(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】バイセル構造体を含有する組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20240723BHJP
A61K 8/68 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240723BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K8/68
A61K8/86
A61K8/63
A61K8/34
A61K8/02
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019128893
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2018137522
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】塚本 大介
(72)【発明者】
【氏名】黒木 純子
(72)【発明者】
【氏名】紺野 義一
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-201677(JP,A)
【文献】特開2013-227294(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090740(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/061854(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/327
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(e);
(a)ホスファチジルコリン純度が70%以上のリン脂質
(b)セラミド類
(c)ポリオキシエチレンステロールエーテル及びポリオキシエチレンスタノールエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種の界面活性剤
(d)プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、からなる群から選ばれる少なくとも一種の二価アルコール
(e)水
を含有
する組成物であり、
前記成分(a)と前記成分(c)との含有質量割合(a)/(c)が0.2~2.0であり、
前記成分(a)及び前記成分(c)の合計に対する前記成分(b)との含有質量割合(b)/{(a)+(c)}が0.03~0.8であ
り、さらに、
前記組成物を電子顕微鏡にて観察した場合における観察視野中の全粒子像数に占めるディスク像数の割合により表される、バイセル構造体の割合が50%以上である、
ことを特徴とするバイセル構造体を含有する組成物(ただし、以下組成を満たす組成物を除く。)。
(配合成分) (質量%)
精製水 残部
エタノール 1
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
ヘキサメタリン酸ソーダ 適量
ダイナマイトグリセリン 6
ジプロピレングリコール 3
1,3-ブチレングリコール 3
水素添加大豆リン脂質 0.1
(「ニッコールレシノールS-10E」;日光ケミカル(株)製)セラミド 0.05
ポリオキシエチレン(10)フィトステロール 0.05
カルボキシビニルポリマー 0.08
水酸化ナトリウム 0.03
メチルパラベン 0.15
フェノキシエタノール 0.2
【請求項2】
化粧料または皮膚外用剤であることを特徴とする請求項1に記載のバイセル構造体を含有する組成物。
【請求項3】
波長700nmの光の透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれかの項に記載のバイセル構造体を含有する組成物。
【請求項4】
前記成分(d)に前記成分(a)、前記成分(b)、前記成分(c)を分散した後、前記成分(e)と混合撹拌して製造することを特徴とする請求項1~3のいずれかの項に記載のバイセル構造体を含有する組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミド類を含有したバイセル構造体を含有する組成物に関し、更に詳細には、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果に優れた組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バイセル構造体は、長鎖リン脂質で構成された二重層平板膜の端部を、短鎖リン脂質等の界面活性剤でカバーしたディスク状の分子集合体(
図1)であり、脂質二分子膜モデルとして生体膜の研究に利用されている。例えば、バイセル構造体に膜タンパク質を可溶化することで、NMRを用いた膜タンパク質の構造解析に有効である(非特許文献1参照)。また、バイセル構造体を適用することで、ブタ皮膚の角層内部へ浸透することや(非特許文献2参照)、三次元培養皮膚モデルの角層中へ浸透し角層のラメラ構造に影響することが知られており、キャリアとしても注目されている。
【0003】
セラミド類は角層細胞間脂質の主成分であり、肌のバリアー機能において重要な成分である。肌のバリアー機能の低下は、水分保持能や外部刺激からの防御能低下につながるものである。
【0004】
このようなセラミド類の機能に着目し、皮膚外用剤にセラミド類を配合する検討が多数なされている。例えば、特許文献1では、セラミドと、非イオン性界面活性剤と、セラミドの質量に対して10倍量~12000倍量の多価アルコールと、を含む混合物を100℃以上に加熱した状態で分散処理し、粗分散液を得ることと、粗分散液と水又は水を含む組成物とを混合した後、高圧乳化処理することと、を含むセラミド分散組成物の製造方法が開示されている。
特許文献2では、リポソームと、非イオン性界面活性剤とを含有してなる皮膚用乳化化粧料であって、該リポソームは、(A)リン脂質、(B)セラミド類および(C)ポリエチレングリコール脂肪酸エステルから形成されることを特徴とする皮膚用乳化化粧料が開示されている。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-174841号公報
【文献】特開2011-32229号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Hirotaka S, Seketsu F, Jun K, Shigeyuki Y, Hiroshi H and Kazuo T. Langmuir, 19, 9841-9844(2013)
【文献】L. Barbosa-Barros, A. de la Maza, J. Estelrich, A. M. Linares, M. Feliz, P. Walther, R. Pons, and O. López, Langmuir, 24, 5700-5706(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では高圧乳化処理することによりセラミド分散組成物が得られるものの、依然としてセラミドを高濃度で含有することは難しく、経時で高温においてセラミドが結晶を形成し、経時安定性に優れない場合や、結果として、あれ肌改善効果に優れない場合があった。さらに、高圧乳化を必要とするため、工業的に大量の分散組成物を得ようとする際には、特殊な装置が必要となる、といった問題点や、収率の低さという問題点が存在した。特許文献2ではセラミド類を含有するリポソームが得られるものの、セラミドを高濃度とした際に、セラミドがリポソーム内に留まり切らず、排出され、結晶が析出し、経時安定性に劣る場合や、リポソームの球状を保つ上で粒子径を小さくすることは困難であり、浸透感に劣る場合や、さらには、あれ肌改善効果に優れない場合もあった。
すなわち、セラミド類を含有し、あれ肌改善効果を充分に発揮させつつ、経時安定性が良好であり、さらには浸透感に優れる組成物を提供する技術は知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、リポソーム等の小胞体にセラミド類を高濃度で含有した際に、経時安定性が不良となる原因を考察し、臨界充填パラメーターが1に近いセラミド類は、曲率が高いリポソームやミセル等の構造体内部に、経時安定的に含有させることが難しい、と仮説を立てた。そこで、本発明者らは、平板膜構造という特徴的な構造有するバイセル構造体に着目し、セラミド類を含有させることを試みた。バイセル構造体の平板部を構成し得る成分として成分(a)リン脂質を、さらに、バイセル構造体の端部を構成し得る成分として成分(c)ポリオキシエチレンステロールエーテル及びポリオキシエチレンスタノールエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種の界面活性剤を選択し、さらに、成分(b)セラミド類、成分(d)プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、からなる群から選ばれる少なくとも一種の二価アルコール、成分(e)水を含有したものの、バイセル構造体の形成率に優れない場合が依然として存在した。かかる実情において、本発明者らは、前記成分(a)と前記成分(c)との含有質量割合(a)/(c)が特定であるときにバイセル構造体が効率的に形成され、さらに、前記成分(a)及び前記成分(c)の合計に対する前記成分(b)との含有質量割合(b)/{(a)+(c)}が特定である際に、前記成分(a)の分子の配向に対して前記成分(b)が顕著に安定に含有され、結果として、バイセル構造体の形成率に優れ、経時安定性が良好であり、さらに、浸透感、あれ肌改善効果が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、次の成分(a)~(e);
(a)リン脂質
(b)セラミド類
(c)ポリオキシエチレンステロールエーテル及びポリオキシエチレンスタノールエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種の界面活性剤
(d)プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、からなる群から選ばれる少なくとも一種の二価アルコール
(e)水
を含有し、
前記成分(a)と前記成分(c)との含有質量割合(a)/(c)が0.2~2.0であり、
前記成分(a)及び前記成分(c)の合計に対する前記成分(b)との含有質量割合(b)/{(a)+(c)}が0.03~0.8であることを特徴とするバイセル構造体を含有する組成物を提供する。
【0011】
また本発明は、化粧料または皮膚外用剤であることを特徴とする前記バイセル構造体を含有する組成物を提供する。
【0012】
また本発明は、波長700nmの光の透過率が50%以上であることを特徴とする前記バイセル構造体を含有する組成物を提供する。
【0013】
また本発明は、前記成分(d)に前記成分(a)、前記成分(b)、前記成分(c)を分散した後、前記成分(e)と混合撹拌して製造することを特徴とする前記バイセル構造体を含有する組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、経時安定性が良好であり、かつ、浸透感に優れ、さらには、あれ肌改善効果が良好である。多量のセラミド類を配合した場合でも経時安定性に優れ得るとともに、肌に適用すると、キメ改善効果および浸透感に優れた品質を有し得る。そのため、本発明の組成物は、化粧料や皮膚外用剤として有用であり、さらに化粧水剤型においては、透明度の高さに優れ、さらには審美性を演出し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明のバイセル構造体を含有する組成物の電子顕微鏡写真(実施例1:判定◎)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0017】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、成分(a)リン脂質を含有する。成分(a)リン脂質は、バイセル構造体の主に二分子膜構造の構成成分として用いられる。成分(a)のリン脂質とは、グリセリン又はスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸とリン酸が結合し、さらにリン酸にアルコールがエステル結合した構造をもつものをいう。リン脂質を構成する脂肪酸としては、炭素数7~22、好ましくは炭素数14~20の飽和及び不飽和カルボン酸が挙げられる。リン脂質を構成するアルコールとしては、窒素が含まれることが多く、このような例としては、コリン、エタノールアミン、イノシトール、セリンがある。
【0018】
本発明の成分(a)は、通常の化粧料や皮膚外用剤に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、大豆リン脂質、水素添加大豆リン脂質、卵黄リン脂質、水素添加卵黄リン脂質、ヒマワリリン脂質、水素添加ヒマワリリン脂質が挙げられ、これらは必要に応じて、一種又は二種以上を用いることができ、より好ましくは、水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄リン脂質が挙げられる。
【0019】
成分(a)のリン脂質のホスファチジルコリン純度は、バイセル構造体の形成率、経時安定性に優れる点で70%以上であるとより好ましいものとなる。具体的には、NIKKOLレシノールS-10E(日光ケミカルズ社製)、ベイシスLS-60HR(日清オイリオグループ社製)、卵黄レシチンPL-100P(キューピー社製)、HSL-70(ワイエムシィ社製)等の市販品を用いることができる。
【0020】
本発明における成分(a)の含有量は、特に限定されないが、0.01~5質量%(以下、単位に「%」と略す)が好ましく、0.05~3%がより好ましい。この範囲であれば、より経時安定性に優れる組成物を得ることができる。
【0021】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、成分(b)セラミド類を含有する。成分(b)と、成分(a)、成分(c)~(e)とを特定条件にて組み合わせることで、バイセル構造体を含有する組成物を得ることが可能となり、特に、成分(b)は、成分(a)と共に、バイセル構造体の主に平板部を構成する成分として、バイセル構造体の安定性に寄与し得る。成分(b)は、セラミド及びその誘導体を包含するものであり、天然抽出物であっても、合成物であってもよい。
また、本発明におけるセラミド類とは、通常、化粧料等に使用できる物であれば限定されないが、以下のものとして定義することができる。すなわち、分子中に1個以上の長鎖の直鎖および/もしくは分岐アルキル又はアルケニル基、更に、少なくとも2個以上の水酸基、1個以上のアミド基(および/またはアミノ基)を有する非イオン系両親媒性物質、あるいは当該非イオン系両親媒性物質の水酸基にフォスファチジルコリン残基、または糖残基が結合した誘導体として表現される一連のセラミド類である。例えば、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン及びそれらの長鎖脂肪酸アミドであるセラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド3B、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6I、セラミド6IIなどの天然セラミド類;スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンのリン脂質誘導体であるスフィンゴミエリン、フィトスフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質;それらの配糖体であるセレブロシドやガングリオシドなどのスフィンゴ糖脂質およびフィトスフィンゴ糖脂質などが例示され、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、セラミド類には、合成セラミド、プソイドセラミド等も含まれるが、あれ肌改善効果やバイセル構造体の形成率に優れる点で、天然セラミドであることが好ましく、セラミド2、セラミド3からなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。
【0022】
本発明における成分(b)の含有量は、特に限定されないが、0.05~3%が好ましく、0.1~2%がより好ましい。この範囲であれば、より経時安定性、あれ肌改善効果に優れる組成物を得ることができる。
【0023】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、成分(c)ポリオキシエチレンステロールエーテル及びポリオキシエチレンスタノールエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種の界面活性剤を含有する。成分(c)と、成分(a)、成分(b)、成分(d)~(e)とを特定条件にて組み合わせることで、バイセル構造体を含有する組成物を得ることが可能となり、特に、成分(c)はバイセル構造体の主に端部を構成する成分として、バイセル構造体の安定性に寄与し得る。
成分(c)の親水部に相当するエチレンオキサイドの平均付加モル数は特に制限されないが、10~30であることが好ましく、20~30であることがより好ましい。この範囲であれば、より成分(c)の含有量が少ない範囲で、バイセル構造体を形成することができ、バイセル構造体の形成率に優れ、より経時安定性、あれ肌改善効果に優れる。また、成分(c)の疎水部としては、フィトステロールを含有することが好ましく、この場合、セラミド類の結晶形成を阻害し、経時安定性に優れる。その中でも、バイセル構造体の形成率、経時安定性、あれ肌改善効果の点で、POE(30)フィトステリルエーテルがさらにより好ましく、市販品としては、NIKKOL BPS-30(日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。成分(c)は必要に応じて、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明における成分(c)の含有量は、特に限定されないが、0.1~3%が好ましく、0.5~2%がより好ましい。この範囲であれば、より経時安定性に優れ、さらに浸透感に優れる組成物を得ることができる。
【0025】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物において、成分(a)と成分(c)との含有質量割合(a)/(c)は0.2~2である。含有質量割合(a)/(c)が0.2未満、もしくは、2を超えると、バイセル構造体の形成率に優れない場合がある。形成される粒子のうちバイセル構造体の比率が高くなり、セラミド類を安定に配合することができる点で、含有質量割合(a)/(c)は、0.2~1.6が好ましい。
また、成分(a)及び成分(c)の合計に対する成分(b)との含有質量割合(b)/{(a)+(c)}は0.03~0.8である。含有質量割合(b)/{(a)+(c)}が0.03未満、もしくは、0.8を超えると、バイセル構造体の形成率に優れない場合や、経時安定性に優れない場合、また十分なあれ肌改善効果が得られない場合がある。含有質量割合(b)/{(a)+(c)}は、経時安定性、あれ肌改善効果の点から、0.1~0.5が好ましい。
【0026】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、成分(d)プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価アルコールを含有する。
成分(d)は、成分(a)、成分(b)、成分(c)を水に分散させる際の溶媒となり得、経時安定性に優れる組成物を調製し得る。成分(d)はセラミド類との溶解性に優れ、経時安定性が良好となる点からジプロピレングリコールであることが好ましい。これらは必要に応じて、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明における成分(d)の含有量は、特に限定されないが、1~40%が好ましく、3~30%がより好ましい。この範囲であれば、バイセル構造体を含有する組成物の経時安定性だけでなく、あれ肌改善効果としても特に優れることから好ましい。
【0028】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、成分(e)水を含有する。成分(e)は、化粧料や皮膚外用剤に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、精製水の他、硬水、軟水、天然水、上水道水、海水、海洋深層水、電解アルカリイオン水、電解酸性イオン水、イオン水、クラスター水や、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水などの植物由来の水蒸気蒸留水等の水を用いることができる。
本発明における成分(e)の含有量は、特に限定されないが、経時安定性の観点から、概ね50~99%が好ましい。
【0029】
また本発明のバイセル構造体を含有する組成物には、本発明の効果及びバイセル構造体の形成を妨げない範囲で、通常の化粧料や皮膚外用剤に配合される前記成分(a)~(e)以外の任意成分、具体的には、前記成分(a)~(e)以外の、油剤、アルコール類、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、皮膚有効成分等を含有することができる。
【0030】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、特に限定されず、油剤を含有することができる。具体的には、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、炭化水素類、油脂類、エステル油類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が挙げられる。より具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル等のエステル類、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステアリル・2-オクチルドデシル)等のアミノ酸系油剤、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油類、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0031】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、特に限定されず、油剤を含有することができる。乳化を誘引せず、バイセル構造体の形成率に優れる点で、成分(a)及び成分(c)の合計に対する油剤との含有質量割合(油剤)/{(a)+(c)}は、0.8以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましく、0.1以下であることがより好ましく、0.05以下であることがさらにより好ましい。
【0032】
また、本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、炭素数が14以上の分岐高級アルコールを、特に限定されず、含有することができる。バイセル構造体中における成分(a)の配列を乱さず、経時安定性に優れる点で、成分(a)に対する炭素数が14以上の分岐高級アルコールとの含有質量割合(炭素数が14以上の分岐高級アルコール)/(a)は、0.5以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.1以下であることがより好ましく、0.05以下であることがさらにより好ましい。
【0033】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、肌効果向上の観点から、皮膚有効成分を含有することが好ましい。さらに、皮膚有効成分としては、通常の化粧料や皮膚外用剤に配合される成分であれば、特に限定されず、加水分解を受けやすい物質でもよい。皮膚有効成分が、加水分解を受けやすい物質でもよい理由としては、その皮膚有効成分がバイセル構造体内に含有された際、バイセル構造体の平板部は密な構造をとることから、その皮膚有効成分に水分子が接近しにくくなるから、と考察できる。
【0034】
皮膚有効成分としては、特に限定されないが、紫外線吸収剤としてオクチルメトキシシンナメート、抗炎症剤としてグリチルレチン酸ステアリル、ハッカ油、ビタミン類、抗酸化剤としてコエンザイムQ10、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシトルエン等が挙げられ、これらは必要に応じて、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。ビタミン類としては、レチノール、ビタミンA類(例えばビタミンAパルミテート)、ビタミンB類(例えばビタミンB6パルミテート)、ビタミンD類、ビタミンE類、ビタミンK類、ビタミンH類等が挙げられる。これらの中でも、肌効果や、経時安定性の観点から、ビタミンC類、ビタミンE類等が好ましく、特に、ビタミンC類としては、アスコルビン酸パルミテート、α-トコフェロール-2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル等がより好ましく、ビタミンE類としては、天然ビタミンE、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、σ-トコフェロール等のビタミンE、さらには、アセテート、ビタミンEニコチネート、α-トコフェロール-2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル等がより好ましい。
【0035】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、コレステロールを含有することは、特に限定されず可能であるものの、経時安定性の観点から、実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明における実質的に含有しないとは、含有量が0.5%以下であることを指すこととする。経時安定性の観点から、コレステロールの含有量は、0.3%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましく、0.02%以下であることがより好ましく、0.01%以下であることがさらにより好ましい。
成分(b)とコレステロールの凝集によって生じ得る経時安定性不良を改善する点から、成分(b)に対するコレステロールとの含有質量割合(コレステロール)/(b)は、0.5以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.1以下がより好ましく、0.01以下がさらにより好ましい。
【0036】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、特に限定されず、通常の化粧料や皮膚外用剤を製造する種々の方法によって製造することができるが、成分(d)に、成分(a)、成分(b)、成分(c)を分散した後、成分(e)と混合撹拌して製造する製造方法が、収率の高さや、特殊な装置(例えば、高圧乳化装置等)を必要としない点から、量産に適しており、好ましい。具体的には、温度80℃程度に加熱した成分(d)に、成分(a)、成分(b)及び成分(c)を分散させ、該溶液に温度80℃程度に加熱した成分(e)を加え混合撹拌した後、徐々に室温まで冷却し、必要に応じて任意成分を添加し、混合撹拌を行う。調製時及び冷却時の撹拌方法についても、特に限定されない。
【0037】
以上のようにして本発明のバイセル構造体を含有する組成物が得られるが、バイセル構造体は、透過型電子顕微鏡観察により、その存在と粒子径を確認できる(
図2)。本発明のバイセル構造体の平均粒子径は、長径が好ましくは10~60nm、より好ましくは15~40nm、短径が好ましくは1~10nm、より好ましくは3~8nmである。本発明の組成物においては、多重層ベシクル粒子(概ね50nm以上の同心円状の像)が共存する場合もあるが、観察視野における粒子の半数以上がバイセル構造体(ディスク状の像)であれば、本発明のバイセル構造体を含有する組成物としての効果を発揮するものである。すなわち本発明におけるバイセル構造体の割合は、電子顕微鏡による観察視野中の(ディスク像数/全粒子像数)で表され、50%以上であり、80%以上が好ましく、さらには100%が好ましい。
【0038】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物の透過率は、特に限定されないが、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、経時安定性に優れ、さらに、審美性も好ましい。透過率は、分光光度計(セルの光路長:10mm、光の波長700nm)で測定することが可能である。分光光度計として特に限定されないが、「UV-2500PC UV-VIS REDCORDING SPECTROPHOTOMETER」(SHIMADZU社製)等を用いることができる。
【0039】
本発明のバイセル構造体を含有する組成物は、そのまま、化粧料や皮膚外用剤として用いても良く、またバイセル構造体を含有する組成物を調製した後に、他の成分や乳化組成物等と組み合わせて、化粧料や皮膚外用剤とすることもでき、種々の用途の化粧料や皮膚外用剤として利用できる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム等のスキンケア化粧料、化粧用下地化粧料等の化粧料、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等の皮膚外用剤を例示することができる。またその使用法は、手や指で使用する方法、コットンや不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定され
るものではない。
【0041】
[実施例1~11及び比較例1~7:化粧水]
下記製造方法に従って、表1~3に示す組成の組成物を調製した。
バイセル構造体の形成率の確認は、透過型電子顕微鏡観察にて行い、下記の判定基準により評価した。また、経時安定性について、下記の評価方法にて評価した。これらの組成物を、化粧水として皮膚(全顔または前腕)に塗布し、下記の方法に基づき浸透感、あれ肌改善効果の評価を行った。評価結果を併せて表1~3に示した。
【0042】
【表1】
【表2】
【表3】
(製造方法)
1:成分(1)~(13)を80℃に加熱溶解する。
2:成分(14)を80℃で加熱する。
3:1に2を添加し、ディスパーミキサーにて混合攪拌する。
4:3を室温まで冷却して、成分(15)~(17)を添加し、混合撹拌し、化粧水を得た。
【0043】
(評価項目1:バイセル構造体の形成率)
バイセル構造体の形成状態を、透過型電子顕微鏡にて観察した。バイセル構造体に特有のディスク状の像について、任意に選択した電子顕微鏡による観察視野(350nm×350nm)中の(ディスク像数/全粒子像数)を算出し、下記の判定基準を用いて判定した。
[判定基準]
(評価) :(判定)
(ディスク像数/全粒子像数)が0.8以上 : ◎
(ディスク像数/全粒子像数)が0.5以上0.8未満: ○
(ディスク像数/全粒子像数)が0.5未満 : ×
【0044】
(評価項目2:経時安定性)
各試料について、50℃の恒温下2週間保管したものと、25℃で2週間保管したものとを比較し、透明性や析出物の有無について目視にて評価を行い、下記の判断基準を用いて判定した。25℃で2週間保管したものは、製造直後と比較して差異は認められなかった。
[判定基準 ]
(評価) :(判定)
外観に変化なし : ◎
外観に僅かに濁りが見られる : ○
外観が明らか濁っている、または析出物が確認される : △
外観が著しく濁っている、または析出物が沈殿している: ×
【0045】
(評価項目3:浸透感)
20~40代のパネル20名に、上記のバイセル構造体を含有する組成物を化粧水として全顔に使用してもらい、その浸透感について、下記の評価基準に従って、評価を行った。更に全パネルの評点の平均値を算出し、下記の判定基準を用いて判定した。
[評価基準]
(評価) :(評点)
非常に感じる : 5点
やや感じる : 4点
普通 : 3点
あまり感じない: 2点
感じない : 1点
[判定基準]
(全パネルの評点の平均値):(判定)
平均点4.0以上 : ◎
平均点3.0以上4.0未満: ○
平均点2.0以上3.0未満: △
平均点2.0未満 : ×
【0046】
(評価方法4:あれ肌改善効果)
20~40代のパネル10名の前腕をアセトン・エーテル混合液および精製水で処理し人工的に、あれ肌を作製したのち、上記のバイセル構造体を含有する組成物を2週間に塗布してもらい、マイクロスコープによる観察でキメの改善を下記の判断基準にしたがって評価した。更に全パネルの評点の平均値を算出し、下記の判定基準を用いて判定した。
[評価基準]
(評価) :(評点)
著しく改善した : 4点
改善した : 3点
やや改善した : 2点
改善しなかった : 1点
[判定基準]
(全パネルの評点の平均値) :(判定)
平均点3.25以上 : ◎
平均点2.50以上3.25未満 : ○
平均点1.75以上2.50未満 : △
平均点1.75未満 : ×
【0047】
表1~3の結果から明らかなように、実施例1~11は、評価項目:バイセル構造体の形成率、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果において、優れるものであった。なお、実施例1~11は、分光光度計「UV-2500PC UV-VIS REDCORDING SPECTROPHOTOMETER」(SHIMADZU社製)を用い、光路長10mm×光路幅10mmのガラスセルにて、リファレンスには精製水を使用し、光の波長700nmで測定した透過率が、50%以上であった。
一方、(a)/(c)が0.2未満である比較例1はバイセル構造体の形成率、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果に劣っていた。比較例1は、バイセル構造体ではなく、ミセルが多く形成されていた。
(a)/(c)が2.0を超える比較例2はバイセル構造体の形成率、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果に劣っていた。比較例2は、バイセル構造体ではなく、リポソームが多く形成されていた。
(b)/{(a)+(c)}が0.8を超える比較例3では、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果に劣っていた。
(b)/{(a)+(c)}が0.03未満である比較例4では、あれ肌改善効果に劣っていた。
成分(c)を含有せず、他のノニオン界面活性剤を用いた比較例5,6,7においては、比較例5では、経時安定性、あれ肌改善効果が劣っており、比較例6,7では、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果に劣っていた。
【0048】
[実施例12:化粧水]
(成分) (%)
1.水素添加卵黄リン脂質(注2) 0.1
2.POE(30)フィトステロールエーテル 0.1
3.セラミド2 0.01
4.コレステロール 0.01
5.ステアリン酸 0.01
6.ジプロピレングリコール 10.0
7.精製水 残量
8.グリシン 1.0
9.テアニン 1.0
10.ジグリセリン 3.0
11.エタノール 5.0
12.防腐剤 適量
13.香料 適量
(注2)卵黄レシチンPL-100P(キューピー社製)
【0049】
(製造方法)
A:成分(1)~(5)を80℃で加熱溶解する。
B:成分(6)を80℃に加熱する。
C:BにAを添加し混合攪拌しながらバイセル構造体を形成させ、室温まで冷却する。
D:Cに成分(7)~(13)を添加混合し、化粧水を得た。
(結果)
実施例12の化粧水は、バイセル構造体の形成率、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果に優れた化粧料であった。
【0050】
[実施例13:乳液]
(成分) (%)
1.スクワラン 5.0
2.コレステロール 3.0
3.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 2.0
4.ベヘニルアルコール 0.5
5.1,3-ブチレングリコール 7.0
6.グリセリン 5.0
7.アクリル酸-メタクリル酸アルキル共重合体(注3) 0.2
8.防腐剤 適量
9.トリエタノールアミン 0.2
10.エデト酸二ナトリウム 0.02
11.精製水 残量
12.香料 適量
13.水素添加大豆リン脂質(注4) 1.8
14.POE(30)フィトステロールエーテル 1.0
15.POE(20)コレステリルエーテル 0.6
16.水素添加リゾリン脂質 0.1
17.セラミド2 0.5
18.コレステロール 0.3
19.パルミチン酸 0.2
20.ジプロピレングリコール 7.0
21.精製水 10.0
(注3)ペミュレンTR-2(NOVEON社製)
(注4)NIKKOLレシノールS-10E(日光ケミカルズ社製)
【0051】
(製造方法)
A:成分(1)~(6)を80℃にて加熱溶解する。
B:成分(7)~(11)を80℃にて加熱後、Aに添加し乳化する。
C:Bを室温まで冷却後する。
D:成分(13)~(20)を80℃で加熱溶解する。
E:成分(21)を80℃に加熱し、Dに添加しながら混合攪拌し、バイセル構造体を形成する。
F:Eを冷却後、Cに添加し、さらに成分(12)を添加し、乳液を得た。
(結果)
実施例13の乳液は、バイセル構造体の形成率、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果に優れた化粧料であった。
【0052】
[実施例14:クリーム]
(成分) (%)
1.水素添加大豆リン脂質(注1) 2.0
2.トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 3.0
3.ステアリルアルコール 5.0
4.流動パラフィン 10.0
5.アボガド油 5.0
6.ワセリン 3.0
7.ソルビトール 10.0
8.精製水 残量
9.エタノール 3.0
10.防腐剤 適量
11.香料 適量
12.水素添加大豆リン脂質(注4) 1.5
13.POE(10)フィトステリルエーテル 1.3
14.セラミド2 0.4
15.フィトステロール 0.2
16.水酸化大豆リン脂質 0.05
17.プロピレングリコール 15.0
18.精製水 10.0
【0053】
(製造方法)
A:成分(1)~(6)を70℃で加熱溶解する。
B:成分(7)、(8)を70℃で加熱溶解後、Aに添加し、乳化する。
C:Bを室温まで冷却後、成分(9)~(11)を添加する。
D:成分(12)~(17)を80℃で加熱溶解する。
E:成分(18)を80℃に加熱し、Dを添加しながら混合攪拌しバイセル構造体を形成する。
F:Eを冷却後、Cに添加し、クリームを得た。
(結果)
実施例14のクリームは、バイセル構造体の形成率、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果に優れた化粧料であった。
【0054】
[実施例15:シート状化粧料]
(成分) (%)
1.水素添加ヒマワリリン脂質 0.05
2.大豆リン脂質 0.05
3.POE(10)コレステリルエーテル 0.03
4.POE(20)フィトステリルエーテル 0.05
5.セラミド2 0.02
6.セラミド3 0.01
7.アスタキサンチン 0.001
8.1,3-ブチレングリコール 10.0
9.精製水 残量
10.フェノキシエタノール 1.0
11.エタノール 5.0
12.アスコルビン酸グルコシド 1.0
13.ヒアルロン酸ナトリウム 0.2
14.水酸化ナトリウム 0.13
【0055】
(製造方法)
A:成分(1)~(8)を80℃で加熱溶解する。
B:成分(9)を80℃に加熱し、Aを添加しながら混合攪拌しバイセル構造体を形成する。
C:Bを冷却後、成分(10)~(14)を添加し、これを不織布に含浸させる。
D:Cをアルミラミネートの袋状容器に密封充填し、シート状化粧料を得た。
(結果)
実施例15のシート状化粧料は、バイセル構造体の形成率、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果に優れた化粧料であった。
【0056】
[実施例16:クリーム状下地化粧料]
(成分) (%)
1.酸化亜鉛(平均粒子径200nm) 2.0
2.ジメチルポリシロキサン 25.0
3.PEG-9ポリジメチルシロキサンエチルジメチコン 4.0
4.ミリスチン酸イソプロピル 1.5
5.アクリル-シリコーン系グラフト共重合体混合物(注2) 2.0
6.精製水 残量
7.エタノール 5.0
8.プロピレングリコール 5.0
9.シリカ末 2.0
10.防腐剤 適量
11.香料 適量
12.水素添加大豆リン脂質(注4) 0.2
13.POE(5)フィトステリルエーテル 0.02
14.POE(10)フィトステリルエーテル 0.13
15.セラミド2 0.05
16.ジプロピレングリコール 2.0
17.精製水 5.0
(注2)KP-549(アクリル-シリコーン系グラフト共重合体60%:メチルトリメチコン40%混合物)(信越化学工業社製)
【0057】
(製造方法)
A:成分(1)~(5)を3本ロールミルで分散処理する。
B:成分(6)~(11)を混合する。
C:BにAを加え、乳化する。
D:成分(12)~(16)を80℃で加熱溶解する。
E:成分(17)を80℃に加熱し、Dを添加しながら混合攪拌し、バイセル構造体を形成する。
F:Eを冷却後、Cに添加してクリーム状下地化粧料を得た。
(結果)
実施例16のクリーム状下地化粧料は、バイセル構造体の形成率、経時安定性、浸透感、あれ肌改善効果に優れた化粧料であった。