(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】電気コネクタ、電気コネクタ組立体および電子機器
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20240723BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/639 Z
(21)【出願番号】P 2021006863
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】林 利秋
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-013130(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0025255(KR,A)
【文献】特開2007-324072(JP,A)
【文献】特開2015-133254(JP,A)
【文献】特開2010-218925(JP,A)
【文献】特開2001-006816(JP,A)
【文献】特開2014-170708(JP,A)
【文献】特開2005-158417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/64
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手電気コネクタと嵌合の方向に沿って嵌合される、複数の端子を保持するハウジングを備える電気コネクタであって、
前記ハウジングは、
前記相手電気コネクタを受容する受容領域と、
前記受容領域に隣接される音通路と、
前記受容領域と前記音通路を区分する仕切壁と、備え、
前記音通路は、
前記嵌合の方向に沿って一方に開放端を備え、他方に閉塞端を備える
空隙からなり、
前記仕切壁は、
前記相手電気コネクタの第2ロック突起との係合に関わる第1ロック突起を備えることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記仕切壁は、
前記相手電気コネクタとの正規の嵌合に応じて、前記相手電気コネクタの
前記第2ロック突起が打撃する打撃領域を備え、
前記音通路は、
平面視して前記打撃領域を含む、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記音通路は、
前記他方から前記一方に向けて開口面積が大きくなる、
請求項1または請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記音通路は、
前記受容領域の幅方向の両側に連なる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記音通路は、ホーン形状をなしている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
相手電気コネクタと、
前記相手電気コネクタと互いに嵌合される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電気コネクタと、
を備えることを特徴とする電気コネクタ組立体。
【請求項7】
相手電気コネクタと嵌合される、複数の端子を保持するハウジングを備える電気コネクタと、
前記電気コネクタの嵌合間口が外部に露出する状態で前記電気コネクタを収容する筐体と、
を備え、
前記電気コネクタは、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電気コネクタからなり、
前記開放端が前記嵌合間口とともに外部に露出する、
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機構により抜け止めがなされる電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタは、通常、オス型端子を保持するオスコネクタと、オスコネクタと嵌合するように構成され、オス型端子と電気的に接続されるメス型端子を保持するメスコネクタとを備える。以下、電気コネクタを単にコネクタということがある。
オスコネクタとメスコネクタが嵌合された状態を維持し、相互の抜け止めをするために、例えばメスコネクタにロックアームと称される部材を設けるとともに、ロックアームと係合されるオス側突起をオスコネクタに設ける。
【0003】
オスコネクタとメスコネクタとを嵌合する際に、ロックアームに設けられるメス側突起がオスコネクタのオス側突起を乗り越える。ロックアームは弾性を備えているために、メス側突起がオス側突起を乗り越えて突起同士が係合状態に至ると、メス側突起がオスコネクタのハウジングの所定面を叩くので、打撃音が生ずる。この打撃音は、オスコネクタとメスコネクタとの嵌合が正規に行われたことの根拠になり得るために、嵌合音とも称される。オス側突起とメス側突起の係合部分はコネクタの外部から視認することが困難な場合が多いからである。したがって、例えば特許文献1、特許文献2のように、大きな打撃音を発生させる提案がなされている。特許文献1および特許文献2はともに、
【0004】
特許文献1は、オスコネクタのオス側突起(係止突部)が形成される壁面の直下の領域に空所を形成することを提案する。特許文献1は、ロックアームのメス側突起(ロック爪)がオス側突起を乗り越えて壁面を打撃すると、打撃による嵌合音が空所で反響することにより嵌合音を大きくできることを述べている。
特許文献2は、ロックアームが撓み変形から復元することにより打撃される壁面の内側に空間を備える。特許文献2は、打撃音を空間で共鳴させることで、嵌合音を大きくできることを述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-006816号公報
【文献】特開2010-165573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の提案は、嵌合時にはメスコネクタにより空間の開口部が塞がれるので、嵌合音が籠る可能性がある。また、特許文献2の提案については、オスコネクタとメスコネクタの嵌合時にはロックアーム解除部付近に指をあてながら作業することが多く、指により空間の開口部が塞がれ、音が籠る可能性がある。そうすると、作業者は嵌合音を聞き漏らすおそれがある。
【0007】
以上より、本発明は、嵌合作業を行う作業者が、嵌合音を聞き漏らしにくい電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、相手電気コネクタと嵌合の方向に沿って嵌合される、複数の端子を保持するハウジングを備える電気コネクタに関する。
本発明に係るハウジングは、相手電気コネクタを受容する受容領域と、受容領域に隣接される音通路と、受容領域と音通路を区分する仕切壁と、備える。
音通路は、嵌合の方向に沿っての一方に開放端を備え、他方に閉塞端を備える。
【0009】
本発明に係る仕切壁は、好ましくは、相手電気コネクタとの正規の嵌合に応じて、前記相手電気コネクタの要素が打撃する打撃領域を備え、音通路は、平面視して前記打撃領域を含む。
【0010】
本発明に係る音通路は、好ましくは、他方から一方に向けて開口面積が大きくなる。
また、本発明に係る音通路は、好ましくは、受容領域の幅方向の両側に連なる。
さらに、本発明に係る音通路は、好ましくは、ホーン形状をなしている。
【0011】
本発明は、相手電気コネクタと、相手電気コネクタと互いに嵌合される上述するいずれかの電気コネクタと、を備える電気コネクタ組立体を提供する。
【0012】
本発明は、相手電気コネクタと嵌合される、複数の端子を保持するハウジングを備える電気コネクタと、電気コネクタの嵌合間口が外部に露出する状態で電気コネクタを収容する筐体と、を備える電子機器を提供する。
この電気コネクタとしては、上述するいずれかの電気コネクタが適用される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気コネクタによれば、音通路が設けられ、その開放端を筐体の外部に配置すれば、嵌合音が筐体の中で籠ることがなく、筐体の外部に排出できる。したがって、電気コネクタの嵌合を行う作業者は、嵌合音を聞き漏らしにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は本実施形態に係る電気コネクタ組立体の斜視図であり、(b)は電気コネクタ組立体の一方の要素を構成するオスコネクタを示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の第1コネクタを示し、(a)は側面図であり、(b)は
図3(c)のIIb-IIb線矢視断面図である。
【
図3】本実施形態の第1コネクタを示し、(a)は(c)のIIIa-IIIa線矢視断面図であり、(b)は下面図であり、(c)は正面図である。
【
図4】本実施形態の第2コネクタを示し、(a)は側面図であり、(b)は
図2(b)に対応する部位の断面図である。
【
図5】本実施形態の第1コネクタと第2コネクタの嵌合の過程を示す側面図であり、(a)、(b)、(c)の順に嵌合が進む。
【
図6】本実施形態の第1コネクタと第2コネクタの嵌合の過程を示す
図2(c)のIIb-IIb線矢視に相当する断面図であり、(a)、(b)、(c)の順に嵌合が進む。
【
図7】本実施形態の第1コネクタの音通路の平面視したときの変形例を示す図である。
【
図8】本実施形態の第1コネクタの音通路の正面視したときの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電気コネクタ組立体1について説明する。
【0016】
[電気コネクタ組立体1の概要:
図1、
図5]
電気コネクタ組立体1は、
図1(a)に示すように、第1電気コネクタ10と、第1電気コネクタ10と互いに嵌合される第2電気コネクタ40と、を備える。本実施形態において、第1電気コネクタ10は複数のオス型の第1端子25を保持するオスコネクタに該当し、第2電気コネクタ40は第1端子25と電気的に接続されるメス型の第2端子を保持するメスコネクタに該当する。
なお、電気コネクタ組立体1、第1電気コネクタ10および第2電気コネクタ40において、
図1などに示すように、幅方向W、高さ方向Hおよび前後方向Lが定義される。また、
図1に示すように、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合の方向MDが定義される。また、第1電気コネクタ10および第2電気コネクタ40のそれぞれにおいて、互いに嵌合される側を前、その逆の側を後と定義する。また、第1電気コネクタ10は本発明の電気コネクタに対応し、第2電気コネクタ40は本発明の相手電気コネクタに対応する。
【0017】
電気コネクタ組立体1は、一例として、
図6に示すように、電子機器の筐体100の内部に、第1電気コネクタ10の前方の一部を除いて収容される。したがって、第2電気コネクタ40との正規の嵌合に伴うロックアーム50の打撃による嵌合音が第1電気コネクタ10に生じたとしても、この嵌合音は筐体100の内部に籠ってしまうと、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合作業を行う者が聞き取りにくい。しかし、本実施形態に係る第1電気コネクタ10には、嵌合音を筐体100の外部に導く音通路30が設けられているで、作業者は嵌合音を聞き取りやすい。
以下、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の構成について説明した後に、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合動作に加えて正規の嵌合がなされたときの嵌合音について言及する。
【0018】
[第1電気コネクタ10:
図1,
図2,
図3]
第1電気コネクタ10は、
図1(b)に示すように、電気絶縁性の樹脂から形成されるメス型の第1ハウジング11と、高い導電性を備える、例えば銅系材料から形成されるオス型の第1端子25と、を備える。第1ハウジング11および第1端子25の材質は、第2電気コネクタ40においても同様である。
第1ハウジング11には、複数の第1端子25が、互いに間隔を隔てて配列した状態で保持されるとともに、第2電気コネクタ40が嵌合されるフード13が形成されている。フード13は、角筒状の部材であり、その開口である嵌合間口18が設けられる。また、フード13は、第2電気コネクタ40を受容するための受容領域19を備えている。本実施形態において、フード13は幅方向Wに連なっているが、仕切壁を設けることにより2つ以上に区切られてもよい。
【0019】
第1端子25は、第2電気コネクタ40のメス型端子と電気的に接続される部分が受容領域19に延びるとともに、
図2(a),(b)および
図3(a),(b)に示すように、プリント配線基板に接続される部分がフード13の後方から引き出されている。第1端子25は、後方に引き出される部分は、途中から概ね90度だけ折り曲げられている。第1端子25は、幅方向Wについて複数列に配置され、また、高さ方向Hにつても複数行、本実施形態においては2行に配置されている。
【0020】
フード13は、
図2(b)に示すように、幅方向Wに延び、互いに所定の間隔を隔てて対向する上壁14および下壁15と、上壁14と下壁15の幅方向Wの両端を高さ方向Hに繋ぐ一対の側壁17,17と、を備える。
また、フード13は、上壁14と下壁15の間を高さ方向Hに仕切る仕切壁16を備え、仕切壁16が一対の側壁17,17を幅方向Wに繋いでいる。高さ方向Hにおいて、仕切壁16よりも下に前述した受容領域19が設けられ、仕切壁16よりも上に受容領域19と隣接して音通路30が設けられる。つまり、音通路30と受容領域19は仕切壁16により区分されている。音通路30について詳しくは後述する。
なお、本実施形態の第1電気コネクタ10は、
図6に示すように、例えばプリント配線基板200に実装された状態で、第2電気コネクタ40と嵌合される。
【0021】
フード13は、
図2(b)に示すように、仕切壁16の前端であってその下面には、後述する第2電気コネクタ40のロックアーム50の第2ロック突起54が係止される第1ロック突起21が設けられている。第1電気コネクタ10に第2電気コネクタ40を嵌合する過程で、第2電気コネクタ40の第2ロック突起54が第1電気コネクタ10の第1ロック突起21を乗り越えることで、
図6(b)に示すように、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40は相互に抜け止めされる。なお、第1ロック突起21と第2ロック突起54のロックを解除するには、第2電気コネクタ40のロックアーム50の操作端53を、
図4(b)における下向きに押し込む。この状態で、第2電気コネクタ40を第1電気コネクタ10から引き抜くと、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合を解除できる。
【0022】
フード13は、
図2(a),(b)に示すように、前端側22と、前端側22に対向する後端側23を備える。第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40との嵌合は、この前端側22に臨む嵌合間口18に第2電気コネクタ40を挿入して行われる。
【0023】
[第2電気コネクタ40:
図1(a),
図4]
次に、第2電気コネクタ40について、
図1および
図4を参照して説明する。
第2電気コネクタ40は、第2ハウジング41と、第2ハウジング41に保持される図示を省略するメス型端子と、を備える。第2ハウジング41は、第1電気コネクタ10が保持する第1端子25に対応する数および位置でメス型の第2端子を保持する。
第2ハウジング41は、第2端子を保持する第2ハウジング本体43と、第2ハウジング本体43の前端に位置する前端壁44と、第2ハウジング本体43の後端に位置する後端壁45と、第2電気コネクタ40を第1電気コネクタ10と互いに抜け止めするロックアーム50と、を備える。
【0024】
第2ハウジング本体43は、
図1(a)に示すように、幅方向Wおよび高さ方向Hに沿って複数の端子収容孔46が形成される。各端子収容孔46は、図示を省略する第2端子が挿入される。端子収容孔46は、前端壁44から後端壁45までを貫通する。
後端壁45は、第2電気コネクタ40が第1電気コネクタ10と嵌合されると、フード13よりも幅方向Wおよび高さ方向Hの外側に突き出す。
【0025】
ロックアーム50は、
図1(a)に示すように、第2ハウジング本体43の上部において、幅方向Wの中央部分に設けられる。ロックアーム50は、
図4(b)に示すように、その前端側が第2ハウジング本体43に固定される支持端51をなし、後端側が操作端53をなす。支持端51と操作端53は、弾性アーム52で繋がっている。ロックアーム50は、支持端51と操作端53の間に第2ロック突起54を備えており、この第2ロック突起54は、フード13に形成された第1ロック突起21と互いに係合されることで、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40が嵌合された状態において、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40が互いに抜け止めされる。
【0026】
第2ハウジング本体43は、
図4(b)に示すように、ロックアーム50を上から覆うカバー47を備えている。カバー47の主目的は、ロックアーム50のめくれや誤操作を防止することである。
カバー47は、後端壁45の一部が表裏を貫通する空隙とされることで、後端壁45の構成要素として設けられている。
カバー47よりも下方は空隙とされており、ロックアーム50の操作端53を含む前端部分はこの空隙を貫通してカバー47よりも後方に突出し、ロックアーム50はこの空隙の範囲内で、支持端51を中心にして揺動運動が可能とされる。カバー47は、前後方向Lの肉厚を、他の後端壁45よりも薄くすることで、ロックアーム50の操作端53への操作を確保する。
【0027】
[音通路30:
図1(b),
図2(b),
図3(a),(c)]
電気コネクタ組立体1は第1電気コネクタ10に音通路30を備える。音通路30は、第1電気コネクタ10に第2電気コネクタ40を嵌合すると発生する嵌合音を聞き取りやすくできる。以下、音通路30について、
図1(b)、
図2(b)および
図3(a)を参照して説明する。
音通路30は、
図1(b)および
図2(b)に示すように、第1ハウジング11の上壁14と仕切壁16との間に設けられる空隙からなる。この空隙からなる音通路30は、前端側22においては外部に開放される開放端31を備える一方、後端側23においては外部に開放されないように第1ハウジング11により封止される閉塞端33を備える。閉塞端33は、
図3(a)に示すように、平面視した形状が円弧状をなしている。このように、音通路30は、嵌合の方向MDの一方の端部が開放されるが、嵌合の方向MDの他方の端部が封止されることにより、嵌合音は音通路30の開放端31から外部に導かれる。
【0028】
次に、音通路30を構成する空隙は、
図2(b)に示すように、仕切壁16と面している。後述するように、仕切壁16は、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合の際に、第2電気コネクタ40の第2ロック突起54が第1電気コネクタ10の第1ロック突起21を乗り越えると、第2ロック突起54が仕切壁16を打撃する。音通路30は、第2ロック突起54で打撃される仕切壁16の背面に設けられ、平面視したときに、第2ロック突起54による打撃領域HTを含む。
【0029】
次に、音通路30は、好ましい形態として、後端側23から前端側22に向けて開口面積が連続的に大きくなるように形成されている。この形態は音通路30としての嵌合音の排出効果を高めるためであり、いわゆるホーン(horn)を模している。ホーンは、ホーンスピーカに適用されるように、放射された音を囲い込んで指向性をコントロールし、エネルギを集中させることで、音に強力な浸透性を与える仕組みである。つまり、第2ロック突起54が仕切壁16を打撃すると、音通路30に含まれる空気に速度が与えられ、音波はホーンを構成する音通路30の嵌合の方向MDに平行な任意の平面上でほぼ同位相で伝わり、開放端31においては平面波に近い状態で音が放射される。このため、ホーンとして動作している周波数範囲では指向性が強く、その分だけ効率が高くなる。
【0030】
音通路30は、
図2(b)に示すように、仕切壁16の上面である下面35と、下面35と対向する上面36と、幅方向Wの両側で下面35と上面36を繋ぐ一対の側壁37,37と、を備える。
図2(b)に示すように、下面35と上面36の間隔が後端側23から前端側22に向けて連続的に広くなり、
図3(c)に示すように、一対の側壁37,37の間隔が連続的に広くなる。つまり、本実施形態の音通路30は、幅方向Wおよび高さ方向Hの両者について間隔が連続的に広くなり、開口面積が閉塞端33から開放端31に向けて連続的に大きくなる。
【0031】
[第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合過程:
図5,
図6]
次に、
図5および
図6を参照して、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合動作について説明する。この説明は、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40を位置合わせする第1ステップと、第2電気コネクタ40を第1電気コネクタ10の受容領域19に挿入する第2ステップと、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合が完了し正規の嵌合がなされる第3ステップの順に行われる。
なお、
図6に示すように、第1電気コネクタ10は、プリント配線基板200に実装された状態で、筐体100に収容されている。ただし、第1電気コネクタ10の前方の一部は筐体100の外部に露出しているものとする。なお、
図5においては、筐体100およびプリント配線基板200の記載が省略されている。
【0032】
<第1ステップ:
図5(a),
図6(a)>
第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40を嵌合するには、
図5(a)および
図6(a)に示すように、第2電気コネクタ40の前側を第1電気コネクタ10の受容領域19に連なる嵌合間口18に位置合わせする。位置合わせは、幅方向Wおよび高さ方向Hについて行われる。
【0033】
<第2ステップ:
図5(b),
図6(b)>
位置合わせが済んだならば、第2電気コネクタ40を第1電気コネクタ10の受容領域19の奥に向けて押し込む。そうすると、
図5(b),
図6(b)に示すように、第2電気コネクタ40の第2ロック突起54が第1電気コネクタ10の第1ロック突起21に突き当たる位置まで第2電気コネクタ40が進む。第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合を行う作業者は、この突き当たる感覚を覚えると、第2電気コネクタ40を押し込む力を大きくする。第2ロック突起54が第1ロック突起21を乗り越えるためである。
【0034】
<第3ステップ:
図5(c),
図6(c)>
第2ロック突起54が第1ロック突起21に突き当たった後に、第2電気コネクタ40をさらに押し込む、そうすると、ロックアーム50の弾性アーム52が下向きに撓み、第2ロック突起54が第1ロック突起21を乗り越え、第2ロック突起54と第1ロック突起21が互いに係合状態に至り、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40が抜け止めされる。第2ロック突起54が第1ロック突起21を乗り越えた直後に、第2ロック突起54が仕切壁16に打撃される。この打撃は、下向きに撓んでいた弾性アーム52が元の真直ぐな状態に復帰する弾性エネルギに基づいており、仕切壁16に振動を生じさせる。この振動により生ずる音が、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40が適正に嵌合されたことを示す嵌合音である。ここで、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の抜け止めに関わる部材、本実施形態においては第2ロック突起54と第1ロック突起21が係合状態になると、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40は正規の嵌合がなされたことになる。
【0035】
[嵌合音の行方]
以上のように、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40とが適正に嵌合されるに至ると、仕切壁16を第2ロック突起54が打撃することによる嵌合音が生じる。第1電気コネクタ10は、仕切壁16の上側に音通路30を備える。したがって、嵌合音は、音通路30を伝って開放端31から外部に排出される。開放端31は筐体100の外側に配置されるので、開放端31から排出され、作業者は嵌合音を聞き漏らしにくい。
【0036】
[効 果]
以上説明したように、電気コネクタ組立体1によれば、第1電気コネクタ10に音通路30が設けられ、音通路30はその開放端31が筐体100の外部に配置される。したがって、嵌合音は筐体100の中で籠らないので、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合を行う作業者は、開放端31から外部に排出される嵌合音を聞き漏らしにくい。
しかも、音通路30は、第1ハウジング11と一体で構成できるので、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合作業は従前のものと同じで足りるのに加えて、第1電気コネクタ10の製造コストの上昇はわずかで済む。
【0037】
本実施形態に係る音通路30は、ホーン形状をなしている。したがって、開放端31から排出される嵌合音の音圧が高くなるので、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ40の嵌合を行う作業者は、開放端31から外部に排出される嵌合音を聞き漏らすおそれがより小さくなる。
【0038】
[変形例]
本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0039】
[音通路30の平面視したときの変形例(
図7)]
以上で説明した音通路30は、閉塞端33が後端側23に近接する位置に設けられるが、本発明は
図7(a)に示すように、平面視して、第2ロック突起54が仕切壁16を打撃する打撃領域HTを含んでいれば、閉塞端33が開放端31に近づいたとしても音通路30としての機能を発揮できる。
次に、音通路30は幅方向Wの側壁37,37は曲線であったが、本発明は
図7(b)に示すように、直線で構成することもできる。
また、音通路30は後端側23から前端側22に向けて幅方向Wの寸法が大きくなるが、
図7(c)に示すように、後端側23から前端側22に向けて幅方向Wの寸法を等しくできる。
【0040】
[音通路30の正面視したときの変形例(
図8)]
次に、以上の実施形態においては、音通路30は仕切壁16に面する側にだけ設けられるが、本発明は
図8に示すように、音通路30を第1ハウジング11の側壁17,17に倣うように受容領域19の幅方向Wの両側に連なるように延長して設けることができる。
【0041】
[その他の変形例]
以上ではロックアーム50の第2ロック突起54が仕切壁16を打撃することとしている。しかし本発明は、第2電気コネクタ40の他の要素が仕切壁16を打撃することにより嵌合音を生じさせてもよい。
また、以上では第2電気コネクタ40の側に打撃する部材である第2ロック突起54を設ける例を示した。しかし、本発明は、第1電気コネクタ10の側に打撃する部材を設け、第2電気コネクタ20の側に音通路30に対応する要素を設けることを許容する。
【符号の説明】
【0042】
1 電気コネクタ組立体
10 第1電気コネクタ
11 第1ハウジング
13 フード
14 上壁
15 下壁
16 仕切壁
17 側壁
18 嵌合間口
19 受容領域
21 第1ロック突起
22 前端側
23 後端側
25 第1端子
30 音通路
31 開放端
33 閉塞端
35 下面
36 上面
37 側壁
40 第2電気コネクタ
41 第2ハウジング
43 第2ハウジング本体
44 前端壁
45 後端壁
46 端子収容孔
47 カバー
50 ロックアーム
51 支持端
52 弾性アーム
53 操作端
54 第2ロック突起
100 筐体
200 プリント配線基板
H 高さ方向
L 嵌合方向
W 幅方向
HT 打撃領域