(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20240723BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 B
(21)【出願番号】P 2021026560
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】高月 涼太
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178130(JP,A)
【文献】特開2008-183209(JP,A)
【文献】特開2011-014281(JP,A)
【文献】特開2013-154854(JP,A)
【文献】特開2010-040185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0361744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/56
B60N 2/24
A47C 7/74
B60N 3/00
A47C 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションのシート後側部分から立設され、前記シートクッションに着座した車両乗員の背もたれを構成するシートバックを有するシート本体と、
前記シートバックの立設方向に並んで前記シートバックに設けられた
第1~第4のヒータ部又は前記シートバックの立設方向に並んだ複数の領域を有し、立設方向に最上位の第1のヒータ部又は立設方向に最上位の領域に設けられた第1のヒータ部が他のヒータ部よりも低い温度で発熱されるヒータと、
を備え
、
前記第1のヒータ部は、前記シートバックの厚さ方向に前記車両乗員の心臓及び肺と正対する部分を含んで構成され、
前記第4のヒータ部は、前記シートバックの厚さ方向に前記車両乗員の腰部と正対する部分を含んで構成されると共に、他のヒータ部以上の高温で発熱され、
前記第1のヒータ部における立設方向の幅は、前記第4のヒータ部における立設方向の幅よりも広く設定されている車両用シート。
【請求項2】
前記第1のヒータ部
よりも立設方向下側に設けられ又は前記最上位の領域の立設方向下側の領域に設けられた第2のヒータ部は、前記シートバックの厚さ方向に前記車両乗員の腎臓と正対する部分を含んで構成される請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
立設方向に最下位の第3のヒータ部又は立設方向に最下位の領域に設けられた第3のヒータ部は、前記シートバックの厚さ方向に前記車両乗員の骨盤と正対する部分を含んで構成される請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションに着座した車両乗員の身体を温めることができる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された構成では、シートバックの上部に左右一対のシートヒータを備えている。シートヒータは、制御回路によって発熱される。制御回路は、感圧センサ、血流センサ等へ接続されている。これらの感圧センサ、血流センサ等からの信号に基づき着座乗員が肩こりの症状を有すると判断した場合には、シートヒータが制御回路によって発熱される。しかしながら、この特許文献1には、着座乗員が肩こりの症状を有すると判断した場合の具体的指標がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、医学的ロジックに基づいて車両乗員の身体を温められる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様の車両用シートは、シートクッションのシート後側部分から立設され、前記シートクッションに着座した車両乗員の背もたれを構成するシートバックを有するシート本体と、前記シートバックの立設方向に並んで前記シートバックに設けられた複数のヒータ部又は前記シートバックの立設方向に並んだ複数の領域を有し、立設方向に最上位の第1のヒータ部又は立設方向に最上位の領域に設けられた第1のヒータ部が他のヒータ部よりも低い温度で発熱されるヒータと、を備える車両用シート。
【0006】
第1の態様の車両用シートによれば、シート本体のシートクッションには車両乗員が着座される。シートクッションのシート後側部分からは、シートクッションと共にシート本体を構成するシートバックが立設され、このシートバックが、シートクッションに着座した車両乗員の背もたれを構成する。ここで、シートバックにはヒータが設けられる。ヒータは、複数のヒータ部を有しており、複数のヒータ部は、シートバックの立設方向に並んでいる。又は、ヒータは、複数の領域を有しており、複数の領域は、シートバックの立設方向に並んでいる。また、立設方向に並んだ複数のヒータ部のうち、最上位の第1のヒータ部又は立設方向に並んだ複数の領域のうち、最上位の領域に設けられた第1のヒータ部は、他のヒータ部よりも低い温度で発熱される。
【0007】
このように、第1のヒータ部を他のヒータ部よりも低い温度で発熱させることで、医学的ロジックに基づいてシート本体に着座した車両乗員の身体を温めることができる。
【0008】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様の車両用シートにおいて、前記第1のヒータ部は、前記シートバックの厚さ方向に前記車両乗員の心臓及び肺と正対する部分を含んで構成される。
【0009】
第2の態様の車両用シートによれば、ヒータの第1のヒータ部は、シートバックの厚さ方向に車両乗員の心臓及び肺と正対する部分を含んで構成される。ここで、心臓は、ヒータ部の温度をあまり上げずに、ゆっくりと温めると、ホルモン(ナトリウム利尿ペプチド)が分泌されてむくみが改善される。一方、肺は、温めると、肺胞が拡張される。これによって、血管への酸素の供給能力が向上される。このように、医学的ロジックに基づいてシート本体に着座した車両乗員の身体を温めることができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートは、第1の態様又は第2の態様の車両用シートにおいて、前記第1のヒータ部よりも立設方向下側に設けられ又は前記最上位の領域の立設方向下側の領域に設けられた第2のヒータ部は、前記シートバックの厚さ方向に前記車両乗員の腎臓と正対する部分を含んで構成される。
【0011】
第3の態様の車両用シートによれば、第1のヒータ部よりも立設方向下側又は最上位の領域の立設方向下側の領域に設けられた第2のヒータ部は、シートバックの厚さ方向に車両乗員の腎臓と正対する部分を含んで構成される。ここで、第2のヒータ部は、第1のヒータ部よりも高い温度で発熱される。これにより、腎臓においてむくみの原因となる水分や疲労物質が除去される。このように、医学的ロジックに基づいてシート本体に着座した車両乗員の身体を温めることができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、第1の態様から第3の態様の何れか1つの態様の車両用シートにおいて、立設方向に最下位の第3のヒータ部又は立設方向に最下位の領域に設けられた第3のヒータ部は、前記シートバックの厚さ方向に前記車両乗員の骨盤と正対する部分を含んで構成される。
【0013】
第4の態様の車両用シートによれば、複数のヒータ部のうち立設方向に最下位の第3のヒータ部又は立設方向に最下位の領域に設けられた第3のヒータ部は、シートバックの厚さ方向に車両乗員の骨盤と正対する部分を含んで構成される。ここで、最下位のヒータ部は、最上位のヒータ部よりも温度が高い温度で発熱される。これにより、骨盤及びその周辺の仙骨神経や座骨神経等の副交感神経を主として温めることができ、リラックス効果を得ることができる。このように、医学的ロジックに基づいてシート本体に着座した車両乗員の身体を温めることができる。
【0014】
第5の態様の車両用シートは、第4の態様の車両用シートにおいて、前記第3のヒータ部よりも立設方向上側の第4のヒータ部又は最下位の領域よりも立設方向上側の領域に設けられた第4のヒータ部は、他のヒータ部以上の高温で発熱される。
【0015】
第5の態様の車両用シートによれば、複数のヒータ部のうち第3のヒータ部よりも立設方向上側の第4のヒータ部又は最下位の領域よりも立設方向上側の領域に設けられた第4のヒータ部は、他のヒータ部以上の高温で発熱される。これにより、医学的ロジックに基づいてシート本体に着座した車両乗員の身体を温めることができる。
【0016】
第6の態様の車両用シートは、第5の態様の車両用シートにおいて、前記第4のヒータ部は、前記シートバックの厚さ方向に前記車両乗員の腰部と正対する部分を含んで構成される。
【0017】
第6の態様の車両用シートによれば、第4のヒータ部は、シートバックの厚さ方向に車両乗員の腰部と正対する部分を含んで構成される。腰部及びその周辺は、冷点が多い。ここで、第4のヒータ部は、他のヒータ部以上の高温で発熱されるため、温熱快適性を向上できる。このように、医学的ロジックに基づいてシート本体に着座した車両乗員の身体を温めることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明に係る車両用シートは、ヒータの第1のヒータ部を他のヒータ部よりも低い温度で発熱させることで、医学的ロジックに基づいてシート本体に着座した車両乗員の身体を温めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る車両用シートの側面図である。
【
図2】車両用シートのシートバックの正面図である。
【
図3】経過時間に対するインピーダンスの変化を示すグラフで、黒丸が従来品を示し、白丸が開発品(本発明の一実施の形態に係る車両用シート)を示す。
【
図4】経過時間に対する感応評価(温熱快適性)の評価結果を示すグラフで、点線が従来品を示し、実線が開発品(本発明の一実施の形態に係る車両用シート)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、
図1及び
図2に各図に基づいて本発明の一実施の形態について説明する。なお、各図において矢印FRは、本発明の実施の形態に係る車両用シート10のシート(seat)前側(シート前後方向前側)を示し、矢印UPは、シート上側(シート上下方向上側)を示し、矢印LHは、シート左側(シート左右方向左側)を示す。
【0021】
<本実施の形態の構成>
図1に示されるように、車両用シート10は、シート本体12を備えており、シート本体12は、シートクッション14、シートバック16、ヘッドレスト18を備えている。
【0022】
シートクッション14は、クッションフレーム20を備えている。クッションフレーム20は、シートクッション14の骨格を構成している。クッションフレーム20は、一対のクッションサイドフレーム(図示省略)を備えている。クッションサイドフレームの各々の長手方向は、シート前後方向(
図1の矢印FR方向及びその反対方向)とされている。一対のクッションサイドフレームは、シートクッション14のシート左右方向両側でシート左右方向に互いに対向して配置される。
【0023】
一対のクッションサイドフレームのシート前側には、第1連結フレーム22が設けられている。これに対して、一対のクッションサイドフレームのシート後側には、第2連結フレーム24が設けられている。第1連結フレーム22及び第2連結フレーム24の長手方向は、シート左右方向とされている。第1連結フレーム22及び第2連結フレーム24は、シート前後方向に互いに対向配置される。第1連結フレーム22及び第2連結フレーム24は、シート左側のクッションサイドフレームとシート右側のクッションサイドフレームとを連結している。
【0024】
クッションフレーム20には、シートクッションパッド26が設けられている。シートクッションパッド26は、例えば、ポリウレタンフォーム(発泡ポリウレタン)等の弾性を有する合成樹脂材等によって厚肉の板状に形成されており、シートクッションパッド26の厚さ方向は、シート上下方向(
図1の矢印UP方向及びその反対方向)とされている。シートクッションパッド26のシート下側面には、第1凹部28が形成されている。第1凹部28は、シート下側へ開口されており、第1凹部28の内側には、クッションフレーム20が入っている。
【0025】
シートクッションパッド26には、表皮(図示省略)が設けられている。表皮は、皮、合成皮革、布等の可撓性を有するシート(sheet)部材によって形成されており、シートクッションパッド26のシート前側面、シート前後方向を軸方向とする軸周り方向のシート外周面等は、表皮によって覆われている。
【0026】
シートクッション14は、車両用シート10の座面部分を構成しており、車両乗員S(
図2参照)は、シートクッション14のシート上側(シート表側)に着座する。
【0027】
シートクッション14のシート後側には、シートバック16が立設されている。シートバック16は、シートバックフレーム28を備えている。シートバックフレーム28は、シートバック16の骨格を構成している。シートバックフレーム28は、一対のバックサイドフレーム(図示省略)を備えている。バックサイドフレームの各々の長手方向は、シートクッション14からのシートバック16が立設方向とされている。一対のバックサイドフレームは、シートバック16のシート左右方向両側でシート左右方向に互いに対向して配置される。
【0028】
一対のバックサイドフレームにおけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側には、第3連結フレーム30が設けられている。第3連結フレーム30の長手方向は、シート左右方向とされており、第3連結フレーム30は、シート左側のバックサイドフレームとシート右側のバックサイドフレームとを連結している。
【0029】
シートバックフレーム28には、シートバックパッド32が設けられている。シートバックパッド32は、例えば、ポリウレタンフォーム(発泡ポリウレタン)等の弾性を有する合成樹脂材等によって厚肉の板状に形成されている。シートバックパッド32の厚さ方向は、シートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向側とされている。シートバックパッド32の背面には、第2凹部34が形成されている。第2凹部34は、シート背面側へ開口されており、第2凹部34の内側には、シートバックフレーム28が入っている。
【0030】
シートバックパッド32には、表皮(図示省略)が設けられている。表皮は、皮、合成皮革、布等の可撓性を有するシート(sheet)部材によって形成されており、シートバックパッド32のシート前側面、シート前後方向を軸方向とする軸周り方向のシート外周面等は、表皮によって覆われている。
【0031】
シートバック16は、シートクッション14に着座した車両乗員S(
図2参照)の背もたれとなる。
【0032】
シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側には、ヘッドレスト18が設けられており、シートクッション14に着座した車両乗員Sの頭部をシート後側から支えることができる。
【0033】
一方、シートバック16のシートバックパッド32のシート前側には、ヒータ40が設けられている。ヒータ40は、第1のヒータ部42、第2ヒータ部44、第3のヒータ部46、第4のヒータ部48を備えている。これらの第1のヒータ部42から第4のヒータ部48は、矩形のシート(sheet)状とされており、可撓性を有している。第1のヒータ部42から第4のヒータ部48の各々には、発熱体(図示省略)が設けられている。発熱体は、通電されることで発熱される。各発熱体は、電気的に制御装置に接続されていると共に、電気的に車両に搭載されたバッテリ(何れも図示省略)に接続されている。第1のヒータ部42から第4のヒータ部48の各々は、制御装置によって制御された電流が流れて発熱される。
【0034】
シートクッション14からのシートバック16の立設方向側から第1のヒータ部42、第2ヒータ部44、第4のヒータ部48、第3のヒータ部46と並んでいる。シートクッション14からのシートバック16の立設方向最上位の第1のヒータ部42は、第2のヒータ部44、第4のヒータ部48、第3のヒータ部46よりも低い温度である摂氏36度から摂氏38度、好ましくは摂氏37度から摂氏38度(本実施の形態では、摂氏37度)で発熱される。また、第1のヒータ部42は、ヒータ40のうち、シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側から42%から52%の範囲(本実施の形態では47%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの心臓及び肺に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0035】
第1のヒータ部42の下側で第4のヒータ部48の上側の第2のヒータ部44は、第1のヒータ部42の発熱温度よりも高い温度である摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。また、第2のヒータ部44は、ヒータ40のうち、シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側から21%から31%の範囲(本実施の形態では26%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの腎臓に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0036】
シートクッション14からのシートバック16の立設方向最下位の第3のヒータ部46は、第2のヒータ部44の発熱温度と同程度以上の温度である摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。また、第3のヒータ部46は、ヒータ40のうち、シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側から10%から20%の範囲(本実施の形態では15%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの骨盤に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0037】
第2のヒータ部44の下側で第3のヒータ部46の上側の第4のヒータ部48は、最も発熱温度よりも高い温度である摂氏40度から摂氏42度、好ましくは摂氏41度から摂氏42度(本実施の形態では、摂氏41度)で発熱される。また、第3のヒータ部46は、ヒータ40のうち、シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側から7%から17%の範囲(本実施の形態では12%の範囲)に設けられており、車両乗員Sの腰部に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0038】
<本実施の形態の作用、効果>
本実施の形態に係る車両用シート10では、シートクッション14に着座した車両乗員Sは、シートバック16に背中を凭れ掛ける。ここで、車両用シート10のシートバック16にはヒータ40が設けられている。したがって、ヒータ40が通電されると、第1のヒータ部42、第2のヒータ部44、第3のヒータ部46、第4のヒータ部48の各々の発熱体が発熱される。これにより、車両乗員Sの身体は、背中側から温められる。
【0039】
ここで、車両用シート10の第1のヒータ部42の発熱体の発熱温度は、他の第2のヒータ部44、第4のヒータ部48、第3のヒータ部46よりも低い温度である摂氏36度から摂氏38度、好ましくは摂氏37度から摂氏38度(本実施の形態では、摂氏37度)で発熱される。また、第1のヒータ部42は、車両乗員Sの心臓及び肺に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んだ範囲に設けられる。心臓は、比較的低温で温めると、むくみ改善ホルモン(ナトリウム利尿ペプチド)が分泌される。また、肺が暖められると、肺胞が拡張される。これによって、血管への酸素の供給能力が向上される。以上のことから、車両乗員Sのむくみが効果的に抑制される。
【0040】
また、第2のヒータ部44の発熱体は、第1のヒータ部42の発熱温度よりも高い温度である摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。また、第2のヒータ部44は、車両乗員Sの腎臓に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んだ範囲に設けられる。したがって、第2のヒータ部44によって車両乗員Sの腎臓が温められると、腎臓でむくみの原因となる水分と疲労物質とが効果的に除去される。これによって、車両乗員Sのむくみが効果的に抑制される。
【0041】
さらに、第4のヒータ部48の発熱体は、第1のヒータ部42、第2のヒータ部44、第3ヒータ部46の各発熱体に比べて最も発熱温度よりも高い温度である摂氏40度から摂氏42度、好ましくは摂氏40度から摂氏41度(本実施の形態では、摂氏41度)で発熱される。また、第4のヒータ部48は、車両乗員Sの腰部に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んだ範囲に設けられる。ここで、腰部は冷点が多い。したがって、車両乗員Sの腰部を高温で温めると、車両乗員Sの身体を迅速に温めることができる。
【0042】
また、第3のヒータ部46の発熱体は、第2のヒータ部44の発熱温度と同程度以上の温度である摂氏38度から摂氏40度、好ましくは摂氏39度から摂氏40度(本実施の形態では、摂氏39度)で発熱される。また、車両乗員Sの骨盤に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んだ範囲に設けられる。このため、車両乗員Sの骨盤と正対する範囲及びその周辺を第2のヒータ部44の発熱温度と同程度以上の温度で温めることで、仙骨神経や座骨神経等の副交感神経を主として効果的に車両乗員Sの身体を温めることができる。
【0043】
このように、本実施の形態では、適切な温度で車両乗員Sの身体を温めつつ医学的ロジックに基づいてむくみ等を抑制できる。
【0044】
ここで、
図3には、経過時間に対するインピーダンスの変化が示されており、
図4には、経過時間に対する官能評価(温熱快適性)の評価結果が示されている。
図3において経過時間に対するインピーダンスの変化率が大きいほど血液や間質液の循環バランスが悪く、車両乗員Sの下肢にむくみが発生していることを意味する。したがって、従来品に比べて開発品(本実施の形態に係る車両用シート10)は、車両乗員Sの下肢におけるむくみの発生が少ない。また、
図4からわかるように、従来品では、車両乗員Sが感じる温度が低かったり、温度が高かったりするのに対し、開発品(本実施の形態に係る車両用シート10)は、車両乗員Sが感じる温度を快適な温度を維持できる。
【0045】
また、車両乗員Sの骨盤から腎臓、心臓、肺までの距離は、車両乗員Sの体格によって異なる。すなわち、車両乗員Sが小柄であれば(車両乗員Sの体格が小さければ)車両乗員Sの骨盤から腎臓、心臓、肺までの距離は、短い。これに対して、車両乗員Sが大柄であれば(車両乗員Sの体格が大きければ)車両乗員Sの骨盤から腎臓、心臓、肺までの距離は、長い。
【0046】
ここで、第2のヒータ部44は、ヒータ40のうち、シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側から21%から31%の範囲(本実施の形態では26%の範囲)に設けられる。このため、小柄な車両乗員Sであっても大柄な車両乗員Sであっても腎臓に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0047】
また、第1のヒータ部42は、ヒータ40のうち、シートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側から42%から52%の範囲(本実施の形態では47%の範囲)に設けられる。このため、小柄な車両乗員Sであっても大柄な車両乗員Sであっても心臓や肺に対してシートバック16におけるシートクッション14からのシートバック16の立設方向側及びシート左右方向側の双方に対して直交する方向に正対する範囲を含んでいる。
【0048】
なお、本実施の形態では、ヒータ40は、第1のヒータ部42から第4のヒータ部48まで4枚のヒータ部を備えていた。しかしながら、ヒータ部は、2枚でもよいし、3枚でもよいし、5枚以上であってもよい。また、第1のヒータ部42から第4のヒータ部48までを1枚で構成し、各ヒータ部42~48に内蔵される加熱手段としての電熱線(図示省略)の線密度を調整し、1枚のヒータ部を第1のヒータ部42から第4のヒータ部48を変化させる構成であってもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、シートバック16の表皮とシートバックパッド32との間にヒータ40を配置した。しかしながら、シートバック16の表皮のシートバックパッド32とは反対側にシートバックパッド32を配置してもよい。
【0050】
さらに、1毎又はシートバック16の立設方向に並んだ複数枚のヒータ40をシートバック16の立設方向に複数の領域に分割し、各領域に、例えば、第1のヒータ部42から第4のヒータ部48を割り当ててもよい。この場合、領域の数とヒータ部の数とが同じでもよい、異なっていてもよい。また、この場合、各ヒータ部毎に独立して加熱されてもよい。一方、例えば、各ヒータ部のうち、少なくとも2つのヒータ部を1枚で構成し、加熱手段としての電熱線(図示省略)の線密度を調整し、少なくとも2つのヒータ部の温度を変化させる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 車両用シート
12 シート本体
14 シートクッション
16 シートバック
40 ヒータ
42 第1のヒータ部
44 第2のヒータ部
46 第3のヒータ部
48 第4のヒータ部