(図8に示されているように)又はコーティング段階850iv(図12Aに示されている)を介して、ウェブ上にコーティングされる。様々な実施形態において、コーティング1101は、タイレイヤ1101a及び集電体層1101bの多重層であり、そのような実施形態において、コーティング段階850ivは、層毎に対して1より多くのコーティング部を組み込むこととして理解される。
【0312】
様々な実施形態において、電極サブアセンブリの製造は、i)延伸装置810を介して(上述したように)この固形電解質シート100Wの連続ウェブを形成すること、ii)コーティング段階850ivに入る一連の任意選択の段階(アニール850i、スライシング850ii、及び端部保護850iii)を通して、形成された状態の/延伸された状態の連続する(例えば、自己支持型層の形をする)固形電解質ウェブ100Wを通過させることであって、ウェブ100Wの第1主要側面が、好ましくは初期状態であり、上述したようにタイレイヤ及び/又は集電体層でコーティングされる(例えば、真空蒸着を介して)、こと、及びiii)保管、搬送、及びリチウム電極アセンブリ及び/又は電池セルの後段RR製造又はロールツーシート工程に適した電極サブアセンブリソースロール1200Rを形成するように、テークアップ糸巻き1206を介してコーティングされた固形電解質ウェブを巻くことを伴う。
【0313】
インライン処理を達成するために、段階850ivのコーティング部は、差動的にポンピングされたチャンバ(不図示)に配置されるべきであり、タイレイヤ(例えば、薄いアルミニウム又は銀層)及び/又は集電体層(例えば、銅層)が堆積される。固形電解質シートの連続ウェブを巻くことと類似に、任意選択的に連続ロール1200Rを形成するようにサブアセンブリウェブ1200Wを巻くことは、隣接面間の接触を防ぐようにインターリーフ1204を介在させることを伴う。代替的に、存在する場合、ウェブ100W上のエッジプロテクタ素子は、スペーサとして機能し得る。
【0314】
上述したように、材料層1101(例えば、タイレイヤ及び/又は集電体)は、固形電解質ウェブ100W上で、連続コーティングとして、形成され得る(これによって、コーティングされたウェブ100Wの連続積層体を形成し、又は、図12Bを参照すると、層1101は、コーティングされた領域及びコーティングされていない領域の繰り返される明確な部分(図示されているように)を生成するように間欠的にコーティングされ得る)。個別電極サブアセンブリが、コーティングされた領域から形成され、ウェブの幅方向及び/又は長さ方向寸法に沿ってカットし、好ましくはレーザ切断することによって、サブアセンブリウェブ1200Wから切除され得る。切断作業がコーティングされていない領域1205の範囲内で実行されることで、個別の/個々の電極サブアセンブリ1200Zは、タイレイヤ及び/又は集電体層を通ってカットする又は切り目を入れる必要がなく、切除される。
【0315】
図12Cを参照すると、他の実施形態において、サブアセンブリソースロール1200Rの製造は、固形電解質シート100Wの連続ウェブのRR処理を伴い、供給ロール806として既に構成されており、本明細書において、サブアセンブリウェブ1200W及び最終的にはロール1200Rを製造するためのソースロールとして用いられている。処理は、ガラス質ウェブ100Wの第1主要側面を露出させるためにソースロール800Rを巻き戻す段階と、上述したように、コーティング段階850ivへ連続固形電解質シート(すなわち、ウェブ100W)を搬送/通過する段階とを伴う。電極サブアセンブリウェブ1200Wは、これによって形成され、リチウム電極アセンブリ又は電池セルの後段RR製造のための供給ロール1200Rを生成するように、そして糸巻き1206上に巻かれる。上述と類似に、様々な実施形態において、材インターリーフ1204は、ウェブの隣接層の間の直接接触を防ぐように、ロール内に組み込まれ得る。ガイドローラ1208i-ii、及びインターリーフ供給ロール/テークオフロール1212i-iiは、インターリーフ804及び1204をそれぞれ除去し導入するための機構を提供する。
【0316】
本開示によると、上述したように、電極サブアセンブリ1100A~B(図11A図11Bを参照する)、又は(タイレイヤコーティングが存在しない)シート100は、本開示のリチウム金属電極アセンブリにおけるLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ層として利用され得る。
【0317】
図13Aを参照すると、スタンドアローンの電極アセンブリ1300は、リチウム金属層1310と任意選択の集電層1312とから構成されるリチウム金属構成要素層1320のための基板として機能する固形電解質シート100から構成されるリチウム金属電極アセンブリである。リチウム金属電極アセンブリ1300に対してスタンドアローンという用語の使用により、電極アセンブリは、正電気活性材料を有さない個別の電池構成要素であり、電池セルの外側のフリースタンディングの構成要素として存在することを意味する。
【0318】
電極アセンブリは概して、形成される固形電解質シートの形状及び大きさを有する。様々な実施形態において、リチウム金属電極アセンブリは、長さ方向及び幅方向寸法と関連端部とを有する長方形状をする。特定の実施形態において、固形電解質シートがリボン状である場合、長さ方向寸法は、幅方向寸法より著しく長く、例えば、長方形状のリチウム金属電極アセンブリ(それ自体がリボン状)は、自体が形成される固形シートの長さ対幅の面積アスペクト比と実質的に一致する長さ対幅の面積アスペクト比を有する。例えば、Li金属電極アセンブリは、2より大きく、3より大きく、又は5より大きい面積アスペクト比(例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、又は約10の面積アスペクト比)を有する。様々な実施形態において、面積アスペクト比は、少なくとも2であり、Li金属電極アセンブリの長さは、≧5cm、≧10cm、≧15cm、又は≧20cmである。
【0319】
様々な実施形態において、スタンドアローンのリチウム金属電極アセンブリ1300は、自体が配置されている電池の定格容量に対応する少なくとも十分な量のリチウム金属を含有し、特に、正極の定格面積アンペアアワー容量と一致する又は超えるのに十分である。例えば、様々な実施形態において、正極は、約1mAh/cm、約1.5mAh/cm、約2mAh/cm、約2.5mAh/cm、約3mAh/cm、約3.5mAh/cm、約4mAh/cm、約4.5mAh/cm、約5mAh/cmの面積容量を有し得て、Li金属層1310は、少なくとも5μm、7.5μm、10μm、12.5μm、15μm、17.5μm、20μm、22.5μm、又は少なくとも25μmのそれぞれの厚みを有する。
【0320】
他の実施形態において、スタンドアローンの電極アセンブリ1300におけるリチウム金属の量は、電池セル内へ組み込む前に、電池の定格容量に対応するのに不十分である。例えば、電池の定格容量は、スタンドアローンの電極アセンブリにおけるLi金属容量より約50%大きく、又は約100%大きく、又は約150%大きく、又は約200%大きく、又は約250%大きく、又は約300%大きく、又は約350%大きく、又は約400%大きく、又は約450%大きく、又は約500%大きい。
【0321】
様々な実施形態において、電池セル内へ組み込む前に、アセンブリにおけるリチウム金属の量は、放電容量に対応するのに不十分である。様々な実施形態において、リチウム金属層1310は、15μm厚より小さく(例えば、5から10μmの間)、リチウム金属電極アセンブリが最終的に意図される電池セルの定格面積容量は、>3mAh/cm、又は>4mAh/cm、又は>5mAh/cm、又は>6mAh/cm、又は>7mAh/cmであり、又は、リチウム金属層1310は、20μmより小さく(例えば、5から20μmの間、例えば、約10μm)、リチウム金属電極アセンブリが最終的意図される電池セルの定格面積容量は、>4mAh/cm、又は>5mAh/cm、又は>6mAh/cm、又は>7mAh/cmである。様々な実施形態において、電極アセンブリが使用される予定の電池の正極は、1mAh/cmから2mAh/cmの間の面積容量を有し、スタンドアローンのアセンブリにおけるリチウム金属厚みは、5μmより小さく、又は、正極は、≧3mAh/cmの面積容量を有し(例えば、約3mAh/cm、約3.5mAh/cm、約4mAh/cm、約4.5mAh/cm、又は約5mAh/cm)、リチウム金属厚みは、≦10μmであり、又は、正極は、≧5mAh/cmの面積容量を有し(例えば、約5mAh/cm、約6mAh/cm、又は約7mAh/cm)、リチウム金属厚みは≦20μmである。
【0322】
特定の実施形態において、アセンブリ1300において、固形電解質シート100の表面上のLi金属の量は、正極又はそれ自体が使用される電池の定格容量に対して不十分である。例えば、電極アセンブリにおけるLi金属層は、1μm厚より小さく、電池の定格容量は、1mAh/cmより大きい。
【0323】
様々な実施形態において、リチウム金属層1310は、蒸着又はスパッタリング堆積など、物理蒸着(PVD)により堆積される。例えば、Li金属層1310が蒸着層である場合、通常、5から30μm(例えば、約5μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、又は約30μm)の範囲の厚みを有する。特定の実施形態において、Li金属層は、蒸着されており、1μmより小さい厚みを有し、主にシート100の表面101Aに集電体を取り付けるための結合層として用いられる。蒸着リチウム金属は、シート100上に直接又は表面101A上の過渡タイレイヤを介して堆積され得る。
【0324】
Li金属層1310は、リチウムホイル又はリチウム膜をシート100の第1主要側面101Aに接着することにより(例えば、熱間圧延によるなど、積層を介して)、固形電解質シート100(又は、タイレイヤがコーティングされたシートのサブアセンブリ)に取り付けられてよい。様々な実施形態において、Li金属層1310は、約5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、又は50μm厚の厚みのリチウム金属層を有する押し出されたLi箔又は集電基板上のLi膜であり得る。好ましくは、Li金属層1310は、新たな表面を有する。例えば、固形電解質シート表面101A上に配置される直前に新たに押し出されたLi箔である。周囲環境への新たに押し出されたホイルの露出は、固形電解質シート又はタイレイヤコーティング(存在する場合)と接触する前に、最小化にされるべきである。新たに押し出されたものではない場合、リチウムホイルは、新たに露出され、そして直ちにシート100の第1主要側面101Aと一致させられる表面を生成するように処理され(例えば、剛毛でスクラビングされ)得る(例えば、サブアセンブリが使用される場合、硫化物ガラス表面又はタイレイヤ表面上直接に)。
【0325】
押し出されたリチウムホイル又は新たにスクラビングされたリチウム金属表面を指す場合、「新たな」という用語の使用により、後押し出し/後スクラビングの周囲環境への露出時間は、リチウム金属表面上に非常に厚い抵抗膜(通常、抵抗膜は、酸化物、水酸化物、及び炭酸塩のある組み合わせである)を形成することを防ぐように十分に限定されることを意味する。概して、ホイルが押し出され又はスクラビングされた周囲環境は、<100ppm、好ましくは<50ppm、より好ましくは<10ppmの含水量を有し、好ましくは、酸素含有量も低い(例えば、<100ppm、好ましくは<50ppm、より好ましくは<10ppmである)。
【0326】
Li金属層が形成され又は処理され得る周囲環境の極めて低い湿気及び酸素含有量と関係なく、本明細書において新たなもの(例えば、新たに押し出され又は新たに処理されたもの)として見なされるために、押し出し(又は表面処理)と、固形電解質シート100上の押し出されたリチウムホイルの配置/位置付けとの間の露出時間は、数分に限定されるべきであり、通常、<10分、好ましくは<1分、より好ましくは、<30秒である。複数の実施形態において、押し出し(又は表面スクラビング)と固形電解質シート表面上のLi箔の配置との間の期間は、約1分-3分であり、又は60秒より短く、又は30秒より短く、又は20秒より短く、又は10秒より短い(例えば、約10又は5秒以内の押し出し/表面スクラビング)ことが考えられる。
【0327】
様々な実施形態において、表面101Aは、Li金属膜又はホイルとの界面接触を高める目的のために、例えば、研磨スクラビング又は剛毛ブラスト(例えば、表面上に粗粒を散布すること)により、(粗面化段階を介して)滑らかな表面を有する状態からより粗い表面に意図的に変換される。例えば、様々な実施形態において、第1主要側面は、10倍以上でその粗さを増大するように変換され、例えば、<0.05μmのRを有する初期の滑らかな表面を有する状態から、>0.1μmのRを有し、又は<0.1μmのRから>1μmのRまでのより粗い表面に変換される。
【0328】
特定の実施形態において、積層段階の直前に、又はそれと同時に、集電体の表面上に薄いリチウム金属結合層(例えば、1μm厚以下の結合層)を形成しつつ、自己支持型集電体層は、層をシートにローラ積層することにより、フリースタンディングガラス質固形電解質シートの第1主要側面に接着される。様々な実施形態において、リチウム金属結合層は、電池セルにおける電気化学的に堆積されたLi金属の均一性を高めるためのシード層(例えば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0μm厚の結合層)としても機能する十分な厚みを有する。
【0329】
例えば、図13Bを参照すると、スタンドアローンのリチウム金属電極アセンブリ1300は、リチウム金属を蒸着させること、又はそれ自体(1312)とシート100との間にLi金属蒸気を散布すること組み合わせて、集電層1312を固形電解質シート100上に直接ローリング又は配置することにより形成され得る。この技術は、個別の自己支持型集電層を固形電解質シートに結合するための機構を提供する。例えば、個別の集電層1312は、薄い銅箔又は高分子基板上にコーティングされたCu金属の積層体である。代替的実施形態において、不図示で、集電体層1312は、Li金属蒸気の存在において固形電解質に積層する前に、その表面に既に存在する、元から存在するリチウム金属層を有し得ることが考えられる。
【0330】
図13Cを参照すると、硫化物ガラスシート100の第1主要側面101A上に、Li金属ブロック1355を圧力散布することにより、リチウム金属電極アセンブリ1300を製造するための別の工程が図示される。加熱と共に実行され得る散布作業は、固形電解質シートに対して新たなリチウム表面との即時接触をもたらすように抵抗膜を分離させる。リチウム金属ブロック1355は、固形電解質シート100の総面積と形成されるべきリチウム金属層の所望の厚みとに対して大きさが決まり、好ましくは、広げた状態のリチウム金属層は、実質的に均一な厚みを有する(例えば、約5μm、又は約10μm、又は約15μm、又は約20μm、又は約25μm、又は約30μm、又は約35μm、又は約40μm、又は約45μm、又は約50μm)。いくつかの実施形態において、広げた状態のリチウム金属層1310は、約5から20μmの薄い層であり、より厚いLi箔が、そして続いてその表面に接着されて、電極アセンブリにより高いLi金属容量を与える。
【0331】
スタンドアローンのLi金属電極アセンブリ1300がリチウム金属層を含む一方、上述され、図13Dに図示されているように、本開示は、電極サブアセンブリの形をするリチウムフリー電極も考えられる。そのような実施形態において、リチウム金属層1310は、タイレイヤ及び/又は第1主要側面101Aに隣接する集電体層上にリチウム金属を電気化学的にめっきすることにより、電池セルの内側に形成される。様々な実施形態において、アセンブリは、スタンドアローンの電極アセンブリにおけるLi金属の量が不十分である場合(例えば、1μm厚より小さいシード層)、リチウムフリーとして実質的に見なされる。
【0332】
図13Eを参照すると、本明細書において、カプセル化されたスタンドアローンのリチウム金属電極アセンブリ1300Eと称されるものが図示されている。様々な実施形態において、カプセル化アセンブリ1300Eは、第1固形電解質シート100と対向するバックプレーン構成要素1330との間でカプセル化されたリチウム金属構成要素層1320から構成され、その両方は、製造、保管、及び動作中にそれらが接触する液体を実質的に通さず、好ましくは、該液体とは非反応性である。リチウム金属構成要素層1320は、シート100と直接接触するLi金属層と、以下にてより詳細に説明されるような、バックプレーン1330と隣接する1つ又は複数の任意選択の層とを含む。固形電解質シート100及びバックプレーン構成要素1330はそれぞれ、Li金属電極アセンブリの主要外部の対向する表面を画定する。アセンブリのリチウム金属構成要素層を指す場合カプセル化という用語の使用により、固形電解質シート及びバックプレーン構成要素は、隣接機械力にありリチウム金属構成要素層と接触することを意味する。従って、カプセル化の結果として、リチウム金属構成要素層1320、特に、リチウム金属層は、電池セルに組み込まれたとき、圧力をスタックすることを受け得る。
【0333】
いくつかの実施形態において、カプセル化されたリチウム金属電極アセンブリ1300Eは、両面であり、バックプレーン構成要素は、第2固形電解質シートである(例えば、実質的に第1固形電解質シートと同一である)。他の実施形態において、バックプレーン構成要素は、Liイオン伝導体ではなく、カプセル化されたリチウム金属電極アセンブリは、本明細書において、片面と称され、例えば、バックプレーンは、集電体機能性を有する実質的に不活性材料層又は電子的に伝導性材料層であってよい。片面又は両面という用語の使用により、電極アセンブリの片側又は両側は、搬送を通して(電気的移動を介して)、Liイオンに対応するかに関するものを意味する。
【0334】
図13Fを参照すると、いくつかの実施形態において、カプセル化された電極アセンブリ1300Fは、両面であり、バックプレーン構成要素は、第2固形電解質シートである(100-2と示される)。両面である場合、リチウム金属構成要素層1320は一般的に、それぞれが1310-1及び1310-2である第1及び第2リチウム金属層の間に配置される集電層1312から構成される3重層である。
【0335】
様々な実施形態において、カプセル化された両面リチウム金属電極アセンブリは、図13Aを参照して上述したように、第1及び第2Li金属電極アセンブリを提供し、単一集電層1312の間のその2つのアセンブリを組み合わせることにより、製造され、又はその2つのアセンブリがそれぞれ、それら自体の集電層を提供された場合、それらは、1つの上に別の1つを配置することにより(すなわち、集電体ツー集電体)、組み合わされ得る。
【0336】
図13Gを参照すると、他の実施形態において、バックプレーン構成要素は、Liイオン伝導体ではなく、アセンブリ1300Gは、カプセル化され、片面である。様々な実施形態により、片面である場合、バックプレーン構成要素1330が不活性材構成要素層であってよく、又は集電体機能性を有する電子的に伝導性であってよい。例えば、不活性バックプレーン構成要素1330は、高分子層(剛性又は可撓性)であってよく、又は、電子的に伝導性である場合、バックプレーンは、アセンブリの外部表面と、リチウム金属層と電子通信する(例えば、リチウム金属層と直接接触する、又はCu集電層と直接接触する)電子的に伝導性金属層とを提供する少なくとも1つのポリマー層の多重層であってよい。
【0337】
様々な実施形態において、カプセル化されたアセンブリは、長さ方向及び/又は幅方向寸法に沿って端部封止されてよい。その端部に沿って完全に封止された場合、アセンブリは、封止されたと見なさ、好ましくは、密封し、リチウム金属層は、外部環境から隔離される。
【0338】
図13Hを参照すると、様々な実施形態において、端部シール(例えば、示された長さ方向端部)は、固形電解質シート100-1の周縁を、固形電解質シート100-2の周縁にフュージョン又はピンチ封止するにより、もたらされ得る。シート100-1及び100-2の間の直接結合は、加熱及び/又は加圧で実行され得る。例えば、一方又は両方のシートの周辺をTより高い温度まで、より一般的には軟化温度より高い温度まで加熱(例えば、レーザを用いて端部を加熱)し、圧密/圧縮(すなわち、締め付け)することにより、シールをもたらし、又は、Tより高い温度まで加熱し、シートが互いにフュージョンシールすることを許容する。
【0339】
他の実施形態において、図13Iに示されているように、端部シールは、固形電解質シート100-1及びバックプレーン構成要素1330とインターフェイスする個別のサイドウォール構成要素1335を含み得る。個別のサイドウォール構成要素は、長さ方向端部に沿って配置され、そして、シート100及びバックプレーン構成要素1330(例えば、第2固形電解質シート)に加熱/溶融封止される不活性ポリマー又はガラスワイヤであり得る。端部が、フュージョン密封可能なガラスで封止され作られた場合、それは概して、Liイオン伝導体(例えば、非伝導性硫化物ガラス)ではない。他の実施形態において、個別のサイドウォール構成要素1335は、エポキシシールであってよく、例えば、粘性流体として長さ方向端部に沿って加えられ、そして(例えば、加熱で)硬化されるエポキシである。
【0340】
様々な実施形態において、アセンブリの長さ方向端部は、上述したように、封止されてよく、幅方向の端部は、類似に封止される(例えば、全ての端部はフュージョン封止される)。他の実施形態において、概して著しくより短い長さを有する幅方向の端部は、異なる方式で封止されてよい。例えば、両面カプセル化された電極アセンブリにおいて、固形電解質シートの長さ方向端部は、互いにピンチ又はフュージョン封止されてよく(上述したように)、幅方向端部は、エポキシシール又は非伝導性ガラス又は高分子ワイヤシールなどの個別のサイドウォール構成要素を介して封止される。
【0341】
図13Jを参照すると、様々な実施形態において、個別のサイドウォール構成要素1335は、図1Gに図示されているような端部保護構成要素105であり、上述したように、シートを端部クラックから守る高分子ブラケットであってよい。アセンブリが両面である場合、端部保護構成要素は、直接又は間接的に、互いに接着されてよい。例えば、互いに直接加熱/溶融結合され(構成要素105が加熱/溶融密封可能である場合)、又は、そうでなければ、エポキシなどの個別の結合材を用いて互いに接着される。
【0342】
図13H図13Jを参照すると、代替的な固体状態の負極アセンブリの実施形態において、リチウム金属構成要素層1320は、Li金属(例えば、インターカレート炭素)の約1V以内の電位を有する電気活性材料を含む代替的な電気活性構成要素層に置き換えられる。様々な実施形態において、代替的な負電気活性構成要素層は、i)構成要素層の電気活性材料として、インターカレート炭素、ケイ素の粒子、又はそれらのある組み合わせ、ii)該層内においてイオン伝導率を有する硫化物ガラス/ガラス-セラミック粉末の粒子、及びiii)任意選択的に、電子伝導率を高めるための希釈剤としてある量のカーボンブラック粒子を含む粉末粒子複合材として形成される。固体状態の粒子複合材層1320は、固形電解質シート100-1及び100-2(図13H図13Iに示されているように)に直接積層され、上述したように、封止された両面固体状態の負極アセンブリを生成するよう、端部封止されてよい。以下においてより詳細説明されるように、この代替的な封止された固体状態の負極アセンブリは特に、(例えば、Li金属に対して3.5Vのより高く、好ましくは4V又は4.5Vのより高い電位を有する)高電圧Liイオンインターカレート正極と組み合わされた場合、ハイブリッド電池セルの使用について有益である。
【0343】
他の実施形態において、リチウム金属電極アセンブリは、本明細書において拘束されていないバックプレーン構造と称されるものを有し、アセンブリは、アセンブリのリチウム金属層が、拘束されていない方式において電気化学的めっき及びストリッピング反応を受けることを可能にするよう構成され、Li金属層のバックプレーン(すなわち、その第2主要面)は、バックプレーン構成要素によりカプセル化されず、これによって、リチウム金属層は、正常方向に沿って拘束されておらず、リチウム金属めっき/ストリッピング中に(電池が充電/放電されているとき)その厚み方向に沿う圧力がなく自由に広がって収縮する。この得策により、リチウム金属層は、電池セルにおいて圧力をスタックすることを受けない。
【0344】
図13Kを参照すると、拘束されていないバックプレーン構造を有する片面リチウム金属電極アセンブリ1300Kが図示されている。様々な実施形態において、アセンブリは、その長さ方向端部に沿って封止され、又は、およそ全ての端部において完全に封止されてよく、上述したように、好ましくは、密封した。アセンブリ1300Kは、直接接触するリチウム金属層1310の第1主要面をカプセル化する固形電解質シート100と、固形電解質シート100とインターフェイスする個別の側壁構成要素1335と、アセンブリの長さ方向端部を有効に封止するバックプレーン構成要素1330とを含む。注目すべきことに、アセンブリは、バックプレーン1330とリチウム金属層1310との間の隙間1350をもたらし、アセンブリが使用される電池セルの動作の過程にわたって隙間を保持するよう構成され、該隙間の大きさは概して、放電中(リチウム金属がストリッピングされると)に増大し、充電中(Li金属がめっきされると)に低減するであろう。この実施形態によると、リチウム金属層1310は、電池セルにおいて圧力をスタックすることを受けず、特に、外圧(機械力)が、バックプレーン構成要素1330により層1310に加えられず、これによって、充電及び放電中に、(厚みにおいて)自由に広がって収縮するよう構成される。様々な実施形態において、リチウム金属層1310は、その第2主要面上に集電体1312と、電極アセンブリ端子1315(例えば、金属コネクタ)との電子通信を提供するための集電体又はリチウム金属層にテザーされる可撓性を有する伝導性構成要素1313(例えば、金属ワイヤ又はストリップ)とを有し、端子は、外部装置へ/から電力を提供するためのものである。
【0345】
図13Lを参照すると、本開示に係る拘束されていないバックプレーン構造を有する両面アセンブリ1300Lが図示される。様々な実施形態において、アセンブリ1300Lは、(1300K-1と示される)第1単一側アセンブリを(1300K-2と示される)第2単一側アセンブリと組み合わせることによって、図13Kに図示されているように、単一バックプレーン構成要素の任意選択の共有で、製造され得る。
【0346】
前述された電極アセンブリは、フリースタンディングの電池セル構成要素であり、完全に自己支持型であり、例えば、対向電極(例えば、正極)又は電池セルハウジングなどのスタンドアローンの構成要素が存在しないと、製造され、保管され及び/又は(機械操作その他)操作され得る。アセンブリはまた、液体電解質が存在しない状態において具現化されており、従って、完全に固体状態である(すなわち、完全に固体状態のLi金属電極アセンブリである)。好ましくは、電極アセンブリは十分に薄く、巻かれた又は折り曲げられた電池セル構造に使用されることに適するよう可撓性を有する。様々な実施形態において、電極アセンブリは、封止され(すなわち、完全に端部封止され)、これによって、密封し、それと共に、液体電解質を有する電池セルに組み込まれた場合、アセンブリは、リチウム金属層(又はより一般には電気活性層)を陰極液(すなわち、正極と接触する液体電解質)との接触から守る。代替的実施形態において、(例えば、両面)封止された電極アセンブリは、固体状態の負極アセンブリではなく、シート100と電気活性構成要素層1320との間に配置される多孔質/ゲル化可能なセパレータ層を含むことが考えられ、該ゲル層は、液体電解質(すなわち、陽極液)に含浸されている。
【0347】
本開示の別の態様によると、リチウム電極アセンブリの連続ウェブが提供される。
【0348】
図14Aに図示されているLi金属電極アセンブリの製造プロセス1400Aを参照すると、様々な実施形態において、リチウム電極アセンブリは、固形電解質シートの連続ウェブ100Wの延伸に則して製造され、全体的工程は、以下の後固化処理ステージのうちの1つ又は複数を含む。i)アニール850i、ii)端部除去850ii、iii)端部保護850iii、iv)タイレイヤ1101を生成するためのコーティング段階850ivと、v)ウェブ100W上に、又は存在する場合、タイレイヤコーティング1101上にリチウム金属層1310を直接堆積(例えば、蒸着又は熱間圧延)するためのリチウム堆積段階1492、及びvi)リチウム電極アセンブリソースロール1400Rを形成するよう、形成された状態のリチウム電極アセンブリウェブ1400Wをテークアップロール1406上に巻き、任意選択のインターリーフ1404を有し、個々の/個別のリチウム電極アセンブリ(例えば、図13Aに図示されているようなリチウム電極アセンブリ1300)を形成するよう、長さ方向及び/又は幅方向において該ウェブをスリッティングすること。
【0349】
様々な実施形態において、リチウム金属層1310は、段階1492を介して、物理又は化学蒸着を用いて(例えば、差動的にポンピングされたチャンバにおけるリチウム金属の蒸着を介して)堆積される。他の実施形態において、段階1492は、積層段階であり、リチウム金属層1310(例えば、リチウム金属ホイル)は、(例えば、熱間圧延を介して)ウェブ100W上に直接積層される。他の実施形態において、段階1492は、図13Bに図示されているように、ウェブ100Wの表面に集電層を直接適用するための装置を含む。
【0350】
図14Bに図示されているように、様々な実施形態において、リチウム金属層1310は、明確なリチウムコーティングされた領域1310及びコーティングされていない領域1405を形成するよう間欠的に堆積され又は積層され、この得策により、リチウム電極アセンブリウェブ1400Wは、多数の個別の電極アセンブリを含み、コーティングされていない領域の範囲内にレーザ切断により切除され得る。様々な実施形態において、個別の電極アセンブリは、製造工程1400Aに則するが、任意の後段ローリングの前に、ウェブ1400Wから切除される。
【0351】
図14Cに図示されているように、他の実施形態において、リチウム電極アセンブリウェブ1400Wは、(図3A図3B及び図8に示されているように)固形電解質ウェブ100Rの連続ソースロールから、又は、(図3A図3B及び図12A図12Cに示されているように)サブアセンブリウェブ1200Wのソースロール1200Rから、RR処理されてよく、それによって、ウェブ100W/1200Wあ、そのソースロール100R/1200Rから巻き戻され、リチウム段階1492内を横断し、リチウム金属層1310でその中にコーティングされ又は積層される。通常、リチウムは、個別のリチウムがコーティングされた、及びコーティングされていない領域を生成するよう、間欠的な態様においてコーティングされる。その後、個別のリチウム電極アセンブリ構成要素は、コーティングされていない領域1405にわたって(例えば、レーザ切断機で)カットすることにより、ウェブ1400Wから切除されてよく、又はソースロール1400Rを形成するよう、糸巻き1422上に巻かれてよい。
【0352】
様々な実施形態において、リチウム堆積段階1492は、(例えば、新たに押し出された)新たなリチウム金属ホイルを、ウェブ100W/1200W上に積層することを伴う。様々な実施形態において、Li金属層1310は、ソースロール1442から巻き戻され、新たなリチウム金属表面を露出させるように表面スクラビングされ、そして、ホットローラ1475を介して、ウェブ100W/1200Wに結合積層される。他の実施形態において、リチウム金属の堆積段階は、Li金属をウェブ100W又は1200W上に蒸着させることを伴う。代替的実施形態において、段階1492は、集電層のロール(例えば、銅箔)を巻き戻し、図13Bを参照して上述したように、リチウム蒸気を用いて、銅箔をウェブ100W又は1200Wに直接結合することを伴う。
【0353】
図15を参照すると、様々な実施形態において、電極アセンブリは、スタンドアローンの正極アセンブリであり、正電気活性構成要素層は、本開示の第1及び第2固形電解質シートにより両方の主要面上にカプセル化される。具体的には、正極アセンブリ1500は、両面であり、(例えば、リチウム金属電極アセンブリに関する様々な実施形態において上述したように)個別のサイドウォール構成要素1335を介して端部封止された第1及び第2固形電解質シート100-1及び100-2から構成される。正電気活性材料構成要素層1560は通常、様々な実施形態においてリチウムイオンインターカレーション化合物を、(例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiNi0.33Mn0.33Co0.33、LiNi0.8Co0.15Al0.05などの酸化物のような)その電気活性材料として有する電気活性材料層1562-1及び1562-2により、両側上にコーティングされた集電層1564(例えば、アルミニウム又はステンレスホイル)の3重層である。様々な実施形態において、正極アセンブリ1500は、電気活性層1562と接触し、その孔に存在する液体電解質を含む。様々な実施形態において、示されているように、アセンブリは、第1及び第2多孔質セパレータ層又はゲル電解質層(それぞれ、1570-1及び1570-2と示され)を含み、それらは、液体電解質に含浸され、電気活性層とそれらの対向する固形電解質シートとの間の正分離を提供する。好ましくは、アセンブリは、その端部を回ってよく封止され、液体電解質の浸み出しを防ぐ(例えば、気密封止される)。代替的実施形態において、正極アセンブリは、片面であってよく、第2固形電解質シートは、液体電解質を通さず、好ましくは非反応性の不活性又は集電バックプレーン構成要素(例えば、ポリマー及び/又は金属層)に置き換えられてよい。両面である場合、正極アセンブリ1500は、個別のサイドウォール構成要素を用いることよりも、上述したようにフュージョン又はピンチシールで端部封止されることが考えられる。いくつかの実施形態において、固形ポリマー電解質が、電気活性層と対向する固形電解質シートとの間の正分離をもたらすために用られ得る。このように、正極アセンブリは、液体電解質を有さない場合がある。
【0354】
図16Aを参照すると、本開示に係るリチウム電池セル1600Aが図示されており、電池セルは、正極1660と、例えば、層1310を参照して上述したそれらのようなLi金属層である負リチウム電気活性層1610との間に配置される固形電解質シート100を含む電池積層体1601を備える。
【0355】
様々な実施形態において、リチウム電気活性層1610(例えば、蒸着され又は押し出されたリチウム金属層)と固形電解質シート100(例えば、ガラス質硫化物ガラス)との組み合わせは、図13A図13Lを参照して説明されているように、スタンドアローンのLi金属電極アセンブリ1300として、又はより一般にはスタンドアローンの負極アセンブリとして、電池セルに組み込まれる。
【0356】
電池積層体1601は概して、セルハウジング(不図示)に配置される。様々な実施形態において、電池積層体は、折り曲げ可能で、より好ましくは巻き付け可能であるように十分に可撓性を有し、それにより、電池1600Aは、ポーチ状のハウジング(例えば、多重層ラミネート材)に配置される巻かれる角柱又は巻かれる円筒状構造、又は折り曲げ可能な構造である。電池セル1600Aは、i)積層体1601を形成するように、層1610、100、及び1660を組み合わせること、ii)該積層体を成形された構造(例えば、円筒状又は角柱)に巻く又は折り曲げること、iii)成形された構造を、多重層ラミネートポーチ又は剛性容器などの剛性又は可撓性のハウジング内に配置すること、そして、iv)該ポーチ又は容器を封止することにより、製造され得る。液体電解質が電池において使用されている場合、通常、積層体がセルハウジングに配置された後に分配される。
【0357】
様々な実施形態において、積層1601は、固形電解質シート100を断片化することなく、≦3cm、≦2cm、≦1cm、≦0.5cm、≦0.25mmの曲率の半径に巻かれ又は折り曲げられる。様々な実施形態において、電池1600Aは、積層体1601が巻かれる紡錘を含み、該紡錘は通常、≦6cm、≦4cm、≦2cm、≦1cm、又は≦6mmの直径を有する。
【0358】
様々な実施形態において、正極1660は、集電層1664上に配置される正電気活性層1662を含む(例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレススチール、又は同様のものなどの金属箔)。様々な実施形態において、正極1660は、固体状態であってよく(すなわち、液体電解質を有さない)、又は、通常、電気活性層1662の孔に含浸される液体電解質を含有し得る。様々な実施形態において、正電気活性層1662は、電気活性材料としてリチウムイオンインターカレーション化合物から構成されるリチウムイオンインターカレーション層である。液体電解質と組み合わされる場合、正電気活性層1662は通常、多孔質であり、固体状態である場合、該層は好ましくは、高密度である(例えば、高圧密の粒子複合材である)。特に適したリチウムイオンインターカレーション化合物は、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiNi0.33Mn0.33Co0.33、LiNi0.8Co0.15Al0.05、及び同様のもの)などのインターカレート遷移金属酸化物、又は、インターカレート遷移金属リン酸塩及び硫酸塩(例えば、LiFePO、Li(PO、LiCoPO、LiMnPO、及びLiFeSO)、又はその他(例えば、LiFeSOF及びLiVPOF)、並びに、4.5ボルトを超過する対リチウム金属の電池電圧を達成することが可能な高電圧インターカレート材料を含む。
【0359】
様々な実施形態において、層1662の電気活性材料は、遷移金属酸化物、遷移金属フッ化物、遷移金属硫化物、遷移金属窒化物、及びそれらの組み合わせを含む変換反応型である(例えば、MnO、Mn、MnO、Fe、Fe、FeO、Co、CoO、NiO、CuO、CuO、MoO、MoO、及びRuO)。
【0360】
様々な実施形態において、層1662の電気活性材料は、元素である硫黄及び/又はリチウム多硫化物種、通常、非水の液体電解質に溶融される。そのような該実施形態において、電池セルは、リチウム硫黄電池と見なされてよい。概して、溶融された電気活性種(多硫化物その他)を用いる場合、電気活性層1662は、放電及び充電中に電気化学的酸化還元を容易にする電子移動媒体であり、そのように、通常、多孔質金属又は多孔質の炭素質層である。
【0361】
続けて図16Aを参照すると、いくつかの電池セル実施形態(特に、以下の本明細書においてより詳細に説明される固体状態型のそれら)において、正電気活性層1662は、固形電解質シート100の第2主要側面101Bに隣接して直接接触して配置され、いくつかの実施形態において、正電気活性材料は、表面101Bと直接接触する。しかしながら、他の実施形態において、固体有機又は無機Li伝導層などのさらなるLiイオン伝導性材料層(不図示)は、固形電解質シート100と正電気活性層1662との間に組み込まれてよい。例えば、該さらなる材料層は、ポリエチレン酸化物(PEO)又はPEO類似の層、又はリチウム塩が注入されたブロックコポリマ電解質などの固形ポリマー電解質層であってよく(例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許番号第8,691,928号において記載されているように)、又は、無機Li伝導層(例えば、固形電解質シート100の第2側面上にコーティングされたPVD)であってよい。固形ポリマー電解質層(不図示)は、正電気活性層とのインターフェイスにおける化学的適合性に関連するので利益を提供し得る。固体状態の正電気活性層1662は、電気活性粒子及び硫化物ガラス/ガラスセラミック粒子の粒子複合材であってよく、いくつかの実施形態において、以下の本明細書においてより詳細に説明されるように、電気活性材料が存在しない表面をもたらすように設計されてよい。
【0362】
様々な実施形態において、電池セル1600Aは、ハイブリッド電池型であり、完全に固体状態の負極(例えば、完全に固体状態で封止されたリチウム金属電極アセンブリ)と、液体電解質に含浸されている正極とを有し、これによって、正極は固体状態ではない。他の実施形態において、電池1600Aは、完全に固体状態であり、これによって、液相電解質をまったく有さない。様々な完全に固体状態の電池の実施形態において、固形電解質シート100は、負リチウム電気活性層1610(例えば、リチウム金属層)と正極1660との間の唯一の固形電解質セパレータ層として機能する。
【0363】
様々な実施形態において、電池1600Aは、完全に固体状態ではなく、これによって、液相電解質を含む。いくつかの実施形態において、液相電解質は、電池にわたて存在し、正極(例えば、正電気活性層1662)及び負リチウム電気活性層1610(例えば、リチウム金属層)の両方と接触する共有の電解質である。「共有の電解質」という用語の使用により、負電気活性層と接触する液体電解質は、正電気活性層とも接触することを意味し、これによって、「共有の液体電解質」は、電池積層体1601にわたって連続的なものである。共有の液体電解質は、やや普通ではなく反直感的なセル構造を生成し、(好ましくは、通り抜ける多孔性を有さない)固形電解質シート100から構成される固体状態のセパレータと、正電気活性層1662及び負電気活性層1610の両方と接触する連続液相電解質との両方を利用する。事実上、固形電解質シート100は、別の従来リチウムイオン電池においてリチウムのデンドライトによる短絡回路を防ぎ熱暴走からの保護を提供しつつ、Liイオンに対して完全な伝導性を提供する固形電解質シートを有するLiイオン伝導性の固形電解質セパレータ層として用いられてよい。いくつかの実施形態において、シート100は、(例えば、Celgard(登録商標)又は同様のものなどの)従来のリチウムイオン電池において一般に使用されるミクロ多孔質のポリマーセパレータ層又はゲル電解質層に対する直接置換として機能し、そのような実施形態において、電池セル1600Aは、共有の液体電解質を含むが、多孔質セパレータ層又はゲル層を明らかに有さない。例えば、電池セル1600Aは、リチウムイオンインターカレーション化合物(例えば、LiCoO)を含む多孔質の正電気活性層1662を有する正極1660と、その電気活性材料として、リチウムイオンインターカレーション材又は合金材(例えば、インターカレート炭素又はケイ素又はそれらのある組み合わせ)を有する多孔質の負電気活性層1610とにより具現化されてよい。さらに、本開示では、共有の液体電解質は、主に正及び負電気活性層の孔に存在し得ると考えられる一方、そのように限定されず、いくつかの実施形態において、電池は、固形電解質シート100と電気活性層1610及び/又は1662との間に位置付けられる1つ又は複数の多孔質セパレータ層(例えば、多孔質ポリオレフィン又は同様のものなどのミクロ多孔質のポリマー層)又はゲル電解質層を含み得る。共有の液体電解質を有する電池に組み込まれる場合、固形電解質シート100は、好ましくは、共有の液体電解質を実質的に通さないが、本発明は必ずしもそのように限定されるものではない。
【0364】
様々な実施形態において、本開示の電池セルは、上述したような固体状態で封止された負極アセンブリと、液体電解質に含浸される正極とから構成されるハイブリッド電池構造である。固体状態として電極アセンブリを指す場合、アセンブリは、液体を含有しないことを意味し、特に、アセンブリの電気活性材料は、液相電解質と接触しない。
【0365】
図16Bを参照すると、様々な実施形態において、電池セル1600Bは、ハイブリッド電池構造であり、固体状態の負極アセンブリ1640Bは、図13H図13Iに図示されているそれらのような封止された固体状態の負極アセンブリである。特定の実施形態において、液体電解質は正電気活性材料層1662の孔に存在し、シート100の第2側面101Bと直接接触することに化学的に適合する。液体電解質をリチウム金属層1310との接触から防ぐために、固形電解質シート100は、通り抜ける多孔性を有さず、液体電解質を通さないはずであり、従って、実質的に不浸透性である。
【0366】
様々な実施形態において、特に固形電解質シートが硫化物系ガラスである場合、液相電解質は、非水で、並外れに乾燥し、それ自体が非常に低い含水量を有することを意味し、好ましくは20ppmより低く、より好ましくは、10ppmより低く、さらにより好ましくは5ppmより低い。本明細書の使用に適した非水の液体電解質は、炭酸塩(例えば、DMC、EEC、PC、EC)などの有機溶媒の溶液、その中に溶融されたリチウム塩(例えば、LiBF、LiClO、LiPF、LiTf、及びLiTFSI、ここで、Tf=trifluormethansulfonate、TFSI=bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、並びに、電池分野技術において知られているような、イオン液体に基づく液体電解質を含む。
【0367】
様々な実施形態において、電池積層体1601Bは、封止された負極アセンブリ1640Bと正極1660Bとの間に配置されたセパレータ層1670を含み、セパレータ層は通常、非水の液体電解質に含浸される多孔質材料層又はゲル電解質層である。例えば、セパレータ層1670は、多孔質ポリオレフィン層(例えば、ミクロ多孔質)などの多孔質有機ポリマーである。セパレータ層1670は、固形電解質シート100の第2主要側面101Bと正電気活性材料層1662との間の正分離を提供する。セパレータ層は、様々な利益を提供し得る。特定の実施形態において、層1670は、互いの直接接触に化学的に適合しない固形電解質シートと正電気活性材料層との組み合わせを可能にする。他のハイブリッド電池実施形態において、固形電解質シート100の組成は、層1662の正電気活性材料との直接接触に化学的に適合し、積層体1601Bには、層1670が存在しなくてよく、シート100及び層1662は、直接接触して配置されてよい。電池積層体1601Bは、巻かれ又は折り曲げられて、セルハウジング内に組み込まれてよい。その後、液相電解質は、電池内に分配され、正極1660Bと、特に層1662と接触するが、封止された電極アセンブリ内に隔離されているので、層1320のリチウム金属と接触しない。
【0368】
特定の実施形態において、電池1600Bは、i)電気活性層1310(リチウム金属層)、ii)固形電解質シート100(ガラス質Liイオン伝導性硫黄系ガラスシートの実質的に通さないシート)、iii)正電気活性材料層1662(酸化物(例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiNiMnCoO又は同様のもの)又はリン酸塩(例えば、LiFePO)などのリチウムインターカレーション材から構成される)、iv)任意選択のセパレータ層1670(液相電解質に含浸されている多孔質ポリマー又はゲル)、v)層1662及び1670の孔に存在し、硫化物系固形電解質ガラスシート100の第2主要側面101Bに化学的に適合する非水の液相電解質から構成される。例えば、リチウム金属層1310及び固形電解質シート100は、封止された固体状態のリチウム金属電極アセンブリとして、電池1600B内に組み込まれる。
【0369】
様々な実施形態において、ハイブリッド電池1600Bは、通常<10μmの厚みであり、固形電解質シート100と電気活性層1662との間に配置される薄い多孔質セラミック層を含んでよい。該薄い多孔質セラミック層は、第1主要側101Bの表面上、又は電気活性層1662の表面上のコーティングとして形成され得る。いくつかの実施形態において、該薄い多孔質セラミック層は、セパレータ層1670の表面上にコーティングされ得る。様々な実施形態において、多孔質セラミック層は、有機バインダと共に保持されるセラミック粒子の複合物であってよい。様々な実施形態において、セラミック粒子は、Liイオンの伝導性を有さないセラミック粉末(例えば、アルミナ粉末粒子)であってよく、又はLiイオンの伝導性を有してよく(例えば、Liイオン伝導性のガーネットのような、又はLATPセラミック粉末粒子)、又はそれらのある組み合わせであってよい。複数の実施形態において、多孔質セラミック層は、約5μm、又は約4μm、又は約3μm、又は約2μmの厚みを有する。いくつかの実施形態において、多孔質セラミック層は、多孔質又はゲルセパレータ層1670が存在しない状態において、固形電解質シート100と正電気活性層1662との間の正分離を提供し得る。
【0370】
図16Cを参照すると、本開示の様々な実施形態に係る完全に固体状態の電池セル1600Cが図示されている。該電池は、固体状態の正極1660Cと、固体状態の負極1640Cと、セパレータとして機能するLiイオン伝導性の固形電解質シート100とを含む。いくつかの実施形態において、構成要素1660C/1640C/100は、個別の材料層として電池内に組み込まれる。他の実施形態において、セパレータシート100と負/正極1640C/1660Cは、スタンドアローンの構成要素(例えば、スタンドアローンの固体状態の負極アセンブリ、又は、スタンドアローンの固体状態の正極アセンブリ)として電池に組み込まれる。
【0371】
固体状態の正極1660Cは、正電気活性層1662Cと集電体層1664Cとを含む。様々な実施形態において、電気活性層1662Cは、ガラス質硫化物ガラスシート100の組成と類似、又は同じ組成の固形電解質材と組み合わされる正電気活性材料の複合物である。限定されることなく、粒子複合材層1662Cは、炭素質材(例えば、カーボンブラック粒子)など、電子伝導率を高めるために正電気活性粒子、Liイオン伝導性硫化物ガラス又は硫化物ガラス-セラミック粒子、及び任意選択的に電子的に伝導性粒子の圧密又はテープキャスティングにより、製造され得る。特定の実施形態において、上述したように、正電気活性粒子は、Liイオンインターカレート化合物(例えば、金属酸化物)である。様々な実施形態において、複合層1662Cの構成粒子は、電気活性層にわたって均一に分布される。いくつかの実施形態において、複合層1662Cは、圧密されたLiイオン伝導性硫化物粒子により画定され、電気活性粒子及び電子的伝導性添加剤を実質的に有さない表面を有するように設計される。
【0372】
特定の実施形態において、正電気活性材料層1662Cは、リチウムイオンインターカレーション型であり、好ましくは、図16Aの正電気活性層1662を参照して上述したように(例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiNiMnCoO、又は同様のものなどの遷移金属酸化物、又はLiFePOなどのリン酸塩)、Li金属に対して2ボルトのより高い電位を有するが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、正電気活性インターカレーション材は、非晶質層から発散するイオン電流の放散本質に起因するリチウム金属の均一なめっき及びストリッピングを高めるために有利であり得る非晶質アトミック構造を有し、いくつかの実施形態において、層1662Cは、高密度の層であり、非晶質Liイオンインターカレーション材(例えば、固形電解質シート100の表面101B上に直接堆積される非晶質バナジン酸塩)のみから構成される。
【0373】
固体状態の負極1640Cは、負電気活性材料層1610Cから構成され、任意選択の集電層1612Cを有する、上述したようなリチウム金属層であってよい。様々な実施形態において、リチウム金属層1610C及び固形電解質シート100は、本開示の様々な実施形態に係るスタンドアローンの固体状態のリチウム金属電極アセンブリとして電池1600C内に組み込まれる。代替的実施形態において、負電気活性層1610Cは、リチウム金属層ではなく、むしろ、インターカレート炭素、ケイ素、又はそれらの組み合わせなど、リチウム金属の電位に近い電位を有する電気活性材料を含む層であるが、そのように限定されない。そのような該実施形態において、電気活性層1610Cは、シート100を構成する組成と類似、又は同じ組成の固形電解質粒子と組み合わされる負電気活性材料粒子(例えば、インターカレート炭素)の粒子圧密体又はテープキャスト層であってよい。負電気活性層1610Cは、電子的に伝導性希釈剤(高表面積炭素など)、並びに、層の機械的インテグリティを高めるためのバインダ材をさらに含有し得る。
【0374】
様々な実施形態において、完全に固体状態の電池セル1600Cは、それぞれが複合粉末圧密体又はテープキャスト層であり、本開示の固形電解質シート(例えば、Liイオン伝導性硫化物系ガラスのガラス質シート)により分離される正及び負極から構成される。
【0375】
別の態様において、本開示の固形電解質シートは、実質的に通さないリチウムイオン伝導性膜とLi金属アノード層との間に配置されるLiイオン伝導性層のように、保護膜構造における中間層として用いられてよい。本開示の様々な実施形態に係るガラス質硫化物系固形電解質シートの組み込みは、中間層として、ガラス質固形電解質シートがリチウム金属デンドライトの通り抜ける貫通のための経路を有さないので、改善された性能を提供する。保護膜構造及び保護されるリチウム電極構造は、米国特許番号第7,282,296号、米国特許番号第7,390,591号、米国特許番号第7,282,295号、米国特許番号第8,129,052号、米国特許番号第7,824,806号、及び米国特許公開番号第20140170465号を含み、出願人の同時係属中の特許出願及び権利付与された特許において完全に記載されており、それらの全てがこれによって、参照により組み込まれている。
【0376】
図16Dを参照すると、リチウム金属電池セル1600Dを製造するための工程が図示されており、その製造された状態の状態においては、リチウム金属を有さない、又は実質的に有さない。該電池は、i)図11Bを参照して上述したような集電層1101bと任意選択のタイレイヤ1101aとを有する電極サブアセンブリ1100B、及びii)電気活性層1662と集電層1664とを有する正極1660を備える電池積層体1601Dから構成される。いくつかの実施形態において、電池1600Dは、図16Bを参照して説明されているような含浸されている液体電解質を有するハイブリッド電池構造である。他の実施形態において、電池1600Dは、固体状態の電池セルであってよく、従って、液体電解質及びその関連セパレータ層1670は存在しない。続けて図16Dを参照すると、電気活性層1662は、完全にリチウム化されたリチウムインターカレーション材層であり、製造された状態の電池におけるLi容量の唯一のソースである。リチウム金属1662は、初期電池充電の結果として、形成され、層1662からLiが電極サブアセンブリ1100B上にめっきされるので、それにより、リチウム金属構成要素層1620を生成する。別の実施形態において、積層体1100Bが、図13Bを参照して上述したように、結合層としてその中に用いられ、ここで、集電体層上の均一なめっきを高めるために、シード層も提供する不十分な量のリチウム金属(例えば、<1μmの厚み)を有するリチウム金属電極アセンブリ1300により提供され得る。
【0377】
図16Eを参照すると、本開示に係るリチウム金属電池セルが図示されており、電池は、(図15において詳細に示されている)正極アセンブリ1500と、それぞれの固形電解質シート100-1及び100-2の第1表面101Aと直接接触して配置されるリチウム金属層1310-1及び1310-2とから構成される。
【0378】
様々な実施形態において、本開示の固形電解質シート及びそれらの構成要素は、品質管理のために検査され、特に、分光光度測定方法が、表面及びインターフェイスを特徴付けるために用いられる。
【0379】
様々な実施形態において、光減衰が、この開示のスタンドアローンのガラス質シートを特徴付けるために用いられる。測定は、様々な波長における入射光と送られた光強度との比較に基づいて行われる(図17の概略図を参照する)。ガラス質シートにおける光吸収により、光減衰が判断され、ガラスキズの存在、ガラス質シートの本体及びその表面上に存在するキズに起因する光散乱により影響されない。ガラス粒子間の境界(すなわち、粒子から粒子への境界)、部分的結晶化に起因する結晶相、気泡、クラック、穴、表面スクラッチの含有物を含み、特定の種類のキズは、光散乱をもたらし得る。散乱中心の全体的密集度は、球状粒子上の独立光散乱のMie理論を用いて光減衰のスペクトル依存性から近似化される。光散乱キズは概してより複雑な形状を有するので、散乱中心の密集度の正確な定量的判断が、かなり困難である。しかしながら、球状粒子に基づく近似法は、ガラス層における光散乱キズの半定量的特徴付けのために用いられ得る。本明細書において考えられる品質管理方法において、入射光強度が一定に維持され、同じ厚みのガラス層に対して送られた光強度が、電気化学的サイクルデータから判断されるように、許容可能な品質の基準サンプルと比較される(それ自体がリチウムサイクル効率性及び充電/放電サイクル数の増大として現れるLi金属又はLi合金電極の改善された保護)。
【0380】
様々な実施形態において、ガラス質シートと接触する金属表面からの光反射が、この開示の電極サブアセンブリ又は電極アセンブリのためになど、そのような基板積層体の特徴付けのために用いられる。ガラス質シートが、金属膜で(特に真空堆積で)コーティングされた場合、ガラス質層(内部インターフェイス)とインターフェイスする金属膜からの光反射が、ガラス質シートの本体に、及びガラス質シート-金属インターフェイス上の散乱中心の密集度を評価するために用いられる(図18の概略図を参照する)。この場合、反射された光強度を、同じ金属膜でコーティングされた完全に透明なケイ酸塩ガラススライドからなる基準サンプルと比較する。測定された反射された光強度が低減されるので、入射及び反射された光強度は両方とも、シートの本体における散乱キズにより、減衰される。この目的のために、100%に近い反射係数を有する金属(Al、Ag)が用いられる。
【0381】
一重要な実施形態において、ガラス質シートと接触する金属は、Ag、Sn、Al、Inなど、Li合金を形成する金属であり、Li金属とシートとの間の反応性結合を形成する(図19A図19Bの概略図を参照する)。Liが、合金を形成する金属と反応した後、固形電解質シート-金属インターフェイスの反射係数が(20%、30%、40%、50%、又はそれより高い比率で)著しく降下し、100%に近い反射係数を有する金属(Agなど)から反射される代わりであるため、光は、ここでLi-合金表面から反射される。合金を形成する金属と比較してリチウム金属の超過が存在する状況下、合金を形成する金属は、リチウム化され、Li-金属の金属間化合物、又はをあり得る最も高いリチウム含有量有する合金化合物に変換されるであろう。Li-金属の金属間化合物からの反射は、鏡のような反射ではなく放散され得て、反射された光強度は、MgO又はBaSOなどの高反射性材料でコーティングされた統合された球面に搭載された分光光度計を用いて測定される。この方法は、ガラス質シート-Li合金インターフェイスにおける表面キズの可視化を可能にする。特に、例えば、Li窒化物の含有又は接触する他のエリアより厚い表面膜に起因し、Li箔又は層が、ガラス質シート表面から部分的に剥離され、又は比較的低い反応性を有するエリアを有する場合、これらのエリアにおけるLi金属間化合物の形成は、遅延され、又は、いくつかの場合、まったく発生しないであろう。一実施形態において、インターフェイスの反射性における変化は、低Li反応性のエリアを識別するために、モニタされ、特に、ビデオで記録される。
【0382】
図20は、図19A図19Bからの構造において時間にわたって測定された反射係数における変化を示す。領域Aは、(Li合金が反射性表面上に形成される前の)金属表面からの反射に対応する。領域Bは、遷移期間中に反射係数値における段階的降下を示す。反射係数の中間値は、測定された表面積にわたって金属表面からLi合金への不均一な変換、金属表面から最も高いLi金属含有量を有するLi合金への不完全な変換、又は両方の工程の組み合わせの何れかに帰属する。領域Cは、その形成が完了し、システムが安定した状態になった後の高Liの金属間化合物表面からの反射に対応する。
【0383】
別の重要な実施形態において、ガラス質シートと接触する金属は、Li金属であり、特に、押し出されたLi箔又は真空堆積され又は電気溶着されたLi膜である。この場合、光は、ガラス層と結合されたLi表面から反射される。Li表面モルホロジに応じ、反射は、鏡のような反射や放散の何れかであり得る。不完全なLiコーティング、低Li反応性エリア、又は、Liとガラス質シート表面との間の密接な接触を有さないエリアは、低反射係数を有するエリアとして可視化される。一実施形態において、製造されたLi-シートの積層体のLi表面条件が、反射係数及びその経時的変化測定により、特徴付けられる。別の実施形態において、反射係数は、光学窓が搭載されている組立電池において、もとの位置で測定され、電気化学的サイクルの様々な段階及び電池保管中におけるLi表面モルホロジの特徴付けを許容する。
【0384】
様々な実施形態において、このガラス質シートと、それ自体がさせるこの開示のリチウム電極アセンブリにおけるLi及びLi合金のインターフェイスとの特徴付け及び品質管理は、局所抵抗の測定を用いて行われる。
【0385】
一実施形態において、測定は、固体状態の電池において実行される(図21A図21B)。このシートにわたる抵抗が、シート表面の様々な位置において測定される。この場合、小さい尖端又は「探針」を有する1つの電極が、そのシート表面に沿って移動する。探針の直径は、10μm~1mmの範囲にある。局所抵抗測定の正確度を低減する「電流線広がり」を最小化にするために、シートの厚みは、5μm~100μmの範囲から選択される。著しくより大きい表面積(最大、ガラス層の全面積)を有する第2(カウンタ)電極は、シートの反対側(すなわち、第2主要側)上に位置し安定する。探針は、(Liではなく)Au、In、Gaなどのような、シートと信頼できる接触を保持しつつ、ひっかき又は任意の他の方法でシート表面にダメージを与えない柔らかい不活性金属により作られる。この実施形態において、第2電極は、Liではなく、探針における金属と同じ金属であってよい。シートの局所抵抗は、ACインピーダンススペクトルから判断される。シート均一性の品質管理について、局所抵抗の最大許容偏差値が設定される(例えば、平均局所抵抗の1%、2%、5%、10%)。
【0386】
一実施形態において、大面積を有する第2電極は、Ag、Sn、Al、Inなどの、Li合金を形成する金属である。この場合、固形電解質シートがその局所抵抗により特徴付けられた後、品質管理方法が非破壊的なので、Li合金-固形電解質シート積層体の製造のために用いられ得る。別の実施形態において、表面キズの大規模のマップを取得するように、シート表面に沿う局所抵抗の測定は、より大きい探針で実行され、そして、局部表面キズのより詳述な分布を取得するように、抵抗は、より小さい探針で測定される。
【0387】
一実施形態において、上述した電池と類似であるが、ガラス質シートとカウンタ電極との間に位置する液体非水電解液を有する電池においてインピーダンス測定が実行される(図22A図22B)。液体非水電解液は、Celgard型セパレータの孔内に含有され得る。非水電解質は、Li塩類(LiTFSI、LiFSI、LiPF)及び非プロトン溶媒又は溶媒混合物、特にエーテル(DME、ジオキソラン)又は有機炭酸塩(DMC、EEC、PC、EC)のような溶媒を含有する。この方法の利点は、いったん抵抗測定がシートの一側(例えば、第1主要側)上で実行されると、試験電池は、分解され得て、非水電解質は、非水溶媒で洗い流され得て、方法は非破壊的なので、抵抗測定は、第2主要側上で繰り返され得る。
【0388】
[結論]
本開示は、理解の明確さの目的のためにある程度の詳細を提供しているが、特定の変更及び修正は、本開示の範囲内において実施され得ることが明らかであろう。本開示の処理及び組成物の両方を実施する代替的方法は、多く存在することが留意されるべきである。従って、本実施形態は、限定的なものではなく、例示的なものと見なされ、本開示は、本明細書に与えられている詳細に限定されるものではない。例えば、上述した固有Liイオン伝導性ガラスは硫化物ガラスにより具現化される。しかしながら、多くの態様における説明は概括的に、まだ発見されていないような、硫黄を有さないLiイオン伝導性酸化物、リン酸塩、酸窒化物、ケイ酸塩ガラスなどの他の高伝導性無機ガラスに適用可能であり、ことが認識されたい。さらに、本開示の固形電解質壁構造(例えば、ガラス質シート)が概して電池セルなどの電気化学的デバイスに用いられるために意図されている一方、それにも関わらず、それらは、最終的にそれらが組み込まれる装置又は電極アセンブリから離れて製造されるスタンドアローンの材料構成要素であり、また、個別の電池セル構成要素のように独立して保管及び/又は搬送され得る。本明細書において開示されているLiイオン伝導性の固形電解質壁構造及びシートの有用性は従って、より一般に、Liイオン伝導性を必要とする多様な電気化学的デバイスに適用可能である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図13H
図13I
図13J
図13K
図13L
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図16C
図16E
図16D
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
図22A
図22B