(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】流体投与用バルブユニット、バルブユニットを有するバルブアセンブリおよびバルブユニットの閉鎖状態の確認方法
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20240723BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20240723BHJP
F16K 51/00 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
F16K37/00 M
F16K27/00 A
F16K51/00 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020102568
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】10 2019 116 161.4
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506194368
【氏名又は名称】ビュルケルト ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Buerkert Werke GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Christian-Buerkert-Strasse 13-17, D-74653 Ingelfingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ハーン
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・フィッシャー
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/093329(WO,A1)
【文献】特開2003-302366(JP,A)
【文献】特開2002-214219(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106546632(CN,A)
【文献】国際公開第2010/087383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16K 31/06-31/11
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01N 27/416
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を投与するためのバルブユニット(10)であって、
バルブシート(14)を含む流体ハウジング(12)と、
流体入口(18)から前記バルブシート(14)へ、および、前記バルブシート(14)から流体出口(20)へ延在する流路(16)と、
前記流路(16)内の流れを制御または規制し、可動に取り付けられたバルブ閉鎖体(24)と、
前記バルブシート(14)の上流側の前記流路(16)内に配置される第1電極(26)と、
前記バルブシート(14)の下流側の前記流路(16)内に配置される第2電極(28)と、を備え、
前記2つの電極(26、28)の互いに離れている距離は最大で3mmであり、および/または、前記バルブシートからのそれぞれの前記電極(26、28)の最大距離は最大で1.5mmであ
り、
前記第1電極(26)を形成し、前記流体入口(18)に配置される金属の流体接続(19)を有する、バルブユニット(10)。
【請求項2】
前記2つの電極(26、28)の間の距離が少なくとも0.3mmである、請求項1に記載のバルブユニット(10)。
【請求項3】
前記流体接続(19)は、前記流体ハウジング(12)内に突出し、前記バルブシート(14)の最大1.5mm上流側で終了する、請求項
1または2に記載のバルブユニット(10)。
【請求項4】
前記流体ハウジング(12)は、前記第2電極(28)を受ける凹部(32)を有する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のバルブユニット(10)。
【請求項5】
前記第1電極(26)および/または前記第2電極(28)は、インサートとして前記流体ハウジング(12)内にしっかり統合される、請求項1から
4のいずれか一項に記載のバルブユニット(10)。
【請求項6】
前記第1および/または前記第2電極(28)と接触し、前記電極(26、28)から前記バルブユニット(10)の外側に延在する接触要素(34)を有する、請求項1から
5のいずれか一項に記載のバルブユニット(10)。
【請求項7】
前記第2電極(28)は前記バルブシート(14)を包囲する、請求項1から
6のいずれか一項に記載のバルブユニット(10)。
【請求項8】
媒体に接触される前記流体ハウジング(12)の領域は、ゼロでない壁電
位を有する電気絶縁材料で形成される、請求項1から
7のいずれか一項に記載のバルブユニット(10)。
【請求項9】
媒体に接触される前記流体ハウジング(12)の領域は、ガラス繊維強化プラスチックで形成される、請求項1から
8のいずれか一項に記載のバルブユニット(10)。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載のバルブユニット(10)と、
前記第1電極(26)と前記第2電極(28)との間の電気回路(54)内に接続された電圧測定装置(52)とを有する、バルブアセンブリ(50)。
【請求項11】
500μS/cm未
満の電気伝導性を有する流体を投与するときにおいて、請求項1から
9のいずれか一項に記載のバルブユニット(10)の閉鎖状況を確認する方法であって、
前記バルブユニット(10)の前記2つの電極(26、28)の間の電圧を測定し、
測定された前記電圧に基づいて、前記バルブユニット(10)の漏れを求める、方法。
【請求項12】
流体を投与するためのバルブユニット(10)であって、
バルブシート(14)を含む流体ハウジング(12)と、
流体入口(18)から前記バルブシート(14)へ、および、前記バルブシート(14)から流体出口(20)へ延在する流路(16)と、
前記流路(16)内の流れを制御または規制し、可動に取り付けられたバルブ閉鎖体(24)と、
前記バルブシート(14)の上流側の前記流路(16)内に配置される第1電極(26)と、
前記バルブシート(14)の下流側の前記流路(16)内に配置される第2電極(28)と、を備え、
前記2つの電極(26、28)の互いに離れている距離は最大で3mmであり、および/または、前記バルブシートからのそれぞれの前記電極(26、28)の最大距離は最大で1.5mmであり、
前記流体ハウジング(12)は、前記第2電極(28)を受ける凹部(32)を有する、バルブユニット(10)。
【請求項13】
流体を投与するためのバルブユニット(10)であって、
バルブシート(14)を含む流体ハウジング(12)と、
流体入口(18)から前記バルブシート(14)へ、および、前記バルブシート(14)から流体出口(20)へ延在する流路(16)と、
前記流路(16)内の流れを制御または規制し、可動に取り付けられたバルブ閉鎖体(24)と、
前記バルブシート(14)の上流側の前記流路(16)内に配置される第1電極(26)と、
前記バルブシート(14)の下流側の前記流路(16)内に配置される第2電極(28)と、を備え、
前記2つの電極(26、28)の互いに離れている距離は最大で3mmであり、および/または、前記バルブシートからのそれぞれの前記電極(26、28)の最大距離は最大で1.5mmであり、
前記第2電極(28)は前記バルブシート(14)を包囲する、バルブユニット(10)。
【請求項14】
流体を投与するためのバルブユニット(10)であって、
バルブシート(14)を含む流体ハウジング(12)と、
流体入口(18)から前記バルブシート(14)へ、および、前記バルブシート(14)から流体出口(20)へ延在する流路(16)と、
前記流路(16)内の流れを制御または規制し、可動に取り付けられたバルブ閉鎖体(24)と、
前記バルブシート(14)の上流側の前記流路(16)内に配置される第1電極(26)と、
前記バルブシート(14)の下流側の前記流路(16)内に配置される第2電極(28)と、を備え、
前記2つの電極(26、28)の互いに離れている距離は最大で3mmであり、および/または、前記バルブシートからのそれぞれの前記電極(26、28)の最大距離は最大で1.5mmであり、
媒体に接触される前記流体ハウジング(12)の領域は、ゼロでない壁電位を有する電気絶縁材料で形成される、バルブユニット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体投与用バルブユニット、バルブユニットを有するバルブアセンブリおよびバルブユニットの閉鎖状態の確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い精度を要する分野において、例えば、高額な薬品がよく使用される医療技術において、流体を投与する場合、バルブユニットの確実な閉鎖は特に重要である。漏れる、垂れるバルブユニットは、例えば、薬品が漏れる場合、または、漏れているバルブユニットによって薬品が汚染される場合、重大なダメージをもたらす可能性がある。したがって、いずれかの漏れを検出できることが極めて重要である。
【0003】
投与する流体が充分に高いイオン濃度を有するとき、流体の伝導性に基づいて漏れを特定することができる。
【0004】
しかしながら、低いイオン濃度を有する流体に関しては、流体の低いコンダクタンスにより、知られている測定方法を適用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、高いイオン濃度を有する流体および低いイオン濃度を有する流体、特に脱イオン流体を投与する両方の場合において、漏れの特に確実な検出を保証することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、この目的は流体投与用バルブユニットによって実現される。バルブユニットは、バルブシートを含む流体ハウジング、流路、可動的に取り付けられたバルブ閉鎖体、第1電極および第2電極を有する。流路は、流体入口からバルブシートへ、および、バルブシートから流体出口へ延在する。バルブ閉鎖体は、流路内の流れを制御または規制する。第1電極はバルブシートの上流側の流路に配置される。第2電極はバルブシートの下流側の流路に配置される。2つの電極の間の距離が3mm以下、および/または、個別の電極とバルブシートとの間の最大距離が1.5mm以下である。
【0007】
もし、例えば、バルブ閉鎖体の摩耗の発生または他の欠陥により、バルブユニットがもう確実に閉鎖しなくなり、漏れが発生すると、バルブシートで電位差が生じる。この電位差はバルブシートに直接隣接した小さな領域に限定される。
【0008】
バルブシートを介するわずかに伝導性を有する流体の圧力駆動流れの場合、上記のような電位差は、発生する隙間が充分に小さい場合において特に発生する。これは、電位差の振幅が、バルブシートに位置する固体の壁電位および壁電位が降下するパス長さに依存するためである。バルブユニットが最大開口状態にあるとき、バルブシートを通じて流体は滞りなく流れる。開口状態における、例えば、0.8mmから2mmの比較的大きい断面により、流路の中央にあるイオンは、流路壁の壁電位から静電気的斥力を受けず、滞りなくバルブシートを通過できる。この場合、いわゆる流動電位は形成されない。また、バルブが完全に閉鎖されると、電位差は生じない。
【0009】
特に、流路壁の壁電位による電気二重層がバルブシートでの隙間より大きいまたは同等である場合、バルブシートを介して電位差は生じる。電気二重層のいわゆるデバイ長は、流路壁から流体内へのパスの長さである。流体内では、流路壁の静電界は流体内に存在する電荷キャリアに作用する。脱イオン水において、存在するイオンが少ないため、イオン濃度は特に低い。これによって、壁電位、したがって静電気的斥力は、流体内へ数100μmに到達する。より高いイオン濃度を有する流体において、このパス長さはたった1nmから2nmである。
【0010】
一般的に、バルブシートにおける漏れは数マイクロメートルの隙間によって生じる。この隙間は上述のデバイ長より小さく、圧力駆動流れの流体内のバルブシート上に電位差が形成される。この電位を測定することができる。
【0011】
脱イオン流体においても、少量の電荷キャリア、例えば、水酸化物イオン、ヒドロニウムイオン、炭酸塩(溶融したCO2)および/または塩による不純物が存在するため、電位差は生じる。漏れが生じた場合、生じた隙間が特に小さいとき、流路壁と同じ極性を有する電荷キャリアはバルブシートに蓄積し、したがって、流体内に電位差を形成する。バルブシート上の流体内に形成された電位差はポテンシャル流れと呼ばれる。同じ電荷を有する電荷キャリアの蓄積は、特に、流体ハウジングの表面および流体内の電荷キャリアにおける静電気的作用によって生じる。
【0012】
バルブシートへの電極の近さによって、この電位差は測定できる。そのため、第1電極と第2電極との間に電圧測定装置が接続されてもよい。
【0013】
このように、バルブユニットの漏れは特に確実な方法で検出できる。
【0014】
本発明は、特に、6mmから10mmの幅を有するアクチュエータを有する小型バルブユニットに使用される。
【0015】
投与される流体が充分に高いイオン濃度を有すると、コンダクタンス測定によっても漏れを検出することができる。そのため、単に、適切な測定装置、特に伝導性測定装置、を接続する必要がある。
【0016】
電極の間の距離は1mm未満、望ましくは、0.8mm未満であってもよい。
【0017】
電極の間の距離は、特に、流体の流れパスに沿って測定される。
【0018】
2つの電極の間の最小距離は望ましくは0.3mm、特に0.5mmである。よって、電極の配置公差による電極間の接触は確実に阻止される。
【0019】
ある実施の形態によると、バルブユニットは、流体入口に配置された金属の流体接続(fluid connection)を有する。流体接続は第1電極を形成する。このような流体接続は通常金属で形成される。したがって、流体接続は、さらなる改造を伴うことなく電極として機能できる。バルブユニットの構造は簡易なままでよい。
【0020】
例えば、流体接続は流体ハウジング内に突出し、バルブシートの最大1.5mm上流側で終了する。これにより、第1と第2電極との間の必要最大距離を確実に保持することができる。
【0021】
第2電極を確実な方法で配置することができるようには、流体ハウジングは第2電極を受ける凹部を有する。特に、押し込み式で第2電極を挿入できるように、凹部は形成される。
【0022】
流体ハウジングに電極を順次取り付ける代わりに、第1電極および/または第2電極はインサートとして流体ハウジング内にしっかり統合できる。例えば、第1電極および/または第2電極はインサート成形されてもよい。このように、バルブユニットを組み立てるとき、電極を取り付ける必要がないため、バルブユニットのアセンブリを簡略化できる。流体ハウジングの製造の後にそこに電極が取り付けられる場合よりも、電極がインサート成形される場合の配置公差が小さく、電極を配置するときの配置精度も向上されることができる。
【0023】
望ましくは、バルブユニットは第1および/または第2電極に接触する接触要素を有する。接触要素は、電極からバルブユニットの外側に延在する。望ましくは、接触要素は、バルブユニットの外側よりも少し遠くに延在する。このように、電極を電気回路に容易に統合することができる。
【0024】
ある実施の形態によると、第2電極はバルブシートを包囲する。したがって、望ましくない方法で、流体がバルブシートから流出する方向にかかわらず、確実な方法で漏れを検出できる。
【0025】
媒体に接触される流体ハウジングの領域は、非ゼロな、特に、負な壁電位を有する電気絶縁体で形成されていることが望ましい。このようなプラスチックは、例えば、PMMA、ナイロンまたはポリアミドである。媒体に接触される流体ハウジングの領域の壁電位が非ゼロであるため、同一の流体が使用されると充分に強い電位が形成されることができる。特に、壁電位の量が大きいほど、漏れの際に発生する電位が強くなる。
【0026】
あるいはまたは加えて、媒体に接触される流体ハウジングの領域は、ガラス繊維強化プラスチックで形成されてもよい。これは、中性な電荷を有するプラスチックも使用できるという利点を有する。ガラス繊維は強い負の表面電荷を発生させ、よって、電位差の形成を容易にする。
【0027】
目的は、さらに、上記で説明するように構成されるバルブユニットと、電圧測定装置とを有するバルブアセンブリによって実現される。電圧測定装置は、第1電極と第2電極との間の電気回路に接続される。このようなバルブアセンブリの手段によって、漏れ用の低価格の測定システムを実現できる。測定システムは、500μS/cm未満、特に50μS/cm未満の低い伝導性を有する溶液においても、確実に機能する。バルブアセンブリは複雑な追加の電気要素を必要としない。特に、電圧測定用の回路のみが必要である。伝導性の測定で必要な外部電圧の適用を省略することができる。しかしながら、これは、伝導性を測定するための電圧の適用の可能性を除外しない。
【0028】
目的は、さらに、上記で説明するように構成されたバルブユニットの閉鎖状態を確認する方法によって実現される。この方法では、500μS/cm未満、特に50μS/cm未満の低い電気伝導性を有する流体を投与するとき、バルブユニットの2つの電極の間で電圧を測定し、測定された電圧からバルブの漏れを導き出す。
【0029】
特に、流体入口と流体出口との間の電位差が測定される。
【0030】
本発明のさらなる効果および特徴は、以下の説明および参照される添付の図面により、明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係るバルブユニットの分解図である。
【
図3】バルブシートの領域内のバルブユニットの構造を示す模式図である。
【
図4】本発明に係るバルブユニットに使用される測定原理を示す模式図である。
【
図6】低い伝導性を有する流体を投与するときに発生する漏れに対して測定された電位差の経過を示す。
【
図7】
図5に示す流体よりも高い伝導性を有する流体を投与するときに発生する漏れに対して測定された電位差の経過を示す。
【
図8】本発明に係るバルブユニットの操作の間の測定された電位差の経過を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、流体、例えば、医療用薬品の投与用のバルブユニット10の分解図を示す。
【0033】
バルブユニット10は、バルブシート14を有する流体ハウジング12を備える。バルブシート14は流体ハウジング12内に一体的に形成されることが望ましい。
【0034】
バルブシート14は、流体ハウジング12内の凹部13内に配置されることが望ましい。
【0035】
流体入口18からバルブシート14に、および、バルブシート14から流体出口20へ延在する流路16の一部は、流体ハウジング12内に延在する。
【0036】
図1に示すバルブユニット10では、流体ハウジング12は、追加のフランジ付きハウジング15に取り付けられている。フランジ付きハウジング15内では、流路16は、流体入口18および流体出口20がフランジ付きハウジング15上に配置されるように、連続する。
【0037】
図1に示す実施の形態では、バルブユニット10のためのフランジ付きハウジング15を示す。しかしながら、実用において、投与工程は多くの場合、異なる薬品を投与するために複数のバルブユニット10を必要とする。この場合、1つの部品のフランジ付きハウジング15上に複数のバルブユニット10を取り付けることができるように、フランジ付きハウジング15は通常拡大されている。
【0038】
フランジ付きハウジング15は、よって、投与システムにおけるバルブユニット10のより容易な設置を実現する。
【0039】
しかしながら、流体ハウジング12とともに1つの部品として、フランジ付きハウジング15を形成することも基本的に想到し得る。
【0040】
対応する流体接続19、21は、流体入口18と流体出口20とに接続されている。
【0041】
バルブユニット10の開閉のため、駆動ユニット22を設ける。駆動ユニット22は、例えば、ソレノイド駆動である。小型バルブのためのこのような駆動ユニット22は、通常6mmから10mmの幅を有する。本明細書において、幅は紙面内の方向で測定する。
【0042】
駆動ユニット22は、
図1に図示していないバルブ閉鎖体24と係合している。しかhし、バルブ閉鎖体24は
図2に図示されている。
【0043】
バルブ閉鎖体24は流路16を通じた流れを制御または規制する。バルブユニット10の閉鎖状態において、バルブ閉鎖体24はバルブシート14の上に載置され、よって、流路16を通じた流体流れを防止する。
【0044】
バルブユニット10の開口状態において、バルブ閉鎖体24はバルブシート14から駆動ユニット22の手段によって持ち上げられ、よって、投与のために、流路16を通じた流体流れを実現することができる。
【0045】
理想的には、上記の2つの状態のみ、即ち、完全に閉じたまたは意図的に投与のために開いた状態が起こる。
【0046】
しかしながら、例えば、摩耗、製造誤差等の発生によって、バルブユニット10またはバルブ閉鎖体24が適切に閉鎖しないことが起こり得る。
【0047】
この場合、バルブシート14における隙間または漏れが、バルブユニット10の最大閉鎖状態において発生する。この場合、投与される薬品が、少量であっても、流路16から流出または滞りなく垂れ流され得るため、これは不利である。投与される流体は極めて高額な薬品である場合が多いため、失った流体が少量であっても、金銭的な損失が生じ得る。また、隙間を通じて流体に異物が進入し、流体を汚染し得る危険性がある。
【0048】
実用において、このような漏れを検出することは極めて困難である。バルブユニット10は極めて小さいこともあり、バルブユニット10に取り付けた状態でもバルブシート14を視認できない。漏れの発生において流出する流体の量も極めて小さく、肉眼で検出することは困難である。
【0049】
したがって、本発明によると、漏れは、流体入口18と流体出口20との間の電位差を測定することで電圧として検出される。
【0050】
この目的のため、バルブユニット10は第1電極26と第2電極28を有する。第1電極は、バルブシート14の上流側の流路16に配置される。第2電極28はバルブシート14の下流側に配置される。
【0051】
電極26、28を電圧測定装置に接続することで、電極26、28間の電位差を測定できる。
【0052】
図1に示す実施の形態1では、第1電極26は、流体入口18に配置された金属の流体接続19によって形成される。このように、第1電極26を個別の要素によって実現する必要がない。しかしながら、第1電極26を追加の要素によって実現することも可能である。
【0053】
流体接続19は、細い、管状の延在部29で、フランジ付きハウジング15を通じて突出する。流体接続19は、流体ハウジング12のバルブシート14から最大1.5mm上流で、特にバルブシート14から0.5mm上流で、望ましくはバルブシート14の少なくとも0.25mm手前で終了する。
【0054】
第2電極28は流体ハウジング12内に配置される。特に、第2電極28はバルブシート14を包囲する。
【0055】
流体がバルブユニット10を流れる方向が関係ないように、第2電極28はバルブシート14を包囲することが望ましい。よって、バルブユニット10を接続するとき、流体入口18と流体出口20とがどこに配置されているかは注意する必要がない。
【0056】
図1に示す実施の形態では、第2電極28は、対称になるように、および、バルブシート14への吸込み口36およびバルブシート14からの排出口38の両方を包囲するように、構成される。
【0057】
第2電極28のより容易な配置のために、流体ハウジング12内に凹部32が存在する。
【0058】
第2電極28に接触するため、バルブユニット10は接触要素34を有する。接触要素34は電極28からバルブユニット10の外側に延在する。接触要素34は、例えば、ワイヤである。
【0059】
図1で示すように、溝40はフランジ付きハウジング15内に、流体ハウジング12に対向する外側面上に形成される。溝40内に接触要素34が延在する。
【0060】
図1に示す実施の形態では、電極26、28はバルブユニット10上に取り付けられている。しかしながら、インサートとして流体ハウジング12内に電極26、28をしっかり統合することも想到し得る。例えば、流体ハウジング12を製造するために、電極26、28を工具型内に挿入およびインサート成形することができる。
【0061】
2つの電極26、28が互いから離れている距離は最大で3mmである。あるいはまたは加えて、バルブシート14からのそれぞれの電極26、28の最大距離は1.5mm以下である。電極26、28のこの短い距離のみが、流体入口18と流体出口20との間の電位差の確実な測定を可能にする。
【0062】
例えば、電極26、28との間の最小距離は0.5mmである。理論上、電極26、28との間により小さい距離は可能ではあるが、電極26、28の配置の公差も考慮しなければならない。望ましくない公差の状況の場合、距離が過剰に短いと、電極26、28の間で短絡の危険性があり、電位差の測定ができなくなる。
【0063】
流体ハウジング12は電気絶縁材料で形成されることが望ましい。特に、流体ハウジング12はプラスチックな部品、例えば、射出成型部品である。流体ハウジング12および望ましくはフランジ付きハウジング15がプラスチックで形成されているため、流体ハウジング12によって、電極26、28は互いから絶縁されている。即ち、電極26、28の間において、複雑な絶縁の必要がない。特に、電極26、28の間において、流体が導電体となり得る唯一のものである。
【0064】
フランジ付きハウジング15および流体出口20における流体接続21も望ましくは電気絶縁材料、例えば、プラスチックで形成される。
【0065】
バルブユニット10を組み立てるためには、フランジ付きハウジング15、流体ハウジング12および第2電極28は互いの上に重ね、駆動ユニット22の下のパッケージ(package)内に配置され、駆動ユニット22にしっかり接続、特に、ねじ止めされる。
【0066】
流体接続19、21は、例えば、フランジ付きハウジング15内に押し込まれる、または、バルブユニットの取り付けの際にそこにねじ止めされる。
【0067】
2つの流体接続19、21は、特に、UNFネジ接続を有するホース接続を受けるために構成される。
【0068】
図1に示すバルブユニット10は可能な構造を示すためのみのものであるが、本発明に係るコンセプトは、ほとんどのいずれかのバルブに基本的に適用することができる。
【0069】
図2は電位差の形成の原理を示す。本発明によると、バルブシート14およびバルブ閉鎖要素24を含むバルブユニット10の大分簡略化した部分的な図示によって、漏れを検出するために、電位差を測定できる。特に、例えば、500μS/cm以下の低い伝導性を有する流体を使用する場合、電位差を測定できる。
【0070】
上記の実施の形態で知られる要素には同一の参照符号を使用する。このようにして、上記の説明を参照する。
【0071】
図2は、漏れを図示するため、少し開いた状態にあるバルブユニット10を示す。
【0072】
流体ハウジング12は、そのインターフェース42において、特に、媒体に接触されている領域において、負電荷44を有する。
【0073】
流体は正電荷キャリア46および負電荷キャリア48を含む。
【0074】
バルブシート14で漏れ、特に小さい隙間が発生した場合、流体ハウジング12のインターフェース42における負電荷44と、流体内の電荷キャリア46、48と、の間で作用が生じる。その結果、負電荷キャリア48は、斥力によって隙間の前で保持され、正電荷キャリア46は隙間を通過できる。その結果、隙間の前、すなわち、バルブシート14の上流側に負電荷キャリア48が蓄積する。隙間の後、すなわち、バルブシート14の下流側に正電荷キャリア46の増加または負電荷キャリア48の減少がある。
【0075】
通常は漏れの際にのみ生じる隙間の前における電荷キャリア48の蓄積によって、流体入口18と流体出口20との間における電位差を測定することができる。
【0076】
図1と関連して既に説明したように、電極26、28はこのために設けられている。
【0077】
図3は、加えて、本発明に係るバルブアセンブリ50の大分簡略化した部分的な図示によって、機能的な原理を示す。バルブアセンブリ50は、本発明に係るバルブユニット10を備える。バルブユニット10は、例えば、
図1に示すバルブユニット10のように構成される。
【0078】
図3は、バルブシート14の上流側にある第1電極26とバルブシート14の下流側にある第2電極28とを模式的に示す。
【0079】
バルブアセンブリ50は、第1電極26と第2電極28との間の電気回路54内に接続された電圧測定装置52も含む。
【0080】
図2に関連して既に説明したように、漏れが生じる際に、隙間の前には負電荷キャリア48の蓄積があり、隙間の後には正電荷キャリア46の蓄積がある。
【0081】
この場合、漏れを示唆する電極26、28との間の電圧を測定できる。
【0082】
この場合、第1電極26はアノードとして、第2電極28はカソードとして機能する。
【0083】
バルブユニット10の閉鎖状態または最大開口状態において電圧は測定されない。これらの場合、バルブシート14の前または後において、同様に帯電された電荷キャリア46、48の蓄積がない。
【0084】
漏れの際の電圧測定のために、電荷キャリア46、48の蓄積を促進するよう、媒体に接触される流体ハウジング12の領域は、ゼロでない壁電位を有する。
【0085】
図2は、インターフェース42における負電荷キャリア44を示す。インターフェース42は、すなわち、媒体に接触される流体ハウジングの部分は、負の壁電位を有する材料で形成される。あるいは、媒体に接触される領域は正の壁電位を有する材料で形成されてもよい。この場合、正電荷キャリア46が隙間の前に蓄積し、負電荷キャリア48は隙間の後に蓄積する。
【0086】
負の壁電位を有するプラスチックは、例えば、PMMAである。正の壁電位を有するプラスチック、例えば、ナイロンまたはポリアミドである。
【0087】
漏れの場合における電圧測定のための電荷キャリア46、48の蓄積を優先するさらなる可能性は、ガラス繊維を有するプラスチックの使用である。よって、流体ハウジング12を製造するために、中性に帯電したポリマー、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)を使用することもできる。特に、媒体に接触される流体ハウジング12の領域はガラス繊維強化プラスチックで形成されてもよい。
【0088】
伝導性は、電圧測定装置52の代わりに伝導性測定装置を2つの電極26、28に接続することによって、バルブユニット10の同一の構造で特定できる。
【0089】
図4には、測定原理に有利な電気二重層を示す。電気二重層は、流体側において、相境界を形成する。相境界は、固体相、他の液体相または気体相であってもよい。
【0090】
一般的に、帯電した状態にある相境界において、互いに対向する2つの電荷層が存在する。キャパシタのように、2つの電荷層は反対の電荷を有する。
【0091】
二重層は、リジッド(rigid)層と拡散層で形成される。
【0092】
図4には、正電荷キャリア46が流体内に蓄積する固体の例を示す。
【0093】
二重層の全体のパス長さd上で壁電位が減少する。パス長さは、通常デバイ長と呼ばれる。デバイ長は、流体のイオン濃度と他のものに依存する。デバイ長は、脱イオン水において数100μmである。
【0094】
いわゆるゼータ電位は、電荷キャリア46、48が流体内で可動な拡散層dの最初に配置されている。ゼータ電位(ζ電位ともいう)はサスペンション内の移動する粒子のせん断層における電位である。
【0095】
図5には、拡散媒体に浮遊する帯電した粒子の表面からの距離との関数として、電位差およびイオン濃度を示す。
【0096】
図6には、流れとしてバルブユニット10における漏れ(曲線a)と、並列して測定された
電位差(曲線b)とを示す。ボルトで測定された
電位差は、左座標に描かれている。
【0097】
使用される流体は、1.5μS/cmの伝導性および8のpHを有する5μMトリス/ホウ酸溶液である。
【0098】
漏れは特に、バルブユニット10の規定された開口によって再現される。バルブユニット10に、特に駆動ユニット22にアクチュエータによる電圧を印加することで、バルブ閉鎖要素24とバルブシート14との間に隙間が生じる。ボルトで測定されるアクチュエータ電圧は、図の横座標に描かれる。
【0099】
より高いアクチュエータ電圧によって、バルブユニット10の開口の度合いが増加する。すなわち、アクチュエータ電圧が増加すると、隙間は大きくなり、漏れが増加する。バルブユニットを通過するμl/minで測定される流量は右座標に描かれている。1.8のアクチュエータ電圧によって、特に、225μl/minの流れが生じる。
【0100】
図6に図示した可能な曲線において、漏れの曲線と電位の曲線が強い相関を有することが示されている。これは、バルブシート14における漏れは測定された電位差から求められることを意味する。
【0101】
したがって、本発明に係る方法によって、流体を投与するときのバルブユニット10の閉鎖状態、バルブユニット10の2つの電極26、28との間の電圧を測定でき、測定された電圧からバルブユニット10の漏れを求めることができる。
【0102】
測定された電位の曲線からも、流体の流れ速度に関する結論を導出できる。よって、流れ速度も測定できる。
【0103】
図7では、バルブユニット10内の漏れの関数として、測定された電位のさらなる曲線を示す。
図6に示されたグラフと対照的に、
図7に示された曲線には、26.4μS/cmの伝導性を有する500μMトリス/ホウ酸溶液が使用された。
【0104】
図7に示すように、高濃度溶液の測定できる電位差は、低濃度溶液におけるものより低い。1.8Vのアクチュエータ電圧および同じ流れにおける上記溶液の電圧値を比較すると、低濃度溶液では9Vの値が得られることに対して、高濃度溶液では2.5Vが得られる。
【0105】
これは、本発明に係る電位差に基づいて漏れを測定する方法は、低いイオン濃度および低い伝導性を有する流体に特に適していることを意味する。本方法は、例えば、500μS/cm以下の電気伝導性、特に50μS/cm以下の電気伝導性を有する流体に適している。
【0106】
より高いイオン濃度において、伝導性を測定することがより有利である可能性がある。
【0107】
図8には、本発明に係るバルブユニット10の操作の間の測定された電位の経過を示す。
図8は、特に、バルブ回路の時間経過上の電位差を示す。
【0108】
バルブ開口Oの瞬間において、電位は短期間において上昇する。
【0109】
バルブ閉鎖Cの瞬間において、機械的戻りバネによる閉鎖工程の方が、駆動ユニット22による開口工程よる遅いため、より高い信号が生じる。
【0110】
電位の経過からさらなる情報を得ることができる。例えば、使用されるアクチュエータの品質を求めるために、経過を使用できる。
【0111】
バルブ閉鎖要素24の起こり得るキックバック現象も検出できる。より具体的に、2重ピークDによって、キックバック現象も検出できる。
【0112】
バルブ開口Oの後、バルブユニット10が最大に開口しているとき、電荷キャリアは蓄積されず、閉鎖Cまで電位差が生じることはない。
【0113】
電位差の形成を実現するため、バルブシート14とバルブ閉鎖要素24との間の隙間がデバイ長より短いことが望ましい。