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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】組電池用断熱シート及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20240723BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/651
H01M10/613
H01M10/625
H01M50/204
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020125515
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021738
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直己
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-31012(JP,A)
【文献】特開2012-149658(JP,A)
【文献】特開2019-99984(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187313(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0159340(US,A1)
【文献】特開2019-83150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/658
H01M 10/651
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池における、前記電池セル間に介在される組電池用断熱シートであって、
シリカナノ粒子からなる第1粒子と、前記第1粒子間に分散する金属酸化物からなる第2粒子と、前記第1粒子と前記第2粒子とを結合するバインダと、を含み、
前記第1粒子の含有量は、前記組電池用断熱シート全質量に対して30質量%以上80質量%以下であり、
面圧pを5MPaとした場合の圧縮率kが5%以上40%以下である、組電池用断熱シート。
【請求項2】
前記第1粒子は、平均粒子径が1nm以上100nm以下である、請求項1に記載の組電池用断熱シート。
【請求項3】
前記第2粒子は、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の組電池用断熱シート。
【請求項4】
前記第2粒子はチタニアである、請求項3に記載の組電池用断熱シート。
【請求項5】
前記第2粒子は、平均粒子径が1μm以上50μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項6】
前記バインダの含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して3質量%以上30質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項7】
前記バインダは、メチルセルロース、水溶性セルロースエーテル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース及びこれらの誘導体から選択された少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項8】
前記面圧pを前記圧縮率kで微分することにより得られる微分値をdp/dkとしたとき、前記圧縮率kに対する前記dp/dkが極大値を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項9】
前記圧縮率kが5%以上40%以下の範囲で、前記dp/dkが最初に極大となる第1の極大値が出現する、請求項8に記載の組電池用断熱シート。
【請求項10】
前記第1の極大値は50MPa以上100MPa以下である、請求項9に記載の組電池用断熱シート。
【請求項11】
さらに、前記第1粒子及び前記第2粒子間に分散される繊維を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項12】
前記繊維は無機繊維又は有機繊維である、請求項11に記載の組電池用断熱シート。
【請求項13】
複数の電池セルが、請求項1~12のいずれか1項に記載の組電池用断熱シートを介して配置され、該複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池の電池セル間に介在させる組電池用断熱シート、及び組電池用断熱シートを電池セル間に介在させた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱体から他の物体への熱伝達を抑制するために、発熱体に近接させ、又は少なくとも一部を発熱体に接触させて用いる断熱シートが用いられている。
【0003】
また、近年では、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等の開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0004】
この電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池等に比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。そして、高容量かつ高出力が可能な電池において、電池の内部短絡や過充電等が原因で、ある電池セルが急激に昇温し、その後も発熱を継続するような熱暴走を起こした場合、熱暴走を起こした電池セルからの熱が隣接する他の電池セルに伝播することで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0005】
上記のような組電池の分野において、熱暴走を起こした電池セルから隣接する電池セルへの熱の伝播を抑制し、熱暴走の連鎖を防ぐために、電池セル間に介在させる種々の断熱シートが提案されている。特許文献1には、断熱シートを電池セルなどに挟み込んで使う場合に、特に高荷重下において、エアロゲルが圧縮されて潰れることにより、低荷重時と比較して断熱効果が大きく低下するという課題に対する解決を図った断熱シートの製造方法が開示されている。上記製造方法は、水ガラス組成物に炭酸エステルを加えて作製した塩基性ゾルを、不織布繊維に含浸させ、ヒドロゲル-不織布繊維の複合体を生成する複合体生成工程と、前記複合体を、シリル化剤と混合して表面修飾させる表面修飾工程と、前記複合体に含まれる液体を、前記液体の臨界温度未満及び臨界圧力未満で乾燥することによって除去する乾燥工程と、を含む。そして、前記断熱シートの0.30~5.0MPaにおける圧縮率が40%以下に規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-99984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された製造方法により得られた断熱シートは、もともと潰れやすいエアロゲルに不織布繊維を組み合わせて、所定の面圧下における圧縮率が40%以下となるように調整しているので、シートの反発力は主に不織布繊維によるものである。このため、強い圧力が加わったときには、厚みが薄くなり断熱性能が低下する。また、特に圧縮されやすいエアロゲル成分に歪みが生じることにより、無数のクラックが発生し、粒子脱落の発生原因となる。一旦クラックが発生すると、繰り返し発生する膨張収縮によって、エアロゲル成分が減少し、断熱性能が低下する。
【0008】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、強い圧縮力が加わっても変形しにくく、粒子脱落が発生しにくい構造であり、長期間安定して断熱性能を発揮できる組電池用断熱シート及び組電池用断熱シートを電池セル間に介在させた組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、本発明に係る下記(1)の断熱シートにより達成される。
【0010】
(1) 複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池における、前記電池セル間に介在される組電池用断熱シートであって、
シリカナノ粒子からなる第1粒子と、前記第1粒子間に分散する金属酸化物からなる第2粒子と、前記第1粒子と前記第2粒子とを結合するバインダと、を含み、
前記第1粒子の含有量は、前記組電池用断熱シート全質量に対して30質量%以上80質量%以下であり、
面圧pを5MPaとした場合の圧縮率kが5%以上40%以下である、組電池用断熱シート。
【0011】
また、本発明の断熱シートは、下記(2)~(12)であることが好ましい。
【0012】
(2) 前記第1粒子は、平均粒子径が1nm以上100nm以下である、(1)に記載の組電池用断熱シート。
(3) 前記第2粒子は、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種である、(1)又は(2)に記載の組電池用断熱シート。
(4) 前記第2粒子はチタニアである、(3)に記載の組電池用断熱シート。
(5) 前記第2粒子は、平均粒子径が1μm以上50μm以下である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の組電池用断熱シート。
(6) 前記バインダの含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して3質量%以上30質量%以下である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の組電池用断熱シート。
(7) 前記バインダは、メチルセルロース、水溶性セルロースエーテル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース及びこれらの誘導体から選択された少なくとも1種である(1)~(6)のいずれか1つに記載の組電池用断熱シート。
【0013】
(8) 前記面圧pを前記圧縮率kで微分することにより得られる微分値をdp/dkとしたとき、前記圧縮率kに対する前記dp/dkが極大値を有する、(1)~(7)のいずれか1つに記載の組電池用断熱シート。
(9) 前記圧縮率kが5%以上40%以下の範囲で、前記dp/dkが最初に極大となる第1の極大値が出現する、(8)に記載の組電池用断熱シート。
(10) 前記第1の極大値は50MPa以上100MPa以下である、(9)に記載の組電池用断熱シート。
(11) さらに、前記第1粒子及び前記第2粒子間に分散される繊維を含む、(1)~(10)のいずれか1つに記載の組電池用断熱シート。
(12) 前記繊維は無機繊維又は有機繊維である、(11)に記載の組電池用断熱シート。
【0014】
上記の目的は、本発明に係る下記(13)の組電池により達成される。
【0015】
(13)複数の電池セルが、(1)~(12)のいずれか1つに記載の組電池用断熱シートを介して配置され、該複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組電池用断熱シートによれば、第1粒子と第2粒子とがバインダで結合されているので、バインダの弾力によって、断熱シートに反発力が与えられる。このため、組電池用断熱シートが圧縮されても一定の厚さを確保することができ、断熱性を維持することができる。また、バインダが第1粒子及び第2粒子を保持しているため、断熱シートが圧縮されても、第1粒子及び第2粒子の脱落を防止することができる。
【0017】
また、本発明の組電池用断熱シートによれば、第1粒子の含有量を適切に調整しているため、断熱性を確保することができるとともに、所望量の第2粒子及びバインダを含有させることができる。したがって、第2粒子により輻射伝熱を遮ることができ、バインダによって所定の面圧pと圧縮率kとの関係を確保し、粒子脱落を防止することができる。
【0018】
さらに、本発明の組電池用断熱シートによれば、面圧pを5MPaとした場合の圧縮率kが40%以下であり、高い反発力を有しているので、電池の膨張により圧縮が生じても、潰れにくく一定の厚みを確保でき、断熱性を確保することができる。また、面圧pを5MPaとした場合の圧縮率kを5%以上としているので、電池セルが膨張したり、外力が加わって歪みが生じても、組電池用断熱シートには大きな応力が加わりにくく、割れを防止することができる。
【0019】
本発明の組電池によれば、上記組電池用断熱シートを使用しているので、電池に膨張が生じても断熱シートが一定の厚さで保持され、断熱性を継続して確保できる。したがって、個々の電池の熱暴走トラブルが、隣接する電池へ伝播することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る組電池用断熱シートの構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す組電池用断熱シートを用いた第1の実施形態に係る組電池を模式的に示す断面図である。
図3図3は、繊維を含む組電池用断熱シートを用いた第2の実施形態に係る組電池を模式的に示す断面図である。
図4図4は、縦軸を面圧pとし、横軸を圧縮率kとした場合における、圧縮率kに対する面圧pの変化を示すグラフである。
図5図5は、縦軸を微分値dp/dkとし、横軸を圧縮率kとした場合における、圧縮率kに対する微分値dp/dkの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、強い圧縮力が加わっても変形しにくく、粒子脱落が発生しにくい構造で、長期間安定して断熱性能を発揮できる組電池用断熱シートを提供するために鋭意検討を行った結果、シリカナノ粒子からなる第1粒子と、第1粒子間に分散する金属酸化物からなる第2粒子とが、バインダで結合されていることが重要であることを見出した。
すなわち、組電池用断熱シートが上記構造であるとともに、第1粒子の含有量及び所定の面圧下における断熱シートの圧縮率kを適切に調整することにより、強い圧縮力が加わっても変形しにくく、粒子脱落が発生しにくい構造で、長期間安定して断熱性能を発揮できる組電池用断熱シートを提供することができる。
【0022】
<組電池用断熱シートの基本構成>
図1は、本発明の実施形態に係る組電池用断熱シート10の構成を示す模式図である。また、図2は、図1に示す組電池用断熱シート10を用いた第1の実施形態に係る組電池100を模式的に示す断面図である。断熱シート10には、シリカナノ粒子からなる第1粒子21と、金属酸化物からなる第2粒子22と、上記第1粒子21と上記第2粒子22とを結合するバインダと、が含まれている。バインダは図示されていないが、第1粒子21及び第2粒子22を互いに固定するよう粒子間に存在している。
なお、上記シリカナノ粒子としては、平均粒子径が1nm以上100nm以下であるシリカナノ粒子を用いることが好ましい。また、上記第1粒子21の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して30質量%以上80質量%以下である。また、この組電池用断熱シート10は、面圧pを5MPaとした場合の圧縮率kが5%以上40%以下である。
【0023】
この組電池用断熱シート10の具体的な使用形態としては、図2に示すように、複数の電池セル20間に、組電池用断熱シート10が介在され、複数の電池セル20同士が直列又は並列に接続された状態(接続された状態は図示を省略)で、電池ケース30に格納されて組電池100が構成される。なお、電池セル20は、例えば、リチウムイオン二次電池が好適に用いられるが、特にこれに限定されず、その他の二次電池にも適用され得る。
【0024】
以下に示す説明では、断熱シート10の一方の面10a側に発熱した電池セル20が存在している場合を想定している。このように構成された断熱シート10において、電池セル20が発熱すると、断熱シート10の一方の面10a側から入射した熱の一部は、図1において矢印15aで示すように、互いに接触した第1粒子21を媒介して、断熱シート10の他方の面10bに向かって伝導(固体伝導)される。このとき、第1粒子21として、断熱性を有するシリカナノ粒子を用いているため、断熱シート10の他方の面10bに近づくにしたがって、伝熱量が低減される。
【0025】
また、電池セル20が発熱して、輻射により熱の一部が第2粒子22に到達すると、矢印15bに示すように、金属酸化物である第2粒子22により乱反射されるため、第2粒子22の存在により、断熱シート10の他方の面10bに熱が伝播されることを抑制することができる。さらに、本実施形態では、第1粒子21としてシリカナノ粒子を用いており、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。
さらに上記組電池100において、電池セル20が、使用を繰り返すうちに内部でガスが発生し膨張しても、断熱シート10の内部では、第1粒子21と第2粒子22とを結合するバインダが反発し、電池セル20の膨れに対抗する。したがって、バインダの反発力により、断熱シート10には復元力が与えられ、断熱シート10は一定の厚さを確保することができる。このため、電池セル20が熱暴走しても断熱シートとしての断熱性を維持することができる。
【0026】
また、本実施形態の組電池用断熱シート10によれば、第1粒子21中に第2粒子22が分散し、更にバインダで固定されているので、全体として強度にばらつきがなく、圧縮されても粒子脱落する脆い部分がない。このため、発塵を防止することができるとともに、繰り返しの使用によって粒子脱落による薄肉化が起こりにくく、断熱性の低下を防止することができる。
【0027】
以上より、本実施形態によれば、ある電池セル20が膨張した場合であっても粒子脱落を防止するとともに、優れた断熱性を維持することができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、第1粒子21としてシリカナノ粒子を用いており、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、空隙を多く含み、かさ密度が0.5g/cm程度であるため、例えば、断熱シート10の両側に配置された電池セル20が熱膨張し、その圧力によって断熱シート10が若干変形した場合であっても、粒子同士とバインダの作用により反発力で空隙は残り、シリカ同士の接点の大きさ(面積)が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。
【0029】
さらに、本実施形態において、シリカナノ粒子の粒子間に形成される空隙部は、数10nm程度にとどまるため、空隙部においては、矢印15cで示すような小さな対流が起こるのみであり、空気の移動は妨げられ、対流伝熱を抑制することができる。したがって、第1粒子21としてシリカナノ粒子を用いることにより、断熱シート10の表裏を貫通する伝熱が発生しにくくなり、断熱シート10の断熱性をより一層高めることができる。
【0030】
<組電池用断熱シートの詳細>
次に、組電池用断熱シート10を構成する第1粒子21、第2粒子22及びバインダについて詳細に説明する。
【0031】
(第1粒子の種類)
本実施形態において、第1粒子21としてはシリカナノ粒子を用いる。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等を使用することができる。
また、本実施形態においてシリカナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーのシリカの粒子である。
【0032】
(第1粒子の含有量:断熱シート全質量に対して、30質量%以上80質量%以下)
本実施形態の第1粒子21の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して、30質量%以上80質量%以下である。
断熱シート10中に第1粒子21として含まれるシリカナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、更に空隙が細かく分散しているため、空気の移動を起こりにくくし対流伝熱を抑制する優れた断熱性を有している。
本実施形態の組電池用断熱シート10では、第1粒子21の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して30質量%以上とすることにより、断熱性を確保し、第1粒子21の含有量を80質量%以下とすることにより、第2粒子及びバインダを含有させる空間を十分に確保でき、輻射伝熱を第2粒子22によって遮り、バインダによって所定の面圧pと圧縮率kとの関係を確保できる。
なお、第1粒子21の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して、45質量%以上であることが好ましく、75質量%以下であることが好ましい。また、第1粒子21の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して、55質量%以上であることがより好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
(第1粒子の平均粒子径:1nm以上100nm以下)
上述のとおり、第1粒子21の粒子径は、断熱シート10の断熱性に影響を与えることがあるため、第1粒子21の平均粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、第1粒子21の平均粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、断熱シート10内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。
なお、第1粒子21の平均粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。また、第1粒子21の平均粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0034】
(第2粒子の種類)
本実施形態において、第2粒子22を構成する金属酸化物としては、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ等を使用することができる。特に、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において熱を乱反射する効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0035】
(第2粒子の平均粒子径:1μm以上50μm以下)
第2粒子22の粒子径は、熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、第2粒子22の平均粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、第2粒子22の平均粒子径が1μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させ、本実施形態における第2粒子22の存在範囲(質量比)において、500℃以上の高温度領域において断熱シート10内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。第2粒子22の平均粒子径が50μm以下であると、粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくく、特に伝導伝熱が支配的な500℃未満の通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
【0036】
なお、第2粒子22の平均粒子径は、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが更に好ましい。また、第2粒子22の平均粒子径は、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
本実施形態において第1粒子21及び第2粒子22の平均粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることから求めることができる。
【0037】
(第2粒子22の含有量:断熱シートの全質量に対して5質量%以上40質量%以下)
本実施形態においては、500℃以上の高温度領域における断熱性を向上させるために、断熱シート10が第2粒子22を含んでいるが、第2粒子22の添加量は少量であっても、熱の放射伝導を抑制する効果を得ることができる。また、第1粒子21によって、熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制する効果を得るためには、第1粒子21の添加量を増加させた方が好ましい。このように、第2粒子22の質量比は、通常温度から500℃以上の高温度までの領域における断熱性に影響するため、本実施形態において、第2粒子22の質量比を適切に調整することが好ましい。
【0038】
本実施形態の断熱シート10において、望ましい第2粒子22の質量比は、断熱シート全質量に対して5質量%以上である。第2粒子22の含有量が、断熱シート全質量に対して、5質量%以上であると、特に500℃以上の輻射の影響が大きくなる温度領域で輻射伝熱を抑制でき、高い断熱性が得られると考えられる。
一方、本実施形態の断熱シート10の望ましい第2粒子22の質量比は、断熱シート全質量に対し40質量%以下である。第2粒子22の含有量が、断熱シート全質量に対して40質量%を超えると、第1粒子21及び第2粒子22による十分な効果が得られないことがあり、500℃未満の温度領域において、断熱シート10内における熱の対流伝導又は固体伝導を抑制することが困難となり、断熱性が低下することがある。
【0039】
(バインダの種類)
上述のとおり、本実施形態に係る組電池用断熱シート10は、面圧pと圧縮率kとの良好な関係を確保するために、バインダの種類等を適切に選択することが好ましい。バインダとしては、有機バインダ及び無機バインダ等を用いることができる。本実施形態においては、特に、有機バインダとして、メチルセルロース、水溶性セルロースエーテル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、アクリルエマルジョン及びこれらの誘導体等を使用することが好ましい。また、無機バインダの種類について特に制限しないが、無機バインダとしては、例えばアルミナゾル、シリカゾル等を使用することができる。
【0040】
(バインダの含有量:3質量%以上30質量%以下)
本実施形態において、断熱シート10は、シリカナノ粒子からなる第1粒子21と、金属酸化物からなる第2粒子22とを含み、更に、第1粒子21と第2粒子22とを結合するバインダを含むが、断熱シートの形状を保持するため、バインダの含有量は適切に調整されていることが好ましい。
断熱シート10の全質量に対して、バインダの含有量が3質量%以上であると、断熱シート10からのシリカナノ粒子の脱落を少なくすることができる。また、断熱シート10の全質量に対するバインダの含有量は、5質量%以上であることが好ましい。
【0041】
一方、断熱シート10の全質量に対して、バインダの含有量が30質量%を超えると、第1粒子21と第2粒子22との接点が増加しすぎて、固体伝導を抑制する効果が弱くなり、断熱性が低下するおそれがある。したがって、断熱シート全質量に対するバインダの含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
なお、本実施形態においては、以下に示すとおり、面圧pを5MPaとした場合の断熱シートの圧縮率kを5%以上40%以下に限定しているため、圧縮率kがこの範囲となるように適宜バインダ量を調整することが好ましい。
【0042】
(面圧pを5MPaとした場合の断熱シートの圧縮率k:5%以上40%以下)
本実施形態における組電池用断熱シート10は、面圧pを5MPaとした場合の圧縮率kを40%以下としており、高い反発力を有しているので、電池の膨張により圧縮が生じても、潰れにくく一定の厚みを確保でき、断熱性を確保することができる。一方、面圧pを5MPaとした場合の断熱シート10の圧縮率kを5%以上とすることにより、電池が膨張して歪みが生じたり、振動や衝撃、外部からの変形によって組電池用断熱シート10に歪みが加わった場合であっても、組電池用断熱シート10には大きな応力が発生しにくく、割れを防止することができる。
したがって、面圧pを5MPaとした場合の断熱シート10の圧縮率kは、5%以上40%以下とする。
【0043】
なお、面圧pを5MPaとした場合の断熱シートの圧縮率kは、例えば、万能材料試験機(5567型試験機:インストロンジャパン カンパニイリミテッド製)を使用することにより、測定することができる。
【0044】
(圧縮率kに対するdp/dkが極大値を有すること)
断熱シート10に印加する面圧pを圧縮率kで微分することにより得られる微分値をdp/dkとしたとき、圧縮率kに対するdp/dkが極大値を有していると、面圧pの増加に伴って断熱シート10の反発力が徐々に強くなり、一定の反発力が継続しながら圧縮される。したがって、圧縮率kに対するdp/dkが極大値を有すると、電池セル20に挟まれた組電池用断熱シート10は、圧縮されることにより完全に潰れた状態にはならず、自身の保持力を確保することができる。
【0045】
(圧縮率kに対するdp/dkの最初の極大値(第1の極大値):圧縮率kが5%以上40%以下の範囲に存在すること)
上記のとおり、圧縮率kに対するdp/dkが極大値を有していると、面圧pの増加に伴って断熱シート10の反発力が徐々に強くなる。面圧p及び圧縮率kが0であるとき、dp/dkも0である。そして、圧縮率kが5%以上40%以下の範囲で、最初にdp/dkが極大値となる点(第1の極大値)が出現すると、断熱シート10が完全に潰れる前に、十分な反発力を発揮することができる。このため、組電池用断熱シート10の内部の気孔を確保したまま、強い弾力性が得られ、断熱性を確保するとともに、粒子脱落を防止できる。
【0046】
(dp/dkの第1の極大値:50MPa以上100MPa以下)
第1の極大値が50MPa以上100MPa以下であると、十分な保持力を確保するとともに外部からの変形などが加わっても大きな力が加わりにくく、粒子脱落やクラックを防止することができる。
【0047】
(繊維)
本実施形態の組電池用断熱シートは、更に繊維を含むことが好ましい。繊維を含む組電池用断熱シートを用いた第2の実施形態に係る組電池について、図3を参照して説明する。なお、図3において、図2と同一のものには同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図3に示すように、断熱シート40は、第1粒子21と第2粒子22とを含むとともに、これらの間に分散する繊維23を有している。断熱シート40が繊維23を含んでいると、外力などによりクラックが生じても、繊維23により全体形状を保持することができるため、崩壊を防ぎ、電池ケース30内で所定の位置に保持することができる。繊維23としては、無機繊維又は有機繊維を用いることができる。無機繊維又は有機繊維は熱伝導率が低いため、第1粒子21及び第2粒子22間に分散させた場合であっても、断熱性が低下することがなく、断熱シート40として好適に利用できる。
【0048】
(繊維の含有量:断熱シート全質量に対して、5質量%以上30質量%以下)
上記第2の実施形態に示すように、組電池用断熱シート40が繊維23を含有する場合に、繊維23の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
繊維23の含有量が5質量%以上であると、クラックが入っても十分に形状を保持することができる。また繊維23の含有量が30質量%以下であると、断熱性の高い第1粒子21を充填する空間を十分に確保でき、断熱性を確保することができる。
【0049】
(繊維の平均繊維径:1μm以上20μm以下)
繊維23は、線状又は針状の太径の繊維であり、断熱シート40の電池セル20からの圧力に対する機械的強度及び保形性の向上に寄与する。このような効果を得るために、その平均繊維径が1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。ただし、繊維23が太すぎると、断熱シート40への成形性、加工性が低下するおそれがあるため、20μm以下とすることが好ましく、15μm以下とすることがより好ましい。
【0050】
(繊維の平均繊維長:0.1mm以上300mm以下)
組電池用断熱シート40に繊維23を含有させると、断熱シート40として成形したときに繊維23同士が好適に絡み合い、充分な面圧を得ることができる。このような効果を得るために、繊維23を含有させる場合には、その平均繊維長が0.1mm以上(100μm以上)であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。ただし、繊維23、第1粒子21及び第2粒子22をいったん混合し、後から成形するプロセスを採る場合、繊維23の平均繊維長が長すぎると、原材料の調製時に、繊維23同士の絡み合いが強くなりすぎることがあり、シート状に成形した後に繊維23が不均一に集積しやすくなることがある。したがって、繊維23の平均繊維長は300mm以下であることが好ましく、60mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが更に好ましい。
なお、繊維23の繊維径及び繊維長は、組電池用断熱シート40中のバインダ成分を、溶媒を用いて除去したのち、ピンセットを使用して、成形後のシートから繊維23を破断しないように抜き取り、標準スケールと比較し得ることができる。必要に応じて光学顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0051】
(組電池用断熱シートの製造方法)
続いて、本実施形態に係る組電池用断熱シートの製造方法について詳細に説明する。
本実施形態に係る断熱シート10,40は、第1粒子21、第2粒子22及びバインダと、必要に応じて繊維を含む断熱シート用材料を使用して、押出成形法、湿式抄造法、プレス成形法などにより成形して製造することができる。以下に、断熱シート10,40をそれぞれの成形法により得る場合の製造方法について説明する。
【0052】
[押出成形法による断熱シートの製造方法]
押出成形法では、まず、第1粒子21、第2粒子22及びバインダに、必要に応じて繊維及び助剤等を添加したものに、水などの溶媒を加え混練することにより、ペースト状の原料を調製する。その後、得られたペースト状の原料を、押出成形機のノズルから押し出すことによってグリーンシートを得ることができる。さらに得られたグリーンシートを乾燥させ、適当なサイズに裁断することによって、組電池用断熱シート10,40を得ることができる。上述のとおり、バインダとしては、メチルセルロース及び水溶性セルロースエーテル等を使用することが好ましいが、押出成形法を用いる場合に一般的に使用される有機バインダであれば、特に限定されずに使用することができる。
【0053】
なお、押出成形法による製造方法においては、助剤として、押出時に型となる金属面からの離型性を良好にするための滑剤を使用することができる。滑剤としては、ステアリン、ブチルステアレート、オクチルステアレート、グリセリンモノステアレート等を使用することができる。
【0054】
[湿式抄造法による断熱シートの製造方法]
湿式抄造法では、まず、第1粒子21、第2粒子及びバインダと、必要に応じて含有させる繊維及び助剤等とを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。その後、得られた混合液を、底面に濾過用のメッシュが形成された成形器に流し込み、メッシュを介して混合液を脱水することにより、湿潤シートを作製する。なお、混合液に含有されるバインダは大半が流出してしまうため、抄造後、バインダを含浸してバインダ量を調整してもよい。
また、加熱及び加圧工程の前に、湿潤シートに熱風を通気させて、シートを乾燥する通気乾燥処理を実施してもよいが、この通気乾燥処理を実施せず、湿潤した状態で加熱及び加圧してもよい。
【0055】
[プレス成形法による断熱シートの製造方法]
プレス成形法では、まず、第1粒子21、第2粒子22、バインダ及び溶媒と、必要に応じて繊維及び助剤等とを、撹拌機で撹拌することにより、スラリー状の原料を調製する。得られた原料をプレス成形することによって本実施形態の組電池用断熱シート10,40を得ることができる。
【0056】
本実施形態の組電池用断熱シート10,40は、どのような製造方法を用いてもよいが、面圧pを5MPaとした場合の圧縮率kが5%以上40%以下となるよう適宜バインダ量を調整することができる。
また、本実施形態の組電池用断熱シート10,40は、上記製造方法に限定されず、どのような製造方法を用いても製造することができる。
【0057】
<組電池>
図2に例示したように、上記第1の実施形態に係る組電池100は、複数の電池セル20間に、上記の組電池用断熱シート10が介在されており、複数の電池セル20が直列又は並列に接続された状態で、電池ケース30に格納されたものである。
断熱シート10は、圧縮された状態で電池セル20間に保持されている。このため断熱シート10は、電池セル20に挟まれて位置ずれしにくくすることができる。
【0058】
また、図3に例示したように、上記第2の実施形態に係る組電池110は、複数の電池セル20が上記の組電池用断熱シート40を介して配置され、複数の電池セル20が直列又は並列に接続された状態で、金属製の電池ケース30に格納されたものである。
断熱シート40は、繊維23により全体形状が保持され、圧縮された状態で電池セル間に保持されている。このため断熱シート40は、電池セル20に挟まれて位置ずれしにくくすることができるとともに、高温時においても崩壊を防止することができる。
【実施例
【0059】
以下に、本実施形態に係る組電池用断熱シートの実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
下記に表1に示す第1粒子、第2粒子、バインダ、繊維及び助剤を準備し、これらの材料を十分に攪拌混合して、原材料とした。
次に、上記原材料に水を加え、ペースト状にした後に押出成形した後、これを乾燥させることにより、断熱シートNo.1を得た。また、上記原材料に水を加えてスラリーを調整し、得られたスラリーをシート状に成形し、これを乾燥させることにより、断熱シートNo.5を得た。更に、上記スラリーをシート状に成形した後にプレスして密度を調整し、これを乾燥させることにより断熱シートNo.2~4を得た。ただし、断熱シートNo.2~4は、密度が0.4~0.65g/cmとなるようにプレス圧を調整した。また、断熱シートNo.1~5の乾燥は全て110℃で実施し、得られた断熱シートのサイズは、幅が80mm、長さが80mm、厚さが1mmであった。断熱シートの密度を下記表1に併せて示す。
【0061】
なお、第1粒子としてシリカナノ粒子(平均粒子径5nm)、第2粒子としてチタニア(平均粒子径8μm)、バインダとして熱可塑性樹脂、繊維として無機繊維(平均繊維径5μm、平均繊維長100μm=0.1mm)を使用した。また、押出成形のNo.1の断熱シートでは、助剤として滑剤を使用し、プレスにより密度を変化させたNo.2~5の断熱シートでは、助剤として凝集剤を使用した。
【0062】
【表1】
【0063】
各断熱シートについて、圧縮しながら面圧を測定した。面圧は、万能材料試験機(5567型試験機:インストロンジャパン カンパニイリミテッド製)を使用することにより測定した。なお、サンプルサイズは25mm×25mmとし、圧縮速度は0.5mm/分として測定した。
縦軸を面圧pとし、横軸を圧縮率kとした場合における、圧縮率kに対する面圧pの変化を図4に示し、縦軸を微分値dp/dkとし、横軸を圧縮率kとした場合における、圧縮率kに対する微分値dp/dkの変化を図5に示す。
【0064】
また、面圧pを5MPaとしたときの圧縮率kを算出するとともに、上記微分値dp/dkが極大値を有する場合に、最初の極大値(第1の極大値)が出現したときの圧縮率kとその極大値を観測した。更に、5MPaの面圧を印加したときに、粒子の脱落の有無を確認するとともに、5MPaの面圧を解除した後に各断熱シートの厚さを測定し、元の厚さに対する比(復元率)を算出した。復元率は、70%以上であると、変形が防止され、断熱性の低下を抑制することができると判断した。
測定結果を下記表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
断熱シートNo.1は、押出成形により圧力が加わりながら成形されているため、シート状に成形した後に種々の密度となるようにプレスした断熱シートNo.2~5と同等に高密度化されたものとなった。また、断熱シートNo.1~5は、原材料にバインダが含まれているため、圧縮されても粒子脱落は確認されなかった。さらに、断熱シートNo.1~4は、所定の第1粒子、第2粒子及びバインダを含有し、第1粒子の含有量が所定の範囲内であるとともに、面圧pを5MPaとしたときの圧縮率kが5%以上40%以下となった実施例である。したがって、70%以上の復元率を確保することができ、粒子の脱落は確認されなかった。すなわち、断熱シートNo.1~4については、5MPaの面圧が加わって圧縮されても、元に復元する力が大きいため、断熱性の低下を抑制することができることが確認された。
【0067】
また、実施例の断熱シートのうち、特に、断熱シートNo.1及び2は、面圧を測定した範囲(0~10MPa)内で微分値dp/dkの極大値が確認された。また、最初に極大となる第1の極大値は圧縮率kの大きさが5%以上40%以下の範囲にあり、その大きさは50MPa~100MPaの範囲にあることが確認された。したがって、復元率が90%を超え、他の実施例と比較して、断熱性の低下を抑制する効果をより一層得ることができた。
断熱シートNo.3~5は、微分値dp/dkの極大値が確認されなかったため、表2中において「-」と表記している。
【0068】
一方、断熱シートNo.5は、面圧pを5MPaとしたときの圧縮率kが40%を超えている比較例であり、バインダが含有されているので、粒子の脱落は確認されなかったが、復元率が61.7%と著しく低くなり、断熱性の低下を抑制することができないものとなった。
【符号の説明】
【0069】
10、40 断熱シート
10a、10b 面
20 電池セル
21 第1粒子
22 第2粒子
23 繊維
30 電池ケース
100、110 組電池
図1
図2
図3
図4
図5