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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】コーヒー飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
A23F5/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020096680
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021185869
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [ウェブサイト] 令和2年2月3日掲載、https://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2020/pick_0203.html 令和2年3月2日掲載、https://www.asahiinryo.co.jp/entertainment/campaign/wonda/200302-200310/ 令和2年3月17日~4月30日掲載、https://quatre-re.jp/内のサービス「aircatalog」(https://aircatalog.jp/)のログインページから、メールアドレス、パスワードを入力してみられる登録者限定サイト [会見] 令和2年2月3日会見、大手町ファーストスクエアカンファレンス Room A [配布] 令和2年2月3日配布、大手町ファーストスクエアカンファレンス Room A 令和2年3月17日~5月30日配布、https://quatre-re.jp/内のサービス「aircatalog」(https://aircatalog.jp/)のログインページから、メールアドレス、パスワードを入力してみられる登録者限定サイトから配布の申し込みがあった者から指定された場所 [販売] 令和2年3月10日販売、日本国内販売網
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山本 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】西郷 亮子
(72)【発明者】
【氏名】石井 陽子
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180298(JP,A)
【文献】特開2018-102263(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168928(WO,A1)
【文献】特開2006-020526(JP,A)
【文献】特開2018-050535(JP,A)
【文献】特開2012-187059(JP,A)
【文献】特開2021-119763(JP,A)
【文献】Food Chemistry,2019年08月14日,Vol.302, No.125370,pp.1-16
【文献】Food Sci. Technol. Res.,2006年,12 (2),pp.71-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアイアコールの含有量Aが400~2000ppbであり、
4-エチルグアイアコールの含有量Bが100~500ppbであり、
リナロールの含有量Cが1~30ppbであり、
3-メチル-1-ブタノールの含有量Dが50~750ppbであり、
エチルアセテートの含有量Eが40~750ppbであり、
且つ、以下(i)及び(ii)を満たす、コーヒー飲料;
(i)(A/4)+B=300~1000;
(ii)C+{(D+E)/30}=10~80。
【請求項2】
さらに、イソα酸を含み、該イソα酸の含有量が1~20ppmである、請求項1に記載のコーヒー飲料。
【請求項3】
前記イソα酸がホップ由来である、請求項2に記載のコーヒー飲料。
【請求項4】
前記飲料のブリックス値が0.3°以上10°以下である、請求項1乃至3いずれか一項に記載のコーヒー飲料。
【請求項5】
容器詰めされた、請求項1乃至4いずれか一項に記載のコーヒー飲料。
【請求項6】
グアイアコールの含有量Aが400~2000ppbであり、
4-エチルグアイアコールの含有量Bが100~500ppbであり、
リナロールの含有量Cが1~30ppbであり、
3-メチル-1-ブタノールの含有量Dが50~750ppbであり、
エチルアセテートの含有量Eが40~750ppbであり、
且つ、以下(iii)を満たす、コーヒー飲料;
(iii){(A/4)+B}/[C+{(D+E)/30}]=4~38。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器詰めコーヒー飲料は、簡便に飲用できる嗜好性飲料として広く親しまれている。容器詰めコーヒー飲料は、消費者の嗜好や流行等を背景に様々な風味や香味を有するものが開発され、コーヒー飲料の香気に寄与する成分を添加する試み等が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、グアイアコール、4-エチルグアイアコール、リナロール、3-メチル-1-ブタノール等の多数の香気成分が例示され、かかる例示の中から選択された香気成分を含むコーヒーフレーバーを、コーヒー抽出液に用いたことが開示されている。また、特許文献2には、コーヒーの特徴が強化されたバラエティーに富んだコーヒーエキスに関し、コーヒー豆に対して、ホップ等の材料を混合して焙煎する工程を経て作製されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-20526号公報
【文献】特開2012-187059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、新たな香味を呈するコーヒー飲料として、苦みの強さと爽やかさの両立に着目したところ、特許文献1~2に開示されるような従来技術においてはかかる両立を実現する点で改善の余地があることが判明した。そして、苦みの強さと爽やかさの両立を実現するため鋭意検討を行う中で、コーヒー抽出液に添加される成分として、グアイアコール、4-エチルグアイアコール、リナロール、3-メチル-1-ブタノール、およびエチルアセテートを組み合わせることに初めて着目し、これらの含有量を高度に制御することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
グアイアコールの含有量Aが400~2000ppbであり、
4-エチルグアイアコールの含有量Bが100~500ppbであり、
リナロールの含有量Cが1~30ppbであり、
3-メチル-1-ブタノールの含有量Dが50~750ppbであり、
エチルアセテートの含有量Eが40~750ppbであり、
且つ、以下(i)及び(ii)を満たす、コーヒー飲料;
(i)(A/4)+B=300~1000;
(ii)C+{(D+E)/30}=10~80
が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、
グアイアコールの含有量Aが400~2000ppbであり、
4-エチルグアイアコールの含有量Bが100~500ppbであり、
リナロールの含有量Cが1~30ppbであり、
3-メチル-1-ブタノールの含有量Dが50~750ppbであり、
エチルアセテートの含有量Eが40~750ppbであり、
且つ、以下(iii)を満たす、コーヒー飲料;
(iii){(A/4)+B}/[C+{(D+E)/30}]=4~38
が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、苦みの強さと爽やかさを両立できるコーヒー飲料が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0010】
<容器詰めコーヒー飲料>
本実施形態の容器詰めコーヒー飲料は、
グアイアコールの含有量Aが400~2000ppbであり、
4-エチルグアイアコールの含有量Bが100~500ppbであり、
リナロールの含有量Cが1~30ppbであり、
3-メチル-1-ブタノールの含有量Dが50~750ppbであり、
エチルアセテートの含有量Eが40~750ppbであり、
且つ、以下(i)及び(ii)を満たす。
(i)(A/4)+B=300~1000
(ii)C+{(D+E)/30}=10~80
【0011】
また、本実施形態の容器詰めコーヒー飲料は、
グアイアコールの含有量Aが400~2000ppbであり、
4-エチルグアイアコールの含有量Bが100~500ppbであり、
リナロールの含有量Cが1~30ppbであり、
3-メチル-1-ブタノールの含有量Dが50~750ppbであり、
エチルアセテートの含有量Eが40~750ppbであり、
且つ、以下(iii)を満たす。
(iii){(A/4)+B}/[C+{(D+E)/30}]=4~38
【0012】
本実施形態のコーヒー飲料は、上記のようにグアイアコール(a)、4-エチルグアイアコール(b)、リナロール(c)、3-メチル-1-ブタノール(d)、およびエチルアセテート(e)を組み合わせ、これらの濃度バランスを制御することによって、コーヒー飲料における苦みの強さと爽やかさのバランスを高度に両立できる。かかる理由のメカニズムは明らかではないが、次のように推測される。一般に、グアイアコール(a)、4-エチルグアイアコール(b)は、深煎りコーヒー様の香気成分として知られる一方で、リナロール(c)、3-メチル-1-ブタノール(d)、およびエチルアセテート(e)はフルーツ様の爽やかな香気成分として知られている。そこで、コーヒー飲料が、香気成分(a)~(e)をバランスよく含むことで、コーヒーそのものが有する風味・呈味と相まって、コーヒーに特徴的な苦みを強くしつつも、爽やかさも得られると推測される。
【0013】
本件明細書において、「苦み」とは、コーヒー特有の舌に残るような苦みを意図し、「爽やかさ」とは、フルーツのような心地よいさっぱり感を意図する。
また、香気成分(a)~(e)の含有量は、GC-MS法により測定することができる。
【0014】
以下、各香気成分について説明する。
【0015】
[グアイアコール(a)]
グアイアコール(a)は、2-メトキシフェノールともいい、バニリンなどを人工合成する際に用いられるとともに、深煎りコーヒー様の香気成分として知られる香気成分である。本実施形態のコーヒー飲料中のグアイアコール(a)の含有量Aは、400~2000ppbであり、450~1850ppbが好ましい。
【0016】
[4-エチルグアイアコール(b)]
4-エチルグアイアコール(b)は、2-メトキシ-4-エチルフェノールとも呼ばれ、深煎りコーヒー様の香気成分として知られる香気成分である。本実施形態のコーヒー飲料中の4-エチルグアイアコール(b)の含有量Bは、100~500ppbであり、110~480ppbが好ましい。
【0017】
[リナロール(c)]
リナロール(c)は、多くの精油に含まれ、代表的にはスズラン、ライラック等のフローラルな香りを呈するものとして知られている。
本実施形態のコーヒー飲料中のリナロール(c)の含有量Cは、1~30ppbであり、2~28ppbが好ましい。
【0018】
[3-メチル-1-ブタノール(d)]
3-メチル-1-ブタノール(d)は、イソアミルアルコール、またはイソペンチルアルコールとも呼ばれ、リンゴ、バナナ、メロン、及びピーチ等の果実や、ウイスキー、及びワイン等の酒類等に含まれる香気成分である。本実施形態のコーヒー飲料中の3-メチル-1-ブタノール(d)の含有量Dは、50~750ppbであり、55~730ppbが好ましい。
【0019】
[エチルアセテート(e)]
エチルアセテート(e)は、酢酸エチルとも呼ばれ、パイナップルなどのフルーティな香気成分として知られる。本実施形態のコーヒー飲料中のエチルアセテート(e)の含有量Eは、40~750ppbであり、45~740ppbが好ましい。
【0020】
本実施形態のコーヒー飲料は、さらに以下の条件を満たす。
(i)(A/4)+B=300~1000
(ii)C+{(D+E)/30}=10~80
また、(i)(A/4)+Bは、好ましくは350~950であり、より好ましくは400~900である。(ii)C+{(D+E)/30}は、好ましくは12~75である。
本実施形態のコーヒー飲料は、香気成分(a)~(e)を上記数値範囲内に制御することによって、制御されていないものよりも苦みの強さと爽やかさのバランスを向上できる。
【0021】
また、本実施形態のコーヒー飲料は、さらに以下の条件を満たす。
(iii){(A/4)+B}/[C+{(D+E)/30}]=4~38
すなわち、本実施形態のコーヒー飲料は、香気成分(a)~(e)のバランスを所定の範囲内とすることによって、香気成分(a)~(e)のバランスが所定の範囲外のものよりも、苦みの強さと爽やかさのバランスを向上できる。
【0022】
本実施形態において、上記の香気成分(a)~(e)の含有量および条件(i)~(iii)は、公知の方法で得られたコーヒー抽出液に、本発明の効果が損なわれない範囲において、別途香気成分を添加する等して、調整される。
【0023】
[コーヒー飲料]
本実施形態のコーヒー飲料は、コーヒー豆から抽出または溶出した成分(コーヒー分)を原料とする飲料及びこれにその他の成分が加えられている飲料であり、飲んだときにコーヒー風味が感じられる飲料をいい、1977年に制定された「コーヒー含有飲料等の表示に関する公正競争規約」にも記載されているように、コーヒー豆を原料とした飲料及びこれに糖類、乳製品、乳化された食用油脂その他の可食物を加え容器に密封した飲料のことを指す。また、本実施形態においては、コーヒー豆使用量が生豆換算で1重量%未満の飲料であっても、飲んだときにコーヒー風味が感じられる飲料については、コーヒー飲料として扱うこととする。
【0024】
上記のコーヒー豆としては、特に限定されず、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などの栽培樹種が挙げられる。また、コーヒー豆の品種としては、特に限定されず、モカ、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、およびキリマンジャロなどが挙げられる。コーヒー豆は1種でもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
コーヒー豆の焙煎温度や焙煎環境等の条件は、特に限定されず、通常の方法を採用できる。また、焙煎コーヒー豆を用いた抽出方法としては、特に限定されないが、例えば、ドリップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、および連続式などが挙げられる。
【0025】
ここで、本実施形態のコーヒー飲料にコーヒー分を含有させる方法としては、特に限定されず当業者が適宜設定することができる。例えば、粉砕した焙煎豆を水や温水を用いて抽出した溶液(コーヒー抽出液)や、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥させたインスタントコーヒー等を用いて、これらのうち1種または2種以上を飲料中に添加するといった方法等を挙げることができる。
粉砕した焙煎豆としては、粗挽き、中挽き、細挽き等が挙げられ、特に限定されない。
一方、「飲用乳の表示に関する公正競争規約」によれば、2017年現在、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものについては、乳飲料として扱われることになる。
本実施形態に係るコーヒー飲料については、コーヒー豆を原料とした飲料であるため、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものであったとしても、コーヒー飲料として扱うこととする。
【0026】
コーヒー飲料中のコーヒー可溶性固形分の含有量の下限値は、本格的なコーヒー感、飲みやすさ、おいしさを得るため、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.9質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。
一方、コーヒー飲料中のコーヒー可溶性固形分の含有量の上限値は、香り、酸味、苦み、後味のバランスを良好にしつつ、口あたりを良好にするため、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.3質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以下である。
【0027】
コーヒー飲料は、乳を含まないブラックコーヒー飲料(有糖と無糖を問わない。)であってもよく、必要に応じて、1種または2種以上の乳分を含有した乳入りコーヒー飲料であってもよい。
【0028】
[イソα酸]
本実施形態のコーヒー飲料は、さらにイソα酸を含むことが好ましい。これにより、苦みの強さおよび爽やかさを高度に両立しつつも、さらに、コーヒー風味を強くすることができる。
イソα酸は、α酸の異性化体である。一般に、ホップに多く含まれるα酸が加熱により異性化することで生じる苦味成分として知られている。
本実施形態のコーヒー飲料においては、イソα酸は、イソフムロン、イソアドフムロン及びイソコフムロンとする。
【0029】
本実施形態のコーヒー飲料中のイソα酸の含有量は、好ましくは1~20ppmであり、より好ましくは2~18ppmであり、さらに好ましくは3~16ppmである。
イソα酸の含有量を、上記下限値以上とすることで、苦みの強さおよび爽やかさを高度に両立しつつも、コーヒー風味を強くすることができる。また、コクを強くし、苦味のキレの良さを向上しやすできる。一方、イソα酸の含有量を、上記上限値以下とすることで、苦みの強さ、爽やかさおよびコーヒー風味の強さの良好なバランスが得られる。
【0030】
イソα酸としては、ホップ由来であることが好ましく、イソα苦味酸であることがより好ましい。イソα苦味酸とは、ホップの花から得られた、イソフムロン類を主成分とするものをいう。クワ科ホップ(Humulus lupulus LINNE)の雌花より、水、二酸化炭素又は有機溶剤で抽出し、熱処理して得られたものである。例えば、イソα苦味酸としては、イソα酸を10~50質量%含むものが好ましい。
イソα酸の含有量は、ホップ抽出物の含有量を適宜調整することで、調整してもよい。
【0031】
イソα酸の含有量の測定方法としては、例えば、Analytica EBC(European Brewery Convention)に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法が挙げられる。
【0032】
[カフェイン]
本実施形態のコーヒー飲料は、カフェインを含む。カフェインを含むことにより、嗜好性が良好となり、良好な苦みと後味のバランスを向上しやすくなる。
コーヒー飲料全体に対するカフェインの含有量は、0.1mg/100ml以上、150mg/100ml以下が好ましく、10mg/100ml以上、120mg/100ml以下であることがより好ましく、35mg/100ml以上、100mg/100ml以下であることがさらに好ましい。
当該カフェインの含有量を、上記下限値以上とすることにより、苦みの強さおよび爽やかさを両立しつつ、コーヒー感を向上しやすくなる。一方、当該カフェインの含有量を、上記上限値以下とすることにより、苦みの強さ、爽やかさおよびコーヒー感のバランスを良好に保持できる。
【0033】
[ブリックス値]
本実施形態のコーヒー飲料のブリックス値(Bx)は、飲みやすさを向上しつつ、香り、酸味、苦み、後味のバランスを良好にする観点から、好ましくは、0.3°以上10°以下であり、より好ましくは、0.5°以上7°以下であり、さらに好ましくは、1.0°以上4°以下である。
ブリックス値は、コーヒー飲料全量に対する可溶性固形分の合計含有量を示す。ブリックス値は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
ブリックス値は、例えば、後述の甘味料の量、その他の各種成分の量などにより調整することができる。
【0034】
[その他の成分]
また、さらに、本実施形態のコーヒー飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の香気成分、乳、甘味料、酸味料、乳化剤、pH調整剤(重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、果汁、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、および増粘安定剤等を含んでもよい。
【0035】
上記の乳としては、生乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、部分脱脂乳、練乳、粉乳、および発酵乳等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
乳入りコーヒー飲料である場合、乳の含有量は特に限定されないが、良好な乳風味を得つつ、コーヒー感の向上効果と、良好な苦みと後味を得る観点から、乳固形分(乳脂肪分と無脂乳固形分とを合わせたものを意味する。)量を0.5~3.5質量%とすることが好ましく、乳固形分量を0.8~2.5質量%とすることがより好ましく、乳固形分量を1.0~2.0質量%とすることがさらに好ましい。
【0036】
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0037】
[容器]
本実施形態のコーヒー飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。コーヒー飲料の風味を保持する観点から、スチール缶であることが好ましく、軽量で再栓可能な観点からは、蓋つきのペットボトル、スチール缶およびアルミ缶が好ましい。
コーヒー飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000gが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500gがより好ましい。
【0038】
容器詰めされたコーヒー飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例
【0040】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
<香気成分(a)~(e)の分析方法>
コーヒー飲料中の各香気成分の濃度(ppb)は、GC/MS測定に供し、以下に示す条件で測定を行った。
・GC:Agilent Technologies社製 7890A。
・MS:Agilent Technologies社製5975C。
・カラム:AgilentTechologies社製 DB-WAX UI 30m×0.25mm、膜厚0.25μm。
・圧力一定モード:122kPa(1.1ml/min)。注入法:スプリットレス。キャリアガス:He。
・注入口温度:240℃。トランスファーライン:240 ℃。
・オーブン温度:40度(5min)→5度/min→240℃(0min)。
・MS条件:スキャンモード
・定量イオン:guaiacol m/z 124、
4-ethylguaiacol m/z 137、
linalol m/z 71、
3-methyl-1-Butanol m/z 55、
ethyl acetate m/z 61、
Cyclohexanol(内標)m/z 82
【0042】
<イソα酸の分析方法>
コーヒー飲料中のイソα酸の含有量は、以下のようにして測定した。
測定試料を次の方法で調製した。超純水にて適宜希釈した試料10mlをガラス製遠沈管にとり、メタノール10mlを加えて数回反転混合した後、遠心機で遠心(3000rpm、15分、室温)し、上清をPTFE製フィルター(Whatman SYRINGEFILTER13mm Disposable Filter Device PTFE、孔径0.45μm)で濾過後、分析試料とした。
〔装置構成〕
・検出器:SPD-M20A prominence(株式会社島津製作所)
・カラムオーブン:CTO-20AC prominence(株式会社島津製作所)
・ポンプ:LC-20AD prominence(株式会社島津製作所)
・オートサンプラー:SIL-20ACHT prominence(株式会社島津製作所)
・カラム:Zorbax Eclipse 5 XDB-C8 内径4.6mm×長さ250mm、粒子径5μm(Agilent Technologies)
〔分析条件〕
・サンプル注入量:50μL
・流量:1.0mL/min
・検出波長:270nm
・カラムオーブン設定温度:35℃
・溶離液A:メタノール
・溶離液B:1%クエン酸緩衝液(pH7.0)(10.9gのクエン酸一水和物を約950mlの超純水に溶解する。45%水酸化カリウム溶液でpHを7.0に調製し、超純水を加えて1000mlにする。溶液をフィルター(ADVAVTEC MIXED CELLULOSE ESTER A045A047A)で濾過する)、30(V/V)%アセトニトリル溶液
〔グラジエント条件〕
時間 溶離液A溶離液B
0.0分 15% 85%
5.0分 15% 85%
30.0分80% 20%
33.0分80% 20%
35.0分15% 85%
45.0分15% 85%
〔標準物質の調製〕
イソα酸標準品(DCHA-Iso、LaborVeritas)を30mg精秤し、100mlの透明なガラス製のメスフラスコに入れ、そこに約40mlの酸性メタノール(1Lのメタノールに0.5mlのリン酸(85%)を加える)を入れ、溶解し、20℃で酸性メタノールに定容し、光から保護しておく。これを、1%クエン酸緩衝液(pH7.0)、35(V/V)%アセトニトリル溶液で適宜希釈した。
〔イソα酸含有量の測定〕
I1(16.3分)、I2(17.1分)、I3(20.5分)、I4(21.1分)の面積値を合算し、標準物質の面積値を基準に含有量を求めた。
【0043】
<実施例および比較例>
コーヒー豆(ブラジル産、L値16)100gを95℃の熱水1000gで抽出してコーヒー抽出液を得た。得られたコーヒー抽出液に重曹0.12g/100mlを添加後、ホップ抽出物を添加していないコーヒー飲料、ホップ抽出物を3μl/100ml添加したコーヒー飲料、ホップ抽出物を9μl/100ml添加したコーヒー飲料をそれぞれ調製し、缶に充填してレトルト殺菌を行い、試作品を作製した(ブリックス値2.1)。なお、コーヒー固形分は2.0%になるように調整した。
得られた各試作品を開封し、表1~表4に示される各香気成分量(ppb)となるように各香気成分を添加し、コーヒー飲料を得た。なお、比較例1のコーヒー飲料には、香気成分を添加しなかった。
得られたコーヒー飲料を用いて、以下の官能評価を実施した。なお、官能評価は、香気成分添加後、速やかに行った。結果を表1~4に示す。
【0044】
・官能評価:コーヒー飲料(20℃)それぞれを、コーヒー専門パネル5名が試飲し、以下の評価基準に従い「苦味の強さ」、「爽やかさ」、「コーヒー風味の強さ」それぞれについて、7段階(1~7点)評価を実施し、その平均点を求めた。また、評価する際は、比較例1のコーヒー飲料を対照品(基準値4点)として評価を実施した。
【0045】
・評価基準
「苦味の強さ」、「コーヒー風味の強さ」
7点・・・とても強い
6点・・・強い
5点・・・やや強い
4点・・・どちらともいえない
3点・・・やや弱い
2点・・・弱い
1点・・・とても弱い
「爽やかさ」
7点・・・とても爽やかさ
6点・・・爽やかさ
5点・・・やや爽やかさ
4点・・・どちらともいえない
3点・・・やや爽やかでない
2点・・・爽やかでない
1点・・・とても爽やかでない
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】