(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】逆流防止装置
(51)【国際特許分類】
E03F 7/04 20060101AFI20240723BHJP
E03F 5/10 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
E03F7/04
E03F5/10 A
(21)【出願番号】P 2020134489
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 哲司
(72)【発明者】
【氏名】井橋 拓海
(72)【発明者】
【氏名】板垣 勲
(72)【発明者】
【氏名】笹川 知久
(72)【発明者】
【氏名】阪井 健治
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輔
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-194770(JP,A)
【文献】特開2000-104325(JP,A)
【文献】特開2001-303603(JP,A)
【文献】特開2001-182139(JP,A)
【文献】実開昭64-000691(JP,U)
【文献】特開2003-213714(JP,A)
【文献】特開2017-014781(JP,A)
【文献】特開2009-052194(JP,A)
【文献】実開平06-076484(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/04
E03F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外において発生する排水が
管路に流入する蓋
と、この蓋が着脱可能に嵌着され、内径が前記管路の内径よりも小さい蓋受け部とを備えた管路に取り付けられる逆流防止装置であって、
縮拡可能な弾性部材によって構成され、前記管路のうち前記蓋よりも下方の部分に取り付けられる取付体と、
前記取付体に取り付けられ、臭気の逆流を防止する逆流防止弁を有する弁付き本体とを備え
、
前記取付体は、その外径が前記管路の内径よりも大きいとともに、前記蓋受け部の内径よりも小さくなるように縮径弾性変形可能である
ことを特徴とする逆流防止装置。
【請求項2】
弁付き本体は、取付体にシール部材を介して着脱可能に取り付けられる
ことを特徴とする請求項
1記載の逆流防止装置。
【請求項3】
シール部材は、外周側が管路の内周面に密着するように取付体に装着され、
弁付き本体は、前記シール部材の内周側に着脱可能に取り付けられる
ことを特徴とする請求項
2記載の逆流防止装置。
【請求項4】
弁付き本体は、縮径側に位置する逆流防止弁側に向けて排水を案内する逆截頭円錐状の案内部を有する
ことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか一記載の逆流防止装置。
【請求項5】
弁付き本体は、少なくとも一部が逆流防止弁の上方側に位置する把持部を有する
ことを特徴とする請求項1ないし
4のいずれか一記載の逆流防止装置。
【請求項6】
弁付き本体は、管路内に対して出し入れ可能となっている
ことを特徴とする請求項1ないし
5のいずれか一記載の逆流防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気の漏出を防止できる逆流防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された雨水桝が知られている。この従来の雨水桝は、桝本体を備え、この桝本体の掃除口部には立上管が接続されている。この立上管の上端部には蓋受け体が嵌着され、この蓋受け体には蓋が着脱可能に取り付けられている。また、桝本体内には、泥溜め容器及びネット体がそれぞれ配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の雨水桝では、例えば維持管理の状況等によっては臭気が発生し、この発生した臭気が外部に漏出するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、臭気の漏出を防止できる逆流防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の逆流防止装置は、屋外において発生する排水が管路に流入する蓋と、この蓋が着脱可能に嵌着され、内径が前記管路の内径よりも小さい蓋受け部とを備えた管路に取り付けられる逆流防止装置であって、縮拡可能な弾性部材によって構成され、前記管路のうち前記蓋よりも下方の部分に取り付けられる取付体と、前記取付体に取り付けられ、臭気の逆流を防止する逆流防止弁を有する弁付き本体とを備え、前記取付体は、その外径が前記管路の内径よりも大きいとともに、前記蓋受け部の内径よりも小さくなるように縮径弾性変形可能であるものである。
【0007】
請求項2記載の逆流防止装置は、請求項1記載の逆流防止装置において、弁付き本体は、取付体にシール部材を介して着脱可能に取り付けられるものである。
【0008】
請求項3記載の逆流防止装置は、請求項2記載の逆流防止装置において、シール部材は、外周側が管路の内周面に密着するように取付体に装着され、弁付き本体は、前記シール部材の内周側に着脱可能に取り付けられるものである。
【0009】
請求項4記載の逆流防止装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の逆流防止装置において、弁付き本体は、縮径側に位置する逆流防止弁側に向けて排水を案内する逆截頭円錐状の案内部を有するものである。
【0010】
請求項5記載の逆流防止装置は、請求項1ないし4のいずれか一記載の逆流防止装置において、弁付き本体は、少なくとも一部が逆流防止弁の上方側に位置する把持部を有するものである。
【0011】
請求項6記載の逆流防止装置は、請求項1ないし5のいずれか一記載の逆流防止装置において、弁付き本体は、管路内に対して出し入れ可能となっているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、臭気の漏出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る逆流防止装置を具備する桝装置の断面図である。
【
図5】(a)は弁付き本体の平面図、(b)は弾性パッキンの平面図、(c)は固定体の平面図である。
【
図6】(a)ないし(c)は同上逆流防止装置の施工手順を示す図である。
【
図7】(d)ないし(f)は
図6に続く施工手順を示す図である。
【
図8】(g)ないし(i)は
図7に続く施工手順を示す図である。
【
図9】(a)ないし(d)は泥溜め容器の取り出し手順を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態に係る逆流防止装置を示す図で、(a)は断面図、(b)は分解斜視図である。
【
図11】本発明の第3の実施の形態に係る逆流防止装置を示す図で、(a)は断面図、(b)は分解斜視図である。
【
図12】本発明の第4の実施の形態に係る逆流防止装置を示す断面図である。
【
図13】同上逆流防止装置を示す分解斜視図である。
【
図14】弁付き本体の把持部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施の形態について
図1ないし
図9を参照して説明する。
【0015】
図1及び
図2において、1は桝装置で、この桝装置1は、屋外において発生する排水である雨水が流入する排水桝である雨水桝2と、この雨水桝2に取り付けられた逆流防止装置3とを具備している。
【0016】
なお、この図示した例は、雨水桝2内の臭気の漏出や害虫(蚊等)等の外部への逸出を防止するために、地中に埋設された既設の雨水桝2に対して、臭気漏出防止用の逆流防止装置3を後付け(特殊工具不要な後付け作業)により取り付けた例である。
【0017】
雨水桝2は、桝本体6と、この桝本体6に立設された上下方向の管路である立上管7と、この立上管7の上端部に取り付けられた蓋受け体8と、この蓋受け体8に着脱可能に取り付けられた蓋9とを備えている。
【0018】
桝本体6は、流入口部11と、流出口部12と、掃除口部13と、泥溜め部14とを有している。流入口部11には流入管16の下流端部が接続され、流出口部12には流出管17の上流端部が接続され、掃除口部13には上方に向けて立ち上がる掃除管である立上管7の下端部が接続されている。
【0019】
泥溜め部14には、上面開口状の容器体である泥溜め容器18が配設されている。泥溜め容器18は、泥溜め部14内に出し入れ可能に収納された有底円筒状の容器本体19と、この容器本体19の上端部に取り付けられた取手20とを有している。なお、泥溜め容器18の容器本体19の外径は、蓋受け体8の支持部分25の内径よりも少し小さい。
【0020】
蓋受け体8は、立上管7の上端部の内周側に挿入固定された挿入部21と、蓋9が着脱可能に嵌着された蓋受け部22とを有している。蓋受け部22は、円板状の蓋9によって開閉可能に閉鎖された開口部23を有し、この開口部23は短円筒状の蓋受け体8の内部空間24の上側部分で構成されている。また、蓋受け部22は、蓋9の下面を受け止めて支持する内方突出状で円環状の支持部分25を有している。この支持部分25の内径は、立上管7の内径よりも小さい。なお、蓋受け体8は、立上管7の上端部の内周側に接続される接続部である挿入部21を有する構成には限定されず、立上管7の上端部の外周側に接続される接続部(受口)を有する構成等でもよい。
【0021】
蓋9は、この蓋9の上下面に貫通した複数の通水孔28を有している。そして、例えば雨天時等に屋外において発生した排水である雨水は、蓋9の通水孔28を通って円筒状の管路である立上管7内に流入する。なお、蓋9は、その上面が地表面と同一面上に位置するように、蓋受け体8の蓋受け部22の内周側に取り付けられる。
【0022】
逆流防止装置3は、主として臭気の漏出を防止するもので、
図3ないし
図5にも示すように、例えば雨水桝2の立上管7のうち蓋9よりも下方の部分における内周面に固定して取り付けられる取付体である固定体31と、この固定体31に円環状のシール部材である弾性パッキン32を介して着脱可能に取り付けられ、雨水桝2内の臭気及び害虫の逆流を防止する逆流防止弁35を有する弁付き本体33とを備えている。
【0023】
つまり、この逆流防止装置3は、
図4からも明かなとおり、固定体31と、逆流防止弁35及びこれを保持した本体部材36からなる弁付き本体33と、これら固定体31及び弁付き本体33間に設けられる環状の弾性パッキン32とを備えている。なお、固定体31及び本体部材36は例えば合成樹脂製のものであり、また、弾性パッキン32及び逆流防止弁35は、例えば弾性変形可能な弾性素材製のものである。
【0024】
そして、固定体31は立上管7の内周面に固定され、この固定された固定体31に弾性パッキン32がその外周側が固定体31よりも上方の位置で立上管7の内周面に密着するように装着され、この装着された弾性パッキン32の内周側に弁付き本体33が着脱可能に取り付けられる。なお、例えば雨水桝2内の維持管理(点検や掃除等)のために、弁付き本体33は、蓋受け体8の内部空間24を介して立上管7内に対して出し入れ可能となっている。
【0025】
ここで、固定体31は、蓋受け体8の内部空間24を通過できるように、切欠部40を有するC字状の縮拡可能な部材、すなわち例えば弾性変形可能な弾性部材41によって構成されている。この弾性部材41のみからなる固定体31の外径は、弾性変形前の状態で立上管7の内径よりも少し大きい。そして、固定体31は、立上管7の内径に対応するように縮径側に弾性変形した状態で立上管7の内周面の所定位置に取り付けられ、その後、例えば接着剤で固定される。
【0026】
固定体31は、立上管7の内周面に固定される周壁部42と、この周壁部の上端部から径方向内方側に向かって下り傾斜状に突出し、弾性パッキン32が上方から装着される上板部43とを有している。
【0027】
周壁部42の上部の外周面には、接着剤の溜まり部となる矩形状の凹部45が周方向に間隔をおいて複数形成されている。各凹部45は、接着剤が上方から入り込むように上端開口状のもので、周壁部42の外周面における上下方向中間部から上端部にわたって形成されている。なお、例えば図示しないが、周方向に延在する1つの長手状の凹部を周壁部42の上部の外周面に形成してもよい。
【0028】
上板部43の上面には、外端側から内端側に向かって徐々に下方に向かうように、水平方向に対して所定の傾斜角度αをもって鋭角に傾斜する傾斜面46が形成されている。なお、所定の傾斜角度αは、例えば15°~30°、好ましくは25°である(
図2参照)。
【0029】
そして、弾性パッキン32を上方から上板部43に装着する際には、弾性パッキン32の下側の装着部52が上板部43の傾斜面46によって径方向内方側(中心側)に案内される。つまり、この弾性パッキン32の装着部52は、傾斜面46によって径方向内方側に案内されながら縮径側に一旦弾性変形し、その後、当該傾斜面46から離れると、弾性復元力で元の形状に復帰する。このように、所定の傾斜角度αをもつ傾斜面46により、弾性パッキン32が挿入しやすくなり、またゴミ等の異物の滞留もなくなる。
【0030】
なお、固定体31の傾斜面46は、弾性パッキン32の装着部52の傾斜面55と平行、もしくは装着部52の傾斜面55の傾斜角度よりもそれを大きくすることで、弾性パッキン32の挿入性の向上が図られる。また、挿入性向上のために、傾斜面46の途中位置で傾斜角度を変えるようにしてもよい。
【0031】
弾性パッキン32は、弾性変形した状態で立上管7の内周面に全周にわたって水密及び気密に密着するリップ形状の密着部51を上側に有し、かつ、固定体31の上板部43に上方から装着される装着部52を下側に有している。なお、弾性パッキン32の最大外径は、弾性変形前の状態で立上管7の内径よりも少し大きい。
【0032】
密着部51は、下方に向かって開口する断面逆U字状に形成されている。装着部52は、径方向外方に向かって開口する断面コ字状に形成されている。つまり、この装着部52の外周面上部には、固定体31の上板部43の内端側が入り込む環状の凹溝53が形成されている。
【0033】
凹溝53は、下側の水平状の面56と、上側の傾斜状の面57と、上下の両面56,57を繋ぐ鉛直状の面58と、これら面56,57,58に臨んだ溝内空間59とを有している。そして、凹溝53における上側の傾斜状の面57は、固定体31の上板部43の傾斜面46と面状に密着するように、当該傾斜面46と同じ角度で傾斜している。
【0034】
また、装着部52は、弁付き本体33の本体部材36の本体部61の下面を受け止めて支持する傾斜状、すなわち逆截頭円錐状の支持面60を有し、この支持面60も傾斜面46と同じ角度で傾斜している。なお、本体部61の上面の案内面71も傾斜面46と同じ角度で傾斜しているが、支持面60や案内面71は必ずしも傾斜面46と同じ角度である必要はなく、異なる角度で傾斜させてもよい。また、装着部52の外周面下部は、下方に向かって縮径する逆截頭円錐面状に形成されている。
【0035】
弁付き本体33は、固定体31に装着した弾性パッキン32の内周面に対して上方から取り付け可能な本体部材36と、この本体部材36によって保持された弾性変形可能な平面視円形状の逆流防止弁35とで構成されている。そして、本体部材36は、少なくとも外周面の一部(例えば上方突出筒部62)の外周面が弾性パッキン32の内周面に全周にわたって水密及び気密に密着するように、当該弾性パッキン32の内周面に着脱可能に取り付けられる。この本体部材36の外径は、蓋受け体8の支持部分25の最小内径よりも少し小さい。このため、弁付き本体33は、蓋受け体8の内部空間24を通過させることが可能である。
【0036】
本体部材36は、下方に向かって縮径するすり鉢状、すなわち逆截頭円錐状の本体部61と、この本体部61の上面の外周端部から上方に向かって突出する短円筒状の上方突出筒部62と、本体部61の下面の外周端部の近傍から下方に向かって突出する短円筒状の下方突出外筒部63と、本体部61の下面の内周端部から下方に向かって突出する短円筒状の下方突出内筒部64とを有している。
【0037】
そして、下方突出内筒部64の下端面が截頭円錐面状の弁座面65となっており、この弁座面65に逆流防止弁35の弁部83が接離可能に密着している。弁座面65は、弁部83との接触面積が小さく、弁閉時において異物を挟みにくい。なお、下方突出内筒部64は、上面開口部66及び下面開口部67を有し、この下面開口部67が逆流防止弁35によって開閉される。
【0038】
また、本体部材36は、下方突出内筒部64内に本体部材36の中心部に位置するように配置され、逆流防止弁35を保持する小円環状の弁保持部68と、下方突出内筒部64内に弁保持部68と同心上に位置するように配置され、逆流防止弁35の弁部83が捲れ上がるのを防止する大円環状の防止部69と、これら弁保持部68及び防止部69に連設され、少なくとも一部が逆流防止弁35の上方側に位置する把持部70とを有している。なお、作業者が把持する把持部70は、その全体が逆截頭円錐状をなす本体部61内に収納配置されている。
【0039】
本体部61は、上方側からの排水である雨水(雨水と一緒に土砂等の異物が流入した場合には雨水及び異物)を、逆流防止弁35側である中心側、つまり下方突出内筒部64の上面開口部66に向けて案内する逆截頭円錐状の案内部である案内面71を上面に有している。この案内面71は、下方側である逆流防止弁35側に向かって縮径する逆截頭円錐面状に形成されたもので、縮径側に位置する逆流防止弁35側に向けて雨水を円滑に流すため、当該案内面71上において雨水溜まりの形成が抑制される。
【0040】
把持部70は、本体部材36の周方向に等間隔、すなわち例えば120°間隔で位置する鉛直状の3つの板部分76,77,78、つまり第1板部分76、第2板部分77及び第3板部分78と、これら3つの板部分76,77,78を繋ぐ円環状の環状部分79と、この環状部分79の外周端の一部に突設され、互いに対向する第1板部分76及び第2板部分77間にわたって位置する円弧面状の水平板部分80とを有している。
【0041】
第1板部分76と第2板部分77とは、ともに同じ形状であるが、第3板部分78は、それらとは異なる径方向に沿った長手状に形成され、その一部の三角状部78aが本体部61の案内面71に鉛直状に立設されている。環状部分79は、環状の弁保持部68よりも径大に形成され、当該弁保持部68よりも上方の位置で当該弁保持部68と同心上に位置している。水平板部分80は、逆流防止弁35の上方側に位置しており、平面視で逆流防止弁35の一部と重なる(
図5(a)参照)。
【0042】
そして、作業者は、把持部70を把持する際には、2本の指、すなわち例えば人差し指及び中指を第1板部分76及び第2板部分77間の空間部75に挿入して当該2本の指を水平板部分(指掛け部)80の下面に引っ掛けるとともに、親指を第3板部分(指当て部)78の上面に押し当てる。
【0043】
こうして、作業者は、把持部70を利用することで弁付き本体33を片手で安定的に把持できるため、工具を用いることなく、片手だけで弁付き本体33を弾性パッキン32に対して着脱可能である。
【0044】
なお、弁付き本体33の取り付けの際には、把持部70を片手で把持した状態で、弁付き本体33を水平姿勢のまま下方に移動させることにより弾性パッキン32に対して上方から下方へ強く押し込むようにして当該弾性パッキン32に取り付ける。他方、弁付き本体33の取り外しの際には、把持部70を片手で把持した状態で、先ずは親指を支点として手首を回すことで弁付き本体33の姿勢を水平姿勢から傾斜姿勢に変更し、この変更によって弁付き本体33の外周部のうち親指側とは反対側の部分を持ち上げて弾性パッキン32から取り外し、その後、弁付き本体33を傾斜姿勢のまま上方に移動させることにより弾性パッキン32から取り外す。いずれの場合も、作業者はある程度の力を要するが、片手で把持部70を把持した状態で、弾性パッキン32に対する弁付き本体33の取り付け及び取り外しを工具レスで行うことが可能である。
【0045】
逆流防止弁35は、例えば断面視逆T字状でアンブレラ形状をなすアンブレラ弁からなるもので、蓋9の通水孔28から立上管7内に流入した雨水の順流(下方への流れ)を許容するが、雨水桝2内の臭気及び害虫の逆流(上方への流れ)を防止する。
【0046】
そして、この逆流防止弁35は、例えばシリコンゴム等、弾性を有する素材によって一体に形成されたもので、円板状の基部81と、この基部81の中央部に立設された棒状の取付部82と、基部81の外周部に径方向外方に向かって突設された薄膜状の弁部83とを有している。
【0047】
取付部82は、本体部材36の弁保持部68に下方から嵌合挿通されることにより、当該弁保持部68に抜止め状態に取り付けられて保持されている。なお、取付部82の上下方向中間部の外周面には、抜止め用の膨出部分84が形成されている。
【0048】
弁部83は、外周側における上面に円環状の接触面85を有し、この接触面85が通常時では本体部材36の弁座面65に接離可能に面状に当接している。そして、弁部83が雨水の重さ(上方側から受ける力)で下方側に撓むように弾性変形すると、接触面85が弁座面65から離れて下面開口部(排出口)67が開口し、その結果、雨水が下方側(下流側)へ排出される。なお、雨水が排出されると、弁部83が弾性復元力で元の形状に復帰することにより、接触面85が弁座面65に接触して下面開口部67が閉鎖される。
【0049】
また、弁部83は、下方側から受ける力(例えば下水道内圧力)では変形しずらいように、上方に凸の円弧状となっている。この凸弧状の弁部83の頂部86は、下方突出内筒部64内において弁座面65よりも上方に位置している。なお、弁部83は、取付部82が弁保持部68に取り付けられる前の状態では傘状、すなわち逆截頭円錐状をなすものであるが、取付部82が弁保持部68に挿通されて取り付けられると、接触面85が傾斜状の弁座面65に当接することで弁部83が弾性変形して上方に凸の円弧状となっている。
【0050】
次に、既設の雨水桝2に逆流防止装置3を取り付ける際の施工手順又は取付方法について、
図6ないし
図8を参照して説明する。
【0051】
図6(a)に示すように、まず、作業者は、蓋9を蓋受け体8から取り外して開口部23を開口させる。そして、立上管7の内周面に付着した汚れ等の付着物88を除去する。
【0052】
次いで、
図6(b)及び(c)に示すように、弾性変形可能な帯状部材である水平出しシート90を円形状に丸めて蓋受け体8の内部空間24を通過させ、立上管7の内周面に取り付ける。このとき、水平出しシート90は、その上端部が蓋受け体8の下端部に当接するように取り付ける。
【0053】
次いで、
図7(d)に示すように、固定体31を支持部分25の内径よりも小さくなるように縮径弾性変形させて蓋受け体8の内部空間24を通過させ、立上管7の内周面に取り付ける。このとき、固定体31は、その上端部と水平出しシート90の下端部との距離Lが所定距離(例えば約50mm)となるように取り付ける。
【0054】
次いで、
図7(e)に示すように、立上管7の内周面のうち、水平出しシート90と固定体31との間に位置する部分における上側に、水平出しシート90の下端基準で固定体31と同程度の幅をもって接着剤91を塗布する。
【0055】
次いで、
図7(f)に示すように、固定体31をその上端部が水平出しシート90の下端部に当接するまで立上管7の内周面に沿って上方向に距離Lだけ摺動させ、続いて、その固定体31を周方向に所定角度、例えば45°だけ摺動させる。なお、固定体31の回動角度は、45°未満でもよい。
【0056】
この固定体31の摺動に基づいて、接着剤91が各凹部45内に上方から入り込むとともに固定体31の外周面全体に行き渡る。そして、この状態で例えば1分以上経過すると、接着剤91が固化して、固定体31が立上管7の内周面の所定位置に対して強固に固定される。なお、水平出しシート90の存在により、立上管7の内周面のうち弾性パッキン32が密着する部分には接着剤91が付着しない。
【0057】
次いで、
図8(g)に示すように、水平出しシート90を取り出した後、今度は、弾性パッキン32を支持部分25の内径よりも小さくなるように縮径弾性変形させて蓋受け体8の内部空間24を通過させ、固定体31に装着する。このとき、弾性パッキン32は、その外周面が立上管7の内周面に密着するように装着する。こうして、弾性パッキン32は、固定体31によって保持される。
【0058】
次いで、
図8(h)に示すように、逆流防止弁35を有する弁付き本体33を蓋受け体8の内部空間24を通過させ、弾性パッキン32に取り付ける。このとき、作業者は、把持部70を片手で把持した状態で、弁付き本体33を水平姿勢のまま下方へ押し込むだけで当該弁付き本体33を弾性パッキン32に取り付けることができる。
【0059】
次いで、
図8(i)に示すように、最後に、蓋9を蓋受け体8に取り付けて開口部23を閉鎖し、逆流防止装置3の取付作業が完了する。このように、作業者は、特殊な工具を用いることなく、逆流防止装置3を既設の雨水桝2の立上管7の内周面に容易に取り付けることが可能である。
【0060】
次に、雨水桝2内の泥溜め容器18を取り出す際の手順について
図9を参照して説明する。
【0061】
図9(a)の如く泥等の沈殿物92が容器本体19内に溜まった泥溜め容器18を雨水桝2内から取り出す場合には、まず、作業者は、
図9(b)に示すように、蓋9を蓋受け体8から取り外して開口部23を開口させる。
【0062】
次いで、
図9(c)に示すように、逆流防止弁35を有する弁付き本体33を弾性パッキン32から取り外した後、当該弁付き本体33を蓋受け体8の内部空間24を通過させて立上管7内から取り出す。このとき、作業者は、把持部70を片手で把持した状態で、弁付き本体33を傾斜姿勢にしつつ上方に引っ張るだけで当該弁付き本体33を弾性パッキン32から取り外すことができる。
【0063】
次いで、
図9(d)に示すように、作業者は、取手20を持って泥溜め容器18を持ち上げることにより、当該泥溜め容器18を固定体31内、弾性パッキン32内及び蓋受け体8内を順次通過させて立上管7内から取り出す。
【0064】
作業者は、沈殿物92を除去した後、泥溜め容器18を元の位置に戻すとともに、弁付き本体33及び蓋9を順次取り付ける。つまり、作業者は、上述した取り外し工程とは逆の取り付け工程を行う。このように、作業者は、この場合も特殊な工具を用いることなく、泥溜め容器18を容易に掃除することが可能である。
【0065】
そして、上述した逆流防止装置3によれば、逆流防止装置3を雨水桝2の立上管7に取り付けて設置することで、雨水桝2内で発生した臭気及び害虫等が雨水桝2外の外部に漏出するのを適切に防止できる。
【0066】
また、何ら特殊な工具を用いることなく、逆流防止装置3を立上管7に容易に取り付けることができるとともに、その取り付け後において泥溜め容器18を容易に掃除することができる。
【0067】
さらに、固定体31は、切欠部40を有するC字状の弾性部材41によって構成されているため、蓋受け体8の内部空間24を容易に通過できるとともに、立上管7の内径に適切に対応できる。
【0068】
また、固定体31は、接着剤の溜まり部となる凹部45を有するため、接着不良を防止でき、固定体31を立上管7に適切に固定でき、しかも、過度な余剰接着剤が発生せず、接着垂れ等も防止できる。
【0069】
さらに、弾性パッキン32は、外周側は立上管7の内周面に密着しかつ内周側には本体部材36の外周面が密着する密着部51を有するため、水密及び気密な状態を適切に維持でき、しかも、弾性パッキン32の位置ずれも防止できる。
【0070】
また、弾性パッキン32は、凹溝53が外周面上部に形成されかつ外周面下部が逆截頭円錐面状に形成された装着部52を有するため、弾性パッキン32を固定体31に容易に装着できる。
【0071】
さらに、弁付き本体33の本体部材36は、縮径側に位置する逆流防止弁35側に向けて雨水を案内して集める逆截頭円錐状の案内面71を有するため、案内面71上での雨水溜まりの形成を適切に防止できる。
【0072】
また、弁付き本体33の本体部材36は、作業者が把持する把持部70を有するため、片手だけで弁付き本体33を弾性パッキン32に対して容易に着脱できる。
【0073】
さらに、弁付き本体33の逆流防止弁35は、本体部材36の弁座面65に対して接離する弁部83を有するため、流入した雨水を速やかに下方側へ排出できるとともに、臭気及び害虫の逆流(つまり上方側への移動)を適切に防止できる。
【0074】
次に、本発明の第2の実施の形態について
図10を参照して説明する。
【0075】
図10に示す逆流防止装置3は、立上管7の上端部に取り付けられている。この逆流防止装置3の固定体31は、C字状の弾性部材41ではなく、短円筒状の蓋受け体(受座)8によって構成されている。つまり、この固定体31は、蓋受け体8を兼ねたものである。
【0076】
また、蓋受け体8の内周面には環状の凹溝101が形成され、この凹溝101に弾性パッキン32が装着され、この弾性パッキン32の内周側に弁付き本体33が着脱可能に取り付けられている。
【0077】
そして、
図10に示す逆流防止装置3でも、臭気の漏出を適切に防止できる等、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0078】
次に、本発明の第3の実施の形態について
図11を参照して説明する。
【0079】
図11に示す逆流防止装置3は、立上管7の上下方向中間部に取り付けられている。この逆流防止装置3の固定体31は、C字状の弾性部材41ではなく、短円筒状の継手102によって構成されている。つまり、この固定体31は、継手102を兼ねたものである。なおこの例では、立上管7は、例えば第1立上管7aと、第2立上管7bとで構成され、これら2本の管7a,7bが継手102を介して接続されている。
【0080】
また、継手102の内周面には環状の凹溝103が形成され、この凹溝103に弾性パッキン32が装着され、この弾性パッキン32の内周側に弁付き本体33が着脱可能に取り付けられている。
【0081】
そして、
図11に示す逆流防止装置3でも、臭気の漏出を適切に防止できる等、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0082】
次に、本発明の第4の実施の形態について
図12及び
図13を参照して説明する。
【0083】
図12及び
図13に示す逆流防止装置3は、立上管7の下端部に取り付けられている。この逆流防止装置3の固定体31は、C字状の弾性部材41ではなく、桝本体6によって構成されている。つまり、この固定体31は、桝本体6を兼ねたものである。
【0084】
また、桝本体6の掃除口部13の内周面には環状の凹溝105が形成され、この凹溝105に弾性パッキン32が装着され、この弾性パッキン32の内周側及び掃除口部13の内周側に弁付き本体33が着脱可能に取り付けられている。
【0085】
そして、
図12及び
図13に示す逆流防止装置3でも、臭気の漏出を適切に防止できる等、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0086】
なお、上記いずれの実施の形態においても、弁付き本体33の把持部70は、例えば
図14に示すように、把持部70を把持する際に作業者が親指を上方から押し当てる水平状で半円状の指当て部である指当て面106を有するようにしてもよい。なお、この指当て面106は、第3板部分78の三角状部78aの先端側に連設されている。
【0087】
また、逆流防止装置は、接着剤等の固定手段を用いて取付体を固定体として管路に固定的に取り付ける構成には限定されず、例えば図示しないが、管路に対して取付体を位置調整可能に取り付ける構成等でもよい。
【0088】
さらに、逆流防止装置は、例えば弾性パッキン等のシール部材を用いずに、弁付き本体を取付体に直接取り付ける構成等でもよい。
【0089】
また、取付体は、弾性部材(1つの部材)のみからなるものには限定されず、例えば縮拡可能となるように複数の部材で構成したものでもよい。
【0090】
さらに、既設の雨水桝ではなく、例えば新設の雨水桝や新設の管路等に逆流防止装置を取り付けるようにしてもよい。
【0091】
また、逆流防止装置を設ける管路は、桝本体から立ち上った立上管には限定されず、屋外において発生する排水が流入する管路であれば任意である。
【0092】
なお、本発明のいくつかの実施形態及びその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0093】
3 逆流防止装置
7 管路である立上管
9 蓋
31 取付体である固定体
32 シール部材である弾性パッキン
33 弁付き本体
35 逆流防止弁
41 弾性部材
70 把持部
71 案内部である案内面