(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】精製システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B03C 1/28 20060101AFI20240723BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20240723BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20240723BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20240723BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20240723BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20240723BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20240723BHJP
G01N 1/34 20060101ALI20240723BHJP
C12M 1/42 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
B03C1/28 107
B03C1/00 A
B03C1/00 B
C07K1/14
C07K1/22
C12M1/26
C12N1/02
C12N15/10 114Z
G01N1/34
C12M1/42
(21)【出願番号】P 2019515590
(86)(22)【出願日】2017-10-23
(86)【国際出願番号】 US2017057788
(87)【国際公開番号】W WO2018080953
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-21
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,クレイグ・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】プロブヒー,ジャスティン・ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】カウォーヤ,ジョン・カサッジャ
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】増山 淳子
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-153104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0248453(US,A1)
【文献】特開2009-66476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0368126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C1/00-1/32
C12M1/26,1/42
C12N1/02
C07K1/22
G01N1/34,35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的物質と残りの部分を含む混合物中に浸漬された磁気ビーズを使用するための精製システムであって、磁気ビーズが、混合物中に浸漬され、及びそれぞれが、標的物質と一時的に結合し標的物質を前記残りの部分から分離させるように構成された外面を有するように構成されている、当該精製システムであって、
混合物を含有する第1の容器を収容及び支持するように構成された容器収容部と、
標的物質が前記混合物の残りの部分から分離された後に、前記第1の容器から前記混合物の残りの部分を除去するように構成された第1のポンプと、
各磁界生成素子が、前記容器収容部から離れ磁気ビーズを引きつけないそれぞれの第1の位置と、前記容器収容部の外周面に隣接し磁気ビーズを引きつけるそれぞれの第2の位置との間で、前記容器収容部に対して移動可能である、複数の磁界生成素子と、
磁界生成素子を前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させるように構成されたアクチュエータと、
を含み、
複数の磁界生成素子は、容器収容部のまわりに配置されており、容器収容部の長手方向軸に向かってまたは長手方向軸から離れて、同時に移動可能であり、
標的物質を一時的に備える磁気ビーズを含む混合物を第2の容器から前記第1の容器へと移すように構成された第2のポンプを含み、
前記第1の容器を通した標的物質が一時的に混合された磁気ビーズを含む混合物の連続流が得られるように、前記第2のポンプが、標的物質が一時的に混合された磁気ビーズを含む混合物を前記第2の容器から前記第1の容器へと移すと同時に、前記第1のポンプが、前記混合物の残りの部分を前記第1の容器から除去するように構成される、
精製システム。
【請求項2】
第1の磁界生成素子が、第1の固定経路に沿って、前記容器収容部に向けて、及び前記容器収容部から離れるように移動するように構成され、及び第2の磁界生成素子が、第2の固定経路に沿って、前記容器収容部に向けて、及び前記容器収容部から離れるように移動するように構成される、請求項1に記載の精製システム。
【請求項3】
前記第1の固定経路が、線形であり、且つ前記容器収容部の中心から生じる第1の仮想放射状線とアライメントされ、及び前記第2の固定経路が、線形であり、且つ前記容器収容部の前記中心から生じる第2の仮想放射状線とアライメントされる、請求項2に記載の精製システム。
【請求項4】
前記アクチュエータが、油圧又は空気圧シリンダを含む、請求項1に記載の精製システム。
【請求項5】
第1の磁界生成素子が、第1の永久磁石を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の精製システム。
【請求項6】
前記第1の永久磁石が、100N以上の最大磁気引力を有する、請求項5に記載の精製システム。
【請求項7】
前記第1のポンプと流体連通した第1の端部と、前記第1の容器の開口上端を通して挿入されるように構成された第2の端部とを有する流体管を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の精製システム。
【請求項8】
第1の磁界生成素子が、前記第2の位置に配置される際に、前記第1の磁界生成素子が、前記第1の容器の内面に前記磁気ビーズを押し付けるように構成される、請求項1に記載の精製システム。
【請求項9】
前記容器収容部が、0.5L以上の体積を有する容器を収容及び支持するように構成される、請求項1~8の何れか一項に記載の精製システム。
【請求項10】
前記第1のポンプが、前記混合物の残りの部分を前記第1の容器から除去する際に、磁気ビーズを前記第1の容器から除去しないように、前記第1の磁界生成素子が、前記第2の位置に配置された際に、前記混合物中に浸漬された前記磁気ビーズを磁気的に引き付け、且つ前記第1の容器の内面に押し付けるように構成される、請求項1に記載の精製システム。
【請求項11】
精製システムであって、
標的物質と混合物における残りの部分を含む当該混合物と、標的物質と一時的に結合させて標的物質を前記混合物の残りの部分から分離させるための磁気ビーズとを最初に含有するように構成された第1の容器と、
前記第1の容器よりも小さい体積を有する第2の容器と、
前記第2の容器の外面に隣接して位置付けられる第2の位置で第2の容器内の磁気ビーズを引きつける第1の磁界生成素子と、
前記第1の磁界生成素子を、第2の容器内の磁気ビーズを引きつけない第1の位置と前記第2の位置との間を移動させるように構成されたアクチュエータと、
標的物質と一時的に結合した磁気ビーズを含む混合物を前記第1の容器から前記第2の容器へと移すように構成された第1のポンプと、
前記第1のポンプが、標的物質と一時的に結合した磁気ビーズを含む混合物を前記第1の容器から前記第2の容器へと移す間に、前記混合物の残りの部分を前記第2の容器から除去するように構成された第2のポンプと、
を含み、
前記第2のポンプが、前記第2の容器から前記混合物の残りの部分を除去する間に、前記第1の磁界生成素子が、前記第2の容器の内面に標的物質と一時的に結合した磁気ビーズを押し付けるように前記磁気ビーズを磁気的に引き付ける、精製システム。
【請求項12】
前記第2の容器を通した標的物質と一時的に結合した磁気ビーズを含む混合物の連続流が得られるように、前記第1のポンプが、標的物質と一時的に結合した磁気ビーズを含む混合物を前記第1の容器から前記第2の容器へと移すと同時に、前記混合物の残りの部分を前記第2の容器から除去するように前記第2のポンプが構成される、請求項11に記載の精製システム。
【請求項13】
前記第1の磁界生成素子が、前記第2の容器から離れた第1の位置と、前記第2の容器の前記外面に隣接した第2の位置との間で、前記第2の容器に対して移動可能である、請求項11又は12に記載の精製システム。
【請求項14】
第2の磁界生成素子が、前記第2の容器から離れた第2の容器内のビーズを引きつけない第3の位置と、前記第2の容器の前記外面に隣接し第2の容器内のビーズを引きつける第4の位置との間で、前記第2の容器に対して移動可能である、請求項13に記載の精製システム。
【請求項15】
前記第1の磁界生成素子が、第1の固定経路に沿って、前記第2の容器に向けて、及び前記第2の容器から離れるように移動するように構成され、及び前記第2の磁界生成素子が、第2の固定経路に沿って、前記第2の容器に向けて、及び前記第2の容器から離れるように移動するように構成される、請求項14に記載の精製システム。
【請求項16】
前記第1の固定経路が、線形であり、且つ前記第2の容器の縦軸から生じる第1の仮想放射状線とアライメントされ、及び前記第2の固定経路が、線形であり、且つ前記第2の容器の前記縦軸から生じる第2の仮想放射状線とアライメントされる、請求項15に記載の精製システム。
【請求項17】
前記アクチュエータが、空気圧又は油圧シリンダを含む、請求項11に記載の精製システム。
【請求項18】
精製方法であって、
標的物質と混合物における残りの部分を含む当該混合物を第1の容器に加えることと、
磁気ビーズを前記第1の容器に加えることと、
前記磁気ビーズを用いて、前記標的物質を前記第1の容器中の前記混合物の残りの部分から分離させることであって、前記標的物質が、一時的に前記磁気ビーズに結合することと、
第1の数量の磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を含む第1の体積の混合物を前記第1の容器から第2の容器へと移すことであって、前記第2の容器の体積が、前記第1の容器の体積よりも小さいことと、
前記第2の容器の内面に前記第1の数量の前記磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を押し付けるために磁界を印加することであって、前記磁界を印加することには、前記第2の容器から離れた第1の位置から、前記第2の容器の外面に隣接した第2の位置へと、少なくとも1つの磁界生成素子を移動させるようにアクチュエータを起動させることが含まれる、当該磁界を印加することと、
前記磁界が、前記第2の容器の前記内面に前記第1の数量の前記磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を押し付けている間に、前記第1の体積の前記混合物
の残りの部分を前記第2の容器から除去することと、
第2の数量の磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を含む第2の体積の混合物を前記第1の容器から前記第2の容器へと移すことと、
第2の数量の磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を含む第2の体積の混合物を前記第1の容器から前記第2の容器へと移し、前記磁界が、前記第2の容器の前記内面に前記第1及び第2の数量の前記磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を押し付けている間に、前記第2の体積の前記混合物の残りの部分を前記第2の容器から除去することと、
を含む、精製方法。
【請求項19】
前記第1の体積の前記混合物の残りの部分を前記第2の容器から除去することが、第2の数量の磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を含む第2の体積の混合物を前記第1の容器から前記第2の容器へと移すと同時に、前記第1の体積の前記混合物の残りの部分を前記第2の容器から除去することを含む、請求項18に記載の精製方法。
【請求項20】
前記第2の体積の前記混合物の残りの部分を前記第2の容器から除去した後に、洗浄流体を前記第2の容器に加えることと、続いて、前記磁界が、前記第2の容器の前記内面に前記第1及び第2の数量の前記磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を押し付けている間に、前記洗浄流体を前記第2の容器から除去することと、を含む、請求項18に記載の精製方法。
【請求項21】
前記第1及び第2の数量の磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質が、前記洗浄流体中で自由に分散できるように、前記洗浄流体を前記第2の容器に加えた後に、前記磁界を除去することと、続いて、前記第2の容器から前記洗浄流体を除去する間に、前記第2の容器の前記内面に前記第1及び第2の数量の磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を押し付けるために前記磁界を再印加することと、を含む、請求項20に記載の精製方法。
【請求項22】
前記第2の体積の前記混合物の残りの部分を前記第2の容器から除去した後に、溶離液を前記第2の容器に加えることによって、前記第1及び第2の数量の磁気ビーズと結合した前記標的物質を溶離することと、続いて、前記磁界が前記第2の容器の前記内面に前記第1及び第2の数量の磁気ビーズを押し付けている間に、前記溶離液及び前記標的物質を前記第2の容器から除去することと、を含む、請求項18又は19に記載の精製方法。
【請求項23】
洗浄流体を除去した後で、溶離液を前記第2の容器に加えることによって、前記第1及び第2の数量の磁気ビーズと結合した前記標的物質を溶離することと、続いて、前記磁界が前記第2の容器の前記内面に前記第1及び第2の数量の磁気ビーズを押し付けている間に、前記溶離液及び前記標的物質を前記第2の容器から除去することと、を含む、請求項20又は21に記載の精製方法。
【請求項24】
前記第1及び第2の数量の前記磁気ビーズが、前記溶離液中で自由に分散できるように、前記溶離液を前記第2の容器に加えた後に、前記磁界を除去することと、続いて、前記第2の容器から前記溶離液及び前記標的物質を除去する間に、前記第2の容器の前記内面に前記第1及び第2の数量の前記磁気ビーズを押し付けるために前記磁界を再印加することと、を含む、請求項
22又は23に記載の精製方法。
【請求項25】
第1の数量の磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を含む第1の体積の前記混合物を前記第1の容器から前記第2の容器へと移すことが、自動ポンプを介して、第1の数量の磁気ビーズ及びそれらに結合している標的物質を含む第1の体積の混合物をポンピングすることを含む、請求項18~24の何れか一項に記載の精製方法。
【請求項26】
統合された前記第1及び第2の体積の前記混合物を前記第2の容器から除去することが、前記自動ポンプを介して、前記統合された第1及び第2の体積の前記混合物を前記第2の容器からポンピングすることを含む、請求項25に記載の精製方法。
【請求項27】
前記アクチュエータが、前記第1の位置と前記第2の位置との間で、前記少なくとも1つの磁界生成素子を移動させるように構成された空気圧又は油圧シリンダを含む、請求項18に記載の精製方法。
【請求項28】
前記第2の容器が、開口端と、閉口端と、前記開口端と前記閉口端との間に延在する縦軸とを有し、及び前記アクチュエータが、前記少なくとも1つの磁界生成素子を前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させる際に、前記縦軸と非平行な方向に、前記少なくとも1つの磁界生成素子を移動させるように構成される、請求項27に記載の精製方法。
【請求項29】
前記第2の容器の前記内面に磁界を印加することが、第1の永久磁石及び第2の永久磁石を前記容器の両側に位置付けることを含む、請求項18~28の何れか一項に記載の精製方法。
【請求項30】
前記第2の容器の前記内面に磁界を印加することが、複数の永久磁石を前記第2の容器の外周の周りに等間隔で配置することを含む、請求項18~28の何れか一項に記載の精製方法。
【請求項31】
前記複数の永久磁石の各永久磁石が、100N以上の最大磁気引力を有する、請求項30に記載の精製方法。
【請求項32】
前記標的物質が、生体分子である、請求項18~31の何れか一項に記載の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2016年10月31日に出願された米国仮特許出願第62/415,448号明細書の優先権の便益を主張し、その全内容を本明細書において明白に援用する。
【0002】
本開示は、一般に、精製システム及び方法に関し、より詳細には、生体分子などの標的物質を試料混合物から分離することによって、標的物質の解析又はさらなる処理を容易にすることに関する。
【背景技術】
【0003】
様々な診断及び医学研究活動は、細胞培養又は他の生物学的混合物に含有される、タンパク質などの物質の単離及び精製を必要とする。一部の従来の精製プロセスは、標的物質の溶解度を変えることによって、混合物中から標的物質を沈殿させることを含む。他の従来の精製プロセスは、異なる密度の粒子を固定点の周りに高速で回転させることによって、それらを分離させる遠心分離を必要とする。クロマトグラフィは、別の従来の技術であり、混合物の構成成分が異なる速度で移動する媒体に混合物を通すことを必要とする。
【0004】
従来の精製プロセスは、時間がかかり、及び/又は比較的小さな試料サイズに限定される傾向がある。例えば遠心分離は、一般的に、それぞれ20ミリリットル(mL)未満の体積を有する場合がある試験管内で実施される。大きな体積を有する試料が精製を必要とする場合、通常、それは、従来の精製技術に従って処理されるためには、より小さな試料サイズへと分割されなければならない。元の試料をより小さな体積の試料に分割するステップは、処理時間及び/又は作業を増やす。さらに、元の試料を複数の容器又はウェルに分配することは、精製システムに必要とされる設置面積又はワークステーション空間を拡大させる場合がある。また、従来の精製プロセスは、例えば、研究室の技術者が手作業で様々な容器に試料をピペットで移すことをそれらが必要とする場合、労力を要し得る。
【0005】
本開示は、既存の精製システム及び方法に対する有利な代替手段を具現化し、本明細書で述べられる課題又は必要性の1つ又は複数に対処することができると共に、他のメリット及び利点を提供することができる精製システム及び方法を説明する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、容器収容部、第1のポンプ、及び第1の磁界生成素子を含んでいてもよい精製システムを提供する。容器収容部は、混合物を含有する第1の容器を収容及び支持するように構成されてもよい。第1のポンプは、標的物質が混合物の残りの部分から分離された後に、混合物を第1の容器から除去するように構成されてもよい。第1の磁界生成素子は、容器収容部から離れた第1の位置と、容器収容部の外周面に隣接した第2の位置との間で、容器収容部に対して移動可能であってもよい。
【0007】
本開示の別の態様は、(a)標的物質を含む混合物を容器に加えることと、(b)磁気ビーズを容器に加えることと、(c)磁気ビーズを用いて、標的物質を混合物の残りの部分から分離させることであって、標的物質が、一時的に磁気ビーズに結合することと、(d)容器の内面に磁気ビーズを押し付けるために磁界を印加することと、(e)磁界が、容器の内面に磁気ビーズを押し付けている間に、混合物を容器から除去することと、を含んでもよい精製方法を提供する。
【0008】
本開示のさらなる態様は、第1の容器、第1の容器よりも小さい体積を有する第2の容器、第1の磁界生成素子、及び第2のポンプを含んでいてもよい精製システムを提供する。第1の容器は、混合物と、標的物質を混合物の残りの部分から分離させるための磁気ビーズとを最初に含有するように構成されてもよい。第1の磁界生成素子は、第2の容器の外面に隣接して位置付けられてもよい。第1のポンプは、混合物及び磁気ビーズを第1の容器から第2の容器へと移すように構成されてもよい。第2のポンプは、混合物を第2の容器から除去するように構成されてもよい。さらに、第2のポンプが、第2の容器から混合物を除去する間に、第1の磁界生成素子は、第2の容器の内面に磁気ビーズを押し付けるように磁気ビーズを磁気的に引き付けることができる。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、(a)標的物質を含む混合物を第1の容器に加えることと、(b)磁気ビーズを第1の容器に加えることと、(c)磁気ビーズを用いて、標的物質を第1の容器中の混合物の残りの部分から分離させることであって、標的物質が、一時的に磁気ビーズに結合することと、(d)第1の体積の混合物及び第1の数量の磁気ビーズを第1の容器から第2の容器へと移すことであって、第2の容器の体積が、第1の容器の体積よりも小さいことと、(e)第2の容器の内面に第1の数量の磁気ビーズを押し付けるために磁界を印加することと、(f)磁界が、第2の容器の内面に第1の数量の磁気ビーズを押し付けている間に、第1の体積の混合物を第2の容器から除去することと、(g)第2の体積の混合物及び第2の数量の磁気ビーズを第1の容器から第2の容器へと移すことと、(h)磁界が、第2の容器の内面に第1及び第2の数量の磁気ビーズを押し付けている間に、第2の体積の混合物を第2の容器から除去することと、を含んでもよい精製方法を提供する。
【0010】
本開示は、添付の図面と併せた以下の説明から、より完全に理解されると考えられる。図面の一部は、より明白に他の要素を示す目的で、選択された要素の省略によって、単純化されている場合がある。一部の図面における、このような要素の省略は、対応する書面の記載において明示的に記述される場合を除き、必ずしも、実施形態の何れかにおける特定の要素の存在又は欠如を示さない。また、どの図面も、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の原理に従って構築された精製システムの一実施形態の模式図の上面図である。
【
図2】磁界生成素子が、それぞれの非作用位置に配置された、本開示の原理に従って構築された精製システムの一実施形態の斜視側面図である。
【
図3】磁界生成素子が、それぞれの作用位置に配置された、
図2に描かれた精製システムの斜視側面図である。
【
図4A】本開示の原理による精製方法の一実施形態を模式的に示す。
【
図4B】本開示の原理による精製方法の一実施形態を模式的に示す。
【
図4C】本開示の原理による精製方法の一実施形態を模式的に示す。
【
図4D】本開示の原理による精製方法の一実施形態を模式的に示す。
【
図4E】本開示の原理による精製方法の一実施形態を模式的に示す。
【
図4F】本開示の原理による精製方法の一実施形態を模式的に示す。
【
図4G】本開示の原理による精製方法の一実施形態を模式的に示す。
【
図4H】本開示の原理による精製方法の一実施形態を模式的に示す。
【
図5】本開示の原理に従って構築された精製システムの別の実施形態の模式図の上面図である。
【
図6A】本開示の原理による精製方法の別の実施形態を模式的に示す。
【
図6B】本開示の原理による精製方法の別の実施形態を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本開示の原理による、混合物から標的物質を分離するために使用することができる精製システム10の一実施形態の模式図である。精製システム10は、容器14の収容及び支持を行うように構成された容器収容部12と、流体管18を介して容器14と流体連通したポンプ16と、複数の磁界生成素子20a~20dと、それぞれが、容器収容部12に対して複数の磁界生成素子20a~20dの内のそれぞれの磁界生成素子を移動させるように構成された複数のアクチュエータ22a~22dとを含んでいてもよい。容器14は、標的物質Tを含む試料混合物30で満たされてもよい。標的物質Tを試料混合物30の残りの部分から分離又は単離するために、複数の磁気ビーズ32が、試料混合物30中に浸漬(例えば、懸濁)されてもよい。加えて、ポンプ16が、選択的に、廃棄物をドレーン26に排出し、及び1つ又は複数の補助容器28a及び28bから容器14へと洗浄流体、溶離液、及び/又は他の流体を移すことができるように、ポンプ16は、多位置弁24に流体接続されてもよい。さらに、精製システム10は、ポンプ16及び/又はアクチュエータ22a~22dの動作を自動的に制御するように構成された制御ユニット29を含んでいてもよい。
【0013】
一般的に、精製システム10の動作中は、容器14は、容器収容部12に設置されてもよく、及びアクチュエータ22a~22dは、精製プロセスの段階に応じて、容器14から離れた非作用位置と、容器14及び/又は容器収容部12と隣接した(例えば、すぐに隣接するが間隔を空けて、又はすぐに隣接し、且つ直接接触する)作用位置との間で、磁界生成素子20a~20dのそれぞれを往復運動させることができる。磁界生成素子20a~20dが、容器14に隣接した、それぞれの作用位置に配置されると、それらは、磁気ビーズ32を引き付け、及びそれらを容器14の内面34に押し付けることができる。これは、標的物質Tと結合した磁気ビーズ32が、後続の洗浄及び/又は溶離手順のために、容器14内にとどまる一方で、ポンプ16が、試料混合物30を容器14から除去することを可能にすることができる。
【0014】
このように構成されることで、本開示の精製システム及び基本的方法は、混合物から標的物質を分離する自動又は半自動プロセスを有利に提供する。さらに、比較的強力な磁界を印加する、及び/又は複数の磁界生成素子で容器を取り囲む能力により、本開示の精製システムは、例えば、1リットル(L)以上の体積を有した試料を含む、比較的大量及び多数の磁気ビーズを有した試料混合物を処理することができる可能性がある。従って、現在開示している精製システム及び方法は、多くの従来の精製システム及び方法において行われるような、大量の試料を複数の処理容器に分割する必要性をなくす、又は減少させることができる。従って、本開示の精製システム及び方法は、混合物を精製するより速い、又はより合理化された方法を有利に提供することができ、及び精製器具を収納するために必要とされる設置面積又はワークステーション空間も減少させることができる。加えて、以下にさらに説明するように、本開示の精製システムは、容器及び磁界生成素子が、磁気ビーズを含有する試料混合物の連続流から磁気ビーズを除去するためのトラップとして一般に機能する、連続流適用例用に構成されてもよい。これは、磁気ビーズと結合した標的物質を抽出するために必要とされる洗浄流体及び/又は溶離液の量を最小限に抑えながら、非常に大きな試料(例えば、20000Lを超える体積の試料)の処理を可能にすることができる。
【0015】
これより、精製システム10の上述の構成要素のそれぞれ及び関連の精製方法をより詳細に説明する。
【0016】
本開示の精製システム及び方法は、各種の試料混合物(例えば、細胞培養、血液、唾液、粘液、汗(perspiration又はsweat)、尿、便、土、食品など)から、各種の標的物質(例えば、分子、分子の複合体、生体分子、生体分子の複合体、タンパク質、タンパク質複合体、ペプチド、核酸リガンド、病原微生物、細胞など)を分離するために使用することができる。また、単離されるべき標的物質T及び/又は試料混合物30の性質に応じて、各種の磁気ビーズを使用することができる。一部の実施形態では、磁気ビーズ32は、球状を有し、及びシリカ内に入れられ、且つ標的物質Tと結合又は共役する材料でコーティングされた常磁性コアを保有していてもよい。磁気ビーズ32と標的物質Tとの間の結合作用は、共有結合的に、非共有結合的に、静電的に、水素結合により、ファンデルワールス力により、及び/又はその他の適切な分子結合プロセスにより、達成されてもよい。少なくとも1つの実施形態において、試料混合物30は、細胞培養であってもよく、試料混合物30中の標的物質Tは、抗体であってもよく、及び磁気ビーズ32は、タンパク質A磁気ビーズである。別の実施形態では、試料混合物30は、細胞培養であってもよく、試料混合物30中の標的物質Tは、HIS標識タンパク質であってもよく、及び磁気ビーズ32は、タンパク質精製のために、亜鉛、銅、又はコバルトでコーティングされてもよい。
【0017】
現在開示している精製システム及び方法において実施することができる磁気ビーズのタイプ例の非限定的リストには、親和性タイプの磁気ビーズ(例えば、アミン磁気ビーズ、アルデヒド磁気ビーズ、カルボキシ磁気ビーズ、CDI磁気ビーズ、DVS磁気ビーズ、DADPA磁気ビーズ、エポキシ磁気ビーズ、ヒドラジド磁気ビーズ、ヒドロキシ磁気ビーズ、ヨードアセチル磁気ビーズ、NHS磁気ビーズ、スルフィドリ磁気ビーズ、トシル磁気ビーズ、チオール磁気ビーズ、シリカ磁気ビーズ、IDA磁気ビーズなど);逆相タイプ磁気ビーズ(例えば、C4磁気ビーズ、C8磁気ビーズ、C18磁気ビーズ、シアノプロピル磁気ビーズ、フェニル磁気ビーズ、ジフェニル磁気ビーズなど);イオン交換タイプ磁気ビーズ(例えば、DEAE磁気ビーズ、PSA磁気ビーズ、SAX磁気ビーズ、WCX磁気ビーズ、SCX磁気ビーズ、ヒドロキシアパタイト磁気ビーズなど);抗体精製タイプ磁気ビーズ(例えば、タンパク質A磁気ビーズ、タンパク質G磁気ビーズ、タンパク質A/G磁気ビーズ、タンパク質L磁気ビーズ、クイックIgGピュア磁気ビーズ、抗原ペプチド磁気ビーズ、クイックIgMピュア磁気ビーズ、抗IgG磁気ビーズ、クイックIgAピュア磁気ビーズ、チオフィリック磁気ビーズなど);抗体固定化タイプ磁気ビーズ(例えば、プロテインA磁気ビーズ、タンパク質G磁気ビーズ、タンパク質A/G磁気ビーズ、タンパク質L磁気ビーズ、エポキシ活性化磁気ビーズ、アルデヒド終端磁気ビーズ、ヒドラジド終端磁気ビーズ、カルボキシル終端磁気ビーズ、ヨードアセチル活性化磁気ビーズ、チオール活性化磁気ビーズなど);組み換えタンパク質精製タイプ磁気ビーズ(例えば、Ni+帯電磁気ビーズ、Co+帯電磁気ビーズ、マルトース磁気ビーズ、カルモジュリン磁気ビーズなど);ペプチド固定化タイプ磁気ビーズ(例えば、エポキシ活性化磁気ビーズ、アルデヒド終端磁気ビーズ、カルボキシル終端磁気ビーズ、アミン終端磁気ビーズ、ヨードアセチル活性化磁気ビーズ、チオール活性化磁気ビーズなど);DNA又はRNA精製用の磁気ビーズ;エンドトキシン除去用の磁気ビーズ;豊富タンパク質除去用の磁気ビーズ;及び/又はEDTA磁気ビーズが含まれる。
【0018】
本明細書では、「磁気」という用語は、磁性、常磁性及び/又は強磁性のあらゆる要素を包含すると定義される。従って、磁気ビーズ32は、磁性ビーズ、常磁性ビーズ、強磁性ビーズ、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0019】
一部の実施形態では、磁気ビーズ32が試料混合物30中に浸漬された際に、磁気ビーズ32が容器14の底にまで沈むように、磁気ビーズ32は、試料混合物30の密度よりも大きい密度を有していてもよい。他の実施形態では、磁気ビーズ32が、試料混合物30中で浮く、又は部分的に浮くように、磁気ビーズ32は、混合物30以下の密度を有していてもよい。
【0020】
図1をさらに参照し、容器収容部12は、容器14を収容及び保持するためのプラットフォーム41を含んでいてもよい。一部の実施形態では、容器収容部12は、容器14がプラットフォーム41上に配置された際に、容器14の横方向移動を抑制する係合構造42(
図2及び
図3では不図示)を装備していてもよい。一部の実施形態では、係合構造42は、プラットフォーム41の外周の周りに配置され、且つ容器14を取り囲むスリーブを形成する、1つ又は複数の垂直直立壁を含んでいてもよい。各垂直直立壁は、容器14の高さと実質的に等しい高さを有していてもよい。代替的に、係合構造42は、容器14の底部を取り巻く、比較的短い、垂直直立リムであってもよい。係合構造42は、磁界生成素子20a~20dの磁気引力により、磁気ビーズ32が、最初に、容器14の内面に接触するように移動する際に、容器14の移動を抑制するのに役立つことができる。容器収容部12が、係合構造42を含む実施形態においては、容器収容部12の外周面又は外周が、係合構造42によって定義されてもよい。係合構造42が省かれる場合、プラットフォーム41自体の外縁が、容器収容部12の外周面又は外周を定義してもよい。さらに、一部の実施形態では、係合構造42は、容器14に向かう磁界生成素子20a~20dのさらなる前進を防止するための停止部材として機能してもよい。
【0021】
図2を参照すると、磁界生成素子20a~20dのそれぞれが、容器14から離れた非作用位置に配置された、精製システム10の一実施形態の斜視図が示されている。精製システム10は、容器収容部12、ポンプ16、磁界生成素子20a~20d、及びアクチュエータ22a~22dを含む様々な構成要素を接続及び/又は支持するためのフレーム40又はハウジングを組み込んでいてもよい。本実施形態では、ポンプ16が、容器収容部12の垂直方向上部に配置されるように、ポンプ16が、フレーム40の上に取り付けられる。フレーム40は、磁界生成素子20a~20dのそれぞれの固定水平経路を定義するチャネル又はスロット43a~43dを含んでいてもよい。これらの経路は、線形であり、それぞれは、容器収容部12の中心Cから生じる仮想放射状線とアライメントされる。しかし、他の実施形態では、スロット43a~43dによって定義される経路は、非線形であってもよく、曲線状であってもよく、又はその他の適切な形状を有していてもよい。さらに、一部の実施形態では、フレーム40は、精製システム10の他の構成要素を収納することができる密封可能な内部空間を生じさせるための筐体構造(不図示)を組み込んでいてもよい。筐体構造は、例えば、容器14の追加又は除去を行うために、内部空間にアクセスするためのドアを含んでいてもよい。
【0022】
さらに
図2を参照して、容器14は、容器14の閉口端を定義する底壁50と、底壁50から上方へ延在し、且つ容器14の内部体積V1を定義する側壁52と、容器14の開口端を定義する開口56を備えた上壁54とを含んでいてもよい。側壁52は、容器14の内面34及び容器14の外面57を定義してもよい。容器14の縦軸Aは、底壁50又は容器14の閉口端と、上壁54又は容器14の開口端との間に延在してもよい。一部の実施形態では、上壁54は、注ぎ口を形成するように漏斗状であってもよい。
図1に示す実施形態では、上壁54は、容器14の上端が、開口56によって完全に定義されるように、省かれてもよい。取り外し可能キャップ58は、開口56を覆ってもよく、流体管18(
図2では不図示)を容器14内に挿入できるように、精製プロセス中に、取り外されてもよい。容器14は、例えば、ガラス又はプラスチックを含む任意の適切な材料から作られてもよい。
図2に示す実施形態では、容器14は、透明材料から作られる。さらに、一部の実施形態では、容器14は、大型の実験用ビーカーであってもよい。
【0023】
本実施形態では、容器14は、直径Dを有する略円筒形状を有する。直径Dは、約(例えば、±10%)10~60cm、又は約(例えば、±10%)20~50cm、又は約(例えば、±10%)35~45cm、又は約(例えば、±10%)10cm以上、又は約(例えば、±10%)20cm以上、又は約(例えば、±10%)30cm以上の範囲内であってもよい。他の実施形態では、容器14は、正方形又は長方形断面形状、又はその他の適切な断面形状を有していてもよい。本実施形態の容器14は、磁気ビーズ32が除去される一方で、混合物30を流れない状態に保持するように構成されるが、代替実施形態では、容器14は、磁気ビーズ32が除去及び/又は捕捉される一方で、そこを通って混合物30及び/又は他の流体が、連続的に、又は半連続的に流れる管(例えば、管類)として構成されてもよい。
【0024】
一般的に言えば、容器14の体積V1は、従来の精製システムにおいて使用される容器又はウェルの体積よりも大きくてもよい。一部の実施形態では、容器14の体積V1は、約(例えば、±10%)0.5~5.0L、又は約(例えば、±10%)0.5~4.0L、又は約(例えば、±10%)0.5~3.0L、又は約(例えば、±10%)0.5~2.0L、又は約(例えば、±10%)1.0~3.0L、又は約(例えば、±10%)1.0~2.0L、又は約(例えば、±10%)0.5L以上、又は約(例えば、±10%)1.0L以上の範囲内であってもよい。そのため、試料混合物30を複数の処理容器又はウェルに分割する必要なしに、比較的大きな体積を有する試料混合物を精製することができる。代わりに、精製プロセスは、単一の容器(すなわち、容器14)内で実施することができ、場合によっては、事前に試料混合物の保存に使用された同じ容器を精製プロセスにおいて使用することができる。容器14の比較的大きな体積の結果として、精製システム10は、従来の精製システムよりも最大で10倍速く、あるいはそれよりも速く、試料混合物を精製することができる可能性がある。
【0025】
図1に示すように、ポンプ16は、流体管18を介して、容器14と流体連通していてもよい。容器14が容器収容部12上に設置される際には、流体管18を片側に折り曲げることができ、流体管18の遠位端が容器14の内部に挿入される際には、元の位置に戻るように折り曲げることができるように、流体管18は、柔軟性のある管類から作られてもよい。
図2に示されるように、ポンプ16が、容器14の垂直方向上部に位置するように、ポンプ16は、フレーム40上に取り付けられてもよい。他の実施形態では、ポンプ16は、容器14の側面の側方に位置付けられてもよく、及び/又はフレーム40に接続されていなくてもよい。
【0026】
一般に、ポンプ16は、流体管18を介して、流体を除去するように、及び/又は流体を容器14に加えるように構成される。ポンプ16は、電気モータ、及び/又は加圧された油圧流体及び/又は気体源を含む(但し、これらに限定されない)、任意の適切な手段によって動力が供給されてもよい。ポンプ16は、精製プロセスの仕様に応じて、可変速度又は単一の速度で、動作させてもよい。一部の実施形態では、ポンプ16の動作は、例えば、制御ユニット29のメモリに保存されたプログラム可能命令に従って、制御ユニット29によって電子的に制御されてもよい。代替的又は追加的に、ポンプ16は、
図2の実施形態に示すように、手作業で、オン/オフスイッチ46を作動させ、及び/又は速度つまみ48を回すオペレータ(例えば、研究室の技術者)によって動作させることができる。さらに、一部の実施形態では、ポンプ16は、蠕動ポンプなどの容積型ポンプであってもよく、懸濁物(例えば、磁気ビーズ)に損傷を与えることなく、懸濁物を含有する流体をポンピングすることができる。ポンプ16のこのような実施形態は、インキュベーション容器又はタンクから容器14へと、混合物及び磁気ビーズが一緒に移される、以下に説明する連続流タイプの精製プロセスによって利用することができる。さらに他の実施形態では、ポンプ16は、流体を移動させるために、回転する羽根車を用いて真空を生じさせる、半径流ポンプなどの遠心ポンプであってもよい。さらに、一部の実施形態では、ポンプ16は、可逆性であってもよい。
【0027】
多位置弁24は、
図2及び3に示すように、ポンプ16を含有するハウジング内に組み込まれてもよく、又は代替的に、多位置弁24は、
図1に示すように、ポンプ16とは分離していてもよい。多位置24は、ポンプ16が、様々な異なる容器(例えば、容器28a及び28b)及び/又はドレーン26と選択的に流体接続されることを可能にすることができる。
図1に示す実施形態では、多位置弁24は、ポンプ16をドレーン26、容器28a、又は容器28bと選択的に流体接続させるように構成された三方弁である。他の実施形態では、多位置弁24は、二方弁、又は任意の数の選択的に開くことが可能なオリフィスを備えたその他の弁であってもよい。一部の実施形態では、多位置弁24の動作は、例えば、制御ユニット29のメモリに保存されたプログラム可能命令に従って、制御ユニット29によって電子的に制御されてもよい。多位置弁24は、制御ユニット29からのコマンド信号に応答して、多位置弁24のオリフィスを開閉するための1つ又は複数のソレノイドを組み込んでいてもよい。他の実施形態では、多位置弁24は、例えば、
図2及び
図3に示すように、ポンプハウジングから突出した弁つまみ48を回すことによって、ユーザによって手作業で制御されてもよい。代替実施形態では、第2の多位置弁が、含まれてもよく、及び幾つかのドレーン又は容器14から吸引された液体の他の目的地の1つへと、ポンプ16又は第2のポンプを選択的に流体接続させるように構成されてもよい。
【0028】
図2を参照して、精製システム10は、容器28a及び28bを含む様々な容器を保持するためのラック50を含んでいてもよい。一部の実施形態では、ラックによって保持される容器の1つは、
図1に示されるドレーン26として機能することができる。ラック50は、フレーム40にしっかりと接続されてもよく、又はフレーム40から分離していてもよい。ラック50によって保持される容器は、洗浄流体、溶離液、緩衝剤、酵素、及び/又は精製プロセスで使用される他の試薬を含有していてもよい。また、ラック50は、精製プロセスの開始前に、試料混合物容器14を保持するように構成されてもよい。
【0029】
図2及び
図3は、磁界生成素子20a~20dが、等間隔で、容器収容部12の外周囲を中心に配置される。図示した実施形態では、4つの磁界生成素子20a~20dが含まれ、磁界生成素子20a~20dのそれぞれの間で、90度の分離がもたらされる。他の実施形態では、2個、3個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれよりも多い磁界生成素子が、含まれてもよい。容器14を複数の磁界生成素子で取り囲むことによって、より均一な磁界を生じさせることができ、このことは、磁界生成素子が、それぞれの作用位置(
図3を参照)に配置された際に、全ての磁気ビーズ32が、容器14の内面34に押し付けられ、且つ固定化されることを確実にする助けとなることができる。2つの磁界生成素子のみが含まれる実施形態では、各磁界生成素子は、2つの磁界生成素子をそれぞれの作用位置へと移動させることにより、これらの磁界生成素子が、容器14を取り巻くように、C字形の断面を有していてもよい。さらに他の実施形態では、単一の磁界生成素子のみが、含まれてもよく、及び容器14の片側にのみ位置するにもかかわらず、容器14の内面34に対して磁気ビーズ32の大部分又は全てを磁気的に引き付けるのに十分に強力な磁界を生成することができる。
【0030】
一部の実施形態(図面に示したものなど)では、磁界生成素子20a~20dのそれぞれが、それ自体の永続的な磁界を生成するように構成された、それぞれの永久磁石から構成される。各永久磁石は、約(例えば、±10%)50~1000ニュートン(N)、又は約(例えば、±10%)100~800N、又は約(例えば、±10%)100~700N、又は約(例えば、±10%)150~600N、又は約(例えば、±10%)200~500N、又は約(例えば、±10%)200~450N、又は約(例えば、±10%)50N以上、又は約(例えば、±10%)100N以上、又は約(例えば、±10%)150N以上、又は約(例えば、±10%)200N以上、又は約(例えば、±10%)250N以上の範囲内の最大磁気引力を有していてもよい。一部の実施形態では、永久磁石の総合計磁気引力は、約(例えば、±10%)500N以上、又は約(例えば、±10%)1000N以上、又は約(例えば、±10%)1500N以上、又は約(例えば、±10%)2000N以上、又は約(例えば、±10%)2500N以上であってもよい。一部の実施形態では、磁界生成素子20a~20dを構成する永久磁石は、それぞれが、約(例えば、±10%)5cmの長さ、5cmの幅、及び1.25cmの厚さの略長方形形状を有する、ニッケルメッキを施したネオジムブロック磁石であってもよい。代替実施形態では、磁界生成素子20a~20dのそれぞれは、電流を供給されると磁界を生成するように構成された、それぞれの電磁石から構成されてもよい。このような実施形態では、電磁石への電気の供給は、制御ユニット29によって、自動的に制御されてもよい。
【0031】
磁界生成素子20a~20dのそれぞれは、容器収容部12及び/又は容器14から離れたそれぞれの非作用位置(
図2を参照)から、容器収容部12及び/又は容器14の外周面に隣接したそれぞれの作用位置(
図3を参照)へと、容器収容部12及び/又は容器14に対して移動可能であってもよい。作用位置と非作用位置との間の移動は、一般に、水平方向、及び/又は容器14の縦軸Aに対して非平行(例えば、垂直)な方向であってもよい。容器14の側面から側方に磁界生成素子20a~20dを内及び外に移動させることは、容器14の最上部における開口56を塞がないメリットを有し、及び磁気ビーズ32を引き付けるために、磁界生成素子20a~20dを試料混合物30中に浸漬させる必要性(これは、汚染物質を導入するリスクを有する)もなくす。非作用位置では、磁界生成素子20a~20dのそれぞれの磁界は、容器14の付近において、容器14内の磁気ビーズ32の位置をもたらすには弱すぎてもよい。作用位置では、磁界生成素子20a~20dの磁界は、容器14の付近において、磁気ビーズ32を磁気的に引き付け、且つそれらを容器14の内面34に対して押し付け、それによって容器14に対して磁気ビーズ32を固定化させるのに十分な強さであってもよい。一部の実施形態では、非作用位置と、それに対応する作用位置とを分ける距離は、約(例えば、±10%)10~75cm、又は約(例えば、±10%)20~60cm、又は約(例えば、±10%)30~45cm、又は約(例えば、±10%)20cm以上、又は約(例えば、±10%)30cm以上の範囲内に入っていてもよい。
【0032】
図1~3に示されるように、磁界生成素子20a~20dのそれぞれは、容器収容部12の中心C及び/又は容器14の縦軸A(これは、容器収容部12の中心Cを通過してもよい)から生じる、それぞれの仮想放射状線とアライメントされた、それぞれの線形固定経路に沿って移動するように構成されてもよい。一般的な意味で、磁界生成素子20a~20dの線形固定経路は、車輪のスポークのように配置されてもよい。従って、磁界生成素子20a~20dのそれぞれは、それの非作用位置からそれの作用位置へと移動する際には、容器収容部12の中心Cに向けて内側に移動することができ、及びそれぞれは、それの作用位置からそれの非作用位置へと移動する際には、容器収容部12の中心Cから離れて外側に移動することができる。従って、容器14と、非作用位置にある磁界生成素子20a~20dのそれぞれとの間の距離は、容器14と、作用位置にある磁界生成素子20a~20dのそれぞれとの間の距離よりも大きくてもよい。一部の実施形態では、磁界生成素子20a~20dの固定経路は、非線形であっても、曲線状であっても、又は任意の他の適切な形状を有していてもよい。
【0033】
さらに、磁界生成素子20a~20dのそれぞれは、磁界生成素子を非作用位置と作用位置との間で前後に移動させるように構成された、対応するアクチュエータ22a~22dを有していてもよい。一部の実施形態では、アクチュエータ22a~22dのそれぞれは、往復ピストンロッドを有する油圧又は空気圧シリンダを含んでいてもよい。このような実施形態では、単一の加圧された油圧流体又は気体源(不図示)が、油圧又は空気圧シリンダのそれぞれに動力を供給してもよい。他の実施形態では、アクチュエータ22a~22dのそれぞれは、例えば、滑車システム、歯車システム、又はその他の運動変換機構を介して、回転する電気モータ(不図示)によって動力が供給されてもよい。磁界生成素子20a~20dを自動的に移動させることが可能なアクチュエータ22a~22dを含むことは、磁界生成素子20a~20dの取り扱いが、オペレータの健康及び/又はオペレータが携行するパーソナル電子機器のメモリにとって危険となり得るので、有益となることができる。また、磁気ビーズ32と、磁界生成素子20a~20dとの間の磁気引力が非常に強い場合、又は磁界生成素子20a~20d自体の間の磁気引力が非常に強い場合、オペレータが手作業で、作用位置から非作用位置へと磁界生成素子20a~20dを移動させることが、困難及び/又は煩雑である場合がある。それでもやはり、一部の実施形態において、アクチュエータ22a~22dは、自動化されなくてもよく、代わりに、例えばクランク機構を介して、又は単にユーザがアクチュエータ22a~22dを押すこと及び引くことによって、ユーザにより、手作業で動力が供給できることが可能である。一部の実施形態では、アクチュエータ22a~22dは、磁界生成素子20a~20dを一斉に移動させるように構成されてもよく、他の実施形態では、アクチュエータ22a~22dは、磁界生成素子20a~20dを互いに独立して移動させるように構成されてもよい。
【0034】
図1に示すように、精製システム10は、ポンプ16、アクチュエータ22a~22d、及び/又は精製システム10の他の制御可能要素の動作を制御する制御ユニット29を含んでいてもよい。制御ユニット29は、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)、有形の非一時的コンピュータ可読命令を保存するためのメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プロセッサによって実行可能なハードディスクなどの不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、リムーバブルメモリ、非リムーバブルメモリなど)、通信ユニット、ディスプレイ、及び入力デバイス(例えば、キーボード、キーパッド、タッチスクリーンなど)を含んでいてもよい。さらに、一部の実施形態では、制御ユニット29は、プログラマブルロジックコントローラであってもよい。制御ユニット29は、オペレータの事前定義仕様に従って、精製プロセスを実行するようにプログラムされてもよい。一部の実施形態では、制御ユニット29は、試料混合物30の特徴を表すセンサデータ(例えば、体積、温度、重さ、pHなど)、タイマ、オペレータのアナログ又はデジタル入力、及び/又はその他の関連の検出可能な事象又は発生に応答して、磁石20a~20dを移動させるようにアクチュエータ22a~22dを起動させることなどの精製プロセスのステップを実行することができる。
【0035】
これより、
図4A~4Hを参照して、精製システム10の動作方法を説明する。説明目的で、精製システム10の要素の幾つかは、
図4A~4Hには示されない。図面からのそれらの省略は、それらが、精製システム10から必然的に欠けていることを意味すると理解されるべきではない。最初のステップとして、標的物質Tを含むある量の試料混合物30で、容器14を満たすことができる。次に、
図4Aに示すように、磁気ビーズ32を容器14に加え、ある期間(例えば、数分、1時間、数時間、1日、数日など)の間、試料混合物30と相互作用させるために置いておくことができる。このインキュベーション期間の間、磁気ビーズ32は、標的物質Tに結合することができ、それによって、標的物質Tが、試料混合物30の残りの部分から分離される(
図4B参照)。上記で述べた通り、磁気ビーズ32と標的物質Tとの間の結合作用は、共有結合的に、非共有結合的に、静電的に、水素結合により、ファンデルワールス力により、及び/又はその他の適切な分子結合プロセスにより、達成されてもよい。一部の実施形態では、標的物質Tと磁気ビーズ32との間の結合を促進するために、インキュベーション期間中に、試料混合物30をかき混ぜてもよく、又は撹拌してもよい。さらに、一部の実施形態では、磁気ビーズ32が標的物質Tと結合する間に、容器14を容器収容部12上に設置してもよい。
【0036】
次に、既に行われていなければ、
図4Cに示すように、磁界生成素子20a~20dのそれぞれが、それぞれの非作用位置に配置された状態で、容器14を容器収容部12上に設置することができる。一部の実施形態では、容器14は、取り外し可能な両面粘着ステッカーパッドによって、容器収容部12上に固定されてもよい。このステップの間に、開口56を通して、流体管18の遠位端を容器14内に挿入し、及び試料混合物30中に浸漬させることができる。流体管18が、容器14内の全ての、又は実質的に全ての試料混合物30を吸引することができるように、流体管18の口は、容器14の底壁50に隣接して、あるいは容器14の底壁50の非常に近くに位置付けられてもよい。代替実施形態では、流体管18は、容器14の底壁50又は側壁52の開口(不図示)と流体接続されてもよい。
【0037】
続いて、
図4Dに示すように、容器14から離れたそれぞれの非作用位置から、容器14の側壁52及び/又は容器収容部12の外周面に隣接した(例えば、すぐに隣接するが間隔を空けて、又はすぐに隣接し、且つ直接接触する)それぞれの作用位置へと、磁界生成素子20a~20dを内側に移動させるために、アクチュエータ22a~22dを起動させることができる。
図4Dは、磁界生成素子20a及び20bのみを描くが、この段階で、磁界生成素子20a~20dの全てを、それぞれの非作用位置から、それぞれの作用位置へと移動させることができる。その結果、磁界生成素子20a~20dは、磁気ビーズ32を磁気的に引き付けることができ、それによって、磁気ビーズ32が、容器14の側壁52の内面34に押し付けられる。磁気ビーズ32と、容器14の側壁52の磁化内面34との間の摩擦又は接触は、後続の流体の除去又は容器14への流体の追加中に、磁気ビーズ32が、移動又は分散することを抑制又は防止するように、容器14に対して磁気ビーズ32を効果的に固定化又は固定することができる。一部の実施形態では、アクチュエータ22a~22dは、制御ユニット29からのコマンド信号に応答して、磁界生成素子20a~20dを自動的に移動させることができる。他の実施形態では、アクチュエータ22a~22dは、オペレータによって手作業で磁界生成素子20a~20dを移動させるように動力が供給されてもよい。
【0038】
図4Eを参照して、精製方法の次のステップは、流体管18を介して、容器14から試料混合物30を吸引又は除去することを含んでもよい。一部の実施形態では、ポンプ16は、試料混合物30を容器14から除去するために必要とされる吸引力を生じさせるために使用することができる。磁気ビーズ32は、磁界生成素子20a~20dによって容器14の側壁52の内面34に対して保持されるので、磁気ビーズ32は、このステップでは除去されない。
【0039】
試料混合物30の除去後に、
図4Fに示すように、容器14の内面34及び/又は残余混合物の磁気ビーズ32をきれいにするために、流体管18又は別の流体管を介して、洗浄流体60(例えば、塩溶液)を容器14に加えることができる。しかし、洗浄流体60は、磁気ビーズ32から標的物質Tを除去しなくてもよい。一部の実施形態では、洗浄流体60は、ポンプ16によって、ラック50によって保持される容器の1つ(例えば、容器28a又は28b)から容器14へと移されてもよい。容器14に加えられる洗浄流体60の体積は、容器14の最大体積V1と同じ、又はそれよりも小さくてもよい(例えば、何分の1)。任意選択的に、アクチュエータ22a~22dは、磁気ビーズ32が洗浄流体60中で自由に分散(例えば、懸濁)されるように、洗浄ステップ中に、磁石20a~20dをそれらの非作用位置へと戻してもよい。磁気ビーズ32が分散することを可能にすることにより、洗浄プロセスの有効性を向上させることができ、及び/又は洗浄流体60中の磁気ビーズ32のかき混ぜ、混合、又は他の撹拌を可能にすることができる。洗浄が完了すると、アクチュエータ22a~22dは、再度、容器14の内面34に対して磁気ビーズ32を固定化させるために、磁石20a~20dをそれらの作用位置へと戻すことができ、及び洗浄流体60を除去することができる。さらに、一部の実施形態では、上記の洗浄ステップは、省かれてもよい。
【0040】
次に、
図4Gに示すように、流体管18又は別の流体管を介して、溶離液62(例えば、液体溶離溶液)を容器14に加えることによって、標的物質Tを磁気ビーズ32から解放させることができる。アクチュエータ22a~22dは、磁気ビーズ32が溶離液62中で自由に分散(例えば、懸濁)されるように、溶離ステップ中に、磁界生成素子20a~20dをそれぞれの非作用位置へと移動させるように構成されてもよいが、この段階で、磁界生成素子20a~20dをそれらの非作用位置へと移動させることは、必須ではない。一部の実施形態では、溶離液62は、ポンプ16によって、ラック50によって保持される容器の1つ(例えば、容器28a又は28b)から容器14へと移されてもよい。一部の実施形態では、ポンプ16によって容器14に移される溶離液62の体積は、洗浄ステップ中に以前に容器14に加えられた洗浄流体60の体積以下であってもよい。さらに、一部の実施形態では、例えば、溶離液62中の標的物質Tを増幅させるために、酵素及び/又は緩衝剤成分を加える追加ステップが含まれてもよい。
【0041】
インキュベーション期間の後に、
図4Hに示すように、再び、容器14の内面34に対して磁気ビーズ32を固定化させるために、アクチュエータ22a~22dは、磁石20a~20dをそれぞれの作用位置へと戻すことができる。次いで、ポンプ14は、流体管18を介して、溶離液62及び溶離液62と結合した標的物質Tを容器14から除去し、及びそれらをラック50によって保持される容器の1つ又は別の容器に移すことができる。最後に、容器収容部12から容器14を取り外し、及び容器14を廃棄又は将来使用するために残しておくことができる。次いで、精製を必要とする別の混合物を含有した別の容器に対して、上記のステップを繰り返すことができる。
【0042】
本実施形態は、ポンプ16を用いて、流体の追加及び容器14からの除去を行うが、代替実施形態では、オペレータは、手作業で、例えばピペットを用いて、流体の追加又は除去ステップの何れかを行ってもよい。
【0043】
図5は、本開示の原理に従って構築された精製システム110の別の実施形態の模式図である。精製システム110は、インキュベーション容器又はタンク180、及び大量の試料混合物の連続流処理を容易にするための移送ポンプ182の追加を除いて、上記の精製システム10と幾つかの点で類似する。精製システム10と同じ又は類似した精製システム110の要素は、100ずつ増加させた同じ参照符号で示す。これらの要素の多くの説明は、簡潔にするために、簡略され、又は省かれる。
【0044】
一般に、インキュベーション容器180は、試料混合物130中に浸漬された磁気ビーズ132が、標的物質Tを試料混合物130の残りの部分から分離させる間に、大量の試料混合物130を保持する空間を提供することができる。インキュベーション容器180の体積V2は、容器114の体積V1よりも大幅に大きくてもよい。一部の実施形態では、インキュベーション容器180の体積V2は、容器114の体積V1の少なくとも5倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも100倍であってもよく、又はそれよりも高い体積V1の倍数であってもよい。
【0045】
移送ポンプ182は、インキュベーション容器180から容器114(これは、本実施形態では、一般に、混合物130から磁気ビーズ132を除去するためのトラップとして機能する)へと、混合物130及び磁気ビーズ132を移すように構成されてもよい。移送ポンプ182は、流体管184(例えば、柔軟性のあるチューブ)を介してインキュベーション容器180に流体接続されてもよく、及び流体管186(例えば、柔軟性のあるチューブ)を介して、容器114に流体接続されてもよい。一部の実施形態では、移送ポンプ182は、フレーム150上に取り付けられてもよい。
【0046】
移送ポンプ182は、流体管184を介して、流体を除去するように、及び/又はインキュベーション容器180に流体を加えるように構成されてもよい。移送ポンプ182は、電気モータ、及び/又は加圧された油圧流体及び/又は気体源を含む(但し、これらに限定されない)、任意の適切な手段によって動力が供給されてもよい。移送ポンプ182は、精製プロセスの仕様に応じて、可変速度又は単一の速度で、動作してもよい。一部の実施形態では、移送ポンプ182の動作は、例えば、制御ユニット29のメモリに保存されたプログラム可能命令に従って、制御ユニット29によって電子的に制御されてもよい。代替的又は追加的に、移送ポンプ182は、例えば、手作業でオン/オフスイッチを作動させ、及び/又は速度つまみを回すオペレータ(例えば、研究室の技術者)によって動作させることができる。さらに、一部の実施形態では、移送ポンプ182は、蠕動ポンプなどの容積型ポンプであってもよく、磁気ビーズ132に損傷を与えることなく、混合物130中に懸濁される磁気ビーズ132をポンピングすることが可能である。さらに他の実施形態においては、移送ポンプ182は、流体を移動させるために、回転する羽根車を用いて真空を生じさせる、半径流ポンプなどの遠心ポンプであってもよい。さらに、一部の実施形態では、移送ポンプ182は、可逆性であってもよい。
【0047】
図5に示す実施形態では、
図1~4Hに関連して上記で説明した実施形態と同様に、磁界生成素子120a~120dを作用位置と非作用位置との間で前後に移動させるためのアクチュエータ122a~122dが含まれる。しかし、他の実施形態では、アクチュエータ122a~122dは、省かれてもよく、及び磁界生成素子120a~120dは、容器114の側壁152の外面157に隣接した(例えば、すぐに隣接するが間隔を空けて、又はすぐに隣接し、且つ直接接触する)それぞれの作用位置に恒久的に、あるいは固定して位置付けられてもよい。
【0048】
これより、
図6A及び6Bを参照して、精製システム110の動作方法を説明する。説明目的で、精製システム110の要素の幾つかは、
図6A及び6Bには示されない。図面からのそれらの省略は、それらが、精製システム110から必然的に欠けていることを意味すると理解されるべきではない。
【0049】
最初に、試料混合物130をインキュベーション容器180に加え、それに続いて、磁気ビーズ132を加えることができる。ある期間(例えば、数分、1時間、数時間、1日、数日など)の間、試料混合物130と相互作用させるために、磁気ビーズ132を置いておくことができる。このインキュベーション期間の間、磁気ビーズ132は、標的物質Tに結合することができ、それによって、標的物質Tが、試料混合物130の残りの部分から分離される。
【0050】
次に、
図6Aに示すように、第1の体積の試料混合物130と、第1の体積の試料混合物130中に懸濁される第1の数量の磁気ビーズ132とをインキュベーション容器180から容器114へとポンピングすることを開始するために、移送ポンプ182を起動させることができる。同時に、又は移送ポンプ182の開始の直後に、容器114から試料混合物130を除去し、及びそれを例えば廃棄物容器又はドレーン126へと排出することを開始するために、ポンプ116を起動させることができる。ポンプ116及び182の一方の開始前に、磁界生成素子120a~120dは、容器114の側壁152の外面157に隣接した(例えば、すぐに隣接するが間隔を空けて、又はすぐに隣接し、且つ直接接触する)それぞれの作用位置に位置付けられてもよい。一部の実施形態では、磁界生成素子120a~120dのこの位置付けは、上述と同様のやり方で、アクチュエータ122a~122dを介して達成することができる。他の実施形態では、磁界生成素子120a~120dは、それぞれの作用位置に恒久的に、あるいは固定して位置付けられてもよい。いずれにせよ、磁界生成素子120a~120dは、容器114に加えられた磁気ビーズ132を磁気的に引き付けることができ、それによって、磁気ビーズ132が、容器114の側壁152の内面134に押し付けられる。磁気ビーズ132と、容器114の側壁152の内面134との間の摩擦又は接触は、磁界生成素子120a~120dがそれぞれの作用位置を占める際に、容器114に対して磁気ビーズ132を効果的に固定化又は固定することができる。従って、磁気ビーズ132は、容器114の壁にしっかりと固定され、従って、ポンプ116による容器114からの試料混合物130の除去中に、容器114から除去されることが抑制又は防止される。
図6A及び6Bは、磁界生成素子120a及び120bのみを描くが、プロセスのこの段階で、磁界生成素子120a~120dの全てをそれぞれの作用位置に位置付けることができることに留意されたい。
【0051】
その後、移送ポンプ182は、第2の体積の試料混合物130と、第2の体積の試料混合物130中に懸濁される第2の数量の磁気ビーズ132とをインキュベーション容器180から容器114へとポンピングすることができる。第2の体積の試料混合物130及び第2の数量の磁気ビーズ132のポンピングは、インキュベーション容器180から容器114への試料混合物130及び磁気ビーズ132の途切れることのない連続流が得られるように、第1の体積の試料混合物130及び第1の数量の磁気ビーズ132のポンピングの直後に開始することができる。さらに、第2の体積の試料混合物及び第2の数量の磁気ビーズ132が、移送ポンプ182によって容器114内にポンピングされると同時に、容器114から試料混合物130を除去するようにポンプ116を動作させてもよい。従って、容器114を通る、試料混合物130の途切れることのない連続流を得ることができる。このプロセス全体を通して、
図6Bに示すように、磁気ビーズ132は、容器114の側壁152の内面134に対して固定化され続ける。
【0052】
一部の実施形態では、移送ポンプ182を通した試料混合物130の体積流量が、移送ポンプ116を通した試料混合物130の体積流量と等しい、又は実質的に等しいように、移送ポンプ182及びポンプ116が構成(例えば、制御ユニット129によって制御)されてもよい。従って、開始時(容器114が、最初に移送ポンプ182によって満たされる時)及び最後(容器114が、ポンプ114によって全ての試料混合物130を抜いた時)を除いて、磁気ビーズ除去プロセス全体を通して、容器114内の流体のレベルを比較的一定に保つことができる。
【0053】
インキュベーション容器180からトラップ容器114への材料の移送が完了すると、標的物質Tと結合した磁気ビーズ132のみが容器114内に残るように、ポンプ114は、容器114中の全ての残りの混合物130を抜くことができる。続いて、
図4F、4G、及び4Hに関連して上述したステップと同様に、洗浄及び溶離ステップを容器114内で行うことができる。
【0054】
この精製方法の連続流の態様は、目的に適ったやり方で、20000Lを超える体積の試料混合物を含む、非常に多い試料混合物を精製することに適する。さらに、磁気ビーズ132の全てが、単一の容器内で同時に洗浄及び/又は溶離されるので、大量の試料混合物を多数の処理容器に分割することと比較して、洗浄流体及び/又は溶離液の量が減少する。
【0055】
様々な実施形態に関連して本開示のシステム及び方法を説明したが、本開示のシステム及び方法は、さらなる変更形態が可能であることが理解されるだろう。本出願は、概して本開示の原理に従うシステム及び方法のあらゆる変形形態、使用、又は適応例を対象に含むことが意図され、本開示からの上記逸脱を本発明の属する技術分野内で公知の及び慣習的実施の範囲内として含む。