(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】樹脂製パイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/46 20060101AFI20240723BHJP
B29C 45/28 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B29C45/46
B29C45/28
(21)【出願番号】P 2020215675
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸 淳史
(72)【発明者】
【氏名】三好 裕也
(72)【発明者】
【氏名】吉木 敦美
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-096105(JP,A)
【文献】特開2013-022753(JP,A)
【文献】特開平06-155509(JP,A)
【文献】特開平02-087880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/46
B29C 45/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ本体(2)と、該パイプ本体(2)の長手方向中間部から分岐する分岐管部(3)とが一体成形された樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記樹脂製パイプ(1)を成形する成形型(11)の内部に、前記パイプ本体(2)の一端部に対応する部分から前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分へ向けて溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、
前記樹脂製パイプ(1)を成形する成形型(11)の内部に、前記分岐管部(3)の側面または基端部に対応する部分から溶融樹脂を射出し、当該溶融樹脂を前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)に対応する部分へ向けて流動させる第2工程とを備え、
前記ガスを前記成形型(11)の内部における前記分岐管部(3)に対応する部分へ向けても流入させながら、前記第1工程で流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型(11)の内部で合流させ、前記ガスの圧力によって前記パイプ本体(2)の中空部及び前記分岐管部(3)の中空部を形成するとともに、溶融樹脂を、前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分に連通した捨てキャビティ(15a)まで流動させて余分な溶融樹脂を前記捨てキャビティ(15a)の内部で固化させることを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製パイプの製造方法において、
前記第2工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、前記第1工程の溶融樹脂の射出を開始することを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂製パイプの製造方法において、
前記第2工程では、前記成形型(11)の内部における前記分岐管部(3)の基端部にあるリブ(4)に対応する部分に溶融樹脂を射出することを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【請求項4】
パイプ本体(2)と、該パイプ本体(2)の長手方向中間部から分岐する分岐管部(3)と、該分岐管部(3)から突出するフランジ部(5)とが一体成形された樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記樹脂製パイプ(1)を成形する成形型(11)の内部に、前記パイプ本体(2)の一端部に対応する部分から前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分へ向けて溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、
前記樹脂製パイプ(1)を成形する成形型(11)の内部に、前記フランジ部(5)に対応する部分から溶融樹脂を射出し、当該溶融樹脂を前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)に対応する部分へ向けて流動させる第2工程とを備え、
前記ガスを前記成形型(11)の内部における前記分岐管部(3)に対応する部分へ向けても流入させながら、前記第1工程で流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型(11)の内部で合流させ、前記ガスの圧力によって前記パイプ本体(2)の中空部及び前記分岐管部(3)の中空部を形成するとともに、溶融樹脂を、前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分に連通した捨てキャビティ(15a)まで流動させて余分な溶融樹脂を前記捨てキャビティ(15a)の内部で固化させることを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂製パイプの製造方法において、
前記第2工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、前記第1工程の溶融樹脂の射出を開始することを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の樹脂製パイプの製造方法において、
前記第2工程では、前記成形型(11)の内部における前記フランジ部(5)の先端に対応する部分に溶融樹脂を射出することを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【請求項7】
パイプ本体(2)と、該パイプ本体(2)の長手方向中間部から分岐する分岐管部(3)とが一体成形された樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記樹脂製パイプ(1)を成形する成形型(11)の内部に、前記パイプ本体(2)の一端部に対応する部分から前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分へ向けて溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、
前記樹脂製パイプ(1)を成形する成形型(11)の内部に、前記分岐管部(3)の長手方向中間部に対応する部分からバルブゲート(30)を開いて溶融樹脂を所定量射出した後、当該溶融樹脂を前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)に対応する部分へ向けて流動させるとともに、前記バルブゲート(30)を閉じる第2工程とを備え、
前記ガスを前記成形型(11)の内部における前記分岐管部(3)に対応する部分へ向けても流入させながら、前記第1工程で流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型(11)の内部で合流させ、前記ガスの圧力によって前記パイプ本体(2)の中空部及び前記分岐管部(3)の中空部を形成するとともに、溶融樹脂を、前記成形型(11)の内部における前記パイプ本体(2)の他端部に対応する部分に連通した捨てキャビティ(15a)まで流動させて余分な溶融樹脂を前記捨てキャビティ(15a)の内部で固化させることを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂製パイプの製造方法において、
前記第2工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、前記第1工程の溶融樹脂の射出を開始することを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融状態の樹脂材を用いてパイプを製造する樹脂製パイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂製パイプは例えば自動車の各種配管部材として広く使用されており、直管形状のものや複雑に湾曲した形状のものなどがある。この種の樹脂製パイプの製造方法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、溶融状態の樹脂材を、一端にフローティングコアを備えた成形型の内部に射出した後、ガスを圧送してフローティングコアを排出側に移動させて樹脂を中空状に成形するとともに、成形型の成形面に押し付けて固化させる方法がある。特許文献1では、樹脂製パイプが分岐管部を備えている。この分岐管部は機械加工によって形成され、樹脂製パイプの内部に連通している。
【0003】
また、特許文献2には、溶融状態の樹脂材を成形型の内部に射出した後、成形型のキャビティ内に配置されたスライド型があって、該スライド型にはコア部が設けられておりスライド型がコア部と共にキャビティの軸方向に沿ってコア部がスライドすることにより樹脂を中空状に成形するとともに、成形型の成形面に押し付けて固化させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6068756号公報
【文献】特開2002-178361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、フローティングコアを設け、当該フローティングコアをガス圧によって型内を移動させる構造が必要になるので、構造が複雑化する。また、特許文献2では、スライド型が設けられるとともに、そのスライド型にコア部が設けられており、スライド型がコア部と共にキャビティの軸方向に沿ってスライドさせる構造が必要になるので、構造が複雑化する。つまり、特許文献1、2のような成形装置によって樹脂製パイプを成形しようとすると、装置の構造が複雑化するという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1のフローティングコアや特許文献2のスライド型及びコア部を省略することが考えられるが、そうすると樹脂の流れのコントロールが問題になる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シンプルな装置を用いながら、狙い通りの樹脂製パイプを成形できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の開示は、パイプ本体と、該パイプ本体の長手方向中間部から分岐する分岐管部とが一体成形された樹脂製パイプの製造方法を前提とする。そして、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記分岐管部の側面または基端部に対応する部分から溶融樹脂を射出し、当該溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体に対応する部分へ向けて流動させる第2工程とを備え、前記ガスを前記成形型の内部における前記分岐管部に対応する部分へ向けても流入させながら、前記第1工程で流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型の内部で合流させ、前記ガスの圧力によって前記パイプ本体の中空部及び前記分岐管部の中空部を形成するとともに、溶融樹脂を、前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分に連通した捨てキャビティまで流動させて余分な溶融樹脂を前記捨てキャビティの内部で固化させるものである。
【0009】
この構成によれば、第1工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂は、パイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動する。また、パイプ本体の一端部に対応する部分からガスが圧送されるので、ガスも成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動する。一方、第2工程で成形型の内部における分岐管部の側面または基端部に対応する部分に射出された溶融樹脂は、成形型の内部におけるパイプ本体に対応する部分へ向けて流動し、第1工程で射出された溶融樹脂と合流する。第1工程で圧送されたガスは、成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流れ、パイプ本体の中空部及び分岐管部の中空部が形成される。さらに、ガスの圧力によって溶融樹脂が成形型の捨てキャビティまで流動して固化する。これにより、フローティングコアやライド型及びコア部等を設けることなく、ガスの圧力によって狙い通りの樹脂製パイプを成形できる。
【0010】
第2の開示では、前記第2工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、前記第1工程の溶融樹脂の射出を開始するので、第2工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂を十分に流動させてから、第1工程で射出された溶融樹脂に合流させることができる。
【0011】
第3の開示では、前記第2工程では、前記成形型の内部における前記分岐管部の基端部にあるリブに対応する部分に溶融樹脂を射出する。
【0012】
この構成によれば、リブを分岐管部と一体成形することができる。この場合に、リブは分岐管部から突出しているものなので、第2工程で所定量の溶融樹脂を射出した後、リブの近傍に存在している溶融樹脂は早期に固化し始める。これにより、ガス圧による溶融樹脂の逆流が抑制され、樹脂製パイプの成形精度が向上する。
【0013】
第4の開示では、パイプ本体と、該パイプ本体の長手方向中間部から分岐する分岐管部と、該分岐管部から突出するフランジ部とが一体成形された樹脂製パイプの製造方法を前提とする。そして、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記フランジ部に対応する部分から溶融樹脂を射出し、当該溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体に対応する部分へ向けて流動させる第2工程とを備え、前記ガスを前記成形型の内部における前記分岐管部に対応する部分へ向けても流入させながら、前記第1工程で流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型の内部で合流させ、前記ガスの圧力によって前記パイプ本体の中空部及び前記分岐管部の中空部を形成するとともに、溶融樹脂を、前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分に連通した捨てキャビティまで流動させて余分な溶融樹脂を前記捨てキャビティの内部で固化させるものである。
【0014】
この構成によれば、第1工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂は、パイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動する。また、パイプ本体の一端部に対応する部分からガスが圧送されるので、ガスも成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動する。一方、第2工程で成形型の内部におけるフランジ部に対応する部分に射出された溶融樹脂は、成形型の内部におけるパイプ本体に対応する部分へ向けて流動し、第1工程で射出された溶融樹脂と合流する。第1工程で圧送されたガスは、成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流れ、パイプ本体の中空部及び分岐管部の中空部が形成される。さらに、ガスの圧力によって溶融樹脂が成形型の捨てキャビティまで流動して固化する。これにより、フローティングコアやライド型及びコア部等を設けることなく、ガスの圧力によって狙い通りの樹脂製パイプを成形できる。
【0015】
第5の開示では、前記第2工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、前記第1工程の溶融樹脂の射出を開始するので、第2工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂を十分に流動させてから、第1工程で射出された溶融樹脂に合流させることができる。
【0016】
第6の開示では、前記第2工程では、前記成形型の内部における前記フランジ部の先端に対応する部分に溶融樹脂を射出する。
【0017】
この構成によれば、フランジ部は分岐管部から突出しているものなので、第2工程で所定量の溶融樹脂を射出した後、フランジ部の先端近傍に存在している溶融樹脂は早期に固化し始める。これにより、ガス圧による溶融樹脂の逆流が抑制され、樹脂製パイプの成形精度が向上する。
【0018】
第7の開示では、パイプ本体と、該パイプ本体の長手方向中間部から分岐する分岐管部とが一体成形された樹脂製パイプの製造方法を前提とする。そして、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記分岐管部の長手方向中間部に対応する部分からバルブゲートを開いて溶融樹脂を所定量射出した後、当該溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体に対応する部分へ向けて流動させるとともに、前記バルブゲートを閉じる第2工程とを備え、前記ガスを前記成形型の内部における前記分岐管部に対応する部分へ向けても流入させながら、前記第1工程で流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型の内部で合流させ、前記ガスの圧力によって前記パイプ本体の中空部及び前記分岐管部の中空部を形成するとともに、溶融樹脂を、前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分に連通した捨てキャビティまで流動させて余分な溶融樹脂を前記捨てキャビティの内部で固化させるものである。
【0019】
この構成によれば、第1工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂は、パイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動する。また、パイプ本体の一端部に対応する部分からガスが圧送されるので、ガスも成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動する。一方、第2工程でバルブゲートの開閉動作によって成形型の内部における分岐管部の中間部に対応する部分に所定量の溶融樹脂を射出することができる。バルブゲートから射出された溶融樹脂は、成形型の内部におけるパイプ本体に対応する部分へ向けて流動し、第1工程で射出された溶融樹脂と合流する。第1工程で圧送されたガスは、成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流れ、パイプ本体の中空部及び分岐管部の中空部が形成される。さらに、ガスの圧力によって溶融樹脂が成形型の捨てキャビティまで流動して固化する。これにより、フローティングコアやライド型及びコア部等を設けることなく、ガスの圧力によって狙い通りの樹脂製パイプを成形できる。
【0020】
第8の開示では、前記第2工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、前記第1工程の溶融樹脂の射出を開始するので、第2工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂を十分に流動させてから、第1工程で射出された溶融樹脂に合流させることができる。
【0021】
第9の開示は、前記第2工程で、前記バルブゲートを閉じた状態で当該バルブゲートが有するバルブピンを、当該バルブゲートのゲート口から所定量だけ外部へ突出させた状態で保持するので、バルブゲート近傍に存在する溶融樹脂が早期に固化し始める。これにより、ガス圧による溶融樹脂の逆流が抑制され、樹脂製パイプの成形精度が向上する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、パイプ本体の中空部及び分岐管部の中空部を形成する際のガスの圧力によって溶融樹脂が成形型の捨てキャビティまで流動して固化するので、シンプルな装置を用いながら、狙い通りの樹脂製パイプを成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態1に係る樹脂製パイプの側面図である。
【
図2】実施形態1に係る樹脂製パイプの分岐管部が形成された部分の断面図である。
【
図4】実施形態1に係る樹脂製パイプの成形要領を説明する
図3相当図である。
【
図5】実施形態1に係る樹脂製パイプの成形完了時を説明する
図3相当図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る樹脂製パイプの側面図である。
【
図7】実施形態2に係る樹脂製パイプの分岐管部が形成された部分の断面図である。
【
図10】本発明の実施形態3に係る樹脂製パイプの側面図である。
【
図11】実施形態3に係る樹脂製パイプの分岐管部の一部を拡大して示す図である。
【
図13】実施形態3に係る樹脂製パイプの成形要領を説明する
図12相当図である。
【
図14】実施形態3に係る樹脂製パイプの成形完了時を説明する
図12相当図である。
【
図15】実施形態3に係るバルブゲート近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る樹脂製パイプ1を示すものである。樹脂製パイプ1は、パイプ本体2と、該パイプ本体2から分岐する分岐管部3とが一体成形されたものである。パイプ本体2の厚みと、分岐管部3の厚みとは同じであってもよいし、一方が他方に比べて薄くてもよい。樹脂製パイプ1の材料としては、例えばポリプロピレン等を挙げることができるが、これに限られるものではなく、溶融状態にして後述するガス圧によって成形可能な樹脂であれば用いることができる。また、樹脂製パイプ1の材料となる樹脂には、ガラス繊維等の補強材が混合されていてもよい。また、樹脂製パイプ1の材料は、複数種の樹脂が混合した樹脂であってもよい。
【0026】
樹脂製パイプ1は、例えば自動車の吸気系やブローバイガス導入系の配管部材や温水、冷却水等の配管部材として用いることが可能であり、気体だけなく、各種液体も流通させる管として使用可能である。パイプ本体2の一端部には一端側接続管部2aが形成され、また、パイプ本体2の他端部には他端側接続管部2bが形成されている。一端側接続管部2a及び他端側接続管部2bには、それぞれ、別の配管部材が接続されるようになっている。一端側接続管部2a及び他端側接続管部2bの接続構造は、特に限定されるものではなく、図示しないバンドを用いた締め付け構造であってもよいし、図示しないフランジを用いた締結構造等であってもよい。
【0027】
パイプ本体2の一端側接続管部2aと他端側接続管部2bとの間には、第1湾曲部2c、第2湾曲部2d及び直管部2eが設けられている。第1湾曲部2cはパイプ本体2における一端側接続管部2a寄りの部分に設けられている。第2湾曲部2dはパイプ本体2における他端側接続管部2b寄りの部分に設けられている。直管部2eは、第1湾曲部2cと第2湾曲部2dとの間に設けられている。第1湾曲部2c及び第2湾曲部2dのいずれか一方または両方を省略してもよいし、第1湾曲部2c及び第2湾曲部2d以外の湾曲部(第3湾曲部)を設けてもよい。また、直管部2eを省略してもよいし、2つ以上の直管部を設けてもよい。
【0028】
つまり、パイプ本体2の形状は上述した形状に限られるものではなく、直管状のものであってもよいし、多数の湾曲部や直管部からなるものであってもよい。直管部の長さは湾曲部の曲率半径等も自由に設定することができる。また、パイプ本体2の長さや外径、内径も自由に設定することができる。また、パイプ本体2の断面形状は、例えば円形や楕円形、長円形等にすることができ、自由な形状にすることができる。さらに、パイプ本体2の長さも任意に設定することができ、例えば数十cmから数m程度の長さにすることができる。
【0029】
分岐管部3は、パイプ本体2における長さ方向中央部よりも他端側接続管部2b寄りに位置しており、パイプ本体2から径方向に突出している。
図2に示すように、分岐管部3の内部とパイプ本体2の内部とが連通している。この実施形態では、分岐管部3とパイプ本体2とのなす角度が略直角であるが、これに限られるものではなく、90°未満であってもよいし、90°を超えていてもよい。分岐管部3の外径は、パイプ本体2の外径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、分岐管部3の長さは、パイプ本体2の長さよりも大幅に短く設定されているが、逆に長くてもよいし、岐管部3の長さとパイプ本体2の長さとが同じであってもよい。分岐管部3の形成位置は、図示した位置に限られるものではなく、自由に設定することができる。分岐管部3は、直管形状であってもよいし、湾曲した形状であってもよい。この実施形態では、分岐管部3の中途部が湾曲している。また、分岐管部3は、1本のパイプ本体2に対して1本以上設けてもよい。
【0030】
図2に示すように、分岐管部3におけるパイプ本体2との接続部分は、当該パイプ本体2に近づくほど拡径するように形成されている。すなわち、分岐管部3の接続部分の内径は、パイプ本体2に近づくほど大きくなっており、これにより、分岐管部3の接続部分の内周面は湾曲した面で構成されることになる。分岐管部3の接続部分の内周面の形状は、後述するガスの流入時に形成されるものである。分岐管部3の接続部分の内周面が湾曲していることで、流体の流通抵抗が少なくなり、好ましい。
【0031】
図1及び
図2に示すように、分岐管部3の基端部には、複数のリブ4が設けられている。この実施形態では、4つのリブ4が分岐管部3の周方向に互いに間隔をあけて設けられているが、リブ4の数は4つに限られるものではなく、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。各リブ4は、分岐管部3の外周面から径方向外方へ突出するとともに、当該分岐管部3の管軸方向に延びている。各リブ4の基端部は、パイプ本体2の外周面に連続している。これにより、分岐管部3の基端部とパイプ本体2との接続部分をリブ4によって補強することができ、分岐管部3のパイプ本体2に対する折れや曲がりを抑制できる。リブ4の厚みは、分岐管部3の厚みやパイプ本体2の厚みと同程度にしてもよいし、分岐管部3の厚みやパイプ本体2の厚みよりも薄くしてもよいし、分岐管部3の厚みやパイプ本体2の厚みよりも厚くしてもよい。リブ4の形状は、矩形状以外の形状であってもよい。
【0032】
(成形装置の構成)
次に、
図3に基づいて実施形態1の成形装置10について説明する。成形装置10は、溶融状態の樹脂を射出する射出機(図示せず)と、成形型11と、ガス供給機(図示せず)と、制御装置(図示せず)とを備えている。射出機は、樹脂を混練して加熱し、溶融状態とするとともに溶融状態の樹脂を一定量だけ所定速度で射出するための射出シリンダを備えている。ガス供給機は、溶融状態の樹脂内を流動可能な高圧ガス(例えば空気等)を圧送するための装置である。射出機及びガス供給機は、制御装置に接続されている。射出機は制御装置によって制御され、溶融樹脂の射出開始、射出終了、射出時の流量等がコントロールされる。また、ガス供給機も制御装置によって制御され、ガスの圧送開始、終了、圧送時の流量等がコントロールされる。
【0033】
成形型11は、例えば固定型及び可動型と、可動型を固定型に対して接離する方向に駆動する型駆動装置等を有している。型駆動装置によって可動型を駆動することにより、成形型11を型締め状態と、型開き状態とに切り替えることができる。成形型11の内部には、樹脂製パイプ1の外面を成形するための成形面12と、第1キャビティ13と、第2キャビティ14と、第1下流側キャビティ15a及び第2下流側キャビティ15bと、ノズル16と、第1ランナ17及び第2ランナ18とが設けられている。樹脂製パイプ1を成形するための空間Rが成形面12によって成形型11の内部に区画形成されている。空間Rは、パイプ本体2を形成する第1空間R1と、分岐管部3を形成する第2空間R2とで構成されており、第1空間R1と第2空間R2とは互いに連通している。尚、分岐管部3が複数ある場合には、分岐管部3の数に応じて第2空間R2を複数設ければよい。
【0034】
第1キャビティ13は、第1空間R1におけるパイプ本体2の一端部に対応する部分に連通しており、パイプ本体2の一端部の管軸方向に延びている。第1キャビティ13に流入した溶融樹脂によってパイプ本体2を成形する。また、第2キャビティ14は、第2空間R2における分岐管部3の一端部(基端部)に対応する部分に連通しており、分岐管部3の管軸方向に延びている。第2キャビティ14に流入した溶融樹脂によって分岐管部3を成形する。
【0035】
第1下流側キャビティ15aは、第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分に連通しており、パイプ本体2の他端部の管軸方向に延びている。この第1下流側キャビティ15aは、第1空間R1を流動してきた溶融樹脂を受けて捨てるための捨てキャビティである。第2下流側キャビティ15bは、第2空間R2における分岐管部3の先端部に対応する部分に連通しており、分岐管部3の他端部の管軸方向に延びている。この第2下流側キャビティ15bは、第2空間R2を流動してきた溶融樹脂を受けて捨てるための捨てキャビティである。第1下流側キャビティ15a及び第2下流側キャビティ15bは共に余った溶融樹脂が流入する空間であり、第1下流側キャビティ15a及び第2下流側キャビティ15bに溶融樹脂が流入するように、溶融樹脂の供給量が設定されている。第1下流側キャビティ15a及び第2下流側キャビティ15bの形状や大きさは任意に設定することができる。第1下流側キャビティ15aと第2下流側キャビティ15bの形状及び大きさを同じにしてもよいし、互いに異ならせてもよい。
【0036】
ノズル16には、射出機の射出シリンダが接続されており、射出シリンダから射出された溶融樹脂は最初にノズル16に流入するようになっている。ノズル16の位置は、第1キャビティ13と第2キャビティ14との間が好ましい。第1ランナ17は、ノズル16から第1キャビティ13の上流側まで延びる樹脂通路である。第2ランナ18は、ノズル16から第2キャビティ14まで延びる樹脂通路である。第1ランナ17及び第2ランナ18はホットランナで構成することができる。
【0037】
具体的には、第2ランナ18の下流端は、第2キャビティ14におけるリブ4の端部に対応する部分に連通している。リブ4は、分岐管部3の基端部にあることから、溶融樹脂を第2ランナ18によって第2キャビティ14における分岐管部3の基端部に対応する部分に射出することができる。また、リブ4は、分岐管部3の側面である外周面から突出しているものであることから、溶融樹脂を第2ランナ18によって第2キャビティ14における分岐管部3の側面に対応する部分に射出することができる。第1ランナ17及び第2ランナ18は複数設けてもよい。
【0038】
第1ランナ17及び第2ランナ18には、開閉弁や絞り部材を設けることができる。これにより、第1キャビティ13に溶融樹脂を供給するタイミングと、第2キャビティ14に溶融樹脂を供給するタイミングとを個別にコントロールすることができる。例えば、第1キャビティ13に溶融樹脂を供給するタイミングと、第2キャビティ14に溶融樹脂を供給するタイミングとを同じにしたり、第2キャビティ14に溶融樹脂を供給するタイミングを、第1キャビティ13に溶融樹脂を供給するタイミングよりも遅くしたり、第2キャビティ14に溶融樹脂を供給するタイミングを、第1キャビティ13に溶融樹脂を供給するタイミングよりも早くすることができる。
【0039】
また、成形型11には、ガス供給管19が設けられている。ガス供給管19の下流端は、第1キャビティ13の上流端に接続されている。ガス供給管19の上流端には、ガス供給機が接続されている。
【0040】
(樹脂製パイプの製造方法)
次に、上述のように構成された実施形態1の成形装置10を用いて樹脂製パイプ1を製造する製造方法について説明する。まず、成形型11を型閉じ状態にする。その後、
図4、
図5に示すように、射出機の射出シリンダから溶融樹脂を射出する。射出された溶融樹脂はノズル16に流入した後、第1ランナ17を流通して第1キャビティ13に到達する。第1キャビティ13に到達した溶融樹脂は、成形型11の内部である第1空間R1におけるパイプ本体2の一端部に対応する部分から射出される。射出する樹脂の量は、パイプ本体2の第1湾曲部2cを超えて直管部2eにさしかかる程度の量とする。すなわち、少なくとも
図4における線L1~線L2の間まで溶融樹脂が充填される量である。これが、第1溶融樹脂射出工程、つまり第1工程である。
【0041】
また、ノズル16に流入した溶融樹脂は、第2ランナ18を流通して第2キャビティ14に到達する。第2キャビティ14に到達した溶融樹脂は、第2空間R2における分岐管部3の側面または基端部に対応する部分から射出される。第2空間R2に射出された溶融樹脂は、第2空間R2を流通して第1空間R1におけるパイプ本体2の上流側は線L3付近まで充填され、また、下流側は線L4付近まで充填される。この樹脂によってリブ4が分岐管部3に一体成形される。これが第2溶融樹脂射出工程である。以上が実施形態1の第2工程である。
【0042】
第2工程は、第1工程の溶融樹脂射出と同じタイミングで行ってもよいし、第1工程の溶融樹脂射出が完了した後に行ってもよいし、第1工程の溶融樹脂射出が完了する前に行ってもよい。また、第2工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、第1工程の溶融樹脂の射出を開始してもよい。例えば、第2工程で射出された溶融樹脂が第2キャビティ14に流入した後に、第1工程を開始するようにしてもよいし、第2工程で射出された溶融樹脂が第2キャビティ14を経て、当該第2キャビティ14から第1キャビティ13に流入した後に、第1工程を開始してもよい。第1工程を開始するタイミングは、実験等によって予め得ておくことができる。
【0043】
また、第1工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、第2工程で溶融樹脂の射出を開始することもできる。これにより、第1工程で成形型11の内部に射出された溶融樹脂を、パイプ本体2の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて十分に流動させてから、第2工程で射出された溶融樹脂に合流させることができる。
【0044】
第1工程で射出する溶融樹脂の量は、第1空間R1におけるパイプ本体2の直管部2eに対応する部分に達する量とすることもできる。すなわち、
図4における線L2に達する量とし、この量の溶融樹脂を射出した後、射出を停止すればよい。尚、線L2の位置は、樹脂製パイプ1の長さや径等によって変更することができる。
【0045】
溶融樹脂の射出を停止した後、ガス供給機からガスを供給する。供給されたガスはガス供給管19を流通して第1キャビティ13に流入した後、第1空間R1におけるパイプ本体2の一端部に対応する部分に圧送される。第1空間R1に充填された溶融樹脂のうち、成形面12に接触している部分は固化が始まっているので、ガスは径方向中心部近傍に中空部を形成しながら、第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて流れる。このようなガスの流れによって溶融樹脂が第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて中空部を形成しながら流動していく。以上が実施形態1の第3工程である。
【0046】
上記ガスの供給は、第1工程で行ってもよく、例えば第1工程で溶融樹脂を射出した後、ガスをパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて圧送することで、第1工程で射出された溶融樹脂をパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて流動させることができる。その後、分岐管部3の先端部に対応する部分から溶融樹脂を射出すればよい。この方法によっても第1ランナ17を通って射出された溶融樹脂と、第2ランナ18を通って射出された溶融樹脂とを合流させることができる。
【0047】
第1工程で流動させた溶融樹脂と、第2工程で流動させた溶融樹脂とは、成形型11の内部、即ち第1空間R1におけるパイプ本体2の中間部に対応する線L3付近で合流する。このとき、ガスがパイプ本体2の他端側へ向かう方向へ流通していくので、このガスの流れにより、上流側から下流側まで連続した中空部(パイプ本体2の中空部)が形成される。余った溶融樹脂はガスの流れによって第1下流側キャビティ15aに流入して固化する。
【0048】
また、第2空間R2近傍まで流通したガスは、その圧力により、成形型11の内部における分岐管部3に対応する部分、即ち第2空間R2に流入することにより分岐管部3の中空部が形成される。これは、第2空間R2内の溶融樹脂や第2キャビティ14内の溶融樹脂に空気等が含まれているためであり、高圧のガスによって空気等が圧縮されることにより、ガスが第2空間R2に流入する。第2空間R2に流入したガスによって溶融樹脂が第2下流側キャビティ15bに流入して固化する。その後、成形型11内の全ての溶融樹脂を固化させることにより、機械加工を施すことなく、分岐管部3がパイプ本体2に一体成形された樹脂製パイプ1を得ることができる。
【0049】
型開きして樹脂製パイプ1を脱型した後、パイプ本体2の両端部及び分岐管端部(線L1、線L4、線L5で示す)をカットすることで、樹脂製パイプ1を所望の形状にすることができる。
【0050】
(実施形態1の作用効果)
以上説明したように、この実施形態1によれば、成形型11の内部においてパイプ本体2の一端部に対応する部分に溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、さらに、成形型11の内部において分岐管部3に対応する部分に溶融樹脂を射出して前記溶融樹脂と合流させ、ガスを成形型11の内部における分岐管部3に対応する部分へ向けて流入させるようにしたので、機械加工を施すことなく、パイプ本体2に連通する分岐管部3を一体成形することができる。
【0051】
また、ガスの圧力によって溶融樹脂が成形型11の捨てキャビティである第1下流側キャビティ15a及び第2下流側キャビティ15bまで流動して固化する。これにより、フローティングコアやライド型及びコア部等を設けることなく、ガスの圧力によって狙い通りの形状の樹脂製パイプ1を成形できる。
【0052】
また、リブ4を分岐管部3と一体成形することができる。この場合に、リブ4は分岐管部3から突出しているものなので、第2工程で所定量の溶融樹脂を射出した後、リブ4の近傍に存在している溶融樹脂は早期に固化し始める。これにより、ガス圧による溶融樹脂の逆流(第2ランナ18へ向けての流れ)が抑制され、樹脂製パイプ1の成形精度が向上する。
【0053】
(実施形態2)
図6及び
図7は、本発明の実施形態2に係る樹脂製パイプ1を示すものであり、
図8及び
図9は、本発明の実施形態2に係る成形装置10を示すものである。この実施形態2では、樹脂製パイプ1がフランジ部5を備えている点と、このフランジ部5を備える樹脂製パイプ1を成形可能な成形装置1である点とで実施形態1のものと異なっており、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0054】
樹脂製パイプ1の分岐管部3の管軸方向の中途部にはフランジ部5が設けられている。フランジ部5は分岐管部3に一体成形された部分であり、分岐管部3の外周面から径方向へ突出して周方向に延びる板状をなしている。フランジ部5は、パイプ本体2の外周面からは離れている。フランジ部5の厚みは、分岐管部3の厚みやパイプ本体2の厚みと同程度にしてもよいし、分岐管部3の厚みやパイプ本体2の厚みよりも薄くしてもよいし、分岐管部3の厚みやパイプ本体2の厚みよりも厚くしてもよい。この実施形態のフランジ部5は円形であるが、多角形であってもよい。フランジ部5の数は2以上であってもよい。尚、実施形態2において、実施形態1と同様なリブを設けてもよい。
【0055】
次に、
図8及び
図9に基づいて実施形態2の成形装置10について説明する。実施形態2の成形装置10では、第2ランナ18の下流端が、第2キャビティ14におけるフランジ部5の端部に対応する部分に連通している。フランジ部5は、分岐管部3の側面にあることから、溶融樹脂を第2ランナ18によって第2キャビティ14におけるフランジ部5の先端(分岐管部3の側面)に対応する部分に射出することができる。尚、フランジ部5を分岐管部3の基端部に設けてもよく、この場合、溶融樹脂を第2ランナ18によって第2キャビティ14における分岐管部3の基端部に対応する部分に射出することができる。
【0056】
次に、上述のように構成された実施形態2の成形装置10を用いて樹脂製パイプ1を製造する製造方法について説明する。成形型11を型閉じ状態にした後、
図8に示すように、射出機の射出シリンダから溶融樹脂を射出すると、
図8における線L1~線L2の間に溶融樹脂が充填される。これが、第1溶融樹脂射出工程、つまり第1工程である。
【0057】
また、ノズル16に流入した溶融樹脂は、第2ランナ18を流通して第2キャビティ14に到達した後、第2空間R2における分岐管部3の側面または基端部に対応する部分から射出される。第2空間R2に射出された溶融樹脂は、第2空間R2を流通して第1空間R1におけるパイプ本体2の上流側は線L3付近まで充填され、また、下流側は線L4付近まで充填される。この樹脂によってフランジ部5が分岐管部3に一体成形される。これが第2溶融樹脂射出工程である。以上が実施形態1の第2工程である。
【0058】
溶融樹脂の射出を停止した後、ガス供給機からガスを供給して第3工程を行う。ガスの供給は、第1工程で行ってもよい。第1工程で流動させた溶融樹脂と、第2工程で流動させた溶融樹脂とは、第1空間R1の線L3付近で合流する。このとき、ガスがパイプ本体2の他端側へ向かう方向へ流通していくので、このガスの流れにより、上流側から下流側まで連続した中空部(パイプ本体2の中空部)が形成される。余った溶融樹脂はガスの流れによって第1下流側キャビティ15aに流入して固化する。
【0059】
また、第2空間R2近傍まで流通したガスは、その圧力により、成形型11の内部における分岐管部3に対応する部分、即ち第2空間R2に流入することにより分岐管部3の中空部が形成される。第2空間R2に流入したガスによって溶融樹脂が第2下流側キャビティ15bに流入して固化する。その後、成形型11内の全ての溶融樹脂を固化させることにより、機械加工を施すことなく、分岐管部3がパイプ本体2に一体成形された樹脂製パイプ1を得ることができる。
【0060】
型開きして樹脂製パイプ1を脱型した後、パイプ本体2の両端部及び分岐管端部(線L1、線L4、線L5で示す)をカットすることで、樹脂製パイプ1を所望の形状にすることができる。
【0061】
(実施形態2の作用効果)
以上説明したように、この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、フローティングコアやライド型及びコア部等を設けることなく、ガスの圧力によって狙い通りの形状の樹脂製パイプ1を成形できる。
【0062】
また、フランジ部5は分岐管部3から突出しているものなので、第2工程で所定量の溶融樹脂を射出した後、フランジ部5の先端近傍に存在している溶融樹脂は早期に固化し始める。これにより、ガス圧による溶融樹脂の逆流が抑制され、樹脂製パイプ1の成形精度が向上する。ガスがフランジ部5の先端からランナへ流出するのを防止することができるので内部の流体が外部に漏れることはない。
【0063】
(実施形態3)
図10及び
図11は、本発明の実施形態3に係る樹脂製パイプ1を示すものであり、
図12~
図15は、本発明の実施形態3に係る成形装置10を示すものである。この実施形態3では、成形装置10にバルブゲート30が設けられている点と、バルブゲート30によって樹脂製パイプ1の分岐管部3の側面にゲート跡6が形成される点とで実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0064】
樹脂製パイプ1の分岐管部3の管軸方向の中途部にはゲート跡6が形成されている。ゲート跡6は、バルブゲート30を成形装置10に設けたことによってできたものであり、バルブゲート30の形状に対応した跡である。この実施形態3では、ゲート跡6が分岐管部3の側面から突出した突出部で構成されており、分岐管部3の基端部から離れた所に位置している。具体的には、
図11に示すように、ゲート跡6は、円環状に突出する環状突出部6aと、環状突出部6aの外周部から径方向外方へ延びる複数の放射状突出部6bとで構成されている。ゲート跡6の形状は図示した形状に限られるものではなく、バルブゲート30の先端部の形状に応じた任意の形状にすることができる。
【0065】
次に、
図12及び
図15に基づいて実施形態3の成形装置10について説明する。実施形態3の成形装置10では、第2ランナ18の下流端にバルブゲート30が設けられており、第2ランナ18の下流端がバルブゲート30を介して、第2キャビティ14における分岐管部3の側面に対応する部分に連通している。
【0066】
図15に示すように、バルブゲート30は、ホットランナ31と、ホットランナ31の内部に設けられた弁体(バルブピン)32と、弁体32を駆動する駆動装置(図示せず)とを備えている。ホットランナ31の先端部に樹脂の吐出口(ゲート口)31aが形成されている。ホットランナ31の先端部における吐出口31aの周囲には、当該吐出口31aの径方向に放射状に延びる複数の放射状凹部31bが形成されている。
【0067】
弁体32は、駆動装置によって進退動作可能に構成されており、進出した状態(
図15の下方へ移動した状態)でホットランナ31の吐出口31aを閉塞する一方、後退した状態(
図15の上方へ移動した状態)でホットランナ31の吐出口31aを開放する。
図15では弁体32がホットランナ31の吐出口31aを閉塞した状態を示している。また、弁体32の先端部の外周面には、環状凹部32aが形成されている。弁体32が進出した状態で、環状凹部32aと放射状凹部31bとが連通するように両者の位置及び形状が設定されている。環状凹部32aによって環状突出部6aが成形され、放射状凹部31bによって放射状突出部6bが成形される。
【0068】
この実施形態3では実施形態1、2と同様な第1工程を行うことができる。一方、第2工程では、バルブゲート30の弁体32を後退させてバルブゲート30を開いて成形型11の内部に、分岐管部3の長手方向中間部に対応する部分から溶融樹脂を所定量射出する。その後、バルブゲート30の弁体を進出させてバルブゲート30を閉じて当該溶融樹脂を成形型11の内部におけるパイプ本体2に対応する部分へ向けて流動させる。第2工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、第1工程の溶融樹脂の射出を開始するようにバルブゲート30の開閉タイミングが設定されている。
【0069】
(実施形態3の作用効果)
以上説明したように、この実施形態3によれば、実施形態1と同様に、フローティングコアやライド型及びコア部等を設けることなく、ガスの圧力によって狙い通りの形状の樹脂製パイプ1を成形できる。
【0070】
また、バルブゲート30に環状凹部32aと放射状凹部31bとを設けたので、バルブゲート30近傍に存在する溶融樹脂を早期に固化させることができる。これにより、ガス圧による溶融樹脂の逆流が抑制され、樹脂製パイプ1の成形精度が向上する。ガスがゲート6の先端からランナへ流出するのを防止することができるので内部の流体が外部に漏れることはない。
【0071】
(実施形態3の変形例)
図16は、実施形態3の変形例1に係るものである。この変形例3では、閉塞位置にある弁体32の先端部32bがホットランナ31の吐出口31aから突出するようになっている。先端部32bの端面は凹面で構成されている。これにより、ゲート跡6には凹部6cが形成されることになる。すなわち、バルブゲート30を閉じた状態で当該バルブゲート30が有する弁体32の先端部32bを、当該バルブゲート30の吐出口31aから所定量だけ外部へ突出させた状態で保持することができるので、バルブゲート30近傍に存在する溶融樹脂が早期に固化し始める。これにより、ガス圧による溶融樹脂の逆流が抑制され、樹脂製パイプ1の成形精度が向上する。ガスがゲート6の先端からランナへ流出するのを防止することができるので内部の流体が外部に漏れることはない。
【0072】
図17は、実施形態3の変形例2に係るものである。この変形例2では、変形例1と同様に閉塞位置にある弁体32の先端部32bがホットランナ31の吐出口31aから突出するようになっている。変形例2の先端部32bの端面は凸面で構成されている。
【0073】
図18は、実施形態3の変形例3に係るものである。この変形例3では、閉塞位置にある弁体32の先端部32bがホットランナ31の吐出口31a内に位置するようになっている。変形例3の先端部32bの端面は凸面で構成されている。
【0074】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明に係る樹脂製パイプの製造方法は、例えば自動車の配管部品等を製造する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 樹脂製パイプ
2 パイプ本体
3 分岐管部
4 リブ
5 フランジ部
11 成形型
15a 第1下流側キャビティ(捨てキャビティ)
15b 第2下流側キャビティ(捨てキャビティ)
30 バルブゲート
31 ホットランナ
31a 吐出口(ゲート口)
32 弁体(バルブピン)