(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】プローブ、プローブヘッドおよびプローブカード
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20240723BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240723BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R31/26 J
H01L21/66 B
(21)【出願番号】P 2020207564
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】成田 聡
(72)【発明者】
【氏名】田澤 快
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-007700(JP,A)
【文献】特表2018-509638(JP,A)
【文献】特開2018-179721(JP,A)
【文献】特開昭58-002755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
G01R 31/26
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体に接触するプローブであって、
第1ブリッジと、
第2ブリッジと、
前記第1ブリッジと一方の端部が接合
され、前記第2ブリッジと他方の端部が接合
されている第1バネ部と、
前記第1ブリッジと一方の端部が接合
され、前記第2ブリッジと他方の端部が接合
され、前記第1バネ部に沿って延伸する第2バネ部と
を備え、
前記第1ブリッジと前記第2ブリッジの間で、前記第1バネ部と前記第2バネ部は相互に離間して配置され、
前記第1バネ部と前記第2バネ部とは、
プローブの軸方向に垂直な断面の形状、前記第1ブリッジとの接合部と前記第2ブリッジとの接合部の間の長さである自由長の長さ、材料のヤング率の少なくともいずれかが異なることにより、前記軸方向にかかる応力に起因する撓み量が異なる
ことを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記第1バネ部の材料は前記第2バネ部の材料よりも耐熱性が高く、且つ前記第2バネ部の材料は前記第1バネ部の材料より電気抵抗が低いことを特徴とする請求項
1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記第1バネ部
の材料は、塑性加工法により製造された材料
であることを特徴とする請求項
2に記載のプローブ。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のプローブと、
前記プローブが連続的にそれぞれを貫通する第1ガイド板および第2ガイド板と
を備えるプローブヘッドであって、
前記プローブヘッドが、
前記第1ガイド板と前記第2ガイド板の間で湾曲した状態の前記プローブを保持する
ことを特徴とするプローブヘッド。
【請求項5】
前記第1バネ部と前記第2バネ部が前記プローブの湾曲する方向に沿って順に配置された状態で前記プローブを保持することを特徴とする請求項
4に記載のプローブヘッド。
【請求項6】
前記第1ガイド板と前記第2ガイド板の間で前記プローブが湾曲するように、前記第2ガイド板に対して前記第1ガイド板が
前記第2ガイド板の主面の面法線方向から見て前記主面と平行にずれてスライドするように構成され、
前記第1バネ部は前記第2バネ部よりも前記撓み量が小さく、
前記第1バネ部と前記第2バネ部が、前記第2ガイド板に対して前記第1ガイド板がスライドする方向に沿って順に配置されている
ことを特徴とする請求項
4に記載のプローブヘッド。
【請求項7】
請求項5乃至
6のいずれか1項に記載のプローブヘッドと、
前記第2ブリッジと電気的に接続する電極端子を配置した配線基板と
を備えることを特徴とするプローブカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的特性の測定に使用するプローブ、プローブヘッドおよびプローブカードに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路などの被測定体について、ウェハから被測定体を分離しない状態で電気的特性測定するために、被測定体に接触させるプローブが用いられている。被測定体の測定では、プローブの一方の端部を被測定体に接触させ、プローブの他方の端部をプリント基板などに配置された電極端子(以下において「ランド」とも称する。)に接触させる。ランドは、ICテスタなどの測定装置と接続する。プローブを介して、被測定体と測定装置の間で電気信号が伝搬する。被測定体およびランドとプローブとの電気的な接続を確保するために、プローブを被測定体に押し付けるようにオーバードライブ(OD)を印加したり、プローブをランドに押し付けるようにプリロードを印加したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-24689号公報
【文献】特表2010-513870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ODやプリロードによってプローブが湾曲し、隣接するプローブ同士が接触するという問題があった。
【0005】
上記問題点に鑑み、本発明は、プローブ同士の接触を抑制できるプローブ、プローブヘッドおよびプローブカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、第1ブリッジに一方の端部が接合され、第2ブリッジに他方の端部が接合された第1バネ部と、第1ブリッジに一方の端部が接合され、第2ブリッジに他方の端部が接合され、第1バネ部に沿って延伸する第2バネ部を備えるプローブが提供される。第1ブリッジと第2ブリッジの間で、第1バネ部と第2バネ部は相互に離間して配置されている。第1バネ部と第2バネ部では、第1バネ部と第2バネ部の形状および材質を設定することにより、プローブの軸方向にかかる応力に起因する撓み量が異なる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プローブ同士の接触を抑制できるプローブ、プローブヘッドおよびプローブカードを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るプローブの構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るプローブヘッドおよびプローブカードの構成を示す模式図である。
【
図3A】オフセット配置を説明するための模式図である(その1)。
【
図3B】オフセット配置を説明するための模式図である(その2)。
【
図4】第1バネ部と第2バネ部の撓み量の差を示す模式図である。
【
図5】第1バネ部と第2バネ部の厚みの差を示す模式図である。
【
図6】第1バネ部と第2バネ部の幅の差を示す模式図である。
【
図7】第1バネ部と第2バネ部の自由長の差を示す模式図である。
【
図8A】本発明の実施形態に係るプローブのパラメータの設定による効果の例を説明するための模式図である(その1)。
【
図8B】本発明の実施形態に係るプローブのパラメータの設定による効果の例を説明するための模式図である(その2)。
【
図9】本発明の実施形態に係るプローブによる効果の例を説明するための模式図である。
【
図10A】プローブヘッドのプローブを交換する工程を説明するための模式図である(その1)。
【
図10B】プローブヘッドのプローブを交換する工程を説明するための模式図である(その2)。
【
図11A】プローブの交換における障害の例を説明するための模式図である。
【
図11B】プローブの交換における障害の他の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るプローブ10の構成を示す。プローブ10は、第1ブリッジ11、第2ブリッジ12、第1バネ部21および第2バネ部22を備える。第1バネ部21の一方の端部は、第1ブリッジ11と接合部31Aで接合する。第1バネ部21の他方の端部は、第2ブリッジ12と接合部32Aで接合する。第2バネ部22の一方の端部は、第1ブリッジ11と接合部31Bで接合する。第2バネ部22の他方の端部は、第2ブリッジ12と接合部32Bで接合する。第1バネ部21および第2バネ部22は細長い形状であり、プローブ10は全体として針状である。詳細を後述するが、第1バネ部21と第2バネ部22では、プローブ10の軸方向にかかる応力に起因する撓み量(以下、単に「撓み量」という。)が異なる。
【0011】
上記のように、第1ブリッジ11と第2ブリッジ12のそれぞれに、第1バネ部21と第2バネ部22の端部が結合する。そして、第2バネ部22は、第1バネ部21に沿って延伸する。ただし、第1バネ部21と第2バネ部22は相互に離間している。この結合を、以下において「ブリッジ結合」とも称する。ブリッジ結合により、第1ブリッジ11と第2ブリッジ12の間で、第1バネ部21と第2バネ部22は隣接して配置されている。
【0012】
以下において、第1ブリッジ11と第2ブリッジ12を総称して、「ブリッジ」と称する。また、第1バネ部21と第2バネ部22を総称して、「バネ部」と称する。また、バネ部とブリッジ結合する一方の端部に対向するブリッジの他方の端部を、ブリッジの「先端」とも称する。
図1に示すように、プローブ10において、第1ブリッジ11の先端をプローブ10の「先端部101」とする。第2ブリッジ12の先端を、プローブ10の「基端部102」とする。
【0013】
図2に、プローブ10を有するプローブヘッド60の構成例、およびプローブヘッド60を有するプローブカード100の構成例を示す。プローブカード100は、被測定体200の電気的特性の測定に使用される。
【0014】
図2に示したプローブヘッド60は、第1ガイド板51、第2ガイド板52および中間ガイド板53を有する。プローブ10は、プローブ10の軸方向(以下、単に「軸方向」という。)に沿って配置された第1ガイド板51、中間ガイド板53および第2ガイド板52を、連続的に貫通する。以下において、第1ガイド板51、第2ガイド板52および中間ガイド板53を「ガイド板」と総称する。
【0015】
なお、
図2では3枚のガイド板を有するプローブヘッド60を例示したが、プローブヘッド60のガイド板の枚数が4枚以上であってもよい。例えば、プローブヘッド60が、第1ガイド板51と第2ガイド板52の間に複数の中間ガイド板を配置した構造であってもよい。或いは、プローブヘッド60の有するガイド板が、第1ガイド板51と第2ガイド板52の2枚であってもよい。
【0016】
図2では図示を省略したが、ガイド板にガイド穴がそれぞれ形成されている。プローブヘッド60は、ガイド板に設けたガイド穴に貫通した状態でプローブ10を保持する。ガイド板の主面に形成されたガイド穴の開口部の位置により、プローブ10の位置決めがなされる。
【0017】
具体的には、第1ガイド板51を、プローブ10の先端部101に近い部分が貫通する。そして、第2ガイド板52を、プローブ10の基端部102に近い部分が貫通する。プローブヘッド60は、第1ガイド板51と第2ガイド板52の間に中空領域600を構成するために、第1ガイド板51の外縁領域と第2ガイド板52の外縁領域との間に配置したスペーサ55を有する。中空領域600の第1ガイド板51に近い領域に、中間ガイド板53は配置されている。
【0018】
同一のプローブ10が貫通するガイド穴の位置は、ガイド板の主面の面法線方向からみて(以下、「平面視」という)、第2ガイド板52のガイド穴に対して、第1ガイド板51および中間ガイド板53のガイド穴が、主面と平行にずれている。このガイド穴の配置を、以下において「オフセット配置」という。第1ガイド板51と中間ガイド板53のガイド穴の位置は、平面視で略一致している。
図2に示した例では、第2ガイド板52のガイド穴に対して、中間ガイド板53および第1ガイド板51のガイド穴が、紙面の右側にずらして配置されている。オフセット配置により、第2ガイド板52と中間ガイド板53の間の中空領域600において、プローブ10は弾性変形によって湾曲する。
【0019】
オフセット配置により第1ガイド板51と第2ガイド板52の間でプローブ10が湾曲するように、例えば、第2ガイド板52に対して第1ガイド板51が平面視で平行にスライドするように、プローブヘッド60を構成してもよい。そして、第1バネ部21と第2バネ部22を、第2ガイド板52に対して第1ガイド板51がスライドする方向に沿って順に配置する。このとき、第1バネ部21の撓み量を第2バネ部22の撓み量よりも小さくしたり大きくしたりすることにより、プローブ10が湾曲したときの第1バネ部21と第2バネ部22の間隔を調整できる。
【0020】
このように、プローブヘッド60は、第1ガイド板51と第2ガイド板52の間で湾曲した状態のプローブ10を保持する。プローブヘッド60では、プローブ10の湾曲する方向に沿って第1バネ部21と第2バネ部22は配置されている。
【0021】
プローブカード100は、プローブヘッド60と配線基板70を備える。プローブヘッド60の第2ガイド板52の上面に露出するプローブ10の基端部102が、プローブヘッド60に対向する配線基板70の下面に配置された電極端子(ランド71)と接続する。ランド71は、ICテスタなどの測定装置(図示略)と電気的に接続する。
【0022】
被測定体200の測定時に、プローブヘッド60の第1ガイド板51の下面に露出したプローブ10の先端部101が、被測定体200の測定用パッド(図示略)と接触する。
図2は、プローブ10が被測定体200に接触していない状態を示している。プローブカード100は垂直動作式プローブカードであり、例えば被測定体200を搭載したチャック80が上昇して、プローブ10の先端部101が被測定体200に接触する。そして、プローブ10および配線基板70を介して、被測定体200と測定装置との間で電気信号が伝搬する。例えば、プローブ10を介して、測定装置によって被測定体200に所定の電圧や電流が印加される。そして、被測定体200から出力される信号がプローブ10を介して測定装置に送られ、被測定体200の特性が測定される。
【0023】
プローブ10の先端部101が被測定体200と接触すると、プローブ10の軸方向に沿った応力がプローブ10に加わる。このとき、プローブカード100では、オフセット配置により、中空領域600においてプローブ10が座屈する。すなわち、第1ガイド板51と第2ガイド板52の間で、撓み変形によりプローブ10が更に大きく湾曲する。これにより、プローブ10と被測定体200を安定した圧力で接触させることができる。このように、プローブカード100によれば、被測定体200の電気的特性を安定して測定することができる。被測定体200の電気的特性を測定した後、被測定体200を搭載したチャック80が下降することにより、プローブ10と被測定体200とは非接触状態になる。
【0024】
ブリッジの材料には、例えばニッケル(Ni)などを使用してもよい。なお、先端部101や基端部102を、ブリッジの先端を除いた胴体部と異なる材料にしてもよい。例えば、ブリッジの胴体部の材料をNiにし、先端部101や基端部102の材料をロジウム(Rh)にしてもよい。第1バネ部21や第2バネ部の材料には、例えばホウ化ニッケル(NiB)を使用してもよい。プローブヘッド60の材料には、セラミック材を使用してもよい。
【0025】
オフセット配置を採用するプローブヘッド60では、
図3Aに示すように、プローブヘッド60を構成するすべてのガイド板のガイド穴の位置を平面視で一致させた状態で、ガイド穴にプローブ10を通過させる。その後、
図3Bに示すように、一部のガイド板(例えば、第1ガイド板51および中間ガイド板53)を図面の左右方向にスライドさせてプローブ10を湾曲させる。
【0026】
例えば、第2ガイド板52と中間ガイド板53の間隔が1.01mmであるプローブヘッド60において、第1ガイド板51および中間ガイド板53を、第2ガイド板52に対して0.3mm程度スライドさせる。
【0027】
ところで、オフセット配置を採用する一般的なプローブヘッドでは、被測定体200の測定時にプローブが座屈して、プローブ同士の間隔が狭くなる。例えば、被測定体200の測定時に、被測定体200に接触するプローブの先端部が0.08mm程度上昇し、プローブが座屈する。このとき、座屈したプローブ同士が接触して、電気的短絡が生じることや、被測定体200について所望の動作を得られないことなどが考えられる。
【0028】
これに対し、プローブ10では、被測定体200の測定時における第1バネ部21と第2バネ部22の撓み量が異なる。これにより、プローブヘッド60に搭載したプローブ10の間隔などを自在に調整できる。これにより、座屈したプローブ同士の接触を抑制することができる。
【0029】
例えば、プローブ10の湾曲する方向に沿って第1バネ部21と第2バネ部22の順に配置したプローブ10について検討する。このプローブ10は、湾曲する方向の外側が第2バネ部22である。第2バネ部22より第1バネ部21の撓み量を大きくすることにより、
図4に示すように、被測定体200の測定時に、第1バネ部21と第2バネ部22の撓み量が同じ場合よりも、第1バネ部21と第2バネ部22の間隔が狭くなる。このため、隣接するプローブ10同士の間隔が広くなる。したがって、プローブ10同士の接触を抑制できる。
【0030】
プローブ10によれば、被測定体200の測定時における第1バネ部21と第2バネ部22の間隔を任意に設定できる。
【0031】
第1バネ部21と第2バネ部22の撓み量を異なるようにすることは、第1バネ部21と第2バネ部22について形状や材質などの種々のパラメータを設定することにより可能である。例えば、第1バネ部21と第2バネ部22の軸方向に垂直な断面の形状を異なるようにすることで、第1バネ部21と第2バネ部22の撓み量の差を設定できる。或いは、第1バネ部21と第2バネ部22とで自由長の長さが異なるようにしてもよい。ここで、「自由長」は、ブリッジとバネ部の接合部の間のバネ部の長さである。また、第1バネ部21と第2バネ部22とでヤング率が異なる材料を使用してもよい。
【0032】
第1バネ部21と第2バネ部22の軸方向に垂直な断面の形状が異なる例を、
図5と
図6に示した。
図5は、第1バネ部21の厚みD1を第2バネ部22の厚みD2よりも厚く設定した例である。ここで、バネ部の「厚み」は、プローブ10の湾曲方向のバネ部の厚さである。
【0033】
図6は、第1バネ部21の幅W1を第2バネ部22の幅W2よりも広く設定した例である。バネ部の「幅」は、バネ部の湾曲方向に垂直な方向に沿った長さである。例えば、先端部101の先端から基端部102の先端までの全長が2mm程度、第1バネ部21と第2バネ部22の厚みが0.01mmであるプローブ10について、第1バネ部21の幅W1を0.06mm、第2バネ部22の幅W2を0.04mmとする。
【0034】
図7は、第2バネ部22の自由長L2を第1バネ部21の自由長L1よりも長く設定した例である。
【0035】
上記のようにバネ部のパラメータを設定することにより、第1バネ部21と第2バネ部22の撓み量を調整することができる。
【0036】
また、以下に説明するように、第1バネ部21と第2バネ部22のパラメータの設定により、プローブ10やプローブヘッド60の損傷を抑制することができる。
【0037】
オフセット配置を採用したプローブヘッドでは、プローブが被測定体と接触したときに、プローブは、湾曲しながらガイド板のガイド穴の内部を摺動する。このとき、ガイド板のガイド穴とプローブが擦れることにより発生する粉塵によって、回路で電気的短絡が発生する可能性がある。また、ガイド穴と擦れてプローブ10が損傷する可能性がある。
【0038】
これに対し、
図8Aに示すように、第1ガイド板51をスライドさせる方向(矢印S)に沿って第2バネ部22と第1バネ部21を配置したプローブ10について、第1バネ部21の厚みD1を第2バネ部22の厚みD2よりも厚くする。このとき、
図8Bに示すオフセット配置により、プローブ10の湾曲に起因して、図面の右側から左側に向かって、第1バネ部21に応力F1が発生する。一方、第1バネ部21と第2バネ部22の厚みの差に起因して、図面の左側から右側に向かって、第1バネ部21に引っ張り応力F2が発生する。
【0039】
このため、プローブ10が被測定体と接触して第1ブリッジ11が図面の上下方向に移動しても、引っ張り応力F2によって、第1バネ部21が左側に湾曲することが抑制される。その結果、ガイド板のガイド穴とプローブ10との擦れによるプローブ10やガイド板の摩耗を防ぐことができる。
【0040】
また、第2バネ部22と第2バネ部22よりも撓み量が小さい第1バネ部21を、第2ガイド板52に対して第1ガイド板51のスライドする方向に沿って順に配置してもよい。これにより、プローブ10と被測定体が接触したときに、
図9に示すように、第1バネ部21に矢印方向の力が加わる。このため、破線で囲んだ領域において、第1バネ部21と第1ガイド板51のガイド穴の内壁面との距離が広がる。その結果、プローブ10と第1ガイド板51との擦れを抑制することができる。
【0041】
ところで、Ni基合金などの磁性めっき材を使用するプローブは、磁気により特性の影響を受ける被測定体の測定に使用することができない。これに対し、プローブ10は、非磁性体材料を使用して構成することができる。このため、例えば磁気抵抗メモリなどの磁気による影響を受ける被測定体の測定に、プローブ10を好適に使用することができる。
【0042】
<変形例>
第1バネ部21の材料と第2バネ部22の材料に、異なる材料を使用してもよい。例えば、第1バネ部21の材料に第2バネ部22の材料よりも耐熱性が高い材料を使用し、且つ、第2バネ部22の材料に第1バネ部21の材料より電気抵抗が低い材料を使用する。これにより、以下のような効果を得ることができる。
【0043】
被測定体200の動作温度を保証するために、高温環境下で被測定体200を測定する。このため、電気抵抗が低く、かつ高温環境下で安定して被測定体と接触するプローブが必要とされている。しかし、高温環境においても塑性変形点(降下点)が下がりにくく、且つ電気抵抗が低い材料は、塑性加工法により製造した材料にも、メッキ加工法により製造した材料にも、単独では見出されていない。このため、高い耐熱性と低い電気抵抗という特性を有するプローブを実現することは困難である。その結果、高温環境下での測定におけるプローブについて、十分な耐久性を確保できていなかった。
【0044】
これに対し、高温による形状や特性の変化が抑制された高耐熱性の材料を第1バネ部21に使用することにより、高温環境下での測定におけるプローブ10の耐久性を向上することができる。
【0045】
例えば、第1バネ部21の材料は、耐食性や耐酸化性の高い第1の金属材料と、第1バネ部21の基地をオーステナイトにするための第2の金属材料と、耐熱性の高い第3の金属材料を含む合金であってもよい。第1の金属材料は、例えばクロム(Cr)であってもよい。第2の金属材料は、ニッケル(Ni)やコバルト(Co)であってもよい。第3の金属材料は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)のいずれかであってもよい。例えば、第1バネ部21の材料は、インコネル、ハステロイ、インバー、モネルを含む材料群から選択されるいずれかの材料であってもよい。
【0046】
ところで、上記の高耐熱性の材料を用いた第1バネ部21の電気抵抗は高い。このため、第2バネ部22に、第1バネ部21の材料よりも耐熱性は低いが、電気抵抗が第1バネ部21の材料よりも低い材料を使用する。これにより、プローブ10の全体の電気抵抗を低減することができる。例えば、第2バネ部22の材料は、金、銀、銅、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、Ni基合金、鉛(Pd)基合金を含む材料群から選択されるいずれかの材料であってもよい。
【0047】
第1バネ部21に高耐熱部材を使用することにより、高温環境下でのプローブ10の耐久性が向上する。そして、第2バネ部22に低電気抵抗材を使用することにより、プローブ10の良好な電気的特性が実現される。このように、プローブ10によれば、高温環境下での測定における耐久性を向上し、且つ電気抵抗を低減したプローブ10、プローブヘッド60およびプローブカード100を実現できる。
【0048】
なお、オフセット配置を採用するプローブヘッドでは、高温環境下での測定の後に、湾曲した形状のままプローブが直線状に戻らない現象(以下、「高温クリープ変形」とも称する。)が生じる可能性がある。高温クリープ変形に起因して、メンテンナスのためにプローブヘッドのプローブを交換する場合などに、障害が発生する場合がある。その障害の例を以下に説明する。
【0049】
プローブ10の交換時には、プローブヘッド60を構成するすべてのガイド板のガイド穴の位置を平面視で一致させた状態で、交換対象のプローブ10をプローブヘッド60から引き抜く。例えば、
図10Aに示すように、交換対象のプローブ10を第2ガイド板52の側から引き抜く。そして、交換したプローブ10に換えて、
図10Bに示すように、新たなプローブ10をプローブヘッド60のガイド板のガイド穴に挿入する。その後、
図3Bに示したように、一部のガイド板をスライドさせてプローブ10を湾曲させる。
【0050】
しかし、プローブ10が高温クリープ変形していると、プローブヘッド60でのプローブ10の交換などにおいて障害が生じる。例えば、交換対象のプローブ10をプローブヘッド60から引き抜く際に、交換対象のプローブ10に隣接するプローブ10が高温クリープ変形していると、
図11Aに示すように、交換対象のプローブ10が周囲のプローブ10と接触する。また、
図11Bに示すように、新たにプローブヘッド60に装着するプローブ10が、高温クリープ変形している周囲のプローブ10と接触する。このように、プローブ10が高温クリープ変形していることにより、種々の問題が生じる。
【0051】
これに対し、第1バネ部21に高耐熱部材を使用することにより、プローブ10の高温クリープ変形が抑制される。したがって、プローブ10によれば、高温クリープ変形に起因する障害の発生を防止することができる。
【0052】
第1バネ部21は、塑性加工法により形成してもよい。例えば、高耐熱性の材料からなるウェハからエッチング法などにより第1バネ部21を製造する。そして、例えばメッキ加工法により第1バネ部21にブリッジを結合する。更に、メッキ加工法により、ブリッジに第2バネ部22を接合する。
【0053】
なお、特許文献1には、プローブ本体の材料とプローブ本体を覆う放熱膜の材料に異なる種類の金属を使用するプローブが開示されている。特許文献1に記載のプローブは2種類の金属を使用しているが、機械的強度などの性質が異なる金属を密着させた構成である。このため、プローブのバネ特性などは、2種類の金属の特性を合成したものであり、材料の金属の本来の特性を利用できない。
【0054】
これに対し、実施形態に係るプローブ10は、第1バネ部21と第2バネ部22とが、相互に離間して配置されている。このため、第1バネ部21に使用する材料の特性および第2バネ部22に使用する材料の特性を、それぞれ損なうことなく利用できる。変形例に係るプローブ10によれば、高温環境下での測定における耐久性を向上することができる。
【0055】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0056】
例えば、上記では、プローブ10は、第1ブリッジ11と第2ブリッジ12の間に第1バネ部21と第2バネ部22を配置した構成である。しかし、第1ブリッジ11と第2ブリッジ12の間に、第1バネ部21および第2バネ部22と離間して更に他のバネ部を配置してもよい。
【0057】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0058】
10…プローブ
11…第1ブリッジ
12…第2ブリッジ
21…第1バネ部
22…第2バネ部
51…第1ガイド板
52…第2ガイド板
53…中間ガイド板
60…プローブヘッド
70…配線基板
100…プローブカード