(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】皮剥き装置
(51)【国際特許分類】
A01D 45/02 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
A01D45/02
(21)【出願番号】P 2021128015
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】南 照男
(72)【発明者】
【氏名】余 先峰
(72)【発明者】
【氏名】北村 信樹
(72)【発明者】
【氏名】野口 耕作
(72)【発明者】
【氏名】岸 竜矢
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-181390(JP,A)
【文献】特開2016-174539(JP,A)
【文献】特開2016-189734(JP,A)
【文献】特開2016-116473(JP,A)
【文献】特開2017-42073(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110720307(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 45/02
A01D 69/00
A47J 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫されたトウモロコシ房状体を受け入れ、受け入れたトウモロコシ房状体の包葉を剥き取る皮剥き処理部と、
前記皮剥き処理部の上方に設けられ、前記皮剥き処理部の上に位置するトウモロコシ房状体を前記皮剥き処理部の始端部から終端部に向けて搬送する搬送部と、
駆動源からの動力を前記搬送部に伝達する動力伝達機構と、が備えられ、
前記皮剥き処理部に、トウモロコシ房状体の搬送方向に沿って延びる複数の皮剥きロールが前記皮剥き処理部の左右方向に並ぶ状態で備えられ、
前記搬送部に、左右の側壁部と、装置左右方向に沿って延び、前記動力伝達機構からの動力が伝達される入力回転体と、前記入力回転体に支持されて前記入力回転体とともに回動してトウモロコシ房状体に送り作用する搬送体と、前記入力回転体の左右両側端部を軸支するとともに、前記左右の側壁部に上下位置変更可能に支持されたフレーム体と、前記フレーム体の上下位置を変更することで前記皮剥きロールに対する前記搬送体の高さ位置を変更する上下位置調整機構と、が備えられ、
前記動力伝達機構に、前記側壁部に支持され、前記駆動源からの動力が伝達される駆動回転体と、前記動力伝達機構の伝達経路において前記駆動回転体と前記入力回転体との間に位置する状態で前記側壁部に支持された中継回転体と、前記駆動回転体と前記中継回転体とに亘って巻回される第一無端回動体と、前記中継回転体と前記入力回転体とに亘って巻回される第二無端回動体と、が備えられている皮剥き装置。
【請求項2】
前記動力伝達機構に、前記側壁部に支持され、他の装置に動力分岐する分岐回転体が備えられ、
前記第一無端回動体は、前記分岐回転体に巻回されている請求項1に記載の皮剥き装置。
【請求項3】
前記第一無端回動体に張力を付与するテンション機構として、前記動力伝達機構に、前記側壁部に位置固定された遊転輪体のみが備えられている請求項1又は2に記載の皮剥き装置。
【請求項4】
前記第二無端回動体に張力を付与するテンション機構として、前記動力伝達機構に、前記第二無端回動体が巻回されたテンション輪体と、前記側壁部に支持され、前記テンション輪体を回転可能な状態で支持するテンションアームと、が備えられている請求項1から3のいずれか一項に記載の皮剥き装置。
【請求項5】
前記フレーム体の上下位置を変更操作可能なアクチュエータが備えられている請求項1から4のいずれか一項に記載の皮剥き装置。
【請求項6】
前記皮剥き処理部の後端部に連設され、前記皮剥き処理部から包葉が剥き取られたトウモロコシを受け取って後方に向けて案内する案内部材が備えられ、
前記案内部材は、装置正面視で、前記複数の皮剥きロールの上部の凹凸形状に沿うように波型断面形状に構成され、
前記案内部材の前端部の上面は、前記皮剥きロールの後端部よりも低い位置となるように、前下がりの形状に形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の皮剥き装置。
【請求項7】
前記入力回転体に、入力回転軸が備えられ、
前記搬送体に、前記左右方向に間隔を空けた状態で前記入力回転体に支持された複数の羽根体と、前記羽根体よりも小径に構成された状態で隣り合う前記羽根体の間に設けられるとともに前記入力回転体に支持され、搬送中のトウモロコシ房状体が前記隣り合う前記羽根体の間に入り込むのを防止する侵入防止体と、が備えられ、
前記羽根体と前記侵入防止体とが一体形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の皮剥き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウモロコシ房状体から包葉を剥き取る皮剥き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の皮剥き装置では、装置前後方向に延びる複数の皮剥きロールが装置左右方向に並ぶ状態で備えられ、作物を後方に搬送する搬送部が、装置左右方向に延びる状態でかつ前後方向に並ぶ状態で複数の送り部材を備えて構成されたものがある。そして、このような搬送部に対して動力を伝達する動力伝達機構として、エンジンの動力が伝達される駆動軸から搬送部の入力軸に対して伝動チェーンを介して直接動力が伝達されるように構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の皮剥き装置では、トウモロコシ房状体が皮剥きロールから浮き上がらないように送り部材によって上方から支持され、皮剥きロールによる皮剥きが行われる。トウモロコシ房状体の太さに比して送り部材の皮剥きロールに対する高さが高い状態にあると、皮剥きロールから浮き上がり易くなって包葉が十分に剥き取られない。トウモロコシ房状体の太さに比して送り部材の皮剥きロールに対する高さが低い状態にあると、送り部材によって皮剥きロールに強く押し付けられるのでトウモロコシ房状体の種子粒が脱落するおそれがある。そこで、このような不利を解消するために、トウモロコシ房状体の太さに応じて搬送部の皮剥きロールに対する高さを調整できるようにすることが提案されている。
【0005】
上記したような搬送部の高さを調整する構成であれば、搬送部の入力軸が一体的に上下位置変更される。しかし、従来の伝動構造では、駆動軸から伝動チェーンを介して搬送部の入力軸に動力が伝達される構成であり、しかも、伝動チェーンに対して動力伝達を確実に行うために緊張力が付与されることになる。そこで、伝動チェーンが巻回される搬送部の入力軸を上下方向に位置変更させようとすると、緊張力により伝動チェーンの周長が変化し難くなり、強い操作力が必要となる等の不利な面があった。
【0006】
そこで、搬送部の皮剥きロールに対する高さの変更調整を軽い操作力で行えるようにすることが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る皮剥き装置の特徴構成は、収穫されたトウモロコシ房状体を受け入れ、受け入れたトウモロコシ房状体の包葉を剥き取る皮剥き処理部と、前記皮剥き処理部の上方に設けられ、前記皮剥き処理部の上に位置するトウモロコシ房状体を前記皮剥き処理部の始端部から終端部に向けて搬送する搬送部と、駆動源からの動力を前記搬送部に伝達する動力伝達機構と、が備えられ、前記皮剥き処理部に、トウモロコシ房状体の搬送方向に沿って延びる複数の皮剥きロールが前記皮剥き処理部の左右方向に並ぶ状態で備えられ、前記搬送部に、左右の側壁部と、装置左右方向に沿って延び、前記動力伝達機構からの動力が伝達される入力回転体と、前記入力回転体に支持されて前記入力回転体とともに回動してトウモロコシ房状体に送り作用する搬送体と、前記入力回転体の左右両側端部を軸支するとともに、左右の前記側壁部に上下位置変更可能に支持されたフレーム体と、前記フレーム体の上下位置を変更することで前記皮剥きロールに対する前記搬送体の高さ位置を変更する上下位置調整機構と、が備えられ、前記動力伝達機構に、前記側壁部に支持され、前記駆動源からの動力が伝達される駆動回転体と、前記動力伝達機構の伝達経路において前記駆動回転体と前記入力回転体との間に位置する状態で前記側壁部に支持された中継回転体と、前記駆動回転体と前記中継回転体とに亘って巻回される第一無端回動体と、前記中継回転体と前記入力回転体とに亘って巻回される第二無端回動体と、が備えられている点にある。
【0008】
本発明によれば、駆動源から駆動回転体に伝達された動力が第一無端回動体を介して中継回転体に伝達され、中継回転体から第二無端回動体を介して搬送部の入力回転体に伝達される。このように中継回転体を経由して動力伝達が行われる。搬送部の皮剥きロールに対する高さを変更させるために、側壁部に対するフレーム体の上下位置を変更すると、入力回転体が同時に位置変更され、第二無端回動体は張り状態が変化する。
【0009】
第二無端回動体は、中継回転体から搬送部への動力伝達だけを行うが、第一無端回動体は駆動回転体から搬送部以外の装置への動力伝達を行う場合がある等、駆動回転体から動力を確実に伝達する必要はあるため、第一無端回動体に強めの緊張力が付与されているおそれがある。
【0010】
フレーム体の上下位置を変更するときに、第一無端回動体は巻回状態が変化することはなく、入力回転体の位置変更操作には関係ない。その結果、フレーム体の上下位置を変更するときに大きな操作力が必要とされるおそれは少ない。
【0011】
従って、搬送部の皮剥きロールに対する高さの変更調整を軽い操作力で行うことが可能となった。
【0012】
本発明においては、前記動力伝達機構に、前記側壁部に支持され、他の装置に動力分岐する分岐回転体が備えられ、前記第一無端回動体は、前記分岐回転体に巻回されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、駆動回転体から動力が伝達される第一無端回動体を有効に利用して、分岐回転体を介して他の装置への動力伝達を良好に行うことができる。
【0014】
本発明においては、前記第一無端回動体に張力を付与するテンション機構として、前記動力伝達機構に、前記側壁部に位置固定された遊転輪体のみが備えられていると好適である。
【0015】
本構成によれば、第一無端回動体は、位置固定された遊転輪体により緊張力が付与される状態を維持して、駆動軸から確実に動力伝達を行うことができる。
【0016】
本発明においては、前記第二無端回動体に張力を付与するテンション機構として、前記動力伝達機構に、前記第二無端回動体が巻回されたテンション輪体と、前記側壁部に支持され、前記テンション輪体を回転可能な状態で支持するテンションアームと、が備えられていると好適である。
【0017】
本構成によれば、入力回転体を位置変更させても、移動式のテンション輪体の作用によって周長の変化を吸収して第二無端回動体の緊張力を自動的に良好な状態に維持することができる。又、側壁部にて支持されたテンションアームによりテンション輪体を安定的に支持することができる。
【0018】
本発明においては、前記フレーム体の上下位置を変更操作可能なアクチュエータが備えられていると好適である。
【0019】
本構成によれば、アクチュエータの操作によって搬送部の上下位置調整を行うことができる。搬送部の高さの変更調整は軽い操作力で行えるので、アクチュエータとしては操作力が小さい小型のもので対応できる。
【0020】
本発明においては、前記皮剥き処理部の後端部に連設され、前記皮剥き処理部から包葉が剥き取られたトウモロコシを受け取って後方に向けて案内する案内部材が備えられ、前記案内部材は、装置正面視で、前記複数の皮剥きロールの上部の凹凸形状に沿うように波型断面形状に構成され、前記案内部材の前端部の上面は、前記皮剥きロールの後端部よりも低い位置となるように、前下がりの形状に形成されていると好適である。
【0021】
本構成によれば、案内部材は、皮剥きロールの上部の凹凸形状に沿うように波型断面形状であり、しかも、前端部の上面は、前記皮剥きロールの後端部よりも低い位置となっているので、トウモロコシは、皮剥きロールから案内部材に向けて引っ掛かることなく円滑に受け取って案内することができる。
【0022】
本発明においては、前記入力回転体に、入力回転軸が備えられ、前記搬送体に、前記左右方向に間隔を空けた状態で前記入力回転体に支持された複数の羽根体と、前記羽根体よりも小径に構成された状態で隣り合う前記羽根体の間に設けられるとともに前記入力回転体に支持され、搬送中のトウモロコシ房状体が前記隣り合う前記羽根体の間に入り込むのを防止する侵入防止体と、が備えられ、前記羽根体と前記侵入防止体とが一体形成されていると好適である。
【0023】
本構成によれば、回転する羽根体がトウモロコシに作用することによりトウモロコシを後方に移送する。この構成では、羽根体が回転して跳ね上がる際に、トウモロコシの端部を押してトウモロコシの姿勢が起立状態となり、搬送方向下手側に位置する複数の羽根体同士の間に入り込もうとする。しかし、羽根体に隣接する侵入防止部によって侵入を防止して、脱粒を少なくすることができる。
【0024】
そして、羽根体と侵入防止部とが一体形成されているので、それらを別体で各別に作成するのに比べてコストを抑制できるとともに、組付け性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、矢印「F」、の方向を「機体前側」(
図1及び
図2参照)、矢印「B」の方向を「機体後側」(
図1及び
図2参照)、矢印「L」の方向を「機体左側」(
図2参照)、矢印「R」の方向を「機体右側」(
図2参照)とする。
【0027】
図1及び
図2に示すように、本発明に係るトウモロコシ収穫機は、向き固定の左右一対の前輪1と操向操作可能な左右一対の後輪2とを備えて走行機体3が構成されている。そして、走行機体3には、機体走行に伴って植立する作物から包葉の内部に多数の種子を備えたトウモロコシ房状体を収穫する収穫装置4と、収穫装置4にて収穫されたトウモロコシ房状体を機体後方上方に向けて搬送するフィーダ5と、搬送されたトウモロコシ房状体の包葉を剥き取る皮剥き装置6と、皮剥き装置6の下方に位置して、剥き取られた包葉とそれに混入する脱粒した種子粒とを選別する選別装置7と、選別装置7にて選別された種子粒を回収する回収部8と、包葉が剥き取られた後のトウモロコシ(収穫物)を貯留する貯留部としての貯留タンク9と、走行機体3の下部であって前輪1と後輪2との間の前後中間部に位置する残稈処理装置10と、が備えられている。
【0028】
走行機体3は、車体前部に上方がキャビン11により覆われる状態で運転部12が備えられ、その運転部12の後方に原動部13が備えられている。原動部13には、各部に動力を伝達するエンジン14が備えられるとともに、それに付随する種々の装置が備えられている。
【0029】
運転部12の左側には、運転者が乗り降りするための昇降ステップ15が備えられ、走行機体3における運転部12の左後方側には、フィーダ5や皮剥き装置6等のメンテナンス作業を行うために、作業者が搭乗可能な作業デッキ16が備えられている。この作業デッキ16は、フィーダ5の左横側箇所及び皮剥き装置6の左横側箇所にわたって前後方向に長く延びる状態で設けられている。
【0030】
収穫作業時には、前輪1の駆動により走行機体3を走行させ、収穫装置4で収穫したトウモロコシ房状体がフィーダ5によって機体後方上方に搬送され、皮剥き装置6によってトウモロコシ房状体から包葉が剥き取られたあとのトウモロコシが、貯留タンク9に貯留される。
【0031】
貯留タンク9は、平面視で略矩形状に形成されるとともに、上部が開放された形状となっており、その開放された領域から収穫物を受け入れるようになっている。収穫時に圃場に残された茎稈は残稈処理装置10により細断処理される。
【0032】
収穫装置4は、横方向に並列する4列の導入経路17が形成され、各々の導入経路17を挟む位置に、左右一対の収穫ロール18及びその上部に位置する左右一対の無端搬送チェーン19を備えている。収穫ロール18は、導入経路17と平行する前後向きの回転軸芯を中心に回転可能に支持されている。
【0033】
〔皮剥き装置〕
図3及び
図4に示すように、皮剥き装置6は、左右の側壁部27を有する装置ケース28により周囲が覆われ、装置ケース28の前部にトウモロコシ房状体を受け入れる受入れ口29が開口されている。装置ケース28の後部にトウモロコシ房状体を排出する排出口30が開口されている。装置ケース28の内部空間のうちの下部に、トウモロコシ房状体の包葉を剥き取る皮剥き処理部31が備えられ、皮剥き処理部31の上方に、皮剥き処理部31に位置するトウモロコシ房状体を装置後方に向けて搬送する搬送部32が備えられている。搬送部32の前方に掻込み回転体33が備えられ、搬送部32の後方に、排出回転体34が備えられている。
【0034】
図3及び
図5に示すように、皮剥き処理部31に、装置前後方向に沿って延びる複数の皮剥きロール36が装置左右方向に並ぶ状態で備えられている。
図4に示すように、皮剥き処理部31よりも装置前側に後下がり傾斜で設けられ、トウモロコシ房状体を皮剥き処理部31に向けて流下案内する案内板37が備えられている。
【0035】
搬送部32は、装置左右方向に沿って延びる送り部材38が、装置前後方向に沿って並ぶ状態で複数(具体的には5個)備えられている。5個の送り部材38のそれぞれに、装置左右方向に沿って延び、後述する動力伝達機構39からの動力が伝達される回転軸40、回転軸40に支持されて回転軸40とともに回動してトウモロコシ房状体に送り作用する搬送体41と、が備えられている。又、搬送部32には、回転軸40の左右両側端部を軸支するとともに、左右の側壁部27に上下位置変更可能に支持されたフレーム体42と、が備えられている。
【0036】
搬送体41に、左右方向に間隔を空けた状態で回転軸40に支持された複数の羽根体43と、羽根体43よりも小径に構成された状態で隣り合う羽根体43の間に設けられるとともに回転軸40に支持され、搬送中のトウモロコシ房状体が隣り合う羽根体43の間に入り込むのを防止する侵入防止体44と、が備えられている。そして、
図5に示すように、羽根体43と侵入防止体44とが樹脂材にて一体形成されている。
【0037】
搬送部32には、フレーム体42の上下位置を変更することで皮剥きロール36に対する搬送体41の高さ位置を変更する上下位置調整機構45が備えられている。5個の回転軸40を回転可能に支持する左右のフレーム体42は、側壁部27の外側面に対して上下方向にスライド可能に支持されている。図示はしないが、回転軸40の挿通孔は上下に長孔に形成されている。
【0038】
図6に示すように、前後両側部において、側壁部27に揺動可能にL字状の揺動アーム46が横軸芯周りで揺動可能に支持されている。揺動アーム46の下側の一端部とフレーム体42に枢支連結された支持アーム47とが連動連係されている。前後の揺動アーム46の上側の他端部には雌ネジ部材48が装着されている。前後の雌ネジ部材48はそれぞれ、揺動アーム46に対して、横向き軸芯周りで相対回動可能並びに長孔を介して上下方向に相対移動可能に支持されている。
【0039】
前後の雌ネジ部材48に対して螺合されるネジ軸49が前後方向に長く延びる状態で設けられている。ネジ軸49の後端部には、アクチュエータとしての電動モータ50が備えられている。電動モータ50は、モータ本体50aが側壁部27に固定された支持ブラケット51にて支持され、出力軸50bがネジ軸49に連動連結されている。前後の雌ネジ部材48は、ネジ送り方向が互いに逆向きのネジ部が形成されている。従って、ネジ軸49を回動すると、前後の雌ネジ部材48は互いに逆方向にネジ送りされる。
【0040】
電動モータ50によりネジ軸49を回動させると、前後の揺動アーム46が互いに逆向きに揺動して、前後の支持アーム47を介してフレーム体42を平行に上下移動させることができる。左右のフレーム体42が上下移動すると、5個の送り部材38が一体的に上下移動して、搬送部32の上下位置を変更調整することができる。
【0041】
図4に示すように、皮剥き処理部31の後端部に連設され、皮剥き処理部31から包葉が剥き取られたトウモロコシを受け取って後方に向けて案内する案内部材52が備えられている。
【0042】
図9に示すように、案内部材52は、装置正面視で、複数の皮剥きロール36の上部の凹凸形状に沿うように波型断面形状に構成されている。又、
図8に示すように、案内部材52の前端部の上面は、皮剥きロール36の後端部よりも低い位置となるように、前下がりの形状に形成されている。案内部材52は、皮剥きロール36の後端部を支持するベアリング53を保持するベアリングホルダー54に上方からボルト連結にて固定されている。
【0043】
図4に示すように、皮剥き処理部31における作用領域の一部において、複数の皮剥きロール36を覆うロールカバー55が備えられている。ロールカバー55は、皮剥き処理部31の全幅にわたって複数の皮剥きロール36を覆うように構成されている。このロールカバー55は、種子粒が脱落し易い性状を有するトウモロコシを収穫する場合に用いられる。
【0044】
ロールカバー55は、前端部から3番目の送り部材38が作用し始める箇所まで延ばされており、皮剥き処理部31における作用領域の略半分の前後幅を有している。ロールカバー55により上方を覆うことで脱粒のおそれを少なくすることができる。
【0045】
種子粒が脱落するおそれが少ないトウモロコシを収穫する場合には、ロールカバー55は図示しない収納箇所に収納した状態、あるいは、機体外部に取り外した状態で、収穫作業を行う。この場合には、皮剥き処理部31における全ての作用領域にて皮剥き処理が行われる。
【0046】
〔伝動構成〕
次に、搬送部32に対する伝動構造について説明する。
図7に示すように、搬送部32に対して動力を伝達する動力伝達機構39が備えられている。動力伝達機構39に、側壁部27に支持され、駆動源としてのエンジン14からの動力が伝達される駆動回転体56と、動力伝達機構39の伝達経路において駆動回転体56と入力回転体57との間に位置する状態で側壁部27に支持された中継回転体58と、駆動回転体56と中継回転体58とに亘って巻回される第一無端回動体としての第一伝動チェーン59と、中継回転体58と入力回転体57とに亘って巻回される第二無端回動体としての第二伝動チェーン60と、が備えられている。
【0047】
駆動回転体56は、皮剥き装置6の前下部において、左右の側壁部27に亘って回転可能に架設支持された駆動軸61と、駆動軸61の外周部に一体回転可能に備えられたスプロケット62と、を備えている。入力回転体57は、入力回転軸としての回転軸40と、回転軸40の外周部に一体回転可能に備えられたスプロケット63とを備えている。
【0048】
中継回転体58は、皮剥き装置6の前上部において、左右の側壁部27に亘って回転可能に架設支持された中継軸64と、中継軸64の外周部に一体回転可能に備えられた複数のスプロケット65,66と、を備えている。
【0049】
搬送部32の下方に、側壁部27に支持され、他の装置としての選別装置7に動力分岐する分岐回転体67が備えられている。分岐回転体67は、左右方向に延びる分岐用回転軸68と、分岐用回転軸68の外周部に一体回転可能に設けられた複数のスプロケット69と、を備えている。第一伝動チェーン59は、分岐回転体67のスプロケット69に巻回されている。
【0050】
駆動軸61に備えられたスプロケット62と、中継軸64に備えられたスプロケット65と、分岐回転体67のスプロケット69と、に亘って、第一伝動チェーン59が巻回されている。スプロケット65と分岐回転体67のスプロケット69との間には、第一伝動チェーン59の外周側から作用する位置固定式の遊転輪体70が備えられている。遊転輪体70は、図示しない締結ネジ部を緩めることで長孔に沿って前後方向に調節可能であり、第一伝動チェーン59に適切な張力を付与する状態で締結して位置固定することができる。
【0051】
中継軸64に備えられたスプロケット66と、最前部の回転軸40に備えられたスプロケット63とに亘って第二伝動チェーン60が巻回されている。第二伝動チェーン60に、張力を調整可能な移動式のテンション輪体72と、テンション輪体72を移動可能に支持するテンションアーム73とが備えられている。
【0052】
テンション輪体72は、スプロケット66と従動スプロケット71との間において第二伝動チェーン60の内周側から作用するように配置されている。テンションアーム73は、側壁部27に横軸芯周りで揺動可能に支持されている。又、テンションアーム73は、テンションバネ74によって下方側に揺動付勢され、第二伝動チェーン60に張力を付与するよう構成されている。
【0053】
最前部側に位置する回転軸40には、スプロケット63とは別にスプロケット(図示せず)が備えられている。前端部から2番目の回転軸40には、大径の従動スプロケット75が備えられている。別のスプロケットと従動スプロケット75とに亘って減速用伝動チェーン76が巻回されている。
【0054】
2番目の回転軸40には、従動スプロケット75とは別に小径のスプロケット63が備えられている。そして、前から3番目、4番目、5番目の回転軸40には、小径のスプロケット63と同径のスプロケット63が備えられている。
【0055】
分岐回転体67に上記スプロケット69とは別に駆動スプロケット(図示せず)が備えられている。駆動スプロケットと排出回転体34の従動スプロケット79とに亘って分岐用伝動チェーン80が巻回されている。
【0056】
分岐回転体67には、上記スプロケット69トとは別にスプロケット(図示せず)が備えられ、このスプロケットから伝動チェーン81を介して他の装置としての選別装置7に動力を分岐伝達するように構成されている。
【0057】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、第一伝動チェーン59に位置固定された遊転輪体70のみが備えられる構成としたが、それに代えて、あるいは、それに加えて、第一伝動チェーン59にテンションアームにて支持されたテンション輪体を備える構成としてもよい。
【0058】
(2)上記実施形態では、第二伝動チェーン60にテンションアーム73にて支持されたテンション輪体72が備えられる構成としたが、それに代えて、あるいは、それに加えて、位置固定された遊転輪体を備える構成としてもよい。
【0059】
(3)上記実施形態では、他の装置(選別装置7)に動力分岐する分岐回転体67が備えられ、第一伝動チェーン59が、分岐回転体67に巻回される構成としたが、このような分岐回転体を備えない構成としてもよい。又、他の装置として、選別装置7以外の装置に動力を分岐伝達するものでもよい。
【0060】
(4)上記実施形態では、フレーム体42の上下位置を変更操作可能なアクチュエータとして電動モータ50が備えられる構成としたが、油圧シリンダ、油圧モータ、電磁ソレノイド等、種々のアクチュエータを用いることができる。又、このようなアクチュエータを備えずに、手作業で上下位置調節する構成としてもよい。
【0061】
(5)上記実施形態では、搬送部32が装置左右方向に沿って延びる送り部材38を備える構成としたが、この構成に代えて、例えば、
図10に示すように、前後両側部に左右方向に延びる回転軸82,83にて回転する回転ローラ84,85が備えられ、前後の回転ローラ84,85に亘って無端状の搬送ベルト86が巻回され、搬送ベルト86の外周部に適宜間隔をあけて外方に延びる搬送用羽根体87を備える構成としてもよい。この場合、送り作用を発揮する搬送ベルト86の下側経路における内周側には、浮き上がり防止用の押え板88を設けるとよい。又、搬送ベルト86の搬送幅は、2本の皮剥きロール36に対して1つの搬送ベルト86が作用する横幅にするとよい。
【0062】
(6)上記実施形態では、駆動回転体56、入力回転体57、中継回転体58が、回転する軸体と一体回転するスプロケットとを備える構成としたが、この構成に代えて、回転しない軸に、自由回転可能なスプロケット等が備えられる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、トウモロコシ房状体から包葉を剥き取る皮剥き装置に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
27 側壁部
31 皮剥き処理部
32 搬送部
36 皮剥きロール
39 動力伝達機構
40 入力回転軸
41 搬送体
43 羽根体
44 侵入防止体
45 位置調整機構
50 アクチュエータ
52 案内部材
56 駆動回転体
57 入力回転体
58 中継回転体
59 第一無端回動体
60 第二無端回動体
67 分岐回転体
70 遊転輪体
72 テンション輪体
73 テンションアーム