(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240723BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240723BHJP
【FI】
G06Q50/06
C02F1/00 D
(21)【出願番号】P 2020132494
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】大江 太郎
【審査官】阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-139035(JP,A)
【文献】特開2003-114989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理システムへ流入される被処理水について所定の処理を行う複数の単位操作の最適処理経路を、前記被処理水の水質と、設定された制約条件と、前記複数の単位操作それぞれの仕様(性能)とに基づいて算出する算出部と、
前記算出部が算出した最適処理経路を示す情報を出力する出力部とを有
し、
前記複数の単位操作は、該単位操作が行う処理に基づいて、所定のグループに分類され、
前記算出部は、数理計画法またはシミュレーションを用いてグループ内最適処理経路および前記グループ間の処理順序を算出し、該算出したグループ内最適処理経路を前記処理順序に接続して、前記最適処理経路を算出する情報処理システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の情報処理システムにおいて、
前記算出部は、あらかじめ設定された、実際に用いられない順序を、前記最適処理経路の算出の対象外とする情報処理システム。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の情報処理システムにおいて、
前記出力部は、前記算出部が算出した最適処理経路を示す情報を、前記制約条件を設定した利用者が所有する通信装置へ送信する情報処理システム。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
前記出力部は、前記算出部が算出した最適処理経路を示す情報を、所定の画面に表示する情報処理システム。
【請求項5】
水処理システムへ流入される被処理水について所定の処理を行
い、該処理に基づいて、所定のグループに分類された複数の単位操作の最適処理経路を、前記被処理水の水質と、設定された制約条件と、前記複数の単位操作それぞれの仕様(性能)とに基づいて
コンピュータが算出する処理と、
前記算出した最適処理経路を示す情報を
前記コンピュータが出力する処理と
、
前記コンピュータが、数理計画法またはシミュレーションを用いてグループ内最適処理経路および前記グループ間の処理順序を算出し、該算出したグループ内最適処理経路を前記処理順序に接続して、前記最適処理経路を算出する処理とを行う情報処理方法。
【請求項6】
コンピュータに、
水処理システムへ流入される被処理水について所定の処理を行
い、該処理に基づいて、所定のグループに分類された複数の単位操作の最適処理経路を、前記被処理水の水質と、設定された制約条件と、前記複数の単位操作それぞれの仕様(性能)とに基づいて算出する手順と、
前記算出した最適処理経路を示す情報を出力する手順と
、
数理計画法またはシミュレーションを用いてグループ内最適処理経路および前記グループ間の処理順序を算出し、該算出したグループ内最適処理経路を前記処理順序に接続して、前記最適処理経路を算出する手順とを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の水処理システムにおいては、流入された廃液をあらかじめ設定された基準を満たす水が得られるように、様々な処理過程(単位操作)を経由して処理が施される。例えば、出口水質が処理水水質を満たす装置カテゴリを検索し、検索された装置カテゴリを多段処理の最後段の装置カテゴリとして選定し、選定された最後段の装置カテゴリの入口水質が原水水質を満たすまで、装置カテゴリの選定および多段処理への追加を行うシステムが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。また、複数の水処理ユニットおよび水処理ユニット間を接続するストリームを含む水処理フローを表示し、表示した水処理フローにおける物質収支および熱収支を計算する装置が考えられている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、水処理の要素情報とコスト情報とを入力情報に基づいて検索し、検索した要素情報とコスト情報とに基づいて生成した水処理システム案と、その水処理システム案がもたらすコスト低減効果とを関連付けて提示する装置が考えられている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-220389号公報
【文献】特開2018-75539号公報
【文献】国際公開2018/155208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術においては、多段を構成するある段の装置で処理した水をそれよりも前の段の装置に戻して処理を行うような、複雑なシステムには適用できない。また、特許文献2に記載された技術においては、処理フローをシステムの管理者が構築しなければならず、その手間がかかってしまうという問題点がある。また、特許文献3に記載された技術においては、どのような入力情報が入力された場合にどのような要素情報とコスト情報とが検索されるのかといった、検索メカニズムが不明である。このように、上述した技術においては、必要な条件に適した水処理フローを構築することができないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、必要な条件に適した水処理フローを構築することができる情報処理システム、情報処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水処理システムへ流入される被処理水について所定の処理を行う複数の単位操作の最適処理経路を、前記被処理水の水質と、設定された制約条件と、前記複数の単位操作それぞれの仕様(性能)とに基づいて算出する算出部と、
前記算出部が算出した最適処理経路を示す情報を出力する出力部とを有する情報処理装置である。
【0007】
前記複数の単位操作は、該単位操作が行う処理に基づいて、所定のグループに分類され、
前記算出部は、数理計画法またはシミュレーションを用いてグループ内最適処理経路および前記グループ間の処理順序を算出し、該算出したグループ内最適処理経路を前記処理順序に接続して、前記最適処理経路を算出することが好ましい。
【0008】
前記算出部は、あらかじめ設定された、実際に用いられない順序を、前記最適処理経路の算出の対象外とすることが好ましい。
【0009】
前記出力部は、前記算出部が算出した最適処理経路を示す情報を、前記制約条件を設定した利用者が所有する通信装置へ送信することが好ましい。
【0010】
前記出力部は、前記算出部が算出した最適処理経路を示す情報を、所定の画面に表示することが好ましい。
【0011】
また、本発明は、水処理システムへ流入される被処理水について所定の処理を行う複数の単位操作の最適処理経路を、前記被処理水の水質と、設定された制約条件と、前記複数の単位操作それぞれの仕様(性能)とに基づいて算出する処理と、
前記算出した最適処理経路を示す情報を出力する処理とを行う情報処理方法である。
【0012】
また、本発明は、コンピュータに、
水処理システムへ流入される被処理水について所定の処理を行う複数の単位操作の最適処理経路を、前記被処理水の水質と、設定された制約条件と、前記複数の単位操作それぞれの仕様(性能)とに基づいて算出する手順と、
前記算出した最適処理経路を示す情報を出力する手順とを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、必要な条件に適した水処理フローを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の情報処理システムの一形態を示す図である。
【
図2】単位操作のグループ分類の一例を示す図である。
【
図3】各単位操作における処理のランキングの一例を示す図である。
【
図5】浄化処理におけるグループ間の処理経路の一例を示す図である。
【
図6】
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図1に示した出力部における最適処理経路を示す情報の出力の一態様を示す図である。
【
図8】
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法の他の例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の情報処理システムの一形態を示す図である。本形態は
図1に示すように、算出部100と、出力部200と、データベース300とを有する。
【0017】
算出部100は、本発明の情報処理システムである水処理システムへ流入される被処理水について所定の処理を行う複数の単位操作の最適処理経路を、流入される被処理水の水質と、設定された制約条件と、複数の単位操作それぞれの仕様(性能)とに基づいて算出する。水処理システムへ流入される被処理水は、例えば、河川水・湖沼水、工業用水などの上水や純水の原水、下水や半導体製造工場、化学工場、食品工場などの様々な工場から排出される排水・廃液等である。なお、本明細書では、処理の対象を「水」と表現するが、これに限定するものではなく、例えば、他の液体であっても良い。以下、被処理水が排水である場合を例に挙げて説明する。また、被処理水の水質および制約条件は、外部から設定される値である。この制約条件は、処理を行う上での利用者(本システムを運用・管理する運用者や管理者、処理後の処理水を利用するエンドユーザを含む)が外部から設定する条件であって、例えば、処理に用いる装置の数、処理に用いる薬品の数・種類、処理を行う際の操作の手間数、処理に用いる装置の設置面積等の装置規模、処理後に流出される処理水の温度、処理を行う装置を準備するために係る費用、処理を行う際に係る費用、処理後に流出される処理水の性状、濃縮液の性状や含有する不純物の量、処理後の処理水の回収率等、またはこれらの制約条件のうちどれを優先するか等、本システムを利用して水を処理する際に制約される条件である。また、単位操作とは、沈殿やろ過などの水処理における各処理工程である。また、単位操作の仕様(性能)とは、流入する被処理水である原水の許容濃度や処理流量、除去率、回収率、イニシャルコスト、ランニングコスト、処理装置の規模、処理水の水質等、その単位操作における処理に関する情報である。また、算出部100は、後述する
図2に示すような、あらかじめ設定された除去・処理の対象ごとに複数の単位操作が分類されたグループについて要求されたグレードごとに数理計画法またはシミュレーションを用いてグループ内最適処理経路およびグループ間の最適処理経路(処理順序)を算出し、算出した各グループ内最適処理経路を算出した処理順序に接続して、最適処理経路を算出する。また、算出部100は、実際に用いられない単位操作が行う処理の順序としてあらかじめ設定されたものについては、最適処理経路の算出に用いない。また、算出部100は、最適処理経路として、処理費用が最も低くなる経路を算出するものであっても良い。
【0018】
出力部200は、算出部100が算出した最適処理経路を示す情報を出力する。このとき、出力部200は、算出部100が算出した最適処理経路を示す情報を、制約条件を設定した利用者が所有する通信装置へ送信するものであっても良い。また、出力部200は、算出部100が算出した最適処理経路を示す情報を、所定の画面に表示するものであっても良い。
【0019】
データベース300は、原水の水質や、制約条件、単位操作の仕様(性能)があらかじめ記憶されている。なお、これらの情報は、データベース300にあらかじめ登録されているものに限らず、算出部100が最適処理経路を算出する際に、外部から入力されるものであっても良い。特に、制約条件は、外部から設定される情報であって、あらかじめ入力されてデータベース300に登録される。
【0020】
図2は、単位操作のグループ分類の一例を示す図である。
図2に示すように、「凝集沈殿」、「膜ろ過(UF膜)」、「活性汚泥」等の複数の単位操作が、除去・処理対象および要求処理水グレードごとにいくつかのグループに分類されている。このグループは、
図1に示したデータベース300にあらかじめ登録されている。
【0021】
例えば、下水(排水)放流グレードにおいては、「沈殿」、「加圧浮上」、「遠心分離」、「繊維ろ過」、「砂ろ過」、「膜ろ過(MF膜、UF膜、NF膜)」および「フィルター」が濁質除去のグループに分類されている。また、水回収(用水)/工水グレードにおいては、「沈殿」、「加圧浮上」、「遠心分離」、「繊維ろ過」、「砂ろ過」、「膜ろ過(MF膜、UF膜、NF膜)」および「フィルター」が濁質除去のグループに分類されている。
また、下水(排水)放流グレードにおいては、「吸着剤(イオン交換他)」、「膜ろ過(NF膜、RO膜)」、「ED(電気透析)」、「EDI(電気脱塩)」および「アルカリ、酸化(除鉄、除Mn含む)」がイオン除去のグループに分類されている。また、水回収(用水)/工水グレードにおいては、「吸着剤(イオン交換他)」、「膜ろ過(NF膜、RO膜)」、「ED(電気透析)」、「EDI(電気脱塩)」および「アルカリ、酸化(除鉄、除Mn含む)」がイオン除去のグループに分類されている。また、純水グレードにおいては、「吸着剤(イオン交換他)」、「膜ろ過(NF膜、RO膜)」、「ED(電気透析)」および「EDI(電気脱塩)」がイオン除去のグループに分類されている。また、超純水グレードにおいては、「吸着剤(イオン交換他)」、「膜ろ過(NF膜、RO膜)」、「ED(電気透析)」および「EDI(電気脱塩)」がイオン除去のグループに分類されている。
また、下水(排水)放流グレードにおいては、「活性汚泥」、「MBR」、「生物活性炭」、「生物膜法」、「嫌気処理」、「UVox」、「UV+酸化剤」、「フェントン」、「酸化剤(オゾン、塩素、過硫酸、H2O2等)」、「吸着剤(活性炭、イオン交換等)」、「凝集」および「膜ろ過(MF膜、UF膜、NF膜、RO膜)」が有機物除去・脱色のグループに分類されている。また、水回収(用水)/工水グレードにおいては、「活性汚泥」、「MBR」、「生物活性炭」、「生物膜法」、「UVox」、「UV+酸化剤」、「フェントン」、「酸化剤(オゾン、塩素、過硫酸、H2O2等)」、「吸着剤(活性炭、イオン交換等)」、「凝集」および「膜ろ過(MF膜、UF膜、NF膜、RO膜)」が有機物除去・脱色のグループに分類されている。また、純水グレードにおいては、「生物活性炭」、「生物膜法」、「UVox」、「UV+酸化剤」、「酸化剤(オゾン、塩素、過硫酸、H2O2等)」、「吸着剤(活性炭、イオン交換等)」、「凝集」および「膜ろ過(MF膜、UF膜、NF膜、RO膜)」が有機物除去・脱色のグループに分類されている。また、超純水グレードにおいては、「UVox」、「UV+酸化剤」、「酸化剤(オゾン、塩素、過硫酸、H2O2等)」、「吸着剤(活性炭、イオン交換等)」および「膜ろ過(MF膜、UF膜、NF膜、RO膜)」が有機物除去・脱色のグループに分類されている。分類される単位操作に制限はなく、上記以外の分類や処理技術が含まれて良い。
【0022】
図1に示した算出部100は、
図2に示すような、データベース300に記憶されているグループごとに、そのグループ内の単位操作について、原水の水質、制約条件および単位操作の仕様(性能)に基づいて、単位操作の要不要や、処理の順序を算出する。単位操作の仕様(性能)については、後述する。
【0023】
図3は、各単位操作における処理のランキングの一例を示す図である。
図3に示すように、各単位操作について、その単位操作を用いて処理する(処理した)場合のその性能をランキングとして示す。このランキングは、
図1に示したデータベース300に記憶されている。
図3に示すように、原水SS濃度については、凝集沈殿、無機膜、遠心分離、有機膜の順でランキングが高い。また、除去率については、有機膜および無機膜、遠心分離、の順でランキングが高い。また、回収率については、沈殿凝集、無機膜、遠心分離、有機膜の順でランキングが高い。また、イニシャルコストについては、凝集沈殿、有機膜、無機膜、遠心分離の順でランキングが高い(低コスト)。また、ランニングコストについては、凝集沈殿、無機膜、有機膜、遠心分離の順でランキングが高い(低コスト)。また、規模(設置面積)については、遠心分離、無機膜、有機膜、凝集沈殿の順でランキングが高い。また、水質については、無機膜および有機膜、遠心分離、凝集沈殿の順でランキングが高い。なお、ランキングではなく、実際の数値がデータベース300に記憶されているものであっても良い。実際の数値とは、例えば、イニシャルコストであれば実際の価格や、除去率であれば99%や90%といったその率(何パーセントを示す数値)でも良い。
【0024】
図3に示したランキングのうち原水SS濃度を例に挙げて説明する。本システムにおいての各単位操作において、凝集沈殿では原水SSの値が5000mg/L以下であり、有機膜を用いた操作では原水SSの値が100mg/L以下であり、無機膜を用いた操作では原水SSの値が300mg/L以下であり、遠心分離を用いた操作では原水SSの値が200mg/L以下であると、原水SS濃度について
図3に示したようなランキングとなる。
【0025】
図1に示した算出部100は、
図3に示したようなランキングを参照して、原水の水質および制約条件に応じた最適処理経路を算出する。例えば、各単位操作の原水SSの値が上述したような値であると、流入される原水のSSの値が300mg/Lである場合、算出部100は、最適処理経路を算出する際に原水SSの値が100mg/L以下である有機膜の処理および許容入口SSの値が200mg/L以下である遠心分離の処理を最初に行うような経路を算出しない。また、上述したように、算出部100は、実際に用いられない順序は最適処理経路の算出に用いない(算出の対象外とする)。実際に用いられない順序としては、例えば、有機膜や無機膜を用いた処理の後に凝集沈殿の処理を行うような順序が挙げられる。上述したように、凝集沈殿では原水SSの値が5000mg/L以下であり、有機膜を用いた処理では原水SSの値が100mg/L以下であり、無機膜を用いた処理では原水SSの値が300mg/L以下であると、算出部100は、有機膜を用いた処理または無機膜を用いた処理を凝集沈殿の処理よりも先に行うような順序となる経路を算出しない。例えば、このような、細かな浄化処理の後に荒い浄化処理を行うという順序は、実際に用いられない順序として設定されている。そのため、算出部100は、最適処理経路を算出する際、このような実際に用いられない順序を最適処理経路の算出に用いない。また、最も優先される制約条件が処理全体のコストを抑えたいというものである場合、イニシャルコストおよびランニングコストの高い遠心分離の処理を使用しないような経路を算出部100は算出する。また、最も優先される制約条件が処理装置の規模を小さなものにするというものである場合、規模のランキングが低い凝集沈殿の処理を使用しないような経路を算出部100は算出する。
【0026】
このほか、算出部100が行う最適処理経路の算出方法の例を以下に説明する。以下の条件が成立する場合を例に挙げる。例えば、3つの単位操作L,M,Nがあり、
単位操作M・Nの許容水質(不純物量)>供給水質>単位操作Lの許容水質
単位操作Nの処理水質(不純物量)>単位操作Lの処理水質>単位操作Mの処理水質
である場合を例に挙げる。ここで、許容水質とは、その単位操作で処理が可能な流入する水の水質である。また、供給水質とは、その単位操作に流入(供給)される水の水質である。
また、処理水質とは、その単位操作における処理後の処理水の水質である。この例では、供給水質が単位操作Lの許容水質より高く、単位操作M・Nの許容水質よりも低い場合、算出部100は、単位操作Lを算出の対象外とし、単位操作M・Nのみを算出の対象とする。また、単位操作Mの処理水の水質が単位操作Lの処理水の水質よりも低い場合は、算出部100は、単位操作Mの処理に続いて単位操作Lの処理をつなぐ経路を算出の対象外とする。
また、単位操作Nの処理水の水質が単位操作Lの処理水の水質よりも高く、かつ、単位操作Lの許容水質を下回っている場合、算出部100は、単位操作Nの処理に続いて単位操作Lの処理をつなぐ経路を算出の対象とする。
【0027】
また、あらかじめ決まっている単位操作の順序については、データベース300にユニットとして登録されているものであっても良い。例えば、凝集→沈殿→砂ろ過という単位操作の順序は、この順序を1つの濁質除去ユニットとして登録しておく。また、RO→UV酸化→イオン交換樹脂という単位操作の順序は、この順序を1つの有機物除去ユニットとして登録しておく。
【0028】
単位操作の順序があらかじめ決められているユニットについては、例えば、以下のようなユニットが挙げられる。
1.カチオン交換樹脂塔(K塔)→脱炭酸塔(D塔)→アニオン交換樹脂塔(A塔)
この順序を2床3塔方式(2B3T)として1つのユニットとして登録しておく。この順序では、まず、カチオン交換樹脂塔でナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムといったカチオン成分が除去される。カチオン成分が除去された処理水は弱酸性である。カチオン交換樹脂塔でカチオン成分が除去されることが、次の順序の脱炭酸塔での炭酸の除去に効果的である。炭酸は酸性領域では遊離の炭酸の化学形態をとるため、脱炭酸塔で処理水を曝気すると、処理水から炭酸成分が大気中に抜けていく。炭酸はアニオン交換樹脂の負荷となる。そのため、カチオン交換樹脂塔での処理の後に脱炭酸塔での処理を行う順序とすることで、アニオン交換樹脂塔の負荷を低減することができる。その後、アニオン交換樹脂塔で、処理水に残存している塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、シリカなどのアニオン成分が吸着除去されて純水が得られる。このような構造では、上流側から順番に溶存しているイオン成分を除去していくことが2床3塔の特徴である。
2.軟化→アルカリ添加→RO
この順序を1つのアルカリRO法のユニットとして登録しておく。
3.2B3T→RO
上述した「1」で説明したユニットの後段にROを接続した順序を1つのユニットとして登録しておく。
【0029】
図4は、処理経路の一例を示す図である。
図4に示すように、原水0が流入されて、凝集1、沈殿2、有機膜3および無機膜4の処理が行われ、処理水5または排水6として流出される。その処理経路は、
図4に示すように複数パターンが存在し、それぞれの単位操作の仕様(性能)に基づいて、設定された処理水の水質や制約条件を満たすように最適な処理経路が選択される。ここで、
図1に示した算出部100が最適処理経路を行う際、
図2に示したようなグループごとに分類された各単位操作について、
図3に示したようなランキングを参照して、そのランキングから設定された処理水の水質や制約条件を満たすように最適なグループ内最適処理経路を選択する。このとき、算出部100は、
図2に示したようなグループごとに数理計画法を用いて、単位操作をどのような順序で行えば所望の出力が得られるかについて、
図3に示したようなランキングを参照して、単位操作を選択し、グループ内最適処理経路を算出する。
【0030】
ここで、
図2に示したグレードについて説明する。
図2に示したグレードは、上述したグループよりも大きな枠組の概念を持つ。本システムにおいて、
図2に示したような水処理グループを求める水質のグレード別に分割し、算出部100は、そのグレード内のみについて算出するものであっても良い。各グレードは原水の水質および処理水の水質に基づいて、自動または手動にて決定し、算出部100は、各グレード内の単位操作の並びのみを算出する。例えば、
図2に示した排水処理グレード→水回収グレード→純水グレード→超純水グレードといったグレードの並びを設定した上で、各グレードに対してユニットや単位操作の並びを算出するものであっても良い。
【0031】
図5は、浄化処理におけるグループ間の処理経路の一例を示す図である。
図5に示した浄化処理は、濁質除去と、有機物除去と、イオン除去とが順番に行われる。
図1に示した算出部100は、濁質除去では原水に対するその出力水であるA点での水質が設定されている水質を満たすように濁質除去のグループ内の経路を最適処理経路として算出する。また、
図1に示した算出部100は、有機物除去では濁質除去の出力水に対するその出力水であるB点での水質が設定されている水質を満たすように有機物除去のグループ内の経路を最適処理経路として算出する。算出部100は、算出したグループ内最適処理経路と、
図5に示したような処理経路とを用いて、最適処理経路を算出する。このグループ間の処理経路(処理順序)についても、原水の水質、制約条件および単位操作の仕様(性能)に基づいて、算出部100が算出したものである。有機物除去のグループに分類された各単位操作は、濁質除去の出力水を原水として処理を行う。また、イオン除去のグループに分類された各単位操作は、有機物除去の出力水を原水として処理を行う。
【0032】
以下に、
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法について説明する。
図6は、
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
まず、算出部100が、処理対象となる被処理水の水質を示す情報を受け付ける(ステップS1)。また、算出部100が、処理に要求される制約条件を示す情報を受け付ける(ステップS2)。これらの情報の入力については、外部から入力部(不図示)が受け付けた所定の操作に基づいて、情報が入力され、算出部100がその情報を受け付けて設定されるものであっても良い。ここで、入力部は、算出部100が設けられている装置に具備された、タッチパネルや入力キー、キーボードやマウスを用いた文字入力手段であっても良い。このステップS1の処理とステップS2の処理との順序については、どちらを先に行っても良い。続いて、算出部100が、データベース300にあらかじめ設定されている単位操作が分類された処理グループを読み出す(ステップS3)。すると、算出部100は、最適処理経路を算出する(ステップS4)。このとき、算出部100は、グループごとに分類された各単位操作の仕様(性能)に基づいて、設定された制約条件を満たすようにグループごとにグループ内最適処理経路およびグループ間の最適処理経路(処理順序)を算出し、算出したグループ内最適処理経路を算出した処理順序に接続して、システム全体の最適処理経路を算出する。
算出部100が、最適処理経路を算出すると、算出された最適処理経路を示す情報を出力部200が所定の画面に表示する(ステップS5)。
【0033】
図7は、
図1に示した出力部200における最適処理経路を示す情報の出力の一態様を示す図である。
図7に示すように、グループの処理内容およびグループ内の処理内容が行われる順序に従って表示される。
【0034】
図8は、
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法の他の例を説明するためのフローチャートである。
まず、算出部100が処理対象となる被処理水の水質を示す情報を受け付ける(ステップS11)。また、算出部100が、処理に要求される制約条件を示す情報を受け付ける(ステップS12)。これらの情報の入力については、外部から入力部(不図示)が受け付けた所定の操作に基づいて、情報が入力され、算出部100がその情報を受け付けて設定されるものであっても良い。ここで、入力部は、算出部100が設けられている装置に具備された、タッチパネルや入力キー、キーボードやマウスを用いた文字入力手段であっても良い。このステップS11の処理とステップS12の処理との順序については、どちらを先に行っても良い。続いて、算出部100が、データベース300にあらかじめ設定されている単位操作が分類された処理グループを読み出す(ステップS13)。すると、算出部100は、最適処理経路を算出する(ステップS14)。このとき、算出部100は、グループごとに分類された各単位操作の仕様(性能)に基づいて、設定された出力品質および制約条件を満たすようにグループごとにグループ内最適処理経路およびグループ間の最適処理経路(処理順序)を算出し、算出したグループ内最適処理経路を算出した処理順序に接続して、システム全体の最適処理経路を算出する。
算出部100が、最適処理経路を算出すると、算出された最適処理経路を示す情報を出力部200が所定の装置へ送信する(ステップS15)。このときの送信先は、制約条件を設定した利用者が所有する通信装置であっても良い。この通信装置は、例えば、利用者のうち運用・管理する運用者や管理者が所有または操作する通信装置であっても良いし、処理後の処理水を利用するエンドユーザが所有する通信装置であっても良い。
【0035】
このように、本発明の情報処理システムは、水処理システムへ流入される廃液について要求された出力品質を満たすために処理を行う複数の単位操作の最適処理経路を、廃液の入力品質と要求された制約条件と複数の単位操作それぞれの仕様(性能)とに基づいて算出して、算出した最適処理経路を示す情報を出力する。そのため、必要な条件に適した水処理フローを構築することができる。
【0036】
また、算出部100が算出した最適処理経路は、入力品質と制約条件と対応付けてサンプルデータとしてデータベース300に登録しておき、算出部100がそれ以降の最適処理経路の算出に用いるものであっても良い。つまり、廃液の入力品質と制約条件とが指定された際、機械学習機能を活用して、データベース300に登録されているサンプルの中から、その廃液の入力品質と制約条件とに合致したものを算出部100が検索し、そのときの最適処理経路を出力するものや、データベース300に登録されているサンプルの中から、その廃液の入力品質と制約条件とに近いものを算出部100が検索し、そのときの最適処理経路を類推することで算出していくものであっても良い。また、算出部100が算出した結果に、それぞれの検索した結果に応じたスコアを付与し、次回の検索からはスコアの高いものを算出部100が検索していくものであっても良い。
【0037】
また、算出部100が算出した最適処理経路をデータベース300に登録していく場合、登録された最適処理経路を共有できるように、本システムとは異なる他のシステムからデータベース300をアクセス可能な構成とするものであっても良い。この場合、他のシステムからデータベース300へのアクセスは、パスワード等を用いてあらかじめ登録されたシステムからのみのアクセスに制限するものであっても良い。また、データベース300に登録された最適処理経路については、本システムの外部からキーワード検索できるような構成とするものであっても良い。
【0038】
なお、以上説明した形態においては、廃液の処理を行う際の最適処理経路を算出するものについて説明したが、本発明は、廃液処理のほか、流体処理や、樹脂生成処理、食品加工処理についても適用可能である。
【0039】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。また、
図1に示した算出部100と、出力部200と、データベース300とを1つの装置に具備させて、その装置が上述した処理を行うものであっても良い。
【0040】
上述した各構成要素が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を情報処理システムにて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを情報処理システムに読み込ませ、実行するものであっても良い。廃情報処理システムにて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、情報処理システムに内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、情報処理システムに設けられたCPU(不図示)にて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0041】
100 算出部
200 出力部
300 データベース