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特許7525318地中埋設金属体の電気防食施工方法及び電気防食用電極装置の交換方法並びに接続具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】地中埋設金属体の電気防食施工方法及び電気防食用電極装置の交換方法並びに接続具
(51)【国際特許分類】
   C23F 13/02 20060101AFI20240723BHJP
   C23F 13/06 20060101ALI20240723BHJP
   E21B 7/20 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C23F13/02 J
C23F13/02 B
C23F13/02 A
C23F13/06
E21B7/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020116001
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013439
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000211891
【氏名又は名称】株式会社ナカボーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 富孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 伸悟
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-042662(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第3045581(JP,U)
【文献】特開平08-193485(JP,A)
【文献】実開昭61-059663(JP,U)
【文献】特開2004-269963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/02
C23F 13/06
E21B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体及びバックフィルを含む電気防食用電極装置を土壌中に埋設する埋設工程と、直流電源装置に該電極体と防食対象の地中埋設金属体とを接続して電気回路を形成する工程とを有する、地中埋設金属体の電気防食施工方法であって、
前記埋設工程は、
軸線方向の両端が開口した筒状のケーシングの内部にボーリングロッドを挿入した状態で、該ケーシングを該ボーリングロッドに接離自在に接続する工程と、
前記ボーリングロッドを用いて土壌を掘削することにより、削孔の形成と該削孔への前記ケーシングの圧入とを並行して行うとともに、該ケーシングの内部の掘り屑を該削孔の外部に排出する工程と、
目的深度まで掘削した後、前記ボーリングロッドに対する前記ケーシングの接続を解除し、該ケーシングのみを前記削孔に残置したまま、該ボーリングロッドを該ケーシングの内部から引き抜く工程と、
前記電極体を前記ケーシングの内部に挿入し下降させて前記削孔に設置する工程と、
前記削孔に前記バックフィルを充填する工程と、
前記ケーシングを前記削孔から引き抜く工程とを有し、
前記ボーリングロッドによる掘削時に、該ボーリングロッドの掘削方向の先端に削孔ビットが接続されているとともに、該ボーリングロッドに前記ケーシングを接離自在に接続する接続具が地上に設置されている、地中埋設金属体の電気防食施工方法。
【請求項2】
流電陽極及びバックフィルを含む電気防食用電極装置を土壌中に埋設する埋設工程と、該流電陽極と防食対象の地中埋設金属体とを接続して電気回路を形成する工程とを有する、地中埋設金属体の電気防食施工方法であって、
前記埋設工程は、
軸線方向の両端が開口した筒状のケーシングの内部にボーリングロッドを挿入した状態で、該ケーシングを該ボーリングロッドに接離自在に接続する工程と、
前記ボーリングロッドを用いて土壌を掘削することにより、削孔の形成と該削孔への前記ケーシングの圧入とを並行して行うとともに、該ケーシングの内部の掘り屑を該削孔の外部に排出する工程と、
目的深度まで掘削した後、前記ボーリングロッドに対する前記ケーシングの接続を解除し、該ケーシングのみを前記削孔に残置したまま、該ボーリングロッドを該ケーシングの内部から引き抜く工程と、
前記流電陽極の周囲に前記バックフィルが配置された構成の流電陽極ユニットを、前記ケーシングの内部に挿入し下降させて前記削孔に設置する工程と、
前記削孔に土壌成分を充填する工程と、
前記ケーシングを前記削孔から引き抜く工程とを有し、
前記ボーリングロッドによる掘削時に、該ボーリングロッドの掘削方向の先端に削孔ビットが接続されているとともに、該ボーリングロッドに前記ケーシングを接離自在に接続する接続具が地上に設置されている、地中埋設金属体の電気防食施工方法。
【請求項3】
前記ーリングロッドにおける前記接続具よりも上方に位置する部分に、前記ケーシングの内部を通って前記削孔の外部に排出される前記掘り屑の飛散を防止する飛散防止具が設置されている、請求項1又は2に記載の地中埋設金属体の電気防食施工方法。
【請求項4】
土壌中に埋設され、電極体又は流電陽極とバックフィルとを含む電気防食用電極装置を備え、該電極体又は該流電陽極とリード線を介して電気的に接続される防食対象の地中埋設金属体に該電極体又は該流電陽極から防食電流を供給する電気防食構造において、該電気防食用電極装置を新規のものに交換する方法であって、
軸線方向の両端が開口した筒状のケーシングの内部にボーリングロッドを挿入した状態で、該ケーシングを該ボーリングロッドに接離自在に接続するとともに、前記電極体又は前記流電陽極から延びる前記リード線を該ボーリングロッドの内部に収納し仮留めする工程と、
前記ボーリングロッドを用いて前記電気防食用電極装置の埋設箇所を掘削することにより、削孔の形成と該削孔への前記ケーシングの圧入とを並行して行うとともに、該ケーシングの内部の掘り屑を該削孔の外部に排出する工程と、
前記電極体又は前記流電陽極の埋設深度よりも浅い深度の目的深度まで掘削した後、前記ボーリングロッド及び前記ケーシングを前記削孔から引き抜くとともに、該ボーリングロッドの内部に仮留めされていた前記リード線を引っ張って該電極体又は該流電陽極を該削孔から取り出す工程と、
再度、前記ケーシングの内部に前記ボーリングロッドを挿入した状態で、該ケーシングを該ボーリングロッドに接離自在に接続した後、該ボーリングロッド及び該ケーシングを前記削孔に圧入する工程と、
目的深度まで圧入した後、前記ボーリングロッドに対する前記ケーシングの接続を解除し、該ケーシングのみを前記削孔に残置したまま、該ボーリングロッドを該ケーシングの内部から引き抜く工程と、
新規の電極体、又は新規の流電陽極の周囲に新規のバックフィルが配置された構成の流電陽極ユニットを、前記ケーシングの内部に挿入し下降させて前記削孔に設置する工程と、
前記削孔に、新規のバックフィル及び土壌成分から選択される1種以上を充填する工程と、
前記ケーシングを前記削孔から引き抜く工程とを有し、
前記ボーリングロッドによる掘削時に、該ボーリングロッドの掘削方向の先端に削孔ビットが接続されているとともに、該ボーリングロッドに前記ケーシングを接離自在に接続する接続具が地上に設置されている、電気防食用電極装置の交換方法。
【請求項5】
前記リード線の少なくとも一部が電線管に収容されており、該電線管の外面を該ボーリングロッドの内部を画成する内面に接触させることで、該リード線を該ボーリングロッドの内部に仮留めする、請求項4に記載の電気防食用電極装置の交換方法。
【請求項6】
土壌中に埋設され、電極体又は流電陽極とバックフィルとを含む電気防食用電極装置を備え、該電極体又は該流電陽極とリード線を介して電気的に接続される防食対象の地中埋設金属体に該電極体又は該流電陽極から防食電流を供給する電気防食構造において、該電気防食用電極装置を新規のものに交換する方法であって、
軸線方向の両端が開口した筒状のケーシングの内部にボーリングロッドを挿入した状態で、該ケーシングを該ボーリングロッドに接離自在に接続する工程と、
前記ボーリングロッドを用いて前記電気防食用電極装置の埋設箇所を掘削することにより、削孔の形成と該削孔への前記ケーシングの圧入とを並行して行うとともに、該ケーシングの内部の掘り屑を該削孔の外部に排出する工程と、
前記電極体又は前記流電陽極の埋設深度と同じか又はそれよりも深い深度の目的深度まで掘削した後、前記ボーリングロッドに対する前記ケーシングの接続を解除し、該ケーシングのみを前記削孔に残置したまま、該ボーリングロッドを該ケーシングの内部から引き抜く工程と、
新規の電極体、又は新規の流電陽極の周囲に新規のバックフィルが配置された構成の流電陽極ユニットを、前記ケーシングの内部に挿入し下降させて前記削孔に設置する工程と、
前記削孔に、新規のバックフィル及び土壌成分から選択される1種以上を充填する工程と、
前記ケーシングを前記削孔から引き抜く工程とを有し、
前記ボーリングロッドによる掘削時に、該ボーリングロッドの掘削方向の先端に削孔ビットが接続されているとともに、該ボーリングロッドに前記ケーシングを接離自在に接続する接続具が地上に設置されている、電気防食用電極装置の交換方法。
【請求項7】
前記ーリングロッドにおける前記接続具よりも上方に位置する部分に、前記ケーシングの内部を通って前記削孔の外部に排出される前記掘り屑の飛散を防止する飛散防止具が設置されている、請求項4~6の何れか1項に記載の電気防食用電極装置の交換方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の方法において、前記ケーシングを前記ボーリングロッドに接離自在に接続するのに使用される接続具であって、
筒状の本体と、該本体の軸線方向の一端に設けられ、前記ボーリングロッドの軸線方向の一端部が挿入可能な開口と、該開口に挿入された該ボーリングロッドを係止するロッド係止機構とを有し、
前記本体の軸線方向の他端部は、前記ケーシングの軸線方向の一方の開口に嵌挿可能になされているとともに、該開口に挿入又は外嵌された状態で該ケーシングに接離自在に接続可能になされている、接続具。
【請求項9】
前記ロッド係止機構は、前記本体の開口を画成する該本体の周壁部に穿設された係止孔と、該係止孔に螺合された状態で、該本体の開口に挿入された前記ボーリングロッドと接触する係止ねじとを有する、請求項8に記載の接続具。
【請求項10】
前記ケーシングの開口を画成する該ケーシングの周壁部の内面又は外面に、ねじ部が形成されているとともに、前記本体の軸線方向の他端部の内面又は外面に、該ねじ部に螺合可能なねじ部が形成されている、請求項8又は9に記載の接続具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中埋設金属体の電気防食施工方法、及び地中埋設金属体の電気防食構造における電気防食用電極装置の交換方法、並びに両方法においてケーシングをボーリングロッドに接離自在に接続するのに使用可能な接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
埋設配管、基礎杭、地下タンク等の地中埋設金属体の電気防食の方式としては従来、外部電源方式と流電陽極方式とが知られている。外部電源方式の電気防食を施工する場合は、例えば、防食対象の金属体が埋設されている地盤にボーリングマシンのボーリングロッドを押し込んで削孔を形成し、該削孔に電極体を設置した後、該電極体を埋設するように該削孔にバックフィルと称される炭素質材料を充填し、更に該バックフィルの上方に土砂を充填する。そして、埋設された電極体から延びるリード線と防食対象の金属体から延びるリード線とを、地上に設置された直流電源装置に接続して電気回路を形成する。こうして施工された外部電源方式の電気防食では、防食対象の地中埋設金属体を陰極とし、直流電源装置を用いて電極体から陰極に直流電流を流入させることにより、該金属体の電位をマイナス方向に変化させて該金属体を防食する。また、流電陽極方式の電気防食を施工する場合は、例えば、前記と同様に形成した削孔に、防食対象の地中埋設金属体よりもイオン化傾向の高い卑金属からなる流電陽極(犠牲陽極)と該流電陽極の周囲に配置されたバックフィルとを含む、流電陽極ユニットを設置した後、該流電陽極ユニットを埋設するように該削孔に土を充填し、更に、該流電陽極から延びるリード線と該金属体から延びるリード線とを接続して電気回路を形成する。こうして施工された流電陽極方式の電気防食では、防食対象の地中埋設金属体を陰極、地中に埋設された流電陽極を陽極とする電池が構成され、両極の電位差(起電力)により両極間に防食電流が生じ、該防食電流が該金属体に流入することで該金属体が防食される。
【0003】
外部電源方式及び流電陽極方式の何れにおいても、削孔の形成後で且つその使用前に、削孔が崩れて土砂で埋まってしまうという問題が起こり得る。この問題を解決し得る方法として、削孔の形成後に、該削孔に筒状のケーシングを圧入して仮内壁を形成し、電極体等を該ケーシングの内部、すなわち該仮内壁で画成された空間部に挿入することで該削孔に設置する方法が提案されている。しかしこの方法は、削孔の形成とケーシングの圧入とを別々に行うため、作業時間が長期化する、ケーシングの圧入をスムーズにするためにケーシングの外形よりも大きな内径の削孔を予め形成する必要があるなどの問題があり、作業効率の点で改善の余地がある。
【0004】
特許文献1には、電極体を交換可能な再生式の電気防食用電極装置として、電極体が保持可能な内部空間を有する保護管と、該保護管の外径より大きな内径を有し、該保護管と同心状に設けられるケーシングとを備え、該保護管の内部空間及び該保護管と該ケーシングとで画成された空間の双方にバックフィルが充填された外部電源方式の電極装置が記載されている。特許文献1に記載の電極装置によれば、保護管内の電極体を容易に取り出すことができるため、電極体の交換を容易に行えるとされている。しかしながら、例えば電極装置の設置工程において、掘削流体として使用したベントナイト等を含む泥水が誤ってバックフィルに混入した場合、バックフィルの凝集、泥水の電極体への固着などの現象が発生し、その結果、電極体を保護管から取り出すことが困難になるおそれがある。また、交換した電極体が故障した場合は、再度の交換作業が必要となるが、再度の交換作業を行うことで電極装置が機能しなくなるおそれがある。また、特許文献1に記載の電極装置は構成が比較的複雑なため、設置に時間がかかるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-160174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、地中埋設金属体の電気防食施工を短時間且つ低コストで容易且つ確実に実施することができる技術を提供することにある。
また本発明の課題は、地中埋設金属体の電気防食構造における電気防食用電極装置の交換を短時間且つ低コストで容易且つ確実に実施することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(第1の施工方法)は、電極体及びバックフィルを含む電気防食用電極装置を土壌中に埋設する埋設工程と、直流電源装置に該電極体と防食対象の地中埋設金属体とを接続して電気回路を形成する工程とを有する、地中埋設金属体の電気防食施工方法であって、
前記埋設工程は、
軸線方向の両端が開口した筒状のケーシングの内部にボーリングロッドを挿入した状態で、該ケーシングを該ボーリングロッドに接離自在に接続する工程と、
前記ボーリングロッドを用いて土壌を掘削することにより、削孔の形成と該削孔への前記ケーシングの圧入とを並行して行うとともに、該ケーシングの内部の掘り屑を該削孔の外部に排出する工程と、
目的深度まで掘削した後、前記ボーリングロッドに対する前記ケーシングの接続を解除し、該ケーシングを前記削孔に残置したまま、該ボーリングロッドを該ケーシングの内部から引き抜く工程と、
前記電極体を前記ケーシングの内部に挿入し下降させて前記削孔に設置する工程と、
前記削孔に前記バックフィルを充填する工程と、
前記ケーシングを前記削孔から引き抜く工程とを有する、地中埋設金属体の電気防食施工方法である。
【0008】
また本発明(第2の施工方法)は、流電陽極及びバックフィルを含む電気防食用電極装置を土壌中に埋設する埋設工程と、該流電陽極と防食対象の地中埋設金属体とを接続して電気回路を形成する工程とを有する、地中埋設金属体の電気防食施工方法であって、
前記埋設工程は、
軸線方向の両端が開口した筒状のケーシングの内部にボーリングロッドを挿入した状態で、該ケーシングを該ボーリングロッドに接離自在に接続する工程と、
前記ボーリングロッドを用いて土壌を掘削することにより、削孔の形成と該削孔への前記ケーシングの圧入とを並行して行うとともに、該ケーシングの内部の掘り屑を該削孔の外部に排出する工程と、
目的深度まで掘削した後、前記ボーリングロッドに対する前記ケーシングの接続を解除し、該ケーシングを前記削孔に残置したまま、該ボーリングロッドを該ケーシングの内部から引き抜く工程と、
前記流電陽極の周囲に前記バックフィルが配置された構成の流電陽極ユニットを、前記ケーシングの内部に挿入し下降させて前記削孔に設置する工程と、
前記削孔に土壌成分を充填する工程と、
前記ケーシングを前記削孔から引き抜く工程とを有する、地中埋設金属体の電気防食施工方法である。
【0009】
また本発明(第1の交換方法)は、土壌中に埋設され、電極体又は流電陽極とバックフィルとを含む電気防食用電極装置を備え、該電極体又は該流電陽極とリード線を介して電気的に接続される防食対象の地中埋設金属体に該電極体又は該流電陽極から防食電流を供給する電気防食構造において、該電気防食用電極装置を新規のものに交換する方法であって、
軸線方向の両端が開口した筒状のケーシングの内部にボーリングロッドを挿入した状態で、該ケーシングを該ボーリングロッドに接離自在に接続するとともに、前記電極体又は前記流電陽極から延びる前記リード線を該ボーリングロッドの内部に収納し仮留めする工程と、
前記ボーリングロッドを用いて前記電気防食用電極装置の埋設箇所を掘削することにより、削孔の形成と該削孔への前記ケーシングの圧入とを並行して行うとともに、該ケーシングの内部の掘り屑を該削孔の外部に排出する工程と、
前記電極体又は前記流電陽極の埋設深度よりも浅い深度の目的深度まで掘削した後、前記ボーリングロッド及び前記ケーシングを前記削孔から引き抜くとともに、該ボーリングロッドの内部に仮留めされていた前記リード線を引っ張って該電極体又は該流電陽極を該削孔から取り出す工程と、
再度、前記ケーシングの内部に前記ボーリングロッドを挿入した状態で、該ケーシングを該ボーリングロッドに接離自在に接続した後、該ボーリングロッド及び該ケーシングを前記削孔に圧入する工程と、
目的深度まで圧入した後、前記ボーリングロッドに対する前記ケーシングの接続を解除し、該ケーシングを前記削孔に残置したまま、該ボーリングロッドを該ケーシングの内部から引き抜く工程と、
新規の電極体、又は新規の流電陽極の周囲に新規のバックフィルが配置された構成の流電陽極ユニットを、前記ケーシングの内部に挿入し下降させて前記削孔に設置する工程と、
前記削孔に、新規のバックフィル及び土壌成分から選択される1種以上を充填する工程と、
前記ケーシングを前記削孔から引き抜く工程とを有する、電気防食用電極装置の交換方法である。
【0010】
また本発明(第2の交換方法)は、土壌中に埋設され、電極体又は流電陽極とバックフィルとを含む電気防食用電極装置を備え、該電極体又は該流電陽極とリード線を介して電気的に接続される防食対象の地中埋設金属体に該電極体又は該流電陽極から防食電流を供給する電気防食構造において、該電気防食用電極装置を新規のものに交換する方法であって、
軸線方向の両端が開口した筒状のケーシングの内部にボーリングロッドを挿入した状態で、該ケーシングを該ボーリングロッドに接離自在に接続する工程と、
前記ボーリングロッドを用いて前記電気防食用電極装置の埋設箇所を掘削することにより、削孔の形成と該削孔への前記ケーシングの圧入とを並行して行うとともに、該ケーシングの内部の掘り屑を該削孔の外部に排出する工程と、
前記電極体又は前記流電陽極の埋設深度と同じか又はそれよりも深い深度の目的深度まで掘削した後、前記ボーリングロッドに対する前記ケーシングの接続を解除し、該ケーシングを前記削孔に残置したまま、該ボーリングロッドを該ケーシングの内部から引き抜く工程と、
新規の電極体、又は新規の流電陽極の周囲に新規のバックフィルが配置された構成の流電陽極ユニットを、前記ケーシングの内部に挿入し下降させて前記削孔に設置する工程と、
前記削孔に、新規のバックフィル及び土壌成分から選択される1種以上を充填する工程と、
前記ケーシングを前記削孔から引き抜く工程とを有する、電気防食用電極装置の交換方法である。
【0011】
また本発明は、前記の本発明の電気防食施工方法又は本発明の交換方法において、前記ケーシングを前記ボーリングロッドに接離自在に接続するのに使用される接続具であって、
筒状の本体と、該本体の軸線方向の一端に設けられ、前記ボーリングロッドの軸線方向の一端部が挿入可能な開口と、該開口に挿入された該ボーリングロッドを係止するロッド係止機構とを有し、
前記本体の軸線方向の他端部は、前記ケーシングの軸線方向の一方の開口に嵌挿可能になされているとともに、該開口に挿入又は外嵌された状態で該ケーシングに接離自在に接続可能になされている、接続具である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電気防食施工方法によれば、地中埋設金属体に対する電気防食施工を短時間且つ低コストで容易且つ確実に実施することができる。より具体的には、本発明の電気防食施工方法は、電気防食用電極装置が埋設される削孔の形成を、削孔の崩壊防止に有用なケーシングが接続されたボーリングロッドを用いて行うことで、削孔の形成工程と削孔へのケーシングの圧入工程とを同時に行うことができるため、両工程を別々に行う従来技術に比べて施工性に優れる。また、ケーシングはボーリングロッドに対して接離自在に接続されており、最終的に削孔から引き抜かれるので、ケーシングの再利用が可能で経済的である。また、ケーシングの使用により削孔が崩壊し難いため、ボーリングロッドによる掘削に掘削流体として水又は空気を使用することが可能であり、そのため、産業廃棄物として扱われる建設汚泥が発生し難く、環境負荷が低減されている。
【0013】
本発明の交換方法によれば、地中埋設金属体の電気防食構造における電気防食用電極装置の交換を短時間且つ低コストで容易且つ確実に実施することができる。より具体的には、本発明の交換方法は、交換対象の旧電気防食用電極装置の埋設箇所を掘削するところ、該埋設箇所は過去に掘削が行われていて地盤が比較的軟らかいので、掘削が容易で掘削時間の短縮化を図ることができる。また、旧電気防食用電極装置の埋設箇所を利用し、埋設箇所の追加・変更を必要としないので、地形、環境、政策、土地の権利関係など、様々な理由で埋設箇所を新たに確保することが困難な場合にも柔軟に対応することができる。
【0014】
本発明の接続具によれば、ボーリングロッドにケーシングを接離自在に接続することができ、しかも、その接続は強固で且つ解除が容易であるため、本発明の電気防食施工方法及び交換方法において、ケーシングが接続されたボーリングロッドによる掘削、ケーシングの接続解除などの工程をスムーズ且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の施工方法による施工例の鉛直方向(削孔の深さ方向)に沿う断面を模式的に示す断面図である。
図2-1】図2-1は、本発明の第1の施工方法の一実施形態における電気防食用電極装置の埋設工程の説明図であり、該埋設工程の初期段階においてボーリングロッドに本発明の接続具の一実施形態を取り付けた状態の模式図である。
図2-2】図2-2は、図2-1に示す段階よりも後の段階の説明図であり、削孔の形成と該削孔へのケーシングの圧入とを並行して行う様子の模式図である。
図2-3】図2-3は、図2-2に示す段階よりも後の段階の説明図であり、削孔の形成後にボーリングロッドをケーシングの内部から引き抜く様子の模式図である。
図2-4】図2-4は、図2-3に示す段階よりも後の段階の説明図であり、電極体を削孔に設置するとともに、該削孔にバックフィルを充填する様子の模式図である。
図2-5】図2-5は、図2-4に示す段階よりも後の段階の説明図であり、ケーシングを削孔から引き抜く様子の模式図である。
図3-1】図3-1は、図2-1ないし2-5に示す一連の埋設工程で使用するケーシングとボーリングロッドとの接続構造の模式的な分解斜視図である。
図3-2】図3-2は、図3-1に示す接続構造の模式的な斜視図である。
図4図4は、本発明の第2の施工方法による施工例の鉛直方向(削孔の深さ方向)に沿う断面を模式的に示す断面図である。
図5-1】図5-1は、本発明の第1の交換方法の一実施形態の説明図であり、削孔の形成と該削孔へのケーシングの圧入とを並行して行う様子の模式図である。
図5-2】図5-2は、図5-1に示す段階よりも後の段階の説明図であり、ボーリングロッド及びケーシングを削孔から引き抜くとともに、該削孔から電極体を取り出す様子の模式図である。
図5-3】図5-3は、図5-2に示す段階よりも後の段階の説明図であり、ボーリングロッド及びケーシングを削孔に圧入した様子の模式図である。
図6図6は、本発明の第2の交換方法の一実施形態の説明図であり、削孔の形成と該削孔へのケーシングの圧入とを並行して行う過程で交換対象の旧電極体を破砕する様子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0017】
まず、本発明の地中埋設金属体の電気防食施工方法について説明する。
本発明の電気防食施工方法は、種々の地中埋設金属体の電気防食に適用可能である。被防食体である地中埋設金属体としては、例えば、埋設配管、基礎杭、地下タンク等が挙げられる。本発明の電気防食施工方法は、第1の施工方法と第2の施工方法とを包含する。以下では、まず第1の施工方法について説明し、次に第2の施工方法について説明する。
【0018】
図1には、第1の施工方法による施工例である電気防食構造1Aの概略構成が示されている。電気防食構造1Aは、外部電源方式の電気防食方法に使用されるもので、電極体20及びバックフィル21を含む電気防食用電極装置2Aと、直流電源装置3とを備える。電気防食用電極装置2Aは、地面100Sから下方に延びる削孔101に設置され、直流電源装置3は、地上すなわち地面100Sよりも上方に設置されている。電気防食構造1Aは、地面100Sから所定の深さの土壌100中に埋設された被防食体である地中埋設金属体10に対し、電極体20から防食電流を供給することで、地中埋設金属体10を防食する。電極体20は、リード線22を介して直流電源装置3のプラス極と電気的に接続され、地中埋設金属体10は、リード線11を介して直流電源装置3のマイナス極と電気的に接続されており、これらの接続により、電極体20から地中埋設金属体10に防食電流を供給し得る電気回路が形成されている。
【0019】
削孔101は、地面100Sから鉛直方向Zに延びている。削孔101の大きさは特に制限されない。典型的には、削孔101の深さは0.75~100m、直径すなわち深さ方向と直交する方向の長さは110~150mmであるが、特に限定されない。削孔101の直径は、削孔101の深さ方向において一定でもよく、変化してもよい。
【0020】
電気防食用電極装置2Aは、削孔101に設置された電極体20と、削孔101に充填されたバックフィル21とを含んで構成されている。
図1に示す形態では、電極体20は、削孔101の底部に1個設置され、バックフィル21は、削孔101の底部から該削孔101の深さ方向の所定範囲にわたって充填されている。より具体的には、削孔101の底部側にバックフィル21の層が形成され、削孔101の上部側(地面100S側)に土壌成分23の層が形成されており、電極体20はバックフィル21の層に埋設されている。電極体20から延びるリード線22は、バックフィル21の層及び土壌成分23の層を通過して地上に延出し、その延出部の先端が、地上に設置された直流電源装置3のプラス極に接続されている。
削孔101の地面100S側の端には蓋24が設置されている。蓋24の素材は特に限定されないが、車輛等の荷重に耐えられるものが好ましく、例えば鋳鉄が挙げられる。
【0021】
電極体20としては、外部電源方式の電気防食で使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば金属酸化物被覆チタン(MMO)、白金めっきチタンが挙げられる。電極体20の形状は、典型的には円柱状の如き、一方向に長い形状であるが、特に限定されない。
バックフィル21は、電極体20の接地抵抗の低下や電気化学的特性の向上等を目的として使用される。バックフィル21としては、本技術分野で通常用いられるものを特に制限無く用いることができ、例えば、コークス、黒鉛、ベントナイト、石膏、硫酸ナトリウム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上の組み合わせて用いることができる。
土壌成分23としては、例えば、土、砂、粘土及び砂利が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上の組み合わせて用いることができる。
【0022】
前述の電気防食構造1Aは第1の施工方法の実施によって得られるものであるところ、第1の施工方法は、電極体20及びバックフィル21を含む電気防食用電極装置2Aを土壌100中に埋設する埋設工程と、直流電源装置3に電極体20と防食対象の地中埋設金属体10とを接続して電気回路を形成する工程とを有する。
【0023】
図2-1ないし2-5(以下、これらの図を総称して「図2」とも言う。)には前記埋設工程の一部が示されている。前記埋設工程は、下記の工程A1~A6を有する。基本的には、工程A1から順に実施されるが、工程A5と工程A6とは並行して実施することもできる。
【0024】
・工程A1:軸線方向の両端が開口した筒状のケーシング4の内部にボーリングロッド5を挿入した状態で、ケーシング4をボーリングロッド5に接離自在に接続する工程(図3参照)。
・工程A2:ボーリングロッド5を用いて土壌100を掘削することにより、削孔101の形成と削孔101へのケーシング4の圧入とを並行して行うとともに、ケーシング4の内部の掘り屑102を削孔101の外部に排出する工程(図2-2参照)。
・工程A3:目的深度まで掘削した後、ボーリングロッド5に対するケーシング4の接続を解除し、ケーシング4を削孔101に残置したまま、ボーリングロッド5をケーシング4の内部から引き抜く工程(図2-3参照)。
・工程A4:電極体20をケーシング4の内部に挿入し下降させて削孔101に設置する工程(図2-4参照)。
・工程A5:削孔101にバックフィル21を充填する工程(図2-4参照)。
・工程A6:ケーシング4を削孔101から引き抜く工程(図2-5参照)。
【0025】
前記埋設工程において、土壌の掘削(削孔101の形成)はボーリングによって行われる。ボーリング(boring)は、ボーリングロッドに推進力、回転力、打撃力を加えて掘り進む行為であり、典型的にはボーリングマシンを用いて実施される。ボーリングマシンとしては公知のものを特に制限無く用いることができ、例えば、回転式、打撃式、振動式、回転振動式のものが挙げられる。図2に示すボーリングマシン9は回転振動式である。回転振動式のボーリングマシンは、ボーリングロッドに回転と振動(バイブロ)を与えることによって、打撃式ボーリングマシンと同等の速度でボーリングロッドを土壌中に推進させることができる小型のボーリングマシンであり、埋め戻した土壌、軟弱な粘性土又は砂質土の削孔に適している。
【0026】
ボーリングマシン9は、図2-1に示すように、無限軌道によって走行可能なベースマシン90と、鉛直方向Z又は鉛直方向Zに対し所定角度傾斜した傾斜方向に起立可能なリーダ91と、リーダ91に沿って移動可能に取り付けられた推進装置92と、推進装置92に連結された回動装置93とを含んで構成される。回動装置93の先端にはチャック94が取り付けられており、チャック94にボーリングロッド5の軸線方向の一端(上端)が把持される。ボーリングロッド5の軸線方向の他端(下端)には、別のボーリングロッド5又は削孔ビット6が接続される。通常、形成予定の削孔101の深さ(目的深度)は、1本のボーリングロッド5の軸線方向の長さよりも長いので、土壌の掘削には、図2-2に示すように、複数のボーリングロッド5が軸線方向に接続されたロッド連続体50が用いられ、ロッド連続体50の掘削方向の先端(下端)に削孔ビット6が接続される。ボーリングマシン9は、チャック94に把持されたボーリングロッド5(ロッド連続体50)に対し、推進装置92及び回動装置93によって回転と振動を与えることで、該ボーリングロッド5(ロッド連続体50)を土壌100に押し込んで掘削する。ボーリングマシン9は回転振動式であるため、掘削時には打撃式のボーリングマシンによる掘削時に発生するような金属打撃音が発生せず、騒音を大幅に低減することができる。また、ボーリングマシン9は回転振動式であるため、旋回やスイング機構を備えているので、削孔位置の孔芯を素早く出すことができる。
【0027】
第1の施工方法は、ケーシング4が接離自在に接続されたボーリングロッド5を用いて掘削を行うことで、削孔101の形成と削孔101へのケーシング4の圧入とを並行して行う点で特徴付けられる。この特徴により、第1の施工方法は、地中埋設金属体10に対する電気防食施工を短時間且つ低コストで容易且つ確実に実施し得る。斯かる構成と効果との関係は前述したとおりである。
【0028】
図3-1ないし3-2(以下、これらの図を総称して「図3」とも言う。)には、第1の施工方法を特徴付けるケーシング4とボーリングロッド5との接続構造の一例が示されている。ケーシング4及びボーリングロッド5としては、それぞれ、ボーリングに使用可能なものを特に制限無く用いることができる。典型的には、ケーシング4及びボーリングロッド5ともに、筒状、より具体的には円筒状をなし、軸線方向(掘削方向)の両端が開口した中空構造を有している。ケーシング4は、ボーリングロッド5の外径よりも大きな内径を有し、ボーリングロッド5の外側に同心状に配置することが可能である。ケーシング4は、ボーリングロッド5と同様に、ケーシング4の軸線方向の一端(上端又は下端)に別のケーシング4を接続可能であり、掘削時には通常、図2-2に示すように、複数のケーシング4が軸線方向に接続されたケーシング連続体40が用いられる。
【0029】
本実施形態では、ケーシング4(ケーシング連続体40)をボーリングロッド5(ロッド連続体50)に接離自在に接続するために、接続具7を使用している。接続具7は、図3に示すように、筒状の本体70と、本体70の軸線方向の一端(上端)70Aに設けられ、ボーリングロッド5(ロッド連続体50)の軸線方向の一端部が挿入可能な開口71と、開口71に挿入されたボーリングロッド5(ロッド連続体50)を係止するロッド係止機構74とを有している。接続具7は、ロッド連続体50における最上方のボーリングロッド5と、ケーシング連続体40における最上方のケーシング4とを接離自在に接続する。
【0030】
ロッド係止機構74は、ボーリングロッド5と接続具7とを接離自在に接続し得るものであればよく、その構成は特に限定されない。本実施形態では、ロッド係止機構74は図3-1に示すように、本体70の開口71を画成する該本体70の周壁部に穿設された係止孔72と、係止孔72に螺合された状態で、本体70の開口71に挿入されたボーリングロッド5と接触する係止ねじ73とを有する。図示の形態では、本体70の周方向に複数(具体的には4個)の係止孔72が等間隔に配置されているが、係止孔72の配置や数は特に制限されず任意に設定し得る。
【0031】
係止ねじ73は頭部と軸部とを有し、該軸部が係止孔72に挿入され螺合される。係止ねじ73の前記軸部の長さは、係止孔72の深さ(本体70の周壁部の厚さ)よりも十分に長く、係止孔72に係止ねじ73を挿入すると、本体70の内面から係止ねじ73の軸部の先端部が突出し得る。
本体70の開口71からボーリングロッド5を挿入して係止孔72と重なるように配置した状態で、複数の係止孔72それぞれに係止ねじ73を挿入し正転させると、各係止ねじ73の軸部の先端部が本体70の内面から半径方向内方に突出してボーリングロッド5の外面に接触し押圧する。これにより図3-2に示すように、ボーリングロッド5と接続具7とが接続される。また、図3-2に示す状態から各係止ねじ73を逆転させ後退させると、ボーリングロッド5と接続具7との接続が解除される。
【0032】
本体70の軸線方向の他端部(下端部)、すなわち本体70の軸線方向の他端(下端)70B及びその近傍は、ケーシング4(ケーシング連続体40)の軸線方向の一方の開口に嵌挿可能になされているとともに、該開口に挿入又は外嵌された状態でケーシング4(ケーシング連続体40)に接離自在に接続可能になされている。斯かるケーシング4と接続具7との接続機構は、両者を接離自在に接続し得るものであればよく、例えば、ねじ接続機構、ピン接続機構が挙げられる。ねじ接続機構としては、例えば、ケーシング4の開口を画成する該ケーシング4の周壁部の内面又は外面に、ねじ部(雌ねじ部、又は雄ねじ部)が形成されているとともに、本体70の軸線方向の他端部の内面又は外面に、該ねじ部に螺合可能なねじ部(雄ねじ部又は雌ねじ部)が形成された構成のものが挙げられる。
【0033】
本実施形態では、ケーシング4と接続具7との接続機構としてねじ接続機構が採用されている。本実施形態では図3-1に示すように、本体70の軸線方向の他端部(下端部)が、ケーシング4(ケーシング連続体40)の軸線方向の一方の開口に挿入された状態で接続されるように構成されており、斯かる構成に適したねじ接続機構として、ケーシング4の開口を画成する該ケーシング4の周壁部の内面に、雌ねじ部41が形成されているとともに、本体70の他端70B及びその近傍の外面に、雌ねじ部41に螺合可能な雄ねじ部75が形成されているものが採用されている。雌ねじ部41を有するケーシング4の開口に本体70の雄ねじ部75を挿入し正転させることで、図3-2に示すように、ケーシング4と接続具7とが接続される。また、図3-2に示す状態からケーシング4及び接続具7の一方を逆転させて他方から後退させると、ケーシング4と接続具7との接続が解除される。
【0034】
ケーシング4と接続具7とのねじ接続機構の別の例として、本体70の軸線方向の他端部(下端部)がケーシング4(ケーシング連続体40)の軸線方向の一端部(上端部)に外嵌された状態(換言すれば、ケーシング4の軸線方向の一端部が、本体70の軸線方向の他端部の開口に挿入された状態)で接続されるように構成されている場合において、ねじ接続機構として、ケーシング4の開口を画成する該ケーシング4の周壁部の外面に、雄ねじ部が形成されているとともに、本体70の他端及びその近傍の内面に、該雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部が形成されているものが挙げられる。
【0035】
ケーシング4とボーリングロッド5とが接離自在に接続されている部分は、両者の接離作業をスムーズに行う観点から、地上に設置される。したがって接続具7は、図2-1に示すように、地上に設置され、ボーリングロッド5による掘削中もその設置位置は地上である。
【0036】
本実施形態では、本体70は円筒状をなし、軸線方向と直交する方向(半径方向)に沿う断面形状が円形である。
本体70の雄ねじ部75以外の部分の外径は、ケーシング4の外径と同じであり、ケーシング4と接続具7(本体70)とを接続すると、ケーシング4の外面と本体70の外面とが面一となる(図3-2参照)。
本体70の内径は、軸線方向の全長にわたって一定であり、また、ボーリングロッド5における本体70に挿入される部分の外径に比べて大きく、本体70にボーリングロッド5を挿入した状態で、本体70の内面とボーリングロッド5の外面との間に隙間が形成される。この隙間は、ボーリングロッド5による掘削時にケーシング4の内部の掘り屑102を削孔101の外部に排出する際に、掘り屑102の排出路として利用される。
【0037】
本実施形態では、図3に示すように、接続具7の上部に飛散防止具8が取り付けられる。前記のように、ボーリングロッド5による掘削時には、ケーシング4の内部の掘り屑102が、接続具7の本体70の内面とボーリングロッド5の外面との間に形成された隙間を通って削孔101の外部に排出されるところ、飛散防止具8は、この掘り屑102の排出時の飛散を防止するためのものであり、接続具7とセットで使用される。
【0038】
飛散防止具8は、筒状で軸線方向の一端(下端)が開口したカバー部80と、該カバー部80の軸線方向の他端(上端)に連接され、ボーリングロッド5と接離自在に接続する接続部81とを有している。接続部81は、軸線方向の両端が開口した筒状をなし、該開口を介してボーリングロッド5が挿入可能になされている。接続部81は、カバー部80の外径よりも小さな外径を有し、カバー部80と同心状に設けられている。カバー部80の軸線方向の他端(上端)は、接続部81の設置箇所を除き、蓋部80aによって閉塞されている。
【0039】
接続部81は、該接続部81の開口を画成する該接続部81の周壁部に穿設された係止孔82と、係止孔82に螺合された状態で、該接続部81の開口に挿入されたボーリングロッド5と接触する係止ねじ83とを有する。図示の形態では、接続部81の周方向に複数(具体的には4個)の係止孔82が等間隔に配置されているが、係止孔82の配置や数は特に制限されず任意に設定し得る。
係止ねじ83は頭部と軸部とを有し、該軸部が係止孔82に挿入され螺合される。係止ねじ83の前記軸部の長さは、係止孔82の深さ(接続部81の周壁部の厚さ)よりも十分に長く、係止孔82に係止ねじ83を挿入すると、接続部81の内面から係止ねじ83の軸部の先端部が突出し得る。
接続部81の開口からボーリングロッド5を挿入して係止孔82と重なるように配置した状態で、複数の係止孔82それぞれに係止ねじ83を挿入し正転させると、各係止ねじ83の軸部の先端部が接続部81の内面から半径方向内方に突出してボーリングロッド5の外面に接触し押圧する。これにより図3-2に示すように、ボーリングロッド5と接続部81とが接続される。また、図3-2に示す状態から各係止ねじ83を逆転させ後退させると、ボーリングロッド5と接続部81との接続が解除される。
【0040】
飛散防止具8は、図3-2に示すように、接続具7の上方に取り付けられる。このとき典型的には、接続具7の本体70の軸線方向の一端(上端)70A及びその近傍、すなわち本体70の上端部は、飛散防止具8のカバー部80の下端の開口に挿入又は近接されカバー部80内に配置される。カバー部80の内径は、軸線方向の全長にわたって一定であり、また、本体70の外径に比べて大きく、カバー部80に本体70の上端部を挿入又は近接させた状態で、カバー部80の内面と本体70の外面との間に隙間が形成される。この隙間は、本体70の内面とボーリングロッド5の外面との間の排出路を通って上端70Aから排出された掘り屑102が、カバー部80の内面に当たって落下するときに利用され、該排出路の一部を形成する。
【0041】
第1の施工方法の流れ(工程A1~A6)について説明すると、まず図2-1に示すように、チャック94に把持されたボーリングロッド5に接続具7及び飛散防止具8を取り付けた状態から、接続具7を用いてボーリングロッド5にケーシング4を接続する。具体的には、軸線方向の両端が開口した筒状のケーシング4(ケーシング連続体40)の内部にボーリングロッド5(ロッド連続体50)を挿入した状態で、該ケーシング4を該ボーリングロッド5に接離自在に接続する(工程A1)。具体的な接続方法は前述したとおりである。
【0042】
次に図2-2に示すように、ケーシング4(ケーシング連続体40)が接続されたボーリングロッド5(ロッド連続体50)を用いて土壌100を掘削する。これにより、削孔101の形成と削孔101へのケーシング4の圧入とが並行して行われ、ケーシング4の内部の掘り屑102は削孔101の外部に排出される(工程A2)。ケーシング4及びボーリングロッド5は、それぞれ、削孔101の深さ(目的深度)に応じて必要数が用意され、掘削時に適宜、軸線方向に直列に接続される。ボーリングロッド5による掘削時には常時、接続具7が地上に設置されているとともに、ボーリングロッド5における接続具7よりも上方に位置する部分に飛散防止具8が設置される。
【0043】
第1の施工方法では、ケーシング4(ケーシング連続体40)及びボーリングロッド5(ロッド連続体50)の土壌中への圧入が同時に行われることにより、削孔101の形成と同時に、ケーシング4の設置による削孔101の孔壁の形成が行われるため、削孔101が崩壊し難い。そのため、ボーリングロッド5による掘削に掘削流体として清水などの水又は空気を使用することが可能であり、これにより、掘削作業の容易化、掘削時間の短縮化を図ることができる。具体的には、ボーリングロッド5による掘削時にボーリングロッド5の内部に掘削流体を供給する。掘削流体の供給手段としては、掘削流体が水の場合はポンプを、空気の場合はコンプレッサーを、それぞれ使用する。ボーリングロッド5の内部に供給された掘削流体は、ボーリングロッド5の先端に取り付けられた削孔ビット6から噴出し、掘り屑102とともに、ケーシング4の内面とボーリングロッド5の外面との間の隙間からなる排出路を通って、削孔101の外部に排出される。
【0044】
本実施形態では、前述したように、ケーシング連続体40における最上方のケーシング4の上方に接続具7が取り付けられ、更に接続具7の上方に飛散防止具8が取り付けられており、掘り屑102は掘削流体とともに、ケーシング4及び接続具7の内面とボーリングロッド5の外面との間の排出路を通って接続具7(本体70)の上端部から噴出し、カバー部80の内面に当たって落下する。落下した掘り屑102は、地面100Sに設置されたトレー95に収容され、トレー95内の掘り屑102はポンプ等の排出手段96によって回収される。このように、接続具7及び飛散防止具8を併用する本実施形態によれば、掘り屑102を周囲に撒き散らすことなく回収できるので、掘削作業の容易化と自然環境の汚染防止との両立が可能になる。
【0045】
ボーリングロッド5による掘削が目的深度に達したら、図2-3に示すように、ボーリングロッド5に対するケーシング4の接続を解除し、ケーシング4を削孔101に残置したまま、ボーリングロッド5をケーシング4の内部から引き抜く(工程A3)。具体的にはまず、接続具7及び飛散防止具8の係止ねじ73,83(図3-2参照)を後退させることによって、接続具7及び飛散防止具8の最上方のボーリングロッド5に対する接続を解除する。次に、図示の形態では、接続具7及び飛散防止具8を取り外した後、ボーリングマシン9を使用してボーリングロッド5を引き上げ、削孔101に圧入されたケーシング連続体40の上端面にロッドホルダー、ボーリングレンチ等のロッド保持器具97を設置する。このロッド保持器具97により、ケーシング連続体40内に挿入された状態のロッド連続体50を保持し、該ロッド連続体50における該ケーシング連続体40で覆われていない露出部(ロッド保持器具97よりも上方に位置するボーリングロッド5)を回転させることで、該露出部と該ロッド連続体50における該露出部以外の部分(ロッド保持器具97よりも下方に位置するボーリングロッド5)との接続(ねじ接続)を解除し、また、ボーリングロッド5(該ロッド連続体50における最上方に位置するボーリングロッド5)に対するチャック94の把持を解除して該ボーリングロッドを取り外すとともに、該ロッド連続体50における残りのボーリングロッド5を引き上げる。この一連の作業(ロッド連続体50における最上方のボーリングロッド5の取り外しと残りのボーリングロッド5の引き上げ)を繰り返すことにより、ケーシング4(ケーシング連続体40)の内部からボーリングロッド5(ロッド連続体50)を引き抜く。
【0046】
次に、電極体20をケーシング4の内部に挿入し下降させて削孔101の底部に設置する(工程A4)。電極体20の削孔101への設置は、電極体20の上端から延びるリード線22を把持して、電極体20を吊り下げつつ削孔101内を下降させることで実施できる。
【0047】
次に図2-4に示すように、削孔101にバックフィル21を充填し(工程A5)、更に図2-5に示すように、ケーシング4(ケーシング連続体40)を削孔101から引き抜く(工程A6)。第1の施工方法においては、工程A5の実施後に工程A6を実施してもよく、工程A5と工程A6とを並行して実施してもよい。図示の形態では後者が採用されており、削孔101に充填するバックフィル21の全量の一部を削孔101に充填しつつ、削孔101に圧入された状態のケーシング連続体40を所定距離引き上げて、ケーシングホルダー、チェーンレンチ等のケーシング保持器具98により該ケーシング連続体40を保持するとともに、ボーリングマシン9を作動させて該ケーシング連続体40における最上方のケーシング4を取り外す。この一連の作業(バックフィル21の充填とケーシング連続体40の引き上げ及びケーシング4の取り外し)を繰り返すことにより、バックフィル21の削孔101への充填とケーシング4の削孔101からの引き抜きとが並行して実施される。本実施形態では、削孔101にバックフィル21を充填した後、更に土壌成分23を充填する。
【0048】
こうして、工程A1~A6を経て電気防食用電極装置2Aの埋設工程が完了した後、直流電源装置3に電極体20と防食対象の地中埋設金属体10とを接続して電気回路を形成する。具体的には、電極体20から延びるリード線22を直流電源装置3のプラス極と電気的に接続し、地中埋設金属体10から延びるリード線11を直流電源装置3のマイナス極と電気的に接続する。そして、削孔101の地面100S側の端に蓋24を設置する。以上により、第1の施工方法による電気防食構造1Aの施工が完了する。
【0049】
次に、本発明の第2の施工方法について説明する。図4には、第2の施工方法による施工例である電気防食構造1Bの概略構成が示されている。電気防食構造1Bについては、前述した電気防食構造1Aと異なる構成を主として説明し、同様の構成は同一の符号を付して説明を省略する。電気防食構造1Bの特に説明しない構成は、電気防食構造1Aの同様の構成についての説明が適宜適用される。
【0050】
電気防食構造1Bは、流電陽極方式の電気防食方法に使用されるもので、流電陽極25及びバックフィル21を含む電気防食用電極装置2Bを備える。電気防食用電極装置2Bは削孔101に設置されている。電気防食構造1Bは、地面100Sから所定の深さの土壌100中に埋設された被防食体である地中埋設金属体10に対し、流電陽極25から防食電流を供給することで、地中埋設金属体10を防食する。流電陽極25から延びるリード線22の端と地中埋設金属体10から延びるリード線11の端とが、削孔101の上端部に位置し蓋24を含んで構成された接続箱28内にて結線されており、これにより、流電陽極25と地中埋設金属体10との電位差によって流電陽極25から地中埋設金属体10に防食電流を供給し得る電気回路が形成されている。
【0051】
本実施形態では、図4に示すように、電気防食用電極装置2Bは、流電陽極25の周囲にバックフィル21が配置された流電陽極ユニット27を含んで構成されている。流電陽極25及びバックフィル21は収容体26に収容されており、収容体26が流電陽極ユニット27の外形を形成している。削孔101における流電陽極ユニット27の周囲には土壌成分23が充填されている。図示の形態では、削孔101に、2個の流電陽極ユニット27がリード線22を介して軸線方向に連結された状態で設置されている。流電陽極25は一方向に長い形状を有し、その長手方向の一端から心金が突出し、該心金にリード線22が接続されている。
流電陽極25としては、流電陽極方式の電気防食で使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、マグネシウム合金が挙げられる。流電陽極25の形状は、典型的には円柱状の如き、一方向に長い形状であるが、特に限定されない。
収容体26の素材としては、バックフィル21の通過が不可能で、吸水及び透水が可能な条件を満足し、且つ耐久性を有し、取り扱い性に優れる親水性繊維の集合体が好ましく、具体的には例えば、合成繊維及び天然繊維からなる群から選択される1種以上を主体とする繊維シートないしマット;不織布、織布が挙げられる。図示の形態の収容体26は、織布からなる袋状の収容体である。
【0052】
前述の電気防食構造1Bは第2の施工方法の実施によって得られるものであるところ、第2の施工方法は、流電陽極25及びバックフィル21を含む電気防食用電極装置2Bを土壌中に埋設する埋設工程と、流電陽極25と防食対象の地中埋設金属体10とを接続して電気回路を形成する工程とを有する。
【0053】
第2の施工方法の埋設工程は、下記の相違点1,2において、前述の第1の施工方法の埋設工程と異なる。
1)相違点1:前記工程A4において、電極体20に代えて流電陽極ユニット27を用いる点。すなわち第2の施工方法の工程A4では、流電陽極ユニット27をケーシング4の内部に挿入し下降させて削孔101に設置する。
2)相違点2:前記工程A5において、バックフィル21に代えて土壌成分23を用いる点。すなわち第2の施工方法の工程A5では、削孔101に土壌成分23を充填する。第2の施工方法では、工程A5に先立ち、バックフィル21を含む流電陽極ユニット27が削孔101に既に設置されているので、工程A5では、削孔101にバックフィル21を充填する必要は無い。
【0054】
次に、本発明の電気防食用電極装置の交換方法について説明する。図5-1ないし5-3(以下、これらの図を総称して「図5」とも言う。)及び図6には、本発明の交換方法の一例が示されている。本発明の交換方法については、前述した本発明の電気防食施工方法と異なる構成を主として説明し、同様の構成は同一の符号を付して説明を省略する。本発明の交換方法の特に説明しない構成は、本発明の電気防食施工方法の同様の構成についての説明が適宜適用される。
【0055】
本発明の交換方法は、電気防食構造における電気防食用電極装置を新規のものに交換する方法である。本発明の交換方法が適用される電気防食構造は、土壌中に埋設された電気防食用電極装置を含み、該電気防食用電極装置は、少なくとも電極体又は流電陽極と、バックフィルとを含み、該電極体又は該流電陽極とリード線を介して電気的に接続される防食対象の地中埋設金属体に、該電極体又は該流電陽極から該リード線を介さずに防食電流を供給するようになされている。前述の電気防食構造1A,1Bは、本発明の交換方法が適用可能である。本発明の交換方法によれば、電気防食構造1Aにおいては電気防食用電極装置2Aを、電気防食構造1Bにおいては電気防食用電極装置2Bを、それぞれ新規のものに交換することができる。
本発明の交換方法は、第1の交換方法と第2の交換方法とを包含する。以下では、まず第1の交換方法について説明し、次に第2の交換方法について説明する。
【0056】
図5には、第1の交換方法の具体例として、電気防食構造1Aにおける電気防食用電極装置2Aの交換方法の一部が示されている。第1の交換方法は、下記の工程B1~B8を有する。基本的には、工程B1から順に実施されるが、工程B7と工程B8とは並行して実施することもできる。
【0057】
・工程B1:軸線方向の両端が開口した筒状のケーシング4の内部にボーリングロッド5を挿入した状態で、ケーシング4をボーリングロッド5に接離自在に接続するとともに、電極体20から延びるリード線22をボーリングロッド5の内部に収納し仮留めする工程。
・工程B2:ボーリングロッド5を用いて電気防食用電極装置2Aの埋設箇所を掘削することにより、削孔101の形成と削孔101へのケーシング4の圧入とを並行して行うとともに、ケーシング4の内部の掘り屑102を削孔101の外部に排出する工程(図5-1参照)。
・工程B3:電極体20の埋設深度よりも浅い深度の目的深度まで掘削した後、ボーリングロッド5及びケーシング4を削孔101から引き抜くとともに、ボーリングロッド5の内部に仮留めされていたリード線22を引っ張って電極体20を削孔101から取り出す工程(図5-2参照)。
・工程B4:再度、ケーシング4の内部にボーリングロッド5を挿入した状態で、ケーシング4をボーリングロッド5に接離自在に接続した後、ボーリングロッド5及びケーシング4を削孔101に圧入する工程(図5-3参照)。
・工程B5:目的深度まで圧入した後、ボーリングロッド5に対するケーシング4の接続を解除し、ケーシング4を削孔101に残置したまま、ボーリングロッド5をケーシング4の内部から引き抜く工程。
・工程B6:新規の電極体20をケーシング4の内部に挿入し下降させて削孔101に設置する工程。
・工程B7:削孔101に、新規のバックフィル21及び土壌成分23から選択される1種以上を充填する工程。
・工程B8:ケーシング4を削孔101から引き抜く工程。
【0058】
なお、前記の工程B1~B8は、第1の交換方法によって外部電源方式用の電気防食構造1Aの電気防食用電極装置2Aを交換する場合のものであるが、第1の交換方法によって流電陽極方式用の電気防食構造1Bの電気防食用電極装置2Bを交換する場合の交換方法は、前記の工程B1~B8を下記のように読み替えたものとなる。
・前記工程B1,B3の「電極体20」を「流電陽極25」に読み替える。
・前記工程B2の「電気防食用電極装置2A」を「電気防食用電極装置2B」に読み替える。
・前記工程B6の「新規の電極体20」を「新規の流電陽極25の周囲に新規のバックフィル21が配置された構成の流電陽極ユニット27」に読み替える。
【0059】
工程B1は、電極体20又は流電陽極25から延びるリード線22をボーリングロッド5の内部に収容して仮留めする工程(以下、「リード線収納工程」とも言う。)を有する点で、該リード線収納工程を有さない工程A1と異なる。前記リード線収納工程は、工程B3の「電極体20又は流電陽極25から延びるリード線22を引っ張って電極体20又は流電陽極25を削孔101から取り出す工程」を実施するための準備工程である。したがって、ボーリングロッド5の内部に収容されるリード線22は、電極体20又は流電陽極25から連続していることを要する。
工程B1は、典型的には、電極体20又は流電陽極25から延びるリード線22の該電極体20側又は該流電陽極25側とは反対側の端部を、ボーリングロッド5(ロッド連続体50)の掘削方向の先端(下端)から該ボーリングロッド5(ロッド連続体50)の内部に挿入し、且つ該リード線22を該ボーリングロッド5(ロッド連続体50)の内部を画成する内面(内壁)に仮留めすることで実施される。
リード線22をボーリングロッド5の内部に仮留めする方法は、リード線22をボーリングロッド5の内部に一時的に固定し得る、具体的には、ボーリングロッド5の内部に仮留めされたリード線22が該ボーリングロッド5の常法による使用では落下し難くなるようなものであればよく、例えば、掘削作業等に支障をきたさないことを条件として、ボーリングロッド5の内面に仮留め手段を設置してもよい。また、このような仮留め手段を設置しなくても、リード線22とボーリングロッド5の内面との摩擦を利用して、リード線22をボーリングロッド5の内面に仮留めすることも可能である。
【0060】
本実施形態では、前記の摩擦を利用した仮留め方法が採用されており、具体的には、図5-1に示すように、リード線22の少なくとも一部が電線管29に収容されており、電線管29の外面をボーリングロッドの内面に接触させることで、リード線22をボーリングロッド5の内面に仮留めする。典型的には、リード線22は通常、その保護を目的として略全長が電線管29の内部に収容されており、また、電極体20又は流電陽極25から延びるリード線22の長さは、少なくとも電極体20又は流電陽極25の地面100Sからの深さ、すなわち交換対象の電極体20又は流電陽極25の埋設深度よりも長く、更には通常、該埋設深度よりも軸線方向の長さが長いボーリングロッド5又はロッド連続体50の軸線方向の長さよりも長いところ、この電線管29をボーリングロッド5(ロッド連続体50)の内部で曲折させるなどして、電線管29の複数箇所をボーリングロッド5の内面に接触させることで、その複数箇所における電線管29の外面とボーリングロッド5の内面との摩擦により、電線管29がその内部のリード線22とともにボーリングロッド5の内面に仮留めされ得る。
【0061】
電線管29としては、可撓性を有するとともに、電線管29の外面とボーリングロッド5の内面とに作用する摩擦力(摩擦抵抗)が比較的大きなものが好ましい。後者の摩擦力の条件を満たし得る電線管の一例として、外面に凹凸を有するものが挙げられる。電線管の外面の凹凸のパターンの一例として、電線管の軸線方向(長手方向)と交差する方向に延びる環状の凸条部と環状の凹条部とが該軸線方向に交互に配されたパターンが挙げられる。電線管29の材質は特に制限されず、典型的には合成樹脂製である。電線管29としては、例えば、古河電気工業株式会社製の地中埋設配管「エフレックス」(登録商標)を用いることもできる。
【0062】
工程B2は、電気防食用電極装置2A,2Bの埋設箇所を掘削する点以外は、基本的に工程A2と同じである。電気防食用電極装置2A,2Bの埋設箇所は過去に掘削が行われていて地盤が比較的軟らかいので、新規に土壌を掘削する場合に比べて、掘削が容易で掘削時間の短縮化を図ることができる。工程B2の実施により、図5-1に示すように、削孔101の形成と削孔101へのケーシング4(ケーシング連続体40)の圧入とが並行して行われる。なお、工程B2で生じる掘り屑102には、掘削によって生じた土壌成分の他に、埋設されていた交換対象のバックフィル21が含まれ得る。
【0063】
ボーリングロッド5による掘削が目的深度に達したら、掘削に使用したボーリングロッド5及びケーシング4並びに交換対象の電極体20又は流電陽極25を取り出し、削孔101内を一旦空にする(工程B3)。図5-2には、ボーリングロッド5(ロッド連続体50)を、これに接続されたケーシング4(ケーシング連続体40)とともに、ボーリングマシン9を用いて削孔101から引き抜く様子が示されている。
前記「目的深度」は、交換対象の電極体20又は流電陽極25の埋設深度よりも浅い深度である。典型的には、交換対象の電極体20又は流電陽極25の真上に削孔101が形成され、地上から該削孔101を覗き込んだときに該電極体20又は該流電陽極25を確認できる状態で、工程B3を実施する。
工程B3において、ボーリングロッド5(ロッド連続体50)、ケーシング4(ケーシング連続体40)及び電極体20又は流電陽極25の取り出し方法は特に限定されない。例えば、リード線22を引っ張って削孔101内の電極体20又は流電陽極25を引き上げる場合に、その引き上げ中の電極体20又は流電陽極25が削孔101に残置されたケーシング4(ケーシング連続体40)の内部を通過するようにしてもよく、あるいは削孔101内のボーリングロッド5及びケーシング4をすべて取り出した後に、電極体20又は流電陽極25の引き上げを行ってもよい。
【0064】
工程B3では、工程B1でボーリングロッド5の内部に仮留めされていたリード線22を引っ張って電極体20又は流電陽極25を引き上げることで、これを削孔101から取り出す。ここでいう、「リード線22を引っ張る作業」には、リード線22を直接引っ張る作業(以下、「作業A」とも言う。)、及び、リード線22が仮留めされたボーリングロッド5(ロッド連続体50)を引き上げる(削孔101から引き抜く)作業(以下、「作業B」とも言う。)が包含される。前記作業A及びBは、機械(例えばボーリングマシン9)を用いて行ってもよく、人力で行ってもよい。
前記作業Bに関し、リード線22はボーリングロッド5の内部に仮留めされており、ボーリングロッド5を上下に移動させる程度ではこの仮留めが解除されることは通常無いので、例えば、ボーリングマシン9を用いてボーリングロッド5を引き上げることで、該ボーリングロッド5に仮留めされているリード線22に連結されている、削孔101内の電極体20又は流電陽極25を引き上げることができる。
削孔にロッド連続体50を使用した場合、工程B3では典型的には、ロッド連続体50を構成する複数のボーリングロッド5を最上方に位置するものから順次取り外す作業を行うところ、このとき必要に応じて、ロッド連続体50の内部におけるリード線22の仮留め位置の変更作業を行ってもよい。この仮留め位置の変更作業は、例えば、ロッド連続体50の最上方のボーリングロッド5の内部にリード線22が仮留めされている場合において、該最上方のボーリングロッド5を取り外した場合に、リード線22におけるその取り外したボーリングロッド5の内部に収納されていた部分を、該ロッド連続体50の残りの部分(削孔101に配されている部分)の内部に収納し仮留めするというものである。
【0065】
次に図5-3に示すように、再度、ケーシング4の内部にボーリングロッド5を挿入した状態で、該ケーシング4を該ボーリングロッド5に接離自在に接続した後、ボーリングロッド5及びケーシング4を削孔101に圧入する(工程B4)。ケーシング4(ケーシング連続体40)とボーリングロッド5(ロッド連続体50)とは接続具7によって接続されているので、ボーリングロッド5を削孔101に圧入する動作で、ケーシング4も削孔101に圧入される。この「ボーリングロッド5の削孔101への圧入」には、「ボーリングロッド5による削孔101の掘削」が包含される。すなわち、削孔101が、工程B3でのボーリングロッド5及びケーシング4の削孔101からの引き抜きによって崩壊するなどして土壌成分で埋まってしまった場合は、ケーシング4が接続されたボーリングロッド5による掘削を行ってもよい。
【0066】
ボーリングロッド5及びケーシング4を目的深度まで圧入したら、ボーリングロッド5に対するケーシング4の接続を解除し、ケーシング4を削孔101に残置したまま、ボーリングロッド5をケーシング4の内部から引き抜き(工程B5)、更に工程B6~B8を順次実施する。工程B5~B8は、基本的に前述の工程A3~A6と同じである。
工程B7に関し、典型的には、第1の交換方法の適用対象が電気防食構造1Aの場合は、削孔101に新規のバックフィル21、土壌成分23を順次充填し、第1の交換方法の適用対象が電気防食構造1Bの場合は、削孔101に土壌成分23のみを充填する。
【0067】
次に、本発明の第2の交換方法について説明する。図6には、第2の交換方法の一実施形態を外部電源方式用の電気防食構造1Aに適用した場合における工程の一部が示されている。第2の交換方法については、前述した第1の交換方法と異なる構成を主として説明し、同様の構成は同一の符号を付して説明を省略する。第2の交換方法の特に説明しない構成は、第1の交換方法の同様の構成についての説明が適宜適用される。
【0068】
第2の交換方法は、下記の相違点A,Bにおいて、前述の第1の施工方法の埋設工程と異なる。
1)相違点A:前記工程B1において前記リード線収納工程を有さない点。すなわち第2の交換方法の工程B1は、前記リード線収納工程を有さす、前述の本発明の電気防食施工方法の工程A1と同じである。
2)相違点B:前記工程B3~B5に代えて、下記工程B9を有する点。すなわち第2の交換方法は、工程B1、B2、B9、B6~B8の順で実施される(工程B7と工程B8とは並行して実施可)。
・工程B9:電極体20又は流電陽極25の埋設深度と同じか又はそれよりも深い深度の目的深度まで掘削した後、ボーリングロッド5に対するケーシング4の接続を解除し、ケーシング4を削孔101に残置したまま、ボーリングロッド5をケーシング4の内部から引き抜く。
【0069】
第2の交換方法は、交換対象の旧電極体又は旧流電陽極を削孔から取り出さずに放置する点で特徴付けられる。前記の相違点A,Bはこの特徴に起因するものである。第2の交換方法は、この特徴により、第1の交換方法に比べて作業の効率及び安全性に優れ、作業時間の一層の短縮化を図ることができる。
第2の交換方法では、交換対象の旧電極体又は旧流電陽極の扱い方は特に制限されず、そのままの状態で地中に放置してもよく、ボーリングロッドによる掘削時に該ボーリングロッドによって破砕してもよい。図6には後者の場合が示されている。すなわち図6に示す形態は、第2の交換方法を電気防食構造1Aに適用した場合に、前記工程B9において、ケーシング4(ケーシング連続体40)が接続具7を介して接続されたボーリングロッド5(ロッド連続体50)によって、交換対象の電極体20の埋設深度と同じか又はそれよりも深い深度の目的深度まで掘削する形態であり、図6には、その掘削の過程でボーリングロッド5(削孔ビット6)が交換対象の電極体20に接触し該電極体20が破砕した様子が示されている。電極体20の破砕片は、掘り屑102として削孔101の外部に排出される。
【0070】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。一の実施形態が具備する構成は、他の実施形態が具備し得る。
【符号の説明】
【0071】
1A,1B 電気防食構造
2A,2B 電気防食用電極装置
20 電極体
21 バックフィル
22 リード線
23 土壌成分
24 蓋
25 流電陽極
26 収容体
27 流電陽極ユニット
28 接続箱
29 電線管
3 直流電源装置
4 ケーシング
40 ケーシング連続体
41 雌ねじ部
5 ボーリングロッド
50 ロッド連続体
6 削孔ビット
7 接続具
71 開口
72 係止孔
73 係止ねじ
74 ロッド係止機構
75 雄ねじ部
8 飛散防止具
80 カバー部
81 接続部
82 係止孔
83 係止ねじ
9 ボーリングマシン
10 地中埋設金属体(被防食体)
11 リード線
100 土壌
100S 地面
101 削孔
102 掘り屑
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6