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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】樹脂シート及び樹脂硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240723BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20240723BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240723BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240723BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20240723BHJP
   C08K 7/24 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C08L101/00
C08J5/04 CEZ
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/38
C08K7/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019225646
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021095456
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】首藤 広志
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001849(JP,A)
【文献】特開2014-193965(JP,A)
【文献】特開2017-057340(JP,A)
【文献】特開2019-176100(JP,A)
【文献】特開2015-040162(JP,A)
【文献】特開2006-328110(JP,A)
【文献】特開2000-204271(JP,A)
【文献】特開平11-060938(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0137585(KR,A)
【文献】特開2019-178300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一樹脂と、
第一の無機粒子と、
第二の無機粒子と、
を含む樹脂シートであって、
前記第一の無機粒子が空孔を含有し、
前記第二の無機粒子は空孔を含まず、
前記第一の無機粒子が酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムであり、
前記空孔の少なくとも一部には前記第一樹脂が充填され、
前記樹脂シートの断面において、前記第一の無機粒子に充填している前記第一樹脂の全面積が前記樹脂シートの全樹脂面積中の0.2%以上、3.5%以下である、
ことを特徴とする樹脂シート。
【請求項2】
前記第二の無機粒子が酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムである
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
第三の無機粒子を更に含み、
前記第三の無機粒子は窒化ホウ素である、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
更に繊維基材を含む
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に樹脂シート。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の樹脂シートの硬化物。
【請求項6】
第一樹脂と、
第一の無機粒子と、
第二の無機粒子と、
を含む樹脂シートの硬化物であって、
前記第一の無機粒子が空孔を含有し、
前記第二の無機粒子は空孔を含まず、
前記第一の無機粒子が酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムであり、
前記空孔の少なくとも一部には、前記第樹脂が充填され、
前記樹脂シートの断面において、前記第一の無機粒子に充填している前記第樹脂の全面積が樹脂シートの全第樹脂面積中の0.2%以上、3.5%以下である、ことを特徴とする、樹脂硬化物。
【請求項7】
前記第二の無機粒子が酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムである
ことを特徴とする請求項6に記載の樹脂硬化物。
【請求項8】
第三の無機粒子を更に含み、
前記第三の無機粒子は窒化ホウ素である、請求項6又は7に記載の樹脂硬化物。
【請求項9】
更に繊維基材を含む
ことを特徴とする請求項6~8の何れか1項に記載の樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート及び樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの高温環境用途に、各種の電子部品が広く用いられる傾向にある。このため、電子部品に用いられる樹脂基板の熱的特性に関して、研究および開発が盛んに行われている。
樹脂基板の製造工程では、樹脂組成物をシート状に成形したのち、そのシート状の樹脂組成物(樹脂シート)を硬化反応させる。これにより、樹脂組成物の硬化反応物(樹脂硬化物)を含む樹脂基板が製造される。
この樹脂組成物の組成などに関しては、既にさまざまな提案がなされている。具体的には、熱伝導性を向上させるために、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムなどの無機粒子が樹脂組成物に含有されている。また、流動性を低下させることなく、熱伝導率を向上させるために、平均粒子径(D50)が1nm~500nmである第一のフィラーと、平均粒子径(D50)が1μm~100μmである第二のフィラー含む樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-138276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物からなる樹脂基板は、未だ十分な熱的特性が得られていないため、改善の余地がある。改善方法として、高熱伝導フィラーを高密充填することにより熱的特性は向上するが、流動性などの他特性の悪化が問題となる。したがって、他特性を下げることなく、優れた熱的特性を得ることが可能な樹脂組成物、樹脂シート、樹脂硬化物および樹脂基板を提供することが望まれている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空孔が形成されている第一の無機粒子をフィラーとして用いることで、フィラー内部に樹脂が充填しており、フィラー間の樹脂成分が減少することでフィラー同士の接触面が増加し、熱伝導率が向上される。また、フィラー間にも流動に必要な樹脂分が存在することで、流動性を維持できる。流動性を低下させることなく、熱伝導率を向上させる樹脂シート及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
[1] 第一樹脂と、第一の無機粒子と、第二の無機粒子と、を含む樹脂シートであって、
前記第一の無機粒子が空孔を含有し、前記第二の無機粒子は空孔を含まず、
前記空孔の少なくとも一部には前記第一樹脂が充填され、
前記樹脂シートの断面において、前記第一の無機粒子に充填している前記第一樹脂の全面積が前記樹脂シートの全樹脂面積中の0.2%以上、3.5%以下である、
ことを特徴とする樹脂シート。
[2] 前記第一の無機粒子が酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムであることを特徴とする[1]に記載の樹脂シート。
[3] 前記第二の無機粒子が酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の樹脂シート。
[4] 第三の無機粒子を更に含み、前記第三の無機粒子は窒化ホウ素である、[1]~[3]に記載の樹脂シート。
[5] 更に繊維基材を含むことを特徴とする[1]~[4]に記載の樹脂シート。
[6] [1]~[5]に記載の樹脂シートの硬化物。
[7] 第二樹脂と、第一の無機粒子と、第二の無機粒子と、を含む樹脂シートの硬化物であって、前記第一の無機粒子が空孔を含有し、前記第二の無機粒子は空孔を含まず、
前記空孔の少なくとも一部には、前記第二樹脂が充填され、
前記樹脂シートの硬化物の断面において、前記第一の無機粒子に充填している前記第二樹脂の全面積が樹脂硬化物の全第二樹脂面積中の0.2%以上、3.5%以下である、
ことを特徴とする、樹脂硬化物。
[8] 前記第一の無機粒子が酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムであることを特徴とする[7]に記載の樹脂硬化物。
[9] 前記第二の無機粒子が酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムである
ことを特徴とする[7]又は[8]に記載の樹脂硬化物。
[10] 第三の無機粒子を更に含み、前記第三の無機粒子は窒化ホウ素である、[7]~[9]に記載の樹脂硬化物。
[11] 更に繊維基材を含むことを特徴とする[7]~[10]に記載の樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂シートにおいて、空孔が形成されている第一の無機粒子をフィラーとして含むことで、フィラー内部に樹脂が充填しており、フィラー間の樹脂成分が減少することでフィラー同士の接触面が増加し、熱伝導率が向上される。また、フィラー間にも流動に必要な樹脂分が存在することで、流動性を維持できる。そのため、流動性を低下させることなく、熱伝導率を向上させる樹脂シート及びその硬化物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の樹脂シートに含まれる第一の無機粒子の中空部分の模式図であり、(A)単一中空型、(B)多中空型。
図2】本発明の一実施形態の樹脂シートに含まれている空孔が形成されている第一の無機粒子と第二の無機粒子を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態の樹脂シートの断面SEM図である。
図4】本発明の一実施形態の樹脂硬化物である配線基板の製造方法を説明するための断面図である。
図5】本発明のその他の実施形態の樹脂硬化物である積層基板の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0010】
(樹脂シート)
本発明の樹脂シートは、第一樹脂と、第一の無機粒子と、第二の無機粒子と、を含む。第一の無機粒子が空孔を含有する粒子である。前記第二の無機粒子は空孔を含まない粒子である。その空孔の少なくとも一部には、第一樹脂が充填される。樹脂シートの断面において、第一の無機粒子に充填している第一樹脂の全面積が樹脂シートの全樹脂面積中の0.2%以上、3.5%以下である。すなわち、本発明の樹脂シートは、第一樹脂とフィラーとを含む。フィラーが少なくとも、前記空孔を含有する第一の無機粒子と空孔を含有しない第二の無機粒子とを含む。本発明の樹脂シートは、少なくとも一部のフィラー(第一の無機粒子)内部に第一樹脂が充填しており、フィラー間の樹脂成分が減少することでフィラー同士の接触面が増加し、熱伝導率が向上される。また、フィラー間にも流動に必要な樹脂分が存在することで、流動性を維持できる。
【0011】
本発明の樹脂シートの断面において前記第一の無機粒子の空孔に充填している前記樹脂の面積が前記樹脂シートの全樹脂面積中の割合は、「第一の無機粒子の空孔に含まれる樹脂量」ともいう。第一の無機粒子の空孔に含まれる樹脂量は、樹脂シートの硬化物の断面のSEM写真から空孔に含まれる樹脂の面積比を測定することで得られる。詳細は実施例で説明する。
【0012】
本発明の樹脂シートの一実施形態は、プリプレグである。プリプレグは、第一樹脂と、前記第一の無機粒子と、第二の無機粒子と、繊維基材とを含むことが好ましい。本実施形態のプリプレグは、樹脂組成物と繊維基材を用いて作製される。
【0013】
<樹脂組成物>
本実施形態のプリプレグに用いる樹脂組成物は、無機粒子と熱硬化性樹脂を含む。この無機粒子が、前記第一の無機粒子と第二の無機粒子とを含む。本実施形態のプリプレグは同じ種類の熱硬化性樹脂組成物を使用しても、あるいは異なる種類の熱硬化性樹脂組成物を使用してもよく、製造の容易さの観点から、同じ種類の熱硬化性樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0014】
〔無機粒子〕
本実施形態のプリプレグに用いる無機粒子は、第一の無機粒子と第二の無機粒子とを含む。
【0015】
前記樹脂組成物に含まれる無機粒子の含有率(フィラー量ともいうことがある)は特に制限されない。無機粒子は、樹脂組成物の全固形分の全体積中の40体積%~80体積%で含有されることが好ましい。樹脂組成物において、無機粒子が全体積中の40体積%~80体積%で含有されると、樹脂組成物の熱伝導率をより高める効果が得られる。
無機粒子の含有率は、熱伝導性及び流動性を高める観点から、40体積%~70体積%であることがより好ましく、50体積%~65体積%であることがさらに好ましい。
ここで、樹脂組成物の全固形分とは、樹脂組成物から揮発性の成分を除去した残分を意味する。
【0016】
なお、本明細書における無機粒子の含有率(体積%)は、下記の式(1)により求めた値とする。
【0017】
無機粒子の含有率(体積%)=(W1/D1)/((W1/D1)+(W2/D2)+Σ(Wi/Di))×100 ・・・・・(1)
【0018】
ここで、各変数は以下の通りである。
W1:無機粒子の質量組成比(質量%)
W2:熱硬化性樹脂の質量組成比(質量%)
Wi:熱硬化性樹脂以外のその他の各任意固形成分の質量組成比(質量%)
D1:無機粒子の比重
D2:熱硬化性樹脂の比重
Di:熱硬化性樹脂以外のその他の各任意固形成分の比重
【0019】
〔第一の無機粒子〕
第一の無機粒子は、空孔を含有する粒子である。第一の無機粒子の空孔は、樹脂を充填することができる空孔(開口空孔)を有する。前記空孔には、前記樹脂が充填され、前記樹脂シート(プリプレグ)の断面において、前記第一の無機粒子の空孔に充填している前記樹脂の面積が前記樹脂シートの全樹脂面積中の0.2%以上、3.5%以下である。
【0020】
樹脂シート(プリプレグ)において、第一の無機粒子の空孔に、所定量の樹脂を充填することができれば、開口空孔のサイズ、形状、及び1個粒子当たりの空孔の数、開口空孔の比率は、特に限定がない。
【0021】
第一の無機粒子の例は、図1に示すように、単一中空型の中空(hollow)粒子(A)、多中空型の中空粒子(B)を含む。樹脂の充填が容易などの観点から、単一中空型の中空(hollow)粒子(A)、多中空型の中空粒子(B)が好ましい。
【0022】
第一の無機粒子は、円形度0.8以下であることが好ましい。形状が丸から離れた粒子を使用すると粒子間の接触点が増加して無機粒子の充電率が高いときにより熱伝導率が高くなりやすい。
無機粒子の円形度は、相当円の周囲長と粒子投影像の周囲長との比(相当円の周囲長/粒子投影像の周囲長)から得られる。一般的な画像解析式粒度分布測定用ソフトを用いれば円形度も同時に得ることができ、その値を使用できる。
【0023】
第一の無機粒子の平均粒径D50は5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上75μm以下であることがより好ましく、20μm以上45μm以下であることが更に好ましい。
開口空孔のサイズは、粒子径の25以上75%以下あることが好ましい。すなわち、本実施形態の第一の無機粒子は、好ましく、粒子径が25以上75%以下である空孔を含有する粒子である。
第一の無機粒子は、空孔に樹脂が充填される粒子と空孔に樹脂が充填されてない粒子とを含む。第一の無機粒子にはすべての空孔に樹脂が充填されることが好ましい。
【0024】
第一の無機粒子としては、酸化マグネシウム(MgO)粒子、酸化アルミニウム(Al)粒子などが挙げられる。
第一の無機粒子が酸化マグネシウム(MgO)粒子であることが好ましい。第一の無機粒子としての酸化マグネシウム(MgO)粒子は、安価で、熱伝導率(42~60W/(m・K))が高く、かつ体積抵抗率も高い(>1014Ω・cm)ため、好ましい。
【0025】
前記第一の無機粒子の含有比率が、全無機粒子において、0.5体積%以上15体積%以下であることが好ましく、4.5体積%以上10体積%以下であることがより好ましく、5体積%以上8体積%以下であることが更に好ましい。第一の無機粒子の割合がこの範囲に入る場合、本発明の効果を発揮することができ、かつ、空孔のある粒子が多すぎることがなく、嵩密度との兼ね合いも適切である。全無機粒子において、第一の無機粒子の含有比率の評価方法は、後述の電子顕微鏡を用いて評価されている。
【0026】
また、例えば、以下に示した第一の無機粒子の具体例が好適である。
(I)酸化マグネシウム(MgO)粒子
嵩密度:1.90~2.00g/cm
真密度:3.65g/cm
(II)酸化アルミニウム(Al)粒子
嵩密度:2.00~2.20g/cm
真密度:3.95~4.1g/cm
【0027】
〔第二の無機粒子〕
本発明の第二の無機粒子は、空孔を含有ない粒子である。
【0028】
前記第二の無機粒子の含有比率が、全無機粒子において、好ましく30体積%以上60体積%以下であり、好ましくは40体積%以上55体積%以下である。全無機粒子において、第二の無機粒子の含有比率の評価方法は、後述の電子顕微鏡を用いて評価されている。
【0029】
前記第二の無機粒子としては、空孔を含まない酸化マグネシウム(MgO)、空孔を含まない酸化アルミニウム(Al)、空孔を含まない水酸化マグネシウム(Mg(OH))などが挙げられる。前記第二の無機粒子がマグネシウム(MgO)又はアルミニウム(Al)であることが好ましい。
【0030】
前記第二の無機粒子は、平均粒径D50が異なる無機粒子を2種類以上含でもよい。例えば、平均粒径D50が40μmであるの酸化マグネシウム粒子と、平均粒径D50が10μmの酸化マグネシウムの混合などが挙げられる。
【0031】
〔第三の無機粒子〕
本発明の配線基板は、第一の無機粒子と第二の無機粒子の以外に、第三の無機粒子を更に含んでもよい。例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、シリカ(SiO)などである。第三の無機粒子が、窒化ホウ素(BN)であることが好ましい。
前記第三の無機粒子は、平均粒径D50が異なる無機粒子を2種類以上含でもよい。例えば、平均粒径D50が40μmであるの窒化ホウ素粒子と、平均粒径D50が10μmの窒化ホウ素の混合などが挙げられる。
【0032】
〔熱硬化性樹脂〕
本実施形態に係る熱硬化性樹脂は、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂及びシアネート樹脂を挙げることができる。
【0033】
本実施形態の熱硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性の官能基を有する化合物であれば特に制限はない。具体的には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、及びこれら樹脂の変性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記熱硬化性樹脂は、耐熱性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びトリアジン樹脂から選ばれる樹脂の少なくとも1種であることが好ましく、接着性の観点から、エポキシ樹脂であることがより好ましい。前記エポキシ樹脂は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
前記熱硬化性樹脂は、モノマーであっても、モノマーを硬化剤等により部分的に反応させたプレポリマーの状態であってもよい。例えば、後述の分子内にメソゲン基を有するエポキシ樹脂の例のように、分子内にメソゲン基を有する樹脂は一般に結晶化しやすく、溶媒への溶解度も低いものが多いが、一部反応させて重合させることで結晶化を抑制することができるため、成形性が向上する場合がある。
【0036】
本実施形態のプリプレグに用いる熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含んでいることが好ましい。
【0037】
「エポキシ樹脂」
エポキシ樹脂は、1つの分子の中に1つ以上のエポキシ基(-CO)を含む化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上である。中でも、エポキシ樹脂は、1つの分子の中に2つ以上のエポキシ基を含んでいることが好ましい。エポキシ樹脂は、モノマーであっても、モノマーを硬化剤等により部分的に反応させたプレポリマーの状態であってもよい。
【0038】
エポキシ樹脂の種類は、特に限定されないが、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂および長鎖脂肪族型エポキシ樹脂などである。
【0039】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂などである。ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂などである。この他、エポキシ樹脂の種類は、例えば、難燃性エポキシ樹脂、ヒダントイン系エポキシ樹脂およびイソシアヌレート系エポキシ樹脂などでもよい。
【0040】
なお、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例は、グリシジルエーテル型の構造(基)を含んでいる化合物であれば、特に限定されない。このように特定の構造を含んでいれば種類が限定されないことは、グリシジルエステル型エポキシ樹脂などの他のエポキシ樹脂の具体例に関しても同様である。
【0041】
中でも、エポキシ樹脂は、1つの分子の中にメソゲン骨格を含んでいることが好ましい。その理由は、以下の通りである。
【0042】
第1に、エポキシ樹脂の分子同士において、ベンゼン環同士が重なりやすくなるため、そのベンゼン環間の距離が小さくなる。これにより、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物では、エポキシ樹脂の密度が向上する。また、エポキシ樹脂硬化物では、分子の格子振動が散乱しにくくなるため、高い熱伝導率が得られる。
【0043】
この「メソゲン骨格」とは、2つ以上の芳香環を含むと共に剛直性および配向性を有する原子団の総称である。具体的には、メソゲン骨格は、例えば、2つ以上のベンゼン環を含むと共にベンゼン環同士が単結合および非単結合のうちのいずれかを介して結合された骨格である。
【0044】
なお、3つ以上のベンゼン環が結合される場合、その結合の方向性は、特に限定されない。すなわち、3つ以上のベンゼン環は、直線状となるように結合されてもよいし、途中で1回以上折れ曲がるように結合されてもよいし、2つ以上の方向に分岐するように結合されてもよい。
【0045】
「非単結合」とは、1または2以上の構成元素を含むと共に1または2以上の多重結合を含む2価の基の総称である。具体的には、非単結合は、例えば、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)および水素(H)などの構成元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。また、非単結合は、多重結合として、二重結合および三重結合のうちの一方または双方を含んでいる。
【0046】
メソゲン骨格は、ベンゼン環同士の結合の種類として、単結合だけを含んでいてもよいし、非単結合だけを含んでいてもよいし、単結合および非単結合の双方を含んでいてもよい。また、非単結合の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
【0047】
メソゲン骨格の具体例は、ビフェニルおよびターフェニルなどである。なお、ターフェニルは、o-ターフェニルでもよいし、m-ターフェニルでもよいし、p-ターフェニルでもよい。
【0048】
本実施形態のプリプレグに用いる熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、三菱化学株式会社製 YL-6121H(テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂50%、4,4’-ビフェノール型エポキシ50%混合物、エポキシ当量175g/eq)、日本化薬株式会社製BREN105(臭素化多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量271g/eq)、新日鉄住金化学株式会社製YH434L(四官能ポリグリシジルアミン、エポキシ当量122g/eq)、DIC株式会社製830-S(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量173g/eq)、新日鉄住金化学株式会社製FX289Z(リン変性エポキシ樹脂、エポキシ当量225g/eq)などが挙げられる。
【0049】
前記熱硬化性樹脂は、成形性、接着性、及び熱伝導性の観点から、樹脂組成物の全固形分の全体積中の20体積%~60体積%で含有されることが好ましく、30体積%~60体積%で含有されることがより好ましく、40体積%~55体積%で含有されることがさらに好ましい。
なお、前記樹脂組成物が後述の硬化剤や硬化促進剤を含む場合、ここでいう熱硬化性樹脂の含有率には、これら硬化剤や硬化促進剤の含有率を含めるものとする。
【0050】
「硬化剤」
本実施形態の樹脂組成物が、さらに硬化剤を少なくとも1種類含むことが好ましい。硬化剤としては熱硬化性樹脂を熱硬化可能であれば特に制限されない。前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合の硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、及びメルカプタン系硬化剤等の重付加型硬化剤や、イミダゾール等の触媒型硬化剤等を挙げることができる。
中でも、耐熱性の観点から、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤から選ばれる少なくとも1種類を用いることが好ましく、さらに、保存安定性の観点から、フェノール系硬化剤の少なくとも1種類を用いることがより好ましい。
【0051】
アミン系硬化剤としては、通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、市販されているものであってもよい。中でも、硬化性の観点から、2以上の官能基を有する多官能硬化剤であることが好ましく、更に熱伝導性の観点から、剛直な骨格を有する多官能硬化剤であることがより好ましい。
【0052】
2官能のアミン系硬化剤として、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメトキシビフェニル、4,4’-ジアミノフェニルベンゾエート、1,5-ジアミノナフタレン、1,3-ジアミノナフタレン、1,4-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン等が挙げられる。中でも、熱伝導率の観点から、4,4’-ジアミノジフェニルメタン及び1,5-ジアミノナフタレンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、1,5-ジアミノナフタレンであることがより好ましい。
【0053】
フェノール系硬化剤としては、通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、市販の低分子フェノール化合物や、それらをノボラック化したフェノール樹脂を用いることができる。
【0054】
低分子フェノール化合物として、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等の単官能のものや、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の2官能のもの、さらに、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン等の3官能のものなどが使用可能である。また、これら低分子フェノール化合物をメチレン鎖等で連結してノボラック化した、フェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いることもできる。
【0055】
フェノール系硬化剤としては、熱伝導性、耐熱性、溶剤溶解性などの観点から、多官能低分子フェノール硬化剤である、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼンが好ましい。
【0056】
本実施形態の樹脂組成物が硬化剤を含む場合、樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に制限されない。例えば、硬化剤がアミン系硬化剤の場合は、アミン系硬化剤の活性水素の当量(アミン当量)と、エポキシ樹脂のエポキシ当量との比(アミン当量/エポキシ当量)が0.5~2となることが好ましく、0.8~1.2となることがより好ましい。また、硬化剤がフェノール系硬化剤の場合は、フェノール性水酸基の活性水素の当量(フェノール性水酸基当量)と、メソゲン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量との比(フェノール性水酸基当量/エポキシ当量)が0.5~2となることが好ましく、0.8~1.2となることがより好ましい。
【0057】
「硬化促進剤」
本実施形態の樹脂組成物においてフェノール系硬化剤を用いる場合、必要に応じて硬化促進剤を併用しても構わない。硬化促進剤を併用することで、さらに十分に硬化させることができる。硬化促進剤の種類や配合量は特に限定されないが、反応速度や反応温度、保管性などの観点から、適切なものを選択することができる。硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、及び第4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらは1種単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
前記樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、樹脂組成物中の硬化促進剤の含有率は特に制限されない。成形性の観点から、熱硬化性樹脂と硬化剤の合計質量の0.5質量%~1.5質量%であることが好ましく、0.5質量%~1質量%であることがより好ましく、0.75質量%~1質量%であることがさらに好ましい。
【0059】
「シランカップリング剤」
前記樹脂組成物は、シランカップリング剤の少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。シランカップリング剤を添加する効果としては、無機粒子や第二の無機粒子の表面とその周りを取り囲む熱硬化性樹脂の間で共有結合を形成する役割(バインダ剤に相当)を果たし、熱を効率良く伝達する働きや、さらには水分の浸入を妨げることによって絶縁信頼性の向上にも寄与する。
【0060】
前記シランカップリング剤の種類としては特に限定されず、市販のものを使用して構わない。熱硬化性樹脂(好ましくはエポキシ樹脂)や、必要に応じて含まれる硬化剤との相溶性、及び樹脂と無機粒子との界面での熱伝導欠損を低減することを考慮すると、本発明においては、末端にエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、又は水酸基を有するシランカップリング剤を用いることが好適である。これらシランカップリング剤は1種単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
「その他の成分」
本発明における樹脂組成物は、上記成分に加え、必要に応じてその他の成分を含むことができる。例えば、エラストマー、分散剤等が挙げられる。エラストマーとしては、アクリル樹脂が挙げられ、より具体的には(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルから誘導されるホモポリマーまたはコポリマーを挙げることができる。分散剤としては、味の素ファインテック株式会社製アジスパーシリーズ、楠本化成株式会社製HIPLAADシリーズ、株式会社花王製ホモゲノールシリーズ等が挙げられる。これら分散剤は二種類以上を併用することができる。
【0062】
<樹脂組成物の塗料>
前記樹脂組成物は、例えば、固体状の熱硬化性樹脂を用いる場合、有機溶剤の少なくとも1種を添加して樹脂組成物の塗料を調整してもよい。有機溶剤を含むことで、種々の成形プロセスに適合させることができる。有機溶剤としては、通常用いられる有機溶剤を用いることができる。具体的には、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ニトリル系溶剤等を挙げることができる。例えば、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等を用いることができる。これらは1種単独でも、2種類以上を併用した混合溶剤として用いてもよい。
【0063】
<半硬化樹脂組成物>
本発明の半硬化樹脂組成物(単に「樹脂組成物」という場合がある)は前記樹脂組成物に由来するものであり、前記樹脂組成物を半硬化処理してなる。前記半硬化樹脂組成物は、例えば、これをシート状に成形した場合に、半硬化処理していない樹脂組成物からなる樹脂組成物シートに比べて取り扱い性が向上する。その観点から、本実施形態のプリプレグに構成される樹脂組成物が半硬化樹脂組成物であることが好ましい。
【0064】
ここで、前記半硬化樹脂組成物とは、前記半硬化樹脂組成物の粘度が、常温(25~30℃)では10Pa・s~10Pa・sであることに対して、100℃では常温よりも粘度が低下する特徴を有するものである。例えば、前記半硬化樹脂組成物は、常温ではシート形状を保持できるが、100℃程度の高温にすると溶融することがなる。また、後述する硬化後の硬化樹脂組成物は加温によって溶融することはない。なお、上記粘度は、動的粘弾性測定(DMA)(例えば、サーモサイエンティフィック株式会社製Rheo Stress 6000)によって測定される。なお、測定条件は、周波数1Hz、荷重40g、昇温速度3℃/分であり、せん断試験により行う。
【0065】
前記半硬化処理としては、前記樹脂組成物を温度60℃~200℃で1分間~30分間加熱する方法を挙げることができる。
【0066】
<樹脂組成物の硬化物>
樹脂組成物の硬化物は前記樹脂組成物に由来するものであり、前記樹脂組成物を硬化処理してなる。前記樹脂組成物の硬化物は熱伝導性と絶縁性に優れる。本発明の一実施形態の基板と積層基板は、例えば、本実施形態のプリプレグを硬化してなるものであり、本実施形態のプリプレグに用いる樹脂組成物を硬化処理してなる樹脂組成物の硬化物を含む。
【0067】
樹脂組成物の硬化物は、未硬化状態の樹脂組成物又は前記半硬化樹脂組成物を硬化処理することで製造することができる。前記硬化処理の方法は、樹脂組成物の構成や硬化物の目的等に応じて適宜選択することができるが、加熱・加圧処理であることが好ましい。
例えば、未硬化状態の樹脂組成物又は前記半硬化樹脂組成物を100℃~250℃で1時間~10時間、好ましくは130℃~230℃で1時間~8時間加熱することで樹脂組成物の硬化物が得られる。
【0068】
(無機粒子を含む樹脂組成物の調整方法)
本発明に一実施形態の樹脂シートであるプリプレグを作成するための熱硬化性樹脂組成物は、第一の無機粒子と第二の無機粒子と熱硬化性樹脂とを含む。
熱硬化性樹脂組成物は、第一の無機粒子と第二の無機粒子と熱硬化性樹脂を混合して得られる。空孔に樹脂を充填しやすくなる観点から、先に、空孔を有する第一の無機粒子のみを分散し、次に熱硬化性樹脂を混合し、そして、第二の無機粒子を添加し、さらに混合・分散するができる。
第一の無機粒子と熱硬化性樹脂を混合する前に、第一の無機粒子を溶剤などで湿潤する前処理などを含んでもよい。湿潤処理がある場合、熱硬化性樹脂が存在する場合と比べて、高い効率でよりよく充填された第一の無機粒子ペーストが得られる。
【0069】
<プリプレグの作製方法>
本発明の一実施形態の樹脂シートであるプリプレグは、前記第一の無機粒子と第二の無機粒子と繊維基材と樹脂組成物を用いて作製することができる。
【0070】
本実施形態のプリプレグは熱硬化性樹脂と無機粒子を混合して作製した樹脂組成物を、ガラスクロスなどの繊維基材の片面からスリットダイを用いて塗布し、繊維基材の目開きを通して繊維基材の塗布裏面に通過させることによって繊維基材に樹脂組成物を保持させる塗布方法において、ガラスクロスなどの繊維基材へのスリットダイの押し込み量と接触角度、および塗料の吐出量を制御することにより、プリプレグを作製することができる。
【0071】
本実施形態のプリプレグは、上記のような繊維基材に、上記樹脂組成物を含浸させることによっても得られる。具体的には、樹脂組成物に繊維基材を含浸し、引き上げながら厚みコントロール後加熱乾燥することにより、プリプレグが得られる。
【0072】
プリプレグにおける前記樹脂組成物の含有率は、特に限定することはない。成形性の観点から、20体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましい。また、多層基板の位置合わせ精度、金属箔密着性寸法精度の観点から、80体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であることがより好ましく、60体積%以下であることが更に好ましい。
【0073】
樹脂組成物に、メチルエチルケトンやジオキソラン、シクロヘキサノン等の溶剤を加えて樹脂組成物の塗料とした場合は、乾燥により溶剤分を除去し、樹脂組成物を固化させる。
【0074】
乾燥方法は、塗料に含まれる有機溶剤の少なくとも一部を除去できれば特に制限されず、通常用いられる乾燥方法から、塗料に含まれる有機溶剤に応じて適宜選択することができる。一般的には、60℃~150℃程度で加熱処理する方法を挙げることができる。
このときの固化とは、流動性を有する液状物が自立可能な状態の固体状態に変化することを指す。塗料に含まれる有機溶剤が一部残留する状態も、半硬化状態も固化状態に含むことができる。例えば、60~150℃で1~120分程度、好ましくは70~120℃で3~90分程度の条件下で固化させることができる。
【0075】
プリプレグは、積層又は貼付する前に、プレスやロールラミネータなどによる熱間加圧処理により、あらかじめ表面を平滑化してから使用してもよい。熱間加圧処理の方法は、半硬化樹脂組成物シートの製造方法で挙げた方法と同様である。また、前記プリプレグの熱間加圧処理における加熱温度、減圧度、及びプレス圧等の処理条件についても、半硬化樹脂組成物の加熱・加圧処理で挙げた条件と同様である。
【0076】
プリプレグを樹脂組成物の塗料を用いて作製した場合、前記プリプレグにおける溶剤残存率は、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることがさらに好ましい。
【0077】
前記溶剤残存率は、プリプレグを40mm角に切り出し、190℃に予熱した恒温槽中に2時間乾燥させたときの、乾燥前後の質量変化から求める。
【0078】
<繊維基材>
本実施形態のプリプレグに用いる繊維基材としては、金属箔張り積層基板や多層プリント配線板を製造する際に通常用いられるものであれば特に制限されず、通常織布や不織布等の繊維基材が用いられる。
【0079】
本実施形態に係る繊維基材の目開きは特に制限されない。熱伝導率及び絶縁性の観点から、目開きは前記無機粒子の平均粒子径(D50)の2倍以上であることが好ましい。また、繊維基材の空隙率が30%以上であることが好ましい。繊維基材の空隙率とは繊維基材の面積に対する目開き部分の面積の割合である。
【0080】
繊維基材の材質は特に制限されない。具体的には、ガラス、アルミナ、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維や、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維、及びこれらの混抄系を挙げることができる。中でも、ガラス繊維の織布(ガラスクロース)が好ましく用いられる。これにより例えば、プリプレグを用いて基板を構成する場合、屈曲性があり任意に折り曲げ可能な基板を得ることができる。さらに、製造プロセスでの温度変化や吸湿等に伴う多層基板の寸法変化を小さくすることも可能となる。
【0081】
本実施形態に係る繊維基材の厚さは特に限定されない。より良好な可とう性を付与する観点から、75μm以下であることがより好ましく、含浸性の観点から60μm以下であることが好ましい。繊維基材の厚みの下限は特に制限されないが、強度の観点から10μm程度であることが好ましい。
【0082】
(樹脂硬化物)
本発明の樹脂硬化物は、第二樹脂と、第一の無機粒子と、第二の無機粒子と、を含む。前記第二樹脂は熱硬化性樹脂の硬化物であることが好ましい。第一の無機粒子が空孔を含有する粒子である。その空孔には、第二樹脂が充填される。樹脂硬化物の断面において、第一の無機粒子に充填している第二樹脂の全面積が樹脂硬化物の全樹脂面積中の0.2%以上、3.5%以下である。すなわち、本発明の樹脂硬化物は、第二樹脂とフィラーとを含む。フィラーが少なくとも、前記第一の無機粒子と第二の無機粒子とを含む。本発明の樹脂硬化物は、フィラー内部に樹脂が充填しており、フィラー間の樹脂成分が減少することでフィラー同士の接触面が増加し、熱伝導率が向上される。また、フィラー間にも流動に必要な樹脂分が存在することで、流動性を維持できる。
【0083】
本発明の樹脂硬化物に用いる、空孔を含有する第一の無機粒子、第二の無機粒子、熱硬化性樹脂は、前述の本発明の樹脂シート、或いは前述の本発明の樹脂シートの一実施形態であるプリプレグに用いるものと同じである。
【0084】
本発明の樹脂硬化物の断面において、第一の無機粒子に充填している第二樹脂の全面積が樹脂硬化物の全樹脂面積中の割合は、「第一粒子の空孔に含まれる樹脂量」ともいう。第一粒子の空孔に含まれる樹脂量は、樹脂硬化物の断面のSEM写真から空孔に含まれる第二樹脂の面積比を測定することで得られる。詳細は実施例で説明する。
【0085】
本発明の樹脂硬化物は、前記本発明の樹脂シートの硬化物であってもよい。本発明の樹脂硬化物の一実施形態は、配線基板である。配線基板は、樹脂と、前記第一の無機粒子と、第二の無機粒子と、繊維基材とを含むことが好ましい。前記樹脂は、熱硬化性樹脂の硬化物であることが好ましい。本実施形態配線基板は、前記樹脂シートの一実施形態であるプリプレグを1枚以上、又は2枚以上加熱加圧して成形してなることが好ましい。
【0086】
(配線基板)
本発明の樹脂硬化物の一実施形態である配線基板(本実施形態の配線基板ともいう)は、前述のプリプレグを硬化したものであり、プリプレグの硬化物を含む。また、その硬化物が前記熱硬化性樹脂の硬化物と前記第一の無機粒子と第二の無機粒子を含む。本実施形態の配線基板は、そのようなプリプレグを硬化した基板なので、熱伝導率の高い。
図4(a)~(c)に示すように、例えば、プリプレグ1の両面に金属箔35を設け、加熱プレス・成形工程により、配線基板5を形成することができる。配線基板5の金属箔35をさらにパターンニングなどの回路形成工程で加工することができる。以下、図4を参照しながら配線基板5を詳細に説明する。
【0087】
配線基板5は、例えば、プリプレグ1の硬化物で構成されている。そして、その表層には、さらに金属箔35が積層されて金属箔張基板を形成している。金属箔35は、一方の面のみに付設しても、両面に付設してもよい。
【0088】
図4に示す例において、配線基板5に用いるプリプレグ1が1枚であるが、1枚に限らず、2枚以上でもよい。この枚数は、樹脂プリプレグ1の厚さおよび強度などの条件に基づいて適宜設定可能である。
【0089】
前記金属箔としては特に制限されず、通常用いられる金属箔から適宜選択することができる。具体的には金箔、銅箔、アルミニウム箔等を挙げることができ、一般的には銅箔が用いられる。前記金属箔の厚みとしては、1μm~200μmであれば特に制限されず、使用する電力等に応じて好適な厚みを選択することができる。
【0090】
また、前記金属箔として、ニッケル、ニッケル-リン、ニッケル-スズ合金、ニッケル-鉄合金、鉛、鉛-スズ合金等を中間層とし、この両表面に0.5μm~15μmの銅層と10μm~150μmの銅層を設けた3層構造の複合箔、又はアルミニウムと銅箔とを複合した2層構造複合箔を用いることもできる。
【0091】
前記金属板は熱伝導率が高く、熱容量が大きい金属材料からなることが好ましい。具体的には、銅、アルミニウム、鉄、及びリードフレームに使われる合金等が例示できる。
【0092】
前記金属板の板厚は用途に応じて適宜選択することができる。例えば、前記金属板は、軽量化や加工性を優先する場合はアルミニウムを、放熱性を優先する場合は銅を、というように目的を応じて材質を選定することができる。
【0093】
前記配線基板5において、金属箔(銅箔)ピール強度を高めるため、従来の公知の方法で、金属箔を表面処理する前工程があってもよい。
【0094】
金属箔35とプリプレグ1をプレス・成形する条件は、プリプレグ1の未硬化・半硬化熱硬化性樹脂を硬化することができれば、特に限定されない。上記したプリプレグの製造方法とは異なり、硬化反応を実質的に進行させる条件であることが好ましい。例えば、加熱及び加圧処理であることが好ましい。加熱及び加圧処理における加熱温度は特に限定されない。通常100℃~250℃の範囲であり、好ましくは130℃~230℃の範囲である。また、加熱及び加圧処理における加圧条件は特に限定されない。通常1MPa~20MPaの範囲であり、好ましくは1MPa~15MPaの範囲である。また、加熱及び加圧処理には、真空プレスが好適に用いられる。
金属箔とプリプレグの硬化物とは容易に剥離しないよう、密着強度が高くなければならない。密着強度は、後述する金属箔ピール強度(引き剥がし強度)で測定を行うことができる。
【0095】
本実施形態の基板は、熱伝導率が3W/(m・K)以上である。
【0096】
(積層基板)
本発明の樹脂硬化物のその他の実施形態である積層基板(本実施形態の積層基板)は、前記本発明の樹脂シートの一実施形態であるプリプレグを2枚以上使用して積層して硬化したものであり、プリプレグ積層体の硬化物を含む。積層基板が、前記空孔を含有する第一の無機粒子と第二の無機粒子と熱硬化性樹脂の硬化物とを含む。積層基板は、繊維基材をさらに含むことが好ましい。積層基板は更に金属箔を有してもよい。本発明の樹脂シートの一実施形態であるプリプレグを硬化した基板なので、熱伝導率の高い基板が得られる。
図5(a)~(c)に示すように、例えば、プリプレグ1を2枚用いて両面に金属箔35を設けて、加熱プレス・成形工程により、積層基板7を形成することができる。積層基板7の金属箔35をさらにパターンニングなどの回路形成工程で加工することができる。
【0097】
積層基板7は、図5(d)~(f)に示すように、更に、本発明の第一実施形態の基板に用いるプリプレグ1を4枚用いて、外側に金属箔35を設けて、加熱プレス・成形工程により、積層基板9を形成することができる。積層基板9の金属箔35をさらにパターンニングなどの回路形成工程で加工することができる。
【0098】
図4に示す例において、積層基板7に用いるプリプレグ1が2枚であるが、2枚に限らず、1枚でも、3枚以上でもよい。この枚数は、樹脂プリプレグ1の厚さおよび強度などの条件に基づいて適宜設定可能である。また、積層基板9に用いるプリプレグ1が6枚であるが、6枚に限らず、4枚、5枚でもよく、7枚以上でもよい。
【0099】
前記積層基板7と9に使用されている金属箔、加熱プレス・成形条件などは上記配線基板5と同様である。
【0100】
本発明の積層基板の厚さは、5000μm以下であることが好ましく、200μm~3000μmであることがより好ましい。厚さが5000μm以下であると、可とう性に優れ曲げ加工時にクラックが発生するのが抑えられ、厚さが3000μm以下の場合は、その傾向がより見られる。また、厚さが200μm以上の場合には、作業性に優れる。
【実施例
【0101】
本発明の実施例に関して、詳細に説明する。
【0102】
(合成例1)
<第一の無機粒子(MgO)の製造>
水酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社 キスマ5Q-S D50=0.7um)を純水中に20wt%になるように添加し、あらかじめ溶解しておいたPVA(日本酢ビ・ポバール JF-10)を水酸化マグネシウムに対して0.5wt%になるように添加した。この水酸化マグネシウム液を高圧ホモジナイザー(スギノマシン HJP17007)を用いて100MPaで分散処理を行った。
次いでスプレードライ(大川原加工機 FOC-16)入口温度200℃、出口温度220℃、デイスク回転数20000rpm、供給量30g/minで上記水酸化マグネシウム分散液を送り込み乾燥させた。この乾燥粉をZrO製のセッターに載せ、焼成温度1100℃で焼成を行い、空孔のあるMgOを作製した。焼成後の粒度(D50)は25umであった。
【0103】
(合成例2)
<第一の無機粒子(Al)の製造>
ベーマイト(大明化学株式会社 C06 D50=0.7um)を純水中に20wt%になるように添加し、あらかじめ溶解しておいたPVA(日本酢ビ・ポバール JF-10)をベーマイトに対して0.5wt%になるように添加した。このベーマイト液を高圧ホモジナイザー(スギノマシン HJP17007)を用いて処理圧力100MPa、処理時間10min/1Lで分散処理を行った。
次いでスプレードライ(大川原加工機 FOC-16)入口温度200℃、出口温度220℃、デイスク回転数20000rpm、供給量30g/minで上記ベーマイト分散液を送り込み乾燥させた。この乾燥粉をZrO製のセッターに載せ、焼成温度1200℃で焼成を行い空孔のあるAlを作製した。焼成後の粒度(D50)は27umであった。
【0104】
(実施例1)
<無機粒子を含む樹脂組成物の調整>
「使用材料」
無機粒子として、以下の材料を準備した。
上記合成例1で作成した第一の無機粒子(MgO)の中空粒子粉末、平均粒径D50=25μm、嵩密度1.9g/cm、開口空孔率0.39) … 400質量部
上記合成例2で作成した第一の無機粒子(Al)の中空粒子粉末、平均粒径D50=27μm、嵩密度2.1g/cm、開口空孔率0.37) … 400質量部
第二の無機粒子として酸化マグネシウム(MgO)の空孔を含まない粉末(メーカ:宇部マテリアルズ株式会社、商品名:RFD30C-SC、平均粒径D50=25μm、嵩密度2.1g/cm、熱伝導率)… 3500質量部
第二の無機粒子として酸化アルミニウム(Al)の空孔を含まない粉末(メーカ:昭和電工株式会社、商品名:AS-20、平均粒径D50=22μm、嵩密度2.4g/cm) … 3500質量部
第三の無機粒子として窒化ホウ素(BN)粉末(メーカ:昭和電工株式会社、商品名:UHP-1K、平均粒径D50=8μm、BET 3~5m/g円形度、嵩密度 0.22g/cm、細孔体積、熱伝導率など) … 500質量部
【0105】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂(テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂50%、4,4’-ビフェノール型エポキシ50%混合物、エポキシ当量175g/eq、三菱化学株式会社製 YL-6121H) … 900質量部
【0106】
分散剤(カップリング剤)としてシランカップリング剤(信越化学工業 KBM403)10重量部
硬化剤(1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、) … 350質量部
硬化促進剤(2-エチル-4-メチルイミダゾール、四国化成社製 2E4MZ) … 1質量部
有機溶剤としてジオキソラン … 1000質量部
【0107】
「MgOの中空粒子と空孔を含まないMgO粒子とBN粒子を含む樹脂組成物の作製工程」
上記第一の無機粒子としてMgOの中空粒子、第二の無機粒子として空孔を含まないMgO粒子、第三の無機粒子としてBN粒子、熱硬化性樹、硬化剤、硬化促進剤、有機溶剤をメディアレス分散機(浅田鉄工社製 デスパミル MD-10)に投入し、撹拌して樹脂混合液を作製した。よく撹拌分散させ、樹脂組成物の塗料を作製した。
MgOの中空粒子の粉末、空孔を含まないMgO粒子の粉末、とBN粉末の添加量は、樹脂組成物の塗料からジオキソランを除いた固形分体積を100体積%としたときに55体積%(以下、フィラー量)となるように調整した。
MgOの中空粒子の粉末と、空孔を含まないMgO粒子の粉末と、BN粉末とを含む全無機粒子の添加量に対して、MgOの中空粒子粉末の含有比率は、6体積%となるように調整した。
各組成を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
<樹脂シート(プリプレグ)の作製>
繊維基材としてガラスクロス(IPC規格1080(株)有沢製作所製の非開繊ガラスクロス、厚さ0.055mm、質量47g/m、密度66×46本/25mm、平織タイプ)を用いた。このガラスクロスを、得られた樹脂組成物の塗料に含浸し、その後のプリプレグにおいて硬化物の厚さが0.025mmになるように調整した。100℃にて加熱乾燥してメチルエチルケトンを除去し、樹脂シート(プリプレグ)No.1を得た。
【0110】
<積層基板(樹脂硬化物)>
図5(a)~(c)に示すように、本実施例で得られたプリプレグ1を2枚重ね、2枚の銅箔35を用いてプリプレグ1を挟むように、加熱加圧(温度170℃、1MPaにて20分間)を行い、加えてさらに2回目の加熱加圧(温度200℃、4MPaにて1時間)を行い、厚さ0.3mmの無機粒子含有エポキシ樹脂硬化物を備える配線基板7を得た。エッチング法により配線パターンを備える配線基板7を形成した。
【0111】
図5(d)~(f)に示すように、得られた配線パターンを備える配線基板7の両面にそれぞれ、2枚のプリプレグを配置し、さらに、2枚の銅箔を用いて配線基板7を挟むように配置した後、加熱加圧(温度170℃、1MPaにて20分間)を行い、加えてさらに2回目の加熱加圧(温度200℃、4MPaにて1時間)を行い、厚さ0.9mmの無機粒子含有エポキシ樹脂硬化物を備える積層基板9を得た。エッチング法により、両表面に配線パターン形成し、配線パターンを備える積層基板9を形成した。本発明の樹脂硬化物として樹脂硬化物Aを得た。
【0112】
(実施例2~5、比較例1~4)
表1に記した条件で実施例2~5、比較例1~4の樹脂シート(プリプレグ)No.2~11を作成した。
【0113】
<無機粒子を含む樹脂組成物の調整>
表1に示す組成方法で、実施例1と同様に、無機粒子を含む樹脂組成物の塗料を作製した。
<樹脂シート(プリプレグ)の作製>
得られた樹脂組成物の塗料を用いた以外は、実施例1と同様な方法で、樹脂シート(プリプレグ)を得た。
【0114】
<積層基板(樹脂硬化物)>
得られた樹脂シート(プリプレグ)を用いた以外は、実施例1と同様な方法で、積層基板(樹脂硬化物)を作成した。表1に記した条件で実施例2~5、比較例1~4の樹脂硬化物(積層基板)B~Iを得た。
【0115】
(評価方法)
表1に示す樹脂シートNo1~11(プリプレグ)、及び樹脂硬化物A~I(積層基板)のそれぞれの特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。ここでは、各樹脂シートの流動性、各樹脂シートの硬化物(多層基板)の厚さ切断面において無機粒子疎部の面積比(%)、樹脂硬化物(多層基板)の熱伝導率を調べた。
【0116】
<フィラー量>
フィラー量は、フィラー量については仕込み原料の比で評価する。
【0117】
<第一の無機粒子の含有比率>
第一の無機粒子の含有比率は、硬化物(積層基板)の断面のSEMで評価する。全無機粒子の全面積において、第一の無機粒子の面積の比率を第一の無機粒子の含有比率とした。
粒子径の長径に対して、25%以上75%以下の空孔を持つ無機粒子を第一無機粒子とした。
【0118】
<樹脂シートの流動性>
樹脂シートの流動性は、フローマーク有無で評価する。表1の「〇」、「△」の意味は以下である。
「〇」:フローマーク無し
「△」:ローマーク有り
【0119】
<第一の無機粒子の空孔に含まれる樹脂量>
【0120】
各実施例で得られた積層基板を切断した後、ポッティング加工を行い、Al溶液で断面研磨をし、100倍にてSEM観察した。
各積層基板に対して3箇所の断面観察を行った。以下の順で、二次電子像より中空粒子中に含まれる樹脂量を評価した。
【0121】
〔1〕100倍のSEM像より、測定領域全体の面積sにおいて、第一の無機粒子の空孔に含まれる第二樹脂が占める面積xの比率X(X=x/s)を算出した。
〔2〕同じSEM像の測定領域全体の面積sにおいて、ガラスクロスが占める面積yの比率Y(Y=y/s)を算出した(一例:20面積%程度)。
〔3〕原料の樹脂組成物の体積組成w(体積%)より、第二樹脂が占める全面積zとフィラーが占める面積fとの和において、第二樹脂が占める全面積zの比率(z/(z+f)=w(面積%))が得られた。
一方、測定領域の全体の面積sは、ガラスクロスが占める面積yと第二樹脂が占める全面積zとフィラーが占める面積fとの合計(s=y+z+f)であるため、前記z/(f+z)、及び上記〔2〕で算出したガラスクロスが占める面積yの比率Yより、測定領域全体の面積sにおいて第二樹脂が占める全面積zの比率Z(z/s)を算出した。
〔4〕〔1〕で得られた「第一の無機粒子の空孔に含まれる第二樹脂が占める面積の比率X」と、〔3〕で得られた全体の第二樹脂が占める面積の比率Zとを用いて、X/Zで第一の無機粒子の空孔に含まれる樹脂量(%)を算出した。
なお、〔3〕において、原料の樹脂組成物の体積組成比とそれの硬化物中の硬化樹脂(第二樹脂)の体積組成比とは、同じと仮定した。
【0122】
<樹脂シートの硬化物(配線基板)の熱伝導率>
熱伝導性を調べるため、配線基板の熱伝導率(W/(m・K))を測定した。
各実施例で得られた積層基板を切断して、円形状の測定用試料(直径=10mm,厚さ=0.9mm)を作製した。続いて、熱伝導率測定装置(レーザーフラッシュ法、アドバンス理工株式会社(旧アルバック理工株式会社)製のTCシリーズ)を用いて測定用試料を分析して、熱拡散係数α(m/s)を測定した。また、サファイアを標準試料として、示差走査熱量分析(DSC)を用いて測定用試料の比熱Cpを測定した。さらに、アルキメデス法を用いて測定用試料の密度rを測定した。最後に、下記の数式(2)に基づいて、熱伝導率λ(W/(m・K))を算出した。
【0123】
λ=α×Cp×r ・・・・・(2)
(λは熱伝導率(W/(m・K))、αは熱拡散率(m/s)、Cpは比熱(J/kg・K)、rは密度(kg/m)である。)
【0124】
表1の結果から、本発明の範囲の実施例1~5は、比較例1~4より、流動性を低下させる事なく、熱伝導率を向上する樹脂シート及び樹脂硬化物を提供することできた。
【0125】
フィラーの空孔内に所定量の樹脂が入り込むことによってプリプレグ内におけるフィラー間の樹脂成分が減少し、フィラー同士の距離が近くなることにより、熱伝導率の向上が見込める。
また、フィラーの空孔内にも樹脂が充填しているため、プレスする際には樹脂が流動し、流動性が損なわれない。
【符号の説明】
【0126】
1、2、100…樹脂シート(プリプレグ)
5…配線基板(樹脂硬化物)
7、9…積層基板(樹脂硬化物)
10…第一粒子
20…第二粒子
30…空孔
50…樹脂
15、25…繊維基材、
35…金属箔。
図1
図2
図3
図4
図5