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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】避難支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20240723BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G08B27/00 B
G08B17/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020058841
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157641
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘中 康雄
(72)【発明者】
【氏名】菱野 浩一
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/072923(WO,A1)
【文献】特開2015-210681(JP,A)
【文献】特開2016-133938(JP,A)
【文献】特開2004-118387(JP,A)
【文献】特開2017-004084(JP,A)
【文献】特開2018-142338(JP,A)
【文献】特開2017-079032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエリアを有する建物の地図画像を表示部に表示させる第1表示制御部と、
前記複数のエリアのうちのいずれかが利用者により選択され、かつ、所定の通知ボタンが当該利用者により選択されると、選択されたエリアに存在する残留者の避難を支援するよう要請するメッセージを、消防隊員が携帯する端末に送信する通知部と
前記複数のエリアの各々について、当該エリアを撮影したカメラ画像に基づいて、前記残留者のうち床に横たわっている人及び車椅子利用者の少なくとも一方を避難困難者として特定する特定部とを備え、
前記通知部は、前記メッセージに加えて、前記選択されたエリアについて特定された前記避難困難者の有無を示す情報を前記端末に送信する
ことを特徴とする避難支援システム。
【請求項2】
前記地図画像において、前記複数のエリアのうちのいずれかが前記利用者により選択されると、選択されたエリアを撮影したカメラ画像と前記通知ボタンとを前記表示部に表示させる第2表示制御部をさらに備え
前記通知部は、前記カメラ画像の表示に応じて前記利用者により前記通知ボタンが選択されると、前記メッセージを前記端末に送信することを特徴とする、請求項1に記載の避難支援システム。
【請求項3】
前記通知部は、前記メッセージに加えて、前記選択されたエリアを撮影したカメラ画像を前記端末に送信することを特徴とする、請求項1又は2に記載の避難支援システム。
【請求項4】
前記避難困難者は、前記残留者のうち前記床に横たわっている人を含む
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の避難支援システム。
【請求項5】
前記第2表示制御部は、前記利用者が前記選択されたエリアを撮影するカメラの向き又は画角を調整するためのカメラ制御ボタンを、前記カメラ画像と共に前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項2に記載の避難支援システム。
【請求項6】
前記特定部は、前記複数のエリアの各々について、当該エリアを撮影したカメラ画像又は当該エリアについて記録された入退室データに基づいて、前記残留者の人数と、前記残留者のうち前記避難困難者の人数とを特定し、
前記メッセージは、前記選択されたエリアについて特定された前記残留者の人数及び前記避難困難者の人数に応じた内容を有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の避難支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災発生時に在館者の避難を支援するためのシステムが知られている。例えば、特許文献1には、各部屋に配置されたカメラと受信機とを備える監視システムであって、受信機が、カメラで撮影した画像を基に各部屋の滞在者の概算人数を特定し、特定した概算人数を建物の図面上に表示する監視システムが記載されている。この監視システムの利用者は、どの部屋の危険度が高いかを把握することができ、適切な避難誘導を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-133938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物からの円滑な避難を実現するためには、残留者の避難支援を迅速に消防隊員に要請することが重要である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、残留者の避難支援を迅速に消防隊員に要請することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る避難支援システムは、数のエリアを有する建物の地図画像を表示部に表示させる第1表示制御部と、前記複数のエリアのうちのいずれかが利用者により選択され、かつ、所定の通知ボタンが当該利用者により選択されると、選択されたエリアに存在する残留者の避難を支援するよう要請するメッセージを、消防隊員が携帯する端末に送信する通知部とを備える。
【0007】
好ましい態様において、前記避難支援システムは、前記地図画像において、前記複数のエリアのうちのいずれかが前記利用者により選択されると、選択されたエリアを撮影したカメラ画像と前記通知ボタンとを含む詳細画像を前記表示部に表示させる第2表示制御部をさらに備える。
【0008】
さらに好ましい態様において、前記避難支援システムは、前記複数のエリアの各々について、当該エリアを撮影したカメラ画像又は当該エリアについて記録された入退室データに基づいて、残留者の人数を特定する第1特定部をさらに備え、前記通知部は、前記メッセージに加えて、前記選択されたエリアについて特定された残留者の人数を示す情報を前記端末に送信する。
【0009】
さらに好ましい態様において、前記通知部は、前記メッセージに加えて、前記選択されたエリアを撮影したカメラ画像を前記端末に送信する。
【0010】
さらに好ましい態様において、前記避難支援システムは、前記複数のエリアの各々について、当該エリアを撮影したカメラ画像又は当該エリアについて記録された入退室データに基づいて、避難困難者の有無を特定する第2特定部をさらに備え、前記通知部は、前記メッセージに加えて、前記選択されたエリアについて特定された避難困難者の有無を示す情報を前記端末に送信する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、残留者の避難支援を迅速に消防隊員に要請することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】火災監視システムを示す図
図2】ディスプレイシステム5の構成を示すブロック図
図3】残留者数テーブル522の一例を示す図
図4】残留者数特定処理を示すフロー図
図5】地図画面生成処理を示すフロー図
図6】地図画面の一例を示す図
図7】詳細画面生成処理を示すフロー図
図8】詳細画面の一例を示す図
図9】メール通知処理を示すフロー図
図10】メールの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施形態
本発明の一実施形態に係る火災監視システムについて図面を参照して説明する。
1-1.構成
図1は、建物Bに設置された火災監視システムを示す図である。同図に示す火災監視システムは、複数の火災感知器1、火災受信機2、複数のIPカメラ3、複数のスマートフォン4及びディスプレイシステム5を備える。
【0014】
このうち、火災感知器1は、建物Bの各所に配置され、信号線を介して火災受信機2と接続される。この火災感知器1は、火災の発生を感知すると、火災受信機2に対して火災信号を出力する。
【0015】
火災受信機2は、建物Bの防災センタや中央管理室に設置され、ディスプレイシステム5と有線で接続される。この火災受信機2は、火災感知器1から出力される火災信号に基づいて火災判定を行い、火災が発生したと判定すると、ディスプレイシステム5に対して火災情報を出力する。
【0016】
IPカメラ3は、ネットワークカメラである。このIPカメラ3は、建物Bの各所に配置され、LANケーブルを介してディスプレイシステム5と接続される。
【0017】
スマートフォン4は、建物Bにおいて編成された自衛消防隊の隊員により携帯される。このスマートフォン4は、無線LANを介してディスプレイシステム5と接続される。
【0018】
ディスプレイシステム5は、火災発生時に、在館者の避難状況を表示し、かつ、在館者の避難を支援するためのシステムである。このディスプレイシステム5は、建物Bの防災センタや中央管理室に設置される。
【0019】
図2は、このディスプレイシステム5の構成を示すブロック図である。同図に示すディスプレイシステム5は、制御部51、記憶部52、入力部53、表示部54及び通信部55を備える。
【0020】
このうち、制御部51は、CPU等のプロセッサである。記憶部52は、ROM、RAM、HDD等の記憶装置である。入力部53は、キーボード、マウス等の入力装置である。表示部54は、液晶ディスプレイ等の表示装置である。通信部55は、火災受信機2及びスマートフォン4と通信を行うための通信モジュールである。
【0021】
上記の記憶部52は、画像データ群521、残留者数テーブル522、カメラ位置テーブル523、地図データ群524及び隊員データ525を記憶する。
【0022】
画像データ群521は、IPカメラ3により撮影された静止画を表す画像データの集合である。
【0023】
残留者数テーブル522は、火災発生時に建物B内に残留している人の人数を記録するためのテーブルである。図3は、この残留者数テーブル522の一例を示す図である。同図に示す残留者数テーブル522には、IPカメラ3のアドレスに対応付けて、残留者数と避難困難者数が格納される。
【0024】
カメラ位置テーブル523は、IPカメラ3の識別情報であるアドレスと、その設置場所が対応付けられているテーブルである。
【0025】
地図データ群524は、建物Bの各階の平面図を表す画像データの集合である。
【0026】
隊員データ525は、自衛消防隊員のIDと対応付けて、当該隊員の役割とメールアドレスとが対応付けられているテーブルである。
【0027】
上記の記憶部52は、また、避難支援プログラムを記憶する。制御部51がこの避難支援プログラムを実行すると、残留者数特定部511、地図画面生成部512、詳細画面生成部513、カメラ制御部514及びメール通知部515という機能が実現される。
【0028】
残留者数特定部511は、建物Bを構成する複数のエリアの各々について、当該エリアを撮影したカメラ画像に基づいて、残留者の人数を特定する。また、避難困難者の人数についても特定する。ここで避難困難者とは、残留者のうち、転倒して床に横たわっている者のことである。残留者数特定部511は、各エリアについて残留者数と避難困難者数を特定するために、後述する残留者数特定処理を実行する。
【0029】
地図画面生成部512は、建物Bの地図画面(図6参照)を生成して、表示部54に表示させる。この地図画面では、建物Bの複数のエリアの各々に対して、当該エリアについて特定された、残留者の人数を示す情報と避難困難者の有無を示す情報とが対応付けられている。ここで、避難困難者の有無を示す情報は色で表現される。地図画面生成部512は、この地図画面を生成するために、後述する地図画面生成処理を実行する。
【0030】
詳細画面生成部513は、上記の地図画面において、建物Bを構成する複数のエリアのうちのいずれかが利用者により選択されると、選択されたエリアを撮影したカメラ画像と通知ボタンを含む詳細画面(図8参照)を表示部54に表示させる。詳細画面生成部513は、この詳細画面を生成するために、後述する詳細画面生成処理を実行する。
【0031】
カメラ制御部514は、利用者により入力された操作に応じて、IPカメラ3の向き及び/又は画角を制御する。
【0032】
メール通知部515は、上記の通知ボタンが利用者により選択されると、上記の選択されたエリアに関するメールをスマートフォン4に送信する。具体的には、上記の選択されたエリアに存在する残留者の避難を支援するよう要請するメールをスマートフォン4に送信する。このメール通知部515により送信されるメールには、残留者の人数を示す情報又は避難困難者の有無を示す情報が含まれる。また、このメールには、選択されたエリアを撮影したカメラ画像が含まれる。メール通知部515は、このメールを生成するために、後述するメール通知処理を実行する。
【0033】
1-2.動作
火災監視システムの動作について説明する。具体的には、残留者数特定処理、地図画面生成処理、詳細画面生成処理及びメール通知処理について説明する。
【0034】
1-2-1.残留者数特定処理
図4は、残留者数特定処理を示すフロー図である。同図に示す残留者数特定処理は、ディスプレイシステム5により実行される。ディスプレイシステム5は、火災受信機2から火災情報を受信すると、本処理を開始する。
【0035】
ディスプレイシステム5の残留者数特定部511は、まず、各IPカメラ3に対して撮影要求を送信する。この撮影要求を受信したIPカメラ3は、その監視領域を撮影し、撮影した静止画を表す画像データをディスプレイシステム5に送信する。この画像データには、属性情報として、そのIPカメラ3のアドレスと、撮影日時情報が含まれる。残留者数特定部511は、各IPカメラ3から送信された画像データを取得すると、記憶部52に記憶させる(ステップSa1)。画像データを記憶部52に記憶させると、各画像データに対して周知の画像認識技術を適用して、当該画像に写っている人の数(言い換えると、残留者数)を特定する(ステップSa2)。残留者数を特定すると、当該画像データを生成したIPカメラ3のアドレスと対応付けて、残留者数テーブル522に格納する。また、残留者数特定部511は、各画像データに対して避難困難者識別モデルを適用して、当該画像に写っている避難困難者の数を特定する(ステップSa3)。ここで、避難困難者識別モデルは、床に横たわっている人を表す画像の特徴量を統計モデルに学習させることで生成された学習済みモデルである。
【0036】
残留者数特定部511は、避難困難者数を特定すると、当該画像データを生成したIPカメラ3のアドレスと対応付けて、残留者数テーブル522に格納する。
以上が、残留者数特定処理についての説明である。
【0037】
残留者数特定部511は、本処理を定期的に実行し、残留者数テーブル522を最新の状態に維持する。そして、利用者により本処理の停止指示が入力されると、本処理を終了する。
【0038】
1-2-2.地図画面生成処理
図5は、地図画面生成処理を示すフロー図である。同図に示す地図画面生成処理は、ディスプレイシステム5により実行される。ディスプレイシステム5は、利用者により地図画面の表示指示が入力されると、本処理を開始する。また、ディスプレイシステム5は、後述する縦断面図M2において別の階が表示対象として選択されたときも、本処理を実行する。
【0039】
ディスプレイシステム5の地図画面生成部512は、まず、カメラ位置テーブル523を参照して、選択階に設置されているIPカメラ3を特定する(ステップSb1)。なお、地図画面を最初に表示する際の選択階は火災階となる。地図画面生成部512は、IPカメラ3を特定すると、残留者数テーブル522を参照して、特定した各IPカメラ3に対応する残留者数と避難困難者数を特定する(ステップSb2)。残留者数等を特定すると、特定した残留者数等に基づいて、各IPカメラ3に対応する残留者数の表示色を特定する(ステップSb3)。具体的には、避難困難者数が「1」以上の場合には、表示色を黄色とし、避難困難者数が「0」であり且つ残留者数が「3」以上の場合には、表示色を赤色とし、避難困難者数が「0」であり且つ残留者数が「3」未満の場合には、表示色を白色とする。以上説明したステップSb1~Sb3により、選択階に設置された各IPカメラ3について、対応する残留者数とその表示色が特定される。
【0040】
次に、地図画面生成部512は、階ごとの残留者数とその表示色を特定する。具体的には、まず、カメラ位置テーブル523を参照して、この処理の対象階に設置されているIPカメラ3を特定する(ステップSb4)。IPカメラ3を特定すると、残留者数テーブル522を参照して、特定した各IPカメラ3に対応する残留者数を特定する(ステップSb5)。残留者数を特定すると、特定した残留者数を合計して、処理対象階全体の残留者数を特定する(ステップSb6)。処理対象階全体の残留者数を特定すると、次に、残留者数テーブル522を参照して、ステップSb4で特定した各IPカメラ3に対応する避難困難者数を特定する(ステップSb7)。避難困難者数を特定すると、特定した避難困難者数を合計して、処理対象階全体の避難困難者数を特定する(ステップSb8)。処理対象階全体の避難困難者数を特定すると、次に、ステップSb6で特定した残留者数とステップSb8で特定した避難困難者数に基づいて、その残留者数の表示色を特定する(ステップSb9)。具体的には、避難困難者数が「1」以上の場合には、表示色を黄色とし、避難困難者数が「0」であり且つ残留者数が「3」以上の場合には、表示色を赤色とし、避難困難者数が「0」であり且つ残留者数が「3」未満の場合には、表示色を白色とする。地図画面生成部512は、すべての階についてステップSb4~Sb9を実行すると(ステップSb10のNO)、ステップSb11に進む。以上述べたSb4~Sb10により、階ごとの残留者数とその表示色が特定される。
【0041】
ステップSb11において地図画面生成部512は、選択階について特定した残留者数及び表示色と、階ごとに特定した残留者数及び表示色に基づいて、地図画面を生成する。そして、生成した地図画面を表示部54に表示させる(ステップSb12)。図6は、この地図画面の一例を示す図である。同図に示す地図画面SR1は、平面図領域AR1と断面図領域AR2を含む。
【0042】
平面図領域AR1には、選択階の平面図MP1が示されている。この平面図MP1には、火元を示す火元シンボルSB1と、IPカメラ3を示すカメラシンボルSB2が配置されている。このうち、カメラシンボルSB2は、選択可能なボタンとなっている。また、このカメラシンボルSB2の近傍には、当該シンボルが表すIPカメラ3に対応する残留者数が丸数字CN1で示されている。この丸数字CN1の丸は、当該残留者数について特定された表示色で描画される。例えば、特定された表示色が黄色の場合には、黄色で描画される。この丸数字CN1の数字を見ることで、利用者は、そのIPカメラ3近傍の残留者数を知ることができる。また、この丸数字CN1の丸の色を見ることで、避難困難者の有無と残留者の多寡を知ることができる。すなわち、避難の優先度を知ることができる。
【0043】
一方、断面図領域AR2には、建物Bの縦断面図MP2が示されている。この縦断面図MP2の各階は、選択可能なボタンとなっている。また、各階のうち火災階は、網掛けで描画されている。また、この縦断面図MP2の各階には、当該階の残留者数を示す丸数字CN2が対応付けられている。この丸数字CN2の丸は、当該残留者数について特定された表示色で描画される。例えば、特定された表示色が赤色の場合には、赤色で描画される。この丸数字CN2の数字を見ることで、利用者は、各階の残留者数を知ることができる。また、この丸数字CN2の丸の色を見ることで、各階の避難困難者の有無と残留者の多寡を知ることができる。すなわち、避難の優先度を知ることができる。
以上が、地図画面生成処理についての説明である。
【0044】
地図画面生成部512は、ステップSb2~Sb12を定期的に実行し、地図画面を最新の状態に維持する。そして、利用者により地図画面の非表示が指示されると、本処理を終了する。
【0045】
1-2-3.詳細画面生成処理
図7は、詳細画面生成処理を示すフロー図である。同図に示す詳細画面生成処理は、ディスプレイシステム5により実行される。ディスプレイシステム5は、表示された地図画面においてカメラシンボルが利用者による選択されると、本処理を開始する。
【0046】
ディスプレイシステム5の詳細画面生成部513は、利用者により選択されたカメラシンボルが表すIPカメラ3を特定し、画像データ群521の中から、特定したIPカメラ3により生成された最新の画像データを抽出する(ステップSc1)。画像データを抽出すると、抽出した画像データに基づいて詳細画面を生成する(ステップSc2)。そして、生成した詳細画面を、地図画面に重ねて表示させる(ステップSc3)。図8は、この詳細画面の一例を示す図である。同図に示す詳細画面SR2は、地図画面SR1に重ねて配置されている。この詳細画面SR2は、カメラ画像PC1、カメラ制御ボタンBT1、通知ボタンBT2及び説明メッセージMS1を含む。このうち、カメラ画像PC1は、ステップSc1で抽出された画像データにより表されるカメラ画像である。このカメラ画像PC1を見ることで、利用者は、選択中のIPカメラ3付近の状況を画像で確認することができる。次に、カメラ制御ボタンBT1は、選択中のIPカメラ3の向きと画角を調整するためのボタンである。このカメラ制御ボタンBT1が利用者により操作されると、カメラ制御部514は、当該操作に応じた制御信号を選択中のIPカメラ3に送信し、当該IPカメラ3の向き及び/又は画角を制御する。次に、通知ボタンBT2は、選択中のIPカメラ3付近の状況を自衛消防隊員に通知するためのボタンである。
以上が、詳細画面生成処理についての説明である。
【0047】
詳細画面生成部513は、ステップSc1~Sc3を定期的に実行し、詳細画面を最新の状態に維持する。そして、利用者により詳細画面の非表示が指示されると、本処理を終了する。
【0048】
1-2-4.メール通知処理
図9は、メール通知処理を示すフロー図である。同図に示すメール通知処理は、ディスプレイシステム5により実行される。ディスプレイシステム5は、表示された詳細画面において通知ボタンが利用者による選択されると、本処理を開始する。
【0049】
ディスプレイシステム5のメール通知部515は、まず、カメラ位置テーブル523を参照して、選択中のIPカメラ3の設置場所を特定する(ステップSd1)。設置場所を特定すると、残留者数テーブル522を参照して、特定した各IPカメラ3に対応する残留者数と避難困難者数を特定する(ステップSd2)。残留者数等を特定すると、特定した残留者数等に基づいて、メッセージを作成する(ステップSd3)。具体的には、避難困難者数が「1」以上の場合には、避難困難者が存在する旨を通知し、且つその救助を要請するメッセージを作成する。一方、避難困難者数が「0」である場合には、残留者数を通知し、且つその残留者の避難誘導を要請するメッセージを作成する。メッセージを作成すると、画像データ群521の中から、選択中のIPカメラ3により生成された最新の画像データを抽出する(ステップSd4)。画像データを抽出すると、隊員データ525を参照して、ステップSd1で特定した設置場所を担当する避難誘導係と本部隊員のメールアドレスを特定する(ステップSd5)。メールアドレスを特定すると、ステップSd3~Sd5で取得した情報を基にメールを作成する(ステップSd6)。そして、作成したメールを宛先のスマートフォン4に送信する(ステップSd7)。図10は、このメールの一例を示す図である。同図に示すメールは、避難困難者が2階のエレベータ前に存在する旨を通知し、且つその救助を要請するメールである。このメールは、カメラ画像PC2を含む。このカメラ画像PC2は、ステップSd4で抽出された画像データにより表されるカメラ画像である。このカメラ画像PC2を見ることで、受信者は、選択中のIPカメラ3付近の状況を画像で確認することができる。
以上が、メール通知処理についての説明である。
【0050】
このメール通知処理によれば、利用者は、通知ボタンを選択するという簡単な操作で、選択中のIPカメラ3付近に存在する残留者の避難支援を自衛消防隊員に要請することができる。加えて、選択中のIPカメラ3付近の状況を画像で通知することができる。
【0051】
2.変形例
上記の実施形態は以下のように変形してもよい。以下に記載する変形例は互いに組み合わせてもよい。
【0052】
2-1.変形例1
残留者数特定部511は、上記の残留者数特定処理のステップSa3において、転倒して床に横たわっている人を避難困難者として特定している。これに代えて、車椅子利用者を避難困難者として特定するようにしてもよい。その場合、残留者数特定部511は、ステップSa1で取得した各画像データに対して車椅子利用者識別モデルを適用して、当該画像に写っている車椅子利用者の数を特定する。ここで、この車椅子利用者識別モデルは、車椅子利用者の画像の特徴量を統計モデルに学習させることで生成される学習済みモデルである。
【0053】
2-2.変形例2
残留者数特定部511は、カメラ画像に代えて、建物Bの入退室管理システムに記録されている入退室データに基づいて、建物Bの各エリアの残留者数を特定するようにしてもよい。ここで、入退室管理システムに記録される入退室データとは、建物Bの各エリアに、入退室の別と、入退室者のIDと、入退室時刻とを対応付けたデータである。加えて、残留者数特定部511は、入退室データに加えて、建物Bにおいて管理されている在館者の属性データに基づいて、建物Bの各エリアの避難困難者数を特定するようにしてもよい。ここで、建物Bの在館者の属性データとは、在館者の各IDに、少なくとも障害の有無を示す情報を対応付けたデータである。
【0054】
2-3.変形例3
残留者数特定部511は、上記の残留者数特定処理のステップSa1において、静止画に代えて、数秒から数十秒の動画を表す画像データを、各IPカメラ3から取得するようにしてもよい。その場合、上記の詳細画面とメールに含まれるカメラ画像は動画となる。
【0055】
2-4.変形例4
残留者数特定部511は、火災受信機2から火災情報を受信したときに加えて、地震発生時に上記の残留者数特定処理を開始してもよい。
【0056】
2-5.変形例5
上記の地図画面生成処理のステップSb3及びSb9において参照される閾値は、あくまで一例である。この閾値は、防火対象物の事情に応じて適宜変更されてよい。
【0057】
2-6.変形例6
上記の地図画面において、残留者数に加えて避難困難者数を示すようにしてもよい。図6を例に説明すると、丸数字CN1及びCN2の近傍に、避難困難者数を示す、括弧で囲まれた数字を配置するようにしてもよい。
【0058】
2-7.変形例7
上記の地図画面において、残留者数の多寡を示す情報と避難困難者の有無を示す情報は、色以外で表現されてもよい。例えば、アイコンで表現されてもよい。図6を例に説明すると、丸数字CN1及びCN2の近傍に、残留者数の多寡を示すアイコンと避難困難者の有無を示すアイコンを配置するようにしてもよい。
【0059】
2-8.変形例8
上記の詳細画面に含まれる通知ボタンを、静止画のカメラ画像を送信するための第1の通知ボタンと、動画のカメラ画像を送信するための第2の通知ボタンの2種類に分けてもよい。これらの通知ボタンのうち、第1の通知ボタンが利用者により選択された場合には、メール通知部515は、上記のメール通知処理を実行する。一方、第2の通知ボタンが利用者により選択された場合には、メール通知部515は、上記のメール通知処理のステップSd4において、静止画の画像データに代えて動画の画像データを取得する。具体的には、選択中のIPカメラ3に対して撮影要求を送信し、当該IPカメラ3から、数秒から数十秒の動画を表す画像データを取得する。このように通知ボタンを2種類に分けることで、利用者は、通知したい状況に応じて静止画と動画を使い分けることができる。
【0060】
2-9.変形例9
上記の詳細画面に含まれる通知ボタンは、必ずしも詳細画面に含まれる必要はない。例えば、上記の地図画面に含まれてもよい。図6を例に説明すると、カメラシンボルSB2ごとに対応付けて配置されてもよい。または、断面図領域AR2内に1つだけ配置し、その通知ボタンが利用者に選択されると、すべての階の各々について上記のメール通知処理が実行されるようにしてもよい。
【0061】
2-10.変形例10
スマートフォン4は、自衛消防隊員により携帯される端末の一例である。スマートフォン4に代えて、タブレット端末やウェアラブル端末が自衛消防隊員により携帯されてもよい。
【0062】
2-11.変形例11
メール通知部515は、上記のメール通知処理のステップSd7において、自衛消防隊員により携帯されるスマートフォン4に加えて又は代えて、公設消防隊員により携帯されるスマートフォンに対してメールを送信するようにしてもよい。
【0063】
2-12.変形例12
メール通知部515により送信されるメールには、残留者の人数を示す情報又は避難困難者の有無を示す情報が必ずしも含まれなくてもよい。すなわち、カメラ画像のみが含まれるようにしてもよい。または逆に、カメラ画像の方が含まれないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…火災感知器、2…火災受信機、3…IPカメラ、4…スマートフォン、5…ディスプレイシステム、51…制御部、52…記憶部、53…入力部、54…表示部、55…通信部、511…残留者数特定部、512…地図画面生成部、513…詳細画面生成部、514…カメラ制御部、515…メール通知部、521…画像データ群、522…残留者数テーブル、523…カメラ位置テーブル、524…地図データ群、525…隊員データ、AR1…平面図領域、AR2…断面図領域、B…建物、BT1…カメラ制御ボタン、BT2…通知ボタン、CN1、CN2…丸数字、MS1…説明メッセージ、PC1、PC2…カメラ画像、SB1…火元シンボル、SB2…カメラシンボル、SR1…地図画面、SR2…詳細画面
図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10