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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】触媒コンバータ
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
F01N3/28 311U
F01N3/28 311S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021010974
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114613
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】近藤 琢也
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-254410(JP,A)
【文献】実開昭60-102418(JP,U)
【文献】特開2011-256785(JP,A)
【文献】特開平11-270335(JP,A)
【文献】特開2015-137552(JP,A)
【文献】特開2011-047297(JP,A)
【文献】特開平09-242533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0146354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気を浄化する少なくとも1つの触媒と、
前記少なくとも1つの触媒を内部に収容するケースと、
を備え、
前記ケースは、
前記排気の流れ方向に延伸する筒状の外筒部と、
前記外筒部の2つの端部の双方から前記外筒部の内側に折り返して形成された筒状の内筒部と、
を備え、
前記内筒部は、前記少なくとも1つの触媒を保持し且つ前記外筒部と間隔を空けて対向する部分を有する、触媒コンバータ。
【請求項2】
請求項に記載の触媒コンバータであって、
前記少なくとも1つの触媒は、第1触媒と、第2触媒と、を含み、
前記内筒部は、
前記外筒部の2つの端部のうち前記排気の流れ方向における上流側の端部から前記外筒部の内側に折り返して形成され、前記第1触媒を保持する筒状の第1筒部と、
前記外筒部の2つの端部のうち前記排気の流れ方向における下流側の端部から前記外筒部の内側に折り返して形成され、前記第2触媒を保持する筒状の第2筒部と、
を備え、
前記第1筒部及び前記第2筒部の一方は、他方よりも細い、触媒コンバータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の触媒コンバータであって、
前記内筒部における前記外筒部に連続している側と反対側の端部は、前記外筒部に近付く方向に屈曲している、触媒コンバータ。
【請求項4】
請求項1又は請求項に記載の触媒コンバータであって、
前記内筒部における前記外筒部に連続している側と反対側の端部は、前記外筒部から離れる方向に屈曲している、触媒コンバータ。
【請求項5】
内燃機関からの排気を浄化する少なくとも1つの触媒と、
前記少なくとも1つの触媒を内部に収容するケースと、
を備え、
前記ケースは、
前記排気の流れ方向に延伸する筒状の外筒部と、
前記外筒部の2つの端部のうち少なくとも一方から前記外筒部の内側に折り返して形成された筒状の内筒部と、
を備え、
前記内筒部は、前記少なくとも1つの触媒を保持し且つ前記外筒部と間隔を空けて対向する部分を有し、
前記内筒部における前記外筒部に連続している側と反対側の端部は、前記外筒部に近付く方向に屈曲している、触媒コンバータ。
【請求項6】
請求項に記載の触媒コンバータであって、
前記内筒部は、前記外筒部の2つの端部のうち少なくとも前記排気の流れ方向における上流側の端部から前記外筒部の内側に折り返して形成されている、触媒コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、触媒コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関からの排気を浄化する触媒と、触媒を内部に収容するケースと、を備えた触媒コンバータが知られている。この種の触媒コンバータでは、ケースが外気と接することにより、触媒の熱がケースを介して外気へ放散してしまう。そこで、例えば特許文献1では、触媒コンバータにおけるケースとして、内管及び外管による二重管構造が構成されたものを用いることが提案されている。特許文献1に記載の触媒コンバータでは、触媒を保持する内管とその外周を覆う外管との間に空間が形成されることにより、触媒から外気への放熱が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-274233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の触媒コンバータでは、二重管構造を構成するにあたって内管及び外管の2つの部品が必要であり、ケースを構成する部品数が増加してしまうという課題があった。
【0005】
本開示の一局面は、ケースを構成する部品数を増加させなくても触媒から外気への放熱を低減することができる触媒コンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、触媒コンバータであって、少なくとも1つの触媒と、ケースと、を備える。触媒は、内燃機関からの排気を浄化する。ケースは、少なくとも1つの触媒を内部に収容する。また、ケースは、外筒部と、内筒部と、を備える。外筒部は、排気の流れ方向に延伸する。外筒部は、筒状である。内筒部は、外筒部の2つの端部のうち少なくとも一方から外筒部の内側に折り返して形成される。内筒部は、筒状である。また、内筒部は、少なくとも1つの触媒を保持し且つ外筒部と間隔を空けて対向する部分を有する。
【0007】
このような構成によれば、ケースを構成する部品数を増加させなくても、内筒部における触媒を保持する部分と、外筒部と、の間に空間を形成することができるため、触媒から外気への放熱を低減することができる。
【0008】
本開示の一態様では、内筒部は、外筒部の2つの端部のうち排気の流れ方向における少なくとも上流側の端部から外筒部の内側に折り返して形成されていてもよい。
このような構成によれば、内筒部における外筒部に連続している側が上流側に位置することにより内筒部が排気の流れを妨げにくいため、触媒に排気を円滑に流入させることができる。
【0009】
本開示の一態様では、内筒部は、外筒部の2つの端部の双方から外筒部の内側に折り返して形成されていてもよい。
このような構成によれば、ケースの内部の空間における上流側及び下流側のそれぞれに触媒が配置される場合でも、触媒から外気への放熱を低減することができる。
【0010】
本開示の一態様では、少なくとも1つの触媒は、第1触媒と、第2触媒と、を含んでもよい。内筒部は、第1筒部と、第2筒部と、を備えてもよい。第1筒部は、外筒部の2つの端部のうち排気の流れ方向における上流側の端部から外筒部の内側に折り返して形成され、第1触媒を保持する。第1筒部は、筒状である。第2筒部は、外筒部の2つの端部のうち排気の流れ方向における下流側の端部から外筒部の内側に折り返して形成され、第2触媒を保持する。第2筒部は、筒状である。第1筒部及び第2筒部の一方は、他方よりも細くてもよい。
【0011】
このような構成によれば、外筒部の外形を変化させなくても、第1筒部及び第2筒部は、互いに異なる外形を有する第1触媒及び第2触媒をそれぞれ保持することができる。なお、ここでいう第1触媒の外形は、第1筒部の軸方向に沿って見た場合における第1触媒の外形である。また、ここでいう第2触媒の外形は、第2筒部の軸方向に沿ってみた場合における第2触媒の外形である。
【0012】
本開示の一態様では、内筒部における外筒部に連続している側と反対側の端部は、外筒部に近付く方向に屈曲していてもよい。
このような構成によれば、内筒部と外筒部との間に形成された空間に排気が出入りしにくくなるため、触媒から外気への放熱を一層低減することができる。
【0013】
本開示の一態様では、内筒部における外筒部に連続している側と反対側の端部は、外筒部から離れる方向に屈曲していてもよい。
このような構成によれば、仮に触媒に流入される排気の圧力が高くなった場合でも、排気の圧力によって触媒が下流側に移動してしまうことを抑制することができる。
【0014】
本開示の一態様は、内燃機関からの排気を浄化する少なくとも1つの触媒と、少なくとも1つの触媒を内部に収容するケースと、を備えた触媒コンバータの製造方法である。触媒コンバータの製造方法は、筒状の外筒部と、外筒部の第1端部及び第2端部のうち少なくとも第1端部から外筒部の内側に折り返して形成され、第1端部に連続している側から反対側に向かって細くなっており、且つ、外筒部と間隔を空けて対向している筒状の内筒部と、を備えたケースにおける内筒部の内側に、内筒部における第1端部に連続している側から、少なくとも1つの触媒を圧入する。
【0015】
このような構成によれば、ケースを構成する部品数を増加させなくても触媒から外気への放熱を低減可能な触媒コンバータを製造することができる。また、触媒に流入される排気の圧力が高くなった場合でも排気の圧力によって触媒が下流側に移動してしまうことを抑制可能な触媒コンバータを製造することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る触媒コンバータの構成を示す模式的な断面図である。
図2図2Aは、第1実施形態に係る触媒コンバータの製造方法における触媒の配置方法において、ケースに触媒を圧入する前の状態を示す模式的な断面図である。図2Bは、第1実施形態に係る触媒コンバータの製造方法における触媒の配置方法において、ケースに触媒を圧入している途中の状態を示す模式的な断面図である。
図3】第2実施形態に係る触媒コンバータの構成を示す模式的な断面図である。
図4】第3実施形態に係る触媒コンバータの構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.触媒コンバータの構成]
図1に示す触媒コンバータ1は、図示しない車両の内燃機関の排気系に設けられる。図1において矢印Yで示す方向は、内燃機関からの排気の流れ方向である。図3及び図4においても同様である。以下の説明における上流側及び下流側は、内燃機関からの排気の流れ方向における上流側及び下流側をそれぞれ意味する。また、内燃機関からの排気を、以下では単に排気という。
【0018】
触媒コンバータ1は、第1コーン2A、第2コーン2B、ケース3、第1触媒4A、第2触媒4B、第1マット5A、及び第2マット5Bを備える。
第1コーン2Aは、上流側から下流側に向かって拡径する筒状の部材である。第1コーン2Aにおける上流側及び下流側それぞれの端部は、開口している。本実施形態における第1コーン2Aは、第1コーン2Aの軸方向に垂直な断面形状が真円状である。なお、本実施形態における真円状とは、厳密な真円状を意味するものではなく、楕円状と区別する意味である。
【0019】
第1コーン2Aは、触媒コンバータ1において、最も上流側に配置されている。第1コーン2Aにおける上流側の端部の開口は、触媒コンバータ1に排気を流入させる流入口として機能する。
【0020】
第2コーン2Bは、上流側から下流側に向かって縮径する筒状の部材である。第2コーン2Bにおける上流側及び下流側それぞれの端部は、開口している。本実施形態における第2コーン2Bは、第2コーン2Bの軸方向に垂直な断面形状が真円状である。第2コーン2Bは、触媒コンバータ1において、最も下流側に配置されている。第2コーン2Bにおける下流側の端部の開口は、触媒コンバータ1から排気を排出する排出口として機能する。
【0021】
ケース3は、上流側及び下流側それぞれの端部が開口した部材である。ケース3における上流側の端部は、第1コーン2Aに接続されている。ケース3における下流側の端部は、第2コーン2Bに接続されている。すなわち、ケース3は、第1コーン2Aと第2コーン2Bとの間に配置されている。ケース3は、内部に形成された空間に、第1触媒4A及び第2触媒4Bを収容する。
【0022】
ケース3は、外筒部31、及び内筒部32を備える。外筒部31は、上流側から下流側へ延伸する筒状の部分である。言い換えれば、外筒部31は、排気の流れ方向に延伸する筒状の部分である。本実施形態における外筒部31は、外筒部31の軸方向に垂直な断面形状が真円状である。本実施形態における外筒部31は、略一定の径を有する。
【0023】
内筒部32は、外筒部31の2つの端部の双方から外筒部31の内側に折り返して形成された、筒状の部分である。外筒部31の2つの端部とは、外筒部31における軸方向の両端部のそれぞれを意味する。言い換えれば、外筒部31の2つの端部とは、外筒部31における上流側及び下流側それぞれの端部を意味する。
【0024】
内筒部32は、第1筒部32A、及び第2筒部32Bを備える。第1筒部32Aは、外筒部31の上流側の端部から外筒部31の内側に折り返して形成された部分である。第1筒部32Aは、第1触媒4Aを保持可能な長さを有し、その内部に第1触媒4Aを保持する。ここでいう長さとは、第1筒部32Aの軸方向に沿った長さである。本実施形態では、第1筒部32Aは、第1筒部32Aの軸方向に沿った長さが第1触媒4Aよりも長い。
【0025】
また、第1筒部32Aの外形は、外筒部31に連続している側から反対側に向かって僅かに細くなっている。本実施形態における第1筒部32Aは、第1筒部32Aの軸方向に垂直な断面形状が真円状である。このため、本実施形態における第1筒部32Aは、外筒部31に連続している側から反対側に向かって僅かに縮径しているとも言い換えられる。
【0026】
第1筒部32Aの上流側の端部は、外筒部31の上流側の端部に連続している。第1筒部32Aのその他の部分は、外筒部31と間隔を空けて対向している。すなわち、第1筒部32Aと外筒部31との間には、空間が形成されている。以下では、第1筒部32Aと外筒部31との間に形成された空間を、第1空間33Aという。
第1筒部32Aにおいて、第1触媒4Aを保持する部分は、外筒部31と間隔を空けて対向する部分に含まれる。言い換えれば、内筒部32は、第1筒部32Aの一部として、第1触媒4Aを保持し且つ外筒部31と間隔を空けて対向する部分を有する。
【0027】
第2筒部32Bは、外筒部31の下流側の端部から外筒部31の内側に折り返して形成された部分である。第2筒部32Bは、第2触媒4Bを保持可能な長さを有し、その内部に第2触媒4Bを保持する。ここでいう長さとは、第2筒部32Bの軸方向に沿った長さである。本実施形態では、第2筒部32Bは、第2筒部32Bの軸方向に沿った長さが第2触媒4Bよりも長い。また、本実施形態における第2筒部32Bは、第2筒部32Bの軸方向に垂直な断面形状が真円状である。
【0028】
第2筒部32Bの下流側の端部は、外筒部31の下流側の端部に連続している。第2筒部32Bのその他の部分は、外筒部31と間隔を空けて対向している。すなわち、第2筒部32Bと外筒部31との間には、空間が形成されている。以下では、第2筒部32Bと外筒部31との間に形成された空間を、第2空間33Bという。
第2筒部32Bにおいて、第2触媒4Bを保持する部分は、外筒部31と間隔を空けて対向する部分に含まれる。言い換えれば、内筒部32は、第2筒部32Bの一部として、第2触媒4Bを保持し且つ外筒部31と間隔を空けて対向する部分を有する。
【0029】
本実施形態では、第2筒部32Bは、第1筒部32Aと同軸に設計されている。また、第2筒部32Bは、外筒部31とも同軸に設計されている。つまり、第1筒部32Aも、外筒部31と同軸に設計されている。
【0030】
本実施形態では、第1筒部32Aは、第2筒部32Bよりも細い。特に、第1筒部32Aにおける第1触媒4Aを包含する部分が、第2筒部32Bにおける第2触媒4Bを包含する部分よりも細い。前述したように、本実施形態における第1筒部32A及び第2筒部32Bは、いずれも、軸方向に垂直な断面形状が真円状である。したがって、第1筒部32Aにおける第1触媒4Aを包含する部分は、第2筒部32Bにおける第2触媒4Bを包含する部分よりも小さい径を有するとも言い換えられる。また、前述したように、本実施形態における外筒部31は、略一定の径を有する。したがって、外筒部31と第1筒部32Aにおける第1触媒4Aを包含する部分との間隔は、外筒部31と第2筒部32Bにおける第2触媒4Bを包含する部分との間隔よりも大きいとも言い換えられる。
【0031】
第1触媒4A及び第2触媒4Bは、第1筒部32A及び第2筒部32Bそれぞれの内部における上流側と下流側とを繋ぐ、複数の流路を構成している。複数の流路の形状は特に限定されず、複数の流路同士が連通する構成であってもよいし、連通しない構成であってもよい。例えば、第1触媒4A及び第2触媒4Bは、ハニカム形状のように、排気の流れ方向と垂直な断面形状が多角形状である筒体が集合した立体形状を有してもよい。本実施形態では、第1筒部32Aの軸方向に沿って見た場合における第1触媒4Aの外形は、第2筒部32Bの軸方向に沿って見た場合における第2触媒4Bの外形よりも小さい。
【0032】
第1触媒4A及び第2触媒4Bは、内部に担持された触媒成分と排気との接触によって、排気中の環境汚染物質を改質又は捕集し、排気を浄化する。触媒成分とは、例えば、白金族元素や希土類元素等である。第1触媒4A及び第2触媒4Bそれぞれの内部に担持された触媒成分は、同一であってもよいし、互いに異なってもよい。
【0033】
第1マット5A及び第2マット5Bは、弾性変形可能な部材である。第1マット5A及び第2マット5Bは、所定の厚みを有する。
第1マット5Aは、第1触媒4Aと第1筒部32Aとの間に配置されている。具体的には、第1マット5Aは、第1触媒4Aの周方向に沿って第1触媒4Aの外面を覆うように配置されている。ただし、本実施形態における第1マット5Aは、第1筒部32Aの軸方向に沿った長さが第1触媒4Aよりも短い。
【0034】
第2マット5Bは、第2触媒4Bと第2筒部32Bとの間に配置されている。具体的には、第2マット5Bは、第2触媒4Bの周方向に沿って第2触媒4Bの外面を覆うように配置されている。ただし、第2マット5Bは、第2筒部32Bの軸方向に沿った長さが第2触媒4Bよりも短い。
【0035】
[1-2.触媒コンバータの製造方法]
前述した触媒コンバータ1の製造方法における第1触媒4Aの配置方法を、図2A及び図2Bを用いて説明する。
【0036】
まず、図2Aに示すように、前述した第1触媒4Aとケース3とを準備する。準備された第1触媒4Aは、第1マット5Aにより、第1触媒4Aの周方向に沿って外面が覆われている。なお、図2A及び図2Bでは、ケース3における一方の端部側の図示を省略している。
【0037】
準備されたケース3は、第1触媒4Aを収容する前の状態である。この状態におけるケース3は、前述した第1触媒4Aを収容した後の状態と基本的には同様であるが、内筒部32における第1筒部32Aの構成に若干の差異がある。
【0038】
具体的には、第1触媒4Aを保持していない状態における第1筒部32Aでは、外筒部31に連続している側から反対側に向かって外形が細くなっていく度合いが、第1触媒4Aを保持している状態における度合いよりも大きい。すなわち、第1触媒4Aを保持していない状態における第1筒部32Aは、第1触媒4Aを保持している状態における第1筒部32Aと比較して、外筒部31の端部に連続している側から反対側に向かって外形がより細くなっている。前述したように、本実施形態における第1筒部32Aは、第1筒部32Aの軸方向に垂直な断面形状が真円状である。このため、第1触媒4Aを保持していない状態における第1筒部32Aは、第1触媒4Aを保持している状態における第1筒部32Aと比較して、外筒部31に連続している側から反対側に向かってより縮径しているとも言い換えられる。
【0039】
続いて、図2Bに示すように、準備されたケース3における第1筒部32Aの内側に、第1筒部32Aにおける外筒部31に連続している側から、第1触媒4Aを圧入する。図2Bにおいて矢印Zで示す方向は、第1触媒4Aを圧入する方向である。前述したように、第1触媒4Aは第1マット5Aにより外面が覆われているため、第1マット5Aも第1触媒4Aと共に、第1筒部32Aの内側に圧入される。第1触媒4A及び第1マット5Aが第1筒部32Aの内側における所定の位置まで圧入されると、図1に示す、第1触媒4Aが第1筒部32Aにより保持されている状態になる。
【0040】
なお、ケース3が第1触媒4Aを収容していない状態、すなわち第1筒部32Aが第1触媒4Aを保持していない状態における、ケース3の第1筒部32Aが形成された側の端部が第1端部の一例に、ケース3の反対側の端部(本実施形態では第2筒部32Bが形成された側の端部)が第2端部の一例に相当する。
【0041】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)ケース3では、内筒部32は、外筒部31の2つの端部のうち少なくとも一方から外筒部31の内側に折り返して形成されている。内筒部32は、第1触媒4A及び第2触媒4Bを保持し且つ外筒部31と間隔を空けて対向する部分を有する。
【0042】
このような構成によれば、ケース3を構成する部品数を増加させなくても、内筒部32における第1触媒4A及び第2触媒4Bを保持する部分と、外筒部31と、の間に、第1空間33A及び第2空間33Bを形成することができる。このため、第1触媒4A及び第2触媒4Bから外気への放熱を低減することができる。
【0043】
さらに、上記のような構成によれば、仮に外筒部31に外面側から衝撃等が加わったとしても、第1空間33A及び第2空間33Bによって、第1触媒4A及び第2触媒4Bへの衝撃等の伝播を抑制し、第1触媒4A及び第2触媒4Bの衝撃等による破損を抑制することができる。
【0044】
(1b)ケース3では、内筒部32は、外筒部31の2つの端部のうち少なくとも上流側の端部から外筒部31の内側に折り返して形成されている。
このような構成によれば、内筒部32における外筒部31に連続している側が上流側に位置することにより内筒部32が排気の流れを妨げにくいため、第1触媒4Aに排気を円滑に流入させることができる。
【0045】
(1c)ケース3では、内筒部32は、外筒部31の2つの端部の双方から外筒部31の内側に折り返して形成されている。
このような構成によれば、ケース3の内部の空間における上流側及び下流側に第1触媒4A及び第2触媒4Bがそれぞれ配置される場合でも、内筒部32における第1触媒4A及び第2触媒4Bをそれぞれ保持する部分と、外筒部31と、の間に、第1空間33A及び第2空間33Bを形成することができる。このため、上記のような場合でも、第1触媒4A及び第2触媒4Bから外気への放熱を低減することができる。
【0046】
(1d)内筒部32は、第1筒部32Aと第2筒部32Bを備える。第1筒部32Aは、第2筒部32Bよりも細い。
このような構成によれば、外筒部31の外形を変化させなくても、第1筒部32Aは、第2筒部32Bが保持する第2触媒4Bと異なる外形を有する第1触媒4Aを保持することができる。なお、ここでいう第1触媒4A及び第2触媒4Bそれぞれの外形は、第1筒部32A及び第2筒部32Bの軸方向に沿って見た場合におけるそれぞれの外形を意味する。
【0047】
(1e)触媒コンバータ1では、準備されたケース3における第1筒部32Aの内側に、第1筒部32Aにおける外筒部31に連続している側から、第1触媒4Aが圧入されることにより、第1筒部32Aの内側に第1触媒4Aが配置される。第1触媒4Aが配置された状態、すなわち第1触媒4Aを保持している状態における第1筒部32Aの外形は、外筒部31に連続している側から反対側に向かって僅かに細くなっている。
【0048】
第1筒部32Aにおいて、外筒部31に連続している側は、上流側に該当する。つまり、第1筒部32Aに保持されている第1触媒4Aには、第1筒部32Aにおける外筒部31に連続している側から排気が流入される。仮に、平常時よりも内燃機関への負荷が大きくなり、第1触媒4Aに流入される排気の圧力が高くなった場合、この圧力によって第1触媒4Aが下流側に移動してしまう可能性が考えられる。しかし、上記のような構成によれば、第1筒部32Aにおける第1触媒4Aが配置された空間が下流側ほど狭くなっているため、排気の圧力によって第1触媒4Aが下流側に移動してしまうことを抑制することができる。
【0049】
(1f)例えば、第1筒部32Aの下流側の端部及び第2筒部32Bの上流側の端部が、溶接等により外筒部31に接合されている場合、第1筒部32A及び第2筒部32Bと外筒部31との熱膨張率の差異によって、第1筒部32A、第2筒部32Bあるいは外筒部31が破断してしまう可能性が考えられる。
【0050】
これに対して、第1筒部32A及び第2筒部32Bでは、一方の端部のみが外筒部31に連続し、その他の部分は外筒部31と間隔を空けて対向している。このような構成によれば、上記の熱膨張率の差異が生じたとしても、第1筒部32A及び第2筒部32Bは外筒部31に対して相対的に変位可能であるため、第1筒部32A、第2筒部32Bあるいは外筒部31が破断してしまうことを抑制することができる。
【0051】
[2.第2実施形態]
[2-1.触媒コンバータの構成]
第2実施形態は、第1実施形態と基本的な構成は同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0052】
図3に示すように、第2実施形態に係る触媒コンバータ1Aは、前述したケース3に代えてケース6を備える。ケース6は、基本的にはケース3と同様の構成である。ただし、前述した第1筒部32Aに対応する第1筒部61は、外筒部31に連続している側と反対側の端部が外筒部31に近付く方向に屈曲している。ここでいう外筒部31に近付く方向は、第1筒部61の軸方向外側に該当する。つまり、第1筒部61における外筒部31に連続している側と反対側の端部は、いわゆる外曲げされている。
【0053】
第1筒部61における外筒部31に連続している側と反対側の端部が屈曲していることは、当該端部と、第1筒部61を外筒部31に連続している側から見たときに当該端部の手前側に位置する部分と、の間で、太さの傾向に差異があることとも言い換えられる。具体的には、本実施形態では、第1筒部61における第1触媒4Aを包含する部分は、前述した第1筒部32Aと同様に、外筒部31に連続している側から反対側に向かって僅かに細くなっている。これに対して、第1筒部61における第1触媒4Aを包含する部分よりも下流側の部分は、外筒部31に連続している側から反対側に向かって太くなっている。本実施形態における第1筒部61は、第1筒部32Aと同様に、第1筒部61の軸方向に垂直な断面形状が真円状である。このため、第1筒部61は、外筒部31に連続している側から反対側に向かって僅かに縮径した後、第1触媒4Aを包含する部分よりも下流側で拡径に転じているとも言い換えられる。
【0054】
更に言い換えれば、第1筒部61の軸方向に沿った断面形状は、第1筒部61における外筒部31に連続している側と反対側の部分が、外筒部31に近付く方向に折れ曲がった形状である。
【0055】
[2-2.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果を奏し、更に以下の効果を奏する。
【0056】
触媒コンバータ1Aでは、第1筒部61における外筒部31に連続している側と反対側の端部が、外筒部31に近付く方向に屈曲している。このような構成によれば、当該端部が屈曲していない構成と比較して、第1筒部61における当該端部と外筒部31との間隔が狭くなるため、第1筒部61と外筒部31との間に形成された空間に排気が出入りしにくくなる。したがって、第1筒部61に保持された第1触媒4Aから外気への放熱を一層低減することができる。
【0057】
さらに、上記のような構成によれば、第1筒部61の内部の空間は、第1筒部61における外筒部31に連続している側と反対側の端部において広くなるため、第1触媒4Aの下流側に配置された第2触媒4B(図3では不図示)に流入される排気の流速分布の偏りを低減することができる。つまり、第2触媒4Bに対し、比較的一様に排気を流入させることができる。
【0058】
[3.第3実施形態]
[3-1.触媒コンバータの構成]
第3実施形態は、第1実施形態と基本的な構成は同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0059】
図4に示すように、第3実施形態に係る触媒コンバータ1Bは、前述したケース3に代えてケース7を備える。ケース7は、基本的にはケース3と同様の構成である。ただし、前述した第1筒部32Aに対応する第1筒部71は、外筒部31に連続している側と反対側の端部が外筒部31から離れる方向に屈曲している。ここでいう外筒部31から離れる方向は、第1筒部71の軸方向内側に該当する。つまり、第1筒部71における外筒部31に連続している側と反対側の端部は、いわゆる内曲げされている。
【0060】
第1筒部71における外筒部31に連続している側と反対側の端部が屈曲していることは、当該端部と、第1筒部71を外筒部31に連続している側から見たときに当該端部の手前側に位置する部分と、の間で、太さの傾向に差異があることとも言い換えられる。具体的には、本実施形態では、第1筒部71における第1触媒4Aを包含する部分の大半は、前述した第1筒部32Aと同様に、外筒部31に連続している側から反対側に向かって僅かに細くなっている。これに対して、第1筒部71における、第1触媒4Aを包含する部分の下流側の一部と、当該一部よりも更に下流側の部分と、を合わせた部分は、外筒部31に連続している側から反対側に向かってより一層細くなっている。より一層細くなっていることとは、細くなっていく度合いがより大きいことを意味する。本実施形態における第1筒部71は、第1筒部32Aと同様に、第1筒部71の軸方向に垂直な断面形状が真円状である。このため、第1筒部71は、外筒部31に連続している側から反対側に向かって僅かに縮径した後、第1触媒4Aを包含する部分における下流側で縮径する度合いを増大させているとも言い換えられる。
【0061】
更に言い換えれば、第1筒部71の軸方向に沿った断面形状は、第1筒部71における外筒部31に連続している側と反対側の部分が、外筒部31から離れる方向に折れ曲がった形状である。
【0062】
[3-2.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果を奏し、更に以下の効果を奏する。
【0063】
触媒コンバータ1Bでは、第1筒部71における外筒部31に連続している側と反対側の端部が、外筒部31から離れる方向に屈曲している。このような構成によれば、第1触媒4Aが配置される第1筒部71の内側の空間は、第1筒部71における外筒部31に連続している側と反対側の端部において狭くなる。このため、前述したように仮に第1触媒4Aに流入される排気の圧力が高くなった場合でも、排気の圧力によって第1触媒4Aが下流側に移動してしまうことを抑制することができる。
【0064】
ここで、第1筒部71における第1触媒4Aを包含する部分の大半は、上記実施形態のように外筒部31に連続している側から反対側に向かって僅かに細くなっていなくてもよく、例えば一定の太さであってもよい。このような場合であっても、上記のような構成によれば、排気の圧力によって第1触媒4Aが下流側に移動してしまうことを抑制することができる。
【0065】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0066】
(4a)上記実施形態では、内筒部32は、外筒部31の2つの端部の双方から外筒部31の内側に折り返して形成されているが、いずれか一方のみから外筒部31の内側に折り返して形成されてもよい。
【0067】
(4b)上記実施形態では、第1筒部32Aは、第1触媒4Aにおける第1筒部32Aの軸方向に沿った部分の全てを包含しているが、当該部分の一部を包含してもよい。例えば、上記実施形態のように、第1触媒4Aよりも第1マット5Aの方が第1筒部32Aの軸方向に沿った長さが短い場合、第1筒部32Aは、第1マット5Aについては第1筒部32Aの軸方向に沿った部分の全てを包含し、第1触媒4Aについては第1筒部32Aの軸方向に沿った部分の一部を包含してもよい。第2筒部32Bも、第2触媒4B及び第2マット5Bとの関係において同様である。
【0068】
(4c)上記実施形態では、第1筒部32Aは、第2筒部32Bよりも細いが、第2筒部32Bと略同一の太さであってもよい。また、第2筒部32Bが第1筒部32Aよりも細くてもよい。言い換えれば、本実施形態では、第1触媒4Aの外形が第2触媒4Bの外形よりも小さいが、第1触媒4A及び第2触媒4Bそれぞれの外形が略同一であってもよいし、第2触媒4Bの外形が第1触媒4Aの外形よりも小さくてもよい。なお、ここでいう第1触媒4A及び第2触媒4Bそれぞれの外形は、第1筒部32A及び第2筒部32Bの軸方向に沿って見た場合におけるそれぞれの外形を意味する。
【0069】
(4d)上記実施形態では、内筒部32は、第1触媒4A及び第2触媒4Bを保持する。しかし、内筒部32が保持する触媒の数は特に限定されず、内筒部32が1つの触媒を保持してもよいし、3つ以上の触媒を保持してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、内筒部32における第1筒部32Aが第1触媒4Aを保持し、内筒部32における第2筒部32Bが第2触媒4Bを保持する。しかし、第1筒部32A及び第2筒部32Bのそれぞれが保持する触媒の数も特に限定されず、第1筒部32A及び第2筒部32Bの少なくとも一方が複数の触媒を保持してもよい。
【0071】
(4e)上記実施形態では、第1筒部32Aの外形は、外筒部31に連続している側から反対側に向かって僅かに細くなっている。しかし、第1筒部32Aの外形は、外筒部31に連続している側から反対側に向かって僅かに細くなっていなくてもよく、例えば一定の太さであってもよい。
【0072】
(4f)上記実施形態では、第1筒部32Aの上流側の端部は、外筒部31の上流側の端部に連続しており、第1筒部32Aのその他の部分は、外筒部31と間隔を空けて対向している。しかし、当該その他の部分は、その一部が外筒部31に接触していてもよいし、溶接等により外筒部31に接合されていてもよい。例えば、第1筒部32Aでは、第1触媒4Aを保持する部分が外筒部31と間隔を空けて対向し、第1触媒4Aを保持しない部分の少なくとも一部が外筒部31と接触していてもよい。言い換えれば、第1筒部32Aでは、例えば、第1触媒4Aの外側に位置する部分が外筒部31と間隔を空けて対向し、その他の部分の少なくとも一部が外筒部31に接触していてもよい。第1触媒4Aの外側に位置する部分とは、より詳細には、第1触媒4Aの外面のうち第1筒部32Aの軸方向に沿った部分の外側に位置する部分、すなわち第1触媒4Aを包含する部分である。第2筒部32Bについても、外筒部31及び第2触媒4Bとの関係において同様である。また、第1筒部32A及び第2筒部32Bと外筒部31との間に、ワイヤメッシュ等の他の部材が介在してもよい。
【0073】
(4g)上記実施形態では、外筒部31、第1筒部32A及び第2筒部32Bは、いずれも、各軸方向に垂直な断面形状が真円状の筒状である。しかし、当該断面形状は、真円状に限定されず、例えば楕円状であってもよい。また、当該断面形状は、円状にも限定されず、例えば多角形状等であってもよい。
(4h)上記実施形態では、外筒部31は、径が一定であるが、必ずしも径が一定でなくてもよい。
【0074】
(4i)上記実施形態では、外筒部31、第1筒部32A及び第2筒部32Bは、いずれも同軸に設計されているが、異軸に設計されてもよい。
(4j)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…触媒コンバータ、2A…第1コーン、2B…第2コーン、3…ケース、31…外筒部、32…内筒部、32A…第1筒部、32B…第2筒部、33A…第1空間、33B…第2空間、4A…第1触媒、4B…第2触媒、5A…第1マット、5B…第2マット。
図1
図2
図3
図4