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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240723BHJP
   G01S 19/53 20100101ALI20240723BHJP
   G01S 19/37 20100101ALI20240723BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 303E
G01S19/53
G01S19/37
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020133985
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030180
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】足立 周一
(72)【発明者】
【氏名】林田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】錦織 将浩
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-162373(JP,A)
【文献】特開平11-190771(JP,A)
【文献】特開2020-104809(JP,A)
【文献】特開2019-88227(JP,A)
【文献】特開2016-95660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0041803(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G01S 19/53
G01S 19/35
G05D 105/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
前記走行機体の位置及び方位を検出する測位システムと、
前記測位システムが検出した検出位置データ及び検出方位データに基づいて、前記走行機体を自動操舵する制御部と、を備えるトラクタであって、
前記測位システムは、何れも測位用のGNSSアンテナを用いた位置検出用アンテナ及び方位検出用アンテナと、ジャイロを備え、
前記位置検出用アンテナ及び方位検出用アンテナは、走行機体に設けた測位用フレームに所定の間隙をあけて並ぶように取り付けられ、
前記制御部は、
前記走行機体の制御上の基準位置に対する前記位置検出用アンテナの第1方向のオフセット量である第1パラメータを設定する第1パラメータ設定手段と、
前記基準位置に対する前記位置検出用アンテナの前記第1方向と直交する第2方向のオフセット量である第2パラメータを設定する第2パラメータ設定手段と、
前記基準位置に対する前記位置検出用アンテナの前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向のオフセット量である第3パラメータを設定する第3パラメータ設定手段と、
前記位置検出用アンテナ及び方位検出用アンテナの測位結果に基づく両アンテナの並び方向の方位から求められる、前記走行機体の制御上の基準方位に対する機体進行方向の方位である第4パラメータを設定する第4パラメータ設定手段と、
前記検出位置データ、前記検出方位データ、前記第1~第4パラメータ及び前記ジャイロの検出値に基づいて、前記基準位置の位置データ及び方位データを算出する基準位置データ算出手段と、
算出した前記基準位置の位置データを車幅方向にオフセットする量である第5パラメータを設定する第5パラメータ設定手段と、を備えることを特徴とするトラクタ
【請求項2】
前記制御部は、
機種を選択する機種選択手段と、
機種ごとに予め設定された前記第1~第4パラメータのなかから、選択された機種の前記第1~第4パラメータを読込むパラメータ読込手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ
【請求項3】
前記位置検出用アンテナの取付位置は、平面視で前記走行機体の後輪車軸近傍であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトラクタ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動操舵走行を行うトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体と、走行機体の位置及び方位を検出する測位システムと、測位システムが検出した検出位置データ及び検出方位データに基づいて、走行機体を自動操舵する制御部と、を備えるトラクタが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この種のトラクタでは、走行機体の制御上の基準位置に対する位置検出用アンテナの取付位置(左右方向オフセット量、前後方向オフセット量及び上下方向オフセット量)や、走行機体の制御上の基準方位に対する位置検出用アンテナと方位検出用アンテナの並び方向が補正用のパラメートとして設定されており、測位システムが検出した検出位置データ及び検出方位データは、これらのパラメータやジャイロの検出値を用いて基準位置の位置データや方位データに変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-358122号公報
【文献】特開2018-180922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、走行機体の制御上の基準位置は、走行機体の車幅中心位置に設定されるため、算出された基準位置の位置データと走行機体の実際の車幅中心位置との間に誤差が生じると、往復行程作業では、誤差の2倍の距離が行程間隔の誤差として生じてしまう。従来では、このような誤差が生じた場合、誤差が解消されるまで複数のパラメータの修正又は再入力を繰り返すという煩雑な作業が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、走行機体と、前記走行機体の位置及び方位を検出する測位システムと、前記測位システムが検出した検出位置データ及び検出方位データに基づいて、前記走行機体を自動操舵する制御部と、を備えるトラクタであって、前記測位システムは、何れも測位用のGNSSアンテナを用いた位置検出用アンテナ及び方位検出用アンテナと、ジャイロを備え、前記位置検出用アンテナ及び方位検出用アンテナは、走行機体に設けた測位用フレームに所定の間隙をあけて並ぶように取り付けられ、前記制御部は、前記走行機体の制御上の基準位置に対する前記位置検出用アンテナの第1方向のオフセット量である第1パラメータを設定する第1パラメータ設定手段と、前記基準位置に対する前記位置検出用アンテナの前記第1方向と直交する第2方向のオフセット量である第2パラメータを設定する第2パラメータ設定手段と、前記基準位置に対する前記位置検出用アンテナの前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向のオフセット量である第3パラメータを設定する第3パラメータ設定手段と、前記位置検出用アンテナ及び方位検出用アンテナの測位結果に基づく両アンテナの並び方向の方位から求められる、前記走行機体の制御上の基準方位に対する機体進行方向の方位である第4パラメータを設定する第4パラメータ設定手段と、前記検出位置データ、前記検出方位データ、前記第1~第4パラメータ及び前記ジャイロの検出値に基づいて、前記基準位置の位置データ及び方位データを算出する基準位置データ算出手段と、算出した前記基準位置の位置データを車幅方向にオフセットする量である第5パラメータを設定する第5パラメータ設定手段と、を備えることを特徴とするトラクタである。
請求項2の発明は、前記制御部は、機種を選択する機種選択手段と、機種ごとに予め設定された前記第1~第4パラメータのなかから、選択された機種の前記第1~第4パラメータを読込むパラメータ読込手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のトラクタである。
請求項3の発明は、前記位置検出用アンテナの取付位置は、平面視で前記走行機体の後輪車軸近傍であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトラクタである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、算出した基準位置の位置データを車幅方向にオフセットする量である第5パラメータを設定する第5パラメータ設定手段を備えるので、往復行程作業で行程間隔に誤差が発生した場合、誤差が解消されるまで複数のパラメータの修正又は再入力を繰り返すという煩雑な作業を行うことなく、実際に発生した行程間隔誤差の半分を第5パラメータとして設定するだけで、行程間隔誤差を解消できる。
請求項2の発明によれば、制御部は、機種を選択する機種選択手段と、機種ごとに予め設定された第1~第4パラメータのなかから、選択された機種の第1~第4パラメータを読込むパラメータ読込手段と、をさらに備えるので、第1~第4パラメータの設定が容易になるだけでなく、パラメータの誤設定による自動操舵の精度の低下を防止できる。
請求項3の発明によれば、位置検出用アンテナの取付位置は、平面視で走行機体の後輪車軸近傍なので、走行機体の後部に作業機を連結するトラクタなどの作業車両では、作業跡を見て基準位置の車幅方向のオフセット量を精度よく設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るトラクタの側面図である。
図2】トラクタの平面図である。
図3】測位用フレームを示す要部斜視図である。
図4】操縦部の要部斜視図である。
図5】自動操舵ユニットを示す図であり、(a)は自動操舵ユニットの斜視図、(b)は自動操舵ユニットの操作パネルを示す正面図である。
図6】乗用田植機の制御構成を示すブロック図である。
図7】設定画面を示す図であり、(a)は設定メニュー画面を示す説明図、(b)は機種選択画面を示す説明図である。
図8】設定画面を示す図であり、(a)はアンテナ位置設定画面を示す説明図、(b)は機器取付方向設定画面を示す説明図である。
図9】基準位置オフセット調整画面を示す図であり、(a)は調整ボタン非表示状態の基準位置オフセット調整画面を示す説明図、(b)は調整ボタン表示状態の基準位置オフセット調整画面を示す説明図である。
図10】基準位置設定制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はトラクタ(作業車両)の走行機体であって、該走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部2と、エンジン動力を変速し、走行動力及び作業動力として出力するミッションケース3と、ミッションケース3が出力する走行動力で駆動され、かつ、ステアリングハンドル4の操作に応じて操舵される前輪5と、ミッションケース3が出力する走行動力で駆動される後輪6と、作業者が乗車する操縦部7と、各種の作業機(図示せず)を昇降自在に連結可能な作業機連結部8と、を備える。
【0009】
図4に示すように、操縦部7は、作業者が座る運転席(図示せず)を備え、該運転席の周辺には、前述したステアリングハンドル4を含む各種の操作具が配置されている。図4及び図5の(A)に示すように、ステアリングハンドル4には、操舵装置9が連結されている。操舵装置9は、ステアリングハンドル4の手動操作に代えて、ステアリングハンドル4をモータ動力で回転操作するステアリングモータ10(図6参照)と、後述する自動操舵制御関連の操作具及びモニタランプが配置される操作パネル11と、を備える。なお、ステアリングモータ10の駆動中でもステアリングハンドル4の手動操作は許容される。
【0010】
図5の(B)に示すように、操作パネル11には、ステアリングモータ10への給電を許容する動作ON状態と給電を規制する動作OFF状態との切換操作が可能な動作スイッチ12と、自動操舵制御が自動操舵を行わない自動操舵OFF状態から自動操舵を行う自動操舵ON状態への切換操作や自動操舵ON状態から自動操舵OFF状態への切換操作が可能な自動操舵スイッチ13と、後述する始点A点を登録する始点A点登録スイッチ14と、後述する終点B点を登録する終点B点登録スイッチ15と、各スイッチ13~15による切換状態や後述する測位システム22のステータスを表示する複数の報知ランプ19a~19dと、を備える。
【0011】
また、図1図3に示すように、操縦部7の屋根部20には、測位用フレーム21が取付けられている。測位用フレーム21には、後述する測位システム22の構成要素である2つのGNSSアンテナ23、24や補正信号受信装置25が取付けられている。
【0012】
図6に示すように、走行機体1は、自動操舵制御を行うための制御構成として、測位システム22及び制御部26を備える。測位システム22としては、例えば、数cmの誤差で高精度な測位が可能なRTK-GNSS測位システムが採用される。RTK-GNSS測位システムは、固定設置された基地局と、移動する移動局とのそれぞれで、GPSなどのGNSS測位を行い、基地局から移動局に送信される補正信号でリアルタイムに測位データを補正することで、誤差数cmの高精度な測位を実現するものである。また、移動局に所定の間隔をあけて2つのGNSSアンテナを設置すれば、移動局の絶対位置だけでなく、2つの測位結果に基づいて、移動局の進行方向(方位)も高精度に検出することが可能になる。
【0013】
具体的に説明すると、本実施形態の測位システム22は、図6に示すように、RTK-GNSS測位を実行する制御ユニットであるGNSSユニット27と、測位用フレーム21に車幅方向に所定の間隔をあけて取付けられる基準用GNSSアンテナ23(位置検出用アンテナ)及び方位用GNSSアンテナ24(方位検出用アンテナ)と、固定設置されるRTK基地局28から補正信号を受信する補正信号受信装置25と、基準用GNSSアンテナ23及び方位用GNSSアンテナ24の傾きを検出するジャイロ32と、を備える。GNSSユニット27は、RTK-GNSS測位による測位データ(絶対位置データ及び進行方向データ)を、CANなどの有線通信手段を介して制御部26に送信するとともに、Bluetooth(登録商標)などの無線通信手段を介してタブレット29に送信する。タブレット29は、タッチパネル付きの表示画面を備えるとともに、専用のアプリケーションソフトがインストールされており、作業時のナビゲーション表示や設定時の設定画面表示を行う。
【0014】
制御部26は、測位システム22と協働して自動操舵制御を実現する制御ユニットであり、制御部26の入力側には、前述した動作スイッチ12、自動操舵スイッチ13、始点A点登録スイッチ14、終点B点登録スイッチ15に加え、前輪5の操舵角を検出する操舵角センサ30が接続される一方、制御部26の出力側には、前述したステアリングモータ10及び報知ランプ19a~19dに加え、報知音を出力する報知ブザー31が接続されている。
【0015】
制御部26は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能構成として、自動操舵制御を実行する自動操舵制御手段に加え、第1~第4パラメータ設定手段、基準位置データ算出手段、第5パラメータ設定手段、機種選択手段、パラメータ読込手段、基準位置オフセット調整手段、表示切換手段などを備える。なお、上記の機能構成は、制御部26だけでなく、制御部26と測位システム22(タブレット29及び専用アプリケーションソフトを含む)の協働により実現されるものであってもよい。
【0016】
自動操舵制御は、予め演算された所定方向の仮想ラインに沿って走行するように走行機体1を自動的に操舵する自動制御機能である。仮想ラインは、最初の作業行程である基準ラインの始点位置で始点A点登録スイッチ14を操作して始点A点の測位データを登録するとともに、基準ラインの終点位置で終点B点登録スイッチ15を操作して終点B点の測位データを登録すると自動的に演算される。具体的には、基準ラインと平行で、かつ等間隔(作業幅間隔)に並列する複数の仮想ラインが演算される。
【0017】
自動操舵制御では、演算した仮想ラインのうち最も走行機体1に近い仮想ラインを目標ラインとし、該目標ラインの座標データと、測位システム22による走行機体1の測位データに基づいて、目標ラインに対する走行機体1の横ズレ量及びズレ方向を演算するとともに、横ズレ量及びズレ方向に基づいて修正操舵角を演算し、該修正操舵角をステアリングモータ10に出力することにより、走行機体1を目標ラインに沿って走行させる。
【0018】
走行機体1が目標の終点位置に到達したら、作業者によるステアリングハンドル4の手動操作に基づいて、走行機体1を次の目標ラインの始点位置に向けて枕地旋回させる。走行機体1が次の目標ラインの始点位置に到達すると、手動又は自動で自動操舵制御が再開され、走行機体1は、次の目標ラインに沿って走行する。
【0019】
自動操舵制御における走行機体1の制御上の基準位置Rは、基準用GNSSアンテナ23の取付位置Gと一致しないため、基準位置Rと取付位置Gとのオフセット量などを規定する第1~第4パラメータを予め設定し、これらのパラメータを用いて、測位システム22が検出した検出位置データ及び検出方位データを基準位置Rの位置データ及び方位データに変換する。
【0020】
具体的に説明すると、第1パラメータ設定手段は、走行機体1の制御上の基準位置Rに対する基準用GNSSアンテナ23の第1方向X(左右方向:右方向が正)のオフセット量である第1パラメータを設定し、第2パラメータ設定手段は、基準位置Rに対する基準用GNSSアンテナ23の第1方向と直交する第2方向Y(前後方向:進行方向が正)のオフセット量である第2パラメータを設定し、第3パラメータ設定手段は、基準位置Rに対する基準用GNSSアンテナ23の第1方向及び第2方向と直交する第3方向Z(上下方向:上方向が正)のオフセット量である第3パラメータを設定し、第4パラメータ設定手段は、走行機体1の制御上の基準方位(進行方向:反時計回りが正)に対する基準用GNSSアンテナ23及び方位用GNSSアンテナ24の並び方向である第4パラメータを設定し、基準位置データ算出手段は、測位システム22の検出位置データ、検出方位データ、第1~第4パラメータ及びジャイロ32の検出値(又は、後述する機器取付方向設定画面60の入力値)に基づいて、基準位置Rの位置データ及び方位データを算出する。
【0021】
通常、走行機体1の制御上の基準位置Rは、走行機体1の車幅中心位置に設定される。このため、算出された基準位置Rの位置データと走行機体1の実際の車幅中心位置との間に誤差が生じると、上述した自動操舵制御による往復行程作業では、誤差の2倍の距離が行程間隔の誤差として生じるため、従来では、このような誤差が生じた場合、誤差が解消されるまで第1~第4パラメータの修正又は再入力を繰り返すという煩雑な作業が行われていた。
【0022】
第5パラメータ設定手段は、算出した基準位置Rの位置データを第1方向X(車幅方向)にオフセットする量である第5パラメータを設定する。つまり、往復行程作業で行程間隔に誤差が発生した場合、誤差が解消されるまで第1~第4パラメータの修正又は再入力を繰り返すという煩雑な作業を行うことなく、実際に発生した行程間隔誤差の半分を第5パラメータとして設定するだけで、行程間隔誤差を解消することが可能になる。
【0023】
因みに、本実施形態の基準用GNSSアンテナ23の取付位置は、平面視で走行機体1の後輪車軸近傍となっている。このようにすると、走行機体1の後部に作業機を連結するトラクタなどの作業車両では、作業跡を見て基準位置の車幅方向のオフセット量を精度よく設定できる。
【0024】
図7図9は、第1~第5パラメータなどの設定画面を示しており、本実施形態では、タブレット29の表示部を利用して設定画面を表示させる。図8の(a)は、第1~第5パラメータを設定可能なアンテナ位置設定画面50を示しており、第1パラメータの入力が可能な第1パラメータ入力部51と、第2パラメータの入力が可能な第2パラメータ入力部52と、第3パラメータの入力が可能な第3パラメータ入力部53と、第4パラメータの入力が可能な第4パラメータ入力部54と、第5パラメータの入力が可能な第5パラメータ入力部55と、を備える。
【0025】
機種選択手段及びパラメータ読込手段は、第1~第4パラメータの設定を容易にするための機能構成であり、機種選択手段は、作業車両の機種をユーザに選択させ、パラメータ読込手段は、機種ごとに予め設定された第1~第4パラメータのなかから、選択された機種の第1~第4パラメータを読込む。例えば、画面上の設定アイコン56をタップ操作すると、図7の(a)に示す設定メニュー画面57が表示され、設定メニュー画面57で「GNSSアンテナ位置」をタップ操作すると、図7の(b)に示す機種選択画面58が表示され、設定メニュー画面57で「機器の取付位置と向き」をタップ操作すると、図8の(b)に示す機器取付方向設定画面60が表示され、設定メニュー画面57で「保存作業設定」をタップ操作すると、保存済の第1~第5パラメータが入力されたアンテナ位置設定画面50が表示される。
【0026】
図7の(b)に示す機種選択画面58で適合する機種をタップ操作すると、選択された機種の推奨設定として予め記憶された第1~第4パラメータが読み込まれるとともに、読み込まれた第1~第4パラメータが入力されたアンテナ位置設定画面50が表示される。このような機種選択手段及びパラメータ読込手段によれば、ユーザによるパラメータの入力操作が不要になるので、第1~第4パラメータの設定が容易になるだけでなく、パラメータの誤設定による自動操舵の精度の低下を防止できる。
【0027】
因みに、図8の(b)に示す機器取付方向設定画面60は、GNSSアンテナ23、24の底面の向きを設定する底面向き設定部61(床方向、天井方向、後方、前方、左方向、右方向から選択)と、GNSSアンテナ23、24の進行方向の面の向きを設定する進行方向面向き設定部62(コネクタ面、左面、バックパネル面、右面から選択)と、GNSSアンテナ23、24の左右方向の傾きを入力する左右傾き入力部63と、GNSSアンテナ23、24の前後方向の傾きを入力する前後傾き入力部64と、方位(アンテナ並び方向)を調整する方位調整入力部65と、を備える。また、機器取付方向設定画面60は、計測実行操作部66を備え、この計測実行操作部66をタップ操作すると、GNSSアンテナ23、24の左右方向及び前後方向の傾きがジャイロ32の検出信号に基づいて計測され、計測結果が左右傾き入力部63及び前後傾き入力部64に自動的に入力される。
【0028】
図9の(b)に示すように、基準位置オフセット調整手段は、タブレット29が表示する基準位置オフセット調整画面70に左右一対の調整ボタン71L、71Rを表示させ、該調整ボタン71L、71Rのタップ操作に応じて、算出した基準位置の位置データを車幅方向にオフセットさせる。例えば、右側の調整ボタン71Rをタップ操作する毎に、第5パラメータが正の方向に0.02mずつオフセットされ、左側の調整ボタン71Lをタップ操作する毎に、第5パラメータが負の方向に0.02mずつオフセットされる。
【0029】
基準位置オフセット調整画面70は、走行機体1と基準位置との位置関係を示す機体モデル72及び機体中心モデル73を表示し、左右一対の調整ボタン71L、71Rは、基準位置オフセット調整画面70において、機体モデル72及び機体中心モデル73の下方で、かつ左右に振り分けて表示される。そして、調整ボタン71L、71Rがタップ操作されると、それに連動して機体モデル72と機体中心モデル73が相対的に左右方向にオフセット表示される。このような基準位置オフセット調整画面70によれば、直感的な操作で精度の良いオフセット設定が可能になるだけでなく、調整ボタン31L、71Rを操作する手で機体モデル72及び機体中心モデル73の表示領域が遮られるという不都合も防止できる。
【0030】
表示切換手段は、調整ボタン71L、71Rの表示/非表示を切換操作可能な表示切換ボタン74を基準位置オフセット調整画面70に表示させる。例えば、調整ボタン71L、71Rの表示状態(図9の(b))で表示切換ボタン74をタップ操作すると、調整ボタン71L、71Rが非表示状態(図9の(a))となり、調整ボタン71L、71Rの非表示状態(図9の(a))で表示切換ボタン74をタップ操作すると、調整ボタン71L、71Rが表示状態(図9の(b))となる。このような表示切換手段によれば、意図しない調整ボタン71L、71Rの誤操作を防止できる。
【0031】
また、表示切換手段は、自動操舵走行中、所定時間又は所定距離にわたって調整ボタン71L、71Rが操作されない場合、調整ボタン71L、71Rを自動的に非表示にする。このような表示切換手段によれば、意図しない調整ボタン71L、71Rの誤操作をより確実に防止できる。
【0032】
つぎに、上述した機能構成(自動操舵制御手段を除く)を実現する制御部26の基準位置設定制御について、図10を参照して説明する。
【0033】
図10に示すように、制御部26は、基準位置設定制御において、まず、アンテナ位置設定画面50を表示するか否かを判断し(S1)、この判断結果がYES場合は、機種に応じた設定値(第1~第4パラメータ)の推奨設定値を表示した後(S2)、設定値及びオフセット値(第5パラメータ)の入力を判断する(S3、S5)。制御部26は、ここで設定値が入力されたと判断すると、測位システム22の検出位置データ及び検出方位データを基準位置Rの位置データ及び方位データに変換するためのアンテナ位置設定値を演算するとともに、入力された設定値を保存し(S4)、一方、オフセット値が入力された場合は、アンテナ位置設定値を補正するとともに、入力されたオフセット値を保存する(S6)。
【0034】
制御部26は、ステップS1の判断結果がNOの場合、ガイダンス画面(初期画面)であるか否かを判断し(S7)、この判断結果がYESの場合は、左右調整モード(基準位置オフセット調整画面70表示状態)であるか否かを判断する(S8)。制御部26は、左右調整モードであると判断すると、左右の調整ボタン71L、71Rのタップ操作を判断し(S9、S10)、右側の調整ボタン71Rがタップ操作されたと判断した場合は、オフセット入力値に0.02m加算する補正を行い(S11)、左側の調整ボタン71Lがタップ操作されたと判断した場合は、オフセット入力値から0.02m減算する補正を行う(S12)。
【0035】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1と、走行機体1の位置及び方位を検出する測位システム22と、測位システム22が検出した検出位置データ及び検出方位データに基づいて、走行機体1を自動操舵する制御部26と、を備えるトラクタであって、測位システム22は、基準用GNSSアンテナ23、方位用GNSSアンテナ24及びジャイロ32を備え、制御部26は、走行機体1の制御上の基準位置Rに対する基準用GNSSアンテナ23の第1方向のオフセット量である第1パラメータを設定する第1パラメータ設定手段と、基準位置Rに対する基準用GNSSアンテナ23の第1方向と直交する第2方向のオフセット量である第2パラメータを設定する第2パラメータ設定手段と、基準位置Rに対する基準用GNSSアンテナ23の第1方向及び第2方向と直交する第3方向のオフセット量である第3パラメータを設定する第3パラメータ設定手段と、走行機体1の制御上の基準方位に対する基準用GNSSアンテナ23及び方位用GNSSアンテナ24の並び方向である第4パラメータを設定する第4パラメータ設定手段と、測位システム22の検出位置データ、検出方位データ、第1~第4パラメータ及びジャイロ32の検出値に基づいて、基準位置Rの位置データ及び方位データを算出する基準位置データ算出手段と、算出した基準位置Rの位置データを車幅方向にオフセットする量である第5パラメータを設定する第5パラメータ設定手段と、を備えるので、往復行程作業で行程間隔に誤差が発生した場合、誤差が解消されるまで複数のパラメータの修正又は再入力を繰り返すという煩雑な作業を行うことなく、実際に発生した行程間隔誤差の半分を第5パラメータとして設定するだけで、行程間隔誤差を解消できる。
【0036】
また、制御部26は、機種を選択する機種選択手段と、機種ごとに予め設定された第1~第4パラメータのなかから、選択された機種の第1~第4パラメータを読込むパラメータ読込手段と、をさらに備えるので、第1~第4パラメータの設定が容易になるだけでなく、パラメータの誤設定による自動操舵の精度の低下を防止できる。
【0037】
また、基準用GNSSアンテナ23の取付位置は、平面視で走行機体1の後輪車軸近傍なので、走行機体1の後部に作業機を連結するトラクタなどの作業車両では、作業跡を見て基準位置の車幅方向のオフセット量を精度よく設定できる。
【符号の説明】
【0038】
1 走行機体
9 操舵装置
22 測位システム
23 基準用GNSSアンテナ
24 方位用GNSSアンテナ
26 制御部
29 タブレット
32 ジャイロ
50 アンテナ位置設定画面
58 機種選択画面
60 機器取付方向設定画面
70 基準位置オフセット調整画面
71L、71R 調整ボタン
72 機体モデル
73 機体中心モデル
74 表示切換ボタン
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
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図10