IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-制御装置および制御方法 図1
  • 特許-制御装置および制御方法 図2
  • 特許-制御装置および制御方法 図3
  • 特許-制御装置および制御方法 図4
  • 特許-制御装置および制御方法 図5
  • 特許-制御装置および制御方法 図6
  • 特許-制御装置および制御方法 図7
  • 特許-制御装置および制御方法 図8
  • 特許-制御装置および制御方法 図9
  • 特許-制御装置および制御方法 図10
  • 特許-制御装置および制御方法 図11
  • 特許-制御装置および制御方法 図12
  • 特許-制御装置および制御方法 図13
  • 特許-制御装置および制御方法 図14
  • 特許-制御装置および制御方法 図15
  • 特許-制御装置および制御方法 図16
  • 特許-制御装置および制御方法 図17
  • 特許-制御装置および制御方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 11/32 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G05B11/32 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020169727
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061663
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-218007(JP,A)
【文献】特開平7-96170(JP,A)
【文献】特表平1-503498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 11/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定値と制御量とを入力として第1の操作量をフィードバック制御演算により算出するように構成された操作量算出部と、
外部機器から通知された外乱印加予定時刻よりも先行開始時間だけ前にフィードフォワード制御を開始するためのトリガー信号を出力するように構成されたトリガー信号起動部と、
前記トリガー信号に応じて、外乱の抑制に必要なフィードフォワード量を算出するように構成されたフィードフォワード算出部と、
前記操作量算出部によって算出された前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算するように構成されたフィードフォワード実行部と、
前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算した第2の操作量を制御対象に出力するように構成された操作量出力部と、
予め規定された操作量上下限値に対する前記第1の操作量の余裕に応じて前記トリガー信号起動部と前記フィードフォワード算出部のフィードフォワード制御パラメータを設定するように構成されたフィードフォワード修正部とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置において、
前記フィードフォワード修正部は、操作量上下限値に対する前記第1の操作量の余裕量が想定値より少ない場合に、前記フィードフォワード量の配分が基準のフィードフォワード制御の場合よりも前倒しになるように、前記トリガー信号起動部と前記フィードフォワード算出部のフィードフォワード制御パラメータを変更することを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の制御装置において、
前記フィードフォワード算出部は、前記フィードフォワード量を徐々に収束させる時間を規定するフィードフォワード制御パラメータである時定数をTf、前記フィードフォワード量の総量を規定するパラメータをKx、ラプラス演算子をsとしたとき、前記フィードフォワード量をKxs/(1+Tfs)2により算出し、
前記フィードフォワード修正部は、操作量上下限値と外乱印加前の整定時の前記第1の操作量との差を余裕量MV_C、前記トリガー信号起動部のフィードフォワード制御パラメータである前記先行開始時間をFF_inとしたとき、前記余裕量MV_Cが想定値より少ない場合に、前記フィードフォワード算出部のフィードフォワード制御パラメータである前記時定数TfをTf_C=Kx/(2.718MV_C)に変更し、前記トリガー信号起動部のフィードフォワード制御パラメータである前記先行開始時間FF_inをFF_in_C=FF_in+2.0(Tf_C-Tf)に変更することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
設定値と制御量とを入力として第1の操作量をフィードバック制御演算により算出する第1のステップと、
外部機器から通知された外乱印加予定時刻よりも先行開始時間だけ前にフィードフォワード制御を開始するためのトリガー信号を出力する第2のステップと、
前記トリガー信号に応じて、外乱の抑制に必要なフィードフォワード量を算出する第3のステップと、
前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算する第4のステップと、
前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算した第2の操作量を制御対象に出力する第5のステップと、
予め規定された操作量上下限値に対する前記第1の操作量の余裕に応じて前記第2のステップと前記第3のステップに必要なフィードフォワード制御パラメータを設定する第6のステップとを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項5】
請求項4記載の制御方法において、
前記第6のステップは、操作量上下限値に対する前記第1の操作量の余裕量が想定値より少ない場合に、前記フィードフォワード量の配分が基準のフィードフォワード制御の場合よりも前倒しになるように、前記フィードフォワード制御パラメータを変更するステップを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
請求項5記載の制御方法において、
前記第3のステップは、前記フィードフォワード量を徐々に収束させる時間を規定するフィードフォワード制御パラメータである時定数をTf、前記フィードフォワード量の総量を規定するパラメータをKx、ラプラス演算子をsとしたとき、前記フィードフォワード量をKxs/(1+Tfs)2により算出するステップを含み、
前記第6のステップは、操作量上下限値と外乱印加前の整定時の前記第1の操作量との差を余裕量MV_C、前記第2のステップに必要なフィードフォワード制御パラメータである前記先行開始時間をFF_inとしたとき、前記余裕量MV_Cが想定値より少ない場合に、前記第3のステップのフィードフォワード制御パラメータである前記時定数TfをTf_C=Kx/(2.718MV_C)に変更し、前記第2のステップのフィードフォワード制御パラメータである前記先行開始時間FF_inをFF_in_C=FF_in+2.0(Tf_C-Tf)に変更するステップを含むことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを併用する制御装置および制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
代表的なフィードバック(Feedback)制御であるPID制御に、フィードフォワード(Feedforward)分を加算する方法(以下、フィードフォワード+フィードバック制御とする)が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
発明者は、このようなフィードフォワード+フィードバック制御を特に図16のような加熱装置に適用する場合において、実用性を向上させるために、操作量MVの下限値OL、上限値OHを通常値に漸近的に収束させる形式のフィードフォワード方法(特許文献2)と、フィードフォワード量MV_Pをゼロに漸近的に収束させる形式のフィードフォワード方法(特許文献3)とを提案した。
【0004】
図16の加熱装置は、処理対象のワークを加熱する熱処理炉100と、電気ヒータ101と、熱処理炉100内の温度を計測する温度センサ102と、熱処理炉100内の温度を制御する温調計103と、電力調整器104と、電力供給回路105と、加熱装置全体を制御するPLC(Programmable Logic Controller)106とから構成される。温調計103は、温度センサ102が計測した温度PV(制御量)が温度設定値SPと一致するように操作量MVを算出する。電力調整器104は、操作量MVに応じた電力を決定し、この決定した電力を電力供給回路105を通じて電気ヒータ101に供給する。
【0005】
発明者が特許文献3で提案したフィードフォワード+フィードバック制御は、典型的なフィードフォワード制御に近い。図17の制御系のブロック線図を用いて、発明者が特許文献3で提案した技術について説明する。図17のPは制御対象を示している。
【0006】
操作量算出部201は、設定値SPと制御量PVとを入力として、制御量PVが設定値SPと一致するように、例えば以下の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MV(本発明では、基本操作量MVとする)を算出する。
MV=(100/Pb){1+(1/Tis)+Tds}(SP-PV)
・・・(1)
Pbは比例帯、Tiは積分時間、Tdは微分時間、sはラプラス演算子である。
【0007】
加算量算出部204は、基本操作量MVに対するフィードフォワード分の加算量の目標値である操作量加算値FF_P(FF_P≠0)が入力されると、操作量加算値FF_Pに近づいた後にゼロ値へと徐々に収束する操作量加算量MV_Pを算出する。具体的には、加算量算出部204は、下記のような伝達関数式で操作量加算量MV_Pを算出する。
MV_P={Kxs/(1+Tfs)2}FF_P ・・・(2)
【0008】
式(2)のTfは、操作量加算量MV_Pを徐々に収束させる時間を規定するパラメータである。Kxはフィードフォワードの大きさを規定するパラメータである。操作量加算量MV_Pの変化の1例を図18に示す。図18の例では、操作量加算値FF_P=50%、パラメータTf=100sec.、パラメータKx=275としている。
【0009】
減算量算出部205は、基本操作量MVに対するフィードフォワード分の減算量の目標値である操作量減算値FF_M(FF_M≠0)が入力されると、操作量減算値FF_Mに近づいた後にゼロ値へと徐々に収束する操作量減算量MV_Mを算出する。具体的には、減算量算出部205は、下記のような伝達関数式で操作量減算量MV_Mを算出する。
MV_M={Kxs/(1+Tfs)2}FF_M ・・・(3)
【0010】
式(3)のTfは、操作量減算量MV_Mを徐々に収束させる時間を規定するパラメータである。操作量変更部206は、操作量算出部201で算出された基本操作量MVに、加算量算出部204によって算出された操作量加算量MV_Pを加算し、さらに減算量算出部205によって算出された操作量減算量MV_Mを減算した結果を操作量MV_F(本発明では、実操作量MV_Fとする)として算出する。
MV_F=MV+MV_P-MV_M ・・・(4)
【0011】
リミット処理部207は、操作量変更部206によって算出された実操作量MV_Fを所定の操作量下限値OL以上の値に制限する下限リミット処理と、実操作量MV_Fを所定の操作量上限値OH以下の値に制限する上限リミット処理とを行なう。このリミット処理部207でリミット処理された実操作量MV_F’が制御対象Pに出力される。
【0012】
特許文献3で提案した技術によれば、基本操作量MVにフィードフォワード分の変更を施して、一定時間経過後にフィードフォワード分を0%に戻すような不連続な制御で発生する不具合を低減することができる。
【0013】
ただし、特許文献3で提案した技術では、フィードフォワード制御を実行する場合、フィードフォワード制御実行前の操作量MVと操作量上限値OH(あるいは操作量下限値OL)との差(フィードフォワード量を加えられる余裕量に相当)が、本来の想定よりも少ない場合があり得る。その場合、フィードフォワード制御の効果が十分に得られなくなるので、改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2007-102816号公報
【文献】特開2019-101846号公報
【文献】特開2019-101847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、基本操作量にフィードフォワード量を加えることができる余裕量が少ない場合に、フィードフォワード制御の効果が損なわれるのを抑制することができる制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の制御装置は、設定値と制御量とを入力として第1の操作量をフィードバック制御演算により算出するように構成された操作量算出部と、外部機器から通知された外乱印加予定時刻よりも先行開始時間だけ前にフィードフォワード制御を開始するためのトリガー信号を出力するように構成されたトリガー信号起動部と、前記トリガー信号に応じて、外乱の抑制に必要なフィードフォワード量を算出するように構成されたフィードフォワード算出部と、前記操作量算出部によって算出された前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算するように構成されたフィードフォワード実行部と、前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算した第2の操作量を制御対象に出力するように構成された操作量出力部と、予め規定された操作量上下限値に対する前記第1の操作量の余裕に応じて前記トリガー信号起動部と前記フィードフォワード算出部のフィードフォワード制御パラメータを設定するように構成されたフィードフォワード修正部とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記フィードフォワード修正部は、操作量上下限値に対する前記第1の操作量の余裕量が想定値より少ない場合に、前記フィードフォワード量の配分が基準のフィードフォワード制御の場合よりも前倒しになるように、前記トリガー信号起動部と前記フィードフォワード算出部のフィードフォワード制御パラメータを変更することを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記フィードフォワード算出部は、前記フィードフォワード量を徐々に収束させる時間を規定するフィードフォワード制御パラメータである時定数をTf、前記フィードフォワード量の総量を規定するパラメータをKx、ラプラス演算子をsとしたとき、前記フィードフォワード量をKxs/(1+Tfs)2により算出し、前記フィードフォワード修正部は、操作量上下限値と外乱印加前の整定時の前記第1の操作量との差を余裕量MV_C、前記トリガー信号起動部のフィードフォワード制御パラメータである前記先行開始時間をFF_inとしたとき、前記余裕量MV_Cが想定値より少ない場合に、前記フィードフォワード算出部のフィードフォワード制御パラメータである前記時定数TfをTf_C=Kx/(2.718MV_C)に変更し、前記トリガー信号起動部のフィードフォワード制御パラメータである前記先行開始時間FF_inをFF_in_C=FF_in+2.0(Tf_C-Tf)に変更することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の制御方法は、設定値と制御量とを入力として第1の操作量をフィードバック制御演算により算出する第1のステップと、外部機器から通知された外乱印加予定時刻よりも先行開始時間だけ前にフィードフォワード制御を開始するためのトリガー信号を出力する第2のステップと、前記トリガー信号に応じて、外乱の抑制に必要なフィードフォワード量を算出する第3のステップと、前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算する第4のステップと、前記第1の操作量に前記フィードフォワード量を加算した第2の操作量を制御対象に出力する第5のステップと、予め規定された操作量上下限値に対する前記第1の操作量の余裕に応じて前記第2のステップと前記第3のステップに必要なフィードフォワード制御パラメータを設定する第6のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記第6のステップは、操作量上下限値に対する前記第1の操作量の余裕量が想定値より少ない場合に、前記フィードフォワード量の配分が基準のフィードフォワード制御の場合よりも前倒しになるように、前記フィードフォワード制御パラメータを変更するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記第3のステップは、前記フィードフォワード量を徐々に収束させる時間を規定するフィードフォワード制御パラメータである時定数をTf、前記フィードフォワード量の総量を規定するパラメータをKx、ラプラス演算子をsとしたとき、前記フィードフォワード量をKxs/(1+Tfs)2により算出するステップを含み、前記第6のステップは、操作量上下限値と外乱印加前の整定時の前記第1の操作量との差を余裕量MV_C、前記第2のステップに必要なフィードフォワード制御パラメータである前記先行開始時間をFF_inとしたとき、前記余裕量MV_Cが想定値より少ない場合に、前記第3のステップのフィードフォワード制御パラメータである前記時定数TfをTf_C=Kx/(2.718MV_C)に変更し、前記第2のステップのフィードフォワード制御パラメータである前記先行開始時間FF_inをFF_in_C=FF_in+2.0(Tf_C-Tf)に変更するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フィードフォワード修正部を設けることにより、基本操作量にフィードフォワード量を加えることができる余裕量が少ない場合にフィードフォワード制御の効果が損なわれるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施例に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る制御系のブロック線図である。
図3図3は、本発明の実施例に係る制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施例に係る制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、本発明の実施例に係るフィードフォワード量の変化の1例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施例においてフィードフォワード制御を実行せずにフィードバック制御のみを実行した場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。
図7図7は、本発明の実施例において基準のフィードフォワード制御とフィードバック制御を実行した場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。
図8図8は、本発明の実施例において基準のフィードフォワード制御とフィードバック制御を実行した場合のフィードフォワード量のシミュレーション結果を示す図である。
図9図9は、余裕量が本来の想定よりも少ない場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。
図10図10は、本発明の実施例において余裕量が本来の想定よりも少ない場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。
図11図11は、本発明の実施例において余裕量が本来の想定よりも少ない場合のフィードフォワード量のシミュレーション結果を示す図である。
図12図12は、余裕量が本来の想定よりも少ない場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。
図13図13は、本発明の実施例において余裕量が本来の想定よりも少ない場合の制御量と実操作量のシミュレーション結果を示す図である。
図14図14は、本発明の実施例において余裕量が本来の想定よりも少ない場合のフィードフォワード量のシミュレーション結果を示す図である。
図15図15は、本発明の実施例に係る制御装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図16図16は、加熱装置の構成を示すブロック図である。
図17図17は、フィードバック+フィードフォワードの制御系のブロック線図である。
図18図18は、フィードバック+フィードフォワード制御における操作量加算量の変化の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[発明の原理]
発明者は、フィードフォワード制御を外乱印加前に開始する場合、フィードフォワード量の時系列的な配分(時間を規定するパラメータTfにより設定される配分)が、外乱印加後の経過のフィードバック制御との協調も踏まえたものになっており、フィードフォワード量の配分はフィードフォワード制御を加えるタイミングとの関係で調整可能であることに着眼した。
【0023】
つまり、フィードフォワード量の配分を長めの時間に分配させる側(パラメータTfを長くする側)に修正し、外乱印加前にフィードフォワード制御を実行するタイミングを前倒し側に修正すれば、全体的なフィードフォワード量の配分(フィードフォワード量のピーク位置など)は概ね維持したまま、フィードフォワード量の1制御周期での最大量を抑えることができる。
【0024】
そこで、発明者は、フィードフォワード制御実行前の操作量MVと操作量上限値OH(あるいは操作量下限値OL)との差(フィードフォワード量を加えられる余裕量に相当)に応じてフィードフォワード量の配分とフィードフォワード制御を実行するタイミングとを適応的に変更することに想到した。これにより、フィードフォワード制御の実行が操作量上限値OHあるいは操作量下限値OLによって無効化されるのを緩和することができる。
【0025】
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係る制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置は、設定値SPと制御量PVとを入力として基本操作量MV(第1の操作量)をPID演算(フィードバック制御演算)により算出する操作量算出部1と、トリガー信号FF_Xに応じて、外乱の抑制に必要なフィードフォワード量MV_Xを算出するフィードフォワード算出部2と、操作量算出部1によって算出された基本操作量MVにフィードフォワード量MV_Xを加算して実操作量MV_F(第2の操作量)とするフィードフォワード実行部3とを備えている。
【0026】
また、制御装置は、外部機器(不図示)から通知された外乱印加予定時刻tpよりも先行開始時間FF_inだけ前にフィードフォワード制御を開始するためのトリガー信号FF_Xを出力するトリガー信号起動部4と、予め規定された操作量上下限値に対する基本操作量MVの余裕に応じてトリガー信号起動部4とフィードフォワード算出部2のフィードフォワード制御パラメータを設定するフィードフォワード修正部5と、フィードフォワード実行部3で算出された実操作量MV_Fを操作量下限値OL以上で操作量上限値OH以下の値に制限するリミット処理を行なうリミット処理部6と、リミット処理された実操作量MV_F’(第2の操作量)を制御対象に出力する操作量出力部7とを備えている。
図2は本実施例の制御系のブロック線図である。図2のPは制御対象を示している。
【0027】
次に、本実施例の制御装置の動作を図3図4を参照して説明する。設定値SP(例えば温度設定値)は、制御装置のオペレータなどによって設定され、操作量算出部1に入力される(図3ステップS100)。
【0028】
制御量PV(例えば温度計測値)は、図示しない計測器(例えば被加熱物の温度を計測する温度センサ)によって計測され、操作量算出部1に入力される(図3ステップS101)。
【0029】
操作量算出部1は、設定値SPと制御量PVとを入力として、制御量PVが設定値SPと一致するように、例えば以下の伝達関数式のようなPID演算を行って基本操作量MVを算出する(図3ステップS102)。
MV=(100/Pb){1+(1/Tis)+Tds}(SP-PV)
・・・(5)
Pbは比例帯、Tiは積分時間、Tdは微分時間、sはラプラス演算子である。
【0030】
フィードフォワード修正部5の動作(図3ステップS103~S108)については後述する。
本実施例では、外乱印加のタイミングが既知であることにより、フィードフォワード制御の実行のタイミングを自動決定できることを前提としており、本実施例の制御装置が適用されるシステムにおいて、制御中に想定される外乱を抑制するために、外部機器から制御装置に対して外乱印加予定時刻tpが通知される。
【0031】
例えば薬品の製造装置において、薬品製造の炉の扉が開くことによって炉内の温度が変動するという状況がある。この場合、炉の温度を制御する制御装置(外部機器)は、炉の扉が開くタイミング(外乱印加のタイミング)よりも前の時点で本実施例の制御装置に対して外乱印加予定時刻tpを通知する。
【0032】
同様に、設定値SP(温度設定値)が一定のリフロー炉において、はんだ付けの対象となるプリント基板が定期的に投入されることによって温度が変動するという状況がある。この場合、プリント基板の搬送を制御する制御装置(外部機器)は、リフロー炉にプリント基板が投入されるタイミング(外乱印加のタイミング)よりも前の時点で本実施例の制御装置に対して外乱印加予定時刻tpを通知する。
【0033】
トリガー信号起動部4は、外部機器から通知された外乱印加予定時刻tpと予め規定された先行開始時間FF_inとに応じて、トリガー信号FF_Xをフィードフォワード算出部2に出力する。トリガー信号起動部4は、外乱印加予定時刻tpよりも先行開始時間FF_inだけ前のフィードフォワード制御開始時点になったときに(図3ステップS109においてYES)、トリガー信号FF_Xを1(有意の値)にする(図3ステップS110)。
【0034】
また、トリガー信号起動部4は、外部機器から外乱印加予定時刻tpの通知がないとき、フィードフォワード制御開始時点よりも前の時点のとき、フィードフォワード制御開始時点から所定時間が経過したとき、のいずれかのときには(ステップS109においてNO)、トリガー信号FF_Xを0(非有意の値)にする(図3ステップS111)。フィードフォワード制御開始時点の後でトリガー信号FF_Xを0にするタイミングは、外乱印加後に実操作量MV_F’が整定すると想定されるタイミングよりも十分に後のタイミングに設定する必要がある。
【0035】
フィードフォワード算出部2は、フィードフォワード制御の実行時にフィードフォワード量MV_Xを算出するが、外乱の印加前に1(有意の値)となり外乱の印加後に0(非有意の値)となるトリガー信号FF_Xが0の場合(図4ステップS112においてNO)、フィードバック制御のみでフィードフォワード制御を実行しないものとして、フィードフォワード量MV_Xを0にする(図4ステップS113)。
【0036】
フィードフォワード実行部3は、操作量算出部1によって算出された基本操作量MVに、フィードフォワード算出部2によって算出されたフィードフォワード量MV_Xを加算した結果を実操作量MV_Fとして算出する(図4ステップS114)。
MV_F=MV+MV_X ・・・(6)
【0037】
ここでは、MV_X=0なので、MV_F=MVである。リミット処理部6は、フィードフォワード実行部3によって算出された実操作量MV_Fを所定の操作量下限値OL以上の値に制限する下限リミット処理と、実操作量MV_Fを所定の操作量上限値OH以下の値に制限する上限リミット処理とを行なう(図4ステップS115)。
IF MV_F<OL THEN MV_F’=OL ・・・(7)
IF MV_F>OH THEN MV_F’=OH ・・・(8)
つまり、リミット処理部6は、実操作量MV_Fが操作量下限値OLより小さい場合、実操作量MV_F’=OLとし、実操作量MV_Fが操作量上限値OHより大きい場合、実操作量MV_F’=OHとする。
【0038】
操作量出力部7は、リミット処理部6でリミット処理された実操作量MV_F’を制御対象に出力する(図4ステップS116)。実操作量MV_F’の出力先は、ヒータやバルブなどの操作部(不図示)である。ヒータの場合には、実操作量MV_F’の実際の出力先は、ヒータに電力を供給する電力調整器(不図示)となる。
【0039】
こうして、制御装置は、トリガー信号FF_Xが0のときに、ステップS100~S102,S109,S111,S113~S116の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(図4ステップS117においてYES)、制御周期毎に実行する。
【0040】
次に、トリガー信号FF_Xが1(有意の値)になったときの動作を説明する。フィードフォワード算出部2は、トリガー信号FF_Xが0から1になったとき(ステップS103においてYES)、フィードフォワード+フィードバック制御を実行するため、下記の式(9)によりフィードフォワード量MV_Xを算出する(図4ステップS118)。
MV_X={Kxs/(1+Tfs)2}FF_X ・・・(9)
【0041】
式(9)において、Tfはフィードフォワード量MV_Xを徐々に収束させる時間を規定するパラメータ(時定数)である。Kxはフィードフォワード量(総量)を規定するパラメータである。1制御周期での最大フィードフォワード量MF_maxは、Kx/(2.718Tf)になる。時定数TfとパラメータKxは、フィードバック制御系などの情報に基づいて事前に設定しておくことができる。
【0042】
図5は、フィードフォワード量MV_Xの変化の例を示す図である。図5の例では、Kx=3262.0、Tf=15.0sec.としている。前述の総量(各制御周期の積算値)とは、図5における曲線により囲まれる面積に相当する量である。
【0043】
なお、後述のようにフィードフォワード修正部5によって時定数TfがTf_Cに変更された場合、フィードフォワード算出部2は、式(9)ではなく下記の式(10)によりフィードフォワード量MV_Xを算出する(ステップS118)。
MV_X={Kxs/(1+Tf_Cs)2}FF_X ・・・(10)
【0044】
次に、フィードフォワード実行部3は、ステップS114と同様に、操作量算出部1によって算出された基本操作量MVに、フィードフォワード算出部2によって算出されたフィードフォワード量MV_Xを加算した結果を実操作量MV_Fとして算出する(図4ステップS119)。
図4のステップS120,S121の処理は、ステップS115,S116の処理と同じである。
【0045】
こうして、制御装置は、トリガー信号FF_Xが1のときに、ステップS100~S102,S109,S110,S118~S121の処理を制御周期毎に実行する。
【0046】
次に、フィードフォワード修正部5の動作について説明する。フィードフォワード修正部5は、制御量PVが設定値SPに整定している状態のとき(図3ステップS103においてYES)、基本操作量MVの余裕に応じてトリガー信号起動部4とフィードフォワード算出部2のフィードフォワード制御パラメータを設定する。
【0047】
具体的には、フィードフォワード修正部5は、想定している外乱が設定値SPに対して制御量PVが下降する外乱で、この外乱に対して基本操作量MVを上昇させるフィードフォワード制御の実行を予定している場合、操作量上限値OHと整定時の基本操作量MV_Sとの差を余裕量MV_Cとして算出する(図3ステップS104)。
MV_C=OH-MV_S ・・・(11)
【0048】
また、フィードフォワード修正部5は、想定している外乱が設定値SPに対して制御量PVが上昇する外乱で、この外乱に対して基本操作量MVを下降させるフィードフォワード制御の実行を予定している場合、整定時の基本操作量MV_Sと操作量下限値OLとの差を余裕量MV_Cとして算出する(ステップS104)。
MV_C=MV_S-OL ・・・(12)
【0049】
そして、フィードフォワード修正部5は、余裕量MV_Cが予め規定された基準のフィードフォワード制御の1制御周期での最大フィードフォワード量MF_max以上の場合(図3ステップS105においてYES)、トリガー信号起動部4に設定されている先行開始時間FF_inとフィードフォワード算出部2に設定されている時定数Tfとをそれぞれ基準値のままとする(図3ステップS106)。
【0050】
つまり、基本操作量MVにフィードフォワード量MV_Xを加えることができる(あるいは基本操作量MVからフィードフォワード量MV_Xを引くことができる)余裕量が本来の想定値MF_max以上であれば、フィードフォワード制御パラメータ(先行開始時間FF_in、時定数Tf)を予め規定された基準値のままとする。上記の基準のフィードフォワード制御とは、フィードフォワード制御パラメータが基準値の場合のフィードフォワード制御のことを言う。
【0051】
また、フィードフォワード修正部5は、ステップS104で算出した余裕量MV_Cが予め規定された基準のフィードフォワード制御の1制御周期での最大フィードフォワード量MF_maxより少ない(MF_max>MV_C)場合(ステップS105においてNO)、フィードフォワード量MV_Xの配分が基準のフィードフォワード制御の場合よりも前倒しになるように、トリガー信号起動部4とフィードフォワード算出部2のフィードフォワード制御パラメータを設定する。
【0052】
具体的には、フィードフォワード修正部5は、上記のパラメータKxと余裕量MV_Cとに基づいて時定数Tfの変更値Tf_Cを次式により算出して、フィードフォワード算出部2に設定されている時定数Tfを変更値Tf_Cに変更する(図3ステップS107)。
Tf_C=(MF_max/MV_C)Tf=Kx/(2.718MV_C)
・・・(13)
【0053】
また、フィードフォワード修正部5は、トリガー信号起動部4に設定されている基準の先行開始時間FF_inとフィードフォワード算出部2に設定されていた基準の時定数Tfと時定数Tfの変更値Tf_Cとに基づいて先行開始時間FF_inの変更値FF_in_Cを次式により算出して、トリガー信号起動部4に設定されている先行開始時間FF_inを変更値FF_in_Cに変更する(図3ステップS108)。
FF_in_C=FF_in+2.0(Tf_C-Tf) ・・・(14)
【0054】
ただし、フィードフォワード修正部5は、式(14)により算出したFF_in_Cが制御周期の整数倍にならない端数がある場合には、FF_in_Cが制御周期の整数倍の値になるように端数を切り上げる。
このように、本実施例では、基本操作量MVにフィードフォワード量MV_Xを加えることができる(あるいは基本操作量MVからフィードフォワード量MV_Xを引くことができる)余裕量が本来の想定値MF_maxよりも少ない場合には、時定数Tfと先行開始時間FF_inをそれぞれの基準値よりも長くする。
【0055】
先行開始時間FF_inがFF_in_Cに変更された場合、トリガー信号起動部4は、外乱印加予定時刻tpよりもFF_in_Cだけ前のフィードフォワード制御開始時点になったときに(ステップS109においてYES)、トリガー信号FF_Xを1にする(ステップS110)。
時定数TfがTf_Cに変更された場合、フィードフォワード算出部2は、式(10)によりフィードフォワード量MV_Xを算出する(ステップS118)。
【0056】
フィードフォワード修正部5は、外乱印加後に制御量PVが整定し、余裕量MV_Cが予め規定された基準のフィードフォワード制御の1制御周期での最大フィードフォワード量MF_max以上になると(ステップS105においてYES)、トリガー信号起動部4に設定されている先行開始時間FF_in_Cとフィードフォワード算出部2に設定されている時定数Tf_Cとをそれぞれの基準値に戻す(ステップS106)。
【0057】
なお、本実施例では、外乱印加予定時刻tpよりもFF_inまたはFF_in_Cだけ前の時点からフィードフォワード制御を開始するので、外部機器は、外乱印加予定時刻tpよりも十分に前の時点で本実施例の制御装置に対して外乱印加予定時刻tpを通知する必要があることは言うまでもない。
【0058】
以下、シミュレーションにより本実施例の効果を検証する。以下の例では、制御対象を、プロセスゲイン10.0、プロセス時定数400.0sec.、プロセスむだ時間20.0sec.の1次遅れ伝達関数で近似できる制御系とする。すなわち、制御対象のモデル数式Gpは次式のように記述できる。
Gp=10.0exp(-20.0s)/(1+400.0s) ・・・(15)
【0059】
また、操作量算出部1に設定されるPIDパラメータを、比例帯Pb=60%、積分時間Ti=120.0sec.、微分時間Td=10.0sec.とした。操作量上限値OHは100.0%、操作量下限値OLは0.0%、制御周期は1.0sec.である。
【0060】
基準のフィードフォワード制御の開始時点を決定する先行開始時間FF_inは、微分時間Tdに基づいて設定できる。具体的には、FF_in=αTd(係数αは0より大きい実数であり、例えば0.7)であることが妥当である。微分時間Td=10.0sec.の場合、基準のフィードフォワード制御の開始時点は、外乱印加予定時刻tpより7.0sec.前となる。ただし、係数αは、適宜微調整され得る値である。
【0061】
同様に、基準のフィードフォワード制御の時定数Tfは、微分時間Tdに基づいて設定できる。具体的には、Tf=βTd(係数βは0より大きい実数であり、例えば0.4)であることが妥当である。微分時間Td=10.0sec.の場合、時定数Tf=4.0sec.となる。ただし、係数βは、適宜微調整され得る値である。
【0062】
図6は、外乱リカバリー応答の例を示す図であり、フィードフォワード制御を実行せずにフィードバック制御のみで温度制御した場合の制御量PVと実操作量MV_F’(=操作量MV)の変化の例を示す図である。この図6の例は、100sec.の時点で降温外乱が印加された場合のフィードバック制御による外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示している。
【0063】
図7は、100sec.の時点で外乱が印加された場合の基準のフィードフォワード制御とフィードバック制御による外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示し、図8は、図7の場合のフィードフォワード量MV_Xのシミュレーション結果を示している。図7図8の例は、フィードフォワード算出部2にパラメータKx=652.3、時定数Tf=4.0sec.が設定され、トリガー信号起動部4に先行開始時間FF_in=7.0sec.が設定されていた場合を示している。基準のフィードフォワード制御の開始時点、すなわちトリガー信号FF_Xを0から1にするタイミングは、外乱印加予定時刻tp=100sec.より7.0sec.前の93sec.の時点である。
【0064】
図9は、外乱印加前の整定時の基本操作量MVが55.0%で、余裕量MV_Cが本来の想定(基準のフィードフォワード制御)よりも少ない場合のフィードフォワード制御とフィードバック制御による外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示している。図9の例は、フィードフォワード算出部2にパラメータKx=652.3、時定数Tf=4.0sec.が設定され、トリガー信号起動部4に先行開始時間FF_in=7.0sec.が設定されていた場合を示している。すなわち、本実施例と異なり、時定数はTf=4.0sec.、先行開始時間はFF_in=7.0sec.のままであり、Tf_C、FF_in_Cへの変更は行なっていない。
【0065】
図10は、外乱印加前の整定時の基本操作量MVが55.0%で、余裕量MV_Cが本来の想定(基準のフィードフォワード制御)よりも少ない場合の本実施例におけるフィードフォワード制御とフィードバック制御による外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示している。図11は、図10の場合のフィードフォワード量MV_Xのシミュレーション結果を示している。
【0066】
図10図11の例は、フィードフォワード算出部2にパラメータKx=652.3、時定数Tf=4.0sec.が設定され、トリガー信号起動部4に先行開始時間FF_in=7.0sec.が設定されていた場合を示している。
フィードフォワード修正部5は、制御量PVの整定時に以下の計算を行なう。
MV_C=OH-MV_S=100.0%-55.0%=45.0% ・・(16)
Tf_C=Kx/(2.718MV_C)
=652.3/(2.718×45.0)=5.3sec. ・・(17)
FF_in_C=FF_in+2.0(Tf_C-Tf)
=7.0+2.0(5.3-4.0)=9.6sec.・・(18)
【0067】
式(18)の計算結果は10.0sec.に切り上げとなる。フィードフォワード修正部5は、フィードフォワード算出部2に設定されている時定数Tf=4.0sec.をTf_C=5.3sec.に変更し、トリガー信号起動部4に設定されている先行開始時間FF_in=7.0sec.をFF_in_C=10.0sec.に変更する。こうして、外乱印加予定時刻tp=100sec.より10.0sec.前からフィードフォワード制御が開始される。本実施例では、操作量上限値OHまでの基本操作量MVの余裕に応じてフィードフォワード量MV_Xの配分が基準のフィードフォワード制御の場合よりも前倒しになるようにフィードフォワード制御パラメータを変更している。その結果、図9の場合よりもフィードフォワード制御の効果が損なわれるのを抑制できている。
【0068】
図12は、外乱印加前の整定時の基本操作量MVが70.0%で、余裕量MV_Cが本来の想定(基準のフィードフォワード制御)よりも少ない場合のフィードフォワード制御とフィードバック制御による外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示している。図12の例は、フィードフォワード算出部2にパラメータKx=652.3、時定数Tf=4.0sec.が設定され、トリガー信号起動部4に先行開始時間FF_in=7.0sec.が設定されていた場合を示している。すなわち、本実施例と異なり、時定数はTf=4.0sec.、先行開始時間はFF_in=7.0sec.のままであり、Tf_C、FF_in_Cへの変更は行なっていない。
【0069】
図13は、外乱印加前の整定時の基本操作量MVが70.0%で、余裕量MV_Cが本来の想定(基準のフィードフォワード制御)よりも少ない場合の本実施例におけるフィードフォワード制御とフィードバック制御による外乱リカバリー応答のシミュレーション結果を示している。図14は、図13の場合のフィードフォワード量MV_Xのシミュレーション結果を示している。
【0070】
図13図14の例は、フィードフォワード算出部2にパラメータKx=652.3、時定数Tf=4.0sec.が設定され、トリガー信号起動部4に先行開始時間FF_in=7.0sec.が設定されていた場合を示している。
フィードフォワード修正部5は、制御量PVの整定時に以下の計算を行なう。
MV_C=OH-MV_S=100.0%-70.0%=30.0% ・・(19)
Tf_C=Kx/(2.718MV_C)
=652.3/(2.718×30.0)=8.0sec. ・・(20)
FF_in_C=FF_in+2.0(Tf_C-Tf)
=7.0+2.0(8.0-4.0)=15.0sec.
・・・(21)
【0071】
フィードフォワード修正部5は、フィードフォワード算出部2に設定されている時定数Tf=4.0sec.をTf_C=8.0sec.に変更し、トリガー信号起動部4に設定されている先行開始時間FF_in=7.0sec.をFF_in_C=15.0sec.に変更する。こうして、外乱印加予定時刻tp=100sec.より15.0sec.前からフィードフォワード制御が開始される。本実施例では、操作量上限値OHまでの基本操作量MVの余裕に応じてフィードフォワード量MV_Xの配分が基準のフィードフォワード制御の場合よりも前倒しになるようにフィードフォワード制御パラメータを変更している。その結果、図12の場合よりもフィードフォワード制御の効果が損なわれるのを抑制できている。
【0072】
なお、本実施例では、設定値SPに対して制御量PVが下降する外乱の例で説明しているが、本発明は設定値SPに対して制御量PVが上昇する外乱にも対応可能である。制御量PVが上昇する外乱が発生する場合には、パラメータKxとフィードフォワード量MV_Xとが負の値となる。
【0073】
本実施例で説明した制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図15に示す。
【0074】
コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インタフェース装置(I/F)302とを備えている。I/F302には、例えば温度センサや電力調整器が接続される。このようなコンピュータにおいて、本実施例の制御方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…操作量算出部、2…フィードフォワード算出部、3…フィードフォワード実行部、4…トリガー信号起動部、5…フィードフォワード修正部、6…リミット処理部、7…操作量出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18