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  • 特許-警報ベル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】警報ベル
(51)【国際特許分類】
   G10K 1/064 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G10K1/064 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020032057
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021135406
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池端 利之
(72)【発明者】
【氏名】川島 高広
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02049254(GB,A)
【文献】実開昭60-068493(JP,U)
【文献】実開平04-133292(JP,U)
【文献】特開2019-068607(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076106(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 1/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃されると鐘音を発生するゴングと、前記ゴングを打撃する打棒と、前記打棒を駆動するモータと、前記モータを収納するハウジングと、を備えた警報ベルであって、
前記モータの受電端子に、回路基板が電気的に接続されつつ、固定されて設けられ、
前記ハウジングは、その周壁に、前記回路基板に電気的に接続されるリード線を外部に引き出すための切欠き又は貫通孔が設けられると共に、前記切欠き又は貫通孔を通じて外部に引き出される前記リード線を裏面側から起立する方向に折曲させる折曲ガイド部が設けられることを特徴とする警報ベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータによって駆動される打棒がゴングを打撃して鐘音を発生する警報ベルに関する。
【背景技術】
【0002】
警報ベルは、打撃されると鐘音を発生するゴングと、前記ゴングを打撃する打棒と、前記打棒を駆動するモータと、前記モータを収納するハウジング等を備え、火災等の非常事態の発生時に鳴動して鐘音を発生し、警報を発するものとして用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-235394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の警報ベルの主な用例としては、自動火災報知設備の地区音響装置や非常警報設備の音響装置の非常ベル等である。
【0005】
ところで、従来、警報ベルには、回路基板が設けられていなかった。回路基板を備えていれば、各種制御を回路基板に取り付けられる各種素子によって行うことができる。警報ベルに回路基板を設ける場合、モータを収納するハウジング内に回路基板用の取付部を設け、その取付部に回路基板を取り付けて設けることが考えられる。しかしながら、その場合、回路基板とモータとの間の電気的な接続作業と回路基板の取付部への取付作業が必要であり、組立作業が面倒なものとなってしまう。
【0006】
この発明は、前記の事情に鑑み、回路基板を備えつつも、組み立てが容易な警報ベルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、打撃されると鐘音を発生するゴングと、前記ゴングを打撃する打棒と、前記打棒を駆動するモータと、前記モータを収納するハウジングと、を備えた警報ベルであって、前記モータの受電端子に、回路基板が電気的に接続されつつ、固定されて設けられ、前記ハウジングは、その周壁に、前記回路基板に電気的に接続されるリード線を外部に引き出すための切欠き又は貫通孔が設けられると共に、前記切欠き又は貫通孔を通じて外部に引き出される前記リード線を裏面側から起立する方向に折曲させる折曲ガイド部が設けられることを特徴とする警報ベルである。
【0008】
この発明において、前記回路基板は、前記モータからのノイズを低減する素子が設けられるものとすることができる。また、前記モータは、ノイズを低減するバリスタが設けられるものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明においては、回路基板とモータとの間の電気的な接続作業と回路基板の取付作業を1つの作業として行うことができる。
【0010】
したがって、この発明によれば、回路基板を備えつつも、組み立てが容易な警報ベルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の警報ベルの実施形態の一例を示したものであり、警報ベルの内面側(裏面側)を示した裏面図(ハウジングの裏蓋を開けた状態のもの)である。
図2】同上の警報ベルの内面側の斜視図である。
図3】同上の警報ベルの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の警報ベルの実施形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。なお、この発明の警報ベルは、例えば、自動火災報知設備の地区音響装置や非常警報設備の音響装置の非常ベル等として用いることができるものである。
【0013】
<基本構成>
警報ベル1は、打撃されると鐘音を発生するゴング2と、ゴング2を打撃する打棒3と、打棒3を駆動するモータ4と、モータ4の駆動軸4aに固定されて駆動軸4aと共に回転するカム5と、打棒3とカム5に接続されてモータ4の動力を打棒3に伝達する動力伝達部6と、モータ4等を収納するハウジング7を備えている(図1乃至3参照)。
【0014】
<ゴング>
ゴング2は、底部2bと周側部2cを有し、深さの浅い平面視円形の椀状の形状をなしている。内面側には、周囲が周側部2cによって囲まれる空間部2aが形成されており、その空間部2a内に、打棒3が周側部2cの内面を内側から打撃する配置でハウジング7が設けられている。具体的には、ゴング2の底部2bの内面上にハウジング固定用の固定部2baが設けられており、その固定部2baにハウジング7が固定(ネジ止め)されて前記の配置で設けられる(図3参照)。
【0015】
<打棒>
打棒3は、先端側にゴング2を打撃する打撃部3aを有すると共に、後端側に動力伝達部6が接続される接続部3bを有し、前方(ゴング2側)に移動した際に、ハウジング7の外部に露出する先端側の打撃部3aがゴング2の周側部2cの内面を打撃する配置で設けられる。
【0016】
<モータ>
モータ4は、駆動軸4aが打棒3の前後方向(移動方向)に対して略直角になる向きの配置で設けられる。なお、駆動軸4aの回りには、駆動軸4aと共に回転するカム5が設けられている。
【0017】
モータ4としては、受電端子4cが本体4bから外部に露出して設けられるものが用いられる。図示の例の場合、本体4bにおける駆動軸4aが露出する側とは反対側の端面4dから受電端子4cが外部に露出するものが用いられている。
【0018】
<回路基板>
警報ベル1は、モータ4の駆動軸4aを軸として直交するように回路基板9をさらに備えている。そして、回路基板9は、受電端子取付部9aを介してモータ4の受電端子4cに電気的に接続されつつ、固定されて取り付けられており、モータ4と共にハウジング7に収納されて設けられている。なお、回路基板9の受電端子4cへの取り付け方法は、具体的には、例えば半田付けとすることができる。
【0019】
ここで、警報ベル1においては、回路基板9を備えていることにより、回路基板9に取り付けられる各種素子による各種制御が可能である。そして、回路基板9の取付方法を、受電端子取付部9aを介してモータ4の受電端子4cに電気的に接続されつつ、固定されるものとしていることにより、組み立てに際し、モータ4を収納するハウジング7内に回路基板9用の取付部を設けて回路基板9を取付ける必要がなく、回路基板9とモータ4との間の電気的な接続作業と回路基板9の取付作業を1つの作業として行うことができる。つまり、組み立てを容易に行うことができる。
【0020】
・受電端子用取付部、切り欠き部
回路基板9は、より詳細には、モータ4の受電端子4cに対応する位置に貫通孔として設けられる受電端子取付部9aを有しており、この受電端子用取付部9aにモータ4の受電端子4cを挿通させて、例えば半田付けにより固定することによって取り付けることができるようになっている。また、回路基板9は、モータ4の受電端子4c側の端面4dの中央位置(駆動軸4aに対応する位置)にある凸部4e(このような凸部があるモータは多い)に対応する位置に切り欠き部9bを有している。それにより、切り欠き部9bによってモータ4の凸部4eを避けつつ、受電端子取付部9aにモータ4の受電端子4cを挿通させて取り付けることができるようになっており、モータ4の受電端子4c側の端面4dに沿って近接して取り付けることができるようになっている。
【0021】
・リード線取付部
さらに、回路基板9は、モータ4の本体4b側方に延出する部分に、モータ4への電力供給用のリード線10が接続されて取り付けられるリード線取付部9cが設けられている。リード線取付部9cは、貫通孔として設けられており、リード線10の接続部分が挿通されて、例えば半田付けにより固定される。なお、リード線10は、モータ4の本体4b側方を長さ方向に延びる向きでリード線取付部9cに接続されて取り付けられている。これにより、後記で説明するリード線引出部7jに向けてのリード線10の取り回しを容易なものとすることができるようになっている。
【0022】
<各種制御>
警報ベル1は、前記の通り、回路基板9を備えていることにより、回路基板9に取り付けられる各種素子による各種制御が可能である。例えば、次のような制御を行うものとすることができる。
【0023】
・モータからのノイズの低減
回路基板9にノイズ低減用の素子を取り付けることにより、モータ4が発生する電気ノイズを低減することができる。回路基板9に取り付けるノイズ低減用の素子としては、例えば、インダクタ、コンデンサ、バリスタ等とすることができる。
【0024】
・逆極性の電圧印加の防止
回路基板9にダイオードを取り付けることにより、逆極性の電圧印加を防ぐことができる。
【0025】
・その他
ON―OFF制御回路を持たせることにより、並列接続した機器との間欠鳴動のタイミングを同期させたり、さらに無線または有線による伝送回路との組み合わせによれば、遠隔による鳴動を制御する機能を持たせたりすることができる。また、移報接点を設けることで、動作確認の接点信号を出す機能を有することができるし、点灯回路を設けることで、通電確認、フラッシュライト、非常灯となる機能を有することもできる。
【0026】
<動力伝達部>
動力伝達部6は、先端側が接続部6aで打棒3に接続されると共に基端側が接続部6bでカム5に接続される、線状の部材からなり、モータ4の回転運動の動力をカム5を介して往復運動の動力に変換して打棒3に伝達し、打棒3を前後方向に移動させる配置で設けられる。
【0027】
<ハウジング>
・全体の形状
ハウジング7は、周方向に平面視Y字状に連続する周壁7aを有しており、全体として平面視Y字状の形状をなしている。
【0028】
・分岐空間部
ハウジング7の内部7cには、そのケース形状に対応し、中央空間部7caから分岐する、3つの分岐空間部7cb~7cdが形成されている。それら分岐空間部7cb~7cdのうち、分岐空間部7cbの部分の周壁7aを貫通して打棒3が、後端側の動力伝達部6との接続部3bが分岐空間部7cbの内部に位置し、先端側の打撃部3aが分岐空間部7cbの外部に位置する配置で設けられている。
【0029】
そして、打棒3が設けられる分岐空間部7cbは、隣接する分岐空間部7ccと中央空間部7caを介して連続しており、それら空間部7ca、7ccと共に平面視V字状に連続する空間部を形成している。そのV字状に連続する空間部内に、モータ4と動力伝達部6が収納されている。具体的には、モータ4は、本体4b側が分岐空間部7cc内に位置すると共に、駆動軸4a側が中央空間部7ca内に位置する配置で収納されており、動力伝達部6は、カム5との接続部6b側が中央空間部7ca内に位置すると共に、駆動軸4aに対して略直角の方向に延びつつ、打棒3との接続部6a側が分岐空間部7cb内に位置する配置で収納されている。なお、分岐空間部7cbの周壁7aの打棒3が貫通する部分には、打棒3を長さ方向前後に移動可能に支持するカラー7d等の摺動性のよい支持部材が設けられている。
【0030】
・絶縁シート
ハウジング7は、裏面側の開口7fを閉じる裏蓋7gをさらに有するが、開口7fと裏蓋7gの間に絶縁シート7hが設けられている(図3参照)。絶縁シート7hは、開口7fをシールしてハウジング7の内部7cに水滴や腐食性ガス等が流入するのを防ぐ機能を有する。それにより、ハウジング7に収納されるモータ4や回路基板9等を保護することができるようになっている。
【0031】
・リード線のインシュロック
さらに、裏面側の開口7fの口縁部7iには、リード線10をハウジング7の外部に引き出すための引き出し部7jが設けられている。引き出し部7jは、具体的には、モータ4の本体4bと回路基板9が内部に位置する分岐空間部7ccを形成する周壁7a(モータ4の本体4b側方に位置する部分)を切り欠いて形成される切り欠きとして設けられている。周壁7aの引き出し部7jが設けられる部分の外方には、引き出されるリード線10をハウジング7の裏面側から起立する方向に折曲させるようにガイドする断面L字状の折曲ガイド部7kが設けられている。2本のリード線10は、引き出し部7jによって束ねられた上で、折曲ガイド部7kによってハウジング7の裏面側に起立する方向に折曲されて引き出されることになる。すなわち、引き出し部7jと折曲ガイド部7kは、リード線10を束ねつつ、ハウジング7の裏面側から起立する方向で外部に引き出すことができるようにガイドする、インシュロックとして機能する。
【0032】
なお、引き出し部7jは、周壁7aを貫通する貫通孔としてもよいが、前記の通り、裏蓋7gによって閉じられ、絶縁シート7hによってシールされる開口7fの口縁部7iに形成した切り欠きとしていれば、引き出し部7jを通過する部分でリード線10を裏蓋7gと絶縁シート7hによって押さえるようにすることができ、リード線10が長さ方向に動くのを防ぐようにすることができる点でより好適である。
【0033】
<構成の変更例>
この発明の警報ベル1においては、例えば、以下のように構成を変更することができる。
【0034】
・モータ内部でのノイズ対策
モータ4のノイズ対策としては、回路基板9にノイズ低減用の素子を設けるのに加えて或いは代えて、モータ4の内部にノイズ低減用の素子を設けるようにしてもよい。モータ4の内部に設けるノイズ低減用の素子としては、例えば、リングバリスタ等とすることができる。
【0035】
・回路基板のサイズ変更、結線部のコネクタ化
各種機能を追加する場合、回路基板9のサイズを大きくするようにしてもよい。また、回路基板9上にコネクタのレセプタクルを設けて、外部配線との接続をコネクタ化するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1:警報ベル
2:ゴング 2a:空間部 2b:底部 2ba:固定部 2c:周側部
3:打棒 3a:打撃部 3b:接続部
4:モータ 4a:駆動軸 4b:本体 4c:受電端子 4d:端面 4e:凸部
5:カム
6:動力伝達部 6a:接続部(打棒側) 6b: 接続部(カム側)
7:ハウジング 7a:周壁 7c:内部 7ca:中央空間部
7cb~7cd:分岐空間部 7d:カラー 7f:開口 7g:裏蓋
7h:絶縁シート 7i:口縁部 7j:引き出し部 7k:折曲ガイド部
9:回路基板 9a:受電端子取付部 9b:切り欠き部 9c:リード線取付部
10:リード線
図1
図2
図3