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特許7525442NSCLCをはじめとする肺がんおよびその他のがんに対する免疫療法において使用するための新規ペプチドおよびペプチド組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】NSCLCをはじめとする肺がんおよびその他のがんに対する免疫療法において使用するための新規ペプチドおよびペプチド組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240723BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240723BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240723BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240723BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240723BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240723BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240723BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240723BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240723BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240723BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALN20240723BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K16/28
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/02 C
C07K14/725
C12N5/0783
A61K38/08
A61K35/17
A61K39/00 H
A61K48/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 105
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12P21/08
C12Q1/6886 Z
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2021087277
(22)【出願日】2021-05-24
(62)【分割の表示】P 2017548292の分割
【原出願日】2016-04-22
(65)【公開番号】P2021168652
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】1507030.3
(32)【優先日】2015-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】62/152,258
(32)【優先日】2015-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100174252
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 豪
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸 篤史
(72)【発明者】
【氏名】メア,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインシェンク,トニ
(72)【発明者】
【氏名】スホール,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】シン,ハープリート
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ライボルド,ユリア
(72)【発明者】
【氏名】ソング,コレット
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-539901(JP,A)
【文献】特表2003-530067(JP,A)
【文献】特表2013-521789(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0021597(US,A1)
【文献】国際公開第2010/131748(WO,A1)
【文献】Mol. Cell. Biol.,1988年,Vol. 8, No. 4,pp. 1385-1397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号60に示されるアミノ酸配列からなるペプチド又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項2】
主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子に結合する能力を有し、前記MHCに結合すると、CD8陽性T細胞によって認識されることができる、請求項1に記載のペプチド又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項3】
前記ペプチドが、修飾され、及び/又は非ペプチド結合を含む、請求項1又は2に記載のペプチド又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項4】
前記ペプチドが、HLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸に融合した融合タンパク質の一部である、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド、又はMHC分子と結合した請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドを特異的に認識する、抗体、可溶性若しくは膜結合抗体、又はこれらの抗原結合抗体フラグメント。
【請求項6】
モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、又はこれらの抗原結合抗体フラグメントである請求項5に記載の抗体又は抗原結合抗体フラグメント。
【請求項7】
免疫刺激ドメイン又は毒素を保有する請求項5に記載の抗体又は抗原結合抗体フラグメント。
【請求項8】
HLAリガンドを特異的に認識し、前記リガンドが請求項1若しくは2に記載のペプチド、又はMHC分子と結合した請求項1若しくは2に記載のペプチドである、T細胞受容体又は抗原結合T細胞受容体フラグメント。
【請求項9】
可溶性又は膜結合T細胞受容体である、請求項8に記載のT細胞受容体又は抗原結合T細胞受容体フラグメント。
【請求項10】
前記T細胞受容体が可溶性分子として提供され、さらなるエフェクター機能を保有する、請求項8に記載のT細胞受容体又は抗原結合T細胞受容体フラグメント。
【請求項11】
前記T細胞受容体が可溶性分子として提供され、さらなるエフェクター機能を保有し、前記さらなるエフェクター機能が、免疫刺激ドメイン若しくは毒素である、請求項8に記載のT細胞受容体又は抗原結合T細胞受容体フラグメント。
【請求項12】
請求項1若しくは2に記載のペプチド、又は、請求項8~11のいずれか一項に記載のT細胞受容体若しくは抗原結合T細胞受容体フラグメントをエンコードする核酸。
【請求項13】
請求項1若しくは2に記載のペプチド、又は、請求項8~11のいずれか一項に記載のT細胞受容体若しくは抗原結合T細胞受容体フラグメントをエンコードし、異種プロモーター配列と結合する、核酸。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の核酸を含有する、発現ベクター。
【請求項15】
請求項1若しくは2に記載のペプチド、請求項12若しくは13に記載の核酸、請求項5~7のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合抗体フラグメントをエンコードする核酸、又は、請求項14に記載の発現ベクターを含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項16】
抗原提示細胞、樹状細胞、T細胞、又はNK細胞である、請求項15に記載の組換え宿主細胞。
【請求項17】
医療において使用するための請求項1若しくは2に記載のペプチド若しくは薬学的に許容可能なその塩、請求項5~7のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合抗体フラグメント、請求項8~11のいずれか一項に記載のT細胞受容体若しくは抗原結合T細胞受容体フラグメント、請求項12若しくは13に記載の核酸、請求項14に記載の発現ベクター、又は請求項15若しくは16に記載の組換え宿主細胞。
【請求項18】
請求項1若しくは2に記載のペプチド、又は、請求項8~11のいずれか一項に記載のT細胞受容体若しくは抗原結合T細胞受容体フラグメントを製造する方法であって、請求項1若しくは2に記載のペプチドを提示する、請求項12若しくは13に記載の核酸を発現する、又は請求項14に記載の発現ベクターを有する組換え宿主細胞を培養するステップと、前記ペプチド、又は、前記T細胞受容体若しくは前記抗原結合T細胞受容体フラグメントを前記宿主細胞又はその培養液から単離するステップとを含んでなる、方法。
【請求項19】
T細胞を適切な抗原提示細胞の表面に、または抗原提示細胞を模倣する人工コンストラクトの表面に発現される抗原負荷ヒトクラスIMHC分子に、前記T細胞を抗原特異的様式で活性化するのに十分な時間にわたり、生体外で接触させるステップを含んでなり、前記抗原が、請求項1又は2に記載のペプチドである、活性化Tリンパ球を製造するインビトロ法。
【請求項20】
請求項1又は2に記載のペプチドを提示する細胞を特異的に認識する、活性化Tリンパ球。
【請求項21】
細胞表面のMHC分子によって提示された請求項1又は2に記載のペプチドを特異的に認識するT細胞受容体を含有する活性化Tリンパ球。
【請求項22】
細胞表面のMHC分子によって提示された請求項1又は2に記載のペプチドを特異的に認識するT細胞受容体を含有し、細胞傷害性Tリンパ球である、活性化Tリンパ球。
【請求項23】
患者のがん細胞を死滅させる医薬品であって、前記がん細胞が請求項1又は2に記載のペプチドを提示し、前記医薬品が、請求項20~22のいずれか一項に記載の活性化Tリンパ球を含む医薬品。
【請求項24】
前記がんが、肺がん、脳がん、乳がん、結腸直腸がん、食道がん、腎がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、メラノーマ、メルケル細胞がん、白血病(AML、CLL)、及び配列番号60に示すアミノ酸配列からなるペプチドを提示する腫瘍の群から選択される、請求項23に記載の医薬品。
【請求項25】
請求項1~4いずれか一項に記載のペプチド、請求項5~7いずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合抗体フラグメント、請求項8~11いずれか一項に記載のT細胞受容体若しくは抗原結合T細胞受容体フラグメント、請求項12若しくは13に記載の核酸、請求項14に記載の発現ベクター、請求項15若しくは16に記載の組換え宿主細胞、又は、請求項20~22いずれか一項に記載の活性化Tリンパ球を含有する、がんを治療及び/又は診断する薬剤。
【請求項26】
前記がんが、肺がん、脳がん、乳がん、結腸直腸がん、食道がん、腎がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、メラノーマ、メルケル細胞がん、白血病(AML、CLL)、及び配列番号60に示すアミノ酸配列からなるペプチドを提示する腫瘍の群から選択される、請求項25に記載の薬剤。
【請求項27】
がんを治療及び/又は診断する薬剤の製造における、請求項1~4いずれか一項に記載のペプチド、請求項5~7いずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合抗体フラグメント、請求項8~11いずれか一項に記載のT細胞受容体若しくは抗原結合T細胞受容体フラグメント、請求項12若しくは13に記載の核酸、請求項14に記載の発現ベクター、請求項15若しくは16に記載の組換え宿主細胞、又は、請求項20~22いずれか一項に記載の活性化Tリンパ球の使用。
【請求項28】
前記がんが、肺がん、脳がん、乳がん、結腸直腸がん、食道がん、腎がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、メラノーマ、メルケル細胞がん、白血病(AML、CLL)、及び配列番号60に示すアミノ酸配列からなるペプチドを提示する腫瘍の群から選択される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
(a)請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド、請求項5~7いずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合抗体フラグメント、請求項8~11いずれか一項に記載のT細胞受容体若しくは抗原結合T細胞受容体フラグメント、請求項12若しくは13に記載の核酸、請求項14に記載の発現ベクター、請求項15若しくは16に記載の組換え宿主細胞、又は、請求項20~22いずれか一項に記載の活性化Tリンパ球を含有する医薬組成物を、溶液中に又は凍結乾燥形態で含んでなる容器を含有し、前記(b)~(e)から選ばれる1又は複数をさらに含有する、又は、含有しない、キット。
(b)希釈剤又は凍結乾燥製剤のための再構成溶液を含有する第2の容器;
(c)配列番号24、配列番号1~23、配列番号25~59、及び配列番号61~配列番号162からなる群から選択される少なくとももう1つのペプチド;
(d)(i)前記溶液の使用、または(ii)凍結乾燥製剤の再構成および/または使用のための取扱説明書;
(e)(iii)緩衝液、(iv)希釈剤、(v)フィルター、(vi)針、(vii)シリンジ、若しくは(viii)アジュバントの1つ若しくは複数
【請求項30】
a)請求項1~4いずれか一項に記載のペプチド;
b)a)に記載のペプチドおよび/またはa)に記載のペプチドとMHCとの複合体を特異的に認識するT細胞受容体又は抗原結合T細胞受容体フラグメント;
c)a)に記載のペプチドと、HLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端のアミノ酸1~80とを含んでなる融合タンパク質;
d)a)~c)のいずれかをコードする核酸、または前記核酸を含んでなる発現ベクター;
e)d)の発現ベクターを含んでなる宿主細胞;
f)抗原特異的様式でT細胞を活性化するのに十分な時間にわたり、T細胞を適切な抗原提示細胞の表面に発現されるa)に記載のペプチドと生体外で接触させるステップを含んでなる方法によって得られ、前記ペプチドを提示する細胞を特異的に認識する活性化Tリンパ球;
g)a)に記載のペプチド、ペプチド-MHC複合体中のa)に記載のペプチド、および/または細胞によって提示されるa)に記載のペプチドを特異的に認識する抗体、または可溶性T細胞受容体;並びに、
h)標識されたa)、b)、及びg)のいずれかに記載のペプチド、抗体、又はT細胞受容体;
からなる群から選択される、少なくとも1つの活性成分と、薬学的に許容できる担体、及び/又は、薬学的に許容可能な賦形剤と、を含んでなる医薬組成物。
【請求項31】
さらにアジュバントを含有する請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
ワクチンに包含される請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項33】
細胞療法用薬剤である請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記アジュバントがインターロイキンである請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記アジュバントがインターロイキンであり、前記インターロイキンが、IL-2及び/又はIL-15である請求項31に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法において使用するためのペプチド、タンパク質、核酸、および細胞に関する。特に、本発明は、がんの免疫療法に関する。本発明は、単独のまたはその他の腫瘍関連ペプチドと組み合わされた、腫瘍関連T細胞ペプチドエピトープにさらに関し、それは、例えば、抗腫瘍免疫応答を刺激し、または生体外でT細胞を刺激して患者に移入する、ワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。ペプチドは、主要組織適合性複合体(MHC)の分子と結合し、またはペプチドそれ自体が、抗体、可溶性T細胞受容体、およびその他の結合分子の標的にもなり得る。
【0002】
本発明は、ヒト腫瘍細胞のHLAクラスIおよびHLAクラスII分子に由来する、いくつかの新規ペプチド配列およびそれらの変異型に関し、それらは抗腫瘍免疫応答を引き起こすためのワクチン組成物中で、または薬理的/免疫学的活性化合物および細胞の開発のための標的として、使用され得る。
【背景技術】
【0003】
肺がんは、男性と女性の双方で、がん関連死の最大要因である。世界的に、肺がんは、発生率と死亡率の双方の観点から、最も一般的ながんである。2012年には、肺がんに起因する新たな症例が180万を超えて(全がん発生率の13%)、160万人の死亡(全がん死亡率の20%)があった。肺がんは、87ヶ国の男性および26ヶ国の女性のがん死亡の主要原因である。新規診断された症例の3分の1超が、中国で出現した。最大率は、北米、欧州、および東アジアにある(World Cancer Report,2014)。
【0004】
1987年以来、毎年、より多くの女性が、乳がんよりも肺がんのために死亡している。死亡率は、男性では1991年から2003年にかけて、毎年、顕著に約1.9%低下し続けている。女性の肺がん死亡率は、数十年間にわたって継続的に増大した後、平坦域に近づいている。肺がん死亡率におけるこれらの傾向は、過去30年間の喫煙率の低下を反映する。
【0005】
米国国立がん研究所(NCI)によれば、2013年には、米国において推定230,000件の新規肺がん症例と、肺がんに起因する160,000人の死亡が予測されている。
【0006】
歴史的に、小細胞肺がんは、腺がん、扁平上皮がん、および大細胞がんの組織型を含めた非小細胞肺がん(NSCLC)とは、区別されている。しかし、過去10年間に、腺がんと扁平上皮がんの間の区別が、遺伝学における大きな違い、そしてまた特定の治療法に対する応答の理由から、ますます認識されるようになってきた。そのため、肺がんは、肺腫瘍形成を駆動して維持する特定の遺伝子変異を前提とした、分子サブタイプに従って分類されることが多くなってきた(Travis et al.,2013)。
【0007】
予後は、一般に不良である。肺がんがある全ての人々の内、10~15%が診断後5年間生存する。肺がん患者の低生存率は、80%の患者が転移性疾患があると診断され、過半数の患者が遠隔転移を有することに、少なくともある程度起因する(SEER Stat facts,2014)。診察時に、NSCLC症例の30~40%は第IV期であり、SCLCの60%は第IV期である。
【0008】
肺がんの1年相対生存率は、1975~1979年の35%から2010年の44%にわずかに増大したが、これは外科的手法および併用療法の進歩に主に起因する。しかし、全ての病期を合わせた5年生存率は17%に過ぎない。疾患が依然として局在性の時点で検出された症例では、生存率は54%である;しかし、この初期段階では、肺がんの16%のみが診断される。(SEER Stat facts,2014)。
【0009】
治療選択肢は、がん型(小細胞または非小細胞)および病期によって決定され、外科手術、放射線療法、化学療法、およびベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))およびエルロチニブ(TARCEVA(登録商標))などの標的生物学的療法が挙げられる。限局性がんでは、手術が、通常は一般に選択される治療法である。最近の研究は、早期の非小細胞肺がんの生存期間が、手術に続く化学療法によって改善されることを示唆する。疾患は、通常は、発見時までに広がっているので、放射線療法および化学療法が頻繁に使用され、時に手術と組み合せて使用される。単独のまたは放射線と組み合わされた化学療法が、小細胞肺がんのために一般に選択される通常の治療法であり;このレジメンでは、患者の大部分が寛解を経験し、それはいくつかの症例手術(in some cases surgery)では長期間持続する(S3-Leitlinie Lungenkarzinom,2011)。
【0010】
進行した肺がんはまた、従来の化学療法に対しても抵抗性である。しかし、近年の進歩により、組織学および遺伝学に依存する治療法において、刺激的な進展がもたらされている。精査のレベルは、KRASのコドン12および13変異の間だけでなく、コドン12における特定の変異によって決まる、異なるアミノ酸置換の間の変異もまた識別するように設計された、アジュバント化学療法の試験によって例示される(Shepherd et al.,2013)。
【0011】
NSCLCに対する治療の選択肢を拡大するために、異なる免疫療法アプローチが試験されており、あるいはなおも研究中である。L-BLP25またはMAGEA3を用いたワクチン接種は、NSCLC患者においてワクチン媒介延命効果を実証できなかった一方で、同種異系細胞株由来ワクチンは、有望な臨床試験結果を示した。さらに、上皮成長因子受容体であるガングリオシドと、いくつかのその他の抗原とを標的とするさらなるワクチン接種治験が現在進行中である。患者の抗腫瘍T細胞応答を高める代案のストラテジーは、特異的抗体によって阻害T細胞受容体またはそれらのリガンドをブロックすることからなる。NSCLCにおける、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、MPDL3280A、およびMEDI-4736をはじめとする、これらの抗体のいくつかの治療的可能性が、現在臨床試験で評価されている(Reinmuth et al.,2015)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
がんの治療に伴う重度の副作用および費用を考慮すると、がん全般、そして特にNSCLCをはじめとする肺がんの治療に使用し得る要素を同定する必要がある。がんのより良い診断、予後の評価、および治療成功の予測につながる、がん全般、特に肺がんのためのバイオマーカーに相当する要素を同定する必要性もまたある。
【0013】
がんの免疫療法は、がん細胞を特異的に標的化しながら副作用を最小化する選択肢に相当する。がん免疫療法は、腫瘍関連抗原の存在を利用する。
【0014】
腫瘍関連抗原(TAA)の現行の分類は、次の主要群を含んでなる:
a)がん精巣抗原:T細胞によって認識され得る、これまでに同定された最初のTAAは、このクラスに属し、元々はがん精巣(CT)抗原と称されたが、それは、そのメンバーが組織学的に異なるヒト腫瘍において発現し、正常組織では、精巣の精母細胞/精原細胞のみに存在し、時として胎盤に存在するためであった。精巣の細胞は、クラスIおよびII HLA分子を発現しないので、これらの抗原は正常組織のT細胞によって認識され得ず、したがって免疫学的に腫瘍特異的と見なされる。CT抗原の周知の例は、MAGEファミリーメンバーおよびNY-ESO-1である。
b)分化抗原:これらのTAAは、腫瘍と、それから腫瘍が生じる正常組織との間で共有される。既知の分化抗原のほとんどは、メラノーマおよび正常メラノサイトに見られる。これらのメラノサイト系関連タンパク質の多くは、メラニン生合成に関与し、したがって腫瘍特異的でないが、それでもなおがん免疫療法のために広く利用されている。例としては、メラノーマに対するチロシナーゼとMelan-A/MART-1、または前立腺がんに対するPSAが挙げられるが、これに限定されるものではない。
c)過剰発現TAA:広範に発現されるTAAをエンコードする遺伝子は、組織学的に異なる型の腫瘍において検出され、多数の正常組織においても、概してより低い発現レベルで検出されている。正常組織によってプロセスされて潜在的に提示され得るエピトープの多くは、T細胞認識の閾値レベル未満であり得る一方で、腫瘍細胞におけるそれらの過剰発現は、先に確立された免疫寛容の破壊による抗がん応答を始動し得る。このクラスのTAAの顕著な例は、Her-2/neu、サバイビン、テロメラーゼまたはWT1である。
d)腫瘍特異的抗原:これらのユニークなTAAは、正常な遺伝子(β-カテニン、CDK4など)の変異から生じる。これらの分子変化のいくつかは、腫瘍性形質転換および/または進行と関連する。腫瘍特異的抗原は、通常、正常組織に対する自己免疫反応のリスクなしに、強力な免疫応答を誘導できる。他方、これらのTAAは、ほとんどの場合、その上でそれらが同定されたまさにその腫瘍のみと関係があり、通常は、多くの個々の腫瘍間で共有されない。腫瘍特異的(関連)イソ型があるタンパク質では、ペプチドの腫瘍特異性(または関連性)はまた、ペプチドが腫瘍(関連)エクソンに由来する場合に生じてもよい。
e)異常な翻訳後修飾から生じるTAA:このようなTAAは、腫瘍において特異的でなく過剰発現もされないタンパク質から生じてもよいが、それでもなお、腫瘍において主に活性である翻訳後プロセスによって、腫瘍関連になる。このクラスの例は、腫瘍にMUC1のような新規エピトープをもたらす改変グリコシル化パターン、または腫瘍特異的であってもなくてもよい分解中のタンパク質スプライシングのような事象から生じる。
f)オンコウイルスタンパク質:これらのTAAはウイルスタンパク質であり、それらは発がん過程において重要な役割を果たしてもよく、外来性である(ヒト由来でない)ため、それらはT細胞応答を誘起し得る。このようなタンパク質の例は、子宮頸がんにおいて発現されるヒト乳頭腫16型ウイルスタンパク質E6およびE7である。
【0015】
T細胞ベースの免疫療法は、主要組織適合性複合体(MHC)の分子によって提示される、腫瘍関連または腫瘍特異的タンパク質由来ペプチドエピトープを標的とする。腫瘍特異的Tリンパ球によって認識される抗原、すなわちそれらのエピトープは、酵素、受容体
、転写因子などの全てのタンパク質クラスに由来する分子であり得て、それはそれぞれの腫瘍細胞において発現されて、同一起源の非改変細胞と比較して、通常、上方制御される。
【0016】
MHC分子には、MHCクラスIおよびMHCクラスIIの2つのクラスがある。MHCクラスI分子はα重鎖およびβ2ミクログロブリンから構成され、MHCクラスII分子はαおよびβ鎖から構成される。それらの三次元立体構造は、ペプチドとの非共有結合相互作用のために使用される、結合溝をもたらす。
【0017】
MHCクラスI分子は、ほとんどの有核細胞上に見られる。それらは、主に内因性タンパク質、欠陥リボソーム産物(DRIP)、およびより大型のペプチドのタンパク質切断から得られる、ペプチドを提示する。しかし、エンドソームコンパートメントまたは外因性起源に由来するペプチドもまた、MHCクラスI分子上に頻繁に見られる。この非古典的様式のクラスI提示は、文献中で交差提示と称される(Brossart and Bevan,1997;Rock et al.,1990)。MHCクラスII分子は、主にプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)上に見られ、例えば、エンドサイトーシス中にAPCに取り込まれて引き続きプロセシングされる、外因性または膜貫通タンパク質のペプチドを主に提示する。
【0018】
ペプチドとMHCクラスIの複合体が、適切なT細胞受容体(TCR)を有するCD8陽性T細胞によって認識される一方で、ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを有するCD4陽性ヘルパーT細胞によって認識される。その結果、TCR、ペプチド、およびMHCは、化学量論的に1:1:1の量で存在することが良く知られている。
【0019】
CD4陽性ヘルパーT細胞は、CD8陽性細胞傷害性T細胞による、効果的な応答の誘導と維持において重要な役割を果たす。腫瘍関連抗原(TAA)に由来するCD4陽性T細胞エピトープの同定は、抗腫瘍免疫応答を始動させる医薬品の開発に非常に重要である(Gnjatic et al.,2003)。腫瘍部位では、Tヘルパー細胞が、細胞毒性T細胞(CTL)親和的サイトカイン環境を維持して(Mortara et al.,2006)、例えば、CTL、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、および顆粒球などのエフェクター細胞を引きつける(Hwang et al.,2007)。
【0020】
炎症不在下では、MHCクラスII分子の発現は、免疫系細胞、特に、例えば、単球、単球由来細胞、マクロファージ、樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に主に限定される。がん患者においては、腫瘍細胞が、MHCクラスII分子を発現することが判明している(Dengjel et al.,2006)。
【0021】
伸長された(より長い)本発明のペプチドは、MHCクラスII活性エピトープとして作用し得る。
【0022】
MHCクラスIIエピトープによって活性化されたTヘルパー細胞は、抗腫瘍免疫におけるCTLのエフェクター機能を統合する上で、重要な役割を果たす。TH1型のTヘルパー細胞応答を始動するTヘルパー細胞エピトープは、それらの細胞表面に腫瘍関連ペプチド/MHC複合体を提示する腫瘍細胞に向けられた細胞傷害機能をはじめとする、CD8陽性キラーT細胞のエフェクター機能を支持する。このようにして腫瘍関連Tヘルパー細胞ペプチドエピトープは、単独で、またはその他の腫瘍関連ペプチドとの組み合わせで、抗腫瘍免疫応答を刺激するワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。
【0023】
例えば、マウスなどの哺乳類動物モデルにおいて、CD8陽性Tリンパ球の不在下であっても、インターフェロンγ(IFN-γ)の分泌による血管新生阻害を通じて腫瘍発現を阻害するには、CD4陽性T細胞で十分であることが示された(Beatty and Paterson,2001;Mumberg et al.,1999)。CD4 T細胞が、直接抗腫瘍エフェクターであるという証拠がある(Braumuller et al.,2013;Tran et al.,2014)。
【0024】
HLAクラスII分子の構成的発現は、通常、免疫細胞に限定されるので、原発性腫瘍からクラスIIペプチドを直接単離する可能性があり得るとは、これまで考えられなかった。しかしDengjel et al.は、いくつかのMHCクラスIIエピトープを腫瘍から、直接同定することに成功した(国際公開第2007/028574号パンフレット、欧州特許第1760088B1号明細書)。
【0025】
CD8およびCD4依存性の双方のタイプの応答は、抗腫瘍効果に共同して相乗的に寄与するので、CD8+T細胞(リガンド:MHCクラスI分子+ペプチドエピトープ)、またはCD4陽性Tヘルパー細胞(リガンド:MHCクラスII分子+ペプチドエピトープ)のどちらかによって認識される、腫瘍関連抗原の同定および特性解析は、腫瘍ワクチンの開発にとって重要である。
【0026】
MHCクラスIペプチドが、細胞性免疫応答を始動(惹起)するためには、それはまた、MHC分子に結合しなくてはならない。この過程は、MHC分子の対立遺伝子と、ペプチドのアミノ酸配列の特定の多形性とに依存する。MHCクラスI結合ペプチドは、通常は8~12アミノ酸残基長であり、通常は、MHC分子の対応する結合溝と相互作用するそれらの配列中に2つの保存残基(「アンカー」)を含有する。このようにして、各MHC対立遺伝子は、どのペプチドが結合溝と特異的に結合し得るかを決定する、「結合モチーフ」を有する。
【0027】
MHCクラスI依存免疫反応では、ペプチドは腫瘍細胞によって発現される特定のMHCクラスI分子に結合できるだけでなく、それらはまた、引き続いて特異的T細胞受容体(TCR)を有するT細胞によって認識されなくてはならない。
【0028】
タンパク質が、Tリンパ球によって腫瘍特異的または腫瘍関連抗原として認識され、治療で利用されるためには、特定の必要条件が満たされなくてはならない。抗原は、主に腫瘍細胞によって発現され、健常組織によって発現されず、または比較的少量発現されるべきである。好ましい実施形態では、ペプチドは、腫瘍細胞によって、健常組織と比較して過剰提示されるべきである。それぞれの抗原は、ある種の腫瘍に存在するだけでなく、高い濃度(すなわち、それぞれのペプチド細胞あたりのコピー数)で存在することもさらに望ましい。腫瘍特異的および腫瘍関連抗原は、例えば、細胞周期調節またはアポトーシス抑制における機能のために、正常細胞から腫瘍細胞への形質転換に直接関与するタンパク質に由来することが多い。さらに、形質転換の直接原因となるタンパク質の下流標的が、上方制御されてもよく、(und)したがって間接的に腫瘍関連であってもよい。このような間接的腫瘍関連抗原もまた、ワクチン接種アプローチの標的であってもよい(Singh-Jasuja et al.,2004)。このようなペプチド(「免疫原性ペプチド」)が、腫瘍関連抗原に由来して、生体外または生体内T細胞応答をもたらすことを確実にするためには、抗原のアミノ酸配列中にエピトープが存在することが必須である。
【0029】
基本的に、MHC分子に結合できるあらゆるペプチドが、T細胞エピトープとして機能してもよい。生体外または生体内T細胞応答誘導のための必要条件は、対応するTCRを有するT細胞の存在、およびこの特定のエピトープに対する免疫寛容の不在である。
【0030】
したがって、TAAは、腫瘍ワクチンをはじめとするが、これに限定されるものではない、T細胞ベースの治療法開発の出発点である。TAAを同定し特性決定する方法は、通常は、患者または健常人から単離され得るT細胞の使用に基づき、またはそれらは、腫瘍および正常組織間の示差的転写プロファイル、または示差的ペプチド発現パターンの生成に基づく。しかし、腫瘍組織またはヒト腫瘍細胞株において過剰発現され、またはこのような組織または細胞株において選択的に発現される遺伝子の同定は、免疫療法においてこれらの遺伝子から転写される抗原の使用に関する、正確な情報を提供しない。これは、これらの抗原のエピトープの個々の亜集団のみが、このような用途に適するためであり、その理由は、対応するTCRがあるT細胞が存在しなくてはならず、この特定のエピトープに対する免疫寛容が不在または最小でなくてはならないからである。したがって本発明の非常に好ましい実施形態では、それに対する機能性および/または増殖性T細胞がある、過剰にまたは選択的に提示されるペプチドのみを選択することが、重要である。このような機能性T細胞は、特異的抗原による刺激時にクローン増殖され得て、エフェクター機能を果たすことができるT細胞と定義される(「エフェクターT細胞」)。
【0031】
本発明による特異的TCR(例えば、可溶性TCR)および抗体またはその他の結合分子(スキャフォールド)によってペプチドMHCを標的化する場合、基礎となるペプチドの免疫原性は二次的である。これらの場合には、提示が決定要因である。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の第1の態様では、本発明は、配列番号1~配列番号110、または配列番号1~配列番号110と少なくとも77%、好ましくは少なくとも88%相同的な(好ましくは少なくとも77%または少なくとも88%同一の)その変異配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドに関し、その中で前記変異体は、MHCと結合し、および/またはT細胞と前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩との交差反応を誘導し、その中で前記ペプチドは、基礎となる完全長ポリペプチドでない。
【0033】
本発明は、配列番号1~配列番号162、好ましくは配列番号1~配列番号110、または配列番号1~配列番号110と少なくとも77%、好ましくは少なくとも88%,相同的な(好ましくは少なくとも77%または少なくとも88%同一の)その変異体からなる群から選択される配列を含んでなる、本発明のペプチドにさらに関し、前記ペプチドまたはその変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~20アミノ酸の全長を有する。
【0034】
続く表は、本発明によるペプチド、それらの各配列番号、およびそれらのペプチドの予測される起源(基礎)遺伝子を示す。表1および表4の全てのペプチドは、HLA-A*02に結合する。表2の全てのペプチドは、HLA-A*24に結合する。表3および表5の全てのペプチドは、HLA-DRに結合する。表4および5のペプチドは、高い誤り率があるまたはアルゴリズムを使用して計算された、ハイスループットスクリーニングの結果としての大きなリスト中で以前開示されているが、これまでがんとは全く関連付けられていなかった。表6、表7、および表8のペプチドは、本発明のその他のペプチドとの組み合わせで有用であってもよい追加的なペプチドである。表9および10のペプチドは、それぞれの基礎ポリペプチドの過剰発現または過剰提示を伴う様々なその他の悪性腫瘍の診断および/または治療においてさらに有用である。
【0035】
表1:本発明によるペプチド
【表1】
【0036】
表2:本発明による追加的ペプチド
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0037】
表3:本発明によるHLA-DRペプチド
【表3】
【0038】
表4:がん関連性が以前知られていない本発明による追加的なペプチド
【表4】
【0039】
表5:がん関連性が以前知られていない本発明による追加的なHLA-DRペプチド
【表5】
【0040】
表6:例えば個別化がん治療で有用なその他のペプチド
【表6-1】
【表6-2】
【0041】
表7:例えば個別化がん治療で有用なその他のペプチド
【表7】
【0042】
表8:例えば個別化がん治療で有用なHLA-DRペプチド
【表8】
【0043】
本発明は、さらに、例えば、脳がん、乳がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、メラノーマ、メルケル細胞がん、白血病(AML、CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、胃食道接合部がん(OSCAR)をはじめとする食道がん、胆嚢がんおよび胆管細胞がん(GBC_CCC)、膀胱がん(UBC)、子宮がん(UEC)などの増殖性疾患の治療において使用するための本発明によるペプチドに一般に関する。
【0044】
特に好ましいのは、配列番号1~配列番号110からなる群から選択される、本発明による単独のまたは組み合わされたペプチドである。より好ましいのは、配列番号1~配列番号14(表1を参照されたい)および配列番号23~配列番号47(表2を参照されたい)からなる群から選択される単独のまたは組み合わされたペプチド、そして肺がん(NSCLCをはじめとする)、脳がん、乳がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、メラノーマ、メルケル細胞がん、白血病(AML、CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、胃食道接合部がん(OSCAR)をはじめとする食道がん、胆嚢がんおよび胆管細胞がん(GBC_CCC)、膀胱がん(UBC)、子宮がん(UEC)、好ましくはNSCLCをはじめとする肺がんの免疫療法におけるそれらの使用である。
【0045】
以下の表9、9-2、および表10および10-2に示されるように、本発明によるペプチドの多くは、その他の腫瘍型上にもまた見られ、したがって、その他の適応症のための免疫療法においても使用され得る。図1および実施例1もまた、参照されたい。
【0046】
【表9-1-1】
【表9-1-2】
【表9-1-3】
【0047】
【表9-2-1】
【表9-2-2】
【0048】
【表10-1-1】
【表10-1-2】
【0049】
【表10-2】
【0050】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、腎臓がんの併用療法のための、配列番号7、14、15、18、94、95、97、98、101、102、105、106、111、112、117、118、120、121、122、123、126、127、128、130、131、132、136、138、139、143、146、147、150、28、29、42、47、50、54、56、59、66、67、および161のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0051】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、脳がんの併用療法のための、配列番号.8、9、15、16、20、94、98、100、103、104、111、114、117、118、120、127、129、132、135、138、139、145、149、150、151、29、36、37、41、45、54、59、70、73、79、80、および82のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0052】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、胃がんの併用療法のための、配列番号2、4、18、94、105、113、114、115、117、120、124、126、128、130、131、132、134、137、138、144、146、149、153、26、31、33、36、41、42、44、49、50、56、58、63、67、77、78、85、159、160、および161のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0053】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、結腸直腸がんの併用療法のための、配列番号2、7、11、13、94、96、98、99、100、111、113、114、115、116、117、118、120、121、122、123、124、125、126、128、129、130、131、132、137、138、139、144、145、146、149、および152のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0054】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、肝臓がんの併用療法のための、配列番号7、8、9、11、15、16、18、19、20、21、94、96、98、99、101、104、111、113、114、115、117、118、119、120、121、126、129、131、132、135、136、138、139、143、149、150、152、26、27、28、29、37、38、39、41、44、46、50、51、52、56、58、59、60、61、62、63、66、67、69、70、71、72、73、75、76、77、79、81、82、84、および161のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0055】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、膵臓がんの併用療法のための、配列番号1、2、3、4、13、18、96、101、103、104、105、112、113、114、115、117、119、120、121、123、124、125、126、128、131、132、133、135、136、137、138、139、143、146、および156のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0056】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、前立腺がんの併用療法のための、配列番号8、10、16、18、114、128、139、143、153、27、37、41、43、53、59、61、67、72、76、78、80、82、および84のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0057】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、白血病(AML、CLL)の併用療法のための、配列番号9、15、96、97、120、および127のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0058】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、乳がんの併用療法のための、配列番号1、3、4、5、7、13、16、18、101、102、105、112、113、115、119、124、126、128、133、145、および156のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0059】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、メルケル細胞がんの併用療法のための、配列番号95、98、100、104、138、149、および151のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0060】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、メラノーマの併用療法のための、配列番号4、5、9、16,19、20、94、98、112、115、117、118、128、130、132、134、138、139、144、146、および148のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0061】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、卵巣がんの併用療法のための、配列番号4、8、9、10、16、18、94、98、99、100、101、102、104、105、111、113、114、115、117、118、120、121、123、124、125、126、128、129、130、131、132、134、137、138、139、142、143、144、148、149、150、および152のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0062】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、食道がんの併用療法のための、配列番号5、9、13、18、19、21、95、102、104、105、113、114、115、119、120、123、124、125、127、129、130、132、133、137、138、139、141、143、144、145、146、149、150、151、153、155、156、および157のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0063】
したがって、本発明の特に好ましい別の態様は、好ましくは、肺がん(NSCLCをはじめとする)併用療法のための、配列番号13、25、113、114、115、120、121、128、159、および161のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
したがって、本発明の別の態様は、好ましくは、肺がん(NSCLCをはじめとする)、脳がん、乳がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、立腺がん、胃がん、メラノーマ、メルケル細胞がん、白血病(AML、CLL)の群から選択される増殖性疾患併用療法のための本発明によるペプチドの使用に関する
【0064】
本発明は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子に結合する能力、または長さ変異体などの伸長形態ではMHCクラスIIに結合する能力を有する、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0065】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは(それぞれ)、配列番号1~配列番号162、好ましくは配列番号1~配列番号110に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる。
【0066】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、修飾されおよび/または非ペプチド結合を含む。
【0067】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸に融合した、または例えば樹状細胞に対して特異的な抗体などの抗体(またはその配列中)に融合した、融合タンパク質の一部である。
【0068】
本発明は、本発明によるペプチドをエンコードする核酸にさらに関する。本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNA、またはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0069】
本発明は、本発明による核酸を発現でき、および/または発現する発現ベクターにさらに関する。
【0070】
本発明は、疾患の治療においてそして医療において、特にがんの治療において使用するための本発明によるペプチド、本発明による核酸または本発明による発現ベクターにさらに関する。
【0071】
本発明は、本発明によるペプチドに特異的に対抗する抗体、または前記本発明によるペプチドとMHCの複合体、およびこれらを製造する方法にさらに関する。
【0072】
本発明は、自己由来または同種異系T細胞に組み込まれた、T細胞受容体(TCR)、特に可溶性TCR(sTCR)、およびクローン化TCR、そしてこれらを製造する方法、ならびに前記TCRを有するまたは前記TCRと交差反応する、NK細胞またはその他の細胞を製造する方法にさらに関する。
【0073】
抗体およびTCRは、本発明によるペプチドの免疫療法用途の追加的な実施形態である。
【0074】
本発明は、前述のような本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。本発明は、抗原提示細胞であり、好ましくは樹状細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。
【0075】
本発明は、本発明による宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、本発明によるペプチドを製造する方法にさらに関する。
【0076】
本発明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞または人工抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に抗原が負荷される、本発明による方法にさらに関する。
【0077】
本発明は、抗原提示細胞が、配列番号1~配列番号110を含有する、好ましくは、配列番号1~配列番号14および配列番号23~配列番号47または変異アミノ酸配列を含有する、前記ペプチドを発現する能力がありまたは発現する、発現ベクターを含んでなる、本発明による方法にさらに関する。
【0078】
本発明は、本発明による方法によって製造される活性化T細胞にさらに関し、前記T細胞は、本発明によるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを発現する細胞を選択的に認識する。
【0079】
本発明は、本発明によって製造されるT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、患者において、本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0080】
本発明は、薬剤としてのまたは薬剤の製造における、記載される任意のペプチド、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、本発明による活性化Tリンパ球、T細胞受容体または抗体またはその他のペプチド-および/またはペプチド-MHC-結合分子の使用にさらに関する。好ましくは、前記薬剤は、がんに対して有効である。
【0081】
好ましくは、前記薬剤は、可溶性TCRまたは抗体に基づく、細胞療法、ワクチンまたはタンパク質である。好ましくは、前記薬剤は、細胞療法であり、例えば、抗CD3抗体またはその一部を含んでなるsTCRなどの可溶性TCRまたは抗体に由来する、ワクチンまたはタンパク質である。
【0082】
本発明は、本発明による使用にさらに関し、前記がん細胞は、肺がん(NSCLCをはじめとする)、脳がん、乳がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、メラノーマ、メルケル細胞がん、白血病(AML、CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、胃食道接合部がん(OSCAR)をはじめとする食道がん、胆嚢がんおよび胆管細胞がん(GBC_CCC)、膀胱がん(UBC)、子宮がん(UEC)、好ましくは肺がん細胞である。
【0083】
本発明は、がん、好ましくは肺がん(NSCLCをはじめとする)の診断において使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本発明によるペプチドをベースとするバイオマーカーにさらに関する。マーカーは、ペプチドそれ自体の過剰提示、または対応遺伝子の過剰発現であり得る。マーカーはまた、好ましくは免疫療法、最も好ましくはバイオマーカーによって同定されるのと同じ標的を標的とする免疫療法である、治療の成功確率を予測するのに、使用されてもよい。例えば、抗体または可溶性TCRを使用して腫瘍切片が染色され、MHCと複合体形成する目的ペプチドの存在が検出され得る。
【0084】
任意選択的に、抗体は、免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する。
【0085】
本発明はまた、がん治療の文脈におけるこれらの新規標的の使用に関する。
【0086】
コラーゲンα-3(VI)鎖タンパク質(COL6A3)-COL6A3は、VI型コラーゲンの3つのα鎖の1つであるα-3鎖をコードする。タンパク質ドメインは、細胞外基質タンパク質に結合することが示されており、これは基質要素の組織化におけるこのコラーゲンの重要性を説明する相互作用である。コラーゲンVIの過剰発現を通じた細胞外マトリックスの再構築は、卵巣がん細胞のシスプラチン耐性に寄与する。コラーゲンVIの存在は、卵巣がん予後因子である腫瘍悪性度と相関した(Sherman-Baust et al.,2003)。COL6A3は、結腸直腸腫瘍(Smith et al.,2009a)、唾液腺がん(Leivo et al.,2005)において過剰発現され、胃がん(Yang et al.,2007)において示差的に発現される。COL6A3は、腫瘍特異的スプライス変異がある7つの遺伝子の1つとして同定された。検証された腫瘍特異的スプライシング変化は高度に一貫しており、正常サンプルとがんサンプル、場合によっては異なる腫瘍段階さえも、明確に分離できるようにする(Thorsen et al.,2008)。
【0087】
溶質輸送体ファミリー6(アミノ酸輸送体)、メンバー14(SLC6A14)-SLC6A14は、溶質輸送体ファミリー6、メンバー14(SLC6A14)をコードする。SLC6A14は、アミノ酸輸送体であり、溶質輸送体ファミリー6のメンバーである。このファミリーのメンバーは、ナトリウムおよび塩化物依存性アミノ酸/神経伝達物質輸送体である。SLC6A14は、中性およびカチオン性アミノ酸を輸送する。輸送体は、正常組織においては低レベルで発現される(Sloan and Mager,1999)。SLC6A14は、子宮頸がん(Gupta et al.,2006)、結腸直腸がん(Gupta et al.,2005)、およびエストロゲン受容体(ER)陽性乳がん(Karunakaran et al.,2011)の組織および細胞株、ならびに肝腫瘍細胞(Fuchs et al.,2004)において、上方制御されることが示された。SLC6A14は、対応する正常組織/細胞において最小限に発現される一方で、がん細胞は、これらのアミノ酸に対する増大した要求を満たすために、SLC6A14を上方制御する。SLC6A14の選択的遮断薬であるα-メチル-DL-トリプトファン(α-MT)は、ER陽性乳がん細胞株においてアミノ酸欠乏を誘導し、アポトーシスを引き起こした(Karunakaran et al.,2011)。
【0088】
二重特異性ホスファターゼ4(DUSP4)-DUSP4遺伝子によってコードされるタンパク質は、二重特異性タンパク質ホスファターゼサブファミリーのメンバーである。ERK1、ERK2、およびJNKを不活性化するDUSP4は、多様な組織において発現され、核に局在する。DUSP4(別名MKP2)は、非悪性乳がんと比較して、悪性乳がんのサンプルにおいて過剰発現されることが報告されている(Wang et al.,2003)。結腸直腸がん患者のマイクロアレイデータセットにおいて、DUSP4発現は、BRAF突然変異腫瘍において最も高い発現を伴って、示差的に発現されることが判明した。さらに、高いDUSP4は、より芳しくない全生存期間と関連していた(De,V et al.,2013)。
【0089】
糖タンパク質(膜貫通)nmb(GPNMB)-遺伝子GPNMBは、I型膜貫通糖タンパク質をコードする。GPNMBは、種々のがん型の大規模パネルで発現されて、腫瘍細胞移動、浸潤、および転移形成を促進することで、主に腫瘍の攻撃性を増大させることが示されている。分子レベルでは、GPNMBがMMP-2、3、および9の発現を増大させ、それ自体はp53によって制御されることが示された(Metz et al.,2005;Metz et al.,2007;Rose et al.,2007;Fiorentini et al.,2014)。高レベルのGPNMBは、SCLC、GBM、およびccRCCにおける全生存期間の短縮とさらに相関する(Qin et al.,2014;Li et al.,2014;Kuan et al.,2006)。
【0090】
ケラチン、II型細胞骨格80(KRT80)KRT80は、ケラチン80(KRT80)をコードする。KRT80は、実質的にあらゆる型の上皮に見られ、進行した組織または細胞分化に関連している。中間径フィラメントを含有するKRT80は、デスモソーム斑に近い細胞縁に位置し、最終分化に入る細胞においてのみ、KRT80が細胞質内分布する(Langbein et al.,2010)。
【0091】
染色体4構造維持(SMC4)SMC4タンパク質は、クロマチン凝縮において役割を果たすコンデンシン複合体のコア構成要素であり、核小体分離、DNA修復、およびクロマチンスキャフォールドの維持とも関連付けられている(Cervantes et al.,2006)。
【0092】
溶質輸送体ファミリー1(グルタミン酸/中性アミノ酸輸送体)、メンバー4(SLC1A4)-SLC1A4は、小型中性アミノ酸のナトリウム依存性交換を媒介するアミノ酸輸送体である((Kanai et al.,2013)で概説される)。SLC1A4は、扁平上皮がんと比較して、食道腺がんによって有意により多く発現されることが記載された(Younes et al.,2000)。前立腺がん細胞におけるSLC1A4の発現は、アンドロゲン療法に応答して増大することが示された(Wang et al.,2013a)。
【0093】
ケラチン5(KRT5)、ケラチン6A(KRT6A)、ケラチン6B(KRT6B)、ケラチン6C(KRT6C)-KRT5、KRT6A、KRT6B、およびKRT6Cは、中間径フィラメントタンパク質である、相同的なケラチンタンパク質である。ケラチンは、その発現パターンが悪性病変の起源組織に関連するので、腫瘍診断薬中でマーカータンパク質として広範に使用される ((Karantza,2011)で概説される)。正常な状況下では、KRT6AおよびKRT6Bは、隔離によって細胞移動を阻害するようであり、したがって移動促進性Srcキナーゼの活性を阻害するこの機序が、がん細胞においても機能するかどうかは調べられていない(Rotty and Coulombe,2012)。NSCLCにおいて、低分化腺がんを扁平上皮がんから区別するいくつかのマーカーの1つとして、KRT5/6染色が提案されている(Zhao et al.,2014B;Xu et al.,2014)。肺神経内分泌腫瘍もまた、KRT5/6に対して陰性である(Zhang et al.,2014)。
【0094】
ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド18(肺および活性化制御(CCL18)-この抗菌遺伝子は、第17染色体のq腕上にクラスター化された、いくつかのCys-Cys(CC)サイトカイン遺伝子の1つである。この遺伝子によってコードされるサイトカインは、未感作T細胞、CD4+およびCD8+T細胞、および非活性化リンパ球に対して走化性活性を示すが、単球または顆粒球に対しては示さない。腫瘍組織および血液の双方におけるCCL18レベルの上方制御が、がんにおいて記載されており、CCL18血清レベルは、いくつかの腫瘍型のバイオマーカーとして提案されている。複数の症例では、進行した腫瘍段階および予後不良との相関が示されている(例えば、胃がん(Wu et al.,2013a)、乳がん(Chen et al.,2011;Narita et al.,2011)、前立腺がん(Chen et al.,2014)、膀胱がん(Urquidi et al.,2012))。CCL18の血清レベルは、健常対照と比較して、NSCLC患者において増大する。さらに、血清レベルの上昇は、腺がんのある患者の生存期間の短縮を予測した(Plones et al.,2012)。CCL18は、NSCLCの同定のために提案された12タンパク質血清バイオマーカーパネルの一部である(Ostroff et al.,2010)。
【0095】
マトリックスメタロペプチダーゼ12(マクロファージエラスターゼ)(MMP12)ヒトメタロエラスターゼ(HME)またはマクロファージメタロエラスターゼ(MME)としてもまた知られているMMP12は、エラスチン分解能力が認められている亜鉛エンドペプチダーゼである。それとは別に、これは、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカンなどのその他のマトリックスタンパク質、およびα-1-アンチトリプシンなどの非マトリックスタンパク質に及ぶ、幅広い基質範囲を有する。喘息、肺気腫、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、MMP12が、肺胞破壊および気道再構築に寄与してもよい(Cataldo et al.,2003;Wallace et al.,2008)。MMP12は、マクロファージ遊走に関与するとされており、プラスミノーゲンからアンギオスタチンを生成し得ることから、血管新生阻害に寄与する(Chakraborti et al.,2003;Chandler et al.,1996;Sang,1998)。その他のメタロプロテイナーゼと同様に、MMP12は、胎芽形成、創傷治癒、および月経周期のような生理学的過程に関与する(Chakraborti et al.,2003;Labied et al.,2009)が、組織破壊の病理過程にもまた関与する。データは、いくつかの症例における少数の患者に基づいているが、MMP12ががんにおいて頻繁に過剰発現されるという十分な証拠が文献にある(Denys et al.,2004;Hagemann et al.,2001;Ma et al.,2009;Vazquez-Ortiz et al.,2005;Ye et al.,2008)。しかし、臨床パラメータおよび予後に対するMMP12過剰発現の影響について、データには議論の余地がある。それは、マトリックス溶出に関与し、したがって転移に関与してもよい一方で、それはまた、血管新生に悪影響を及ぼすアンギオスタチンの生成を通じて、腫瘍成長を阻害し得る(Gorrin-Rivas et al.,2000;Gorrin Rivas et al.,1998;Kim et al.,2004)。肺がんでは、MMP12発現の帰結には、議論の余地がある。上皮細胞におけるMMP12の過剰発現は、炎症誘発性肺再構築で報告されている。MMP12の上方制御は、肺気腫から肺がんへの移行において役割を有ししてもよい(Qu et al.,2009)。動物実験は、ストロマまたはマクロファージによるMMP12発現が、肺腫瘍の成長を抑制することを示唆する(Acuff et al.,2006;Houghton et al.,2006)。しかし、肺腫瘍におけるMMP12の過剰発現が、再発、転移性疾患、および切除術後のより短い再発なし生存期間に相関するという報告もある(Cho et al.,2004;Hofmann et al.,2005)。
【0096】
リソソーム関連膜タンパク質3(LAMP3)-LAMP3は、リソソーム区画内に見られるI型膜貫通タンパク質であり、小さな細胞質ドメインおよび高度にグリコシル化された管腔ドメインを有する(Wilke et al.,2012)。LAMP3上方制御は、いくつかのがんにおいて報告されているが、腫瘍細胞それ自体によるLAMP3の発現は実証されていない。LAMP3(+)DCは、増殖性Tリンパ球があるクラスターを形成する、浸潤性腫瘍縁において特異的に検出されており、したがって例えば、腎細胞がん(Middel et al.,2010)、食道扁平上皮がん(Liu et al.,2010)、結腸直腸がん(Yuan et al.,2008;Sandel et al.,2005)、ならびにメラノーマ(Ladanyi et al.,2007)における局所抗腫瘍免疫応答を反映することが提案されている。トランスクリプトミクスデータのメタ分析は、肺がんにおける低レベルのLAMP3発現が、より短い全生存期間と関連するかもしれないことを示唆した(Lindskog et al.,2014)。
【0097】
セントロメアタンパク質N(CENPN)-CENPN遺伝子によってコードされるタンパク質は、ヌクレオソーム関連複合体の一部を形成し、動原体構築のために重要である。CENPNは、セントロメア特異的ヒストン変異体(CENP-A)を認識し、したがって多数のその他の動原体タンパク質の動員部位を画定するために必要とされる(Carroll et al.,2009)。CENPNおよびその他のヌクレオソーム関連複合体(NAC)タンパク質の枯渇は、双極性紡錘体形成を損なわないが、染色体会合欠陥をもたらす(McClelland et al.,2007)。CENPNはその他のNACタンパク質と共に、DNA二本鎖切断のために動員され、したがってこの複合体はDNA修復において役割を果たすことが提案されている(Zeitlin et al.,2009)。
【0098】
プロコラーゲン-リジン、2-オキソグルタル酸5-ジオキシゲナーゼ2(PLOD2)-この遺伝子によってコードされるタンパク質は、粗面小胞体の嚢に局在する膜結合ホモ二量体酵素である。この遺伝子のコード領域の変異は、Bruck症候群と関連する。PLOD2の上方制御は、結腸直腸がん(Nicastri et al.,2014)、多発性骨髄腫(Slany et al.,2014)、および子宮頸がん(Rajkumar et al.,2011)で記載されおり、骨転移形成と関連付けられている(Blanco et al.,2012)。高いPLOD2発現と予後不良との相関は、神経膠芽腫(Dong et al.,2005)ならびに乳がん(Gilkes et al.,2013)および肝細胞がんで示されており、肝細胞がんでは、それは腫瘍サイズの増大および肝臓内転移形成ともまた関連していた(Noda et al.,2012)。
【0099】
マトリックスメタロペプチダーゼ1(MMP1)-MMP1は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーの一員である。一般に、MMPは、血管機能の調節、再構築、および血管新生において重要な役割を果たす。ECMおよびその他の細胞外分子の分解を通じて、それらは、内皮細胞および血管平滑筋細胞の移動および浸潤を促進し、血管細胞増殖およびアポトーシスに影響を与える(Chen et al.,2013)。MMP1過剰発現は、いくつかのがん型で記載されており、血管新生、浸潤、および低生存率と関連付けられている。例えば、上昇したMMP1レベルは、結腸がんにおける生存の独立した因子として記載されており(Langenskiold et al.,2013)、腫瘍および間質におけるMMP1発現は、乳がんにおける腫瘍進行および不良予後と関連する(Bostrom et al.,2011)。MMP1レベルは、肺がん患者の血漿および腫瘍組織の双方で上昇し、進行した段階および生存率低下と関連することが示されている(Li et al.,2010b)。メタ分析は、MMP1-1607 1G/2G多型性と、肺がん発症リスクの増大との関連を確認している(Xiao et al.,2012)。
【0100】
ケラチン10(KRT10)、ケラチン12(KRT12)、ケラチン13(KRT13)、ケラチン14(KRT14)、ケラチン15(KRT15)、ケラチン16(KRT16)、ケラチン17(KRT17)、ケラチン19(KRT19)-相同的なケラチンタンパク質KRT10、KRT12、KRT13、KRT14、KRT15、KRT16、KRT17、およびKRT19は、中間径フィラメントタンパク質である。ケラチンのいくつかは幹細胞特性と関連づけられており、例えば、KRT14はがん幹細胞マーカーと考えられている(Hatina and Schulz,2012;Schalken and van,2003)。KRT15は、表皮幹細胞の同定および標的化のためのマーカーとして使用され(Adhikary et al.,2013;Troy et al.,2011)、KRT17は、毛隆起の基底層の幹細胞において発現される(Bragulla and Homberger,2009)。種々のケラチンの発現パターンが様々ながん型において分析されており、上方および下方制御の双方が報告されている。例えば、高レベルのKRT17は、予後不良(Wang et al.,2013B;Escobar-Hoyos et al.,2014)、および進行した段階(Kim et al.,2012)と関連付けられている。KRT13では、大多数の研究が、がん組織における下方制御を示唆し(Hourihan et al.,2003;Ida-Yonemochi et al.,2012)、扁平上皮細胞の形質転換中には、KRT13の発現がKRT17の発現で置き換えられるようである(Mikami et al.,2011)。KRT10およびKRT15では、がんにおける上方および下方制御の双方が、異なる研究によって実証されている。KRT19は、多くのがん型において一貫して過剰発現されると報告されており、転移および低生存率と関連付けられている(Zong et al.,2012;Lee et al.,2012)。KRT12は、角膜上皮において発現される。角膜は、分化マーカーと考えられるケラチン12の下方制御を示す(Zhang et al.,2010b)。
【0101】
ムチン16、細胞表面結合(MUC16)-MUC16は、いくつかの膜結合ムチンの中で最大である。MUC16は、高度にグリコシル化された細胞外ドメインがある一回膜貫通型タンパク質である。MUC16は腫瘍関連抗原であり、それは卵巣がん細胞の表面から切断されて血液中に脱落し、卵巣がんの増殖をモニターするための十分に確立されたバイオマーカーとして使用される(Bafna et al.,2010)。MUC16発現レベルの増大は、肺扁平上皮がんにおいて実証されている(Wang et al.,2014)。さらに、高いMUC16の血清レベルは、NSCLC患者の生存期間の短縮と相関した(Yu et al.,2013;Cedres et al.,2011)。その他のバイオマーカーと組み合わされたMUC16は、肺がんのサブタイプの遺伝子発現シグネチャの一部であり得る(Li et al.,2012)。
【0102】
インテグリン、α2(CD49B、VLA-2受容体のα2サブユニット)(ITGA2)-ITGA2は、コラーゲンおよび関連タンパク質の膜貫通レセプターのαサブユニットをコードする。限られた数の研究が、がんにおけるITGA2の調節不全を報告しており、レベルの上昇ならびに低下の双方の証拠がある:膵管腺がんにおいては、ITGA2は低メチル化されて過剰発現され、発現の上昇は低生存率と関連していた(Nones et al.,2014)。対照的に、前立腺がんではITGA2の下方制御が示されている(Shaikhibrahim et al.,2011)。ITGA2発現の低下は、乳がんおよび前立腺がんにおける転移形成および低生存率と関連していた(Ramirez et al.,2011)。
【0103】
オルファクトメジン様2B(OLFML2B)-OLFML2Bは、化学感受性繊毛の分化、初期神経発生、神経管の背側化、神経筋シグナル伝達、シナプス小胞の開口分泌、および緑内障の発病に主に関与する細胞外糖タンパク質である、オルファクトメジンタンパク質のファミリーに属する。OLFM2B転写物は、肺、胃、および前立腺をはじめとする、マウスの多様な異なる組織において検出され得るが、肝臓には存在しない(Furutani et al.,2005)。OLFML2B遺伝子は、染色体1q23.3にマッピングされ、それは連鎖研究において、統合失調症の感受性遺伝子座であることが実証された(Puri et al.,2007)。
【0104】
テトラトリコペプチド反復ドメイン13(TTC13)-TTC13は、テトラトリコペプチド反復(TPR)ドメイン含有タンパク質のファミリーに属する。TPRドメインは、シャペロン機能、細胞周期、転写、および(an)タンパク質輸送に重要であるように見え、TPRモチーフ含有タンパク質は、しばしば多タンパク質複合体と関連する(Blatch and Lassle,1999)。TCC13遺伝子は、染色体1q42.2に位置する。染色体1q42.2-43は、1つの連鎖解析研究において、前立腺がんの推定上の素因遺伝子の遺伝子座として記載されている(Berthon et al.,1998)が、さらなる研究では、これはより大きな患者集団では確認され得なかった(Singh,2000;Gibbs et al.,1999)。
【0105】
サイトカイン2決定因子(DOCK2)-DOCK2遺伝子によってコードされるタンパク質は、CDMタンパク質ファミリーに属する。DOCK2は、リンパ球遊走および走化性にとって、重要な因子として知られている。エクソームおよび全ゲノム配列決定研究は、結腸直腸がん、食道腺がん、および膵臓の膵管内乳頭粘液性新生物において、DOCK2遺伝子内の変異を同定した(Yu et al.,2014;Dulak et al.,2013;Furukawa et al.,2011)。さらに、DOCK2は、小児星状細胞腫サンプルにおいて示差的に発現されることが示されており、したがってこの疾患の興味深い治療標的に相当するかもしれない(Zhao et al.,2014a)。
【0106】
ポリオウイルス受容体関連1(ヘルペスウイルス侵入メディエーターC)(PVRL1)-PVRL1は、上皮および内皮細胞における接着接合部および密着接合部の組織化において役割を果たす、接着タンパク質をコードする。PVRL1遺伝子は染色体11q23にマッピングされ、これは腺様嚢胞がんにおいて増幅されることが判明した領域である(Zhang et al.,2013)。細胞接着における重要な機能があるPVRL1は、どちらも腫瘍発生における重要なプロセスである、細胞侵襲特性および移動特性、ならびに上皮間葉転換の調節と関連付けられている。PVRL1は、子宮頸がんの扁上皮がんサブタイプのシグネチャプロファイルの一部として同定された(Imadome et al.,2010)。PVRL1発現は、正常な甲状腺組織と比較して、甲状腺腫瘍において増大し、乳頭状甲状腺がんにおいてさらに増大することが判明した(Jensen et al.,2010)。PVRL1/2発現は、急性骨髄性白血病におけるより良好な予後と関連する(Graf et al.,2005)。
【0107】
FK506結合タンパク質10、65kDa(FKBP10)-FK506結合タンパク質10(FKBP10)は、FKBP型のペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼファミリーに属する。それは小胞体に位置して、分子シャペロンの機能を果たす(Ishikawa et al.,2008;Patterson et al.,2000)。それは、肺の発達中に高度に発現され、肺傷害後には、細胞外基質タンパク質との協調様式で再活性化され得る(Patterson et al.,2005)。
【0108】
ATP-結合カセット、サブファミリーC(CFTR/MRP)、メンバー1(ABCC1)-ABCC1遺伝子によってコードされるタンパク質は、ATP結合カセット(ABC)輸送体のスーパーファミリーのメンバーである。ABCタンパク質は、細胞外膜および細胞内膜を越えて様々な分子を輸送する。ABCC1は、正常および腫瘍細胞の双方で、薬物排出ポンプとして重要な役割を果たす(Chen and Tiwari,2011)。いくつかの研究が、異なる腫瘍型におけるABCC1の過剰発現を記載しており、多くの場合、ABCC1発現レベルと、腫瘍段階、転移、および予後不良との関連が判明している(例えば、乳がん、前立腺がんおよび肺がんにおいて)(Deeley et al.,2006)。中国人患者における研究は、ABCC1遺伝子内のSNPが、NSCLCに対する感受性を増大させることを確認した(Yin et al.,2011)。別の研究は、NSCLC患者における、ABCC1 SNPと無増悪生存期間との関連性を報告している(Lamba et al.,2014)。
【0109】
アラキドン酸15-リポキシゲナーゼ、B型(ALOX15B)-ALOX15Bは、脂肪酸ヒドロペルオキシドの産生に関与する、構造的に関連した非ヘム鉄ジオキシゲナーゼのリポキシゲナーゼファミリーのメンバーをコードする。15-LOX-2としてより良く知られているALOX15B,そしてその酵素生成物15-S-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15S-HETE)は、腫瘍発生において役割を果たし、前立腺がんにおいて最も集中的に研究されている。いくつかの研究は、ALOX15B発現レベルならびに15S-HETE産生レベルが、正常組織または細胞株と比較して、前立腺がんにおいて有意に低下することを実証している(Hu et al.,2013;Shappell et al.,2001)。正常な肺では、ALOX15B発現は、II型肺細胞に限定される。発現はNSCLCで上昇し、ALOX15Bレベルと、腫瘍悪性度ならびに腫瘍細胞増殖指標との間で、逆相関が記載されている(Gonzalez et al.,2004)。
【0110】
スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ、酸性様3B(SMPDL3B)-SMPDL3Bは、有足細胞において発現されるスフィンゴミエリンホスホジエステラーゼであり、その発現は、糖尿病性腎疾患および局所分節性糸球体硬化症と関連付けられている。腎臓病におけるSMPDL3Bの発現低下は、アクチン細胞骨格再構築およびアポトーシスと関連付けられている(Merscher and Fornoni,2014)。SMPDL3B遺伝子は、染色体1p35.3にマッピングされる。
【0111】
グルタミン-フルクトース-6-リン酸トランスアミナーゼ2(GFPT2)GFPT2は、神経突起伸長、初期神経細胞発生、神経ペプチドシグナル伝達/合成、およびニューロン受容体に関与する(Tondreau et al.,2008)。GFPT2の遺伝的変異は、II型糖尿病および糖尿病性腎障害と関連する(Zhang et al.,2004)。さらにGFPT2におけるSNPの結合は、酸化経路の調節に関与する遺伝子が、糖尿病性慢性腎不全の大きな要因になり得ることを示唆する(Prasad et al.,2010)。GFPT2遺伝子のDNAメチル化は、原発性急性リンパ芽球性白血病(ALL)サンプルにおいて検証された。複数のCpGアイランドのメチル化がある患者は、より芳しくない全生存期間を有した(Kuang et al.,2008)。GFPT2は、グルタミン代謝において役割を果たし、間葉細胞株においてより高度に発現されることが観察された。グルタミン代謝は腫瘍進行において重要な役割を果たしてもよく、細胞代謝経路の阻害が、エピジェネティック療法の一形態であってもよい(Simpson et al.,2012)。
【0112】
DEAD(Asp-Glu-Ala-Asp)ボックスヘリカーゼ5(DDX5)-DDX5(p68)は、スプライシング、rRNAプロセッシング、およびリボソームバイオジェネシス、miRNAプロセッシング、ならびに転写調節において役割を果たす、ATP依存性RNAヘリカーゼである。DDX5は、アンドロゲン受容体、p53、およびRunx2などのがん発生において役割を果たすいくつかの因子の転写補助因子である。DDX5の過剰発現は、例えば、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、神経膠腫、肝細胞がん、および白血病などの種々のがん型で実証されている(Dai et al.,2014;Fuller-Pace,2013)。
【0113】
エノラーゼ1、(α)(ENO1)-ENO1遺伝子は、3つのエノラーゼタンパク質の1つであるエノラーゼ-α(ENOA)をコードし、他の2つは、それぞれエノラーゼ-βおよび-γである。ENO1/ENOAの過剰発現は、多くのがん型において実証されている(Capello et al.,2011)。ENOAは、ホスホエノールピルビン酸の合成における解糖において機能する金属酵素である。上昇したENOAレベルは、NSCLC患者における低生存率と相関する(Chang et al.,2006)。同様に、別の研究は、肺腺がん患者の予後不良群におけるENO1発現の上方制御を実証した(Pernemalm et al.,2013)。ENOAは腫瘍関連抗原として実証されており、抗ENOA抗体ならびにENOA特異的T細胞が、膵臓腺がん患者において検出されている(Cappello et al.,2009)。ENOAに対する自己抗体はNSCLC患者においても検出され、ENOA発現はNSCLC組織において増大することが示されている(He et al.,2007;Li et al.,2006)。
【0114】
キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーD、メンバー1(KLRD1)-CD94としてより良く知られているKLRD1は、NKG2分子と結合して、ナチュラルキラー(NK)細胞および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)において発現される、ヘテロ二量体を形成する。阻害性受容体KLRD1(CD94):NKG2Aは、例えば腎細胞がんおよび子宮頸がんにおいて、腫瘍細胞浸潤性リンパ球において過剰発現されることが示され、それが抗腫瘍免疫応答の障害に寄与するかもしれない(Schleypen et al.,2003;Sheu et al.,2005)。同様に、腫瘍細胞上のHLA-E、theKLRD1(CD94):NKG2Aリガンドの過剰発現は、腫瘍免疫逃避にさらに寄与するかもしれない(Bossard et al.,2012;Gooden et al.,2011)。
【0115】
コラーゲン、XII型、α1(COL12A1)COL12A1遺伝子は、FACIT(中断された三重らせんがある原線維関連コラーゲン)コラーゲンファミリーのメンバーである、XII型コラーゲンのα鎖をコードする。XII型コラーゲンは、I型コラーゲンと結合して見いだされるホモ三量体であり、コラーゲンI線維と周囲のマトリックスの間の相互作用を改変すると考えられる(Oh et al.,1992)。COL12A1は基底膜調節に関与して、原線維とその他の基質要素の間に特異的分子橋を提供してもよい(Thierry et al.,2004)。COL12A1は、心臓、胎盤、肺、骨格筋、および膵臓(Dharmavaram et al.,1998)において、関節軟骨および骨端軟骨をはじめとする多様な結合組織(Gregory et al.,2001;Walchli et al.,1994;Watt et al.,1992)において、発現される。COL12A1は、マイクロサテライト不安定性が低いまたは皆無である安定グループと比較して、マイクロサテライト不安定性が高い腫瘍において下方制御された(Ortega et al.,2010)。
【0116】
ATP結合カセット、サブファミリーA(ABC1)、メンバー13(ABCA13)-ヒトにおいては、膜貫通輸送体のATP結合カセット(ABC)ファミリーは、少なくとも48個の遺伝子と、7つの遺伝子サブファミリーを有する。予測されたABCA13タンパク質は5,058個のアミノ酸残基からなり、これまでに記載された中では、最大のABCタンパク質である(Prades et al.,2002)。Knight et al.は、ABCA13タンパク質が、マウスおよびヒトの海馬および皮質において発現されることを確認し、これらの双方の領域は統合失調症および双極性障害に関連がある(Knight et al.,2009)。ABCA13遺伝子は染色体7p12.3に位置するが、この領域は、膵臓に影響を及ぼす遺伝性疾患(シュバッハマン・ダイアモンド症候群)、ならびにT細胞腫瘍浸潤および転移(INM7)に関与する遺伝子座を含有し、したがってこれらの病態の可能な候補である(Prades et al.,2002)。
【0117】
サイクリンB2(CCNB2)-CCNB2は、主要細胞周期調節キナーゼCDK1(CDC2)に関わりがあるいくつかのサイクリンの1つである。サイクリンレベルは、細胞周期にわたって転写的に制御され、CDK1に異なるレベルの活性および特異性を提供し、したがって細胞周期の進行を制御する。サイクリンB2の発現は、サイクリンB2転写を抑制することで機能する、腫瘍抑制遺伝子p53およびBRCA1によって制御される(Quaas et al.,2012;De et al.,2011)。CCNB2の上方制御は、子宮頸がん(Espinosa et al.,2013;Rajkumar et al.,2011)、膀胱がん(Lu et al.,2010)、結腸直腸がん(Park et al.,2007)、星細胞腫(Liu et al.,2013)、および神経膠芽腫(Hodgson et al.,2009)などのいくつかの腫瘍型で記載されている。CCNB2発現レベルは、乳がんにおける予後不良と関連し、生存期間の独立した予測因子として同定された(Shubbar et al.,2013)。CCNB2は、NSCLCにおいて過剰発現され(Hofmann et al.,2004)、肺腺がん患者における予後不良の独立した予測因子であることが確認されたが、扁平上皮がんでは確認されなかった(Takashima et al.,2014)。
【0118】
MutSホモログ6(MSH6)-MSH6は、DNAミスマッチ修復MutSファミリーのメンバーをコードする。MSH6をはじめとするMSHタンパク質は、複製中にゲノム配列の誤りを認識し、損傷を受けた鎖の複製を防げて一本鎖切断を修復する(Conde-Perezprina et al.,2012)。いくつかの種類のがんにおいては、MSH6の変異および誤ったDNAミスマッチ修復機構(MMR)が記載されている(例えば、結腸直腸がん(Sameer et al.,2014;Vilar and Gruber,2010;Silva et al.,2009;Kastrinos and Syngal,2007;Davidson,2007)、膵臓がん(Solomon et al.,2012)、卵巣がん(Xiao et al.,2014)、乳がん(Mahdi et al.,2013))。
【0119】
PRP3プレmRNAプロセシングファクター3ホモログ(S.セレビシエ(S.cerevisiae))(PRPF3)-PRPF3は、mRNA前駆体プロセシングファクター3をコードする。PRPF3は、スプライソソームへの核RNA崩壊機構の動員を媒介する(Nag and Steitz,2012)。PRPF3は、転写因子HNF4αの胎児/がん特異的スプライス変異体を通じて、肝細胞がんにおいて上方制御される(Niehof and Borlak,2008)。
【0120】
リゾホスファチジルコリンアシル基転移酵素1(LPCAT1)-LPCAT1は、リゾホスファチジル-コリン(LPC)のホスファチジルコリンへの変換を触媒する。さらに、LPCAT1は、リゾ-PAF(アルキル化LPC)を血小板-活性化因子(PAF)に変換できる。LPCAT1過剰発現は、結腸直腸がん(Mansilla et al.,2009)、肝細胞がん(Morita et al.,2013)、乳がん(Abdelzaher and Mostafa,2015)、前立腺がん(Xu et al.,2013;Grupp et al.,2013;Zhou et al.,2012)、および肺がん(Wu et al.,2013B)で記載されている。LPCAT1の過剰発現は、生体外で細胞増殖、移動、および浸潤を促進する(Morita et al.,2013)。
【0121】
SONの下流隣接(DONSON)-DONSONは、SONの下流隣接部(DONSON)をコードする。DONSONは中心体タンパク質であり、そのレベルは細胞周期にわたり制御されて、S期でピークに達するDONSONは、適切な有糸分裂紡錘体の形成に必要であり、DNA損傷応答において役割を果たすようである(Fuchs et al.,2010)。がん関連の文献は入手できない。
【0122】
ベンズイミダゾール1ホモログβ(酵母)によって阻害されない出芽(BUB1B)-BUB1Bは、セリン/トレオニン-タンパク質キナーゼである、BUB1有糸分裂チェックポイントセリン/スレオニンキナーゼBをコードする。それは、有糸分裂チェックポイントにおけるその役割と、適切な微小管-動原体付着の確立を通じて、染色体の正確な分離を確実にする有糸分裂制御因子として機能する。BUB1B発現の上方および下方制御の双方が、様々な腫瘍において報告されている。一般に、より多くの文献が、がんにおけるBUB1Bの過剰発現を報告しており、腫瘍進行および予後不良との関連もまた、例えば、鼻咽頭がん(Huang et al.,2012a)、扁桃がん(Hannisdal et al.,2010)、乳がん(Maciejczyk et al.,2013)、上皮性卵巣がん(Lee et al.,2009)、および膵臓胆道型腺がん(Gladhaug et al.,2010)で記載されている。同様に、BUB1Bタンパク質の低下は、前立腺がんにおけるより長い生存期間と関連した(Cirak et al.,2013)。
【0123】
オリゴマーゴルジ装置4の構成要素(COG4)-オリゴマータンパク質複合体の構成要素であるCOG4は、ゴルジ装置の構造および機能に関与する。相互作用研究は、COG4が複合体のコア構成要素の役割を果たし、複合体の構築/機能において重要な役割を有することを示唆する(Loh and Hong,2004)。COGサブユニットであるCOG4、6、および8は、定義されたゴルジSNAREと相互作用でき、ゴルジ内の小胞の選別の特異性の定義に関与する(Willett et al.,2013)。さらに、COG複合体は、ゴルジ体グリコシル化機構の維持を制御することが示されている(Pokrovskaya et al.,2011)。
【0124】
プロテアソーム(プロサム、マクロペイン)26Sサブユニット、非ATPアーゼ、14(PSMD14)-PSMD14は、26Sプロテアソームの構成要素であり、ユビキチン経路による破壊の標的となるタンパク質を分解する、多タンパク質複合体である。19S複合体(19Scap;PA700)内のPSMD14タンパク質は、プロテアソーム分解中の基質の脱ユビキチン化に関与する(Spataro et al.,1997)。プロテアソームサブユニットの異常発現および機能不全は、悪性形質転換および様々な細胞毒性薬に対する細胞耐性に関与している。哺乳類細胞におけるPSMD14の過剰発現は、細胞増殖、そしてビンブラスチン、シスプラチン、およびドキソルビシンのような細胞毒性薬に対する応答に影響を及ぼす(Spataro et al.,2002)。siRNA形質移入によるPSMD14の下方制御は、細胞生存率にかなりの影響を及ぼし、G0-G1期に細胞停止を引き起こして、最終的には老化につながる(Byrne et al.,2010)。
【0125】
RAD54ホモログB(S.セレビシエ(S.cerevisiae))(RAD54B)DNA修復および組換えタンパク質RAD54Bは、ヒトにおいてはRAD54B遺伝子によってコードされるタンパク質である。RAD54は二本鎖DNAに結合し、DNA存在下ではATPアーゼ活性を示す。ヒトRAD54Bタンパク質は、相同組換えにおいて重要な役割を果たすRAD54タンパク質のパラログである。相同組換え(HR)は、DNA二本鎖切断(DSB)の正確な修復に必須である(Sarai et al.,2008)。がんにおいて体細胞性に変異することが知られている遺伝子RAD54Bのノックダウンは、哺乳類細胞において染色体不安定性(CIN)を引き起こす(McManus et al.,2009)。RAD54B遺伝子発現上昇は、GBM患者対におけるより短い進行までの時間および低いOSと有意に関連する(Grunda et al.,2010)。
【0126】
frizzledファミリー受容体1(FZD1)、frizzledファミリー受容体2(FZD2)、frizzledファミリー受容体7(FZD7)遺伝子FZD2、FZD1、およびFZD7は、全て「frizzled」遺伝子ファミリーに由来し;この遺伝子ファミリーのメンバーは、Wntシグナル伝達タンパク質の受容体である、7回膜貫通領域タンパク質をコードする。FZD2遺伝子の発現は発生学的に制御されるようであり、胎児の腎臓および肺において、そして成人の結腸および卵巣において、高レベルで発現される(Sagara et al.,1998;Zhao et al.,1995)。FZD1タンパク質は、シグナルペプチド、N末端細胞外領域のシステイン富化ドメイン、7回膜貫通ドメイン、およびC末端PDZドメイン結合モチーフを含有する。FZD1転写物は、肺ならびに心臓、腎臓、膵臓、前立腺、および卵巣をはじめとする、様々な組織において発現される(Sagara et al.,1998)。frizzled 1および2受容体の発現は、乳がんにおいて上方制御されることが判明した(Milovanovic et al.,2004)。FZD7タンパク質は、N末端シグナル配列、Fzファミリーメンバーのシステイン富化細胞外ドメインの典型例である10個のシステイン残基、推定上の7回膜貫通ドメイン、およびPDZドメイン結合モチーフがある細胞内C末端テールを含有する。FZD7遺伝子発現は、低分化型ヒト食道がんにおいて、APC機能を下方制御し、βカテニン媒介シグナルを増強してもよい(Sagara et al.,1998;Tanaka et al.,1998)。
【0127】
Wingless-MMTV型インテグリン部位ファミリー、メンバー5A(WNT5A)-一般に、Wnt5aは、増殖、分化、移動、癒着、および極性などの多様な細胞機能を制御する(Kikuchi et al.,2012)。それは、未分化ヒト胚性幹細胞において発現される(Katoh,2008)。WNT5Aは、発がんにおけるその役割が依然としてあいまいな、非形質転換WNTファミリーメンバーに分類される。それはいくつかのがん(甲状腺がん、脳がん、乳がん、および結腸直腸がん)において腫瘍抑制活性を示すが、肺がん、胃がん、および前立腺がんにおいては、異常に上方制御される(Li et al.,2010a)。発がん性WNT5Aは、自己複製のためのがん幹細胞におけるカノニカルWNTシグナル伝達、および浸潤と転移のための腫瘍間質境界面における非カノニカルWNTシグナル伝達を活性化する(Katoh and Katoh,2007)。WNT5Aの発現は、多様な腫瘍実体について記述されている。例えば、Wnt5aの異常なタンパク質発現が、前立腺がんの28%において観察され、それはそこで攻撃性を促進した(Yamamoto et al.,2010)。さらに、WNT5A過剰発現は、卵巣がん(Badiglian et al.,2009)、メラノーマ(Da Forno et al.,2008;Weeraratna et al.,2002)、GBM(Yu et al.,2007)、肺がん(Huang et al.,2005)、および膵臓がん(Ripka et al.,2007)において、予後不良および/または腫瘍悪性度増大と関連すると記載される。HCCにおいては、カノニカルWntシグナル伝達経路が腫瘍開始に寄与して、非カノニカルシグナル伝達が腫瘍進行に寄与するようである(Yuzugullu et al.,2009)。
【0128】
線維芽細胞活性化タンパク質、α(FAP)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)は、セリンプロテアーゼファミリーに属するII型膜内在性糖タンパク質である。FAPαの推定上のセリンプロテアーゼの活性およびその生体内誘導パターンは、発達、組織修復、および上皮発がん中の線維芽細胞成長または上皮と間葉の相互作用の調節における、この分子の役割を示唆してもよい(Scanlan et al.,1994)。ほとんどの正常な成人組織および良性上皮性腫瘍は、わずかまたは皆無の検出可能なFAP発現を示す。しかし、FAP発現は、悪性乳がん、結腸直腸がん、肺がん、皮膚がん、および膵臓腫瘍、治癒創傷の線維芽細胞、軟部組織肉腫、およびいくつかの胎児間葉細胞の90%以上の間質において検出される。FAPは、細胞の接着および移動プロセスならびにECM成分の迅速な分解を通じて、がんの増殖および転移において潜在的役割を有する。したがって、それは、ECMに侵入する腫瘍細胞上、および血管新生に関与する内皮細胞上に存在するが、同一型の不活性細胞においては発現されない(Dolznig et al.,2005;Kennedy et al.,2009;Rettig et al.,1993;Rettig et al.,1994;Scanlan et al.,1994;Zhang et al.,2010a)。
【0129】
サイクリンB1(CCNB1)-CCNB1は、CDK1/CDC2と結合して有糸分裂進行を促進する、いくつかの有糸分裂サイクリンの1つであるサイクリンB1をコードするCNB1の過剰発現は多数のがん型で記載されており、例えば、結腸直腸がん(Li et al.,2003)、乳がん(Aaltonen et al.,2009;Agarwal et al.,2009)、NSCLC(Cooper et al.,2009)、および食道扁平上皮がん(Huang et al.,2014)において、腫瘍の進行および予後不良と関連したまた胃がんにおいても、CCNB1発現は、局所リンパ節転移および予後不良と関連した(Begnami et al.,2010;Fujita et al.,2012)。CCNB1に対する抗体は、肺がんまたは前立腺がんがある患者において検出され、肺がんの早期発見のためのバイオマーカーとして提案されている(Egloff et al.,2005;Zhang et al.,2003)。
【0130】
ATPアーゼ、Ca++輸送、心筋、速攣縮1(ATP2A1)、ATPアーゼ、Ca++輸送、心筋、速攣縮2(ATP2A2)どちらの遺伝子(ATP2A1およびATP2A2)も、SERCA Ca(2+)-ATPアーゼをコードする。筋小胞体(SR)1/ERカルシウムATPアーゼ(SERCA)は、ATP加水分解と、SR/ER膜を越えるカルシウム輸送とを連結するカルシウムポンプである(MacLennan et al.,1997)。SERCAは、3つの相同遺伝子、SERCA1(ATP2A1)、SERCA2(ATP2A2)、およびSERCA3によってコードされる(Wu et al.,1995)。SERCAが、アポトーシス、分化、および細胞増殖の過程に対してもまた、直接的影響を有してもよいことを示す、いくつかの証拠が浮上してきた(Chami et al.,2000;Ma et al.,1999;Sakuntabhai et al.,1999)。SERCA1をコードするATP2A1の変異は、運動中の筋肉弛緩の障害を増大させることで特徴付けられる、いくつかの常染色体劣性型のブロディ病を引き起こす(Odermatt et al.,1996)。ATP2A2は、異常な角質化と棘細胞離開によって特徴付けられる、稀な常染色体優性遺伝性皮膚疾患であるダリエー病と関連する、ATPアーゼである(Huo et al.,2010)。ATP2A2の生殖細胞系変化は、肺および大腸がんに罹りやすくしてもよく、欠陥ATP2A2遺伝子は発がんに関与するかもしれない(Korosec et al.,2006)。小細胞肺がん(H1339)および肺腺がん(HCC)細胞株においては、正常なヒト気管支上皮細胞株と比較して、ERCa2+の含有量が低下した。Ca2+含有量の低下は、カルシウムをERに送り込むSERCA2の発現低下と相関した(Bergner et al.,2009)。ATP2A2は、結腸直腸がんCRC患者の可能な予後マーカーであり得る。それは循環腫瘍細胞(CTC)において検出され、術後再発は、遺伝子の過剰発現と有意に相関した(Huang et al.,2012B)。
【0131】
フィブロネクチン1(FN1)-FN1は、糖タンパク質であるフィブロネクチンをコードするが、これは血漿中に可溶性二量体形態で存在し、細胞表面および細胞外マトリックスには二量体または多量体形態で存在する。ほとんどの腫瘍においては、FN1が、腫瘍細胞でなく、がん関連線維芽細胞(CAF)および内皮細胞によって優勢に発現されることが報告されている(Berndt et al.,2010)。高レベルのFN1はいくつかのがん型で報告されており、例えば、胆嚢がん(Cao et al.,2015)、前立腺がん(von et al.,2013)、および腎細胞がん(Steffens et al.,2012;Waalkes et al.,2010)におけるように、予後不良またはがん進行と関連付けられている。FN1はまた、細胞増殖、化学療法抵抗性、およびアポトーシス阻害をはじめとする、肺がん発病の刺激にも関与するとされる((Ritzenthaler et al.,2008)で概説される)。
【0132】
インスリン様成長因子2 mRNA結合タンパク質3(IGF2BP3)IGF2BP3は、mRNA局在化、交代、および翻訳調節に関与するとされるインスリン様成長因子II mRNA結合タンパク質ファミリーのメンバーである。タンパク質は、RNA結合において重要でRNA合成および代謝に関与することが知られている、いくつかのKH(K相同的)ドメインを含有する。発現は、主に胚発生中に起こり、いくつかの腫瘍で記載されている。したがってIGF2BP3は、がん胎児性タンパク質であると見なされる(Liao et al.,2005)。IGF2BP3は、IGF-IIタンパク質合成を増強することによって、およびCD44 mRNAの安定化を通じて細胞接着と浸潤を誘導することによって、腫瘍細胞の増殖を促進してもよい(Findeis-Hosey and Xu,2012)。さらにIGF2BP3発現は、多数のヒト新生物において研究されており、それが、移動、浸潤、細胞生存、および腫瘍転移を媒介するという証拠が上がってきており(Jeng et al.,2009;Kabbarah et al.,2010;Li et al.,2011;Liao et al.,2011;Lu et al.,2011;Hwang et al.,2012;Samanta et al.,2012)、それは血管新生にも関与しているかもしれない(Suvasini et al.,2011;Chen et al.,2012).肺腺がんにおいては、中等度分化型または低分化型腺がんにおいて、より高頻度のIGF2BP3発現が検出され得て、それは侵襲性の生物学的挙動と関係してもよい(Findeis-Hosey et al.,2010;Beljan et al.,2012;Findeis-Hosey and Xu,2012)。
【0133】
ラミニン、γ2(LAMC2)-細胞外基質糖タンパク質のファミリーであるラミニンは、基底膜の主要な非コラーゲン性構成物である。それらは、細胞接着、分化、移動、シグナル伝達、神経突起伸長、および転移をはじめとする、多種多様な生物学的過程に関与するとされている。LAMC2遺伝子は、基底膜領域の主要構成要素の1つであるラミニン-5の一部である、ラミニン-5γ2鎖をコードする。LAMC2は、胃がんにおいて、プロモーター脱メチル化によって頻繁に上方制御された(Kwon et al.,2011)。LAMC2は、無血管メラノーマ領域と比較して、血管性メラノーマ領域において過剰発現されることが判明した(Lugassy et al.,2009)。LAMC2は、膀胱がん転移のバイオマーカーであり、その発現レベルは腫瘍等級と関連した(Smith et al.,2009B)。LAMB3およびLAMC2遺伝子は、32の非SCLC細胞株の内21において(66%)同時発現されたが、13のSCLC細胞株では1つにおいてのみ(8%)同時発現された。LAMB3およびLAMC2遺伝子の同時発現はまた、検査された4症例の原発性非SCLC細胞の全てにおいて観察されたが、対応する非がん性の肺細胞においては観察されなかった(Manda et al.,2000)。
【0134】
脳内皮細胞接着分子(CERCAM)-CERCAMは、内皮細胞表面に局在し(Starzyk et al.,2000)、家族性特発性側弯症に関連すると同定された9q上の候補領域である、染色体9q34.11にマッピングされる(Miller et al.,2012)。CEECAM1遺伝子は、神経系において、および唾液腺、膵臓、肝臓、および胎盤などのいくつかの分泌組織において、幅広く転写される(Schegg et al.,2009)。CERCAMタンパク質は、ColGalT酵素GLT25D1およびGLT25D2と構造的に類似する。しかしその機能は依然として不明であるが、関連するGLT25D1タンパク質とは機能的に異なるようであり、本タンパク質は、GLT25D1およびGLT25D2タンパク質のようにグリコシルトランスフェラーゼとしては機能しない(Perrin-Tricaud et al.,2011)。
【0135】
マトリックス-リモデリング関連5(MXRA5)-アドリカンとしてもまた知られているMXRA5は、接着プロテオグリカンをコードして、ECM再構築および細胞-細胞接着に関与する一群の遺伝子に属する(Rodningen et al.,2008)。MXRA5のがんにおける機能は不明であるが、皮膚、脳、肺、および卵巣などの多様な組織から得られた腫瘍において、MXRA5における体細胞突然変異が同定されている。RT-PCRがアドリカン(MXRA5)について実施され、正常な結腸組織と比較して、結腸がんにおける過剰発現のマイクロアレイ所見が確認された(13個の結腸直腸腫瘍および13個の正常組織)(Zou et al.,2002)。最近の研究では、マトリックス-リモデリング関連5が、NSCLCにおいて2番目に頻繁に変異する遺伝子であった(1番目はTP53)(Xiong et al.,2012)。
【0136】
ADAMメタロペプチダーゼドメイン8(ADAM8)-ADAM8は、ADAM(ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼドメイン)ファミリーのメンバーである。ADAM8をはじめとする多数のADAM種は、ヒト悪性腫瘍において発現され、そこで成長因子機能およびインテグリン機能の制御に関与して、細胞増殖および浸潤の促進をもたらす(Mochizuki and Okada,2007)。ADAM8の発現は、EGFRと正の相関性があった。どちらも主に、細胞質内および細胞膜上において発現される(Wu et al.,2008)。ADAM8は、検査された肺がんのほとんどにおいて大量に発現された。ADAM8の外因性発現は、哺乳動物細胞の遊走活性を増加させ、ADAM8が、肺がんの進行において重要な役割を果たしてもよいことを示唆する(Ishikawa et al.,2004)。ADAM8は、肺がんの予後不良と関連付けられている(Hernandez et al.,2010)。ADAM8の過剰発現は患者のより短い生存期間と関連し、RCCにおける遠隔転移の良好な予測因子であった(Roemer et al.,2004B;Roemer et al.,2004a)。さらに、ADAM8の発現レベルおよびプロテアーゼ機能は、神経膠腫細胞の浸潤活性と相関し、脳がんにおける腫瘍浸潤において、ADAM8が重要な役割を役割を果たしてもよいことが示唆された(Wildeboer et al.,2006)。
【0137】
メラノーマ抗原ファミリーF、1(MAGEF1)-MAGE(メラノーマ関連抗原)スーパーファミリーの既知のメンバーのほとんどは、腫瘍、精巣、および胎児組織において発現され、それはがん/精巣発現パターンとして記載されている(MAGEサブグループI)。MAGEサブグループIのペプチドは、ペプチドおよびDCワクチン接種において成功裏に使用されている(Nestle et al.,1998;Marchand et al.,1999;Marchand et al.,1999;Marchand et al.,1995;Thurner et al.,1999)。対照的に、MAGEF1などのいくつかのMAGE遺伝子(MAGEサブグループII)は、試験された全ての成人および胎児組織において、そして卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、メラノーマ、および白血病をはじめとする多数の腫瘍型においても広範に発現される(Nestle et al.,1998;Marchand et al.,1999;Marchand et al.,1999;Marchand et al.,1995;Thurner et al.,1999)。それでもなお、MAGEF1の過剰発現が、NSCLC(Tsai et al.,2007)において、そして台湾の結腸直腸がん患者コホートの79%において(Chung et al.,2010)検出され得た。
【0138】
小型核リボ核タンパク質200kDa(U5)(SNRNP200)-mRNA前駆体スプライシングは、転写されたmRNA前駆体断片からイントロンを除去する、特化RNAとタンパク質サブユニットの複合体であるスプライソソームによって触媒される。スプライソソームは、およそ80の保存されたタンパク質に加えて、低分子核内RNAタンパク質(snRNP)U1、U2、U4、U5、およびU6からなる。SNRNP200は、スプライソソームの触媒活性化の必須段階である、U4/U6二本鎖の巻き戻しに必要な遺伝子である(Maeder et al.,2009)。SNRNP200発現は、心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、および膵臓において検出された(Zhao et al.,2009a)。SNRNP200の変異は、常染色体優性色素性網膜炎(adRP)と関連することが、最近発見されている(Benaglio et al.,2011;Liu et al.,2012)。
【0139】
TPX2、微小管関連、ホモログ(アフリカツメガエル(Xenopus laevis)))(TPX2)-TPX2は、紡錘体集合因子である。それは、アポトーシス中の有糸分裂紡錘体および微小管の正常な集合に必要である。TPX2は、クロマチンおよび/または動原体依存微小管核形成に必要である(Bird and Hyman,2008;Moss et al.,2009)。新規合成されたTPX2は、ほぼ全てのオーロラA活性化のために、そして卵母細胞成熟中の完全p53合成と生体内リン酸化のために必要である(Pascreau et al.,2009)。TPX2は、髄膜腫(Stuart et al.,2010)、喉頭の扁平上皮がん(SCCL)(Cordes et al.,2010)、経口扁平上皮がん(SCC)(Shigeishi et al.,2009)、肝細胞がん(HCC)(Satow et al.,2010)、膵臓腫瘍(Warner et al.,2009)、卵巣がん(Ramakrishna et al.,2010)、肺の扁平上皮がん(Lin et al.,2006;Ma et al.,2006)などの多数の腫瘍型において過剰発現される、細胞周期関連タンパク質である。それは、頻繁にオーロラAと共に同時過剰発現されて、発がん特性がある新規機能単位を生じる(Asteriti et al.,2010)。TPX2発現は、肺がんにおける予後指標である(Kadara et al.,2009)。
【0140】
形質転換成長因子、β-誘導性、68kDa(TGFBI)-TGFBIは、最初にヒト肺腺がん細胞株においてTGF-β誘導性遺伝子として同定された。それは、細胞付着および細胞外マトリックス組成に作用すると考えられる、分泌される細胞外マトリックスタンパク質をコードする。通常、TGFBIの発現は、主に、線維芽細胞、ケラチノサイト、および筋肉細胞に見られる(Bae et al.,2002)。TGFBIは、結腸(Kitahara et al.,2001)、膵臓(Schneider et al.,2002)、および腎臓(Ivanov et al.,2008)などのいくつかの固形腫瘍において過剰発現される。TGFBIは、肺がんにおいて下方制御され(Zhao et al.,2004;Shao et al.,2006)、肺腫瘍細胞の転移能を低下させ(Wen et al.,2011)、過剰発現されるとアポトーシス細胞死に寄与する(Zhao et al.,2006)。NSCLCサンプルにおいては、上昇したTGFBI発現と化学療法に対する応答との間に、強い関連性が観察された(Irigoyen et al.,2010)。
【0141】
サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)/サイクリン依存性キナーゼ6(CDK6)CDK4は、Ser/Thrタンパク質キナーゼファミリーのメンバーである。これは、細胞周期G1相の進行に重要な、タンパク質キナーゼ複合体の触媒性サブユニットである。このキナーゼの活性は、細胞周期中のG1相からS相への転移に限定され、その発現は主に転写レベルで調節される(Xiao et al.,2007)。CDK4およびCDK6酵素、そして例えばサイクリンなどのそれらの調節因子は、胎芽形成、恒常性、および発がんにおいて重要な役割を果たす(Graf et al.,2010)。肺がん組織においては、正常組織と比較して、CDK4タンパク質の発現レベルが有意に増大した(P<0.001)。CDK4発現がより高い患者は、CDK4発現が低い患者よりも、顕著により短い全生存期間を有した。多変量解析は、CDK4の発現レベルが、肺がんのある患者の生存期間に対する、独立した予後指標(P<0.001)であることを示唆した。さらにCDK4発現の抑制は、細胞周期レギュレーターp21の発現もまた有意に上昇させた(Wu et al.,2011)。内因性K-Ras発がん遺伝子を発現する肺細胞においては、Cdk4の除去によって即時に老化反応が誘発されたが、Cdk2またはCdk6の除去では誘発されなかった。単一Cdk4対立遺伝子を発現する肺、またはその他のK-Ras発現組織においては、このような応答は起こらなかった。コンピュータ断層撮影スキャニングによって検出可能な進行した腫瘍におけるCdk4対立遺伝子を標的化することもまた、老化を誘発して腫瘍の進行を妨げる(Puyol et al.,2010)。
【0142】
バーシカン(VCAN)-VCANは、アグリカン/バーシカンプロテオグリカンファミリーのメンバーである。VCANは、ヒアルロナン、テネイシン、フィビュリン-1、フィブロネクチン、CD44およびL-セレクチン、フィブリリン、インテグリン、およびリンクタンパク質をはじめとする、細胞外基質のいくつかの分子と関わりがあることが知られている(Zheng et al.,2004)。VCANは、多様な組織において発現される。これは組織成長の初期段階において高度に発現され、組織成熟後にはその発現が低下する。その発現はまた、創傷修復および腫瘍成長においても上昇する(Ghosh et al.,2010)。RNA干渉によるヒト肺腺がん(A549)細胞におけるVCANノックダウンは、生体内で腫瘍成長を有意に阻害したが、生体外では阻害しなかった(Creighton et al.,2005)。VCANは、p53の直接標的である。VCANの高度発現はまた、初期段階前立腺がんの、そして乳がんの、腫瘍周囲間質組織においても見られ、それは侵襲性腫瘍挙動と関連する(Yoon et al.,2002)。
【0143】
ユビキチン結合酵素E2S(UBE2S)-UBE2Sは、有糸分裂終了を促進するAPC補助因子である。その枯渇は、薬剤誘発性有糸分裂停止を延長し、有糸分裂スリッページを抑制する(Garnett et al.,2009)。UBE2Sは、一般的なヒトのがんにおいて過剰発現される。食道がんにおいては、UBE2Sは腫瘍負荷の程度と有意に関連する。その陽性は、ネオアジュバント療法に対する反応不良および生存率低下と関連した(Chen et al.,2009)。UBE2Sプロモーターにおいては、初期増殖応答-1(Egr-1)および血清応答因子(SRF)の結合部位が同定された。これらの因子の過剰発現は、がん細胞の増殖に必要なUBE2S発現を増大させた(Lim et al.,2008)。
【0144】
SETおよびMYNDドメイン含有3(SMYD3)ヒストンH3リジン4特異的メチルトランスフェラーゼであるSMYD3の上方制御が、結腸直腸がん(CRC)および肝細胞がん(HCC)の増殖において、重要な役割を果たすことが以前報告された。別の研究では、ほとんどの乳がん組織においても、SMYD3発現が上昇することが明らかにされた。CRCおよびHCCと同様に、この遺伝子に対する低分子干渉RNAによるSMYD3のサイレンシングは、乳がん細胞の成長阻害をもたらし、SMYD3発現の増大もまた、乳がん細胞の増殖に必須であることが示唆された(Hamamoto et al.,2006)。RNA干渉によるSMYD3のノックダウンは、c-Met発現を下方制御し、HGFによって誘導される細胞移動および浸潤を阻害する(Zou et al.,2009)。SMYD3は、HeLa細胞増殖および移動/浸潤において重要な役割を果たし、それはヒト子宮頸がんにおける有用な治療標的であってもよい(Wang et al.,2008)。
【0145】
ジストニン(DST)-DST(BPAG1-e)は、接着結合プラークタンパク質のプラキンタンパク質ファミリーのメンバーをコードする。BPAG1-eは、上皮組織において発現されて、ケラチン含有中間フィラメントを半接着斑(HD)に固着させる。HDは、重層上皮および複合上皮における上皮間質付着を促進する、多タンパク質接着複合体である。それらの機能の調節は、その中で細胞が基質から剥離して運動性表現型を獲得する、創傷治癒およびがん浸潤におけるケラチノサイトの分化と移動などの、多様な生物学的過程において非常に重要である(Litjens et al.,2006)。悪性メラノーマは、最も侵襲性が高い腫瘍型の1つである。BPAG1は、ヒトメラノーマ細胞株(A375およびG361)および正常ヒトメラノサイトにおいて発現される。メラノーマ患者の血清中の抗BPAG1自己抗体レベルは、健常ボランティアの血清中よりも有意に高かった(p<0.01)。抗BPAG1自己抗体は、メラノーマ診断のための有望なマーカーであってもよい(Shimbo et al.,2010)。DSTは、乳がん浸潤と関連した(Schuetz et al.,2006)。BPAG1遺伝子は、鼻咽頭がんNPCの増殖、アポトーシス、浸潤、および転移に関与する可能性が高い(Fang et al.,2005)。
【0146】
溶質輸送体ファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2(SLC34A2)SLC34A2は、pH感受性ナトリウム依存性リン酸輸送体である。十分に分化した腫瘍におけるSLC34A2遺伝子発現の上方制御は、卵巣の発がん中の細胞分化過程を反映してもよく、卵巣がん診断および予後の可能なマーカーの役割を果たし得る(Shyian et al.,2011)。RT-PCRは、乳頭状甲状腺がんにおけるSLC34A2の発現増大を確認した(Kim et al.,2010b)。乳がん組織にはまた、正常組織と比較して、SLC34A2遺伝子発現の顕著な増大もあった(Chen et al.,2010)。
【0147】
テネイシンC(ヘキサブラキオン)(TNC)-テネイシン-C(TNC)は、胚発生(Bartsch et al.,1992)、創傷治癒(Mackie et al.,1988)、および新生物プロセス(Chiquet-Ehrismann,1993;Chiquet-EhrismannおよびChiquet,2003)などの高い移動活性と密接に関連するプロセスにおいて高度に上方制御される、細胞外マトリックスタンパク質である。さらに、TNCは、高い増殖性指標を有する腫瘍血管において過剰発現されて、それはTNCが新生物血管新生に関与することを示唆する(Kim et al.,2000)。TNCの過剰発現は、結腸がん(De et al.,2013)、それが最悪の予後と関連付けられている腺様嚢胞がん(Siu et al.,2012)、それがおそらく血管新生を促進する若年性鼻咽腔血管線維腫(Renkonen et al.,2012)、進行性メラノーマ(Fukunaga-Kalabis et al.,2010)、それが増殖、移動、および転移において役割を果たす膵臓がん(Paron et al.,2011)からさらに報告されている。
【0148】
レティキュロカルビン1、EF-ハンドカルシウム結合ドメイン(RCN1)/レティキュロカルビン3、EF-ハンドカルシウム結合ドメイン(RCN3)-レティキュロカルビン1は、ERの管腔内に位置するカルシウム結合タンパク質である。免疫組織化学的検査は、胎児および成人の様々な器官、主に内分泌および外分泌器官における、RCNの広範な分布を実証した。RCNの過剰発現は、腫瘍形成、腫瘍浸潤、および薬剤耐性において役割を有ししてもよい(Fukuda et al.,2007)。レティキュロカルビン1(RCN1)は、内皮(EC)および前立腺がん(PCa)細胞株の双方の上にある細胞表面関連タンパク質である。細胞表面のRCN1発現は、骨髄内皮細胞の腫瘍壊死因子α処理によって上方制御された(Cooper et al.,2008)。RCN1は、結腸直腸がん(CRC)で上方制御されて、がん細胞に、またはがん細胞近くの間質細胞に局在する。それは、CRCマーカーの新規候補であり得る(Watanabe et al.,2008)。RCN3は、分泌経路に局在する複数EFハンドCa2+結合タンパク質のCREC(Cab45/レティキュロカルビン/ERC45/カルメニン)ファミリーのメンバーである(Tsuji et al.,2006)。乏突起膠腫においては、潜在的に重要な候補遺伝子としてRCN3が示差されている。しかしRCN3の機能については、ほとんど知られていない(Drucker et al.,2009)。
【0149】
バソヌクリン1(BNC1)-バソヌクリンは、非常に限られた組織分布があるジンクフィンガータンパク質である(Tseng,1998)。これまでのところ、バソヌクリンは、重層扁平上皮(皮膚、経口上皮、食道、膣、および角膜)の基底ケラチノサイトにおいて、そして精巣および卵巣の配偶子形成細胞において、主に検出されている(Tseng and Green,1994;Weiner and Green,1998)。今や、バソヌクリンが、rRNA遺伝子(rDNA)の細胞型特異的転写因子であるというかなりの証拠がある。バソヌクリンのジンクフィンガーは、rDNAプロモーター内の3つの進化的に保存された部位と相互作用する(Iuchi and Green,1999;Tseng et al.,1999)。CpGメチル化によるエピジェネティックな調節は、腫瘍形成において、ならびにがん治療に対する応答において、重要な役割を有する。BNC1は、放射線抵抗性のH1299ヒト非小細胞肺がん(NSCLC)細胞株において、低メチル化された。H1299細胞におけるBNC1 mRNA発現の抑制は、これらの細胞の電離放射線に対する抵抗性もまた低下させた(Kim et al.,2010a)。BNC1の異常なDNAメチル化は、慢性リンパ球性白血病(CLL)サンプルでもまた、検出された(Tong et al.,2010)。腎細胞がん(RCC)においては、BNC1のメチル化は、腫瘍のサイズ、病期または等級とは無関係に、より芳しくない予後と関連した(Morris et al.,2010)。
【0150】
形質転換、酸性コイルドコイル含有タンパク質3(TACC3)(TACC3)-TACC3は、ch-TOG(結腸および肝臓腫瘍過剰発現遺伝子)と、微小管を動原体糸に架橋させるクラスリンとの複合体中に存在する。TACC3は、精巣、肺、脾臓、骨髄、胸腺、および末梢血白血球をはじめとする、特定の増殖性組織において発現される。TACC3発現は、いくつかのヒト腫瘍型では変化する。細胞においては、TACC3は、中心小体および紡錘体微小管の双方に局在するが、星状微小管には局在しない(Hood and Royle,2011)。TACC3発現はp53発現と相関し、腫瘍がTACC3およびp53を高度に発現した患者は、腫瘍が双方の免疫染色について低レベルの発現を有した患者よりも、予後が有意により芳しくなかった(P=0.006)。TACC3の増大がNSCLCに増殖優位性を与えて、腫瘍の進行に寄与してもよく、TACC3発現が、NSCLCにおける臨床転帰の強力な予後指標であることが示唆される(Jung et al.,2006)。Tacc3は、Notchシグナル伝達経路の負の制御因子てもよい(Bargo et al.,2010)。
【0151】
Pecanex様3(ショウジョウバエ)(PCNXL3)-Pecanex様タンパク質3(PCNXL3)は、複数回貫通膜タンパク質であり;それは、pecanexファミリーに属する。PCNXL3遺伝子は、染色体領域11q12.1-q13にマッピングされた。3つの新規ヒト腫瘍関連転座切断点が、マーカーD11S4933とD11S546の間の染色体11q13領域に位置した。したがってPCNXL3は、11q13関連疾患遺伝子であるかもしれない(van et al.,2000)。
【0152】
ドローシャは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と相互作用して、RNAi経路の一部として相補的メッセンジャーRNA(mRNA)の切断を誘導することで、多種多様なその他の遺伝子を制御する細胞によって天然に発現される、マイクロRNA(miRNA)、または短いRNA分子のプロセッシング開始に関与する、クラス2 RNase III酵素である。マイクロRNA分子は、pri-miRNAとして知られている長いRNA一次転写産物として合成され、それはドローシャによって切断されて、pre-miRNAとして知られている約70塩基対長の特徴的なステムループ構造が生じる(Lee et al.,2003)。ドローシャは、ドローシャ活性に必須であり適切なプロセッシングに必要なpri-miRNAの一本鎖フラグメントを結合できる二本鎖RNA結合タンパク質パシャ(DGCR8とも称される)もまた含有する(Denli et al.,2004)、マイクロプロセッサ複合体と称されるタンパク質複合体の一部として存在する。(Han et al.,2006)。ヒトドローシャは、それがリボソームRNA前駆体プロセッシングに関与する核dsRNAリボヌクレアーゼであると同定された2000年に、クローン化された(Wu et al.,2000)。ドローシャは、同定およびクローン化された最初のヒトRNase III酵素であった。miRNAのプロセッシングと活性に関与するその他の2つのヒト酵素は、ダイサーおよびアルゴノートタンパク質である。ドローシャおよびパシャはどちらも細胞核に局在し、そこでpri-miRNAからpre-miRNAへのプロセッシングが起こる。次に、この後者の分子は、細胞質においてRNaseダイサーによってさらにプロセシングされ、成熟miRNAになる(Lee et al.,2003)。ドローシャおよびその他のmiRNAプロセッシング酵素は、がんの予後に重要であってもよい(Slack and Weidhaas,2008)。
【0153】
細胞分裂周期6ホモログ(S.セレビシエ(S.cerevisiae))(CDC6)-CDC6タンパク質は、DNA複製の初期段階における制御因子として機能する。それは、細胞周期G1には細胞核に局在するが、S期開始時には細胞質に移行する。さらにCDC6は、高等真核生物細胞において、ATRとの相互作用を通じて複製チェックポイント活性化を制御することが想定されている(Yoshida et al.,2010)。CDC6はDNA複製に必須であり、その調節解除は発がんに関与する。RNA干渉(RNAi)によるCDC6下方制御は、細胞増殖を妨げ、アポトーシスを促進することが判明した(Lau et al.,2006)。CDC6の過剰発現が、いくつかのがんに見られた。CDC6を過剰発現するがん型の例は、胃がん(Tsukamoto et al.,2008)、脳腫瘍(Ohta et al.,2001)、口腔扁平上皮がん(Feng et al.,2008)、子宮頸がん(Wang et al.,2009)、および悪性中皮腫(Romagnoli et al.,2009)である。
【0154】
脱ヨウ素酵素、ヨードチロニン、II型(DIO2)-DIO2遺伝子によってコードされるタンパク質は、ヨードチロニン脱ヨウ素酵素ファミリーに属する。それは甲状腺において高度に発現され、グレーブス病および甲状腺腫がある患者における、甲状腺T3産生の相対的増大に顕著に寄与してもよい(Meyer et al.,2008);(de Souza Meyer et al.,2005))。遺伝子発現パターンは、上方および下方進行型の鼻咽腔(nasopharygeal)がん(NPC)の間で有意差がある。DIO2遺伝子の発現は、上方進行型(局所的増殖および頭蓋底浸潤)よりも、下方進行型(下方=遠隔転移)でより高く、それはNPCの転移可能性と密接に関係していてもよい(Liang et al.,2008a)。DIO2 mRNAならびにDIO2活性は、脳腫瘍において発現される(Murakami et al.,2000)。肺におけるD2活性が存在し、肺末梢部および肺がん組織において類似している(Wawrzynska et al.,2003)。
【0155】
キネシンファミリーメンバー26B(KIF26B)-キネシンは、真核生物細胞に見られる、モータータンパク質のクラスに属するタンパク質である。キネシンは、微小管フィラメントに沿って移動し、ATPの加水分解によってエネルギー供給される(したがってキネシンはATPアーゼである)。キネシンファミリー遺伝子であるKif26bは、Sall1の下流標的である(Nishinakamura et al.,2011)。Kif26bは、尿管芽に接触する間葉細胞の付着を制御するので、腎臓発生に必須である。Kif26bの生体外過剰発現は、非筋肉ミオシンとの相互作用を通じて細胞接着の増大を引き起こした(Terabayashi et al.,2012;Uchiyama et al.,2010)。
【0156】
セルピンペプチダーゼインヒビター、分岐群B(卵白アルブミン)、メンバー3(SERPINB3)-SERPINB3とも称される扁平上皮細胞がん抗原(SCCA)は、セリンプロテアーゼインヒビターの高分子量ファミリー(セルピン)のメンバーである(Suminami et al.,1991)。頭頸部組織がんおよびその他の上皮性がんにおいて、高レベルが報告されている(Torre,1998)。SCCAは、腫瘍周囲組織と比較して、腫瘍において過剰発現されることが報告されており、HCCの組織学的検出のための潜在的マーカーとしての役割が示唆される(Pontisso et al.,2004)。セルピンB3/B4、特にセルピンB4は、異常な上皮性増殖において重要な役割を果たすようである。セルピンB3/B4の評価は、特に肺がんに対する感受性が増大している患者において、疾患進行を予測する上での予後診断的的価値を有し得る(Calabrese et al.,2012)。SCCA1(SERPINB3)は、リソソーム損傷によって誘導される細胞死を阻害する一方で、細胞死受容体アポトーシス経路とは独立してカスパーゼ-8を活性化することで、細胞をERストレスに対して感作させる(Ullman et al.,2011)。いくつかの所見は、SERPINB3が、表皮バリア中断の誘導において重要な役割を果たすことを示唆する。SERPINB3は、表皮内バリア機能の主要決定要因であってもよい(Katagiri et al.,2010)。
【0157】
サイクリン依存性キナーゼ1(CDK1)-p34cdc2またはCDK1(サイクリン依存性キナーゼ1)としてもまた知られているCDC2(細胞分裂周期2)は、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼのファミリーであるCDKに属し、細胞周期調節において重要な役割を果たす(Vermeulen et al.,2003)。CDC2の過剰発現は、いくつかのがんにおいて見出されたが(Vermeulen et al.,2003)、サイクリンのようなその他の細胞周期タンパク質の発現は、なおもより頻繁に調節不全になる。CDC2の過剰発現は、NSCLCについて記載されている(Xu et al.,2011;Zhang et al.,2011)。Perumal et al.(2012)は、CDC2の過剰発現が予後不良と相関することを報告した(Perumal et al.,2012)。さらに、一研究は、早期非小細胞肺がんにおける再発の予測因子としてのCDC2の臨床利用の可能性を示唆した(Kubo et al.,2014)。
【0158】
コラーゲン、XI型、α1(COL11A1)-COL11A1は、XI型コラーゲンの2つのα鎖の1つである、小線維性コラーゲンをコードする。COL11A1は、例えば、結腸直腸がん(Freire et al.,2014)、乳がん(Ellsworth et al.,2009)、胃がん(Zhao et al.,2009B)、膀胱腫瘍(Ewald et al.,2013)などのいくつかのがんにおいて、上方制御されることが報告された。卵巣がんにおけるCOL11A1発現は、がん再発および低生存率と関連がある。COL11A1のノックダウンは、生体外細胞移動、浸潤、およびマウスにおける腫瘍進行を低下させる(Cheon et al.,2014;Wu et al.,2014B)。COL11A1は、マイクロアレイ分析に基づいて、健常対照と比較して、非喫煙女性肺がん患者の肺組織において(expressed lung tissue)、示差的に発現されることが判明した(Lv and Wang,2015)。
【0159】
コラーゲン、I型、α2(COL1A2)-COL1A2は、その三重らせんが2つのα1鎖および1つのα2鎖を含む、I型コラーゲンのプロα2鎖をコードする。胃がんサンプルにおいては、COL1A2は正常組織と比較して上方制御され(Yan et al.,2014;Yang et al.,2007)、進行した段階と関連することが判明した(Yasui et al.,2004)。COL1A2は骨肉腫(Wu et al.,2014a)、進行期膀胱がん(Fang et al.,2013)、頭頸部/口腔扁平上皮がん(HNOSCC)(Ye et al.,2008)、および最も頻度の高い小児悪性脳腫瘍である髄芽細胞腫(Liang et al.,2008B)において、上方制御されることが報告された。
【0160】
ペリオスチン、骨芽細胞特異的因子(POSTN)POSTNは、ファシクリンファミリーとの類似性があるタンパク質をコードして、細胞生存および血管新生に関与する遺伝子であり、様々なタイプのヒトがんにおける腫瘍進行の有望なマーカーとして出現した(Ruan et al.,2009)。ペリオスチンタンパク質またはmRNAの高度発現は、乳がん(Zhang et al.,2010c)、結腸がん(Kikuchi et al.,2008)、頭頸部がん(Kudo et al.,2006)、膵臓がん(Kanno et al.,2008)、乳頭状甲状腺がん(Puppin et al.,2008)、前立腺がん(Tischler et al.,2010)、卵巣がん(Choi et al.,2010)、肺がん(Takanami et al.,2008)、および肝臓がん(Utispan et al.,2010)、ならびに食道扁平上皮がん(Kwon et al.,2009)をはじめとするほとんどの固形腫瘍において検出されたペリオスチンは、肺がんにおいて異常に高度に発現され、血管新生、浸潤、および転移と相関する(Takanami et al.,2008)。A549非小細胞肺がん(NSCLC)細胞におけるペリオスチンのサイレンシングは、腫瘍細胞成長を阻害して細胞浸潤を低下させる(Wu et al.,2013c)。
【0161】
ATフック、DNA結合モチーフ、1含有(AHDC1)-この遺伝子は、おそらくDNA結合において機能する、2つのATフックを含有するタンパク質をコードする。この遺伝子の変異は、脳視覚障害と関連した(Bosch et al.,2015)。全エクソーム配列決定を用いて、AHDC1新生トランケート変異が、症候性表出性言語遅滞、緊張低下、および睡眠時無呼吸症がある個人で同定された。変異が、この遺伝的症候群を引き起こす可能性が最も高い(Xia et al.,2014)。
【0162】
アポトーシス誘導因子、ミトコンドリア関連、2(AIFM2)-この遺伝子は、一本鎖DNAと結合して細菌およびウイルスDNAの存在下でアポトーシスに寄与すると考えられる、フラボタンパク質酸化還元酵素をコードする。AIFM2は十分に特性決定されていないが、限られた証拠は、それが腫瘍抑制因子として機能してもよいことを示唆する。AIFM2発現は腫瘍抑制因子p53によって活性化され、p53の異所性発現はアポトーシスを誘導することが実証されている。さらに、AIFM2発現は、腎臓がん、胃がん、結腸直腸がん、およびその他のがんサンプルをはじめとする、ヒト腫瘍のパネルにおいて、下方制御されることが示された(Ohiro et al.,2002;Wu et al.,2004)。しかし、ノックアウトマウスモデルにおいては、AIFM2はp53依存性腫瘍抑制に必要ではなかった(Mei et al.,2006)。細胞培養において、AIFM2は、アデノシン誘導性アポトーシスの媒介に関与している(Yang et al.,2011)。
【0163】
染色体6オープンリーディングフレーム132(C6orf132)-C6orf132は、染色体6オープンリーディングフレーム132をコードする。遺伝子C6orf132は、染色体6p21.1に位置する(Mungall et al.,2003)。この遺伝子の機能は、依然として不明である。
【0164】
CCZ1液胞タンパク質輸送およびバイオジェネシス関連ホモログ(S.セレビシエ(S.cerevisiae))(CCZ1)、CCZ1液胞タンパク質輸送およびバイオジェネシス関連ホモログB(S.セレビシエ(S.cerevisiae))(CCZ1B)-CCZ1は、CCZ1液胞タンパク質輸送およびバイオジェネシス関連ホモログ(S.セレビシエ(S.cerevisiae))をコードする。CCZ1Bは、CCZ1液胞タンパク質輸送およびバイオジェネシス関連ホモログB(S.セレビシエ(S.cerevisiae))をコードする。CCZ1およびCCZ1Bは、比較プロテオミクスによってカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)において進化的に保存された、ヒト遺伝子として同定された(Lai et al.,2000)。遺伝子CCZ1およびCCZ1Bは、染色体7p22.1上に位置する(Hillier et al.,2003)。CCZ1は、ファゴソーム上にGTPアーゼRAB7A7を動員することで、リソソームバイオジェネシスおよびファゴソームの成熟において機能するようである(Nieto et al.,2010)。CCZ1B遺伝子は、未同定遺伝子である。
【0165】
コラーゲン、V型、α2(COL5A2)-この遺伝子は、低存在量線維性コラーゲンの1つのα鎖をコードする。COL5A2は、結腸直腸がん組織サンプルにおいて、隣接する非がん組織と比較して、上方制御されることが報告された(Fischer et al.,2001)。非浸潤性乳管がん(DCIS)、浸潤性乳管がん(IDC)、および乳がん患者の間質のマッチさせたサンプルは、IDCにおけるCOL5A2の発現の上昇を示した(Vargas et al.,2012)。骨肉腫においては、COL5A2が上方制御され、腫瘍形成に重要であると報告された(Wu et al.,2014)。
【0166】
コレクチンサブファミリーメンバー12(COLEC12)-この遺伝子は、コラーゲン様配列および炭水化物認識ドメインを有するタンパク質である、C-レクチンファミリーのメンバーをコードする。COLEC12タンパク質は、スカベンジャー受容体であり、宿主防御と関連するいくつかの機能を示す細胞表面糖タンパク質である。COLEC12遺伝子は、未分化甲状腺がんの可能なバイオマーカー候補であることが示唆された(Espinal-Enriquez et al.,2015)。COLEC12は、HER2陽性乳がん細胞株BT474において示差的に発現され、トラスツズマブ効率に寄与するかもしれない(von der Heyde et al.,2015)。
【0167】
コートマータンパク質複合体、サブユニットγ1(COPG1)-COPG1は、コートマー複合体1のタンパク質サブユニット(COPI)をコードする。COPI被覆小胞は、ゴルジ体からERおよびゴルジ体内への逆行性輸送を媒介する。七量体コートマー複合体であるCOPIコートの細胞質ゾル前駆体は、2つのサブコンプレックスから構成されると考えられ得る。第1のものは、APクラスリンアダプターサブユニットに遠位相同である、β、γ、δ、およびζ-CFサブユニットからなる。(Watson et al.,2004)。EGFRのEGF依存性核輸送は、EGFRと、COPIコモマーのサブユニットの1つであるγ-COPとの結合に関与する、ゴルジ体からERへの逆行性輸送によって調節される(Wang et al.,2010b)。免疫組織化学(immunohistochemisty)により、COPG1は、肺がん由来内皮細胞およびがん性肺細胞において豊富に発現することが確認された(Park et al.,2008)。
【0168】
CSNK2A2-カゼインキナーゼIIサブユニットαプライムは、ヒトにおいてCSNK2A2遺伝子によってコードされる酵素である。後ろ向き研究は、CSNK2A1が、リンパ節転移状態とは無関係に、完全切除術後のNSCLC患者における有用な予後マーカーであってもよいことを示した(Wang et al.,2010c)。CSNK2A2は、後期のヒト結腸直腸がんにおける腫瘍進行と関連づけられている(Nibbe et al.,2009)。
【0169】
樹状細胞発現7回膜貫通タンパク質(DCSTAMP)-この遺伝子は、主に樹状細胞において発現される、7回膜貫通タンパク質をコードする。コードされたタンパク質は、樹状細胞によって行われる一連の免疫学的作用に関与する。DCSTAMPは、乳頭状甲状腺がんにおいて示差的に発現する遺伝子として同定されており(Lee et al.,2009)、ひき続いてこれらのサンプルにおいて、上昇したレベルで発現されることが確認された(Kim et al.,2010)。
【0170】
先天性角化異常症1、ジスケリン(DKC1)-DKC1遺伝子は、2つの異なる複合体において機能する。ジスケリンは、リボソームRNAおよび小核RNA上のウリジンの修飾、そしてテロメラーゼRNA要素(TERC)の安定化の双方を媒介する。ヒト腫瘍においては、ジスケリン発現は、rRNA修飾およびTERCレベルの双方と関連することが判明した(Penzo et al.,2015)。さらに、ジスケリンの過剰発現は、例えば、HCCなどの多様な腫瘍型における、予後不良と結びつけられている(Liu et al.,2012)。
【0171】
二重特異性チロシン-(Y)-リン酸化調節キナーゼ2(DYRK2)/二重特異性チロシン-(Y)-リン酸化制御キナーゼ4(DYRK4)-DYRK2およびDYRK4は、細胞の分化、増殖、および生存の調節に関与する、Dyrkタンパク質キナーゼファミリー(5つのメンバーを有する哺乳類ファミリー)に属する(Papadopoulos et al.,2011)。DYRK2は、Snailを分解することで、乳がんにおける上皮間葉転換を調節する(Mimoto et al.,2013)。DYRK2はp53を制御してアポトーシスを誘導し、DNA損傷に対する応答を増強する:遺伝毒性ストレスへの曝露に際して、DYRK2は核内に移行し、リン酸化によってp53を活性化する(Meulmeester and Jochemsen,2008;Taira et al.,2007)。DYRK4遺伝子は、CCND2遺伝子が影響を受けた際のCRCの感受性遺伝子座として記載された、12p13.32番染色体にマッピングされる(Jia et al.,2013;Peters et al.,2013)。いくつかの研究は、神経細胞分化におけるDYRK4の役割を強調している(Leypoldt et al.,2001;Slepak et al.,2012)。
【0172】
ERO1様(S.セレビシエ(S.cerevisiae))ERO1L-ERO1様タンパク質αは、ヒトにおいてERO1L遺伝子によってコードされるタンパク質である。ERO1-αは、小胞体に存在し、低酸素下で誘導される酸化酵素である。ERO1-αは、多様な腫瘍型において過剰発現される。さらに、がん関連ERO1-αは、酸化的折り畳みを通じてMHCクラスI分子の発現を制御する(Kukita et al.,2015)。がん細胞におけるhERO1-αの発現は、より芳しくない予後と関連し、ひいては乳がんのある患者の予後因子であり得ることが示唆されている(Kutomi et al.,2013)。天然ヒト腫瘍においては、ERO1L mRNAは、上方制御されたVEGF発現のものと一致する、低酸素微小環境内で特異的に誘導された。siRNAをじたERO1L産生の低下は、VEGF分泌の顕著な阻害、損なわれた増殖能力、およびアポトーシス促進をもたらすことが示されている(May et al.,2005)。
【0173】
配列類似性83があるファミリー、メンバーA(FAM83A)-FAM83Aは、いくつかの多様ながん組織型で上昇すると判定された(Cipriano et al.,2014)。しかし、FAM83Aの機能は不明確なままである(Boyer et al.,2013)。FAM83Aは、肺がんの腫瘍特異的遺伝子であると予測され、肺がんサンプルにおけるその発現が実験的に確認されている。発現は、特に腺がんにおいて高かった(Li et al.,2005)。その他の研究者は、肺がんの進行との相関を報告した(Liu et al.,2008)。
【0174】
脆弱X精神遅滞、常染色体性ホモログ1(FXR1)-FXR1遺伝子によってコードされるタンパク質は、機能的に類似したタンパク質FMR1およびFXR2と相互作用するRNA結合タンパク質である。FXR1は、がんをはじめとする様々なヒト疾患において調節解除される。FXR1は、がん細胞の増殖、移動、および浸潤を増大させ得る、がん遺伝子の機能を果たした(Jin et al.,2015)。FXR1は、NSCLCの新規がん遺伝子であり、FXR1は、肺がん細胞の同一アンプリコン内のプロテインキナーゼC、ι(PRKCI)と、上皮細胞トランスフォーミング2(ECT2)の2つのその他の発がん遺伝子と新規複合体を形成することで、その調節作用を実行する(Qian et al.,2015B)。NSCLCにおけるFXR1発現の増大は、低生存率を予測するバイオマーカーの候補であり、新規治療標的に相当するかもしれないことが報告されている。さらに、FXR1発現は、複数のヒトがんにおける臨床転帰不良と相関しており、がん進行におけるこのRNA結合タンパク質のより広いかかわり合いが示唆される(Qian et al.,2015a)。
【0175】
G2/M期特異的E3ユビキチンタンパク質リガーゼ(G2E3)-G2/M期特異的E3ユビキチン-タンパク質リガーゼは、ヒトにおいてG2E3遺伝子によってコードされる酵素である。G2E3は、細胞質と核の間を往復し、核小体に集中し、DNA損傷に応答して核質に再局在する。G2E3は、初期胚形成におけるアポトーシスの予防に不可欠な、二重機能ユビキチンリガーゼである(Brooks et al.,2008)。いくつかの結果は、G2E3がDNA損傷応答および細胞生存の分子決定因子であり、その喪失が、DNA損傷処置に向けて腫瘍細胞を感作することを示唆する(Schmidt et al.,2015B)。さらに、G2E3の喪失は、アポトーシスを始動してがん細胞の増殖を低下させた。したがって、G2E3は生存因子の役割を果たす(Schmidt et al.,2015a)。
【0176】
グアニル酸結合タンパク質5(GBP5)-ヒトグアニル酸結合タンパク質5(hGBP5)は、炎症促進性サイトカインによるそれらの高い誘導で良く知られている、インターフェロンγ誘導性大型GTPアーゼファミリーに属する(Wehner and Herrmann,2010)。hGBP5は、3つのスプライス変異体で存在して2つの異なるタンパク質を形成し、その内、腫瘍特異的なものは、97アミノ酸でC末端がトランケートされている(Fellenberg et al.,2004)。
【0177】
グルタミナーゼ(GLS)-GLS遺伝子は、K型ミトコンドリアグルタミナーゼをコードする。グルタミンをグルタミンに変換するグルタミナーゼ(GLS)は、がん細胞の代謝、成長、および増殖において重要な役割を果たす。いくつかの研究は、GLSが腫瘍形成に必要であることを実証し、がん治療のために、GLSに対する腫瘍細胞自律性依存を標的とする可能なアプローチとして、GLSの小分子および遺伝子阻害を支持する(Xiang et al.,2015)。GLSスプライス変異体の一過性ノックダウンは、GACの喪失が、NSCLCがん細胞増殖に対して最も有害な効果を有することを示唆した(van den Heuvel et al.,2012)。GLS1発現は上方制御され、結腸直腸がん(Huang et al.,2014a)、肝細胞がん(HCC)(Yu et al.,2015)、および膵管腺がん(PDA)(Chakrabarti et al.,2015)における、臨床病理学的要素と関連がある。
【0178】
熱ショック70kDaタンパク質2(HSPA2)-HSPA2は、乳がん(Mestiri et al.,2001)、子宮頸がん(Garg et al.,2010a)、膀胱尿路上皮がん(Garg et al.,2010c)、鼻咽頭がん(Jalbout et al.,2003)、および悪性腫瘍(Chouchane et al.,1997)などのヒトがんのサブセットにおいて異常なレベルで発現される、可能ながん促進タンパク質として同定されている。HSPA2遺伝子活性のいくらかのレベルはまた、数種のヒトがん(Scieglinska et al.,2008)に由来する細胞株においても観察された一方で、がん細胞におけるHSPA2遺伝子のサイレンシングは、成長停止と腫瘍形成能の低下をもたらした(Rohde et al.,2005;Xia et al.,2008)。さらにHSPA2遺伝子の多形性は、肺がん発症リスクの増大と関連する(Wang et al.,2010a)。HSPA2の過剰発現は、ヒト乳がん、子宮頸がん、および膀胱尿路上皮がんにおいて、細胞増殖の増大、分化不良、およびリンパ節転位と相関する(Garg et al.,2010a;Garg et al.,2010c;Mestiri et al.,2001)。
【0179】
熱ショック70kDaタンパク質8(HSPA8)-HSPA8遺伝子は、熱誘導性メンバーと構成的発現メンバーの双方を含有する、熱ショックタンパク質70ファミリーHsc70のメンバーをコードする。HSPA8は、新生ポリペプチドに結合して、正確なタンパク質の折り畳みを容易にする(Beckmann et al.,1990)。Hsc70は、分子シャペロンとして機能し、タンパク質合成、折り畳み、構築、細胞コンパートメント間の輸送、および分解を助ける(Bukau and Horwich,1998;Hartl and Hayer-Hartl,2002)。Hsc70は、非悪性乳房細胞ならびに乳がん細胞において発現され(Kao et al.,2003;Vargas-Roig et al.,1998)、化学療法抵抗性がん細胞におけるHsp/hsc70の過剰発現は(Ciocca et al.,1992;Lazaris et al.,1997)、これらのタンパク質の可能な臨床マーカーについての研究を促している(Ciocca and Calderwood,2005)。この分泌されたhsc70シャペロンには、細胞増殖における潜在的役割があり、それが、カテプシンDを過剰発現するがん細胞におけるより高い腫瘍成長を説明するかもしれない(Nirde et al.,2010)。さらにRuisin et al.は、この遺伝子の多形性と肺がんリスクの間の関連性を報告した(Rusin et al.,200
4)。
【0180】
熱ショック70kDaタンパク質1A(HSPA1A)-HSP72としても知られているHSPA1Aは、がんにおいて強力に上方制御され、p53依存性およびp53非依存性の老化経路を抑制することで、腫瘍細胞の増殖に重要な役割を果たすことが示された(Sherman,2010)。過剰発現は、RCC(Atkins et al.,2005)および胃腸がん(Wang et al.,2013a)で記載され、後者は、進行、浸潤、およびリンパ節および遠縁の転移の存在との有意な相関を示す。
【0181】
熱ショック70kDaタンパク質1B(HSPA1B)-HSP70-2としてもまた知られているHSPA1Bは、精母細胞およびがん細胞の増殖に必須の精巣特異的熱ショックタンパク質70-2をコードする(Hatfield and Lovas,2012)。異なる研究が、子宮頸がん(Garg et al.,2010b)、腎細胞がん(Singh and Suri、2014)、および膀胱がんの疾患進行における、HSP70-2の重要な役割を示唆しており、遺伝子内多形性は、胃がんの発生と関連する(Ferrer-Ferrer et al.,2013)。いくつかの機能性HSPA1B変異体は、肺がんリスクおよび生存率と関連する。これらのHsp70遺伝的変異は、肺がんリスクおよび予後を予測する有用なバイオマーカーを提供してもよい(Szondy et al.,2012;Guo et al.,2011)。
【0182】
熱ショック70kDaタンパク質1様(HSPA1L)-ヒートショック70kDaタンパク質1Lは、ヒトにおいて、第6染色体上のHSPA1L遺伝子によってコードされるタンパク質である。それはHSPA1AおよびHSPA1Bと密接な相同性を共有するが、それは異なって制御され、熱誘導性ではない(Ito et al.,1998)。遺伝子内の多型性は、前立腺がん易罹患性および予後(Sfar et al.,2010)および肝細胞がん易罹患性(Medhi et al.,2013)と関連する。
【0183】
熱ショック70kDaタンパク質6(HSP70B’)(HSPA6)-熱ショックタンパク質(Hsp)70B’はヒトHsp70シャペロンであり、それは厳密に誘導性であり、ほとんどの細胞において基本発現レベルは、極小または皆無である(Noonan et al.,2007)。熱ショックタンパク質70B’としても知られているHSPA6は、Y15処理によって神経膠芽腫細胞において(Huang et al.,2014b)、熱ショックによって頭頸部がん細胞において(Narita et al.,2002)、上方制御されることが示された。高レベルのHSPA6は、HCCのより早期の再発と関連するかもしれない(Yang et al.,2015)。
【0184】
熱ショック70kDaタンパク質7(HSP70B)(HSPA7)-HSPA7は、偽遺伝子である。
【0185】
HSPA(熱ショック70kDa)結合タンパク質、細胞質コシャペロン1(HSPBP1)-熱ショック結合タンパク質HspBP1は、Hsp70コシャペロンファミリーのメンバーである。HspBP1は、シャペロンHsp70に結合してそれを制御する、コシャペロンである。HspBP1およびHsp70のレベルは、健常人の血清と比較して、乳がん患者の血清で有意に高かった(Souza et al.,2009)。HSPBP1は、白血病患者において過剰発現された(Sedlackova et al.,2011)。HspBP1は、ヒトHCV-HCCにおいて上方制御され、増大はHsp70レベルの増大と相関した(Yokoyama et al.,2008)。
【0186】
GTPアーゼ活性化タンパク質1含有IQモチーフ(IQGAP1)-p195としても知られているIQGAP1は、ヒトにおいてIQGAP1遺伝子によってコードされる遍在的に発現されるタンパク質である。IQGAP1は、いくつかの異なる細胞プロセス、特に細胞骨格再配置の重要な媒介物である。最近の研究は、一連の腫瘍において観察されたIQGAP1の過剰発現と特徴的な膜局在によって支持される、がんにおけるIQGAP1の潜在的役割を示唆している(Johnson et al.,2009)。IQGAP1の過剰発現は、膵臓がんの発生と進行において、重要な役割を果たしてもよい(Wang et al.,2013c)。IQGAP1発現の抑制は、食道扁平上皮がん(ESCC)における腫瘍細胞の増殖、移動、および浸潤を低下させた(Wang et al.,2014c)。さらに、卵巣がん幹細胞様細胞(CSC-LC)の分化中のIQGAP1発現の増大は、侵襲性細胞挙動に関与しており、それは卵巣がんの転移に寄与してもよい(Huang et al.,2015a)。
【0187】
インテグリン、β6(ITGB6)-ITGB6はインテグリンのサブタイプであり、それは上皮細胞の表面でのみ発現され、細胞外マトリックスタンパク質の受容体である(Weinacker et al.,1994)。研究は、研究された10種のヒト腫瘍型において、正常組織と比較して増大されたITGB6の発現を認めた。ITGB6発現の最大頻度は、子宮頸部、皮膚、食道、および頭頸部の扁平上皮がんで報告された。注目すべきことに、ITGB6の抗体抗体媒介性遮断が、生体内における腫瘍進行を阻害した(Van Aarsen et al.,2008)。ITGB6は、腫瘍特異的薬物送達の標的として活用されており、結腸がんにおける治療有効性を増強した(Liang et al.,2015;Zhao-Yang et al.,2008)。乳がんにおいては、ITGB6のmRNAまたはタンパク質のどちらかの高度発現は、非常に低い生存率および遠位部位への転移増大と関連した。ITGB6を標的とする抗体は、乳がんマウスモデルにおいて腫瘍増殖を阻害した(Allen et al.,2014)。
【0188】
リジン(K)特異的デメチラーゼ6B(KDM6B)-JMJD3としても知られているKDM6Bは、ヒトにおいてKDM6B遺伝子によってコードされるヒストンデメチラーゼである。KDM6Bは、ヒストン3のリジン27残基を脱メチル化することで、転写調節に影響を及ぼす。低いKDM6B発現は、外科的切除されたCRC患者における不良予後の独立した予測因子であった(P=0.042)(Yokoyama et al.,2008)。さらに、KDM6Bの過剰発現は、ミトコンドリア依存性アポトーシスを開始させ、NSCLC細胞における浸潤-転移カスケードを減衰させることで細胞増殖を阻害した(Ma et al.,2015)。他方、KDM6Bは、腎明細胞がん(ccRCC)において高い発現レベルを有し、ccRCC予後不良と正の相関がある。KDM6Bのノックダウンは、生体外でccRCC腫瘍形成を阻害し得る(Li et al.,2015)。さらに、KDM6Bの調節解除は、遮断から終末分化をもたらすp53経路の阻害を通じて、グリオーマ発生に寄与してもよい(Ene et al.,2012)。
【0189】
ケラチン9、I型(KRT9)-ケラチン9は、ヒトにおいてKRT9遺伝子によってコードされるI型サイトケラチンである。これは、手掌足底の最終分化表皮にのみ見られる。このタンパク質をコードする遺伝子の突然変異は、表皮剥離性の掌蹠角皮症を引き起こす(Reis et al.,1994)。KRT9は、HCCで上方制御された。この過剰発現は、HCC転移において重要な役割を果たしてもよく、HCC転移を予測するための可能な血清マーカーとして使用し得る(Fu et al.,2009)。
【0190】
LINE1レトロ転移因子1(L1RE1)-LRE1としても知られているL1RE1遺伝子は、自律性レトロトランスポゾン活性がある可動DNA配列である、「LINE」(長鎖散在反復配列)レトロ転移因子(retrotranposable)(LRE)をコードする。LINE1レトロトランスポゾンのファミリーは、報告によれば、多くのがんにおいて低メチル化されて、ゲノム中の包括的メチル化状態を反映する(Ostertag and Kazazian,Jr.,2001)。22q11~q12に位置する1つの長鎖散在反復配列LRE1は、包括的メチル化状態の一貫性がある指標である(Chalitchagorn et al.,2004;Ostertag and Kazazian,Jr.,2001)。いくつかのデータは、LRE1相対メチル化が、頭頸部扁上皮がん(HNSCC)の独立したエピジェネティックバイオマーカーであることを示唆している(Hsiung et al.,2007)。
【0191】
ラミニン、β3(LAMB3)-LAMB3は、αサブユニットおよびγサブユニットと一緒になってラミニン-5を形成する、ラミニンのβ3サブユニットをコードする。LAMB3は、乳頭状甲状腺がん(PTC)(Barros-Filho et al.,2015)、子宮頸部扁平上皮がん(頸部SCC)(Yamamoto et al.,2013)、および口腔扁平上皮がん(OSCC)(Tanis et al.,2014)で上方制御された。遺伝子アレイおよびバイオインフォマティクス分析は、LAMB3が肺がんに関与する重要な遺伝子であることを示唆した。この遺伝子のノックダウンは、生体外および生体内でヒト肺がん細胞の浸潤と転移を抑制した。LAMB3は、肺がん患者において過剰発現され、その発現はリンパ管転移と相関した(Wang et al.,2013b)。
【0192】
リソソームタンパク質膜貫通型5(LAPTM5)-LAPTM5遺伝子は、リソソームと関連する細胞内小胞上の膜タンパク質をコードする。LAPTM5は肺がんにおいて異常にメチル化され、メチル化は腫瘍の分化状態と相関した(Cortese et al.,2008)。LAPTM5陽性小胞の蓄積は、神経芽細胞腫の自然退縮中に起こるプログラム細胞死と密接に関連した(Inoue et al.,2009)。CD1eタンパク質は、樹状細胞における脂質抗原の提示に関与する。LATPM5は、CD1eユビキチン化または可溶性リソソームCD1eタンパク質生成のどちらかを調節する(Angenieux et al.,2012)。
【0193】
ミニ染色体維持複合成分4(MCM4)-MCM4遺伝子によってコードされるタンパク質は、真核生物のゲノム複製の開始に必須である、高度に保存されたミニ染色体維持タンパク質(MCM)の1つである。MCM4は、膀胱がんにおいて下方制御され(Zekri et al.,2015)、正常肺組織と比較して肺腺がんにおいて示差的に発現された(Zhang et al.,2014)。MCM4の過剰発現は、乳がん患者におけるより短い生存期間と関連した(Kwok et al.,2015)。
【0194】
ミニ染色体維持複合成分5(MCM5)-MCM5は、DNA複製および細胞周期調節に関与するとされる。MCM5の高い発現レベルは、口腔扁平上皮がん(Yu et al.,2014)、子宮頸がん(Das et al.,2013)、胃がん(Giaginis et al.,2011)、および結腸がん(Burger,2009)において、進行およびより芳しくない予後と関連することが示された。
【0195】
メラノレグリン(MREG)-MREGは、逆向性の微小管依存性メラノソーム輸送の調節(Ohbayashi et al.,2012)を通じて(though)、細胞内メラノソーム分布において役割を果たす(Wu et al.,2012)。さらに、MREGは、メラノソームへの色素取り込みの調節においても機能する(Rachel et al.,2012)。MREGは、エストロゲン受容体陽性乳がん細胞において、その3’UTR中のmiRNA-26によって標的化されることが示された。しかし、miR-26媒介細胞増殖へのMREGの直接関与は実証され得なかった(Tan et al.,2014)。
【0196】
NODALモジュレーター1(NOMO1)/NODALモジュレーター2(NOMO
2)/NODALモジュレーター3(NOMO3)-NOMO1、NOMO2、およびNOMO3遺伝子は、第16染色体のpアームに位置する重複領域にある、3つの高度に類似した遺伝子である。これらの3つの遺伝子は、同一機能を有してもよい密接に関連するタンパク質をコードする。NOMO1は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)細胞株HuT78において、過剰発現遺伝子として同定された(Lange et al.,2009)。NOMO1は、Nodalシグナル伝達の拮抗物質である。Nodalは、脊椎動物の発達において重要な役割を有する、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)スーパーファミリーのシグナル伝達因子である(Haffner et al.,2004)。
【0197】
ヌクレオポリン153kDa(NUP153)-核膜孔複合体(NPC)の構成要素であるヌクレオポリン153(Nup153)は、NPCと核ラミナとの相互作用に関与している。Nup153の枯渇は、ヒト乳がん細胞において細胞移動を損なう、劇的な細胞骨格再配置を誘導する(Zhou and Pante,2010)。NUP153ヌクレオポリンは、興味深いことにTGFβシグナル伝達のトランスデューサーであるSMAD2を含めた、核と細胞質間の特定タンパク質の分布を制御する(Xu et al.,2002)。近年、いくつかの分析は、膵臓がんにおけるヌクレオポリンNUP153の新しい可能な発がん性機能(表面的にはTGFβシグナル伝達を調節することによる)を明らかにした(Shain et al.,2013)。
【0198】
PERP、TP53アポトーシスエフェクター(PERP)-PERPは、細胞-細胞接着および腫瘍抑制において重要な役割を果たす、デスモソームタンパク質をコードする、p53/p63制御される遺伝子である。PERPの発現の喪失は、扁平上皮がん(SCC)への移行と、口腔内SCCがある患者における局所再発の増大と相関する(Kong et al.,2013)。PERPの発現は、多数のヒト乳がん細胞株において低下した(Dusek et al.,2012)。いくつかの研究は、Perp欠損が、細胞生存、デスモソーム喪失、および炎症を増強することで、がんを促進することを示唆した(Beaudry et al.,2010)。PERPは、p53のアポトーシス関連標的であり、その活性化だけでも、細胞死をもたらすアポトーシス経路を誘導するのに十分である(Chen et al.,2011)。
【0199】
推定ホメオドメイン転写因子1(PHTF1)/推定ホメオドメイン転写因子2(PHTF2)-PHTF1(推定ホメオドメイン転写因子)は、ヒトゲノムの1p11~p13に位置する推定ホメオボックス遺伝子である。この遺伝子は進化的に保存され、主に精巣において発現される(Manuel et al.,2000)。転写因子として、PHTF1遺伝子は、主に、DNA依存性転写などの生物学的プロセスおよび生物学的過程の制御に関与する。PHTF1の過剰発現は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)細胞株における、細胞増殖およびアポトーシスの制御に関与する。PHTF1は、腫瘍抑制因子様遺伝子であってもよく、PHTF1-FEM1b-Apaf-1アポトーシス経路を始動させるための治療標的であってもよい(Huang et al.,2015b)。
【0200】
推定ホメオドメイン転写因子2は、ヒトにおいてPHTF2遺伝子によってコードされるタンパク質である。ヒトゲノムPHTF2は、筋肉において主に発現され、ヒトゲノムの7q11.23-q21に位置する(Manuel et al.,2000)。
【0201】
プレクストリン相同性ドメイン含有、ファミリーM(RUNドメインあり)メンバー1(PLEKHM1)-PLEKM1遺伝子によってコードされるタンパク質は、骨吸収に必須であり、破骨細胞における小胞輸送において重要な役割を果たしてもよい。この遺伝子の変異は、常染色体劣性大理石骨病6型(OPTB6)と関連する(van et al.,2004)。PLEKHM1は、上皮性卵巣がんの候補感受性遺伝子であることが示唆された(Permuth-Wey et al.,2013)。
【0202】
リン脂質転送タンパク質(PLTP)-リン脂質転送タンパク質(PLTP)は、炎症の制御において重要な役割を果たす。いくつかのデータは、PLTPがマクロファージにおいて抗炎症能力を有することを示唆する(Vuletic et al.,2011)。さらに、PLTPは、トリアシル脂質Aとリポタンパク質との結合を媒介する上で必須であり、その滞留時間の延長と、その炎症促進性および抗がん特性の増幅につながる(Gautier et al.,2010)。PLTPは、乳がん患者において示差的に発現され、化学療法応答と関連するかもしれない(Chen et al.,2012)。
【0203】
タンパク質ホスファターゼ2、制御サブユニットB”、α(PPP2R3A)-この遺伝子は、タンパク質ホスファターゼ2の制御サブユニットの1つをコードする。タンパク質ホスファターゼ2(旧称2A型)は、4つの主要なSer/Thrホスファターゼの1つであり、細胞増殖および分裂の負の制御に関与するとされる(Ruediger et al.,2001)。PPP2R3Aは、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)において、頻繁にメチル化される(Dunwell et al.,2009)。
【0204】
PTC7タンパク質ホスファターゼホモログ(S.セレビシエ(S.cerevisiae)(PPTC7)-PPTC7は、PTC7タンパク質ホスファターゼホモログをコードして、染色体12q24.11上に位置する。PPTC7は、近年、環境毒物に応答する新規感受性遺伝子として同定された(Zhu et al.,2015)。
【0205】
タンパク質キナーゼ、DNA活性化、触媒ポリペプチド(PRKDC)-PRKDCは、PI3/PI4キナーゼファミリーのメンバーである、DNA依存性タンパク質キナーゼ(DNA-PK)の触媒サブユニットをコードする。PRKDCは、Akt/GSK3経路を通じて、c-Myc腫瘍性タンパク質を安定化させてもよいことが示された(An et al.,2008)。PRKDCの活性化は、HCC増殖、ゲノム不安定性、および微小血管密度と正の相関があり、アポトーシスおよび患者の生存期間と負の相関がある(Evert et al.,2013)。
【0206】
プロテアソーム(プロサム、マクロペイン)サブユニット、α型、4(PSMA4)-PSMA4は、非リソソーム経路中のATP/ユビキチン依存性過程においてペプチドを切断する、プロテアソームサブユニットα4をコードする。PSMA4遺伝子における一塩基多型は、中国の漢族における肺がんのリスクと連付けられている(Wang et al.,2015)。他方、PSMA4遺伝子における一塩基多型は、非小細胞肺がん感受性の主要原因ではないことが報告されている(Yongjun Zhang et al.,2013)。さらに、PSMA4の過剰発現は、正常な肺組織と比較して、肺腫瘍において観察された。PSMA4発現の下方制御は、プロテアソーム活性を低下させてアポトーシスを誘導した(Liu et al.,2009)。
【0207】
タンパク質チロシンホスファターゼ、非受容体型13(PTPN13)-この遺伝子は、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーのメンバーをコードする。PTPは、細胞増殖、分化、有糸分裂周期、および発がん性形質転換をはじめとする、多様な細胞プロセスを制御するシグナル伝達分子である。PTPN13は、Fas受容体と相互作用することが判明し、したがって、Fas媒介プログラム細胞死において役割を有するするかもしれない。さらに、PTPN13は、GTPアーゼ活性化タンパク質と相互作用し、したがって、Rhoシグナル伝達経路の制御因子として機能してもよい。血液悪性腫瘍においては、PTPN13は、リンパ腫および骨髄性白血病において、それぞれ腫瘍増殖を抑制または促進する、矛盾した効果を有する(Wang et al.,2014b)。これは、発がん性チロシンキナーゼの活性を抑制するPTPN13の能力、そしてPTPN13のFas細胞死受容体との阻害的相互作用によって説明され得る(Freiss and Chalbos,2011)。乳がんにおいては、PTPN13は、抗エストロゲンに対する乳房腫瘍応答の特有のマーカー、そして腫瘍細胞におけるアポトーシス刺激を活性化する可能な治療標的と見なされた(Freiss et al.,2004)。Fas/PTPN13結合の阻害は、抗がん剤を開発するための優れた標的を提供するかもしれない(Takahashi and Kataoka,1997)。
【0208】
RAS p21タンパク質アクチベーター2(RASA2)-RAS p21タンパク質アクチベーター2は、GTPアーゼ活性化タンパク質のGAP1ファミリーのメンバーをコードする。RAS機能の抑制因子として作用するRASA2は、RASタンパク質の弱い内因性GTPアーゼ活性を増強して、不活性なGDP結合形態のRASをもたらし、それによって細胞の増殖および分化の調節ができるようにする。正確な遺伝子変異、遺伝子内のその位置、およびそれがタンパク質機能に及ぼす影響次第で、RASA2は、理論的に発がん遺伝子または腫瘍抑制遺伝子のどちらかとして機能し得る(Friedman,1995)。軽度のストレス条件下において、RASA2はカスパーゼ-3によって切断され、それは、フラグメントNと称される、抗死滅シグナル伝達を刺激するフラグメントをもたらす。カスパーゼ-3活性がさらに増大すると、これはN2と称されるフラグメントを生じ、これはもはや細胞を保護しない。他方では、完全長RASA2は、Aktを失活性ホスファターゼから遮蔽することで、その活性を支持する(Cailliau et al.,2015)。乳がんにおいて、ストレス活性化カスパーゼ-3は、フラグメントN2の生成を通じて転移の抑制に寄与するかもしれない(Barras et al.,2014)。RASA2は、メラノーマの5%において変異する腫瘍抑制遺伝子として同定された(Arafeh et al.,2015)。
【0209】
免疫グロブリンκJ領域の組換えシグナル結合タンパク質(RBPJ)-免疫グロブリンκJ領域の組換えシグナル結合タンパク質は、Notchシグナル伝達経路において重要な転写調節因子をコードする。RBPJは、Notchタンパク質と結合していない場合にはリプレッサーの役割を果たし、Notchタンパク質と結合した場合にはアクチベーター活性化剤の役割を果たす。これは、ヒストンデアセチラーゼまたはヒストンアセチラーゼタンパク質を含有するクロマチン再構築複合体をNotchシグナル伝達経路遺伝子に動員することで、機能すると考えられる。異種移植マウスモデルは、RBPJノックダウンが、腫瘍形成能を阻害して腫瘍体積を低下させることを示し、低酸素がRBPJの上方制御を通じてSmoothened転写を促進し、膵臓がんにおける増殖、侵襲性、および腫瘍形成を誘導することが示唆された(Onishi et al.,2016)。RBPJのノックダウンが細胞増殖の有意な低下をもたらす効果は、前立腺がん細胞および肺がん細胞においても見られ、RBPJ発現がヒトがんを治療するための有望な治療的アプローチであり得ることが示唆された(Xue et al.,2015;Lv et al.,2015)。さらに、RBPJの過剰発現は、横紋筋肉腫細胞の足場非依存性増殖を促進した(Nagao et al.,2012)。RBPJ媒介Notchシグナル伝達はまた、樹状細胞依存性抗腫瘍免疫応答にも必須である(Feng et al.,2010)。
【0210】
不稔性αモチーフドメイン含有9様(SAMD9L)-SAMD9Lは、不稔性αモチーフドメイン含有9様をコードして、染色体7q21.2上に位置する。SAMD9およびSAMD9L遺伝子は共通の遺伝子構造を共有し、炎症性経路の抑制における示唆された役割がある、60%のアミノ酸同一性があるタンパク質をコードする。SAMD9Lは初期エンドソームに局在し、エンドソーム融合促進薬の役割を果たす。SAMD9L遺伝子のハプロ不全は骨髄性形質転換に寄与し、SAMD9Lは、骨髄性腫瘍抑制遺伝子候補として同定された。(Nagamachi et al.,2013)。SAMD9L発現停止が、細胞周期の進行のG1-S移行を促進してWnt/βカテニン経路の活性上昇をもたらすことから、SAMD9Lノックダウンは、肝細胞がん細胞株の細胞増殖およびコロニー形成を有意に促進した。最近の知見は、ヒトがんにおける体細胞変異および発現低下による、SAMD9L不活性化の腫瘍抑制的役割を強調する(Wang et al.,2014a)。SAMD9Lは、転移性メラノーマがある患者のTおよびB細胞集団において、健常対照者由来のものと比較して、有意に低下した発現を示した(Critchley-Thorne et al.,2007)。
【0211】
スプライシング因子3b、サブユニット3,130kDa(SF3B3)-SF3B3は、スプライシング因子3bタンパク質複合体のサブユニット3をコードする。SF3B3の過剰発現は、エストロゲン受容体陽性乳がんにおける、全生存期間および内分泌耐性と有意に相関する(Gokmen-Polar et al.,2015)。
【0212】
サーファクタントタンパク質A1(SFTPA1)/サーファクタントタンパク質A2(SFTPA2)-これらの遺伝子は、コレクチンと称されるC型レクチンのサブファミリーのメンバーである肺サーファクタントタンパク質をコードする。SFTPAは、脂質上および微生物の表面に見られる特定の炭水化物部分と結合し、サーファクタント恒常性および呼吸器病原体に対する防御において、重要な役割を果たす。これらの遺伝子の変異は、特発性肺線維症と関連する。SFTPA1およびSFTPA2遺伝子を含有する肺がん特異的遺伝子シグネチャーは、肺がんを他のがんサンプルから正確に区別した(Peng et al.,2015)。EGFR変異は、SFTPA発現がある肺腺がんにおいて、発現がない肺腺がんにおけるよりも顕著に一般的に見られた(Jie et al.,2014)。SFTPAは、腫瘍関連マクロファージの極性化を制御することで、肺がん進行を抑制する(Mitsuhashi et al.,2013)。肺上皮細胞における変異SFTPA2の発現は、潜在型TGF-β1およびTGF-β1媒介EMTの分泌をもたらす(Maitra et al.,2012)。さらに、前立腺がんの発症が、SFTPAレベルの低下に関連していてもよい(Kankavi et al.,2014)。
【0213】
溶質輸送体ファミリー25(ミトコンドリア担体;アデニンヌクレオチド輸送体)、メンバー31(SLC25A31)/溶質輸送体ファミリー25(ミトコンドリア担体;アデニンヌクレオチド輸送体)、メンバー4(SLC25A4)/溶質輸送体ファミリー25(ミトコンドリア担体;アデニンヌクレオチド輸送体)、メンバー5(SLC25A5)/溶質輸送体ファミリー25(ミトコンドリア担体;アデニンヌクレオチド輸送体)、メンバー6(SLC25A6)-溶質輸送体ファミリー25のタンパク質は、ミトコンドリアにおいて、細胞質ゾルADPをマトリックスATPで交換するADP/ATP担体である。それらは、ADP/ATPを転移するゲート化細孔として機能し、内部ミトコンドリア膜に包埋されたホモ二量体を形成する。この遺伝子ファミリーを過剰発現する細胞は、抗アポトーシス表現型を示すことが示されている。この遺伝子ファミリーの発現の抑制は、アポトーシスを誘導し、腫瘍増殖を阻害することが示されている。SLC25A4が、分化した組織に優先的に存在し筋肉および脳に特異的である一方で、SLC25A5は、腫瘍などの増殖組織において発現される。SLC25A6は遍在的に発現され、SLC25A31は肝臓および生殖細胞に存在する(Dolce et al.,2005)。特に、SLC25A5は発がんに寄与する。SLC25A5の発現は、腫瘍のミトコンドリア生体エネルギーと密接に関連しているので、がん治療を個別化し、抗がんストラテジーを開発するための有望な標的である(Chevrollier et al.,2011)。さらに、SLC25A31の安定した過剰発現は、Bcl-2発現とは無関係に、ロニダミン(ionidamine)およびアストロスポリンアポトーシスから、がん細胞を保護した。したがって、ヒトSLC25イソ型サブファミリーにおける二分性が判明し、SLC25A4およびSLC25A6イソ型がアポトーシス促進性に機能する一方で、SLC25A5およびSLC25A31イソ型は細胞を死滅誘導刺激に対して抵抗性にする(Gallerne et al.,2010)。
【0214】
SP140核内小体核小体タンパク質(SP140)-SP140は、SP140核内小体タンパク質をコードして、染色体2q37.1上に位置する。SP140はで、喉頭扁平上皮がんにおいて上方制御されることがが示された(Zhou et al.,2007)。SP140は、慢性リンパ球性白血病(Lan et al.,2010)、多発性骨髄腫(Kortum et al.,2015)、および急性前骨髄球性白血病(Bloch et al.,1996)と関連する。
【0215】
シグナル伝達兼転写活性化因子1、91kDa(STAT1)-STAT1は、全てのインターフェロンに応答してチロシンリン酸化によって活性化され(Decker et al.,2002)、Th1細胞分化(Schulz et al.,2009)に寄与する。分子レベルでは、STAT1は、サイクリン依存性キナーゼインヒビターp21Cip1の発現を増大させまたはc-myc発現を低下させるその能力を通じて、IFN-γで処置されたマウスおよびヒト腫瘍細胞の双方の増殖を阻害する(Ramana et al.,2000)。STAT1の抗腫瘍活性は、マウスモデルにおいて血管新生および腫瘍転移を阻害するその能力によって、さらに支持される(Huang et al.,2002)。STAT1 mRNAレベルの増大は、ホルモン受容体陰性および三種陰性乳がんがある患者の転移性転帰のより良い予測と関連する、分子シグネチャの一部であることが示された(Yau et al.,2010)。
【0216】
膜貫通タンパク質43(TMEM43)-この遺伝子は、膜貫通タンパク質43をコードする。この遺伝子の欠陥は、不整脈惹起性右心室性心筋症5型(ARVC5)としてもまた知られている、家族性不整脈惹起性右心室異形成5型(ARVD5)の原因である。ARVDは、遺伝性疾患であり、心室性頻拍、心不全、突然の心臓死、および心筋細胞の線維脂肪性置換によって特徴付けられる(Siragam et al.,2014)。TMEM43は、核内膜でタンパク質複合体を組織化することにより、核膜構造を維持する上で重要な役割を有してもよい(Bengtsson and Otto,2008)。
【0217】
トポイソメラーゼ(DNA)II α 170kDa(TOP2A)/トポイソメラーゼ(DNA)II β 180kDa(TOP2B)-TOP2AおよびTOP2Bは、転写中にDNAのトポロジー状態を調節し変化させる酵素である、DNAトポイソメラーゼの高度に相同的なイソ型をコードする。この核酵素は、染色体凝縮、染色分体分離、そしてDNA転写および複製中に生じるねじり応力の緩和などのプロセスに関与する。TOP2Aが細胞増殖に必須であり、活発に増殖する細胞において高度に発現される一方で、TOP2Bは増殖に必須でなく、最近は治療関連二次悪性腫瘍に関与するとされている(Toyoda et al.,2008)。TOP2Aは、いくつかのがん型において過剰発現されることが判明している(例えば、悪性胸膜中皮腫(Roe et al.,2010)、悪性末梢神経鞘腫瘍(Kresse et al.,2008)、肺腺がん細胞(Kobayashi et al.,2004)、膀胱がん(Simon et al.,2003)、膠芽細胞腫(van den Boom et al.,2003))。TOP2Bは、DNA転写、複製、組換え、および有糸分裂に関与し、TOP1に加えて、トポイソメラーゼ遺伝子ファミリーに属する第2のNUP98融合パートナー遺伝子に相当する(Nebral et al.,2005)。
【0218】
トリプターゼα/β1(TPSAB1)/トリプターゼβ2(TPSB2)-トリプターゼα/β1(TPSAB1)およびトリプターゼβ2(TPSB2)は、2つのその他のトリプターゼイソ型に加えて、肥満細胞によって発現される。トリプターゼは、喘息およびその他のアレルギー性および炎症性疾患の発病における媒介物として関与するとされている。肥満細胞によって分泌されるトリプターゼは、血管新生促進機能を有して腫瘍血管新生に寄与する。トリプターゼは、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR-2)の活性化によって機能し、さらに細胞外マトリックス分解に寄与し、ひいては血管増殖も促進する。さらに、腫瘍組織におけるトリプターゼ陽性肥満細胞の存在は、いくつかのがん型における血管形成と相関する(Ammendola et al.,2014)。トリプターゼ陽性肥満細胞の高レベルは、前立腺がんにおいて報告されており、微小血管密度、腫瘍病期、およびより短い生存器官と相関している(Nonomura et al.,2007;Stawerski et al.,2013)。同様に、トリプターゼ陽性肥満細胞はまた、胃がん(Zhao et al.,2012;Ribatti et al.,2010)ならびに肺腺がん(Imada et al.,2000;Takanami et al.,2000)における腫瘍病期および血管新生と関連する。
【0219】
三者間モチーフ含有11(TRIM11)-三者間モチーフ含有タンパク質11は、ヒトにおいてTRIM11遺伝子によってコードされるタンパク質である。RIM11は、中枢神経系の発達に関与すること、そしてアルツハイマー様神経細胞傷害のインヒビターであるヒューマニンを不安定化することが知られている(Niikura et al.,2003)。TRIM11は高悪性度神経膠腫において過剰発現され、増殖、浸潤、移動、およびグリア腫瘍増殖を促進する(Di et al.,2013)。
【0220】
一過性受容体潜在的カチオンチャネル、サブファミリーM、メンバー2(TRPM2)-この遺伝子によってコードされるタンパク質は、遊離細胞内ADPリボースによって制御されるカルシウム透過性カチオンチャネルである。TRPM2は、特定条件下でアポトーシスの媒介に関与するかもしれない(Ishii et al.,2007;Cao et al.,2015)。しかし、細胞成長増殖に対するその効果はあまり明確ではなく、細胞培養条件および選択的スプライスイソ型の発現に依存するかもしれない(Chen et al.,2014)。メラノーマおよび前立腺がんにおいては、アポトーシスおよび臨床転帰と相関する、腫瘍富化型TRPM2アンチセンス転写物が同定されている(Orfanelli et al.,2015)。
【0221】
チューブリンγ複合体関連タンパク質3(TUBGCP3)-チューブリンγ複合体関連タンパク質3は、真核細胞における微小管核形成に重要なマルチサブユニットγ-チューブリン複合体の一部である(Lynch et al.,2014)。細胞質γ-チューブリン複合体は、いわゆるγ-チューブリン複合体結合タンパク質のセットを通じて、中心体またはその他の微小管形成中心に標的化される(Schiebel,2000)。正常ヒト星状細胞との対比で、神経膠芽腫細胞におけるTUBGCP3転写物の発現の有意な増大が認められ、TUBGCP3免疫反応性は、正常な脳よりも有意に増大した。TUBGCP3は、微小血管増殖および悪性表現型をもたらすシグナル伝達経路との相互作用とも関連した(Draberova et al.,2015)。さらに、TUBGCP3は、二倍体マントル細胞リンパ腫サンプルよりも、偽四倍体において発現が有意に高いことが判明した(Neben et al.,2007)。
【0222】
ユビキチン様修飾酵素活性化酵素6(UBA6)-ユビキチン様修飾酵素活性化酵素6は、ヒトにおいてUBA6遺伝子によってコードされるタンパク質である。UBA6は、精巣において最も豊富に発現されるユビキチン活性化酵素である。さらに、それはDNA損傷に対する細胞応答に必要である(Moudry et al.,2012)。
【0223】
異種栄養性および多種栄養性レトロウイルス受容体1(XPR1)-XPR1は、180残基長のアミノ末端SPXドメインを含有する複数回膜貫通型分子である(SYG1、Pho81、およびXPR1にちなんで命名された)。XPR1は、リン酸塩の搬出を媒介すると報告されている(Giovannini et al.,2013)。破骨細胞分化に際して、XPR1 mRNA転写物は増加することが判明した(Sharma et al.,2010)。XPR1は、最初に、ヒト細胞、ならびにマウスおよび鳥類などの様々なその他の生物種に感染し得る異種栄養性および多種栄養性MLV(X-MLVおよびP-MLV)の2種のγレトロウイルスによって使用される、レトロウイルス受容体として記載された(Kozak,2010;Martin et al.,2013)。
【0224】
ジンクフィンガーBED型含有5(ZBED5)-ジンクフィンガーBED型含有5は、主にCharlie様DNAトランスポゾンに由来するコード配列によって特徴付けられるが、末端逆位反復で挟まれていないので、活性DNAトランスポゾンではないようである。ZBED5は、Buster DNAトランスポゾンに関連があり、その他のZBEDとは系統発生的に離れている。ZBED遺伝子は、脊椎動物の組織において広範に発現されており、それらは一緒になって、顕著な多様な機能を制御する(Hayward et al.,2013)。
【0225】
ジンクフィンガータンパク質697(ZNF697)-ZNF697遺伝子は、ジンクフィンガータンパク質697をコードするが、それは染色体1p12上に位置して、恐らくはDNA結合において役割を果たす(Yu et al.,2011)。
【0226】
免疫応答の刺激は、宿主免疫系によって外来性として認識された抗原の存在に依存する。腫瘍関連抗原の存在の発見は、宿主の免疫系を用いて腫瘍成長に介入する可能性を高めた。免疫系の体液性および細胞性アームの双方を活用する様々な機構が、がん免疫療法のために目下探求されている。
【0227】
細胞性免疫応答の特定の要素は、腫瘍細胞を特異的に認識して破壊できる。腫瘍浸潤性細胞集団からの、または末梢血からのT細胞の単離は、がんに対する自然免疫防御において、このような細胞が重要な役割を果たすことを示唆する。特に、細胞質ゾル内に位置するタンパク質または欠陥リボソーム産物(DRIPS)に由来する、通常は8~10アミノ酸残基の主要組織適合性複合体(MHC)保有ペプチドのクラスI分子を認識するCD8陽性T細胞が、この応答において重要な役割を果たす。ヒトのMHC分子はまた、ヒト白血球抗原(HLA)とも称される。
【0228】
本明細書の用法では、別段の記載がない限り、全ての用語は下述のとおり定義される。
【0229】
「T細胞応答」という用語は、生体外または生体内でペプチドによって誘導される、エフェクター機能の特異的増殖および活性化を意味する。MHCクラスI限定細胞毒性T細胞では、エフェクター機能は、ペプチドパルスされた、ペプチド前駆体パルスされたまたは天然ペプチド提示標的細胞の溶解;好ましくはペプチドによって誘導されるインターフェロン-γ、TNF-α、またはIL-2であるサイトカインの分泌;好ましくはペプチドによって誘導されるグランザイムまたはパーフォリンであるエフェクター分子の分泌;または脱顆粒であってもよい。
【0230】
「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書において使用される。ペプチドは、好ましくは9アミノ酸長であるが、8アミノ酸長程度に短くあり得て、10、11、12、13以上に長くあり得て、MHCクラスIIペプチド(本発明のペプチドの伸長された変種)の場合、それらは14、15、16、17、18、19または20以上のアミノ酸長程度に長くあり得る。
【0231】
さらに「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基の塩を含むものとする。好ましくは、塩は、例えば、塩化物または酢酸塩(トリフルオロ酢酸塩)などの、ペプチドの薬学的に許容可能な塩である。ペプチドは生体内で塩ではないので、本発明によるペプチドの塩は、それらの生体内の状態がペプチドと実質的に異なることに留意すべきである。
【0232】
「ペプチド」という用語は、「オリゴペプチド」もまた含むものとする。「オリゴペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書において使用される。その中で正しいエピトープまたはエピトープが保持されれば、オリゴペプチドの長さは本発明には重要でない。オリゴペプチドは、典型的に、約30アミノ酸残基長未満であり、約15アミノ酸長を超える。
【0233】
「ポリペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する一連のアミノ酸残基を指す。正しいエピトープが保持されれば、ポリペプチドの長さは本発明には重要でない。ペプチドまたはオリゴペプチドという用語とは対照的に、ポリペプチドという用語は、約30を超えるアミノ酸残基を含有する分子を指すことが意図される。
【0234】
ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質またはこのような分子をコードするポリヌクレオチドは、免疫応答を誘導できれば「免疫原性」である(したがって本発明における「免疫原」である)。本発明では、免疫原性は、より具体的には、T細胞応答を誘導する能力と定義される。したがって「免疫原」は、免疫応答を誘導できる分子であり、本発明では、T細胞応答を誘導できる分子である。別の態様では、免疫原は、それに対する特異的抗体またはTCRを生じさせるのに使用される、ペプチド、ペプチドとMHCの複合体、オリゴペプチド、および/またはタンパク質であり得る。
【0235】
クラスI T細胞「エピトープ」は、クラスI MHC受容体に結合する短いペプチドを必要とし、三成分複合体(MHCクラスIα鎖、β-2-ミクログロブリン、およびペプチド)を形成し、それは、適切な親和性でMHC/ペプチド複合体に結合する適合T細胞受容体を保有するT細胞によって、認識され得る。MHCクラスI分子に結合するペプチドは、典型的に8~14アミノ酸長であり、最も典型的には9アミノ酸長である。
【0236】
ヒトにおいては、MHCクラスI分子(ヒト白血球抗原(HLA)ともまた称されるヒトのMHC分子)をコードする、3つの異なる遺伝子座、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cがある。HLA-A*01、HLA-A*02、およびHLA-B*07は、これらの遺伝子座から発現され得る、異なるMHCクラスI対立遺伝子の例である。
【0237】
【表11-1】
【表11-2】
【0238】
本発明のペプチドは、好ましくは、本明細書に記載される本発明のワクチンに包含される場合、HLA-A*02およびHLA-A*24に結合する。本発明のMHCクラスIIペプチドは、いくつかの異なるHLAクラスII分子に結合し、乱交雑バインダー(汎結合ペプチド)と称される。ワクチンはまた、汎結合MHCクラスIIペプチドを含んでもよい。したがって、本発明のワクチンを使用して、A*02またはA*24陽性の患者においてがんが治療され得る一方で、これらのペプチドの汎結合特性のために、MHCクラスIIアロタイプを選択する必要はない。
【0239】
本発明のA*02ペプチドが本発明のA*24ペプチドと組み合わされると、どちらかのMHCクラスI対立遺伝子単独による対処と比較して、任意の患者集団のより高い割合が治療され得る。大多数の母集団では、対立遺伝子のいずれか単独によって、50%未満の患者が対処され得る一方で、HLA-A*24およびHLA-A*02エピトープを含んでなるワクチンは、任意の妥当な母集団で少なくとも60%の患者を治療し得る。具体的には、様々な地域において、以下の百分率の患者が、これらの対立遺伝子の少なくとも1つについて陽性である:USA61%、西ヨーロッパ62%、中国75%、韓国77%、日本86%(www.allelefrequencies.netから計算された)。
【0240】
好ましい実施形態では、「ヌクレオチド配列」という用語は、デオキシリボヌクレオチドのヘテロ重合体を指す。
【0241】
特定のペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、天然起源であってもよく、またはそれらは合成的に構築されてもよい。一般に、本発明のペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質をエンコードするDNA断片は、cDNAフラグメントと短いオリゴヌクレオチドリンカーとから構築され、または一連のオリゴヌクレオチドを形成して(from a series)、微生物またはウイルスオペロンに由来する調節因子を含んでなる組換え転写単位において発現されることができる、合成遺伝子を提供する。
【0242】
本明細書の用法では「ペプチドをコーディング(またはコード)するヌクレオチド」という用語は、配列が、例えば、TCRの製造に有用な樹状細胞または別の細胞株によって発現される生体系と適合性である、人工(人造)開始および停止コドンを含むペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を指す。
【0243】
本明細書の用法では、核酸配列への言及は、一本鎖および二本鎖の核酸の双方を含む。したがって、例えば、特異的配列は、文脈上明らかに別の意味が示唆されない限り、このような配列の一本鎖DNA、このような配列とその補体との二本鎖(二本鎖DNA)、およびこのような配列の補体を指す。
【0244】
「コード領域」という用語は、その天然ゲノム環境内で、遺伝子の発現産物を天然にまたは正常にコードする遺伝子の部分、すなわち、遺伝子の天然発現産物を生体内でコードする領域を指す。
【0245】
コード領域は、非変異(「正常」)、変異または改変遺伝子に由来し得て、またはDNA合成技術の当業者に周知の方法を使用して実験室で完全に合成された、DNA配列または遺伝子にさえ由来し得る。
【0246】
「発現産物」という用語は、遺伝子の、そして遺伝コード縮重に起因する同等物をコードし、したがって同一アミノ酸をコードする任意の核酸配列の天然翻訳産物である、ポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0247】
コード配列に言及する場合、「フラグメント」という用語は、その発現産物が、完全コード領域の発現産物と本質的に同一の生物学的機能または活性を保つ、完全未満のコード領域を含んでなるDNAの部分を意味する。
【0248】
「DNA断片」という用語は、別々のフラグメントの形態の、またはより大型のDNAコンストラクトの構成要素としての、DNAポリマーを指し、それは、実質的に純粋な、すなわち、混入内因性物質を含まない形態で、例えばクローニングベクターを使用する標準生化学的方法によって、断片およびその構成ヌクレオチド配列が同定、操作、および回収できる量または濃度で、少なくとも1回単離されたDNAに由来する。このような断片は、典型的に真核生物遺伝子内に存在する内部非翻訳配列またはイントロンによって中断されていない、読み取り枠の形態で提供される。非翻訳DNA配列は、それがコード領域の操作または発現を妨げない、読み取り枠下流に存在してもよい。
【0249】
「プライマー」という用語は、短い核酸配列を意味し、それはDNAの1本鎖と対合し得て、DNAポリメラーゼがそこでデオキシリボヌクレオチド鎖合成を開始する、遊離3’-OH末端を提供する。
【0250】
「プロモーター」という用語は、転写を開始するためのRNAポリメラーゼ結合に関与する、DNAの領域を意味する。
【0251】
「単離」という用語は、物質が、その元の環境(例えば、それが天然起源であれば天然環境)から取り出されることを意味する。例えば、生きている動物に存在する天然ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然システムで共存する物質の一部または全部から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得て、および/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であり得るが、このようなベクターまたは組成物がその天然環境の一部でないと言う意味では、なおも単離されている。
【0252】
本発明によって開示されるポリヌクレオチド、および組換えまたは免疫原性ポリペプチドは、「精製」形態であってもよい。「精製」という用語は、完全に純粋である必要はなく;むしろ、それは相対的定義であることが意図されて、これらの用語が当業者によって理解されるように、高度に精製された調製物、または部分的にのみ精製された調製物を含み得る。例えば、cDNAライブラリーから単離された個々のクローンは、電気泳動的に均一に、従来法で精製されている。少なくとも1桁、好ましくは2または3桁、より好ましくは4または5桁までの、出発原料または天然物質の精製が明示的に検討される。さらに、重量基準で、好ましくは99.999%、または少なくとも99.99%または99.9%;さらに望ましくは99%以上の純度を有する、特許請求されるポリペプチドが明示的に包含される。
【0253】
本発明によって開示される核酸およびポリペプチド発現産物、ならびにこのような核酸および/またはこのようなポリペプチドを含有する発現ベクターは、「富化形態」であってもよい。本明細書の用法では、「富化」という用語は、物質濃度が、(例えば)その天然濃度の少なくとも約2、5、10、100、または1000倍であることを意味し、有利には重量基準で0.01%、好ましくは重量基準で少なくとも約0.1%である。重量基準で約0.5%、1%、5%、10%、および20%の富化調製物もまた、検討される。本発明を構成する、配列、コンストラクト、ベクター、クローン、およびその他の物質は、有利には、富化または単離形態であり得る。「活性フラグメント」という用語は、通常は、単独で、または任意選択的に適切なアジュバントと共に、またはベクター中で、例えば、ウサギまたはマウスのようなそしてまたヒトをはじめとする哺乳類などの動物に投与すると免疫応答を生じる(すなわち、免疫原性を有する)ペプチド、ポリペプチドまたは核酸配列のフラグメントを意味し、このような免疫応答は、ヒトなどのレシピエント動物においてT細胞応答を刺激する形態を取る。代案としては、「活性フラグメント」はまた、生体外T細胞応答を誘導するのに使用されてもよい。
【0254】
本明細書の用法では、ポリペプチドとの関連で使用される場合、「部分」、「断片」、および「フラグメント」という用語は、アミノ酸残基などの連続する残基の配列を指し、その配列は、より大型の配列の部分集合を形成する。例えば、ポリペプチドが、トリプシンまたはキモトリプシンなどの一般的エンドペプチダーゼのいずれかによって処理されれば、このような処理から得られるオリゴペプチドは、出発ポリペプチドの部分、断片またはフラグメントに相当するであろう。ポリヌクレオチドに関して使用される場合、これらの用語は、いずれかのエンドヌクレアーゼによる前記ポリヌクレオチドの処理によって生じる生成物を指す。
【0255】
本発明によると、配列に言及する場合、「同一性百分率」または「パーセント同一」という用語は、比較される配列(「比較配列」)と、記載されまたは特許請求される配列(「参照配列」)とのアライメント後に、配列が、特許請求されまたは記載される配列と比較されることを意味する。次に同一性百分率は、次式に従って判定される:
同一性百分率=100[1-(C/R)]
式中、Cは、参照配列と比較される配列との間のアライメント長にわたる、参照配列と比較配列の間の差異の数であり、
(i)比較配列中に対応する整列塩基またはアミノ酸を有しない、参照配列中の各塩基またはアミノ酸、および
(ii)参照配列中の各ギャップ、および
(iii)比較配列中の整列塩基またはアミノ酸と異なる、参照配列中の各整列塩基またはアミノ酸が差異を構成して、
(iiii)アライメントは、整合配列の1位から開始しなくてはならず;
Rは、比較配列とのアライメント長にわたる参照配列中の塩基またはアミノ酸の数であり、参照配列中に生じる任意のギャップもまた、塩基またはアミノ酸として数えられる。
【0256】
比較配列と、それに対して同一性百分率が上のように計算される参照配列との間に、特定の最小同一性百分率とほぼ同じまたはそれ以上のアライメントが存在すれば、その中に、上記のように計算された同一性百分率が特定の同一性百分率未満であるアライメントが存在したとしても、比較配列は、参照配列との特定の最小同一性百分率を有する。
【0257】
したがって上述したように、本発明は、配列番号1~配列番号110、または配列番号1~配列番号110と88%相同的であるその変異体、またはT細胞を前記ペプチドと交差反応させるその変異体からなる群から選択される配列を含んでなる、ペプチドを提供する。本発明のペプチドは、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子または前記ペプチドの伸長バージョンをクラスIIに結合する能力を有する。
【0258】
本発明では、「相同的」という用語は、2つのアミノ酸配列、すなわちペプチドまたはポリペプチド配列の配列間の同一性の程度を指す(上の同一性百分率を参照されたい)。前述の「相同性」は、比較される配列にわたり、最適条件下でアライメントされた2つの配列を比較することで判定される。このような配列相同性は、例えばClustalWアルゴリズムを使用してアライメントを作成することで、計算され得る。一般に利用できる配列解析ソフトウェア、より具体的には、Vector NTI、GENETYXまたはその他のツールが、公共データベースによって提供される。
【0259】
当業者は、特定のペプチドの変異体によって誘導されるT細胞が、ペプチドそれ自体と交差反応できるかどうかを評価できるであろう(Appay et al.,2006;Colombetti et al.,2006;Fong et al.,2001;Zaremba et al.,1997)。
【0260】
所与のアミノ酸配列の「変異型」によって、本発明者らは、ペプチドが、配列番号1~配列番号110からなる所与のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同様に、HLA分子となおも結合できるように、(例えば、それらを別の天然アミノ酸残基の側鎖で、またはその他の側鎖で置換することにより)例えば、アミノ酸の1つまたは2つの残基の側鎖が変化することを意味する。例えば、ペプチドは、それがHLA-A*02または-DRなどの適切なMHC分子の結合溝と相互作用して結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持するように修飾されてもよく、このようにしてそれは、活性化CTLのTCRに結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持する。
【0261】
これらのT細胞は、引き続いて細胞と交差反応して、本発明の態様で定義される同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞を殺滅し得る。学術文献およびデータベース(Rammensee et al.,1999;Godkin et al.,1997)から演繹され得るように、HLA結合ペプチドの特定の位置は、典型的に残基に固着して結合溝を構成する、ポリペプチド鎖の極性、電気物理的特性、疎水性および空間特性によって定義される、HLA受容体の結合モチーフに適合するコア配列を形成する。したがって、当業者は、既知のアンカー残基を保つことで、配列番号1~配列番号110に記載されるアミノ酸配列を修飾でき、このような変異型がMHCクラスIまたはII分子に結合する能力を維持するかどうかを判定できるであろう。本発明の変異型は、活性化T細胞のTCRに結合する能力を維持し、それは引き続いて、本発明の態様で定義されるような同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞と交差反応して、それを殺滅し得る。
【0262】
本明細書で開示される元の(未修飾)ペプチドは、特に明記されない場合は、ペプチド鎖内の異なる、おそらくは選択的な部位における、1つまたは複数の残基の置換によって修飾され得る。好ましくはこれらの置換は、アミノ酸鎖の末端に位置する。このような置換は、保存的性質であってもよく、例えば、疎水性アミノ酸が別の疎水性アミノ酸によって置換されるなど、構造および特徴の類似したアミノ酸によってアミノ酸が置換される。さらにより保存的な置換は、ロイシンのイソロイシンによる置換などの、同一または類似サイズおよび化学的性質のアミノ酸の置換である。天然起源相同タンパク質ファミリーの配列多様性の研究では、特定のアミノ酸置換は、他よりも耐容されることが多く、これらは、元のアミノ酸とその置換物の間のサイズ、電荷、極性、および疎水性の類似性との相関を示すことが多く、これが「保存的置換」の定義の基礎である。
【0263】
保存的置換は、本明細書では、以下の5つのグループの1つの中の交換として定義される:グループ1-小型脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly);グループ2-極性の負に帯電した残基およびそれらのアミド(Asp、Asn、Glu、Gln);グループ3-極性の正に帯電した残基(His、Arg、Lys);グループ4-大型脂肪族非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys);およびグループ5-大型芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。
【0264】
より保存的でない置換は、アラニンのイソロイシン残基による置換などの、類似した特徴を有するがサイズがいくらか異なる別のアミノ酸による置換を伴うかもしれない。高度に非保存的な置換は、極性アミノ酸の、または塩基性アミノ酸の酸性アミノ酸による置換を伴うかもしれない。しかし化学効果は完全に予測可能でなく、遊離基置換は単純な化学的原理からは予測できない偶然の効果を生じさせる可能性があるので、このような「遊離基」置換は、潜在的に無効であるとして却下され得ない。
【0265】
もちろんこのような置換には、通常のL-アミノ酸以外の構造体が関与してもよい。したがってD-アミノ酸が、本発明の抗原性ペプチドに通常見られるL-アミノ酸を置換するかもしれず、依然として本明細書の開示に包含される。さらに、非標準アミノ酸(すなわち、一般的な天然タンパク質新生アミノ酸以外)もまた置換目的で使用して、本発明による免疫原および免疫原性ポリペプチドが製造されてもよい
【0266】
2つ以上の位置における置換が、以下に定義されるように実質的に同等のまたはそれを超える抗原活性のあるペプチドをもたらすことが発見された場合、これらの置換の組み合わせを試験して、置換の組み合わせが、ペプチドの抗原性に相加または相乗効果をもたらすかどうかが判定される。最大でも、ペプチド内の4つ以上の位置が同時に置換されることはない。
【0267】
本明細書で示されるようなアミノ酸配列から本質的になるペプチドは、非修飾ペプチドと比較すると、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子に結合する能力が、実質的に変化したり悪影響を受けたりすることなく交換される、1つまたは2つの非アンカーアミノ酸を有し得る(アンカーモチーフについては下記を参照されたい)。別の実施形態では、本明細書で示されるようなアミノ酸配列から本質的になるペプチドにおいては、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子に結合する能力が非修飾ペプチドと比較して実質的に変化したり悪影響を受けることなく、1つまたは2つのアミノ酸が、それらの保存的交換パートナー(以下を参照されたい)で交換され得る。
【0268】
T細胞受容体との相互作用に実質的に寄与しないアミノ酸残基は、その組み込みが、T細胞反応性に実質的に影響を及ぼさず、関連MHCとの結合を排除しない、その他のアミノ酸での置換によって修飾され得る。したがって与えられた但し書きを除いて、本発明のペプチドは、与えられたようなアミノ酸配列またはそれらの部分または変異体を含む、任意のペプチド(本発明者らは、その用語にオリゴペプチドまたはポリペプチドを含める)であってもよい。
【0269】
【表12-1】
【表12-2】
【0270】
【表12B】
【0271】
【表13】
【0272】
より長い(伸長された)ペプチドもまた、適切であってもよい。MHCクラスIエピトープは、通常は8~11アミノ酸長であるが、実際のエピトープを含むより長いペプチドまたはタンパク質から、ペプチドプロセッシングによって生成することが可能である。実際のエピトープ側面に位置する残基は、プロセッシング中に実際のエピトープを曝露させるのに必要なタンパク質分解切断に、実質的に影響を及ぼさない残基であることが好ましい。
【0273】
本発明のペプチドは、最大4個のアミノ酸によって伸長させ得て、すなわち4:0~0:4の間のあらゆる組み合わせで、どちらかの末端に1、2、3または4個のアミノ酸が付加され得る。本発明による伸長の組み合わせは、表14にある。
【0274】
【表14】
【0275】
伸長/延長のためのアミノ酸は、元のタンパク質配列のペプチドまたは任意のその他のアミノ酸であり得る。伸長を利用して、ペプチドの安定性または溶解度を高め得る。
【0276】
したがって本発明のエピトープは、天然起源腫瘍関連または腫瘍特異的エピトープと同一であってもよく、またはそれらが実質的に同一の抗原活性を有しさえすれば、4つ以下の残基が参照ペプチドと異なるエピトープを含んでもよい。
【0277】
代案の実施形態では、ペプチドは、4つを超えるアミノ酸で、好ましくは最大30アミノ酸の全長まで、片側または両側で伸長される。これは、MHCクラスII結合ペプチドをもたらしてもよい。MHCクラスIIへの結合は、当該技術分野で公知の方法によって試験される得る。
【0278】
したがって、本発明は、MHCクラスIエピトープのペプチドおよび変異型を提供し、ペプチドまたは変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14、すなわち8、9、10、11、12、13、14アミノ酸の全長を有し、伸長されたクラスII結合ペプチドの場合、長さはまた、15、16、17、18、19、20、21または22アミノ酸であり得る。
【0279】
もちろん、本発明によるペプチドまたは変異型は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子に結合する能力を有する。ペプチドまたは変異体のMHC複合体への結合は、当該技術分野で既知の方法によって試験されてもよい。
【0280】
好ましくは、本発明によるペプチドに特異的なT細胞を置換ペプチドについて試験する場合、置換ペプチドが背景に対して最大溶解増大の半分を達成するペプチド濃度は、約1mM以下、好ましくは約1μM以下、より好ましくは約1nM以下、さらにより好ましくは約100pM以下、最も好ましくは約10pM以下である。置換ペプチドが、2人以上、少なくとも2人、より好ましくは3人の個人からのT細胞によって認識されることもまた好ましい。
【0281】
本発明の特に好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号に1~配列番号110に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる。
【0282】
「から本質的になる」は、本発明によるペプチドが、配列番号1~配列番号110のいずれかに記載の配列またはその変異体に加えて、MHC分子エピトープのエピトープとして機能するペプチドの一部を必ずしも構成しない、追加的なNおよび/またはC末端に位置するアミノ酸の一連の配列を含有することを意味するものとする。
【0283】
それでもなお、これらの一連の配列は、本発明によるペプチドの細胞への効率的な導入を提供する上で重要であり得る。本発明の一実施形態では、ペプチドは、例えば、NCBI、GenBank受入番号X00497に由来する、HLA-DR抗原関連不変鎖の80個のN末端アミノ酸を含んでなる、融合タンパク質の一部である(p33、以下の「Ii」)。その他の融合物においては、本発明のペプチドは、本明細書に記載されるような抗体、またはその機能的部分に、特に抗体の配列に、前記抗体によって特異的に標的化されるように融合し得て、または例えば、本明細書に記載されるような樹状細胞に対して特異的な抗体に、またはその中に融合し得る。
【0284】
さらにペプチドまたは変異型は、より強力な免疫応答を引き起こすために、安定性および/またはMHC分子への結合を改善するようにさらに修飾されてもよい。ペプチド配列のこのような最適化方法は当該技術分野で周知であり、例えば、逆ペプチド結合または非ペプチド結合の導入が挙げられる。
【0285】
逆ペプチド結合においては、アミノ酸残基はペプチド(-CO-NH-)結合によって連結せず、ペプチド結合が逆転する。このようなレトロ-インベルソペプチド模倣剤は、例えば、参照により本明細書に援用される、Meziere et al(1997)(Meziere et al.,1997)に記載されるものなどの当該技術分野で既知の方法を使用して製造されてもよい。このアプローチは、側鎖の方向でなく主鎖に関与する変化を含有する、擬ペプチドの生成を伴う。Meziere et al.(Meziere et al.,1997)は、MHC結合およびTヘルパー細胞応答のために、これらの擬ペプチドが有用であることを示す。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含有するレトロ-インバースペプチドは、タンパク質分解に対してはるかにより高い耐性がある。
【0286】
非ペプチド結合は、例えば、-CH2-NH、-CH2S-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-COCH2-、-CH(OH)CH2-、および-CH2SO-である。米国特許第4,897,445号明細書は、標準手順によって合成されるポリペプチド、およびNaCNBH3の存在下でアミノアルデヒドとアミノ酸を反応させることで合成される非ペプチド結合が関与する、ポリペプチド鎖中の非ペプチド結合(-CH2-NH)を固相合成する方法を提供する。
【0287】
上述の配列を含んでなるペプチドは、それらのアミノおよび/またはカルボキシ末端に存在する追加的な化学基と共に合成して、ペプチドの安定性、生物学的利用能、および/または親和性を高めてもよい。例えば、カルボベンゾキシル、ダンシル、またはt-ブチルオキシカルボニル基などの疎水性基が、ペプチドのアミノ末端に付加されてもよい。同様に、アセチル基または9-フルオレニルメトキシ-カルボニル基が、ペプチドのアミノ末端に配置されてもよい。さらに、疎水性基、t-ブチルオキシカルボニル、またはアミド基が、ペプチドのカルボキシ末端に付加されてもよい。
【0288】
さらに、本発明のペプチドは、それらの立体配置を改変するように合成されてもよい。例えば、通常のL異性体でなく、ペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基のD異性体が使用されてもよい。なおもさらに、本発明のペプチドのアミノ酸残基の少なくとも1つは、周知の非天然起源アミノ酸残基の1つで置換されてもよい。これらのような変化は、本発明のペプチドの安定性、生物学的利用能および/または結合作用の増大に役立ってもよい。
【0289】
同様に、本発明のペプチドまたは変異体は、ペプチド合成の前または後のどちらかに、
特定のアミノ酸を反応させることで化学的に修飾されてもよい。このような修飾の例は、当該技術分野で周知であり、例えば、参照により本明細書に援用される、R.Lundblad,Chemical Reagents for Protein Modification,3rd ed.CRC Press,2004(Lundblad,2004)に要約される。アミノ酸の化学修飾としては、これに限定されるものではないが(although without limitation thereto)、アシル化、アミジン化、リジンのピリドキシル化、還元アルキル化、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化、システインのシステイン酸への過ギ酸酸化によるカルボキシル基のアミド修飾およびスルフヒドリル修飾、水銀誘導体形成、その他のチオール化合物との混合ジスルフィド形成、マレイミドとの反応、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化、およびアルカリ性pHでのシアネートによるカルバモイル化による修飾が挙げられるが、これに限定されるものではない(but is not limited to)。この点において、当業者は、タンパク質の化学修飾に関するより詳細な手順について、Current Protocols In Protein Science,Eds.Coligan et al.(John Wiley and Sons NY 1995-2000)(Coligan et al.,1995)の第15章を参照されたい。
【0290】
簡単に述べると、例えばタンパク質中のアルギニル残基の修飾は、付加体を形成するためのフェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、および1,2-シクロヘキサンジオンなどの隣接するジカルボニル化合物の反応に基づくことが多い。別の実施例は、メチルグリオキサールとアルギニン残基の反応である。システインは、リジンおよびヒスチジンなどのその他の求核性部位の同時の修飾なしに修飾され得る。その結果、システイン修飾のために多数の試薬が利用可能である。Sigma-Aldrichなどの会社のウェブサイト(http://www.sigma-aldrich.com)が、特定の試薬に関する情報を提供する。
【0291】
タンパク質中のジスルフィド結合の選択的還元もまた、一般的である。ジスルフィド結合は、生物医薬品の加熱処理中に形成されて酸化され得る。ウッドワード試薬Kを使用して、特定のグルタミン酸残基が修飾されてもよい。N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N’-エチルカルボジイミドを利用して、リジン残基とグルタミン酸残基の間に分子内架橋が形成され得る。例えばジエチルピロ炭酸は、タンパク質中のヒスチジル残基修飾のための試薬である。ヒスチジンはまた、4-ヒドロキシ-2-ノネナールを使用して修飾され得る。リジン残基およびその他のα-アミノ基の反応物は、例えば、ペプチドの表面への結合またはタンパク質/ペプチド架橋で有用である。リジンはポリ(エチレン)グリコールの付着部位であり、タンパク質のグリコシル化の主要な修飾部位である。タンパク質中のメチオニン残基は、例えば、ヨードアセトアミド、ブロモエチルアミン、およびクロラミンTによって修飾され得る。
【0292】
テトラニトロメタンおよびN-アセチルイミダゾールを使用して、チロシル残基が修飾され得る。ジチロシンの形成を通じた架橋は、過酸化水素/銅イオンによって達成され得る。
【0293】
トリプトファンの修飾に関する最近の研究では、N-ブロモサクシニミド、臭化2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルまたは3-ブロモ-3-メチル-2-(2-ニトロフェニルメルカプト)-3H-インドール(BPNS-スカトール)が使用されている。
【0294】
PEGによる治療用タンパク質およびペプチドの成功裏の修飾が、循環半減期の延長と関連することが多い一方で、タンパク質と、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびホルムアルデヒドとの架橋は、ハイドロゲル調製のために使用される。免疫療法のためのアレルゲンの化学修飾は、カリウムシアネートでのカルバミル化によって達成されることが多い。
【0295】
ペプチドが修飾されまたは非ペプチド結合を含む、ペプチドまたは変異体は、本発明の好ましい実施形態である。一般に、ペプチドおよび変異体(少なくともアミノ酸残基間にペプチド結合を含有するもの)は、Lukas et al.(Lukas et al.,1981)によって、そしてその中で引用される参考文献によって開示される、Fmoc-ポリアミド様式の固相ペプチド合成によって合成されてもよい。一時的なN-アミノ基保護は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基によってもたらされる。この高度に塩基不安定性の保護基の反復性切断は、N,N-ジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンを使用して実施される。側鎖官能基は、それらのブチルエーテル(セリン、スレオニン、およびチロシンの場合)、ブチルエステル(グルタミン酸およびアスパラギン酸の場合)、ブチルオキシカルボニル誘導体(リジンおよびヒスチジンの場合)、トリチル誘導体(システインの場合)、および4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル誘導体(アルギニンの場合)として保護されてもよい。グルタミンまたはアスパラギンが、C末端残基である場合、側鎖アミド官能基を保護するために、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル基が活用される。固相担体は、ジメチルアクリルアミド(主鎖単量体)、ビスアクリロイルエチレンジアミン(架橋剤)、およびアクリロイルサルコシンメチルエステル(機能化因子)の3つの単量体から構成される、ポリジメチル-アクリルアミドポリマーをベースとする。使用されるペプチド-対-樹脂の切断可能な結合因子は、酸不安定性4-ヒドロキシメチル-フェノキシ酢酸誘導体である。逆転N,N-ジシクロヘキシル-カルボジイミド/1ヒドロキシベンゾトリアゾール媒介共役手順を使用して付加されるアスパラギンおよびグルタミンを除いて、全てのアミノ酸誘導体は、それらのあらかじめ形成された対称的な無水物誘導体として添加される。全ての共役および脱保護反応は、ニンヒドリン、トリニトロベンゼンスルホン酸またはイサチン(isotin)試験手順を使用してモニターされる。合成完了時に、ペプチドは樹脂担体から切断され、同時に、50%スカベンジャー混合物を含有する95%トリフルオロ酢酸での処理によって、側鎖保護基が除去される。一般に使用されるスカベンジャーとしては、エタンジチオール、フェノール、アニソール、および水が挙げられ、正確な選択は、合成されるペプチドの構成アミノ酸に左右される。ペプチドの合成のための固相法と溶液相法の組み合わせもまた、可能である(例えば、(Bruckdorfer et al.,2004)、およびその中で引用される参考文献を参照されたい)。
【0296】
トリフルオロ酢酸は、真空蒸発によって除去され、引き続くジエチルエーテルを用いた磨砕は、粗製ペプチドをもたらす。存在する任意のスカベンジャーは、単純な抽出手順によって除去され、それは水相の凍結乾燥時に、スカベンジャーを含まない粗製ペプチドを与える。ペプチド合成のための試薬は、通常、例えば、Calbiochem-Novabiochem(Nottingham,UK)から入手できる。
【0297】
精製は、再結晶化、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および(通常は)例えばアセトニトリル/水勾配分離を使用した逆相高速液体クロマトグラフィーなどの技術の任意の1つまたは組み合わせによって実施されてもよい。
【0298】
ペプチドの分析は、薄層クロマトグラフィー、電気泳動法、特にキャピラリー電気泳動法、固相抽出(CSPE)、逆相高速液体クロマトグラフィー、酸加水分解後のアミノ酸分析を使用して、高速原子衝撃(FAB)質量分光分析によって、ならびにMALDIおよびESI-Q-TOF質量分光分析によって、実施されてもよい。
【0299】
過剰提示ペプチドを選択するために、中央値サンプル提示ならびに反復試験変動を示す、提示プロファイルが計算される。プロファイルは、目的腫瘍実体のサンプルを正常なサンプルのベースラインに並置させる。次に、線形混合効果モデルのp値を計算し(Pinheiro et al.,2015)誤検出率によって複数試験について補正する(Benjamini and Hochberg,1995)ことで、これらの各プロファイルが過剰提示スコアに統合され得る。
【0300】
質量分析によるHLAリガンドの同定と相対的定量化のために、衝撃凍結サンプルからのHLA分子が精製されて、HLA関連ペプチドが単離された。単離ペプチドを分離して、オンラインナノエレクトロスプレーイオン化(nanoESI)液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)実験によって、配列が同定された。得られたペプチド配列は、肺がん(NSCLC)サンプルから記録された天然TUMAPの断片化パターン(N=91A*02-陽性サンプルおよびN=80A*24-陽性サンプル)と、同一配列の対応する合成標準ペプチドの断片化パターンとの比較によって確認された。ペプチドは、原発性腫瘍のHLA分子のリガンドとして直接、同定されたので、これらの結果は、155人の肺がん(NSCLC)患者から入手された原発性がん組織上における、同定されたペプチドの天然プロセッシングおよび提示の直接的証拠を提供する。
【0301】
発見パイプラインXPRESIDENT(登録商標)v2.1(例えば、その内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第2013-0096016号明細書を参照されたい)は、いくつかの異なる非がん性組織および臓器と比較した、がん組織上のHLA拘束性ペプチドレベルの直接相対定量化に基づく、妥当な過剰提示ペプチドワクチン候補の同定と選択ができるようにする。これは、独自仕様のデータ解析パイプラインによって処理された獲得LC-MSデータ、配列同定のための組み合わせアルゴリズム、スペクトルクラスタリング、イオン計数、滞留時間アライメント、電荷状態のデコンボリューション、および正規化を使用して、無標識示差定量化の開発によって達成された。
【0302】
各ペプチドおよびサンプルの誤差推定値を含む、提示レベルが確立された。腫瘍組織上で排他的に提示されるペプチド、および腫瘍において過剰提示されるペプチドが、非がん性の組織および臓器との比較で同定されている。
【0303】
肺がん(NSCLC)組織サンプルからのHLAペプチド複合体は精製されてHLA結合ペプチドが単離され、LC-MSによって分析された(実施例を参照されたい)。本出願に含まれる全てのTUMAPは、この原発性肺がん(NSCLC)サンプルに対するアプローチを用いて同定され、それらの原発性肺がん(NSCLC)上の提示が確認された。
【0304】
複数の肺がん(NSCLC)および正常組織上で同定されたTUMAPは、無標識LC-MSデータのイオン計数を使用して定量化された。方法は、ペプチドのLC-MSシグナル面積が、サンプル中のその存在量に相関すると仮定する。様々なLC-MS実験におけるペプチドの全ての定量的シグナルは、中心傾向に基づいて正規化され、サンプルあたりで平均化されて、提示プロファイルと称される棒グラフにマージされた。提示プロファイルは、タンパク質データベース検索、スペクトルクラスタリング、電荷状態デコンボリューション(除電)および滞留時間アライメントおよび正規化のような、異なる解析法を統合する。
【0305】
さらに、発見パイプラインXPRESIDENT(登録商標)v2.xは、がんまたはその他の感染組織上で、MHC拘束性、好ましくはHLA拘束性のペプチドレベルの直接絶対定量化ができるようにする。簡単に述べると、総細胞数が、分析された組織サンプルの全DNA含有量から計算された。組織サンプル中のTUMAPの全ペプチド量は、天然TUMAPと、既知量のTUMAPの同位体標識バージョン、いわゆる内標準との比率として、ナノLC-MS/MSによって測定された。TUMAP単離の効率は、TUMAP単離手順の可能な限り早い時点で、全ての選択されたTUMAPのペプチド:MHC複合体を組織溶解産物に添加して、ペプチド単離手順の完了に続く、ナノLC-MS/MSによるそれらの検出によって判定された。総細胞数および全ペプチド量は、組織サンプルあたり三連の測定から計算された。ペプチド単離効率は、それぞれ三連で測定された、10回の添加実験からの平均として計算された(実施例および表22を参照されたい)。
【0306】
本発明は、本発明のペプチドを過剰にまたは排他的に提示する、好ましくは肺がんである、がん/腫瘍を治療するのに有用なペプチドを提供する。これらのペプチドは、原発性ヒト肺がん(NSCLC)サンプル上で、HLA分子によって天然に提示されることが、質量分析法によって示された。
【0307】
それにペプチドが由来する起源遺伝子/タンパク質(「完全長タンパク質」または「基礎タンパク質」とも称される)の多くは、正常組織と比較してがんにおいて高度に過剰発現されることが示されて、起源遺伝子の高度な腫瘍関連性が実証され、「正常組織」は、本発明との関連で、健常肺細胞またはその他の正常組織細胞のどちらかを意味するものとする(実施例2を参照されたい)。さらに、ペプチド自体は、腫瘍組織上では強く過剰提示されるが、正常組織上では過剰提示されず、「腫瘍組織」は、本発明との関連で、肺がん(NSCLC)に罹患している患者に由来するサンプルを意味するものとする(実施例1を参照されたい)。
【0308】
HLA結合ペプチドは、免疫系、特にTリンパ球によって認識され得る。T細胞は、例えば誘導ペプチドを提示する肺がん細胞などの、認識されたHLA/ペプチド複合体を提示する細胞を破壊し得る。
【0309】
本発明のペプチドは、T細胞応答を刺激でき、および/または過剰提示されることが示されおり、したがって本発明による抗体および/または可溶性TCRなどのTCRの製造のために使用され得る(実施例3、実施例4を参照されたい)。さらに、ペプチドは、それぞれのMHCと複合体形成した場合に、本発明による、抗体、特にその断片、抗体様バインダーおよび/またはTCR、特にsTCRを製造するためにも使用され得る。それぞれの方法は当業者に良く知られており、それぞれの参考文献にもまた見られる。したがって本発明のペプチドは、それによって腫瘍細胞が破壊され得る、患者における免疫応答を生じさせるのに有用である。患者における免疫応答は、理想的には免疫原性を増強する薬剤(すなわちアジュバント)との組み合わせで、記載されるペプチド、または適切な前駆体(例えば伸長ペプチド、タンパク質、またはこれらのペプチドをコードする核酸)を患者に直接投与することで、誘導され得る。本発明の標的ペプチドは、正常組織上では同等のコピー数で提示されないので、このような治療的ワクチン接種から生じる免疫応答は、腫瘍細胞に対して高度に特異的であることが予測され得て、患者の正常細胞に対する望まれない自己免疫反応のリスクを防止する。
【0310】
特異的ペプチド-MHC複合体を認識する可溶性T細胞受容体(sTCR)を製造する方法を提供することもまた、本発明のさらなる態様である。このような可溶性T細胞受容体は、特異的T細胞クローンから生成され得て、それらの親和性は相補性決定領域を標的とする変異誘発によって増大させ得る。T細胞受容体の選択目的で、ファージディスプレイが利用され得る(米国特許第2010/0113300号明細書、(Liddy et al.,2012))。ファージディスプレイ中に、そして薬剤として実用する際に、T細胞受容体を安定化させる目的で、例えば、非天然ジスルフィド結合、その他の共有結合(一本鎖T細胞受容体)、または二量体化ドメインによって、αおよびβ鎖を連結させ得る(Boulter et al.,2003;Card et al.,2004;Willcox et al.,1999)。T細胞受容体は、標的細胞上で特定機能を発揮させるために、毒素、薬剤、サイトカイン(例えば、米国特許第2013/0115191号明細書を参照されたい)、および抗CD3ドメインのようなエフェクター細胞動員ドメインなどに、連結させ得る。さらにそれは、養子免疫伝達のために使用されるT細胞において発現され得る。さらなる情報は、国際公開第2004/033685A1号パンフレットおよび国際公開第2004/074322A1号パンフレットにある。TCRの組み合わせは、国際公開第2012/056407A1号パンフレットに記載される。追加的な製造法は、国際公開第2013/057586A1号パンフレットで開示される。
【0311】
「医薬組成物」は、医学的状況においてヒトへの投与に適する組成物である。好ましくは、医薬組成物は無菌であり、GMPガイドラインに準拠して製造される。
【0312】
医薬組成物は、遊離形態または薬学的に許容可能な塩の形態のどちらかのペプチドを含んでなる(上記もまた参照されたい)。本明細書の用法では、「薬学的に許容可能な塩」は、開示されたペプチドの誘導体を指し、ペプチドは、薬剤の酸性または塩基性塩を生成することで修飾される。例えば、酸性塩は、適切な酸との反応を伴って、遊離塩基から調製される(典型的に、薬剤の中性形態が中性NH2基を有する)。酸性塩を調製するための適切な酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸、ならびに例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸リン酸などの無機酸の双方が挙げられる。逆に、ペプチド上に存在してもよい酸部分の塩基性塩の調製物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなどの薬学的に許容可能な塩基を用いて調製される。
【0313】
特に好ましい一実施形態では、医薬組成物は、酢酸(酢酸塩)、トリフルオロ酢酸または塩酸(塩化物)の塩としてのペプチドを含んでなる。
【0314】
好ましくは、本発明の薬剤は、ワクチンなどの免疫療法剤である。それは、患者に直接、罹患臓器に、または全身的に、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、およびi.v.投与され、または生体外で患者またはヒト細胞株に由来する細胞に適用されて、それが引き続いて患者に投与され、または生体外で使用されて患者に由来する免疫細胞の亜集団が選択され、次にそれが患者に再投与されてもよい。核酸が、生体外で細胞に投与される場合、インターロイキン2などの免疫刺激サイトカインを同時発現させるように、細胞を形質移入することが有用であってもよい。ペプチドは、実質的に純粋であり、または免疫刺激アジュバント(下記参照)と組み合わされ、または免疫賦活性サイトカインと組み合わせて使用され、または例えばリポソームなどの適切な送達系によって投与されてもよい。ペプチドはまた、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)またはマンナンなどの適切な担体に共役されてもよい(国際公開第号パンフレット95/18145および(Longenecker et al.,1993を参照されたい)。ペプチドはまた、標識されてもよく、融合タンパク質であってもよく、またはハイブリッド分子であってもよい。その配列が本発明に記載されるペプチドは、CD4またはCD8 T細胞を刺激することが予測される。しかし、CD8 T細胞の刺激は、CD4 Tヘルパー細胞によって提供される援助の存在下で、より効率的である。したがって、CD8 T細胞を刺激するMHCクラスIエピトープでは、ハイブリッド分子の融合パートナーまたはセクションは、適切にはCD4陽性T細胞を刺激するエピトープを提供する。CD4およびCD8刺激エピトープは、当該技術分野で周知であり、本発明で同定されたものが挙げられる。
【0315】
一態様では、ワクチンは、配列番号1~配列番号110に記載されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドと、少なくとも1つの追加的なペプチド、好ましくは2~50、より好ましくは2~25、なおもより好ましくは2~20、最も好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18個のペプチドとを含んでなる。ペプチドは、1つまたは複数の特異的TAAから誘導されてもよく、MHCクラスI分子に結合してもよい。
【0316】
本発明のさらなる態様は、本発明のペプチドまたはペプチド変異体をエンコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)を提供する。ポリヌクレオチドは、それがペプチドをコードしさえすれば、例えば、単鎖および/または二本鎖のいずれかのDNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよく、または例えばホスホロチオエート主鎖があるポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの未変性または安定化形態であってもよく、それはイントロンを含有してもまたはしなくてもよい。もちろん、天然起源ペプチド結合によって連結する天然アミノ酸残基を含有するペプチドのみが、ポリヌクレオチドによってエンコードされ得る。本発明のなおもさらなる態様は、本発明によるポリペプチドを発現できる発現ベクターを提供する。
【0317】
例えば相補的付着端を通じて、ポリヌクレオチド、特にDNAをベクターに連結する、多様な方法が開発されている。例えば、ベクターDNAに挿入されるDNA断片に、相補的ホモポリマー配列が付加され得る。次に、相補的ホモポリマー尾部間の水素結合によって、ベクターおよびDNA断片が連結されて組換えDNA分子が形成する。
【0318】
1つまたは複数の制限酵素認識部位を含有する合成リンカーは、DNA断片をベクターに連結する代替え方法を提供する。多様な制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーは、International Biotechnologies Inc.New Haven,CN,USAをはじめとするいくつかの供給元から、商業的に入手できる。
【0319】
本発明のポリペプチドをコードするDNAを修飾する望ましい方法は、Saiki RK,et al.(Saiki et al.,1988)で開示されるようなポリメラーゼ連鎖反応を用いる。この方法は、例えば適切な制限酵素認識部位を改変することで、DNAを適切なベクターに導入するために使用されてもよく、またはそれは、当該技術分野で既知のその他の有用な様式でDNAを修飾するために使用されてもよい。ウイルスベクターを使用するのであれば、ポックスウイルスまたはアデノウイルスベクターが好ましい。
【0320】
次にDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)を適切な宿主において発現させ、本発明のペプチドまたは変異体を含んでなるポリペプチドが製造されてもよい。このようにして、本明細書に含まれる教示を考慮して適切に修正された既知の技術に従って、本発明のペプチドまたは変異体をコードするDNAを使用して、発現ベクターが構築されてもよく、次にそれを使用して、本発明のポリペプチドの発現および製造のために、適切な宿主細胞が形質転換される。このような技術としては、例えば、米国特許第4,440,859号明細書、米国特許第4,530,901号明細書、米国特許第4,582,800号明細書、米国特許第4,677,063号明細書、米国特許第4,678,751号明細書、米国特許第4,704,362号明細書、米国特許第4,710,463号明細書、米国特許第4,757,006号明細書、米国特許第4,766,075号明細書、および米国特許第4,810,648号明細書で開示されるものが挙げられる。
【0321】
本発明の化合物を構成するポリペプチドをエンコードするDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)は、適切な宿主への導入のために、多種多様なその他のDNA配列に連結されてもよい。コンパニオンDNAは、宿主の性質、DNAの宿主への導入様式、およびエピソームの維持または組み込みが所望されるかどうかに左右される。
【0322】
一般に、DNAは、発現のための適切な方向および正しい読み枠で、プラスミドなどの発現ベクターに挿入される。必要ならば、DNAは、所望の宿主によって認識される適切な転写および翻訳制御調節ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような調節は、一般に発現ベクター中で利用できる。次に、標準的な技術を通じて、ベクターが宿主に導入される。一般に、全ての宿主がベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要になる。一選択技術は、任意の必要な制御要素と共に、形質転換細胞における選択可能な形質、例えば抗生物質耐性をコードするDNA配列を発現ベクターに組み込むことを伴う。
【0323】
代案としては、このような選択可能な形質の遺伝子は、所望の宿主細胞を同時形質転換するのに使用される、別のベクター上にあり得る。
【0324】
次に、本明細書で開示される教示を考慮して、当業者に知られている適切な条件下で十分な時間にわたり、本発明の組換えDNAによって形質転換された宿主細胞が培養されてポリペプチドが発現され、次にそれが回収れされ得る。
【0325】
細菌(例えば大腸菌(E.coli)およびバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、酵母(例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌(例えばアスペルギルス属(Aspergillus))、植物細胞、動物細胞、および昆虫細胞をはじめとする多数の発現系が知られている。好ましくは、細胞株は、ATCC Cell Biology Collectionから入手できるCHO細胞などの哺乳類細胞であり得る。
【0326】
構成的発現のための典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、適切なポリA尾部と、ネオマイシンなどの耐性マーカーとがある、CMVまたはSV40プロモーターを含んでなる。一例は、Pharmacia,Piscataway,NJ,USAから入手できるpSVLである。誘導性哺乳類発現ベクターの一例であるpMSGもまた、Pharmaciaから入手できる。有用な酵母プラスミドベクターは、pRS403-406およびpRS413-416であり、通常、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA 92037,USAから入手できる。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405、およびpRS406は、酵母組み込みプラスミド(YIps)であり、酵母の選択可能なマーカーHIS3、TRP1、LEU2、およびURA3が組み込まれている。プラスミドpRS413-416は、酵母セントロメアプラスミド(Ycps)である。CMVプロモーターベースのベクター(例えばSigma-Aldrich製)は、一過性または安定性発現、細胞質内発現または分泌、およびFRAG、3xFLAG、c-mycまたはMATの様々な組み合わせでのN末端またはC末端標識付けを提供する。これらの融合タンパク質は、組換えタンパク質を検出、精製、および分析できるようにする。二重標識融合物は、検出に融通性を与える。
【0327】
強力なヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター調節領域は、COS細胞において、構成タンパク質発現レベルを1mg/L程度の高さに駆動する。効力がより低い細胞株では、タンパク質レベルは典型的に約0.1mg/Lである。SV40複製起点の存在は、SV40複製許容COS細胞における高レベルのDNA複製をもたらす。CMVベクターは、例えば、細菌細胞におけるpMB1(pBR322の誘導体)複製起点、細菌におけるアンピシリン耐性選択のためのb-ラクタマーゼ遺伝子、hGHポリA、およびf1起点を含有し得る。プレプロトリプシンリーダー(PPT)配列を含有するベクターは、抗FRAG抗体、樹脂、およびプレートを使用する精製のために、培養液中へのFRAG融合タンパク質分泌を誘導し得る。多様な宿主細胞において使用するためのその他のベクターおよび発現系が、当該技術分野で周知である。
【0328】
別の実施形態では、本発明の2つ以上のペプチドまたはペプチド変異型がコードされ、したがって順次発現される(「数珠玉構造」コンストラクトに類似する)。その際に、ペプチドまたはペプチド変異型は、例えばLLLLLLなどの一続きのリンカーアミノ酸によって、共に連結または融合されてもよく、またはそれらの間のいかなる追加的なペプチドもなしに連結されてもよい。これらのコンストラクトはまた、がん療法のために使用され得て、MHC IとMHC IIの双方が関与する免疫応答を誘導してもよい。
【0329】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドベクターコンストラクトで形質転換された宿主細胞にも関する。宿主細胞は、原核または真核生物のどちらかであり得る。細菌細胞は、いくつかの状況では、好ましい原核宿主細胞であってもよく、典型的には、例えば、Bethesda Research Laboratories Inc.,Bethesda,MD,USAから入手できる大腸菌(E.coli)DH5株、および米国微生物系統保存機関(ATCC)Rockville,MD,USAから入手できるRR1(ATCC番号31343)などの大腸菌(E.coli)株である。好ましい真核宿主細胞としては、酵母、昆虫、および哺乳類細胞、好ましくはマウス、ラット、サルまたはヒト線維芽および結腸細胞株に由来するものなどの脊椎動物細胞が挙げられる。酵母宿主細胞としては、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA 92037,USAから一般に入手できる、YPH499、YPH500、およびYPH501が挙げられる。好ましい哺乳類宿主細胞としては、ATCCからCCL61として入手できるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL1658として入手できるNIH Swissマウス胚細胞NIH/3T3、ATCCからCRL1650として入手できるサル腎臓由来COS-1細胞、およびヒト胎児由来腎臓細胞である293細胞が挙げられる。好ましい昆虫細胞は、バキュロウイルス発現ベクターで形質移入され得るSf9細胞である。発現のための適切な宿主細胞の選択に関する概説は、例えば、Paulina Balbas and Argelia Lorence”Methods in Molecular Biology Recombinant Gene Expression,Reviews and Protocols,”Part One,Second Edition,ISBN 978-1-58829-262-9の教科書、および当業者に知られているその他の文献にある。
【0330】
本発明のDNAコンストラクトによる適切な細胞宿主の形質転換は、典型的に使用されるベクターのタイプに左右される周知の方法によって達成される。原核宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al.(Cohen et al.,1972)および(Green and Sambrook,2012)を参照されたい。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al.(Sherman et al.,1986)に記載される。Beggs(Beggs,1978)の方法もまた有用である脊椎動物細胞に関しては、このような細胞を形質移入するのに有用な、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランまたはリポソーム製剤などの試薬が、Stratagene Cloning Systems,or Life Technologies Inc.,Gaithersburg,MD 20877,USAから入手できる。電気穿孔もまた、細胞を形質転換および/または形質移入するのに有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞、および脊椎動物細胞を形質転換する技術分野で周知である。
【0331】
成功裏に形質転換された細胞、すなわち本発明のDNAコンストラクトを含有する細胞は、PCRなどの周知の技術によって同定され得る。代案としては、抗体を使用して、上清中のタンパク質の存在が検出され得る。
【0332】
例えば、細菌、酵母、および昆虫細胞などの本発明の特定の宿主細胞は、本発明のペプチドの調製において有用であることが理解されるであろう。しかしその他の宿主細胞が、特定の治療法において有用であってもよい。例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞は、それらが適切なMHC分子中に負荷されてもよいように、本発明のペプチドを発現するために有用に使用されてもよい。したがって、本発明は、本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。
【0333】
好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞または抗原提示細胞である。前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)を含有する組換え融合タンパク質が負荷されたAPCは、無症候性または微小症候性転移性HRPCを治療するために、米国食品医薬品局(FDA)によって2010年4月20日に認可された(シプロイセルT)(Rini et al.,2006;Small et al.,2006)。
【0334】
本発明のさらなる態様は、宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、ペプチドまたはその変異型を製造する方法を提供する。
【0335】
別の実施形態では、本発明のペプチド、核酸または発現ベクターは、医療において使用される。例えば、ペプチドまたはその変異体は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、筋肉内(i.m.)注射のために調合されてもよい。ペプチド注射の好ましい方法としては、s.c.、i.d.、i.p.、i.m.、およびi.v.が挙げられる。DNA注射の好ましい方法としては、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、およびi.v.が挙げられる。例えば、50μg~1.5mg、好ましくは125μg~500μgのペプチドまたはDNAの用量が投与されてもよく、それぞれのペプチドまたはDNAに左右される。この範囲の用量は、以前の治験で成功裏に使用された(Walter et al.,2012)。
【0336】
活性ワクチン接種のために使用されるポリヌクレオチドは、実質的に純粋であってもよく、または適切なベクターまたは送達系に含有されてもよい。核酸は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよい。このような核酸をデザインして導入する方法は、当該技術分野で周知である。概説は、例えば、Teufel et al.(Teufel et al.,2005)によって提供される。ポリヌクレオチドワクチンは調製が容易であるが、免疫応答誘導におけるこれらのベクターの作用機序は、完全には分かっていない。適切なベクターおよび送達系としては、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、または2つ以上のウイルスの構成要素を含有するハイブリッドベースのシステムなどのウイルスDNAおよび/またはRNAが挙げられる。非ウイルス送達系としては、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーが挙げられ、DNA送達技術分野において周知である。「遺伝子銃」などを通じた物理的送達もまた、使用されてもよい。核酸によってコードされるペプチド(単数)またはペプチド(複数)は、例えば、上述のように、それぞれの逆CDRのT細胞を刺激する、エピトープとの融合タンパク質であってもよい。
【0337】
本発明の薬剤は、1つまたは複数のアジュバントもまた含んでもよい。アジュバントは、免疫応答(例えば、CD8陽性T細胞およびヘルパーT(TH)細胞によって媒介される抗原に対する免疫応答を非特異的に促進または増強する物質であり、したがって本発明の薬剤中で有用であると見なされる。適切なアジュバントとしては、1018 ISS、アルミニウム塩、AMPLIVAX(登録商標)、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、フラジェリンまたはフラジェリン由来TLR5リガンド、FLT3リガンド、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド(ALDARA(登録商標))、レシキモド、ImuFactIMP321、IL-2やIL-13やIL-21としてのインターロイキン、インターフェロン-αまたは-βまたはそれらのPEG化誘導体、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、ISCOMs、JuvImmune(登録商標)、LipoVac、MALP2、MF59、モノホスホリルリピドA、モンタニドIMS1312、モンタニドISA206、モンタニドISA50V、モンタニドISA-51、油中水型および水中油型エマルション、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、OspA、PepTel(登録商標)ベクター系、ポリ(ラクチドコ-グリコリド)[PLG]ベースおよびデキストラン微粒子、タラクトフェリンSRL172、ビロソームおよびその他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGF trap、R848、β-グルカン、Pam3Cys、サポニン由来Aquila’s QS21 stimulon、マイコバクテリア抽出物、および合成細菌細胞壁模倣体、そしてRibi’s DetoxまたはQuilまたはSuperfosなどのその他の独自仕様のアジュバントが挙げられるが、これに限定されるものではない。フロイントまたはGM-CSFなどのアジュバントが好ましい。樹状細胞およびそれらの調製物に対して特異的な、いくつかの免疫学的アジュバント(例えばMF59)が、以前記載されている(Allison and Krummel,1995)。サイトカインもまた、使用されてもよい。数種のサイトカインは、樹状細胞のリンパ組織(例えばTNF-)への移動に影響を与えること、Tリンパ球(例えば、GM-CSF、IL-1、およびIL-4)のための効率的な抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を加速すること(その内容全体が参照により本明細書に具体的に援用される、米国特許第5,849,589号明細書)、および免疫増強剤(例えば、IL-12、IL-15、IL-23、IL-7、IFN-α、IFN-β)として作用することと、直接関連づけられている(Gabrilovich et al.,1996)。
【0338】
CpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドもまた、ワクチン環境において、アジュバント効果を促進することが報告されている。理論により拘束されることなく、CpGオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)、主にTLR9を通じた、内在的(非適応性)免疫系の活性化によって作用する。CpG誘導性TLR9活性化は、ペプチドまたはタンパク質抗原、生きたまたは死滅ウイルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞ワクチン、そして予防的および治療的ワクチンの双方における多糖コンジュゲートをはじめとする、多種多様な抗原に対する、抗原特異的体液性および細胞性応答を増強する。より重要なことには、それは樹状細胞の成熟と分化を促進し、CD4 T細胞援助の不在下であってさえも、TH1細胞の活性化促進、および強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)生成をもたらす。TLR9刺激によって誘導されるTH1バイアスは、通常はTH2バイアスを促進するミョウバンまたは不完全フロイントアジュバント(IFA)などのワクチンアジュバント存在下であってさえも、維持される。CpGオリゴヌクレオチドは、その他のアジュバントと調合されまたは同時投与された際に、または微粒子、ナノ粒子、脂質エマルションなどの配合物、または類似配合物において、なおもより高いアジュバント活性を示し、それは、抗原が比較的弱い場合、強力な応答を誘導するのに特に必要である。それらは免疫応答もまた加速し、いくつかの実験では、CpGなしのワクチン総量と同等の抗体応答で、抗原用量のほぼ2桁分の低減を可能にする(Krieg,2006)。米国特許第6,406,705B1号明細書は、抗原特異的免疫応答を誘導するためのCpGオリゴヌクレオチド、非核酸アジュバント、および抗原の併用を記載する。CpG TLR9拮抗薬は、本発明の医薬組成物の好ましい構成要素である、Mologen(Berlin,Germany)製のdSLIM(二重ステムループ免疫調節剤)である。RNA結合TLR7、TLR8および/またはTLR9などのその他のTLR結合分子もまた、使用されてもよい。
【0339】
有用なアジュバントその他の例としては、化学修飾CpG(例えば、CpR、Idera);ポリ(I:C)などのdsRNAアナログおよびそれらの誘導体(例えばAmpliGen(登録商標)、Hiltonol(登録商標)、ポリ(ICLC)、ポリ(IC-R)、ポリ(I:C12U)、非CpG細菌DNAまたはRNA;ならびにシクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ(登録商標)、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフェニブ、テモゾロマイド、テムシロリムス、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、VEGF Trap、ZD2171、AZD2171、抗CTLA4などの免疫活性小型分子および抗体;免疫系の重要な構造体を標的にするその他の抗体(例えば、抗CD40、抗TGFβ、抗TNFα受容体);SC58175が挙げられるが、これに限定されるものではなく、これらは治療的におよび/またはアジュバントとして作用してもよい。本発明の文脈で有用なアジュバントおよび添加剤の量と濃度は、過度の実験を実施することなく、当業者によって容易に判定され得る。
【0340】
好ましいアジュバントは、抗CD40、イミキモド、レシキモド、GM-CSF、シクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、インターフェロンα、CpGオリゴヌクレオチドおよび誘導体、ポリ(I:C)および誘導体、RNA、シルデナフィル、およびPLGまたはビロソーム微粒子調合物である。
【0341】
本発明による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)、シクロホスファミド、イミキモド、レシキモド、およびインターフェロンαなどのコロニー刺激因子からなる群から選択される。
【0342】
本発明による医薬組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)、シクロホスファミド、イミキモド、およびレシキモドなどのコロニー刺激因子からなる群から選択される。本発明による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、シクロホスファミド、イミキモドまたはレシキモドである。なおもより好ましいアジュバントは、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、ポリICLC(Hiltonol(登録商標))、および抗CD40mABまたはそれらの組み合わせである。
【0343】
この組成物は、皮下、皮内、筋肉内などの非経口投与、または経口投与のために使用される。このためには、ペプチドおよび任意選択的にその他の分子が、薬学的に許容可能な、好ましくは水性担体に溶解され、または懸濁される。さらに組成物は、緩衝液、結合剤、ブラスチング剤、希釈剤、風味、潤滑剤などの賦形剤を含有し得る。ペプチドはまた、サイトカインなどの免疫刺激物質と共に投与され得る。このような組成物中で使用され得る賦形剤の詳細な一覧は、例えば、A.Kibbe,Handbook of Pharmaceutical Excipients(Kibbe,2000)から採用され得る。組成物は、腺腫様またはがん性疾患の阻止、予防法および/または治療法のために使用され得る。例示的調合物は、例えば、欧州特許第2112253号明細書にある。
【0344】
本発明によるワクチンによって引き起こされる免疫応答は、異なる細胞分裂期および異なる発生段階のがんを攻撃することを理解することが重要である。さらに、異なるがん関連シグナル伝達経路が攻撃される。これは、1つまたは少数の標的のみに対処して、攻撃に対する腫瘍の容易な適応(腫瘍エスケープ)を引き起こすこともある、ワクチンに優る利点である。さらに個々の腫瘍の全てが、同一パターンの抗原を発現するとは限らない。したがって、いくつかの腫瘍関連ペプチドの組み合わせによって、ありとあらゆる腫瘍が標的の少なくとも一部を有することが確実になる。組成物は、それぞれの腫瘍が抗原のいくつかを発現することを予期して設計され、腫瘍の増殖と維持に必要ないくつかの独立した経路をカバーする。したがって、ワクチンは、より大きな患者集団のために、容易に「出来合」で使用され得る。これは、ワクチンで治療される患者の予備選択が、HLAタイピングに限定され得て、抗原発現に関する任意の追加的なバイオマーカーアセスメントを必要としないことを意味するが、いくつかの標的が誘導免疫応答によって同時に攻撃されることはなおも確実であり、これは有効性にとって重要である(Banchereau et al.,2001;Walter et al.,2012)。
【0345】
本明細書の用法では、「スキャフォールド」という用語は、(例えば、抗原性)決定因子に特異的に結合する分子を指す。一実施形態では、スキャフォールドはまた、それが付着する実体(例えば、(第2の)抗原結合部分)を例えば、抗原決定基(例えば本出願書に記載のペプチドとMHCの複合体)を有する特異的腫瘍細胞または腫瘍間質などの型標的部位に誘導できる。別の実施形態では、キャフォールドは、例えば、T細胞受容体複合体抗原などのその標的抗原を介して、シグナル伝達を活性化できる。スキャフォールドとしては、抗体およびそれらのフラグメント、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含んでなる抗体の抗原結合ドメイン、少なくとも1つのアンキリンリピートモチーフと単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子とを含んでなる結合タンパク質、アプタマー、(可溶性)TCR、および同種または自己由来T細胞などの(改変)細胞が挙げられるが、これに限定されるものではない。分子が標的に結合するスキャフォールドであるかどうかを評価するために、結合アッセイが実施され得る。
【0346】
「特異的」結合は、特異的標的を保有する細胞を殺滅できる活性分子を装備したスキャフォールドが、特異的標的がないがその他のペプチド-MHC複合体を提示する別の細胞を殺滅できない程度に、スキャフォールドがその他の天然ペプチド-MHC-複合体よりもさらに良好に、目的ペプチド-MHC-複合体に結合することを意味する。交差反応性ペプチド-MHCのペプチドが天然に存在せず、すなわち、ヒトHLA-ペプチドームに由来しない場合、その他のペプチド-MHC複合体への結合は無関係である。標的細胞死滅を評価する試験は、当該技術分野で周知である。それらは、非改変ペプチド-MHC提示がある標的細胞(初代細胞または細胞株)、または天然に存在するペプチド-MHCレベルに達するようにペプチドを負荷された細胞を使用して、実施されるべきである。
【0347】
各スキャフォールドは標識を含んでなり得て、それは、標識によって提供されるシグナルの存在または不在を判定することで、結合スキャフォールドが検出され得ることを提供する。例えば、スキャフォールドは、蛍光染料または任意のその他の適用可能な細胞マーカー分子で標識され得る。このようなマーカー分子は、当該技術分野で周知である。例えば、蛍光染料によって提供される蛍光標識は、蛍光またはレーザー走査顕微鏡またはフローサイトメトリーによる、結合アプタマーの視覚化を提供し得る。
【0348】
各スキャフォールドは、例えば、IL-21、抗-CD3、および抗-CD28などの第2の活性分子にコンジュゲートされ得る。
【0349】
ポリペプチドスキャフォールドに関するさらなる情報については、例えば国際公開第2014/071978A1号パンフレットの背景セクション、およびその中で引用された参考文献を参照されたい。
【0350】
本発明は、アプタマーにさらに関する。アプタマー(例えば、国際公開第2014/191359号パンフレット、およびその中で引用される文献を参照されたい)は、短い一本鎖核酸分子であり、それは、所定の三次元構造に折り畳まれて、特異的標的構造体を認識し得る。それらは、標的療法を開発するための適切な代案のようであった。アプタマーは、高い親和性および特異性で、多様な複合体標的と選択的に結合することが示されている。
【0351】
細胞表面に位置する分子を認識するアプタマーは、過去10年内に同定されており、診断および治療的アプローチを開発する手段を提供する。アプタマーは、毒性および免疫原性がほぼ皆無であることが示されているので、それらは生物医学的用途のための有望な候補である。確かに、例えば、前立腺特異的膜抗原認識アプタマーなどのアプタマーは、標的療法のために成功裏に用いられており、異種移植片生体内モデルにおいて機能できることが示されている。さらに、特異的腫瘍細胞株を認識するアプタマーが同定されている。
【0352】
DNAアプタマーは、様々ながん細胞、特に固形腫瘍に由来するものに対して広域スペクトル認識特性を示す一方で、非腫瘍形成性および主要健常細胞を認識しないように選択され得る。同定されたアプタマーが、特異的腫瘍サブタイプを認識するだけでなく、むしろ一連の腫瘍と相互作用する場合、これは、アプタマーをいわゆる広域スペクトル診断薬および治療薬として応用可能にする。
【0353】
さらに、フローサイトメトリーによる細胞結合挙動の研究は、アプタマーが、ナノモル濃度範囲内の非常に良好な見かけの親和性を見せたことを示した。
【0354】
アプタマーは、診断および治療目的で有用である。さらに、アプタマーの一部は腫瘍細胞に取り込まれ、したがって腫瘍細胞中へのsiRNAなどの抗がん剤の標的化送達のための分子ビヒクルとして、機能し得ることが示され得る。
【0355】
アプタマーは、細胞SELEX(試験管内進化法)技術を使用して、細胞および組織などの複合体標的に対して、および本発明による配列番号1~配列番号110のいずれかに記載の配列とMHC分子とを含んでなり、好ましくはそれからなるペプチド複合体などに対して、選択され得る。
【0356】
本発明のペプチドを使用して、MHC/ペプチド複合体に対する特異的抗体が生成され、開発され得る。これらは、毒素または放射性物質を患部組織に標的化する治療法のために、使用され得る。これらの抗体の別の用途は、PETなどのイメージング目的の放射性核種の患部組織への標的化であり得る。この用途は、小規模な転移の検出、または病的組織のサイズと正確な位置確認の判定を助け得る。
【0357】
したがってHLA拘束性抗原と複合体化した、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、組換え抗体を製造する方法を提供することが、本発明のさらなる態様であり、方法は、前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIを発現する細胞を含んでなる、遺伝子操作された非ヒト哺乳類を前記HLA拘束性抗原と複合体化した可溶性形態のMHCクラスIまたはII分子によって免疫化するステップと;mRNA分子を前記非ヒト哺乳類の抗体産 生細胞から単離するステップと;前記mRNA分子によってコードされるタンパク質分子を提示する、ファージディスプレイライブラリーを作成するステップと;少なくとも1つのファージを前記ファージディスプレイライブラリーから単離するステップとを含んでなり、前記少なくとも1つのファージは、前記HLA拘束性抗原と複合体化した前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、前記抗体を提示する。
【0358】
HLA拘束性抗原と複合体化したヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する抗体を提供することも、本発明のさらなる態様であり、その中で抗体は、好ましくは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体および/またはキメラ抗体である。
【0359】
このような抗体および一本鎖クラスI主要組織適合性複合体を製造するそれぞれの方法、ならびにこれらの抗体を製造するためのその他のツールは、本発明の目的で、その内容全体が参照により全て明示的に援用される、国際公開第03/068201号パンフレット、国際公開第2004/084798号パンフレット、国際公開第01/72768号パンフレット、国際公開第03/070752号パンフレット、および刊行物(Cohen et al.,2003a;Cohen et al.,2003b;Denkberg et al.,2003)で開示される。
【0360】
好ましくは、抗体は、20ナノモル濃度未満、好ましくは10ナノモル濃度未満の結合親和性で複合体に結合し、それは本発明の文脈で「特異的」とも見なされる。
【0361】
本発明は、配列番号1~配列番号110からなる群から選択される配列、または配列番号1~配列番号110と少なくとも88%相同的な(好ましくは同一の)その変異体を含んでなるペプチド、またはT細胞を前記ペプチドと交差反応させるその変異体に関し、前記ペプチドは、基礎となる完全長ポリペプチドでない。
【0362】
本発明は、配列番号1~配列番号110からなる群から選択される配列、または、配列番号1~配列番号110と少なくとも88%相同的な(好ましくは同一の)その変異体を含んでなるペプチドにさらに関し、前記ペプチドまたは変異体は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14アミノ酸の全長を有する。
【0363】
本発明は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子に結合する能力を有する、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0364】
本発明は、ペプチドが、配列番号1~配列番号110に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0365】
本発明は、ペプチドが(化学的に)修飾された、および/または非ペプチド結合を含む、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0366】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、ペプチドは、融合タンパク質の一部であり、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸を含んでなり、またはペプチドは、例えば樹状細胞特異的抗体などの抗体に(またその中に)融合する。
【0367】
本発明は、本発明によるペプチドをエンコードする核酸にさらに関するが、ただしペプチドは完全(完全長)ヒトタンパク質でない。
【0368】
本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0369】
本発明は、本発明による核酸を発現できる、発現ベクターにさらに関する。
【0370】
本発明は、医療において、特に肺がんの治療において使用するための本発明によるペプチド、本発明による核酸または本発明による発現ベクターにさらに関する。
【0371】
本発明は、本発明による核酸または本発明による発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。
【0372】
本発明は、抗原提示細胞、好ましくは樹状細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。
【0373】
本発明は、本発明による宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、本発明によるペプチドを製造する方法にさらに関する。
【0374】
本発明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に、抗原が負荷される、本発明による方法にさらに関する。
【0375】
本発明は、抗原提示細胞が、配列番号1~配列番号110または前記異アミノ酸配列を含有する、前記ペプチドを発現できる、発現ベクターを含んでなる、本発明による方法にさらに関する。
【0376】
本発明は、本発明による方法によって製造される活性化T細胞にさらに関し、前記T細胞は、本発明によるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する細胞を選択的に認識する。
【0377】
本発明は、本発明によるT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、患者において、本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0378】
本発明は、記載される任意のペプチド、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、または本発明による活性化細胞傷害性Tリンパ球の、薬剤としての、または薬剤の製造における、使用にさらに関する。本発明は、薬剤ががんに対して有効である、本発明による使用にさらに関する。
【0379】
本発明は、薬剤がワクチンである、本発明による使用にさらに関する。本発明は、薬剤ががんに対して有効である、本発明による使用にさらに関する。
【0380】
本発明は、発明による使用にさらに関し、前記がん細胞は、肺がん細胞であり、または脳がん、乳がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、メラノーマ、メルケル細胞がん、白血病(AML、CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、胃食道接合部がん(OSCAR)をはじめとする食道がん、胆嚢がんおよび胆管細胞がん(GBC_CCC)、膀胱がん(UBC)、および子宮がん(UEC)などのその他の固形または血液学的腫瘍細胞である。
【0381】
本発明は、肺がんの診断および/または予後診断において使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本発明によるペプチドベースの特定の標識タンパク質およびバイオマーカーにさらに関する。本発明はまた、がん治療のためのこれらの新規標的の使用に関する。
【0382】
「抗体(単数)」または「抗体(複数)」という用語は、本明細書では広義に使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方を含む。無処理または「完全」免疫グロブリン分子に加えて、「抗体」という用語には、本発明による所望の特性(例えば、肺がんマーカー(ポリ)ペプチドの特異的結合、がんマーカー遺伝子を増大レベルで発現する肺がん細胞への毒素の送達、および/または肺がんマーカーポリペプチドの活性阻害)のいずれかを示しさえすれば、フラグメント(例えば、CDRs、Fv、Fab、およびFcフラグメント)、またはこれらの免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子ヒト化バージョンのポリマーもまた含まれる。
【0383】
可能な場合は常に、本発明の抗体は、商業的供給元から購入されてもよい。また本発明の抗体は、周知の方法を使用して生成されてもよい。当業者は、本発明の抗体を生成するために、完全長肺がんマーカーポリペプチドまたはそのフラグメントのどちらを使用してもよいことを理解するであろう。本発明の抗体を生成するために使用されるポリペプチドは、天然原料から部分的にまたは完全に精製されてもよく、または組換えDNA技術を使用して製造されてもよい。
【0384】
例えば、配列番号1~配列番号110ポリペプチドに記載のペプチドなどの本発明によるペプチドをコードするcDNA;またはその変異体またはフラグメントが、原核細胞(例えば、細菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳類細胞)において発現され得て、その後、組換えタンパク質は精製されて、本発明による抗体を生成するために使用される、膵臓がんマーカーポリペプチドに特異的に結合する、モノクローナルまたはポリクローナル抗体製剤を生成するために使用され得る。
【0385】
当業者は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の2つ以上の異なるセットの生成が、その目的の用途(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、生体内イメージング、免疫毒素療法)に必要な特異性および親和性がある抗体を得る可能性を最大化することを理解するであろう。抗体は、それに対して抗体が使用される目的に従って、既知の方法によりそれらの所望の活性について試験された(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、免疫療法など;抗体の生成および試験のさらなるガイダンスについては、例えば、Greenfield,2014(Greenfield,2014)を参照されたい。例えば、抗体は、ELISAアッセイ、ウエスタンブロット、ホルマリン固定肺がんまたは冷凍組織切片の免疫組織化学染色で試験されてもよい。それらの最初の生体外特性解析後、治療または生体内診断用途を意図した抗体が、既知の臨床試験法によって試験される。
【0386】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書の用法では、実質的に均質な抗体集団から入手される抗体を指し;すなわち、母集団を構成する個々の抗体は、微量で存在してもよい可能な自然発生的変異以外は同一である。本明細書では、「モノクローナル抗体」は、それらが所望の拮抗活性を示しさえすれば、その中で重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来しまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する、抗体中の対応する配列と同一または相同的である一方、鎖の残部は、別の種に由来しまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である、「キメラ」抗体、ならびにこのような抗体のフラグメントを特に含む(その内容全体が本明細書に援用される、米国特許第4,816,567号明細書)。
【0387】
本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を使用して調製されてもよい。ハイブリドーマ法においては、マウスまたはその他の適切な宿主動物が免疫剤によって典型的に免疫化されて、免疫剤と特異的に結合する抗体を産生するまたは産生できるリンパ球を生じさせる。代案としては、リンパ球は、生体外で免疫化されてもよい。
【0388】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号明細書に記載されるものなどの組換えDNA法によって製造されるものであってもよい。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離および配列決定され得る(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合できる、オリゴヌクレオチドプローブの使用によって)。
【0389】
インビトロ法もまた、一価の抗体を調製するのに適する。抗体フラグメント、特にFabフラグメントを生成するための抗体の消化は、当該技術分野で既知の通例の技術を使用して達成され得る。例えば、消化は、パパインを使用して実施され得る。パパイン消化の例は、国際公開第94/29348号パンフレットおよび米国特許第4,342,566号明細書に記載される。抗体のパパイン消化は、それぞれ単一抗原結合部位があるFabフラグメントと称される2つの同一の抗原結合フラグメントと、残りのFcフラグメントとを典型的に生じる。ペプシン処理は、F(ab’)2フラグメントおよびpFc’フラグメントをもたらす。
【0390】
抗体フラグメントは、その他の配列に付着するかどうかに関わりなく、フラグメントの活性が非修飾抗体または抗体フラグメントと比較して顕著に変化せずまたは損なわれないという条件で、特定領域または特定アミノ酸残基の挿入、欠失、置換、またはその他の選択された修飾もまた含み得る。これらの修飾は、ジスルフィド結合できるアミノ酸の除去/付加、そのバイオ寿命増大、その分泌特性改変などのいくつかの追加的な特性を提供し得る。いずれにしても、抗体フラグメントは、結合活性、結合領域における結合調節などの生理活性特性を有しなくてはならない。抗体の機能性または活性領域は、タンパク質の特定領域の変異誘発と、それに続く発現と、発現したポリペプチドの試験によって同定されてもよい。このような方法は、当該技術分野の熟練した実務家には容易に分かり、抗体フラグメントをエンコードする核酸の部位特異的変異誘発を含み得る。
【0391】
本発明の抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体をさらに含んでなってもよい。非ヒト(例えばマウス)抗体などのヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(抗体のFv、Fab、Fab’またはその他の抗原結合部分配列など)である。ヒト化抗体としては、その中でレシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト生物種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体または移入CDRまたはフレームワーク配列のどちらにも見られない、残基を含んでなってもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つおよび典型的に2つの可変領域の実質的に全てを含んでなり、その中では、CDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン共通配列のものである。ヒト化抗体は、至適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部もまた含んでなる。
【0392】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野で周知である。通常、ヒト化抗体は、非ヒト起源から導入された、1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残基と称され、それは典型的に「移入」可変領域から得られる。ヒト化は、齧歯類CDR(複数)またはCDR(単数)配列を対応するヒト抗体配列によって置換することで、基本的に実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号明細書)であり、その中では、実質的に非損傷ヒト可変領域未満が、非ヒト生物種からの対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的にヒト抗体であり、その中ではいくつかのCDR残基と、おそらくはいくつかのFR残基とが、齧歯類抗体中の類似部位からの残基によって置換される。
【0393】
免疫化に際して、内因性免疫グロブリン生成不在下で、ヒト抗体の完全レパートリーを産生できる遺伝子組換え動物(例えばマウス)を用い得る。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異マウスにおける、抗体重鎖連結領域遺伝子のホモ接合型欠失が、内因性抗体生成の完全阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖細胞系変異マウスにおけるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの転写は、抗原チャレンジに際してヒト抗体の産生をもたらす。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーにおいても産生され得る。
【0394】
本発明の抗体は、好ましくは薬学的に許容できる担体中で、対象に投与される。典型的に、製剤中で適当量の薬理的に許容可能な塩が使用されて、製剤を等張にする。薬理的に許容可能な担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である
。さらなる担体としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス徐放性製剤が挙げられ、そのマトリックスは、例えば、フィルム、リポソームまたは微粒子などの造形品の形態である。当業者には、例えば、投与される抗体の投与経路と濃度次第で、特定の担体がより好ましくあってもよいことが明らかであろう。
【0395】
抗体は、注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内)によって、またはその有効形態での血流への送達を確実にする輸液などのその他の方法によって、対象、患者、または細胞に投与され得る。抗体はまた、腫瘍内または腫瘍周囲経路によって投与されて、局所性ならびに全身性の治療効果を発揮してもよい。局所注射または静脈注射が好ましい。
【0396】
抗体を投与するための有効投与量およびスケジュールは、経験的に判定されてもよく、このような測定の実施は、当該技術分野の技術範囲内である。当業者は、投与しなくてはならない抗体用量が、例えば、抗体を投与される対象、投与経路、使用される特定の抗体型、および投与されるその他の薬剤次第で変動することを理解するであろう。単独使用される抗体の典型的な1日量は、上述の要素次第で、1日あたり約1(μg/kg~最大100mg/kg体重またはそれ以上の範囲であるかもしれない。好ましくは肺がんを治療するための抗体投与に続いて、治療用抗体の効力が、熟練した実務家に良く知られている様々な方法で評価され得る。例えば、標準腫瘍イメージング技術を使用して、治療を受ける対象における肺がんのサイズ、数、および/または分布をモニターしてもよい。抗体投与不在下で起こるであろう疾患経過と比較して、腫瘍成長を停止させ、腫瘍収縮をもたらし、および/または新規腫瘍の発症を予防する、治療的に投与された抗体は、肺がん治療のための有効な抗体である。
【0397】
特異的ペプチド-MHC複合体を認識する可溶性T細胞受容体(sTCR)を製造する方法を提供することもまた、本発明のさらなる態様である。このような可溶性T細胞受容体は、特異的T細胞クローンから生成され得て、それらの親和性は相補性決定領域を標的とする変異誘発によって増大させ得る。T細胞受容体の選択目的で、ファージディスプレイが利用され得る(米国特許第2010/0113300号明細書、(Liddy et al.,2012))。ファージディスプレイ中に、そして薬剤として実用する際に、T細胞受容体を安定化させる目的で、例えば、非天然ジスルフィド結合、その他の共有結合(一本鎖T細胞受容体)、または二量体化ドメインによって、αおよびβ鎖を連結させ得る(Boulter et al.,2003;Card et al.,2004;Willcox et al.,1999)。T細胞受容体は、標的細胞上で特定機能を発揮させるために、毒素、薬剤、サイトカイン(例えば、米国特許第2013/0115191号明細書を参照されたい)、および抗CD3ドメインのようなエフェクター細胞動員ドメインなどに、連結させ得る。さらにそれは、養子免疫伝達のために使用されるT細胞において発現され得る。さらなる情報は、国際公開第2004/033685A1号パンフレットおよび国際公開第2004/074322A1号パンフレットにある。TCRの組み合わせは、国際公開第2012/056407A1号パンフレットに記載される。さらなる製造法は、国際公開第2013/057586A1号パンフレットで開示される。
【0398】
さらに本発明のペプチドおよび/またはTCRまたは抗体またはその他の結合分子を使用して、病理学者の生検サンプルに基づくがん診断が確認され得る。
【0399】
抗体またはTCRはまた、生体内診断アッセイのために使用されてもよい。通常、抗体は、免疫シンチグラフィー(immunoscintiography)を使用して腫瘍が位置確認され得るように、放射性ヌクレオチド(111In、99Tc、14C、131I、3H、32Pまたは35Sなど)で標識される。一実施形態では、抗体またはそれらのフラグメントは、上述のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質の2つ以上の標的の細胞外ドメインに結合し、親和性(Kd)は1×10μM未満である。
【0400】
診断用の抗体は、様々なイメージング法による検出に適するプローブで標識されてもよい。プローブの検出方法としては、蛍光、光学、共焦点および電子顕微鏡検査;磁気共鳴画像法および分光法;蛍光透視法、コンピュータ断層撮影および陽電子放射型断層撮影法が挙げられるが、これに限定されるものではない。適切なプローブとしては、フルオレセイン、ローダミン、エオジンおよびその他のフルオロフォア、放射性同位体、金、ガドリニウムおよびその他のランタニド、常磁性鉄、フッ素18およびその他の陽電子放出放射性核種が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに、プローブは二官能価または多官能価であってもよく、列挙される方法の2つ以上によって検出可能であってもよい。これらの抗体は、前記プローブで直接または間接的に標識されてもよい。特に十分に技術分野で承認されている、プローブの抗体への付着としては、プローブの共有結合、プローブの抗体への組み込み、およびプローブ結合のためのキレート化合物の共有結合が挙げられる。免疫組織化学的検査では、疾患組織サンプルは、新鮮または冷凍であってもよく、またはパラフィン包埋されてホルマリンなどの保存料で固定されてもよい。サンプルを含有する固定または包埋切片は、標識一次抗体および二次抗体と接触されて、抗体を使用して原位置タンパク質発現が検出される。
【0401】
本発明の別の態様は、活性化T細胞を製造するインビトロ法を含み、方法は、生体外T細胞を適切な抗原提示細胞の表面に発現される抗原負荷ヒトMHC分子に、T細胞を抗原特異的様式で活性化するのに十分な時間にわたり接触させるステップを含んでなり、抗原は本発明によるペプチドである。好ましくは、抗原提示細胞と共に、十分な量の抗原が使用される。
【0402】
好ましくは、哺乳類細胞は、TAPペプチド輸送体のレベルまたは機能が皆無でありまたは低下している。TAPペプチド輸送体が欠如している適切な細胞としては、T2、RMA-S、およびショウジョウバエ細胞が挙げられる。TAPは、抗原処理と関連する輸送体である。
【0403】
ヒトペプチド負荷欠損細胞株T2は、12301 Parklawn Drive,Rockville,Maryland 20852,USAの米国微生物系統保存機関からカタログ番号CRL1992の下に入手でき;ショウジョウバエ細胞株Schneider株2は、カタログ番号CRL19863の下にATCCから入手でき;マウスRMA-S細胞株は、Ljunggren et al.(Ljunggren and Karre,1985)に記載される。
【0404】
好ましくは、移入前に、宿主細胞は、MHCクラスI分子を実質的に発現しない。刺激因子細胞が、B7.1、B7.2、ICAM-1、およびLFA3のいずれかなどのT細胞のための共刺激シグナルを提供する上で、重要な分子を発現することもまた好ましい。多数のMHCクラスI分子および共刺激因子分子の核酸配列は、GenBankおよびEMBLデータベースから公的に入手可能である。
【0405】
MHCクラスIエピトープが抗原として使用される場合、T細胞はCD8陽性T細胞である。
【0406】
抗原提示細胞が、このようなエピトープを発現するために形質移入される場合、好ましくは、細胞は、配列番号1~配列番号110またはその変異アミノ酸配列を含有するペプチドを発現できる、発現ベクターを含んでなる。
【0407】
生体外でT細胞を製造するために、その他のいくつかの方法が使用されてもよい。例え
ば、自己由来腫瘍浸潤性リンパ球が、CTLを生成するために使用され得る。Plebanski et al.(Plebanski et al.,1995)は、T細胞の調製において、自己由来末梢血リンパ球(PLB)を利用した。さらに、樹状細胞をペプチドまたはポリペプチドでパルス処理する、または組換えウイルスで感染させることによる、自己由来T細胞の製造も可能である。B細胞もまた、自己由来T細胞の製造において使用され得る。さらに、ペプチドまたはポリペプチドでパルス処理された、または組換えウイルスで感染されたマクロファージが、自己CTLの調製において使用されてもよい。S.Walter et al.(Walter et al.,2003)は、人工抗原提示細胞(aAPC)を使用したT細胞の生体外プライミングを記載し、それはまた、選択されたペプチドに対するT細胞を製造するための適切な方法でもある。本発明では、ビオチン:ストレプトアビジン生化学によって、あらかじめ形成されたMHC:ペプチド複合体を表面ポリスチレン粒子(ミクロビーズ)に共役することで、aAPCが生成された。このシステムは、aAPC上のMHC密度の正確な調節を可能にし、それは、血液サンプルから高効率で、高または低結合活性の抗原特異的T細胞応答を選択的に引き起こすことを可能にする。MHC:ペプチド複合体の他に、aAPCは、それらの表面に共役する、抗CD28抗体のような共刺激活性があるその他のタンパク質を保有すべきである。さらにこのようなaAPCベースのシステムは、例えばサイトカイン様インターロイキン12などの適切な可溶性因子の付加を要することが多い。
【0408】
同種異系細胞はまた、T細胞の調製において使用されてもよく、方法は、参照により本明細書に援用される、国際公開第97/26328号パンフレットで詳述される。例えば、ショウジョウバエ細胞およびT2細胞に加えて、その他の細胞を使用して、CHO細胞、バキュロウイルス感染昆虫細胞、細菌、酵母、およびワクシニア感染標的細胞などの抗原が提示されてもよい。さらに植物ウイルスを使用してもよい(例えば、外来性ペプチド提示のための高収率システムとしてのササゲモザイクウイルス開発を記載するPorta et al.(Porta et al.,1994)を参照されたい)。
【0409】
本発明のペプチドに向けられた活性化T細胞は、治療法において有用である。したがって、本発明のさらなる態様は、前述の本発明の方法によって入手可能な活性化T細胞を提供する。
【0410】
上記方法によって製造される活性化T細胞は、配列番号1~配列番号110のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する、細胞を選択的に認識する。
【0411】
好ましくは、T細胞は、そのTCRを通じた、HLA/ペプチド複合体(例えば結合)との相互作用によって、細胞を認識する。T細胞は、その標的細胞が、本発明のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する患者において、標的細胞を死滅させる方法で有用であり、患者には、有効数の活性化T細胞が投与される。患者に投与されるT細胞は、患者に由来して、上述のように活性化されてもよい(すなわち、それらは自己T細胞である)。代案としては、T細胞は、患者でなく別の個人に由来する。もちろん、個人が健常人であれば、それが好ましい。「健常人」によって、本発明者らは、個人が概して健康良好であり、好ましくは有能な免疫系を有して、より好ましくは容易に検査され検出され得る任意の疾患に罹患していないことを意味する。
【0412】
生体内で、本発明によるCD8陽性T細胞の標的細胞は、(時にMHCクラスIIを発現する)腫瘍細胞であり得て、および/または腫瘍(腫瘍細胞)周囲の間質細胞であり得る(時にMHCクラスIIもまた発現する;(Dengjel et al.,2006)。
【0413】
本発明のT細胞は、治療用組成物の活性成分として使用されてもよい。したがって、本発明は、その標的細胞が、本発明のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する患者において、標的細胞を死滅させる方法もまた提供し、方法は、上で定義されるようなT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる。
【0414】
「異常に発現される」によって、本発明者らは、正常な発現レベルと比較して、ポリペプチドが過剰発現されること、または腫瘍がそれに由来する組織においては遺伝子がサイレントであるが、腫瘍においてはそれが発現されることもまた意味する。「過剰に発現される」によって、本発明者らは、ポリペプチドが、正常組織に存在するレベルの少なくとも1.2倍のレベルで;好ましくは正常組織に存在するレベルの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍または10倍のレベルで存在することを意味する。
【0415】
T細胞は、例えば上で記載されるものなどの当該技術分野で公知の方法によって得られてもよい。
【0416】
T細胞のこのいわゆる養子免疫伝達のためのプロトコルは、当該技術分野で周知である。概説は、Gattioni et al.and Morgan et al.(Gattinoni et al.,2006;Morgan et al.,2006)にある。
【0417】
本発明の別の態様は、その核酸がクローン化されて、好ましくはT細胞である宿主細胞に導入されるT細胞受容体を生成するための、MHCと複合体形成するペプチドの使用を含む。次に、この遺伝子操作T細胞は、がん治療のために患者に移入され得る。
【0418】
本発明の任意の分子、すなわちペプチド、核酸、抗体、発現ベクター、細胞、活性化T細胞、T細胞受容体またはそれをエンコードする核酸は、免疫応答を逃れた細胞によって特徴付けられる障害の治療に有用である。したがって本発明の任意の分子は、薬剤として、または薬剤の製造において使用されてもよい。分子は、単独で、または本発明のその他の分子または既知の分子との組み合わせで、使用されてもよい。
【0419】
本発明は、
(a)溶液中のまたは凍結乾燥形態の上述の医薬組成物を含有する容器;
(b)任意選択的に、凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器;および
(c)任意選択的に、(i)溶液の使用、または(ii)凍結乾燥製剤の再構成および/または使用のための取扱説明書
を含んでなるキットをさらに目的とする。
【0420】
キットは、(iii)緩衝液、(iv)希釈剤、(V)濾過、(vi)針、または(V)シリンジの1つまたは複数をさらに含んでなってもよい。容器は、好ましくは、ボトル、バイアル、シリンジまたは試験管であり;それは、多回使用容器であってもよい。医薬組成物は、好ましくは凍結乾燥される。
【0421】
本発明のキットは、好ましくは、適切な容器内の本発明の凍結乾燥製剤と、その再構成および/または使用のための取扱説明書とを含んでなる。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば二重チャンバーバイアル)、シリンジ(二重チャンバーシリンジなど)、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成されてもよい。好ましくは、キットおよび/または容器は、容器上の、または容器に付随する、取扱説明を含み、それは再構成および/または使用上の指示を示す。例えば、ラベルは、凍結乾燥製剤が、上述されるようなペプチド濃度に再構成されることを表示してもよい。ラベルは、製剤が皮下投与に有用であり、または皮下投与用であることをさらに表示してもよい。
【0422】
製剤を収容する容器は、多回使用バイアルであってもよく、それは再構成製剤の反復投与(例えば2~6回の投与)を可能にする。キットは、適切な希釈剤(例えば、炭酸水素ナトリウム溶液)を含んでなる、第2の容器をさらに含んでなってもよい。
【0423】
希釈剤と凍結乾燥製剤の混合時に、再構成製剤中の最終ペプチド濃度は、好ましくは少なくとも0.15mg/mL/ペプチド(=75μg)であり、好ましくは3mg/mL/ペプチド(=1500μg)以下である。キットは、その他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および取扱説明が掲載されるパッケージインサートをはじめとする、商業的および使用者観点から望ましい、その他の物質をさらに含んでもよい。
【0424】
本発明のキットは、その他の構成要素(例えば、その他の化合物またはこれらのその他の化合物の医薬組成物)が添加されたまたは添加されない、本発明による医薬組成物製剤を含有する単回容器を有してもよく、または各構成要素のための別個の容器を有してもよい。
【0425】
好ましくは、本発明のキットは、第2の化合物(アジュバント(例えばGM-CSF)、化学療法剤、天然物、ホルモンまたは拮抗薬、抗血管新生因子または阻害剤、アポトーシス誘導剤またはキレート剤など)またはその医薬組成物の同時投与と合わせて使用するためにパッケージされた、本発明の製剤を含む。キットの構成要素は、あらかじめ混合されてもよく、または各構成要素は、患者への投与前に別個の異なる容器内にあってもよい。キットの構成要素は、1つまたは複数の液体溶液、好ましくは水溶液、より好ましくは無菌水溶液中で、提供されてもよい。またキットの構成要素は、固体として提供されてもよく、それは、好ましくは別の異なる容器内に提供される、適切な溶媒の添加によって液体に変換されてもよい。
【0426】
治療用キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または固体または液体を封入するその他のあらゆる手段であってもよい。通常、2つ以上の構成要素がある場合、キットは、第2のバイアルまたはその他の容器を含有して、別々の投薬を可能にする。キットは、薬学的に許容可能な液体のための別の容器もまた、含有してもよい。好ましくは、治療用キットは、装置(例えば、1本または複数本の針、シリンジ、点眼器、ピペットなど)を含有して、本キットの構成要素である本発明の作用物質の投与を可能にする。
【0427】
本製剤は、経口(腸内)、経鼻、眼、皮下、皮内、筋肉内、静脈内または経皮などの任意の許容できる手段によるペプチド投与に適するものである。好ましくは、投与はs.c.であり、最も好ましくはi.d.投与であり、輸液ポンプによってもよい。
【0428】
本発明のペプチドは肺がんから単離されるので、本発明の薬剤は、好ましくは肺がんを治療するために使用される。
【0429】
本発明は、予備スクリーニングTUMAPの貯蔵庫から選択される少なくとも1つのペプチドを含んでなる、医薬組成物を製造するステップを含んでなる、個々の患者のための個別化医薬品(組成物)を製造する方法にさらに関し、医薬組成物中で使用される少なくとも1つのペプチドは、個々の患者における適切さについて選択される。一実施形態では、医薬組成物はワクチンである。方法はまた、TCR単離などの下流用途、または可溶性抗体、およびその他の治療選択肢のためのT細胞クローンを製造するためにも適応され得る。
【0430】
「個別化医薬品」は、積極的個別化がんワクチンおよび自己由来患者組織を使用する養子細胞療法をはじめとする、このような個々の患者の治療のためにのみ使用される、1個人の患者のために特に調整された治療法を意味するものとする。
【0431】
本明細書の用法では、「貯蔵庫」という用語は、特定の腫瘍型における免疫原性および/または過剰提示について予備スクリーニングされている、一群のまたは一組のペプチドを指すものとする。「貯蔵庫」という用語は、ワクチンに含まれる特定のペプチドが、予備製造されて物理的設備内で貯蔵されることを暗示することは意図されないが、その可能性も検討される。ペプチドは、製造される各個別化ワクチンのために新規に製造されてもよく、または予備製造されて貯蔵されてもよいことが、明示的に検討される。貯蔵庫(例えば、データベースの形態)は、様々なHLA-AHLA-BおよびHLA-C対立遺伝子がある肺がん患者の腫瘍組織において高度に過剰発現される、腫瘍関連ペプチドから構成される。それは、MHCクラスIおよびMHCクラスIIペプチドまたは伸長MHCクラスIペプチドを含有してもよい。いくつかの肺がん組織から採取された腫瘍関連ペプチドに加えて、貯蔵庫は、HLA-A*02およびHLA-A*24標識ペプチドを含有してもよい。これらのペプチドは、TUMAPによって誘導されるT細胞免疫の規模を定量的に比較できるようにし、したがって抗腫瘍応答を引き起こすワクチンの能力について、重要な結論が導かれるようにする。第2に、それらは、患者において、「自己」抗原に由来するTUMAPに対するいかなるワクチン誘導T細胞応答も観察されない症例において、「非自己」抗原に由来する重要な陽性対照ペプチドとして機能する。第3に、それは、患者の免疫能力状態に関する結論が導かれるようにしてもよい。
【0432】
貯蔵庫のためのTUMAPは、遺伝子発現解析、質量分析、およびT細胞免疫学を組み合わせた、統合ゲノム機能解析アプローチ(XPresident(登録商標))を使用して同定される。アプローチは、高い割合の腫瘍上に真に存在するが、正常組織上では発現されず、または最小限にのみ発現されるTUMAPだけが、さらなる分析のために選択されることを保証する。最初のペプチド選択のために、患者に由来する肺がんサンプルおよび健常ドナーに由来する血液は、段階的アプローチで分析された:
1.悪性物質からのHLAリガンドが、質量分析法によって同定された
2.ゲノム規模メッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現解析を使用して、一連の正常器官および組織と比較して、悪性組織(肺がん)において過剰発現される遺伝子が同定された
3.同定されたHLAリガンドは、遺伝子発現データと比較された。好ましくは、ステップ2で検出されたような選択的に発現されまたは過剰発現される遺伝子によってコードされる、腫瘍組織上で過剰提示されまたは選択的に提示されるペプチドが、多重ペプチドワクチンのための適切なTUMAP候補と見なされた。
4.同定されたペプチドのTUMAPとしての妥当性を支持する追加的な証拠を同定するために、文献調査が実施された
5.mRNAレベルでの過剰発現の関連性は、ステップ3からの選択されたTUMAPの腫瘍組織上における再検出と、健常組織における検出の欠如(または希な)検出によって確認された。
6.選択されたペプチドによる生体内T細胞応答の誘導が可能かどうかを評価するために、健常ドナーならびに肺がん患者からのヒトT細胞を使用して、生体外免疫原性アッセイが実施された。
【0433】
一態様では、貯蔵庫に含める前に、ペプチドが免疫原性について予備スクリーニングされる。制限を意図しない一例として、貯蔵庫に包含されるペプチドの免疫原性は、ペプチド/MHC複合体および抗CD28抗体が負荷された人工抗原提示細胞による、健常ドナーからのCD8+T細胞の反復刺激を通じた、生体外T細胞プライミングを含んでなる方法によって判定される。
【0434】
この方法は、稀ながんに、そして稀な発現プロファイルがある患者にとって、好ましい。一定組成がある多重ペプチド混合物とは対照的に、現在開発されている貯蔵庫は、腫瘍における抗原の実際の発現とワクチンとの顕著により高いマッチングを可能にする。多標的アプローチでは、各患者のために、選択された単一のまたは組み合わされた数種の「既製」ペプチドが利用される。理論上は、例えば50個の抗原性ペプチドのライブラリーからの5個の異なる抗原性ペプチドの選択に基づくアプローチは、それだけでおよそ1700万個の可能な医薬品(DP)組成物をもたらす。
【0435】
一態様では、ペプチドは、本明細書に記載される、または以下のような本発明による方法に基づく、個々の患者に対するそれらの適切さに基づいて、ワクチンへの包含のために選択される。
【0436】
HLA表現型、トランスクリプトミクスおよびペプチドミクスデータが、患者の腫瘍材料および血液サンプルから収集されて、「貯蔵庫」および患者に特有の(すなわち変異)TUMAPを含有する、各患者に対して最も適切なペプチドが同定される。患者の腫瘍において選択的にまたは過剰発現されて、可能であれば、患者の個々のPBMCと共に試験すると、強力な生体外免疫原性を示すペプチドが選択される。
【0437】
好ましくは、ワクチンに含まれるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;(b)(a)で同定されたペプチドを上述のペプチド貯蔵庫と比較するステップと;(c)少なくとも1つのペプチドを患者において同定された腫瘍関連ペプチドと関連がある貯蔵庫(データベース)から選択するステップとを含んでなる方法によって同定される。例えば、腫瘍サンプルによって提示されるTUMAPは、(a1)腫瘍サンプルからの発現データを腫瘍サンプルの組織型に相当する正常組織サンプルからの発現データと比較して、腫瘍サンプルにおいて過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質を同定するステップと;(a2)発現データを腫瘍サンプル中のMHCクラスIおよび/またはクラスII分子と結合するMHCリガンドの配列と相関させて、腫瘍によって過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップとによって同定される。好ましくは、MHCリガンドの配列は、腫瘍サンプルから単離されたMHC分子から結合ペプチドを溶出させて、溶出したリガンドを配列決定することで同定される。好ましくは、腫瘍サンプルおよび正常組織は、同一患者から入手される。
【0438】
貯蔵庫(データベース)モデルを使用してペプチドを選択するのに加えて、またはその代案として、TUMAPを患者において新規に同定し、次に、ワクチンに含めてもよい。一実施例として、(a1)腫瘍サンプルからの発現データを腫瘍サンプルの組織型に相当する正常組織サンプルからの発現データと比較して、腫瘍サンプルにおいて過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質を同定するステップと;(a2)発現データを腫瘍サンプル中のMHCクラスIおよび/またはクラスII分子と結合するMHCリガンドの配列と相関させて、腫瘍によって過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップとによって、候補TUMAPが患者において同定されてもよい。別の実施例として、個々の患者からの正常な対応組織と比較して、腫瘍サンプルに特有の変異を含有するタンパク質が同定されてもよく、特異的に変異を標的とするTUMAPが同定され得る。例えば、腫瘍のゲノム、および対応する正常組織のゲノムは、全ゲノム配列決定によって配列決定され得る。遺伝子のタンパク質コード領域における非同義の変異を発見するために、ゲノムDNAおよびRNAが腫瘍組織から抽出され、正常な非変異ゲノム生殖細胞系DNAが末梢血単核細胞(PBMC)から抽出される。適用されたNGSアプローチは、タンパク質コード領域の再配列決定(エクソーム再配列決定)に限定される。この目的で、供給業者が提供する標的富化キットを使用して、ヒトサンプルからのエクソンDNAが捕捉され、例えばHiSeq2000(Illumina)による配列決定がそれに続く。それに加えて、遺伝子発現の直接定量化と、変異遺伝子が患者の腫瘍において発現されることの妥当性評価とのために、腫瘍mRNAが配列決定される。結果として得られる数百万の配列読み取りは、ソフトウェアアルゴリズムを通じて処理される。出力一覧は、変異および遺伝子発現を含有する。PBMC由来生殖細胞系の多様性と比較することで腫瘍特異的体細胞突然変異が判定され、優先順位がつけられる。次に、新規に同定されたペプチドは、貯蔵庫について上述した免疫原性について試験され得て、適切な免疫原性を保持する候補TUMAPが、ワクチンへの包含のために選択される。
【0439】
例示的一実施形態では、ワクチンに包含されるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を上述の方法(方法)によって同定するステップと;(b)a)で同定されたペプチドを対応する正常組織との比較で腫瘍における免疫原性および過剰提示について予備選別されたペプチドの貯蔵庫と比較するステップと;(c)少なくとも1つのペプチドを患者において同定された腫瘍関連ペプチドと関連がある貯蔵庫から選択するステップと;(d)任意選択的に、(a)で新規に同定された少なくとも1つのペプチドを選択して、その免疫原性を確認するステップとによって同定される。
【0440】
例示的一実施形態では、ワクチンに包含されるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;(b)(a)で新規に同定された少なくとも1つのペプチドを選択して、その免疫原性を確認するステップとによって同定される。
【0441】
ひとたび個別化ペプチドベースのワクチンのためのペプチドが選択されたら、ワクチンが製造される。ワクチンは、好ましくは、約33%DMSOなどの20~40%DMSO、好ましくは約30~35%DMSOに溶解された、個々のペプチドからなる液体製剤である。
【0442】
製品に包含される各ペプチドは、DMSOに溶解される。単一ペプチド溶液の濃度は、製品に包含されるペプチド数に応じて選択されなくてはならない。単一ペプチドDMSO溶液が等量で混合され、ペプチドあたり約2.5mg/mlの濃度で、製品に包含される全てのペプチドを含有する溶液が得られる。次に、混合溶液は注射用水で1:3に希釈されて、33%DMSO中でペプチドあたり0.826mg/mlの濃度を得る。希釈溶液は、0.22μmの無菌フィルターを通して濾過される。最終バルク溶液が得られる。
【0443】
最終バルク溶液はバイアルに充填されて、使用時まで-20で保存される。1本のバイアルは、0.578mgの各ペプチドを含有する700μLの溶液を含有する。この内、500μL(ペプチドあたりおよそ400μg)が、皮内注射のために適用される。
【0444】
がんを治療するために有用であるのに加えて、本発明のペプチドは、診断法としてもまた有用である。ペプチドは肺がん細胞から生成されたので、そしてこれらのペプチドは正常組織には存在せずまたはより低レベルで存在すると判定されたので、これらのペプチドを利用してがんの存在を診断し得る。
【0445】
血液サンプル中の組織生検上における、特許請求されるペプチドの存在は、がん診断において病理学者を補佐し得る。抗体、質量分析法またはその他の当該技術分野で公知の方法の手段による特定のペプチドの検出は、組織サンプルが悪性または炎症性または概して病的であることを病理学者に告げ得て、または肺がんのバイオマーカーとして利用され得る。ペプチド基の存在は、病的組織の分類または下位分類を可能にし得る。
【0446】
患部組織検体上のペプチドの検出は、特にTリンパ球が作用機序に関与することが知られておりまたは予測される場合に、免疫系が関与する治療法の利点を判定できるようにする。MHC発現の喪失は、それによって感染悪性細胞が免疫監視を逃れる、十分に説明された機序である。したがってペプチドの存在は、この機序が、分析した細胞によって活用されていないことを示す。
【0447】
本発明のペプチドは、ペプチドまたはMHC分子と複合体化したペプチドに対するT細胞応答または抗体応答などの、これらのペプチドに対するリンパ球応答を分析するのに使用されるかもしれない。これらのリンパ球応答は、さらなる治療段階を決定するための予後マーカーとして使用され得る。これらの応答はまた、例えば、タンパク質、核酸、自己材料のワクチン接種や、リンパ球の養子免疫伝達などの異なる手段によるリンパ球応答の誘導を目指す、免疫療法アプローチにおける代理応答マーカーとして使用され得る。遺伝子治療の設定では、副作用の評価において、ペプチドに対するリンパ球応答が考慮され得る。リンパ球応答のモニタリングはまた、例えば移植片対宿主病および宿主対移植片病の検出など、移植治療の経過観察検査のための有益な手段かもしれない。
【0448】
本発明をここで、その好ましい実施形態を描写する以下の実施例において、添付図面を参照して説明するが、それでもなお、それらには限定されないものとする。本発明の目的で、本明細書で引用される全ての参考文献は、その内容全体が参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0449】
図1A】正常組織およびNSCLCサンプルにおける、様々なペプチドの過剰提示を示す。
図1B】同上
図1C】同上
図1D】同上
図1E】例示的ペプチド(FVFSFPVSV、配列番号4(A*02)およびYYTKGFALLNF、配列番号29(A*24))が検出された、全ての細胞株、正常組織、およびがん組織を示す。図1A-遺伝子:SLC6A14、ペプチド:FLIPYAIML(A*02;配列番号2)-組織左から右:1脂肪組織、3副腎、5動脈、3骨髄、8脳、3乳房、13結腸、1十二指腸、7食道、2胆嚢、5心臓、16腎臓、4白血球サンプル、21肝臓、1リンパ節、1卵巣、7膵臓、2末梢神経、1腹膜、1脳下垂体、1胎盤、3胸膜、6直腸(recti)、2唾液腺、3骨格筋、3皮膚、2小腸、4脾臓、7胃、3精巣、2胸腺、3甲状腺腺、1尿管、2子宮、2静脈、46肺、91 NSCLC。ペプチドはまた、膵臓がん、胃がん、結腸直腸がん、食道がん上にも見られた(図示せず)。図1B-遺伝子:COL6A3、ペプチド:FLFDGSANL(A*02;配列番号13)-組織左から右:1脂肪組織、3副腎、5動脈、3骨髄、8脳、3乳房、13結腸、1十二指腸、7食道、2胆嚢、5心臓、16腎臓、4白血球サンプル、21肝臓、1リンパ節、1卵巣、7膵臓、2末梢神経、1腹膜、1脳下垂体、1胎盤、3胸膜、6直腸(recti)、2唾液腺、3骨格筋、3皮膚、2小腸、4脾臓、7胃、3精巣、2胸腺、3甲状腺腺、1尿管、2子宮、2静脈、46肺、91 NSCLCペプチドはまた、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、肝がん、メラノーマ、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、胃がん上にも見られた(図示せず)。図1C-遺伝子:CCL18、ペプチド:VYTSWQIPQKF(A*24;配列番号23)-組織左から右:2副腎、1動脈、4脳、1乳房、5結腸、1心臓、13腎臓、9肝臓、3膵臓、1脳下垂体、2直腸(recti)、3皮膚、1脾臓、12胃、1胸腺、2子宮、9肺、80 NSCLCペプチドはまた、前立腺がん、胃がん上にも見られた(図示せず)。図1D-遺伝子:CENPN、ペプチド:RYLDSLKAIVF(A*24;配列番号28)-組織左から右:2副腎、1動脈、4脳、1乳房、5結腸、1心臓、13腎臓、9肝臓、3膵臓、1脳下垂体、2直腸(recti)、3皮膚、1脾臓、12胃、1胸腺、2子宮、9肺、80 NSCLCこのペプチドはまた、肝臓がん、胃がん、RCC上にも見られた(図示せず。図1E-遺伝子:DUSP4、ペプチド:FVFSFPVSV(A*02;配列番号4)-組織左から右:5膵臓細胞株、3皮膚、15正常組織(2食道、7肺、3脾臓、3胃)、126がん組織(1脳がん、2乳がん、5結腸がん、5食道がん、2胆嚢がん、8腎臓がん、5肝臓がん、58肺がん、11卵巣がん、9膵臓がん、2前立腺がん、1直腸がん、4皮膚がん、12胃がん、1精巣がん)。A~Bにおいて正常組織のセットは同一であるが、検出のなかった組織は図示されない。図1F-遺伝子:PLOD2、ペプチド:YYTKGFALLNF(A*24;配列番号29)-組織左から右:30がん組織(1脳がん、3腎臓がん、2肝臓がん、22肺がん、2胃がん)。C~Dにおいて正常組織のセットは同一であるが、検出のなかった組織は図示されない。
図1F】同上
図1G】正常組織およびNSCLCサンプルにおける、A*24ペプチドの過剰提示を示す。遺伝子:LAMP3、ペプチド:RFMDGHITF(A*24;配列番号25)-組織左から右:2副腎、1動脈、4脳、1乳房、5結腸、1心臓、13腎臓、9肝臓、3膵臓、1脳下垂体、2直腸(recti)、3皮膚、1脾臓、12胃、1胸腺、2子宮、9肺、80 NSCLCペプチドはまた、前立腺がん、胃がん上にも見られた(図示せず)。
図2A】正常組織および38の肺がんサンプルのパネルにおいて、肺がんにおいて高度に過剰発現されまたは排他的に発現される、本発明の起源遺伝子の例示的発現プロファイル(正常な腎臓と比較した相対的発現)。組織(左から右):副腎、動脈、骨髄、脳(全体)、乳房、結腸、食道、心臓、腎臓(三連)、白血球、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、膵臓、胎盤、前立腺、唾液腺、骨格筋、皮膚、小腸、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、膀胱、子宮子宮頸部、子宮、静脈、1正常(健常)肺サンプル、38 NSCLCサンプル.A)SMC4、B)LAMB3;C)MMP12、およびD)LAMP3。
図2B】同上
図2C】同上
図2D】同上
図3-1】例示的免疫原性データを示す:ペプチド特異的多量体染色後の:フローサイトメトリー結果。A)SLC1A4-001(配列番号12)、B)IGF2BP3-001(配列番号120)、C)LAMC2-001(配列番号121)、D)COL6A3-008(配列番号13)、およびE)LAMP3-001(配列番号25)。
図3-2】同上
図3-3】同上
図4】抗原刺激CD4+T細胞増殖の結果を示す:図は、各ペプチドの陽性ドナーの数を示す。
図5】クラスIIICSアッセイにおける、CEA-006に対する代表的ワクチン誘導CD4 T細胞応答を示す。生体外感作に続いて、時点プールV8/EOSにおけるCEA-006(上部パネル)および模擬(下部パネル)に対するCD4 T細胞応答について、患者36-031のPBMCが分析された。細胞を対応するペプチドで刺激して、生存度、抗CD3、抗CD8、抗CD4、およびエフェクターマーカーによって、それぞれ染色した(右から左:CD154、TNF-α、IFN-ガンマ、IL-2、IL-10)。生存能力があるCD4 T細胞は、1つまたは複数のエフェクター分子について陽性である細胞の比率について分析された。
図6】対照クラスIIペプチドの免疫原性を示す。略図は、IMA950ペプチドについては16人の患者、IMA910ペプチドについては71人の患者において検出された、ICSを使用した5種の様々なクラスIIペプチドの免疫応答評価を示す。
【実施例
【0450】
実施例1
細胞表面に提示される腫瘍関連ペプチドの同定および定量化
組織サンプル
患者の腫瘍組織は、University Hospital of Heidelberg;University Hospital of Munichから得られた。正常(健常)組織は、Bio-Options Inc.,CA,USA;BioServe,Beltsville,MD,USA;Capital BioScience Inc.,Rockville,MD,USA;Geneticist Inc.,Glendale,CA,USA;University Hospital of Geneva;University Hospital of Heidelberg;Kyoto Prefectural University of Medicine(KPUM);Osaka City University(OCU);University Hospital Munich;ProteoGenex Inc.,Culver City,CA,USA;University Hospital of Tubingenから入手された。
【0451】
全ての患者の告知に基づく同意書が、外科手術または検死解剖前に得られた。組織は切除直後に衝撃凍結されて、TUMAPの単離まで-70℃未満で保存された。
【0452】
組織サンプルからのHLAペプチドの単離
衝撃凍結組織サンプルからのHLAペプチド貯留は、わずかに修正されたプロトコル(Falk et al.,1991;Seeger et al.,1999)に従って、HLA-A*02-特異的抗体BB7.2、HLA-A、-B、-C特異的抗体W6/32、CNBr活性化セファロース、酸処理、および限外濾過を使用して、免疫沈殿によって固形組織から得られた。
【0453】
質量分析
得られたHLAペプチド貯留は、逆相クロマトグラフィー(nanoAcquity UPL C system、Waters)によって、それらの疎水性に従って分離され、ESI源を装着したLTQ-velosおよびfusionハイブリッド質量分光計(ThermoElectron)内で溶出ペプチドが分析された。ペプチド貯留は、毎分400nLの流速を適用して、1.7μm C18逆相材料(Waters)で充填された、分析用融合シリカマイクロキャピラリーカラム(75μm内径×250mm)上に直接挿入された。引き続いて、毎分300nLの流速で10%から33%へのBの二段階180分間二成分勾配を用いて、ペプチドが分離された。勾配は、溶媒A(水中の0.1%ギ酸)および溶媒B(アセトニトリル中の0.1%ギ酸)から構成された。nanoESI源への導入には、金被覆ガラス毛管(PicoTip、New Objective)が使用された。LTQ-Orbitrap質量分光計は、TOP5ストラテジーを使用してデータ依存モードで操作された。手短に述べると、スキャンサイクルは、Orbitrap(R=30000)内の高質量精度の完全スキャンで開始され、これもまたOrbitrap(R=7500)内の5種の最も豊富な前駆イオンのMS/MSスキャンがそれに続き、以前選択されたイオンは動的に除外された。タンデム質量スペクトルは、SEQUESTおよび追加的な手動調節によって解釈された。同定されたペプチド配列は、生成された天然ペプチド断片化パターンと、配列が同一の合成参照ペプチドの断片化パターンとの比較によって確認された。
【0454】
イオン計数によって、すなわちLC-MS特性の抽出と解析によって、無標識相対LC-MS定量化が実施された(Mueller et al.,2007)。方法は、ペプチドのLC-MSシグナル面積が、サンプル中のその存在量に相関すると仮定する。抽出された特性は、電荷状態デコンボリューションと滞留時間アライメントによって、さらに処理された(Mueller et al.,2008;Sturm et al.,2008)。最終的に、全てのLC-MS特性を配列同定結果と相互参照して、異なるサンプルの定量的データと組織からペプチドへの提示プロファイルとが組み合わされた。定量的データは、技術的および生物学的反復試験内の変動を考慮した中心傾向に従って、二段法で正規化された。このようにして、それぞれの同定されたペプチドが定量的データと関連付けられ得て、サンプルと組織の間の相対定量化ができるようになる。さらに、ペプチド候補について得られた全ての定量的データを手動で検査し、データ整合性を保証して自動解析の確度が確認された。各ペプチドについて、提示プロファイルが計算され、平均サンプル提示ならびに反復試験変動が示された。プロファイルは、肺がんサンプルを正常組織サンプルのベースラインに並置する。
【0455】
例示的過剰提示ペプチドの提示プロファイルは、図1に示される。例示的なペプチドの提示スコアは、表15および表16に示される。
【0456】
【表15-1】
【表15-2】
【0457】
【表16-1】
【表16-2】
【表16-3】
【0458】
実施例2
本発明のペプチドをコードする遺伝子発現プロファイリング
正常細胞と比較した腫瘍細胞上のペプチドの過剰提示または特異的提示は、免疫療法におけるその有用性にとって十分であり、いくつかのペプチドは、それらの起源タンパク質が正常組織にもまた存在するにもかかわらず、腫瘍特異的である。それでもなお、mRNA発現プロファイリングは、免疫療法のためのペプチド標的の選択において、安全性のレベルを高めることができる。特に、アフィニティ成熟TCRなどの高い安全性リスクがある治療の選択肢では、理想的な標的ペプチドは、腫瘍に特有で正常組織上には見られないタンパク質に由来する。
【0459】
RNA起源および調製
外科的に除去された組織標本は、告知に基づく同意書が各患者から入手された後に、上述の通り提供された(実施例1を参照されたい)。腫瘍組織標本は、手術直後にスナップ凍結され、その後、液体窒素下で乳鉢と乳棒を用いて均質化された。全RNAは、TRI試薬(Ambion,Darmstadt,Germany)を使用してこれらのサンプルから調製され、RNeasy(QIAGEN,Hilden,Germany)による精製がそれに続き;どちらの方法も製造業者のプロトコルに従って実施された。
【0460】
健常ヒト組織からの全RNAは、商業的に入手された(Ambion,Huntingdon,UK;Clontech,Heidelberg,Germany;Stratagene,Amsterdam,Netherlands;BioChain,Hayward,CA,USA)。幾人(2~123人)かの個人からのRNAは、各個人からのRNAが等しく重み付けされるように混合された。
【0461】
全てのRNAサンプルの品質および量は、RNA 6000 Pico LabChipキット(Agilent)を使用して、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent,Waldbronn,Germany)上で評価された。
【0462】
マイクロアレイ実験
全ての腫瘍および正常組織RNAサンプルの遺伝子発現解析は、Affymetrix Human Genome(HG)U133AまたはHG-U133 Plus 2.0オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(Affymetrix,Santa Clara,CA,USA)によって実施された。全てのステップは、Affymetrixマニュアルに従って実施された。簡単に述べると、二本鎖cDNAは、マニュアルに記載されるようにして、SuperScript RTII(Invitrogen)およびオリゴdT-T7プライマー(MWG Biotech,Ebersberg,Germany)を使用して、5~8μgの全RNAから合成された。生体外転写は、U133AアレイではBioArray High Yield RNA Transcript LabellingKit(ENZO Diagnostics,Inc.,Farmingdale,NY,USA)、U133 Plus 2.0アレイではGeneChip IVT Labelling Kit(Affymetrix)を用いて実施され、cRNA断片化、ハイブリダイゼーション、そしてストレプトアビジン-フィコエリトリンとビオチン化抗ストレプトアビジン抗体(Molecular Probes,Leiden,Netherlands)とを用いた染色がそれに続いた。画像は、Agilent 2500A GeneArray Scanner(U133A)またはAffymetrix Gene-Chip Scanner 3000(U133 Plus 2.0)でスキャンされ、全てのパラメータについてデフォルト設定を使用して、GCOSソフトウェア(Affymetrix)によってデータが解析された。正規化のために、Affymetrixによって提供される100個のハウスキーピング遺伝子が使用された。相対的発現値は、ソフトウェアによって与えられるシグナルlog比から計算され、正常な腎臓サンプルが自由裁量で1.0に設定された。肺がんにおいて高度に過剰発現されまたは排他的に発現される本発明の起源遺伝子の代表的発現プロファイルは、図2に示される。さらなる例示的遺伝子の発現スコアは、表17および表18に示される。
【0463】
【表17】
【0464】
【表18】
【0465】
実施例3
MHCクラスI提示ペプチドの生体外免疫原性
本発明のTUMAPの免疫原性に関する情報を得るために、本発明者らは、ペプチド/MHC複合体および抗CD28抗体を負荷した人工抗原提示細胞(aAPC)によるCD8+T細胞の反復刺激に基づく、生体外T細胞プライミングアッセイを用いて研究を実施した。このようにして、本発明者らは、これまでに本発明の84個のHLA-A*02拘束性TUMAPの免疫原性を示し得て、これらのペプチドが、それに対するCD8+前駆T細胞がヒトに存在する、T細胞エピトープであることを実証した(表19)。
【0466】
CD8+T細胞の生体外プライミング
ペプチドMHC複合体(pMHC)および抗CD28抗体を負荷した、人工抗原提示細胞による生体外刺激を実施するために、本発明者らは、最初に、告知に基づく同意後に、University clinics Mannheim,Germanyから得られた健常ドナーのCD8ミクロビーズ(Miltenyi Biotec,Bergisch-Gladbach,Germany)を使用した正の選択を通じて、新鮮HLA-A*02白血球除去生成物からCD8+T細胞を単離した。
【0467】
PBMCおよび単離CD8+リンパ球またはPBMCは、10%熱不活性化ヒトAB血清(PAN-Biotech,Aidenbach,Germany)、100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン(Cambrex,Cologne,Germany)、1mMピルビン酸ナトリウム(CC Pro,Oberdorla,Germany)、20μg/mlゲンタマイシン(Cambrex)を添加した、RPMI-Glutamax(Invitrogen,Karlsruhe,Germany)からなるT細胞培地(TCM)中で、使用時まで培養された。2.5ng/mlのIL-7(PromoCell,Heidelberg,Germany)および10U/mlのIL-2(Novartis Pharma,Nurnberg,Germany)もまた、この段階でTCMに添加された。
【0468】
pMHC/抗CD28被覆ビーズの生成、T細胞刺激、および読み取りは、高度に定義された生体外システム内で、刺激条件あたり4種の異なるpMHC分子と、読み取り条件あたり8種の異なるpMHC分子を使用して実施された。
【0469】
製造会社(Perbio,Bonn,Germany)が推奨する通りにスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドビオチンを使用して、精製共刺激マウスIgG2a抗ヒトCD28 Ab9.3(Jung et al.,1987)が化学的にビオチン化された。使用されたビーズは、直径5.6μmのストレプトアビジン被覆ポリスチレン粒子(Bangs Laboratories,Illinois,USA)であった。
【0470】
陽性および陰性対照刺激のために使用されたpMHCは、それぞれ、A*0201/MLA-001(修飾Melan-A/MART-1に由来するペプチドELAGIGILTV(配列番号163))およびA*0201/DDX5-001(DDX5に由来するYLLPAIVHI、配列番号164)であった。
【0471】
4×12.5ngの異なるビオチンpMHC存在下で、800,000個のビーズ/200μlが96ウェルプレート内で被覆され、洗浄されて、引き続いて200μlの容量中で、600ngのビオチン抗CD28が添加された。5ng/mlのIL-12(PromoCell)を添加した200μlのTCM中で、1×10のCD8+T細胞を2×10 個の洗浄被覆ビーズと、37℃で3日間にわたり同時インキュベートすることで、96ウェルプレート内で刺激が開始された。次に80U/mlのIL-2を添加した新鮮TCMで培地の半分を交換し、37℃で4日間にわたり培養が継続された。この刺激サイクルが、合計3回実施された。条件あたり8種の異なるpMHC分子を使用するpMHC多量体読み取りでは、5種の異なる蛍光色素への共役を包含するわずかな修正を加えて、以前記載されたような(Andersen et al.,2012)二次元コンビナトリアルコーディングアプローチが使用された。最後に、Live/dead近赤外染料(Invitrogen,Karlsruhe,Germany)、CD8-FITC抗体クローンSK1(BD,Heidelberg,Germany)、および蛍光性pMHC多量体による細胞の染色によって多量体解析が実施された。解析では、適切なレーザーおよびフィルターを装着したBD LSRII SORP血球計数器が使用された。ペプチド特異的細胞は、全CD8+細胞の百分率として計算された。多量体解析の評価は、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Oregon,USA)を使用して実施された。特異的多量体+CD8+リンパ球の生体外初回刺激は、陰性対照刺激と比較することで検出された。1人の健常ドナーの少なくとも1つの評価可能生体外刺激ウェルが、生体外刺激後に、特異的CD8+T細胞株を含有することが認められれば、所与の抗原の免疫原性が検出された(すなわちこのウェルは、CD8+T細胞中の特異的多量体+の少なくとも1%を含有し、特異的多量体+細胞の百分率は、負の制御刺激の中央値の少なくとも10倍であった)。
【0472】
肺がんペプチドの生体外免疫原性
HLAクラスIペプチドを試験するために、ペプチド特異的T細胞株の生成によって生体外免疫原性が実証され得る。本発明の3種のペプチドの、TUMAP特異的多量体染色後の例示的フローサイトメトリー結果は、対応する陰性対照と共に図3に示される。本発明からの84種のペプチドの結果は、表19に要約される。
【0473】
【表19-1】
【表19-2】
【0474】
【表20-1】
【表20-2】
【0475】
実施例4
ペプチドの合成
全てのペプチドは、Fmocストラテジーを使用する、標準的な十分に確立された固相ペプチド合成を使用して合成された。個々のペプチドのアイデンティティーおよび純度は、質量分析および分析用RP-HPLCによって判定された。ペプチドは、純度>85%の白色から灰白色の凍結乾燥物(トリフルオロ酢酸塩)として得られた。全てのTUMAPは、好ましくはトリフルオロ酢酸塩または酢酸塩として投与され、その他の薬学的に許容可能な塩形態もまた可能である。
【0476】
実施例5
MHC結合アッセイ
本発明によるT細胞ベースの治療法のための候補ペプチドは、それらのMHC結合能力(親和性)についてさらに試験された。個々のペプチド-MHC複合体は、UVリガンド交換によって生成され、UV感受性ペプチドはUV照射に際して切断されて、分析される目的ペプチドで交換された。ペプチド受容性MHC分子と効果的に結合して安定化し得るペプチド候補のみが、MHC複合体の分離を防止する。交換反応の収率を判定するために、安定化MHC複合体の軽鎖(β2m)の検出に基づくELISAが実施された。アッセイは、Rodenko et al(Rodenko et al.,2006)に一般的に記載されるようにして実施された。
【0477】
96ウェルMAXISorpプレート(NUNC)が、PBS中の2μg/mlストレプトアビジンにより室温で一晩被覆されて、4回洗浄され、ブロック緩衝液を含有する2%BSA中で37℃で1時間ブロックされた。再折りたたみされたHLA-A*020102:01/MLA-001単量体が、15~500ng/mlの範囲をカバーする標準物質の役割を果たした。UV交換反応のペプチド-MHC単量体は、ブロック緩衝液中で100倍に希釈された。サンプルは、37℃で1時間インキュベートされて、4回洗浄され、2ug/mlのHRP共役結合抗β2mと共に37℃で1時間インキュベートされ、再度洗浄されて、NH2SO4で停止させたTMB溶液を用いて検出された。吸光は、450nmで測定された。抗体またはそれらのフラグメント、および/またはT細胞受容体またはそれらのフラグメントの生成および製造のためには、高い交換収率(好ましくは50%よりも高い、最も好ましくは高い75%よりも)を示す候補ペプチドが、MHC分子に対する十分な結合活性を示してMHC複合体の分離を防止することから、一般に好ましい。
【0478】
【表21】
【0479】
実施例6
細胞表面に提示される腫瘍関連ペプチドの絶対定量化
抗体および/またはTCRなどのバインダーの生成は、骨の折れる方法であり、いくつかの選択された標的のみに実施されてもよい。腫瘍関連および特異的ペプチドの場合、選択基準としては、提示の排他性および細胞表面に提示されるペプチドの密度が挙げられるが、これに限定されない。実施例1に記載されるペプチドの単離および相対定量化に加えて、本発明者らは、細胞あたりの絶対的ペプチドコピー数も分析された。固形腫瘍サンプルにおける細胞あたりのTUMAPコピーの定量化は、単離されたTUMAPの絶対定量化、TUMAP単離の効率、および分析される組織サンプルの細胞数を必要とする。実験手順が以下に記載される。
【0480】
ナノLC-MS/MSによるペプチド定量化
質量分析によるペプチドの正確な定量化のために、内標準法を使用して、各ペプチドの検量線が作成された。内標準は、各ペプチドの二重同位体標識変異体であり、すなわち、2つの同位体標識アミノ酸がTUMAP合成に含まれた。それは、腫瘍関連ペプチドとはその質量のみが異なるが、他の物理化学的性質に差異を示さない(Anderson et al.,2012)。内標準が各MSサンプルに添加され、全てのMSシグナルは内標準のMSシグナルに対して正規化されて、MS実験間の可能な技術的変動が平準化された。検量線は、少なくとも3つの異なるマトリックス中で、すなわち、日常的MSサンプルと類似した天然サンプルからのHLAペプチド溶出液中で作成され、各調製物は二連のMS試験で測定された。評価のためには、MSシグナルが内標準のシグナルに対して正規化され、検量線がロジスティック回帰によって算出された。組織サンプルからの腫瘍関連ペプチドの定量化のためには、それぞれのサンプルにも内標準が添加され、MSシグナルが、内標準に対して正規化され、ペプチド検量線を使用して定量化された。
【0481】
ペプチド/MHC単離の効率
あらゆるタンパク質精製処理と同様に、組織サンプルからのタンパク質の単離には、目的タンパク質のいくらかの損失が伴う。TUMAP単離の効率を判定するために、絶対定量化のために選択された全てのTUMAPについて、ペプチド/MHC複合体が生成された。添加されたものを天然ペプチド/MHC複合体から識別できるように、TUMAPの単一同位体標識バージョンが使用され、すなわち、1つの同位体標識アミノ酸がTUMAP合成に含まれた。これらの複合体は、新鮮に調製された組織溶解産物に、すなわち、TUMAP単離手順の可能な限り早い時点で添加され、次に、以下の親和性精製において、天然ペプチド/MHC複合体のように捕捉された。したがって単一標識TUMAPの回収率を測定することで、個々の天然TUMAPの単離効率に関する結論が可能になる。単離効率は、少数のサンプルで分析され、これらの組織サンプル間で同等であった。対照的に、単離効率は、個々のペプチド間で異なる。これは、単離効率が、限定数の組織サンプルにおいてのみ判定されるが、任意のその他の組織標本に外挿されてもよいことを提案する。しかしながら、単離効率がペプチドからその他のペプチドに外挿されないこともあるので、各TUMAPは個別に分析する必要がある。
【0482】
固体冷凍組織中の細胞数測定
絶対ペプチド定量化に供した組織サンプルの細胞数を測定するために、本発明者らは、DNA含量分析を適用した。この方法は、異なる起点の幅広いサンプルに、最も重要なことには、冷凍サンプルに適用できる(Forsey and Chaudhuri,2009;Alcoser et al.,2011;Silva et al.,2013)。ペプチド単離プロトコル中に、組織サンプルは均質溶解産物に処理され、それから小さな溶解産物アリコートが取り出される。アリコートは3つに分割され、それからDNAが単離される(QiaAmp DNA Mini Kit,Qiagen,Hilden,Germany)。各DNA単離からの全DNA含有量は、蛍光ベースのDNA定量化アッセイ(Qubit dsDNA HS Assay Kit,Life Technologies,Darmstadt,Germany)を使用して、少なくとも2つの反復試験で定量化される。細胞数を計算するために、DNA標準曲線が、一連の定義された細胞数がある単一健常血液細胞のアリコートから作成された。標準曲線を利用して、全細胞含有量が、各DNA単離物からの全DNA含有量から計算される。ペプチド単離のために使用された組織サンプルの平均総細胞数は、既知の溶解産物アリコートの容量および全溶解産物容量を考慮して外挿される。
【0483】
細胞あたりのペプチドコピー数
前述の実験のデータを用いて、本発明者らは、サンプルの全ペプチド量を総細胞数で除算して、それに続いて単離効率により除算することで、細胞あたりのTUMAPコピー数を算出した。選択されたペプチドの細胞コピー数は、表22に示される。
【0484】
【表22】
【0485】
実施例6
HLAクラスII T細胞増殖アッセイ
以下の実験は、選択されたMHCクラスII TUMAPのT細胞増殖アッセイの結果を要約する。試験された10個のペプチド抗原の内、9個が免疫原性について陽性と判定された。21個の評価可能なT細胞サンプルの内、11個が少なくとも1つのペプチドについて陽性応答を示した。個々のペプチド抗原は、最大6人のドナーのCD4+TT細胞増殖を刺激した。これらの数値は、同一アッセイの実行中に試験された5つの参照ペプチドの結果と同等であり、臨床ワクチンの試験設定において、大部分の患者について免疫原性が実証された。したがって、新たに試験されたペプチドは、ワクチン試験においてもまたT細胞応答を誘発する可能性が高いと結論付け得る。
【0486】
選択されたペプチドを特にワクチン候補としてのそれらの可能性について特徴付けるために、ProImmune社たから市販されるT細胞増殖アッセイを使用したT細胞増殖分析によって、それらの生体外免疫原性が判定された。
【0487】
健常ドナーのCD8枯渇血液細胞サンプルが、選択されたペプチドを用いて試験された。CD4+T細胞の増殖を誘導するペプチドは、ヘルパーT細胞免疫応答の発生を潜在的に引き起こし得て、したがって免疫原性であると考えられる。CD4+T細胞の増殖は、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)標識を使用して判定された。増殖性細胞において、CFSEは分裂細胞に均等に分布する。したがって、増殖は、分析された細胞におけるCFSE蛍光の低下として測定され得る。
【0488】
【表23】
【0489】
試験の原理
健常ヒトドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)サンプルが、HLA-DRB1対立遺伝子発現に基づいて、ProImmune細胞バンクから選択された。偽陽性応答を回避するために、使用前に、ドナー血液サンプルからCD8+T細胞を枯渇させた。残りのCD4+T細胞はCFSEで標識されて、引き続いて5μMの各選択されたペプチドと共に培養された。各ペプチドは、6つの複製ウェルで試験された。背景は、6つの非刺激対照ウェル内の各プレート上で測定された。
【0490】
7日間の培養後、細胞は、抗CD4抗体で共染色されフローサイトメトリーで分析された。増殖の程度は、CFSE強度の低下を測定することで判定された。
【0491】
フローサイトメトリーデータの評価は、FlowJoSoftware(Tree Star,Inc.)を使用して実施された。フローサイトメトリーの結果は、全CD4+個体数に対する、CD4+dimの比率としてとして表された。増殖の程度は、背景を上回る刺激の百分率、すなわち、非刺激対照ウェルからのCD4+CFSE dim細胞の比率を差し引いた、抗原刺激CD4+CFSE dim細胞の比率として表される。各サンプルについて、6回の反復試験の平均値および対応する標準誤差(SEM)が計算された。
【0492】
ドナーの選択
ドナーは、HLA-DRB1対立遺伝子発現によって選択された。その他の2つのHLAクラスII遺伝子座(DQおよびDP)は、分析に含まれていなかった。興味深いDRB1対立遺伝子は、SYFPEITHIアルゴリズム(Rammensee et al.,1999)に基づいて予測されたペプチド結合の頻度に従って選択された。HLA-DRでは、結合は、18以上のSYFPEITHI結合予測スコアによって定義された。結合についてのこの閾値スコアは、公知の公表された乱交雑HLA-DRリガンドの結合スコアの分析に基づいて定義された(表24)。
【0493】
【表24】
【0494】
【表25】
【0495】
選択された全てのペプチドにわたり、20%を超える結合頻度がある全てのDRB1対立遺伝子は、ProImmuneによってドナーパネル)に含めるように要望された。その他の4つの希なDRB1対立遺伝子(DRB1*10:01、DRB1*16:01、DRB1*08:01、およびDRB1*13:03)が、さらに要望された。構築されたドナーパネルは、表26に示される。
【0496】
【表26】
【0497】
生体外免疫原性の結果
CD4+T細胞の抗原刺激増殖は、生体外免疫原性の指標と考えられ、ProImmuneから市販されるT細胞増殖アッセイで調べられた。抗原刺激されたCD4+T細胞増殖殖の程度が、背景を上回る刺激の百分率として表された。SEM=2(すなわち、背景より2標準誤差高い値)で背景を上回る0.02%刺激を超える応答は、陽性であると考えられた。
【0498】
10個の選択されたペプチド抗原の内、(FN1-002を除く)9個が陽性と判定された。21個の評価可能なT細胞サンプルの内、11個が少なくとも1つのペプチドについて陽性応答を示した(図4)。個々のペプチド抗原は、最大6人のドナーのCD4+T細胞増殖を刺激した。
【0499】
生体内および生体外における免疫原性の比較
T細胞増殖分析は、陽性対照として既知の生体内免疫原がある5つのペプチドを含んだ。これらのペプチドの生体内免疫原性は、CD4T細胞の細胞内サイトカイン染色(ICS)を用いた臨床試験において、これらのペプチドでワクチン接種された患者の血液サンプルにおいて測定された。
【0500】
原則的に、ICSアッセイは、エフェクター機能の観点から、特異的T細胞の質を分析する。したがって、末梢単核細胞(PBMC)は、関心のあるペプチド、参照、ペプチドおよび陰性対照(ここではMOCK)を用いて、生体外で再刺激された。再刺激に続いて、細胞は、IFN-γ、TNF-α、IL-2、およびIL-10産生、ならびに共刺激分子CD154の発現について染色された。染色された細胞の計数は、フローサイトメーター上で実施された(図5)。
【0501】
免疫原性解析は、16人の患者(試験IMA950-101)において、IMA950ペプチド(BIR-002およびMET-005)を用いたワクチン接種による100%の免疫応答、および71人の患者(試験IMA910-101)(図6) において、IMA910ペプチド(CEA-006、TGFBI-004およびMMP-001)を用いたワクチン接種による44%~86%の免疫応答を明らかにした。
【0502】
既知の生体内免疫原性を用いたによるペプチドの生体外免疫原性の結果は、選択されたペプチドと比較された(表27)。分析は、陽性対照ペプチドが、21個の調べられたドナーサンプルの内7個において、CD4+T細胞増殖を刺激したことを示した。刺激応答の強度は平均して、ペプチド当たり4個のドナーサンプルまでの背景を0.09~0.31%上回る範囲であった。例えば、BIR-002に対する刺激の強度(strenght)は、0.24%であった。BIR-002は、異なる臨床試験において高度に免疫原性であることが判明した。BIR-002が、前立腺がん特異的ペプチドワクチンの成分として、異なるHLA-DR対立遺伝子を発現する19人の評価可能な患者による臨床試験において試験された(Feyerabend et al.,2009)。16人(84%)の患者が、BIR-002に対して強力なCD4+T細胞応答を開始して(Widenmeyer et al.,2008)、その高い免疫原性の可能性が示された。IMA950試験では、100%(N=16)の患者が、BIR-002に対する免疫応答を示した。
【0503】
比較すると、FN1-002を除いて、現在の分析のために選択されたペプチドは、全11個の調べられたドナー試料において、CD4+T細胞増殖を刺激した。それにより、刺激応答の強さは平均して、ペプチド当たり6人のドナーまでの背景を0.19~0.48%上回る範囲であった。これらの値は、高度に免疫原性のペプチドBIR-002の刺激応答の強度と同様であった。興味深いことに、全ての陽性対照ペプチドについて、生体外免疫原性アッセイにおける陽性ドナーサンプルの割合(範囲:4~19%)は、臨床試験においてこれらのペプチドに対する免疫応答を開始した患者の割合より、かなり低かった(範囲:44~100%)。この観察は、現在の生体外免疫原性アッセイの設定がかなり保守的であり、臨床状況におけるペプチドの免疫原性を過小評価する可能性が高いことを示唆する。したがって、調べられた10個のペプチドのうち9個が、大部分の患者の臨床試験において生体内免疫応答を誘発する可能性が非常に高いことが予測され得る。
【0504】
【表27】
【0505】
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図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図2D
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5
図6
【配列表】
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