(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】燃焼装置用消音器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20240723BHJP
F23J 13/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F24H9/00 N
F23J13/00 B
(21)【出願番号】P 2020061557
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 清成
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-196413(JP,A)
【文献】特開2014-177931(JP,A)
【文献】特開2016-042007(JP,A)
【文献】実開昭59-136548(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 13/00
F24H 9/00
F01N 1/00-1/24,13/00-13/20
F02C 7/24
F01D 25/00,25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出
し、熱交換する給湯器に使用される燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、
前記壁面のうち、対向する前記壁面に複数の突起が形成されている、燃焼装置用消音器。
【請求項2】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出
し、熱交換する給湯器に使用される燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、
前記壁面の少なくとも一部に複数の突起が形成され、
前記複数の突起は、前記ガス流入口から前記ガス排出口に近づくに従って小さく形成される、燃焼装置用消音器。
【請求項3】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出
し、熱交換する給湯器に使用される燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、
前記壁面の少なくとも一部に複数の突起が形成され、
前記壁面における単位面積あたりに形成されている前記複数の突起の数は、前記ガス流入口から前記ガス排出口に近づくに従って減少する、燃焼装置用消音器。
【請求項4】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出
し、熱交換する給湯器に使用される燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、
前記壁面の少なくとも一部に複数の突起が形成され、
前記ガス流路は少なくとも一対の対向する壁面により構成され、前記壁面が対向する方向から見た平面視で、一方の壁面における前記複数の突起は、他方の壁面における前記複数の突起から互いにずれた位置に形成される、燃焼装置用消音器。
【請求項5】
前記箱体の内部に、前記ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は、前記箱体の内壁面と前記仕切り板の表面により構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項6】
前記箱体と前記仕切り板とは無機繊維を含む材料からなり、
前記箱体の一部と前記仕切り板とは一体成形されている、請求項5に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項7】
前記箱体は、底部材と、前記底部材に積層される枠部材と、を有し、
前記仕切り板と前記枠部材とが一体成形されている、請求項6に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項8】
前記箱体は、前記底部材に、前記仕切り板と一体成形された前記枠部材が複数積層されてなり、
隣り合う2枚の前記仕切り板の開口部が、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられることにより、蛇行した前記ガス流路が構成される、請求項7に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項9】
前記箱体は、更に、無機繊維を含む材料からなる蓋部材を有し、
前記底部材、前記枠部材、前記蓋部材がこの順に積層されており、
前記底部材、前記枠部材及び前記蓋部材のいずれか1つに前記ガス流入口が設けられ、前記底部材、前記枠部材及び前記蓋部材のいずれか1つに前記ガス排出口が設けられている、請求項7又は8に記載の燃焼装置用消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭及び工場等で使用されている給湯機等には、燃焼ガスを燃焼させて熱交換する燃焼装置が使用されているものがある。従来より、燃焼ガスの燃焼時、及び燃焼排ガスの排出時に発生する騒音を低減するために、燃焼装置に取り付けられる種々の消音器が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、燃焼ガスの導入口及び排出口を有する箱体と、その内部に配置され開口部を有する複数の仕切り板とを有し、導入口から排出口までの屈曲通路が構成された消音器が提案されている。
なお、上記特許文献1に記載された消音器は、箱体及び仕切り板が吸音材で形成されており、吸音材の表面には、鋼板又は多孔鋼板がライニングされている。
また、上記特許文献2に記載された消音器は、外壁を構成するケース及び屈曲通路を構成する筒状の排気通路部材が、部分的に複数の貫通孔を有する金属板から形成され、ケースと金属板との間に、例えば、ロックウールに熱硬化性樹脂がバインダとして加えられて板状に成形された吸音材が充填されている。
【0004】
このように構成された従来の消音器においては、屈曲通路内において、鋼板(金属板)に形成された複数の孔から燃焼ガスを吸音材に流入させることができ、吸音材により、騒音の消音効果を得ることができる。
【0005】
一方、特許文献3には、円筒形状の消音筒部と、消音筒部の一方の開口端に設けられた円板状の流入側板と、他方の開口端に設けられた円板状の流出側板と、を有し、ロックウールにより形成された消音器が提案されている。なお、流出側板の中央部には排気流出口及が形成されており、流入側板の中央部には中央開口が形成され、中央開口の周囲には複数の側部開口が形成されている。
このように構成された特許文献3に記載の消音器は、排気流入側に流入側板が設けられているため、燃焼音の音波の一部はこの流入側板で反射される。また、反射されなかった音波は、中央開口及び側部開口を通って内部に伝播され、広い周波数に渡って音波の共鳴が起こり、消音される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-159739号公報
【文献】特開2016-42007号公報
【文献】特開2004-308988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載された消音器は、吸音材と鋼板とを用いて製造されており、構造が複雑であるため、組立作業が煩雑となる。
また、特許文献3に記載された消音器は、3つの部品から構成されており、極めて簡単な構造であるものの、燃焼ガスの通路長が短いため、十分な消音効果を得ることができない。
【0008】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、簡単な構造であって、消音効果を向上させることができる燃焼装置用消音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、本発明に係る下記(1)の燃焼装置用消音器により達成される。
【0010】
(1) 燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、
前記壁面の少なくとも一部に複数の突起が形成されている、燃焼装置用消音器。
【0011】
また、本発明の燃焼装置用消音器は、下記(2)~(9)のいずれかであることが好ましい。
【0012】
(2) 前記複数の突起は、前記ガス流入口から前記ガス排出口に近づくに従って小さく形成される、(1)に記載の燃焼装置用消音器。
【0013】
(3) 前記壁面における単位面積あたりに形成されている前記複数の突起の数は、前記ガス流入口から前記ガス排出口に近づくに従って減少する、(1)又は(2)に記載の燃焼装置用消音器。
【0014】
(4) 前記ガス流路は少なくとも一対の対向する壁面により構成され、前記壁面が対向する方向から見た平面視で、一方の壁面における前記複数の突起は、他方の壁面における前記複数の突起から互いにずれた位置に形成される、(1)~(3)のいずれか1つに記載の燃焼装置用消音器。
【0015】
(5) 前記箱体の内部に、前記ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は、前記箱体の内壁面と前記仕切り板の表面により構成される、(1)~(4)のいずれか1つに記載の燃焼装置用消音器。
【0016】
(6) 前記箱体と前記仕切り板とは無機繊維を含む材料からなり、
前記箱体の一部と前記仕切り板とは一体成形されている、(5)に記載の燃焼装置用消音器。
【0017】
(7) 前記箱体は、底部材と、前記底部材に積層される枠部材と、を有し、
前記仕切り板と前記枠部材とが一体成形されている、(6)に記載の燃焼装置用消音器。
【0018】
(8) 前記箱体は、前記底部材に、前記仕切り板と一体成形された前記枠部材が複数積層されてなり、
隣り合う2枚の前記仕切り板の開口部が、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられることにより、蛇行した前記ガス流路が構成される、(7)に記載の燃焼装置用消音器。
【0019】
(9) 前記箱体は、更に、無機繊維を含む材料からなる蓋部材を有し、
前記底部材、前記枠部材、前記蓋部材がこの順に積層されており、
前記底部材、前記枠部材及び前記蓋部材のいずれか1つに前記ガス流入口が設けられ、前記底部材、前記枠部材及び前記蓋部材のいずれか1つに前記ガス排出口が設けられている、(7)又は(8)に記載の燃焼装置用消音器。
【発明の効果】
【0020】
本発明の燃焼装置用消音器によれば、ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、壁面の少なくとも一部に複数の突起が形成されているため、ガス流路の断面積が変化するとともに、燃焼ガスが突起に衝突しつつ蛇行しながらガス流路を通過し、ガス流路の全壁面で効果的に燃焼音を吸収することができる。従って、簡単な構造で、優れた消音効果を得ることができる。
【0021】
また、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、複数の突起が、ガス流入口からガス排出口に近づくに従って小さく形成されるか、又は壁面における単位面積あたりに形成されている複数の突起の数が、ガス流入口からガス排出口に近づくに従って減少するように形成されているため、より効果的に燃焼ガスの燃焼音を低減することができる。
【0022】
更に、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、箱体の内部に、ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、箱体の一部と仕切り板とが一体成形されているため、組み立てるだけで所望のガス流路を構成することができ、簡単な構造で、優れた消音効果を有する消音器を容易に製造することができる。
【0023】
また、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、底部材と、仕切り板と一体成形された枠部材とを積層するだけでガス流路が構成され、枠部材の数は自由に設計できるため、必要に応じて種々のガス流路長を有する消音器を容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第4実施形態に係る燃焼装置用消音器の一部を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第5実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ガス流路を構成する壁面を、無機繊維を含む材料からなるものとし、この壁面の少なくとも一部に複数の突起を形成することにより、簡単な構造であっても消音効果を向上させることができることを見出した。
【0026】
本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器について、以下に詳細に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図であり、
図2は、
図1に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。
燃焼装置用消音器は、例えば金属製の筐体(図示せず)に消音機能を有する成形体が格納されたものであり、例えば、燃焼装置の側面に形成された燃焼ガスの出口に連通するように取り付けられる。
【0028】
成形体61は、燃焼装置から排出される燃焼ガスが導入されるガス流入口71と、燃焼ガスを外部に排出するガス排出口72と、ガス流入口71とガス排出口72とを連通するガス流路70aと、が設けられた箱体60を有する。
なお、ガス流入口71とガス排出口72とは、箱体60における互いに対向する面に設けられている。
【0029】
以下、
図2を参照して、第1実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体の構造を更に詳細に説明する。
直方体形状の成形体61は、底部材62及び蓋部材69がこの順に積層されたものである。なお、これらの部材は、例えばロックウール等の無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を、所望の形状に形成した金型に吸引ろ過させて乾燥させることにより、それぞれ一体成形されたものである。なお、無機繊維としては、アルミナファイバー、RCF(Refractory Ceramic Fiber)、AES(Alkaline.Earth Silicate)ファイバー、バサルトファイバー、シリカファイバー、ジルコニアファイバー、グラスウール、ロックウールなどから選ばれる少なくとも一つが選択可能であり、また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0030】
底部材62は、矩形の底部62aと、底部62aの四辺から立ち上がる形状の壁部62bとを有する器状であり、壁部62bの一部に切り欠きが設けられてガス排出口72が形成されている。また、底部材62の底部62aにおけるガス流路70a側には、複数の突起73が形成されている。
【0031】
蓋部材69は底部材62と同一の形状で上下左右を逆に配置したものであり、上底部69aとその四辺に設けられた壁部69bとを有する器状である。また、底部材62と同様に、壁部69bの一部に切り欠きが設けられて、ガス流入口71が形成されている。更に、蓋部材69の上底部69aにおけるガス流路70a側にも、複数の突起74が形成されている。
【0032】
なお、底部材62の壁部62bは蓋部材69の壁部69bと同一の外寸であり、底部材62に蓋部材69を積層したときに、ガス流入口71及びガス排出口72を除く領域で、両者が確実に重なるように設計されている。また、本実施形態では、突起73と突起74とは、突起73及び突起74が形成されている壁面が対向する方向から見た平面視で、同じ位置となるように形成されており、突起73及び突起74の高さは、ガス流路70aの高さ、即ち、突起が形成されている対向する壁面間の距離に対して約25%となるように設計されている。以下、本願明細書において、突起が形成されている壁面が対向する方向から見た平面視、又は底部材及び蓋部材等が積層される積層方向から見た平面視を、単に平面視ということがある。
【0033】
そして、上述の通り、底部材62及び蓋部材69がこの順に積層されて成形体61をなし、この成形体61が金属製の筐体(図示せず)に格納されることにより、消音器が構成される。なお、この筐体は、成形体61を格納したときに、成形体61のガス流入口71及びガス排出口72に対応する位置に開口が設けられており、その他の部分については完全に成形体61を覆う形状である。
【0034】
このように構成された消音器においては、ガス流入口71から燃焼ガス8が導入されると、蓋部材69と底部材62との間のガス流路70aを燃焼ガス8が流通し、ガス排出口72から排出される。
【0035】
本実施形態においては、ガス流路70aを構成する壁面が、吸音性の高い無機繊維を含む材料からなるものであるため、燃焼ガス8がガス流路70aを通過する際に、全壁面において燃焼音が吸収される。従って、金属製の壁を有する消音器と比較して、消音効果を著しく向上させることができる。
また、本実施形態では、ガス流路70aを構成する壁面に、複数の突起73及び突起74が形成されており、燃焼ガス8は、その流れる位置によって、ガス流路70aの断面積が変化する。即ち、ガス流路70aを構成する壁面において、突起73及び突起74が対向して形成されている領域では、燃焼ガス8の一部は突起73及び突起74に衝突した後、狭い流路を通過し、更に、突起73及び突起74が形成されていない広い流路を通過するため、流路の断面積が変化する。その結果、吸収される音の共振周波数が変化するため、広い周波数領域において消音効果を向上させることができる。
【0036】
一方、燃焼ガス8の一部は突起73及び突起74に衝突した後、平面視で不規則に蛇行しながらガス流路70aを通過する。その結果、燃焼ガスはより多くの突起に衝突することになり、ガス流路70aを構成する壁面が平面である消音器と比較して、優れた消音効果を得ることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、突起73及び突起74の高さを、ガス流路70aの高さに対して約25%となるように設計したが、本発明はこれに限定されない。例えば、消音効果及び燃焼ガスの流通性を考慮して、突起73及び突起74の高さは、突起73及び突起74が形成されているガス流路70aの高さに対し、15~40%であることが好ましく、25~33%であることがより好ましい。
また、本実施形態では、突起73及び突起74の形状は半球状としたが、本発明はこれに限定されず、平面視で楕円となるような形状、平面視で一方向に長く伸びる形状又は平面視で正方形若しくは長方形となるような形状等、種々の形状の突起を採用することができる。
【0038】
更に、突起はガス流路70aを構成する壁面の一部に形成されていればよいが、
図1及び
図2に示すように、対向する壁面(底部材62の底部62aと蓋部材69の上底部69a)に突起73及び突起74が形成されていることが好ましい。このように、対向する壁面に突起が形成されていると、上述の効果を得られるだけでなく、対向する壁面における突起の相対位置を自由に設計することができる。例えば、上記第1実施形態に示すように、突起73と突起74とが平面視で同じ位置に形成されていると、音の反射が生じやすくなるため好ましい。
【0039】
更に、本実施形態では、底部材62と同一の形状で蓋部材69を作製することができるため、複数の形状の金型を準備する必要がなく、極めて簡単な構造で、優れた消音機能を有する消音器を容易に製造することができる。
【0040】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。なお、第2実施形態並びに以降の第3及び第4実施形態において、上記第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0041】
第2実施形態は第1実施形態の変形例であり、第1実施形態と同様に、成形体81は、底部材62及び蓋部材69がこの順に積層されたものである。また、底部材62の底部62aにおけるガス流路70a側に突起73aが形成されているとともに、蓋部材69の上底部69aにおけるガス流路70a側に突起74aが形成されている。但し、第2実施形態では、突起の位置が第1実施形態と異なり、平面視で突起73aは突起74aからずれた位置に配置されるように設計されている。
【0042】
このように構成された第2実施形態に係る消音器においても、ガス流入口71から燃焼ガス8が導入されると、蓋部材69と底部材62との間のガス流路70aを燃焼ガス8が流通し、ガス排出口72から排出される。このとき、ガス流路70aを構成する壁面が、吸音性の高い無機繊維とバインダとを有する材料からなるものであるため、消音効果を著しく向上させることができる。
また、本実施形態では、突起73aと突起74aとが互いにずれた位置に形成されているため、燃焼ガス8は小刻みに蛇行しながらガス流路70aの内部を通過する。このような現象は平面視においても発生する。このように、燃焼ガス8は、ガス流入口71から導入された後、ガス排出口72から排出されるまでの間、垂直方向及び水平方向に不規則に蛇行しながらガス流路70aを通過するため、消音効果をより一層向上させることができる。
【0043】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。
【0044】
第3実施形態は第2実施形態の変形例であり、第2実施形態と同様に、成形体82は、底部材62及び蓋部材69がこの順に積層されたものである。また、底部材62の底部62aにおけるガス流路70a側に突起73b、73cが形成されているとともに、蓋部材69の上底部69aにおけるガス流路70a側に突起74b、74cが形成されている。但し、第3実施形態では、突起の大きさが第2実施形態と異なり、ガス排出口72に近い位置に形成されている突起73c及び突起74cは、ガス流入口71に近い位置に形成されている突起73b及び突起74bよりも、小さくなるように形成されている。
【0045】
このように構成された第3実施形態に係る消音器においても、ガス流路70aを構成する壁面が、吸音性の高い無機繊維とバインダとを有する材料からなるものであるため、消音効果を著しく向上させることができる。
また、本実施形態では、ガス流入口71に近い突起73b及び突起74bが大きく形成されているため、消音器に導入されたばかりで大きい騒音を発生する燃焼ガス8が大きい突起73b及び突起74bに衝突し、効果的に消音させることができる。また、ガス排出口72の近辺では、燃焼ガス8が発生する騒音は小さくなっているため、小さい突起73c及び突起74cにより消音効果を維持しつつ、燃焼ガス8の流通性を向上させることができる。
【0046】
なお、
図4に示す第3実施形態においては、ガス流入口71からガス排出口72に近づくに従って、大きい突起73b及び突起74bは徐々に小さくなり、小さい突起73c及び突起74cとなるように突起の大きさが設計されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、2種類の大きさの突起を形成する場合には、ガス流路70aの上流側では大きい突起73b及び突起74bを形成し、下流側では小さい突起73c及び突起74cを形成すればよく、徐々に大きさを変更する必要はない。
【0047】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係る燃焼装置用消音器の一部を模式的に示す平面図である。なお、
図5に示す第4実施形態は、第1実施形態の変形例であり、突起を配置する数に特徴を有するため、
図5では、
図1に示す底部材62のみを平面視で表す。
【0048】
第4実施形態における成形体の底部材62にも、第1実施形態と同様に、複数の突起73dが形成されている。但し、第4実施形態では、ガス流路の上流側と下流側とで突起73dの数の密度が異なる。具体的には、単位面積あたりに形成されている突起73dの数は、ガス流路の上流側(ガス流入口側)から下流側(ガス排出口72側)に近づくに従って減少するように設計されている。
また、不図示の蓋部材においても同様に、ガス流路の上流側(ガス流入口側)から下流側(ガス排出口側)に近づくに従って、単位面積あたりの突起の数が減少するように設計されている。
そして、底部材62と蓋部材がこの順に積層され、筐体に格納されることにより、消音器が構成される。
【0049】
このように構成された第4実施形態に係る消音器においても、ガス流路を構成する壁面が、吸音性の高い無機繊維とバインダとを有する材料からなるものであるため、消音効果を著しく向上させることができる。
また、本実施形態では、ガス流入口に近い領域では突起73dの数が多いため、消音器に導入されたばかりで大きい騒音を発生する燃焼ガスが多数の突起73dに衝突しやすく、効果的に消音させることができる。また、ガス排出口の近辺では、燃焼ガスが発生する騒音は小さくなっているため、単位面積あたりの数が少ない突起73dにより消音効果を維持しつつ、燃焼ガスの流通性を向上させることができる。
【0050】
なお、
図5に示す第4実施形態においては、ガス流入口からガス排出口72に近づくに従って、単位面積当たりの突起73dの数は徐々に減少するように形成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、ガス流路の上流側と下流側の2領域に分割した場合に、上流側では突起73dの数を多くし、下流側では突起73dの数を少なくすればよく、徐々に突起の数の密度を変更する必要はない。
【0051】
上記第1~第4実施形態では、底部62aが水平となるように底部材62を配置し、その上に蓋部材69を配置した構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、成形体61、成形体81又は成形体82を、
図1、
図3及び
図4に示す位置から時計回り又は反時計回りに90°回転させた状態で使用することができる。即ち、不図示の燃焼装置から排出される燃焼ガスの出口が、燃焼装置の側面に形成されている場合だけでなく、上記燃焼ガスの出口が燃焼装置の上方又は下方に形成されている場合であっても、本発明に係る燃焼装置用消音器を取り付けることができる。
【0052】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図であり、
図7は、
図6に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。
【0053】
成形体1は、燃焼装置から排出される燃焼ガスが導入されるガス流入口11と、燃焼ガスを外部に排出するガス排出口12と、ガス流入口11とガス排出口12とを連通するガス流路20a、20b、20c、20d及び20eと、が設けられた組立構造の箱体10を有する。
また、箱体10の内部には、開口部13が形成された仕切り板6と、開口部14が形成された仕切り板7とが、所望の間隔を開けて略平行に配置されている。なお、仕切り板6の開口部13は、箱体10におけるガス流入口11側の壁に接近して形成されており、仕切り板7の開口部14は、箱体10におけるガス排出口12側の壁に接近して形成されている。
【0054】
以下、
図7を参照して、第2実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体の構造を更に詳細に説明する。
直方体形状の成形体1は、底部材2、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5がこの順に積層されたものである。なお、これらの全ての部材は、例えば上述の無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を、所望の形状に形成した金型に吸引ろ過させて乾燥させることにより、それぞれ一体成形されたものである。
【0055】
底部材2は、矩形の底部2aと底部2aの四辺から立ち上がる形状の壁部2bとを有する器状であり、壁部2bの一部に切り欠きが設けられてガス排出口12が形成されている。また、底部材2の底部2aにおけるガス流路20e側には、複数の突起9aが形成されている。
【0056】
第1の枠部材3は、底面となる矩形の仕切り板6と、仕切り板6の四辺から立ち上がる形状の壁部3bとを有する器状である。但し、仕切り板6は、ガス排出口12が形成されている面と対向する面に近接する位置に開口部13が形成されている。また、仕切り板6におけるガス流路20e側には、複数の突起9bが形成されており、仕切り板6におけるガス流路20c側には、複数の突起9cが形成されている。
なお、第1の枠部材3の底面は、底部材2の壁部2bにおける周縁端面2cと同一の外寸であり、底部材2に第1の枠部材3を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
【0057】
第2の枠部材4は、底面となる矩形の仕切り板7と、仕切り板7の四辺から立ち上がる形状の壁部4bとを有する器状である。但し、壁部4bには、ガス排出口12が形成されている面に対向する面の一部が切り欠かれてガス流入口11が形成されている。また、仕切り板7には、ガス流入口11が形成されている面と対向する面に近接する位置に開口部14が形成されている。また、仕切り板7におけるガス流路20c側には、複数の突起9dが形成されており、仕切り板7におけるガス流路20a側には、複数の突起9eが形成されている。
なお、第2の枠部材4の底面は、第1の枠部材3の壁部3bにおける周縁端面3cと同一の外寸であり、第1の枠部材3に第2の枠部材4を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
【0058】
蓋部材5は矩形の板状であり、ガス流路20a側には、複数の突起9fが形成されている。また、蓋部材5は、第2の枠部材4の壁部4bにおける周縁端面4cと同一の外寸であり、第2の枠部材4に蓋部材5を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
即ち、ガス流路20aを構成する壁面の一部に、複数の突起9e及び突起9fが形成され、ガス流路20cを構成する壁面の一部に、複数の突起9c及び突起9dが形成され、ガス流路20eを構成する壁面の一部に、複数の突起9a及び突起9bが形成されている。
【0059】
そして、上述の通り、底部材2、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5が、この順に積層されて成形体1をなし、この成形体1が金属製の筐体(図示せず)に格納されることにより、消音器が構成される。なお、この筐体は、成形体1を格納したときに、成形体1のガス流入口11及びガス排出口12に対応する位置に開口が設けられており、その他の部分については完全に成形体1を覆う形状である。
【0060】
このように構成された消音器においては、ガス流入口11から燃焼ガス8が導入されると、蓋部材5と仕切り板7との間のガス流路20aを燃焼ガス8が流通し、ガス流路20bとなる開口部14を通過することにより、燃焼ガス8は屈曲して進行方向を転換し、仕切り板7と仕切り板6との間のガス流路20cを流通する。その後、燃焼ガス8はガス流路20dとなる開口部13を通過することにより屈曲して、更に進行方向を転換し、仕切り板6と底部材2の底部2aとの間のガス流路20eを流通し、ガス排出口12から排出される。
【0061】
本実施形態においても、ガス流路20a~20eを構成する全ての部材が、無機繊維を含む材料からなるものであるため、燃焼ガス8がガス流路20a~20eを通過する際に、全壁面において燃焼音が吸収される。また、仕切り板6の開口部13と、仕切り板7の開口部14とが、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられているとともに、ガス流入口11から離れた位置に開口部14が配置され、ガス排出口12から離れた位置に開口部13が配置されているため、第1~第4実施形態と比較して、蛇行した長いガス流路が構成される。
更に、本実施形態においては、ガス流路20a、ガス流路20c及びガス流路20eを構成する壁面の一部に複数の突起9a~9fが形成されているため、燃焼ガス8の一部は狭い流路及び広い流路を繰り返し通過し、その間に、平面視においても不規則に蛇行しながらガス流路20a~20eを通過する。従って、第1~第4実施形態と比較して、より一層優れた消音効果を得ることができる。
【0062】
また、成形体1は、底部材2、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5の4つの部材からなり、いずれも簡単な構造であって、重ね合わせて(積層して)筐体に格納するだけで、組み立てることができる。従って、組立の工程数が減少し、製造工程を著しく簡略化することができる。
【0063】
なお、上記成形体1を構成する各部材は、第1~第4実施形態と同様にして、例えば、無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を混合し、所望の形状に形成した金型を用いることにより、容易に作成することができる。
【0064】
また、第1~第4実施形態では、枠部材及び仕切り板がない消音器を示し、第5実施形態では、2つの枠部材(枠部材3及び枠部材4)を使用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、枠部材は1つであっても3以上であっても、本発明の消音器を構成することができる。
例えば、1つの枠部材で構成する場合には、
図6及び
図7に示す底部材2、第2の枠部材4及び蓋部材5を使用し、底部材2に第2の枠部材4を積層する際に、ガス流入口11がガス排出口12と同一の方向となるように配置する。これにより、ガス流入口11から導入された燃焼ガスは、蓋部材5と仕切り板7との間のガス流路を流通し、開口部14を通過することにより屈曲して進行方向を転換した後、仕切り板7と底部材2の底部2aとの間のガス流路を流通して、ガス排出口12から排出される。
【0065】
また、3つの枠部材で構成する場合には、
図2に示す底部材2、第1の枠部材3、第1の枠部材3と同一の形状の枠部材(図示せず)、第2の枠部材4及び蓋部材5を使用し、ガス流入口11と、隣り合う枠部材の開口部と、ガス排出口12とが、積層方向から見た平面視で互い違いになるように配置する。これにより、より長い蛇行したガス流路が構成され、消音効果をより一層向上させることができる。
更に同様にして、第1の枠部材3と同一の形状の枠部材を増加させることにより、ガス流路を簡単に延長することができる。
いずれの場合であっても、ガス流路を構成する壁面の少なくとも一部に凸部が形成されているため、優れた消音効果を得ることができる。
【0066】
なお、3つ以上の枠部材で構成する場合に、上述の通り、第1の枠部材3と同一の形状の複数の枠部材を使用することにより、ガス流路を延長することができるため、他の形状の枠部材を製造するための金型を準備する必要がない。従って、必要に応じて大きさが異なる筐体を準備するだけで、性能が異なる種々の大きさの消音器を容易に製造することができる。
【0067】
また、第2実施形態では、底部材2、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5の4種類の形状の金型を用いて、それぞれの部材を作製したが、例えば、ガス流入口11、開口部及びガス排出口12が形成されていない器状部材を作製し、ガス流入口、開口部及びガス排出口等を必要に応じた箇所で切除することにより、底部材及び枠部材を製造することができる。これにより、極めて少ない金型で消音器を製造することができる。
【0068】
更に、上記第2実施形態では、最上段に突起9fを有する板状の蓋部材5を積層したが、本発明は必ずしもこの蓋部材5を積層する必要はない。例えば、成形体1は金属製の筐体に格納されるが、上部が解放した金属製の容器に底部材及び枠部材を格納し、蓋部材5を積層せずに金属製の蓋で閉塞することにより、上記第5実施形態と同様の機能を得ることができる。
【0069】
上記第5実施形態においては、底部2aが水平となるように底部材2を配置し、その上に、仕切り板6及び仕切り板7が水平となるように枠部材3及び枠部材4を積層し、更に蓋部材5を積層した構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、成形体1を、時計回り又は反時計回りに90°回転させた状態で使用することができるため、燃焼ガスの出口が燃焼装置の上方又は下方に形成されている場合であっても、本発明に係る燃焼装置用消音器を取り付けることができる。
【0070】
また、上記第1実施形態と同様に、第2~第5実施形態において、突起73a、突起74a、突起73b、突起74b、突起73c、突起74c、突起73d及び突起9a~突起9fの形状は半球状に限定されず、平面視で楕円となるような形状、平面視で一方向に長く伸びる形状又は平面視で正方形若しくは長方形となるような形状等、種々の形状の突起を採用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1,61,81,82 成形体
2,62 底部材
3,4 枠部材
5,69 蓋部材
6,7 仕切り板
8 燃焼ガス
9a,9b,9c,9d,9e,9f、73,73a,73b,73c,73d,74,74a,74b,74c 突起
10,60 箱体
11,71 ガス流入口
12,72 ガス排出口
13,14 開口部
20a,20b,20c,20d,20e,70a ガス流路