(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20240723BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B66F9/06 K
B66F11/04
(21)【出願番号】P 2020162983
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】桑原 嘉男
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 健
(72)【発明者】
【氏名】山崎 章浩
(72)【発明者】
【氏名】金子 淳一
(72)【発明者】
【氏名】杉田 良平
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-151628(JP,A)
【文献】米国特許第08857567(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B66C 23/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、前記走行体の前後左右に設けられて前記走行体を支持可能な複数のジャッキと、前記走行体に設けられた昇降機構と、前記昇降機構により昇降可能に支持された作業台と、前記複数のジャッキの作動を制御するジャッキ作動制御装置と、前記昇降機構の作動を制御する昇降作動制御装置と、を有する高所作業車であって、
前記昇降機構は、
前記走行体に起伏動可能
に設けられたロアブームと、
前記ロアブームの先端部に屈折動可能に設けられたアッパブームと、前記
アッパブームの先端部に設けられて前記作業台を水平旋回移動可能に支持する作業台支持機構とを有し、
前記ロアブームが前記走行体の前後方向に延びて倒伏されて前記アッパブームが前記ロアブームの延びる方向と反対方向に延びた状態で、前記ロアブームおよび前記アッパブームが前記走行体上に格納されるように構成されており、
前記作業台支持機構は、前記
ロアブーム
および前記アッパブームが前記走行体上に格納された状態において、前記作業台を、前記作業台が平面視において前記
ロアブーム
および前記アッパブームの下方に位置する第1作業台位置と、
前記作業台が平面視において前記
ロアブーム
および前記アッパブームの下方から左右側方に外れて位置する第2作業台位置とに位置させることが可能に支持する構成とされることを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
前記
ロアブーム
および前記アッパブームが前記走行体上に格納された状態において、
前記複数のジャッキが前記走行体を支持している場合は、前記作業台支持機構により前記作業台が前記第2作業台位置に位置されることを許容し、
前記複数のジャッキが前記走行体を支持していない場合は、前記作業台支持機構により前記作業台が前記第2作業台位置に位置されることを規制するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記
ロアブーム
および前記アッパブームが前記走行体上に格納されている状態において、
前記複数のジャッキが前記走行体を支持している場合には、
前記作業台が前記第1作業台位置にある場合は、前記複数のジャッキが前記走行体の支持を解除することを前記ジャッキ作動制御装置により許容し、
前記作業台が前記第2作業台位置にある場合は、前記複数のジャッキが前記走行体の支持を解除することを前記ジャッキ作動制御装置により規制するように構成されることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の高所作業車。
【請求項4】
前記作業台に作業者が搭乗しているか否かを判別する搭乗判別装置を備え、
前記
ロアブーム
および前記アッパブームが前記走行体上に格納された状態において、
前記搭乗判別装置により前記作業台に作業者が搭乗していないと判別された場合は、前記作業台支持機構による前記作業台の移動を許容し、
前記搭乗判別装置により前記作業台に作業者が搭乗していると判別された場合は、前記作業台支持機構による前記作業台の移動を規制するように構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームの先端部に作業台を水平旋回可能に支持する高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、例えば、前後輪を有して走行可能な走行体と、この走行体上に起伏、伸縮、旋回等自在に配設されたブームと、このブームの先端部に設けられた作業者搭乗用の作業台とを備え、作業台に搭乗した作業者が作業台上に設けられた操作装置を操作してブームを作動させることにより、作業台を任意の高所位置へ移動自在に構成されている。このような高所作業車においては、ブームを起伏動等させて作業台を高所に位置させることにより重心位置が高くなるため、作業中における安定した作業姿勢を維持すべく、地面に接地させて走行体を持ち上げ支持する複数のジャッキが備えられている。
【0003】
高所作業車において、ブームの先端部に作業台が水平旋回可能に垂下支持され、ブームが倒伏されて格納された状態においては、作業台が格納姿勢のブームよりも低い姿勢で走行体上に位置するように構成されたもの(便宜的に「作業台垂下支持型の高所作業車」と称する)が知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。このような作業台垂下支持型の高所作業車では、ブーム格納状態における作業台の位置として主に2つの位置が選択される。1つは、倒伏して格納された状態のブームの下方に作業台がくる位置(「第1作業台位置」とも称する)である。もう1つは、作業台が平面視において、倒伏して格納された状態のブームの左右側方に外れる位置(「第2作業台位置」とも称する)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1作業台位置に作業台が位置する状態では、作業台がブームの下方に位置するため、ブーム及び作業台からなる架装物の重心位置が走行体の前後軸側に寄ることとなる。そのため、車両全体の重量配分を左右均等な状態に近づけることができるので走行時の車両が安定するという利点がある。しかし、作業台がブームの下方に位置する関係上、この状態で作業者が作業台に乗降しようとするとブームが障害となるため乗降性は悪い。一方、作業台が第2作業台位置にある状態では、作業台が平面視においてブームの下方から左右側方に外れて位置するため、作業台の上方がブームにより覆われずブームが障害にならないので、走行体上から容易に作業台に乗降することができるので乗降性は良い。しかし、ブーム及び作業台からなる架装物の重心位置が走行体の前後軸から離れることとなり、車両全体の重量配分が左右不均等な状態となるので、転角が小さくなるなど走行時の車両の安定性が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、走行時の安定性が良く走行体上から作業台への乗降性にも優れた高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る高所作業車は、走行可能な走行体と、前記走行体の前後左右に設けられて前記走行体を支持可能な複数のジャッキと、前記走行体に設けられた昇降機構(例えば、実施形態における旋回台20及び屈折ブーム30)と、前記昇降機構により昇降可能に支持された作業台と、前記複数のジャッキの作動を制御するジャッキ作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ100のジャッキ作動制御部102)と、前記昇降機構の作動を制御する昇降作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ100)と、を有する高所作業車であって、前記昇降機構は、前記走行体に起伏動可能に設けられたロアブームと、前記ロアブームの先端部に屈折動可能に設けられたアッパブームと、前記アッパブームの先端部に設けられて前記作業台を水平旋回移動可能に支持する作業台支持機構とを有し、前記ロアブームが前記走行体の前後方向に延びて倒伏されて前記アッパブームが前記ロアブームの延びる方向と反対方向に延びた状態で、前記ロアブームおよび前記アッパブームが前記走行体上に格納されるように構成されており、前記作業台支持機構は、前記ロアブームおよび前記アッパブームが前記走行体上に格納された状態において、前記作業台を、前記作業台が平面視において前記ロアブームおよび前記アッパブームの下方に位置する第1作業台位置と、前記作業台が平面視において前記ロアブームおよび前記アッパブームの下方から左右側方に外れて位置する第2作業台位置とに位置させることが可能に支持する構成とされる。
【0008】
本発明に係る高所作業車において、好ましくは、前記ロアブームおよび前記アッパブームが前記走行体上に格納された状態において、前記複数のジャッキが前記走行体を支持している場合は、前記作業台支持機構により前記作業台が前記第2作業台位置に位置されることを許容し、前記複数のジャッキが前記走行体を支持していない場合は、前記作業台支持機構により前記作業台が前記第2作業台位置に位置されることを規制するように構成される。
【0009】
また、本発明に係る高所作業車において、好ましくは、前記ロアブームおよび前記アッパブームが前記走行体上に格納されている状態において、前記複数のジャッキが前記走行体を支持している場合には、前記作業台が前記第1作業台位置にある場合は、前記複数のジャッキが前記走行体の支持を解除することを前記ジャッキ作動制御装置により許容し、前記作業台が前記第2作業台位置にある場合は、前記複数のジャッキが前記走行体の支持を解除することを前記ジャッキ作動制御装置により規制するように構成される。
【0010】
また、本発明に係る高所作業車において、好ましくは、前記作業台に作業者が搭乗しているか否かを判別する搭乗判別装置(例えば、実施形態におけるコントローラ100)を備え、前記ロアブームおよび前記アッパブームが前記走行体上に格納された状態において、前記搭乗判別装置により前記作業台に作業者が搭乗していないと判別された場合は、前記作業台支持機構による前記作業台の移動を許容し、前記搭乗判別装置により前記作業台に作業者が搭乗していると判別された場合は、前記作業台支持機構による前記作業台の移動を規制するように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る高所作業車によれば、ロアブームおよびアッパブームが走行体上に格納された状態において、作業台支持機構により作業台を、第1作業台位置と第2作業台位置とに位置させることができる。そのため、走行する際には作業台を第1作業台位置に位置させることにより走行時の車両の安定性を良くするとともに、作業台に乗降する場合は作業台を第2作業台位置に位置させることにより作業台の乗降性を良くすることが可能である。
【0012】
本発明に係る高所作業車において、ロアブームおよびアッパブームが格納された状態でジャッキが走行体を支持している場合は、作業台が第2作業台位置に位置されることを許容し、ジャッキが走行体を支持していない場合は、作業台が第2作業台位置に位置されることを規制することで、作業台が第2作業台位置に位置した状態では走行体がジャッキにより支持された状態とすることができる。そのため、作業台が第2作業台位置に位置した状態で車両が走行されることを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る高所作業車において、ロアブームおよびアッパブームが格納されている状態でジャッキが走行体を支持している場合には、作業台が第1作業台位置にある場合は、ジャッキが走行体の支持を解除することを許容し、作業台が第2作業台位置にある場合は、ジャッキが走行体の支持を解除することを規制することで、走行体がジャッキにより支持されていない状態では作業台が第1作業台位置に位置した状態とすることができる。そのため、作業台が第2作業台位置に位置した状態で車両が走行されることを抑制することができる。
【0014】
本発明に係る高所作業車において、ロアブームおよびアッパブームが格納されている状態で作業台に作業者が搭乗していないと判別された場合は、作業台支持機構による作業台の移動を許容し、作業台に作業者が搭乗していると判別された場合は、作業台支持機構による作業台の移動を規制することで、作業台に搭乗している作業者がブームと作業台との間に挟まれたりブームにぶつかったりすることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る屈折ブーム型の高所作業車のブームが格納された状態において作業台が第1作業台位置にあるときの平面図である。
【
図2】上記高所作業車のブームが格納された状態において作業台が第1作業台位置にあるときの側面図である。
【
図3】上記高所作業車の外観を、ブームを伸ばして作業台を高所に移動させている状態を示す側面図である。
【
図4】上記高所作業車のブームが格納された状態において作業台が第2作業台位置にあるときの平面図である。
【
図5】上記高所作業車のブームが格納された状態において作業台が第2作業台位置にあるときの側面図である。
【
図6】上記高所作業車の作業台首振り作動制御システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1~
図3に本発明の一実施形態に係る屈折ブーム型(屈伸ブーム型)の高所作業車1を示しており、まず、主に
図1~
図3を参照して高所作業車1の全体構成について概要説明する。これらの図に示すように、高所作業車1は、タイヤ車輪11を備えて運転キャビン12から走行運転操作が可能なトラック式の走行体10と、走行体10上に設けられた旋回台20と、この旋回台20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22を介して基端部が軸支された屈折ブーム(以下、単にブームと称する)30と、このブーム30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台(「バスケット」とも称する)50とを有して構成されている。
【0017】
旋回台20は走行体10の後部に上下軸まわり360度回動自在に取り付けられている。走行体10の内部には油圧モータからなる旋回モータ23が設けられており、この旋回モータ23を回転作動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を上下軸まわりに旋回作動(すなわち水平旋回作動)させることができる。ブーム30はロアブーム31とロアブーム31の右側面側に配置されたアッパブーム32とから構成されている。ロアブーム31は入れ子式に構成された第1ブーム部材31a、第2ブーム部材31b及び第3ブーム部材31cからなっており、アッパブーム32は入れ子式に構成された第4ブーム部材32a及び第5ブーム部材32bからなっている(
図3を参照)。ロアブーム31の最も上段側に位置するブーム部材、すなわち第3ブーム部材31cの先端部には側方に延設された枢支軸33が取り付けられており、この枢支軸33により、アッパブーム32の最も下段側に位置するブーム部材、すなわち第4ブーム部材32aの基端部が軸支されている。
【0018】
ロアブーム31の内部には油圧シリンダからなる第1伸縮シリンダ34がロアブーム31の軸方向に延びて設けられており、この第1伸縮シリンダ34の伸縮作動によりロアブーム31を構成する各ブーム部材31a,31b,31cを相対的に移動させて、ロアブーム31全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、アッパブーム32の内部には油圧シリンダからなる第2伸縮シリンダ35がアッパブーム32の軸方向に延びて設けら
れており、この第2伸縮シリンダ35を伸縮作動させることにより、アッパブーム32を構成する各ブーム部材32a,32bを相対的に移動させて、アッパブーム32全体を軸方向に伸縮動させることができる。
【0019】
アッパブーム32の下段側に位置する第4ブーム部材32aは、その基端部に設けられた第1リンク36a及び第2リンク36bを介して上記枢支軸33に連結されている。ここで、第1リンク36aは上記枢支軸33上に固設されており、第2リンク36bは第4ブーム部材32aに固定されたうえで、第1リンク36aに取り付けられた揺動軸36cを介して鉛直面内での揺動が可能なように支持されている。第1リンク36aの左右両面にはそれぞれ第1アーム状部材37aの一端側が枢支されており、第2リンク36bの左右両面にはそれぞれ第2アーム状部材37bの一端側が枢支されている。これら第1アーム状部材37a及び第2アーム状部材37bのそれぞれの他端側は枢支軸33と平行に設けられた軸部材38により枢支されており、この軸部材38には一端側が第4ブーム部材32aの中間部に固設されたシリンダ保持ブラケット39により枢支された油圧シリンダからなる屈折シリンダ40の他端側が取り付けられている。
【0020】
このため屈折シリンダ40を伸縮作動させることにより、第1アーム状部材37a、第2アーム状部材37b及び第1リンク36a及び第2リンク36bを介してアッパブーム32をロアブーム31に対して鉛直面内で屈折動させることが可能である。具体的には、屈折シリンダ40が伸長作動したときには両アーム状部材37a,37bが軸部材38を支点にして開く方向に移動するので、これによりアッパブーム32全体はロアブーム31から離れる方向に揺動して「伸」作動し、逆に屈折シリンダ40が収縮作動したときには両アーム状部材37a,37bが軸部材38を支点にして閉じる方向に移動するので、これによりアッパブーム32全体はロアブーム31に近づく方向に揺動して「屈」作動する。なお、屈折シリンダ40が全縮した状態において、アッパブーム32はロアブーム31と平行な姿勢となる。
【0021】
また、ロアブーム31の最も下段側に位置する第1ブーム部材31aと旋回台20の支柱21との間には油圧シリンダからなる起伏シリンダ24が跨設されており、この起伏シリンダ24を伸縮作動させることにより、ロアブーム31全体を鉛直面内で起伏動させることが可能である。
【0022】
アッパブーム32の上段側に位置する第5ブーム部材32bの先端部には作業台支持機構60が設けられている。この作業台支持機構60は、第5ブーム部材32bの先端部に固定されたブラケット部材61と、ブラケット部材61に下方斜め前方に湾曲して延びるように取り付けられた支持部材62と、支持部材62の下端部に左方(
図3の紙面手前側)に延びるように取り付けられたオフセット部材63と、オフセット部材63の先端部に下方に延びた後水平に延びるように取り付けられたL字状のポスト部材64とを備えている。支持部材62は、ブラケット部材61によって、鉛直面内での揺動が可能なように支持されている。また、図示しないレベリング機構により、ポスト部材62の上下方向に延びる部分が常時鉛直姿勢に保持されるように、ブラケット部材61に対する支持部材62の姿勢が調整されるようになっている。ポスト部材64は、オフセット部材63に対し上下軸まわりに回動可能に取り付けられており、オフセット部材63とポスト部材64との境界部分には、ポスト部材64を回動させるための油圧モータからなる首振りモータ65(後述の
図6を参照)が設けられている。オフセット部材63は、後述するブーム30の格納状態において、平面視におけるポスト部材64の回動中心(作業台50の首振り旋回中心)をアッパブーム32側からロアブーム31側にずらすための部材である。
【0023】
作業台50は、矩形状の床板51の周囲にパイプ材で構成された柵52が配置されて箱状に形成されている。柵52の一側面(
図1において走行体10の左方を向く面)には、
図示せぬ乗降用扉が設けられており、この乗降用扉を開放することにより作業者が作業台50に乗降することが可能となる。作業台50は、ポスト部材62の水平に延びる部分の先端部に取り付けられ、作業台支持機構60を介してアッパブーム32の先端部に支持される。前述のように、ポスト部材62の上下方向に延びる部分が常時鉛直姿勢に保持されることから、作業台50の床面はブーム30の姿勢の如何を問わず、常に水平姿勢に保たれる。また、首振りモータによりポスト部材64が上下軸まわりに回動することにより、作業台50が首振り旋回(水平旋回)するようになっている。
【0024】
走行体10の前後左右各箇所にはブーム30を作動させて作業台50を上方に移動させる作業状態の走行体10を安定状態に支持するためのアウトリガジャッキ(単に「ジャッキ」とも称する)13が設けられている。各アウトリガジャッキ13は上下方向に延びたアウタージャッキ(シリンダチューブ)13aと、このアウタージャッキ13a内に設けられて上下方向に伸縮自在なインナージャッキ(ピストンロッド)13bと、インナージャッキ13bの下端部に揺動自在に取り付けられたジャッキパッド13cと、を有して構成されている。各アウトリガジャッキ13においてインナージャッキ13bを下方に移動(伸長)させ、ジャッキパッド13cを地面に接地させて突っ張らせることにより走行体10を持ち上げ状態に支持させることができる(
図2を参照)。また、各アウトリガジャッキ13は走行体10の側方に張り出させることも可能であり、これにより、更に高い走行体10の安定が得られるようになっている。なお、アウトリガジャッキ13としては、上下方向に延びたアウターボックスと、このアウターボックス内に上下方向に伸縮可能に設けられたインナーボックスとを有し、これらアウター及びインナーボックスに内蔵されたシリンダによりインナーボックスが下方に伸長作動するように構成されたものであってもよい。さらに、走行体10に設けられて左右方向に延びたアウトリガボックスと、アウトリガボックスによって側方に伸縮可能に支持されたアウトリガビームとを有し、アウトリガビームの先端部にアウトリガジャッキ13(アウターボックス)が設けられ、アウトリガビームに内蔵されたシリンダによりアウトリガビームが左右方向に張出作動するように構成されていてもよい。
【0025】
図1及び
図2に示すように、作業台50上には操作装置55が備えられており、この操作装置55には旋回モータ23の回転作動、起伏シリンダ24の伸縮作動、第1伸縮シリンダ34の伸縮作動、第2伸縮シリンダ35の伸縮作動、屈折シリンダ40の伸縮作動及び首振りモータ54の回転作動の各操作を行うためのレバー類(図示せず)が備えられている。作業台50に搭乗した作業者は、これらレバー類を操作して旋回台20を旋回操作し、ロアブーム31を起伏及び伸縮操作し、アッパブーム32を屈折及び伸縮操作し、或いは作業台50を首振り(水平旋回)操作することで、自身が搭乗する作業台50を所望の位置及び姿勢に移動させることが可能である。具体的には、操作装置55による操作を受けて、コントローラ100がコントロールバルブCV(後述の
図6を参照)を介して各油圧アクチュエータの作動を制御する。なお、地上の作業者が各油圧アクチュエータの操作を行うための別の操作装置(下部操作装置)を走行体10に設けてもよい。
【0026】
また、
図1及び
図2は高所作業車1におけるブーム30の格納状態(格納姿勢)を示している。これらの図に示すようにブーム30の格納状態においては、ロアブーム31が略水平な姿勢で走行体10の前後方向に延び(先端側が前方)、アッパブーム32がロアブーム31と略平行となる姿勢でロアブーム31の延びる方向とは反対の方向(すなわち後方)に延びた状態となる。ブーム30の張出状態からの格納手順は、まずロアブーム31及びアッパブーム32をそれぞれ全縮状態にした上で、ロアブーム31を所定の起伏角度になるまで起仰或いは倒伏し、屈折シリンダ40を全縮状態にさせてアッパブーム32がロアブーム31と平行な姿勢になるようにする。そして最後にロアブーム31を略水平姿勢になるまで倒伏させて、ブーム支持ポスト26上に載せる。これによりロアブーム31、アッパブーム32が上記の姿勢に格納される。
【0027】
高所作業車1では、上述のようにブーム30が格納された状態において、作業台支持機構60により作業台50を首振り旋回させて、走行体10上における作業台50の位置を変更することができる。この点について、
図4及び
図5を追加参照して説明する。
図1及び
図2は、ブーム30の格納状態において、作業台50が平面視においてブーム30の下方に位置する状態を示している(この状態のときの作業台50の位置を「第1作業台位置」と称する)。これに対し、
図4及び
図5は、ブーム30の格納状態において、作業台50が平面視においてブーム30の下方から左側方に外れて位置する状態を示している(この状態のときの作業台50の位置を「第2作業台位置」と称する)。
【0028】
作業台50が第1作業台位置にある状態は、作業台50がブーム30の下方に位置するため、ブーム30及び作業台50からなる架装物の重心位置が走行体10の前後軸側に寄ることとなり、車両全体の重量配分を左右均等な状態に近づけることができるので走行時の車両が安定する。そのため、第1作業台位置は、走行時における作業台50の位置として適している。これに対し、作業台50が第2作業台位置にある状態は、作業台50が平面視においてブーム30の下方から左側方に外れて位置するため、ブーム30及び作業台50からなる架装物の重心位置が走行体10の前後軸から離れることとなり、車両全体の重量配分が左右不均等な状態となるので走行時の車両の安定性が低下する。特に転角が小さくなる虞がある。そのため、第2作業台位置は、走行時における作業台50の位置としては適していない。また、
図4に示すように、平面視において作業台50の一部が走行体10から左側方にはみ出るので、この状態で走行することは禁止されている。しかし、作業台50が第2作業台位置にある状態は、作業台50の上方がブーム30により覆われずブーム30が障害にならないので、作業者が作業台50に搭乗するのに適している。すなわち、
図4の矢印Kに示すように、走行体10の後方左側部に設けられたステップ27を使って作業者が走行体10上に上がり、その後、第2作業台位置にある作業台50の乗降用扉を開放することにより、作業者がスムーズに作業台50に搭乗することができる。これに対し、作業台50が第1作業台位置にある状態は、作業台50の上方がブーム30により覆われてブーム30が障害になるので、作業者が作業台50に搭乗する位置としては適していない。
【0029】
ブーム30が格納された状態において、作業台50を第1作業台位置に位置させるのには、
図1に示すように、作業台支持機構60におけるポスト部材64の水平に延びる部分が、オフセット部材63に対し垂直となるように、首振りモータ65により作業台50を平面視における旋回中心Xまわりに水平旋回させればよい。同様に、作業台50を第2作業台位置に位置させるのには、
図4に示すように、ポスト部材64の水平に延びる部分が、オフセット部材63と一直線上に並ぶように、首振りモータ65により作業台50を旋回中心Xまわりに水平旋回させればよい。
【0030】
次に、作業台の首振り作動制御システムについて、
図6を追加参照して説明する。この作業台の首振り作動制御システムは、ブーム30が格納された状態における作業台50の作業台支持機構60による首振り作動を制御するものであり、
図6に示すように、コントローラ100と、ジャッキ状態検出器111と、作業台位置検出器112と、作業台搭乗検出器113と、首振り操作スイッチ114と、ジャッキ操作装置115とを備えている。
【0031】
ジャッキ状態検出器111は、各ジャッキ13の状態を検出するものであり、例えば、ジャッキ13が接地したことを検出するセンサやジャッキ13の伸長量を検出するセンサ等から構成される。作業台位置検出器112は、ブーム30が格納された状態における作業台50の位置を検出するものであり、例えば、首振りモータ65による作業台50の旋回角度を検出するセンサから構成される。作業台搭乗検出器113は、作業台50に作業
者が搭乗しているか否かを検出するものであり、例えば、作業台50に作用する荷重を検出するセンサや、作業台50に搭乗者がいることを画像や音波、温度等により検出するセンサ等により構成される。首振り操作スイッチ114は、ブーム30が格納状態にある場合に、作業台50の走行体10上における位置を変更する場合に操作されるスイッチであり、走行体10の所定位置、例えば、下部操作装置にも配置される。ジャッキ操作装置115は、各ジャッキ13を作動させるために操作される操作レバー等を備えており、走行体10の所定位置に配置される。
【0032】
コントローラ100は、
図6に示すように、首振り作動制御部101とジャッキ作動制御部102とを備えている。これらは、コントローラ100が有する機能を模式的に表したものである。首振り作動制御部101は、首振り操作スイッチ114が操作された際に、その操作に応じて、コントロールバルブCVを介して首振りモータ65を作動させて作業台50を首振り旋回させ、作業台50の走行体10上における位置を変更する機能を有する。具体的には例えば、作業台50が第1作業台位置にあるときに首振り操作スイッチ114が操作された場合は、作業台指示機構60により作業台50を第2作業台位置に移動させ、作業台50が第2作業台位置にあるときに首振り操作スイッチ114が操作された場合は、作業台指示機構60により作業台50を第1作業台位置に移動させる。ただし、首振り操作スイッチ114が操作されても首振りモータ65を作動させず、作業台50を首振り旋回させない場合がある。
【0033】
具体的には、各ジャッキ13により走行体10が支持されていない状態では、作業台50を第2作業台位置に移動させるべく首振り操作スイッチ114が操作されても、首振りモータ65を作動させず作業台50を第2作業台位置に移動させない。例えば、ジャッキ状態検出器111及び作業台位置検出器112の検出結果に基づき、各ジャッキ13により走行体10が支持されていない状態であり、且つ作業台50が第1作業台位置にあるとコントローラ100が判別する場合は、首振り操作スイッチ114が操作されても、首振り作動制御部101は首振りモータ65を作動させない。各ジャッキ13により走行体10が支持されていない状態で、作業台50を第2作業台位置に位置することを許容してしまうと、作業台50が第2作業台位置に位置した状態で走行体10が走行される虞がある。本実施形態によれば、そのような事態が生じることを防止できる。
【0034】
また、作業台50に搭乗者がいる状態では、作業台50を走行体10上で移動させるべく首振り操作スイッチ114が操作されても、首振りモータ65を作動させず作業台50を移動させない。具体的には、作業台搭乗検出器113の検出結果(例えば、作業台50に作用する荷重が所定値(例えば、30キログラム)を越えるという検出結果)に基づき、作業台50に搭乗者がいるとコントローラ100が判別する場合は、首振り操作スイッチ114が操作されても首振りモータ65を作動させず、作業台支持機構60により作業台50を移動させることはない。ブーム30が格納された状態において作業台50に搭乗者がいる場合に、首振り操作スイッチ114の操作に基づき作業台50が走行体10上で移動されることを許容してしまうと、搭乗している作業者等がブーム30に接触したり、ブーム30と作業台50との間に挟まれたりする虞がある。本実施形態によれば、そのような事態が生じることを防止できる。
【0035】
ジャッキ作動制御部102は、ジャッキ操作装置115が操作された際に、その操作に応じて、コントロールバルブCVを介してジャッキ13を作動させる機能を有する。ただし、ジャッキ操作装置115が操作されてもジャッキ13を作動させない場合がある。具体的には、各ジャッキ13により走行体10が支持されており、作業台50が第2作業台位置にある状態では、各ジャッキ13を格納すべくジャッキ操作装置115が操作されても、ジャッキ13を作動させない。すなわち、ジャッキ状態検出器111及び作業台位置検出器112の検出結果に基づき、各ジャッキ13により走行体10が支持されている状態であり、且つ作業台50が第2作業台位置にあると判別される場合は、ジャッキ操作装置115が操作されても、ジャッキ13を作動させずジャッキ13を格納することが規制される。作業台50が第2作業台位置にある状態で、ジャッキ13が格納されることを許容してしまうと、ジャッキ13の格納後、作業台50が第2作業台位置に位置した状態で走行体10が走行される虞がある。本実施形態によれば、ジャッキ13を格納するには、作業台50が第1作業台位置に位置することが必要となるので、そのような事態が生じることを防止できる。
【0036】
以上のように構成された作業台制御システムを有する高所作業車1によれば、作業現場において高所作業車1を停車し、ジャッキ13により走行体10を支持した後、首振り操作スイッチ114を作業者が操作することにより、ブーム30が格納された状態において第1作業台位置にある作業台50を第2作業台位置に移動させることができる。そのため、作業者は第2作業台位置に移動した作業台50に容易に搭乗して、作業を開始することができる。また、作業終了後は、作業台50に搭乗した作業者が操作装置55を操作して、ブーム30を格納しつつ作業台50を第2作業台位置に位置させる。そして、ブーム30が格納された状態で第2作業台位置に位置した作業台50から作業者が容易に降りることができる。また、作業台50から降りた後、首振り操作スイッチ114を作業者が操作することにより、第2作業台位置にある作業台50を第1作業台位置に移動させることができる。更に、ジャッキ13を格納することにより高所作業車1が走行可能となる。そのため高所作業車1が走行するときは、ブーム30が格納されて作業台50が第1作業台位置に位置した状態とすることができるので、重量バランスの良い安定した状態で高所作業車1を走行させることができる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。例えば、上述の実施形態では、ロアブーム31は3つのブーム部材(第1ブーム部材31a、第2ブーム部材31b及び第3ブーム部材31c)から構成されているが、これは一例であり、3つに限らず幾つのブーム部材から構成されていてもよい(1つのブーム部材から構成されていてもよい)。また同様に、アッパブーム32は上述の実施形態では2つのブーム部材(第4ブーム部材32a及び第5ブーム部材32b)から構成されているが、これは一例であり、2つに限らず幾つのブーム部材から構成されていてもよい(1つのブーム部材から構成されていてもよい)。
【0038】
また、上述の実施形態では、ブーム30の格納状態において、アッパブーム32がロアブーム31の右側方に配置されるように構成されているが、アッパブームがロアブームの左側方に配置されるように構成されていてもよい。或いはブーム30の格納状態において、アッパブーム32がロアブーム31の下方に配置されるように構成されていてもよい。さらに、上述の実施形態では、ブーム30の格納状態における第2作業台位置が、平面視においてブーム30の左側方に配置されているが、第2作業台位置が平面視においてブームの右側方に配置されるように構成されていてもよい。また、ジャッキ操作装置115を操作して各ジャッキ13を伸長作動させると、各ジャッキ13の伸長作動と連動して作業台50が第1作業台位置から第2作業台位置へ位置するように首振りモータ65を作動させてもよい。また、ジャッキ13を格納作動させると、各ジャッキ13の縮小作動と連動して、作業台50が第2作業台位置から第1作業台位置へ位置するように首振りモータ65を作動させてもよい。
【0039】
また、上述の実施形態では特に言及していないが、ブーム30が格納された状態において作業台50を第2作業台位置に移動させるべく首振り操作スイッチ114が操作された場合や、ブーム30が格納されて第2作業台位置に作業台50が位置している状態においてジャッキ13を格納すべくジャッキ操作装置115が操作された場合に、操作できないことを作業者に報知するための警報装置を設けてもよい。この警告装置はスピーカ等によ
り警告音を発するものでも、警告灯により光を発するものでもよく、パネル等により色や文字により警告を発するものでもよい。
【0040】
また、上述の実施形態で示した屈折ブーム型の高所作業車1はタイヤ車輪により走行する構成であったが、タイヤ車輪により走行するものでなくてもよく、クローラ装置等により走行するものであってもよい。或いは軌道走行用車輪を備えて軌道上を走行する軌道走行用の高所作業車、更にはタイヤ車輪と軌道走行用車輪との両方を備えた軌陸両用の高所作業車等であってもよい。更に、屈折ブーム型以外の高所作業車であっても、作業台がブームの先端部に垂下支持され、ブーム格納状態において作業台がブームよりも低い位置に配置される構成の高所作業車であれば、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 高所作業車
10 走行体
20 旋回台(昇降機構)
30 屈折ブーム(昇降機構)
31 ロアブーム
32 アッパブーム
50 作業台
60 作業台支持機構
65 首振りモータ
100 コントローラ(昇降作動制御装置、搭乗判別装置)
101 首振り作動制御部
102 ジャッキ作動制御部(ジャッキ作動制御装置)
114 首振りスイッチ