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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20240723BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61F13/532 200
A61F13/534 110
A61F13/534 210
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020217517
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102658
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 健司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 絵里香
(72)【発明者】
【氏名】宮村 猛史
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-325717(JP,A)
【文献】特開2020-010915(JP,A)
【文献】特表2006-527058(JP,A)
【文献】米国特許第04953566(US,A)
【文献】特開2008-054987(JP,A)
【文献】特開2020-092735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/532
A61F 13/534
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性ポリマーを40質量%以上含む吸収体を備えた吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記吸収体が存在する領域において、前記吸収性物品をその厚み方向に貫く貫通部の形成予定部を有し、
前記吸収性物品は、着用者の身体から最も遠くに位置する部材における前記形成予定部の位置に、該形成予定部の目印となる表示部を有し、
前記吸収性物品は、前記吸収体が存在する領域から切り出した幅30mm×長さ100mmのサンプルにおける吸収材の脱落率が7質量%以下であり、
前記吸収性物品は、着用前の状態においては該吸収性物品を厚み方向に貫く貫通部を有しておらず、且つ、前記表示部を目印として前記形成予定部の位置に前記貫通部を形成した後に着用されるものであり、
前記吸収性物品は、前記形成予定部を、前記吸収性物品の着用状態において着用者の肛門に対応する位置に有している、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、前記形成予定部に存在する前記吸収性ポリマーの坪量が、前記形成予定部以外に存在する前記吸収性ポリマーの坪量よりも低くなっている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体は、前記形成予定部に前記吸収性ポリマーが実質的に非存在である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、個々に区分された複数の吸収部が前記吸収性物品の面方向に配置されて構成されており、
隣り合う前記吸収部の間が前記形成予定部である、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、前記形成予定部の剛性が、前記形成予定部以外の部位の剛性よりも低くなっている、請求項1ないしのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体が、同一の又は異なる2枚の液透過性シートの間に前記吸収性ポリマーが挟持された構造を有する吸収シートを備える、請求項1ないしのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収シートにおいては、2枚の前記液透過性シートの間に存在する接着剤によって前記吸収性ポリマーが固定されている、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
吸収性物品の使用方法であって、
前記吸収性物品は、吸収性ポリマーを40質量%以上含む吸収体を備え、
前記吸収性物品は、前記吸収体が存在する領域において、前記吸収性物品をその厚み方向に貫く貫通部の形成予定部を有し、
前記吸収性物品は、着用者の身体から最も遠くに位置する部材における前記形成予定部の位置に、該形成予定部の目印となる表示部を有し、
前記吸収性物品は、前記吸収体が存在する領域から切り出した幅30mm×長さ100mmのサンプルにおける吸収材の脱落率が7質量%以下であり、
前記吸収性物品は、前記形成予定部を、前記吸収性物品の着用状態において着用者の肛門に対応する位置に有しており、
前記吸収性物品は、着用前の状態においては該吸収性物品を厚み方向に貫く貫通部を有しておらず、
前記吸収性物品の着用に先立ち、前記表示部を目印として前記形成予定部の位置に前記貫通部を形成し、然る後に前記貫通部が形成された前記吸収性物品を着用する、吸収性物品の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつを着用している人に対して座薬を挿入したり、浣腸を施したりする場合には、一旦おむつを脱いで肛門を露出させた状態にする必要がある。しかし、介助が必要な人がおむつを着用している場合には、おむつを脱がせることが容易でない。したがって、おむつを脱がせることなく、座薬を挿入したり、浣腸を施したりできると便利である。この目的のために、おむつに孔を設け、該孔を通じて座薬や浣腸容器を肛門に到達させることが考えられる。
【0003】
これに関連して、特許文献1には、下着型パンツの後面に、大腸内視鏡検査用スコープ管が出し入れできる程度の切口を設けた大腸内視鏡検査用パンツが記載されている。このパンツによれは、パンツを着用したまま大腸内視鏡検査を行うことができると、同文献には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-237913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
おむつには一般に排泄物を吸収して保持するための吸収体が備わっており、該吸収体にはヒドロゲルの形成が可能な高分子等からなる吸収性ポリマーの粒子が含まれている。したがって、おむつに単純に孔を開けたのでは、吸収体から吸収性ポリマーや、パルプをはじめとする親水性吸水繊維などの吸収材が脱落してしまうという不都合がある。
したがって本発明の課題は、孔を設けた場合であっても、該孔からの吸収材の脱落を抑制し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸収性ポリマーを含む40質量%以上含む吸収体を備えた吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記吸収体が存在する領域において、前記吸収性物品をその厚み方向に貫く貫通部の形成予定部を有し、
前記吸収性物品は、着用者の身体から最も遠くに位置する部材における前記形成予定部の位置に、該形成予定部の目印となる表示部を有し、
前記吸収性物品は、前記吸収体が存在する領域から切り出した幅30mm×長さ100mmのサンプルにおける吸収材の脱落率が7質量%以下であり、
前記吸収性物品は、前記表示部を目印として前記形成予定部の位置に前記貫通部を形成した後に着用されるものである、吸収性物品を提供するものである。
【0007】
また本発明は、吸収性ポリマーを含む40質量%以上含む吸収体を備えた吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記吸収体が存在する領域において、前記吸収性物品をその厚み方向に貫く貫通部を有し、
前記貫通部からの吸収材の脱落率が7質量%以下である、吸収性物品を提供するものである。
【0008】
更に本発明は、吸収性物品の使用方法であって、
前記吸収性物品は、吸収性ポリマーを含む40質量%以上含む吸収体を備え、
前記吸収性物品は、前記吸収体が存在する領域において、前記吸収性物品をその厚み方向に貫く貫通部の形成予定部を有し、
前記吸収性物品は、着用者の身体から最も遠くに位置する部材における前記形成予定部の位置に、該形成予定部の目印となる表示部を有し、
前記吸収性物品は、前記吸収体が存在する領域から切り出した幅30mm×長さ100mmのサンプルにおける吸収材の脱落率が7質量%以下であり、
前記吸収性物品の着用に先立ち、前記表示部を目印として前記形成予定部の位置に前記貫通部を形成し、然る後に前記貫通部が形成された前記吸収性物品を着用する、吸収性物品の使用方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸収材の脱落に起因する周囲の汚染や吸収性能の低下を抑制しつつ、着用したままで座薬や浣腸容器の挿入が可能な吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すおむつの伸長状態における肌対向面を模式的に示す展開平面図である。
図3図3は、図2におけるIII-III線断面図である。
図4図4は、図1に示すおむつに貫通部を形成する様子を示す説明図である。
図5図5は、図1に示すおむつの使用状態の一例を示す説明図である。
図6図6は、本発明に好適に用いられる吸収シートの構造を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
図8図8は、本発明の吸収性物品の更に別の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
図9図9は、本発明の吸収性物品のまた更に別の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
図10図10は、本発明の吸収性物品のまた更に別の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
図11図11は、本発明の吸収性物品のまた更に別の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
図12図12は、本発明の吸収性物品のまた更に別の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
図13図13は、本発明の吸収性物品のまた更に別の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1ないし図5には、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」ともいう。)1が示されている。
【0012】
おむつ1は、図1及び図2に示すとおり、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有する縦長の形状をしている。おむつ1は、着用者の股間部に配される股下部C並びに該股下部Cから縦方向Xの前後に延出する腹側部A及び背側部Bを有する。
【0013】
おむつ1は、図1及び図2に示すとおり、吸収性本体2と、該吸収性本体2の非肌対向面側に配された外装体3とを備えている。吸収性本体2は、接着剤等の接合手段によって外装体3に接合されている。外装体3は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける縦方向Xに沿う両側縁部AS,BSどうしが、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている(図示せず)。これによりおむつ1には、一対のサイドシール部S,S並びに着用者の胴が通されるウエスト開口部WH、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部LH,LHが形成されている。
【0014】
吸収性本体2は、図2に示すとおり、縦方向Xに沿って延びる吸収体23と、該吸収体23の肌対向面側に配置された表面シート21と、該吸収体23の非肌対向面側に配置された裏面シート22とを備えている。吸収体23は、吸収性本体2と同様に、おむつ1の縦方向Xに長い形状を有しており、表面シート21と裏面シート22との間に介在配置されている。吸収体23は、排泄物の吸収保持が可能な材料である吸収材を含んで構成される。吸収材としては、フラッフパルプ等の親水性吸水繊維等や吸収性ポリマー等が挙げられる。吸収体23の詳細については後述する。
【0015】
外装体3は、図2に示すとおり、外層シート32と内層シート31との間に複数の弾性部材を有する。弾性部材は、ウエスト弾性部材33と胴周り弾性部材34とレッグ弾性部材35とを含んでいる。おむつ1は、ウエスト弾性部材33、胴周り弾性部材34及びレッグ弾性部材35をそれぞれ複数本有している。
【0016】
ウエスト弾性部材33は、ウエスト開口部WHの開口端WEの近傍に横方向Yに沿って伸長状態で配されている。これにより、ウエスト開口部WHの全周にわたって実質的に連続した環状のウエストギャザーが形成される。
【0017】
胴周り弾性部材34は、吸収体23と重なる位置に横方向Yに沿って伸長状態で配されている。本実施形態においては、胴周り弾性部材34は、吸収性本体2と厚み方向に重なる領域で、細かく分断する等の処理によって弾性伸縮性を発現しないように配されている。胴周り弾性部材34は、前記領域で弾性伸縮性を発現してもよい。
【0018】
レッグ弾性部材35は、一対のレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部LE,LEに沿って伸長状態で配されている。これによりレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部LEには、その全周にわたって実質的に連続した環状のレッグギャザーが形成される。
【0019】
おむつ1は、図2及び図3に示すとおり、吸収体23が存在する領域において、該おむつ1を厚み方向Zに貫く貫通部の形成予定部(以下、「貫通部形成予定部」という)4を有する。貫通部形成予定部4は、その全域が、吸収体23が存在する領域内に存在していてもよいし、その一部のみが、吸収体23が存在する領域内に存在していてもよい。本実施形態において、貫通部形成予定部4は、その全域が、吸収体23が存在する領域内に存在している。具体的には、貫通部形成予定部4は、股下部Cに位置している。
【0020】
貫通部形成予定部4は、おむつ1の着用状態において着用者の排泄部に対応する位置に設けられていることが好ましい。こうすることにより、おむつ1を脱がせることなく、貫通部形成予定部4に形成された貫通部を通じて、着用者の排泄部に対して、各種の医療処置や介助処置、例えば薬を塗布する等の処置を施すことができる。前記排泄部としては、例えば肛門、尿道口及び膣口などがあるところ、おむつ1を脱がせることなく、座薬を挿入したり、浣腸を施したりすることができるようにする場合には、前記排泄部は肛門である。
【0021】
貫通部形成予定部4の平面視における形状に特に制限はなく、上述した各種の医療処置や介助処置を行いやすい形状であればよい。貫通部形成予定部4の平面視における形状は例えば直線状、円形、楕円形、三角形及び四角形等の多角形、及びそれらの任意の組み合わせなどが挙げられる。特に、貫通部からの吸収性ポリマーの脱落を抑制する観点から、貫通部形成予定部4の平面視における形状は直線状であるか、又は幅の狭い四角形であることが好ましい。
【0022】
着用者の体型等によって排泄部の位置が、おむつ1の縦方向Xにおいて異なる場合があるので(横方向Yにおいて排泄部の位置が異なることはない。)、貫通部形成予定部4に形成された貫通部を通じて着用者の排泄部に容易に処置できるようにする観点から、貫通部形成予定部4は、おむつ1の縦方向Xに沿って延びていることが好ましい。
【0023】
おむつ1は、図1及び図3に示すとおり、着用者の身体から最も遠くに位置する部材における貫通部形成予定部4の位置に、該形成予定部4の目印となる表示部52を有している。表示部52は、おむつ1の外面を目視した場合に、貫通部形成予定部4の位置を認識できるような態様で設けられている。あるいは表示部52は、おむつ1の外面に触れた場合に、貫通部形成予定部4の位置を認識できるような態様で設けられている。前者の具体的な態様としては、外装体3の外面に文字、図形、記号又は着色を施したり、ミシン目を形成したりする態様が挙げられる。後者の具体的な態様としては、点字様の凹凸を外装体3に形成する態様が挙げられる。図1及び図3には、外層シート32にミシン目が形成されてなる表示部52が示されている。
【0024】
表示部52の態様が上述したいずれの場合であっても、表示部52の形成位置と、おむつ1の平面視における貫通部形成予定部4の位置とが完全に一致していることが好ましい。あるいは、表示部52の形成位置の一部と、おむつ1の平面視における貫通部形成予定部4の一部とが重複していてもよい。あるいは、おむつ1の平面視における貫通部形成予定部4の位置の全域が、表示部52の形成位置に包含されていてもよく、逆に、表示部52の形成位置の全域が、おむつ1の平面視における貫通部形成予定部4に包含されていてもよい。
貫通部からの吸収材の脱落を確実に防止する観点からは、表示部52の形成位置と、おむつ1の平面視における貫通部形成予定部4の位置とが完全に一致していることが好ましい。
【0025】
本実施形態のおむつ1の使用方法は以下に述べるとおりである。
おむつ1は、店頭で販売されているとき等の着用前の状態においては、該おむつ1を厚み方向Zに貫く貫通部を有していない。おむつ1の着用に先立ち、表示部52を目印として貫通部形成予定部4の位置に貫通部を形成する。然る後に貫通部が形成されたおむつ1を着用する。具体的には、図4に示すとおり、肌対向面を内側にして前身頃と後身頃とが重なっている状態のおむつ1を、表示部52であるミシン目に沿って鋏等で切断する。その結果、貫通部形成予定部4に、貫通部が形成される。このようにして貫通部が形成されたおむつ1を着用者が着用する。おむつ1は、該おむつ1を厚み方向Zに貫通する貫通部51を有するので、図5に示すとおり、おむつ1を着用したまま、貫通部51を通じて着用者の肛門に浣腸容器を挿入することができる。あるいはおむつ1を着用したまま、貫通部51を通じて着用者の肛門に座薬を挿入したり、内視鏡を挿入したりすることができる。
【0026】
従来のおむつにおいては、該おむつの吸収体が存在する領域に、該おむつを厚み方向に貫通する貫通部を形成した場合、該貫通部を通じて、該吸収体に含まれる吸収材が脱落してしまう恐れがある。本明細書において「吸収材」とは、吸収性物品の吸収体を構成する材料であって且つ排泄物の吸収及び保持が可能な材料のことである。吸収材の典型的な例としては吸収性ポリマーや、パルプをはじめとする親水性吸水繊維が挙げられる。
本実施形態のおむつ1には、貫通部を形成したとしても該貫通部から吸収材が脱落しにくい工夫を施している。以下、この点について説明する。
【0027】
吸収体23は、例えばフラッフパルプ等の親水性吸水繊維及び吸収性ポリマーの粒子の混合積繊体が、薄葉紙や液透過性不織布などの液透過性シートで被覆されて構成されるところ、貫通部51を通じての吸収性ポリマー等の吸収材の脱落を生じにくくする観点から、吸収体23は、貫通部形成予定部4に存在する吸収性ポリマーの坪量が、貫通部形成予定部4以外に存在する吸収性ポリマーの坪量よりも低くなっていることが好ましい。具体的には、貫通部形成予定部4以外に存在する吸収性ポリマーの坪量W1に対する貫通部形成予定部4に存在する吸収性ポリマーの坪量W2の比W2/W1は、好ましくは0以上、より好ましくは0.2以上であり、また好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下であり、また好ましくは0以上好ましくは0.7以下、より好ましくは0.2以上好ましくは0.5以下である。
【0028】
吸収性ポリマーの坪量そのものについては、貫通部形成予定部4以外に存在する吸収性ポリマーの坪量W1は、100g/m以上500g/m以下とすることが、吸収体23の吸収容量を十分に確保する観点から好ましい。また、吸収体23を薄型にする観点(この利点については後述する。)及び吸収体23の吸収容量を更に十分に確保する観点から、吸収性ポリマーの坪量W1は、40g/m以上300g/m以下とすることが更に好ましく、40g/m以上200g/m以下とすることが一層好ましい。
【0029】
吸収体23においては吸収性ポリマーそのものの占める割合を高くすることが好ましい。こうすることによって、吸収体23の吸収性能を従来と同様に高いレベルに保ったままで、吸収体23を薄型化することが可能となる。吸収体23を薄型化できることは、貫通部51を通じての座薬や浣腸容器の挿入が容易になる点から有利である。この利点を一層顕著なものとする観点から、吸収体23は吸収性ポリマーを40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことが更に好ましく、80質量%以上含むことが一層好ましい。
なお、貫通部形成予定部4における親水性吸水繊維の坪量と、貫通部形成予定部4以外の部位における親水性吸水繊維の坪量とは、同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0030】
図7に示す実施形態においては、吸収体23として1枚の吸収シートが用いられている。吸収シートを用いることによっても、貫通部からの吸収材の脱落が生じにくくなる。
特に、吸収シートのうち、貫通部形成予定部4に存在する吸収性ポリマーの坪量を、貫通部形成予定部4以外に存在する吸収性ポリマーの坪量よりも低くすると、貫通部51からの吸収性ポリマーの脱落が一層生じにくくなるので好ましい。
【0031】
吸収シートは、同一の又は異なる2枚の液透過性シートの間に吸収性ポリマーが挟持された構造を有することが好ましい。このような構造を有する吸収シートは、1枚の液透過性シートを湿潤させた状態下に、該液透過性シート上に吸収性ポリマーの粒子を散布し、該粒子が吸水することに起因して生じる粘着性を利用して、もう1枚のシートを重ね合わせて圧着することで製造される。そのような製造方法は、例えば本出願人の先の出願に係る特開平8-246395号公報に記載されている。
【0032】
別の構造の吸収シートとして、同一の又は異なる2枚の液透過性シートの間に吸収性ポリマーの粒子が挟持されており且つ両シートの間に存在する接着剤によって吸収性ポリマーの粒子が固定された構造のものを挙げることができる。そのような構造の吸収シートは、例えば本出願人の先の出願に係る特開2018-102907号公報に記載されている。
【0033】
特に、前記の吸収シートにおいて、両液透過性シートが接着剤によって互いに接合されている場合、図6に示すとおり、吸収シート25における各液透過性シート25a,25bは、吸収性ポリマーの粒子26を介さずに、接着剤27によって直接接合されている部位28と、両液透過性シート25a,25bが吸収性ポリマーの粒子26を介して接着剤27によって接合された部位29とを有することが好ましい。このような構成となっていることによって、吸収性ポリマーの粒子26を吸収シート25の所定の位置に保持させて、吸収性ポリマーの粒子26の意図しない移動や偏在をより低減できるとともに、吸収シート25の液吸収性をより高めることができる。
【0034】
図7に示す吸収体23は1枚の吸収シートから構成されている。吸収シートは、横方向Yの両側部が該横方向Y内方に折り返されている。吸収シートの折り返し部どうしの間には隙間Gが形成されている。前記隙間Gは、おむつ1の横方向Yの中央域である貫通部形成予定部4に位置している。つまり、吸収体23は、吸収シートが2枚重ねになっている両側部域と、隙間Gを有し且つ1枚の吸収シートから構成されている中央域とからなっており、該中央域が貫通部形成予定部4になっている。
図7に示すおむつ1によれば、貫通部形成予定部4の厚みが、それ以外の部位に比べて薄くなっているので、該貫通部形成予定部4に貫通部を容易に形成することができるという利点がある。また、貫通部形成予定部4における吸収性ポリマーの坪量は、それ以外の部位における吸収性ポリマーの坪量よりも低くなっているので、貫通部を形成した場合であっても吸収性ポリマーの脱落を一層抑制することができる。しかも、吸収体23のうち、貫通部形成予定部4以外の部位では、吸収シートが2枚重ねになっているので、十分な吸収容量が確保される。
【0035】
図8に示すおむつ1においては、吸収体23が、個々に区分された複数の吸収部24がおむつ1の面方向に配置されて構成されている。「面方向に配置」とは、複数の吸収部24がおむつ1の縦方向X及び/又は横方向Yに沿って配置されていることをいい、複数の吸収部24が横方向Yに沿って配置されている態様が一例として挙げられる。各吸収部24は1枚の吸収シートを2枚重ねた構造を有している。隣り合う吸収部24の間には隙間が生じている。つまり隣り合う吸収部24の間には吸収性ポリマーが存在していない。同図に示すおむつ1においては、隣り合う吸収部24の間の隙間が貫通部形成予定部4である。したがって、貫通部形成予定部4に貫通部を形成しても、該貫通部からの吸収材、特に吸収性ポリマーの脱落は生じない。また、貫通部形成予定部4の厚みは、それ以外の部位に比べて薄いので、該貫通部形成予定部4に貫通部を容易に形成できる。しかも、吸収体23のうち、貫通部形成予定部4以外の部位では、吸収シートが2枚重ねになっているので、十分な吸収容量が確保される。
【0036】
図9に示すおむつ1は、図8に示すおむつの変形例である。図8に示すおむつ1においては、各吸収部24が、1枚の吸収シートを2枚重ねた構造を有していたのに対して、図9に示すおむつ1においては、各吸収部24が、1枚の吸収シートのみからなり且つ該1枚の吸収シートが二つ折りされて2枚重ねの構造となっている。各吸収部24を構成する各1枚のシートは、折り曲げ部24aどうしが対向するように配されている。隣り合う吸収部24の間には隙間が生じており、吸収材が存在していない。同図に示すおむつ1においては、隣り合う吸収部24の間の隙間が貫通部形成予定部4である。したがって、上述した図8に示すおむつ1と同様に、貫通部形成予定部4に貫通部を形成しても、該貫通部からの吸収材、特に吸収性ポリマーの粒子の脱落は生じない。また、貫通部形成予定部4の厚みは、それ以外の部位に比べて薄いので、該貫通部形成予定部4に貫通部を容易に形成できる。しかも、吸収体23のうち、貫通部形成予定部4以外の部位では、吸収シートが2枚重ねになっているので、十分な吸収容量が確保される。
【0037】
図10に示すおむつ1は、吸収体23が、吸収性ポリマーを含む吸収性コア23aと、該吸収性コア23aを被覆する液透過性の被覆シート23bとからなる。吸収性コア23aとしては、例えばフラッフパルプ等の親水性吸水繊維及び吸収性ポリマーの粒子の混合積繊体や、上述した吸収シートが挙げられる。
吸収体23は、吸収性コア23aの非存在部を有し、この非存在部が貫通部形成予定部4になっている。したがって貫通部形成予定部4には吸収性ポリマーが実質的に非存在である。それゆえ、貫通部形成予定部4に貫通部を形成しても、該貫通部からの吸収性ポリマーの脱落は生じない。
「実質的に非存在」とは、貫通部形成予定部4に吸収性ポリマーが全く存在しない場合に加えて、貫通部形成予定部4における吸収性ポリマーの坪量が、吸収性コア23aにおける吸収性ポリマーの平均坪量の5質量%未満程度の存在も許容する意味である。
貫通部形成予定部4においては、吸収性コア23aの上面及び下面を被覆する被覆シート23bどうしが直接に接合されており、吸収体23における貫通部形成予定部4以外の部位よりも厚みが薄くなっている。したがって、貫通部形成予定部4に貫通部を容易に形成できる。
【0038】
図7ないし図10に示す実施形態のおむつ1においては、吸収体23における貫通部形成予定部4の厚みが、吸収体23における他の部位よりも小さくなっているか、あるいは貫通部形成予定部4に吸収材が存在していない。したがって、吸収体23においては、貫通部形成予定部4の剛性が、貫通部形成予定部4以外の部位の剛性よりも低くなっている。吸収体23における貫通部形成予定部4の剛性を、それ以外の部位の剛性よりも低くすることで、貫通部形成予定部4に貫通部を容易に形成できるという利点がある。
上述の利点を一層顕著なものにする観点から、吸収体23における貫通部形成予定部4の剛性は、30g以下であることが好ましく、20g以下であることが更に好ましく、15g以下であることが一層好ましい。
一方、吸収体23における貫通部形成予定部4以外の部位の剛性は、吸収体23における貫通部形成予定部4の剛性よりも高いことを条件として、20g以上100g以下であることが好ましく、30g以上80g以下であることが更に好ましく、30g以上50g以下であることが一層好ましい。
【0039】
吸収体23における貫通部形成予定部4の剛性及び貫通部形成予定部4以外の部位の剛性は、以下の方法で測定される。
まず、吸収性物品をサイドシール部で切り離して展開状態とし、その展開状態の吸収性物品を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に拡げたときの寸法と同じ)となるまで拡げる。以下、この状態を「展開且つ伸長状態」という。次に、この状態の吸収性物品を縦方向に二等分する位置よりも背側部側の領域を対象として、幅30mm×長さ100mmのサンプルを切り出す。このとき、サンプル内に剛性測定の対象部位である貫通部形成予定部又は貫通部形成予定部以外の部位が含まれるようにする。また、サンプルは、該サンプルの長手方向が吸収性物品の長さ方向と一致するように切り出す。そして、得られたサンプルの剛性をハンドロメーター(大栄科学精器製作所製)により測定する。具体的には、ブレードの長手方向をサンプルの幅方向に一致させて、試験台のスリット上に該サンプルを肌対向面が上となるように載置し、該サンプルの上からブレードを下降させる。ブレードの下降距離は試験台面から8mmとし、試験台のスリット幅は30mmとする。このようにして測定された値を剛性とする。
【0040】
以上の図1ないし図10に示す実施形態のおむつ1によれば、吸収材の脱落が生じにくい工夫が吸収体23に施されているので、おむつ1に貫通部51を形成したとしても該貫通部51からの吸収材の脱落が抑制される。
以上の工夫をまとめると、(a)吸収体23において、吸収性ポリマーの存在位置を特定の領域に偏在化させるか、(b)吸収体23として吸収シートを用いるか、又は(c)吸収体23の厚み方向の断面を横方向Yに沿ってみたときに、吸収体23における貫通部形成予定部4に隙間を空ける等が挙げられる。
具体的には、吸収体23として吸収シートを用いることが好ましく、該吸収シートとしては、同一の又は異なる2枚の液透過性シートの間に吸収性ポリマーが挟持された構造を有するものが好ましい。また、吸収シートとしては、同一の又は異なる2枚の液透過性シートの間に吸収性ポリマーの粒子が挟持されており且つ両シートの間に存在する接着剤によって吸収性ポリマーの粒子が固定された構造を有するものも好ましい。
以上の工夫が施された本発明の実施形態においては、吸収体23が存在する領域に、例えば長さ100mmの貫通スリットを設けた場合、該貫通スリットからの吸収材の脱落率が7質量%以下であることが好ましい。この脱落率は、おむつ1における吸収体23が存在する任意の部位について満足することが最も好ましいが、少なくとも、貫通部形成予定部4に貫通部を形成した状態で満足すれば、本発明の所期の目的は達成される。
吸収材の脱落率は以下の方法により測定することができる。
【0041】
<脱落率の測定方法>
まず、展開且つ伸長状態の吸収性物品を縦方向に二等分する位置よりも背側部側の領域を対象として、幅30mm×長さ100mmのサンプルを切り出し、その質量を測定し、得られた値を初期質量M0とする。切り出したサンプルを、目開き850μmのふるいの上に置いて蓋をする。そして、前記ふるいを、電磁式ふるい振盪機(レッチェ社製、型番AS200 digit CA)によって、振幅メモリ100で10分間振盪する。振盪後のサンプルの質量を測定し、得られた値を振盪後質量M1とする。そして、以下の式から脱落率を算出する。
脱落率(%)=100-(振盪後質量M1/初期質量M0)×100
【0042】
吸収性ポリマー等の吸収材の脱落を一層抑制できるようにする観点から、吸収材の脱落率は、更に好ましくは7%以下、一層好ましくは5%以下である。吸収材の脱落率は、小さければ小さい程、周囲の汚染防止や、おむつ1の吸収性能の低下防止の観点から好ましい。
【0043】
これまでの実施形態は、使用前のおむつには貫通部が形成されておらず、おむつ1の使用に際しておむつ1に貫通部を形成するものに関していたが、以下に説明する実施形態は、使用前の状態のおむつに既に貫通部が形成されているものに関する。
【0044】
図11に示す実施形態のおむつ1は、吸収体23が存在する領域において、該おむつ1を厚み方向Zに貫通する貫通部51を有する。貫通部51は、おむつ1の着用前の状態において、該おむつ1に形成されている。貫通部51は、その全域が、吸収体23が存在する領域内に存在していてもよいし、その一部のみが、吸収体23が存在する領域内に存在していてもよい。図11には、貫通部51の全域が、吸収体23が存在する領域内に存在している状態が示されている。具体的には、貫通部51は、股下部Cに位置している。
【0045】
貫通部51は、おむつ1の着用状態において着用者の排泄部に対応する位置に設けられていることが好ましい。こうすることにより、おむつ1を脱がせることなく、貫通部51を通じて、着用者の排泄部に対して、各種の医療処置や介助処置、例えば薬を塗布する等の処置を施すことができる。おむつ1を脱がせることなく、座薬を挿入したり、浣腸を施したりすることができるようにする場合には、前記排泄部は肛門である。
【0046】
貫通部51の平面視における形状に特に制限はなく、上述した各種の医療処置や介助処置を行いやすい形状であればよい。貫通部51の形状は例えば直線状、円形、楕円形、三角形及び四角形等の多角形、及びそれらの任意の組み合わせなどが挙げられる。特に、貫通部51からの吸収材の脱落を抑制する観点から、貫通部51の平面視における形状はスリット状(すなわち隙間のない切れ目)であるか、又は幅の狭い四角形であることが好ましい。
【0047】
着用者の体型等によって排泄部の位置が、おむつ1の縦方向Xにおいて異なる場合があるので(横方向Yにおいて排泄部の位置が異なることはない。)、貫通部51を通じて着用者の排泄部に容易に処置できるようにする観点から、貫通部51は、おむつ1の縦方向Xに沿って延びていることが好ましい。
【0048】
おむつ1には、着用者の身体から最も遠くに位置する部材における貫通部51の位置に、目印となる表示部(図示せず)を付してもよい。こうすることにより、着用者がおむつ1を着用しているときであっても、貫通部51の位置を容易に認識することができるようになる。表示部は、例えば、外層シート32の非肌対向面に文字、図形、記号又は着色を施すことにより形成できる。
【0049】
おむつ1は、上述のとおり、使用前の状態において既に貫通部51を有する。したがって、例えばおむつ1の着用者に浣腸等を施す場合に、図1に示す実施形態のおむつと異なり、着用前におむつ1に貫通部を形成する前処理を施す必要がない。したがって、従来のおむつと同様におむつ1を着用し、貫通部51を通じて浣腸容器を挿入することができる。
【0050】
従来のおむつにおいては、該おむつにおける吸収体が存在する領域に、該おむつを厚み方向に貫通する貫通部を予め形成すると、該貫通部を通じて、該吸収体に含まれる吸収性ポリマー等の吸収材が脱落してしまう恐れがある。このこととは対照的に、図11に示す実施形態のおむつ1においては、貫通部51からの吸収材の脱落が生じにくい工夫が施されている。以下、この点について説明する。
【0051】
図11に示すおむつ1においては、吸収体23が、同一の又は異なる2枚の液透過性シートの間に吸収性ポリマーが挟持された構造を有する吸収シートを備えている。吸収シートの詳細については既に述べたとおりである。吸収体23は、個々に区分された複数の吸収部24がおむつ1の面方向に配置されて構成されている。「面方向に配置」とは、複数の吸収部24がおむつ1の縦方向X及び/又は横方向Yに沿って配置されていることをいい、複数の吸収部24が横方向Yに沿って配置されている態様が一例として挙げられる各吸収部24は1枚の吸収シートを2枚重ねた構造を有している。隣り合う吸収部24の間には隙間が生じている。同図に示すおむつ1においては、隣り合う吸収部24の間の隙間が貫通部51である。隣り合う吸収部24の間には吸収材が存在していないので、つまり貫通部51には吸収材が存在していないので、貫通部51からの吸収材、特に吸収性ポリマーの粒子の脱落は生じない。吸収体23のうち、貫通部51以外の部位では、吸収シートが2枚重ねになっているので、十分な吸収容量が確保される。
【0052】
図12に示すおむつ1は、図11に示すおむつの変形例である。図11に示すおむつ1においては、各吸収部24が、1枚の吸収シートを2枚重ねた構造を有していたのに対して、図12に示すおむつ1においては、各吸収部24が、1枚の吸収シートのみからなり且つ該1枚の吸収シートが二つ折りされて2枚重ねの構造となっている。各吸収部24を構成する各1枚のシートは、折り曲げ部24aどうしが対向するように配されている。同図に示すおむつ1においては、隣り合う吸収部24の間の隙間が貫通部51である。隣り合う吸収部24の間には吸収材が存在していないので、つまり貫通部51には吸収材が存在していないので、上述した図11に示すおむつ1と同様に、貫通部51からの吸収材、特に吸収性ポリマーの粒子の脱落は生じない。しかも、吸収体23のうち、貫通部形成予定部4以外の部位では、吸収シートが2枚重ねになっているので、十分な吸収容量が確保される。
【0053】
図13に示すおむつ1は、吸収体23が、吸収性ポリマーを含む吸収性コア23aと、該吸収性コア23aを被覆する液透過性の被覆シート23bとからなる。吸収性コア23aとしては、例えばフラッフパルプ等の親水性吸水繊維及び吸収性ポリマーの粒子の混合積繊体や、上述した吸収シートが挙げられる。
吸収体23は、吸収性コア23aの非存在部を有し、この非存在部が貫通部51になっている。したがって貫通部51からの吸収材の脱落は生じない。
【0054】
以上の図11ないし図13に示す実施形態によれば、貫通部51が形成されたおむつ1における吸収体23に、吸収材の脱落が生じにくい工夫が施されているので、貫通部51からの吸収材の脱落が抑制される。吸収材の脱落率は、好ましくは7質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下であり、一層好ましくは3質量%以下である。
脱落率の測定方法は以下の方法により測定することができる。
<脱落率の測定方法>
まず、貫通部が形成されている吸収性物品の質量を測定し、得られた値を初期質量M0とする。吸収性物品を目開き850μmのふるいの上に置いて蓋をする。そして、前記ふるいを、電磁式ふるい振盪機(レッチェ社製、型番AS200 digit CA)によって、振幅メモリ100で10分間振盪する。振盪後の前記吸収性物品の質量を測定し、得られた値を振盪後質量M1とする。そして、以下の式から脱落率を算出する。
脱落率(%)=100-(振盪後質量M1/初期質量M0)×100
【0055】
なお、図11ないし図13に示す実施形態については、図1ないし図5に示す実施形態と異なる点について主として説明した。図11ないし図13に示す実施形態に関して特に説明しなかった点については、図1ないし図5に示す実施形態と同様であり、同実施形態についての説明が適宜適用される。
【0056】
次に、上述した図1ないし図13に示す実施形態に共通する事項について説明する。
表面シート21としては、液透過性を有するシート、例えば不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。表面シートは、その肌対向面側が凹凸形状になっていてもよい。例えば表面シートの肌対向面側に、散点状に複数の凸部を形成することができる。あるいは、表面シートの肌対向面側に、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成することができる。そのような目的のために、2枚以上の不織布を用いて表面シート21を形成することもできる。
【0057】
一方、裏面シート22としては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。使い捨ておむつの肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シートの外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
【0058】
吸収体23が吸収シートからなる場合、該吸収シートが有する液透過性シートとしては、木材パルプ等の繊維材料を主体とする繊維シート等を用いることができる。
【0059】
吸収体23が吸収性コア23aを有する場合、該吸収性コア23aは、例えばパルプを初めとするセルロース等の親水性吸水繊維の積繊体、該親水性吸水繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成される。被覆シート23bとしては、例えば親水性吸水繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。
【0060】
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、上述の実施形態は、乳幼児又は成人用のパンツ型使い捨ておむつに係るものであったが、これに代えて本発明を、乳幼児又は成人用の展開型使い捨ておむつに適用してもよい。展開型使い捨ておむつは、一般に、着用時に使用される止着構造を具備している。止着構造は、典型的には、おむつ1の背側部Bの縦方向Xに沿う両側縁部に配置された一対のファスニングテープと、おむつ1の腹側部Aの非肌対向面に配置されたターゲット領域とを含んで構成されている。ファスニングテープには止着部が設けられており、おむつ1を着用する際には、止着部をターゲット領域に止着する。ターゲット領域は、止着部が着脱自在に止着可能になされている。典型的には、止着部は機械的面ファスナーのオス部材からなり、ターゲット領域は機械的面ファスナーのメス部材からなる。
【符号の説明】
【0061】
1 パンツ型使い捨ておむつ
2 吸収性本体
21 表面シート
22 裏面シート
23 吸収体
3 外装体
31 内層シート
32 外層シート
33 ウエスト弾性部材
34 胴周り弾性部材
35 レッグ弾性部材
4 貫通部の形成予定部
51 貫通部
52 表示部
WH ウエスト開口部
LH レッグ開口部
S サイドシール部
A 腹側部
B 背側部
C 股下部
X 縦方向
Y 横方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13