(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】巻線装置
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20240723BHJP
H01F 41/066 20160101ALI20240723BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01F41/04 F
H01F41/066
H01F41/12 E
(21)【出願番号】P 2020196971
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由太
(72)【発明者】
【氏名】小松原 毅
(72)【発明者】
【氏名】大島 寛
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-277894(JP,A)
【文献】実開昭62-23434(JP,U)
【文献】特開平5-229706(JP,A)
【文献】特開2008-71983(JP,A)
【文献】登録実用新案第3183869(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/04
H01F 41/066
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と、
線条材料を前記主軸に送り出す第一送出機構と、
前記主軸に層状に巻き付けられた線条材料の層間に配置される層間紙を前記主軸に送り出す第二送出機構と、
前記主軸を回転させることで前記第一送出機構により送り出された線条材料
及び前記第二送出機構により送り出された層間紙を前記主軸に巻き付けて巻回体とする巻回部と、
前記主軸に平行な方向において前記巻回体の外周面に対向する面を有する当接部材と、
前記当接部材を前記巻回体の外周面に当接させた当接状態と離間させた離間状態とを切り替え可能な変位部と
、
前記第一送出機構、前記第二送出機構、前記巻回部、及び前記変位部の動作を制御する制御部とを備え、
前記変位部は、前記主軸の回転中に
前記主軸を回転軸として前記当接部材を前記主軸と共に回転させて前記当接状態を維持することができるように構成されて
おり、
前記制御部は、
前記巻回部及び前記第一送出機構により、前記巻回体に所定の巻回状態になるように前記線条材料を巻き付け、
前記第二送出機構により、前記巻回状態となった前記巻回体の外周面に前記層間紙の先端部を繰り出し、
前記変位部により、前記巻回体の外周面に前記当接部材を当接させて前記当接部材により前記層間紙が前記巻回体に固定されるようにし、
前記巻回部と前記変位部とにより、前記主軸と前記当接部材とを共に回転させながら、前記層間紙を前記線状材料と共に前記主軸に巻き付ける、各制御を行う、巻線装置。
【請求項2】
前記当接部材を支持する支持部をさらに備え、
前記変位部は、
前記主軸を回転軸とする回転方向において前記当接部材を変位させる第一変位部と、
前記回転軸に対して垂直な径方向において前記当接部材を変位させる第二変位部とを含み、
前記第一変位部は、サーボモータを用いて前記当接部材を前記主軸とは独立して前記回転軸周りに回転させることができるように構成されており、
前記第二変位部は、流体の圧力により伸縮する伸縮機構を有し、伸縮機構の一方の端部が前記支持部側に取り付けられ、他方の端部が前記当接部材側に取り付けられている、請求項1に記載の巻線装置。
【請求項3】
前記第二送出機構は、前記主軸に巻かれつつある層間紙を付勢して前記主軸との間で張る付勢機構を有し、
前記付勢機構は、前記層間紙のうち前記巻回体の外周面に対向する面とは反対の面に接触する付勢面と、前記層間紙の側端部の位置を規制する規制面とを有する、請求項1又は2に記載の巻線装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記巻回部及び前記第一送出機構により、前記巻回体の外周面に巻き付けられた前記層間紙の上に前記線条材料が層をなす所定の巻回状態になるように前記線条材料を巻き付け、
前記第二送出機構により、前記巻回状態となった前記巻回体の外周面に前記層間紙の先端部を繰り出し、
前記変位部により、前記巻回体の外周面のうち前記先端部近傍に前記当接部材を当接させて前記当接部材により前記層間紙が前記巻回体に固定されるようにし、
前記巻回部と前記変位部とにより、前記主軸と前記当接部材とを共に回転させながら、前記層間紙を前記線状
材料と共に前記主軸に巻き付ける、各制御を行う、請求項1から3のいずれかに記載の巻線装置。
【請求項5】
前記主軸から離れた位置に設けられており、前記巻回体の外周面の状態に関する検知を行うセンサと、
前記回転軸に対して垂直な径方向において、前記センサを変位させるセンサ変位機構とをさらに備え、
前記制御部は、前記センサの検知結果に応じて、前記層間紙の巻回動作の状態を変更する、請求項
1から4のいずれかに記載の巻線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、線条材料を主軸に巻き取る巻線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、線条材料を主軸に取り付けたボビンに巻き取ってコイル状にするための装置が用いられている。このような装置としては、例えば変圧器などに用いられる巻線を製造するために用いられる、巻線装置がある。このような巻線装置では、巻枠(以下、ボビンと称す)の回転に同期して、ボビンの回転軸線方向に電線を水平移動させ、電線を均一に巻く方式が採られている。
【0003】
このような巻線装置を用いて、整列巻きされる電線の層間に、絶縁のための層間紙を配置する作業が行われる場合がある。例えば、下記特許文献1や特許文献2には、巻線装置において、整列巻きされる電線の層間に層間紙を配置する機構に関して記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭62-23434号公報
【文献】特開平11-214238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
巻線装置を用いて層間紙の挿入を伴う巻線作業を行う場合においては、ボビン幅だけ電線を巻回する度(1層分だけ巻回する度)に層間紙を配置することが必要である。この際には、ボビンの全周にわたって隙間なく層間紙が配置されるように、層間紙同士が若干重なるようにする必要がある。また、層間紙にたわみやしわが生じることがなく、巻線を構成する電線と平行に巻き付けることが、品質を確保するために求められる。
【0006】
このような層間紙を挿入する作業は、作業者による人手で行われることが一般的であった。人手による作業の一例は、次のようなものである。すなわち、層間紙の挿入時に、先端部をテープ等を用いて巻線に固定してから、コイル装着軸を回転させる。そして、手で層間紙のしわを伸ばしながら、コイル1周分を覆うように層間紙を巻き付ける。しかしながら、このような人手による作業では手間がかかるという問題がある。また、人手による作業のため、層間紙の挿入時に層間紙が左右方向にずれて挿入されたり折れ込んだりし、巻線の製品品質にばらつきが生じることがあるという問題がある。
【0007】
このような問題に対して、例えば特許文献2においては、テープを用いて整列巻き面に層間紙の貼付けを行うテープ貼機構を設け、巻線の製造の自動化を図ることが記載されている。しかしながら、このようなテープ貼機構を設ける場合には、装置の複雑化や大型化などが問題となることがあり、これとは異なる方法により容易に巻線を製造できるようにすることが求められている。
【0008】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、作業者の手間をかけずに層間紙を挿入することができる巻線装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、巻線装置は、主軸と、線条材料を主軸に送り出す第一送出機構と、主軸に層状に巻き付けられた線条材料の層間に配置される層間紙を主軸に送り出す第二送出機構と、主軸を回転させることで第一送出機構により送り出された線条材料又は第二送出機構により送り出された層間紙を主軸に巻き付けて巻回体とする巻回部と、主軸に平行な方向において巻回体の外周面に対向する面を有する当接部材と、当接部材を巻回体の外周面に当接させた当接状態と離間させた離間状態とを切り替え可能な変位部とを備え、変位部は、主軸の回転中に当接部材を主軸と共に回転させて当接状態を維持することができるように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従うと、作業者の手間をかけずに層間紙を挿入することができる巻線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】同巻線装置の第二送出機構の一部と層間紙保持機構とが設けられている部分を示す斜視図
【
図5】同巻線装置の層間紙巻回動作を示す第1のフローチャート
【
図6】同巻線装置の層間紙巻回動作を示す第2のフローチャート
【
図7】同巻線装置の層間紙巻回動作を示す第3のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、巻線装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0013】
なお、以下において、巻線装置の巻回部の主軸の回転軸を主軸ということがあり、当該回転軸に沿う方向を「軸方向又はトラバース方向(
図2における下側が「手前」で上側が「奥」)」、回転軸に直交する方向を「径方向」、回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、径方向のうち水平面に垂直な方向を「上下方向(
図1における上側が「上」)」、とそれぞれ称することがある。また、主軸に巻き付けられる線条材料の搬送方向に関し、線条材料の供給源から主軸に向かう搬送方向を主搬送方向と称し、主搬送方向とは反対の搬送方向を逆搬送方向と称することがある。また、線条材料の搬送経路上の一の基点に対して、主搬送方向において下流側を主軸側と称することがある。なお、これらの呼び方は、実施の形態における巻線装置自体の構成を説明の便宜のために定義したものにすぎず、本発明に係る巻線装置の使用態様などについて、何ら限定するものではない。
【0014】
(実施の形態)
【0015】
巻線装置は、ボビンが取り付けられている主軸を回転させるとともに、主軸に平行なトラバース方向において、線条材料をボビンに送り出すヘッド部とボビンとの相対的な位置関係を変化させることにより、ボビンに線条材料を巻き付けるように構成されている。本実施の形態において、巻線装置は、一層の線条材料を巻回する度に、層間に配置する層間紙を自動的に挿入することができるように構成されている。
【0016】
層間紙の挿入時においては、具体的には、例えば、モータを有したエアシリンダにより主軸に近づいたり離れたりするように構成された当接部材が、層間紙の先端をクランプする。そして、当接部材が、層間紙をクランプした状態のまま、主軸すなわち巻回体に追従して主軸周りに回転する。これにより、層間紙が、巻回体の層間に自動的に挿入される。また、本実施の形態においては、エアシリンダなどにより巻回体の表面に近づいたり離れたりするように構成されたセンサを用いて、層間紙が適切に挿入されていることの確認も自動で行われる。以下、このように構成された巻線装置の構成について説明する。
【0017】
なお、本実施の形態において、巻線装置は一次コイルを製造可能なものであり、線条材料Lとしては絶縁被膜を有する銅線が用いられるが、これに限られるものではない。例えば、線条材料Lはその他の導線であってもよいし、金属板など帯状の材料であってもよい。また、巻線装置は、コイルである巻回体を製造するものに限られない。すなわち、巻回体とは、例えば、巻線であるが、巻線と通称して呼ばれるものに限られず、線条材料Lを巻回されて構成されるものであればよい。
【0018】
また、本実施の形態において、層間紙とは、導線が整列巻きされたコイルにおいて、上層の導線と下層の導線とを層間で絶縁するための層間絶縁紙であるが、層間紙Pの用途はこのように絶縁を行うものに限られない。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る巻線装置1の正面図である。
図2は、同巻線装置1の平面図である。
図3は、同巻線装置1の第二送出機構70の一部と層間紙保持機構80とが設けられている部分を示す斜視図である。
【0020】
図1において、前から見た巻線装置1が示されている。
図1及び
図2の右端に設けられた第一供給源98から、巻線装置1に線条材料Lが供給されるが、その部位の図示は簡略化されている。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、巻線装置1は、大まかに、制御部2と、格納部3と、支持台5と、操作入力部6と、センサ8と、センサ変位機構9と、巻回部10と、第一送出機構60と、第二送出機構70と、層間紙保持機構80とを備える。
【0022】
巻回部10は、線条材料を巻き付けるためのボビン21を回転させて線条材料Lを巻き上げる(巻回する、巻き回すなどということもある。)部位である。第一送出機構60は、ボビン21に線条材料Lを送り出す部位であって、巻回部10に連動して動作する。
【0023】
操作入力部6は、例えば種々の操作ボタンやスイッチ等が配置された操作パネルであり、作業者による操作が入力される部位である。なお、操作入力部6は、テンキーやキーボードやマウスやタッチパネル等を利用して構成されているものなど、何でもよい。操作入力部6に入力された操作は、例えば、制御部2により受け付けられる。なお、巻線装置1に通信可能に接続された他の装置において受け付けられた操作に基づく信号等を受信することにより、制御部2が当該操作を受け付けることができるように構成されていてもよい。
【0024】
格納部3は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。格納部3には、所定の設定情報が格納されている。所定の設定情報は、例えば、一の巻回体(例えば、巻線)20を製造する場合の装置各部のそれぞれを同期させてシーケンス制御を行うための制御プログラムであるが、これに限られない。所定の設定情報は、例えば、一の巻回体20を製造する場合における、巻線装置1の各部を同期させてシーケンス制御を行うための制御プログラムであってもよい。また、制御プログラムにより利用されるパラメータ等が設定情報として格納されていてもよい。パラメータとしては、例えば、巻線の回転数(巻数)や、線条材料Lの径寸法や、装置各部を変位させる位置や、変位させるタイミングや、主軸の回転角などであるが、これに限られない。
【0025】
なお、格納部3に設定情報が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して設定情報が格納部3で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された設定情報が格納部3で記憶されるようになってもよく、あるいは、入力デバイスを介して入力された設定情報が格納部3で記憶されるようになってもよい。
【0026】
制御部2は、例えば、プログラマブルロジックコントローラであるが、これに限られない。制御部2は、その他のMPUやメモリ等から実現されうるコンピュータ等であってもよい。制御部2の処理手順は、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されていてもよいし、ハードウェア(専用回路)で実現されていてもよい。
【0027】
制御部2は、操作入力部6により受け付けられた作業者による操作やその他の取得した情報に基づいて、巻線装置1の各部の動作を制御する。制御部2は、本実施の形態において、巻回部10と、第一送出機構60と、第二送出機構70と、層間紙保持機構80と、センサ8と、センサ変位機構9とが連動して動作するように制御を行う。制御部2は、第一変位調整部2a、第二変位制御部2b、及び層間紙送出制御部2cを備える。第一変位調整部2aは、第一送出機構60のボールねじ63等の駆動部の動作などを制御する。第二変位制御部2bは、層間紙保持機構80の変位部84等の駆動部の動作などを制御する。層間紙送出制御部2cは、第二送出機構70の退避駆動部72や切断部76等の駆動部の動作などを制御する。
【0028】
制御部2の各部は、例えば、格納部3から読み出した設定情報に基づいてシーケンス制御を行うことにより、主軸11を回転させる制御や、ボビン21とヘッド部68との相対的な位置関係を変化させる制御や、適切なタイミングで層間紙を巻回体20に挿入する制御や、センサ8を変位させる制御などを行う。
【0029】
センサ8は、例えばカラーセンサ8であるが、これに限られない。センサ8は、主軸11から離れた位置に設けられており、巻回体20の外周面の状態に関する検知を行う。本実施の形態において、センサ8は、主軸11の下方に配置されている。巻回体20の外周面の状態とは、例えば色である。具体的には、例えば、巻回体20の外周面の色が層間紙Pの色である所定の色であるかどうかに関する検知を行うが、これに限られない。センサ8は、色にかかわらず、例えば所定の波長や任意の波長の光の反射率等を検知することにより、外周面の状態に関する検知を行うものであってもよい。
【0030】
本実施の形態において、センサ8は、センサ変位機構9により、回転軸に対して近づいたり離れたりすることができるようになっている。例えば、センサ8は、巻回部10の筐体に対して取り付けられたセンサ変位機構9により、上下に変位可能に支持されている。センサ変位機構9は、回転軸に対して垂直な径方向において、センサ8を変位可能であればよい。センサ変位機構9は、例えば、エアシリンダやサーボモータ等のアクチュエータを用いて構成することが可能であるが、具体的な構成は適宜選択可能である。
【0031】
巻回部10は、主軸11を備える。巻回部10は、主軸11を回転させることで第一送出機構60により送り出された線条材料L又は第二送出機構70により送り出された層間紙Pを主軸11に巻き付けて巻回体20とする。
【0032】
本実施の形態において、主軸11は、後端部において巻回部10の本体に支持されている。主軸11は、前方に突出する片持ち梁状に構成されている。主軸11は、例えば、巻回部10に設けられているモータ(図示せず)の駆動力により、径方向に回転する。本実施の形態においては、主軸11は、線条材料Lを巻き上げる際には、
図1に矢印R1で示される方向に回転するが、これに限られない。
【0033】
主軸11には、巻線である巻回体20のボビン21が取り付けられる。ボビン21は、線条材料Lが巻き付けられる部分であり、例えば樹脂等の絶縁体で構成されている。ボビン21は、主軸11の前方から主軸11の前端部近傍に配置された状態で、主軸11に対して回転しないようにして固定される。すなわち、ボビン21は、主軸11と共に回転する。なお、2以上のボビン21が互いに同軸に並んで主軸11に取り付けられており、2以上の巻線が同時に製造されるようにしてもよい。なお、巻線装置1は、ボビンレスコイル等を製造可能なものであってもよい。
【0034】
本実施の形態において、回転軸に垂直な断面におけるボビン21の形状すなわち巻回体20の形状は、略長方形である。なお、円形や楕円形であったり、略正方形であったり、他の多角形形状であったりしてもよい。
【0035】
支持台5は、巻回部10よりも上流側に配置されている。支持台5には、第一送出機構60や、第二送出機構70などが支持されている。
【0036】
第一送出機構60は、移動フレーム61と、ボールねじ63と、ヘッド部68とを備える。第一送出機構60は、ボビン21に巻き上げられる線条材料Lをヘッド部68に向けて導く。本実施の形態において、第一送出機構60は、トラバース方向においてボビン21に対するヘッド部68を変位させる。第一送出機構60の動作は、制御部2によって、巻回部10の動作と同期して行われるように制御される。
【0037】
移動フレーム61は、例えば、略水平の板状部を有している。移動フレーム61は、支持台5の上方に配置されており、支持台5に対してトラバース方向に変位可能である。移動フレーム61は、レールを介して、支持台5に対してトラバース方向にスライド可能である。本実施の形態においては、トラバース方向が移動方向となるように配置されたボールねじ63によって、移動フレーム61がトラバース方向に変位するように構成されている。なお、ボールねじ63は、制御部2による制御動作(駆動電流の供給など)に従って動作する図示しないモータ等により駆動されるが、これに限られない。
【0038】
移動フレーム61には、ヘッド部68が、線条材料Lの搬送経路に沿って配置されている。ヘッド部68は、移動フレーム61とともに、トラバース方向に変位可能に配置されている。すなわち、第一送出機構60は、巻回部10に対して、ヘッド部68をトラバース方向に変位させることができるように構成されている。
【0039】
ヘッド部68は、ヘッドローラや、それを変位させるアクチュエータ等で構成されている。ヘッド部68は、ヘッドローラにより、線条材料Lをボビン21に向けて送り出す。
【0040】
なお、第一送出機構60には、例えば、線条材料Lの一部分の被膜を剥離する被膜除去装置や、線条材料Lを切断するための切断装置など、他の装置がさらに設けられていてもよい。
【0041】
第二送出機構70は、案内フレーム71、退避駆動部72、付勢機構75、切断部76、挟持部77、及び接触部78を備える。第二送出機構70は、主軸11に層状に巻き付けられた線条材料Lの層間に配置される層間紙Pを主軸11に送り出す。
【0042】
本実施の形態において、第二送出機構70は、ヘッド部68の下方で、主軸11の上流側に配置されている。本実施の形態において、第二送出機構70は、巻回体20の上面と、巻回体20に巻き取られる線条材料Lとの間に層間紙Pの前端部を挿入することができるように構成されている。
【0043】
案内フレーム71は、略水平な上面を有する台71bを備える。案内フレーム71の台上には、付勢機構75、挟持部77、及び接触部78等が配置されている。主軸11に向けて送出される層間紙Pは、案内フレーム71の台71bの上面を通過する。本実施の形態において、案内フレーム71は、退避駆動部72により主軸11に対して近づいたり離れたりすることができるように、支持台5に取り付けられている。
【0044】
退避駆動部72は、例えば、主軸側から上流側に向けた方向に案内フレーム71を進めたり退かせたりすることが可能なボールねじである。なお、退避駆動部72の構成はこれに限られず、例えばエアシリンダ等を用いて構成されていてもよい。
【0045】
なお、本実施の形態において、案内フレーム71は、主軸11の回転に伴って、主軸側の台71bの高さが変化するように変位可能に構成されている。例えば、後述のように案内フレーム71に取り付けられている接触部78が巻回体20の外周部に当接することにより従動的に台71bが変位するように構成されている。なお、案内フレーム71に取り付けられたエアシリンダ等の動作に従って台71bが変位するようにしてもよいし、案内フレーム71に取り付けられている他の部材(例えば、付勢機構75など)が巻回体20に当接することにより従動的に台71bが変位するようにしてもよい。台71bは、略水平のまま変位してもよいし、例えば主軸側の高さが上流側の高さよりも変化するように傾斜するなど、姿勢が変化(変位の一例)するように構成されていてもよい。
【0046】
付勢機構75は、主軸11に巻かれつつある層間紙Pを付勢して主軸11との間で張る機構である。
図3に示されるように、付勢機構75は、本実施の形態においては、トラバース方向に平行な回転軸を中心に回転可能なローラである。ローラは、層間紙Pの両側端部付近を付勢するように、手前側と奥側とに一対設けられている。なお、ローラは、層間紙Pの全幅をカバーするような長さを有する1本であってもよい。また、付勢機構75は、ローラに限られず、層間紙Pの上面に接触可能な接触面を有する部材であればよい。
【0047】
本実施の形態において、付勢機構75は、付勢面75bと規制面75cとを備える。付勢機構75を構成する2つのローラのそれぞれについて、付勢面75bと規制面75cとが設けられている。付勢面75bは、層間紙Pの上面に接触して層間紙Pを付勢する面である。すなわち、付勢面75bは、層間紙Pのうち巻回体20の外周面に対向する面とは反対の面に接触する面である。規制面75cは、付勢面75bよりも大きな半径を有するフランジ状の部位のうち層間紙P側の面であり、層間紙Pの側端部の位置を規制する。2つのローラの規制面75c間の距離は、層間紙Pの幅寸法と略同じか若干大きく設定されている。これにより、層間紙Pの斜行や、巻回体20に対する前後方向の位置ずれが発生することが防止される。
【0048】
挟持部77は、台71b上に設けられている。挟持部77は、付勢機構75よりも上流側に配置されている。挟持部77は、例えば板ばねにより、台71上の層間紙Pが浮き上がらないように層間紙Pを挟持する。なお、挟持部77は設けられていなくてもよい。
【0049】
切断部76は、層間紙Pを所定の長さで切断する。切断部76の位置は、例えば案内フレーム71上であるが、これに限られない。切断部76は、層間紙Pの搬送路上に設けられていればよい。切断部76は、制御部2の制御に基づいて、層間紙Pの巻き始めから所定の回転数だけ主軸11が回転した場合に層間紙Pの終端が巻回体20上に達するように、層間紙Pを切断する。所定の回転数は、例えば1回転と少しであり、1回転以上であればよい。これにより、各層の層間紙Pにおいて重なり部分が設けられ、層間の絶縁を確実に確保することができる。
【0050】
接触部78は、例えば、案内フレーム71の主軸側の端部近傍に配置されている。本実施の形態において、接触部78は、台71bの主軸側の端縁部から下方に垂れ下がるように設けられた板状の部材である。接触部78は、層間紙Pの巻回中において、主軸11の回転に伴って回転する巻回体20の外周部に当接する。これにより、主軸11の回転位相に応じて、付勢機構75が下方に位置するように、台71bが変位しうる。
【0051】
層間紙保持機構80は、当接部材81、支持部82、及び変位部84を備える。変位部84は、第一変位部85と第二変位部86とを備える。変位部84の動作は、制御部2により制御される。層間紙保持機構80は、層間紙Pの挿入時において、巻回体20の外周面に配置された層間紙Pを巻回体20の外周面に押さえつけて(クランプして)層間紙Pと巻回体20との間でずれが生じないようにする。
【0052】
当接部材81は、主軸11に平行な方向すなわちトラバース方向において巻回体20の外周面に対向する面を有する。本実施の形態においては、当接部材81は、例えばゴム製の外周面を有する、トラバース方向が長手方向となるように配置されたバーである。当接部材81は、巻回体20のトラバース方向における寸法よりも長い長さ寸法を有している。なお、当接部材81は、バー形状のものに限られない。当接部材81は、巻回体20の外周面に対向する面を有する部材であって、巻回体20の外周面に配置された層間紙Pをクランプ可能に構成された部材であればよい。
【0053】
支持部82は、当接部材81を支持する部位である。支持部82は、変位部84により当接部材81を変位可能となるように、当接部材81を支持する。換言すると、当接部材81は、支持部82に対して変位可能である。
【0054】
変位部84は、当接部材81を巻回体20の外周面に当接させた当接状態と離間させた離間状態とを切り替え可能に構成されている。また、本実施の形態において、変位部84は、主軸11の回転中に当接部材81を主軸11と共に回転させて当接状態を維持することができるように構成されている。
【0055】
すなわち、変位部84の第一変位部85は、主軸11を回転軸とする回転方向において、当接部材81を変位させる。第一変位部85は、サーボモータ85bを備える。第一変位部85は、サーボモータ85bを用いて当接部材81を主軸11とは独立して回転軸周りに回転させることができるように構成されている。本実施の形態において、第一変位部85は、例えば、サーボモータ85bの駆動力を伝達する減速機、タイミングベルト、タイミングプーリー、及び主軸11と同軸に配置されている回転体とで構成されているが、これに限られない。回転体は、主軸11とは独立して回転可能となるように支持部12に支持されている。回転体は、例えばリングギア等が設けられており、サーボモータ85bの駆動力が伝達されることにより主軸11の回転軸を中心に回転可能である。回転体には、第二変位部86の伸縮機構86bが取り付けられている。
【0056】
第二変位部86は、伸縮機構86bを備える回転軸に対して垂直な径方向において当接部材81を変位させる。伸縮機構86bは、例えば、流体の圧力により伸縮する可能なシリンダであり、より具体的には、例えばエアシリンダである。伸縮機構86bの一方の端部が支持部82側に取り付けられ、他方の端部が当接部材81側に取り付けられており、伸縮機構86bの伸縮に伴って、当接部材81が回転軸に対して近づいたり離れたりする。すなわち、第二変位部86は、伸縮機構86bを動作させることにより、当接部材81を変位させて巻回体20の外周面に接触する当接状態にしたり、当接部材81を変位させて巻回体20の外周面から離れた離間状態にしたりする。
【0057】
第一供給源98は、例えば、巻回体20の材料としての線条材料Lがスプールに巻き付けられたものや、線条材料Lがコイラーなどにより集積されてなる束である。なお、第一供給源98は、これに限られず、巻線装置1に対して線条材料Lを供給可能に構成された他のシステム又は装置等であってもよい。
【0058】
第二供給源99は、例えば、巻回体20に整列巻きされる線条材料Lの層間に挿入される層間紙Pがロール状に巻かれたものである。なお、第二供給源99は、これに限られず、巻線装置1に対して層間紙Pを供給可能に構成された他のシステム又は装置等であってもよい。
【0059】
本実施の形態において、制御部2の制御に基づいて、巻回部10、第一送出機構60、第二送出機構70、及び層間紙保持機構80などが同期して、以下のような動作を行う。すなわち、巻回部10及び第一送出機構60により、巻回体20の外周面に巻き付けられた層間紙Pの上に線条材料Lが層をなす所定の巻回状態になるように線条材料Lを巻き付ける。本実施の形態において、所定の巻回状態とは、例えば、巻回体20の幅方向において1層分の線条材料Lの整列巻きが行われた状態をいう。所定の巻回状態となったら、第二送出機構70により、巻回体20の外周面に層間紙Pの先端部を繰り出す。そして、変位部84により、巻回体20の外周面のうち先端部近傍に当接部材81を当接させて、当接部材81により層間紙Pが巻回体20に固定されるようにする。この状態で、巻回部10と変位部84とにより、主軸11と当接部材81とを共に回転させながら、層間紙Pを線状部材Lと共に主軸11に巻き付ける。
【0060】
図4は、同巻線装置1の動作を示すフローチャートである。
【0061】
(ステップS1)制御部2は、巻回体20の巻回を開始する。
【0062】
(ステップS2)制御部2は、巻回部10により主軸11を正転させることで主軸11に線条材料Lを巻き付ける(巻回動作)。すなわち、制御部2は、第一送出機構60をトラバース方向に変位させながら主軸11を回転させる。
【0063】
(ステップS3)制御部2は、主軸11の回転回数が所定量に達したか否かを判断する。所定量とは、巻回中の層の整列巻きが完了するだけの回転数をいう。換言すると、制御部2は、巻回中の層の整列巻きが完了したか否かを判断する。所定量に達していると判断した場合はステップS4に進み、そうでなければステップS8に進む。
【0064】
(ステップS4)制御部2は、主軸11の回転を停止させる。
【0065】
(ステップS5)制御部2は、層間紙巻回動作を行うようにする。層間紙巻回動作については、後述する。層間紙巻回動作が行われると、整列巻きが完了した層の外周面が層間紙Pで覆われると共に、その上層についての整列巻きが開始されている状態となる。なお、後述のように、層間紙巻回動作において、層間紙Pの挿入に異常がある場合には、センサ8の検知結果に基づいてそれが検知される。
【0066】
(ステップS6)制御部2は、正常に層間紙Pの挿入が終了したか否かを判断する。層間紙巻回動作において、センサ8の検知結果に基づいて層間紙Pの挿入に異常があることが検知されなかった場合には、制御部2は、正常に層間紙Pの挿入が終了したと判断し、ステップS8に進む。そうでない場合には、ステップS7に進む。すなわち、本実施の形態において、制御部2は、センサ8の検知結果に応じて、層間紙Pの巻回動作の状態を変更する。なお、このような判断は、層間紙巻回動作の実行時にフラグを立てるなどして行われてもよい。また、センサ8の検知結果が所定の結果であったか否かに応じて層間紙巻回動作において行われると解釈することも可能である。
【0067】
(ステップS7)正常に層間紙Pの挿入が終了したと判断されなかった場合には、制御部2は、報知動作を行う。報知動作は、例えば、作業者に正常に層間紙Pの挿入が終了したと判断されなかった旨を知らせる動作であればよい。例えば、音の出力による報知、光やディスプレイ等への画像の出力による報知、巻線装置1の動作の停止による報知、情報の送信による報知など、種々の報知方法をとればよい。このように、層間紙Pの挿入が正常に終了しなかった場合に報知が行われることにより、作業者が、その旨を知ることができる。作業者は、層間紙Pの挿入が正常に終了しなかったことについて対応する作業を行うことができる。なお、本実施の形態においては、報知動作が行われると、一連の巻回動作が終了する。これにより、作業者は、エラーを修正する作業などを行って、巻回動作を再開する操作等を行うことができる。
【0068】
(ステップS8)制御部2は、最外層の巻回が終了したか否かを判断する。判断は、例えば、所定の回転数だけ主軸11が回転したかどうかなどを判断することにより行うようにすればよい。巻回が終了したと判断された場合には一連の処理を終了し、そうでなければステップS2に戻る。
【0069】
図5は、同巻線装置1の層間紙巻回動作を示す第1のフローチャートである。
図6は、同巻線装置1の層間紙巻回動作を示す第2のフローチャートである。
図7は、同巻線装置1の層間紙巻回動作を示す第3のフローチャートである。
【0070】
図において、フローチャートの各ステップとともに、いくつかの構成要素の前側から見た位置関係が模式的に示されている。ここで二点鎖線は、当該ステップで変位する構成要素の変位前の位置の一例を示す。
【0071】
層間紙巻回動作が行われるとき、主軸11は所定の回転位置で停止する。本実施の形態においては、例えば、巻回体20の長辺が上下方向に平行になるような姿勢で主軸11が停止するように構成されているが、これに限られない。なお、層間紙巻回動作が行われる度に、主軸11が停止する回転位置は、180度ずつ切り替えられるように構成されている。これにより、各層の層間紙Pの重なり位置(巻き始めと巻き終わりとが重なる位置)が一箇所に重なることなく、巻回体20の全体の形状がいびつなものにならないようにすることができる。なお、このような主軸11の回転位置の切り替えは、180度に限られず、例えば90度ずつ各層の巻回開始位置が異なるようにしてもよい。
【0072】
(ステップS11)制御部2は、層間紙Pを所定の位置まで送出する。所定の位置とは、例えば、巻回体20の外周面上であって、線状材料Lが巻かれつつある部位の近傍であるが、これに限られない。そして、制御部2は、当接部材81を主軸11周りに回転移動させて、第一クランプ位置に位置決めする。ここで、第一クランプ位置とは、層間紙Pの先端部P1よりも若干上流側にある位置である。すなわち、第一クランプ位置は、本実施の形態において、巻回体20の一の短辺の上方にある位置である。
【0073】
(ステップS12)制御部2は、当接部材81を回転軸へ向かって変位させて当接状態とし、層間紙Pと巻回体20の整列巻き面とをクランプする。すなわち、当接部材81を巻回体20の外周面に当接させて層間紙Pを固定する。
【0074】
(ステップS13)制御部2は、当接部材81を当接状態のまま主軸11に追従させて回転させる。これにより、当接部材81により先端部P1が固定された状態で層間紙Pが線条材料Lと共に主軸11に巻き取られる。ここで、本実施の形態においては、第二送出機構70は、主軸11より若干上流側の部位において層間紙Pの上面を付勢機構75により下方に付勢するよう。これにより、付勢機構75によって、層間紙Pが張られ、層間紙Pがしごかれながら巻き付けられる。
【0075】
(ステップS14)制御部2は、主軸11を巻き取り方向へ180度回転させる。この際、当接部材81を主軸11の回転に同期して回転させ、クランプされている層間紙Pを線条材料Lとともに巻回体20に巻き込む。付勢機構75は、層間紙Pの引き出し方向を拘束し(斜行を防止し)、かつ、たわみを矯正するように作用する。これにより、層間紙Pのしわの発生が防止される。主軸11が180度回転されると、主軸11等の回転を停止させ、当接部材81を離間状態とする。この状態において、主軸11が180度回転したことで巻き付けられた線条材料Lによって層間紙Pの先端部P1が巻回体20に押さえられているので、既に巻き付けられた層間紙Pの先端部P1は巻回体20に対してずれることはなくなる。
【0076】
(ステップS15)制御部2は、当接部材81を回転移動させ、第二クランプ位置に位置決めする。第二クランプ位置は、例えば、巻取り方向とは逆方向に約90度だけ回転した位置である。すなわち、本実施の形態において、第二クランプ位置は、層間紙Pが配置された側の長辺上から径方向に離れた位置である。
【0077】
(ステップS16)制御部2は、当接部材81を回転軸へ向かって変位させて当接状態とし、第二クランプ位置において層間紙Pと線条材料Lとをクランプする。また、制御部2は、センサ8により層間紙Pの挿入状態を確認する。換言すると、制御部2は、センサ8の検出結果により、正常に層間紙Pが挿入されているか否かを検出する。なお、本実施の形態においては、制御部2は、センサ8を、主軸11から下方に離れた位置から上方に変位させて、巻回体20の外周面に近づけてから、センサ8の検出結果を確認する。これにより、より高精度に層間紙Pの挿入状態を確認することができる。
【0078】
なお、制御部2は、正常に層間紙Pが挿入されていない状態であることを検出した場合には、層間紙挿入動作を中断し、
図4の処理に戻るように構成されている。これにより、作業者への報知動作が行われ、作業者により層間紙Pの挿入状態が適正になるように修正させることができる。
【0079】
(ステップS17)制御部2は、センサ8を変位させて、元の位置に戻す。そして、制御部2は、主軸11と当接部材81とを共に回転させる。このとき、主軸11の回転角が所定の回転角となった時点で、切断部76により層間紙Pが切断される。
【0080】
(ステップS18)制御部2は、第二クランプ位置においてクランプを行ってから主軸11を巻き取り方向へ90度回転させると、主軸11を停止させる。制御部2は、当接部材81を離間状態として層間紙Pのクランプを解放する。
【0081】
(ステップS19)制御部2は、当接部材81を回転移動させ、第三クランプ位置に位置決めする。第三クランプ位置は、例えば、巻取り方向とは逆方向に約180度だけ回転した位置である。すなわち、本実施の形態において、第三クランプ位置は、層間紙Pが新たに配置された側の長辺上から、径方向に離れた位置である。
【0082】
(ステップS20)制御部2は、当接部材81を回転軸へ向かって変位させて当接状態とし、第三クランプ位置において層間紙Pと線条材料Lとをクランプする。
【0083】
(ステップS21)制御部2は、主軸11と当接部材81とを共に回転させる。これにより、層間紙Pの後端部P2が先端部P1の外側に配置されて、層間紙Pの一部がオーバーラップした状態となる。層間紙Pの巻き付けが完了すると、制御部2は主軸11の回転を停止させ、当接部材81を離間状態とする。
【0084】
(ステップS22)制御部2は、第二送出機構70の案内フレーム71を上流側に退避させる。そして、主軸11の回転を再開し、次の層の線条材料Lの整列巻きを行う。その後、
図4の処理に戻る。
【0085】
以上説明したように、本実施の形態によれば、当接部材81で巻回体20の周長全体にわたって整列巻き面へ層間紙Pを加圧することができる。したがって、層間紙Pを巻回体20にテープ等で貼り付けることなく層間紙Pを巻回体20に固定し、効率的に線条材料の巻回と層間紙の挿入とを自動的に行って、適正に層間紙Pを挿入することができる。当接部材81は、主軸11の回転軸と平行に配置されており、回転軸の周りの位置を、任意の角度で位置決めできる。当接部材81は、回転軸に向かって変位可能であり、巻回体20の整列巻き面へ、層間紙Pを介してクランプすることができる。かかる構成により、比較的単純な構成によって作業者の手間をかけずに層間紙を挿入することができる。層間紙Pにしわや弛みが生じることを防止することができ、高品質の巻回体20を容易に製造することができる。
【0086】
(その他)
【0087】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。上述の実施の形態のうち、一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明にかかる巻線装置は、作業者の手間をかけずに層間紙を挿入することができるという効果を有し、巻線装置等として有用である。
【符号の説明】
【0089】
1 巻線装置、2 制御部、8 センサ、9 センサ変位機構、10 巻回部、11 主軸、20 巻回体、60 第一送出機構、70 第二送出機構、75 付勢機構、75b 付勢面、75c 規制面、80 層間紙保持機構、81 当接部材、82 支持部、84 変位部、85 第一変位部、85b サーボモータ、86 第二変位部、86b 伸縮機構、98 第一供給源、99 第二供給源、L 線条材料、P 層間紙