(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】含浸体が収容された収容容器及びその補充具
(51)【国際特許分類】
A45D 34/00 20060101AFI20240723BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A45D34/00 510Z
A45D34/04 560
(21)【出願番号】P 2021077159
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】神村 千秋
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186947(JP,A)
【文献】特開昭64-090113(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0087999(KR,A)
【文献】特開2013-067399(JP,A)
【文献】特開2019-031334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0397120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/00
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の含浸層が積層されて成る含浸体(50)と、内容液を補充する補充孔(α)が形成された内容器(B)とを有する収容容器であって、
前記補充孔(α)
は、前記内容器(B)の側壁に径方向に貫通すると共にいずれかの前記含浸層間に形成される隙間(S)に対向して配置され
た貫通孔(31A、46)により形成されていることを特徴とする含浸体が収容された収容容器。
【請求項2】
含浸体(50)が、下部含浸層(52)に上部含浸層(51)を積み重ねることで形成されている請求項1記載の含浸体が収容された収容容器。
【請求項3】
下部含浸層(52)と上部含浸層(51)の少なくとも一方の対向面に、径方向に所定の間隔で同心円状に配置される環状スリット(ST)が形成されている請求項2記載の含浸体が収容された収容容器。
【請求項4】
内容器(B)が、第1貫通孔(31A)が形成された内容器本体(30)と、該内容器本体(30)の開口端を閉塞する内蓋(35)と、前記内容器本体(30)の下端に回転可能に取り付けられると共に第2貫通孔(46)を有して形成された底蓋(40)と、を有して形成されており、前記内容器本体(30)に対して前記底蓋(40)を回転させ、前記第1貫通孔(31A)と前記第2貫通孔(46)とが重なり合うことで補充孔(α)が形成される請求項1乃至3のいずれか一項に記載の含浸体が収容された収容容器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の収容容器(1)内に収容された含浸体(50)に内容液を補充する補充具であって、
内容液が充填された胴部(71)に対して頸部(72)を介して立設された口筒部(73)を備えた補充具本体(70A)と、前記口筒部(73)の先端に連結されると共に収容容器(1)に設けられた補充孔(α)に挿入可能なノズル部(74)とを有し、前記ノズル部(74)に前記内容液を注出する注出孔(76)が形成されていることを特徴とする収容容器用の補充具。
【請求項6】
複数の注出孔(76)が、ノズル部(74)の基端から先端との間に、含浸体(50)を構成する下部含浸層(52)及び上部含浸層(51)に形成されている複数の環状スリット(ST)と同じ間隔で形成されている請求項5記載の収容容器用の補充具。
【請求項7】
複数の注出孔(76)の孔径が、ノズル部(74)の基端から先端部に向かって徐々に大きくなるように形成されている請求項6記載の収容容器用の補充具。
【請求項8】
頸部(72)の外周面に径方向外側に凸状の突出する環状フランジ(78)が設けられている請求項5乃至7のいずれか一項に記載の収容容器用の補充具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内容液を含浸する含浸体が収容された収容容器及び含浸体に内容液を補充するための補充具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ファンデーション等の粘性を有する内容液が含浸された含浸体(スポンジなど)を収容する化粧用の収容容器(被塗布物収容容器)が知られている(例えば特許文献1)。
このような収容容器において、使用により含浸体に含浸している内容液の残量が少なくなってきたときには、外部から新たな内容液を含浸体に注入することにより続けて使用することが可能となっている。
特許文献1に記載の先行技術では、容器本体の底部に設けられた注入孔を閉塞する栓体を取り外し、注入孔から被塗布物を容器本体内の含浸体の凹部に注入すると、被塗布物が凹部から含浸体に形成されている溝状のスリットを流れることで含浸体への含浸性を向上させることが可能となつている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の先行技術では、含浸性を向上させるためのスリットを、含浸体の表面に又はその内部に複雑な形状で形成し、或いは含浸体を複数の部材で構成する必要があることから、含浸体の製造工程が複雑化しやすく、また製造コストの低減も難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、簡単な構成により含浸性を向上させる含浸体が収容された収容容器及びその補充具を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の第1の主たる手段は、
複数の含浸層が積層されて成る含浸体と、内容液を補充する補充孔が形成された内容器とを有する収容容器であって、
前記補充孔は、前記内容器の側壁に径方向に貫通すると共にいずれかの前記含浸層間に形成される隙間に対向して配置された貫通孔により形成されていることを特徴とする、と云うものである。
本発明の主たる手段では、複数の含浸層が積層されて成る含浸体の含浸層間に形成された隙間と補充孔とが対向しているため、この補充孔を介して供給された内容液を隙間内に確実に注出させることができる。これにより、含浸体への内容液の含浸性を向上させることができる。
【0007】
また本発明の他の手段は、上記本発明の第1の主たる手段に、含浸体が、下部含浸層に上部含浸層を積み重ねることで形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、上下2層構造の含浸体の中央部に内容液を注出することができるため、含浸体への内容液の含浸性を向上させることができる。
【0008】
また本発明の他の手段は、上記の手段に、下部含浸層と上部含浸層の少なくとも一方の対向面に、径方向に所定の間隔で同心円状に配置される環状スリットが形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、各環状スリットに対して内容液を注出することにより、内容液を含浸体の全域に亘って比較的均等に含浸させることができる。
【0009】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、内容器が、第1貫通孔が形成された内容器本体と、内容器本体の開口端を閉塞する内蓋と、該内容器本体の下端に回転可能に取り付けられると共に第2貫通孔を有して形成された底蓋と、を有して形成されており、内容器本体に対して底蓋を回転させ、第1貫通孔と第2貫通孔とが重なり合うことで補充孔が形成される、との手段を加えたものである。
上記手段では、内容器本体に対して底蓋を回転させた場合に限り、補充孔が形成される構成とすることができるため、内容液の液漏れを防止することができる。
【0010】
また上記課題を解決するための手段のうち、本発明の第2の主たる手段は、
上記いずれかに記載の収容容器内に収容された含浸体に内容液を補充する補充具であって、
内容液が充填された胴部に対して頸部を介して立設された口筒部を備えた補充具本体と、口筒部の先端に連結されると共に収容容器に設けられた補充孔に挿入可能なノズル部とを有し、ノズル部に内容液を注出する注出孔が形成されていることを特徴とする、と云うものである。
【0011】
本発明の第2の主たる手段では、ノズル部を収容容器に設けられた補充孔に挿入することにより、内容液を収容容器内に設けられた含浸体に供給することができるため、内容液の補充作業を簡単に行うことができる。
【0012】
また本発明の他の手段は、上記本発明の第2の主たる手段に、複数の注出孔が、ノズル部の基端から先端との間に、含浸体を構成する下部含浸層及び上部含浸層に形成されている複数の環状スリットと同じ間隔で形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、ノズル部の外周面に形成された複数の注出孔の間隔を、含浸体の下部含浸層及び上部含浸層に形成されている複数の環状スリットの間隔に一致させることができるため、各注出孔から注出された内容液を各環状スリットに直接入り込ませることができる。
【0013】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、複数の注出孔の孔径が、ノズル部の基端から先端部に向かって徐々に大きくなるように形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、各環状スリットに対して内容液をより均等に注出することが可能となるため、含浸体への内容液の含浸性を向上させることができる。
【0014】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、頸部の外周面に径方向外側に凸状の突出する環状フランジが設けられている、との手段を加えたものである。
上記手段では、ノズル部を補充孔内に挿入したときに、環状フランジで充具と内容器側との間の隙間を塞ぐため、内容液が逆流して補充孔から漏れることを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、上部含浸層と下部含浸層を2枚積層するという簡単な構成により、含浸性を向上させる含浸体が収容された収容容器及びその補充具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の収容容器の第1実施例を示す断面図であり、(a)は収容容器を側方から見た縦断面図、(b)は(a)のb-b線矢視方向(正面側)からの縦断面図である。
【
図3】内容器本体に底蓋を装着した内容器を示し、(a)は外容器本体に対するセット可能状態を示す内容器の正面図、(b)は(a)のb-b線矢視方向からの平断面図である。
【
図4】内容器本体に底蓋を装着した内容器を示し、(a)は内容器本体内への補充可能状態を示す内容器の正面図、(b)は(a)のb-b線矢視方向からの平断面図である。
【
図5】補充用の内容液が入った補充具の一例を示し、(a)はノズル部組み付け前の補充具を示す部分断面図、(b)は組み立て工程を示す補充具の部分断面図である。
【
図6】第1実施例における補充時の状態を示す内容器の縦断面図である。
【
図7】本発明の第2実施例を示す収容容器の断面図であり、(a)は収容容器を側方から見た縦断面図、(b)は(a)のb-b線矢視方向(正面側)からの縦断面図である。
【
図8】補充具の他の一例を示し、(a)は補充具を示す部分断面図、(b)はノズル部を示す半断面図、(c)はノズル部を装着した補充具を示す部分断面図である。
【
図9】第2実施例における補充時の状態を示す内容器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
尚、以下の説明において、周方向とは容器軸O1を周回する方向を、径方向とは容器軸O1に対して垂直に交差する方向を夫々意味する。また高さ方向(厚み方向)とは容器軸O1に沿う方向を、前後方向とは容器軸O1に対して垂直に交差する2方向にのうち正面側のプッシュボタンと背面側の蝶番とを通る方向を、幅方向とは高さ方向及び前後方向の双方に対して垂直に交差する方向を夫々意味する。
【0018】
(第1実施例)
図1は本発明の収容容器の第1実施例を示す断面図であり、(a)は収容容器を側方(幅方向の一方)から見た縦断面図、(b)は(a)のb-b線矢視方向(正面側)からの縦断面図、
図2は外容器本体を示す平面図、
図3は内容器本体に底蓋を装着した状態の内容器を示し、(a)は外容器本体に対するセット可能状態を示す内容器の正面図、(b)は(a)のb-b線矢視方向からの平断面図、
図4は内容器本体に底蓋を装着した状態の内容器を示し、(a)は内容器本体内への補充可能状態を示す内容器の正面図、(b)は(a)のb-b線矢視方向からの平断面図である。
【0019】
最初に収容容器の構成について説明する。
本発明の収容容器1は、ファンデーション等の粘性を有する内容液を含浸した含浸体及び化粧用具(パフやブラシ等)を内部に収容することのできる容器である。
図1(a)(b)に示すように、収容容器1は、外容器Aを構成する外容器本体10及び外蓋20と、内容器Bを構成する内容器本体30及び内蓋35と、外容器A及び内容器Bの底部を構成する底蓋40と、内容液を含浸する含浸体50とを有して構成され、含浸体50を除く各部材が合成樹脂材料を射出成形することにより形成されている。
【0020】
まず外容器Aを構成する外容器本体10及び外蓋20について説明する。
図1及び
図2に示すように、外容器本体10は底部に大きな円形状の開口部11を有して短筒状に形成された部材である。外容器本体10の一方の正面側(
図2では左側)位置にはフック用凹部12が形成され、このフック用凹部12内には上面に押圧片61を備えるプッシュボタン60が設けられている。プッシュボタン60は径方向外側に向かう付勢力を付与する付勢部材(図示せず)を有して径方向(前後方向でもある)に沿って進退可能に設けられている。またフック用凹部12には径方向外側に向かって突出する係止爪12aが突設されている。また外容器本体10の他方の背面側(
図2では右側)には蝶番用凹部13が形成されている。蝶番用凹部13の幅方向において対向する両内面には軸受け部(図示せず)が設けられている。
【0021】
外容器本体10の開口部11を形成する内壁14の複数の箇所(本実施例では4箇所)には容器軸O1方向に向かって径方向内側に突出するアンダーカット状の係止凸部15が形成されている。また内壁14のうち、幅方向の一方の面(
図2では上側の面)には後述するヒンジ挿入部16が形成され、これと対向する他方の面(
図2では下側の面)には凹状に形成されたリブ挿入部17が形成されている。ヒンジ挿入部16は内壁14の上面の一部を凹状に大きく切欠くことにより形成され、リブ挿入部17は内壁14に上面から底部に向かって延びる縦溝として形成されている。尚、ヒンジ挿入部16は、蝶番用凹部13に対して周方向に90度ずれた位置に形成されている。
【0022】
図1(a)に示すように、外蓋20は、天板21の外縁部に周壁22が垂下設された有頂筒状の部材であり、天板21の内面にはミラーMが固定されている。天板21の正面側(
図1(a)では左側)には、下端に被係止爪23aを備えるロック壁23が垂下設され、背面側(
図1(a)では右側)の周壁22には幅方向に延びる軸部材24を備えたアーム部25が一体に形成されている。
外蓋20のアーム部25を外容器本体10の蝶番用凹部13に挿入し、軸部材24の両端を蝶番用凹部13の両内面に設けた軸受け部(図示せず)に夫々枢設させることにより蝶番Hが形成されている。そして、外蓋20は蝶番Hによって外容器本体10に対して回動自在に軸支されており、自在に開閉できるように構成されている。
【0023】
外蓋20を閉じると、外蓋20側に設けられた被係止爪23aが、外容器本体10側の係止爪12aに係止してロックすることにより、収容容器1を閉蓋状態に設定することができる。この状態から、プッシュボタン60を径方向内側に向かって押圧すると、押圧片61がロック壁23の下端に当接して被係止爪23aを上方に押し上げるため、係止爪12aが被係止爪23aから外れてロックが解除され、収容容器1を外蓋20が開く開蓋状態に設定することが可能となっている。
【0024】
次に、内容器Bを構成する内容器本体30、内蓋35並びに底蓋40について説明する。
図1(a)(b)、
図3(a)(b)又は
図4(a)(b)に示すように、内容器本体30は、略円筒状の側壁部31を有して形成されており、その上端には径方向内側に向かって円環状に突出して後述する上部含浸層51を保持する内フランジ32と、その外側に形成されたシール用の環状溝33と、更にその外側に形成されて内蓋35と係合する第1係合部34が形成されている(
図1(b)参照)。
また側壁部31の下端には底蓋40に係合するための第2係合部31aが形成されている。更に、
図3(a)(b)及び
図4(a)(b)に示すように、側壁部31のうち、内容器本体30の正面となる位置には側壁部31を径方向に貫通する第1貫通孔31Aが穿設され、その上側近傍の位置には周方向に所定の長さを有して凹状に切欠かれた規制凹部31Bが形成されている。
【0025】
図1(a)(b)に示すように、内蓋35は、短円筒状に形成された周壁36と、この周壁36の内面で且つ高さ方向に中間部に形成された円板状の頂壁部37を備えた部材である。頂壁部37とこの頂壁部37よりも上側に突出する周壁36とによって断面凹状に形成される空間が、パフ等の化粧用具Pを収容する第1収容部Q1である。また周壁36の下端には、径方向内側に突出して、閉蓋時において内容器本体30側の第1係合部34と係合する係合爪36aが形成されている。周壁36の内側で且つ頂壁部37の内面には、下方に突出する円筒状のシール筒部38が形成されている。
そして、内容器本体30と内蓋35とは肉薄部から成るヒンジ39を介して一体に連結形成されており、内蓋35はヒンジ39を介して回動することで内容器本体30に対して開閉可能に設けられている。内蓋35を閉じると、内蓋35側のシール筒部38が内容器本体30側の環状溝33に嵌合してシールすることができると共に、内蓋35側の係合爪36aが内容器本体30側の第1係合部34に係合して閉蓋状態を維持することが可能となっている。
【0026】
次に内容器Bの一部を構成する底蓋40について説明する。
図1(a)(b)に示すように、底蓋40は、円板状の底壁41の外縁に短筒状の側壁42が一体に立設された有底筒状の部材である。
図3(a)(b)に示すように、側壁42の外周面で且つ外容器本体10に形成された係止凸部15と対応する複数の箇所(
図3(a)(b)では4箇所)には、係止凸部15に係合可能な被係止凹部43が形成されている。また側壁42の外周面で且つ底蓋40の正面には、周方向に所定の長さを有すると共に上方に凸状に突出する規制凸部44が形成されている(
図3(a)、
図4(a)参照)。そして、この規制凸部44内で且つ底蓋40の正面なる位置には高さ方向に沿って直線状に延びる凸リブ45が突設され、この凸リブ45から周方向にずれた位置(
図3(a)(b)では凸リブ45の左側の位置)には、側壁42を径方向に貫通する第2貫通孔46が穿設されている。更に、側壁42の内面側の下端には被係合部47が形成されている(
図1(a)(b)参照)。
【0027】
次に含浸体50について説明する。
含浸体50は、スポンジ等の多孔性軟質材により形成されている。含浸体50は、所定の厚み寸法を有して略円板状の同一形状で形成された上部含浸層51と下部含浸層52とを高さ方向に2枚積層することにより構成されており、上部含浸層51と下部含浸層52とが対向する層間には隙間Sが設けられている。
尚、上部含浸層51と下部含浸層52とは、上記のように夫々別体として形成した2枚の含浸層を積み重ねる構成であっても良いし、一枚の含浸層を厚み方向の中間部において水平に切断する構成であっても良い。あるいは一枚の含浸層を2つに折り畳む構成であってもよい。
【0028】
次に、収容容器の組み立てについて説明する。
最初に、底蓋40を、内容器本体30の下端に取り付けて内容器Bとする。尚、この際、底蓋40の底壁41と内容器本体30の内蓋35とが高さ方向において対向する空間部分に、含浸体50を収容する第2収容部Q2が形成されるが、含浸体50は組立工程時において第2収容部Q2内に収容される。
具体的には、内容器本体30の側壁部31に形成されている第2係合部31aを、底蓋40の側壁42に形成された被係合部47に係合させることにより組み付ける。この際、底蓋40側の規制凸部44が、内容器本体30側の規制凹部31B内に配置される。組み付けた状態では、規制凸部44と規制凹部31Bの周方向の両端同士が当接する範囲内において、底蓋40と内容器本体30とが周方向に相対的に回転することが可能となっている。
【0029】
そして、
図3(a)(b)に示すように、底蓋40を内容器本体30に対して時計回り方向(
図3(a)では左方向)に回転させ、規制凸部44の周方向の左端を規制凹部31Bの周方向の左端に当接させると、第1貫通孔31Aと第2貫通孔46とは重なり合わない状態に設定することができる(以下、「容器セット状態」という)。また
図4(a)(b)に示すように、底蓋40を内容器本体30に対して反時計回り方向(
図4(a)では右方向)に回転させ、規制凸部44の周方向の右端を規制凹部31Bの周方向の右端に当接させると、第1貫通孔31Aと第2貫通孔46とが重なり合って一つの連通孔αを形成することができる(以下、補充可能状態)。第1貫通孔31Aと第2貫通孔46が連通した補充孔αの奥(第2収容部Q2内)に、上部含浸層51と下部含浸層52との間に設けられた隙間Sが対向配置されている。
尚、
図3(a)(b)に示す容器セット状態では、ヒンジ39と凸リブ45とが容器軸O1に対して軸対称の関係にあるが、
図4(a)(b)に示す補充可能状態ではヒンジ39と凸リブ45とは容器軸O1に対して軸対称の関係とはならない。
【0030】
次に、第2収容部Q2内に含浸体50が収容された内容器Bを、外容器Aを構成する外容器本体10内に取り付ける。具体的には、内容器Bを、
図3(a)(b)に示す容器セット状態にすると共に、底蓋40を外容器本体10の開口部11内に嵌合させる。この際、ヒンジ39と凸リブ45とは容器軸O1に対して軸対称に関係にあるため、内容器B側のヒンジ39を外容器本体10側のヒンジ挿入部16内に挿入させることができると共に、内容器B側の凸リブ45を外容器本体10側のリブ挿入部17内に挿入させることができ、これにより外容器本体10に対する内容器Bの周方向の位置決めを行うことができる。
同時に、底蓋40の外周面に形成されている複数の被係止凹部43と、外容器本体10の内壁14に形成されている複数の係止凸部15とが互いに係合するため、外容器本体10に対する底蓋40の回転を規制することができる。
尚、内容器Bを上方に持ち上げると、被係止凹部43と係止凸部15との係合を解除することができ、内容器Bを外容器本体10の外部に容易に取り出すことが可能となっている。
【0031】
内容器Bを、外容器Aを構成する外容器本体10内に取り付けた状態では、底蓋40は内容器Bの底部だけでなく、外容器本体10の底部、すなわち収容容器1の底部をも兼ねている。
そして、この収容容器1では、外蓋20を開くことにより、第1収容部Q1から化粧用具Pを取り出すことができる。また内蓋35を開くことにより、第2収容部Q2内に収容され且つ内フランジ32の下側に設けられている含浸体50を露出させて使用することが可能となる。尚、ヒンジ挿入部16と蝶番用凹部13とは互いに周方向90度ずれた位置に形成されているため、外蓋20と内蓋35とは互いの干渉を避けて開くことが可能である。
【0032】
次に、含浸体への内容液の補充について説明する。
図5は補充用の内容液が入った補充具の一例を示し、(a)はノズル部組み付け前の補充具を示す部分断面図、(b)は組み立て工程を示す補充具の部分断面図である。
図5(a)に示すように、補充具70は、内容液が充填された胴部71の上部に縮径状に形成された頸部72を介して口筒部73が立設された補充具本体70Aを有すると共に、口筒部73の先端に破断可能な弱化部75を介して分離可能に一体に連結されたノズル部74を有して構成されている。口筒部73の外周面には雄ネジ部73aが刻設され、ノズル部74の基端側の内面には雄ネジ部73aに噛み合う雌ネジ部74aが刻設されている。またノズル部74の先端の側面にはノズル軸O2に対して垂直となる径方向に貫通する注出孔76が穿設されている。
【0033】
補充具70を使用するには、
図5(b)に示すように、弱化部75においてノズル部74をもぎり取って口筒部73の先端を開封した後、ノズル部74を反転させた状態で基端側の雌ネジ部74aを口筒部73側の雄ネジ部73aに螺合させ、口筒部73の先端にノズル部74を連結させた使用状態に設定する。
また収容容器1については、内容器Bを上方に持ち上げ、被係止凹部43と係止凸部15との係合を解除して、内容器Bを外容器本体10の外部に取り出す。尚、先に内容器Bを外容器本体10の外部に取り出し、その後に補充具70を使用状態に設定してもよい。
【0034】
次に、取り出した内容器Bにおいて、底蓋40を内容器本体30に対して反時計回り方向(
図4(a)では右方向)に回転させることにより、内容器Bを、容器セット状態から第1貫通孔31Aと第2貫通孔46とが重なり合って補充孔αが形成される補充可能状態に設定する。
そして、
図6に示すように、ノズル部74を補充孔αから第2収容部Q2内に水平に挿入させ、ノズル部74の先端を上部含浸層51と下部含浸層52の隙間S内に進入させる。
【0035】
ここで下部含浸層52の厚み寸法を、第1貫通孔31A及び第2貫通孔46の高さ位置と同じとなるように設定しておくと、補充孔αと隙間Sの高さ位置が一致してノズル部74の先端を隙間S内にスムーズに進入させることができるようになる点で好ましい。
そして、ノズル部74を上部含浸層51と下部含浸層52の隙間S内に進入させた状態において、胴部71を押圧することにより、内容液をノズル部74に設けられた注出孔76から上部含浸層51及び下部含浸層52に注出することができる。これにより、含浸体50の中央部である上部含浸層51と下部含浸層52の隙間Sに内容液を注出させることができるため、従来のように含浸体50を複雑な形状としなくても、含浸体50への含浸性を向上させることが可能となる。
【0036】
また
図5(a)(b)に示すように、補充具本体70Aの頸部72の外周面に、径方向外側に凸状の突出する環状フランジ78を設ける構成とするとも好ましい。この構成では、ノズル部74を補充孔α内に挿入したときに、環状フランジ78が補充具70と内容器B側との間に形成されやすい隙間を無くすように機能するため、第2収容部Q2内に注出された内容液が逆流して補充孔αから外部に漏れることを防止することができるようになる。
【0037】
補充後は、内容器Bを外容器本体10内に戻して再装着する必要があるが、補充孔αが開口した補充可能状態のままで行うと、ヒンジ39と凸リブ45とが容器軸O1に対して軸対称の関係にないため、内容器Bを外容器本体10内に装着することはできない。このため、内容器Bを装着する際には、必ず内容器Bを補充可能状態から容器セット状態に戻してから行う必要がある。このように内容器Bの装着は、第1貫通孔31Aと第2貫通孔46とが重なり合わない非連通状態(補充孔αが形成されない状態)に戻してから行う必要があることから、補充孔αからの内容液の液漏れを確実に防止することができる。
【0038】
(第2実施例)
図7は本発明の第2実施例を示す収容容器の断面図であり、(a)は収容容器を側方から見た縦断面図、(b)は(a)のb-b線矢視方向(正面側)からの縦断面図、
図8は補充具の他の一例を示し、(a)は補充具を示す部分断面図、(b)はノズル部を示す半断面図、(c)はノズル部を装着した補充具を示す部分断面図、
図9は第2実施例における補充時の状態を示す内容器の縦断面図である。
【0039】
第2実施例に示す収容容器1が、上記第1実施例と異なる点は、含浸体50及び補充具70の構成にあり、その他の構成及び効果は上記第1実施例同様である。
尚、上記第1実施例と同様に構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
図7(a)(b)に示すように、第2実施例の収容容器1において、含浸体50は、上記第1実施例と同様に上下2枚の上部含浸層51と下部含浸層52を有して構成されている。
含浸体50を構成する上部含浸層51及び下部含浸層52の各対向面には、複数の環状スリットSTが径方向に所定の間隔で同心円状に形成されており、含浸体50を構成する上部含浸層51及び下部含浸層52は、環状スリットSTが形成された対向面同士を互いに対向させた積層状態で第2収容部Q2内に収容されている。
【0040】
他方、
図8(a)に示すように、補充具70は補充用の内容液が入った補充具本体70Aと、ノズル部74とが別部材として形成されている。補充具本体70Aは口筒部73の先端に破断可能な弱化部75を介してもぎり部77が分離可能に一体に連結されて構成されている。また
図8(b)に示すように、ノズル部74の外周面にはノズル軸O2に対して垂直方向に穿孔する複数の注出孔76が設けられている。複数の注出孔76は、ノズル軸O2方向に沿って含浸体50側に形成されている環状スリットSTと同じ所定の間隔で形成されている。
また補充具本体70Aの頸部72の外周面には、ノズル部74を補充孔α内に挿入したときに、補充具70と内容器B側との間に形成されやすい隙間を塞ぎ、第2収容部Q2内に注出された内容液が逆流して補充孔αから外部に漏れることを防止する環状フランジ78が形成されている。
【0041】
第2実施例に示す補充具70では、弱化部75においてもぎり部77をもぎり取って口筒部73の先端を開封すると共に、
図8(c)に示すように、ノズル部74の基端を口筒部73の先端に螺着させて両者を連結することにより、使用状態に設定することができる。
第2実施例では、
図9に示すように、第1実施例同様、ノズル部74を第1貫通孔31A及び第2貫通孔46が連通することで形成された連通孔αから第2収容部Q2内に挿入し、ノズル部74の先端を上部含浸層51と下部含浸層52の隙間S内に進入させる。ノズル部74の先端が隙間S内に進入した状態では、ノズル部74に形成されている複数の注出孔76と、含浸体50を構成する上部含浸層51及び下部含浸層52に夫々形成された環状スリットSTとを対向させることができる。
【0042】
続いて、第1実施例同様に、補充具本体70Aの胴部71を押圧し、内容液を複数の注出孔76から隙間S内に注出させると、複数の注出孔76から注出した内容液を、上部含浸層51及び下部含浸層52に夫々形成された複数の環状スリットST内に夫々直接入り込ませることができる。
このように、第2実施例では、ノズル部74の複数の注出孔76から注出した内容液が、上部含浸層51及び下部含浸層52に夫々形成された環状スリットST内に直接入り込むことで、含浸体50に対して内容液を効率よく吸収させることができ、含浸体50への内容液の含浸性を向上させることができる。
【0043】
尚、ノズル部74に形成される複数の注出孔76の孔径は、ノズル部74の基端から先端部に向かって徐々に大きくなるように形成する構成が好ましい。注出孔76の孔径が全て等しい場合には、ノズル部74を流れる液量は基端部と先端部では異なることから、注出孔76から注出される液量は基端部側が多く、先端部に向かうほど少なくなる傾向がある。しかし、このような構成では、各注出孔76から注出される液量をほぼ等しくできるようになることから、各環状スリットSTに対して内容液をより均等に注出することができ、含浸体50への内容液の含浸性を更に向上させることが可能となる。
【0044】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば上記実施例では、収容容器1としてファンデーション等の内容液を収容するコンパクト容器の場合を示して説明したが、その他の内容液を収容する容器であってもよい。
また上記実施例では、含浸体50として、上部含浸層51と下部含浸層52とを高さ方向に2枚積み重ねた構成を示して説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではなく、2枚以上の含浸層を積み重ねことで構成されるものであってもよい。この場合、補充孔αについては、いずれかの含浸層間に形成される隙間Sに対向して配置される構成とすればよい。
また第2実施例では、環状スリットSTを上部含浸層51と下部含浸層52との対向面の夫々に形成した構成を示して説明したが、いずれか一方の対向面のみに形成する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、含浸体を有する収容容器の分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 : 収容容器
10 : 外容器本体
11 : 開口部
12 : フック用凹部
12a: 係止爪
13 : 蝶番用凹部13
14 : 内壁
15 : 係止凸部
16 : ヒンジ挿入部
17 : リブ挿入部
20 : 外蓋
21 : 天板
22 : 周壁
23a: 被係止爪
23 : ロック壁
24 : 軸部材
25 : アーム部
30 : 内容器本体
31 : 側壁部
31A: 第1貫通孔
31B: 規制凹部
31a: 第2係合部
32 : 内フランジ
33 : 環状溝
34 : 第1係合部
35 : 内蓋
36 : 周壁
36a: 係合爪
37 : 頂壁部
38 : シール筒部
39 : ヒンジ
40 : 底蓋
41 : 底壁
42 : 側壁
43 : 被係止凹部
44 : 規制凸部
45 : 凸リブ
46 : 第2貫通孔
47 : 被係合部
50 : 含浸体
51 : 上部含浸層
52 : 下部含浸層
60 : プッシュボタン
61 : 押圧片
70 : 補充具
70A: 補充具本体
71 : 胴部
72 : 頸部
73 : 口筒部
73a: 雄ネジ部
74 : ノズル部
74a: 雌ネジ部
75 : 弱化部
76 : 注出孔
77 : もぎり部
78 : 環状フランジ
A : 外容器
B : 内容器
H : 蝶番
M : ミラー
O1 : 容器軸
O2 : ノズル軸
P : 化粧用具
Q1 : 第1収容部
Q2 : 第2収容部
S : 隙間
ST : スリット
α : 補充孔