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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/36 20060101AFI20240723BHJP
   A47L 15/16 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A47L15/36
A47L15/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020205888
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092904
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 富和
(72)【発明者】
【氏名】佐原 義章
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-163630(JP,A)
【文献】実開平04-032660(JP,U)
【文献】特開平05-269073(JP,A)
【文献】特表2011-530386(JP,A)
【文献】特開2007-282905(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008055817(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01046370(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L15/00-15/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向と短手方向とを有する略直方体状の容器を所定の搬送経路に沿って搬送しながら洗浄するための洗浄方法であって、
前記容器の前記長手方向が上下方向に沿うように起立し且つ前記容器の開口が前記搬送経路の前方に対して側方に傾斜する姿勢にて前記容器を保持しながら、前記容器の下方から前記容器に向けて蒸気を噴射して前記容器加熱して、傾斜した姿勢の前記容器が開口する方向と同じ前記側方から前記容器の開口面に向けて洗浄水を噴射する、工程を備える、
洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄方法において、
前記工程では、前記容器が開口する方向と同じ前記側方に配置されて前記上下方向に延びる複数の洗浄パイプから、前記容器の前記開口面に向けて洗浄水を噴射する、
洗浄方法。
【請求項3】
請求項2に記載の洗浄方法において、
少なくとも一つの前記洗浄パイプは、前記開口面の手前側の部分に洗浄水を噴射する第1噴射ノズルと、前記開口面の奥側の部分に洗浄水を噴射する第2噴射ノズルと、を有する、
洗浄方法。
【請求項4】
請求項1に記載の洗浄方法において、
複数の前記容器を保持するとき、前記搬送経路の前後方向において隣り合う前方側の前記容器と後方側の前記容器とを、前記前方側の前記容器の後端部よりも前記後方側の前記容器の前端部が前方に位置するように、保持する、
洗浄方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の洗浄方法であって
前記工程である第1工程が前記搬送経路の上流側にて実行された後
前記搬送経路の下流側にて、前記容器が開口する方向と同じ前記側方から前記容器の前記開口面に向けて洗浄水を噴射する第2工程更に備える
洗浄方法。
【請求項6】
請求項5に記載の洗浄方法であって、
前記第1工程は、
前記容器に向けて洗浄水を第1噴射圧にて第1噴射時間だけ噴射する、ように実行され、
前記第2工程は、
前記容器に向けて洗浄水を第2噴射圧にて第2噴射時間だけ噴射する、ように実行され、
前記第1工程は、
前記第1噴射圧が前記第2噴射圧よりも低圧であり、且つ、前記第1噴射時間が前記第2噴射時間よりも長い、ように実行される、
洗浄方法。
【請求項7】
請求項6に記載の洗浄方法であって、
前記第1工程における噴射後の洗浄水及び前記第2工程における噴射後の洗浄水を回収し、回収した洗浄水を前記第2噴射圧にて噴射可能であるように昇圧する工程、を更に備え、
前記第1工程は、
昇圧後の洗浄水を減圧して前記第1噴射圧にて前記容器に向けて噴射するように実行され、
前記第2工程は、
昇圧後の洗浄水を前記第2噴射圧にて前記容器に向けて噴射するように実行される、
洗浄方法。
【請求項8】
請求項5~請求項7の何れか一項に記載の洗浄方法において、
前記第1工程及び前記第2工程のうちの少なくとも前記第1工程は、
前記容器を保持する雰囲気温度が90度以上であるように調整するとともに前記容器に向けて噴射する洗浄水の温度が90度以上であるように調整する、ように実行される、
洗浄方法。
【請求項9】
請求項8に記載の洗浄方法において、
前記第1工程及び前記第2工程のうちの少なくとも前記第1工程は、
第1温度且つ洗剤濃度が第1濃度の洗浄水を噴射する第1運転モードと、前記第1温度よりも高温の第2温度且つ洗剤濃度が前記第1濃度よりも高濃度の第2濃度の洗浄水を噴射する第2運転モードと、を切り替えて実行することが可能であり、
前記第2運転モードにおいて、前記容器を保持する雰囲気温度が90度以上であるように調整するとともに前記容器に向けて噴射する洗浄水の温度が90度以上であるように調整する、ように実行される、
洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を洗浄するための洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皿やトレイ等の食器類やホテルパン等の調理器具(以下、「容器」と総称する。)を洗浄する洗浄方法が提案されている。例えば、従来の洗浄方法の一つは、コンベア上に調理等に使用した後の容器を並べるように配置し、コンベアと共に容器を連続的に搬送しながら容器に向けて洗浄水や蒸気を噴き付けることで、容器を洗浄するようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平4-32660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の洗浄方法の特に蒸気処理室内では、蒸気処理室の上方から洗浄水を噴き付け、蒸気処理室の下方から蒸気を噴出するようになっている。これにより蒸気処理室内の温度を50度から60度に保持するようになっているが、例えば、容器の開口面を下方に向けて伏せるように容器がコンベアに載せ置かれた場合、下方から噴出された蒸気が容器の内側で滞留することで蒸気のスムーズな流れが遮られ、蒸気の熱を効果的に作用させることができないばかりか、上方から噴き付けられた洗浄水が容器の開口面には十分に行き届かず、容器内の汚れを十分に落とせない可能性がある。このように、従来の洗浄方法では、容器の全体を適正に洗浄できない可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容器全体を適正に洗浄可能な洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る洗浄方法は、下記[1]~[9]を特徴としている。
[1]
容器を洗浄するための洗浄方法であって、
前記容器を上下に起立した姿勢にて保持しながら、前記容器を加熱装置によって加熱して、前記容器に向けて洗浄水を噴射する、工程を備える、
洗浄方法であること。
[2]
上記[1]に記載の洗浄方法において、
前記工程は、
前記容器への洗浄水の噴射方向とは異なる方向から前記容器を加熱する、ように実行される、
洗浄方法であること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の洗浄方法において、
前記工程は、
前記容器に向けて蒸気を噴射するとともに前記容器に向けて洗浄水を噴射する第1工程と、
前記容器に向けて洗浄水を噴射する第2工程と、をこの順に含む、
洗浄方法であること。
[4]
上記[3]に記載の洗浄方法において、
前記第1工程は、
前記容器の下方から前記容器に向けて蒸気を噴射するとともに、前記容器の側方から前記容器に向けて洗浄水を噴射する、ように実行され、
前記第2工程は、
前記容器の側方から前記容器に向けて洗浄水を噴射する、ように実行される、
洗浄方法であること。
[5]
上記[3]又は上記[4]に記載の洗浄方法において、
前記第1工程は、
前記容器を所定の搬送経路に沿って搬送しながら前記搬送経路の上流側にて実行され、
前記第2工程は、
前記容器を前記搬送経路に沿って搬送しながら前記搬送経路の下流側にて実行される、
洗浄方法であること。
[6]
上記[3]~上記[5]の何れか一つに記載の洗浄方法であって、
前記第1工程は、
前記容器に向けて洗浄水を第1噴射圧にて第1噴射時間だけ噴射する、ように実行され、
前記第2工程は、
前記容器に向けて洗浄水を第2噴射圧にて第2噴射時間だけ噴射する、ように実行され、
前記第1工程は、
前記第1噴射圧が前記第2噴射圧よりも低圧であり、且つ、前記第1噴射時間が前記第2噴射時間よりも長い、ように実行される、
洗浄方法であること。
[7]
上記[6]に記載の洗浄方法であって、
前記第1工程における噴射後の洗浄水及び前記第2工程における噴射後の洗浄水を回収し、回収した洗浄水を前記第2噴射圧にて噴射可能であるように昇圧する工程、を更に備え、
前記第1工程は、
昇圧後の洗浄水を減圧して前記第1噴射圧にて前記容器に向けて噴射するように実行され、
前記第2工程は、
昇圧後の洗浄水を前記第2噴射圧にて前記容器に向けて噴射するように実行される、
洗浄方法であること。
[8]
上記[3]~上記[7]の何れか一つに記載の洗浄方法において、
前記第1工程及び前記第2工程のうちの少なくとも前記第1工程は、
前記容器を保持する雰囲気温度が90度以上であるように調整するとともに前記容器に向けて噴射する洗浄水の温度が90度以上であるように調整する、ように実行される、
洗浄方法であること。
[9]
上記[8]に記載の洗浄方法において、
前記第1工程及び前記第2工程のうちの少なくとも前記第1工程は、
第1温度且つ洗剤濃度が第1濃度の洗浄水を噴射する第1運転モードと、前記第1温度よりも高温の第2温度且つ洗剤濃度が前記第1濃度よりも高濃度の第2濃度の洗浄水を噴射する第2運転モードと、を切り替えて実行することが可能であり、
前記第2運転モードにおいて、前記容器を保持する雰囲気温度が90度以上であるように調整するとともに前記容器に向けて噴射する洗浄水の温度が90度以上であるように調整する、ように実行される、
洗浄方法であること。
【0007】
上記[1]の構成の洗浄方法によれば、上下に起立した姿勢にて保持されている容器に、加熱装置による加熱を施して、洗浄水を噴射する。換言すると、洗浄水自身の温度による加熱に加え、別の熱源(即ち、加熱装置)による加熱が、容器に施される。これにより、容器の温度を洗浄に適した温度に保つとともに、洗浄水の温度低下も抑制して洗浄に適した温度で容器を洗浄することができる。更に、容器が起立した状態にあるため、容器に洗浄水を行き渡らせて容器の汚れを洗い落としながら、洗浄後の洗浄水を容器上に留めずに速やかに容器の下方に流出させられる。よって、洗浄力に優れた洗浄水の供給と、洗浄後の洗浄水の排出と、をスムーズに行うことができる。したがって、本構成の洗浄方法は、容器全体を適正に洗浄可能である。
【0008】
なお、上記「加熱」と上記「洗浄」とは、同時に行われてもよいし、別々に行われてもよい。更に、上記「加熱」の方法は、特に制限されず、蒸気、過熱蒸気、熱水や熱気などの熱流体によって行われてもよいし、電熱ヒータや熱交換パイプなどの輻射熱による熱源からの熱放射によって行われてもよいし、電磁誘導等による容器自身の発熱によって行われてもよい。なかでも、容器上の汚れを湿潤等させて洗浄し易くできる点で、蒸気や過熱蒸気が用いられることが好ましい。
【0009】
上記[2]の構成の洗浄方法によれば、容器への洗浄水の噴射方向とは異なる方向から容器への加熱が施される。これにより、加熱および洗浄水の噴射の一方が他方を妨げ難くなり、加熱と洗浄水の噴射との双方が相まった洗浄効果が、より適正に発揮される。よって、容器の洗浄能力を更に向上できる。
【0010】
上記[3]の構成の洗浄方法によれば、容器に向けて蒸気を噴射するとともに容器に向けて洗浄水を噴射する第1工程と、容器に向けて洗浄水を噴射する第2工程と、をこの順に行う。これにより、例えば、第1工程にて汚れを湿潤等させて汚れを落ちやすい状態にしながら大まかな洗浄(いわゆる荒洗浄)を行い、第2工程にて汚れを落とす本格的な洗浄(いわゆる本洗浄)を行うことができる。このような多段階の洗浄を行うことで、容器の洗浄能力を更に向上できる。
【0011】
上記[4]の構成の洗浄方法によれば、容器の下方から容器に向けて蒸気を噴射するとともに、容器の側方から容器に向けて洗浄水を噴射するように、第1工程を実行した後、容器の側方から容器に向けて洗浄水を噴射するように、第2工程を実行する。これにより、姿勢の容器の全面に蒸気を行き渡らせて容器の汚れを湿潤等させながら、容器の上方等から洗浄水を噴射する場合に比べ、容器に効率良く洗浄水を衝突させ、容器の汚れを強力に落とすことができる。よって、容器の洗浄能力を更に向上できる。
【0012】
上記[5]の構成の洗浄方法によれば、容器を所定の搬送経路に沿って搬送しながら搬送経路の上流側にて第1工程が実行され、搬送経路の下流側にて第2工程が実行される。これにより、多数の容器を連続的に洗浄することができる。よって、多数の容器を効率良く洗浄することができる。
【0013】
上記[6]の構成の洗浄方法によれば、第1工程は、第2工程よりも低圧での洗浄水の噴射が第2工程よりも長時間にわたって行われる。これにより、第1工程にて容器の汚れを十分に湿潤等させた上で、第2工程にて高圧の洗浄水で汚れを効率良く洗い落とすことができる。よって、容器の洗浄能力を更に向上できる。
【0014】
上記[7]の構成の洗浄方法によれば、第1工程および第2工程での洗浄後の洗浄水がひとまとめに回収される。回収された洗浄水は、ポンプ等によって昇圧された後、減圧されて第1工程での洗浄に用いられ、昇圧された状態のまま第2工程での洗浄に用いられる。よって、第1工程および第2工程の各々に用いる洗浄水を別々に独立して加圧する場合に比べ、昇圧のための機器や配管などを合理化でき、洗浄方法を適用する装置等の小型化等を図ることができる。
【0015】
上記[8]の構成の洗浄方法によれば、雰囲気温度が90度以上である環境下で、温度が90度以上の洗浄水が容器に向けて噴射される。これにより、容器の洗浄能力を更に向上できる。なお、雰囲気温度や洗浄水の水温は、洗浄対象の容器上の汚れの性質や、洗浄方法が適用される装置の断熱構造などを考慮し、適宜調整されればよい。
【0016】
上記[9]の構成の洗浄方法によれば、少なくとも第1工程において、洗浄水の温度および洗剤濃度が異なる複数の運転モードを切り替えることができる。これにより、容器上の汚れの適した運転モードで、第1工程での洗浄を行うことができる。更に、第2工程において、雰囲気温度が90度以上である環境下で、温度が90度以上の洗浄水が容器に向けて噴射される。これにより、第1工程での洗浄を経た容器に、第2工程での洗浄をより効率良く行うことができる。よって、容器の洗浄能力を更に向上できる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明によれば、容器全体を適正に洗浄可能な洗浄方法を提供できる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係る洗浄方法を実行する洗浄装置を含む洗浄機の内部構造の概要を示す側面図である。
図2図2は、容器を保持した状態の本発明の実施形態に係る搬送装置を示し、図2(a)は、搬送装置全体の側面図であり、図2(b)は、搬送装置の一部を示す上面図である。
図3図3は、搬送装置によって保持された容器を拡大して示す斜視図である。
図4図4は、搬送装置が有する保持具を示し、図4(a)は、保持具を前側からみた斜視図であり、図4(b)は、保持具を後側からみた斜視図である。
図5図5(a)は、図2(b)のA部の拡大図であり、図5(b)は、図2(b)のB部の拡大図であり、図5(c)は、図5(b)のC-C断面図である。
図6図6は、図1に示す洗浄機が有する洗浄装置の一部を示す側面図である。
図7図7(a)は、図6のD部(分水器)の拡大図であり、図7(b)は、荒洗浄水噴射ノズルの前面図であり、図7(c)は、主洗浄水噴射ノズルの前面図であり、図7(d)は、図7(b)のE-E断面図であり且つ図7(c)のF-F断面図である。
図8図8(a)は、図7(b)のG-G断面図であり、図8(b)は、図8(a)に示す減圧部の分解斜視図である。
図9図9(a)は、荒洗浄の様子を示す前面図であり、図9(b)は、主洗浄の様子を示す前面図であり、図9(c)は、荒洗浄の様子を示す上面図である。
図10図10(a)は、仕上げ洗浄の様子を示す前面図であり、図10(b)は、仕上げ洗浄の様子を示す側面図である。
図11図11は、図1に示す洗浄機が有する熱交換器を示す上面図である。
図12図12は、熱交換室を画成する筐体を示す斜視図である。
図13図13は、変形例に係る主洗浄の様子を示す図であり、図13(a)は、その前面図であり、図13(b)は、その上面図であり、図13(c)は、その側面図である。
図14図14は、他の変形例に係る洗浄機の内部構造の概要を示す側面図である。
図15図15は、参考例に係る洗浄機を示し、図15(a)は、その前面図であり、図15(b)は、その側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る洗浄方法を実行する洗浄装置3を有する洗浄機1について説明する。図1に示す洗浄機1は、洗浄機1の筐体外壁(図示省略)に設けた投入口21から投入した複数の容器30を、搬送装置2(図2(a)等参照)によって連続的に搬送しながら、洗浄機1が有する洗浄装置3(図6等参照)によって洗浄し、洗浄された容器30を洗浄機1の筐体外壁(図示省略)に設けた出口22から排出する装置である。洗浄機1によって洗浄される容器30として、皿やトレイ等の食器類やホテルパン等の調理器具が想定され得る。
【0021】
本例では、容器30として、図3に示すホテルパンが採用されている。具体的には、容器30は、図3に示すように、長手方向を有する略矩形平板状の底板31と、略矩形枠状の側板32と、側板32の突出端の周縁から全周に亘って外側に広がる鍔部33と、を有する略直方体状の金属製の薄底容器である。側板32の突出端の周縁は、容器30の「開口」を画成している。側板32には、鍔部33の延出端の周縁から全周に亘って底板31側に折り返された返し部34(図5(c)も参照)が設けられている。
【0022】
以下、容器30における底板31、側板32、鍔部33及び返し部34のおもて面を、総称して容器30の「開口面」と呼び、容器30における底板31、側板32、鍔部33及び返し部34の裏面を、総称して容器30の「背面」と呼ぶことがある。
【0023】
以下、説明の便宜上、図1及び図2等に示すように、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、搬送装置2による容器30の搬送方向(搬送経路の方向)と一致しており、前側は、搬送経路の下流側に対応しており、後側は、搬送経路の上流側に対応している。
【0024】
<洗浄機1の全体構成>
まず、洗浄機1の全体構成について説明する。図1に示すように、洗浄機1は、全体として、前後方向に長い略直方体状の筐体を有する。洗浄機1の筐体は、複数の略直方体状の筐体を組み合わせることで構成されている。具体的には、洗浄機1の筐体は、主として、前後方向に亘って延びる下部筐体11と、下部筐体11の後端部の上側に位置する入口側筐体12と、入口側筐体12の前側に隣接して下部筐体11の上側に位置する洗浄室筐体13と、洗浄室筐体13の前側に隣接して下部筐体11の前端部の上側に位置する出口側筐体14と、から構成されている。洗浄室筐体13の上面は、入口側筐体12及び出口側筐体14の上面より上側に位置している。入口側筐体12の上側には、洗浄室筐体13の上部の後側に隣接して入口側ブロワ筐体15が設けられ、出口側筐体14の上側には、洗浄室筐体13の上部の前側に隣接して出口側ブロワ筐体16が設けられている。
【0025】
図1に示すように、下部筐体11は、下部空間R1を画成し、入口側筐体12は、入口側空間R2を画成し、洗浄室筐体13は、洗浄室R3及び熱交換室R5を画成し、出口側筐体14は、出口側空間R4を画成し、入口側ブロワ筐体15は、入口側ブロワ空間R6を画成し、出口側ブロワ筐体16は、出口側ブロワ空間R7を画成している。入口側空間R2、洗浄室R3及び出口側空間R4と、下部空間R1とは、下部筐体11の上壁17(図1参照)によって、上下に区画されている。入口側空間R2、洗浄室R3及び出口側空間R4は、前後方向全域に亘って連通している。洗浄室R3と熱交換室R5とは、熱交換室R5を画成する後述する筐体101の底壁102(図12も参照)によって上下に区画されている。入口側空間R2と入口側ブロワ空間R6とは、入口側筐体12の上壁に形成された入口側吸引口18(図1参照)を介して上下に連通している。出口側空間R4と出口側ブロワ空間R7とは、出口側筐体14の上壁に形成された出口側吸引口19(図1参照)を介して上下に連通している。入口側ブロワ空間R6と熱交換室R5とは、熱交換室R5を画成する筐体101に形成された入口側送入口106(図12参照)を介して前後に連通している。出口側ブロワ空間R7と熱交換室R5とは、熱交換室R5を画成する筐体101に形成された出口側送入口105(図12参照)を介して前後に連通している。
【0026】
入口側筐体12の左側壁には、容器30を投入するための投入口21が設けられている。出口側筐体14の前壁には、洗浄された容器30を排出するための出口22が設けられている。洗浄室筐体13の左側壁には、前後方向に並ぶように配置され且つ開閉可能な一対の操作扉(図示省略)が設けられている。下部筐体11の左側壁は、前後方向に並ぶように配置され且つ着脱可能な複数の側蓋(図示省略)によって構成されている。洗浄室筐体13の上壁は、前後方向に並ぶように配置され且つ着脱可能な複数の上蓋(図示省略)によって構成されている。複数の上蓋は、筐体101(図12参照)と共に熱交換室R5を画成している。最も前側に位置する上蓋の前端部には、上方に突出し且つ上下方向に貫通する蒸気排気筒26が設けられている。洗浄機1の筐体は、下部筐体11の下壁から下方に延びる複数本の脚部27を介して床面上に支持されている。
【0027】
洗浄機1の筐体全体の壁面には、断熱材が挟み込まれている。これにより、洗浄機1の筐体表面全体の温度が、手で触れても熱くない程度の温度とされている。また、メンテナンス等の際に開かれる操作扉、及び、メンテナンス等の際に取り外される側蓋の双方が、洗浄機1の筐体の左側壁に設けられているので、洗浄機1の右側壁を他の装置又は施設の壁面に近づけた状態で、洗浄機1を設置することができる。
【0028】
<搬送装置2の構成>
次いで、洗浄機1が有する搬送装置2について説明する。図1図4に示すように、搬送装置2は、容器30を保持するための保持具50と、保持具50を搬送経路に沿って移動させる移動機構40と、で構成されている。まず、移動機構40について説明する。
【0029】
図1図4に示すように、出口側空間R4の下部には、左右方向に延びる駆動軸41が回転可能に支持されている。駆動軸41には、左右方向に間隔を空けて並ぶ左右一対の駆動ギヤ42が一体に設けられている。同様に、入口側空間R2の下部には、左右方向に延びる従動軸43が回転可能に支持されている。従動軸43には、左右方向に間隔を空けて並ぶ左右一対の従動ギヤ44が一体に設けられている。左右一対の駆動ギヤ42と左右一対の従動ギヤ44にはそれぞれ、左右一対の搬送チェーン45が、左右方向に間隔を空けて前後方向に延びるように掛け回されている。左右一対の搬送チェーン45には、搬送チェーン45の延在方向に所定の間隔を空けて並ぶように、複数の保持具50が固定されている。
【0030】
下部空間R1の前端部には、モータ46が設けられている。モータ46の回転軸には、モータギヤ47が一体に設けられている。モータギヤ47と、駆動軸41に固定され且つ後述するように搬送チェーン45を駆動するための駆動ギヤ42と、には、駆動チェーン48が、ほぼ上下方向に延びるように掛け回されている。以上、移動機構40は、駆動軸41、従動軸43、搬送チェーン45、モータ46及び駆動チェーン48によって構成されている。
【0031】
移動機構40において、モータ46の回転軸が左側からみて時計回りに一定の回転速度で回転駆動されると、その駆動トルクが、駆動チェーン48、駆動ギヤ42(駆動軸41)、搬送チェーン45、従動ギヤ44(従動軸43)に順に伝達される。この結果、搬送チェーン45が左側からみて時計回りに一定の回転速度で回転駆動されることで、保持具50(即ち、容器30)を、入口側空間R2から洗浄室R3を経て出口側空間R4までに亘って前後方向に沿って一定速度で前方へ搬送する搬送経路が構成される。
【0032】
移動機構40の従動軸43は、入口側空間R2の後端部に配置される。入口側空間R2では、搬送チェーン45に固定された複数(例えば6個)の保持具50が、所定の間隔を空けて並んで搬送されるようになっている。入口側空間R2に開口する投入口21は、これら複数の保持具50に対して開口するようになっている。
【0033】
次いで、保持具50について説明する。保持具50は、図2図5等に示すように、容器30の長手方向が上下方向に沿う向きで容器30が上下に起立し、且つ、容器30の開口が前方から左側に向けて角度θ(<90度、図2(b)参照)だけ傾いた向きで容器30の右端部が容器30の左端部より前方に位置する姿勢で、容器30を保持する機能を果たす。換言すると、容器30は、上下軸に沿って立ち上がり且つ上下軸周りに左側に向けて角度θだけ傾いた状態で、保持される。角度θは、45度以上(本例では、60度)であることが好適である。
【0034】
具体的には、保持具50は、1枚の金属板に対してプレス加工及び曲げ加工等を施すことで形成されており、図4等に示すように、帯状に延びる矩形平板状の連結部51と、連結部51の一端部に設けられた第1保持部52と、連結部51の他端部に設けられた第2保持部53と、を備える。第1保持部52は、容器30の下方右端部を保持する機能を果たし、第2保持部53は、容器30の下方左端部を保持する機能を果たす。連結部51は、図2(b)及び図3に示すように、第1保持部52及び第2保持部53がそれぞれ右側及び左側に位置し且つ連結部51が左右方向に延びて左右一対の搬送チェーン45を跨ぐように、右側の搬送チェーン45に連結部51の一端部が固定され且つ左側の搬送チェーン45に連結部51の他端部が固定される。
【0035】
第1保持部52は、図4及び図5等に示すように、前端壁54と、前方支持壁55と、前方ガイド壁56と、で構成される。前端壁54は、連結部51の一端部の前端縁の上方において前端縁に沿うように左右方向に延びている。前端壁54の下部には、前端壁54を貫通する矩形状の孔が設けられ、第1保持部52内の水滴等を流れ出させるようになっている。前方支持壁55は、前端壁54の右端部から後方に向けて延び且つ連結部51の一端部の右端縁から上方に突出している。前方ガイド壁56は、前端壁54の左端部から後方且つ左方に向けて傾斜して延び、且つ、連結部51から上方に突出している。換言すれば、前方ガイド壁56は、後方に向かうにつれて前方支持壁55から離れるように(即ち、後方に向けて開くように)傾斜している。前方ガイド壁56の図5(a)に示す傾斜角度θは、保持具50に保持された容器30の図2(b)に示す角度θと一致している。
【0036】
第2保持部53は、図4及び図5等に示すように、後端壁57と、後方支持壁58と、後方ガイド壁59と、で構成される。後端壁57は、連結部51の他端部の後端縁から上方に突出し且つ左右方向に延びている。後方支持壁58は、後端壁57の左端部から前方に向けて延び且つ連結部51の他端部の左端縁から上方に突出している。後方ガイド壁59は、後端壁57の右端部から、前方且つ左方に向けて傾斜し、且つ、上方から下方に向かうにつれて後方支持壁58に近付くように(即ち、上方に向けて開くように)傾斜して延び、且つ、連結部51から上方に突出している。後方ガイド壁59の上端面59a(図4(a)参照)は、後方から前方に向かうにつれて連結部51に近付くように傾斜するテーパ面となっている。後方ガイド壁59の下端部(連結部51の上面近傍部分)には、後方へ向けて窪む切欠き部59b(特に、図5(c)参照)が形成されている。
【0037】
上記構成を有する複数の保持具50は、移動機構40の搬送チェーン45の延在方向(即ち、前後方向)に所定の間隔を空けて並ぶように、搬送チェーン45に固定される(図2及び図3等参照)。容器30は、容器30の長手方向が上下方向に沿う向きで上下に起立し且つ容器30の開口が前方から左側に向けて傾斜した状態で、下方右端部が、一の保持具50の第1保持部52に上方から挿入されて保持され(図3及び図5(a)参照)、下方左端部が、例えば、一の保持具50から後方に向けて2番目に位置する保持具50の第2保持部53に上方から挿入されて保持される(図3及び図5(b)参照)。これにより、容器30は、上下に起立し、且つ、容器30の開口が前方から左側に向けて角度θ(<90度、図2(b)参照)だけ傾いた向きで容器30の右端部が容器30の左端部より前方に位置する姿勢で、保持される。
【0038】
ここで、容器30の下方右端部が第1保持部52に保持される際、前方ガイド壁56が後方に向けて開くように傾斜しているので、前方ガイド壁56と前方支持壁55とで容器30の下方右端部を受け入れて前端壁54に向けて案内しながら、容器30の下方右端部を適正な保持位置で保持することができる。更に、後方ガイド壁59が上方に向けて開くように傾斜しているので、容器30の下方左端部が第2保持部53に保持される際、第1保持部52に保持された下方右端部を中心に容器30を回動させれば、後方ガイド壁59と後方支持壁58とで容器30の下方左端部を受け入れて後端壁57に向けて案内しながら、容器30の下方左端部を適正な保持位置で保持することができる。
【0039】
更に、後方ガイド壁の上端面59aが上述したようにテーパ面となっているので、容器30の下方左端部が後方ガイド壁59の上端面59aに乗ったとしても、容器30の下方左端部を上端面59a上にて前方へ滑らせることで、容器30の下方左端部を第2保持部53の内部にスムーズに導くことができる。更に、第2保持部53に保持された容器30の下方左端部に位置する返し部34が、後方ガイド壁59の下端部に設けられた切欠き部59bと係合する(図5(c)参照)。これにより、容器30の下方左端部の第2保持部53からの浮き上がりが防止される。
【0040】
上記のように保持具50によって保持された容器30は、自身の重心位置に起因して容器30の背面側に傾く場合がある。仮にこのように容器30が傾いた場合であっても、図1及び図3に示すように、搬送ガイド板49が容器30の背面を支持することで、容器30を上述したように上下に起立した本来の姿勢に維持することができる。搬送ガイド板49は、入口側空間R2から洗浄室R3を経て出口側空間R4までに亘って、右側の搬送チェーン45の上方にて前後方向に延びるように配置されている。
【0041】
図2(b)に示すように、複数の容器30は、それぞれが前後において傾き且つ上下において立ち上がった姿勢で、搬送チェーン45上に所定の間隔(=隣接する保持具50間のピッチ)を空けて前後方向に並ぶように、複数の保持具50を利用して保持される。この結果、前後方向に隣接する容器30同士は、互いの一部が前後方向に重なるように配置される。これにより、複数の容器30をより高密度で保持かつ搬送しながら、搬送方向に直交する左右方向および搬送方向(前後方向)の双方において搬送装置2を小型化できる。
【0042】
<搬送装置2の作用・効果>
本実施形態に係る搬送装置2によれば、容器30を保持する保持具50が、容器30を搬送経路に対して上下に起立した姿勢にて保持するとともに、容器30の側方右端部と容器30の側方左端部とが搬送経路の前後において異なる位置にあるように保持するようになっている。換言すると、容器30は、上下軸に沿って立ち上がり且つ上下軸周りに側方に向けて傾いた状態で、搬送経路に沿って搬送される。これにより、上述した従来の搬送装置に比べ、容器30をより高密度で保持かつ搬送しながら、搬送方向に直交する左右方向および搬送方向(前後方向)の双方において搬送装置2を小型化できる。例えば、搬送装置2を後述する洗浄装置3に適用した場合、容器30が高密度に配置されていても、容器30の上下方向や側方から洗浄水等を容器30に噴き付けることで、容器30の開口面および背面を含む全面を適正に洗浄することができる。このように、本実施形態に係る搬送装置2は、多数の容器30の適正な搬送可能であり且つ小型化が可能である。
【0043】
更に、搬送装置2によれば、容器30の下方右端部を保持する第1保持部52と、容器30の下方左端部を下方右端部よりも搬送経路の後方にて保持する第2保持部53と、によって容器30が保持される。これにより、保持具50の上方から容器30を載せることで、容器30を保持具50に保持させることができる。よって、移動機構40によって移動している保持具50に容器30を保持させる作業が容易になり、搬送装置2の実際の使用時の作業効率を向上できる。更に、容器30の重量を容器30の下方で支えることで、搬送時における容器30の姿勢を安定させることができる。
【0044】
更に、搬送装置2によれば、保持具50の第1保持部52が有する前端壁54および前方支持壁55と、保持具50の第2保持部53が有する後端壁57および後方支持壁58と、により、容器30の下方の左右両端部が挟まれるように保持される。即ち、容器30の下方の左右両端部が、少なくとも4方向から壁で挟まれるように保持される。これにより、搬送方向(前後方向)および左右方向の双方において容器30の位置ズレが抑制され、容器30を適正な姿勢で保持した状態を維持できる。その結果、例えば、搬送装置2を後述する洗浄装置3に適用した場合、容器30に洗浄水等を噴き付けたとしても隣り合う容器30同士の間隔が保たれ、容器30の全面を適正に洗浄できる状態を維持できる。
【0045】
更に、搬送装置2によれば、保持具50の第1保持部52が有する前方ガイド壁56が、搬送経路の後方に向かうにつれて前方支持壁55から離れるように(即ち、後方に向けて開くように)傾斜した構造を有する。これにより、容器30を第1保持部52に保持させる際、前方ガイド壁56と前方支持壁55とで容器30の下方右端部を受け入れて前端壁54に向けて案内しながら、容器30の下方右端部を適正な保持位置で保持することができる。更に、保持具50の第2保持部53が有する後方ガイド壁59が、搬送経路の上方から下方に向かうにつれて後方支持壁58に近付くように(即ち、上方に向けて開くように)傾斜した構造を有する。これにより、容器30を第2保持部53に保持させる際、第1保持部52に保持された下方右端部を中心に容器30を回動させれば、後方ガイド壁59と後方支持壁58とで容器30の下方左端部を受け入れて後端壁57に向けて案内しながら、容器30の下方左端部を適正な保持位置で保持することができる。よって、保持具50に容器30を保持させる作業が更に容易になり、搬送装置2の実際の使用時の作業効率を更に向上できる。
【0046】
更に、搬送装置2によれば、保持具50は、搬送経路の前方から側方に向けて45度以上傾いた向きに容器30が開口する姿勢にて容器30を保持する。換言すると、上下軸周りに容器30の開口面が側方に向けて45度以上の角度で傾いた姿勢で、容器が保持される。即ち、搬送方向から見た容器30の大きさが、搬送方向に直交する左右方向から見た容器30の大きさよりも小さくなるように、容器30が保持される。これにより、左右方向における搬送装置2の大きさを更に小型化できる。更に、適度な傾きで容器30を保持させることができるため、移動機構40によって移動している保持具50に、容器30の側方右端部と側方左端部とを順次保持させる作業が更に容易になる。
【0047】
更に、搬送装置2によれば、保持具50が第1保持部52と第2保持部53とが連結部51で一体化された構造を有し、搬送経路に沿って並べられた複数の保持具50のうちの一の保持具50で容器30の下方右端部を保持し且つ他の保持具50で容器30の下方左端部を保持する。これにより、保持具50自体は搬送方向に直交するように並べられながら、容器30を搬送経路の前後において傾いた状態で保持できる。よって、搬送装置2の構造が過度に複雑化することを避けながら容器30の適正な保持を実現できる。更に、保持具50の交換等のメンテナンス性も向上することができる。
【0048】
加えて、搬送装置2では、作業者は、容器30の開口面を搬送方向に向け且つ容器30を上下に立てた状態で容器30を手に持ち、第1保持部52に容器30の下方右端部を差し込む。このとき、作業者は、傾斜角度θ(図5(a)参照)だけ傾いた第1保持部52の前方ガイド壁56に誘導されることで、傾斜角度θをほぼ維持した状態で容器30を持つことになる。その後、作業者は、容器30の下方左端部を、第2保持部53に向けて下ろす。このとき、第2保持部53の後方ガイド壁59が上方に向けて開いているので、容器30の角度が傾斜角度θから多少ずれていても、容器30の下方左端部を、第2保持部53の内部へ納める事ができる。更に、後方ガイド壁59の上端面59aがテーパ面となっているので、容器30の下方左端部が上端面59aに乗ったとしても、容器30の下方左端部を第2保持部53の内部へスムーズに納めることができる。このように、作業者が特に容器30の左右の角度を意識しなくても、確実に左右の保持具50に容器30を保持させることができる。このとき、容器30の下方両端部は少なくとも、第1保持部52の前方支持壁55及び前端壁54、並びに、第2保持部53の後方支持壁58及び後端壁57、の4枚の壁部材で囲まれた状態で保持して搬送されているので、容器30の下方左右端部が前後にずれて不安定な状態であっても、保持具50から落下することなく安定して搬送することができる。このように、容器30の開口面を搬送方向から左側へ傾斜させた姿勢にそろえて搬送することができる。
【0049】
容器30の下方左端部及び下方右端部がそれぞれ、第1保持部52及び第2保持部53に保持されると、作業者は容器30から手を離す。このとき、容器30は自重により背面側に重心移動して傾く場合があるが、仮にそのように傾いたとしても、搬送ガイド板49(図1及び図3参照)によって容器30の背面が支持され、上下に起立した本来の姿勢に容器30を維持することができる。
【0050】
容器30の開口面が搬送方向に対し45度以上の角度で側方に向いているので、容器30の左右方向の長さが前後方向の長さより短くなり、省スペースで容器30を搬送することができる。更に、容器30の下方左右端部をそれぞれ保持することで、容器30の開口面を立て、かつ左側方に向けた不安定な状態の容器30を、確実に保持し安定して搬送することができる。
【0051】
詳細は後述するように、搬送装置2が後述する洗浄装置3に適用された場合、洗浄水が、第2保持部53側から第1保持部52側に向けて容器30の開口面に噴射される。これにより、洗浄水の噴射圧によって容器30が第1保持部52側に押され、第2保持部53内においても、容器30の下方左端部が後方ガイド壁59に向けて押される。このとき、後方ガイド壁59が上方に広がるように傾斜しているので、容器30の下方左端部が、噴射圧により後方ガイド壁59の傾斜面に沿って持ち上がろうとする。しかし、上述したように、容器30の下方左端部に位置する返し部34が後方ガイド壁59の切欠き部59bと係合しているので、容器30の持ち上がりを防止することができる。
【0052】
更に、上述したように、入口側空間R2に複数の保持具50が搬送され且つ投入口21がそれら複数の保持具50に対して開口しているので、作業者は、一度に複数の容器30を保持具50に保持させることができる。よって、作業者は、容器30の投入作業を効率よく行うことができる。更に、一度に投入した複数の容器30の全てが洗浄室R3に搬送されるまでの期間中、作業者は、別の作業をすることができる。よって、作業者は、容器30の投入作業および別の作業を含む複数の作業を効率よく行うことができる。
【0053】
<搬送装置2の他の形態>
容器30を保持するための保持具50の具体的な構造は、特に限定されない。例えば、搬送装置2では、保持具50は、容器30の左右両端部を保持して側方に傾けるように構成されている。これに対し、保持具は、容器30の左右方向中央部を保持して側方に傾けるように構成されてもよい。例えば、搬送装置2では、保持具50は、容器30の下方左右端部を保持している。これに対し、保持具は、容器30の上方左右端部、又は、容器30の上下方向中央部の左右端部を保持してもよい。
【0054】
更に、搬送装置2では、搬送経路に沿って並べられた複数の保持具50のうちの一の保持具50の第1保持部52に容器30の下方右端部が保持され、且つ、他の保持具50の第2保持部53に容器30の下方左端部が保持されている。これに対し、容器30の下方右端部及び下方左端部が、搬送経路に沿って並べられた複数の保持具50のうちの1つの(同じ)保持具50の第1保持部52及び第2保持部53に保持されてもよい。
【0055】
更に、搬送装置2では、左右一対の搬送チェーン45を跨ぐように左右一対の搬送チェーン45に複数の保持具50が固定されている。これに対し、単一の搬送チェーン45に複数の保持具50が固定されていてもよい。
【0056】
更に、搬送装置2では、保持具50の第1保持部52と第2保持部53とが連結部51によって連結されている。これに対し、連結部51が省略されて、保持具50の第1保持部52と第2保持部53とが独立していてもよい。
【0057】
更に、搬送装置2では、容器30の下端部が保持具50で保持されている。これに対し、容器30が上下に起立し且つ左右両端部が側方に傾いた姿勢で保持されれば、例えば、容器30の上方に搬送チェーン45及び保持具50を配置して容器30を保持具50で吊り下げてもよい。
【0058】
<洗浄装置3の構成>
次いで、洗浄機1が有する洗浄装置3について説明する。図1図6及び図7に示すように、洗浄装置3は、上述した搬送装置2に加えて、洗浄水供給系統と、蒸気供給系統と、水供給系統と、を備える。以下、まず、洗浄水供給系統について説明する。
【0059】
・洗浄水供給系統の構成
洗浄水供給系統は、後述する荒洗浄工程及び主洗浄工程にて使用される洗浄水を、洗浄室R3内にて、搬送装置2によって搬送される容器30に向けて噴射するための系統である。洗浄水は、水と洗剤とを混合させて製造される。洗剤としては、高温高濃度に対応可能であり且つ低発泡タイプのものが好適である。
【0060】
図1及び図6に示すように、洗浄室R3の下部には、洗浄水を貯留するための洗浄タンク61が設けられている。洗浄タンク61の上方開口は、メッシュ(多数の微細な貫通孔が形成された網目)によって構成される平板状の一対のタンクストレーナ62によって覆われている。図1に示すように、一対のタンクストレーナ62は、下部筐体11の上壁17の一部を構成している。
【0061】
上壁17における一対のタンクストレーナ62の左右両側部分は、タンクストレーナ62に向けて下る向きに傾斜する一対の傾斜面17aを構成している。洗浄室R3内にて荒洗浄工程及び主洗浄工程にて使用された洗浄水は、一対の傾斜面17a上、又は、一対のタンクストレーナ62上に落下するようになっている。傾斜面17a上に落下した洗浄水は、傾斜面17a上をタンクストレーナ62に向けて流れ落ちる。タンクストレーナ62上に移動した洗浄水は、タンクストレーナ62のメッシュを介して洗浄タンク61に回収されるようになっている。
【0062】
タンクストレーナ62上に移動した洗浄水に含まれている異物等(容器30に付着していた汚れ等を含む)は、タンクストレーナ62によって捕捉される。この結果、洗浄タンク61内の洗浄水は、汚れが少なく且つ洗浄作用が十分に発揮し得る良好な状態に保たれる。洗浄タンク61に貯留されている洗浄水は、後述する蒸気式ヒータ88(図1及び図6参照)によって加熱されて、90℃又は70℃の高温に維持されるようになっている。なお、洗浄水の加熱は、電気式ヒータによって行われてもよいし、洗浄機1の内部又は外部に設けられる給湯器によって行われてもよい。
【0063】
一対の傾斜面17aのうち前側の傾斜面17aと、前側の傾斜面17aより前側に位置する上壁17との境界部には、上方に突出し且つ左右方向に延びる仕切板17bが設けられている(図1参照)。仕切板17bより前側に位置する上壁17には、仕上げ排水口17cが設けられている(図1参照)。洗浄室R3内にて後述する仕上げ洗浄工程にて使用された水は、仕切板17bより前側に位置する上壁17上に落下して、仕上げ排水口17cを介して排水されるようになっている。仕切板17bは、仕上げ洗浄工程にて使用された水が洗浄タンク61に回収されることで洗浄タンク61の洗剤濃度が低下することが望ましくない場合、そのような洗剤濃度の低下を防止するために設けられている。具体的には、比較的高い洗剤濃度(例えば、5%以上)を保った状態での洗浄を行う場合、仕切板17bを設けることが好ましい。一方、比較的低い洗剤濃度(例えば、5%未満)での洗浄を行う場合、洗剤の投入量自体が少ないため、仮に洗剤濃度が低下しても洗剤を改めて投入することで容易に洗剤濃度を回復できることから、仕切板17bを取り外すとともに排水口17cを閉じて、仕上げ洗浄工程で使用された水を洗浄タンク61に回収することで、洗浄水を効率よく使用するようにしてもよい。
【0064】
洗浄タンク61は、図1及び図6に示すように、下部空間R1内にて、配管63を介してポンプ64の吸入側に接続されている。ポンプ64の吐出側は、配管65を介して、洗浄室R3内に位置する分水器4に接続されている。よって、ポンプ64は、洗浄タンク61に貯留されている高温の洗浄水を吸入し、分水器4に向けて所定の吐出圧で吐出するようになっている。
【0065】
<分水器4の構成>
以下、分水器4について説明する。分水器4は、荒洗浄工程に使用される荒洗浄パイプ73(荒洗浄水噴射ノズル74、図7等参照)と、主洗浄工程に使用される主洗浄パイプ75(主洗浄水噴射ノズル76、図7等参照)と、に異なる圧力で高温の洗浄水を供給する機能を果たす。分水器4は、洗浄室R3において、左側の搬送チェーン45よりも左側の位置であり且つ搬送装置2によって搬送される容器30の左側の位置にて、上下方向及び前後方向に延びるように設けられている。
【0066】
分水器4は、図7に示すように、分水器本体66と、主洗浄側分水器67と、荒洗浄側分水器68と、減圧部69と、を備える。分水器本体66は、上下方向に延び且つ両端が開口する角筒状のパイプである。分水器本体66の下端部は、ポンプ64の吐出側に接続された配管65に接続されている(図6も参照)。
【0067】
分水器本体66の上端部は、前後方向に延びる主洗浄側分水器67の途中部分に接続されている。主洗浄側分水器67は、前後方向に延び且つ前端が閉塞され後端が開口する角筒状のパイプである。主洗浄側分水器67の後端は、減圧部69を介して、前後方向に延びる荒洗浄側分水器68の前端に接続されている。荒洗浄側分水器68は、前後方向に延び且つ前端が開口し後端が閉塞された角筒状のパイプである。荒洗浄側分水器68の前後方向長さは、主洗浄側分水器67の前後方向長さより長い。
【0068】
減圧部69は、図8に示すように、小孔72が形成された矩形平板状の減圧板71が、主洗浄側分水器67の後端に設けられた矩形状フランジ部67aと、荒洗浄側分水器68の前端に設けられた矩形状フランジ部68aと、に挟持され且つ締結固定されることで、構成されている。減圧部69は、小孔72をオリフィスとして使用することで、減圧機能を果たす。なお、減圧部69は、減圧バルブ等の他の手段を用いて構成されてもよい。
【0069】
小孔72は、減圧板71の中央位置より下方に偏心して設けられている。この結果、小孔72の下端縁は、主洗浄側分水器67及び荒洗浄側分水器68の内周面の下端と段差がないように配置されている。
【0070】
荒洗浄側分水器68には、図7(a)及び図8(a)に示すように、前後方向の複数箇所(本例では、5箇所)にて、下向きに開口する差込口68bが形成されている。各差込口68bには、上下方向に延びる荒洗浄パイプ73の上端部が差し込まれて接続されている。荒洗浄パイプ73は、上下方向に延び且つ上端が開口し下端が閉塞された円筒状のパイプである。各荒洗浄パイプ73の上端は、荒洗浄側分水器68の内部にて、差込口68bから上方に向けて突出している。各荒洗浄パイプ73の下端は、分水器本体66に固定され且つ前後方向に延びるパイプ受け板77に支持されている。
【0071】
荒洗浄パイプ73には、図7(b)及び図7(d)に示すように、上下方向の複数箇所にて、右向きに開口する第1荒洗浄水噴射ノズル74aと、右斜め前向きに開口する第2荒洗浄水噴射ノズル74bと、が設けられている。
【0072】
主洗浄側分水器67には、図7(a)及び図8(a)に示すように、前後方向の1箇所にて、下向きに開口する差込口67bが形成されている。差込口67bには、上下方向に延びる主洗浄パイプ75の上端部が差し込まれて接続されている。主洗浄パイプ75は、上下方向に延び且つ上端が開口し下端が閉塞された円筒状のパイプである。主洗浄パイプ75の上端は、主洗浄側分水器67の内部にて、差込口67bから上方に向けて突出している。主洗浄パイプ75の下端は、分水器本体66に固定され且つ前後方向に延びるパイプ受け板77に支持されている。
【0073】
主洗浄パイプ75には、荒洗浄パイプ73と同様、図7(c)及び図7(d)に示すように、上下方向の複数箇所にて、右向きに開口する第1主洗浄水噴射ノズル76aと、右斜め前向きに開口する第2主洗浄水噴射ノズル76bと、が設けられている。主洗浄パイプ75に設けられている第1、第2主洗浄水噴射ノズル76a,76bの個数は、荒洗浄パイプ73に設けられている第1、第2荒洗浄水噴射ノズル74a,74bの個数よりも多い。
【0074】
なお、荒洗浄パイプ73及び主洗浄パイプ75の周方向の向き(即ち、荒洗浄水噴射ノズル74及び主洗浄水噴射ノズル76の向き)は、パイプ受け板77に設けられたパイプ角度調整機構77a(図7参照)によって調整可能となっている。
【0075】
以上に説明した分水器4において、ポンプ64から圧送された洗浄水は、分水器本体66に流入し、主洗浄側分水器67と荒洗浄側分水器68に分岐される。主洗浄側分水器67に分岐された洗浄水は、主洗浄パイプ75に流入し、搬送装置2によって搬送されている容器30の左側方に位置する第1、第2主洗浄水噴射ノズル76a,76bから、容器30の開口面に向けて、ポンプ64の吐出圧のまま噴射される(図9(b)参照)。
【0076】
荒洗浄側分水器68に分岐された洗浄水は、減圧部69に配置された減圧板71に衝突し、小孔72を通過した一部の洗浄水は、減圧された状態で荒洗浄側分水器68に流入する。小孔72を通過した洗浄水は、荒洗浄側分水器68の内部の底面に沿って流れながら差込口68bから複数本突出している荒洗浄パイプ73の上端部に衝突することで、流速が弱められながら流動することになる。流速が弱められた洗浄水は、各荒洗浄パイプ73に流入し、搬送装置2によって搬送されている容器30の左側方に位置する第1、第2荒洗浄水噴射ノズル74a,74bから、容器30の開口面に向けて、ポンプ64の吐出圧から減圧部69により減圧された圧力で噴射される(図9(a)参照)。
【0077】
前後方向に沿って配置された複数本の荒洗浄パイプ73に設けられた第1、第2荒洗浄水噴射ノズル74a,74bからは、洗浄水は、前後方向に比較的長い荒洗浄領域H1(図1参照)に亘って、搬送装置2によって搬送されている容器30の開口面に向けて噴射される。このとき、第1荒洗浄水噴射ノズル74aからは、洗浄水が容器30の開口面の手前側の部分(前側に隣接する容器30と重なっていない部分)に向けて、右方に向かうように噴射される(図9(c)参照)。一方、第2荒洗浄水噴射ノズル74bからは、洗浄水が容器30の開口面の奥側の部分(前側に隣接する容器30と重なる部分)に向けて、右斜め前方に向かうように噴射される(図9(c)参照)。なお、第1、第2荒洗浄水噴射ノズル74a,74bから噴射された洗浄水による洗浄の詳細は、後述される。
【0078】
同様に、1本の主洗浄パイプ75に設けられた第1、第2主洗浄水噴射ノズル76a,76bからは、洗浄水は、荒洗浄領域H1の前側(搬送経路の下流側)に隣接し且つ荒洗浄領域H1より前後方向に短い主洗浄領域H2(図1参照)にて、搬送装置2によって搬送されている容器30の開口面に向けて噴射される。このとき、第1主洗浄水噴射ノズル76aからは、第1荒洗浄水噴射ノズル74aと同様、洗浄水が容器30の開口面の手前側の部分(前側に隣接する容器30と重なっていない部分)に向けて、右方に向かうように噴射される。一方、第2主洗浄水噴射ノズル76bからは、第2荒洗浄水噴射ノズル74bと同様、洗浄水が容器30の開口面の奥側の部分(前側に隣接する容器30と重なる部分)に向けて、右斜め前方に向かうように噴射される。なお、第1、第2主洗浄水噴射ノズル76a,76bから噴射された洗浄水による洗浄の詳細は、後述される。
【0079】
容器30の洗浄が終了すると、ポンプ64が停止し、洗浄水の圧送が停止される。荒洗浄パイプ73及び主洗浄パイプ75に残存した洗浄水は、荒洗浄水噴射ノズル74及び主洗浄水噴射ノズル76からそれぞれ排出される。荒洗浄側分水器68及び主洗浄側分水器67の内部に残存した洗浄水は、分水器本体66に流入し、ポンプ64を通じて洗浄タンク61に排出される。
【0080】
特に、荒洗浄側分水器68の内部に残存した洗浄水は、分水器本体66に戻る際、減圧板71で遮られてしまうところ、小孔72の下端縁と、荒洗浄側分水器68の内周面の下端とに段差がないので、小孔72から分水器本体66へとスムーズに排出される。
【0081】
<分水器4の作用・効果>
減圧板71の小孔72から流入した洗浄水は、荒洗浄側分水器68内部の下方から突出した荒洗浄パイプ73の上端部に複数回衝突することで流速が弱められ、複数の荒洗浄パイプ73から均等に噴射される。
【0082】
荒洗浄工程及び主洗浄工程という異なる洗浄工程に対し、それぞれ適切な圧になるように複数のポンプを制御する制御手段は必要なく、単一のポンプ64を駆動するだけで、簡単な構成で異なる洗浄工程に向けて異なる圧の洗浄水を供給することができる。
【0083】
作業者が分水器4を分解清掃する際、荒洗浄パイプ73を荒洗浄側分水器68から外しても、荒洗浄側分水器68の内部に洗浄水が残っていないので、荒洗浄側分水器68から洗浄水が流れ落ちる事が無い。このため、火傷や汚れが付着する恐れがなく安全に作業することができる。以上、分水器4について説明した。
【0084】
以上に説明したように、洗浄装置3が備える洗浄水供給系統は、洗浄タンク61、ポンプ64、及び、分水器4(荒洗浄水噴射ノズル74及び主洗浄水噴射ノズル76を含む)によって構成されている。以上、洗浄装置3が備える洗浄水供給系統について説明した。
【0085】
・蒸気供給系統の構成
次いで、洗浄装置3が備える蒸気供給系統について説明する。蒸気供給系統は、荒洗浄工程にて使用される蒸気(水蒸気)を、洗浄室R3内にて、搬送装置2によって搬送される容器30に向けて噴射するための系統、並びに、洗浄タンク61内に貯留されている洗浄水を加熱する蒸気式ヒータ88に蒸気を供給するための系統である。
【0086】
図6に示すように、下部筐体11の後壁には、蒸気供給口81が設けられている。蒸気供給口81は、洗浄機1の外部に位置する蒸気生成器(ボイラ等、図示省略)と接続されており、蒸気供給口81には、蒸気生成器にて生成された蒸気(水蒸気)が供給されるようになっている。蒸気として、過熱蒸気が供給されてもよい。蒸気供給口81は、下部空間R1に位置する配管82を介して、洗浄室R3内に位置する蒸気噴射ノズル83に接続されている。
【0087】
蒸気噴射ノズル83は、図1図6図7及び図9(c)等に示すように、蒸気パイプ84と、蒸気パイプ84に設けられた蒸気噴射口85と、により構成されている。蒸気パイプ84は、洗浄室R3の下部における左右一対の搬送チェーン45の間の空間内において、荒洗浄領域H1(図1参照)にて前後方向に延び且つ前端が開口し後端が閉塞された円筒状のパイプである。蒸気パイプ84の前端は、蒸気供給口81に接続された配管82に接続されている(図6参照)。
【0088】
蒸気供給口81は、図9(c)に示すように、蒸気パイプ84の前後方向の複数箇所にて前後方向に並ぶように設けられており、上向きに開口している。隣接する蒸気噴射口85間の前後方向の間隔は、隣接する容器30間(即ち、隣接する保持具50間)の前後方向の間隔よりも小さい(図9(c)参照)。
【0089】
蒸気噴射口85から供給された高温の蒸気は、蒸気パイプ84に流入し、搬送装置2によって搬送されている容器30の下方に位置する複数の蒸気噴射口85から、荒洗浄領域H1(図1参照)に亘って上向きに噴射される。噴射された蒸気は、左右一対の搬送チェーン45の間(即ち、保持具50の第1保持部52及び第2保持部53の移動軌跡の間)から、容器30及び隣接する容器30の間の空間に向けて上向きに移動していき、洗浄室R3を90℃以上の高温環境に維持する機能を果たす。この結果、容器30が加熱されると共に、荒洗浄領域H1にて左側方に位置する荒洗浄水噴射ノズル74から噴射された洗浄水も加熱される。
【0090】
蒸気噴射ノズル83に供給される蒸気の量(流量)は、下部空間R1内にて配管82の途中に設けられた第1蒸気電磁弁86(図6参照)を制御することで調整できるようになっている。
【0091】
下部空間R1において、第1蒸気電磁弁86より上流側に位置する配管82の分岐部82a(図6参照)からは、配管87が分岐している。分岐した配管87は、洗浄タンク61内に位置する蒸気式ヒータ88に接続されている。この結果、洗浄タンク61内に貯留されている洗浄水内にて、蒸気式ヒータ88の表面に設けられた多数の細孔から高温の蒸気が噴射されることで、洗浄タンク61内に貯留されている洗浄水が加熱される。
【0092】
蒸気式ヒータに供給される蒸気の量(流量)は、下部空間R1内にて配管87の途中に設けられた第2蒸気電磁弁89(図6参照)を制御することで調整できるようになっている。これにより、洗浄タンク61内に貯留されている洗浄水は、90℃又は70℃の高温に維持されるようになっている。
【0093】
以上に説明したように、洗浄装置3が備える蒸気供給系統は、蒸気供給口81、蒸気噴射ノズル83、及び、蒸気式ヒータ88によって構成されている。以上、洗浄装置3が備える蒸気供給系統について説明した。
【0094】
・水供給系統
次いで、洗浄装置3が備える水供給系統について説明する。水供給系統は、仕上げ洗浄工程にて使用される水(温水)を、洗浄室R3内にて、搬送装置2によって搬送される容器30に向けて噴射するための系統、並びに、洗浄タンク61内に水を供給するための系統である。
【0095】
図6に示すように、下部筐体11の後壁には、水供給口91が設けられている。水供給口91は、洗浄機1の外部に位置する水供給器(上水道管等、図示省略)と接続されており、水供給口91には、水供給器から水(常温の上水)が供給されるようになっている。水供給口91は、下部空間R1に位置する配管92を介して、洗浄室R3内にて洗浄タンク61内に向けて配置された供給口93に接続されている。水供給口91から供給された常温の水は、供給口93を介して洗浄タンク61内に供給されるようになっている。
【0096】
供給口93から洗浄タンク61に供給される水の量(流量)は、下部空間R1内にて配管92の途中に設けられた第1給水電磁弁94(図6参照)を制御することで調整できるようになっている。
【0097】
下部空間R1において、第1給水電磁弁94より上流側に位置する配管92の分岐部92a(図6参照)からは、配管95が分岐している。分岐した配管95は、上方に延びて、熱交換器5の熱交換室R5(図11も参照)内に位置する熱交換パイプ131(図11も参照)の入口側接続口131a(図11も参照)に接続され、熱交換パイプ131を介して、洗浄室R3内に位置する仕上げ洗浄パイプ96(図6も参照)に接続されている。配管95から供給された常温(10℃程度)の水は、熱交換パイプ131を通過する過程で熱交換器5によって加熱されて、60℃程度の温水となる。即ち、仕上げ洗浄パイプ96には、温水が供給されるようになっている。熱交換器5の構成については後に詳述する。
【0098】
仕上げ洗浄パイプ96は、洗浄室R3の上部において、主洗浄領域H2より前側(搬送経路の下流側)に位置する仕上げ洗浄領域H3(図1参照)にて左右方向に延び且つ左端が開口し右端が閉塞された円筒状のパイプである。仕上げ洗浄パイプ96の左端は、熱交換パイプ131の出口側接続口131bに接続されている(図6及び図10参照)。仕上げ洗浄パイプ96には、図10(a)及び図10(b)に示すように、左右方向の複数箇所にて、下斜め後向きに開口する仕上げ洗浄水噴射ノズル97が設けられている。
【0099】
仕上げ洗浄パイプ96に供給された温水は、仕上げ洗浄領域H3(図1参照)にて、搬送装置2によって搬送されている容器30の上方に位置する仕上げ洗浄水噴射ノズル97から、容器30の開口面に向けて、下斜め後向きに噴射される(図10(a)及び図10(b)参照)。
【0100】
仕上げ洗浄水噴射ノズル97に供給される温水の量(流量)は、下部空間R1内にて配管95の途中に設けられた第2給水電磁弁98(図6参照)を制御することで調整できるようになっている。
【0101】
以上に説明したように、洗浄装置3が備える水供給系統は、水供給口91、供給口93、熱交換パイプ131(熱交換器5)、仕上げ洗浄水噴射ノズル97によって構成されている。以上、洗浄装置3が備える水供給系統について説明した。
【0102】
<熱交換器5の構成>
以下、熱交換器5について説明する。熱交換器5は、水供給系統において配管95から供給された水(常温の水)を加熱し、加熱して得られた温水を、仕上げ洗浄パイプ96に供給する機能を果たす。熱交換器5は、図11等に示すように、熱交換室R5と、出口側ブロワ111と、入口側ブロワ121と、を備える。
【0103】
熱交換室R5は、図1及び図11等に示すように、洗浄室筐体13の最上位置にて、洗浄室R3の上側に隣接して配置され、前後方向に延びるように設けられている。熱交換室R5は、洗浄室筐体13の最上位置に設けられた筐体101(図11及び図12参照)と、洗浄室筐体13の上壁を構成する複数の上蓋(図示省略)と、によって画成されている。洗浄室R3と熱交換室R5とは、筐体101の底壁102(図12参照)によって上下に区画されている。
【0104】
筐体101は、図12に示すように、上方に開口し且つ前後方向に延びる略直方体状の箱状の形状を有する。筐体101の上方開口を上蓋で塞ぐことで、前後方向に延びる略直方体状の熱交換室R5が画成される。筐体101の底壁102は、前後方向全域に亘って、左右方向両端から左右方向中央に向けて徐々に上側に移動するいわゆる山型の形状を有している(図12参照)。
【0105】
筐体101の内部には、左右方向略中央位置にて、筐体101の前壁から筐体101の後壁の近傍位置まで後方に延びる仕切板103が設けられている。仕切板103によって、熱交換室R5は、左側にて前後方向に延びる往路室R5aと、右側にて前後方向に延びる復路室R5bと、に2分されている。仕切板103の後端と筐体101の後壁との間には、往路室R5aと復路室R5bとを連通する連通開口104が形成されている。復路室R5bの前端部に対応する筐体101の箇所には、上述した蒸気排気筒26が設けられている。蒸気排気筒26は、復路室R5bの前端部に連通している。
【0106】
筐体101の前壁には、往路室R5aに連通する出口側送入口105が形成され、筐体101の後壁には、復路室R5bに連通する入口側送入口106が形成されている。出口側ブロワ111によって吸引された出口側空間R4内の高温排気(例えば、仕上げ洗浄領域H3から漏れ出る高温の蒸気等)が、出口側送入口105を介して往路室R5aに吹き出され、入口側ブロワ121によって吸引された入口側空間R2内の高温排気(例えば、荒洗浄領域H1から漏れ出る高温の蒸気等)が、入口側送入口106を介して復路室R5bに吹き出されるようになっている。
【0107】
筐体101の内部には、仕切板103よりも僅かに右側の左右方向位置にて、筐体101の後壁から、仕切板103の後端部と前後方向に所定距離だけ重なる前後方向位置まで、前方に延びる吸引誘導板107が設けられている。吸引誘導板107と仕切板103とが前後方向に重なる箇所には、前後方向に延びる微小隙間108が画成されている。吸引誘導板107は、入口側送入口106と連通開口104とを仕切るように配置されている。吸引誘導板107及び微小隙間108の作用については後述する。
【0108】
出口側ブロワ111は、熱交換室R5の前側に隣接する出口側ブロワ空間R7内に配置され(図1参照)、出口側モータ112によって回転駆動されるようになっている。出口側ブロワ111は、洗浄室R3から出口側空間R4へ漏れ出て出口側筐体14に捕捉された高温排気を、出口側吸引口19(図1参照)を介して吸引し、出口側送入口105を介して往路室R5a内に吹き出す機能を果たす。出口側ブロワ空間R7内には、出口側ブロワ111の周囲を囲い且つ出口側送入口105の縁部に繋がる整流板113が設けられている(図11参照)。これにより、出口側ブロワ111が吸引した高温排気が、往路室R5a内にスムーズに移動できるようになっている。
【0109】
入口側ブロワ121は、熱交換室R5の後側に隣接する入口側ブロワ空間R6内に配置され(図1参照)、入口側モータ122によって回転駆動されるようになっている。入口側ブロワ121は、洗浄室R3から入口側空間R2へ漏れ出て入口側筐体12に捕捉された高温排気を、入口側吸引口18(図1参照)を介して吸引し、入口側送入口106を介して復路室R5b内に吹き出す機能を果たす。入口側ブロワ空間R6内には、入口側ブロワ121の周囲を囲い且つ入口側送入口106の縁部に繋がる整流板123が設けられている(図11参照)。これにより、入口側ブロワ121が吸引した高温排気が、復路室R5b内にスムーズに移動できるようになっている。
【0110】
熱交換室R5内には、図11に示すように、熱交換パイプ131が収容されている。熱交換パイプ131は、図6及び図11等に示すように、熱交換室R5内にて、前後方向に複数回往復しながら左右方向に延びている。この結果、熱交換パイプ131の一部が、往路室R5a内に位置し、熱交換パイプ131の他部が復路室R5b内に位置している。熱交換パイプ131の入口側接続口131aは、入口側ブロワ空間R6内に位置する配管95の端部と接続されている(図11参照)。熱交換パイプ131の出口側接続口131bは、筐体101の底壁102に設けられた貫通孔102a(図11参照)を介して熱交換室R5(往路室R5a)から洗浄室R3へと導出されて、洗浄室R3内にて仕上げ洗浄パイプ96に接続されている(図10等参照)。
【0111】
以上に説明した熱交換器5においては、洗浄室R3から出口側空間R4へ漏れ出た高温排気(出口側排気)が、出口側吸引口19を介して出口側ブロワ111に吸引され、往路室R5aに吹き出される。往路室R5aに吹き出された出口側排気は、往路室R5a内に位置する熱交換パイプ131と熱交換しながら往路室R5aの後端部(終端部)に向けて後方に流動する。
【0112】
一方、洗浄室R3から入口側空間R2へ漏れ出た高温排気(入口側排気)は、入口側吸引口18を介して入口側ブロワ121に吸引され、復路室R5bに吹き出される。復路室R5bに吹き出された入口側排気は、復路室R5b内に位置する熱交換パイプ131と熱交換しながら復路室R5bの前端部(終端部)に向けて前方に流動する。
【0113】
出口側送入口105を介して往路室R5aに吹き出された出口側排気は、往路室R5aの終端部に達すると流速が弱まる。しかし、流速が弱まった出口側排気は、入口側ブロワ121によって吹き出された直後の流速の速い入口側排気の流れに起因して微小隙間108近傍に生じる負圧に吸引され(いわゆるベンチュリ効果)、吸引誘導板107に沿って、微小隙間108を介して復路室R5bに流入する。この結果、往路室R5aを後方に流動してきた出口側排気は、再び前方に向けて、入口側排気と共に復路室R5bを前方に流動する。
【0114】
このようにして復路室R5b内を前方に流動する入口側排気と出口側排気は、復路室R5bの終端部に位置する蒸気排気筒26を介して洗浄機1の外部に排出される。更に、熱交換室R5の底面を画成する筐体101の底壁102は、洗浄室R3の天井面を構成している。このため、洗浄室R3内の熱の一部が、底壁102を介して熱交換室R5に取り込まれる。このようにして熱交換室R5内に取り込まれた熱も、熱交換パイプ131の加熱に寄与する。
【0115】
<熱交換器5の作用・効果>
洗浄室R3から排出される高温排気(特に、出口側排気)を熱交換室R5内にて往復流動させ、長い流路を流動させながら熱交換パイプ131と熱交換させるので、洗浄室R3から排出される熱を十分に回収することができる。
【0116】
更に、出口側排気の折り返し部近傍にて入口側排気が吹き込まれることに起因するベンチュリ効果の作用により、出口側排気を、流速を大きく弱めることなく効率よく熱交換させながら長い流路を流動させ、排気させることができる。
【0117】
更に、熱交換室R5の底面から洗浄室R3内の熱を吸収し、吸収した熱を熱交換パイプ131の加熱に寄与させることで、より効果的に熱交換を行うことができる。以上、熱交換器5について説明した。洗浄機1が有する洗浄装置3が備える洗浄水供給系統、蒸気供給系統、及び、水供給系統について、順に説明した。
【0118】
<洗浄装置3の作動>
次いで、上記のように構成される洗浄装置3の作動について説明する。洗浄装置3の作動中に亘って、ポンプ64、第1蒸気電磁弁86、第2蒸気電磁弁89、第1給水電磁弁94、及び、第2給水電磁弁98の作動状態が、図示しない制御装置によって自動的に、又は、作業者による手作業で、適宜調整される。
【0119】
洗浄機1の投入口21(図1等参照)の近傍にいる作業者は、入口側空間R2内にて搬送装置2の作動により搬送経路に沿って前方に移動している複数の保持具50に順次、容器30を保持させていく。
【0120】
これにより、複数の容器30は、それぞれが、上下に起立し、且つ、容器30の開口が前方から左側に向けて角度θ(<90度、図2(b)参照)だけ傾いた向きで容器30の右端部が容器30の左端部より前方に位置する姿勢で、所定の間隔を空けて前後方向に並ぶように、複数の保持具50を利用して保持される。この結果、前後方向に隣接する容器30同士は、互いの一部が前後方向に重なるように配置される(図2(a)参照)。
【0121】
このように配置された複数の容器30は、搬送装置2によって、入口側空間R2から洗浄室R3へと移動していく。洗浄室R3内に移動した複数の容器30は、まず、荒洗浄領域H1(図1参照)に到達し、荒洗浄領域H1を移動する間に亘って、荒洗浄工程によって洗浄される。
【0122】
荒洗浄工程では、高温の蒸気が、複数の容器30の下方に位置する蒸気噴射ノズル83(複数の蒸気噴射口85)から上向きに噴射される(図9(a)参照)。噴射された蒸気は、左右一対の搬送チェーン45の間から、容器30及び隣接する容器30の間の空間に向けて上向きに移動していく。これにより、洗浄室R3が90℃以上の高温環境に維持されると共に、容器30が加熱及び加湿される。
【0123】
更に、荒洗浄工程では、高温(例えば、90℃以上)の洗浄水が、複数の容器30の左側方に位置する第1、第2荒洗浄水噴射ノズル74a,74bから、容器30の開口面に向けて、ポンプ64の吐出圧から減圧部69により減圧された圧力で噴射される(図9(a)参照)。第1、第2荒洗浄水噴射ノズル74a,74bから噴射された洗浄水も、蒸気噴射口85から噴射された蒸気によって加熱される。このように、噴射された蒸気により、洗浄室R3の雰囲気温度および容器30の温度だけでなく、噴射された洗浄水の温度の低下も抑えられる。
【0124】
第1荒洗浄水噴射ノズル74aからは、洗浄水が容器30の開口面の手前側の部分(前側に隣接する容器30と重なっていない部分)に向けて噴射される(図9(c)参照)。一方、第2荒洗浄水噴射ノズル74bからは、洗浄水が容器30の開口面の奥側の部分(前側に隣接する容器30と重なる部分)に向けて噴射される(図9(c)参照)。更に、容器30の移動により、被噴射位置が容器30の奥から手前に向けて順に移動することになる。これらにより、洗浄水が容器30の開口面の全域に行き渡る。更に、第1、第2荒洗浄水噴射ノズル74a,74bから噴射された洗浄水は、容器30の開口面で反射して、前側に隣接する容器30の背面の全域にも行き渡る。この結果、洗浄水が、各容器30の開口面及び背面を含む全面に行き渡り、各容器30に付着している汚れが容器30の全面に渡って洗浄され得る。
【0125】
荒洗浄領域H1の前後方向長さが比較的長いことから(図1参照)、容器30は、荒洗浄領域H1を移動する比較的長い時間に亘って、荒洗浄工程によって洗浄される。荒洗浄工程にて噴射された洗浄水は、容器30の洗浄に供された後、洗浄タンク61に回収され、第1、第2荒洗浄水噴射ノズル74a,74bからの噴射に再び供される。
【0126】
ここで、仮に蒸気の噴射方向と対向する反対方向から洗浄水を噴射すると、洗浄水の噴射領域の先端部しか蒸気と接触できないことになる。一方、洗浄装置3では、蒸気が下方から上方へ噴射され、洗浄水が左方から右方に噴射されることで、洗浄水と蒸気とが全体的に接触して洗浄水を効率良く加熱できる。これにより、噴射後の洗浄水の温度低下が抑えられ、洗浄水の温度を高温に維持したまま効果的に容器30を洗浄することができる。
【0127】
更に、開口面が立てられた容器30の下方から蒸気を噴射するため、噴射された蒸気が容器30の開口面に沿って容器30と容器30の間をスムーズに上方へ流れ、容器30全体をムラ無く加熱することができる。更に、容器30を略垂直に立てているため、容器30の開口面を伏せた状態、または上下方向に傾斜して洗浄する場合より1枚あたりの平面視での容器30の面積が小さくなり、焼き付き等により容器30に強く付着した汚れを省スペースで効率よく洗浄することができる。加えて、保持具50の第1保持部52と第2保持部53との間に蒸気噴射ノズル83を配置することで、左右方向における温度ムラが軽減され、容器30全体を効果的に洗浄することができる。
【0128】
複数の容器30は、荒洗浄領域H1を通過すると、次いで、主洗浄領域H2(図1参照)に到達し、主洗浄領域H2を移動する間に亘って、主洗浄工程によって洗浄される。主洗浄領域H2の前後方向長さは、荒洗浄領域H1の前後方向長さより短いので(図1参照)、容器30が主洗浄工程によって洗浄される時間は、容器30が荒洗浄工程によって洗浄される時間より短い。
【0129】
主洗浄工程では、蒸気が噴射されない一方で、高温(例えば、90℃以上)の洗浄水が、複数の容器30の左側方に位置する第1、第2主洗浄水噴射ノズル76a,76bから、容器30の開口面に向けて、ポンプ64の吐出圧のまま噴射される(図9(b)参照)。即ち、荒洗浄工程よりも高い圧力で、洗浄水が容器30の開口面に向けて噴射される。
【0130】
第1主洗浄水噴射ノズル76aからは、洗浄水が容器30の開口面の手前側の部分(前側に隣接する容器30と重なっていない部分)に向けて噴射される。一方、第2主洗浄水噴射ノズル76bからは、洗浄水が容器30の開口面の奥側の部分(前側に隣接する容器30と重なる部分)に向けて噴射される。これにより、洗浄水が容器30の開口面の全域に行き渡る。更に、第1、第2主洗浄水噴射ノズル76a,76bから噴射された洗浄水は、容器30の開口面で反射して、前側に隣接する容器30の背面の全域にも行き渡る。この結果、洗浄水が、各容器30の開口面及び背面を含む全面に行き渡り、荒洗浄工程にて除去され得なかった各容器30に付着している汚れが、容器30の全面に渡って洗浄され得る。主洗浄工程にて噴射された洗浄水は、容器30の洗浄に供された後、洗浄タンク61に回収され、第1、第2主洗浄水噴射ノズル76a,76bからの噴射に再び供される。
【0131】
このように、荒洗浄工程では、容器30に付着した汚れが蒸気によって加熱及び加湿されながら、主洗浄工程より低圧で打撃力の弱い洗浄水が容器30に噴射される。そして、主洗浄工程より長い時間、高温多湿の環境下で洗浄水に含まれる水分と洗剤とが容器30に供給され、温度と水分と洗剤によって容器30の汚れの湿潤および溶解が進行し、容器30の汚れが落ちやすい状態となる。
【0132】
そして、主洗浄工程では、荒洗浄工程より高圧の洗浄水が打撃力の強い状態で容器30に対して噴射される。荒洗浄工程によって容器30の汚れが落ちやすくなっているため、主洗浄工程では、荒洗浄工程より短時間で容器30の汚れを洗い落すことができる。
【0133】
更に、1つのポンプ64の駆動により、荒洗浄工程には低圧で、主洗浄工程には高圧で、洗浄水が容器30に供給される。主洗浄工程で噴射された洗浄水は、荒洗浄工程で噴射された洗浄水と同じ洗浄タンク61に回収される。それぞれの洗浄工程に対応した異なる圧力の洗浄水を1つのポンプ64で供給できるので、洗浄工程ごとにポンプ64の回転数や吐出圧を調整する必要がなく、簡単な構成で容器30を洗浄することができる。
【0134】
更に、洗浄装置3は、荒洗浄工程及び主洗浄工程において、運転モードとして、低濃度モードと高濃度モードとを、容器30の汚れ度合や汚れの落ち難さ等に応じて切り替えることができるように構成されている。本例では、低濃度モードでは、洗浄水の温度は70℃で、洗浄水の洗剤濃度は0.1~1%に設定される。高濃度モードでは、洗浄水温度は90℃で、洗浄水の洗剤濃度は1~15%に設定される。低濃度モードは、容器30の汚れが比較的少ないときに選択し、高濃度モードは、容器30の汚れが比較的多いときに選択することが好適である。
【0135】
低濃度モード及び高濃度モードの各々で異なる種類の洗剤を用いてもよいし、低濃度モード及び高濃度モードの双方で同じ種類の洗剤を用いてもよい。更に、低濃度モードを更に洗剤濃度が異なる複数のモードに分けて切り替え可能にしてもよいし、高濃度モードを更に洗剤濃度が異なる複数のモードに分けて切り替え可能にしてもよい。
【0136】
複数の容器30は、主洗浄領域H2を通過すると、次いで、仕上げ洗浄領域H3(図1参照)に到達し、仕上げ洗浄領域H3を移動する間に亘って、仕上げ洗浄工程によって洗浄される。
【0137】
仕上げ洗浄工程では、高温(60℃程度)の温水が、容器30の上方に位置する仕上げ洗浄水噴射ノズル97から、容器30の開口面に向けて、下斜め後向きに噴射される(図10(a)及び図10(b)参照)。これにより、主洗浄工程後において容器30の表面に残存している洗浄水等が洗い流されて、洗浄装置3による容器30に対する洗浄作業が完了する。仕上げ洗浄工程にて噴射された温水は、容器30の洗浄に供された後、仕上げ排水口17c(図1参照)を介して洗浄機1の外部に排水される。
【0138】
洗浄作業が完了した容器30は、仕上げ洗浄領域H3を通過した後、搬送装置2によって洗浄室R3から出口側空間R4へと移動し、洗浄機1の出口22から排出される。
【0139】
洗浄室R3から洗浄水や蒸気が漏れ出すことの抑制、及び、洗浄室R3内の温度の維持のため、洗浄室R3の入口側(入口側空間R2と洗浄室R3との境界)には、この境界を開閉する扉28aが設けられている。同様に、洗浄室R3の出口側(洗浄室R3と出口側空間R4の境界)には開閉する扉28bが設けられ、仕上げ洗浄領域H3の入口側(主洗浄領域H2と仕上げ洗浄領域H3の境界)には開閉する扉28cが設けられている。扉28a~28cの一つ又は複数を省略してもよいし、必要に応じて同様の扉を他の箇所に設けてもよい。
【0140】
<洗浄装置3の作用・効果>
【0141】
本実施形態に係る洗浄装置3によれば、容器30は、搬送経路に対して上下に起立した姿勢にて保持されながら、搬送経路に沿って搬送される。このように搬送される容器30に向けて、蒸気噴射ノズル83から蒸気が噴射され、洗浄水噴射ノズル(本例では、洗浄水噴射ノズル74)から洗浄水が噴射される。これにより、容器30の開口面および背面に蒸気を行き渡らせて容器30を加熱するとともに容器30の汚れを湿潤等させながら、容器30に洗浄水を行き渡らせて汚れを洗い落とすことができる。更に、噴射後の洗浄水も蒸気によって加熱されるため、洗浄水の温度が低下することによる洗浄能力の低減も抑制できる。このように、洗浄装置3は、容器30を搬送しながら容器30全体を適正に洗浄可能である。
【0142】
更に、洗浄装置3によれば、容器30が、搬送経路に対して上下に起立し且つ搬送経路の前方から所定角度θだけ側方に傾いた向きに開口する姿勢で保持される。換言すると、容器30は、上下軸に沿って立ち上がり且つ上下軸周りに側方に向けて傾いた状態で保持される。このような姿勢にある容器30の開口部に向けて、搬送経路の側方から洗浄水が噴射される。これにより、容器30の上方等から洗浄水を噴射する場合に比べ、容器30の開口面に効率良く洗浄水を衝突させ、容器30の汚れを強力に落とすことができる。加えて、複数の容器30をそのように傾かせながら規則的に高密度で搬送すれば、搬送方向に直交する幅方向および搬送方向の双方において洗浄装置3を小型化できる。
【0143】
更に、洗浄装置3によれば、第1荒洗浄水噴射ノズル74aで容器30の開口部内の手前側に向けて洗浄水を噴射しつつ、第2荒洗浄水噴射ノズル74bで容器30の開口部内の奥側に向けて洗浄水を噴射する。これにより、搬送経路の側方からの噴射のみを行う場合であっても、容器30の開口面の全体に洗浄水を行き渡らせることができる。その結果、簡単な構成で洗浄装置3の洗浄能力を更に向上できる。
【0144】
更に、洗浄装置3によれば、容器30の下方両端部が保持具52,53に保持される。これにより、保持具52,53の上方から容器30を載せるように、容器30を保持具52,53に保持させることができる。よって、移動している保持具52,53に容器30を保持させる作業が容易になり、洗浄装置3の実際の使用時の作業効率を向上できる。更に、容器30の重量を容器30の下方で支えることで、容器30の姿勢を安定させることができる。加えて、搬送経路の下方から一対の保持具52,53の移動軌跡の間(即ち、容器30が保持されている箇所)に向けて、蒸気が噴射される。これにより、容器30に沿って下方から上方に立ち昇るように蒸気がスムーズに流れることで、容器30の全面に蒸気を確実に行き渡らせるとともに、蒸気を容器30に効果的に作用させ、容器30を加熱しながら汚れを加熱湿潤させることができる。
【0145】
更に、洗浄装置3によれば、搬送経路に沿って複数の容器30が並べて保持され、保持具52,53の所定の保持間隔よりも狭い間隔をあけて設けられた複数の蒸気噴射口85から複数の容器30に向けて蒸気が噴射される。その結果、保持具52,53の位置にかかわらず容器30同士の間に蒸気噴射口85が位置するため、搬送中の容器30に対して常に蒸気が噴射され、洗浄装置3の洗浄能力を向上できる。
【0146】
<洗浄方法の作用・効果>
本実施形態に係る洗浄方法によれば、上下に起立した姿勢にて保持されている容器30に、加熱装置(蒸気噴射ノズル83等)による加熱を施して、洗浄水を噴射する。換言すると、洗浄水自身の温度による加熱に加え、別の熱源(蒸気等)による加熱が、容器30に施される。これにより、容器30の温度を洗浄に適した温度に保ちながら、容器30を洗浄することができる。更に、容器30が立ち上がった状態にあるため、容器30の開口面および背面を含む全面に洗浄水を行き渡らせて容器30の汚れを洗い落としながら、洗浄後の洗浄水を容器30上に留めずに速やかに容器30の下方に流出させられる。よって、洗浄力に優れた洗浄水の供給と、洗浄後の洗浄水の排出と、をスムーズに行うことができる。したがって、容器30全体を適正に洗浄可能である。
【0147】
なお、本例では、容器30の加熱(蒸気噴射)と洗浄(洗浄水噴射)とは、同時に行われている。しかし、加熱と洗浄とは、別々に行われてもよい。更に、加熱装置の熱源として、蒸気に代えて、過熱蒸気、熱水や熱気などの熱流体が用いられてもよいし、電熱ヒータや熱交換パイプなどの輻射熱による熱源が用いられてもよいし、電磁誘導等で容器30自身を発熱させてもよい。
【0148】
更に、本実施形態に係る洗浄方法によれば、容器30への洗浄水の噴射方向(即ち、側方)とは異なる方向(即ち、下方)から容器30への加熱が施される。これにより、加熱および洗浄水の噴射の一方が他方を妨げ難くなり、加熱と洗浄水の噴射との双方が相まった洗浄効果が、より適正に発揮される。
【0149】
本実施形態に係る洗浄方法によれば、容器30に向けて蒸気を噴射するとともに容器30に向けて洗浄水を噴射する第1工程(即ち、荒洗浄)と、容器30に向けて洗浄水を噴射する第2工程(即ち、本洗浄)と、をこの順に行う。これにより、例えば、第1工程にて汚れを湿潤および溶解等させて汚れが落ちやすい状態にしながら大まかな洗浄を行い、第2工程にて汚れを落とす本格的な洗浄を行うことができる。
【0150】
本実施形態に係る洗浄方法によれば、容器30の下方から容器30に向けて蒸気を噴射するとともに、容器30の側方から容器30に向けて洗浄水を噴射するように、荒洗浄を実行した後、容器30の側方から容器30に向けて洗浄水を噴射するように、本洗浄を実行する。これにより、容器30の全面に蒸気を行き渡らせて容器30の汚れを湿潤および溶解等させながら、容器30の上方等から洗浄水を噴射する場合に比べて容器30に効率良く洗浄水を衝突させ、容器30の汚れを強力に落とすことができる。
【0151】
本実施形態に係る洗浄方法によれば、容器30を所定の搬送経路に沿って搬送しながら搬送経路の上流側にて荒洗浄が実行され、搬送経路の下流側にて本洗浄が実行される。これにより、多数の容器30を連続的に洗浄することができる。よって、多数の容器30を効率良く洗浄することができる。
【0152】
本実施形態に係る洗浄方法によれば、荒洗浄は、本洗浄よりも低圧での洗浄水の噴射が本洗浄よりも長時間にわたって行われる。これにより、荒洗浄にて容器30の汚れを十分に湿潤および溶解等させた上で、本洗浄にて高圧の洗浄水で汚れを効率良く洗い落とすことができる。
【0153】
本実施形態に係る洗浄方法によれば、荒洗浄および本洗浄での洗浄後の洗浄水がひとまとめに回収される。回収された洗浄水は、ポンプ64によって昇圧された後、分水器4を経て減圧されて荒洗浄での洗浄に用いられ、昇圧された状態のまま本洗浄での洗浄に用いられる。よって、荒洗浄および本洗浄の各々に用いる洗浄水を別々に独立して加圧する場合に比べ、昇圧のための機器や配管などを合理化でき、洗浄方法を適用する装置等の小型化等を図ることができる。
【0154】
本実施形態に係る洗浄方法によれば、雰囲気温度が90度以上である環境下で、温度が90度以上の洗浄水が容器30に向けて噴射される。これにより、容器30の洗浄能力を更に向上できる。なお、雰囲気温度や洗浄水の水温は、洗浄対象の容器30上の汚れの性質や、洗浄方法が適用される装置の断熱構造などを考慮し、適宜調整されればよい。
【0155】
本実施形態に係る洗浄方法によれば、少なくとも荒洗浄において、洗浄水の温度および洗剤濃度が異なる複数の運転モードを切り替えることができる。これにより、容器30上の汚れの適した運転モードで、荒洗浄での洗浄を行うことができる。更に、本洗浄において、雰囲気温度が90度以上である環境下で、温度が90度以上の洗浄水が容器30に向けて噴射される。これにより、荒洗浄での洗浄を経た容器30に、本洗浄での洗浄をより効率良く行うことができる。
【0156】
<洗浄装置3の他の形態>
荒洗浄水噴射ノズル74、及び、主洗浄水噴射ノズル76の向きはそれぞれ、2方向に設定されているが、容器30の開口面全体に洗浄水を噴射できる限りにおいて、1方向であっても、3方向以上であってもよい。
【0157】
主洗浄工程では、洗浄水が、複数の容器30の左側方に位置する第1、第2主洗浄水噴射ノズル76a,76bのみから、容器30の開口面に向けて噴射される(図9(b)参照)。これに加えて、図13に示すように、洗浄水が、複数の容器30の上方に位置する第3、第4主洗浄水噴射ノズル79a,79bから、容器30の開口面に向けて噴射されるように構成してもよい。
【0158】
図13に示す例では、主洗浄側分水器67において、左右方向に延び且つ前後方向に並ぶように配置された2本の第2主洗浄パイプ78が更に接続されている(図13(b)参照)。各第2主洗浄パイプ78は、左右方向に延び且つ左端が開口し右端が閉塞された円筒状のパイプである。各第2主洗浄パイプ78の左端が主洗浄側分水器67に接続されている。
【0159】
図13(c)に示すように、後側(搬送経路の上流側)の第2主洗浄パイプ78には、左右方向の複数箇所にて、下斜め後向きに開口する第3主洗浄水噴射ノズル79aが設けられ、前側(搬送経路の下流側)の第2主洗浄パイプ78には、左右方向の複数箇所にて、下斜め前向きに開口する第4主洗浄水噴射ノズル79bが設けられている。これにより、洗浄水は、第3主洗浄水噴射ノズル79aからは、主として容器30の開口面に向けて容器30の上方から噴射され、第4主洗浄水噴射ノズル79bからは、主として容器30の背面に向けて容器30の上方から噴射される。
【0160】
洗浄された容器30は、出口側筐体14の出口22から排出されるようになっている。排出された容器30は、例えば、出口22の近傍に設置された回収カゴ等に向けて自重によって滑り込むことで、回収される。これに対し、図14に示すように、出口側空間R4の前側(搬送経路の下流側)に向けて移動機構40を延長し、容器30を回収するための回収領域R8を出口側空間R4に隣接するように設けてもよい。
【0161】
具体的には、図14に示す回収領域R8は、容器30が所定枚数収まる程度の長さだけ下部筐体11を前側(搬送経路の下流側)に延長するとともに、延長された下部筐体11に対応するように、搬送チェーン45及び搬送ガイド板49を延長し、且つ、延長された搬送チェーン45を駆動可能な位置にモータ46、駆動チェーン48及び駆動ギヤ42等を配置するように構成されている。回収領域R8には、出口側空間R4の出口側筐体14のように容器30を覆う筐体は設けられておらず、下部筐体11の上壁17、搬送チェーン45及び保持具50、並びに、保持具50に保持された洗浄後の容器30が、外部に露出するようになっている。なお、後述する容器30の回収作業の容易さの観点から、上方の搬送ガイド板49は回収領域R8内に延長されず、下方の搬送ガイド板49のみが回収領域R8内に延長されている。
【0162】
図14に示す例では、洗浄された容器30は、保持具50に保持されたまま、出口側空間R4を通り抜けるように前側(搬送経路の下流側)に搬送され、回収領域R8に到達する。回収領域R8に到達した容器30は、例えば、作業者に回収されて回収カゴ等に格納される。回収領域R8では、保持具50に保持された容器30が外部に露出しているので、作業者は、容易に容器30を回収することができる。更に、容器30が回収領域R8を移動している間の任意のタイミングで回収すればよいため、作業者は、回収作業と他の作業との優先順位を考慮しながら、最適なタイミングで回収作業を行うことができる。加えて、複数の容器30が回収領域R8内を搬送されるようになっているため、作業者は、一度に複数の容器30を回収することもできる。複数の容器30を一纏めに回収することで、洗浄後の容器30が再び回収領域R8に送られて来るまでの期間中、作業者は、別の作業をすることができる。よって、作業者は、容器30の回収作業および別の作業を含む複数の作業を、容易かつ効率よく行うことができる。
【0163】
このように、入口側空間R2及び回収領域R8の双方において複数の容器30を一纏めに取り扱い可能であることにより、作業者は、洗浄機1への容器30の投入作業および洗浄機1からの容器30の回収作業の双方を効率よく行うことができる。
【0164】
搬送チェーン45の前端部の近傍には、所定の検知範囲内における容器30の有無を検知可能な容器検知センサ45aが設けられている。搬送装置2は、容器検知センサ45aが容器30の存在を検知している期間中、モータ46を止めて容器30の搬送を停止するように構成される。これにより、容器30が搬送チェーン45の前端部にまで搬送されて容器検知センサ45aが容器30の存在(即ち、搬送チェーン45の前端部への接近)を検知したとき、容器30の搬送が一時停止されることで、回収され損ねた容器30が搬送チェーン45の前側部から落下すること等を防ぐことができる。その後、容器30が回収されれば、容器検知センサ45aが容器30の存在を検知しなくなるため、搬送装置2は容器30の搬送を再開することになる。なお、搬送装置2は、容器検知センサ45aが容器30の存在(接近)を検知したとき、容器30の搬送を停止する前に又は停止した後に、音や光などで作業者に容器30の回収を促すように構成されてもよい。
【0165】
更に、出口側筐体14の出口22から漏れ出る蒸気等をより確実に捕捉する観点から、回収領域R8を覆う筐体を回収領域R8に設けてもよい。この場合、入口側空間R2の投入口21と同様、その筐体から容器30を取り出すための回収口を洗浄機1の左側壁に設ければ、投入口21と回収口とが洗浄機1の共通の側面(左側壁)に配置されることになり、投入作業および回収作業を更に効率よく行うことができる。
【0166】
洗浄装置3は、搬送装置2を有し、洗浄室R3内において、搬送装置2によって移動している容器30に対して洗浄が行われる。これに対し、図15に示すように、洗浄装置は、搬送装置を有さず、洗浄室R3内に収納されている(移動しない)容器30に対して洗浄が行われる構造を有していてもよい。
【0167】
以下、説明の便宜上、図15に示すように、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。図15に示す例において、洗浄装置3の構成と同じ又は等価な構成については、洗浄装置3において付された符号と同じ符号が付されている。
【0168】
図15に示す例では、洗浄装置は、全体として、左右方向に長い略直方体状の筐体を有する。筐体の前壁には、容器30を投入するための投入口21(図15(a)参照)が設けられており、更に、投入口21を開閉する操作扉23(図15(b)参照)が設けられている。筐体の前壁には、洗浄装置の各種制御を行うために作業者によって操作される操作パネル29が設けられている。
【0169】
筐体の内部には、洗浄室R3が画成されている。洗浄室R3内では、それぞれの容器30が、容器30の長手方向が左右方向に沿う向きで上下に起立し且つ容器30の開口が前方に向いた状態(より正確には、容器30の開口が前方から僅かに上側に向けて傾斜した状態)で、複数の容器30が、上下3段で前後方向に並ぶように、収納されている。
【0170】
洗浄室R3の下方には、2本の蒸気噴射ノズル83が、前後方向に延び且つ左右方向に間隔を空けて並ぶように、配置されている。これにより、複数の容器30の下方に位置する2本の蒸気噴射ノズル83それぞれに設けられた複数の蒸気噴射口85から、蒸気が、複数の容器30に向けて上向きに噴射されるようになっている。
【0171】
洗浄室R3の左右端部のそれぞれには、4本の洗浄パイプ73が、上下方向に延び且つ前後方向に間隔を空けて並ぶように、配置されている。これにより、複数の容器30の左側方(右側方)に位置する4本の洗浄パイプ73それぞれに設けられた複数の洗浄水噴射ノズル74から、高温(例えば、90℃以上)の洗浄水が、複数の容器30に向けて右向き(左向き)に噴射されるようになっている。
【0172】
洗浄水の噴射圧は、ポンプ64の吐出圧を調整することで調整できるようになっている。噴射された洗浄水は、容器30の洗浄に供された後、洗浄タンク61に回収され、洗浄水噴射ノズル74からの噴射に再び供される。
【0173】
以上の構成を有する図15に示す洗浄装置では、まず、荒洗浄工程が実行される。荒洗浄工程では、高温の蒸気が、複数の容器30の下方に位置する蒸気噴射ノズル83(複数の蒸気噴射口85)から複数の容器30に向けて噴射され、且つ、高温(例えば、90℃以上)の洗浄水が、複数の容器30の左右両側に位置する洗浄水噴射ノズル74から複数の容器30に向けて噴射される。荒洗浄工程は、比較的長い時間に亘って実行される。荒洗浄工程では、洗浄水の噴射圧は、ポンプ64の吐出圧を制御することで、比較的低い値に設定される。この荒洗浄工程による作用・効果は、洗浄装置3における荒洗浄工程による作用・効果と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0174】
荒洗浄工程が終了すると、次いで、主洗浄工程が実行される。主洗浄工程では、蒸気が噴射されない一方で、高温(例えば、90℃以上)の洗浄水が、複数の容器30の左右両側に位置する洗浄水噴射ノズル74から複数の容器30に向けて噴射される。主洗浄工程は、荒洗浄工程よりも短い時間に亘って実行される。主洗浄工程では、洗浄水の噴射圧は、ポンプ64の吐出圧を制御することで、荒洗浄工程での値よりも高い値に設定される。この主洗浄工程による作用・効果は、洗浄装置3における主洗浄工程による作用・効果と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0175】
なお、図15に示す洗浄装置が、洗浄装置3が有する分水器4(図7等参照)を有するように構成されてもよい。この場合、荒洗浄工程では、分水器4の荒洗浄側分水器68に接続された洗浄パイプ73から、洗浄水が、ポンプ64の吐出圧から減圧部69により減圧された圧力で噴射され、主洗浄工程では、分水器4の主洗浄側分水器67に接続された洗浄パイプ73から、洗浄水が、ポンプ64の吐出圧のまま噴射されるように切り替え可能に構成されてもよい。この場合、荒洗浄工程と主洗浄工程という異なる洗浄工程に対し、単一のポンプ64の吐出圧に一定に維持した状態で、異なる洗浄工程に向けて異なる圧の洗浄水を供給することができる。
【0176】
ここで、上述した本発明に係る洗浄方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[9]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
容器(30)を洗浄するための洗浄方法であって、
前記容器(30)を上下に起立した姿勢にて保持しながら、前記容器(30)を加熱装置(83)によって加熱して、前記容器(30)に向けて洗浄水を噴射する、工程を備える、
洗浄方法。
[2]
上記[1]に記載の洗浄方法において、
前記工程は、
前記容器(30)への洗浄水の噴射方向とは異なる方向から前記容器(30)を加熱する、ように実行される、
洗浄方法。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の洗浄方法において、
前記工程は、
前記容器(30)に向けて蒸気を噴射するとともに前記容器(30)に向けて洗浄水を噴射する第1工程と、
前記容器(30)に向けて洗浄水を噴射する第2工程と、をこの順に含む、
洗浄方法。
[4]
上記[3]に記載の洗浄方法において、
前記第1工程は、
前記容器(30)の下方から前記容器(30)に向けて蒸気を噴射するとともに、前記容器(30)の側方から前記容器(30)に向けて洗浄水を噴射する、ように実行され、
前記第2工程は、
前記容器(30)の側方から前記容器(30)に向けて洗浄水を噴射する、ように実行される、
洗浄方法。
[5]
上記[3]又は上記[4]に記載の洗浄方法において、
前記第1工程は、
前記容器(30)を所定の搬送経路に沿って搬送しながら前記搬送経路の上流側にて実行され、
前記第2工程は、
前記容器(30)を前記搬送経路に沿って搬送しながら前記搬送経路の下流側にて実行される、
洗浄方法。
[6]
上記[3]~上記[5]の何れか一つに記載の洗浄方法であって、
前記第1工程は、
前記容器(30)に向けて洗浄水を第1噴射圧にて第1噴射時間だけ噴射する、ように実行され、
前記第2工程は、
前記容器(30)に向けて洗浄水を第2噴射圧にて第2噴射時間だけ噴射する、ように実行され、
前記第1工程は、
前記第1噴射圧が前記第2噴射圧よりも低圧であり、且つ、前記第1噴射時間が前記第2噴射時間よりも長い、ように実行される、
洗浄方法。
[7]
上記[6]に記載の洗浄方法であって、
前記第1工程における噴射後の洗浄水及び前記第2工程における噴射後の洗浄水を回収し、回収した洗浄水を前記第2噴射圧にて噴射可能であるように昇圧する工程、を更に備え、
前記第1工程は、
昇圧後の洗浄水を減圧して前記第1噴射圧にて前記容器(30)に向けて噴射するように実行され、
前記第2工程は、
昇圧後の洗浄水を前記第2噴射圧にて前記容器(30)に向けて噴射するように実行される、
洗浄方法。
[8]
上記[3]~上記[7]の何れか一つに記載の洗浄方法において、
前記第1工程及び前記第2工程のうちの少なくとも前記第1工程は、
前記容器(30)を保持する雰囲気温度が90度以上であるように調整するとともに前記容器(30)に向けて噴射する洗浄水の温度が90度以上であるように調整する、ように実行される、
洗浄方法。
[9]
上記[8]に記載の洗浄方法において、
前記第1工程及び前記第2工程のうちの少なくとも前記第1工程は、
第1温度且つ洗剤濃度が第1濃度の洗浄水を噴射する第1運転モードと、前記第1温度よりも高温の第2温度且つ洗剤濃度が前記第1濃度よりも高濃度の第2濃度の洗浄水を噴射する第2運転モードと、を切り替えて実行することが可能であり、
前記第2運転モードにおいて、前記容器(30)を保持する雰囲気温度が90度以上であるように調整するとともに前記容器(30)に向けて噴射する洗浄水の温度が90度以上であるように調整する、ように実行される、
洗浄方法。
【符号の説明】
【0177】
30 容器
83 蒸気噴射ノズル(加熱装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15