(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ハンドオーバーポイント設定装置、その方法及びそのためのコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/32 20060101AFI20240723BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240723BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20240723BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240723BHJP
【FI】
G01C21/32
G08G1/16 A
G09B29/00 Z
B60W50/14
(21)【出願番号】P 2020202199
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501271479
【氏名又は名称】株式会社トヨタマップマスター
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】難波 博
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-7572(JP,A)
【文献】特開2017-54170(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064350(WO,A1)
【文献】特開2020-8490(JP,A)
【文献】特開2018-036722(JP,A)
【文献】特開2016-200472(JP,A)
【文献】特開2017-215653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G08G 1/00 - 1/16
G09B 29/00 - 29/14
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドオーバーポイントを有する自動運転用マップデータを保存する第1保存部と、
ナビゲーション用マップデータを保存する第2保存部と、
前記自動運転用マップデータと前記ナビゲーション用マップデータとを比較するマップ比較部であって、前記ナビゲーション用マップデータが更新されたにも拘わらず前記自動運転用マップデータが未更新である、過渡領域を抽出するマップ比較部と、
前記過渡領域が抽出されたとき、更新前の前記ナビゲーション用マップデータと前記自動運転用マップデータとが重なる道路の定常領域において、前記ハンドオーバーポイントよりも
前記過渡領域から離れた位置に仮ハンドオーバーポイントを設定する設定部と、
を備えてなるハンドオーバーポイント設定装置。
【請求項2】
前記マップ比較部、前記設定部及び第1保存部は第1サーバに備えられ、
前記第2保存部は第2サーバに備えられ、
前記第1サーバの前記マップ比較部は、前記第2サーバの前記第2保存部から送られてきたナビゲーション用マップデータの更新情報と前記第1保存部に保存されている現状の自動運転用マップデータとを比較して、前記過渡領域を抽出し、
前記設定部は
前記仮ハンドオーバーポイントの座標を特定して、前記自動運転用マップデータに反映させるとともに、該座標を前記第2サーバへ送って、前記ナビゲーション用マップデータに反映させる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記マップ比較部により抽出された前記過渡領域と前記仮ハンドオーバーポイントとを関連付けて登録し、
前記自動運転用マップデータが更新されて
前記過渡領域が解消されたとき、
前記仮ハンドオーバーポイントを消去する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
ハンドオーバーポイントを有する自動運転用マップデータを保存する第1保存部、ナビゲーション用マップデータを保存する第2保存部、マップ比較部及び設定部を備えるハンドオーバーポイント設定装置によるハンドオーバーポイント設定方法であって、
前記マップ比較部に、前記自動運転用マップデータと前記ナビゲーション用マップデータとを比較させて、前記ナビゲーション用マップデータが更新されたにも拘わらず前記自動運転用マップデータが未更新である、過渡領域を抽出させ、
前記設定部に、前記過渡領域が抽出されたとき、更新前の前記ナビゲーション用マップデータと前記自動運転用マップデータとが重なる道路の定常領域において、前記ハンドオーバーポイントよりも
前記過渡領域から離れた位置に仮ハンドオーバーポイントを設定させる、ハンドオーバーポイント設定方法。
【請求項5】
ハンドオーバーポイントを有する自動運転用マップデータを保存する第1保存部、ナビゲーション用マップデータを保存する第2保存部、マップ比較部及び設定部を備えるハンドオーバーポイント設定装置を制御するコンピュータ用のコンピュータプログラムであって、
前記マップ比較部に、前記自動運転用マップデータと前記ナビゲーション用マップデータとを比較させて、前記ナビゲーション用マップデータが更新されたにも拘わらず前記自動運転用マップデータが未更新である、過渡領域を抽出させ、
前記設定部に、前記過渡領域が抽出されたとき、更新前の前記ナビゲーション用マップデータと前記自動運転用マップデータとが重なる道路の定常領域において、前記ハンドオーバーポイントよりも
前記過渡領域から離れた位置に仮ハンドオーバーポイントを設定させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハンドオーバーポイント設定装置、その方法及びそのためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置を用いて経路案内をする際、検索対象となるナビゲーション用マップデータは常に最新の状態に更新されていることが好ましい。自動運転時に採用される自動運転用マップデータについても同様である。
しかしながら、両者の更新の時期をシンクロさせることは困難である。自動運転用マップデータはナビゲーション用マップデータに比べてデータ量が格段に大きく、また、データの作成方法も異なる。その結果、自動運転用マップデータはナビゲーション用マップデータに比べて更新時期が大幅に、例えば数月単位で遅れることがある。
本発明に関連する技術を開示する先行特許文献1~2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-071332号公報
【文献】特開2017-003310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転用マップデータとナビゲーション用マップデータの更新に時間差があると、次のような課題が生じる。
例えば、自動運転用マップデータが対象としている高速道路(定常領域)においては(
図1参照)、自動運転を終了し手動運転に切り替える地点(ハンドオーバ-ポイントHOA)として、例えば高速道路のターミナルとなるインターチェンジAのゲート前を設定することがある。このハンドオーバーポイントHOAにおいて、自動運転車両はそのモニタやスピーカを通じて、ドライバに自動運転の終了をアナウンスし、自動運転モードを終了する。
なお、自動運転用マップデータが対象としている領域は、当然ながらナビゲーション用マップデータも対象としているものとする。
【0005】
かかる高速道路に延長領域3が新たにつながれたとき、ナビゲーション用マップデータは早々に更新されるので、高速道路の延長領域3も経路選択の対象となりうる。即ち、延長領域3についての自動運転用マップデータが更新される前に、延長領域3に新設されたインターチェンジBを利用する案内経路がナビゲーションシステムによりドライバに提示されることがある。
【0006】
かかる案内経路が自動運転車両に提供されたとき、インターチェンジAに到達した自動運転車両は、インターチェンジAにおいて制御困難となるおそれがある。自動運転用マップデータに基づけばインターチェンジAがターミナルとなるにも拘わらず、案内経路ではインターチェンジAを通過しているからである。
勿論、ハンドオーバーポイントをHOBとする自動運転用マップデータの更新をまって、ナビゲーション用マップデータを更新すれば、かかる不具合は生じない。しかし、高速道路などに関するナビゲーション用マップデータの早急な更新はユーザに強く求められている。自動運転車両であっても常に自動運転モードで運転されるわけではないからである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記の課題を解決すべくなされたものである。
この発明の第1の局面は次のように規定される。即ち、
自動運転用マップデータを保存する第1保存部と、
ナビゲーション用マップデータを保存する第2保存部と、
前記自動運転用マップデータと前記ナビゲーション用マップデータとを比較するマップ比較部と、
前記マップ比較部の比較結果に基づき、ハンドオーバーポイントの位置を設定する設定部と、
を備えるハンドオーバーポイント設定装置。
【0008】
このように規定される第1の局面のハンドオーバーポイント設定装置によれば、マップ比較部が自動運転用マップデータとナビゲーション用マップデータとを比較し、その比較結果に基づいて、ハンドオーバーポイントの位置を設定する。
例えば、
図1の例では、ナビゲーション用マップデータに高速道路の延長領域3が含まれている一方で、自動運転用マップデータはその更新が遅くなった結果、そこには延長領域3が含まれていない状態が起こりうる。このとき、マップ比較部は両マップデータを比較した結果、当該延長領域3において相違があることを認識し、その結果を設定部に伝える。設定部は、当該相違に基づき、自動運転用マップデータが設定されている定常領域1においてインターチェンジAへ進入する前の地点に仮のハンドオーバーポイントHOB´を設定する。自動運転用マップデータが新設のインターチェンジBをカバーするように更新されたときには、当該仮のハンドオーバーポイントHOB´は消去され、インターチェンジBのゲート前に新たに、標準的なハンドオーバーポイントHOBが設定される。
【0009】
また、
図2には他の高速道路の例を示す。この例では、インターチェンジCまで自動運転用マップデータがカバーしているものとする。ナビゲーション用マップデータは全て自動運転用マップデータがカバーしている領域(道路)をカバーしているものとする。
図2に示す高速道路において、変更領域7において車線拡張などの道路工事が行われ、当該領域において道路情報(車線数、制限速度等)が変更されたものとする。この例においても、変更領域7のデータは更新によりナビゲーション用マップデータに早々に反映されることとなるが、自動運転用マップデータの更新に時間がかかり、両者に相違が発生することを避けられない。この場合、インターチェンジCを利用する案内経路を提供された自動運転車両は、インターチェンジCまで自動運転を実行しようとするが、インターチェンジAを通過した後、道路状況の相違が検知されることとなり、自動運転の制御が困難になるおそれがある。
【0010】
そこで、ナビゲーション用マップデータと自動運転用マップデータとの間に相違が認められたとき、インターチェンジCのゲート前に設定されていたハンドオーバーポイントHOCを一旦消去して、両マップデータに相違の無い領域(定常領域1)においてインターチェンジAへ進入する前の地点に仮のハンドオーバーポイントHOC´を設定する。自動運転用マップデータが変更領域7をカバーするように更新されたときには、当該仮のハンドオーバーポイントHOC´は消去され、インターチェンジCのゲート前に改めて、標準的なハンドオーバーポイントHOCが再設定される。
上記において、自動運転用マップデータの更新が、ナビゲーション用マップデータの更新に比べ、先だってなされた場合も同様に処理できる。
【0011】
以上の例において、自動運転用マップデータとナビゲーション用マップデータとが共にカバーする領域を定常領域とし、延長領域3や変更領域7など両マップデータに違いが生じることがある領域を過渡領域として、この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面に規定のハンドオーバーポイント設定装置であって、前記マップ比較部は、前記ナビゲーション用マップデータが更新されたにも拘わらず前記自動運転用マップデータが未更新である、過渡領域を抽出し、
前記設定部は更新前の前記ナビゲーション用マップデータと前記自動運転用マップデータとが重なる道路の定常領域において、前記過渡領域に近接する位置に前記ハンドオーバーポイントを設定する。
【0012】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第2の局面に規定のハンドオーバーポイント設定装置において、前記マップ比較部、前記設定部及び第1保存部は第1サーバに備えられ、
前記第2保存部は第2サーバに備えられ、
前記第1サーバの前記マップ比較部は、前記第2サーバの前記第2保存部から送られてきたナビゲーション用マップデータの更新情報と前記第1保存部に保存されている現状の自動運転用マップデータとを比較して、前記過渡領域を抽出し、
前記設定部は前記ハンドオーバーポイントの座標を特定して、前記自動運転用マップデータに反映させるともに、該座標を前記第2更新サーバへ送って、前記ナビゲーション用マップデータに反映させる。
【0013】
このように規定される第3の局面のハンドオーバーポイント設定装置によれば、2つのサーバを用いることにより、コンピュータ装置にかかる負担を軽減して高速処理を実現化する。
また、設定したハンドオーバーポイントの座標をナビゲーション用マップデータにも反映させることで、ドライバに対する情報提供の様式を拡大する。即ち、ナビゲーション用マップデータを用いたナビゲーション画面においても新たに設定されたハンドオーバーポイントを表示可能とする。
【0014】
この発明の第4の局面は第1の局面に規定のハンドオーバーポイント設定装置を用いたハンドオーバーポイント設定方法を規定したものであり、次のように規定される。その作用は第1の局面と同様である。即ち、
自動運転用マップデータを保存する第1保存部、ビゲーション用マップデータを保存する第2保存部、マップ比較部及び設定部を備えるハンドオーバーポイント設定装置によるハンドオーバーポイント設定方法であって、
前記比較部に、前記自動運転用マップデータと前記ナビゲーション用マップデータとを比較させ、
前記設定部に、前記マップ比較部の比較結果に基づき、ハンドオーバーポイントの位置を設定させる、ハンドオーバーポイント設定方法。
【0015】
この発明の第5の局面は第2の局面に規定のハンドオーバーポイント設定装置を用いたハンドオーバーポイント設定方法を規定したものであり、次のように規定される。その作用は第2の局面と同様である。即ち、
第4の局面に規定のハンドオーバーポイント設定方法において、記マップ比較部に、前記ナビゲーション用マップデータが更新されたにも拘わらず前記自動運転用マップデータが未更新である、過渡領域を抽出させ、
前記設定部に、更新前の前記ナビゲーション用マップデータと前記自動運転用マップデータとが重なる道路の定常領域において、前記過渡領域に近接する位置に前記ハンドオーバーポイントを設定させる。
【0016】
この発明の第6の局面は第3の局面に規定のハンドオーバーポイント設定装置を用いたハンドオーバーポイント設定方法を規定したものであり、次のように規定される。その作用は第3の局面と同様である。即ち、
第5の局面に規定のハンドオーバーポイント設定方法において、記マップ比較部、前記設定部及び第1保存部は第1サーバに備えられ、
前記第2保存部は第2サーバに備えられ、
前記第1サーバの前記マップ比較部に、前記第2サーバの前記第2保存部から送られてきたナビゲーション用マップデータの更新情報と前記第1保存部に保存されている現状の自動運転用マップデータとを比較して、前記過渡領域を抽出させ、
前記設定部に、前記ハンドオーバーポイントの座標を特定して、前記自動運転用マップデータに反映させるともに、該座標を前記第2更新サーバへ送って、前記ナビゲーション用マップデータに反映させる。
【0017】
この発明の第7の局面は第1の局面に規定のハンドオーバーポイント設定装置を制御するコンピュータ用のコンピュータプログラムを規定したものであり、次のように規定される。このコンピュータプログラムを実行させた作用は第1の局面と同様である。即ち、
自動運転用マップデータを保存する第1保存部、ビゲーション用マップデータを保存する第2保存部、マップ比較部及び設定部を備えるハンドオーバーポイント設定装置を制御するコンピュータ用のコンピュータプログラムであって、
前記比較部に、前記自動運転用マップデータと前記ナビゲーション用マップデータとを比較させ、
前記設定部に、前記マップ比較部の比較結果に基づき、ハンドオーバーポイントの位置を設定させる、コンピュータプログラム。
【0018】
この発明の第8の局面は第2の局面に規定のハンドオーバーポイント設定装置を制御するコンピュータ用のコンピュータプログラムを規定したものであり、次のように規定される。このコンピュータプログラムを実行させた作用は第2の局面と同様である。即ち、
第7の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、記マップ比較部に、前記ナビゲーション用マップデータが更新されたにも拘わらず前記自動運転用マップデータが未更新である、過渡領域を抽出させ、
前記設定部に、更新前の前記ナビゲーション用マップデータと前記自動運転用マップデータとが重なる道路の定常領域において、前記過渡領域に近接する位置に前記ハンドオーバーポイントを設定させる。
【0019】
この発明の第9の局面は第8の局面に規定のハンドオーバーポイント設定装置を制御するコンピュータ用のコンピュータプログラムを規定したものであり、次のように規定される。このコンピュータプログラムを実行させた作用は第3の局面と同様である。即ち、
第8の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、記マップ比較部、前記設定部及び第1保存部は第1サーバに備えられ、
前記第2保存部は第2サーバに備えられ、
前記第1サーバの前記マップ比較部に、前記第2サーバの前記第2保存部から送られてきたナビゲーション用マップデータの更新情報と前記第1保存部に保存されている現状の自動運転用マップデータとを比較して、前記過渡領域を抽出させ、
前記設定部に、前記ハンドオーバーポイントの座標を特定して、前記自動運転用マップデータに反映させるともに、該座標を前記第2更新サーバへ送って、前記ナビゲーション用マップデータに反映させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1はこの発明のハンドオーバーポイント設定装置の一の動作態様を示す模式図である。
【
図2】
図2はこの発明のハンドオーバーポイント設定装置の他の動作態様を示す模式図である。
【
図3】
図3はこの発明の実施の形態のハンドオーバーポイント設定装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4はこの発明の実施の形態のハンドオーバーポイント設定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は第1サーバのハード構成を示すブロックである。
【
図6】
図6は第2サーバのハード構成を示すブロックである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
実施形態のハンドオーバーポイント設定装置2は、
図3に示すとおり、第1サーバ10及び第2サーバ20を備えてなる。
第1サーバ10のHDマップ提供部11からは、自動運転車両30の自動運転装置31に自動運転用マップデータが提供される。第2サーバ20のナビゲーション(以下、NVと略することがある)からは、自動運転車両30のNV装置32へナビゲーション用マップデータが提供される。
自動運転車両30のドライバは、そのNV装置32を用いて目的地までの案内経路を求める。NV装置32は、送信されたナビゲーション用マップデータに基づき案内経路を汎用的な方法で演算し、得られた案内経路をドライバに提示する。
【0022】
この案内経路に自動運転可能の経路が含まれていた場合、自動運転装置31はHDマップ提供部11から自動運転用マップデータを受け取り、自動運転に備える。
第1サーバ10は、このHDマップ提供部11に他にも、HDマップ保存部13、更新部15、マップ比較部17及び設定部19を備える。
HDマップ保存部13には自動運転装置31に提供される自動運転用マップデータが保存される。自動運転用マップデータは3D地図データの他、自動運転に必要な各種道路情報を含む高精度(HD)なマップデータである。
図3の装置ではHDマップと標記されている。
【0023】
HDマップ保存部13はかかる自動運転用マップデータを保存する。図示しない更新サーバにおいて作成された最新バージョンの自動運転用マップデータは更新部15を介してHDマップ保存部13に送られて、既存の自動運転用マップデータが更新される。
【0024】
マップ比較部17は、HDマップ保存部13に保存されている自動運転用マップデータと第2サーバ20のNVマップ保存部23に保存されているナビゲーション用マップデータとを比較し、過渡領域を特定する。
ここに過渡領域とは、自動運転用マップデータの対象となるべき道路の領域であって、ナビゲーション用マップデータは更新されているが、自動運転用マップデータの更新がなされていない道路の領域を指す。
【0025】
自動運転がもっぱら高速道路(自動車専用道路を含む)にて実行される現状においては、
図1の例に示すように、自動運転用マップデータが適用される高速道路が延長された場合、当該延長領域にも自動運転用マップデータが適用される可能性が高い。かかる延長領域にナビゲーション用マップデータが既に適用されているにもかかわらず、自動運転用マップデータが適用されていないとき、当該延長領域が過渡領域となる。
また、
図2の例に示すように、自動運転用マップデータが適用される高速道路においてその一部の領域の道路情報(車線数、制限速度等)が変更されるとき、当該変更領域につきナビゲーション用マップデータは既に変更されているにも関わらず、自動運転用マップデータが更新されていないとき、当該変更領域が過渡領域となる。
【0026】
以上、自動運転が高速道路に適用されることを前提に説明をしてきたが、自動運転が適用される道路領域を任意若しくは所定のルールに従って指定できるとき、当該指定した道路領域に対して、ナビゲーション用マップデータは既に適用されているにもかかわらず、自動運転用マップデータが適用されていないとき、当該指定された道路領域が過渡領域に該当することとなる。
【0027】
マップ比較部17で特定された過渡領域は設定部19の過渡領域保存部191に保存される。保存の形式は任意であるが、リンクとノードとのセットで保存することができる。
マップ比較部17が過渡領域を特定すると、設定部19の仮HOP設定部193は所定の規則に従って、仮ハンドオーバーポイントを設定する。この仮ハンドオーバーポイントは例えば座標で規定される。
図1の例のハンドオーバーポイントHOB´や、
図2の例のハンドオーバーポイントHOC´が該当する。
【0028】
仮ハンドオーバーポイントの設定位置は、自動運転用マップデータが適用される道路の領域(定常領域)であって、過渡領域に接続する近傍の座標を任意に選択できる。
図1及び
図2の例では、インターチェンジに侵入する前の地点(例えば、インターチェンジの1km前)が設定されている。
このようにして設定された仮ハンドオーバーポイントはHDマップ保存部13の自動運転用マップデータに加えられるとともに、設定部19の仮HOP保存部195に、過渡領域保存部191に保存されている過渡領域と関連付けて、保存される。
【0029】
第2サーバ20はNVマップ提供部21、NVマップ保存部23及び更新部25を備える。
第2サーバ20のNVマップ提供部21から、自動運転車両30のNV装置32にナビゲーション用マップデータが提供される。
【0030】
NVマップ保存部23にはナビゲーション用マップデータが保存される。ナビゲーション用マップデータはリンクとノードを備える地図データ部を備える。このリンクとノードは自動運転用マップデータに対応つけられている。これによって、過渡領域の特定が容易となる。図示しない更新サーバにおいて作成された最新バージョンのナビゲーション用マップデータが更新部25を介してNVマップ保存部23に送られて、既存のナビゲーション用マップデータが更新される。
【0031】
次に、この発明のハンドオーバーポイント設定装置2の動作を
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップ1においてHDマップ保存部13に保存されている自動運転用マップデータは、更新部15を介して、最新バージョンに常に更新される。
同様に、ステップ3においてNVマップ保存部23に保存されているナビゲーション用マップデータは、更新部25を介して、最新バージョンに常に更新される。
ここに、ナビゲーション用マップデータの更新のインターバルは自動運転用マップデータのインターバルより早いもとのとする。
【0032】
ステップ5において、第1サーバ10のマップ比較部17はHDマップ保存部13から自動運転用マップデータを読み出し、NVマップ保存部23からナビゲーション用マップデータを読み出し、両者を比較し、過渡領域の有無を検証する。検証のタイミングは、ナビゲーション用マップデータが更新される度に行ってもよいし、予め定められた一定のタイミングで行ってもよい。
比較のデータ量を削減するため、ナビゲーション用マップデータにおいて更新されたデータのみをHDマップ保存部13の自動運転用マップデータと比較することが好ましい。
【0033】
過渡領域の有無の検証は、例えば次のように行う。
図1の例では、自動運転用マップデータが適用される高速道路に延長領域3が形成されると、最初にナビゲーション用マップデータが更新される。この更新がトリガとなって、マップ比較部17は当該更新された延長領域3とナビゲーション用マップデータとそれに対応する自動運転用マップデータとを比較する。このとき、当該延長領域3に対応する自動運転用マップデータが存在しないと、当該延長領域3が過渡領域となる。
図2の例では、自動運転用マップデータが適用される高速道路の変更領域7において道路情報(車線数、制限速度等)が変更されると、最初にナビゲーション用マップデータが更新される。この更新がトリガとなって、マップ比較部17は当該更新された変更領域7のナビゲーション用マップデータとそれに対応する自動運転用マップデータとを比較する。このとき、当該変更領域7に対応する自動運転用マップデータが更新されていないとき、当該変更領域7が過渡領域となる。
【0034】
マップ比較部17による比較の結果、過渡領域が存在したとき(ステップ7:Y)、当該過渡領域は設定部19の過渡領域保存部191に保存され、登録される(ステップ9)。
マップ比較部17での比較は、更新されたナビゲーション用マップデータについて行われるので、過渡領域保存部191には最新のものが順次登録されていく。
設定部19は新たに登録された過渡領域に対応する仮ハンドオーバーポイントの有無を確認する(ステップ11)。新たに登録され過渡領域に対応する仮ハンドオーバーポイントが登録されていないときは(ステップ11:N)、ステップ13に進み、仮HOP設定部193が仮ハンドオーバーポイントを設定し、仮HOP保存部195に保存登録する。それと同時に、この仮ハンドオーバーポイントはHDマップ保存部13の自動運転用マップデータにも反映され、自動運転車両30の自動運転装置31の動作に反映される。
【0035】
この仮ハンドオーバーポイントの座標データをナビゲーション用マップデータに反映させることもできる。NV装置32においても当該仮ハンドオーバーポイントを表示させることで、利用者に注意喚起できるからである。
仮ハンドオーバーポイントの設定ルールは任意に定めることができる。例えば、自動運転用マップデータが適用される道路領域のターミナルから1km手前側とすることができる。このとき、過渡領域保存部191に保存されている過渡領域と仮HOP保存部195に保存されている仮ハンドオーバーポイントとは関連つけられている。
過渡領域保存部191に登録された過渡領域に対応する仮ハンドオーバーポイントが仮HOP保存部195に既に保存登録されていたときは(ステップ11:Y)、処理は終了する。
【0036】
ステップ7に戻り、(1)自動運転適用道路と無関係の道路についてのナビゲーション用マップデータが更新された場合、(2)過渡領域についても自動運転用マップデータが適用されることとなりHDマップ提供部11に保存されている自動運転用マップデータが更新された場合、マップ比較部17において過渡領域は無いものと判断されるので、ステップ7からステップ14に進む。ステップ14において、設定部19は自動運転用マップデータの更新の有無を確認し、その更新が無かったときは処理を終了し(ステップ14:N、(1)の場合)する。その更新があったときは(ステップ14:Y、(2)の場合)、ステップ15に進む。ステップ15において、設定部19は過渡領域保存部191を参照して過渡領域が登録されているか否かを判断する。過渡領域の登録がないときは(ステップ15:N)処理を終了する。
【0037】
他方、過渡領域が存在するときには(ステップ15:Y)、その登録を解除して(ステップ17)、更に仮ハンドオーバーポイントを消去する(ステップ18)ともにハンドオーバーポイントを設定する(ステップ19)。
図1の例ではインターチェンジBのゲート前に新たにハンドオーバーポイントHOBが設定され、
図2の例ではインターチェンジCのゲート前にハンドオーバーポイントHOCが再設定される。設定されたハンドオーバーポイントはHDマップ保存部13の自動運転用マップデータに反映され、もって、自動運転車両30の自動運転装置31の動作に反映される。
【0038】
図5に第1サーバ10のハード構成を示す。
演算部300はCPU301、ROM303及びRAM305を備え、システム全体の制御をつかさどる。それとともに、HDマップ提供部11、マップ比較部17及び設定部19として機能する。ROM303は、演算部300を制御する制御プログラム等が格納された不揮発性メモリである。RAM305は、キーボード等の入力装置330を介して利用者により予め設定された各種設定値を読み出し可能に格納したり、CPU301に対してワーキングエリアを提供したりする。演算部300を制御する制御プログラムはROM303に限らずRAM305や第1、第2記憶装置340及び350に格納されていてもよい。
【0039】
第1記憶装置340はHDマップ保存部13として機能する。
第2記憶装置350は設定部19の過渡領域保存部191や仮HOP保存部195として機能する。
第1、第2記憶装置はハードメモリやフラッシュメモリなど、サーバシステムのメモリ装置の一部の領域を利用することが好ましい。
【0040】
データを一時的に保存する、いわゆるバッファメモリには、演算部のRAMの一部領域を利用できる。
出力装置320はディスプレイや音声出力装置であり、入力装置330は音声入力部や、ディスプレイに重ねて配置されるタッチパネル式のキーボートやマウスなどが該当する。
通信インターフェース360を介して、プローブカーと通信可能となる。
コンピュータを構成する各装置はシステムバス370で連結されている。
【0041】
図6に第2サーバ20のハード構成を示す。なお、
図5と同様の動作を奏する装置には同一の符号を付してその説明を省略する。即ち、第2サーバ20のハード構成では、演算部300はNVマップ提供部21として機能するとともに、案内経路を探索する装置としても機能する。第1記憶装置340はNVマップ保存部23として機能する。第2記憶装置350には、案内経路を探索するときに必要なコストなどの道路情報を保存する道路情報保存部400や案内履歴を保存する案内履歴保存部401が備えられるものとする。
【0042】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 定常領域
2 ハンドオーバーポイント設定装置
10 第1サーバ
17 マップ比較部
19 設定部
20 第2サーバ
HOA、HOB、HOC ハンドオーバーポイント
HOB´、HOC´ 仮ハンドオーバーポイント