(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240723BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20240723BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20240723BHJP
G01N 33/86 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/02 J
G01N35/00 A
G01N21/59 Z
G01N33/86
(21)【出願番号】P 2020219477
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 順一
(72)【発明者】
【氏名】小野木 和了
(72)【発明者】
【氏名】杉山 清浩
(72)【発明者】
【氏名】川辺 俊樹
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-005562(JP,A)
【文献】特開2000-039400(JP,A)
【文献】特開2002-214241(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002394(WO,A1)
【文献】特開2015-206612(JP,A)
【文献】特開2012-149903(JP,A)
【文献】特開2016-191677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収容する容器に光を出力する光源と、
前記光に含まれる波長のうち測定時間において主波長から得られる値と、前記光に含まれる波長のうち前記測定時間において副波長から得られる値とを用いた比色分析により前記検体の分析を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記測定時間における前記副波長から得られる値の最大値と最小値との差分が所定値以上である場合に、異常であることを特定
し、
前記測定時間における前記主波長から得られた値の最大値と最小値との差分を求め、前記測定時間における前記副波長から得られる値の最大値と最小値との差分と、前記測定時間における前記主波長から得られた値の最大値と最小値との差分が所定値以上である場合に、前記主波長と前記副波長とを用いた比色分析が異常であることを特定する、測定装置。
【請求項2】
前記副波長は、前記検体の分析において前記容器の傷および前記容器に収容された検体の濁りの影響を除去するための波長である、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記光源から出力された光が導入され、前記容器中に収容された検体を透過した透過光を検出して検出信号を出力する測光部をさらに備え、
前記制御装置は、前記測定時間における前記副波長から得られる出力値の最大値と最小値との差分が所定値以上である場合に、前記測光部が異常であることを特定する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記測光部での検出の終了後に前記容器を廃棄するための廃棄部をさらに備える、
請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記容器がそれぞれに配置可能な複数の測定用ポートをさらに備え、
前記制御装置は、
前記異常であることを特定した場合、前記異常であることを特定したときに前記容器が配置されていた測定用ポートから別の前記測定用ポートに、前記容器を移動させ、
前記別の測定用ポートに移動された前記容器に対して出力された前記光に含まれる波長のうち前記測定時間において主波長から得られる値と、前記光に含まれる波長のうち前記測定時間において副波長から得られる値とに基づいて、再度、前記検体の分析を行う、請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記制御装置は、全ての前記別の測定用ポートのそれぞれにおいて、再度、前記検体の分析を行った場合であっても、該全ての別の測定用ポートのそれぞれにおいて前記異常であることが特定した場合に、前記異常であることをユーザに報知する、
請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記異常であることを特定した場合、前記異常であることを特定したときの測定用ポートに配置されていた前記容器に対して出力された前記光に含まれる波長のうち前記測定時間において主波長から得られる値と、前記光に含まれる波長のうち前記測定時間において副波長から得られる値とに基づいて、再度、前記検体の分析を行い、
該再度行われた分析の回数が所定回数に到達した場合に前記容器を前記別の測定用ポートに移動させる、
請求項5または
請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記異常であることが特定されたときに前記容器が配置されていた測定用ポートを報知する、請求項6~
請求項7のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記異常であることを特定した場合に、前記主波長から得られる値と前記副波長から得られる値とに基づいて、再度、前記検体の分析を行い、
該再度行われた分析での前記測定時間における前記副波長から得られる値の最大値と最小値との差分が所定値以上である場合に、異常であることを特定する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項10】
前記再度行われた前記検体の分析の回数が、所定回数に到達した場合に、前記異常であることをユーザに報知するとともに、分析を停止させる、
請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記測定装置は、前記主波長から得られる値が適正範囲に属している場合に、前記検体を分析可能であり、
前記再度行われた前記検体の分析において、前記主波長から得られる値が前記適正範囲に属していない場合に、前記異常であることをユーザに報知するとともに、分析を停止させる、
請求項9または
請求項10に記載の測定装置。
【請求項12】
前記主波長から得られる値は、前記主波長の吸光度に関する値であり、
前記副波長から得られる値は、前記副波長の吸光度に関する値である、請求項1~
請求項11のいずれか1項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検体を分析するために、比色分析を行う分析装置が従来から知られている。特許文献1記載の分析装置は、光源から出力された光の主波長の吸光度および副波長の吸光度に基づいて検体の成分値を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定光を用いた分析において、検体の分析の精度をより向上させることが要望されている。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、検体の分析の精度を向上させる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従う測定装置は、検体を収容する容器に光を出力する光源と、前記光に含まれる波長のうち測定時間において主波長から得られる値と、前記光に含まれる波長のうち前記測定時間において副波長から得られる値とに基づいて、前記検体の分析を行う制御装置とを備える。前記副波長は、前記検体の分析の影響を除去するための波長である。前記制御装置は、前記測定時間における前記副波長から得られる値の最大値と最小値との差分が所定値以上である場合に、異常であることを特定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、検体の分析の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態1に従う分析装置の全体構成を機能的に示す図である。
【
図2】分析装置の分析テーブルの構成例を示す平面図である。
【
図4】比色ポート及び参照ポートの構成例を示す平面図である。
【
図6】比色ポート及び参照ポートの光学系の構成例を示す図である。
【
図8】比色法を用いた測定系の構成を機能的に示すブロック図である。
【
図10】副波長の吸光度の反応曲線を示す図である。
【
図12】制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図13】試薬と、第2所定値との関係を示す図である。
【
図15】分析装置の主な処理のフローチャートである。
【
図16】実施の形態1の血液凝固分析装置と、測定装置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
<実施の形態1>
[全体構成]
本開示の血液凝固分析装置(以下、単に「分析装置600」と称する。)の全体構成を説明する。分析装置600は、プローブ(ノズル)により検体及び試薬をキュベットに分注し、キュベット内の反応状態を光学的に測定するように構成される。検体は、たとえば、血液成分(血清又は血漿)や尿等である。以下では、検体を「サンプル」或いは「試料」と称する場合がある。また、キュベットは、本開示の「容器」に対応する。
【0011】
図1は、本実施の形態1に従う分析装置600の全体構成を機能的に示す図である。本実施の形態1で説明される分析装置600は、血液凝固分析装置600の一例である。
【0012】
図1を参照して、この分析装置600は、キュベット供給装置110と、キュベット移送装置120と、攪拌装置200と、制御装置354と、キュベット廃棄容器400とを備える。なお、以下では、キュベット供給装置110、キュベット移送装置120、及びキュベット廃棄容器400を、それぞれ単に「供給装置110」、「移送装置120」、及び「廃棄容器400」と称する。
【0013】
分析装置600は、サンプル分注ポートP1をさらに備える。供給装置110は、キュベット収容部111(以下、単に「収容部111」と称する。)と、供給機構112とを含む。収容部111は、多数のキュベット(たとえば最大で1000個)を収容可能に構成される。供給機構112は、収容部111に収容されているキュベットをサンプル分注ポートP1へ供給する。収容部111及び供給機構112の詳細については、後ほど
図2にて説明する。
【0014】
サンプル分注ポートP1は、図示しないサンプル分注装置によってキュベットに検体を分注可能な位置に配置される。サンプル分注ポートP1にキュベットがセットされると、サンプル分注装置によってキュベットに検体が分注される。
【0015】
移送装置120は、チャック付きアーム121(以下、単に「アーム121」と称する)と、駆動装置122とを含む。アーム121は、キュベットを把持可能に構成されたチャックを有する。アーム121は、チャックによってキュベットを着脱可能に保持するように構成されている。駆動装置122は、アーム121(チャック)を作動させてチャックの位置を変えるように構成される。アーム121及び駆動装置122の詳細についても、後ほど
図2にて説明する。
【0016】
分析装置600は、移送装置120によりキュベットを移送可能な複数のポート、具体的には、攪拌ポートP2、測光ポートP3、及び廃棄ポートP5をさらに備える。測光ポートP3は、複数の凝固ポートP3aと、複数の比色ポートP3bとを含む。サンプル分注ポートP1、攪拌ポートP2、測光ポートP3、及び廃棄ポートP5の各々には、キュベットの有無を検出するポートセンサが設けられている。
【0017】
攪拌ポートP2は、攪拌装置200の攪拌位置に配置される。攪拌装置200は、攪拌ポートP2にキュベットがセットされると、所定の条件(たとえば、攪拌速度及び攪拌時間)でキュベットの内容物を攪拌するように構成されている。
【0018】
凝固ポートP3a及び比色ポートP3bの各々は、図示しない測光部に配置されている。凝固ポートP3a及び比色ポートP3bの各々には、光源から光が照射され、照射された光を検出する光検出器(図示せず)が設けられている。
【0019】
制御装置354は、凝固ポートP3a及び比色ポートP3bの各々の光検出器から光量の検出結果を受け、各ポートにセットされたキュベットの内容物に対して所定の測定を行う。すなわち、制御装置354は、凝固ポートP3aについては、光検出器によって検出される散乱光の光量を用いて、キュベット内の検体の凝固時間測定を行う。また、制御装置354は、比色ポートP3bについては、光検出器によって検出される透過光の光量を用いて、比色法に基づいて、キュベット内の検体の吸光度を測定する。
【0020】
なお、凝固ポートP3aに対する光源には、たとえば発光ダイオードを採用することができ、凝固ポートP3aに設けられる光検出器には、たとえばフォトダイオードを採用することができる。凝固ポートP3aの光検出器は、90°散乱光(光の照射方向に直交する方向の散乱光)の光量を検出するように配置されている。
【0021】
また、比色ポートP3bに対する光源には、たとえばハロゲンランプを採用することができる。後述のように、比色ポートP3bに供給される光の波長は、分析条件に応じてフィルタにより切替可能である。比色ポートP3bに設けられる光検出器には、たとえばフォトダイオードを採用することができる。比色ポートP3bの光検出器は、透過光の光量を検出するように配置されている。
【0022】
この分析装置600は、比色ポートP3bにセットされたキュベット内の検体の吸光度を測定するために、参照ポートP4をさらに備えている。参照ポートP4は、各比色ポートP3bと同じ構成を有しているが、キュベットがセットされることはなく、光源からの光以外の光が参照ポートP4内に入らないように蓋等で遮光されている。そして、比色法に基づいて、比色ポートP3bに設けられる光検出器によって検出される光量と、参照ポートP4に設けられる光検出器によって検出される光量との比(光量比)から検体の吸光度が測定され、検体の比色分析が行われる。比色法による分析測定については、後ほど詳しく説明する。
【0023】
なお、本開示の技術では、「分析測定」とは、測光ポートP3にキュベットをセットして測定データを取得することを意味し、測光ポートP3(比色ポートP3b)にキュベットを未挿入の状態で測定を行う後述の「ブランク測定」と区別される。
【0024】
廃棄ポートP5は、使用済みのキュベットを回収するように構成される。廃棄ポートP5は、たとえば配管を通じて廃棄容器400に接続されている。廃棄ポートP5にキュベットが投入されると、キュベットは廃棄容器400へ導かれる。
【0025】
図2は、分析装置600の分析テーブルの構成例を示す平面図である。
図2には、互いに直交する3つの軸(X軸、Y軸及びZ軸)が示されており、X軸及びY軸は、それぞれ分析装置600の幅方向及び奥行き方向を示し、Z軸は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示している。Z軸の矢印が指し示す方向は上方向であり、その反対方向は下方向(すなわち重力方向)である。
【0026】
図2とともに
図1も参照して、収容部111には、多数のキュベット100が収容されている。ユーザは、収容部111の投入口(図示せず)から収容部111内へキュベット100を補給することができる。キュベット100は、光を透過可能であれば材質は任意であり、たとえば透明のアクリル製のものを採用することができる。
【0027】
供給機構112は、収容部111からキュベット100を1つずつ取り出してサンプル分注ポートP1に供給するように構成される。供給機構112におけるキュベット100の移送方式は任意であり、たとえば、滑り台方式(自重方式)、ベルトコンベア方式、ローラ方式、スライド方式のいずれであってもよい。供給機構112は、サンプル分注ポートP1のポートセンサの検出結果を受信し、サンプル分注ポートP1が空いたら次のキュベット100をポートP1に供給するように構成される。但し、これに限られず、供給機構112は、後述の制御装置からの指示に従ってキュベット100をサンプル分注ポートP1に供給するように構成されてもよい。
【0028】
アーム21は、サンプル吸引ポートP21から吸引される検体を、サンプル分注ポートP1にセットされたキュベット100へ分注するための機器(サンプル分注装置)である。アーム21は、プローブ21aと、アーム本体21bとを含む。アーム本体21bは、回転軸23aの回りを旋回可能に構成されており、アーム本体21bが旋回することによって、アーム本体21bの先端に設けられるプローブ21aは、XY平面において円弧状の軌道L2を描くように移動することができる。
【0029】
アーム本体21bが旋回することによって、プローブ21aは、軌道L2上に設けられたサンプル分注ポートP1、サンプル吸引ポートP21、SポートP22(より特定的には、ポートP22a~P22i)、及び洗浄ポートP23の各々に移動することができる。なお、SポートP22について、たとえば、ポートP22a,P22bは洗剤ポートであり、ポートP22c,P22d,P22eは緩衝液ポートであり、ポートP22f,P22g,P22h,P22iは希釈液ポートである。
【0030】
なお、図示していないが、サンプル吸引ポートP21の下方には、可動式のサンプルラックが設けられている。サンプルラックには、血液成分や尿等の検体が入った複数のサンプル容器が載置されており、サンプル分注ポートP1にセットされたキュベット100へのサンプルの分注に先立ち、サンプルラックは、分注対象のサンプル容器がサンプル吸引ポートP21の直下に配置されるように作動する。CTS機構24は、サンプル吸引ポートP21の近傍に設けられ、分注対象のサンプル容器にキャップが付いている場合に、ピアサでキャップを穿孔するように構成される。
【0031】
測光部130には、複数の測光ポートP3(複数の凝固ポートP3a及び比色ポートP3b)が円弧状に配置されている。この例では、複数(本実施の形態では14個)の凝固ポートP3aと、複数(本実施の形態では6個)の比色ポートP3bが配置されている。アーム11は、吸引ポートP11から吸引される試薬を、測光ポートP3にセットされている対象のキュベット100へ分注するための機器であり、プローブ11aと、アーム本体11bとを含む。アーム本体11bは、回転軸13aの回りを旋回可能に構成されており、アーム本体11bが旋回することによって、アーム本体11bの先端に設けられるプローブ11aは、XY平面において円弧状の軌道L1を描くように移動することができる。
【0032】
アーム本体11bが旋回することによって、プローブ11aは、軌道L1上に設けられた各凝固ポートP3a、各比色ポートP3b、吸引ポートP11,P12、回収ポートP13の各々に移動することができる。なお、特に図示していないが、実際には、プローブ11aは試薬間のコンタミネーションを回避するために2本のプローブで構成される。試薬トレイ31a(後述)は外周トレイと内周トレイとを有している。外周トレイ上の試薬(又は洗浄液)及び内周トレイ上の試薬(又は洗浄液)をそれぞれ2本のプローブで吸引ポートP11,P12から吸引することができる。なお、回収ポートP13は、使用済みの洗浄液を回収するポートであり、特に図示しないが、プローブ11aから吐出される水を溜めてプローブ先端の外面を洗浄する水溜め部と、液体を廃棄する廃棄部とを含む。
【0033】
参照ポートP4は、測光ポートP3(測光部130)とは別の場所に設けられる。上述のように、参照ポートP4は、各比色ポートP3bと同じ構成であるが、キュベット100をセットする必要がないため、たとえば、分析テーブル上ではなく分析装置600の内部に配置される。
【0034】
吸引ポートP11,P12の下方には、複数の試薬容器1及び複数の洗剤容器1aが載置された試薬トレイ31aが設けられており、試薬トレイ31aは、試薬保冷庫31内に設けられている。複数の試薬容器1は、互いに異なる試薬を保有しており、複数の洗剤容器1aは、互いに異なる洗剤を保有している。試薬トレイ31aは、円盤状のターンテーブルによって構成され、ターンテーブルを駆動することにより、所望の試薬容器1又は洗剤容器1aを吸引ポートP11,P12の直下に配置することができる。
【0035】
アーム121は、チャック121aと、アーム本体121bとを含む。チャック121aは、キュベット100を把持可能に構成される。チャック121aがキュベット100を保持する方式は任意であり、チャック121aは、メカニカルチャックであってもよいし、マグネットチャックであってもよいし、真空チャックであってもよい。アーム本体121bは、回転軸13aの回りを回転体122aとともに旋回可能に構成されている。回転体122aが回転することによって、回転体122aと一体的にアーム本体121bが旋回し、アーム本体121bの先端に設けられるチャック121aは、XY平面において円弧状の軌道L1を描くように移動することができる。
【0036】
上記のように、アーム11とアーム121との旋回中心は同じである。軌道L1上には、サンプル分注ポートP1と、攪拌ポートP2と、廃棄ポートP5と、複数の測光ポートP3(複数の凝固ポートP3a及び複数の比色ポートP3b)と、吸引ポートP11,P12と、回収ポートP13とが設けられている。そして、アーム121は、サンプル分注ポートP1、攪拌ポートP2、各測光ポートP3、及び廃棄ポートP5にチャック121aを移動させることができ、アーム11は、吸引ポートP11,P12、回収ポートP13、攪拌ポートP2、及び各測光ポートP3にプローブ11aを移動させることができる。
【0037】
図3は、測光部130の構成例を示す図である。
図3を参照して、測光部130には、複数の凝固ポートP3a及び比色ポートP3bが円弧状に配置されている。より詳しくは、複数の凝固ポートP3a及び比色ポートP3bは、各ポートのキュベット挿入口が円弧状の軌道L1に沿うように配置されている。この例では、14個の凝固ポートP3aと、6個の比色ポートP3bが配置されている。なお、凝固ポートP3a及び比色ポートP3bの数及び配置順は、図示されたものに限定されるものではない。
【0038】
なお、上述のように、参照ポートP4(図示せず)は、凝固ポートP3a及び比色ポートP3bが設けられる測光部130には配置されておらず、たとえば分析装置600の内部に配置される。
【0039】
図4は、比色ポートP3b及び参照ポートP4の構成例を示す平面図である。また、
図5は、
図4の断面V-Vの構成を示す断面図である。なお、参照ポートP4の構成は、比色ポートP3bの構成と同じであるため、以下では比色ポートP3bについて代表的に説明する。
【0040】
図4及び
図5を参照して、比色ポートP3bは、レンズホルダ310と、光ファイバーケーブル312と、キュベット挿入口314と、光検出器316とを含む。レンズホルダ310は、先端部にレンズを有し、比色ポートP3bの差込口に差し込まれている。レンズホルダ310は、図示しない光源から光ファイバーケーブル312を通じて受ける光を、レンズを通じてキュベット挿入口314へ向けて出力する。
【0041】
キュベット挿入口314は、移送装置120(アーム121)により移送されたキュベット100を脱着可能に構成される。キュベット挿入口314にキュベット100が挿入されると、図示しないポートセンサによってキュベット100の挿入が検知される。
【0042】
光検出器316は、キュベット挿入口314を挟んでレンズホルダ310の反対側に設けられる。光検出器316は、キュベット挿入口314に挿入されたキュベット100内の検体の測定が行われるときは、レンズホルダ310からキュベット100に照射されてキュベット100を透過した透過光の光量を検出する。キュベット挿入口314にキュベット100が未挿入の状態でブランク測定が行われるときは、光検出器316は、レンズホルダ310から出力される光の光量を直接検出する。光検出器316は、たとえばフォトダイオードによって構成される。そして、光検出器316は、接続ケーブル318を通じて基板320へ検出信号を出力する。
【0043】
なお、参照ポートP4については、キュベット挿入口314に外部から光が入らないように、キュベット挿入口314に遮光用の蓋が設けられており、光検出器316は、レンズホルダ310から出力される光の光量を常時直接検出する。
【0044】
図6は、比色ポートP3b及び参照ポートP4の光学系の構成例を示す図である。
図6を参照して、複数(この例では6個)の比色ポートP3b及び参照ポートP4に装着される各レンズホルダ310には、共通の光源330からの光が供給される。
【0045】
光源330は、たとえばハロゲンランプである。光源330から出力される光は、フィルタ装置332を通って1本の光ファイバーケーブル334に供給される。フィルタ装置332は、光源330の出力近傍に設けられ、特定の波長の光を通過させる光学フィルタを有する。フィルタ装置332は、複数の光学フィルタを有しており、光学フィルタを切替えることによって通過させる光の波長を切替可能に構成されている。
【0046】
図7は、フィルタ装置332の構成例を示す平面図である。
図7を参照して、フィルタ装置332は、円周方向に複数の開口が設けられた円形ドラムによって構成される。この例では、円周方向に等間隔に4つの開口が設けられており、そのうちの3つの開口部に、通過させる波長が互いに異なる光学フィルタ340a~340cが装着されている。光学フィルタ340a~340cは、たとえば干渉フィルタによって構成され、それぞれ405nm,570nm,730nmの波長の光を透過させる。
【0047】
光源330から出力された光がフィルタ装置332を経由することにより、本実施の形態の分析装置600は、主波長の光と、副波長の光とをキュベット100に出力できる。
【0048】
このように、この分析装置600は、検体(キュベット)に照射される光の波長を切替可能に構成されており、検体及び検査項目に応じた特定の波長の光を比色分析に用いることができる。たとえば、この分析装置600は、主波長の光と、副波長の光とに基づいた比色分析を行うことができる。
【0049】
再び
図6を参照して、光源330からの光は、フィルタ装置332の光学フィルタを通って1本の光ファイバーケーブル334に供給される。光ファイバーケーブル334は、7本の光ファイバーケーブル312に分岐され、そのうちの6本の光ファイバーケーブル312は、6つの比色ポートP3bに接続され、残り1本の光ファイバーケーブル312は、参照ポートP4に接続される。
【0050】
次に、本実施の形態1に従う分析装置600において、比色法による分析測定システムの構成について説明する。
【0051】
図8は、比色法を用いた測定系の構成を機能的に示すブロック図である。
図8を参照して、光源330から出力される光は、フィルタ340(光学フィルタ340a~340cのいずれか)を通って、各比色ポートP3b及び参照ポートP4に供給される。
【0052】
各比色ポートP3bの出力(光検出器316の出力)は、アンプ350によって増幅され、ポート選択部352に入力される。ポート選択部352は、6つの比色ポートP3bからの出力(アンプ350の出力)のいずれか1つを、制御装置354に接続される出力ポートから出力するように構成される。6つの比色ポートP3bのうち、どのポートの出力を制御装置354へ出力するかは、6つの比色ポートP3bを用いる比色分析の分析スケジュールに従って適宜切替えられる。
【0053】
参照ポートP4の出力(光検出器316の出力)は、アンプ350によって増幅され、制御装置354に入力される。
【0054】
制御装置354は、たとえばLOGアンプの機能を有する。制御装置354は、たとえば、「ポート選択部352からの出力」を「参照ポートP4からの出力(アンプ350の出力)」で除算した値の対数値を出力する。すなわち、制御装置354は、比色ポートP3bにおいて測定される光量と、参照ポートP4において測定される光量との比を吸光度として算出する。制御装置354は、主波長についての吸光度と、副波長についての吸光度とを算出する。
【0055】
制御装置354は、主波長についての吸光度と副波長についての吸光度とに基づいて検体を分析する。本実施の形態の検体の分析は、たとえば、検体の濃度を算出することである。典型的には、制御装置354は、主波長についての吸光度と副波長についての吸光度との差分に基づいて検体を分析する。制御装置354からの出力は、AD変換器356によりデジタル信号に変換され、測定データとして出力部358に出力される。
【0056】
なお、通常、副波長は、反応が進行しても吸光度の変化は殆どない。その理由は、副波長は、上述の分析原理上、検体の反応により変化しない波長を、分析装置600の設計者などが選んで設定すること、および、キュベット内の検体の濁りやキュベットのキズ等は、反応が進行しても変化しないためである。このように、副波長は、検体の分析の妨害要因(キュベット内の検体の濁りやキュベットのキズ等)を除去するための波長である。なお、分析装置600のユーザが、副波長を変更できる構成が採用されてもよい。
【0057】
そして、本実施の形態1では、分析測定の開始前に、各比色ポートP3bにキュベット100を未配置の状態で測定するブランク測定が実施される。ブランク測定時の光量比は、正常であれば理論的には1であり、ブランク測定時の上記光量比に基づいて、測定系に異常が生じていないかをチェックすることが可能である。
【0058】
また、本実施の形態の分析装置600は、測定時間に亘って、検体を分析する。測定時間は、たとえば、検体と試薬とが収容されたキュベット100に対して、光源330からの光が当たったときから開始される。測定時間は、たとえば、60秒間である。この測定時間は、予め定められている時間としてもよい。また、この測定時間は、ユーザが設定できる時間としてもよい。
【0059】
[吸光度について]
次に、吸光度について説明する。
図9は、主波長の吸光度の反応曲線である。
図10は、副波長の吸光度の反応曲線である。
図11は、主波長の吸光度と、副波長の吸光度との差分(以下、「吸光度差」という。)の反応曲線である。
図9および
図10において、横軸は、経過時間を示し、縦軸は、吸光度を示す。
図11において、横軸は、経過時間を示し、縦軸は、吸光度差を示す。
図9~
図11において、実線が第1実施例を示し、破線が第2実施例を示す。第1実施例および第2実施例ともに、検体および試薬ともに同一のものであるとする。また、第1実施例および第2実施例ともに同一の環境で、検体の測定が行われたとする。第1実施例は、1回目の測定であり、第2実施例は2回目の測定である。なお、本実施の形態では、分析装置600は、吸光度差の傾きと、検体の濃度とが対応づけられた検量線を予め作成し、この検量線を用いる。分析装置600は、吸光度差の傾きを算出すると、検量線を参照し、算出された吸光度差の傾きに対応する検体の濃度を測定結果として出力する。
【0060】
図9~
図11それぞれの横軸には、タイミングT0~T6が示されている。タイミングT0~タイミングT6の区間は、測定時間である60秒間である。なお、変形例として、タイミングT0~タイミングT6の区間は、測定時間である60秒間よりも短い区間としてもよい。
【0061】
図9では、第1実施例および第2実施例ともに、経過時間の経過に応じて、主波長についての吸光度が増加する例が記載されている。本実施の形態の分析装置600は、経過時間の経過に応じた吸光度の変化度合いは予め想定されている。この変化度合いを「適正な変化度合い」という。たとえば、分析装置600は、反応時間を複数の範囲に分割し、該範囲それぞれにおいて、「測定された吸光度の変化度合い」と、「適正な変化度合い」との差分値(以下、「第1差分値」という。)を算出する。
【0062】
分析装置600は、この第1差分値が極端に大きい場合には、主波長の吸光度の測定について異常が発生していることを特定する。なお、「異常が発生していることを特定する」は、「異常が発生していることを検出する」と表現してもよい。たとえば、分析装置600は、この第1差分値が、第1所定値以上であると判断した場合には、主波長の吸光度の測定について異常が発生していることを特定する。この第1所定値は、予め定められている値である。また、ユーザがこの第1所定値を設定できるようにしてもよい。
【0063】
一方、分析装置600は、この第1差分値が、第1所定値未満であると判断した場合には、主波長の吸光度の測定については異常が発生していない(つまり、正常である)ことを特定するとともに、以後の処理を継続する。
【0064】
次に、副波長について説明する。上述のように、副波長は、反応が進行しても吸光度の変化は殆どない、または、全く変化しない。仮に、測定時間において副波長の吸光度が大きく変化している場合には、副波長の吸光度について異常が発生している。
【0065】
本実施の形態の分析装置600は、副波長の吸光度が大きく変化しているか否かの判断として、測定時間における副波長の吸光度の最大値と該副波長の吸光度の最小値との差分値の絶対値(以下、「第2差分値」という。)を用いる。たとえば、分析装置600は、この第2差分値が、第2所定値以上であると判断した場合には、副波長の吸光度が大きく変化しているということであることから、主波長の吸光度の測定について異常が発生していることを特定する。この第2所定値は、予め定められている値である。また、ユーザがこの第2所定値を設定できるようにしてもよい。一方、分析装置600は、この第2差分値が、第2所定値未満であると判断した場合には、副波長の吸光度が全く変化していないまたは副波長の吸光度が殆ど変化していないということであることから、副波長の吸光度の測定については異常が発生していない(つまり、正常である)ことを特定する。本実施の形態では、第2所定値は、「5」であるとする。つまり、分析装置600は、第2差分値が5以上であると判断した場合には、副波長の吸光度について異常が発生していると判断する。一方、分析装置600は、第2差分値が5未満であると判断した場合には、副波長の吸光度について異常が発生していない(つまり、正常である)ことを特定するとともに、以後の処理を継続する。
【0066】
図10の例の第1実施例では、タイミングT4またはタイミングT5であるときの吸光度は、468であり、測定時間において吸光度の最小値となる。また、第1実施例においてタイミングT3であるときの吸光度は、469であり、測定時間において吸光度の最大値となる。したがって、第2差分値は、「1」となる。この第2差分値である「1」は、第2所定値(=5)未満であることから、分析装置600は、第1実施例での副波長については異常が発生していない(つまり、正常である)ことを特定する。
【0067】
一方、
図10の例の第2実施例では、タイミングT3であるときの吸光度は、480であり、測定時間において吸光度の最大値となる。また、第1実施例においてタイミングT5であるときの吸光度は、474であり、測定時間において吸光度の最小値となる。したがって、第2差分値は、「6」となる。この第2差分値である「6」は、第2所定値(=5)以上であることから、分析装置600は、第2実施例での副波長については異常が発生していることを特定する。
【0068】
図11は、吸光度差を示すグラフである。分析装置600は、所定の演算により、吸光度差の傾きを算出する。所定の演算は、たとえば、最小二乗法である。また、
図11に示すように、タイミングT1~T5の区間では、吸光度差の傾きが、第1実施例と第2実施例とで異なる。本実施の形態では、分析装置600は、第1実施例の吸光度差の傾きと、検量線とに基づいて、検体濃度として30%を出力したとする。また、分析装置600は、第2実施例の吸光度差の傾きと、検量線とに基づいて、検体濃度として10%を出力したとする。
【0069】
上述のように、分析装置600は、第1実施例および第2実施例ともに同一の環境、同一の試薬、および同一の検体に対して該検体の測定を行った。したがって、第1実施例と第2実施例とで、同一の検体濃度を出力する筈である。しかしながら、本実施の形態では、分析装置600は、実施例1と実施例2とで、異なる検体濃度を出力している。このように、実施例1と実施例2とで、異なる検体濃度を出力している理由は、第2実施例の副波長の吸光度について異常が発生しているにもかかわらず、分析装置600は第2実施例での検体濃度を出力しているからである。
【0070】
そこで、本実施の形態では、主波長の吸光度について異常が発生していると特定した場合、または副波長の吸光度について異常が発生していると特定した場合に、検体の分析を行わずに所定の処理を実行する。
【0071】
[制御装置のハードウェア構成例]
図12は、制御装置12の機能構成例である。
図12を参照して、制御装置500は、CPU(Central Processing Unit)530と、RAM(Random Access Memory)532と、記憶装置534と、各種信号を入出力するための入出力バッファ(図示せず)とを含む。
【0072】
CPU530は、記憶装置534に格納されている制御プログラムをRAM532に展開して実行する。この制御プログラムは、制御装置500により実行される各種処理の手順が記されたプログラムである。記憶装置534には、制御プログラムのほか、各種処理に用いられる各種情報やデータも格納されている。制御装置500は、これらの制御プログラム並びに各種情報及びデータに従って、分析装置600における各種処理を実行する。なお、処理については、ソフトウェアによるものに限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0073】
なお、記憶装置534には、たとえば、処理手順を記した制御プログラムのほか、試薬情報、分析スケジュール、分析履歴、および判定条件等の情報又はデータが登録されている。試薬情報は、試薬トレイ31a(
図2)に準備されている各試薬の情報(たとえば、試薬ID、試薬の種類、有効期限等)である。
【0074】
分析スケジュールは、予約された全ての検体の分析を効率良く行うために、検体情報(たとえば、各検体の分析項目)及び各ポートの空き状況等に基づいて決定される。たとえば、分析スケジュールは、分注及び測定の各々のタイミングと、分注対象の検体及び試薬と、測定を行う測光ポートP3(凝固ポートP3a及び/又は比色ポートP3b)とを含む。分析スケジュールは、検体ID毎(検体容器毎)に管理される。
【0075】
分析履歴は、分析の途中経過を含む進行度合いを示し、分析の進行に応じて逐次更新される。分析履歴は、たとえば、キュベットの移動経路(現在位置を含む)と、キュベットに分注された検体及び試薬と、測定が行われた測光ポートP3と、測定結果とを含む。分析履歴は、キュベット毎に管理される。制御装置500及びユーザの各々は、分析履歴を参照することにより、分析スケジュールどおりに分析が行われたか(又は進行しているか)を確認することができる。
【0076】
[第2所定値について]
次に、第2所定値を説明する。本実施の形態の分析装置600は、N個(Nは2以上の整数)の試薬を選択的に使用することができる。また、本実施の形態では、試薬と第2所定値とが対応づけられている。
図13は、N個の試薬A1~ANと、第2所定値G1~GNとの関係を示す図である。
図13の例では、試薬A1には、第2所定値G1が対応づけられている。また、試薬ANには、第2所定値GNが対応づけられている。なお、
図13には特に示されていないが、試薬A2、および試薬A3等にも第2所定値が対応づけられている。
【0077】
分析装置600は、使用する試薬を特定する。分析装置600は、使用する試薬を特定すると、該試薬に対応する第2所定値を特定する。分析装置600は、副波長の吸光度についての異常の有無を、該特定した第2所定値を用いて判断する。なお、変形例として、第2所定値は、「検体と試薬との組合わせ」に対応付けるようにしてもよい。この変形例では、分析装置600は、使用する「検体と試薬との組合わせ」を特定すると、該「検体と試薬との組合わせ」対応する第2所定値を特定する。分析装置600は、副波長の吸光度についての異常の有無を、該特定した第2所定値を用いて判断する。
【0078】
[制御装置の機能構成例]
図14は、制御装置354の機能構成例を示す図である。
図14に示すように、制御装置354は、第1算出部402と、第1判断部404と、第1記憶部406と、第2算出部408と、第2判断部410と、第2記憶部412と、分析部414との機能を有する。
【0079】
第1算出部402には、アンプ350(
図8参照)から、主波長における2つの光量が入力される。2つの光量は、使用されている比色ポートのアンプ350からの光量と、参照ポートP4からの光量とである。第1算出部402は、この2つの光量に基づいて、主波長の吸光度を算出する。第1算出部402は、所定時間が経過する毎に主波長の吸光度を算出する。なお、典型的には、この所定時間が、
図9で説明したタイミングT1~T6のうち隣接するタイミング間の区間となる。たとえば、所定時間は、タイミングT1~タイミングT2の区間である。また、所定時間は、タイミングT1~タイミングT2の区間をさらに複数個に分割された時間としてもよい。
【0080】
第1算出部402は、主波長の吸光度を算出する度に、第1判断部404に送信する。第1判断部404は、測定時間内における主波長の吸光度を蓄積する。たとえば、
図9においては、タイミングT0~タイミングT6までの主波長の吸光度を蓄積する。第1判断部404は、蓄積した主波長の吸光度に基づいて、各タイミング間の主波長の傾きを算出する。
図9の例では、タイミングT0~タイミングT1の区間、タイミングT1~タイミングT2の区間、タイミングT2~タイミングT3の区間、タイミングT3~タイミングT4の区間、タイミングT4~タイミングT5の区間、およびタイミングT5~タイミングT6の区間という6つの区間それぞれでの主波長の傾きを算出する。以下、「6つの区間それぞれでの主波長の傾き」を「6つの傾き」または「全ての傾き」ともいう。第1判断部404は、6つの傾きのそれぞれと第1所定値との第1差分値(つまり、6つの第1差分値)を算出する。なお、第1記憶部406に第1所定値が予め記憶されている。
【0081】
第1判断部404は、6つの第1差分値の全てが、第1所定値未満であるか否かを判断する。第1判断部404が、6つの第1差分値のうち少なくとも1つの第1差分値が第1所定値以上であると判断した場合には、主波長の吸光度が異常であると判断する。また、第1判断部404が、6つの第1差分値のうち全ての第1差分値が第1所定値未満であると判断した場合には、主波長の吸光度が正常であると判断する。
【0082】
第2算出部408には、アンプ350(
図8参照)から、副波長における2つの光量が入力される。2つの光量は、使用されている比色ポートのアンプ350からの光量と、参照ポートP4からの光量とである。第2算出部408は、この2つの光量に基づいて、副波長の吸光度を算出する。第2算出部408は、所定時間が経過する毎に副波長の吸光度を算出する。なお、典型的には、この所定時間が、
図10で説明したタイミングT1~T6のうち隣接するタイミング間の区間となる。たとえば、所定時間は、タイミングT1~タイミングT2の区間である。また、所定時間は、タイミングT1~タイミングT2の区間をさらに複数個に分割された時間としてもよい。
【0083】
第2算出部408は、副波長の吸光度を算出する度に、第2判断部410に送信する。第2判断部410は、測定時間内における副波長の吸光度を蓄積する。たとえば、
図10においては、タイミングT0~タイミングT6までの副波長の吸光度を蓄積する。第2判断部410は、蓄積した副波長の吸光度(つまり、測定時間における副波長の吸光度)のうち、吸光度の最大値と吸光度の最小値を抽出する。
図10の第2実施例では、第2判断部410は、タイミングT3での吸光度を吸光度の最大値として抽出する。また、第2判断部410は、タイミングT5での吸光度を吸光度の最小値として抽出する。さらに、第2判断部410は、抽出した吸光度の最大値と、抽出した吸光度の最小値との差分値の絶対値(つまり、第2差分値)を算出する。
【0084】
第2判断部410は、第2差分値が、第2所定値未満であるか否かを判断する。第2判断部410が、第2差分値が、第2所定値以上であると判断した場合には、副波長の吸光度が異常であると判断する。また、第2判断部410が、第2差分値が、第2所定値未満であると判断した場合には、副波長の吸光度が正常であると判断する。
【0085】
第1判断部404が主波長の吸光度が異常であると判断したことに基づいて、第1判断部404はアーム121を駆動する。この駆動により、主波長の吸光度が異常であると判断された比色ポートから、他の比色ポートにキュベット100を移動させることができる。制御装置354は、他の比色ポートにキュベット100を移動させた後に、再び、該キュベット100内の検体の分析を行う。
【0086】
また、第2判断部410が副波長の吸光度が異常であると判断したことに基づいて、第2判断部410はアーム121を駆動する。この駆動により、副波長の吸光度が異常であると判断された比色ポートから、他の比色ポートにキュベット100を移動させることができる。制御装置354は、他の比色ポートにキュベット100を移動させた後に、再び、該キュベット100内の検体の分析を行う。
【0087】
第1判断部404により、主波長の吸光度は正常であると判断した場合には、第1判断部404は、測定時間における主波長の吸光度を分析部414に出力する。また、第2判断部410により、副波長の吸光度は正常であると判断した場合には、第2判断部410は、測定時間における副波長の吸光度を分析部414に出力する。
【0088】
分析部414は、測定時間における主波長の吸光度と、測定時間における副波長の吸光度との吸光度差を算出する。分析部414は、吸光度差の傾きと、検量線とに基づいて検体を分析する。典型的には、分析部414は、吸光度差の傾きと、検量線とに基づいて検体の濃度を算出する。算出された濃度は、AD変換器356に出力される。
【0089】
[分析装置600のフロー]
図15は、分析装置600の主な処理のフローチャートである。まず、ステップS1において、分析装置600は、光源330から測定時間に亘って光を出力する。ステップS2において、第1算出部402は、測定時間内での主波長の吸光度を算出する。次に、第1判断部404は、主波長の吸光度の全ての変化度合いが適正であるか否かを判断する。主波長の吸光度の全ての変化度合いが適正であるか否かの判断は、上述の6つの第1差分値の全てが第1所定値未満であるか否かの判断により行われる。
【0090】
主波長の吸光度の全ての変化度合いが適正ではない場合(ステップS4でNO)、つまり、6つの第1差分値のうち少なくとも1つの第1差分値が第1所定値以上であると判断した場合には、処理はステップS12に進む。一方、主波長の吸光度の全ての変化度合いが適正である場合(ステップS4でYES)、つまり、6つの第1差分値のうちの全てが第1所定値未満であると判断した場合には、処理はステップS6に進む。
【0091】
ステップS6において、第2算出部408は、測定時間内での副波長の吸光度を算出する。次に、ステップS7において、第2算出部408は、測定時間内での副波長の吸光度を算出する。次に、ステップS7において、第2判断部410は、測定時間での副波長の吸光度の最大値と最小値とを抽出する。ステップS7においては、さらに、第2判断部410は、測定時間での副波長の吸光度の最大値と、測定時間での副波長の吸光度の最小値との差分(つまり、第2差分値)を算出する。
【0092】
ステップS8において、第2判断部410は、この差分(つまり、第2差分値)が、所定値(つまり、第2所定値)未満あるか否かを判断する。ステップS8において、差分(つまり、第2差分値)が、所定値(つまり、第2所定値)未満であると判断された場合には(ステップS8でYES)、処理はステップS10に進む。
【0093】
ステップS10においては、分析部414は、主波長の吸光度と副波長の吸光度に基づいて、検体を分析する。
【0094】
次に、ステップS12以降の処理を説明する。ステップS4で主波長の吸光度の全ての変化度合いが適正ではないと判断された場合(つまり、ステップS4でNOと判断された場合)、ステップS8で副波長の吸光度が適正ではないと判断された場合(つまり、ステップS8でNOと判断された場合)、ステップS12以降の処理が実行される。
【0095】
ステップS12においては、制御装置354は、自動回数Nを1インクリメントする。ここで、自動回数Nは、分析装置600により自動分析が実行された回数である。自動分析とは、ユーザからの指示に基づかずに分析装置600が積極的に行う検体の分析である。自動回数Nの初期値は、「1」と設定されている。次に、ステップS14において、制御装置354は、自動回数Nが、所定回数に到達したか否かを判断する。ここで、所定回数は、いずれの値であってもよいが、
図15の例では、所定回数は3であるとする。なお、この所定回数は、ユーザが設定できるようにしてもよい。
【0096】
ステップS14において、制御装置354により、自動回数Nが所定回数に到達していないと判断した場合には(ステップS14でNO)、処理はステップS1に戻る。つまり、制御装置354により、自動回数Nが所定回数に到達していないと判断した場合には、検体の分析処理を、再度、自動的に実行する。また、ステップS14において、制御装置354により、自動回数Nが所定回数に到達したと判断した場合には(ステップS14でYES)、処理は、ステップS16に進む。
【0097】
ステップS16において、制御装置354は、使用可能な他の比色ポートが有るか否かを判断する。「使用可能な他の比色ポート」は、たとえば、「キュベットが配置されていない比色ポート」、および「このステップS16が実行された分析処理において使用されたことがない比色ポート」である。キュベットが配置されているか否かの判断は、上述のポートセンサの検出結果に基づいて行われる。たとえば、ポートセンサの検出結果が、「キュベットが配置されていない」という検出結果である場合には、該ポートセンサに対応する比色ポートには、キュベットが配置されていないということである。一方、ポートセンサの検出結果が、「キュベットが配置されている」という検出結果である場合には、該ポートセンサに対応する比色ポートには、キュベットが配置されているということである。
【0098】
ステップS16において、使用可能な他の比色ポートが存在しないと判断された場合に(ステップS16でNO)、分析装置600は、分析処理を実行することができないことから、ステップS22において、エラー報知を実行する。エラー報知は、たとえば、図示しない表示装置にエラー画像を表示させることにより実行される。
【0099】
本実施の形態のエラー報知は、検体を分析できなかったことと、使用した比色ポートを報知する。分析装置600は、このようなエラー報知を実行することにより、検体を分析できなかったことと、使用した比色ポート(つまり、検体を分析できなかった比色ポート)をユーザに認識させることができる。
【0100】
本実施の形態の6つの比色ポートには、識別情報が付与されている。この識別情報は、たとえば、比色ポートID(identification)である。6つの比色ポートそれぞれに、比色ポートID1~比色ポートID6が付与されている。ステップS22の処理が実行されるまでにおいて、たとえば、比色ポートID5の比色ポートおよび比色ID6の比色ポートが使用された上で検体を分析できなかった場合には、ステップS22で表示されるエラー画像は、たとえば、「検体を分析できませんでした。使用した比色ポートは、ID5とID6です」といったメッセージが表示される。その後、ステップS10の検体の分析処理が実行されることなく、分析処理は終了する。
【0101】
なお、変形例として、ステップS22のエラー報知では、「分析装置に異常が発生していること」を報知するようにしてもよい。また、変形例として、主波長の吸光度の異常が発生したとき(つまり、ステップS4でNOと判断されたとき)におけるステップS22のエラー報知では、主波長の吸光度に異常が発生していることを報知するようにしてもよい。また、副波長の吸光度の異常が発生したとき(つまり、ステップS8でNOと判断されたとき)におけるステップS22のエラー報知では、副波長の吸光度に異常が発生していることを報知する。
【0102】
一方、ステップS16において、使用可能な他の比色ポートが存在すると判断された場合に(ステップS16でYES)、処理は、ステップS18に進む。制御装置354は、自動回数Nを初期化する。ここで、ステップS18での自動回数Nの初期化とは、自動回数Nを初期値である「1」に設定することである。
【0103】
次に、ステップS20において、制御装置354は、キュベットを他の比色ポートに移動させる。ここで、他の比色ポートは、ステップS16において存在すると判断された他の比色ポートである。制御装置354は、アーム121を駆動することにより、キュベットを他の比色ポートに移動させる(
図14の制御装置354からアーム121への矢印参照)。
【0104】
キュベットが他の比色ポートに移動された後において、ステップS14以降の処理が実行される。ステップS14において、NOと判断された場合には、ステップS1からの処理(つまり、分析処理)が実行される。また、本実施の形態では、ステップS12~ステップS22に示すように、使用可能な他の比色ポートが存在しなくなるまで、ステップS1からの処理(つまり、分析処理)が実行される。
【0105】
[小括]
(1) 本実施の形態の分析装置600は、主波長の吸光度と、副波長の吸光度とに基づいて、検体を分析する。また、
図9および
図10等で説明したように、一般的に、主波長の吸光度は、検体の濃度等により変化する一方、副波長の吸光度は、検体の濃度に関わらず一定または殆ど変わらない。したがって、検体の分析結果(たとえば、検体の濃度)に対して、事後的に、ユーザ等により誤りがあると判断された場合には、ユーザは、主波長の吸光度の異常(つまり、主波長の吸光度の算出過程での異常)を疑う。しかしながら、本実施形態の発明者は、検体の分析結果に対して誤りがあると判断された場合には、主波長の吸光度の異常のみならず、副波長の吸光度の異常を疑うべきであることを発見した。このように、本実施の形態の思想は、通常の当業者が思いもよらないパラメータ(副波長の吸光度)に着目されたものである。
【0106】
このような思想の下、分析装置600は、測定時間における副波長の吸光度の出力値の最大値と最小値との差分が第2所定値以上である場合に(つまり、ステップS8でNO)、異常であることを特定する。したがって、分析装置600は、検体の分析の精度を向上させることができる。
【0107】
(2) 本実施の形態の分析装置600は、主波長の吸光度の異常または副波長の吸光度の異常が特定された場合には、該異常が特定された比色ポートとは別の比色ポートにキュベット100を移動させて、再度、検体の分析を行う(
図15のステップS20参照)。したがって、分析装置600は、異常が発生した場合であっても、異常が発生しない可能性がある他の比色ポートでの検体の分析を自動的に行うことができる。
【0108】
(3) 本実施の形態の分析装置600は、全ての他の比色ポートのそれぞれにおいて、再度、検体の分析を行った場合であっても、該全ての別の測定用ポートのそれぞれにおいて異常であることが特定した場合に、異常であることをユーザに報知する(
図15のステップS22参照)。したがって、自動で検体の分析を行える別の測定用ポートが存在しなくなった場合に、異常であることをユーザに報知することから、検体を分析できないことをユーザに認識させることができる。
【0109】
(4) 本実施の形態の分析装置600は、最初に異常が特定された比色ポートにおいて、自動分析を行った回数である自動回数Nが所定回数(
図15の例では、ステップS14に示すように3回)に到達した場合に、分析装置600は、キュベット100を別の比色ポートに移動させる(
図15のステップS20)。異常であることが特定された比色ポートであっても、検体の分析を行った場合に、異常が特定されずに検体の分析を行うことができる場合がある。したがって、本実施の形態の分析装置600は、「1回、異常であることが特定された場合に、容器を必ず別の測定用ポートに移動させる測定装置」と比較して、「容器を測定用ポートに移動させる処理の回数」を減少させることができる。
【0110】
(5) 本実施の形態の分析装置600は、異常が特定された比色ポートを報知する(
図15のステップS22参照)。したがって、本実施の形態の分析装置600は、異常であることが特定されたときにキュベット100が配置されていた比色ポートをユーザに認識させることができる。
【0111】
(6) また、分析装置600は、異常が発生した場合には、検体を分析できなかったことを報知する(ステップS22参照)。したがって、分析装置600は、検体を分析できなかったことをユーザに認識させることができる。
【0112】
<その他の実施の形態>
(1)
図16は、実施の形態1の血液凝固分析装置600と、測定装置700との関係を示す図である。
図16に示すように、血液凝固分析装置600は、測定装置700を含む。また、血液凝固分析装置600の分析対象となる検体は、血漿および尿等である。測定装置700は、光源330と、制御装置354と、複数の比色ポートP3b等を備える。その他の実施の形態として、測定装置700は、他の装置に含まれるようにしてもよい。他の装置は、たとえば、本実施の形態の検体とは異なる検体を分析する分析装置である。他の装置は、たとえば、ある水溶液中の成分を分析する分析装置としてもよい。また、本実施の形態の分析装置は、試薬を反応させた検体に対して光源330からの光を当てて検体を分析するとして説明した。しかしながら、分析装置は、試薬を反応させずに検体に対して光源330からの光を当てて検体を分析するようにしてもよい。
【0113】
(2) 実施の形態1の分析装置600が備える比色ポートの数は複数であるとして説明した。しかしながら、分析装置600が備える比色ポートの数は1つとしてもよい。分析装置600が備える比色ポートの数は1つの場合には、該比色ポートでの検体の分析において、主波長の吸光度の異常または副波長の吸光度の異常が特定された場合に、この比色ポートにおいて再度、検体の分析を自動で行う。この実施の形態の分析装置は、異常であることを特定した場合に、再度、検体の分析を行う。異常であることが特定された場合であっても、検体の分析を再度行った場合に、異常が特定されずに検体の分析を行うことができる場合がある。したがって、この実施の形態の分析装置は、異常が特定された場合であっても、検体の分析を試みることができる。
【0114】
(3) 実施の形態1の分析装置600では、「光源330からの光に含まれる波長のうち測定時間において主波長から得られる値」は、「主波長の吸光度」であるとして説明した。また、「光源330からの光に含まれる波長のうち測定時間において副波長から得られる値」は、「副波長の吸光度」であるとして説明した。しかしながら、「光源330からの光に含まれる波長のうち測定時間において主波長から得られる値」および「光源330からの光に含まれる波長のうち測定時間において副波長から得られる値」は、他の値としてもよい。他の値は、たとえば、「吸光度に関連する値」としてもよい。たとえば、「光源330からの光に含まれる波長のうち測定時間において主波長から得られる値」は、主波長の吸光度の所定倍(たとえば、10倍)の値としてもよい。また、「光源330からの光に含まれる波長のうち測定時間において副波長から得られる値」は、副波長の吸光度の所定倍(たとえば、10倍)の値としてもよい。また、他の値は、「光検出器316が検出した値(たとえば、光量)」または「光検出器316が検出した値(たとえば、光量)」に関連する値としてもよい。
【0115】
また、分析装置は、吸光度を算出しない構成としてもよい。このような構成の場合には、吸光度に関連する値は、たとえば、光検出器316が検出した値としてもよい。以下では、「光検出器316が検出した値」を「読取値」ともいう。この読取値は、光検出器316が検出した光量またはこの光量に関連する値としてもよい。この構成の場合には、
図9および
図10の縦軸は、「読取値」となる。
【0116】
また、
図9および
図10の読取値は、たとえば、比色ポートにキュベットが配置されていない状態で測定した場合(つまり、ブランク測定が実行された場合)の読取値を「0」とし、所定値(たとえば500)を加算した値である。また、
図10のタイミングT0において、読取値は、「469」となる。この「469」は、キュベットが比色ポートに配置されたことにより、読取値が31減少した(つまり、吸光度が31減少した)ことを示している。
【0117】
(4) また、本変形例の分析装置は、主波長の吸光度の異常(たとえば、
図15のステップS4でNO)または副波長の吸光度の異常(たとえば、
図15のステップS8でNO)を検出した場合には、異常であることを特定するとともに、再度の分析を行う。分析装置が、該再度の分析により、主波長の吸光度の異常または副波長の吸光度の異常を再び検出した場合には、さらなる再度の分析を実行する。
【0118】
また、本変形例の分析装置は、主波長の吸光度が適正範囲に属している場合に、検体を分析することができる。一方、本変形例の分析装置は、主波長の吸光度が適正範囲に属していない場合(たとえば、主波長の吸光度が極端に大きい場合または主波長の吸光度が極端に小さい場合)には、検体を分析することができない。
【0119】
ところで、一般的に、検体と試薬との反応が開始したときからの時間の経過に応じて、試薬と反応した反応液(試薬と検体との混合物)の色が濃くなる(または反応液の色が薄くなる)。反応液の色が濃くなった場合(または反応液の色が薄くなった場合)には、主波長の吸光度が極端に大きくなる、または主波長の吸光度が極端に小さくなる。この結果、主波長の吸光度が適正範囲に属さなくなり、結果として、分析装置は、検体を分析できない。
【0120】
そこで、本変形例の分析装置は、分析の実行回数が所定回数に到達した場合に、異常であることを報知するとともに、分析を停止する(分析を終了する)。たとえば、本変形例の分析装置は、
図15において、S16~S20の処理を省略するとともに、S14でYESと判断された場合には、処理は、ステップS22に進む。本変形例の分析装置は、ステップS22では、検体を分析できなかったこと(つまり、異常が発生したこと)を報知する。本変形例の分析装置は、ステップS22の処理が終了すると、分析を終了させる。このような構成により、主波長の吸光度が適正範囲に属していないと想定される場合に検体の分析を繰り返すといった無駄な処理が実行されることを防止できる。
【0121】
(5) また、本変形例の分析装置は、2回目以降の分析を実行する場合には、主波長の吸光度が適正範囲に属しているか否かを判定するようにしてもよい。主波長の吸光度が適正範囲に属していないと判定された場合には、異常であることを報知するとともに、分析を停止する(分析を終了する)。たとえば、本変形例の分析装置においては、
図15のS12~S20の処理が省略される。また、本変形例の分析装置が、再度の分析を実行する場合には、再分析フラグが所定の記憶領域に記憶される。つまり、S4でNOと判断された場合、およびS8でNOと判断された場合には、再分析フラグが所定の記憶領域に記憶される。S4でNOと判断された場合、およびS8でNOと判断された場合には、処理は、ステップS1に戻る。その後、本変形例の分析装置は、ステップS2の処理を実行する。次に、本変形例の分析装置は、ステップS2において算出された吸光度が適正範囲に属しているか否かを判断する。この吸光度が適正範囲に属していると判断された場合に、処理は、ステップS4に進む。また、この吸光度が適正範囲に属していないと判断した場合には、処理はステップS22に進む。本変形例の分析装置は、ステップS22では、検体を分析できなかったこと(つまり、異常が発生したこと)を報知する。本変形例の分析装置は、ステップS22の処理の終了後、分析を終了させる。このような構成により、「主波長の吸光度が適正範囲に属していない場合であるにもかかわらず検体の分析を繰り返す」といった無駄な処理が実行されることを防止できる。
【0122】
(6) 本実施の形態では、
図15のステップS16において、使用可能な比色ポートが存在するか否かの判断について、比色ポートのポートセンサを用いるとして説明した。しかしながら、本変形例の分析装置は、比色ポートのポートセンサを備えずに以下のような制御で、ステップS16の判断処理を実行するようにしてもよい。
【0123】
たとえば、本変形例の分析装置は、分析処理で使用されている比色ポートにはキュベットが配置されており、分析処理で使用されていない比色ポートにはキュベットが配置されていないと判断する。ステップS16においては、分析装置は、該ステップS16の処理を含む分析処理以外の分析処理(つまり、他の分析処理)が実行されているか否かを判断する。ステップS16において、分析装置は、他の分析処理が実行されていない比色ポートが存在すると判断した場合には、該ステップS16ではYESと判断される。また、ステップS16において、分析装置は、他の分析処理が実行されていない比色ポートが存在しないと判断した場合(つまり、全ての比色ポートで分析処理が実行されていると判断した場合)には、該ステップS16ではNOと判断される。このような構成の分析装置は、比色ポートのポートセンサを備える必要がないことから、ポートセンサのコストを削減できる。
【0124】
(7) 本実施の形態の分析装置は、主波長の吸光度の異常を検出した場合(たとえば、
図15のステップS4でNOと判断された場合)または副波長の吸光度の異常を検出した場合(たとえば、
図15のステップS8でNOと判断された場合)には、再度、検体を分析するとして説明した。しかしながら、分析装置は、主波長の吸光度の異常を検出した場合または副波長の吸光度の異常を検出した場合には、再度の分析を行わずに、異常を特定するとともに分析を停止するようにしてもよい(分析を終了するようにしてもよい)。また、分析装置は、主波長の吸光度の異常を検出した場合または副波長の吸光度の異常を検出した場合には、再度の分析を行わずに、異常を特定するとともにエラー報知を実行するようにしてもよい。
【0125】
(8) 本実施の形態の分析装置においては、主波長の光が出力される光源と、副波長の光が出力される光源とは共通であるとして説明した。しかしながら、主波長の光が出力される光源と、副波長の光が出力される光源とは別個であるとしてもよい。
【0126】
[態様]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0127】
(第1項)一態様に係る測定装置は、検体を収容する容器に光を出力する光源と、光に含まれる波長のうち測定時間において主波長から得られる値と、光に含まれる波長のうち測定時間において副波長から得られる値とに基づいて、検体の分析を行う制御装置とを備える。副波長は、検体の分析の影響を除去するための波長である。制御装置は、測定時間における副波長の出力値の最大値と最小値との差分が所定値以上である場合に、異常であることを特定する。
【0128】
第1項の測定装置によれば、妨害要因の影響を除去するための副波長から得られる値の最大値と最小値との差分が第2所定値以上である場合、つまり、副波長から得られる値が通常、取り得ない値である場合には、分析装置は、異常であることを特定する。したがって、副波長から得られる値が通常、取り得ない値であるまま、検体の分析を行うことが防止できることから、「副波長から得られる値が通常、取り得ない値であるまま、検体の分析を行う測定装置」と比較して、検体の分析の精度を向上させることができる。
【0129】
(第2項)第1項に記載の測定装置は、容器がそれぞれに配置可能な複数の測定用ポートをさらに備える。制御装置は、異常であることを特定した場合、異常であることを特定したときに容器が配置されていた測定用ポートから別の測定用ポートに、容器を移動させる。制御装置は、別の測定用ポートに移動された容器に対して出力された光に含まれる波長のうち測定時間において主波長から得られる値と、光に含まれる波長のうち測定時間において副波長から得られる値とに基づいて、再度、検体の分析を行う。
【0130】
第2項の測定装置によれば、制御装置が異常であることを特定した場合には他の測定用ポートに容器を移動させた後に、該他の測定用ポートで、検体の分析を行う。したがって、異常が発生した場合であっても、異常が発生しない可能性がある他の測定用ポートでの検体の分析を自動的に行うことができる。
【0131】
(第3項)第2項に記載の測定装置の制御装置は、全ての別の測定用ポートのそれぞれにおいて、再度、検体の分析を行った場合であっても、該全ての別の測定用ポートのそれぞれにおいて異常であることが特定した場合に、異常であることをユーザに報知する。
【0132】
第3項の測定装置によれば、自動で検体の分析を行える別の測定用ポートが存在しなくなった場合に、異常であることをユーザに報知することから、検体を分析できないことをユーザに認識させることができる。
【0133】
(第4項)第2項または第3項に記載の制御装置は、異常であることを特定した場合、異常であることを特定したときの測定用ポートに配置されていた容器に対して出力された光に含まれる波長のうち測定時間において主波長から得られる値と、光に含まれる波長のうち測定時間において副波長から得られる値とに基づいて、再度、検体の分析を行う。制御装置は、該自動で行われた分析の回数が所定回数に到達した場合に容器を別の測定用ポートに移動させる。
【0134】
第4項の測定装置によれば、異常であることを特定した場合、異常であることを特定したときの測定用ポートでの検体の分析を所定回数実行し、所定回数に到達した場合に容器を、別の測定用ポートに移動させる。異常であることが特定された測定用ポートであっても、検体の分析を行った場合に、異常が特定されずに検体の分析を行うことができる場合がある。したがって、第4項の測定装置は、「1回、異常であることが特定された場合に、容器を必ず別の測定用ポートに移動させる測定装置」と比較して、「容器を測定用ポートに移動させる処理の回数」を減少させることができる。
【0135】
(第5項)第2項~第4項のいずれかに記載の制御装置は、異常であることが特定されたときに容器が配置されていた測定用ポートを報知する、請求項2~4のいずれか1項に記載の測定装置。
【0136】
第5項の測定装置によれば、異常であることが特定されたときに容器が配置されていた測定用ポートをユーザに認識させることができる。
【0137】
(第6項)第1項に記載の制御装置は、異常であることを特定した場合に、主波長から得られる値と副波長から得られる値とに基づいて、再度、検体の分析を自動で行い、該再度行われた分析での測定時間における副波長から得られる値の最大値と最小値との差分が所定値以上である場合に、異常であることを特定する。
【0138】
第6項の測定装置によれば、異常であることを特定した場合に、再度、検体の分析を行う。異常であることが特定された場合であっても、検体の分析を再度行った場合に、異常が特定されずに検体の分析を行うことができる場合がある。したがって、第6項の測定装置は、異常が特定された場合であっても、検体の分析を試みることができる。また、分析装置は、再度の分析において、測定時間における副波長から得られる値の最大値と最小値との差分が所定値以上である場合には、異常であることを特定することができる。
【0139】
(第7項)第6項に記載の分析装置は、再度行われた検体の分析の回数が、所定回数に到達した場合に、異常であることをユーザに報知するとともに、分析を停止させる。
【0140】
第7項の測定装置によれば、無駄な分析が行われることを防止できる。
(第8項)第6項または第7項に記載の測定装置は、主波長から得られる値が適正範囲に属している場合に、検体を分析可能であり、再度行われた検体の分析において、主波長から得られる値が適正範囲に属していない場合に、異常であることをユーザに報知するとともに、分析を停止させる。
【0141】
第8項の測定装置によれば、主波長から得られる値が分析可能とされる適正範囲に属していない場合にまで分析が実行されることを防止できる。
【0142】
(第9項)第1項~第8項のいずれかに記載の分析装置は、主波長から得られる値は、主波長の吸光度に関する値である。副波長から得られる値は、副波長の吸光度に関する値である。
【0143】
第9項の測定装置によれば、主波長の吸光度および副波長の吸光度に基づいて、検体の分析を行うことができる。
【0144】
(第10項)検体と試薬とを容器内で反応させることにより検体の分析を行う血液凝固分析装置であって、血液凝固分析装置は、(第1項)~(第9項)のうちのいずれかの測定装置を含む。
【0145】
第10項の血液凝固分析装置によれば、(第1項)~(第9項)のうちのいずれかの測定装置が有する構成を採用した血液凝固分析装置を提供できる。
【0146】
今回開示された各実施の形態は、技術的に矛盾しない範囲で適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本実施の形態の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0147】
100 キュベット、110 キュベット供給装置、111 収容部、112 供給機構、120 キュベット移送装置、121 チャック付きアーム、122 駆動装置、130 測光部、200 攪拌装置、310 レンズホルダ、314 キュベット挿入口、316 光検出器、318 接続ケーブル、320 基板、330 光源、332 フィルタ装置、340 フィルタ、350 アンプ、352 ポート選択部、356 変換器、358 出力部、400 キュベット廃棄容器、402 第1算出部、404 第1判断部、406 第1記憶部、408 第2算出部、410 第2判断部、412 第2記憶部、414 分析部、532 RAM、534 記憶装置、600 血液凝固分析装置。