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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】放射性廃スラッジ抜出装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/22 20060101AFI20240723BHJP
   E04H 7/02 20060101ALI20240723BHJP
   G21F 9/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G21F9/22 M
E04H7/02
G21F9/04 B
G21F9/22 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021107282
(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公開番号】P2023005409
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 聡
(72)【発明者】
【氏名】永井 大地
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 敦史
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-034100(JP,A)
【文献】特開昭62-287198(JP,A)
【文献】特開昭63-271197(JP,A)
【文献】特開2013-013869(JP,A)
【文献】特開2020-159982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0205164(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/22
E04H 7/02
G21F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃スラッジの貯蔵容器から前記放射性廃スラッジを抜出すための放射性廃スラッジ抜出装置であって、
前記貯蔵容器の内部に撹拌水を吐出し、前記貯蔵容器内の前記放射性廃スラッジに旋回水流を発生させて撹拌する旋回撹拌口と、
前記貯蔵容器で撹拌された前記放射性廃スラッジを抜き出す抜出口と、を備え
前記旋回撹拌口は、吊り下げ装置によって、前記貯蔵容器が設置された廃スラッジ貯蔵容器設置室の外部から、前記貯蔵容器内に昇降可能に吊り下げられている
放射性廃スラッジ抜出装置。
【請求項2】
前記旋回撹拌口は、前記撹拌水を前記貯蔵容器の円周と平行な方向、又は、前記貯蔵容器の円周と平行な方向よりも側面方向に吐出して前記旋回水流を発生させる
請求項1に記載の放射性廃スラッジ抜出装置。
【請求項3】
前記貯蔵容器の外部から撹拌水移送用配管を介して、前記撹拌水を加圧して前記旋回撹拌口に供給する撹拌ポンプを備える
請求項1に記載の放射性廃スラッジ抜出装置。
【請求項4】
前記放射性廃スラッジの抜出のために前記抜出口に接続された抜出ポンプを備える
請求項1に記載の放射性廃スラッジ抜出装置。
【請求項5】
前記放射性廃スラッジの抜出のために前記抜出口に接続されたエジェクタを備える
請求項1に記載の放射性廃スラッジ抜出装置。
【請求項6】
前記抜出口に吸引される前記放射性廃スラッジに向けて流動化液を吐出する流動化液供給口を備える
請求項1に記載の放射性廃スラッジ抜出装置。
【請求項7】
前記抜出口に吸引される前記放射性廃スラッジに向けて空気を供給する空気供給口を備える
請求項1に記載の放射性廃スラッジ抜出装置。
【請求項8】
前記抜出口は、前記吊り下げ装置によって、前記貯蔵容器が設置された廃スラッジ貯蔵容器設置室の外部から、前記貯蔵容器内に昇降可能に吊り下げられている
請求項1に記載の放射性廃スラッジ抜出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃スラッジ貯蔵容器から放射性廃スラッジを抜出す放射性廃スラッジ抜出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、放射性廃液貯蔵容器(以下、貯蔵容器と称す。)の内部には、原子炉の運転によって生じた放射性を帯びた廃スラッジ(廃樹脂や廃液等からなる)が貯蔵されている。廃スラッジは長年にわたり徐々に貯蔵され、かつ放射能減衰され、貯蔵容器内一杯に溜められる。貯蔵された廃スラッジの抜出、減容固化処理、および、焼却処理等の処理処分をするため、貯蔵容器に廃スラッジ抜出装置が設けられる。貯蔵容器内の廃スラッジは重量差により、底部に廃樹脂、上部に廃液が二重層になって溜まる。よって抜出時には、貯蔵容器内に撹拌機を挿入して廃液と廃樹脂等を均等に混合しつつ廃スラッジの抜出を行う。
【0003】
このような貯蔵容器内の廃スラッジの抜出処理を、ポンプなどの水を移送するため機器と接続したノズルを貯蔵容器内に設置して行う廃スラッジ抜出装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
特許文献1に記載された廃スラッジ抜出装置は、昇降機を用いて貯蔵容器の中央部に敷設したガイドレールに沿ってポンプを移動させ、このポンプを用いて貯蔵容器から廃スラッジを抜き出す構成を有する。
特許文献2に記載された廃スラッジ抜出装置は、貯蔵容器の内部に設置した先端ノズルから、側面に傾斜を持たせた貯蔵容器の底に堆積した廃スラッジを抜き出す構成を有する。
特許文献3、および、特許文献4に記載された廃スラッジ抜出装置は、貯蔵容器の抜出ノズルを水中移動装置に取り付けて移動させ、貯蔵容器内に堆積する廃スラッジに近づけて、抜出ノズル付近の廃スラッジを抜き出す構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-142394号公報
【文献】特開2013-13869号公報
【文献】特開2012-37271号公報
【文献】特開2020-159982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている廃スラッジ抜出装置は、樹脂の抜出し範囲がポンプ投入口付近に限定される。このため、樹脂の抜出範囲が限定され、貯蔵容器内に抜き出しきれなかった廃樹脂が残留する。
特許文献2に記載されている廃スラッジ抜出装置は、貯蔵容器の底部にある程度の傾斜がある場合に限って内部の廃樹脂を殆ど抜き出すことができる。しかし、貯蔵容器の底部に傾斜が無い場合、廃スラッジの抜出範囲が抜出ノズル付近に限定され、ノズル付近にない樹脂が抜き出しきれず残留する。
特許文献3、および、特許文献4に記載されている廃スラッジ抜出装置は、貯蔵容器に設けられた棒状などの内部構造物が、抜出ノズルを移動させるための機材に干渉する場合、抜出ノズルの移動が困難となる。このため、抜出ノズルを貯蔵容器の全域に動かすことができず、貯蔵容器の全域の廃樹脂を抜き出すことができない。
このように、従来の廃スラッジ抜出装置を備える構成では、貯蔵容器内の全域の廃樹脂を抜き出すことができず、抜出後に行われる貯蔵容器の点検や解体において、残留した廃樹脂による作業員の被ばくが大きくなってしまう。
【0006】
上述した問題の解決のため、本発明においては、貯蔵容器の内部の構造に依存せず、貯蔵容器の全域の廃樹脂の大部分を抜き出すことが可能な放射性廃スラッジ抜出装置を提供する。
また、本発明の上記の目的およびその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射性廃スラッジ抜出装置は、貯蔵容器の内部に撹拌水を吐出し、貯蔵容器内の放射性廃スラッジに旋回水流を発生させて撹拌する旋回撹拌口と、貯蔵容器で撹拌された放射性廃スラッジを抜き出す抜出口とを備え、放射性廃スラッジの貯蔵容器から放射性廃スラッジを抜出す。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貯蔵容器の内部の構造に依存せず、貯蔵容器の全域の廃樹脂の大部分を抜き出すことが可能な放射性廃スラッジ抜出装置を提供することができる。
なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の放射性廃スラッジ抜出装置の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態の放射性廃スラッジ抜出装置の概略構成を示す図である。
図3】第2実施形態の放射性廃スラッジ抜出装置の概略構成を示す図である。
図4】放射性廃スラッジ抜出装置のエジェクタの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について、文章もしくは図面を用いて説明する。ただし、本発明に示す構造、材料、その他具体的な各種の構成等は、ここで取り上げた実施の形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.放射性廃スラッジ抜出装置の第1実施形態
2.放射性廃スラッジ抜出装置の第2実施形態
【0011】
〈1.放射性廃スラッジ抜出装置の第1実施形態〉
以下、本発明の放射性廃スラッジ抜出装置の具体的な実施の形態について説明する。
図1、および、図2に、第1実施形態の放射性廃スラッジ抜出装置と、この放射性廃スラッジ抜出装置が適用される放射性廃スラッジの貯蔵容器との概略構成図を示す。図1および図2は、廃スラッジの貯蔵容器1に、放射性廃スラッジ抜出装置を投入した際の様子を示している。図1は、廃スラッジの貯蔵容器1を側面方向から示す図であり、図2は、廃スラッジの貯蔵容器1を上方から示す図である。
【0012】
[放射性廃スラッジ抜出装置の構成]
図1に示すように、コンクリート躯体2によって構成された廃スラッジ貯蔵容器設置室3の内部に、放射性廃スラッジの貯蔵容器1が設置されている。放射性廃スラッジの貯蔵容器1の内部には、廃樹脂4と廃液5とからなる廃スラッジ13が貯蔵されている。廃樹脂4は、主に貯蔵容器1の底部付近に堆積している。
【0013】
図1に示す廃スラッジ貯蔵容器設置室3には、貯蔵容器1の内部の廃樹脂4および廃液5を抜出すために、放射性廃スラッジ抜出装置が設置されている。
放射性廃スラッジ抜出装置は、スラッジ抜出用配管10を介して抜出ポンプ8に接続された、放射性廃スラッジを抜き出すための抜出口として抜出ノズル6を備える。また、放射性廃スラッジ抜出装置は、撹拌水移送用配管11を介して撹拌ポンプ9に接続され、貯蔵容器1の内部全体を流動させるための撹拌水を吐出する旋回撹拌口として旋回撹拌ノズル7を備える。図1および図2に示す放射性廃スラッジ抜出装置は、撹拌水移送用配管11、撹拌ポンプ9、および、旋回撹拌ノズル7を、それぞれ2基づつ有している。
また、放射性廃スラッジ抜出装置は、図示しない吊り下げ装置等によって保持され、吊り下げ装置によって、抜出ノズル6や旋回撹拌ノズル7を個別に又は連動して、廃スラッジ貯蔵容器設置室3内を昇降させることができる。
【0014】
スラッジ抜出用配管10は、一端が貯蔵容器1の内部に設置された抜出ノズル6に接続されている。また、スラッジ抜出用配管10は、他端が廃スラッジ貯蔵容器設置室3の外部に導出され、抜出ノズル6によって貯蔵容器1から抜き出された廃スラッジを移送する、図示しない移送タンク等に接続されている。
抜出ポンプ8は、スラッジ抜出用配管10の途中に設けられ、抜出ノズル6に廃スラッジ13の抜出用(吸引用)の動力を供給する。
抜出ノズル6は、貯蔵容器1内において廃液5の液面以下の位置に配置される。好ましくは、廃スラッジ13の抜出効率が高くなるように、貯蔵容器1の中央付近に抜出ノズル6の開口が配置される。また、抜出ノズル6は、貯蔵容器1内に廃スラッジ13が残存しにくいように、貯蔵容器1の底部近くに配置することが好ましい。さらに、抜出ノズル6は、貯蔵容器1内において高さ調節が可能な構成であってもよい。例えば、抜出ノズル6は、撹拌前は廃液5と廃樹脂4との界面よりも上方に配置され、撹拌後および廃スラッジ13の量が少なくなった際には、貯蔵容器1の底部近くに移動する構成であってもよい。
【0015】
撹拌水移送用配管11は、一端が貯蔵容器1の内部に設置された旋回撹拌ノズル7に接続されている。また、撹拌水移送用配管11は、他端が廃スラッジ貯蔵容器設置室3の外部に導出され、撹拌ポンプ9に接続されている。
撹拌ポンプ9は、廃スラッジ貯蔵容器設置室3の外部に配置され、撹拌用の液体(撹拌水)を加圧し、撹拌水移送用配管11を介して旋回撹拌ノズル7に供給する。
【0016】
旋回撹拌ノズル7は、撹拌水移送用配管11を介して供給された撹拌水を、貯蔵容器1の内部の廃液5や廃樹脂4に向けて吐出する。旋回撹拌ノズル7は、貯蔵容器1内において抜出ノズル6よりも外周側に配置され、貯蔵容器1の側面付近に旋回撹拌ノズル7が配置される。また、旋回撹拌ノズル7は、抜出ノズル6を介して対向する位置に1基づつ配置されている。
【0017】
旋回撹拌ノズル7は、タンク全体に撹拌を行き渡らせることが可能な強さの水流を、撹拌水の吐出によって発生させることができれば、その形状は限定されない。また、図2では、旋回撹拌ノズル7の水吐出方向を、貯蔵容器1の中心と円周とを結ぶ中心線からの角度19として示している。旋回撹拌ノズル7の水吐出方向(角度19)は、水流が貯蔵容器1内を旋回するように吐出できれば特に限定されず、図2に示すように、貯蔵容器1の内部の壁面に沿う方向に撹拌水を吐出することができればよい。例えば、旋回撹拌ノズル7の水吐出口が貯蔵容器1の円周と平行な方向(90°)や、貯蔵容器1の側面方向(90°以上)とすることが好ましい。
【0018】
[放射性廃スラッジ抜出装置の操作]
次に、上述の構成の放射性廃スラッジ抜出装置を用いた廃スラッジの抜き出し作業の際の運転操作について説明する。
【0019】
まず、廃スラッジ貯蔵容器設置室3の外部、例えば、貯蔵容器1の投入口から放射性廃スラッジ抜出装置を貯蔵容器1内に導入し、抜出ノズル6、および、旋回撹拌ノズル7が、廃液5の液面以下となる位置に放射性廃スラッジ抜出装置を移動させる。
【0020】
次に、撹拌ポンプ9を駆動し、撹拌水移送用配管11を介して旋回撹拌ノズル7に撹拌水を供給する。旋回撹拌ノズル7を上述の位置に配置しているため、撹拌ポンプ9から供給されて旋回撹拌ノズル7から貯蔵容器1の内部に吐出された撹拌水により、貯蔵容器1の側面に沿って円周方向の水流が発生する。さらに、発生した水流が貯蔵容器1の全体に伝播することにより、貯蔵容器1内部に、図2に示すような旋回水流12が発生する。
【0021】
この結果、貯蔵容器1内に堆積した廃樹脂4の殆どが、旋回水流12によって押し流されるとともに、廃液5と混ざり合って一様な流動性を持つ廃スラッジ13となる。この旋回水流12は、放射性廃スラッジ抜出装置の運転中において継続的に生み出される。このため、廃スラッジ13中に含まれる廃樹脂4は、貯蔵容器1の底部に堆積することなく、貯蔵容器1の内部の廃スラッジ13中で浮遊する。
【0022】
次に、抜出ポンプ8を駆動して抜出ノズル6から、貯蔵容器1の内部の廃スラッジ13を吸引する。抜出ノズル6から吸引した廃スラッジ13は、スラッジ抜出用配管10を介して廃スラッジ貯蔵容器設置室3の外部に移送される。貯蔵容器1の内部の廃スラッジ13は、旋回撹拌ノズル7から吐出された撹拌水による旋回水流12によって一様な流動性を有するため、廃樹脂4および廃液5を同時に抜出ノズル6から抜き出すことができる。
また、廃スラッジ13は、旋回水流12によって常に撹拌された状態で流動性を有するため、抜出ノズル6の場所が固定されていたとしても、旋回撹拌ノズル7から撹拌水が供給されている限り、廃スラッジ13を抜き出すことが可能である。
【0023】
放射性廃スラッジ抜出装置において、上記の旋回水流12によって堆積した廃樹脂4を廃液5と混ぜて一様な廃スラッジ13とする操作、および、廃スラッジ13を抜出ノズル6から抜出す操作との一連の作業を、運転開始から繰り返す。そして、廃樹脂4が貯蔵容器1内から無くなるまで、上記の一連の作業を繰り返す。これにより、放射性廃スラッジ抜出装置によって、貯蔵容器1に貯蔵された廃スラッジ13を殆ど抜き出すことができる。
【0024】
また、貯蔵容器1の内部に廃スラッジ13が残っていないことを確認した後、放射性廃スラッジ抜出装置の動作を停止する。例えば、撹拌ポンプ9の駆動を停止して撹拌水の供給を停止し、抜出ポンプ8の駆動を停止する。さらに、廃スラッジ貯蔵容器設置室3からの放射性廃スラッジ抜出装置の取り出し等を行い、放射性廃スラッジ抜出装置を用いた貯蔵容器1から廃スラッジ13の抜出作業を完了する。
【0025】
上述の構成の放射性廃スラッジ抜出装置によれば、貯蔵容器1の内部に旋回水流を発生させるための水を吐出する旋回撹拌ノズル7と、廃スラッジ13を吸引する抜出ノズル6とを備えている。
旋回撹拌ノズル7から吐出する撹拌水によって貯蔵容器1の全体に旋回水流12が発生し、貯蔵容器1内に堆積した廃樹脂4が流動し、旋回水流12の流れ方向に押し流されて貯蔵容器1内に浮遊する。このとき、貯蔵容器1内に層を成していた廃樹脂4と廃液5は旋回水流12によって混ざり、一様な流動性を持つ廃スラッジ13となる。
そして、放射性廃スラッジ抜出装置において、吸引のための抜出ポンプ8を起動させ、抜出ノズル6で一様な流動性を持つ廃スラッジ13を抜き出す。抜出ノズル6は、廃スラッジ13の流動性が高いため、廃樹脂4と廃液5とを容易に吸引することができる。
【0026】
また、上記構成の放射性廃スラッジ抜出装置において、抜出ノズル6は、旋回撹拌ノズル7の撹拌水による旋回水流12によって絶えず高い流動性が与えらえた廃スラッジ13を吸引する。このため、抜出ノズル6の位置を移動させる構成を有さず、抜出ノズル6の位置が固定されて廃スラッジ13を抜き出すことができる範囲が限定された構成であっても、貯蔵容器1内の殆どの廃スラッジ13を抜き出すことができる。
【0027】
また、上記構成の放射性廃スラッジ抜出装置では、抜出ノズル6は、廃樹脂4と廃液5が混合した一様な流動性を持つ廃スラッジ13を、液体と同様に吸引できる。このため、抜出ノズル6の付近に廃樹脂4を集めるための貯蔵容器1の底部の傾斜を設けなくても、貯蔵容器1内の殆どの廃スラッジ13を抜出ノズル6で抜き出すことができる。すなわち、底部が平底、鏡底、斜め底の形状になっている貯蔵容器1に対しても、上記構成の放射性廃スラッジ抜出装置の適用が可能であり、貯蔵容器1内の廃スラッジ13を抜出すことができる。
【0028】
また、上記構成の放射性廃スラッジ抜出装置では、貯蔵容器1の内部で廃スラッジ13の抜出ノズル6を水平方向に移動させる必要がない。このため、貯蔵容器1の内部に放射性廃スラッジ抜出装置の抜出ノズル6の移動を阻害する構造物が存在し、抜出ノズル6の移動が困難な場合にも、廃スラッジ13を抜き出すことができる。
【0029】
なお、上述の図1および図2に示した放射性廃スラッジ抜出装置の構成では、抜出ノズル6を1基としているが、抜出ノズル6の設置数が複数であってよい。また、旋回撹拌ノズル7を2基としているが、貯蔵容器1の寸法を考慮した上で貯蔵容器1の全体に水流を行き渡らせることができれば、旋回撹拌ノズル7の設置数は1基であっても、3基以上であってもよい。さらに、図1および図2に示した構成では、貯蔵容器1内において、廃スラッジ13として層をなした廃樹脂4と廃液5が記載されているが、貯蔵容器1内の廃スラッジ13が廃樹脂4のみであってもよい。
【0030】
〈2.放射性廃スラッジ抜出装置の第2実施形態〉
次に、放射性廃スラッジ抜出装置の第2実施形態について説明する。なお、以下の第2実施形態の説明において、第1実施形形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
図3に、第2実施形態の放射性廃スラッジ抜出装置と、この放射性廃スラッジ抜出装置が適用される放射性廃スラッジの貯蔵容器との概略構成図を示す。なお、図3に示す放射性廃スラッジ抜出装置において、放射性廃スラッジの貯蔵容器に係わる構成は、上述の第1実施形態と同様の構成を適用できる。
【0031】
[放射性廃スラッジ抜出装置の構成]
図3に示すように、放射性廃スラッジ抜出装置は、スラッジ抜出用配管10を介してエジェクタ20に接続された放射性廃スラッジを抜き出すための抜出口として抜出ノズル6を備える。また、放射性廃スラッジ抜出装置は、撹拌水移送用配管11を介して撹拌ポンプ9に接続された、貯蔵容器1の内部全体を流動させるため撹拌水を吐出する旋回撹拌口として旋回撹拌ノズル7を備える。さらに、放射性廃スラッジ抜出装置は、流動化液供給管15の端部に設けられた流動化液供給口14と、空気供給管18の端部に設けられた空気供給口17とを備える。
【0032】
図3に示す放射性廃スラッジ抜出装置において、スラッジ抜出用配管10、撹拌水移送用配管11、流動化液供給管15、および、空気供給管18は、貯蔵容器1の上方に設けられた開口部16から内部に挿入されている。なお、抜出ノズル6および旋回撹拌ノズル7に係わる構成は、エジェクタ20に係わる構成を除き、上述の第1実施形態と同様の構成を適用できる。
【0033】
スラッジ抜出用配管10には、抜出ノズル6で廃スラッジ13を吸引し、吸引した廃スラッジ13を貯蔵容器1の外部まで移送するためのエジェクタ20が接続されている。エジェクタ20には、エジェクタ20の駆動のための水を供給する駆動水供給管25が接続されている。また、エジェクタ20には、エジェクタ20から廃スラッジ貯蔵容器設置室3の外部まで廃スラッジ13を移送する移送配管27が接続されている。
【0034】
流動化液供給管15の一端には、貯蔵容器1の内部に設置された流動化液供給口14が設けられている。また、流動化液供給管15は、他端が廃スラッジ貯蔵容器設置室3の外部に導出されている。流動化液供給管15は、放射性廃スラッジ抜出装置の外部から、廃スラッジ13の解し用の液体(流動化液)を流動化液供給口14に供給する。
流動化液供給口14は、廃樹脂4や廃スラッジ13を解すために、流動化液供給管15を介して供給された流動化液(水、水溶液等)を吐出する。
【0035】
空気供給管18の一端には、貯蔵容器1の内部に設置された空気供給口17が設けられている。また、空気供給管18は、他端が廃スラッジ貯蔵容器設置室3の外部に導出され、廃スラッジ貯蔵容器設置室3の外部に接続されている。空気供給管18は、放射性廃スラッジ抜出装置の外部から、廃スラッジ13の解し用の空気を加圧して空気供給口17に供給する。
空気供給口17は、廃樹脂4や廃スラッジ13を解すために、空気供給管18を介して供給された空気を吐出する。
【0036】
流動化液供給口14および空気供給口17は、抜出ノズル6の開口部近傍に設けられている。流動化液供給口14は、抜出ノズル6に吸引される廃スラッジ13に向けて、流動化液を吐出する。さらに、空気供給口17は、抜出ノズル6に吸引される廃スラッジ13に向けて、空気を吐出する。これにより、抜出ノズル6から吸引される廃スラッジ13の粘度や密度を、流動化液と空気とによって調整することができる。
【0037】
図3に示す放射性廃スラッジ抜出装置では、廃スラッジ13の抜出に、エジェクタ20を用いている。エジェクタ20は、エジェクタ20の内部にあるノズル23(図4)が、先端部ほど径が細くなっている。すなわち、エジェクタ20は、抜出ポンプ8(図1図2)に比べて、廃樹脂4の濃度が高く、粘度や密度が高い廃スラッジ13に対しては、ノズル23で閉塞し易くなっている。このため、抜出ノズル6の開口部近傍に、流動化液供給口14および空気供給口17を配置し、廃スラッジ13を流動化液と空気とで解し、粘度や密度を調整する。これにより、エジェクタ20を用いた放射性廃スラッジ抜出装置において、貯蔵容器1に貯蔵された廃スラッジ13を容易に抜き出すことができる。
【0038】
(エジェクタ)
図4に、エジェクタ20の構成を示す。図4は、エジェクタ20の断面図である。
図4に示すように、エジェクタ20は、駆動水が供給される供給口21、廃スラッジが吸入される吸入口22、供給口21に連続するノズル23、ディフューザー24を有している。
【0039】
供給口21には駆動水供給管25が接続され、吸入口22にはスラッジ抜出用配管10が接続され、ディフューザー24の出口には移送配管27が接続される。
供給口21から矢印で示すように駆動水を供給することにより、ノズル23から高速の水の流れがディフューザー24に向かって進み、この水の流れによって負の静圧が生じる。この負の静圧によって管内が真空状態となり、真空部につながる吸入口22から矢印で示すように廃スラッジ13が吸入される。吸入された廃スラッジ13は、ディフューザー24に入って駆動水と混合されて、エジェクタ20から排出される。
【0040】
上述の第2実施形態に示すように、放射性廃スラッジ抜出装置を、図3に示す構成とすることもできる。このような構成においても、上述の第1実施形態の放射性廃スラッジ抜出装置と同様の効果を得ることができる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 貯蔵容器、2 コンクリート躯体、3 廃スラッジ貯蔵容器設置室、4 廃樹脂、5 廃液、6 抜出ノズル、7 旋回撹拌ノズル、8 抜出ポンプ、9 撹拌ポンプ、10 スラッジ抜出用配管、11 撹拌水移送用配管、12 旋回水流、13 廃スラッジ、14 流動化液供給口、15 流動化液供給管、16 開口部、17 空気供給口、18 空気供給管、19 角度、20 エジェクタ、21 供給口、22 吸入口、23 ノズル、24 ディフューザー、25 駆動水供給管、27 移送配管
図1
図2
図3
図4