(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】解体撤去方法及び解体撤去装置
(51)【国際特許分類】
G21F 9/30 20060101AFI20240723BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20240723BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G21F9/30 535C
G21F9/28 521A
G21F9/30 531M
G21F9/28 511A
G21F9/30 535E
E04G23/08 E
E04G23/08 J
(21)【出願番号】P 2021010558
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】古野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 修
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】神尾 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】安河内 淳一
(72)【発明者】
【氏名】定木 啓
(72)【発明者】
【氏名】岸本 学
(72)【発明者】
【氏名】日澤 光紘
(72)【発明者】
【氏名】佐野 勁太
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-121798(JP,A)
【文献】特開平01-121799(JP,A)
【文献】特開平08-304597(JP,A)
【文献】特表2017-501867(JP,A)
【文献】特開2019-168294(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0621659(KR,B1)
【文献】国際公開第2015/159970(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
G21F 9/28
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高線量で放射化されたコンクリートを解体撤去する解体撤去方法であって、
前記コンクリートの表面に沿って高圧液化ガス噴射装置が移動しながら前記表面に高圧液化ガスを噴射して前記コンクリートを斫る工程と、
前記斫る工程において斫られた前記コンクリートを回収する工程と、
を備え、
前記斫る工程では、前記高圧液化ガスを噴射することによって前記コンクリートを粉粒体として破砕し、
前記回収する工程では、前記粉粒体として破砕された前記コンクリートを回収
し、
前記高圧液化ガス噴射装置のフード部で前記コンクリートの表面を覆う工程を備え、
前記斫る工程では、前記フード部で覆われた前記コンクリートの表面に高圧液化ガスを噴射して前記コンクリートを斫り、
前記回収する工程では、前記フード部で覆われると共に前記粉粒体として破砕されている前記コンクリートを回収し、
前記フード部は、前記コンクリートの表面から離れるに従って斜め下方に延在する傾斜部を備え、
前記回収する工程では、前記斫る工程において前記粉粒体として破砕された前記コンクリートが前記傾斜部に蓄積し、
斫られた前記コンクリートは前記フード部の内部空間において回収機構によって回収され、
前記傾斜部には、前記回収機構によって回収しきれなかった前記コンクリートの粉粒体が蓄積される、
解体撤去方法。
【請求項2】
前記回収する工程において回収されたコンクリートを吸引する工程と、
前記吸引する工程において吸引されたコンクリートを廃棄物容器に収納する工程を備える、
請求項
1に記載の解体撤去方法。
【請求項3】
前記高圧液化ガスは高圧液体窒素であり、
前記斫る工程では、前記高圧液体窒素を前記表面に噴射して前記コンクリートを斫る、
請求項1
または請求項2に記載の解体撤去方法。
【請求項4】
前記コンクリートは、放射線量が一定量以上であって前記コンクリートの前記表面側に位置する高放射化領域と、放射線量が前記一定量未満であって前記高放射化領域の前記表面の反対側に位置する低放射化領域と、を含んでおり、
前記斫る工程では、前記コンクリートの前記高放射化領域のみを選択的に斫る、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の解体撤去方法。
【請求項5】
高線量で放射化されたコンクリートを解体撤去する解体撤去装置であって、
前記コンクリートの表面に沿って移動する高圧液化ガス噴射装置を備え、
前記高圧液化ガス噴射装置は、前記表面に沿って移動しながら前記表面に高圧液化ガスを噴射して前記コンクリートを粉粒体として破砕することにより、前記コンクリートを斫
り、
前記高圧液化ガス噴射装置のフード部で前記コンクリートの表面を覆い、
前記高圧液化ガス噴射装置は、前記フード部で覆われた前記コンクリートの表面に高圧液化ガスを噴射して前記コンクリートを斫り、
前記フード部で覆われると共に前記粉粒体として破砕されている前記コンクリートが回収され、
前記フード部は、前記コンクリートの表面から離れるに従って斜め下方に延在する傾斜部を備え、
前記回収では、前記粉粒体として破砕された前記コンクリートが前記傾斜部に蓄積し、
斫られた前記コンクリートは前記フード部の内部空間において回収機構によって回収され、
前記傾斜部には、前記回収機構によって回収しきれなかった前記コンクリートの粉粒体が蓄積される、
解体撤去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高線量で放射化されたコンクリートを解体撤去する解体撤去方法及び解体撤去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高線量で放射化されたコンクリートを解体撤去する方法及び装置としては、従来から種々のものが知られている。特公平2-62036号公報には、原子炉におけるコンクリート生体遮蔽体内の円筒状コンクリート熱遮蔽壁を解体するための解体システムが記載されている。コンクリート生体遮蔽体には、頂部開口と、頂部開口を封止する屋根シールとを備える。
【0003】
屋根シールにより、コンクリート生体遮蔽体の内部及び外部が等圧でありながら、コンクリートの切断作業によって発生したスラグ及び粉塵等を外部に漏らさない構成とされている。熱遮蔽壁の中心位置にはメインシャフトが設置されている。メインシャフトは、コンクリート生体遮蔽体の内部に設けられた上部支持装置及び下部支持装置によって支持されている。メインシャフトには旋回装置が取り付けられており、旋回装置上にはプラズマ切断機が設置されている。プラズマ切断機は、熱遮蔽壁を解体する機器であって、ブロック状に熱遮蔽壁を解体する。ブロック状に切断された熱遮蔽壁は、廃棄物として処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したプラズマ切断機等、ブロック状にコンクリートを解体する場合には、切断機を複数の方向に移動させなければならないため、遠隔操作が困難となる場合があると共に、装置が大がかりとなりうる。ブロック状にコンクリートを解体する場合、コンクリートを細かく切断できないので、放射化レベルが高いコンクリートと放射化レベルが低いコンクリートとを分離して切断できないという問題がある。
【0006】
放射化レベルが高いコンクリートの処分費用は、放射化レベルが低いコンクリートの処分費用よりも高いという現状がある。よって、上記のように放射化レベルが高いコンクリートを放射化レベルが低いコンクリートと分離して切断できない場合、コンクリートの処分費用が高くなるという問題が生じうる。
【0007】
更に、ブロック状にコンクリートを解体する場合、解体されたコンクリートが比較的大型となるため、解体されたコンクリートを廃棄物収納容器に収納することが難しいという問題がある。また、放射化したコンクリートをブロック状に切断した切断機そのものが2次廃棄物となるため、2次廃棄物の量が多いという問題もある。
【0008】
本開示は、遠隔操作を容易に行うことができると共に、コンクリートの処分費用を低減させ、解体されたコンクリートの収納を容易に行うことができる解体撤去方法及び解体撤去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る解体撤去方法は、高線量で放射化されたコンクリートを解体撤去する解体撤去方法であって、コンクリートの表面に沿って高圧液化ガス噴射装置が移動しながら表面に高圧液化ガスを噴射してコンクリートを斫る工程と、斫る工程において斫られたコンクリートを回収する工程と、を備え、斫る工程では、高圧液化ガスを噴射することによってコンクリートを粉粒体として破砕し、回収する工程では、粉粒体として破砕されたコンクリートを回収し、高圧液化ガス噴射装置のフード部でコンクリートの表面を覆う工程を備え、斫る工程では、フード部で覆われたコンクリートの表面に高圧液化ガスを噴射してコンクリートを斫り、回収する工程では、フード部で覆われると共に粉粒体として破砕されているコンクリートを回収し、フード部は、コンクリートの表面から離れるに従って斜め下方に延在する傾斜部を備え、回収する工程では、斫る工程において粉粒体として破砕されたコンクリートが傾斜部に蓄積し、斫られたコンクリートはフード部の内部空間において回収機構によって回収され、傾斜部には、回収機構によって回収しきれなかったコンクリートの粉粒体が蓄積される。
【0010】
この解体撤去方法では、高圧液化ガス噴射装置が高線量で放射化されたコンクリートの表面に沿って移動しながら当該表面に高圧液化ガスを噴射してコンクリートを斫る。従って、高圧液化ガス噴射装置による高圧液化ガスの噴射によってコンクリートを斫ることができるので、高圧液化ガス噴射装置の遠隔操作を容易に行うことができる。この解体撤去方法では、斫る工程において、コンクリートは高圧液化ガスの噴射によって粉粒体として破砕される。従って、高圧液化ガスの噴射によってコンクリ-トを粉粒体として細かく破砕することができるので、放射化レベルが高いコンクリートを選択的に斫ることができる。よって、放射化レベルが高いコンクリートを放射化レベルが低いコンクリートと分離して斫ることができるので、放射化レベルが高いコンクリートへの放射化レベルが低いコンクリートの混入を抑制してコンクリートの処分費用を低減させることができる。また、コンクリートが粉粒体として破砕されることにより、破砕されたコンクリートを廃棄物収納容器に容易に収納することができる。更に、噴射された高圧液化ガスは、コンクリートを斫るときに気化するため、2次廃棄物とならない。従って、2次廃棄物の量を低減させることができる。
【0011】
ところで、前述したようにブロック状にコンクリートを切断する場合、切断中に放射化したコンクリートの粉塵が飛散するので、放射化された粉塵の回収が難しいという問題が生じうる。これに対し、前述した解体撤去方法では、高圧液化ガス噴射装置のフード部でコンクリートの表面を覆った状態でコンクリートを斫り、フード部で覆われたコンクリートの粉粒体を回収する。従って、コンクリートの破砕及び回収をフード部の内部で行うことができるので、斫ったコンクリートの回収を容易に行うことができる。
【0012】
斫ったコンクリートの粉粒体がフード部の傾斜部に蓄積されるので、斫ったコンクリートの回収を一層容易に行うことができる。
【0013】
前述した解体撤去方法は、回収する工程において回収されたコンクリートを吸引する工程と、吸引する工程において吸引されたコンクリートを廃棄物容器に収納する工程を備えてもよい。この場合、回収したコンクリートが吸引されて廃棄物容器に収納されるので、コンクリートの粉粒体の吸引及び収納を一層容易に行うことができる。
【0014】
高圧液化ガスは高圧液体窒素であってもよく、斫る工程では、高圧液体窒素を表面に噴射してコンクリートを斫ってもよい。この場合、高圧液体窒素は不燃性を有するため、高圧液化ガスの取り扱いを容易に行うことができる。更に、高圧液体窒素は、高い気化力を有し、コンクリートの表面に噴射されたときのジェット効率を高めることができるので、コンクリートの斫りを効率よく行うことができる。
【0015】
コンクリートは、放射線量が一定量以上であってコンクリートの表面側に位置する高放射化領域と、放射線量が一定量未満であって高放射化領域の表面の反対側に位置する低放射化領域と、を含んでおり、斫る工程では、コンクリートの高放射化領域のみを選択的に斫ってもよい。この場合、斫る工程において、コンクリートの表面側に位置する高放射化領域のみが選択的に斫られるので、放射化レベルが高い高放射化領域を低放射化領域から分離して斫ることができる。従って、高放射化領域のみを選択的に斫って低放射化領域とは別の方法で処分することができるので、コンクリートの処分費用を低減させることができる。
【0016】
本開示に係る解体撤去装置は、高線量で放射化されたコンクリートを解体撤去する解体撤去装置であって、コンクリートの表面に沿って移動する高圧液化ガス噴射装置を備え、高圧液化ガス噴射装置は、表面に沿って移動しながら表面に高圧液化ガスを噴射してコンクリートを粉粒体として破砕することにより、コンクリートを斫り、高圧液化ガス噴射装置のフード部でコンクリートの表面を覆い、高圧液化ガス噴射装置は、フード部で覆われたコンクリートの表面に高圧液化ガスを噴射してコンクリートを斫り、フード部で覆われると共に粉粒体として破砕されているコンクリートが回収され、フード部は、コンクリートの表面から離れるに従って斜め下方に延在する傾斜部を備え、回収では、粉粒体として破砕されたコンクリートが傾斜部に蓄積し、斫られたコンクリートはフード部の内部空間において回収機構によって回収され、傾斜部には、回収機構によって回収しきれなかったコンクリートの粉粒体が蓄積される。
【0017】
この解体撤去装置では、高圧液化ガス噴射装置が高線量で放射化されたコンクリートの表面に沿って移動しながら高圧液化ガスを噴射してコンクリートを斫るので、前述した解体撤去方法と同様、高圧液化ガス噴射装置の遠隔操作を容易に行うことができる。この解体撤去装置では、高圧液化ガスのコンクリートへの噴射によってコンクリートが粉粒体として破砕されるので、放射化レベルが高いコンクリートを選択的に斫ることができる。従って、放射化レベルが高いコンクリートへの放射化レベルが低いコンクリ-トの混入を抑制できるので、コンクリートの処分費用を低減させることができる。更に、コンクリートが粉粒体として破砕されることにより、廃棄物収納容器への放射化されたコンクリートの収納を容易に行うことができる。そして、噴射された高圧液化ガスは、コンクリートを斫るときに気化するため、2次廃棄物とならない。その結果、2次廃棄物の量を低減させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、遠隔操作を容易に行うことができると共に、コンクリートの処分費用を低減させ、解体されたコンクリートの収納を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る解体撤去方法及び解体撤去装置が適用される例示的な原子炉を示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る高圧液化ガス噴射装置を示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係る高圧液化ガス噴射装置を
図3とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図5】実施形態に係る高圧液化ガス噴射装置の側面図である。
【
図6】実施形態に係る高圧液化ガス噴射装置による高圧液化ガスの噴射を模式的に示す図である。
【
図7】(a)、(b)及び(c)は、噴射された高圧液化ガスがコンクリートを破砕している状態を模式的に示す断面図である。
【
図8】破砕されて粉粒体となったコンクリートの状態を模式的に示す図である。
【
図9】実施形態に係る解体撤去方法の工程の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照しながら、本開示に係る解体撤去方法及び解体撤去装置の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0021】
図1は、実施形態に係る解体撤去方法及び解体撤去装置が適用されるコンクリートCによって構成される原子炉Nを示している。原子炉Nは、例えば、研究用原子炉(研究炉)であり、原子炉Nは生体遮蔽体2を備え、生体遮蔽体2はコンクリートC及び鉄筋を含んでいる。
【0022】
原子炉Nは、例えば、圧力容器3が配置される縦穴N1を有する縦長の長円筒体とされている。一例として、原子炉Nは、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。圧力容器3の内部には、核分裂反応を起こして熱エネルギーを生じさせる複数の燃料棒が束ねられて構成された複数の燃料集合体が設けられており、複数の燃料集合体の間に入れられた制御棒で核分裂反応が制御されることによって発熱が制御される。
【0023】
例えば、原子炉Nの縦穴N1の内面に沿って、鋼板によるライニングが施されている。本実施形態では、例えば、当該ライニングが剥がされて原子炉Nの1次遮蔽壁における高線量領域のコンクリートCが解体される。原子炉Nの内部における放射化レベルは、余裕深度対象廃棄物(L1)、ピット処分対象廃棄物(L2)、トレンチ処分対象廃棄物(L3)、クリアランス(CL)及び非放射性廃棄物(NR)に区分される。放射化レベルはL1が最も高く、L2が2番目に高く、L3が3番目に高く、CLが4番目に高く、NRが最も低い。
【0024】
L1の放射性廃棄物、L2の放射性廃棄物、L3の放射性廃棄物、CLの放射性廃棄物、及びNRの非放射性廃棄物、とでは処分方法が異なる。CLは放射性廃棄物として扱う必要がないものであるが、L3は浅地中に埋設するトレンチ処分、L2はピット処分、L1は余裕深度処分、が必要となる。
【0025】
L1の余裕深度処分による処分費用はL2のピット処分による処分費用よりも高くなる傾向があり、L2のピット処分による処分費用はL3のトレンチ処分による処分費用よりも高くなる傾向がある。このように、放射化レベルが高いコンクリートC等の廃棄物ほど、処分費用が高くなるので、放射化レベルが高い部分のみを選択的に取り出すことが求められる。本実施形態では、例えば、L1のコンクリートCのみ、及びL2のコンクリートCのみ、を選択的に斫ることが可能とされている。
【0026】
例えば、コンクリートCは、放射線量が一定量以上であってコンクリートCの表面C1を構成する高放射化領域A1と、放射化量が一定量未満であって高放射化領域A1の表面C1との反対側に位置する低放射化領域A2とを含む。更に本実施形態の例では、高放射化領域A1が第1領域A11、及び第1領域A11よりも放射化レベルが低い第2領域A12を含んでおり、低放射化領域A2が第3領域A21、及び第3領域A21よりも放射化レベルが低い第4領域A22を含む。一例として、第1領域A11がL1のコンクリートC、第2領域A12がL2のコンクリートC、第3領域A21がL3のコンクリートC、第4領域A22がCLのコンクリートCに相当する。
【0027】
上記の第1領域A11、第2領域A12、第3領域A21及び第4領域A22のようなコンクリートCの放射化度の分布は、例えば、予め把握されている。放射化度の分布の把握の方法としては、放射化計算によってコンクリートCの各部の放射化度を計算する方法でもよいし、コンクリートCの一部を抽出して分析するコア分析によるものであってもよい。本実施形態では、コンクリートCの放射化度の分布が予め把握された状態で、放射化度が高い箇所のコンクリートCを選択的に斫り取る。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る解体撤去装置1は、コンクリートCの高放射化された部分を選択的に斫ることが可能であって、コンクリートCの表面C1に対向する位置に設けられる。例えば、解体撤去装置1は原子炉Nの縦穴N1に設けられる作業用マニピュレータ5と、コンクリートCの表面C1に対向する高圧液化ガス噴射装置10とを備える。
【0029】
図2に示されるように、作業用マニピュレータ5は、鉛直方向D1に延在するワイヤ5bに取り付けられている。例えば、作業用マニピュレータ5は、ワイヤ5bに吊り下げられるカッタ及びレーザを含む切削装置5cと、コンクリートCの上面C2に配置されており上面C2からワイヤ5bを介して切削装置5c及び高圧液化ガス噴射装置10を支持する支持機構5dとを有する。高圧液化ガス噴射装置10は、例えば、切削装置5cの下方に設けられる。
【0030】
切削装置5cは、例えば、先端にカッタ又はレーザが取り付けられる複数のアーム5kを有する。一例として、複数のアーム5kが円筒状の表面C1の周方向に並ぶように配置されてもよい。一例として、支持機構5dは、上面C2に載せられる板状部材5fと、板状部材5fに載せられる筒状部材5gとを備える。
【0031】
筒状部材5gは、上下一対に設けられる環状部5hと、一対の環状部5hを互いに接続する複数の柱部5jとを有する。例えば、複数の柱部5jの間に形成された空間にはコンクリートCの解体のための設備が配置される。以上、作業用マニピュレータ5の例について説明したが、作業用マニピュレータ5の構成は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0032】
解体撤去装置1は、例えば、高圧液化ガス噴射装置10から延びる接続部材6と、接続部材6を介してコンクリートCの上面C2に設けられたタンク7とを備えてもよい。タンク7は接続部材6を介して高圧液化ガス噴射装置10に接続されている。タンク7は高圧液化ガス噴射装置10に高圧液化ガスG(
図6参照)を供給するタンクであって、接続部材6は高圧液化ガス噴射装置10への高圧液化ガスの供給路、及び高圧液化ガス噴射装置10によって解体されたコンクリートCが通るコンクリートCの回収路を含んでいる。
【0033】
解体撤去装置1は、例えば、上面C2において接続部材6に接続されたポンプ8及び集塵機9を備えていてもよい。ポンプ8は、接続部材6を介してタンク7に貯留されている高圧液化ガスGを高圧液化ガス噴射装置10に供給する。集塵機9には、接続部材6を介して高圧液化ガス噴射装置10から解体されたコンクリートCが集められる。集塵機9は、例えば、高圧液化ガス噴射装置10によって解体されて粉粒体P(
図7(b)、
図7(c)及び
図8参照)とされたコンクリートCを回収する。
【0034】
高圧液化ガス噴射装置10(後述するフード部11)は、コンクリートCの表面C1に沿って移動可能とされており、移動しながら表面C1に高圧液化ガスGを噴射してコンクリートCを斫る。高圧液化ガス噴射装置10は、例えば、ワイヤ5bによって移動可能に支持されている。高圧液化ガス噴射装置10は、例えば、鉛直方向及び水平方向の双方に移動自在とされている。
【0035】
例えば、高圧液化ガス噴射装置10は原子炉Nの外部から遠隔操作(遠隔監視)されて移動し、コンクリートCに対する高圧液化ガスGの噴射を行う。また、高圧液化ガス噴射装置10は表面C1に沿って自動で移動してもよく、この場合、コンクリートCの斫り作業の省力化に寄与する。
【0036】
図3は、高圧液化ガス噴射装置10を示す斜視図である。
図4は、
図3とは異なる方向から見た高圧液化ガス噴射装置10の斜視図である。
図3及び
図4に示されるように、高圧液化ガス噴射装置10は、コンクリートCの表面C1を覆うフード部11と、フード部11の内部空間11jに配置されておりコンクリートCの表面C1に高圧液化ガスGを噴射する噴射機構12と、斫られたコンクリートCを回収する回収機構13とを備える。
【0037】
フード部11は、例えば、矩形箱状を呈する。フード部11の鉛直方向D1の長さL1、フード部11の第1方向D2の長さL2、及びフード部11の第2方向D3の長さL3は、例えば、1500mm以下である。第1方向D2は鉛直方向D1に交差(例えば直交)する方向であり、第2方向D3は鉛直方向D1及び第1方向D2の双方に交差(例えば直交)する方向である。
【0038】
一例として、第1方向D2はフード部11の幅方向であり、第2方向D3はフード部11の奥行方向である。また、第1方向D2はコンクリートCの表面C1に沿う方向であり、第2方向D3はコンクリートCの表面C1に交差(例えば直交)する方向であってもよい。
【0039】
噴射機構12は、フード部11に覆われたコンクリートCの部位に高圧液化ガスGを噴射してコンクリートCを斫る。噴射機構12によって斫られたコンクリートCはフード部11の内部空間11jにおいて回収機構13によって回収される。例えば、フード部11は、鉛直方向D1の上方に向けられる天面部11bと、第1方向D2に向けられる一対の側面部11cと、表面C1の反対側(フード部11の奥行方向)に向けられる背面部11dと、表面C1に当てられる開口部11fと、天面部11bの反対側を向く底面部11gとを有する。なお、以降では、フード部11の開口部11fが設けられる方向を「前」、フード部11の背面部11dが設けられる方向を「後」として説明することがある。しかしながら、これらの方向は、説明の便宜上のものであって、物の配置位置等を限定するものではない。
【0040】
天面部11bは、例えば、第1方向D2及び第2方向D3の双方に延在する平板状を呈する。また、一対の側面部11cのそれぞれは、鉛直方向D1及び第2方向D3の双方に延びる平板状を呈しており、例えば、背面部11dは鉛直方向D1及び第1方向D2の双方に延びる平板状を呈する。一例として、6つの面を有するフード部11では、当該6つの面のうち開口部11f以外の5つの面が塞がれた構成とされている。
【0041】
図5は、高圧液化ガス噴射装置10を第1方向D2に沿って見た高圧液化ガス噴射装置10の側面図である。
図3~
図5に示されるように、高圧液化ガス噴射装置10は、傾斜部14を備える。傾斜部14は、フード部11の底面部11gに形成されており開口部11fから離れるに従って斜め下方に延在している。
【0042】
フード部11の内部空間11jには、噴射機構12によって高圧液化ガスGが噴射されて斫られたコンクリートCが回収される。例えば、傾斜部14(傾斜部14の内側)には、回収機構13によって回収しきれなかったコンクリートCの粉粒体P(
図7(b)、
図7(c)及び
図8参照)が蓄積される。このように、開口部11fから離れるに従って斜め下方に延在する傾斜部14をフード部11が備えることにより、斫られたコンクリートCがフード部11の外部に漏れることを抑制することができる。
【0043】
フード部11は、例えば、開口部11fを構成する複数のバネ部15を備える。バネ部15の材料は、例えば、ナイロン及びゴムの少なくともいずれかを含む。複数のバネ部15は、開口部11fの全周にわたって配置されている。すなわち、複数のバネ部15は、開口部11fに沿って並ぶように配置されている。複数のバネ部15は、鉛直方向D1に沿って並ぶように配置されると共に、第1方向D2に沿って並ぶように配置されている。
【0044】
バネ部15は、例えば、開口部11fを形成する第1板部15bと、第1板部15bの後側に位置する第2板部15cと、第2板部15cの上方において第2方向D3に伸縮するバネ15dと、第2板部15cに対して上方に延在すると共にバネ15dを伸縮可能に支持する支持板15fとを有する。
【0045】
一例として、第1板部15bの前側に向けられる端面が鉛直方向D1及び第1方向D2のそれぞれに沿って並ぶことによって開口部11fが形成されている。バネ部15は、例えば、複数のバネ15d、及び複数の支持板15fを含んでいる。以上、バネ部15の構成の例について説明したが、バネ部15の構成は上記の例に限定されない。
【0046】
各バネ部15(バネ15d)は、第2方向D3に沿って伸縮可能とされている。開口部11fに外力が付与されていない状態では、
図3に示されるように、開口部11fは矩形状を呈する。しかしながら、開口部11fに後方への外力が付与されると、外力が付与された部分のバネ部15が後方に移動して開口部11fが変形する。
【0047】
このように、複数のバネ部15のそれぞれが後方に移動可能とされていることにより、開口部11fが表面C1の凹凸部に当てられた場合であっても、当該凹凸部の形状に開口部11fを追従させることができる。これにより、当該凹凸部に開口部11fが当てられたとしても当該凹凸部の形状に開口部11fを追従できるので、表面C1をより確実に封止して斫られたコンクリートCの粉粒体Pがフード部11の外部に漏れることをより確実に抑制できる。
【0048】
図3及び
図4に示されるように、噴射機構12は、例えば、高圧液化ガスGを噴射する矩形箱状の噴射部17と、フード部11の内部空間11jにおいて噴射部17を移動させる移動機構12cとを有する。移動機構12cは、例えば、噴射部17を支持する支持部材12dと、支持部材12dを第1方向D2に沿って移動可能に支持する第1レール部12fと、第1レール部12fを鉛直方向D1に沿って移動可能に支持する第2レール部12gとを有する。
【0049】
第2レール部12gはフード部11の内部空間11jにおいて固定されている。第2レール部12gに対して第1レール部12fを鉛直方向D1に沿って移動させると共に、第1レール部12fに対して支持部材12dを第1方向D2に沿って移動させることにより、開口部11fのあらゆる部分に噴射部17を対向させることが可能となる。
【0050】
回収機構13は、噴射機構12がコンクリートCの表面C1に高圧液化ガスGを噴射して粒状化したコンクリートCを回収する。回収機構13は、噴射部17の内部空間12hに連通する第1管状部13bと、フード部11の側面部11cからフード部11の外方に延び出す第2管状部13cとを有する。
【0051】
第1管状部13bは、噴射機構12から延び出すと共に側面部11cを貫通してフード部11の外方に延び出している。回収機構13は、フード部11の外部において第1管状部13b及び第2管状部13cを合流させる第3管状部13dを有する。第1管状部13bの一端は噴射部17の内部空間12hに連通すると共に、第2管状部13cの一端はフード部11の内部空間11jに連通している。
【0052】
回収機構13は、例えば、第3管状部13dのフード部11との反対側に設けられた排風機(不図示)を更に備える。この排風機によってフード部11の内部空間11jの粉粒体P、及び噴射部17の内部空間12hの粉粒体Pの双方が吸引される。すなわち、排風機の作動によって、内部空間11jの粉粒体Pが第2管状部13cを介して第3管状部13dに吸引されると共に、内部空間12hの粉粒体Pが第1管状部13bを介して第3管状部13dに吸引される。第3管状部13dに吸引された粉粒体Pは、例えば、前述した接続部材6を介して集塵機9に集められる。
【0053】
高圧液化ガス噴射装置10は、フード部11と、フード部11の内部に配置された噴射部17を備えることにより、粉粒体Pの吸引のための二重構造が形成される。すなわち、噴射部17の内部空間12hの粉粒体Pが第1管状部13bに吸引されて噴射部17及びフード部11の外部に排出される。
【0054】
第1管状部13bを介して吸引しきれなかった粉粒体Pは第2管状部13cに吸引されてフード部11の外部に排出される。更に、第2管状部13cを介して吸引しきれなかった粉粒体Pは傾斜部14に蓄積される。従って、高圧液化ガス噴射装置10はコンクリートCの粉粒体Pの回収のための三重構造(第1管状部13b、第2管状部13c及び傾斜部14の三重構造)を備える。従って、粉粒体PとされたコンクリートCのフード部11からの漏れを抑制して粉粒体Pを一層確実に回収できる。
【0055】
次に、
図6を参照しながら、噴射部17の詳細な構造について説明する。
図6は、噴射機構12の噴射部17を拡大した斜視図である。例えば、噴射部17は、鉛直方向D1の上方に向けられる天面部17bと、第1方向D2に向けられる一対の側面部17cと、表面C1に対向する開口部17fと、天面部17bの反対側を向く底面部17gとを有する。
【0056】
一例として、噴射部17は6つの面を有し、当該6つの面のうち開口部17f以外の5つの面が塞がれた状態とされている。開口部17fの内側は後方に窪んでおり、この窪んだ部分には開口17jが形成されている。一例として、開口17jは円形状を呈する。開口17jの内側には、高圧液化ガスGを噴射するノズル17hが配置されている。
【0057】
噴射部17は、例えば、開口部17fを構成する複数のバネ部18を備えてもよい。複数のバネ部18のそれぞれは、開口部17fの全周にわたって配置されている。すなわち、複数のバネ部18は、開口部17fに沿って並ぶように配置されている。複数のバネ部18は、鉛直方向D1に沿って並ぶように配置されると共に、第1方向D2に沿って並ぶように配置されている。
【0058】
バネ部18の構成は、例えば、前述したバネ部15の構成と同様とすることが可能である。しかしながら、例えばバネ部18の大きさはバネ部15よりも小さいので、バネ部18の図示については簡略化している。各バネ部18は、第2方向D3に沿って伸縮可能とされている。開口部17fに外力が付与されていない状態では、開口部17fは矩形状を呈する。
【0059】
しかしながら、開口部17fに後方への外力が付与されると、外力が付与された部分のバネ部18が後方に移動して開口部17fが変形する。従って、前述したバネ部15と同様、複数のバネ部18が後方に移動可能とされていることにより,コンクリートCの表面C1の凹凸部に開口部17fを追従させることができる。
【0060】
その結果、噴射部17では、フード部11と同様、表面C1を確実に封止して斫られたコンクリートCの粉粒体Pが噴射部17の外部に漏れることを抑制することができる。噴射部17のノズル17hは、高圧液化ガスGが噴射される噴射孔17kを有する。
【0061】
高圧液化ガスGは、例えば、液化点(沸点)が-196℃である高圧液体窒素である。この場合、高圧液化ガスGは、窒素ガスが冷凍サイクルを経て液化されたものとされており、気化するときに600倍~700倍程度に膨張する。本実施形態では、高圧液化ガスGが気化するときのエネルギーによって放射化されたコンクリートCが選択的に斫られる。
【0062】
図7(a)、
図7(b)及び
図7(c)は、高圧液化ガスGが噴射されてコンクリートCが斫られる状態を模式的に示すコンクリートCの縦断面図である。
図6及び
図7(a)に示されるように、噴射部17からコンクリートCの表面C1に高圧液化ガスGを噴射すると、噴射された高圧液化ガスGが表面C1において気化及び膨張する。
【0063】
図7(b)及び
図7(c)に示されるように、高圧液化ガスGがコンクリートCの表面C1において気化及び膨張すると、その気化膨張時の爆発的なエネルギーによって表面C1のコンクリートCが破砕する。
図7(c)及び
図8に示されるように、破砕されたコンクリートCは粉粒体Pとなる。
【0064】
図8は、粉粒体Pとして斫られたコンクリートCを示している。本開示において「粉粒体」とは、粉体及び粒体(粒状体)を示しており、例えば、破砕されて粉体又は粒体とされたコンクリートを含んでいる。粉粒体Pの径(直径)は、例えば、数μm以上且つ30mm以下である。また、噴射部17からの高圧液化ガスGの噴射による斫り範囲(斫られるコンクリートCの幅)Wは、例えば3cm以上且つ7cm以下(一例として5cm程度)である。従って、フード部11及び回収機構13によって粉粒体Pの回収を容易に行うことができる。
【0065】
次に、本実施形態に係る解体撤去方法の例について
図9のフローチャートを参照しながら説明する。
図9は、
図1及び
図2に例示される原子炉NのコンクリートCを解体する解体方法の工程の例を示している。最初に、原子炉Nの縦穴N1に接続部材6(又はワイヤ5b)を介して高圧液化ガス噴射装置10を下ろすと共に、レーザ及びカッタを作業用マニピュレータ5に取り付けてワイヤ5bを介して縦穴N1に作業用マニピュレータ5を下ろす。
【0066】
まず、原子炉Nの縦穴N1のライニングを作業用マニピュレータ5のレーザによって切断してライニングを剥がし取る(ステップS1)。次に、
図7(a)に示されるように、斫る対象のコンクリートCが存在する箇所に解体撤去装置1が高圧液化ガス噴射装置10を移動させて当該箇所のコンクリートCの表面C1を覆って密閉する(覆う工程、ステップS2)。このとき、フード部11の開口部11fをコンクリートCの表面C1に押し当てることによってコンクリートCの表面C1を密閉する。
【0067】
コンクリートCの表面C1を密閉した状態では、噴射部17がコンクリートCの表面C1に高圧液化ガスGを噴射してコンクリートCを斫る(斫る工程、ステップS3)。
図7(b)及び
図7(c)に示されるように、高圧液化ガスGが噴射された箇所のコンクリートCが破砕されて粉粒体Pとなり、粉粒体Pが回収される(回収する工程)。
【0068】
そして、フード部11の内部に回収された粉粒体Pを吸引する(吸引する工程、ステップS4)。具体的には、噴射部17の内部空間12hの粉粒体Pを第1管状部13b及び第3管状部13dを介して吸引すると共に、フード部11の内部空間11jの粉粒体Pを第2管状部13c及び第3管状部13dを介して吸引する。吸引しきれなかった粉粒体Pは傾斜部14に蓄積される。
【0069】
以上のように高圧液化ガスGの噴射によってコンクリートCを斫ると共に、コンクリートCの内部の鉄筋を作業用マニピュレータ5のカッタによって切断する(ステップS5)。一方、前述の工程で吸引した粉粒体Pを廃棄物収納容器に収納する(収納する工程、ステップS6)。そして、廃棄物収納容器に収納された粉粒体Pを原子炉Nから撤去して(ステップS7)、一連の工程が完了する。
【0070】
次に、本実施形態に係る解体撤去方法及び解体撤去装置1から得られる作用効果について説明する。本実施形態に係る解体撤去方法及び解体撤去装置1では、高圧液化ガス噴射装置10が高線量で放射化されたコンクリートCの表面C1に沿って移動しながら表面C1に高圧液化ガスGを噴射してコンクリートCを斫る。従って、高圧液化ガス噴射装置10による高圧液化ガスGの噴射によってコンクリートCを斫ることができるので、高圧液化ガス噴射装置10の遠隔操作を容易に行うことができる。
【0071】
本実施形態の解体撤去方法及び解体撤去装置1では、斫る工程において、コンクリートCは高圧液化ガスGの噴射によって粉粒体Pとして破砕される。従って、高圧液化ガスGの噴射によってコンクリートCを粉粒体Pとして細かく破砕することができるので、放射化レベルが高いコンクリートC(例えば、L1のコンクリートCのみ、又はL2のコンクリートCのみ)を選択的に斫ることができる。
【0072】
よって、放射化レベルが高いコンクリートCを放射化レベルが低いコンクリートCと分離して斫る工程を実行できるので、放射化レベルが高いコンクリートCへの放射化レベルが低いコンクリートCの混入を抑制してコンクリートCの処分費用を低減させることができる。
【0073】
また、コンクリートCが粉粒体Pとして破砕されることにより、破砕されたコンクリートCを廃棄物収納容器に容易に収納することができる。更に、噴射された高圧液化ガスGは、コンクリートCを斫るときに気化するため、2次廃棄物とならない。従って、2次廃棄物の量を低減させることができる。
【0074】
本実施形態に係る解体撤去方法及び解体撤去装置1は、高圧液化ガス噴射装置10のフード部11でコンクリートCの表面C1を覆う工程を備えてもよく、斫る工程では、フード部11で覆われたコンクリートCの表面C1に高圧液化ガスGを噴射してコンクリートCを斫り、回収する工程では、フード部11で覆われると共に粉粒体Pとして破砕されているコンクリートCを回収してもよい。
【0075】
ところで、従来行われていたようにブロック状にコンクリートを切断する場合、切断中に放射化したコンクリートの粉塵が飛散するので、放射化された粉塵の回収が難しいという問題が生じうる。これに対し、本実施形態の解体撤去方法及び解体撤去装置1では、高圧液化ガス噴射装置10のフード部11でコンクリートCの表面C1を覆った状態でコンクリートCを斫り、フード部11で覆われたコンクリートCの粉粒体Pを回収する。従って、コンクリートCの破砕及び回収をフード部11の内部空間11jで行うことができるので、斫ったコンクリートCの回収を容易に行うことができる。
【0076】
図7(a)、
図7(b)及び
図7(c)に示されるように、フード部11は、コンクリートCの表面C1から離れるに従って斜め下方に延在する傾斜部14を備えてもよく、回収する工程では、斫る工程において粉粒体Pとして破砕されたコンクリートCが傾斜部14に蓄積してもよい。この場合、斫ったコンクリートCの粉粒体Pがフード部11の傾斜部14に蓄積されるので、斫ったコンクリートCの回収を一層容易に行うことができる。
【0077】
本実施形態に係る解体撤去方法及び解体撤去装置1は、回収する工程において回収されたコンクリートCを吸引する工程と、吸引する工程において吸引されたコンクリートCを廃棄物容器に収納する工程を備えてもよい。この場合、回収したコンクリートCが吸引されて廃棄物容器に収納されるので、廃棄物収納容器へのコンクリートCの粉粒体Pの吸引及び収納を一層容易に行うことができる。
【0078】
前述したように、高圧液化ガスGは高圧液体窒素であってもよく、斫る工程では、高圧液体窒素を表面C1に噴射してコンクリートCを斫ってもよい。この場合、高圧液体窒素は不燃性を有するため、高圧液化ガスGの取り扱いを容易に行うことができる。更に、高圧液体窒素は、高い気化力を有し、コンクリートCの表面C1に噴射されたときのジェット効率を高めることができるので、コンクリートCの斫りを効率よく行うことができる。
【0079】
図1に示されるように、コンクリートCは、放射線量が一定量以上であってコンクリートCの表面C1側に位置する高放射化領域A1と、放射線量が一定量未満であって高放射化領域A1の表面C1の反対側に位置する低放射化領域A2と、を含んでおり、斫る工程では、コンクリートCの高放射化領域A1のみを選択的に斫ってもよい。この場合、斫る工程において、コンクリートCの表面C1側に位置する高放射化領域A1のみが選択的に斫られるので、放射化レベルが高い高放射化領域A1を低放射化領域A2から分離して斫ることができる。従って、高放射化領域A1のみを選択的に斫って低放射化領域A2とは別の方法で処分することができるので、コンクリートCの処分費用を低減させることができる。
【0080】
以上、本開示に係る解体撤去方法及び解体撤去装置の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではない。本開示は、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能である。すなわち、解体撤去装置の各部の構成、形状、大きさ、材料、数及び配置態様、並びに、解体撤去方法の各工程の内容及び順序は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0081】
前述の実施形態では、矩形状を呈する開口部11fを有するフード部11を備えた高圧液化ガス噴射装置10について説明した。しかしながら、高圧液化ガス噴射装置のフード部の開口部の形状は、矩形状に限られず、適宜変更可能である。例えば、湾曲したコンクリートの表面に沿うように、円弧状に湾曲していてもよい。
【0082】
更に、本開示に係る高圧液化ガス噴射装置は、フード部を有しない高圧液化ガス噴射装置であってもよい。また、前述の実施形態では、ナイロン及びゴムの少なくともいずれかを含むバネ部15について説明した。しかしながら、フード部の開口部を構成するバネ部の材料は、ナイロン又はゴムに限られず、適宜変更可能である。
【0083】
前述の実施形態では、コンクリートCの放射化度の分布が予め把握されており、予め把握されている高い放射化度のコンクリートCを斫り取る例について説明した。しかしながら、例えば、作業用マニピュレータ5に取り付けられた検知棒がコンクリートCの放射化度を測定しながら放射化度が高いコンクリートCを選択的に斫り取ってもよい。このようにコンクリートCの放射化度を測定するタイミングは特に限定されない。また、例えば、BIM(Building Information Management)によってコンクリートCの放射化度と放射化領域の情報が予め構築されていてもよく、BIMに構築されたデータと解体撤去装置1とを連動させて自動的に高圧液化ガス噴射装置10を操作してもよい。この場合、コンクリートCの斫り取りの全自動化が可能となる。
【0084】
前述の実施形態では、高圧液化ガスGが高圧液化窒素である例について説明した。しかしながら、高圧液化ガスは液化窒素以外のものであってもよい。例えば、高圧液化ガスは、高圧液化空気、又は高圧液化酸素であってもよい。酸素の液化点(沸点)は-183℃であり窒素よりも高いため、取り扱いをしやすいという利点がある。
【0085】
前述の実施形態では、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である原子炉NのコンクリートCを斫る例について説明した。PWRは、高放射化している箇所が多いため、前述した実施形態に係る解体撤去方法及び解体撤去装置1が特に有効となりうる。しかしながら、本開示に係る解体撤去方法及び解体撤去装置が適用される対象は、PWRに限られず特に限定されない。例えば、本開示に係る解体撤去方法及び解体撤去装置は、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)に適用されてもよいし、原子炉以外の構造物に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…解体撤去装置、2…生体遮蔽体、3…圧力容器、5…作業用マニピュレータ、5b…ワイヤ、5c…切削装置、5d…支持機構、5f…板状部材、5g…筒状部材、5h…環状部、5j…柱部、5k…アーム、6…接続部材、7…タンク、8…ポンプ、9…集塵機、10…高圧液化ガス噴射装置、11…フード部、11b…天面部、11c…側面部、11d…背面部、11f…開口部、11g…底面部、11j…内部空間、12…噴射機構、12c…移動機構、12d…支持部材、12f…第1レール部、12g…第2レール部、12h…内部空間、13…回収機構、13b…第1管状部、13c…第2管状部、13d…第3管状部、14…傾斜部、15…バネ部、15b…第1板部、15c…第2板部、15d…バネ、15f…支持板、17…噴射部、17b…天面部、17c…側面部、17f…開口部、17g…底面部、17h…ノズル、17j…開口、17k…噴射孔、18…バネ部、A1…高放射化領域、A2…低放射化領域、A11…第1領域、A12…第2領域、A21…第3領域、A22…第4領域、C…コンクリート、C1…表面、C2…上面、D1…鉛直方向、D2…第1方向、D3…第2方向、G…高圧液化ガス、N…原子炉、N1…縦穴、P…粉粒体、W…範囲。