(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】人力駆動車用変速システム
(51)【国際特許分類】
B62M 11/06 20060101AFI20240723BHJP
B62M 9/00 20060101ALI20240723BHJP
B62M 3/00 20060101ALI20240723BHJP
B62M 9/10 20060101ALI20240723BHJP
B62M 6/90 20100101ALI20240723BHJP
B62M 6/55 20100101ALI20240723BHJP
【FI】
B62M11/06 C
B62M9/00 A
B62M3/00 Z
B62M9/10 C
B62M6/90
B62M6/55
(21)【出願番号】P 2020033928
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】江村 篤裕
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(72)【発明者】
【氏名】水谷 祐太
(72)【発明者】
【氏名】小坂 憲太朗
(72)【発明者】
【氏名】白井 豊土
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029205(JP,A)
【文献】特開2015-063222(JP,A)
【文献】特開2018-100061(JP,A)
【文献】特開2008-222211(JP,A)
【文献】特開平11-240481(JP,A)
【文献】特開2004-090915(JP,A)
【文献】特開2019-001304(JP,A)
【文献】特開2019-043440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 11/06
B62M 9/00
B62M 3/00
B62M 9/10
B62M 6/90
B62M 6/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用変速システムであって、
クランクアームと、
人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、
フロントクラッチ機構と、
出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、を備え、
前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成され、
前記クランクアームは、前記モータが配置されるモータ配置部を有する、変速システム。
【請求項2】
人力駆動車用変速システムであって、
クランクアームと、
人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、
フロントクラッチ機構と、
出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、を備え、
前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成され、
前記モータは、前記フロントクラッチ機構に接続される、変速システム。
【請求項3】
前記フロントクラッチ機構は、前記クランクアームと一体に回転する第1部分と、前記少なくとも1つのフロントスプロケットの内周部に結合される第2部分と、前記第1部分および前記第2部分との間における動力の伝達を切り替える切替部材と、を備え、
前記モータは、前記第1部分に接続される、請求項2に記載の変速システム。
【請求項4】
前記クランクアームは、前記モータが配置されるモータ配置部を有する、請求項2または3に記載の変速システム。
【請求項5】
前記モータが配置されるハウジングをさらに備える、請求項1または4に記載の変速システム。
【請求項6】
前記ハウジングは前記モータ配置部に配置される、請求項5に記載の変速システム。
【請求項7】
減速機構、ケイデンスセンサ、無線ユニット、および、インジケータ、の少なくとも1つが前記ハウジング内に配置される、請求項5または6に記載の変速システム。
【請求項8】
人力駆動車用変速システムであって、
内部空間を有するクランク軸と、
前記クランク軸と一体回転可能なクランクアームと、
人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、
フロントクラッチ機構と、
出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、
を備え、
前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成され、
前記バッテリは、前記クランク軸の前記内部空間に配置される、変速システム。
【請求項9】
無線通信部、ケイデンスセンサ、インジケータ、および、パワーメータの少なくとも1つをさらに含み、
前記バッテリは、前記無線通信部、前記ケイデンスセンサ、前記インジケータ、および、前記パワーメータの前記少なくとも1つに電力を供給する、請求項8に記載の変速システム。
【請求項10】
前記バッテリは、前記無線通信部、前記ケイデンスセンサ、前記インジケータ、および、前記パワーメータの全てに電力を供給する、請求項9に記載の変速システム。
【請求項11】
前記バッテリに電力を供給するための充電口をさらに備える、請求項8から10のいずれか一項に記載の変速システム。
【請求項12】
前記バッテリは複数のバッテリ素子を含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の変速システム。
【請求項13】
人力駆動車用変速システムであって、
人力駆動車に取り付け可能なクランクアームと、
人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、
前記クランクアームに対して前記少なくとも1つのフロントスプロケットを、一体的または相対的に回転可能にするフロントクラッチ機構と、
出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、
ベース部と、
可動部と、
前記可動部に旋回可能に取り付けられるチェーンガイド機構と、を備え、
前記チェーンガイド機構は、前記モータの前記出力軸に連結される少なくとも1つのプーリを含み、
前記モータは、前記少なくとも1つのプーリを介して、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与する、変速システム。
【請求項14】
前記モータは、前記少なくとも1つのプーリおよび前記人力駆動車用チェーンを介して、前記フロントスプロケットに回転力を付与する、請求項13に記載の変速システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプーリは、テンションプーリおよびガイドプーリを含む、請求項13または14に記載の変速システム。
【請求項16】
前記モータの前記出力軸は、前記ガイドプーリに連結され、前記テンションプーリには連結されない、請求項15に記載の変速システム。
【請求項17】
無線通信部、ケイデンスセンサ、インジケータ、および、パワーメータの少なくとも1つをさらに含む、請求項13から16のいずれか一項に記載の変速システム。
【請求項18】
人力駆動車用変速システムであって、
出力軸を含み、少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、
前記少なくとも1つのフロントスプロケットの回転中心軸心に関する径方向において、前記少なくとも1つのフロントスプロケットのスプロケット歯とオーバーラップするカバー部を含むブラケット部材と、
前記モータの前記出力軸に連結される回転力伝達部材と、を備え、
前記ブラケット部材は、前記モータを収容するモータ収容部を有する、変速システム。
【請求項19】
前記ブラケット部材は、人力駆動車用フレームのブラケットハンガー部に固定可能な固定部を含む、請求項18に記載の変速システム。
【請求項20】
前記回転力伝達部材は、人力駆動車用チェーンを介さずに前記フロントスプロケットに回転力を伝達する、請求項18または19に記載の変速システム。
【請求項21】
前記回転力伝達部材は、人力駆動車用チェーンを介して前記フロントスプロケットに回転力を伝達する、請求項18または19に記載の変速システム。
【請求項22】
無線通信部、ケイデンスセンサ、インジケータ、および、パワーメータの少なくとも1つをさらに含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の変速システム。
【請求項23】
人力駆動車用変速システムであって、
人力駆動車のシートチューブ、シートステイ、チェーンステイの少なくとも1つに取り付けられるブラケット部材と、
出力軸を含み、少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、
前記モータの前記出力軸に連結される回転力伝達部材と、を備え、
前記ブラケット部材は、前記モータを収容するモータ収容部を有する、変速システム。
【請求項24】
前記ブラケット部材は
、前記シートチューブに取り付けられ、
前記ブラケット部材は、第1クランプ部材と、前記第1クランプ部材に対して揺動可能に取り付けられる第2クランプ部材と、前記第1クランプ部材と前記第2クランプ部材との間に前記人力駆動車の前記シートチューブを挟んだ状態で前記第1クランプ部材と前記第2クランプ部材とを固定する締結部材と、を含む、請求項23に記載の変速システム。
【請求項25】
前記ブラケット部材は
、前記シートチューブに取り付けられ、
前記ブラケット部材は、第1取付部を有するブラケット本体と、締結部材と、を含み、
前記締結部材は、前記ブラケット本体の前記第1取付部を挿通し、前記シートチューブに形成される第2取付部に固定される、請求項
23に記載の変速システム。
【請求項26】
人力駆動車用変速システムであって、
クランク軸と、
前記クランク軸と一体回転可能なクランクアームと、
人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、
フロントクラッチ機構と、
出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、
バッテリからの電力を無線で受電し、前記モータに電力を供給する無線受電ユニットと、を備え、
前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成される、変速システム。
【請求項27】
人力駆動車用変速システムであって、
クランク軸と、
前記クランク軸と一体回転可能なクランクアームと、
人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、
フロントクラッチ機構と、
出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、
第1通電部と、前記第1通電部に対して相対回転する第2通電部と、を含む通電ユニットと、を備え、
前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成され、
前記第1通電部は、人力駆動車用バッテリからの電力を前記第2通電部に通電し、
前記第2通電部は、前記第1通電部から通電される電力を前記モータに通電する、変速システム。
【請求項28】
人力駆動車用変速システムであって、
第1フレーム部材と第2フレーム部材とを含む人力駆動車用フレームと、
クランクアームと、
人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、
フロントクラッチ機構と、
出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、を備え、
前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成され、
前記第1フレーム部材は、前記第2フレーム部材に揺動軸心周りに揺動可能に取り付けられ、
前記モータの前記出力軸に連結される回転力伝達部材が、前記揺動軸心上に配置される、変速システム。
【請求項29】
前記モータの前記出力軸は、出力軸方向に延び、
前記出力軸方向は、前記フロントスプロケットの回転中心軸心に関する軸方向と平行である、請求項1から28のいずれか一項に記載の変速システム。
【請求項30】
前記モータの前記出力軸は、出力軸方向に延び、
前記出力軸方向は、前記フロントスプロケットの回転中心軸心に関する軸方向に対して非平行に延びる、請求項1から28のいずれか一項に記載の変速システム。
【請求項31】
前記モータの前記出力軸は、出力軸方向に延び、
前記出力軸方向における前記モータの最大長さは、前記フロントスプロケットの直径よりも小さい、請求項1から28のいずれか一項に記載の変速システム。
【請求項32】
前記モータは、前記人力駆動車に推進力を付与しないように構成される、請求項1から31のいずれか一項に記載の変速システム。
【請求項33】
前記モータは、前記人力駆動車に推進力を付与しない回転速度で、前記少なくとも1つのフロントスプロケットを回転させる、請求項32に記載の変速システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用変速システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用変速システムは、ペダリングによってチェーンが駆動されなければ、変速できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、ペダリングをしなくても効果的にチェーンを駆動させる機構を備える人力駆動車用変速システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面の変速システムは、人力駆動車用変速システムであって、クランクアームと、人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、フロントクラッチ機構と、出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、を備え、前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成され、前記クランクアームは、前記モータが配置されるモータ配置部を有する。
上記第1側面の変速システムによれば、ペダリングしていない状態においても、フロントスプロケットを回転させることによってチェーンを駆動させることができる。このため、ペダリングしていない状態においても、変速動作を行うことができる。また、フロントスプロケットに回転力を付与するモータが、フロントスプロケットの近くに位置するクランクアームに配置されるため、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構の小型化が可能となる。さらに、フロントスプロケットおよびクランクアームを自転車用フレームに取り付けることによって、ペダリングをしなくてもチェーンを駆動させる機構を人力駆動車用フレームに取り付けることができ、組立性に優れる。
【0006】
本発明の第2側面の変速システムは、人力駆動車用変速システムであって、クランクアームと、人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、フロントクラッチ機構と、出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、を備え、前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成され、前記モータは、前記フロントクラッチ機構に接続される。
上記第2側面の変速システムによれば、ペダリングしていない状態においても、フロントスプロケットを回転させることによってチェーンを駆動させることができる。このため、ペダリングしていない状態においても、変速動作を行うことができる。また、フロントクラッチ機構を介してモータの回転力をフロントスプロケットに付与できるため、モータの出力を好適にフロントスプロケットに伝達できる。
【0007】
前記第2側面に従う第3側面の変速システムにおいて、前記フロントクラッチ機構は、前記クランクアームと一体に回転する第1部分と、前記少なくとも1つのフロントスプロケットの内周部に結合される第2部分と、前記第1部分および前記第2部分との間における動力の伝達を切り替える切替部材と、を備え、前記モータは、前記第1部分に接続される。
上記第3側面の変速システムによれば、切替部材によって第1部分および第2部分との間における動力の伝達を好適に切り替えできる。
【0008】
前記第2または第3側面に従う第4側面の変速システムにおいて、前記クランクアームは、前記モータが配置されるモータ配置部を有する。
上記第4側面の変速システムによれば、フロントスプロケットに回転力を付与するモータを、フロントスプロケットの近くに位置するクランクアームに配置できる。
【0009】
前記第1または第4側面に従う第5側面の変速システムにおいて、前記モータが配置されるハウジングをさらに備える。
上記第5側面の変速システムによれば、ハウジングによってモータを好適に支持できる。
【0010】
前記第5側面に従う第6側面の変速システムにおいて、ハウジングは前記モータ配置部に配置される。
上記第6側面の変速システムによれば、モータ配置部においてハウジングによってモータを好適に支持できる。
【0011】
前記第5または第6側面に従う第7側面の変速システムにおいて、減速機構、ケイデンスセンサ、無線ユニット、および、インジケータ、の少なくとも1つが前記ハウジング内に配置される。
上記第7側面の変速システムによれば、減速機構、ケイデンスセンサ、無線ユニット、および、インジケータの少なくとも1つをハウジング内に配置できる。
【0012】
本発明の第8側面の変速システムは、人力駆動車用変速システムであって、内部空間を有するクランク軸と、前記クランク軸と一体回転可能なクランクアームと、人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、フロントクラッチ機構と、出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、を備え、前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成され、前記バッテリは、前記クランク軸の前記内部空間に配置される。
上記第8側面の変速システムによれば、ペダリングしていない状態においても、フロントスプロケットを回転させることによってチェーンを駆動させることができる。このため、ペダリングしていない状態においても、変速動作を行うことができる。また、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構の小型化が可能となる。さらに、フロントスプロケットおよびクランクアームを人力駆動車用フレームに取り付けることによって、ペダリングをしなくてもチェーンを駆動させる機構を人力駆動車用フレームに取り付けることができ、組立性に優れる。
【0013】
前記第8側面に従う第9側面の変速システムにおいて、無線通信部、ケイデンスセンサ、インジケータ、および、パワーメータの少なくとも1つをさらに含み、前記バッテリは、前記無線通信部、前記ケイデンスセンサ、前記インジケータ、および、前記パワーメータの前記少なくとも1つに電力を供給する。
上記第9側面の変速システムによれば、無線通信部、ケイデンスセンサ、インジケータ、および、パワーメータの少なくとも1つにバッテリの電力を供給できる。
【0014】
前記第9側面に従う第10側面の変速システムにおいて、前記バッテリは、前記無線通信部、前記ケイデンスセンサ、前記インジケータ、および、前記パワーメータの全てに電力を供給する。
上記第10側面の変速システムによれば、無線通信部、ケイデンスセンサ、インジケータ、および、パワーメータの全てにバッテリの電力を供給できる。
【0015】
前記第8から第10側面のいずれか1つに従う第11側面の変速システムにおいて、前記バッテリに電力を供給するための充電口をさらに備える。
上記第11側面の変速システムによれば、バッテリを変速システムから取り外すことなく、充電口によってバッテリを充電することができる。
【0016】
前記第8から第11側面のいずれか1つに従う第12側面の変速システムにおいて、前記バッテリは複数のバッテリ素子を含む。
上記第12側面の変速システムによれば、バッテリが複数のバッテリ素子を含むため、バッテリの電力の使用時間を長くできる。
【0017】
本発明の第13側面の変速システムは、人力駆動車用変速システムであって、人力駆動車に取り付け可能なクランクアームと、人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、前記クランクアームに対して前記少なくとも1つのフロントスプロケットを、一体的または相対的に回転可能にするフロントクラッチ機構と、出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、ベース部と、可動部と、前記可動部に旋回可能に取り付けられるチェーンガイド機構と、を備え、前記チェーンガイド機構は、前記モータの前記出力軸に連結される少なくとも1つのプーリを含み、前記モータは、前記少なくとも1つのプーリを介して、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与する。
上記第13側面の変速システムによれば、リアディレーラ等のチェーンガイド機構によって、ペダリングしていない状態においても、チェーンを回転させることができる。このため、ペダリングしていない状態においても、フロントスプロケットを回転させることができるため、ペダリングしていない状態においても、変速動作を行うことができる。
【0018】
前記第13側面に従う第14側面の変速システムにおいて、前記モータは、前記少なくとも1つのプーリ、および、前記人力駆動車用チェーンを介して、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与する。
上記第14側面の変速システムによれば、プーリおよびチェーンを介してフロントスプロケットに回転力を伝達できる。
【0019】
前記第13または第14側面に従う第15側面の変速システムにおいて、前記少なくとも1つのプーリは、テンションプーリおよびガイドプーリを含む。
上記第15側面の変速システムによれば、テンションプーリまたはガイドプーリを介してモータの回転力をフロントスプロケットに付与できる。
【0020】
前記第15側面に従う第16側面の変速システムにおいて、前記モータの前記出力軸は、前記ガイドプーリに連結され、前記テンションプーリには連結されない。
上記第16側面の変速システムによれば、ガイドプーリを介してのフロントスプロケットにモータの回転力を付与できる。
【0021】
前記第13から第16側面のいずれか1つに従う第17側面の変速システムにおいて、無線通信部、ケイデンスセンサ、インジケータ、および、パワーメータの少なくとも1つをさらに含む。
上記第17側面の変速システムによれば、無線通信部、ケイデンスセンサ、インジケータ、および、パワーメータの少なくとも1つを用いることができる。
【0022】
本発明の第18側面の変速システムは、人力駆動車用変速システムであって、出力軸を含み、少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、前記少なくとも1つのフロントスプロケットの回転中心軸心に関する径方向において、前記少なくとも1つのフロントスプロケットのスプロケット歯とオーバーラップするカバー部を含むブラケット部材と、前記モータの前記出力軸に連結される回転力伝達部材と、を備え、前記ブラケット部材は、前記モータを収容するモータ収容部を有する。
上記第18側面の変速システムによれば、フロントスプロケットに近い位置に配置されるブラケット部材にモータを収容できるため、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構の小型化が可能となる。さらには、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構の人力駆動車への後付けが容易になる。
【0023】
前記第18側面に従う第19側面の変速システムにおいて、前記ブラケット部材は、人力駆動車用フレームのブラケットハンガー部に固定可能な固定部を含む。
上記第19側面の変速システムによれば、ブラケット部材を固定部によってブラケットハンガー部に好適に固定できる。
【0024】
前記第18または第19側面に従う第20側面の変速システムにおいて、前記回転力伝達部材は、人力駆動車用チェーンを介さずに前記フロントスプロケットに回転力を伝達する。
上記第20側面の変速システムによれば、回転力伝達部材が人力駆動車用チェーンを介さずにフロントスプロケットに回転力を伝達できるため、ペダリングしない状態において、モータによってフロントスプロケットを効率的に回転させることが可能となる。
【0025】
前記第18または第19側面に従う第21側面の変速システムにおいて、前記回転力伝達部材は、人力駆動車用チェーンを介して前記フロントスプロケットに回転力を伝達する。
上記第21側面の変速システムによれば、人力駆動車用チェーンを介してフロントスプロケットを回転させることができるため、モータの配置位置の自由度が増す。
【0026】
前記第18から第21側面のいずれか1つに従う第22側面の変速システムにおいて、無線通信部、ケイデンスセンサ、インジケータ、および、パワーメータの少なくとも1つをさらに含む。
上記第22側面の変速システムによれば、無線通信部、ケイデンスセンサ、インジケータ、および、パワーメータの少なくとも1つを用いることができる。
【0027】
本発明の第23側面の変速システムは、人力駆動車用変速システムであって、人力駆動車のシートチューブ、シートステイ、チェーンステイの少なくとも1つに取り付けられるブラケット部材と、出力軸を含み、少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、前記モータの前記出力軸に連結される回転力伝達部材と、を備え、前記ブラケット部材は、前記モータを収容するモータ収容部を有する。
上記第23側面の変速システムによれば、ブラケット部材のモータ収容部にモータを収容できるため、ペダリングしていない状態においても、フロントスプロケットを回転させることによってチェーンを駆動させて変速動作を行うことができる。また、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構の小型化が可能となる。さらには、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構の人力駆動車への後付けが容易になる。
【0028】
前記第23側面に従う第24側面の変速システムにおいて、前記ブラケット部材はシートチューブに取り付けられ、前記ブラケット部材は、第1クランプ部材と、前記第1クランプ部材に対して揺動可能に取り付けられる第2クランプ部材と、前記第1クランプ部材と前記第2クランプ部材との間に前記人力駆動車の前記シートチューブを挟んだ状態で前記第1クランプ部材と前記第2クランプ部材とを固定する締結部材と、を含む。
上記第24側面の変速システムによれば、第1クランプ部材、第2クランプ部材、および、締結部材とによって、ブラケット部材をシートチューブに取り付けできるため、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構の人力駆動車への後付けが容易になる。
【0029】
前記第24側面に従う第25側面の変速システムにおいて、前記ブラケット部材はシートチューブに取り付けられ、前記ブラケット部材は、第1取付部を有するブラケット本体と、締結部材と、を含み、前記締結部材は、前記ブラケット本体の前記第1取付部を挿通し、前記シートチューブに形成される第2取付部に固定される。
上記第25側面の変速システムによれば、ブラケット本体の第1取付部に締結部材を挿入することによってブラケット部材をシートチューブに取り付けることができるため、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構の人力駆動車への後付けが容易になる。
【0030】
本発明の第26側面の変速システムは、人力駆動車用変速システムであって、クランク軸と、前記クランク軸と一体回転可能なクランクアームと、人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、フロントクラッチ機構と、出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、バッテリからの電力を無線で受電し、前記モータに電力を供給する無線受電ユニットと、を備え、前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成される。
上記第26側面の変速システムによれば、ペダリングしていない状態においても、フロントスプロケットを回転させることによってチェーンを駆動させて変速動作を行うことができる。また、バッテリからの電力を無線で受電する無線受電ユニットによって配線が簡略化できる。
【0031】
本発明の第27側面の変速システムは、人力駆動車用変速システムであって、クランク軸と、前記クランク軸と一体回転可能なクランクアームと、人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、フロントクラッチ機構と、出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、第1通電部と、前記第1通電部に対して相対回転する第2通電部と、を含む通電ユニットと、を備え、前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成され、前記第1通電部は、人力駆動車用バッテリからの電力を前記第2通電部に通電し、前記第2通電部は、前記第1通電部から通電される電力を前記モータに通電する。
上記第27側面の変速システムによれば、バッテリおよびモータの一方を、互いに相対回転する人力駆動車の2つの場所の一方に配置し、バッテリおよびモータの他方を、互いに相対回転する人力駆動車の2つの場所の他方に配置できる。
【0032】
本発明の第28側面の変速システムは、人力駆動車用変速システムであって、第1フレーム部材と第2フレーム部材とを含む人力駆動車用フレームと、クランクアームと、人力駆動車用チェーンと係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのフロントスプロケットと、フロントクラッチ機構と、出力軸を含み、前記少なくとも1つのフロントスプロケットに回転力を付与するモータと、を備え、前記フロントクラッチ機構により、前記少なくとも1つのフロントスプロケットは、前記クランクアームに対して相対回転可能に構成され、前記第1フレーム部材は、前記第2フレーム部材に揺動軸心周りに揺動可能に取り付けられ、前記モータの前記出力軸に連結される回転力伝達部材が、前記揺動軸心上に配置される。
上記第28側面の変速システムによれば、モータの出力軸に連結される回転力伝達部材が揺動軸心上に配置されるため、回転力伝達部材と回転力伝達部材が回転力を伝達する部材との距離の変化を小さくできる。
【0033】
前記第1から第28側面のいずれか1つに従う第29側面の変速システムにおいて、前記モータの前記出力軸は、出力軸方向に延び、前記出力軸方向は、前記フロントスプロケットの回転中心軸心に関する軸方向と平行である。
上記第29側面の変速システムによれば、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構の小型化が可能となる。
【0034】
前記第1から第28側面のいずれか1つに従う第30側面の変速システムにおいて、前記モータの前記出力軸は、出力軸方向に延び、前記出力軸方向は、前記フロントスプロケットの回転中心軸心に関する軸方向に対して非平行に延びる。
上記第30側面の変速システムによれば、モータの配置位置の自由度が増す。
【0035】
前記第1から第28側面のいずれか1つに従う第31側面の変速システムにおいて、前記モータの前記出力軸は、出力軸方向に延び、前記出力軸方向における前記モータの最大長さは、前記フロントスプロケットの直径よりも小さい。
上記第31側面の変速システムによれば、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構の小型化が可能となる。
【0036】
前記第1から第31側面のいずれか1つに従う第32側面の変速システムにおいて、前記モータは、前記人力駆動車に推進力を付与しないように構成される。
上記第32側面の変速システムによれば、ペダリングしない状態において、フロントスプロケットを回転させることによって、変速動作を行うことができる。
【0037】
前記第32側面に従う第33側面の変速システムにおいて、前記モータは、前記人力駆動車に推進力を付与しない回転速度で、前記少なくとも1つのフロントスプロケットを回転させる。
上記第33側面の変速システムによれば、ペダリングしない状態において、フロントスプロケットを回転させることによって、変速動作を行うことができる。
【0038】
本発明の第34側面の変速システムは、人力駆動車用変速システムであって、ベース部と、可動部と、前記可動部に旋回可能に取り付けられるチェーンガイド機構と、出力軸を含むモータと、を備え、前記チェーンガイド機構は、前記モータの前記出力軸に連結される少なくとも1つのプーリを含み、前記少なくとも1つのプーリは、前記モータによって人力駆動車用チェーンを駆動する。
上記第34側面の変速システムによれば、ペダリングしないでフロントスプロケットを回転させる駆動機構を、人力駆動車の後輪に配置できる。
【発明の効果】
【0039】
本開示の人力駆動車用変速システムは、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】第1実施形態の人力駆動車用変速システムを含む人力駆動車の側面図。
【
図2】
図1のクランクアームおよびクランク軸の側面図。
【
図3】
図1のクランクアームおよびクランク軸の背面図。
【
図8】
図1の人力駆動車の駆動力の伝達経路を示す模式図。
【
図9】
図1の人力駆動車用変速システムの電気的な構成を示すブロック図。
【
図10】
図9の制御部によって実行されるクランクアームの回転の停止中に変速を実行する場合のモータを制御する処理を示すフローチャート。
【
図11】
図9の制御部によって実行されるクランクアームの回転が停止した場合に第1部分と第2部分との相対位相を制御する処理を示すフローチャート。
【
図12】第2実施形態の人力駆動車用変速システムを含む人力駆動車のクランク軸周辺の側面図。
【
図13】第2実施形態の人力駆動車用変速システムを含む人力駆動車の後輪の車軸周辺の側面図。
【
図14】第2実施形態の人力駆動車の駆動力の伝達経路を示す模式図。
【
図15】第3実施形態の人力駆動車用変速システムを含む人力駆動車のクランク軸周辺の側面図。
【
図16】第3実施形態の人力駆動車用変速システムのブラケット部材の側面図。
【
図17】第3実施形態の人力駆動車の駆動力の伝達経路を示す模式図。
【
図18】第4実施形態の人力駆動車用変速システムを含む人力駆動車のクランク軸周辺の側面図。
【
図19】第4実施形態の人力駆動車用変速システムのブラケット部材の側面図。
【
図20】第4実施形態の人力駆動車用変速システムの変形例のブラケット部材の側面図。
【
図21】第1実施形態の変形例の変速システムを含む人力駆動車のクランク軸周辺の側面図。
【
図22】各実施形態の第1変形例の変速システムの電気的な構成を示すブロック図。
【
図23】各実施形態の第2変形例の変速システムの電気的な構成を示すブロック図。
【
図24】第4実施形態の変形例の変速システムを含む人力駆動車のクランク軸周辺の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<第1実施形態>
図1から
図11を参照して、第1実施形態の人力駆動車用変速システム20について説明する。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、ハンドバイク、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0042】
人力駆動車10は、人力駆動車用フレーム12と、フレーム12に支持される車輪14と、変速システム20と、を備える。車輪14は、後輪14Aおよび前輪14Bを含む。変速システム20は、人力駆動車10に入力された回転を変速して後輪14Aに伝達するように構成される。好ましくは、フレーム12は、ブラケットハンガー部12Aを含む。ブラケットハンガー部12Aは、クランク軸34を支持する。好ましくは、フレーム12は、第1フレーム部材12Bと第2フレーム部材12Cとを含む。第1フレーム部材12Bは、第2フレーム部材12Cに揺動軸心12F周りに揺動可能に取り付けられる。例えば、第2フレーム部材12Cには、ブラケットハンガー部12Aが設けられる。第2フレーム部材12Cは、トップチューブ13A、ダウンチューブ13B、および、シートチューブ12Dを含む。第1フレーム部材12Bは、チェーンステイ12Eを含む。第1フレーム部材12Bは、シートステイ13Cを含む。第1フレーム部材12Bは、車輪14の後輪14Aを支持する。
【0043】
変速システム20は、クランクアーム22と、少なくとも1つのフロントスプロケット24と、フロントクラッチ機構26と、モータ28と、を備える。好ましくは、変速システム20は、人力駆動車用チェーン30と、リアスプロケット32と、クランク軸34と、をさらに備える。クランクアーム22は、人力駆動車10に取り付け可能に構成される。クランクアーム22は、右クランクアーム37Aおよび左クランクアーム37Bを含む。右クランクアーム37Aは、クランク軸34の一方の端部に取り付けられ、左クランクアーム37Bは、クランク軸34の他方の端部に取り付けられる。好ましくは、クランクアーム22は、クランク軸34と一体回転可能である。クランクアーム22の端部には、ペダル36が取り付けられる。クランク軸34は、少なくとも1つのフロントスプロケット24に回転力を伝達する。本実施形態では、変速システム20は、1つのフロントスプロケット24を備える。変速システム20がフロントディレーラを備える場合、好ましくは、変速システム20は複数のフロントスプロケット24を備える。
【0044】
少なくとも1つのフロントスプロケット24は、人力駆動車用チェーン30と係合する複数のスプロケット歯24Aを含む。モータ28は、出力軸28Aを含み、少なくとも1つのフロントスプロケット24に回転力を付与する。フロントクラッチ機構26により、少なくとも1つのフロントスプロケット24は、クランクアーム22に対して相対回転可能に構成される。
【0045】
好ましくは、クランクアーム22は、モータ28が配置されるモータ配置部22Aを有する。好ましくは、モータ配置部22Aは、フロントスプロケット24が取り付けられる側のクランクアーム22に設けられる。好ましくは、モータ配置部22Aは、フロントスプロケット24と対向するように配置される。モータ配置部22Aは、クランクアーム22の凹部22Bに設けられる。
【0046】
変速システム20は、モータ28が配置されるハウジング38をさらに備える。好ましくは、モータ28は、ハウジング38内に配置される。好ましくは、ハウジング38はモータ配置部22Aに配置される。ハウジング38の形状は、モータ配置部22Aが設けられるクランクアーム22の凹部の形状と対応する。ハウジング38は、例えば、ボルト等を介してクランクアーム22に取り付けられる。しかしながら、本発明は本実施形態に限定されない。例えば、モータ28をクランクアーム22の凹部22Bに直接配置し、ハウジング38は凹部22Bの開口部を覆うようにクランクアーム22に固定されてもよい。
【0047】
モータ28の出力軸28Aは、出力軸方向A1に延びる。
図4に示されるように、第1例では、出力軸方向A1は、フロントスプロケット24の回転中心軸心C1に関する軸方向A2と平行である。好ましくは、フロントスプロケット24の回転中心軸心C1に関する軸方向A2は、フロントスプロケット24の回転中心軸心C1に実質的に平行である。より好ましくは、フロントスプロケット24の回転中心軸心C1に関する軸方向A2は、フロントスプロケット24の回転中心軸心C1に平行である。
【0048】
図5に示されるように、第2例では、出力軸方向A1は、フロントスプロケット24の回転中心軸心に関する軸方向A2に対して非平行に延びる。好ましくは、出力軸方向A1は、フロントスプロケット24の回転中心軸心に関する軸方向A2に対して実質的に直交する方向に延びる。より好ましくは、出力軸方向A1は、フロントスプロケット24の回転中心軸心に関する軸方向A2に対して直交する方向に延びる。
【0049】
好ましくは、出力軸方向A1におけるモータ28の最大長さL1は、フロントスプロケット24の直径L2よりも小さい。少なくとも1つのフロントスプロケット24が複数のフロントスプロケット24を含む場合、好ましくは、出力軸方向A1におけるモータ28の最大長さL1は、全てのフロントスプロケット24の直径L2よりも小さい。出力軸方向A1におけるモータ28の最大長さL1は、モータ28の出力軸28Aも含む。好ましくは、ハウジング38のクランクアーム22の延びる方向における最大長さL3は、フロントスプロケット24の直径L2よりも小さい。
【0050】
好ましくは、変速システム20は、減速機構40をさらに備える。減速機構40は、モータ28の出力軸28Aと、フロントスプロケット24とを接続する。減速機構40は、モータ28の回転を減速してフロントスプロケット24に伝達する。減速機構40は、複数の歯車を含んでいてもよく、プーリおよびベルトを含んでいてもよい。出力軸方向A1がフロントスプロケット24の回転中心軸心に関する軸方向A2に対して非平行に延びる場合、好ましくは、減速機構40は、かさ歯車およびウォームギアの少なくとも1つを含む。
【0051】
好ましくは、モータ28は、フロントクラッチ機構26に接続される。好ましくは、モータ28は、減速機構40を介してフロントクラッチ機構26に接続される。減速機構40によって減速されたモータ28の回転力がフロントクラッチ機構26に伝達される。
【0052】
好ましくは、フロントクラッチ機構26は、第1部分26Aと、第2部分26Bと、切替部材26Cと、を備える。第1部分26Aは、クランクアーム22と一体に回転する。第2部分26Bは、少なくとも1つのフロントスプロケット24の内周部に結合される。切替部材26Cは、第1部分26Aおよび第2部分26Bとの間における動力の伝達を切り替える。好ましくは、モータ28は、第1部分26Aに接続される。切替部材26Cは、例えば、第1部分26Aおよび第2部分26Bの一方に配置され、第1部分26Aおよび第2部分26Bの他方に設けられる係合部26Dに係合可能に構成される。本実施形態において、係合部26Dは、複数の係合部26Dを含む。好ましくは、フロントクラッチ機構26は、付勢部材26Eをさらに備える。付勢部材26Eは、切替部材26Cが係合部26Dに向かって突出するように付勢する。本実施形態では、付勢部材26Eは、第1部分26Aの外周部に配置され、係合部26Dは、第2部分26Bの内周部に設けられる。さらに、本実施形態において、切替部材26Cはワンウェイクラッチ機構の爪部材であり、複数の係合部26Dはワンウェイクラッチ機構のラチェット部材である。
【0053】
好ましくは、フロントクラッチ機構26は、伝達部26Fをさらに含む。伝達部26Fは、モータ28の出力を第2部分26Bに伝達する。モータ28の出力は減速機構40を介して伝達部26Fに伝達される。伝達部26Fは、第1部分26Aに設けられる。伝達部26Fは、外周部に係合部26Dに係合する凸部27を有する。好ましくは、伝達部26Fは、外歯歯車として構成され、複数の係合部26Dは、伝達部26Fの外歯歯車と係合する内歯歯車として構成される。好ましくは、凸部27は、複数の凸部27を含む。
【0054】
好ましくは、フロントクラッチ機構26は、転動体26Gをさらに含む。転動体26Gは、例えば、ボールである。転動体26Gは、第1部分26Aの外周部と第2部分26Bの内周部との間に配置される。好ましくは、転動体26Gは、複数の転動体26Gを含み、複数の転動体26Gは、第1部分26Aの外周部において第1部分26Aの周方向に並ぶ。好ましくは、複数の転動体26Gは、クランク軸34の軸方向において、切替部材26Cの一方の端部に配置される複数の第1転動体26Hと、クランク軸34の軸方向において、切替部材26Cの他方の端部に配置される複数の第2転動体26Jと、を含む。すなわち、切替部材26Cは、クランク軸34の軸方向において、複数の第1転動体26Hと複数の第2転動体26Jとの間に配置される。
【0055】
図8の実線L11は、クランクアーム22が人力駆動車10が前進する第1方向B1に回転する場合の駆動力の伝達経路を示す。
図8の破線L12は、クランクアーム22による回転ではなく、モータ28が少なくとも1つのフロントスプロケット24を回転させる場合のモータ28の駆動力の伝達経路を示す。
【0056】
クランクアーム22が人力駆動車10が前進する第1方向B1に回転する場合、切替部材26Cが係合部26Dに係合し、第1部分26Aの回転を第2部分26Bに伝達し、少なくとも1つのフロントスプロケット24を回転させる。クランクアーム22が第1方向B1とは反対の第2方向B2に回転する場合、第1部分26Aと第2部分26Bとの相対回転が許容される。このため、第1部分26Aの回転が第2部分26Bに伝達されない。モータ28が伝達部26Fを第3方向B3に回転させる場合、第2部分26Bは第1方向B1に回転する。
【0057】
クランクアーム22が第1方向B1に回転し、かつ、伝達部26Fの回転速度に速度比Nを乗算した速度Rがクランクアーム22の回転速度未満の場合、第1部分26Aは伝達部26Fを第3方向B3とは反対の第4方向B4に回転させる。速度比Nは、複数の係合部26Dの歯数と伝達部26Fの歯数との比率を示す。伝達部26Fが第3方向B3に回転し、かつ、速度Rがクランクアーム22の回転速度以上の場合、伝達部26Fの外歯車と複数の係合部26Dとによって伝達部26Fが第2部分26Bを回転させ、少なくとも1つのフロントスプロケット24を回転させる。
【0058】
好ましくは、変速システム20は、無線通信部44、ケイデンスセンサ42、インジケータ46、および、パワーメータ48の少なくとも1つをさらに含む。好ましくは、無線通信部44は、無線ユニット44Aを構成する。好ましくは、減速機構40、ケイデンスセンサ42、無線ユニット44A、インジケータ46、の少なくとも1つがハウジング38内に配置される。必要に応じて、ケイデンスセンサ42、無線ユニット44A、および、インジケータ46の少なくとも1つがハウジング38外に配置されてもよい。
【0059】
ケイデンスセンサ42は、クランク軸34の回転速度に応じた情報を検出するように構成される。ケイデンスセンサ42は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石Mが、クランク軸34、クランク軸34に連動して回転する部材、または、クランク軸34からフロントスプロケット24までの間の動力伝達経路に設けられる。ケイデンスセンサ42は、クランク軸34の回転速度に応じた信号を出力する。ケイデンスセンサ42は、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。ケイデンスセンサ42は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部54に接続される。
【0060】
無線通信部44は、変速システム20の外部装置と無線通信を行う。無線通信部44は、例えば、Bluetooth(登録商標)、ANT+(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、および、赤外線通信の少なくとも1つを含む。外部装置は、例えば、人力駆動車のシフタ、人力駆動車のサイクルコンピュータ、スマートフォン、および、パーソナルコンピュータの少なくとも1つを含む。
【0061】
インジケータ46は、表示部を含む。インジケータ46は、ユーザがハウジング38の外部から表示部を視認できるようにハウジング38に設けられる。インジケータ46は、例えば、モータ28に電力を供給するバッテリ50の電池残量を表示部に表示する。表示部は、例えば、LED(light emitting diode)を含む。表示部は、電池残量に応じてLEDの色を変えるようにしてもよく、LEDを点滅させるようにしてもよく、点灯するLEDの数を変更するようにしてもよい。
【0062】
パワーメータ48は、人力駆動力によってクランクアーム22に与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。パワーメータ48は、例えば、フロントクラッチ機構26よりも人力駆動力の伝達経路の上流側に設けられる。パワーメータ48は、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。パワーメータ48は、動力伝達経路、または、動力伝達経路に含まれる部材の近傍に含まれる部材に設けられる。動力伝達経路に含まれる部材は、例えば、クランク軸34、クランクアーム22とフロントスプロケット24との間において人力駆動力を伝達する部材、クランクアーム22、または、ペダル36である。パワーメータ48は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部54に接続される。パワーメータ48は、人力駆動力に関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、例えば、ペダル36に与えられる圧力を検出するセンサ、または、チェーン30の張力を検出するセンサなどを含んでいてもよい。
【0063】
好ましくは、変速システム20は、バッテリ50を含む。好ましくは、バッテリ50は複数のバッテリ素子50Aを含む。バッテリ素子50Aは、充電池を含む。好ましくは、バッテリ50は、モータ28に電力を供給する。好ましくは、バッテリ50は、無線通信部44、ケイデンスセンサ42、インジケータ46、および、パワーメータ48の少なくとも1つに電力を供給する。好ましくは、バッテリ50は、無線通信部44、ケイデンスセンサ42、インジケータ46、および、パワーメータ48の全てに電力を供給する。バッテリ50は、好ましくは、制御装置52と電気ケーブルまたは無線通信装置を介して通信可能に接続される。バッテリ50は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御装置52と通信可能である。
【0064】
好ましくは、クランク軸34は、内部空間を有する。好ましくは、バッテリ50は、クランク軸34の内部空間に配置される。例えば、バッテリ50は、円筒形状を有する。好ましくは、バッテリ50は、モータ28が設けられる部材と一体回転可能に構成される部材、または、モータ28が設けられる部材と同じ部材に設けられる。好ましくは、変速システム20は、バッテリ50に電力を供給するための充電口51をさらに備える。充電口51は、例えば、クランク軸34に設けられる。充電口51は、ハウジング38に設けられてもよい。バッテリ50は、外部の電源と充電口51を介して接続されるように構成されてもよく、外部の電源から充電口51を介した電力が制御部54を経由してバッテリ50に供給されるようにしてもよい。充電口51は、例えば、電気コネクタを含む。好ましくは、バッテリ50、制御部54、および、充電口51は、それぞれ電線で接続される。
【0065】
好ましくは、変速システム20は、制御装置52をさらに含む。制御装置52は、制御部54を含む。好ましくは、制御装置52の少なくとも一部は、ハウジング38に設けられる。好ましくは、制御装置52の少なくとも一部は、ハウジング38の内部に設けられる。
【0066】
制御部54は、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部54は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。好ましくは、制御装置52は、記憶部56をさらに含む。記憶部56には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部56は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。
【0067】
制御装置52は、好ましくは、モータ28の駆動回路58をさらに備える。駆動回路58と、制御部54とは、例えば同一の回路基板に設けられてもよい。駆動回路58は、インバータ回路を含む。駆動回路58は、バッテリ50からモータ28に供給される電力を制御する。駆動回路58は、制御部54と有線接続または無線接続される。駆動回路58は、制御部54からの制御信号に応じてモータ28を駆動させる。
【0068】
変速システム20は、ディレーラ60をさらに含む。好ましくは、ディレーラ60はリアディレーラである。ディレーラ60は、フロントディレーラであってもよい。ディレーラ60は、ディレーラ60に設けられる電動アクチュエータによって動作するものであってもよく、人力駆動車10のシフタとケーブルで接続されてケーブルの移動に応じて動作するものであってもよい。
【0069】
好ましくは、モータ28は、人力駆動車10に推進力を付与しないように構成される。好ましくは、モータ28は、人力駆動車10に推進力を付与しない回転速度で、少なくとも1つのフロントスプロケット24を回転させる。
【0070】
例えば、制御部54は、人力駆動車10に推進力を付与しない回転速度で、少なくとも1つのフロントスプロケット24を回転させるようにモータ28を制御する。制御部54は、例えば、車輪14の回転速度に応じてモータ28の回転を制御する。この場合、好ましくは、変速システム20は、車輪14の回転速度を検出するセンサを含む。制御部54は、モータ28の負荷に応じてモータ28の回転を制御するようにしてもよい。この場合、好ましくは、変速システム20は、モータ28の負荷を検出するセンサを含む。制御部54は、例えば、シフタが操作された場合、または、変速条件が成立した場合に人力駆動車10に推進力を付与しない回転速度で、少なくとも1つのフロントスプロケット24を回転させるようにモータ28を制御する。ディレーラ60がケーブルによって動作するディレーラ60の場合、好ましくは、変速システム20は、シフタ、ケーブル、および、ディレーラ60の少なくとも1つの動きを検出する変速検出部を備える。
【0071】
図10を参照して、モータ28を制御する処理について説明する。制御部54は、制御部54に電力が供給されると、処理を開始して
図10に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部54は、
図10のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0072】
制御部54は、ステップS11において、クランクアーム22の回転が停止中か否かを判定する。クランクアーム22の回転が停止中ではない場合、処理を終了する。制御部54は、クランクアーム22の回転が停止中の場合、ステップS12に移行する。
【0073】
制御部54は、ステップS12において、変速を実行するか否かを判定する。制御部54は、例えば、シフタが操作された場合、または、変速条件が成立した場合、変速を実行すると判定する。制御部54は、変速を実行しない場合、処理を終了する。制御部54は、変速を実行する場合、ステップS13に移行する。
【0074】
制御部54は、ステップS13において、人力駆動車10に推進力を付与しない回転速度で、少なくとも1つのフロントスプロケット24を回転させるようにモータ28を制御し、処理を終了する。制御部54は、ステップS13において、モータ28の駆動を開始してから予め定める期間が経過したらモータ28の駆動を停止してもよく、ディレーラ60の状態を検出するセンサの出力に応じてモータ28の駆動を停止してもよい。予め定める期間は、例えば、ディレーラ60が変速動作を十分に完了できる期間が設定される。予め定める期間は、フロントスプロケット24またはリアスプロケット32の回転角度で規定されてもよく、時間で規定されてもよい。
【0075】
図10の処理において、ステップS12は、ステップS11の前に行われてもよい。この場合、制御部54は、制御部54に電力が供給されるとステップS12に移行し、ステップS12においてYESの場合、ステップS11に移行する。制御部54は、ステップS11においてYESの場合、ステップS13に移行する。制御部54は、ステップS12においてNOの場合、および、ステップS11においてNOの場合、処理を終了する。
【0076】
本実施形態において、制御部54は、クランクアーム22の回転が停止中の場合に変速を実行する場合、モータ28によって少なくとも1つのフロントスプロケット24を回転させる。このため、クランクアーム22の回転が停止している場合であっても、ディレーラ60によって変速を行える。
【0077】
好ましくは、制御部54は、クランクアーム22の回転が停止すると、フロントクラッチ機構26の第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相を第1位相になるようにモータ28を制御するように構成される。好ましくは、第1位相は、切替部材26Cが係合部26Dに係合する位相である。好ましくは、制御部54は、クランクアーム22の回転が停止した場合、第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相が第1位相ではない場合、第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相が第1位相になるようにモータ28を制御するように構成される。制御部54がクランクアーム22の回転が停止すると、切替部材26Cが係合部26Dに係合する第1位相になるようにモータ28を制御することによって、クランクアーム22の回転が再開される場合、クランクアーム22およびクランク軸34の回転がただちに係合部26Dに伝達される。このため、ライダが違和感を覚えにくい。
【0078】
好ましくは、制御部54は、フロントクラッチ機構26の第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相を第1位相になるようにモータ28を制御する場合、少なくとも1つのフロントスプロケット24に回転力を伝達する場合とは反対の方向にモータ28が回転するようにモータ28を制御するように構成される。制御部54は、第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相を直接または間接的に検出する位置センサの出力に応じてモータ28を制御してもよい。位置センサは、例えば、第1部分26Aおよび第2部分26Bの一方に設けられ、第1部分26Aおよび第2部分26Bの他方の回転位相を検出するセンサ、第1部分26Aおよび第2部分26Bのそれぞれのフレーム12に対する回転位相を検出するセンサ、モータ28の回転位相を検出するセンサ、および、モータ28の負荷を検出するセンサの少なくとも1つを含む。
【0079】
好ましくは、モータ28から伝達部26Fまでのモータ28の回転力の伝達経路においてワンウェイクラッチが設けられない。モータ28から伝達部26Fまでのモータ28の回転力の伝達経路において、ワンウェイクラッチが設けられてもよい。ワンウェイクラッチは、モータ28からの回転を伝達部26Fに伝達し、伝達部26Fからの回転をモータ28に伝達しないように構成される。ワンウェイクラッチが設けられない場合、クランクアーム22が人力駆動車10が前進する第1方向B1に回転する場合、かつ、モータ28が駆動しない場合、伝達部26Fが第2部分26Bによってフロントスプロケット24の回転中心軸心C1回りに公転し、モータ28にはクランクアーム22の回転が伝達されない。モータ28から伝達部26Fまでのモータ28の回転力の伝達経路において、ワンウェイクラッチが設けられる場合、制御部54は、フロントクラッチ機構26の第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相を第1位相になるようにモータ28を制御するように構成されない。
【0080】
図11を参照して、クランクアーム22の回転が停止した場合のモータ28を制御する処理について説明する。制御部54は、制御部54に電力が供給されると、処理を開始して
図11に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部54は、
図11のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS21からの処理を繰り返す。
【0081】
制御部54は、ステップS21において、クランクアーム22の回転が停止しているか否かを判定する。制御部54は、例えば、クランクアーム22の回転速度が予め定める速度以下の場合、クランクアーム22の回転が停止したと判定する。制御部54は、クランクアーム22の第1方向B1への回転速度が予め定める速度以下の場合、クランクアーム22の回転が停止したと判定してもよい。制御部54は、クランクアーム22の第2方向B2への回転速度が予め定める速度以下の場合、クランクアーム22の回転が停止したと判定してもよい。好ましくは、制御部54は、クランクアーム22の第1方向B1への回転速度または第2方向B2への回転速度が予め定める速度以下の場合、クランクアーム22の回転が停止したと判定する。制御部54は、クランクアーム22の回転が停止していない場合、処理を終了する。制御部54は、クランクアーム22の回転が停止した場合、ステップS22に移行する。
【0082】
制御部54は、ステップS22において、第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相が第1位相か否かを判定する。制御部54は、第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相が第1位相の場合、処理を終了する。制御部54は、第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相が第1位相ではない場合、ステップS23に移行する。
【0083】
制御部54は、ステップS23において、第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相が第1位相になるようにモータ28を制御し、処理を終了する。制御部54は、例えば、位置センサの出力が、第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相が第1位相に対応する出力になった場合、モータ28の駆動を停止する。
【0084】
好ましくは、制御部54は、ステップS23において、伝達部26Fを第4方向B4に回転させる方向の力を伝達部26Fに付与するようにモータ28を制御する。制御部54は、予め定める出力になるようにモータ28を制御するようにしてもよい。予め定める出力は、切替部材26Cが係合部26Dに係合している状態から第4方向B4にさらに回転して係合部26Dの壁部を乗り越えられない出力である。制御部54は、例えば、予め定める時間にわたり、予め定める出力になるようにモータ28を制御するように構成されていてもよい。制御部54が予め定める時間にわたり、予め定める出力になるようにモータ28を制御するように構成される場合、制御部54は、第1部分と第2部分の相対位相を検出しなくてもよい。この場合、制御部54は、クランクアーム22の回転が停止すると、予め定める時間にわたり、予め定める出力になるようにモータ28を制御するように構成されてもよい。この場合、
図11のステップS22の処理は省略してもよい。制御部54は、ステップS21において肯定判定の場合、ステップS23に移行する。
【0085】
クランクアーム22の回転が停止した状態からクランクアーム22の第1方向B1への回転が開始される場合、フロントクラッチ機構26の第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相を第1位相になるまで少なくとも1つのフロントスプロケット24が回転しない。制御部54は、クランクアーム22の回転が停止すると、フロントクラッチ機構26の第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相を第1位相になるようにモータ28を制御するため、クランクアーム22の第1方向B1への回転が開始される場合、すぐに少なくとも1つのフロントスプロケット24が回転できる。
【0086】
制御部54は、クランクアーム22の第1方向B1への回転速度が予め定める範囲内にある期間、第1部分26Aと第2部分26Bとの相対位相が第1位相になるようにモータ28の駆動を継続するようにしてもよい。予め定める範囲内には、0rpmが含まれる。
【0087】
<第2実施形態>
図12から
図14を参照して、第2実施形態の人力駆動車用変速システム20Aについて説明する。第2実施形態の人力駆動車用変速システム20Aは、モータ68が配置される部分およびモータ68が連結される部材が異なる点以外は、第1実施形態の人力駆動車用変速システム20と同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0088】
第2実施形態の変速システム20Aは、クランクアーム62と、少なくとも1つのフロントスプロケット64と、フロントクラッチ機構66と、を含む。好ましくは、クランクアーム62は、モータ配置部22Aを有しない点以外は、クランクアーム22と同様の構成を有する。好ましくは、少なくとも1つのフロントスプロケット64は、フロントクラッチ機構26に変えてフロントクラッチ機構66が設けられる点以外は、フロントスプロケット24と同様に構成される。好ましくは、変速システム20Aは、モータ68と、ベース部70と、可動部72と、チェーンガイド機構74と、を含む。好ましくは、変速システム20Aは、チェーン30と、リアスプロケット32と、クランク軸34と、をさらに備える。クランクアーム62は、人力駆動車10に取り付け可能に構成される。クランクアーム62は、クランク軸34の両端部のそれぞれに取り付けられる。好ましくは、クランクアーム62は、クランク軸34と一体回転可能である。クランクアーム62の端部には、ペダル36が取り付けられる。クランク軸34は、少なくとも1つのフロントスプロケット64に回転力を伝達する。例えば、変速システム20Aは、1つのフロントスプロケット64を備える。変速システム20Aがフロントディレーラを備える場合、好ましくは、変速システム20Aは複数のフロントスプロケット64を備える。
【0089】
少なくとも1つのフロントスプロケット64は、人力駆動車用チェーン30と係合する複数のスプロケット歯を含む。モータ68は、出力軸68Aを含み、少なくとも1つのフロントスプロケット64に回転力を付与する。
【0090】
ベース部70は、人力駆動車10のフレーム12に取り付けられる。可動部72は、ベース部70に対して移動可能にベース部70に取り付けられる。ベース部70、可動部72、および、チェーンガイド機構74は、ディレーラを構成する。ディレーラの可動部72は、リンク機構を含んでいてもよい。ベース部70、可動部72、および、チェーンガイド機構74は、リアディレーラを構成する。ベース部70、可動部72、および、チェーンガイド機構74は、フロントディレーラを構成してもよい。ディレーラは、電動アクチュエータによって動作するものであってもよく、人力駆動車のシフタとケーブルで接続されてケーブルの移動に応じて動作するものであってもよい。チェーンガイド機構74は、可動部72に旋回可能に取り付けられる。チェーンガイド機構74は、モータ68の出力軸68Aに連結される少なくとも1つのプーリ76を含む。モータ68は、少なくとも1つのプーリ76を介して、少なくとも1つのフロントスプロケット24に回転力を付与する。本実施形態において、モータ68は、少なくとも1つのプーリ76、および、人力駆動車用チェーン30を介して、少なくとも1つのフロントスプロケット24に回転力を付与する。好ましくは、少なくとも1つのプーリ76は、テンションプーリ76Aおよびガイドプーリ76Bを含む。好ましくは、少なくとも1つのプーリ76は、チェーン30を介してフロントスプロケット24に回動力を伝達する。好ましくは、モータ68の出力軸68Aは、ガイドプーリ76Bに連結され、テンションプーリ76Aには連結されない。
【0091】
モータ68の出力軸68Aは、出力軸方向A1に延びる。
第1例では、出力軸方向A1は、フロントスプロケット64の回転中心軸心に関する軸方向A2と平行である。好ましくは、フロントスプロケット64の回転中心軸心に関する軸方向は、フロントスプロケット64の回転中心軸心に平行な方向である。例えば、チェーンガイド機構74が予め定める位置にある場合、出力軸方向A1は、フロントスプロケット64の回転中心軸心に関する軸方向A2と平行である。予め定める位置は、例えば、少なくとも1つのプーリ76の中心軸心がフロントスプロケット64の回転中心軸心と平行するチェーンガイド機構74の位置である。第1例では、好ましくは、出力軸方向A1は、少なくとも1つのプーリ76の回転中心軸心に関する軸方向に平行である。
【0092】
第2例では、出力軸方向A1は、フロントスプロケット64の回転中心軸心に関する軸方向A2に対して非平行に延びる。好ましくは、出力軸方向A1は、フロントスプロケット64の回転中心軸心に関する軸方向A2に対して直交する方向を含む方向に延びる。例えば、チェーンガイド機構74が予め定める位置にある場合、出力軸方向A1は、フロントスプロケット64の回転中心軸心に関する軸方向A2に対して非平行に延びる。予め定める位置は、例えば、少なくとも1つのプーリ76の中心軸心がフロントスプロケット64の回転中心軸心と平行するチェーンガイド機構74の位置である。第2例では、好ましくは、出力軸方向A1は、少なくとも1つのプーリ76の回転中心軸心に関する軸方向に非平行である。
【0093】
出力軸方向A1におけるモータ68の最大長さは、フロントスプロケット64の直径よりも小さい。少なくとも1つのフロントスプロケット64が複数のフロントスプロケット64を含む場合、好ましくは、出力軸方向A1におけるモータ68の最大長さは、全てのフロントスプロケット24の直径よりも小さい。
【0094】
好ましくは、変速システム20Aは、減速機構78をさらに備える。減速機構78は、モータ68の出力軸68Aと、少なくとも1つのプーリ76とを接続する。減速機構78は、モータ68の回転を減速して少なくとも1つのプーリ76に伝達する。減速機構78は、複数の歯車を含んでいてもよく、プーリおよびベルトを含んでいてもよい。出力軸方向A1が少なくとも1つのプーリ76の回転中心軸心に関する軸方向に対して非平行に延びる場合、好ましくは、減速機構78は、かさ歯車およびウォームギアの少なくとも1つを含む。
【0095】
フロントクラッチ機構66は、クランクアーム62に対して少なくとも1つのフロントスプロケット64を、一体的または相対的に回転可能にする。フロントクラッチ機構66は、例えば、クランク軸34と、フロントスプロケット64との間に設けられる。フロントクラッチ機構66は、例えば、ワンウェイクラッチである。ワンウェイクラッチは、爪式のクラッチであってもよく、ローラクラッチであってもよい。
【0096】
クランクアーム62が第1方向B1に回転する場合、フロントクラッチ機構66を介してクランク軸34の回転がフロントスプロケット64を回転させる。クランクアーム62が第2方向B2に回転する場合、フロントクラッチ機構66を介してクランク軸34の回転はフロントスプロケット24に伝達されない。
【0097】
モータ68は、少なくとも1つのプーリ76を、クランクアーム62が第1方向B1に回転する場合と対応する方向に回転させるように構成される。好ましくは、モータ68から少なくとも1つのプーリ76までのモータ68の回転力の伝達経路において、ワンウェイクラッチが設けられる。ワンウェイクラッチは、モータ68の回転を少なくとも1つのプーリ76に伝達し、少なくとも1つのプーリ76の回転をモータ68に伝達しないように構成される。
【0098】
少なくとも1つのプーリ76がモータ68によってクランクアーム62が第1方向B1に回転する場合と対応する方向に回転する場合、少なくとも1つのプーリ76がチェーン30を駆動し、リアスプロケット32を回転させる。チェーン30の駆動は、フロントスプロケット64に伝達されるが、フロントクラッチ機構66によってクランク軸34には伝達されない。
本実施形態において、フロントクラッチ機構66は省略されてもよい。
【0099】
好ましくは、変速システム20Aは、無線通信部44、ケイデンスセンサ42、インジケータ46、および、パワーメータ48の少なくとも1つをさらに含む。好ましくは、変速システム20Aは、バッテリ50をさらに含む。好ましくは、変速システム20Aは、バッテリ50に電力を供給するための充電口51をさらに備える。好ましくは、変速システム20Aは、制御装置52をさらに含む。バッテリ50は、例えば、モータ68が設けられるハウジングに設けられる。充電口51は、モータ68が設けられるハウジングに設けられる。
本実施形態では、バッテリ50、および、充電口51は可動部72に配置されているが、本発明はこれに限定されない。バッテリ50、および、充電口51の少なくとも一方は、必要に応じて、ベース部70に配置されてもよい。
【0100】
好ましくは、モータ68は、人力駆動車10に推進力を付与しないように構成される。好ましくは、モータ68は、人力駆動車10に推進力を付与しない回転速度で、少なくとも1つのフロントスプロケット64を回転させる。
【0101】
図14の実線L21は、クランクアーム62が人力駆動車10が前進する第1方向B1に回転する場合の駆動力の伝達経路を示す。
図14の破線L22は、クランクアーム62の回転が停止し、モータ68が駆動する場合のモータ68の駆動力の伝達経路を示す。破線L22においては、モータ68の回転が減速機構78を介して少なくとも1つのプーリ76に伝達される。少なくとも1つのプーリ76の回転は、チェーン30を第1方向B1と対応する方向に回転させ、フロントスプロケット64を第1方向B1に回転させる。これによって、チェーン30がリアスプロケット32を第1方向B1と対応する方向に引っ張り、リアスプロケット32が第1方向B1と対応する方向に回転する。フロントスプロケット64の第1方向B1の回転は、フロントクラッチ機構66によってクランク軸34に伝達されない。
【0102】
例えば、制御部54は、人力駆動車10に推進力を付与しない回転速度で、少なくとも1つのフロントスプロケット64を回転させるようにモータ68を制御する。制御部54は、例えば、車輪14の回転速度に応じてモータ68の回転を制御する。この場合、好ましくは、変速システム20Aは、車輪14の回転速度を検出するセンサを含む。制御部54は、モータ68の負荷に応じてモータ68の回転を制御するようにしてもよい。この場合、好ましくは、変速システム20Aは、モータ68の負荷を検出するセンサを含む。制御部54は、例えば、シフタが操作された場合、または、変速条件が成立した場合に人力駆動車10に推進力を付与しない回転速度で、少なくとも1つのフロントスプロケット64を回転させるようにモータ68を制御する。ディレーラ60がケーブルによって動作するディレーラ60の場合、好ましくは、変速システム20Aは、シフタ、ケーブル、および、ディレーラ60の少なくとも1つの動きを検出する変速検出部を備える。制御部54は、例えば、第1実施形態の
図10の処理と同様の処理によってモータ68を制御する。
【0103】
<第3実施形態>
図15から
図17を参照して、第3実施形態の人力駆動車用変速システム20Bについて説明する。第3実施形態の人力駆動車用変速システム20Bは、モータ80が配置される部分およびモータ80が連結される部材が異なる点以外は、第2実施形態の人力駆動車用変速システム20Aと同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第2実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0104】
第3実施形態の変速システム20Bは、モータ80と、ブラケット部材82と、回転力伝達部材84と、を備える。好ましくは、変速システム20Bは、クランクアーム62と、少なくとも1つのフロントスプロケット64と、フロントクラッチ機構66と、をさらに備える。好ましくは、変速システム20Bは、チェーン30と、リアスプロケット32と、クランク軸34と、をさらに備える。好ましくは、変速システム20Bは、ディレーラ60をさらに備える。
【0105】
モータ80は、出力軸80Aを含む。モータ80は、少なくとも1つのフロントスプロケット64に回転力を付与する。回転力伝達部材84は、モータ80の出力軸80Aに連結される。
【0106】
モータ80の出力軸80Aは、出力軸方向A1に延びる。第1例では、出力軸方向A1は、フロントスプロケット64の回転中心軸心に関する軸方向A2と平行である。第2例では、出力軸方向A1は、フロントスプロケット64の回転中心軸心に関する軸方向A2に対して非平行に延びる。好ましくは、出力軸方向A1におけるモータ80の最大長さは、フロントスプロケット64の直径よりも小さい。少なくとも1つのフロントスプロケット64が複数のフロントスプロケット64を含む場合、好ましくは、出力軸方向A1におけるモータ80の最大長さは、全てのフロントスプロケット64の直径よりも小さい。
【0107】
好ましくは、回転力伝達部材84は、人力駆動車用チェーン30を介してフロントスプロケット24に回転力を伝達する。好ましくは、回転力伝達部材84は、チェーン30と係合可能な複数の回転力伝達歯84Aを含む。好ましくは、回転力伝達部材84は、減速機構86を介してモータ80の出力軸80Aに接続される。減速機構86は、モータ80の回転を減速してチェーン30に伝達する。減速機構86は、複数の歯車を含んでいてもよく、プーリおよびベルトを含んでいてもよい。
【0108】
モータ80は、フロントスプロケット64をクランクアーム62が第1方向B1に回転する場合と対応する方向に回転させるように構成される。好ましくは、フロントスプロケット64までのモータ80の回転力の伝達経路において、ワンウェイクラッチが設けられる。ワンウェイクラッチは、モータ80の第1方向B1と対応する方向の回転をフロントスプロケット64に伝達し、フロントスプロケット64の第1方向B1と対応する方向の回転をモータ80に伝達しないように構成される。
【0109】
フロントスプロケット64がモータ80によってクランクアーム62が第1方向B1に回転する場合と対応する方向に回転する場合、回転力伝達部材84が、フロントスプロケット64およびチェーン30を駆動し、リアスプロケット32を回転させる。ペダリングしていない状態でチェーンを駆動させて変速動作を行う場合、チェーン30の駆動はフロントスプロケット64に伝達されるが、フロントクラッチ機構66によってクランク軸34には伝達されない。
【0110】
好ましくは、変速システム20Bは、無線通信部44、ケイデンスセンサ42、インジケータ46、および、パワーメータ48の少なくとも1つをさらに含む。好ましくは、変速システム20Bは、バッテリ50をさらに含む。好ましくは、変速システム20Bは、バッテリ50に電力を供給するための充電口51をさらに備える。好ましくは、変速システム20Bは、制御装置52をさらに含む。バッテリ50は、例えば、ブラケット部材82に設けられる。充電口51は、好ましくは、ブラケット部材82に設けられる。
【0111】
好ましくは、モータ80は、人力駆動車10に推進力を付与しないように構成される。好ましくは、モータ80は、人力駆動車10に推進力を付与しない回転速度で、少なくとも1つのフロントスプロケット64を回転させる。
【0112】
図17の実線L31は、クランクアーム62が人力駆動車10が前進する第1方向B1に回転する場合の駆動力の伝達経路を示す。
図17の破線L32は、クランクアーム62の回転が停止し、モータ80が駆動する場合のモータ80の駆動力の伝達経路を示す。破線L32においては、モータ80の回転が減速機構86を介してチェーン30を第1方向B1と対応する方向に回転させ、フロントスプロケット64を第1方向B1に回転させる。これによって、チェーン30がリアスプロケット32を第1方向B1と対応する方向に引っ張り、リアスプロケット32が第1方向B1と対応する方向に回転する。フロントスプロケット64の第1方向B1の回転は、フロントクラッチ機構66によってクランク軸34に伝達されない。
【0113】
例えば、制御部54は、人力駆動車10に推進力を付与しない回転速度で、少なくとも1つのフロントスプロケット64を回転させるようにモータ80を制御する。制御部54は、例えば、車輪14の回転速度に応じてモータ80の回転を制御する。この場合、好ましくは、変速システム20Bは、車輪14の回転速度を検出するセンサを含む。制御部54は、モータ80の負荷に応じてモータ80の回転を制御するようにしてもよい。この場合、好ましくは、変速システム20Bは、モータ80の負荷を検出するセンサを含む。制御部54は、例えば、シフタが操作された場合、または、変速条件が成立した場合に人力駆動車10に推進力を付与しない回転速度で、少なくとも1つのフロントスプロケット64を回転させるようにモータ80を制御する。ディレーラ60がケーブルによって動作するディレーラ60の場合、好ましくは、変速システム20Bは、シフタ、ケーブル、および、ディレーラ60の少なくとも1つの動きを検出する変速検出部を備える。制御部54は、例えば、第1実施形態の
図10の処理と同様の処理によってモータ80を制御する。
【0114】
ブラケット部材82は、少なくとも1つのフロントスプロケット64の回転中心軸心に関する径方向において、少なくとも1つのフロントスプロケット64のスプロケット歯64Aとオーバーラップするカバー部82Aを含む。ブラケット部材82は、モータ80を収容するモータ収容部82Bを有する。好ましくは、ブラケット部材82は、人力駆動車用フレーム12のブラケットハンガー部12Aに固定可能な固定部82Cを含む。固定部82Cは、例えば、円環形状を有する。固定部82Cの円環形状には、クランク軸34が挿入される。例えば、固定部82Cの円環形状の内周部に設けられる複数の孔にボルトが挿入されることによってブラケット部材82がフレーム12のブラケットハンガー部12Aに固定される。好ましくは、ブラケット部材82は、クランク軸34の軸方向において、ブラケットハンガー部12Aと、少なくとも1つのフロントスプロケット64との間に配置される。
【0115】
<第4実施形態>
図18および
図19を参照して、第4実施形態の人力駆動車用変速システム20Cについて説明する。第4実施形態の人力駆動車用変速システム20Cは、ブラケット部材88の構成が異なる点以外は、第3実施形態の人力駆動車用変速システム20Bと同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第3実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0116】
第4実施形態の変速システム20Cは、ブラケット部材88と、モータ80と、回転力伝達部材84と、を備える。好ましくは、変速システム20Cは、クランクアーム62と、少なくとも1つのフロントスプロケット64と、フロントクラッチ機構66と、をさらに備える。好ましくは、変速システム20Cは、チェーン30と、リアスプロケット32と、クランク軸34と、をさらに備える。好ましくは、変速システム20Cは、ディレーラ60をさらに備える。
【0117】
ブラケット部材88は、人力駆動車用のシートチューブ12D、シートステイ13C、および、チェーンステイ12Eの少なくとも1つに取り付けられる。ブラケット部材88は、モータ80を収容するモータ収容部88Aを有する。例えば、
図19に示されるように、ブラケット部材88はシートチューブ12Dに取り付けられる。ブラケット部材88は、第1クランプ部材88Bと、第2クランプ部材88Cと、締結部材88Dと、を含む。第2クランプ部材88Cは、第1クランプ部材88Bに対して揺動可能に取り付けられる。締結部材88Dは、第1クランプ部材88Bと第2クランプ部材88Cとの間にシートチューブ12Dを挟んだ状態で第1クランプ部材88Bと第2クランプ部材88Cとを固定する。締結部材88Dは、例えば、ボルトおよびナットを含む。
【0118】
図20に示されるように、ブラケット部材88は、ブラケット本体88Eと、締結部材88Fと、を含んでもよい。例えば、ブラケット本体88Eは、第1取付部88Gを有する。締結部材88Fは、ブラケット本体88Eの第1取付部88Gを挿通し、シートチューブ12Dに形成される第2取付部12Gに固定される。例えば、締結部材88Fは、ボルトを含み、第1取付部88Gは、孔を含み、第2取付部12Gは、雌ねじ部を含む。
【0119】
好ましくは、変速システム20Cは、無線通信部44、ケイデンスセンサ42、インジケータ46、および、パワーメータ48の少なくとも1つをさらに含む。好ましくは、変速システム20Cは、バッテリ50をさらに含む。好ましくは、変速システム20Cは、バッテリ50に電力を供給するための充電口51をさらに備える。好ましくは、変速システム20Cは、制御装置52をさらに含む。バッテリ50は、例えば、ブラケット部材88に設けられる。充電口51は、好ましくは、ブラケット部材88に設けられる。
【0120】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用変速システムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用変速システムは、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0121】
・第2実施形態において、モータ68は、ベース部70、可動部72、リンク機構、および、チェーンガイド機構74のいずれに設けられていてもよい。モータ68は、テンションプーリ76Aに設けられてもよい。
【0122】
・
図21に示すように、第1実施形態のハウジング38を、第3実施形態のブラケット部材82に設けることもできる。例えば、変速システム20は、モータ28と、ブラケット部材82と、回転力伝達部材100と、を備える。回転力伝達部材100は、モータ28の出力軸28Aに連結される。この場合、回転力伝達部材100は、人力駆動車用のチェーン30を介さずにフロントスプロケット24に回転力を伝達するように構成される。この場合、回転力伝達部材100は、伝達部26Fである。
【0123】
・
図22に示すように、各実施形態の変速システム20,20A,20B,20Cは、バッテリ50からの電力を無線で受電し、モータ28,68,80に電力を供給する無線受電ユニット90を備えていてもよい。無線受電ユニット90は、例えば、電磁誘導によって外部の無線送電装置92から電力を受電する。無線受電ユニット90は、例えば、制御部54に接続され、制御部54を介して、バッテリ50に電力を供給してもよい。この場合、変速システム20,20A,20B,20Cは、少なくとも、クランク軸34と、クランクアーム22,62と、少なくとも1つのフロントスプロケット24,64と、フロントクラッチ機構26,66と、モータ28,68,80と、無線受電ユニット90を備えることによって、好適に用いることができる。
【0124】
・各実施形態において、モータ28,68,80およびバッテリ50の少なくとも1つが回転する部材に設けられ、かつ、モータ28,68,80およびバッテリ50の一方が設けられる部材と、モータ28,68,80およびバッテリ50の他方が設けられる部材とが相対回転するように構成されていてもよい。第1実施形態および第2実施形態において、例えば、バッテリ50がフレーム12に設けられ、第3実施形態および第4実施形態において、例えば、バッテリ50がクランク軸34に設けられる。この場合、例えば、
図23に示すように、変速システム20,20A、20B,20Cは、通電ユニット94を備える。通電ユニット94は、第1通電部96と、第1通電部96に対して相対回転する第2通電部98と、を含む。第1通電部96は、バッテリ50からの電力を第2通電部98に通電する。第2通電部98は、第1通電部96から通電される電力をモータ28,68,80に通電する。通電ユニット94は、例えば、スリップリングを含む。この場合、変速システム20,20A,20B,20Cは、少なくとも、クランク軸34と、クランクアーム22,62と、少なくとも1つのフロントスプロケット24,64と、フロントクラッチ機構26,66と、モータ28,68,80と、通電ユニット94を備えることによって、好適に用いることができる。
【0125】
・
図24に示されるように、第3実施形態において、モータ80の出力軸80Aに連結される回転力伝達部材84が、揺動軸心12F上に配置されるようにしてもよい。この場合、変速システム20Bは、少なくとも、第1フレーム部材12Bおよび第2フレーム部材12Cを備えるフレーム12と、クランクアーム62と、少なくとも1つのフロントスプロケット64と、フロントクラッチ機構66と、モータ80と、通電ユニット94を備えることによって、好適に用いることができる。
【0126】
・第1実施形態のフロントクラッチ機構26は、ローラクラッチ、または、スクラブクラッチを含んでもよい。
【0127】
・変速システム20,20A,20B,20Cは、チェーン30と係合する複数のスプロケット歯を含む少なくとも1つのリアスプロケット32と、少なくとも1つのリアスプロケット32が取り付けられるスプロケット取付部材と、人力駆動車用リムと一体的に回転するハブ体と、ハブ体に対して少なくとも1つのリアスプロケット32を一体的または相対的に回転可能にするリアクラッチ機構と、を含む人力駆動車用ハブを含んでいてもよい。人力駆動車用ハブは、好ましくは、ハブ体と少なくとも1つのリアスプロケットとが一体的に回転する状態と、ハブ体と少なくとも1つのリアスプロケットとが相対的に回転する状態と、を切り替えるアクチュエータと、を備える。
【0128】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0129】
10…人力駆動車、12…人力駆動車用フレーム、12A…ブラケットハンガー部、12B…第1フレーム部材、12C…第2フレーム部材、12D…シートチューブ、12E…チェーンステイ、12F…揺動軸心、12G…第2取付部、13C…シートステイ、20,20A,20B,20C…変速システム、22,62…クランクアーム、22A…モータ配置部、24,64…フロントスプロケット、24A,64A…スプロケット歯、26,66…フロントクラッチ機構、26A…第1部分、26B…第2部分、26C…切替部材、28,68,80…モータ、28A,68A,80A…出力軸、30…人力駆動車用チェーン、34…クランク軸、38…ハウジング、40,78,86…減速機構、42…ケイデンスセンサ、44…無線通信部、44A…無線ユニット、46…インジケータ、48…パワーメータ、50…バッテリ、50A…バッテリ素子、51…充電口、70…ベース部、72…可動部、74…チェーンガイド機構、76…プーリ、76A…テンションプーリ、76B…ガイドプーリ、82…ブラケット部材、82A…カバー部、82B…モータ収容部、82C…固定部、84…回転力伝達部材、88…ブラケット部材、88A…モータ収容部、88B…第1クランプ部材、88C…第2クランプ部材、88D…締結部材、88E…ブラケット本体、88F…締結部材、88G…第1取付部、90…無線受電ユニット、94…通電ユニット、96…第1通電部、98…第2通電部、100…回転力伝達部材。