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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】営業支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20230101AFI20240723BHJP
【FI】
G06Q40/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021046772
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146005
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 紘太郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 達也
(72)【発明者】
【氏名】山口 博之
(72)【発明者】
【氏名】金澤 良美
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-85697(JP,A)
【文献】特開2021-9447(JP,A)
【文献】特開2012-43300(JP,A)
【文献】特開2010-44634(JP,A)
【文献】特開2020-149434(JP,A)
【文献】特開2007-94948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
証券会社によって取り扱われる金融商品の営業活動を当該証券会社に属さない営業員が顧客に対して行う際の、当該営業活動のチェックを行う営業支援システムであって、
予め登録された前記営業員によって操作される営業員端末と、
前記営業員端末とネットワークを介して接続され、前記証券会社によって直接管理されないサーバと、
を有し、
前記サーバは、
前記営業活動に際して前記営業員側から前記顧客側に提示された情報を前記ネットワークを介して音声データとして入手し、
当該音声データをテキストデータに変換する文字変換部と、
テキストデータに変換された前記音声データを検索対象ファイルとして記憶すると共に、前記営業活動の適正性をチェックするために用いられ、登録された前記営業員を識別するための当該営業員に関する音声情報及び顔情報が含まれる営業員識別情報を含むチェック用情報を記憶する記憶部と、
前記営業員端末における前記営業活動に関わる操作に際し、当該営業員端末の操作者の前記音声情報及び前記顔情報に対応する情報を前記営業員端末から入手して前記営業員識別情報における前記音声情報及び前記顔情報と比較し、前記操作者が登録された前記営業員であるか否かを判定し、
前記操作者が登録された前記営業員であった場合には、前記チェック用情報に基いて設定されたキーワードの前記検索対象ファイル中における有無を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に応じて、前記営業員端末、前記ネットワークを介して接続された他の端末のうちの少なくともいずれかに対して警告を発する制御部と、
を具備することを特徴とする営業支援システム。
【請求項2】
前記チェック用情報には、前記営業員が前記顧客に対して提示できる前記金融商品に対する制限に関わる事項が含まれ、
前記判定部は、制限された前記金融商品に関連して設定された前記キーワードの前記検索対象ファイル中における有無を判定し、
前記制御部は、当該キーワードが存在した場合に、前記営業員端末に対して警告を発することを特徴とする請求項1に記載の営業支援システム。
【請求項3】
前記チェック用情報には、前記顧客の投資活動に対する志向を特定する顧客志向特定情報が含まれ、
前記判定部は、前記志向に反する場合に対応して設定された前記キーワードの前記検索対象ファイル中における有無を判定し、
前記制御部は、当該キーワードが存在した場合に、前記営業員端末に対して警告を発することを特徴とする請求項1又は2に記載の営業支援システム。
【請求項4】
前記金融商品に関わる証券会社の管理者によって操作される証券会社端末が前記ネットワークを介して前記サーバと接続され、
前記チェック用情報は前記証券会社端末から編集可能とされたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の営業支援システム。
【請求項5】
前記サーバは、
前記営業活動における各過程で前記営業員側から前記顧客側に提示された情報を前記検索対象ファイルとして、前記判定部による判定を前記過程毎に行う動作と、
前記営業活動の開始時から終了時までに前記営業員側から前記顧客側に提示された複数の情報に対応した複数の前記検索対象ファイルを前記記憶部に記憶し、記憶された複数の前記検索対象ファイルに対して前記判定部による判定を一括して行う動作と、
を行うことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の営業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)を介した営業活動に用いられる営業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融商品の販売のための営業活動においては、特有の法的な制限が多く存在する。このため、その営業員が顧客に提示した文書が適正であるか否かのチェックが重要であるが、ネットワークを用いて構成されたシステム(営業支援システム)でこのチェックを自動的に行う技術が提案されている。例えば、特許文献1には、営業員が顧客に対して行った説明がネットワークを介してこの営業員の属する証券会社のサーバが入手してチェックを行い、問題があると認識された場合には、営業員が保持するモバイル端末に対して注意を促すメッセージ等を表示させる技術が記載されている。
【0003】
また、営業支援システムにおいては、後で問題が発生した場合に備え、このような営業活動の際の会話や提示された資料等は、例えばこの顧客毎の情報の一部として全て記憶される。これによって、証券会社は、自社の営業員の営業活動の遵法性を担保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-52940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
顧客に対して資産運用等のアドバイスを行う金融アドバイザーは、上記のような営業員に該当し、上記のような営業支援システムを用いて管理をする対象となる。従来は、このような金融アドバイザーは一般的には証券会社等に属していたため、上記のように、モバイル端末と、これとネットワークを介して接続され証券会社の管理下にあるサーバとが用いられる営業支援システムを用いた管理が容易であった。
【0006】
一方、近年、金融機関に属さない独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)がこのような営業活動を行う場合も多くなった。IFAが扱う金融商品は基本的には金融機関に所属する従来の金融アドバイザーが扱うものと変わりはない。ただし、従来の金融アドバイザーは例えばある一つの企業(証券会社等)に属するため、一般的にはこの企業の扱う金融商品しか顧客に提示できないのに対して、IFAは例えば複数の証券会社と提携することができ、顧客に対してより多くの金融商品を提示することができる。あるいは、IFAには個々の証券会社からの一定の独立性が保たれている。こうした点は、個々の顧客にとって有利である場合も多く、例えば、IFAによれば、顧客による金融商品の選択の自由度を広げることもできる。
【0007】
IFAの営業活動に対しても従来の金融アドバイザーの営業活動に対する場合と同様の法的な制限は存在する。また、IFAは登録制であり、正規の登録を受けた者だけがIFAとしての活動をすることができる。更に、IFAと、提携した証券会社との間には契約があるため、IFAの営業活動がこの契約内容に沿ったものであること等も要求される。このため、チェックすべき事項は従来の金融アドバイザーに対してよりも、IFAに対して、より多くなる場合もある。
【0008】
これに対して、IFAは個々の証券会社に属さず、IFAには証券会社からの一定の独立性があることが要求される。このため、IFAによる営業活動を従来の金融アドバイザーによる営業活動と同様に上記のような営業支援システムによって管理することは容易ではなかった。このため、IFAを利用した営業活動を適正に管理することのできる営業支援システムが望まれた。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、証券会社によって取り扱われる金融商品の営業活動を当該証券会社に属さない営業員が顧客に対して行う際の、当該営業活動のチェックを行う営業支援システムであって、予め登録された前記営業員によって操作される営業員端末と、前記営業員端末とネットワークを介して接続され、前記証券会社によって直接管理されないサーバと、を有し、前記サーバは、前記営業活動に際して前記営業員側から前記顧客側に提示された情報を前記ネットワークを介して音声データとして入手し、当該音声データをテキストデータに変換する文字変換部と、テキストデータに変換された前記音声データを検索対象ファイルとして記憶すると共に、前記営業活動の適正性をチェックするために用いられ、登録された前記営業員を識別するための当該営業員に関する音声情報及び顔情報が含まれる営業員識別情報を含むチェック用情報を記憶する記憶部と、前記営業員端末における前記営業活動に関わる操作に際し、当該営業員端末の操作者の前記音声情報及び前記顔情報に対応する情報を前記営業員端末から入手して前記営業員識別情報における前記音声情報及び前記顔情報と比較し、前記操作者が登録された前記営業員であるか否かを判定し、前記操作者が登録された前記営業員であった場合には、前記チェック用情報に基いて設定されたキーワードの前記検索対象ファイル中における有無を判定する判定部と、前記判定部による判定結果に応じて、前記営業員端末、前記ネットワークを介して接続された他の端末のうちの少なくともいずれかに対して警告を発する制御部と、を具備する。
また、前記チェック用情報には、前記営業員が前記顧客に対して提示できる前記金融商品に対する制限に関わる事項が含まれ、前記判定部は、制限された前記金融商品に関連して設定された前記キーワードの前記検索対象ファイル中における有無を判定し、前記制御部は、当該キーワードが存在した場合に、前記営業員端末に対して警告を発してもよい。
また、前記チェック用情報には、前記顧客の投資活動に対する志向を特定する顧客志向特定情報が含まれ、前記判定部は、前記志向に反する場合に対応して設定された前記キーワードの前記検索対象ファイル中における有無を判定し、前記制御部は、当該キーワードが存在した場合に、前記営業員端末に対して警告を発してもよい。
また、前記金融商品に関わる証券会社の管理者によって操作される証券会社端末が前記ネットワークを介して前記サーバと接続され、前記チェック用情報は前記証券会社端末から編集可能とされていてもよい
また、前記サーバは、前記営業活動における各過程で前記営業員側から前記顧客側に提示された情報を前記検索対象ファイルとして、前記判定部による判定を前記過程毎に行う動作と、前記営業活動の開始時から終了時までに前記営業員側から前記顧客側に提示された複数の情報に対応した複数の前記検索対象ファイルを前記記憶部に記憶し、記憶された複数の前記検索対象ファイルに対して前記判定部による判定を一括して行う動作と、を行なってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、IFAを利用した営業活動を適正に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る営業支援システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態に係る営業支援システムにおけるデータセンター側システムの構成を示す図である。
図3】実施の形態に係る営業支援システムにおいて用いられる営業員情報(a)、顧客情報(b)の例である。
図4】実施の形態に係る営業支援システムで用いられる、音声データ管理情報(a)、その他の一般ファイル管理情報(b)の例である。
図5】判定部における適法性の判定のために用いられるNGキーワードの例である。
図6】営業員に応じて設定されるNGキーワードの例である。
図7】顧客志向特定情報に応じて設定されるNGキーワードの例である。
図8】実施の形態に係る営業支援システムにおける動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を図面を参照して具体的に説明する。ここで本発明の実施の形態に係る営業支援システムは、金融商品を扱う独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA:営業員)の営業活動を管理するために用いられる。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る営業支援システム1の構成を示す。この営業支援システム1は、IFAが取り扱うIFA側システムA、顧客が扱う顧客側システムB、証券会社管理人が扱う証券会社側システムC、データセンター側システムD、がネットワークNで接続されて構成される。図1においてはIFA側システムAは一つのみ設けられているが、実際にはこの営業支援システム1によって管理される全てのIFA毎にIFA側システムAが設けられる。また、一人のIFAが複数の顧客に対応する場合もあるが、ここではIFAと顧客が1組のみ記載されている。また、一人のIFAが複数の証券会社(金融機関)と契約する場合もあるが、ここではIFAが一つの証券会社のみと契約しているものとしている。
【0015】
IFA側システムAと顧客側システムBとの間では、直接の営業活動に関する情報として、例えばIFAから顧客への提案内容、顧客からIFAへの回答内容等がやりとりされる。実際にはこのやりとりは、例えばIFA側システムAにおけるIFA端末(営業員端末)11がIFAにより操作されて各種プレゼンテーションに使用する電子ファイルが顧客端末12側に提示されることや、音声電話、テレビ電話によるIFA側から顧客側への連絡(通話データ、映像データ)等によって行われる。ここでは、このようにやりとりされた情報は全てIFA端末11が一時的に記憶し、これらの情報を全てネットワークNを介してデータセンター側システムDに送信することができる。
【0016】
通話データ、映像データにおいては、これが発せられた日時と共に、これがIFA、顧客のどちらから発信されたものかが区別されてデータ化される。電子ファイルについても、これが提示された日時と共に、これがどちらから提示されたものであるかが識別されて認識される。このためには、例えばファイル名にこの識別のために用いられる記号を付与する等、周知の手法を用いることができる。
【0017】
なお、IFA端末と11と顧客端末12はネットワークNを介して上記のようなデータのやりとりをすることができるが、顧客端末12はデータセンター側システムDとは直接接続されず、顧客端末12と直接接続されるのは図1においてはIFA端末11のみである。
【0018】
図1において、IFA端末11は一人のIFAに対応して設けられる。IFAは登録制であり、その活動は保有する各種の資格(例えば証券外務員一種、二種等)に応じて制限される。ここでは、IFA毎に、このような営業活動において認識すべき情報(氏名、登録番号、保有資格)等がIFA情報(営業員情報)としてIFA端末11に記憶されている。また、このIFAを識別するための情報(営業員識別情報)として、このIFAの音声(声紋等)データや顔画像データもこのIFA情報の中に含まれる。このIFA情報は、ネットワークNを介してデータセンター側システムDに送信される。
【0019】
また、IFAが顧客との間で営業活動をする際には、この顧客に関する情報を認識する。このような顧客に関する情報(顧客情報)には、顧客の識別情報(氏名、住所、連絡先等)が含まれる。また、顧客毎に付与される管理番号(顧客番号)も、この顧客情報に含まれる。更に、この顧客の投資活動に対する志向(希望する金融商品の傾向)として、例えば投資活動における基本的な姿勢、例えば低リスクを望む安定志向であるか、高リスク・高リターンを望む積極志向であるか、等を特定する情報(顧客志向特定情報)も、この顧客情報に含まれる。顧客志向特定情報は、例えばIFAによって作成され、IFA端末11に記憶されると共に、ネットワークNを介してデータセンター側システムDに送信される。
【0020】
証券会社端末13には、自身と契約したIFAとの間の契約内容が記憶された契約情報が予め記憶されている。この契約情報の内容としては、IFAの識別情報と共に、例えばこのIFAが取り扱うことのできる(あるいは、できない)範囲の金融商品や、有効な契約期間等が含まれる。この契約情報も、ネットワークNを介してデータセンター側システムDに送信される。
【0021】
データセンター側システムDにおいては、IFA端末11、証券会社端末13側からデータを入手してこれに基いて動作するサーバ20と、入手したデータを記憶する第1記憶部(記憶部)31が設けられる。サーバ20は、記憶された上記のデータに基いて、IFAと顧客との間で行なわれている営業活動に問題がないか否かを判定する。ここで問題があるか否かの判断は、証券取引法等の法的な観点や、顧客の投資活動に対する志向に対する適合性や、証券会社とIFAとの間の契約内容に基く適正性等に基く。問題があると認識された場合には、サーバ20は、その旨の警告をIFA端末11や証券会社端末13にネットワークNを介して発する。このような判定の基準となる一般的な情報は、第2記憶部32にデータベース(判定用データベース)として記憶されている。
【0022】
また、IFA端末11から入手したデータの一部である通話データや映像データは、上記の判定が容易となるような形式に変換されてから第1記憶部31に記憶される。
【0023】
以下に、上記の動作を行うデータセンター側システムD側の詳細な構成について説明する。図2は、この構成を示す図である。ここで、サーバ20は、ネットワークNとの間でデータのやりとりを行うネットワーク接続部21と、全体の制御を行う制御部22を具備する。また、前記のようにIFA端末11から入手した通話データや映像データに伴う音声(音声データ)の内容を文字に変換するための文字変換部23が設けられる。これにより、このような音声データは、音声信号ではなく文字情報に変換されて第1記憶部31に記憶される。
【0024】
また、このような音声データ、映像データ、電子ファイルは、前記のようにこれらが発信された側が認識される。このため、例えば音声データによる発言がIFA、顧客のどちらのものであるかが認識され、この発言内容が文字情報として認識される。
【0025】
また、このように第1記憶部31に記憶されたデータと、第2記憶部32に記憶された判定用データベースとに基いて、販売活動に問題がないか否かを判定する判定部24が設けられる。以下に、上記のデータの具体的な例とこれに基づく判定部24の動作について説明する。
【0026】
図3(a)は、第1記憶部31に記憶されるIFA情報(営業員情報)の内容の例を示し、ここでは、図1におけるIFAが4人(IFA側システムAが4つ)あるものとし、登録番号が901~904の4人のIFAについての情報が含まれている。ここでは、各IFAの氏名と、保有する資格として、5種類の資格(証券外務員一種、証券外務員二種、生命保険募集人、損害保険募集人、変額保険募集人)についての有無(丸印が、該当資格を所有していることを示す)が登録されている。また、営業員識別情報として、その識別用の音声(声紋)情報となる音声マスタデータ、識別用の顔情報となる顔画像マスタデータが、それぞれファイルとして記憶され、このファイルのリンク先がIFA情報として記憶されている。このIFA情報は、各IFAが販売活動を行う前に予め第1記憶部31に記憶される。また、例えば各々の保有資格は変動することがあるが、この情報は最新の状況を反映するものとする。このようなIFA情報は、各IFA側システムBから図3(a)における個々の情報を入手することによって、制御部22が作成し、第1記憶部31に記憶させることができる。
【0027】
図3(b)は、第1記憶部31に記憶される顧客情報の内容の例を示し、ここでは、図1における顧客が4人(顧客側システムBが4つ)あるものとし、登録番号が101~104の4人の顧客についての情報が含まれている。各顧客については、前記の顧客志向特定情報として、その投資に対する基本的姿勢である投資適正が、3種類のキーワード(「安定志向」、「バランス志向」、「積極志向」)で記載されている。ここで、「安定志向」とは、低リターンではあるが低リスクであることを志向し、「積極志向」とは、高リスクではあるが高リターンであることを志向し、「バランス志向」とは、これらの中間的な志向であることを意味する。このような投資適正は、各顧客と接したIFAが適宜設定することができる。また、この情報も適宜更新することができる。
【0028】
また、図4(a)は、音声データを第1記憶部31で記憶する際の管理情報となる音声データ管理情報の例を示す。ここでは、IFA(901、903)の発言が音声ファイルとして記憶され、発言者(IFA登録番号)、発せられた日時、音声ファイルのリンク先と、この音声がテキスト化された内容が示されている。このテキスト化された内容も音声ファイルとは別に記憶されている。また、図4(b)は、同様にIFA側から発せられた映像(映像ファイル)や提示された電子ファイルを管理する一般ファイル管理情報の例を示す。ここでも、提示者(IFA登録番号)、提示された日時、ファイルのリンク先が組になって管理されている。
【0029】
また、第2記憶部32には、IFAによる営業活動に不適切な事項があったか否かを判定するために用いられる判定データベースが記憶されている。この判定は、検索対象ファイル中にキーワード(NGキーワード)が検索対象ファイル中で認識された否かによって行なわれ、この検索対象ファイルは、テキスト化された音声ファイル、映像ファイル、各種の文書やプレゼンテーション用資料となる電子ファイルとなる。一方、このようなキーワードは、第1記憶部31、第2記憶部32に記憶されたチェック用情報に基いて設定される。このようなチェック用情報としては、第2記憶部32に記憶された判定データベース、第1記憶部31に記憶されたIFA情報、顧客情報が用いられる。図5は、このようなキーワード(NGキーワード)の例を示す。
【0030】
このキーワードとしては、IFAや顧客によらずにこの語句が認識されれば法的に非適正であると認識されるものとして、「儲かる」、「確実に利益出る」等がある。一方、IFA情報、特にIFAの保有する資格に応じて非適正となるキーワードとして、IFAが証券外務員の資格を有していない場合における「デリバティブ」、「信用取引」等がある。同様に、IFAが生命保険募集人の資格を有していない場合における「生命保険」、IFAが損害保険募集人の資格を有していない場合における「損害保険」等がある。このように非保有資格に応じたNGキーワードは、対応する資格をIFAが有している場合にはNGキーワードとしては扱われない。このため、図6に示されるように、例えば「デリバティブ」は、図3(a)における901のIFAに対しては許容される(OKキーワードである)が、903のIFAに対してはNGキーワードとなり、「生命保険」は、903のIFAに対してはOKキーワードであるが、901のIFAに対してはNGキーワードとなる。図5、6は一例であり、実際にはより多くのキーワードが各ケースに応じて多く設定され、かつより多くのケースが設定される。
【0031】
上記のNGキーワードは、対象となる販売活動の適法性に関わるものであったが、同様に、販売する商品(金融商品)の顧客への適応性についても、検索対象ファイル中で認識されたキーワードによって判定することができる。この場合のキーワードは、顧客情報(顧客志向特定情報)に応じて設定される。図7は、顧客情報(図3(b))における顧客志向特定情報(投資適正)と、これに適したキーワード(OKキーワード)とこれに適さないキーワード(NGキーワード)の例である。例えば「安定志向」とされた顧客に対しては、「低リスク」、「低リターン」はOKキーワードとなり、「高リスク」、「高リターン」はNGキーワードとなる。一方、「積極志向」とされた顧客に対しては、OKキーワードとNGキーワードの関係が逆となる。すなわち、顧客(顧客情報)が特定された場合において、その投資適正に対応したNGキーワードが検索対象ファイル中に存在した場合には、法的な問題はないものの、この商品はこの顧客には適さない可能性が高い。
【0032】
このように、NGキーワードは、判定の対象となる事項に応じて設定される。このため、このようなNGキーワードの候補となる語句は、判定用データベースとして第2記憶部32に記憶され、判定部24は、IFA情報や顧客情報に応じて、適用されるNGキーワードを設定する。
【0033】
以上のように、法的に問題がある場合や、商品がこの顧客に適さない可能性が高い場合には、その旨がIFAに通知されることが好ましい。図8は、上記の営業支援システム1におけるこのような動作を示すフローチャートである。ここでは、上記のような検索対象ファイルとなる情報がIFAによる営業活動の過程毎にサーバ20側に送信され、これに応じたチェックが過程毎に行われるものとしている。
【0034】
この動作は、IFAからある一人の顧客に対する営業活動の開始によって開始される(S1)。この時点で、対象となるIFA、顧客のそれぞれが決定される。前記のように、IFA端末11には対応するIFA情報(図3(a)における対応項目)が記憶されている。また、顧客が特定されれば、IFAは、この顧客の顧客情報(図3(b)における対応項目)を作成することができる。IFAは、このIFA情報と顧客情報をIFA端末11からデータセンター側システムD(サーバ20)に送信することができ、これによって、サーバ20側ではこのIFA情報、顧客情報を認識する(S2)。なお、このIFA情報、顧客情報が予めサーバ20で登録されていれば、IFAの登録番号と顧客の顧客番号のみを送信することによって、サーバ20側でこのIFA情報、顧客情報を認識することもできる。
【0035】
次に、サーバ20において、判定部24は、このIFA端末11の操作者が正規に登録されたIFAであるか否かを判定する(S3)。このため、判定部24は第1記憶部31からIFA情報(図3(a))を読み出し、その中の営業員識別情報に対応した情報(操作者情報:例えば操作者の声や顔画像)をIFA端末11から入手し、比較をすることができる。操作者が正規に登録されたIFAではないと認識された場合(S3:No)には、制御部22は、警告をIFA端末11に向けて発する。また、同様の警告を、対応するIFAが契約している証券会社の証券会社端末13に向けても発することができる。
【0036】
操作者が登録済みの正規のIFAであると認定されたら(S3:Yes)、判定部24は、IFA端末11から、IFA側から直近に顧客側に送信または提示された情報として、前記のような音声データ、映像データ、電子ファイル等を入手し、第1記憶部31に記憶させる(S5)。この際、前記のように、音声データについては、文字変換部23によってテキストデータ化したファイルも記憶させる。このように記憶されたファイルが検索対象ファイルとなる。
【0037】
次に、判定部24は、図5、6に例示されたNGキーワードが、この検索対象ファイル中にあるか否かを判定する(S6)。ここで、音声データはテキスト化されているため、この検索を特に容易にすることができる。プレゼンテーション用の電子ファイルにおいても、同様の検索を行うことができる。映像ファイルに対しては、画像中の文字認識を行うことによって、この検索を行うことができる。ここでは、まず、図5における全般を対象としたNGキーワードである「儲かる」等が検索される。次に、認識されたIFAのIFA情報における保有資格に基づき、図6のようにNGキーワードが選定されて検索される。以上によって一つでもNGキーワードが認識されたら(S6:Yes)、上記と同様に警告が発せられる(S4)。
【0038】
次に、判定部24は、図7に示されたように、顧客情報(図3(b))で認識された顧客志向特定情報(投資適正)に応じたNGキーワード(図7)が検索対象ファイル中にあるか否かを判定する(S7)。NGキーワードが認識されたら(S7:No)、上記と同様に警告が発せられる(S4)。
【0039】
以上における、IFA端末11側からの販売活動における最新のデータの入手(S5)~投資適正の判定(S7)は、販売活動の終了(商品の売買契約の成立又は中止の決定)まで(S8:Yes)の間に、IFA側から顧客側に情報の提示が行われる度に繰り返される。このため、IFAによる販売活動の適正性が逐一チェックされる。
【0040】
なお、警告(S4)は、警告の原因となった理由(S3、S6、S7)に応じて、異なる態様で行なわせることができる。例えば、IFA端末11の操作者が正規に登録されたIFAでないと認識された場合(S3:No)にはIFA端末11だけでなく、このIFA端末11に対応したIFAと契約した証券会社端末13にも警告を発することが好ましい。これに対し、商品に対して顧客の投資適正が適合しなかった場合(S7:No)には、IFA端末11に対してのみ警告を発してもよい。あるいは、単なる警告ではなく問題があると認識された内容を具体的に連絡してもよい。
【0041】
また、図8の動作においては、IFAによる販売活動が行なわれている間において、リアルタイムでその適正性が判定された。しかしながら、上記の検索対象ファイルが全て第1記憶部31に記憶されていれば、上記の判定を全て販売活動の終了後に行うこともできる。この場合、例えば契約の成立後においてIFAや証券会社と顧客との間に問題が発生した場合において、販売活動の適正性のチェックを特に容易に行うこともできる。この場合においては、例えばリアルタイムで上記の動作を行なった際に用いたNGキーワードに対して新たにNGキーワードを設定する、あるいはNGキーワードを変更する、等の作業によって、このチェックを行うこともできる。このため、サーバ20は、図8に示されたように営業活動において逐一検索対象ファイルを入手して上記の判定、警告を行う動作と、営業活動においてIFA側から提示された情報を検索対象ファイルとして全て入手した後で、一括して上記の判定、警告を行う動作と、を行なえることが特に好ましい。
【0042】
また、図8の例では、判定部24は、検索対象ファイルにおけるNGキーワードの有無によって販売活動の適法性が推定された(S6)。同様に、証券会社とIFAとの間の契約内容をデータセンター側システムDが記憶しておけば、この契約内容と販売活動との適合性も判定部24が判定することもでき、適合しなかった場合において上記と同様に警告を発することもできる。この判定のためのNGキーワードも、契約内容に応じて適宜設定が可能である。
【0043】
上記において、IFAと証券会社との間には契約関係がある一方で、複数のIFAがいる場合には、各IFAは独立しているため、この場合の各IFA側システムAは独立しており、各IFA側システムAが単一のデータセンター側システムD(サーバ20)と接続される。また、各IFAは複数の証券会社と契約する場合もあり、この場合においては各証券会社(証券会社側システムC)同士の独立性も保たれる必要がある。このため、データセンター側システムDは、各証券会社からは独立し、その管理は証券会社側からは直接行なわれないことが好ましい。
【0044】
しかしながら、前記のようなキーワードやその設定のために用いられるチェック用情報は、対象となる金融商品の内容に関わる情報であるため、このようなチェック用情報は証券会社(証券会社端末13)側から確認、編集できる構成とすることが好ましい。
【0045】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0046】
1 営業支援システム
11 IFA(営業員)端末
12 顧客端末
13 証券会社端末
20 サーバ
21 ネットワーク接続部
22 制御部
23 文字変換部
24 判定部
31 第1記憶部(記憶部)
32 第2記憶部(記憶部)
A IFA(営業員)側システム
B 顧客側システム
C 証券会社側システム
D データセンター側システム
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8