(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】中継装置
(51)【国際特許分類】
H04L 12/40 20060101AFI20240723BHJP
H04L 12/44 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H04L12/40 Z
H04L12/44 Z
(21)【出願番号】P 2020060504
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-06-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】徳永 智哉
(72)【発明者】
【氏名】岸上 友久
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩平
【合議体】
【審判長】篠塚 隆
【審判官】富澤 哲生
【審判官】野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-91062(JP,A)
【文献】特開2015-179888(JP,A)
【文献】特開2016-208120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/40,12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信バス(11)に接続され、前記第1通信バスに接続された少なくとも1つの第1通信装置(3,4)との間でデータ通信を行うように構成された第1通信部(21)と、
第2通信バス(12)に接続され、前記第2通信バスに接続された少なくとも1つの第2通信装置(5,6)との間で前記データ通信を行うように構成された第2通信部(22)と、
少なくとも1つの前記第1通信装置のそれぞれに設定されてスリープモードからウェイクアップモードに遷移させる通信装置を指定する少なくとも1つの第1ウェイクアップパターンの論理和である第1論理和を算出するように構成された第1論理和算出部(S30)と、
少なくとも1つの前記第2通信装置のそれぞれに設定されて前記スリープモードから前記ウェイクアップモードに遷移させる前記通信装置を指定する少なくとも1つの第2ウェイクアップパターンの論理和である第2論理和を算出するように構成された第2論理和算出部(S30)と、
前記第1論理和と前記第2論理和とが一致するように、前記第1通信装置の前記第1ウェイクアップパターン、および、前記第2通信装置の前記第2ウェイクアップパターンの少なくとも一方を変更するように構成されたパターン変更部(S50,S60)と
を備える中継装置(2)。
【請求項2】
請求項1に記載の中継装置であって、
前記パターン変更部は、少なくとも1つの前記第1通信装置の中から、消費電力が低い前記第1通信装置の前記第1ウェイクアップパターンを優先して変更し、少なくとも1つの前記第2通信装置の中から、消費電力が低い前記第2通信装置の前記第2ウェイクアップパターンを優先して変更する中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の通信バスを接続する中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の通信装置が通信バスを介して通信を行うように構成された通信システムにおいて、各通信装置が、他の通信装置をウェイクアップさせるためのウェイクアップ指示用フレームを送信することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信バスに接続された通信装置のうち通信が必要な通信装置を選択的にウェイクアップさせるセレクティブウェイクアップに対応した通信システムを構成する複数の通信装置は、ウェイクアップさせる通信装置を指定するウェイクアップフレームを互いに送受信することにより、ウェイクアップのタイミングを管理する。
【0005】
しかし、複数の通信バスが存在するネットワークに上述のセレクティブウェイクアップを導入した場合には、或る通信バスにウェイクアップ対象の通信装置が存在しないと、ウェイクアップフレームを送信しても、アクノリッジの返信がない。このため、ウェイクアップフレームを送信した通信装置はウェイクアップフレームを再送し続けることになる。その結果、不要なフレームの送信が繰り返されて通信バスの負荷が増大し、必要なフレームを送信できなくなってしまう。
【0006】
本開示は、通信バスの負荷の増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、第1通信部(21)と、第2通信部(22)と、第1論理和算出部(S30)と、第2論理和算出部(S30)と、パターン変更部(S50,S60)とを備える中継装置(2)である。
【0008】
第1通信部は、第1通信バス(11)に接続され、第1通信バスに接続された少なくとも1つの第1通信装置(3,4)との間でデータ通信を行うように構成される。
第2通信部は、第2通信バス(12)に接続され、第2通信バスに接続された少なくとも1つの第2通信装置(5,6)との間でデータ通信を行うように構成される。
【0009】
第1論理和算出部は、少なくとも1つの第1通信装置のそれぞれに設定されてスリープモードからウェイクアップモードに遷移させる通信装置を指定する少なくとも1つの第1ウェイクアップパターンの論理和である第1論理和を算出するように構成される。
【0010】
第2論理和算出部は、少なくとも1つの第2通信装置のそれぞれに設定されてスリープモードからウェイクアップモードに遷移させる通信装置を指定する少なくとも1つの第2ウェイクアップパターンの論理和である第2論理和を算出するように構成される。
【0011】
パターン変更部は、第1論理和と第2論理和とが一致するように、第1通信装置の第1ウェイクアップパターン、および、第2通信装置の第2ウェイクアップパターンの少なくとも一方を変更するように構成される。
【0012】
このように構成された本開示の中継装置は、第1通信装置から受信した第1ウェイクアップパターンを第2通信バスに送信した場合に、送信した第1ウェイクアップパターンでウェイクアップモードに遷移する第2通信装置が存在しないという事態の発生を抑制する。これにより、本開示の中継装置は、第2通信バスに第1ウェイクアップパターンを繰り返し送信し続けてしまう事態の発生を抑制し、第2通信バスの負荷の増大を抑制することができる。同様に、本開示の中継装置は、第1通信バスに第2ウェイクアップパターンを繰り返し送信し続けてしまう事態の発生を抑制し、第1通信バスの負荷の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車載通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】ウェイクアップ管理テーブルの構成を示す図である。
【
図4】パターン変更処理を示すフローチャートである。
【
図5】パターン算出処理を示すフローチャートである。
【
図6】更新後のウェイクアップ管理テーブルを示す図である。
【
図7】パターン更新処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態の車載通信システム1は、
図1に示すように、ゲートウェイ装置2と、ECU3,4,5,6,7,8とを備える。ECUは、Electronic Control Unitの略である。
【0015】
ゲートウェイ装置2とECU3,4とは、車両に搭載されている第1通信バス11を介して互いにデータ通信可能に接続されており、CAN通信プロトコルに従ってデータの送受信を行う。CANは、Controller Area Networkの略である。CANは登録商標である。
【0016】
ゲートウェイ装置2とECU5,6とは、車両に搭載されている第2通信バス12を介して互いにデータ通信可能に接続されており、CAN通信プロトコルに従ってデータの送受信を行う。
【0017】
ゲートウェイ装置2とECU7,8とは、車両に搭載されている第3通信バス13を介して互いにデータ通信可能に接続されており、CAN通信プロトコルに従ってデータの送受信を行う。
【0018】
ゲートウェイ装置2は、CAN通信部21,22,23と、制御部24とを備える。
CAN通信部21,22,23はそれぞれ、第1,2,3通信バス11,12,13に接続された通信装置との間で、CAN通信プロトコルに基づいて通信を行う。
【0019】
制御部24は、CPU、ROMおよびRAM等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPUが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROMが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPUが実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御部24を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0020】
制御部24は、後述のウェイクアップ管理テーブルMTを記憶する。
ECU3,4,5,6,7,8はそれぞれ、CAN通信部31,41,51,61,71,81と、制御部32,42,52,62,72,82とを備える。
【0021】
CAN通信部31,41は、第1通信バス11に接続された通信装置との間で、CAN通信プロトコルに基づいて通信を行う。
CAN通信部51,61は、第2通信バス12に接続された通信装置との間で、CAN通信プロトコルに基づいて通信を行う。
【0022】
CAN通信部71,81は、第3通信バス13に接続された通信装置との間で、CAN通信プロトコルに基づいて通信を行う。
制御部32,42,52,62,72,82は、CPU、ROMおよびRAM等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置であり、車両を制御するための各種処理を実行する。
【0023】
CANフレームは、
図2に示すように、スタートオブフレーム、アービトレーションフィールド、コントロールフィールド、データフィールド、CRCフィールド、ACKフィールドおよびエンドオブフレームにより構成されている。なお、アービトレーションフィールドは、11ビットまたは29ビットのアイデンティファイア(すなわち、ID)と1ビットのRTRビットで構成される。
【0024】
また、CAN通信で使用する11ビットのアイデンティファイアをCANIDという。CANIDは、CANフレームに含まれるデータの内容、CANフレームの送信元、およびCANフレームの送信先等に基づいて予め設定されている。
【0025】
データフィールドは、それぞれ8ビット(すなわち1バイト)の第1データ、第2データ、第3データ、第4データ、第5データ、第6データ、第7データおよび第8データで構成される。
【0026】
ゲートウェイ装置2およびECU3~8の動作モードとしては、ウェイクアップモードとスリープモードとがある。ウェイクアップモードは、予め割り当てられた全ての機能を実行可能な通常の動作モードである。スリープモードは、消費電力を抑えるために一部の機能を停止した動作モードである。ゲートウェイ装置2およびECU3~8は、スリープモードでは、第1~3通信バス11~13にCANフレームを送信しない。
【0027】
ゲートウェイ装置2およびECU3~8は、スリープモードになっている場合に、自身に定められたウェイクアップ要因が発生すると、ウェイクアップする。つまり、ゲートウェイ装置2およびECU3~8は、スリープモードからウェイクアップモードに遷移する。
【0028】
ECU3~8は、通信が必要なECUを選択的にウェイクアップさせるためセレクティブウェイクアップ機能を有する。セレクティブウェイクアップ機能は、「ISO 11898-6」で規格化されているCAN通信プロトコルにおいて規定されている機能である。
【0029】
具体的には、ECU3~8は、ウェイクアップさせるECUを指定するウェイクアップパターンをデータフィールドに格納したCANフレーム(以下、ウェイクアップフレーム)を送信する。
【0030】
ECU3~8は、他ECUからウェイクアップフレームを受信すると、ウェイクアップフレームに格納されているウェイクアップパターンが、自ECUに予め設定されているウェイクアップパターンに一致しているか否かを判断する。
【0031】
そしてECU3~8は、ウェイクアップパターンが一致していない場合には、スリープモードを継続する。一方、ECU3~8は、ウェイクアップパターンが一致している場合には、スリープモードからウェイクアップモードに遷移し、ウェイクアップフレームを受信した旨を通知するアクノリッジフレームを送信する。
【0032】
ゲートウェイ装置2は、或る通信バスからウェイクアップフレームを受信すると、他の通信バスにウェイクアップフレームを転送する。例えば、ゲートウェイ装置2は、第1通信バス11からウェイクアップフレームを受信すると、受信したウェイクアップフレームを第2通信バス12および第3通信バス13に転送する。そしてゲートウェイ装置2は、ウェイクアップフレームを転送すると、アクノリッジフレームを受信するまでウェイクアップフレームの送信を繰り返す。
【0033】
ウェイクアップ管理テーブルMTには、
図3に示すように、ECU3~8のそれぞれについて、接続されている通信バスと、ウェイクアップパターンとが設定されている。本実施形態では、ECU3のウェイクアップパターンは、「1000 0000」である。ECU4のウェイクアップパターンは、「0100 0000」である。ECU5のウェイクアップパターンは、「0100 0000」である。ECU6のウェイクアップパターンは、「0000 0000」である。ECU7のウェイクアップパターンは、「1000 0000」である。ECU8のウェイクアップパターンは、「0100 0000」である。
【0034】
次に、ゲートウェイ装置2の制御部24が実行するパターン変更処理の手順を説明する。パターン変更処理は、ゲートウェイ装置2がウェイクアップモードで動作しているときに繰り返し実行される処理である。
【0035】
パターン変更処理が実行されると、制御部24は、
図4に示すように、まずS10にて、第1通信バス11、第2通信バス12および第3通信バス13にウェイクアップ/消費電力フレーム要求を送信する。
【0036】
そして制御部24は、S20にて、ECU3~8の全てからウェイクアップ/消費電力フレームを受信したか否かを判断する。ウェイクアップ/消費電力フレームは、ECU3~8のそれぞれについて、ECU3~8のウェイクアップパターンと、ECU3~8の消費電力を示す消費電力情報とが格納されたCANフレームである。
【0037】
ここで、ECU3~8の全てからウェイクアップ/消費電力フレームを受信していない場合には、制御部24は、S20の処理を繰り返すことにより、ECU3~8の全てからウェイクアップ/消費電力フレームを受信するまで待機する。
【0038】
そして、ECU3~8の全てからウェイクアップ/消費電力フレームを受信すると、制御部24は、S30にて、第1通信バス11、第2通信バス12および第3通信バス13のそれぞれについてウェイクアップパターンの論理和を算出する。具体的には、制御部24は、ECU3のウェイクアップパターンと、ECU4のウェイクアップパターンとの論理和を算出する。同様に制御部24は、ECU5のウェイクアップパターンと、ECU6のウェイクアップパターンとの論理和を算出する。また制御部24は、ECU7のウェイクアップパターンと、ECU8のウェイクアップパターンとの論理和を算出する。なお、
図3に示すウェイクアップパターンでは、ECU3とECU4とのウェイクアップパターンの論理和は「1100 0000」である。ECU5とECU6とのウェイクアップパターンの論理和は「0100 0000」である。ECU7とECU8とのウェイクアップパターンの論理和は「1100 0000」である。
【0039】
次に制御部24は、S40にて、算出された全ての論理和が一致しているか否かを判断する。ここで、全ての論理和が一致している場合には、制御部24は、S10に移行する。一方、一致してない論理和が存在している場合には、制御部24は、S50にて、パターン算出処理を実行する。
【0040】
ここで、S50で実行されるパターン算出処理の手順を説明する。
パターン算出処理が実行されると、制御部24は、
図5に示すように、まずS110にて、制御部24のRAMに設けられたバス指示値iに1を格納する。
【0041】
そして制御部24は、S120にて、第i通信バスにおける不足値を算出する。具体的には、制御部24は、第i通信バスの論理和と、第i通信バス以外の論理和とを比較して、ビット毎に、第i通信バスにおいて「0」になっているのに対して、第i通信バス以外において「1」になっている場合に、そのビットにおける不足値を「1」とする。また制御部24は、ビット毎に、第i通信バスにおいて「0」になっているのに対して、第i通信バス以外において「0」になっている場合に、そのビットにおける不足値を「0」とする。また制御部24は、ビット毎に、第i通信バスにおいて「1」になっている場合には、そのビットにおける不足値を「0」とする。
【0042】
例えば、
図3に示すウェイクアップパターンでは、第1通信バス11の論理和は「1100 0000」であり、第2通信バス12の論理和は「0100 0000」であり、第3通信バス13の論理和は「1100 0000」である。このため、第1通信バス11における不足値は「0000 0000」であり、第2通信バス12における不足値は「1000 0000」であり、第3通信バス13における不足値は「0000 0000」である。
【0043】
さらに制御部24は、S130にて、第i通信バスの書換可能ECUを抽出する。なお、制御部24は、ECU3~8のそれぞれについて書換可能ECUであるか否かを示す書換可能設定情報を予め記憶している。本実施形態では、例えば、ECU3,5,7が書換可能ECUではなく、ECU4,6,8が書換可能ECUであるように書換可能設定情報が設定されている。
【0044】
そして制御部24は、S140にて、S130で抽出した書換可能ECUに、S120で算出した不足値を割り当てる。
例えば、第2通信バス12における不足値は「1000 0000」であり、第2通信バス12の書換可能ECUであるECU6のウェイクアップパターンは「0000 0000」である。この場合に、不足値における下位から8ビット目が「1」となっているため、ECU6のウェイクアップパターンにおける下位から8ビット目に「1」を割り当てる。これにより、ECU6のウェイクアップパターンは、「1000 0000」に変更される。
【0045】
また、第i通信バスにおける不足値が例えば「1010 0000」であり、第i通信バスの書換可能ECUが2つ存在するとする。この場合には、制御部24は、不足値における下位から8ビット目の「1」を一方の書換可能ECUのウェイクアップパターンに割り当て、不足値における下位から6ビット目の「1」を他方の書換可能ECUのウェイクアップパターンに割り当てる。
【0046】
またS140では、制御部24は、S20で受信したウェイクアップ/消費電力フレームに格納されている消費電力情報に基づいて、消費電力が低い書換可能ECUに対して優先的に不足値を割り当てる。例えば、第i通信バスにおける不足値が例えば「1000 0000」であり、第i通信バスの書換可能ECUが2つ存在するとする。この場合には、制御部24は、不足値における下位から8ビット目の「1」を、2つの書換可能ECUのうち消費電力が低い方の書換可能ECUのウェイクアップパターンに割り当てる。
【0047】
次に制御部24は、S150にて、バス指示値iに格納されている値が、予め設定されたバス総数n(本実施形態では3)以上であるか否かを判断する。ここで、バス指示値iに格納されている値がバス総数n未満である場合には、制御部24は、S160にて、バス指示値iに格納されている値に1を加算した加算値を、バス指示値iに格納し、S120に移行する。一方、バス指示値iに格納されている値がバス総数n以上である場合には、制御部24は、パターン算出処理を終了する。
【0048】
S50のパターン算出処理により、
図3に示すウェイクアップ管理テーブルMTは、
図6に示すウェイクアップ管理テーブルMTのように更新される。具体的には、ECU6のウェイクアップパターンが「0000 0000」から「1000 0000」に更新される。
【0049】
S50の処理が終了すると、制御部24は、
図4に示すように、S60にて、ウェイクアップパターンが更新されたECUに対して、更新されたウェイクアップパターンが格納された更新フレームを送信して、パターン変更処理を終了する。
【0050】
次に、ECU3,4,5,6,7,8の制御部32,42,52,62,72,82が実行するパターン更新処理の手順を説明する。パターン変更処理は、ECU3~8がウェイクアップモードで動作しているときに繰り返し実行される処理である。以下では、ECU3で代表して、パターン更新処理の手順を説明する。
【0051】
パターン更新処理が実行されると、制御部32は、
図7に示すように、まずS210にて、ゲートウェイ装置2からウェイクアップ/消費電力フレーム要求を受信したか否かを判断する。ここで、ウェイクアップ/消費電力フレーム要求を受信していない場合には、制御部32は、パターン更新処理を終了する。一方、ウェイクアップ/消費電力フレームム要求を受信した場合には、制御部32は、S220にて、ECU3のウェイクアップパターンと、ECU3の消費電力情報とを格納したウェイクアップ/消費電力フレームをゲートウェイ装置2へ送信する。なお、ウェイクアップパターンおよび消費電力情報は、制御部32に記憶されている。
【0052】
次に制御部32は、S230にて、ゲートウェイ装置2から更新フレームを受信したか否かを判断する。ここで、更新フレームを受信していない場合には、制御部32は、パターン更新処理を終了する。一方、更新フレームを受信した場合には、制御部32は、S240にて、制御部32に記憶されているウェイクアップパターンを、更新フレームに格納されているウェイクアップパターンに書き換えることにより、ウェイクアップパターンを更新し、パターン更新処理を終了する。
【0053】
このように構成されたゲートウェイ装置2は、CAN通信部21と、CAN通信部22と、制御部24とを備える。
CAN通信部21は、第1通信バス11に接続され、第1通信バス11に接続されたECU3,4との間でデータ通信を行う。
【0054】
CAN通信部22は、第2通信バス12に接続され、第2通信バス12に接続されたECU5,6との間でデータ通信を行う。
制御部24は、ECU3,4のそれぞれに設定されてスリープモードからウェイクアップモードに遷移させるECUを指定するウェイクアップパターン(以下、第1ウェイクアップパターン)の論理和(以下、第1論理和)を算出する。
【0055】
制御部24は、ECU5,6のそれぞれに設定されてスリープモードからウェイクアップモードに遷移させるECUを指定するウェイクアップパターン(以下、第2ウェイクアップパターン)の論理和(以下、第2論理和)を算出する。
【0056】
制御部24は、第1論理和と第2論理和とが一致するように、第1ウェイクアップパターンおよび第2ウェイクアップパターンの少なくとも一方を変更する。
このように構成されたゲートウェイ装置2は、ECU3,4から受信した第1ウェイクアップパターンを第2通信バス12に送信した場合に、送信した第1ウェイクアップパターンでウェイクアップモードに遷移するECUが存在しないという事態の発生を抑制する。これにより、ゲートウェイ装置2は、第2通信バス12に第1ウェイクアップパターンを繰り返し送信し続けてしまう事態の発生を抑制し、第2通信バス12の負荷の増大を抑制することができる。同様に、ゲートウェイ装置2は、第1通信バス11に第2ウェイクアップパターンを繰り返し送信し続けてしまう事態の発生を抑制し、第1通信バス11の負荷の増大を抑制することができる。
【0057】
本実施形態では、
図3のウェイクアップ管理テーブルMTに示すように、ECU3は、「1000 0000」のウェイクアップパターンが格納されたウェイクアップフレームを送信する。このウェイクアップフレームを受信したゲートウェイ装置2は、このウェイクアップフレームを第2通信バス12に送信する。そして、ECU5のウェイクアップパターンは「0100 0000」であり、ECU6のウェイクアップパターンは「0000 0000」であるため、ECU5,6は、ウェイクアップモードに遷移せず、アクノリッジフレームを送信しない。このため、ゲートウェイ装置2は、ウェイクアップフレームを繰り返し送信し続けてしまう。
【0058】
しかし、パターン変更処理が実行されることにより、
図6のウェイクアップ管理テーブルMTに示すように、ECU6のウェイクアップパターンは「1000 0000」に更新される。このため、「1000 0000」のウェイクアップパターンがECU3から送信されてゲートウェイ装置2を介して第2通信バス12に送信された場合に、ECU6は、ウェイクアップモードに遷移して、アクノリッジフレームを送信する。これにより、ゲートウェイ装置2は、ウェイクアップフレームの送信を停止する。
【0059】
またゲートウェイ装置2は、ECU3,4の中から、消費電力が低いECUの第1ウェイクアップパターンを優先して変更し、ECU5,6の中から、消費電力が低いECUの第2ウェイクアップパターンを優先して変更する。これにより、ゲートウェイ装置2は、ウェイクアップモードに遷移しないECUをウェイクアップモードに遷移させるようにすることに起因する消費電力の増大を必要最小限に抑制することができる。
【0060】
以上説明した実施形態において、ゲートウェイ装置2は中継装置に相当し、CAN通信部21は第1通信部に相当し、CAN通信部22は第2通信部に相当し、ECU3,4は第1通信装置に相当し、ECU5,6は第2通信装置に相当する。
【0061】
また、S30は第1論理和算出部および第2論理和算出部としての処理に相当し、S50,S60はパターン変更部としての処理に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0062】
[変形例1]
例えば上記実施形態では、ゲートウェイ装置2に3つの通信バスが接続されている形態を示したが、2つの通信バスが接続されるようにしてもよいし、4つ以上の通信バスが接続されるようにしてもよい。
【0063】
[変形例2]
上記実施形態では、第1,2,3通信バス11,12,13のそれぞれに2つのECUが接続されている形態を示したが、1つのECUが接続されるようにしてもよいし、3つ以上のECUが接続されるようにしてもよい。
【0064】
本開示に記載の制御部24およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部24およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部24およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御部24に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0065】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0066】
上述したゲートウェイ装置2の他、当該ゲートウェイ装置2を構成要素とするシステム、当該ゲートウェイ装置2としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、パターン変更方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0067】
2…ゲートウェイ装置、3,4,5,6…ECU、11…第1通信バス、12…第2通信バス、21,22…CAN通信部