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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】異常検出装置および異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/42 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
E02B7/42
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021067759
(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公開番号】P2022162771
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】本浪 雅史
(72)【発明者】
【氏名】森田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山下 遼
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第212670501(CN,U)
【文献】特開平07-042137(JP,A)
【文献】特開2019-113453(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109443424(CN,A)
【文献】特開2007-113967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20-7/54
8/02-8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルゲートにおける異常を検出する異常検出装置であって、
ラジアルゲートにおいて扉体と駆動部とが連結媒体により連結され、前記扉体においてスキンプレートと支承部とが脚柱により接続され、前記連結媒体または前記脚柱にかかる荷重を示す値を荷重評価値として取得する荷重測定部と、
前記脚柱の所定位置の角度を脚柱角度として取得する角度計と、
前記ラジアルゲートの運転の際に、前記荷重評価値と前記脚柱角度との関係に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検出装置であって、
前記判定部が、前記脚柱角度の変化から前記扉体の始動時を特定し、前記始動時における前記荷重評価値、または、前記扉体の移動中における前記荷重評価値の代表値に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異常検出装置であって、
前記判定部が、前記ラジアルゲートの運転毎に前記扉体の始動時における前記荷重評価値、または、前記扉体の移動中における前記荷重評価値の代表値を記憶し、前記始動時における前記荷重評価値の経時変化、または、前記荷重評価値の代表値の経時変化に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、
前記判定部が、前記脚柱角度の変化から前記扉体の始動時を特定し、前記扉体の移動中における前記荷重評価値の変動に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、
前記扉体において左岸側および右岸側のそれぞれに連結媒体、支承部および脚柱が設けられており、
前記左岸側の前記連結媒体または前記脚柱における荷重評価値が前記荷重測定部により取得され、前記右岸側の前記連結媒体または前記脚柱における荷重評価値が他の荷重測定部により取得され、
前記左岸側の前記脚柱における脚柱角度が前記角度計により取得され、前記右岸側の前記脚柱における脚柱角度が他の角度計により取得され、
前記判定部が、前記左岸側の前記支承部、および、前記右岸側の前記支承部に対して個別に異常の有無を判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項6】
ラジアルゲートにおける異常を検出する異常検出装置であって、
ラジアルゲートの扉体においてスキンプレートと支承部とが脚柱により接続されており、前記支承部の近傍における前記脚柱の角度を第1脚柱角度として取得する第1角度計と、
前記スキンプレートの近傍における前記脚柱の角度を第2脚柱角度として取得する第2角度計と、
前記ラジアルゲートの運転の際に、前記第1脚柱角度と前記第2脚柱角度との差または比を示す脚柱評価値に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の異常検出装置であって、
前記判定部が、前記扉体の始動時における前記脚柱評価値、または、前記扉体の移動中における前記脚柱評価値の代表値に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の異常検出装置であって、
前記判定部が、前記ラジアルゲートの運転毎に前記扉体の始動時における前記脚柱評価値、または、前記扉体の移動中における前記脚柱評価値の代表値を記憶し、前記始動時における前記脚柱評価値の経時変化、または、前記脚柱評価値の代表値の経時変化に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、
前記判定部が、前記扉体の移動中における前記脚柱評価値の変動に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、
前記扉体において左岸側および右岸側のそれぞれに支承部および脚柱が設けられており、
前記左岸側の前記脚柱における第1脚柱角度および第2脚柱角度が前記第1角度計および前記第2角度計によりそれぞれ取得され、
前記右岸側の前記脚柱における第1脚柱角度および第2脚柱角度が他の第1角度計および他の第2角度計によりそれぞれ取得され、
前記判定部が、前記左岸側の前記支承部、および、前記右岸側の前記支承部に対して個別に異常の有無を判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項11】
ラジアルゲートにおける異常を検出する異常検出方法であって、
ラジアルゲートにおいて扉体と駆動部とが連結媒体により連結され、前記扉体においてスキンプレートと支承部とが脚柱により接続され、前記連結媒体または前記脚柱にかかる荷重を示す値を荷重評価値として取得する工程と、
前記脚柱の所定位置の角度を脚柱角度として取得する工程と、
前記ラジアルゲートの運転の際に、前記荷重評価値と前記脚柱角度との関係に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する工程と、
を備えることを特徴とする異常検出方法。
【請求項12】
ラジアルゲートにおける異常を検出する異常検出方法であって、
ラジアルゲートの扉体においてスキンプレートと支承部とが脚柱により接続されており、前記支承部の近傍における前記脚柱の角度を第1脚柱角度として取得する工程と、
前記スキンプレートの近傍における前記脚柱の角度を第2脚柱角度として取得する工程と、
前記ラジアルゲートの運転の際に、前記第1脚柱角度と前記第2脚柱角度との差または比を示す脚柱評価値に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する工程と、
を備えることを特徴とする異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出装置および異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダム等においてラジアルゲートが用いられている。ラジアルゲートの扉体では、スキンプレートと支承部とが脚柱により接続される。支承部におけるトラニオンピンとトラニオンハブとの間の摩擦力は、ラジアルゲートの構造健全性に大きく影響する。支承部に異常が生じると、ラジアルゲートの開閉時に脚柱に大きな曲げモーメントが作用し、脚柱の座屈・塑性降伏につながる可能性がある。しかしながら、支承部の内部は直接目視できないため、異常の検出が困難である。
【0003】
そこで、特許文献1では、ゲートピン(ラジアルゲート支承部材)にAEセンサを取り付け、AEセンサから取得されるAE波形に基づいて得られる所定のDA値を用いて、ゲートピンの摩擦力を評価する手法が開示されている。なお、特許文献2では、ラジアルゲートにおいて、トラニオンガーダをコンクリートピアに押し付ける支持鋼材の変位量を計測し、当該変位量の変化からラジアルゲートの支持状態を検出する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-113453号公報
【文献】特許第2888806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようにAEセンサを用いる場合でも、支承部における異常を適切に検出することは容易ではない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、支承部における異常を適切に検出することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ラジアルゲートにおける異常を検出する異常検出装置であって、ラジアルゲートにおいて扉体と駆動部とが連結媒体により連結され、前記扉体においてスキンプレートと支承部とが脚柱により接続され、前記連結媒体または前記脚柱にかかる荷重を示す値を荷重評価値として取得する荷重測定部と、前記脚柱の所定位置の角度を脚柱角度として取得する角度計と、前記ラジアルゲートの運転の際に、前記荷重評価値と前記脚柱角度との関係に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する判定部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の異常検出装置であって、前記判定部が、前記脚柱角度の変化から前記扉体の始動時を特定し、前記始動時における前記荷重評価値、または、前記扉体の移動中における前記荷重評価値の代表値に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の異常検出装置であって、前記判定部が、前記ラジアルゲートの運転毎に前記扉体の始動時における前記荷重評価値、または、前記扉体の移動中における前記荷重評価値の代表値を記憶し、前記始動時における前記荷重評価値の経時変化、または、前記荷重評価値の代表値の経時変化に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、前記判定部が、前記脚柱角度の変化から前記扉体の始動時を特定し、前記扉体の移動中における前記荷重評価値の変動に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、前記扉体において左岸側および右岸側のそれぞれに連結媒体、支承部および脚柱が設けられており、前記左岸側の前記連結媒体または前記脚柱における荷重評価値が前記荷重測定部により取得され、前記右岸側の前記連結媒体または前記脚柱における荷重評価値が他の荷重測定部により取得され、前記左岸側の前記脚柱における脚柱角度が前記角度計により取得され、前記右岸側の前記脚柱における脚柱角度が他の角度計により取得され、前記判定部が、前記左岸側の前記支承部、および、前記右岸側の前記支承部に対して個別に異常の有無を判定する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、ラジアルゲートにおける異常を検出する異常検出装置であって、ラジアルゲートの扉体においてスキンプレートと支承部とが脚柱により接続されており、前記支承部の近傍における前記脚柱の角度を第1脚柱角度として取得する第1角度計と、前記スキンプレートの近傍における前記脚柱の角度を第2脚柱角度として取得する第2角度計と、前記ラジアルゲートの運転の際に、前記第1脚柱角度と前記第2脚柱角度との差または比を示す脚柱評価値に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する判定部とを備える。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の異常検出装置であって、前記判定部が、前記扉体の始動時における前記脚柱評価値、または、前記扉体の移動中における前記脚柱評価値の代表値に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の異常検出装置であって、前記判定部が、前記ラジアルゲートの運転毎に前記扉体の始動時における前記脚柱評価値、または、前記扉体の移動中における前記脚柱評価値の代表値を記憶し、前記始動時における前記脚柱評価値の経時変化、または、前記脚柱評価値の代表値の経時変化に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項6ないし8のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、前記判定部が、前記扉体の移動中における前記脚柱評価値の変動に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項6ないし9のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、前記扉体において左岸側および右岸側のそれぞれに支承部および脚柱が設けられており、前記左岸側の前記脚柱における第1脚柱角度および第2脚柱角度が前記第1角度計および前記第2角度計によりそれぞれ取得され、前記右岸側の前記脚柱における第1脚柱角度および第2脚柱角度が他の第1角度計および他の第2角度計によりそれぞれ取得され、前記判定部が、前記左岸側の前記支承部、および、前記右岸側の前記支承部に対して個別に異常の有無を判定する。
【0017】
請求項11に記載の発明は、ラジアルゲートにおける異常を検出する異常検出方法であって、ラジアルゲートにおいて扉体と駆動部とが連結媒体により連結され、前記扉体においてスキンプレートと支承部とが脚柱により接続され、前記連結媒体または前記脚柱にかかる荷重を示す値を荷重評価値として取得する工程と、前記脚柱の所定位置の角度を脚柱角度として取得する工程と、前記ラジアルゲートの運転の際に、前記荷重評価値と前記脚柱角度との関係に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する工程とを備える。
【0018】
請求項12に記載の発明は、ラジアルゲートにおける異常を検出する異常検出方法であって、ラジアルゲートの扉体においてスキンプレートと支承部とが脚柱により接続されており、前記支承部の近傍における前記脚柱の角度を第1脚柱角度として取得する工程と、前記スキンプレートの近傍における前記脚柱の角度を第2脚柱角度として取得する工程と、前記ラジアルゲートの運転の際に、前記第1脚柱角度と前記第2脚柱角度との差または比を示す脚柱評価値に基づいて、前記支承部における異常の有無を判定する工程とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、支承部における異常を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施の形態に係る水門システムの構成を示す図である。
図2】プレート支持部を示す平面図である。
図3】異常検出装置の構成を示すブロック図である。
図4】ラジアルゲートの異常を検出する処理の流れを示す図である。
図5】正常状態における荷重評価値および脚柱角度の変化を示す図である。
図6】正常状態における脚柱の曲げを示す図である。
図7】固着異常および摺動異常の状態における荷重評価値および脚柱角度の変化を示す図である。
図8】固着異常の状態における脚柱の曲げを示す図である。
図9】特定角度異常の状態における荷重評価値と脚柱角度との関係を示す図である。
図10】始動時の荷重評価値の経時変化を示す図である。
図11】第2の実施の形態に係る異常検出装置の構成を示すブロック図である。
図12】ラジアルゲートの異常を検出する処理の流れを示す図である。
図13】正常状態における第1脚柱角度および第2脚柱角度の変化を示す図である。
図14】固着異常および摺動異常の状態における第1脚柱角度および第2脚柱角度の変化を示す図である。
図15】特定角度異常の状態における脚柱評価値と第1脚柱角度との関係を示す図である。
図16】始動時の脚柱評価値の経時変化を示す図である。
図17】脚柱の最大ひずみの経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る水門システム1の構成を示す図である。水門システム1は、水門であるラジアルゲート10と、コンピュータ4とを備える。図1のラジアルゲート10は、ダムに設けられ、コンピュータ4は、例えば当該ダムに隣接する建屋内に設置される。ラジアルゲート10は、ダム以外の設備(例えば、堤防等)に設けられてもよい。また、コンピュータ4は、ラジアルゲート10から遠く離れた位置に設けられてもよい。この場合、ラジアルゲート10に取り付けられる各種測定部は、通信装置等に接続され、インターネット等のネットワークを介して当該コンピュータ4と通信可能とされる。当該コンピュータ4は、クラウドサービスにより提供されるコンピュータであってもよい。
【0022】
ラジアルゲート10は、扉体2と、開閉装置3とを備える。扉体2は、ダムの堤体に設けられた開口部91に設置され、開口部91における水の流通を調整するために用いられる。扉体2は、例えば金属により形成される。扉体2は、スキンプレート21と、2つのプレート支持部22とを備える。スキンプレート21は、図1中の回転軸J1に略平行な板状部材である。回転軸J1に垂直なスキンプレート21の断面形状は、回転軸J1を中心とする所定半径の略円弧状である。スキンプレート21は、回転軸J1に略垂直な開口部91の2つの側面911(以下、「開口側面911」という。)の間に亘って設けられる。
【0023】
図2は、プレート支持部22を示す平面図であり、図2では、スキンプレート21については後述の桁25の位置における断面(回転軸J1を含む面における断面)を示している。図2に示すように、2つのプレート支持部22は、回転軸J1の方向に離れて設けられ、2つの開口側面911の近傍に配置される。扉体2では、左岸側および右岸側のそれぞれに、プレート支持部22が設けられる。
【0024】
図1および図2に示すように、各プレート支持部22は、支承部23と、複数の脚柱24とを備える。支承部23は、扉体2の回転部であり、典型的には、図1に示すように、トラニオンハブ231と、トラニオンピン232とを備える。トラニオンピン232は、ダムの堤体(例えば、開口側面911)に固定される。トラニオンハブ231は、円筒部材であり、ラジアル軸受を介してトラニオンピン232に嵌め込まれる。トラニオンハブ231は、トラニオンピン232により回転軸J1を中心として回転可能に支持される。回転軸J1は、トラニオンピン232の中心に一致する。支承部23では、トラニオンハブ231に対してスラスト軸受がさらに設けられてもよい。支承部23の設計によっては、トラニオンハブ231が堤体に固定され、トラニオンピン232が、トラニオンハブ231により回転可能に支持されてもよい。すなわち、支承部23における回転体は、トラニオンハブ231およびトラニオンピン232のいずれであってもよい。
【0025】
複数の脚柱24は、支承部23の回転体(ここでは、トラニオンハブ231)からスキンプレート21に向かって延びる長尺部材である。典型的には、各プレート支持部22は、2本の脚柱24を有する。当該2本の脚柱24は、鋭角を成して支承部23の回転体に固定される。各脚柱24は、例えばH形鋼やI形鋼等である。スキンプレート21において支承部23側の面には、2本の桁25が設けられる。各桁25は、回転軸J1に略平行な長尺部材である。当該2本の脚柱24において、支承部23とは反対側の端部は、2本の桁25にそれぞれ固定される。扉体2では、スキンプレート21と支承部23とが、桁25および脚柱24により接続される。扉体2の設計によっては、脚柱24がスキンプレート21に直接接続されてもよい。
【0026】
各プレート支持部22には、滑車(シーブ)26がさらに設けられる。滑車26は、扉体2と共に移動(回転)する動滑車である。図1の例では、滑車26は、下側の桁25の近傍に配置される。滑車26の個数や位置は、適宜変更されてよい。扉体2では、各プレート支持部22における2本の脚柱24の間や、スキンプレート21の支承部23側の面等に、補強部材が適宜設けられてよい。
【0027】
スキンプレート21において各開口側面911と対向する側部211は、開口側面911と略平行な面を有する。当該側部211には、水密ゴム(図示省略)が設けられる。当該側部211は、戸当りである開口側面911と水密ゴムを介して接触する。スキンプレート21の各側部211には、開口側面911上を転がるサイドローラ(図示省略)が設けられることが好ましい。これにより、扉体2が回転軸J1を中心として滑らかに回転可能となる。スキンプレート21では、下端部213にも水密ゴムが設けられる。図1中に実線にて示す状態(以下、「全閉状態」という。)では、当該下端部213は、戸当りである開口部91の底面912と水密ゴムを介して接触する。なお、ラジアルゲート10がダムの中腹に設けられる場合には、スキンプレート21の上端部にも水密ゴムが設けられる。
【0028】
開閉装置3は、例えば、ワイヤロープウィンチ式であり、扉体2を回転させて扉体2の開閉(開口部91の開閉)を行う。開閉装置3は、例えば、駆動部31と、2本の金属製のワイヤロープ36とを備える。駆動部31は、2つのドラム311を有する。2つのドラム311は、2つの開口側面911の上方にそれぞれ配置される。後述するように、各ドラム311には、ワイヤロープ36の一部が巻かれる。ラジアルゲート10では、左岸側および右岸側のそれぞれに、ドラム311およびワイヤロープ36が設けられる。図1では、1つのドラム311および1つのワイヤロープ36のみを図示している。ドラム311およびワイヤロープ36の個数は任意に変更されてよい。
【0029】
2つのドラム311は、回転軸J1の方向に延びるシャフト(図示省略)に対してギア等を介して接続される。当該シャフトは、減速機等を介して電動機に接続される。駆動部31では、電動機がシャフトを回転させることにより、2つのドラム311が同じ回転方向に回転する。駆動部31では、ドラム311の回転方向を正転および逆転で切り替えることが可能である。
【0030】
各ドラム311には、連結媒体であるワイヤロープ36の一端が固定されるとともに、ワイヤロープ36の一部が巻かれている。各ワイヤロープ36においてドラム311に巻かれていない部分は、プレート支持部22の滑車26に掛けられる。ワイヤロープ36の他端は、ドラム311の近傍において後述の荷重測定部46により保持される。荷重測定部46は堤体に対して固定される。ラジアルゲート10では、ワイヤロープ36により扉体2と駆動部31とが連結される。開閉装置3では、ワイヤロープ36以外のロープや、チェーン等の他の索状部材が、連結媒体として用いられてもよい。
【0031】
開閉装置3では、ドラム311が正転することにより、ワイヤロープ36がドラム311に巻き取られ、図1中の扉体2が回転軸J1を中心として時計回りに回転する。これにより、図1中に二点鎖線にて示すように、スキンプレート21が開口部91の底面912から離れる方向に移動する(すなわち、上昇する)。また、ドラム311が逆転することにより、ワイヤロープ36がドラム311から送り出され、扉体2が回転軸J1を中心として反時計回りに回転する。これにより、スキンプレート21が開口部91の底面912に近づく方向に移動する(すなわち、下降する)。このようにして、開口部91において扉体2が開閉される。
【0032】
図1のラジアルゲート10は、荷重測定部46と、角度計47と、水位計11と、開度計12とをさらに備える。荷重測定部46および角度計47は、後述の異常検出装置40(図3参照)に含まれる構成である。既述のように、荷重測定部46は、ワイヤロープ36に連結される。荷重測定部46は、例えばロードセル等を有し、ワイヤロープ36にかかる荷重(ここでは、張力)を荷重評価値として取得する。荷重測定部46は、ロードセル以外を利用して荷重を測定するものであってもよい。図1の例では、各プレート支持部22の滑車26に掛けられたワイヤロープ36に対して、荷重測定部46が連結される。荷重測定部46は、各プレート支持部22に対して個別に設けられる。
【0033】
角度計47は、各プレート支持部22の脚柱24の所定位置に取り付けられる。図1および図2の例では、各プレート支持部22において、上側の脚柱24の支承部23近傍の位置に1つの角度計47が設けられ、当該脚柱24のスキンプレート21近傍の位置にもう1つの角度計47が設けられる。脚柱24において角度計47が取り付けられる支承部23近傍の位置は、例えば、スキンプレート21よりも支承部23に近い位置であり、好ましくは、長手方向の中央よりも支承部23側端部に近い位置である。脚柱24において角度計47が取り付けられるスキンプレート21近傍の位置は、例えば、支承部23よりもスキンプレート21に近い位置であり、好ましくは、長手方向の中央よりもスキンプレート21側端部に近い位置である。
【0034】
各角度計47は、取付位置における脚柱24の角度を脚柱角度として取得する。脚柱角度は、所定の基準面に対する角度である。当該基準面は、典型的には、水平面であるが、例えば、全閉状態の脚柱24における角度計47の取付面等、他の平面であってもよい。角度計47としては、内部に保持される液体の液面の傾斜を利用するものや、加速度センサを有するもの等、様々な角度センサが利用可能である。角度計47は、各プレート支持部22における複数の脚柱24に取り付けられてもよい。
【0035】
水位計11は、例えばフロート式水位計であり、水面に浮かべられたフロートの位置を検出することにより、ラジアルゲート10の設置位置における水位(すなわち、スキンプレート21と接触する水の水位)を測定する。本実施の形態では、水位は、ダムの水底から水面までの高さである。水位計11は、フロートを用いることなく水位を測定する、音波式、超音波式または圧力式水位計等であってもよい。開度計12は、例えば扉体2に別途取り付けられたワイヤを利用して扉体2の開度を検出する。図1の例では、扉体2の開度は、開口部91の底面912(正確には、水密ゴムの接触位置)からスキンプレート21の下端までの高さ(上下方向の距離)である。開度計12は、各種センサ等を利用して扉体2の開度を検出するものであってもよい。
【0036】
図3は、異常検出装置40の構成を示すブロック図である。異常検出装置40は、ラジアルゲート10における異常を検出するものであり、主として支承部23の異常を検出する。異常検出装置40は、荷重測定部46と、角度計47と、判定部41とを備える。既述のように、荷重測定部46は、ワイヤロープ36にかかる荷重を示す荷重評価値を取得する。また、角度計47は、所定位置における脚柱角度を取得する。判定部41は、ラジアルゲート10における異常の有無を判定する。判定部41の機能は、コンピュータ4のCPU等が、所定のプログラムに従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)実現される。判定部41の機能は専用の電気回路により実現されてもよく、部分的に専用の電気回路が用いられてもよい。本実施の形態では、左岸側および右岸側のそれぞれに荷重測定部46および角度計47が設けられるため、図3では、判定部41の左側および右側のそれぞれに荷重測定部46および角度計47をブロックにて示している。
【0037】
図4は、異常検出装置40がラジアルゲート10の異常を検出する処理の流れを示す図である。水門システム1では、例えば、ラジアルゲート10の運転、すなわち、扉体2の移動(スキンプレート21の上昇または下降)を行う際に、図4の異常検出処理が行われる。ここでは、図1中に実線にて示す全閉状態の扉体2が、二点鎖線にて示す位置へと移動(上昇)するものとするが、スキンプレート21の下端部213が開口部91の底面912から離れた状態において、扉体2を上昇または下降する場合も同様である(後述の第2の実施の形態において同様)。
【0038】
異常検出処理では、まず、荷重測定部46によるワイヤロープ36の荷重評価値の取得が開始される(ステップS11)。また、角度計47による脚柱24の脚柱角度の取得が開始される(ステップS12)。荷重評価値および脚柱角度は、およそ連続的に(厳密には、微小な時間間隔にて繰返し)取得される。荷重評価値および脚柱角度は、判定部41に入力される。荷重評価値の取得、および、脚柱角度の取得のいずれが先に開始されてもよく、同時に開始されてもよい。後述の荷重評価値および脚柱角度の取得の終了において同様である。本処理例では、各プレート支持部22における一方の角度計47のみが利用され、他方の角度計47は利用されない。本処理例で利用される角度計47は、支承部23近傍の角度計47、および、スキンプレート21近傍の角度計47のいずれであってもよい。また、両角度計47の測定値の平均値等が、荷重評価値として用いられてもよい。以下の説明では、一方のプレート支持部22の荷重測定部46および角度計47により取得される測定値(荷重評価値および脚柱角度)に注目するが、他方のプレート支持部22の荷重測定部46および角度計47により取得される測定値についても同様の処理が行われる。
【0039】
ここで、ラジアルゲート10に異常がない状態(以下、「正常状態」という。)における荷重評価値および脚柱角度の変化について説明する。図5は、正常状態における荷重評価値および脚柱角度の変化を示す図である。図5中の縦軸は、荷重評価値および脚柱角度の大きさを示し、横軸は時間を示す(後述の図7において同様)。図5では、荷重評価値の変化を線L11にて示し、脚柱角度の変化を線L12にて示す。図6は、正常状態における脚柱24の曲げを模式的に示す図である。図6では、全閉状態の扉体2におけるスキンプレート21および脚柱24を実線にて表し、後述の始動時の扉体2におけるスキンプレート21および脚柱24を太い二点鎖線にて示している(後述の図8において同様)。
【0040】
水門システム1では、図5中の時刻t0において、図1の駆動部31による扉体2に対する力の付与が実質的に開始される。ワイヤロープ36の緩みがない場合、ワイヤロープ36の巻き取りの開始時が時刻t0である。ワイヤロープ36の緩みがある場合、ドラム311の駆動開始後、ワイヤロープ36の緩みがなくなった時が時刻t0である(以下同様)。ワイヤロープ36の荷重評価値は、時刻t0から時間の経過とともに漸次大きくなる。時刻t0直後では、静止摩擦力の影響によりトラニオンハブ231はトラニオンピン232に対して回転しないが、脚柱24に曲げが生じることにより(図6中に太い二点鎖線にて示す脚柱24参照)、脚柱角度は僅かに大きくなる。なお、荷重評価値および脚柱角度は、必ずしも線形に増加する必要はなく、時刻t0近傍において、線L11,L12が直線である必要はない(以下同様)。
【0041】
その後、時刻t11において荷重評価値が値V11に到達すると、トラニオンハブ231が回転を開始する、すなわち、扉体2が始動する。時刻t11は、トラニオンハブ231とトラニオンピン232との間に最大静止摩擦力が働く瞬間である。時刻t11以降では、脚柱角度が、時刻t11以前よりも大きな傾きにて時間の経過とともに漸次大きくなる。これに対し、トラニオンハブ231とトラニオンピン232との間における動摩擦力は、最大静止摩擦力よりも小さく、略一定であるため、荷重評価値は、値V11よりも低い値V12にて略一定となる。スキンプレート21が設定された開度(高さ)まで到達すると、ドラム311によるワイヤロープ36の巻き取りが停止され、扉体2が停止する。
【0042】
次に、ラジアルゲート10において、支承部23に異常がある状態における荷重評価値および脚柱角度の変化について説明する。最初の異常の例は、支承部23の異常として、トラニオンハブ231とトラニオンピン232との固着異常、および、両者間の動摩擦力が全可動範囲において大きくなる摺動異常が発生しているものである。ラジアルゲート10では、必ずしも固着異常および摺動異常が併発しているとは限らない。図7は、固着異常および摺動異常の状態における荷重評価値および脚柱角度の変化を示す図である。図7では、固着異常および摺動異常の状態における荷重評価値の変化を実線L21にて示し、脚柱角度の変化を実線L22にて示す。また、正常状態における荷重評価値の変化を破線L11にて示し、脚柱角度の変化を破線L12にて示す。図8は、固着異常の状態における脚柱24の曲げを模式的に示す図である。
【0043】
固着異常の状態でも、正常状態と同様に、ワイヤロープ36の荷重評価値は、時刻t0から時間の経過とともに漸次大きくなるが、正常状態において扉体2が始動した値V11に到達しても、扉体2は始動しない。このとき、脚柱角度は、脚柱24に曲げが生じることにより僅かに大きくなる。その後、時刻t21において荷重評価値が値V21に到達すると、扉体2が始動する。時刻t21は、扉体2の始動時であり、正常状態の時刻t11と同様に、トラニオンハブ231とトラニオンピン232との間に最大静止摩擦力が働く瞬間である。固着異常では、始動時の荷重評価値の値V21は、正常状態における始動時の値V11よりも大きいため、固着異常の状態における始動時の脚柱24の曲げ(図8中に太い二点鎖線にて示す脚柱24参照)は、正常状態における始動時の脚柱24の曲げ(図6中に太い二点鎖線にて示す脚柱24参照)よりも大きくなる。
【0044】
時刻t21以降では、脚柱角度が、時刻t21以前よりも大きな傾きにて時間の経過とともに漸次大きくなる。また、荷重評価値は、値V21よりも低い値V22にて略一定となる。摺動異常では、扉体2の始動時以降から扉体2の停止までの期間、すなわち、扉体2の移動中の荷重評価値の値V22は、正常状態における扉体2の移動中の値V12よりも大きくなる。摺動異常の状態における扉体2の移動中の脚柱24の曲げも、正常状態における扉体2の移動中の脚柱24の曲げよりも大きくなる。
【0045】
次の異常の例は、脚柱24が特定の角度となる際に、トラニオンハブ231とトラニオンピン232との間の機械抵抗が大きくなる特定角度異常が発生しているものである。図9は、特定角度異常の状態における荷重評価値と脚柱角度との関係を示す図である。図9中の縦軸は、荷重評価値を示し、横軸は脚柱角度を示す。図9では、特定角度異常の状態における荷重評価値と脚柱角度との関係を実線L31にて示し、固着異常および摺動不良の状態における荷重評価値と脚柱角度との関係についても破線L32にて示している。
【0046】
図9に示す特定角度異常の例では、扉体2の始動時の荷重評価値の値は、正常状態における始動時の値V11と略同じであり、始動直後の荷重評価値の値も、正常状態における扉体2の移動中の値V12と略同じである。扉体2の移動中に、脚柱角度が角度A31近傍となると、荷重評価値が値V12よりもある程度大きくなり、脚柱角度が角度A31から離れると、荷重評価値が値V12と略同じとなる。特定角度異常では、脚柱角度が角度A31近傍となる際の脚柱24の曲げが、一時的に大きくなる。
【0047】
図4の異常検出処理では、荷重評価値と脚柱角度との関係に基づいて、判定部41により支承部23における異常の有無が判定される(ステップS13)。具体的に、固着異常の有無の判定では、図7中の脚柱角度の変化を示す実線L22において、脚柱角度が急激に変化する時刻t21が特定される。時刻t21は、例えば、脚柱角度の変化量(傾き)の絶対値が所定値以上となる時であり、扉体2の始動時である。続いて、扉体2の始動時における荷重評価値(図7の例では、値V21)が判定閾値と比較され、判定閾値以上である場合には、支承部23に固着異常が発生していると判定される。
【0048】
支承部23における異常が検出されると、例えば、コンピュータ4のディスプレイ等に、異常が発生している旨を示す表示が行われる。他の種類の異常の検出時も同様である。異常の発生を示す報知は、ライトの点灯や、ブザーの鳴動、電子メール等を用いた情報通信端末への通知等により行われてもよい。扉体2の始動時における荷重評価値が判定閾値未満である場合には、支承部23に固着異常が発生していないと判定され、異常の発生を示す報知は行われない。
【0049】
上記判定閾値としては、例えば、正常状態における始動時の荷重評価値の平均値に、標準偏差の2倍または3倍の値を足した値が設定される。また、支承部23における摩擦力は、スキンプレート21に作用する水圧の影響を受けるとともに、ワイヤロープ36の張力である荷重評価値は扉体2の開度の影響を受ける。したがって、現在の水位や扉体2の開度を用いて判定閾値が補正されてもよい。一例では、水位が高い場合、判定閾値は大きくなり、水位が低い場合、判定閾値は小さくなる。また、扉体2の開度が大きい場合、判定閾値は小さくなり、開度が小さい場合、判定閾値は大きくなる。後述の摺動異常の有無の判定に利用される判定閾値、および、特定角度異常の有無の判定に利用される判定閾値についても、同様に、現在の水位や扉体2の開度を用いて補正されてよい。判定部41における異常の有無の判定では、荷重評価値と判定閾値との比較以外に、任意の統計的手法が用いられてよい。他の種類の異常の判定において同様である。
【0050】
また、固着異常の有無は、経時的な観点から判定されてもよい。例えば、扉体2の始動時における荷重評価値が、ラジアルゲート10の運転毎に判定部41において記憶される。始動時の荷重評価値には、当該運転の日時も関連付けられる。これにより、図10中に実線L41にて示すように、始動時の荷重評価値の経時変化が得られる。判定部41では、例えば、現在の時刻から所定時間(例えば、数週間)前までの、始動時の荷重評価値と時間との関係を示す近似曲線が生成される。続いて、近似曲線から推定される現在の始動時の荷重評価値(推定値)に対して所定値を足した値が、判定閾値T4として設定される。そして、現在の始動時の荷重評価値(実測値)が判定閾値T4以上である場合には、急激に荷重評価値が上昇しており、支承部23に突発的な固着異常が発生していると判定される。
【0051】
現在の始動時の荷重評価値が判定閾値T4未満である場合には(図10中の破線L42参照)、支承部23に固着異常が発生していないと判定され、異常の発生を示す報知は行われない。異常の有無の判定では、始動時の荷重評価値の経時変化に基づく他の手法が採用されてもよい。また、上述の近似曲線から異常の発生が予測されてもよく、始動時の荷重評価値の経時変化に対する機械学習等により異常の発生が予測されてもよい(後述の荷重評価値の代表値の経時変化において同様)。
【0052】
摺動異常の有無の判定では、例えば、固着異常の有無の判定と同様に、図7中の脚柱角度の変化を示す実線L22において、扉体2の始動時(時刻t21)が特定される。続いて、扉体2の始動時以降から扉体2の停止までの期間、すなわち、扉体2の移動中における荷重評価値の代表値(以下、単に「荷重評価値の代表値」ともいう。)が求められる。荷重評価値の代表値は、例えば、当該期間の全体または一部における荷重評価値の平均値または中央値等である。荷重評価値の代表値は判定閾値と比較され、判定閾値以上である場合には、支承部23に摺動異常が発生していると判定される。
【0053】
摺動異常の有無も、固着異常の有無と同様に、経時的な観点から判定されてもよい。例えば、扉体2の移動中における荷重評価値の代表値が、ラジアルゲート10の運転毎に判定部41において記憶される。荷重評価値の代表値には、当該運転の日時も関連付けられる。判定部41では、例えば、現在の時刻から所定時間(例えば、数週間)前までの、荷重評価値の代表値と時間との関係を示す近似曲線が生成される。続いて、近似曲線から推定される現在の荷重評価値の代表値(推定値)に対して所定値を足した値が、判定閾値として設定される。そして、現在の荷重評価値の代表値(実測値)が判定閾値以上である場合には、急激に荷重評価値の代表値が上昇しており、支承部23に突発的な摺動異常が発生していると判定される。
【0054】
特定角度異常の有無の判定では、例えば、図9中の荷重評価値と脚柱角度との関係を示す実線L31において、扉体2の始動時以降から停止までの期間(扉体2の移動中)における荷重評価値の代表値および最大値が求められる。続いて、当該最大値と代表値との差の絶対値が求められ、当該差の絶対値が判定閾値と比較される。当該差の絶対値が判定閾値以上である、すなわち、扉体2の移動中において荷重評価値に大きな変動が生じている場合には、支承部23に特定角度異常が発生していると判定される。特定角度異常が検出された場合には、当該最大値が得られた脚柱角度(図9の例では、角度A31)が特定され、異常の発生と共にオペレータ等に報知されることが好ましい。荷重評価値の変動は、最大値と代表値との差以外の値を用いて評価されてもよい。
【0055】
異常検出装置40では、扉体2が設定された開度まで到達すると、荷重測定部46による荷重評価値の取得、および、角度計47による脚柱角度の取得が終了される(ステップS14,S15)。これにより、異常検出装置40における異常検出処理が完了する。
【0056】
以上に説明したように、異常検出装置40は、ワイヤロープ36にかかる荷重を示す値を荷重評価値として取得する荷重測定部46と、脚柱24の所定位置の角度を脚柱角度として取得する角度計47と、ラジアルゲート10の運転の際に、荷重評価値と脚柱角度との関係に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する判定部41とを備える。異常検出装置40では、荷重評価値および脚柱角度を用いて、支承部23における異常を適切に検出することができる。また、ラジアルゲート10および異常検出装置40を含む水門システム1では、ラジアルゲート10に異常が発生した場合でも迅速に対処することができ、安定した運用を実現することができる。
【0057】
好ましくは、判定部41が、脚柱角度の変化から扉体2の始動時を特定し、始動時における荷重評価値に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する。これにより、支承部23の固着異常を精度よく検出することができる。また、判定部41が、ラジアルゲート10の運転毎に扉体2の始動時における荷重評価値を記憶し、始動時における荷重評価値の経時変化に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する。これにより、支承部23の突発的な固着異常を精度よく検出することができる。
【0058】
好ましくは、判定部41が、扉体2の移動中における荷重評価値の代表値に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する。これにより、支承部23の摺動異常を精度よく検出することができる。また、判定部41が、ラジアルゲート10の運転毎に扉体2の移動中における荷重評価値の代表値を記憶し、荷重評価値の代表値の経時変化に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する。これにより、支承部23の突発的な摺動異常を精度よく検出することができる。
【0059】
好ましくは、判定部41が、脚柱角度の変化から扉体2の始動時を特定し、扉体2の移動中における荷重評価値の変動に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する。これにより、支承部23の特定角度異常を精度よく検出することができる。
【0060】
扉体2において左岸側および右岸側のそれぞれにワイヤロープ36、支承部23および脚柱24が設けられている場合に、好ましい異常検出装置40では、左岸側のワイヤロープ36における荷重評価値が一の荷重測定部46により取得され、右岸側のワイヤロープ36における荷重評価値が他の荷重測定部46により取得される。また、左岸側の脚柱24における脚柱角度が一の角度計47により取得され、右岸側の脚柱24における脚柱角度が他の角度計47により取得される。そして、判定部41では、左岸側の支承部23、および、右岸側の支承部23に対して個別に異常の有無が判定される。
【0061】
このような異常検出装置40では、支承部23の固着原因が左岸側および右岸側のどちらにあるかをより精度よく特定することができる。異常検出装置40では、左岸側と右岸側との間で、始動時における荷重評価値の差異が大きい場合に、その旨がオペレータに報知されてもよい(扉体2の移動中における荷重評価値の代表値についても同様)。これにより、オペレータにおいて、片岸側の支承部23への異物噛み込み等、突発性の異常の原因把握に役立てることが可能となる。なお、異常検出装置40の設計によっては、左岸側および右岸側の一方のみに荷重測定部46および角度計47が設けられてもよい。
【0062】
判定部41では、左岸側における始動時の荷重評価値と、右岸側における始動時の荷重評価値との差が所定値以上となる場合に、固着異常が検出されてもよい。同様に、左岸側における荷重評価値の代表値(扉体2の移動中の荷重評価値の代表値)と、右岸側における荷重評価値の代表値との差が所定値以上となる場合に、摺動異常が検出されてもよい。
【0063】
異常検出装置40では、開閉装置3の駆動部31にかかる負荷が、荷重評価値として測定されてもよい。一例では、駆動部31に接続される荷重測定部(電流計)が、駆動部31の電動機に流れる電流値を荷重評価値として測定する。このような荷重評価値も、ワイヤロープ36にかかる荷重を実質的に示す値である。また、駆動部31における駆動源は、直線運動を行う油圧シリンダや、回転運動を行う油圧モータ等であってもよい。この場合、荷重測定部では、例えば、油圧シリンダ内の圧力、油圧シリンダもしくは油圧モータに送られる作動油の圧力、または、作動油の圧送に利用される電動機の電流値等が、荷重評価値として測定される。以上のように、荷重評価値は、扉体2と駆動部31との間の連結媒体にかかる荷重を実質的に示す様々な種類の値であってよい。なお、駆動部31の駆動源が油圧シリンダである場合、扉体2に接続されるシリンダロッドが連結媒体となる。
【0064】
既述のように、支承部23において固着異常が発生している場合、扉体2の始動時における脚柱24の曲げが、正常状態の始動時における脚柱24の曲げよりも大きくなる。同様に、摺動異常が発生している場合、扉体2の移動中における脚柱24の曲げが、正常状態の扉体2の移動中における脚柱24の曲げよりも大きくなる。また、特定角度異常が発生している場合、脚柱角度が特定の角度近傍となる際の脚柱24の曲げが、一時的に大きくなる。このように、支承部23に異常があり、トラニオンハブ231とトラニオンピン232との間の滑りが悪い場合、脚柱24の曲げが大きくなり、脚柱24のひずみの絶対値も大きくなる。
【0065】
したがって、異常検出装置40では、ワイヤロープ36にかかる荷重に代えて、脚柱24のひずみを荷重評価値として取得することによっても、上記と同様の処理を行うことが可能である。すなわち、脚柱24の所定位置に取り付けられたひずみゲージを、荷重測定部として用いることが可能である。脚柱24におけるひずみゲージの取付位置は、特に限定されないが、脚柱24の曲げが大きくなりやすい支承部23近傍が好ましい。脚柱24のひずみを荷重評価値として取得する場合も、判定部41では、扉体2の始動時における荷重評価値、扉体2の移動中における荷重評価値の代表値、または、扉体2の移動中における荷重評価値の変動に基づいて、支承部23における異常の有無が判定可能である。ひずみゲージは、複数の脚柱24に取り付けられてよく、1つの脚柱24のみに取り付けられてもよい。測長器やカメラ等を利用して脚柱24のひずみを測定する構成が、荷重測定部として用いられてもよい。
【0066】
また、脚柱24のひずみの大きさは、脚柱24にかかる荷重に依存する。したがって、異常検出装置40では、荷重評価値として、脚柱24にかかる荷重を示す様々な値が利用可能であるといえる。以上のように、異常検出装置40における荷重測定部は、連結媒体(ワイヤロープ36等)または脚柱24にかかる荷重を示す値を取得するものであればよい。
【0067】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る異常検出装置40aの構成を示すブロック図である。本実施の形態では、図1の水門システム1において、各プレート支持部22の一の脚柱24に設けられる2つの角度計47の両方が利用され、荷重測定部46は利用されない。以下の説明では、当該脚柱24の支承部23近傍に配置される角度計47を「第1角度計47」といい、当該脚柱24のスキンプレート21近傍に配置される角度計47を「第2角度計47」という。
【0068】
第1角度計47では、支承部23の近傍における脚柱24の角度が第1脚柱角度として取得される。第2角度計47では、スキンプレート21の近傍における脚柱24の角度が第2脚柱角度として取得される。水門システム1では、左岸側および右岸側のそれぞれに第1角度計47および第2角度計47が設けられるため、図11では、判定部41の左側および右側のそれぞれに第1角度計47および第2角度計47をブロックにて示している。
【0069】
図12は、異常検出装置40aがラジアルゲート10の異常を検出する処理の流れを示す図である。第1の実施の形態と同様に、扉体2の移動を行う際に、図12の異常検出処理が行われる。異常検出処理では、まず、第1角度計47による第1脚柱角度の取得が開始される(ステップS21)。また、第2角度計47による第2脚柱角度の取得が開始される(ステップS22)。第1脚柱角度および第2脚柱角度は、およそ連続的に(厳密には、微小な時間間隔にて繰返し)取得される。第1脚柱角度および第2脚柱角度は、判定部41に入力される。第1脚柱角度の取得、および、第2脚柱角度の取得のいずれが先に開始されてもよく、同時に開始されてもよい。後述の第1脚柱角度および第2脚柱角度の取得の終了において同様である。以下の説明では、一方のプレート支持部22の第1角度計47および第2角度計47により取得される測定値(第1脚柱角度および第2脚柱角度)に注目するが、他方のプレート支持部22の第1角度計47および第2角度計47により取得される測定値についても同様の処理が行われる。
【0070】
ここで、ラジアルゲート10に異常がない状態(すなわち、正常状態)における第1脚柱角度および第2脚柱角度の変化について説明する。図13は、正常状態における第1脚柱角度および第2脚柱角度の変化を示す図である。図13中の縦軸は、第1脚柱角度および第2脚柱角度の大きさを示し、横軸は時間を示す(後述の図14において同様)。図13では、第1脚柱角度の変化を線L51にて示し、第2脚柱角度の変化を線L52にて示す。
【0071】
第1の実施の形態と同様に、時刻t0直後では、静止摩擦力の影響により図1のトラニオンハブ231はトラニオンピン232に対して回転しないが、脚柱24に曲げが生じることにより、第1脚柱角度および第2脚柱角度は僅かに大きくなる。このとき、脚柱24は、支承部23を固定端とする片持ち梁として捉えることができ(図6および図8参照)、支承部23近傍の第1脚柱角度と、スキンプレート21近傍の第2脚柱角度とが相違する。実際には、時間の経過に伴い脚柱24の曲げが大きくなるに従って、第1脚柱角度と第2脚柱角度との差の絶対値(以下、「脚柱評価値」という。)が漸次大きくなる。図13では、時刻t0近傍において、第2脚柱角度の変化を示す線L52の傾きが、第1脚柱角度の変化を示す線L51の傾きよりも大きくなる。なお、第1脚柱角度および第2脚柱角度は、必ずしも線形に増加する必要はなく、時刻t0近傍において、線L51,L52が直線である必要はない(以下同様)。
【0072】
その後、時刻t51において、トラニオンハブ231が回転を開始する、すなわち、扉体2が始動する。このとき、第1脚柱角度と第2脚柱角度との差を示す脚柱評価値は、値V51である。時刻t51以降では、トラニオンハブ231とトラニオンピン232との間における動摩擦力、および、脚柱24の曲げが略一定であるため、脚柱評価値も略一定の値V52となる。時刻t51以降では、第1脚柱角度および第2脚柱角度が、時刻t51以前よりも大きな傾きにて時間の経過とともに漸次大きくなる。スキンプレート21が設定された開度まで到達すると、扉体2が停止する。なお、図13の例では、時刻t51以降における脚柱評価値の値V52が、時刻t51における脚柱評価値の値V51と略同じであるが、値V52は、値V51よりも小さくてもよい(後述の図14および図15において同様)。
【0073】
次に、ラジアルゲート10において、支承部23に異常がある状態における第1脚柱角度および第2脚柱角度の変化について説明する。図14は、固着異常および摺動異常の状態における第1脚柱角度および第2脚柱角度の変化を示す図である。図14では、第1脚柱角度の変化を線L61にて示し、第2脚柱角度の変化を線L62にて示す。
【0074】
固着異常の状態においても、正常状態と同様に、第1脚柱角度および第2脚柱角度は、時刻t0から時間の経過とともに漸次大きくなるが、正常状態において扉体2が始動した時刻t51になっても、扉体2は始動しない。その後、時刻t61になると、扉体2が始動する。固着異常では、扉体2の始動時の脚柱24の曲げが、正常状態における始動時の脚柱24の曲げよりも大きいため、固着異常の状態における始動時の脚柱評価値の値V61は、正常状態における始動時の値V51(図13参照)よりも大きくなる。
【0075】
時刻t61以降では、第1脚柱角度および第2脚柱角度が、時刻t61以前よりも大きな傾きにて時間の経過とともに漸次大きくなる。また、脚柱評価値は、値V62にて略一定となる。摺動異常では、扉体2の始動時以降から扉体2の停止までの期間、すなわち、扉体2の移動中の脚柱24の曲げが、正常状態における扉体2の移動中の脚柱24の曲げよりも大きい。したがって、摺動異常の状態における扉体2の移動中の脚柱評価値の値V62は、正常状態における扉体2の移動中の値V52(図13参照)よりも大きくなる。
【0076】
図15は、特定角度異常の状態における脚柱評価値と第1脚柱角度との関係を示す図である。図15中の縦軸は、脚柱評価値を示し、横軸は第1脚柱角度を示す。図15では、特定角度異常の状態における脚柱評価値と第1脚柱角度との関係を実線L71にて示し、固着異常および摺動不良の状態における脚柱評価値と第1脚柱角度との関係についても破線L72にて示している。
【0077】
図15に示す特定角度異常の例では、扉体2の始動時の脚柱評価値の値は、正常状態における始動時の値と略同じであり、始動直後の脚柱評価値の値も、正常状態における扉体2の移動中の値V52と略同じである。特定角度異常では、第1脚柱角度が特定の角度A71近傍となる際のトラニオンハブ231とトラニオンピン232との間の機械抵抗が大きくなっており、脚柱24の曲げも、一時的に大きくなる。したがって、扉体2の移動中に、第1脚柱角度が角度A71近傍となると、脚柱評価値が値V52よりもある程度大きくなり、第1脚柱角度が角度A71から離れると、脚柱評価値が値V52と略同じとなる。
【0078】
図12の異常検出処理では、脚柱評価値に基づいて、判定部41により支承部23における異常の有無が判定される(ステップS23)。具体的に、固着異常の有無の判定では、図14中の第1脚柱角度の変化を示す実線L61において、第1脚柱角度が急激に変化する時刻t61が特定される。時刻t61は、例えば、第1脚柱角度の変化量(傾き)の絶対値が所定値以上となる時であり、扉体2の始動時である。扉体2の始動時は、第2脚柱角度を用いて特定されてもよい。続いて、扉体2の始動時における脚柱評価値(図14の例では、値V61)が判定閾値と比較され、判定閾値以上である場合には、支承部23に固着異常が発生していると判定される。この場合、異常の発生を示す報知が行われる。
【0079】
扉体2の始動時における脚柱評価値の値が判定閾値未満である場合には、支承部23に固着異常が発生していないと判定され、異常の発生を示す報知は行われない。第1の実施の形態と同様に、現在の水位や扉体2の開度を用いて判定閾値が補正されてもよい。また、判定部41では、第1脚柱角度に関わらず、脚柱評価値が判定閾値を超えた場合に、固着異常が発生していると判定されてもよい。
【0080】
また、固着異常の有無は、経時的な観点から判定されてもよい。例えば、扉体2の始動時における脚柱評価値が、ラジアルゲート10の運転毎に判定部41において記憶される。始動時の脚柱評価値には、当該運転の日時も関連付けられる。これにより、図16中に実線L81にて示すように、始動時の脚柱評価値の経時変化が得られる。判定部41では、例えば、現在の時刻から所定時間(例えば、数週間)前までの、始動時の脚柱評価値と時間との関係を示す近似曲線が生成される。続いて、近似曲線から推定される現在の始動時の脚柱評価値(推定値)に対して所定値を足した値が、判定閾値T8として設定される。そして、現在の始動時の脚柱評価値(実測値)が判定閾値T8以上である場合には、急激に脚柱評価値が上昇しており、支承部23に突発的な固着異常が発生していると判定される。
【0081】
現在の始動時の脚柱評価値が判定閾値T8未満である場合には(図16中の破線L82参照)、支承部23に固着異常が発生していないと判定される。異常の有無の判定では、始動時の脚柱評価値の経時変化に基づく他の手法が採用されてよい。また、上述の近似曲線から異常の発生が予測されてもよく、始動時の脚柱評価値の経時変化に対する機械学習等により異常の発生が予測されてもよい(後述の脚柱評価値の代表値の経時変化において同様)。
【0082】
摺動異常の有無の判定では、例えば、固着異常の有無の判定と同様に、図14中の第1脚柱角度の変化を示す実線L61において、扉体2の始動時(時刻t61)が特定される。続いて、扉体2の始動時以降から扉体2の停止までの期間、すなわち、扉体2の移動中における脚柱評価値の代表値(以下、単に「脚柱評価値の代表値」ともいう。)が求められる。脚柱評価値の代表値は、例えば、当該期間の全体または一部における脚柱評価値の平均値または中央値等である。脚柱評価値の代表値は判定閾値と比較され、判定閾値以上である場合には、支承部23に摺動異常が発生していると判定される。
【0083】
摺動異常の有無も、固着異常の有無と同様に、経時的な観点から判定されてもよい。例えば、扉体2の移動中における脚柱評価値の代表値が、ラジアルゲート10の運転毎に判定部41において記憶される。脚柱評価値の代表値には、当該運転の日時も関連付けられる。判定部41では、例えば、現在の時刻から所定時間(例えば、数週間)前までの、脚柱評価値の代表値と時間との関係を示す近似曲線が生成される。続いて、近似曲線から推定される現在の脚柱評価値の代表値(推定値)に対して所定値を足した値が、判定閾値として設定される。そして、現在の脚柱評価値の代表値(実測値)が判定閾値以上である場合には、急激に脚柱評価値の代表値が上昇しており、支承部23に突発的な摺動異常が発生していると判定される。
【0084】
特定角度異常の有無の判定では、例えば、図15中の脚柱評価値と第1脚柱角度との関係を示す実線L71において、扉体2の始動時以降から停止までの期間(扉体2の移動中)における脚柱評価値の代表値および最大値が求められる。続いて、当該最大値と代表値との差の絶対値が求められ、当該差の絶対値が判定閾値と比較される。当該差の絶対値が判定閾値以上である、すなわち、扉体2の移動中において脚柱評価値に大きな変動が生じている場合には、支承部23に特定角度異常が発生していると判定される。特定角度異常が検出された場合には、当該最大値が得られた第1脚柱角度(図15の例では角度A71)が特定され、異常の発生と共にオペレータ等に報知されることが好ましい。脚柱評価値の変動は、最大値と代表値との差以外の値を用いて評価されてもよい。
【0085】
異常検出装置40aでは、スキンプレート21が設定された開度まで到達すると、第1角度計47による第1脚柱角度の取得、および、第2角度計47による第2脚柱角度の取得が終了される(ステップS24,S25)。これにより、異常検出装置40aにおける異常検出処理が完了する。上記処理例では、第1脚柱角度と第2脚柱角度との差を示す値を脚柱評価値として用いたが、第1脚柱角度と第2脚柱角度との比を示す値(例えば、(第2脚柱角度/第1脚柱角度))を脚柱評価値として用いる場合も、同様の処理が可能である。
【0086】
以上に説明したように、異常検出装置40aは、支承部23の近傍における脚柱24の角度を第1脚柱角度として取得する第1角度計47と、スキンプレート21の近傍における脚柱24の角度を第2脚柱角度として取得する第2角度計47と、ラジアルゲート10の運転の際に、第1脚柱角度と第2脚柱角度との差または比を示す脚柱評価値に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する判定部41とを備える。異常検出装置40aでは、脚柱評価値を用いて、支承部23における異常を適切に検出することができる。また、ラジアルゲート10および異常検出装置40aを含む水門システム1では、ラジアルゲート10に異常が発生した場合でも迅速に対処することができ、安定した運用を実現することができる。
【0087】
好ましくは、判定部41が、第1脚柱角度または第2脚柱角度の変化から扉体2の始動時を特定し、始動時における脚柱評価値に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する。これにより、支承部23の固着異常を精度よく検出することができる。また、判定部41が、ラジアルゲート10の運転毎に扉体2の始動時における脚柱評価値を記憶し、始動時における脚柱評価値の経時変化に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する。これにより、支承部23の突発的な固着異常を精度よく検出することができる。
【0088】
好ましくは、判定部41が、扉体2の移動中における脚柱評価値の代表値に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する。これにより、支承部23の摺動異常を精度よく検出することができる。また、判定部41が、ラジアルゲート10の運転毎に扉体2の移動中における脚柱評価値の代表値を記憶し、脚柱評価値の代表値の経時変化に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する。これにより、支承部23の突発的な摺動異常を精度よく検出することができる。
【0089】
好ましくは、判定部41が、第1脚柱角度または第2脚柱角度の変化から扉体2の始動時を特定し、扉体2の移動中における脚柱評価値の変動に基づいて、支承部23における異常の有無を判定する。これにより、支承部23の特定角度異常を精度よく検出することができる。
【0090】
扉体2において左岸側および右岸側のそれぞれに支承部23および脚柱24が設けられている場合に、好ましい異常検出装置40aでは、左岸側の脚柱24における第1脚柱角度および第2脚柱角度が、一の第1角度計47および一の第2角度計47によりそれぞれ取得される。また、右岸側の脚柱24における第1脚柱角度および第2脚柱角度が他の第1角度計47および他の第2角度計47によりそれぞれ取得される。そして、判定部41では、左岸側の支承部23、および、右岸側の支承部23に対して個別に異常の有無が判定される。
【0091】
このような異常検出装置40aでは、支承部23の固着原因が左岸側および右岸側のどちらにあるかをより精度よく特定することができる。異常検出装置40aでは、左岸側と右岸側との間で、始動時における脚柱評価値の差異が大きい場合に、その旨がオペレータに報知されてもよい(扉体2の移動中における脚柱評価値の代表値についても同様)。これにより、オペレータにおいて、片岸側の支承部23への異物噛み込み等、突発性の異常の原因把握に役立てることが可能となる。なお、異常検出装置40aの設計によっては、左岸側および右岸側の一方のみに第1角度計47および第2角度計47が設けられてもよい。また、左岸側、右岸側のそれぞれに第1角度計47のみ、あるいは第2角度計47のみが設けられ、左右岸の差異により異常判定を行ってもよい。
【0092】
判定部41では、左岸側における始動時の脚柱評価値と、右岸側における始動時の脚柱評価値との差が所定値以上となる場合に、固着異常が検出されてもよい。同様に、左岸側における脚柱評価値の代表値(扉体2の移動中の脚柱評価値の代表値)と、右岸側における脚柱評価値の代表値との差が所定値以上となる場合に、摺動異常が検出されてもよい。
【0093】
上記異常検出装置40,40aおよび異常検出方法では様々な変形が可能である。
【0094】
異常検出装置40では、ひずみゲージを用いて脚柱24のひずみを取得する場合に、左岸側の脚柱24のひずみと、右岸側の脚柱24のひずみとを比較することにより異常を検出することも可能である。例えば、左岸側および右岸側のそれぞれにおいて、ラジアルゲート10の運転毎に、脚柱24のひずみの絶対値の最大値(以下、「最大ひずみ」という。)が判定部41において記憶される。典型的には、最大ひずみは、扉体2の始動時のひずみである。これにより、図17に示すように、脚柱24の最大ひずみの経時変化が得られる。図17では、左岸側の最大ひずみの経時変化を一点鎖線L91にて示し、右岸側の最大ひずみの経時変化を実線L92にて示している。判定部41では、左岸側の脚柱24の最大ひずみと、右岸側の脚柱24の最大ひずみとの差の絶対値が求められ、当該絶対値が所定の閾値以上となる場合に、支承部23に異常(ここでは、固着異常)が発生していると判定される。上記と同様に、最大ひずみの発生時以降におけるひずみの代表値を用いることにより、支承部23の摺動異常の有無が判定されてもよい。
【0095】
異常検出装置40aでは、一の脚柱24に対して、第1角度計47および第2角度計47に加えて、他の角度計またはひずみゲージ等のセンサが設けられ、当該センサを用いて扉体2の始動時が特定されてもよい。
【0096】
ラジアルゲート10は、支承部23側からスキンプレート21側へと水が流れる、引張りラジアルゲートであってもよい。
【0097】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0098】
2 扉体
10 ラジアルゲート
21 スキンプレート
23 支承部
24 脚柱
31 駆動部
36 ワイヤロープ
40,40a 異常検出装置
41 判定部
46 荷重測定部
47 角度計
S11~S15,S21~S25 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17